説明

変性脊椎疾患の改良型治療方法

本発明は椎間板安定化装置を対象に移植することと、椎間板の治癒を促進する少なくとも1種の治療剤を対象に投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法に関する。本発明は椎間板安定化装置により椎間板の荷重を軽減することと、炎症プロセスを抑制することを含む損傷又は変性した椎間板の治癒を促進する方法も含む。椎間板外安定化装置との併用物、椎間板内安定化装置、薬剤キャリヤー、及びその組合わせとしてのハイドロゲルにも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
椎間板の主機能は損傷を吸収し、重力により脊椎に加えられる圧縮力を分散することである。椎間板はこの垂直圧を水平強度に変換する。繊維輪の天然弾性により椎間板の直径を増すことができる。このように水平面の運動量が少ないため、脊椎の安定性を助長する。
【0002】
脊椎の変性変化は正常構造及び/又は機能の低下の原因となることが多い。椎間板は消耗及び摩耗老化、更には乱用(例えば喫煙)に関連する変性変化を受け易い構造の1つである。この変性により椎間板の厚みと圧縮性が低下し、痛覚が非常に過敏になる。
【0003】
変性が進行ことに達すると、生体椎間板を除去して置換することが必要になる場合が多い。椎間板全体を除去する場合には、脊柱が不安定になるので固定が必要になる。変性した椎間板の従来の治療法である脊椎固定術を医学的に設計されたハードウェア(例えばスクリュー、ケージ)を使用する脊椎機器と併用する。固定術は患者の骨盤に由来する骨グラフトを配置し、金属ロッド又はケージを挿入して脊椎を固定するものである。脊椎固定術は運動分節の運動を排除することにより痛みを緩和できるが、患者の運動機能範囲が低下することが多く、隣接する椎間板と椎間関節にかかるストレスが増加する可能性がある。脊椎固定術は特に数個の椎体に適用する場合には、当然のことながら患者の運動能を著しく制限するという欠点がある。
【0004】
別法として、理想的には椎体間の全相対運動又は少なくともその大部分を患者に維持する人工椎間板を椎体間に取り付けて椎間板を完全に置換することもできる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は椎間板を安定化することと、炎症プロセスを抑制することにより治癒環境を促進することを含む変性脊椎疾患の改良型治療方法を提供する。薬剤(例えば抗炎症剤、増殖因子、抗血管新生剤、又は抗酵素剤)の投与と併用して脊椎安定化装置(例えば椎間板外又は椎間板内装置)を移植することにより変性脊椎疾患を治療する。1実施形態では、椎間板内装置はハイドロゲル材料等の生体適合性ポリマーを含む。
【0006】
本発明は椎間板変性疾患の対象に椎間板安定化装置を移植することと、椎間板変性疾患の治療が行われるように、椎間板の治癒を促進する少なくとも1種の治療剤を対象に投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法として、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質:及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される方法を含む。
【0007】
本発明は更に、椎間板安定化装置を装着した対象に椎間板の治癒を促進する治療剤を投与することを含む変性脊椎疾患の治療方法として、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質:及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される方法を含む。
【0008】
本発明は、対象において耐荷重性椎間板安定化装置により椎間板の荷重を軽減することと;治療剤を対象に投与することを含む、椎間板変性疾患の対象の損傷又は変性椎間板の椎間板品質の改善方法として、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質:及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される方法を提供する。
【0009】
本発明は更に、対象において耐荷重性椎間板安定化装置により椎間板の荷重を軽減することと;治療剤を対象に投与することを含む、対象の損傷又は変性椎間板の治療用治癒環境の促進方法として、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質:及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される方法を提供する。
【0010】
本発明は更に、変性脊椎疾患の対象の損傷又は変性椎間板に椎間板内安定化装置を移植することと、損傷又は変性椎間板に関連する炎症プロセスを抑制する治療剤を投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法を含む。
【0011】
本発明の1実施形態では、椎間板安定化装置は耐荷重性である。別の実施形態では、椎間板安定化装置は非耐荷重性である。
【0012】
本発明の1実施形態では、椎間板安定化装置は椎間装置(Wallisシステム)等の椎間板外安定化装置である。椎間板外装置は棘突起間型装置又は椎弓根スクリュー型装置とすることができる。1実施形態では、棘突起間型装置は棘突起間スペーサー、棘突起間減圧(IPD)装置、及びU字形椎間装置から構成される群から選択される。
【0013】
1実施形態では、棘突起間型装置は、2本の棘突起間に挿入され、2つの側壁と、棘突起が嵌合する2本の対向する溝をもつ弾性変形可能なウェッジを含む。1実施形態では、椎間インプラントは更に固定用連結材を含む。別の実施形態では、椎間インプラントは更に、棘突起を溝に保持するための固定用連結材と;第1の連結手段をもち、連結材が第1の方向に並進移動するときにこれを通ってスライドすることができ、連結材が第1の方向と逆の第2の方向に並進移動しないように固定するように構成された取外し可能なセルフロッキング固定部材を含み;従って、側壁の少なくとも一方では、連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材は第2の方向に並進移動しないように固定され;更に、ウェッジの側壁の少なくとも一方には、第1の連結手段と共働して取外し可能なセルフロッキング固定部材を側壁に連結するための第2の連結手段が配置されており、連結材の自由端が移動して連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材はブロックに対して第2の方向に並進移動しないように固定される。
【0014】
本発明の1実施形態では、椎間板外装置は生体適合性ハイドロゲルと結合している。ハイドロゲルは治療剤を含むことができる。
【0015】
本発明の1実施形態では、椎間板安定化装置は椎間板内安定化装置である。1実施形態では、椎間板内インプラントはハイドロゲルを含む。別の実施形態では、椎間板内インプラントは椎間板の既存髄核又はその一部を支持又は置換する人工髄核である。付加実施形態では、人工髄核は耐荷重性ポリマーを含む。更に別の実施形態では、人工髄核は非耐荷重性ポリマーを含む。別の実施形態では、人工髄核は生体適合性ハイドロゲルを含む。更に別の実施形態では、人工髄核はI型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリルから構成される群から選択される生体材料を含む。
【0016】
1実施形態では、炎症促進性サイトカインを阻害する物質はTNFα阻害剤又は抗IL1阻害剤を含む。抗TNFα阻害剤は抗体又はその抗原結合部分とすることができ、限定されないが、ヒト抗体が挙げられる。抗IL1剤は抗体又はその抗原結合部分とすることができる。1実施形態では、抗TNFα抗体は単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。1実施形態では、ヒト抗体又はその抗原結合部分はいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。別の実施形態では、抗TNFα抗体は、
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもち;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつという特性をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。更に別の実施形態では、抗TNFα抗体は配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。1実施形態では、抗TNFα抗体はHumira(D2E7;アダリムマブ)、ゴリムマブ(golimumab)、又はRemicade(インフリキシマブ)である。別の実施形態では、抗TNFα阻害剤は融合蛋白である。1実施形態では、融合蛋白はEnbrel(エタネルセプト)である。
【0017】
1実施形態では、増殖因子は限定されないが、BMP2又はBMP7等のTGFβスーパーファミリーのメンバーである。
【0018】
1実施形態では、血管新生を抑制する物質はVEGFを阻害する。
【0019】
1実施形態では、抗酵素剤は抗アグリカナーゼ剤であり、限定されないが、ADAMTS5に対する抗アグリカナーゼ剤が挙げられる。更に別の実施形態では、抗酵素剤は抗メタロプロテイナーゼ剤である。
【0020】
本発明の1実施形態では、治療剤は直接注射、薬剤送達インプラントの移植、及び遺伝子治療から構成される群から選択される送達手段を使用して送達される。
【0021】
別の実施形態では、本発明は自家細胞又は椎間板組織を復元もしくは改善する再生増殖因子を投与することを更に含む。1実施形態では、投与することができる細胞は軟骨細胞、間葉幹細胞、及び脂肪幹細胞から構成される群から選択される。
【0022】
1実施形態では、軟骨細胞は変性椎間板、無傷の非変性椎間板、及び非椎間板軟骨原料から構成される群から選択される少なくとも1種の原料から得られる。
【0023】
1実施形態では、本発明の方法は椎間板変性疾患を治療するために使用される。
【0024】
本発明は更に、生体適合性ハイドロゲルと椎間板の治癒を促進する治療剤を含む、損傷又は変性椎間板の治癒を促進するための椎間板内インプラントとして、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される椎間板内インプラントを提供する。本発明の1実施形態では、ハイドロゲルは耐荷重性である。別の実施形態では、ハイドロゲルは非耐荷重性ポリマーである。1実施形態では、椎間板内装置は人工髄核を含む。更に別の実施形態では、椎間板内装置は椎間板に注入するように設計されている。
【0025】
1実施形態では、炎症促進性サイトカインを阻害する物質はTNFα阻害剤又は抗IL1阻害剤を含む。別の実施形態では、抗TNFα阻害剤は抗体又はその抗原結合部分である。更に別の実施形態では、抗TNFα抗体はいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。別の実施形態では、抗TNFα抗体は、
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもち;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつという特性をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。更に別の実施形態では、抗TNFα抗体は配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。別の実施形態では、抗TNFα抗体はHumira(D2E7;アダリムマブ)又はRemicade(インフリキシマブ)である。本発明の1実施形態では、抗TNFα阻害剤はEnbrel(エタネルセプト)である。
【0026】
1実施形態では、本発明は抗IL1剤が抗体又はその抗原結合部分である装置インプラントを提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明の椎間板内装置は限定されないが、BMP2又はBMP7等のTGFβスーパーファミリーのメンバーである増殖因子を含む。
【0028】
更に別の実施形態では、本発明の椎間板内インプラントはVEGFを阻害し、血管新生を抑制する物質を含む。
【0029】
本発明の別の実施形態では、抗酵素剤は抗アグリカナーゼ剤又は抗メタロプロテイナーゼ剤である。1実施形態では、抗アグリカナーゼ剤はADAMTS5に対する。
【0030】
1実施形態では、治療剤は直接注射、薬剤送達インプラントの移植、及び遺伝子治療から構成される群から選択される送達手段を使用して送達される。
【0031】
(発明の詳細な説明)
本発明は変性脊椎疾患の対象において椎間板品質を改善し、椎間板治癒を促進する併用療法を提供する。本発明の併用療法は脊柱の安定化を増進する脊椎インプラント(即ち椎間板安定化インプラント)を移植することと、抗炎症剤、増殖因子、抗血管新生剤、抗酵素剤、又はその組合わせ等の治療剤を投与することを含む。更に、本発明は変性脊椎疾患の治療のために治療剤を埋め込んだ椎間板内インプラント(例えばハイドロゲル)を提供する。
【0032】
I.定義
