説明

変性硫黄含有材料及びその製造方法

【課題】硫黄特有の臭気を抑え、土木用又は建設用の資材原料等として利用可能な変性硫黄含有材料、並びに製造時における硫黄特有の臭気を抑え、更には、得られる変性硫黄含有材料の固化後の硫黄特有の臭気も抑制しうる変性硫黄含有材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の変性硫黄含有材料は、変性硫黄、骨材及び多孔質材料を含み、該多孔質材料が、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上であることを特徴とする。本発明の製造方法は、変性硫黄を得るために、硫黄及び硫黄変性剤を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、変性硫黄と、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上である多孔質材料及び骨材を含む原材料とを、該変性硫黄の溶融温度以上で混合する工程(b)及び、工程(b)で調製した溶融混合物を冷却固化する工程(c)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化水素等の硫黄特有の臭気を抑え、土木用又は建設用の資材原料等として利用可能な変性硫黄含有材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄は、119℃を越えると溶解し、常温では固体であることから、この性質を利用して、土木用、建設用等の資材の1つとしての利用が多数試みられている。
例えば、特許文献1には、硫黄100質量部とジシクロペンダジエン2〜20質量部とを溶融混合し、冷却する硫黄組成物の製造方法、並びに更に骨材を特定条件で混合した硫黄組成物の製造方法が開示されている。特許文献2には、硫黄100質量部とテトラハイドロインデン0.1〜25質量部とを120〜160℃で溶融混合し、120℃以下に冷却する変性硫黄含有結合材の製造方法、並びに更に骨材を特定条件で混合した変性硫黄材料の製造方法が開示されている。特許文献3及び4には、ビニルトルエン、ジペンテン、その他オレフィンオリゴマーを添加し硫黄の性状を改良して、舗装材、接着剤、シール材等に用いる例も提案されている。特許文献5には、エチリデンノルボルネン10〜90重量%及びスチレンモノマーからなる反応剤と硫黄との重合反応生成物からなる硫黄ポリマーセメントが開示されている。
しかしながら、従来、硫黄含有材料の検討において、その硫黄特有の臭気を改善する試みはなされていない。
【0003】
ところで、従来から消臭剤として多くの多孔質材料が提案されており、例えば、特許文献6には、特定の人工ゼオライトを用いた消臭剤が提案されている。
このような多孔質材料による消臭効果は、臭い成分を気体状態で多孔質材料に吸着固定させることにより得られるものであり、該消臭剤は、気体状態の臭い成分を消臭剤に接触させる環境において使用される必要がある。従って、例えば、溶融状態の硫黄材料と混合し、硫黄材料に被覆された状態で固化させた後においてもその消臭効果が得られるとは予測し得ない。
【特許文献1】特開2002−69188号公報
【特許文献2】特開2003−277108号公報
【特許文献3】特公平2−25929号公報
【特許文献4】特公平2−28529号公報
【特許文献5】特開平8−3317号公報
【特許文献6】特開2006−116093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硫黄特有の臭気を抑え、土木用又は建設用の資材原料等として利用可能な変性硫黄含有材料を提供することにある。
本発明の別の課題は、製造時における硫黄特有の臭気を抑え、更には、得られる変性硫黄含有材料の固化後の硫黄特有の臭気も抑制しうる変性硫黄含有材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、変性硫黄、骨材及び多孔質材料を含み、該多孔質材料が、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上であることを特徴とする変性硫黄含有材料が提供される。
