説明

変性ポリビニルアルコール系樹脂、並びにそれを含む接着剤、偏光板及び表示装置

本発明は、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂に関し、また、優れた接着力、耐湿性及び耐水性を有する前記変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤に関し、さらに、ポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む接着剤、並びにそれを含む偏光板及び表示装置に関する。本発明の一実施形態によれば、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光板用接着剤が提供され、また、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物0.001〜10重量部とを含む偏光板用接着剤が提供され、さらに、このような接着剤を含む偏光板及び表示装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着力、耐湿性及び耐水性が改善されたポリビニルアルコール系樹脂、並びにそれを含む接着剤、偏光板及び表示装置に関する。より詳細には、本発明は、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂に関し、また、優れた接着力、耐湿性及び耐水性を有する前記変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光板用接着剤に関し、さらに、ポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む偏光板用接着剤、並びにそれを含む偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、プラズマ表示装置、電界発光素子などの各種画像表示装置に用いられる偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光素子を有し、偏光素子の少なくとも一面に透明保護フィルムが形成された構造となっている。ここで、偏光素子と透明保護フィルムの接着に用いられる偏光板用接着剤としては水系接着剤が用いられ、特にポリビニルアルコール系樹脂水溶液に架橋剤を混合したポリビニルアルコール系接着剤が用いられる。
【0003】
従来のポリビニルアルコール系樹脂接着剤を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂接着剤の水素結合により偏光素子と透明保護フィルムが接着される。しかし、従来のポリビニルアルコール系樹脂接着剤は、初期接着力が低く、耐湿性及び耐水性が低いことが問題視されている。このような問題を改善するために、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂、及び架橋剤を含有する偏光板用接着剤が特許文献1に開示されている。また、ポリビニルアルコールと、エチルアクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などの疎水性ビニルモノマーとの共重合体樹脂(共重合度1,900〜2,500)、及び金属硬化剤を含む偏光板用接着組成物が特許文献2に提案されている。
【0004】
特許文献3には、ポリビニルアルコールの水溶性アクリレート系架橋剤を15〜75重量部含むポリビニルアルコール系接着剤組成物が開示されている。しかし、特許文献3の接着剤組成物は、水に難溶性であるアクリレート架橋剤が多量に配合されているので、接着剤の水に対する溶解度及び接着性が低いという問題がある。
【0005】
しかし、近年、偏光板の生産性向上のためにラインスピード(Line speed,延伸速度)が速くなるにつれ、従来のアセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いた偏光板用接着剤の耐湿性、耐水性及び接着力が十分でなくなってきているという問題がある。
【0006】
よって、水に対する溶解度がさらに向上した偏光板用接着剤、並びに偏光素子及び保護フィルムに対する接着性、耐湿性及び耐水性に優れた偏光素子及び保護フィルム接着用接着剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−198945号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2006−88245号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2006−133215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂を提供するものである。
【0009】
本発明の他の実施形態は、接着性、耐湿性、耐水性、及び水に対する溶解度に優れた接着剤を提供するものである。
【0010】
また、本発明のさらに他の実施形態は、偏光素子及び保護フィルム接着用接着剤(以下、「偏光板用接着剤」ともいう。)を提供するものである。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態は、前記偏光板用接着剤を含む耐水性及び耐湿性に優れた偏光板及びそれを含む表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1実施形態によれば、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂が提供される。
【0013】
本発明の第2実施形態によれば、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光板用接着剤が提供される。
【0014】
本発明の第3実施形態によれば、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物0.001〜10重量部とを含む偏光板用接着剤が提供される。
【0015】
本発明の第4実施形態によれば、本発明の第1実施形態による偏光板用接着剤で偏光素子と保護フィルムが接着された偏光板が提供される。
【0016】
さらに、本発明の第5実施形態によれば、本発明の一実施形態による偏光板を含む表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態による、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光板用接着剤、又はポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む偏光板用接着剤は、水に対する溶解度に優れるだけでなく、優れた接着力、耐湿性及び耐水性を示す。
【0018】
すなわち、アクリル系樹脂は有機溶剤に溶解する樹脂であり、水に対する溶解度が低いので、偏光板用接着剤としての使用に適さないだけでなく、従来のポリビニルアルコール系樹脂に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートなどの疎水性モノマーが共重合された樹脂も、水に対する溶解度が低いので、偏光板用水系接着剤として用いることは不可能であった。しかし、本発明による偏光板用接着剤は、接着力、耐水性及び耐湿性と、ヒドロキシル基による水に対する溶解性とが相互補完的に最適化されるので、水に対する溶解度に優れるだけでなく、優れた接着性、耐水性及び耐湿性を示す。従って、本発明の接着剤で製造された偏光板及びそれを含む表示装置の耐水性及び耐湿性が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態による変性ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「AH−PVA樹脂」という。)は、アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む。前記アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂は、下記化学式Aと、B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位とを含むことが好ましい。前記アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール樹脂は、下記化学式Cの繰り返し単位をさらに含むことがより好ましい。
【0020】
【化A】