本発明を理解し易くするために、まず所定用語を定義する。これらの用語については下記セクションI−VIIでも更に詳細に記載する。
【0033】
本明細書で使用する「椎間板」なる用語は脊柱の椎体間に存在する板を意味する。
【0034】
「変性椎間板」とは対象の正常な健常椎間板に対して柔軟性、弾性、及び/又は衝撃吸収性が低下している椎間板を意味する。椎間板変性は連続プロセスであるので、例えば繊維輪に小亀裂のある無傷の椎間板(軽度)から椎間板破裂(重度)まで広範な変性状態を含む。
【0035】
「耐荷重性」なる用語は構造荷重を支持することが可能な装置又はインプラントを意味する。本発明の1実施形態では、椎間板安定化インプラントは耐荷重性であり、脊椎の衝撃吸収システムとして通常機能する椎間板の荷重の全部ではないとしても、一部を除去する。
【0036】
本明細書で同義に使用する「椎間板安定化インプラント」又は「椎間板安定化装置」とは脊椎の運動、伸展、及び/又は屈曲の安定化を助ける椎間板外又は椎間板内動的安定化システムを意味する。好ましい1実施形態では、椎間板安定化インプラントは非癒合法により機能し、椎間板安定化インプラントは椎間板癒合術を使用しない。
【0037】
本明細書で同義に使用する「椎間板外安定化インプラント」又は「椎間板外安定化装置」とは椎間板の外側で近接する位置に配置されたインプラントを意味する。椎間板外安定化装置は変性椎間板を含む脊椎領域の補助支持装置として機能する。1実施形態では、椎間板を無傷のままで棘突起に椎間板外安定化装置(即ち椎弓根スクリュー型装置)を装着し、スクリューを連結するためにスペーサー(例えばロッド)を使用して椎弓根間の2個以上の連続脊椎分節にスクリューを配置する。
【0038】
別の実施形態では、損傷椎間板の外側の棘突起間に椎間板外安定化装置を配置する(即ち棘突起間型装置)。棘突起間型装置の1例は棘突起間スペーサーであり、限定されないが、棘突起間に挿入され、2つの連続椎体の後方部に向かって伸長し、2つの椎体の各々に向かう運動を制限するウェッジが挙げられる。1実施形態では、本発明の方法で使用される棘突起間スペーサーは各々参照により本明細書に組込む米国出願第10/332798号及び10/471213号、米国特許第6,761,720号、並びにFR0300555、FR0405611、及びWO04/073532に記載されているようなWallisインプラントシステム(Spine Next;Abbott Spine)である。
【0039】
「椎間板内安定化インプラント」又は「椎間板内安定化装置」とは椎間板スペース内又は椎間板上に配置するか、あるいは椎間板又はその一部の置換物として配置することができる任意装置又はインプラントを意味する。椎間板内インプラントは移植後に椎間板スペース内で寸法又は形状を変えることができる。本発明の1実施形態では、椎間板内インプラントはハイドロゲルを含む。
【0040】
「ハイドロゲル」なる用語は文献に記載されているか、及び/又はその中に水が通常は大量に存在する親水性ポリマーを含むゲルを意味する。1実施形態では、ハイドロゲルは非水溶性で含水性即ち親水性のポリマー又はモノマー材料を含む。ハイドロゲル材料は水を吸収することができ、生体椎間板の髄核に類似する特性をもつので、変性椎間板の治療に有益である。本発明の1実施形態では、椎間板変性疾患を治療するための椎間板内装置としてハイドロゲルを使用する。別の実施形態では、椎間板外装置とハイドロゲルを併用する。本発明は更に治療剤のキャリヤーとして機能するハイドロゲルを使用する組成物及び方法も含む。ハイドロゲル材料とその使用については下記セクションIに更に詳細に記載する。
【0041】
本明細書で使用する「抗体」なる用語はジスルフィド結合により相互に結合した2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖との4本のポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子を意味する。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略称する)と重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3ドメインから構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略称する)と軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1個のドメインCLから構成される。VH及びVL領域は更に相補性決定領域(CDR)と呼ぶ超可変領域とその間に配置されたフレームワーク領域(FR)と呼ぶ保存度の高い領域に細分される。各VH及びVLはアミノ末端からカルボキシ末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置された3個のCDRと4個のFRから構成される。
【0042】
本明細書で使用する抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)なる用語は抗原(例えばhTNFα)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1個以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントにより実施できることが示されている。抗体の「抗原結合部分」なる用語に含まれる結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される1価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド橋により結合した2個のFabフラグメントからなる2価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)VHドメインとCH1ドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)抗体のシングルアームのVLドメインとVHドメインから構成されるFvフラグメント;(v)VHドメインから構成されるdAbフラグメント(Wardら,(1989)Nature 341:544−546);並びに(vi)単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更に、Fvフラグメントの2個のドメインVL及びVHは別個の遺伝子によりコードされるが、VL領域とVH領域が対合して1価分子を形成する単一蛋白(1本鎖Fv(scFv)と言う;例えばBirdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)とすることが可能な合成リンカーにより組換え法を使用して結合することができる。
【0043】
更に、抗体又はその抗原結合部分は抗体又は抗体部分と1種以上の他の蛋白又はペプチドの共有又は非共有的結合により形成される大きな免疫接着分子の一部でもよい。このような免疫接着分子の例としてはストレプトアビジンコア領域の使用による四量体scFv分子の作製(Kipriyanov,S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93−101)や、システイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用による2価ビオチン化scFv分子の作製(Kipriyanov,S.M.ら(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が挙げられる。Fab及びF(ab’)フラグメント等の抗体部分は夫々全抗体のパパイン又はペプシン消化等の従来技術により全抗体から作製することができる。更に、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は本明細書に記載するように、標準組換えDNA技術を使用して取得することができる。
【0044】
「キメラ抗体」とは重鎖及び軽鎖の各アミノ酸配列の一部が特定種に由来するか又は特定分類に属する抗体の対応する配列と相同であり、重鎖及び軽鎖の残りのセグメントが別の種に由来する対応する配列と相同である抗体を意味する。1実施形態では、本発明は軽鎖と重鎖の両者の可変領域が1つの哺乳動物種に由来する抗体の可変領域と相同であり、定常部分が別の種に由来する抗体の配列に相同であるキメラ抗体又は抗原結合フラグメントに関する。本発明の好ましい1実施形態では、マウス抗体に由来するCDRをヒト抗体のフレームワーク領域にグラフトすることによりキメラ抗体を作製する。
【0045】
「ヒト化抗体」とは実質的にヒト抗体鎖(アクセプター免疫グロブリン又は抗体と言う)に由来する可変領域フレームワーク残渣を含む少なくとも1本の鎖と、実質的に非ヒト抗体(例えばマウス)に由来する少なくとも1個の相補性軽度領域(CDR)を含む抗体を意味する。CDRのグラフトに加え、ヒト化抗体は一般に親和性及び/又は免疫原性を改善するために更に改変される。
【0046】
「多価抗体」なる用語は2個以上の抗原認識部位を含む抗体を意味する。例えば、「2価抗体」は2個の抗原認識部位をもち、「4価抗体」は4個の抗原認識部位をもつ。「モノ特異的」、「ビ特異的」、「トリ特異的」、「テトラ特異的」等の用語は1価抗体に存在する(抗原認識部位数ではなく)異なる抗原認識部位特異性の数を意味する。例えば、「モノ特異的」抗体の抗原認識部位は全て同一エピトープに結合する。「ビ特異的」又は「二重特異的」抗体は第1のエピトープと結合する少なくとも1個の抗原認識部位と、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープと結合する少なくとも1個の抗原認識部位をもつ。「多価モノ特異的」抗体は全て同一エピトープと結合する複数の抗原認識部位をもつ。「多価ビ特異的」抗体は複数の抗原認識部位をもち、その所定数が第1のエピトープと結合し、所定数が第1のエピトープとは異なる第2のエピトープと結合する。
【0047】
本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域をもつ抗体を意味する。本発明のヒト抗体はヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えばランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によりin vitro又は体細胞突然変異によりin vivoで導入される突然変異)を例えばCDR、特にCDR3に含んでいてもよい。他方、本明細書で使用する「ヒト抗体」なる用語は別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を意味するものではない。
【0048】
このようなキメラ、ヒト化、ヒト、及び二重特異的抗体は例えばPCT国際出願第PCT/US86/02269号;ヨーロッパ特許出願第184,187号;ヨーロッパ特許出願第171,496号;ヨーロッパ特許出願第173,494号;PCT国際公開第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号;ヨーロッパ特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;並びにBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060,Queenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989),US 5,530,101,US 5,585,089,US 5,693,761,US 5,693,762,Selickら,WO90/07861,及びWinter,US 5,225,539に記載されている方法を使用して当分野で公知の組換えDNA技術により作製することができる。
【0049】
本明細書で使用する「単離抗体」とは異なる抗原特異性をもつ他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えばhTNFαと特異的に結合する単離抗体はhTNFα以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、抗原(例えばhTNFα)と特異的に結合する単離抗体は他の種に由来する他の抗原(例えばTNFα分子)と交差反応性をもつ場合がある。更に、単離抗体は他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0050】
本明細書で使用する「中和抗体」とは炎症性サイトカイン(例えばhTNFα)との結合により炎症性サイトカインの生体活性を阻害する抗体を意味する。炎症性サイトカインの生体活性のこの阻害は炎症性サイトカインに関連する生体活性の1種以上の指標を測定することにより評価することができ、このような指標としては、例えば、hTNFαにより誘導される細胞毒性(in vitro又はin vivo)、hTNFαにより誘導される細胞活性化及びhTNFα受容体とhTNFαの結合が挙げられる。炎症性サイトカインのこれらの指標(例えばhTNFα生体活性)は当分野で公知の数種の標準in vitro又はin vivoアッセイの1種以上により評価することができる。抗体がhTNFα活性を中和する能力はhTNFαにより誘導されるL929細胞の細胞毒性の阻害により評価することが好ましい。hTNFα活性の付加又は代替パラメーターとしては、hTNFαにより誘導される細胞活性化の指標として、抗体がHUVECでhTNFαにより誘導されるELAM−Iの発現を抑制する能力を評価することもできる。