また本発明によれば、変性硫黄を得るために、硫黄及び硫黄変性剤を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、変性硫黄と、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上である多孔質材料及び骨材を含む原材料とを、該変性硫黄の溶融温度以上で混合する工程(b)及び、工程(b)で調製した溶融混合物を冷却固化する工程(c)を含む変性硫黄含有材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の変性硫黄含有結合材は、変性硫黄、骨材及び特定の多孔質材料を含有するので、硫黄特有の臭気が抑えられ、土木用又は建設用の資材原料等として利用可能である。
本発明の製造方法は、変性硫黄を調製した後、該変性硫黄と、骨材及び特定の多孔質材料を含む原材料を溶融混合し、冷却固化するので、製造中の硫黄特有の臭気を抑えて製造でき、しかも、得られる変性硫黄含有材料の硫黄特有の臭気も容易に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の変性硫黄含有材料は、変性硫黄、骨材及び特定の多孔質材料を含む。
前記変性硫黄は、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄を硫黄変性剤により変性したものである。
【0008】
硫黄変性剤としては、例えば、炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
変性硫黄は、硫黄と硫黄変性剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄変性剤の使用割合は、硫黄に対して、通常0.1〜20質量%、特に、1.0〜10質量%が硫黄の効率的変性の点で好ましい。
硫黄変性剤の割合が、0.1質量%未満では、充分に硫黄を変性することができず、土木用又は建設用の資材原料等として利用可能な機械的強度等が発揮されない恐れがある。
【0009】
前記骨材としては、通常、土木・建設用に使用される骨材を用いることができる。しかし、本発明の変性硫黄含有材料は、更に粗骨材等を添加混合して所望の土木・建設用資材とすることも可能であるので、本発明の変性硫黄含有材料に含まれる骨材は、細骨材が好ましく挙げられる。
細骨材としては、例えば、粒径5mm以下、好ましくは粒径1mm以下の無機系細骨材を用いることができ、例えば、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末、電気集塵灰、フェロニッケルスラグ粉末等が有効に挙げられる。
細骨材の配合割合は、変性硫黄100質量部に対して、通常、25〜300質量部、特に30〜250質量部が好ましい。細骨材の配合割合が25質量部未満では、所望の機械的強度等が発揮されない恐れがある。
【0010】
前記特定の多孔質材料は、特定の耐熱性を有し、且つ特定の平均細孔直径を有する。
該耐熱性の温度は、150℃以上、好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、その上限値は特に限定されないが、例えば2000℃以下である。耐熱温度が上記下限値に満たない場合は、製造時における耐熱性の観点から好ましくなく、また耐熱温度が上記上限値を超える場合は、最終的に焼却処分等する際に難燃性となり好ましくない。
耐熱性の温度は、例えば、多孔質材料を空気中、所定の温度で15分保持した際に、その平均細孔直径が加温前後で5%変動する最低温度により測定した値である。
【0011】
前記平均細孔直径は、0.4nm以上、好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1.0nm以上であり、また上限値は通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは100nm以下である。平均細孔直径が上記下限値に満たない場合は、製造時及び製造後の臭気抑制効果の観点から好ましくなく、平均細孔直径が上記上限値を超える場合には、得られる変性硫黄含有材料の破壊強度が低下する恐れがある。
平均細孔直径は、例えば、細孔の大きさに対応して、ガス吸着法又は水銀圧入法により測定した値である。
【0012】
前記多孔質材料は、上記耐熱性及び平均細孔直径の条件を充足するものであれば良いが、空隙率が、通常10〜80%、好ましくは20〜70%であることが、所望の臭気抑制効果及び得られる変性硫黄含有材料の強度の点から望ましい。
該空隙率は、例えば、JIS Z 8807に従い、真比重および見かけ比重を測定し、計算にて求めるか、または水銀圧入法により測定した値である。