【0021】
【化B1】

【0022】
【化B2】

【0023】
【化B3】

【0024】
【化C】

【0025】
これに限定されるものではないが、本発明による化学式A、B1及びCの繰り返し単位を含むAH−PVA樹脂は下記化学式Iで表すことができる。
【0026】
【化I】

【0027】
化学式A、B2及びCの繰り返し単位を含むAH−PVA樹脂は下記化学式IIで表すことができる。
【0028】
【化II】

【0029】
化学式A、B3及びCの繰り返し単位を含むAH−PVA樹脂は下記化学式IIIで表すことができる。
【0030】
【化III】

【0031】
前記AH−PVA樹脂が化学式Aと、化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位とを含む場合、AH−PVA樹脂における化学式Aの繰り返し単位数nは490〜1700の整数であり、化学式B1、B2及び/又はB3で表される繰り返し単位数mは10〜900、好ましくは10〜400、より好ましくは50〜180の整数であり、nとmの合計は500〜1800の整数である。
【0032】
さらに、本発明の実施形態において、AH−PVA樹脂が化学式A、化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つ、並びに化学式Cの繰り返し単位を含む場合、AH−PVA樹脂における化学式Aの繰り返し単位数nと化学式Cの繰り返し単位数lの合計は490〜1700の整数であり、nとlの合計のうち、化学式Cの繰り返し単位数lは1〜80の整数であり、化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位数mは10〜900の整数、好ましくは10〜400の整数、より好ましくは50〜180の整数であり、n、m及びlの合計は500〜1800の整数である。AH−PVA樹脂が化学式A、化学式B1、B2及び/又はB3、並びに化学式Cの繰り返し単位を含むのは、PVA樹脂として、PVA樹脂の一部がアセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基からなる群から選択された少なくとも一種の基で変性されたポリビニルアルコール系樹脂が用いられた場合である。Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルカンジイル(alkanediyl)、好ましくはC1〜C15アルカンジイル、より好ましくはC1〜C10アルカンジイル、さらに好ましくはC1〜C5アルカンジイル、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択されたヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C15アルキル基、より好ましくはC1〜C10アルキル基、さらに好ましくはC1〜C5アルキル基、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、前記R及びRが置換体で置換される場合、置換体は、C1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C15アルキル基、より好ましくはC1〜C10アルキル基、さらに好ましくはC1〜C5アルキル基、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されたハロゲン原子、1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ環基、C6〜C14芳香族基、又はN、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ芳香族基である。Rは、アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基又はウレタン基である。
【0033】
化学式I〜IIIにおいては、便宜上化学式A、化学式B1、B2及び/又はB3、並びに任意の化学式Cの繰り返し単位が順次結合された重合体を示したが、重合体において化学式A、化学式B1、B2及び/又はB3、並びに任意の化学式Cは、ランダム(random)に位置する。
【0034】
前記AH−PVA樹脂において、化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位は、全PVA樹脂100mol%に対して、PVA樹脂の0.1〜50mol%、好ましくは0.1〜20mol%、より好ましくは0.1〜10mol%導入することができる。PVA樹脂中の化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位の導入量が0.1mol%未満であると、繰り返し単位の導入による接着性、耐湿性及び耐水性の増大効果がないという点で好ましくなく、50mol%を超えると、水に対する溶解度が低下して接着力がむしろ減少するという点で好ましくない。
【0035】
前記AH−PVA樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物との改質反応(共重合反応)により得ることができる。前記ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA」ともいう。)は特に限定されるものではなく、従来から偏光素子と保護フィルムの接着剤に用いられているものであり、当該技術分野において知られているいかなるポリビニルアルコール系樹脂が用いられてもよく、ポリビニルアルコール系樹脂の種類は特に限定されない。これらに限定されるわけではないが、例えばポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基からなる群から選択された少なくとも一種の基で変性されたポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基からなる群から選択された少なくとも一種で変性されたPVAが用いられる場合、これらに限定されるわけではないが、例えばPVAは、アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基からなる群から選択された少なくとも一種、最大15mol%、好ましくは0.01〜15mol%、より好ましくは0.5〜8mol%で変性されたPVAであり、化学式I〜IIIの繰り返し単位Cを含むことができる。アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基から構成される基で変性されたPVA及び前記改質のmol%は、当該技術分野において一般的なものである。
【0036】
前記反応に用いられるポリビニルアルコール系樹脂及び変性ポリビニルアルコール系樹脂(AH−PVA樹脂)の平均重合度は、500〜1800であることが好ましい。平均重合度が500〜1800のものが粘度、固形分及び使用量による接着性の面で優れた物性を示す。
【0037】
一方、反応に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、数平均分子量(Mn)3,000〜12,000、及び/又は重量平均分子量(Mw)20,000〜100,000のものが好ましい。上記範囲の数平均分子量及び/又は重量平均分子量を有するPVAが粘度の面で接着剤として用いるのに適するだけでなく、架橋後に十分な耐水性を示す。
【0038】
エポキシ基及びアクリル基を有する化合物としては、下記化学式1又は2の化合物が用いられる。
【0039】
【化1】