【0051】
本明細書で使用する「表面プラズモン共鳴」なる用語は例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden及びPiscataway,NJ)を使用してバイオセンサーマトリックス内の蛋白濃度の変化の検出によりリアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を意味する。更に詳細については、Joenssonら(1993)Ann.Biol.Clin.51,:19;Joenssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnssonら(1995)J.Mol.Recognit.8:125;及びJohnnsonら(1991)Anal.Biochem.198:268参照。
【0052】
本明細書で使用する「Koff」なる用語は抗体/抗原複合体からの抗体の解離の解離速度定数を意味する。
【0053】
本明細書で使用する「K」なる用語は特定抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する。
【0054】
II.椎間板安定化装置
本発明は椎間板疾患をもつ対象に椎間板安定化装置を移植することと、椎間板の治癒を促進する少なくとも1種の治療剤を投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法を提供する。本発明は更に椎間板変性疾患の対象の損傷又は変性椎間板の椎間板品質の改善方法として、対象に移植した耐荷重性椎間板安定化インプラントにより椎間板の荷重を軽減することと;治療剤を対象に投与することを含む方法を提供する。本発明は更に、対象の損傷又は変性椎間板の治療用治癒環境の促進方法として、対象に移植した耐荷重性椎間板安定化インプラントにより椎間板の荷重を軽減することと;治療剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0055】
本発明の方法及び組成物は椎間板を癒合せずに損傷又は変性椎間板の治癒を促進する安定な物理的及び生体環境を促進することにより、椎間板傷害の標準治療技術を改善する。本発明の方法及び組成物は損傷又は変性椎間板に発生して更に損傷の原因となる炎症プロセスを抑制しようとするものである。本発明の方法及び組成物は脊柱の安定化を増進する椎間板安定化装置の移植と治療剤(例えば抗炎症剤)の投与を併用することにより、椎間板の生体環境と物理的環境の両者を安定化し、椎間板の治癒を促進する。従って、本発明は変性脊椎疾患の対象において椎間板品質を改善し、椎間板治癒を促進するための併用療法を提供する。
【0056】
本発明の1実施形態では、椎間板安定化装置は耐荷重性である。椎間関節は粘弾性挙動を示す。椎間板に正常に荷重が加えられている間は、椎間板は即時に歪曲又は変形する(「瞬間変形」と言うことが多い)。従って、損傷又は変性した椎間板は椎間板にかかる荷重に対応することができない。本発明は損傷又は変性した椎間板にかかる荷重を軽減すると共に炎症を緩和することにより、対象の変性脊椎疾患を治療する改良方法を提供する。椎間板にかかる力の軽減と炎症の緩和を併用することにより、椎間板の治癒の促進を助長する。本発明の方法及び組成物は椎間板を治癒させることができ、本発明は各々運動を制限する可能性がある椎間板固定術又は完全置換術を使用しないため、従来の方法及び組成物を改善する。本発明の方法及び組成物は椎間板安定化装置(即ち耐荷重性椎間板内又は椎間板外装置)で荷重を緩和することにより損傷又は変性した椎間板にかかる荷重を軽減する手段を提供する。
【0057】
椎間板安定化装置の例としては変性した椎間板の外側に配置される椎間板外装置と、損傷した椎間板の内側で機能するか又はこれに置換する椎間板内装置が挙げられる。
【0058】
A.椎間板外安定化装置
本発明の1実施形態では、椎間板外安定化装置を対象に移植し、変性した椎間板を支持することにより椎間板変性疾患を治療する。椎間板外安定化装置の例としては限定されないが、椎弓根スクリュー型装置と棘突起間装置(又は椎間インプラント)が挙げられる。
【0059】
椎間板外安定化装置は任意型の生体適合性材料から作製することができ、ポリエーテルエーテルケトンやプラスチックが挙げられる。椎間板外安定化装置をハイドロゲルに結合してもよく、ハイドロゲルには、炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子;又はその組合わせ等の少なくとも1種の治療剤を加えてもよいし、加えなくてもよい。
【0060】
1.棘突起間型装置
1実施形態では、椎間板外安定化装置は椎間板を支持し、椎間板を治癒させるために椎間板の外側の脊椎突起間に配置される棘突起間型装置(椎間インプラントとも言う)である。棘突起間型装置は椎間板に欠陥があるときに椎間板を補うことができ、特に脊椎の伸長時に2つの椎体の後方部分が相互に向かい合う方向に移動可能な程度を制限する。棘突起間型装置は棘突起間に移植され、棘突起を引き離し、椎間板変性により正常時に許容されるよりも相互に接近しないようにする。従って、棘突起間型装置は脊椎の伸長を減らし、屈曲と回転を可能にする。
【0061】
棘突起間型装置は脊椎の運動に関係なく所定位置に維持するために十分硬質となるように椎体に固定することが有益である。更に、棘突起間型装置は脊柱が過度に剛性にならないように同一椎体に対して十分自由でなければならない。棘突起間型装置の例としては限定されないが、棘突起間スペーサーと棘突起間減圧装置が挙げられる。
【0062】
a.棘突起間スペーサー
椎間板変性疾患により椎体は恐らく相互に接触する程度まで相互に向かい合う方向に移動するが、1実施形態では、棘突起間型装置はこのような椎間板変性疾患を治療するように、椎体の相互に向かい合う方向への移動を阻止するために使用される棘突起間スペーサー(ウェッジ又はブロックとも言う)である。椎体は相互に接触するに十分に接近すると、椎体間に横方向に延びる神経根を圧迫し、疾患対象に痛みを与える可能性がある。棘突起間スペーサーの1つの利点は永久的に骨を固定せずに、即ち骨補強又は固定を行わずに骨及び靭帯を維持することにより脊椎安定性が得られる点である。
【0063】
棘突起間スペーサーは適当な固定手段を使用して、脊椎の運動により相互に接触する2つの連続する椎体の棘突起間に固定することができる。棘突起間スペーサーは治療する椎間板の両側の椎体間に特定スペースを形成し、この椎間板にかかる機械的ストレスを制限することを目的とする。
【0064】
各々参照により本明細書に組込む米国特許第6,946,000号及び6,761,720号並びに米国出願第2004/0117017号(出願第10/471213号)に記載されているように、Wallisシステム(Abbott Spine)を棘突起間スペーサー(又は椎間インプラント)として使用することができる。
【0065】
Wallisシステムは棘突起間スペーサー(ウェッジ又はブロックとも言う)と、隣接する棘突起の周囲に巻き付ける安定化バンド又は連結材を含む。椎間装置は骨の周囲にバンドを巻き付けることにより固定される。Wallisシステムは椎間関節と椎弓根をじゃましないので、スクリュー又は同等の固定法を使用する他の方法のように椎体を変化させない。Wallis法は器具を使用する他の外科処置よりも低侵襲性であるため、有利である。Wallisシステムは不安定な分節の運動性を維持しながらその剛性を増加することにより痛みを緩和する。この設計と材料により、骨切除の必要が最小限になり、骨への圧迫集中が避けられる。Wallisシステムの解剖学的デザインは棘突起の生体形状に合致するノッチを含む。Wallisシステムは更に圧迫の伝播を最良にするために骨と接触する位置に平坦バンドを使用して接触面を最適化する。最後に、Wallisシステムは骨に近い機械的性質にするようにPEEKから作製されたスペーサー及びクリップと、インプラントの剛性の低減を最大にするようにスペーサーに形成した開口を利用することにより弾性を提供する。
【0066】
1実施形態では、棘突起間スペーサーは中央部と両端部を含み、各端部は縁に2個の翼を形成したチャネルをもち、前記チャネルは治療する椎間板に隣接する椎体の一方の棘突起を受容するのに適している。棘突起間スペーサーは更に2つの椎体の2本の棘突起を受容するための2個の対向するノッチをもち、各ノッチが底部と各々内壁をもつ2個のフランジを規定するスペーサーと;前記スペーサーを前記棘突起に固定するための連結材であって、第1及び第2の端部と、ノッチの底部から対向する棘突起の表面の一部を包囲する部分をもつ少なくとも1本のストラップにより構成される連結材と;前記ストラップの第1の端部を固定するように前記フランジの少なくとも1個に形成された第1の固定手段と;前記フランジの別の少なくとも1個に形成された第2のセルフロッキング固定手段を含むことができ、前記ストラップの第2の端部が前記第2のセルフロッキング固定手段により挿入された後に引張られて前記ストラップを所定位置に保持することにより、前記スペーサーを前記棘突起に固定するように構成されている。このような棘突起間スペーサー装置のその他の詳細と例は参照により本明細書に組込む米国特許第6,761,720号に記載されている。
【0067】
1実施形態では、棘突起間スペーサーは重合により得られる硬質生体適合性材料から作製された変形可能なウェッジを含む(変形可能なウェッジをもつ椎間インプラントとも言う)。ウェッジは2本の溝の間に中心開口をもつことができ、中心開口は溝の軸に実質的に平行な軸に沿ってウェッジを完全に貫通しており、中心開口の容積はウェッジの総容積の10%〜30%であるため、ウェッジは弾性変形可能である。変形可能なウェッジの重要な特徴はウェッジが過度に脆弱にならずに弾性変形可能な点である。ウェッジは椎体の相互に向かい合う方向への移動を妨げる。他方、ウェッジは弾性変形可能であり、椎体の相対移動の正常又はほぼ正常な生体条件を再現するので、ウェッジにより棘突起に加えられる力は2つの椎体の相対移動に比例する。変形可能なウェッジはウェッジを棘突起間に保持するように構成された(プレマウントしてもよい)固定バンドを更に含むことができる。ウェッジは固定バンドをウェッジに対して固定するために固定バンドを受容するように構成されたその側壁に、バンドをウェッジに連結するための固定手段と、セルフロッキング固定手段をもつことができる。このような棘突起間スペーサー装置のその他の詳細と例はいずれも参照により本明細書に組込む米国特許第6,946,000号及びWO02/051326に記載されている。
【0068】
棘突起間スペーサーはウェッジを椎体に装着する手段(即ちスペーサーを2つの椎体間に保持するための連結材)を使用して2つの椎体の棘突起間に固定することができる。1実施形態では、棘突起間スペーサーはセルフロッキングにより固定可能なスペーサーであり、ブロックを棘突起間に挿入し、連結材で固定する。連結材は一端をブロックに装着することができ、自由端は少なくとも1本の棘突起を包囲するために使用される。1実施形態では、棘突起間スペーサーは縦軸方向に2つの対向面をもつブロックを含み、各面は棘突起を受容するように構成された溝を備え、ブロックは更に2つの側壁をもつ。棘突起間スペーサーは更に棘突起を溝に保持するための固定用連結材を含むことができ、固定用連結材はブロックに連結されるように構成された第1の端部と、第2の自由端をもち、この自由端で連結材は少なくとも1本の棘突起を包囲するように構成されている。棘突起間スペーサーは更に第1の連結手段をもつ取外し可能なセルフロッキング固定部材を含むことができ、連結材は第1の方向に並進移動するときに前記固定部材の内側をスライドすることができ、前記セルフロッキング固定部材は連結材が第1の方向と逆の第2の方向に並進移動しないように固定するように構成されている。更に、棘突起間スペーサーは第1の連結手段と共働して取外し可能なセルフロッキング固定部材を側壁に連結するための第2の連結手段をブロックの側壁の少なくとも一方に含むことができ、連結材の自由端が移動して連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材はブロックに対して第2の方向に並進移動しないように固定される。ブロック/連結材システムを含む棘突起間スペーサーのその他の詳細と例は各々参照により本明細書に組込む米国出願第10/471213号(US2004/0117017)及びヨーロッパ特許第1367954号に記載されている。
【0069】
棘突起間スペーサーはその開示内容全体を参照により本明細書に組込むFR0310063(AU4268404及びWO05/020860;Spine Next)に記載されているように、腰仙椎関節専用でもよい。本発明のインプラントは第5腰椎(L5)とL5に接合する仙椎(S1)との間に配置されたウェッジを含む。ウェッジの本体の上面は前記ウェッジの中央面(M)に沿って配置され、上記腰椎(L5)の棘突起を受容することができる溝を含む。本発明によると、上記溝に直交するように配置された縦方向ハウジングが下面に設けられ、仙椎(S1)の上面を受容するするように設計されている。縦方向ハウジングは伸長部とウェッジの本体よりも幅の広いタブにより規定される。更に、ウェッジの中央面(M)に沿うハウジングの断面は溝の底に対して傾斜したほぼU字形である。
【0070】