【0013】
前記多孔質材料としては、例えば、木炭、竹炭、アロフェン、ゼオライト、セピオライト、フェライト、珪藻土、シリカゲル、ガラスバルーン及び樹脂ビーズからなる群より選択される少なくとも1種を好ましく挙げることができ、特に、臭気抑制効果に優れる人工ゼオライトの使用が好ましい。
多孔質材料の形態は特に限定されず、球形、楕円球形、不定形のいずれでも良いが、その大きさは、通常、長径が0.1〜30mm、好ましくは0.5〜20mmである。該長径が上記範囲外では、所望の臭気抑制効果が低下する恐れがある。
【0014】
本発明の変性硫黄含有材料において、前記多孔質材料の含有割合は、多いほど所望の臭気抑制効果が高くなるが、土木・建設用に使用するにあたっては、製造時における各成分の混合の均一性確保及び非着火性が保たれる範囲の含有割合とすることが好ましい。具体的には、変性硫黄及び骨材の合計100質量部に対して、多孔質材料が通常1質量%以上、好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上、また30質量部以下、好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。多孔質材料の含有割合が前記下限値に満たない場合は、製造時及び製造後の臭気低減効果の観点から好ましくなく、一方、前記上限値を超える場合は、製造時における各成分の混合均一性が確保できず、得られる変性硫黄含有材料の着火性に問題が生じる恐れがある。
【0015】
本発明の変性硫黄含有材料は、所望の効果を損なわない範囲で、上記変性硫黄、骨材及び多孔質材料の他に、通常、変性硫黄を利用した土木・建設用の製品に使用されている各種充填材や添加剤等を適宜配合することができる。
【0016】
本発明の変性硫黄含有材料を製造するには、例えば、変性硫黄を得るために、硫黄及び硫黄変性剤を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、変性硫黄と、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上である多孔質材料及び骨材を含む原材料とを、該変性硫黄の溶融温度以上で混合する工程(b)及び、工程(b)で調製した溶融混合物を冷却固化する工程(c)を含む本発明の製造方法により得ることができる。
本発明の製造方法に用いる硫黄、硫黄変性剤、骨材及び多孔質材料は、上述のしたものをそれぞれ好ましく挙げることができる。
【0017】
工程(a)において、溶融混合は、上述の硫黄及び硫黄変性剤を120〜160℃、好ましくは130〜155℃で溶融混合する。溶融混合温度が120℃未満では、硫黄を変性させることが困難であり、160℃を超えると変性反応の制御が困難である。
工程(a)において、工程(b)で混合する多孔質材料を同時に混合すると、多孔質材料と硫黄との凝集が生じ、硫黄と硫黄変性剤との反応が均一に進行せず、所望の変性硫黄を得ることができない。
工程(a)において、得られる変性硫黄は、140℃における粘度が通常0.03〜1.5Pa・s、特に0.05〜1.0Pa・sの範囲となる程度に変性されていることが好ましい。
【0018】
工程(b)において混合は、変性硫黄の溶融温度以上、通常、130℃以上、好ましくは130℃〜多孔質材料の耐熱温度未満で行うことができる。混合は、変性硫黄の140℃における粘度が通常0.03〜1.5Pa・sの範囲内で各原材料を均一に混合することが好ましい。
工程(b)においては、通常、硫黄特有の悪臭が発生するが、多孔質材料の存在により、該臭気を低減することができる。
【0019】
工程(c)では、工程(b)で得られた混合物を、所望の型枠等に導入し、通常120℃以下に冷却固化することにより目的の変性硫黄含有材料を得ることができる
工程(c)により得られる変性硫黄含有材料は、多孔質材料が、変性硫黄により被覆されているが、硫黄特有の臭気は抑制され、例えば、固化した変性硫黄含有材料に火炎を接触させた場合にも、多孔質材料を含まない変性硫黄含有材料に比べて臭気が低減される。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
比較例1
攪拌混合槽中に固体硫黄970gを入れ、140℃で溶融した後、エチリデンノルボルネン(ENB)30gをゆっくりと添加した。反応が開始され、約5℃の温度上昇が見られたが、その後温度は下降し、140℃で反応を続行した。次第に粘度が上昇し、3時間後、粘度が0.5Pa・sに達したところで直ちに加熱を停止し、適当な型又は容器に流し込んで室温で冷却し、変性硫黄(A)を得た。