【0040】
【化2】

(化学式1及び2において、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルカンジイル(alkanediyl)、好ましくはC1〜C15アルカンジイル、より好ましくはC1〜C10アルカンジイル、さらに好ましくはC1〜C5アルカンジイル、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C15アルキル基、より好ましくはC1〜C10アルキル基、さらに好ましくはC1〜C5アルキル基、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択されたヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、前記R及びRが置換体で置換された場合、置換体は、C1〜C20アルキル基、好ましくはC1〜C15アルキル基、より好ましくはC1〜C10アルキル基、さらに好ましくはC1〜C5アルキル基、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されたハロゲン原子、1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ環基、C6〜C14芳香族基、又はN、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ芳香族基である。)
【0041】
本発明の一実施形態によるAH−PVA樹脂は、下記反応式1〜3に従って製造することができる。
【0042】
[反応式1]

【0043】
[反応式2]

【0044】
[反応式3]

【0045】
反応式1〜3は、ポリビニルアルコール系樹脂がAH−PVA樹脂に転換される過程を示す反応式であり、繰り返し単位数は記載していない。反応式1〜3において、化学式3は、ポリビニルアルコール系樹脂であり、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基及びウレタン基からなる群から選択された少なくとも一種の基で変性されたポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としてアセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基又はウレタン基で改質されていないポリビニルアルコール樹脂が用いられる場合は、化学式3において繰り返し単位Cは存在しない。
【0046】
反応式1〜3に示す通り、化学式3のPVAと、化1又は2のエポキシ基及びアクリル基を有する化合物との反応において、PVAのOH基及び/又はR基がエポキシ基を攻撃し、エポキシ開環反応によりPVA樹脂にアクリル基が導入されると共にヒドロキシル基(−OH)基が形成される。エポキシ開環反応は塩基性又は酸性条件下で行われる。具体的には、エポキシ開環反応において、求核体は、塩基性条件下で立体障害の小さい炭素(less hindered carbon)を攻撃し、酸性条件で立体障害の大きい炭素(more hindered carbon)を攻撃する。従って、エポキシ基及びアクリル基を有する化合物として化学式1の化合物が用いられる場合、塩基性条件下では反応式1のように反応が進み、酸性条件下では反応式2のように反応が進む。
【0047】
一方、エポキシ基及びアクリル基を有する化合物として化学式2の化合物が用いられる場合、エポキシ基が結合されたシクロヘキサンの炭素に対する立体障害は大きく異ならないので、エポキシ環の2種類のC−O結合のいずれかを攻撃し、エポキシ環が開環して反応が進む。
【0048】
具体的には、反応式1〜3に示す通り、ポリビニルアルコール樹脂(化学式3)と、エポキシ基及びアクリル基を有する化合物(化学式1又は2)とを水に溶解し、常温(例えば、約20〜25℃)〜70℃で10〜30時間反応させることにより、ポリビニルアルコール系樹脂にアクリル基が導入されると共に−OH基が形成されたポリビニルアルコール系樹脂(化学式I〜III)を得ることができる。上記水の量は、特に限定されるものではなく、当該技術分野の技術者であれは、共重合反応(改質反応)に関する一般的事項に照らして適切に調節することができる。一方、反応条件は塩基性又は酸性条件に調整しなければならない。塩基性条件で反応させる場合は、pHが13〜14になるように、これらに限定されるわけではないが、NaOH、KOHなどで調整する。酸性条件で反応させる場合は、pHが1〜2になるように、これらに限定されるわけではないが、HCl、HSO、HNOなどで調整する。
【0049】
前記反応により、樹脂の骨格にアクリル基が導入されると共に−OHが形成されたポリビニルアルコール樹脂が得られる。このように、単一樹脂の骨格にアクリル基が導入されると共に−0Hが形成されたポリビニルアルコール系樹脂は、前記アクリル基により付与される接着力、耐水性及び耐湿性と、ヒドロキシル基に付与される水に対する溶解性が相互補完的に最適化され、水に対する溶解度に優れるだけでなく、優れた接着性、耐水性及び耐湿性を示す。
【0050】
従って、本発明の他の態様において、前記AH−PVA樹脂を含む接着剤、具体的には偏光板用接着剤が提供される。
【0051】
本発明のさらに他の態様において、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部と、エポキシ基及びアクリル基を有する化合物0.001〜10重量部、好ましくは0.001〜1重量部とを含む偏光板用接着剤が提供される。ポリビニルアルコール樹脂と、少量のエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む接着剤も、水に対する溶解度が向上し、優れた接着性、耐水性及び耐湿性を示す。
【0052】
本発明の他の実施形態において提供される、ポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む接着剤として用いられるポリビニルアルコール系樹脂も、AH−PVA樹脂製造時に用いられるポリビニルアルコール系樹脂と同様に、特に限定されるものではなく、従来から偏光素子と保護フィルムの接着に用いられているものであり、当該技術分野において知られているいかなるポリビニルアルコール系接着剤が用いられてもよい。すなわち、前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記AH−PVA樹脂製造時に用いられるもののうち、前記のいかなるポリビニルアルコール系樹脂が用いられてもよく、上述した事項が全て同様に適用される。
【0053】
前記エポキシ基及びアクリル基を有する化合物としては、化学式1又は2の化合物が用いられることが好ましい。前記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対する前記エポキシ基及びアクリル基を有する化合物の含有量が0.001重量部未満であると、アクリル基の導入による接着性、耐湿性及び耐水性の増大効果がなく、10重量部を超えると、水に対する溶解度の低下により均一な偏光板用接着剤が得られず、溶液安定性及び接着力が低く、好ましくない。
【0054】
本発明の一実施形態による偏光板用接着剤は、水系接着剤であり、水に前記AH−PVA樹脂を溶解し、又はPVA樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを溶解して製造することができる。
【0055】
前記偏光板用接着剤には、必要に応じて硬化開始剤をさらに添加してもよい。
【0056】
硬化開始剤としては、AIBN(2,2'−azo−bis(isobutyronitrile))系開始剤、パーサルフェート系開始剤、Ciba−Geigy社のDarocure及び/又はIgacureシリーズの開始剤などが用いられる。前記AIBN及びパーサルフェート系開始剤としては、水系で使用できるもののうち、当該技術分野において知られているいかなる開始剤が用いられてもよい。これらに限定されるわけではないが、例えばAIBN系開始剤としては、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−[2−(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などを挙げることができ、パーサルフェート系硬化開始剤としては、ポタシウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェートなどを挙げることができる。Ciba−Geigy社の開始剤としては、これらに限定されるわけではないが、例えばヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェノール]−2−メチル−1−プロパノン(Darocure 2959)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(Darocure 1173)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(Darocure 1116)、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの25:75重量比の混合物(商標名Irgacure 1700)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−ジ−2-メチル−1−プロパン−1−オン(Irgacure 2959)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Irgacure 651)などを挙げることができる。
【0057】
前記硬化開始剤は、接着剤の総重量を基準に最大10重量%で偏光板用接着剤に添加することができる。前記硬化開始剤は、必要に応じて任意に添加される成分であり、添加量の下限値が限定されるわけではないが、好ましくは接着剤の総重量を基準に0.01〜10重量%、より好ましくは0.01〜1重量%添加することができる。硬化開始剤添加量が0.01重量%未満であると、硬化開始剤添加による効果が不十分であり、10重量%を超えると、反応後に残った添加剤が接着力に悪影響を及ぼす点で好ましくない。
【0058】
接着剤には、偏光板用接着剤に一般に用いられる各種カップリング剤、架橋剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び各種安定剤などを必要に応じて配合することができる。これらの使用量も当該技術分野において一般的なものであり、当該技術分野の技術者が適切な量で必要に応じて添加することができる。
【0059】
前記偏光板用接着剤において、ポリビニルアルコール系樹脂は濃度が1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%(具体的には、AH−PVAを含む接着剤においてはAH−PVAの濃度、またポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物とを含む接着剤においてはポリビニルアルコール系樹脂の濃度)である。ポリビニルアルコール系樹脂の濃度が1〜50重量%の接着剤が、接着剤の塗布性及び取り扱いの面で粘度が好ましいだけでなく、接着力の面で好ましい。
【0060】
前記偏光板用接着剤を用いて偏光素子と保護フィルムを貼り合わせる。偏光板用接着剤は、当該技術分野において一般に知られているいかなる偏光素子と保護フィルムの貼り合わせに用いられてもよい。偏光素子としては、これらに限定されるわけではないが、ポリビニルアルコール系樹脂偏光素子が一般に用いられる。保護フィルムとしては、光学的透明性、機械的強度、熱安定性、等方性、PVA偏光素子との接着性などに優れたいかなる重合体フィルムが用いられてもよい。保護フィルムの例としては、これらに限定されるわけではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系重合体、ポリスチレン、アクリロニトリルとスチレンの共重合体などのスチレン系重合体、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンの共重合体などのポリオレフィン系重合体、ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系重合体、イミド系重合体、スルホン系重合体、ポリエーテルエーテルケトン系重合体、ポリフェニレンスルファイド系重合体、ビニルアルコール系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ビニルブチラール系重合体、アリレート系重合体、ポリオキシメチレン系重合体、エポキシ系重合体、又はそれら重合体の混合物からなるフィルムが用いられる。