本発明の方法で使用することができる他の椎間インプラントの例は各々参照により特に本明細書に組込むWO01/28442、FR0212397、WO02/07621、WO02/07622、WO04/073532、及びWO05/020860に記載されている。
【0071】
b.棘突起間減圧(IPD)装置(X−Stop(登録商標))
1実施形態では、棘突起間型装置は脊椎突起間のスペースを拡げてやや屈曲位置に維持するように、症状を伴う椎間板レベルの脊椎突起間に配置された棘突起間減圧(IPD)装置である。IPD装置はレシピエントの脊椎を屈曲させて症状を緩和させるのではなく、レシピエントを正常姿勢に戻すことができる。
【0072】
IPD装置はスペーサーと整列トラックをもつ本体と、本体の整列トラックと嵌合するための整列タブをもつ翼部と、翼部を本体に固定する固定装置を含む。1実施形態では、IPD装置は硬質生体適合性材料から作製された本体を含む。本体はインプラントが本体の直径と実質的に同等になるまで先端が最小寸法から漸増する組織拡張器をもつことができる。組織拡張器は隣接する棘突起をスペーサーの直径まで拡げる。インサートは棘突起の不均一表面に対して自己整列するように旋回可能な円筒形スペーサーを含むことができる。インサートは更に組み立てを容易にすると共に外科処置の侵襲性を最小限にする可調節翼部を含むことができる。楕円形スペーサーは棘突起を分離し、治療レベルのその他の運動軸の運動を制限せずに症状レベルの末端伸長運動を制限する。
【0073】
IPD装置の1例は参照により本明細書に組込む米国特許第6,695,842号(譲受人:St.Francis Medical Technologies,Inc.)に記載されているようなX−Stop(登録商標)(St.Francis Medical Technologies,Inc.)である。
【0074】
c.U字形椎間装置
1実施形態では、棘突起間型装置は椎体を相互に柔軟に配置することができる実質的にU字形の本体を含むU字形椎間装置である。U字形椎間装置の1例はInter−spinous U(Fixano)である。
【0075】
U字形椎間装置はそのU字形本体の2本のブランチの実質的に平行な位置に対応する中立位置の両側で脊柱の屈曲と伸展を可能にすることにより患部脊椎分節を安定化させることにより椎間板変性疾患の症状を緩和する。U字形椎間装置はその本体の中央部分が柔軟に配置できるように椎間スペースに配置することができる。U字形椎間装置はインプラントを受容する部位に特殊な仕掛けを必要とせずに椎間スペースに挿入される。
【0076】
1実施形態では、U字形椎間装置は硬質生体適合性材料から作製される。U字形本体は椎体を相互に柔軟に配置できるようにその中央部分の領域に弾性/柔軟性をもつことができる。弾性/柔軟性により脊柱の屈曲と伸展が可能になる。U字形椎間装置は更に本体の2本のブランチの外面から突出する2対のブラケットをもつことができる。ブラケットは棘突起を受容するためのスターラップを提供する。
【0077】
1実施形態では、U字形椎間装置は中央部分と2本のブランチをもち、少なくとも中央部分が弾性/柔軟性であるU字形本体と;2本のブランチの一方の外面から各々突出しており、椎体の棘突起を受容するためのスターラップを各々含む2対のブラケットと;前記ブラケットに含まれ、前記ブラケットを椎体の棘突起に装着するための手段を含む。このようなU字形椎間装置の例は参照により本明細書に組込む米国特許第5,645,599号(Assignee,Fixano)に記載されている。
【0078】
2.椎弓根スクリュー型装置
椎間板外安定化装置はスクリューを椎弓根に挿入し、ロッドやプレート等の棘突起間スペーサーを棘に固定するために使用する椎弓根スクリュー型装置でもよい。椎弓根スクリューはレシピエントの運動能を増すように回転可能に設計することができる。
【0079】
a.動的外部スペーサー安定化システム(Dynesys(登録商標))
椎弓根スクリュー型システムは椎弓根スクリューにより脊椎に装着される外部スペーサーを含む動的外部スペーサー安定化システムとすることができる。動的外部スペーサー安定化システムの1例はDynesys(登録商標)である(Zimmer Spine;Stollら,European Spine Journal 11 Suppl 2:S170−8,2002;Schmoelzら,J of spinal disorder & techniques 16(4):418−23,2003参照)。Dynesys装置は2個の対応する椎弓根スクリューのヘッド間、従ってスクリューを固定する隣接椎体間の距離を維持するためにスクリュー間にポリカーボウレタンスペーサーを使用する。Dynesysはポリウレタンコードを包囲する外科用ポリウレタンチュービングから作製することができる外部スペーサーを含む。コードとスペーサーは患部椎体を安定化する動的プッシュ/プル関係を提供する。Dynesysは脊椎の患部領域の椎体の両側に装着し、固定せずに脊椎を安定化すると共にその本来の曲線を維持し、運動度を増すと共に痛みを緩和する。外部スペーサー装置を患部分節の両側に装着すると、スペーサーとコードの動的プッシュ−プル関係が関節を安定化し、より自然な位置に椎体を維持する。
【0080】
b.フレキシブルジョイントロッド(ISOBAR TTL)
1実施形態では、椎弓根スクリュー型システムは椎弓根スクリューシステムを使用して装着されるフレキシブルジョイントロッドである。ロッドは運動度を増すようにロッドの小ジョイント(緩衝部)により柔軟性にすることができる。ジョイントは屈曲ストレスと伸展ストレスを有効に吸収して固定レベルの周囲の隣接レベル劣化速度を低減するために十分な柔軟性を提供する。
【0081】
1実施形態では、フレキシブルジョイントロッドは椎弓根スクリューと少なくとも1つの椎体をクランプするように配置された自動安定化胸椎フックの両者を使用して装着され、フックにより骨固定を安定化する。椎弓根スクリューとフックによるインプラントは椎弓根スクリューとフックの使用による後方固定原理に基づく。椎弓根スクリューインプラントは更にフックとカウンターフックの間に自由連結手段を含み、フックとカウンターフックを細長部材又はフィンガーにより自由に移動せさることができる。フックのフィンガーをスライドさせると、フックとカウンターフックは椎体の相対向する側に作用することにより椎体を多少程度までクランプすることができる。
【0082】
本発明で使用することができるフレキシブルジョイントロッドの1例はISOBAR TTLシステム(Scient’x)である。フレキシブルジョイントロッドのその他の詳細及び例は参照により本明細書に組込む米国特許第6,241,730号及び米国特許第6,387,097号(Scient’x)に記載されている。
【0083】
c.ヘリカルロッド(AcciiFlex(登録商標)ロッド)
別の実施形態では、椎弓根スクリュー型装置はヘリカルロッドであり、前記ロッドは管状構造に螺旋パターンを形成するように開口又はスリットを形成した管状構造をもつ1個以上の柔軟性エレメントを含む。ヘリカルロッドは固定装置の補強部材又は運動保存非固定装置として荷重分散を可能にする。ヘリカルロッドの柔軟性エレメントは自然脊椎運動に合致可能である。システムは必要に応じて1個以上の柔軟性エレメントを剛性配置に固定する固定メカニズムを更にもつことができる。
【0084】
ヘリカルロッドは第1及び第2の端部をもち、少なくとも一部が少なくとも第1のスリットを内部に形成した第1の管状構造を含む第1の柔軟性エレメントと;第1の柔軟性エレメントの内側に配置され、少なくとも一部が少なくとも第2のスリットを内部に形成した第2の管状構造を含む第2の柔軟性エレメントと;第1の柔軟性エレメントの第1の端部に連結された第1の固定具と;第1の柔軟性エレメントの第2の端部に連結された第2の固定具を含むことができる。
【0085】
ヘリカルロッドは少なくとも1個のスリットをその内部に形成した管状構造をもつ第1の柔軟性エレメントと、第1の柔軟性エレメントの内側に配置された第2の柔軟性エレメントを含むこともできる。第2の柔軟性エレメントも少なくとも1個のスリットをその内部に形成した管状構造をもつ。管状構造のいずれか又は両方に形成された1個以上のスリットは管状構造の縦軸の周囲にほぼ螺旋状パターンを形成することができる。このシステムの重要な特徴は第1及び第2の螺旋パターンが第1及び第2のロッドに沿って逆方向に進行するので、ロッドアセンブリに加えられる捩れ力に対する応答を均衡させる柔軟性を増加できるという点である。柔軟性エレメントは安定性、強度、柔軟性、及び耐性を提供する。
【0086】
本発明で使用することができるヘリカルロッドの1例はAccuFlex(登録商標)ロッド(Globus Medical)である。このようなヘリカルロッドのその他の詳細及び例は各々参照により本明細書に組込む米国特許第6,986,771号及び6,989,011号(Globus Medical)に記載されている。
【0087】
d.完全後方脊椎システム:(T.O.P.S.)
本発明は更に可動後方装置を使用して患部椎体レベルに固定せずに安定化するための完全後方脊椎システム(TOPS)の使用を含む。この装置は標準後方外科アプローチを使用して少なくとも4個の椎弓根スクリューにより脊椎に装着される。TOPSに関するその他の詳細及び例は各々参照により本明細書に組込むWO05/044152(Impliant Inc)に記載されている。
【0088】
e.椎間補助移動用装置:(DIAM)
本発明は更に椎間補助移動用装置(DIAM(登録商標);Medtronic)である棘突起間型装置の使用を含む。DIAM(登録商標)装置は2つの椎体間に挿入される衝撃吸収器として主に機能することにより椎間板変性疾患の症状を緩和し、装置は圧縮と屈曲に最適な機械的挙動を可能にする。DIAM(登録商標)装置は棘突起間靭帯の一部を除去した位置に挿入され、上下棘突起の周囲に巻付いた靭帯を使用して2つの椎体間に固定される。DIAM(登録商標)装置はポリエチレンで被覆されたシリコーン椎間クッション装置である。このインプラントの形状は棘突起を固定する伸長翼部により安定性を提供する。DIAM(登録商標)の機能は椎間板内圧を低減し、靭帯構造を再び機能的にし、変性した分節の過剰な移動を制御することがである。
【0089】
B.椎間板内安定化装置
本発明の1実施形態では、椎間板内安定化装置又はインプラントを対象に移植することにより椎間板変性疾患を治療する。椎間板内安定化装置の1例としては、限定されないが、椎間板の内側で機能するか、あるいは生体椎間板又はその一部の置換物として機能する1種の椎間板安定化インプラントか挙げられる。椎間板内安定化装置は繊維輪、髄核、その部分等の椎間板の任意領域に置換することができる。更に、以下に詳述するハイドロゲル等の椎間板内装置と椎間板外装置を結合してもよい。本発明は更に治療剤を含む生体材料を投与することを含む椎間板内療法にも関する。1実施形態では、椎間板内療法は抗TNFα抗体(例えばHumira)を含むハイドロゲルを含む。
【0090】
人工髄核
椎間板を安定化するために本発明の方法で使用される椎間板内安定化インプラントは人工(又はプロテーゼ)髄核とすることができる。人工髄核インプラントは耐荷重性又は非耐荷重性ポリマーを含むことができる。理想的には、人工髄核インプラントは健康な髄核の生物学的特性(例えば親水性)と生体機械的特性(例えば柔軟性と耐力能)を再現することにより、脊椎の自然運動を復元する。
【0091】
人工髄核は生体椎間板と同様に椎間板を支持するように機能し、従って同様の特性、即ち椎間板にかかる荷重に耐え、及び/又は椎体間の正常スペースを復元する良好な機械的強度をもつ。本発明で使用される人工髄核はこれらの特性をもつ任意生体適合性材料から作製することができる。人工髄核として使用することができる材料の1例としては非等張膨潤可能なキセロゲル(参照により本明細書に組込む米国特許第6,264,694号参照)が挙げられる。
【0092】
1実施形態では、人工髄核は下記のような生体適合性ハイドロゲル材料を含む。人工髄核として使用することができるハイドロゲルの例は各々その開示内容全体を参照により本明細書に組込む米国特許第5,047,055号;米国特許第5,976,186号;米国特許第5,534,028号;及び米国特許第6,726,721号に記載されている。あるいは、人工髄核は限定されないが、I型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリル等の生体材料から作製することができる。
【0093】
各種人工髄核インプラントの例としては限定されないが、拡張可能なウエハー(その開示内容全体を参照により本明細書に組込む米国特許第6,764,514号参照);セルフシーリングフィルバルブをもつ内部チャンバーを備える膨張可能な膜を含む拡張可能なインプラントからなる人工髄核(参照により本明細書に組込む米国特許出願第2003/0033017号参照):及び椎間板スペースに導入するような寸法の耐荷重性弾性本体を含み、インプラントの本体を吸収性シェルで包囲した椎間板髄核インプラント(参照により本明細書に組込む米国特許出願第2002/0026244号参照)が挙げられる。人工髄核を椎間板に投与する方法の例は参照により本明細書に組込む米国特許第6,733,505号に記載されている。
【0094】
移植前に、人工髄核を収容するために生体髄核、又はその一部を除去する。しかし、椎間板の変性度によっては、生体髄核を除去する必要がない場合もある。生体髄核は標準技術(酵素(キモパパイン)又はレーザー、吸引装置、シェーバー、もしくは他の外科器具の使用により)除去することができる。髄核を除去する場合には、血管組織の増殖を防止するために繊維輪の孔を小さくし、密閉すべきである。