次いで、140℃に再加熱して溶融した変性硫黄(A)66g、同じく140℃で予熱した石炭灰33gを、140℃に保った混錬機内にほぼ同時に投入した。続いて、10分間混練したところ、混練中に硫黄特有の悪臭が強く感じられた。次いで、混練物を冷却固化して変性硫黄含有材料を調製した。
得られた変性硫黄含有材料に、簡易着火器具の火炎を接触させた際の臭気を確認したところ、製造時と同様に硫黄特有の悪臭が強く感じられた。
【0021】
実施例1
140℃に再加熱して溶融した比較例1で調製した変性硫黄(A)66g、同じく140℃で予熱した石炭灰33g及び人工ゼオライトとしての4A 1/16モレキュラーシーブ(平均細孔径0.4nm以上、耐熱温度200℃以上)1.4gを、140℃に保った混錬機内にほぼ同時に投入した。続いて、10分間混練したところ、混練中の臭気は、比較例1との対比において著しく抑制されていた。次いで、混練物を冷却固化して変性硫黄含有材料を調製した。
得られた変性硫黄含有材料に、比較例1と同様に簡易着火器具の火炎を接触させた際の臭気を確認したところ、比較例1との対比において著しく抑制されていた。
【0022】
実施例2
人工ゼオライトを13X 1/16モレキュラーシーブ(平均細孔径1nm、耐熱温度200℃以上)1.4gに変更した以外は、実施例1と同様に変性硫黄含有材料を調製した。
調製時の硫黄特有の臭気は、実施例1と同様に、比較例1との対比において著しく抑制されていた。また、得られた変性硫黄含有材料に、比較例1と同様に簡易着火器具の火炎を接触させた際の臭気を確認したところ、実施例1と同様に比較例1との対比において著しく抑制されていた。
【0023】
実施例3
人工ゼオライトを竹炭(平均細孔径25nm以上、耐熱温度160℃以上)1.4gに変更した以外は、実施例1と同様に変性硫黄含有材料を調製した。
調製時の硫黄特有の臭気は、比較例1との対比において抑制されていた。また、得られた変性硫黄含有材料に、比較例1と同様に簡易着火器具の火炎を接触させた際の臭気を確認したところ、比較例1との対比において抑制されていた。
【0024】
比較例2
人工ゼオライトを3A 1/16モレキュラーシーブ(平均細孔径0.4nm未満、耐熱温度200℃以上)1.4gに変更した以外は、実施例1と同様に変性硫黄含有材料を調製した。
調製時の硫黄特有の臭気は、比較例1と同様に悪臭が強く感じられた。また、得られた変性硫黄含有材料に、比較例1と同様に簡易着火器具の火炎を接触させた際の臭気を確認したところ、比較例1と同様に悪臭が強く感じられた。
【0025】
比較例3
攪拌混合槽中に固体硫黄970gを入れ、140℃で溶融した後、ENB30g及び、140℃で予熱した人工ゼオライトとしての4A 1/16モレキュラーシーブ(平均細孔径0.4nm以上、耐熱温度200℃以上)1.4gをゆっくりと添加した。添加と同時に、硫黄と人工ゼオライトとの凝固が生じ、ENBと硫黄との変性反応が均一に進行せず、所望の変性硫黄を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性硫黄、骨材及び多孔質材料を含み、該多孔質材料が、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上であることを特徴とする変性硫黄含有材料。
【請求項2】
多孔質材料が、木炭、竹炭、アロフェン、ゼオライト、セピオライト、フェライト、珪藻土、シリカゲル、ガラスバルーン及び樹脂ビーズからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の変性硫黄含有材料。
【請求項3】
変性硫黄を得るために、硫黄及び硫黄変性剤を120〜160℃で溶融混合する工程(a)、
変性硫黄と、150℃以上の耐熱性を有し、且つ平均細孔直径が0.4nm以上である多孔質材料及び骨材を含む原材料とを、該変性硫黄の溶融温度以上で混合する工程(b)及び、
工程(b)で調製した溶融混合物を冷却固化する工程(c)を含む変性硫黄含有材料の製造方法。

【公開番号】特開2008−189495(P2008−189495A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24559(P2007−24559)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】