【0061】
特に、セルロースエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)、セルロースプロピオネートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム(PCフィルム)、ポリスチレン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、及びポリスルホン系フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点などから好ましい。トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)及びポリカーボネートフィルム(PCフィルム)が除膜しやすく加工性に優れるのでより好ましく、偏光特性又は耐久性によりTACフィルムが最も好ましい。
【0062】
前記保護フィルムは、保護フィルムが接着される偏光素子に対する接着力及び密着力を向上させるために表面改質処理される。表面処理の具体的な例としては、これらに限定されるわけではないが、コロナ処理、グロー(glow)放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、超音波処理、及び紫外線照射処理などがある。また、接着性を改善するために保護フィルムにアンダーコート層を形成する方法も利用できる。
【0063】
本発明の一実施形態による接着剤を用いて偏光素子と保護フィルムを貼り合わせて製造された偏光板は、接着剤の優れた接着力により優れた耐水性及び耐湿性を示す。
【0064】
本発明のさらに他の実施形態において、本発明による偏光板を含む表示装置が提供される。表示装置の例としては、これらに限定されるわけではないが、液晶表示装置(LCD)、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)などを挙げることができる。
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。下記実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0066】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解し、その後、これにGMA(glycidylmethacrylate)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して60重量部添加し、常温で一晩攪拌することにより、反応式2のように反応が進み、GMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、濃HClを添加してpHを約1〜2に調整した。得られた反応混合物を分離乾燥してAH−PVA樹脂を得た。その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたGMAの含有量をNMRで計算し、GMAが4.5mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0067】
その後、純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度600,鹸化度95〜97%,GMA含有量4.5mol%)を4重量%の濃度となるように溶解して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0068】
前記水系接着剤を用いて厚さ75μmのポリビニルアルコール偏光素子の一面に厚さ80μmの鹸化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)保護フィルムを接着してラミネートした後、80℃で5分間乾燥させて偏光板を製造した。
【0069】
偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例2】
【0070】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1700,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z320]を80℃で1時間溶解し、その後、これにGMA(glycidylmethacrylate)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して40重量部添加し、常温で一晩攪拌すると、反応式1に従ってGMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、1NのNaOHを添加してpHを約13〜14に調整した。
【0071】
その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたGMAの含有量をNMRで計算し、GMAが2.0mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0072】
純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度1700,鹸化度95〜97%,GMA含有量2.0mol%)を4重量%の濃度となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して15重量部添加して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0073】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例3】
【0074】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解し、その後、これにGMA(glycidylmethacrylate)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して5重量部添加し、常温で一晩攪拌すると、反応式1に従ってGMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、濃HClを添加してpHを約1〜2に調整した。
【0075】
その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたGMAの含有量をNMRで計算し、GMAが0.15mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0076】
純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度1100,鹸化度99%,GMA含有量0.15mol%)を4重量%の濃度となるように溶解して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0077】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例4】
【0078】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解し、その後、これにGMA(glycidylmethacrylate)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して60重量部添加し、70℃で24時間攪拌した。反応式1に従ってGMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、1NのNaOHを添加してpHを約13〜14に調整した。
【0079】
その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたGMAの含有量をNMRで計算し、GMAが10.0mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0080】
純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度600,鹸化度95〜97%,GMA含有量10.0mol%)を4重量%の濃度となるように溶解して架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して15重量部添加して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0081】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例5】
【0082】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1700,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z320]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール樹脂100重量部当たりGMA(glycidylmethacrylate)0.001重量部を添加してGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して20重量部添加して水系接着剤を製造した。
【0083】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例6】
【0084】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たりGMA(glycidylmethacrylate)1.0重量部を添加してGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0085】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例7】
【0086】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たりGMA(glycidylmethacrylate)10重量部を添加してGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0087】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例8】
【0088】
純水に実施例2で製造されたAH−PVA樹脂を4重量%となるように溶解した後、AIBN系開始剤(商品名VA−044,Wako社製)を0.1重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0089】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例9】
【0090】
純水に実施例2で製造されたAH−PVA樹脂を4重量%となるように溶解した後、スルフェート系開始剤であるアンモニウムパーサルフェート(Junsei社製)を0.1重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0091】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例10】
【0092】