【0095】
III.ハイドロゲル
本発明の方法及び組成物ではハイドロゲルを使用してもよい。1実施形態では、治療剤(限定されないが、アダリムマブ)の送達手段を提供するためにハイドロゲルを椎間板外装置と併用する。別の実施形態では、変性椎間板を支持するためにハイドロゲルを椎間板内安定化装置として使用する。
【0096】
ハイドロゲルは水中で無傷に維持され、収縮又は膨潤することができるが、溶解せずに無傷に維持される材料である。ハイドロゲルは液体吸収とハイドロゲルにかかる圧力により寸法を変えることができる材料であるので、生理的張力調節を可能にする。
【0097】
本発明で使用するのに適したハイドロゲルとしては含水性ゲル、即ち親水性と非水溶性を特徴とするポリマーが挙げられる(例えば、参照により本明細書に組込む“Hydrogels”in Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Markら,eds.(Wiley and Sons),pp.458−459(1990)参照)。ハイドロゲルの使用は本発明では随意であるが、ハイドロゲルは多数の望ましい特性をもつので、ハイドロゲルの利用は非常に有利であると思われる。
【0098】
ハイドロゲルは可塑剤として機能する多量の水分を含有するエラストマーポリマーである。ハイドロゲルは例えば機械的圧力を加えると脱水し、その後、ハイドロゲルの性質を変えずに再水和することができる。各種ハイドロゲルとしては限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲル、ポリアクリロニトリルハイドロゲル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの低密度架橋ポリマー、又はN−ビノルモノマー(例えば、N−ビニル−2−ピロリドン(N−VP))、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA))、メタクリル酸アルキル(例えば、メタクリル酸メチル(MMA))、エチレン不飽和酸(例えば、メタクリル酸(MA))及びエチレン不飽和塩基(例えば、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル(DEAEMA))のモノマー類の組合わせから製造されるコポリマー及びターポリマー、並びにハイドロゲルポリアクリロニトリルが挙げられる。ハイドロゲルとしては更に、多糖類、蛋白質、ポリホスファゼン、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、エチレンジアミンのポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、並びにスルホン酸化ポリマーの任意のもの、即ち1種以上が挙げられる。
【0099】
1実施形態では、本発明の方法で使用される椎間板内インプラントは生体適合性ハイドロゲル材料から作製することができる。ハイドロゲルは生体髄核に類似するそのユニークな特性(即ちハイドロゲルは柔軟性であり、力に耐えられる)により、椎間板内インプラントとして使用するのに有利である。従って、椎間板内装置のハイドロゲル成分は周囲組織に対して力を均衡させるために高さを変えることができる。動物実験によると、ハイドロゲル椎間板内インプラントは髄核の置換物として有効であることが示されている(Allenら(2004)Spine 29:515)。1実施形態では、既に劣化しているか又は劣化中の椎間板の髄核を支持又は置換するためにハイドロゲルを使用する。損傷した椎間板にハイドロゲルを移植し、椎間板の内腔形状を呈するようにしてもよい。
【0100】
本発明の他の態様では、ハイドロゲルを椎間板内インプラントと併用してもよい。その親水性と含水性により、ハイドロゲルは間葉幹細胞等の生細胞を収容し、及び/又は椎間板の耐荷重性及び荷重伝達能を再分配するために使用することができる。損傷した椎間板の治癒を助長するためにハイドロゲルを本発明の椎間板外装置と併用してもよい。
【0101】
1実施形態では、本発明の方法で使用されるハイドロゲルは耐荷重性である。ハイドロゲル人工髄核は高い機械的強度をもち、生体荷重に耐えると共に劣化した椎間板の治癒を助長することができる。椎間板の変性又は損傷した髄核を除去した後に椎間板スペースに移植するために耐荷重性ハイドロゲルを使用してもよい。
【0102】
薬剤キャリヤーとしてハイドロゲルを使用し、本発明で使用される治療剤を投与するために使用してもよい。適切なハイドロゲルは選択されるマトリックスポリマーとの適合性や生体適合性等のキャリヤー特性の最適組合わせを示す。各種ハイドロゲルの他の例は各々本明細書に組込む米国特許第5,047,055号;米国特許第5,976,186号;米国特許第5,534,028号;及び米国特許第6,232,406に記載されている。ハイドロゲルの作製方法の例も各々本明細書に組込む米国特許第6,451,922号及び米国特許第6,232,406号に記載されている。
【0103】
IV.治療剤
本発明は椎間板変性疾患を治療するために、椎間板安定化装置の移植により椎間板を安定化すると共に、椎間板の治癒を促進するための少なくとも1種の治療剤を投与する併用法に関する。本発明の治療剤としては、炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子の少なくとも1種が挙げられる。椎間板変性疾患を治療するために付加治療剤を椎間板安定化装置と併用してもよく、椎間板変性疾患の対象に椎間板安定化装置を移植し、椎間板変性疾患の治療が行われるように椎間板の治癒を促進する少なくとも1種の治療剤を対象に投与する。変性脊椎疾患を治療するために付加治療剤を椎間板安定化装置と併用してもよく、椎間板安定化装置を移植した対象に椎間板の治癒を促進する治療剤を投与する。付加治療剤は椎間板変性疾患をもつ対象に薬剤送達装置(限定されないが、例えばハイドロゲル)により注入又は移植することができる。本発明で使用することができる付加治療剤の例を以下に詳述する。
【0104】
A.炎症促進性サイトカインを阻害する分子
本発明の方法は椎間板変性疾患を治療するために、炎症促進性サイトカインを阻害し、炎症プロセスを抑制する物質を椎間板安定化装置と併用して投与することを含む。1実施形態では、以下に記載するように、椎間板変性疾患に関連する炎症を抑制するために抗TNFα及び抗IL1分子を使用する。
【0105】
本発明の方法は高い親和性と低い解離速度でヒトTNFαと結合し、高い中和能をもつヒト単離抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む。本発明のヒト抗体は組換え中和ヒト抗hTNFα抗体であることが好ましい。本発明の最も好ましい組換え中和抗体は本明細書でD2E7と言う(HUMIRA(登録商標)及びアダリムマブとも言う)(D2E7 VL領域のアミノ酸配列を配列番号1に示し;D2E7 VH領域のアミノ酸配列を配列番号2に示す)。D2E7(アダリムマブ;HUMIRA(登録商標))の特性は参照により本明細書に組込むSalfeldら,米国特許第6,090,382号に記載されている。
【0106】
1実施形態では、本発明の治療法はD2E7抗体及び抗体部分、D2E7関連抗体及び抗体部分、並びにD2E7と等価の特性(例えばhTNFαとの結合親和性が高く、解離速度が低く、中和能が高い)をもつ他のヒト抗体及び抗体部分を投与することを含む。1実施形態では、本発明はいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分を使用する治療法を提供する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分は5×10−4−1以下のKoff、更に好ましくは1×10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分は標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−8M以下のIC50、更に好ましくは1×10−9M以下のIC50、更に好ましくは1×10−10M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。好ましい1実施形態では、抗体は単離ヒト組換え抗体又はその抗原結合部分である。
【0107】
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインが抗原に対する抗体の結合特異性/親和性に重要な役割を果たしていることは当分野で周知である。従って、別の態様では、本発明はヒトTNFαとの会合の解離速度が遅く、D2E7と構造的に同一又は近縁の軽鎖及び重鎖CDR3ドメインをもつヒト抗体を投与することにより、TNFα活性が有害であるTNFα関連疾患を治療する方法に関する。D2E7 VL CDR3の9位がAlaでもThrでもKoffは実質的に変わらない。従って、D2E7 VL CDR3のコンセンサスモチーフはアミノ酸配列:Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。更に、D2E7 VH CDR3の2位がTyrでもAsnでもKoffは実質的に変わらない。従って、D2E7 VH CDR3のコンセンサスモチーフはアミノ酸配列:V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。更に、米国特許第6,090,382号の実施例2に実証されているように、D2E7重鎖及び軽鎖のCDR3ドメインはKoffを実質的に変えずに単一アラニン残基(VL CDR3内の1、4、5、7もしくは8位又はVH CDR3内の2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位)で置換することができる。更に、当業者に自明のように、D2E7 VL及びVH CDR3ドメインはアラニンで置換できるので、抗体の解離速度定数を低く維持しながらCDR3ドメイン内の他のアミノ酸の置換、特に保存アミノ酸による置換も可能であると思われる。D2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内に1から5個の保存アミノ酸置換を行うことが好ましい。D2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内に1から3個の保存アミノ酸置換を行うことがより好ましい。更に、hTNFαとの結合に必須のアミノ酸位置には保存アミノ酸置換を行うべきでない。D2E7 VL CDR3の2位及び5位とD2E7 VH CDR3の1位及び7位はhTNFαとの相互作用に必須であると思われるので、これらの位置には保存アミノ酸置換を行わないことが好ましい(但し、上記のように、D2E7 VL CDR3の5位のアラニン置換は許容可能である)(参照により本明細書に組込む米国特許第6,090,382号参照)。
【0108】
従って、別の実施形態では、本発明は単離ヒト抗体又はその抗原結合部分を投与することによりTNFα関連疾患を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は以下の特性をもつことが好ましい:
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもち;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつ。
【0109】
抗体又はその抗原結合部分は5×10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離することがより好ましい。抗体又はその抗原結合部分は1×10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離することが更に好ましい。
【0110】
更に別の実施形態では、本発明は単離ヒト抗体又はその抗原結合部分を投与することによりTNFα関連疾患を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は配列番号3のアミノ酸配列、又は1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインをもつ軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号4のアミノ酸配列、又は2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインをもつ重鎖可変領域(HCVR)を含むことが好ましい。LCVRは更に配列番号5のアミノ酸配列(即ちD2E7 VL CDR2)を含むCDR2ドメインをもち、HCVRは更に配列番号6のアミノ酸配列(即ちD2E7 VH CDR2)を含むCDR2ドメインをもつことが好ましい。LCVRは更に配列番号7のアミノ酸配列(即ちD2E7 VL CDR1)を含むCDR1ドメインをもち、HCVRは配列番号8のアミノ酸配列(即ちD2E7 VH CDR1)を含むCDR1ドメインをもつことが更に好ましい。VLのフレームワーク領域はVκIヒト生殖細胞系列ファミリーに由来することが好ましく、A20ヒト生殖細胞系列Vk遺伝子に由来することがより好ましく、米国特許第6,090,382号の図1A及び1Bに示されるD2E7 VLフレームワーク配列に由来することが最も好ましい。VHのフレームワーク領域はV3ヒト生殖細胞系列ファミリーに由来することが好ましく、DP−31ヒト生殖細胞系列VH遺伝子に由来することがより好ましく、参照により本明細書に組込む米国特許第6,090,382号の図2A及び2Bに示されるD2E7 VHフレームワーク配列に由来することが最も好ましい。