純水に実施例1で製造されたAH−PVA樹脂を20重量%(重量パーセント)の濃度となるように溶解し、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェノール]−2−メチル−1−プロパノン(商品名Darocure 2959,D2959,Ciba−Geigy社製)を0.05重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0093】
その後、前記水系接着剤を用いて厚さ75μmのポリビニルアルコール偏光素子の一面に厚さ80μmの鹸化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)保護フィルムを接着し、UV供給源(source)(商品名Novacure,EFOS社製)を用いて15〜20mW/cmの強度で5分間硬化させて偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例11】
【0094】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解し、その後、これに3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(3,4−epoxycyclohexylmethyl acrylate,EMA)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して60重量部添加し、常温で一晩攪拌することにより、反応式3のように反応が進み、EMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。得られた反応混合物を分離乾燥してAH−PVA樹脂を得た。一方、前記反応時に、濃HClを添加してpHを約1〜2に調整した。その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたEMAの含有量をNMRで計算し、EMAが4.0mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0095】
その後、純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度600,鹸化度95〜97%,EMA含有量4.0mol%)を4重量%の濃度となるように溶解して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0096】
前記水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例12】
【0097】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1700,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z320]を80℃で1時間溶解し、その後、これにEMAを前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して40重量部添加し、常温で一晩攪拌することにより、反応式3のように反応が進み、EMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、1NのNaOHを添加してpHを約13〜14に調整した。その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたEMAの含有量をNMRで計算し、EMAが1.5mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0098】
その後、純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度1700,鹸化度95〜97%,EMA含有量1.5mol%)を4重量%の濃度となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり15重量部添加して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0099】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例13】
【0100】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解し、その後、これにEMAを前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して5重量部添加し、常温で一晩攪拌することにより、反応式3のように反応が進み、EMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、濃HClを添加してpHを約1〜2に調整した。その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたEMAの含有量をNMRで計算し、EMAが0.12mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0101】
その後、純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度1100,鹸化度99%,EMA含有量0.12mol%)を4重量%の濃度となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり15重量部添加して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0102】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例14】
【0103】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解し、その後、これにEMAを前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対して60重量部添加し、70℃で30時間攪拌することにより、反応式3のように反応が進み、EMAがポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合された。一方、前記反応時に、1NのNaOHを添加してpHを約13〜14に調整した。その後、AH−PVA樹脂をFT−IRで測定し、アクリレートが導入されているか否か、及び0H官能基が形成されているか否かを確認した。また、導入されたEMAの含有量をNMで計算し、EMAが9mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。
【0104】
その後、純水に前記製造されたAH−PVA樹脂(平均重合度600,鹸化度95〜97%,EMA含有量9mol%)を4重量%の濃度となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり15重量部添加して水系接着剤を製造した。接着剤の成分、含有量及び物性を下記表1に示す。
【0105】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例15】
【0106】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1700,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z320]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(3,4−epoxycyclohexylmethyl acrylate,EMA)0.001重量部を添加し、EMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたEMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解し、架橋剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)をポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり20重量部添加して水系接着剤を製造した。
【0107】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例16】
【0108】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たりEMA1.0重量部を添加してEMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたEMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0109】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例17】
【0110】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たりEMA10重量部を添加してEMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたEMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0111】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例18】
【0112】
純水に実施例12で製造されたAH−PVA樹脂を4重量%となるように溶解した後、AIBN系開始剤(商品名VA−044,Wako社製)を0.1重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0113】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例19】
【0114】
純水に実施例12で製造されたAH−PVA樹脂を20重量%となるように溶解した後、スルフェート系開始剤であるアンモニウムパーサルフェート(Junsei社製)を0.1重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0115】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例20】
【0116】
純水に実施例11で製造されたAH−PVA樹脂を20重量%の濃度となるように溶解し、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェノール]−2−メチル−1−プロパノン(商品名Darocure 2959,D2959,Ciba−Geigy社製)を0.05重量%添加して水系接着剤を製造した。
【0117】
その後、前記水系接着剤を用いて厚さ75μmのポリビニルアルコール偏光素子の一面に厚さ80μmの鹸化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)保護フィルムを接着し、UV供給源(source)(商品名Novacure,EFOS社製)を用いて15〜20mW/cmの強度で5分間硬化させて偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【実施例21】
【0118】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で下記式のPGMA(phenylglycidyl metacrylate)を前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たり0.1重量部相当量添加してPGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたPGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%の濃度(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0119】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0120】

【実施例22】
【0121】
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で下記式のPECMA((3H−pyrrol−4−yl)−3,4−epoxycyclohexylmethyl acrylate)を前記溶解したポリビニルアルコール系樹脂100重量部当たり0.1重量部相当量添加してPECMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水に前記得られたPECMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を4重量%(ポリビニルアルコール樹脂の濃度約4重量%)となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0122】
前記製造された水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0123】

【0124】
比較例1
水系接着剤として、アセトアセチル基が3mol%導入されたポリビニルアルコール樹脂[ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を用いた。前記アセトアセチル基導入されたZ210ポリビニルアルコール樹脂を4重量%となるように純水に溶解して製造した水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0125】
比較例2
接着剤としてチタンアミン錯体(製品名TYZOR TE,会社名Dupont)を、比較例1のアセトアセチル基が3mol%導入されたZ210ポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり20重量部添加したことを使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0126】
比較例3
接着剤としてジルコニウムアミン化合物(製品名AC−7,会社名Daichi Kigenso Kanaku Kogyo)を、比較例1のアセトアセチル基が3mol%導入されたZ210ポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり20重量部添加したことを使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0127】
比較例4
GMAをポリビニルアルコール系樹脂[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]100重量部当たり12重量部としたことを除いては、実施例5と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0128】
比較例5
EMAをポリビニルアルコール系樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]100重量部当たり11重量 重量部としたことを除いては、実施例15と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0129】
比較例6
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール樹脂にアクリロイルクロライド(acryloyl chloride)を前記ポリビニルアルコール樹脂100重量部当たり30重量部添加し、35〜40℃で攪拌してアクリロイルをポリビニルアルコール樹脂に化学的に結合させた。得られた反応生成物を分離乾燥してアクリロイル基導入されたポリビニルアルコール樹脂を得た。その後、得られたアクリロイル基導入されたポリビニルアルコール樹脂をFT−IRで測定し、アクリロイル基が導入されているか否かを確認した。また、導入されたアクリロイル基の含有量をNMRで計算した。
【0130】
その後、純水に前記得られたアクリロイル基導入されたポリビニルアルコール樹脂(アクリロイル(Acryloyl)基含有量10mol%)を4重量%の濃度となるように溶解して水系接着剤を製造した。
【0131】
前記水系接着剤を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0132】
比較例7
2−ヒドロキシエチルアクリレート:アクリル酸が1:1の重量比を有する配合物100重量部に重合開始剤であるベンゾイルパーオキシド0.1部を添加し、トルエン中で重合してアクリル系共重合溶液を得た。
【0133】
前記共重合体溶液に共重合体溶液の固形分100重量部に対してグリセロールジグリシジルエーテル(glycerol diglycidyl ether)1.0重量部及び架橋剤としてジルコニウムアミン化合物(製品名AC−7,会社名Daichi Kigenso Kanaku Kogyo)2.0重量部を添加し、2時間常温で十分に攪拌しながら共重合体樹脂の固形分含有量が5重量%となるように調整して接着剤を得た。前記固形分含有量はトルエンを添加又は蒸発させて調整する。
【0134】
前記方法で得られた接着剤溶液を用いて実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0135】
本比較例の接着剤を用いた場合、偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性が下記表1に示すように低かった。また、本比較例の接着剤の塗布後に、接着剤の有機溶媒であるトルエンが偏光素子と保護フィルムであるTACを透過できないので、乾燥工程でトルエンが十分に除去されず、よって、正常な偏光板が製造されなかった。