【0111】
従って、別の実施形態では、本発明は単離ヒト抗体又はその抗原結合部分を投与することによりTNFα関連疾患を治療する方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分は配列番号1のアミノ酸配列(即ちD2E7 VL)を含む軽鎖可変領域(LCVR)と配列番号2のアミノ酸配列(即ちD2E7 VH)を含む重鎖可変領域(HCVR)を含むことが好ましい。所定実施形態では、抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域等の重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域はIgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域であることが好ましい。更に、抗体はκ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域のいずれかの軽鎖定常領域を含むことができる。抗体はκ軽鎖定常領域を含むことが好ましい。あるいは、抗体部分は例えば、Fabフラグメント又は1本鎖Fvフラグメントでもよい。
【0112】
更に他の実施形態では、本発明は抗TNFα抗体の投与が単離ヒト抗体又はその抗原結合部分の有益な投与であるTNFα関連疾患の治療方法を提供する。抗体又はその抗原結合部分はD2E7関連VL及びVH CDR3ドメインを含むことが好ましく、例えば、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26から構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインをもつ軽鎖可変領域(LCVR)又は配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35から構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインをもつ重鎖可変領域(HCVR)をもつ抗体又はその抗原結合部分が挙げられる。
【0113】
別の実施形態では、本発明のTNFα阻害剤はTNF融合蛋白、例えばエタネルセプト(Enbrel(登録商標),Amgen;参照により本明細書に組込むWO91/03553及びWO09/406476に記載)である。別の実施形態では、本発明で使用されるTNFα阻害剤は抗TNFα抗体又はそのフラグメントであり、インフリキシマブ(Remicade(登録商標),Johnson and Johnson;参照により本明細書に組込む米国特許第5,656,272号に記載)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFαIgG4抗体)、CDP 870(ヒト化モノクローナル抗TNFα抗体フラグメント)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO 148(ゴリムマブ;Medarex and Centocor,WO02/12502参照)、及びアダリムマブ(Humira(登録商標) Abbott Laboratories,US 6,090,382にD2E7として記載されているヒト抗TNF mAb)が挙げられる。別の実施形態では、TNFα阻害剤は組換えTNF結合蛋白(r−TBP−I)(Serono)である。
【0114】
1実施形態では、これらの方法は炎症に関連するヒト分子(例えばサイトカイン)と結合する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む。このようなサイトカインの例としてはIL−1、IL−6、TNF−α、及びTGF−βが挙げられる。インターロイキン−1(IL−1)阻害剤は細胞受容体の活性化をIL−1特異的に阻止することが可能な任意タンパクに由来することができる。各種インターロイキン−1阻害剤としては、以下に記載するようなインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(例えばIL−1ra);抗IL−1受容体モノクローナル抗体(例えば各々参照により本明細書に組込むEP623674);IL−1結合蛋白質(例えば可溶性IL−1受容体)(例えば各々参照により本明細書に組込む米国特許第5,492,888号、米国特許第5,488,032号、米国特許第5,464,937号、米国特許第5,319,071号、及び米国特許第5,180,812号);抗IL−1モノクローナル抗体(例えば各々参照により本明細書に組込むWO9501997、WO9402627、WO9006371、米国特許第4,935,343号、EP364778、EP267611及びEP220063);IL−1受容体補助蛋白質(例えば参照により本明細書に組込むWO96/23067)、並びにIL−1のin vivo合成又は細胞外放出を阻止する他の化合物及び蛋白質が挙げられる。
【0115】
本発明の方法及び組成物による変性椎間板の治癒の促進はTNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF、及びPDGF等のヒトサイトカイン又は増殖因子の阻害剤(例えばその抗体又はアンタゴニスト)と併用して実施することもできる。本発明の方法及び組成物はCD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA等の細胞表面分子又はCD154(gp39又はCD40L)等のそのリガンドの阻害剤(例えばその抗体又はアンタゴニスト)と併用してもよい。
【0116】
B.細胞外マトリックスの酵素分解を抑制する分子
本発明は椎間板変性疾患を治療するために、椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤を椎間板安定化装置と併用して投与することを含む。本発明は、炎症プロセスに起因することが多いと思われる関節破壊を予防する物質の利点と併用して椎間板の安定化を促進することにより、損傷した椎間板を治癒することができる手段を提供する。椎間板安定化インプラントと併用投与することができる抗酵素剤の例としては抗アグリカナーゼ剤、抗メタロプロテイナーゼ剤、又はその組合わせが挙げられる。
【0117】
本発明で使用することができる抗アグリカナーゼ剤又はアグリカナーゼ阻害剤としては、軟骨細胞外マトリックスに存在する主要プロテオグリカンであるアグリカンを分解することができる任意物質が挙げられる。アグリカンは浸透圧膨潤を生ずるように機能し、軟骨細胞外マトリックスに高レベル水和を維持する。
【0118】
メタロプロテイナーゼのアダマリシンサブファクリーに属するADAMTSプロテイナーゼは細胞外マトリックス分解(アグリカン分解を含む)、形態形成、細胞移動、血管新生、及び排卵等の各種細胞イベントに関与するとされている。ADAMTSファミリーメンバーは軟骨アグリカン低下に関与している。ADAMTS#遺伝子記号はスロンボスポンジン(TS)モチーフを含むADAM蛋白のサブセットを示す。ADAMTSファミリーのメンバーはプロペプチド領域、メタロプロテイナーゼドメイン、ジスインテグリン様ドメイン、及びスロンボスポンジンタイプ1(TS)モチーフ等の数個の別個の蛋白モジュールを共有する。このファミリーの個々のメンバーはC末端TSモチーフ数が異なり、ユニークC末端ドメインをもつものもある。抗アグリカナーゼ剤としてはADAMTSファミリーのメンバー(例えばADAMTS5及びADAMTS4)の活性を阻害する任意物質(抗体を含む)が挙げられる。
【0119】
1実施形態では、本発明の方法はADAMTS5(ADMP−2及びADAMTS11とも言う)の活性を阻害する物質を投与することを含む。ADAMTS5はジスインテグリンとメタロプロテイナーゼとスロンボスポンジンモチーフ−5(ADAMTS5)をコードする(GenBank accession no.NM_007038;Crossら(2005)Prostate 63:269参照)。
【0120】
メタロプロテイナーゼ(MMP)は細胞外マトリックスの巨大分子成分(例えばコラーゲン、エラスチン)を分解する金属(通常は亜鉛)補欠分子族であることを特徴とする蛋白分解酵素(プロテイナーゼ)ファミリーのメンバーである(Woessner,(1991)Faseb Journal 5:2145参照)。MMPの過剰発現と活性化の結果、マトリックスの破壊とリモデリングを伴う多数のプロセス(例えば細胞外マトリックスの無制御吸収)を生じる可能性がある。
【0121】
本発明の抗メタロプロテイナーゼ剤(抗MMP)又はメタロプロテイナーゼ阻害剤としてはMMP活性を低下、阻止、阻害、廃棄、又は妨害する任意物質が挙げられる。抗MMP剤は糖蛋白質(フィブロネクチン、ラミニン)やプロテオグリカン等の細胞外マトリックスの蛋白質の分解に関連する酵素活性を阻害する。椎間板の劣化を抑制するために使用することができる抗MMP剤の例としては、フィブリル型コラーゲンを分解する抗コラゲナーゼ(MMP−1ないし間質コラゲナーゼ、MMP−8ないし好中球コラゲナーゼ、MMP−13ないしコラゲナーゼ3、又はMMP−18ないしコラゲナーゼ4)、IV型コラーゲン又は任意型の変性コラーゲンを分解する抗ゼラチナーゼ(MMP−2ないしゼラチナーゼA(72kDa)、又はMMP−9ないしゼラチナーゼB(92kDa))、抗ストロメリシン(MMP−3ないしストロメリシン1、MMP−10ないしストロメリシン2、又はMMP−11ないしストロメリシン3)、マトリリシンを阻害する物質(MMP−7)、抗メタロエラスターゼ剤(MMP−12)、並びに膜メタロプロテイナーゼを阻害する物質(MMP−14、MMP−15、MMP−16及びMMP−17)が挙げられる。
【0122】
C.血管新生を抑制する分子
本発明は椎間板変性疾患を治療するために、椎間板における血管新生を抑制する物質を椎間板安定化装置と併用して投与することを含む。単球が椎間板劣化に関連する原因とみなされているように、血管は椎間板変性プロセスの特徴的徴候であることが多い。損傷した椎間板における新しい血管の抑制は炎症量を低減し、椎間板の治癒を促進する。
【0123】
本発明の1実施形態では、抗血管新生剤はVEGFの作用を抑制する物質である。椎間板安定化装置と併用して椎間板の血管新生を抑制するために抗VEGF剤を投与することができる。血管内皮増殖因子(VEGF)は正常及び異常血管新生の調節に重要な役割を果たす(Ferraraら(1997)Endocr.Rev.18:4)。VEGF対立遺伝子が1個でも失われると、胎児致死に至るという知見は血管系の発生及び分化においてこの因子が果たす代替不可能な役割を示している(Ferraraら)。抗VEGF抗体の例は米国出願第2005/0112126号に記載されている。抗VEGF抗体の別の例はVEGF−Aに対するヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブ(Avastin(登録商標);Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)である。
【0124】
別の類の血管新生阻害剤は受容体シグナル伝達及び関連する下流イベントを抑制することにより作用する小分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。VEGFR TKIとしてはバタラニブ(PTK787/ZK−222584;Novartis and Schering AG)、SU11248、及びZD6474が挙げられる。バタラニブはVEGFR−IとVEGFR−2の潜在的阻害剤である経口利用可能な小分子TKIである(Thomasら(2003)Semin Oncol.30(suppl 6):32)。SU11248はVEGFR−2とPDGFを阻害し(Mendelら(2003)Clin Cancer Res 9:327−337)、ZD6474はVEGFR−2、VEGFR−3、及びある程度まで表皮増殖因子受容体を阻害する(EGFR)(Wedgeら(2002)Cancer Res 62:4645−4655)。
【0125】
血管標的剤(VTA)は腫瘍血管を標的とし、椎間板内の血管新生を予防するために本発明で使用することができる別の類の物質である。VTAは投与から数時間以内に血管の機能停止を生じる急性作用剤である。新規血管形成を抑制する従来の血管新生抑制剤と異なり、VTAは腫瘍の既存血管内の内皮細胞を選択的に標的とする(Iyerら(1998)Cancer Res 58:4510;Kanthou and Tozer(2002)Blood 99:2060;及びGotoら(2002)Cancer Res 62:3711)。
【0126】