【0136】
比較例8
3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン348重量部とプロピレンオキシド348重量部を混合し、ジエチルエーテル1リットルに溶解して−14℃のアイスバスで冷却した。その後、重合開始剤として60重量%HPF水溶液5.5重量部を前記混合溶液に10分間滴加した。その後、前記混合溶液を常温で一晩反応させ、翌日30重量%のNaOCHメタノール溶液(NaOCH30g/MeOH 70gの割合で溶解した溶液)9重量部を投入して前記重合開始剤を非活性化した。重合開始剤が非活性化されたら濾過して反応生成物を除去し、75℃に加熱して重合された反応生成物中のジエチルエーテルを除去してポリエーテルポリオールを得た。前記ポリエーテルポリオールは重量平均分子量が3500であった。
【0137】
純水に前記反応で得られたポリエーテルポリオール100重量部当たりグリセロールジグリシジルエーテル5.0重量部を添加し、常温で2時間十分に攪拌して樹脂固形分5重量%の接着剤溶液を得た。前記方法で得られた接着剤溶液を用いて実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0138】
比較例9
ポリビニルアルコール[平均重合度600,鹸化度95〜97%,日本合成社製,商品名Z100]と2−ヒドロキシエチルアクリレートを85/15の重量比で共重合した共重合樹脂(鹸化度99.5%,平均重合度1700)5重量部に水95重量部を混合して加熱溶解し、これに架橋剤としてジルコニウムアミン化合物(製品名AC−7,会社名Daichi Kigenso Kanaku Kogyo)3.0重量部を添加し、2時間常温で十分に攪拌して接着剤(樹脂固形分含有量約4.8重量%)を得た。前記方法で得られた接着剤溶液を用いて実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0139】
比較例10
純水にポリビニルアルコール樹脂[平均重合度1100,鹸化度99%,日本合成社製,商品名Z210]を80℃で1時間溶解した。その後、常温で前記溶解したポリビニルアルコール樹脂100重量部当たりGMA(glycidylmethacrylate)15重量部を添加してGMAとポリビニルアルコール樹脂の混合物を準備した。その後、純水にポリビニルアルコール樹脂の含有量が約4重量%となるように溶解し、攪拌して接着剤溶液を得た。
【0140】
前記方法で得られた接着剤溶液を用いて実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。偏光板の接着力、水に対する溶解度、及び耐水性を評価して下記表1に示す。
【0141】
物性評価
上記実施例及び比較例の接着剤及び偏光板の物性を次のような方法で測定した。
【0142】
(1)FT−IR(フーリエ変換赤外線分光計)測定
Varian社(米国)のExcalibur 3100を用いて吸光度を測定し、変性(改質)PVA樹脂の変性の有無を確認した。
【0143】
(2)NMR(核磁気共鳴装置)測定
Varian社(米国)のUnity Inova 500を用いて製造された変性(改質)ポリビニルアルコール樹脂の構造分析及び改質含有量を計算した。
【0144】
(3)接着力
TA(Texture Analyzer,Stable Micro Systems社製,U.K)を用いて偏光板における偏光素子と保護フィルムの接着力を測定した。
【0145】
<評価基準>
◎:5N/cm≦接着力(接着力が5N/cm以上)
○:4N/cm≦接着力<5N/cm(接着力が4N/cm以上かつ5N/cm未満)
△:3N/cm≦接着力<4N/cm(接着力が3N/cm以上かつ4N/cm未満)
×:接着力<3N/cm(接着力が3N/cm未満)
【0146】
(4)水に対する溶解度
上記実施例及び比較例の接着剤溶液組成をそれぞれ常温で1時間攪拌した後、水に対するPVA樹脂の溶解度を肉眼で評価した。溶解度は肉眼で沈殿物生成の有無及び濁度を観察して評価した。沈殿物が生じず、透明なものが、水に対する溶解度が高いものである。
【0147】
<評価基準>
○(良好)−沈殿物なし。透明。
△(やや不良)−沈殿物なし。濁り。
×(不良)−沈殿物あり。濁り。
【0148】
(5)耐水性及び耐湿性
偏光板のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの一面に偏光板アクリレート粘着剤を塗布した。粘着剤が塗布された偏光板を50mm×80mmのサイズに切断した。ここで、偏光フィルムの延伸方向を長軸とし、それに直交する方向を短軸とした。塗布された粘着剤を媒介として偏光板をガラスに積層して試験片を製造し、耐水性を評価した。耐水性は温度60℃及び相対湿度100%(恒温槽を利用)で前記試験片を8時間放置し、剥離の程度(保護フィルムと偏光素子の分離)を測定して評価した。剥離の程度は偏光板の端部から剥離した量を測定し、そのサンプルサイズに対する面積比で確認した。剥離の程度が小さいほど耐水性に優れたものである。実施例及び比較例の偏光板の物性評価の結果を下記表1に示す。
【0149】
<評価基準>
◎(非常に良好)−剥離面積<10%(剥離面積が10%未満)
○(良好)−10%≦剥離面積<50%(剥離面積が10%以上かつ50%未満)
△(やや不良)−50%≦剥離面積<100%(剥離面積が50%以上かつ100%未満)
×(不良)−100%剥離
【0150】
【表1】


【0151】
表1に示した通り、本発明による偏光板用接着剤は、接着力、水に対する溶解度、及び耐水性の面で全て優れた特性を示すことを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル基が導入されてアクリル基の導入時に形成されたヒドロキシル基を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項2】
前記アクリル基は0.1〜50mol%導入されることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項3】
前記変性ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とエポキシ基及びアクリル基を有する化合物との反応で得られることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項4】
前記変性ポリビニルアルコール系樹脂は、下記化学式Aの繰り返し単位と下記化学式B1、B2及びB3の少なくとも1つの繰り返し単位とを含むことを特徴とする請求項1に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【化A】

【化B1】

【化B2】

【化B3】

(前記化学式において、nは490〜1700の整数であり、mは10〜900の整数であり、n+mは500〜1800の整数であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルカンジイル(alkanediyl)、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択されたヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルキル基、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、前記R及びRが置換体で置換された場合、置換体は、C1〜C20アルキル基、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されたハロゲン原子、1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ環基、C6〜C14芳香族基、又はN、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ芳香族基である。)
【請求項5】
前記変性ポリビニルアルコール系樹脂は、下記化学式Cの繰り返し単位をさらに含み、化学式Aの繰り返し単位数nと化学式Cの繰り返し単位数lの合計は490〜1700の整数であり、そのうち化学式Cの繰り返し単位数lは1〜80の整数であり、化学式B1、B2及びB3のうちの1つの繰り返し単位数mは10〜900の整数であり、n、m及びlの合計は500〜1800の整数であることを特徴とする請求項4に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【化C】

(ただし、化学式Cにおいて、lは1〜80の整数であり、Rはアセトアセチル基、カルボン酸基、アクリル基又はウレタン基である。)
【請求項6】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、平均重合度が500〜1800であることを特徴とする請求項3に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項7】
前記エポキシ基及びアクリル基を有する化合物は下記化学式1又は2で表されることを特徴とする請求項3に記載の変性ポリビニルアルコール系樹脂。
【化1】

【化2】

(化学式1又は2において、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルカンジイル(alkanediyl)、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択されたヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族化合物、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルキル基、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、前記R及びRが置換体で置換された場合、置換体は、C1〜C20アルキル基、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されたハロゲン原子、1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ環基、C6〜C14芳香族基、又はN、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ芳香族基である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの変性ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光板用接着剤。
【請求項9】
ポリビニルアルコール系樹脂100重量部と、エポキシ基及びアクリル基を有する化合物0.001〜10重量部とを含む偏光板用接着剤。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、平均重合度が500〜1800であることを特徴とする請求項9に記載の偏光板用接着剤。
【請求項11】
前記エポキシ基及びアクリル基を有する化合物は、下記化学式1又は2で表されることを特徴とする請求項9に記載の偏光板用接着剤。
【化1】

【化2】

(化学式1又は2において、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルカンジイル(alkanediyl)、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択されたヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族化合物、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、Rは、置換又は非置換のC1〜C20アルキル基、置換又は非置換の1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ環基、置換又は非置換のC6〜C14芳香族基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換又は非置換の1〜7員ヘテロ芳香族基であり、前記R及びRが置換体で置換された場合、置換体は、C1〜C20アルキル基、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されたハロゲン原子、1〜7員環基、N、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ環基、C6〜C14芳香族基、又はN、S及びOからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む1〜7員ヘテロ芳香族基である。)
【請求項12】
前記偏光板用接着剤は、AIBN系及びパーサルフェート系水溶性開始剤からなる群の開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の偏光板用接着剤。
【請求項13】
前記開始剤は最大10重量%添加されることを特徴とする請求項12に記載の偏光板用接着剤。
【請求項14】
請求項8又は9の偏光板用接着剤で偏光素子と保護フィルムが貼り合わせられた偏光板。
【請求項15】
前記保護フィルムは、ポリエステル系重合体、スチレン系重合体、セルロース系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体、ポリカーボネート系重合体、アクリル系重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、スルホン系重合体、ポリエーテルエーテルケトン系重合体、ポリフェニレンスルファイド系重合体、ビニルアルコール系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ビニルブチラール系重合体、アリレート系重合体、ポリオキシメチレン系重合体、エポキシ系重合体、及びそれら重合体の混合物からなる群から選択された重合体を含むものであることを特徴とする請求項14に記載の偏光板。
【請求項16】
請求項14の偏光板を含む表示装置。

【公表番号】特表2012−518699(P2012−518699A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551013(P2011−551013)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001091
【国際公開番号】WO2010/095905
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】