本発明で使用することができる抗血管新生剤の他の例としては限定されないが、アンギオゲニン阻害剤;β−線維芽細胞増殖因子阻害剤;GM−CSF阻害剤;インターロイキン2(IL−2)阻害剤;インターロイキン6(IL−6)阻害剤;インターロイキン8(IL−8)阻害剤;プロスタグランジン阻害剤;TGF−β阻害剤;TNF阻害剤;血管内皮増殖阻害剤(例えばP1C11、C225、SU6668、及び抗KDRモノクローナル抗体);血管P因子阻害剤が挙げられる。血管新生阻害剤の他の例としては2−メトキシエストラジオール;AG3340(プリノマスタット);アンギオスタチン;抗インテグリンαvβ3;バチマスタット;カプトプリル;カルボキシアミド−トリアゾール;CM101;コンブレタスタチン;コントートロスタチン;クルクミン;ジフェニル尿素;エンドスタチン;フラボン酢酸;ゲニステイン;ヒト腫瘍阻害剤;IL−12;イルソグラジン;プラスミノーゲンのクリングル5;潜在型アンチトロンビン;LM−609;マリマスタット;ミトキサントロン;ネオバスタットエテルナ;ニゲラ;p53遺伝子治療;ポリ硫酸ペントサン;PF−4;PI−88;前潜在型アンチトロンビン;PSK;組換え血小板因子4;レチノイド;分散因子;スピロラクトン;スクアラミン;スラミン及びスラミンアナログ;タモキシフェン;タキソール;テコガラン;tie2経路;スロンボスポンジン1及び2;TIP−1;TNP−470(AGM−1470);ビンブラスチン;ビタミンE;並びにビタキシンが挙げられる。
【0127】
D.細胞外マトリックスの産生を促進する分子
本発明は椎間板変性疾患を治療するために、新規細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子を椎間板安定化装置と併用して投与することを含む。細胞外マトリックス産生に関連する増殖因子の例としてはTGFβスーパーファミリーのメンバーが挙げられる。TGFβスーパーファミリーの増殖因子としては限定されないが、BMP2やBMP7/OP−1等の骨形態形成蛋白質(BMP)が挙げられる。
【0128】
BMPファミリーのメンバーは脊椎動物及び無脊椎動物の両者で発生と組織修復の強力な調節剤として作用する可溶性分泌蛋白質のより大きなTGF−βスーパーファミリーに属する。BMPはそのカルボキシ末端ドメインにおいてTGF−β自体と配列相同性をもつ。BMPは大きな前駆体として合成され、蛋白分解開裂後にカルボキシ末端領域に由来する成熟蛋白質が放出される。これらの30−38kDa二量体蛋白質はそのアミノ酸配列類似性に従ってサブファミリーに分割される。BMPファミリーメンバーは骨芽細胞、軟骨芽細胞、神経細胞、及び上皮細胞等の各種細胞の発生とアポトーシスを制御する多機能モルフォゲンであり、例えば、骨形成蛋白1(OP−1,別称BMP−7)は新規骨及び軟骨の形成を誘導する。BMP−2及びBMP−7核酸及びポリペプチドの例は参照により本明細書に組込むUS20050136042に記載されている。
【0129】
椎間板変性疾患を治療するために上記物質を使用する併用療法、例えば炎症促進性サイトカインを阻害する分子と新規細胞外マトリックスを促進する分子の併用も本発明の範囲に含まれる。
【0130】
抗体修飾
上記抗体等の本発明で使用される抗体(例えば抗TNF、抗MMP、抗IL、及び抗VEGF抗体)を改善(例えば投与及び/又は効力の改善)のために修飾してもよい。所定実施形態では、所望効果(例えば半減期延長)を得るために抗体又はその抗原結合フラグメントを化学的に修飾する。例えば、(各々その開示内容全体を参照により本明細書に組込む)以下の文献:Focus on Growth Factors 3:4−10(1992);EP0 154 316;及びEP0 401 384に記載されているような当分野で公知のペグ化反応の任意のものにより本発明の抗体及び抗体フラグメントのペグ化を実施することができる。ペグ化は反応性ポリエチレングリコール分子(又は同様の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応により実施することが好ましい。本発明の抗体及び抗体フラグメントのペグ化に好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書で使用する「ポリエチレングリコール」とはモノ(Cl−ClO)アルコキシポリエチレングリコール又はアリールオキシポリエチレングリコール等の、他の蛋白質を誘導体化するために使用されている任意形態のPEGを意味する。
【0131】
本発明のペグ化抗体及び抗体フラグメントの製造方法は一般に(a)抗体又は抗体フラグメントを1個以上のPEG基と結合させる条件下で抗体又は抗体フラグメントをPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体等のポリエチレングリコールと反応させることと、(b)反応生成物を得ることを含む。公知パラメーターと所望結果に基づいて最適条件又はアシル化反応を選択することは当業者に自明である。
【0132】
1実施形態では、本明細書に記載するような椎間板安定化装置と併用投与することにより椎間板変性疾患を治療するために抗サイトカインペグ化抗体及び抗体フラグメントを一般に使用することができる。
【0133】
一般に、ペグ化抗体及び抗体フラグメントは非ペグ化抗体及び抗体フラグメントに比較して半減期が増加している。ペグ化抗体及び抗体フラグメントは単独で使用してもよいし、他の医薬組成物と併用してもよい。
【0134】
本発明の更に別の実施形態では、炎症促進性サイトカインを阻害する抗体又はそのフラグメントを改変し、少なくとも1個の定常領域による生体エフェクター機能を未修飾抗体よりも低下させるように抗体の定常領域を修飾することができる。Fc受容体との結合低下を示すように本発明の抗体を修飾するためには、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントをFc受容体(FcR)相互作用に必要な特定領域において突然変異させることができる(例えばCanfield,S.M.and S.L.Morrison(1991)J.Exp.Med.173:1483−1491:及びLund,J.ら(1991)J.of Immunol.147:2657−2662参照)。抗体のFcR結合能が低下すると、オプソニン作用及び食作用や抗原依存性細胞毒性等のFcR相互作用に依存する他のエフェクター機能も低下すると思われる。
【0135】
本発明の抗体又は抗体部分を別の機能分子(例えば別のペプチド又は蛋白質)で誘導体化又は前記分子と結合することもできる。従って、本発明の抗体及び抗体部分は本明細書に記載する抗体の誘導体化及び他の修飾形態(例えば免疫接着分子)を含むものとする。例えば、別の抗体(例えばビ特異的抗体又はダイアボディ)、検出可能な物質、細胞傷害性物質、薬剤、及び/又は抗体もしくは抗体部分と別の分子(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)との結合を媒介することができる蛋白質もしくはペプチド等の1個以上の他の分子部分と本発明の抗体又は抗体部分を(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又は他の方法で)機能的に連結することができる。
【0136】
ある種の誘導体化抗体は(同一型又は例えばビ特異的抗体を作製するために異なる型の)2個以上の抗体を架橋することにより作製される。適切な架橋剤としては適切なスペーサーにより分離された2個の顕著に反応性の基をもつヘテロ2官能性架橋剤(例えばm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ2官能性架橋剤(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。このような架橋剤はPierce Chemical Company,Rockford,ILから市販されている。
【0137】
更に、抗体(又はそのフラグメント)を細胞毒素、治療剤又は放射性金属イオン等の治療部分と結合してもよい。細胞毒素又は細胞傷害性物質とは細胞に有害な任意物質を意味する。例としてはタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール、及びピューロマイシン並びにそのアナログ又はホモログが挙げられる。治療剤としては限定されないが、代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。
【0138】
所与生体応答を調節するために本発明のコンジュゲートを使用することができ、薬剤部分は従来の化学治療剤に限定されない。例えば、薬剤部分は所望生物活性をもつポリペプチドとすることができる。このようなポリペプチドとしては、例えば、毒素(例えばアブリン、リシンA、シュードモナスエトトキシン、又はジフテリア毒素);蛋白質(例えば腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター);又は生体応答調節剤(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、又は他の増殖因子)が挙げられる。
【0139】
このような治療部分を抗体に結合するための技術は周知であり、例えばArnonら,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinsonら(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(eds.),pp.475−506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(eds.),pp.303−16(Academic Press 1985)、及びThorpeら,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照されたい。あるいは、Segalにより米国特許第4,676,980号に記載されているように抗体を第2の抗体と結合して抗体ヘテロコンジュゲートを形成することもできる。
【0140】
V.細胞療法
変性椎間板の治癒を促進する細胞療法又は組織エンジニアリング技術と本発明の方法を併用してもよい。組織エンジニアリングに使用するため、即ち組織機能を復元、維持又は改善するための生体代用物として使用するために自家細胞をin vitro増幅することができる。組織エンジニアリングは組織機能を復元、維持又は改善するための生体代用物に関連する組成物の使用を含む。細胞を体内の所望部位に送達するため、操作される組織の潜在スペースを規定するため、及び組織発生プロセスを誘導するためにマトリックスを使用することができる。
【0141】
1実施形態では、本発明の方法は(同一個体に由来する)自家もしくは(同一種に由来する)同種細胞、又は椎間板組織を復元もしくは改善する再生増殖因子を対象に投与することを含む。使用することができる自家又は同種細胞の例としては限定されないが、軟骨細胞、間葉幹細胞、及び脂肪幹細胞が挙げられる。健常細胞を椎間板に導入すると、変性プロセス中に椎間板に加えられた損傷を少なくとも部分的に修復することができる。所定実施形態では、これらの細胞を髄核に導入し、最終的に髄核の新しい細胞外マトリックスを産生する。別の実施形態では、これらの細胞を繊維輪に導入し、繊維輪の新しい細胞外マトリックスを産生する。
【0142】
細胞療法用細胞は椎間板組織(例えば、髄核細胞又は繊維輪細胞)及び非椎間板組織(例えば、間葉幹細胞又は軟骨細胞)等の多数の原料から得られる。軟骨細胞は例えば、変性椎間板自体又は別の無傷椎間板、あるいは、椎間板以外の軟骨原料(例えば耳)から得られる。
【0143】
患者の椎間板自体から細胞を採取し、適切な環境(場合により、アルギン酸ボール、多孔質PLA/TGA構造、又はコラーゲンフォーム等の三次元)で培養してもよい。患者の骨髄に由来する成人自家幹細胞を例えば腸骨稜から採取した後に上記と同様の培養環境に置いて使用することもできる。
【0144】
幹細胞を使用して椎間板変性疾患を治療してもよい。1実施形態では、間葉幹細胞(MSC)を本発明のインプラントと併用する。MSCは変性椎間板に存在する比較的苛酷な環境に容易に耐えることができ、望ましいレベルの可塑性をもち、更にMSCは所望細胞に増殖分化することができるので、変性椎間板に投与するのに特に有利である。
【0145】
MSCは骨髄、好ましくは自家骨髄と、脂肪組織から得られる。使用することができる他の型の幹細胞としては(脂肪組織に由来する)脂肪幹細胞と臍帯血幹細胞が挙げられる。
【0146】
この目的に使用される移植可能な細胞は各種方法により得ることができ、患者の椎間板から採取した細胞、患者の骨髄に由来する成人幹細胞、又は胎児幹細胞が挙げられる。更に、治療ユニットは細胞を椎間板に注入するための手段を含むべきであり、カニューレ型シリンジが挙げられる。
【0147】
本発明はPCT/FR2003/003929(WO04/073532;FR0300555;AU3303927)に記載されている装置及び方法も含むことができる。再生を刺激するこのような細胞技術は損傷した椎間板に細胞を移植し、椎間板を再生することから構成される。移植細胞は椎間板を構成する細胞と同一型でもよいし、別の型でもよい。PCT/FR2003/003929は2つの椎体間の損傷した椎間板間の変性を治療するためのユニットとして、同一椎間板に由来するものでも由来しないものでもよく、この椎間板に移植することが可能な細胞と、椎間インプラントを含むユニットを記載しており、前記インプラントは椎間板に加えられるストレスを制限するために前記椎体間に配置されるように構成された椎間ウェッジと、ウェッジを椎体に固定するための装着手段を含む。WO04/073532に記載されている細胞法及び組成物は参照により本明細書に組込む。
【0148】
本発明は椎間板に移植される細胞と併用される椎弓根スクリュー型椎間板安定化装置を記載するFR0405611(WO05/118015)の装置及び方法も含むことができる。この椎間板安定化装置は椎間板の細胞を再生させることができ、椎体にねじ込まれた安定化装置の存在により、椎体間にスペースを維持し、治療中に椎間板に加えられる機械的ストレスを制限する。椎間板外安定化インプラントは同一椎間板に由来するものでも由来しないものでもよく、この椎間板に移植可能な細胞と、2つの椎体を安定化するための少なくとも1個の装置を含むことができる。1実施形態では、装置は2個のスクリュー(各スクリューは椎体の一方にねじ込まれるように構成されている)と、細長形連結部品と、各スクリューのヘッドを連結部品の端部の一方に連結するための2個の装着装置を含む。更に、安定化装置を椎体にねじ込むので、本発明は椎体の棘突起の完全もしくは部分的切除を行った患者や、(例えば骨粗鬆症により)棘突起の骨品質が著しく低下している患者にも使用することができる。また、仙骨上の第1椎体は一般に棘突起をもたないので、本発明は第5腰椎と仙骨の間の椎間板にも使用することができる。従って、本発明は生理的理由により棘突起間安定化を実施できない場合に使用することができる。
【0149】
VI.投与
治療剤は持続放出装置(即ち持続送達装置)を使用して投与することができる。持続放出装置は長時間椎間板内に留まった後に装置に含まれる治療剤を周囲環境にゆっくりと放出するように構成されている。この送達方式は治療有効量の治療剤を椎間板内に長時間保留することができる。持続放出装置は治療剤を制御下に放出することができる。所定実施形態では、持続放出装置は連続放出することができる。持続放出装置は断続放出することもでき、更にバイオセンサーを含むことができる。他の放出方式を使用してもよい。1実施形態では、治療剤は主に持続送達装置を介する(例えばポリマーを介する)その拡散により持続送達装置から放出される。他の実施形態では、治療剤は主に持続送達装置の生分解(例えばポリマーの生分解)により持続送達装置から放出される。
【0150】
他の実施形態では、持続放出装置は漸次崩壊により治療剤を椎間板環境に漸次放出する生体吸収性材料を含む。持続放出装置は生体吸収性ポリマー(例えば、少なくとも1カ月、より好ましくは少なくとも2カ月、より好ましくは少なくとも6カ月間の半減期をもつ生体吸収性ポリマー)を含むことができる。1実施形態では、持続送達装置は生体内崩壊性マクロスフェアを含む。カプセル内のゼラチン(又は水もしくは他の溶媒)に治療剤を収容し、外側シェルが崩壊すると椎間板環境に放出することが好ましい。外側シェルが順次分解して治療剤を周期的に放出するように、装置は異なる厚みの外側シェルをもつ複数のカプセルを含むことができる。
【0151】
持続送達装置は複数の含水性チャンバーを含むことができ、各チャンバーに治療剤を収容する。チャンバーは天然脂質の合成物を含む二重層脂質膜により規定される。水性キャリヤー、脂質成分、及び製造パラメーターの少なくとも1種を変動させることにより薬剤の放出を制御することができる。製剤は10%以下の脂質、例えば、Depofoam(登録商標)technology(Skyepharma PLC;London,United Kingdom)を含有することが好ましい。
【0152】
いくつかの実施形態では、持続送達装置はポリマーポリ−DL−ラクチド−コ−グリコシド(PLG)を含む。製剤はサイクリン化合物、コポリマー及び溶剤を混合して液滴を形成した後に溶剤を蒸発させてミクロスフェアを形成することにより製造することが好ましい。その後、複数のミクロスフェアを生体適合性希釈剤に加える。コポリマーを介するその拡散とコポリマー(例えばProLease(登録商標) technology(Alkermes))の生分解によりコポリマーからサイクリン化合物を放出させることが好ましい。
【0153】
本発明の1実施形態では、治療剤を送達するための薬剤キャリヤーとしてハイドロゲルを使用する。椎間板内インプラント(例えば人工髄核)としてのその使用に追加するか又はその代用としてハイドロゲルを使用してもよい。治療剤を椎間板環境に徐放送達するためにハイドロゲルを使用するように、持続放出装置にハイドロゲルを含むことができる。本発明で使用されるハイドロゲルは迅速に固化して所望治療剤を投与部位に維持することにより、椎間板からの望ましくない移動を回避することができる。本発明で使用されるハイドロゲルは更に生体適合性であり、例えばハイドロゲルに懸濁される細胞に対して非毒性である。あるいは、限定されないが、I型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリル等の生体材料から人工髄核を作製することができる。
【0154】
本発明の付加治療剤は椎間板の損傷した対象に直接注射により局所投与することができる。安定化椎間板装置の移植に関して、椎間板インプラントは治療剤の投与前、投与と同時、又は投与後に対象に移植することができる。本発明に記載する治療剤は変性脊椎疾患の治療用に最適化された薬剤キャリヤー又は薬剤送達システムと併用することができる。
【0155】
治療剤と人工髄核は椎間板に直接投与することができる。例えば、鈍針又はカニューレを繊維輪に挿通することができる。治療剤を髄核に注入後及び/又は人工髄核を注入後に針を引き抜くと、層板から剥がれた繊維がその元の位置に戻り、繊維輪を塞ぐ。繊維輪は椎間板の前部と側部のほうが厚い。従って、好ましい1実施形態では、椎間板の前部又は側部に針を挿入する。当業者に自明の通り、椎間板の側部へは蛍光内視鏡で経皮的に針を誘導することができ、椎間板の前部へは腹腔鏡により誘導することができる。
【0156】
上記送達手段に加え、本発明の抗体及び抗体部分は多数の治療用途に当分野で公知の各種方法により投与することもできる。当業者に自明の通り、投与経路及び/又は方式は所望結果により異なる。所定実施形態では、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル送達システム等の制御放出製剤のように、化合物の迅速放出を防止するキャリヤーを添加して活性化合物を製剤化することができる。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の多数の製造方法が特許登録されているか又は一般に当業者に公知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978参照。
【0157】
所定実施形態では、本発明の抗体又は抗体部分は例えば、不活性希釈剤又は同化性食用キャリヤーと共に局所投与することができる。化合物(及び必要に応じて他の成分)をハード又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入してもよいし、錠剤に圧縮してもよいし、対象の食事に直接混入してもよい。経口治療投与には、化合物に賦形剤を添加し、内服用錠剤、口腔用錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ、ウエハース等の形態で使用することができる。腸管外投与以外で本発明の化合物を投与するためには、その不活化を防止するための材料で化合物をコーティングするか、又はこのような材料と化合物を併用投与することが必要な場合もある。
【0158】
更に、治療剤をコードするDNAを細胞にin vitroトランスフェクトする遺伝子治療技術を使用して治療剤を投与してもよい。あるいは、椎間板の軟骨細胞を改変するようにウイルス又は非ウイルストランスフェクト剤を変性椎間板に注入してもよい。本発明の分子をコードする核酸をベクターに挿入し、遺伝子治療用ベクターとして使用することができる。例えば、静脈注射、局所投与(例えば米国特許第5,328,470号参照)、又は定位注入(例えばChenら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057参照)により遺伝子治療用ベクターを対象に送達することができる。遺伝子治療用ベクターの医薬製剤は許容可能な希釈剤に遺伝子治療用ベクターを加えたものでもよいし、遅放マトリックスに遺伝子送達用ビヒクルを埋め込んだものでもよい。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞から無傷に製造できる場合(例えばレトロウイルスベクター)には、医薬製剤は遺伝子送達システムを産生する1個以上の細胞を含むことができる。
【0159】
幹細胞は非濃縮又は濃縮形態で椎間板に注入することにより投与することができる。濃縮形態の場合には未培養でよい。未培養濃縮幹細胞は遠心、濾過、又は免疫吸着により容易に得ることができる。
【0160】
VII.変性脊椎疾患
本明細書で使用する「椎間板変性疾患」なる用語は変性した椎間板に関連、即ち誘因又は起因する任意症状を意味する。椎間板の変性は最終病理及び背痛の一般原因であると考えられている。
【0161】
椎間板は加齢と共に変性する。多くの点で核の組成が内側繊維輪の組成に近づくと思われるような変化が生じる。椎間板変性の少なくとも一因は核の組成変化である。核に由来するプロテオグリカンの分子量と含量はいずれも特に変性椎間板では年齢と共に低下し、核内のコンドロイチン硫酸に対するケラチン硫酸の比は増加することが判明した。これらの変化の結果、核はその水分結合能とその膨潤圧が低下する。その結果、核は水和度が低下し、その含水率は思春期前期では85%を上回るが、中年では約70−75%まで低下する。同等年齢の正常椎間板に比較して椎間板ヘルニアのグリコサミノグリカン含量は低下し、コラーゲン含量は増加していることが判明した。椎間板L−4−L−5及びL−5−S−1は通常、最も変性度の高い椎間板であり、腰痛の原因となる。
【0162】
椎間板は外傷又は疾患プロセスにより変位又は損傷する場合がある。この場合及び椎間板変性の場合には、髄核は脊柱管又は椎間孔内に脱出及び/又は突出することがあり、椎間板ヘルニア又は「滑脱」などと呼ばれる。この椎間板は脊髄神経を圧迫し、脊髄神経が部分的に塞がれた椎間孔を通って脊柱管から出ると、その神経分布領域に疼痛又は麻痺を生じる。椎間板ヘルニアの発生頻度が最も高い部位は下部腰椎領域である。この領域の椎間板ヘルニアは坐骨神経を圧迫することにより下肢症状の原因となることが多い。
【0163】
本発明の方法及び組成物を使用して治療することができる他の疾患としては限定されないが、巨大椎間板ヘルニア;再発性椎間板ヘルニア;L5仙骨移行部異常を伴う椎間板ヘルニア;固定部隣接分節の椎間板変性疾患;modic I変性症;及び部分的椎弓切除術により治療された腰椎管狭窄症等の椎間板ヘルニアが挙げられる。
【0164】
脊椎の変性は他の重篤症状を誘発する可能性がある。腰部脊柱管狭窄症は脊柱管が徐々に狭くなり、神経根と脊髄を圧迫することに起因する疾患である。椎間板ヘルニア(椎間板「滑脱」、「破裂」又は「断裂」とも言う)は椎間板の異常である。加齢と共に椎間板は柔軟性、弾性及び衝撃吸収性が低下する。変性疾患は、背痛、下肢痛、衰弱及びしびれ等の数種の異なる症状を誘発する可能性がある。
【0165】
更に、患部脊椎分節を牽引し、脊椎をやや屈曲位置に維持して脊柱管の拡大又は狭窄を防止することにより腰部脊柱管狭窄症の症状を緩和するためにも本発明の組成物及び方法によるIDP装置を使用することができる。腰椎狭窄症に起因する血管及び神経の圧迫と狭窄を緩和するためにもIPD装置を使用することができる。
【0166】
本発明の方法は変性脊椎疾患自体に加え、変性脊椎疾患に関連する疾患を治療するためにも使用される。
【0167】
均等物
以上、理解し易くする目的で本発明を詳細に記載したが、当然のことながら、所定の変形も請求の範囲内で実施可能である。
【0168】
本明細書に引用する全刊行物及び特許文献と、配列表に記載する内容は各々個々に記載した場合と同程度まで全目的で参照により全体を本明細書に組込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間板変性疾患の治療方法であって、疾患に羅患している対象に椎間板安定化装置を移植することと、椎間板変性疾患の治療が行われるように、椎間板の治癒を促進する少なくとも1種の治療剤を対象に投与することを含み治療剤が、
a)炎症促進性サイトカインを阻害する物質;
b)椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;
c)椎間板の血管新生を抑制する物質;及び
d)細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される前記方法。
【請求項2】
椎間板安定化装置を装着した対象に椎間板の治癒を促進する治療剤を投与することを含む変性脊椎疾患の治療方法であって、治療剤が、
a)炎症促進性サイトカインを阻害する物質;
b)椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;
c)椎間板の血管新生を抑制する物質;及び
d)細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される前記方法。
【請求項3】
椎間板安定化装置が耐荷重性である請求項1又は2の方法。
【請求項4】
椎間板安定化装置が椎間板外安定化装置又は椎間板内安定化装置である請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
椎間板外装置が棘突起間型装置又は椎弓根スクリュー型装置である請求項4の方法。
【請求項6】
棘突起間型装置が棘突起間スペーサー、棘突起間減圧(IPD)装置、及びU字形椎間装置から構成される群から選択される請求項5の方法。
【請求項7】
棘突起間スペーサーが、2本の棘突起間に挿入され、2つの側壁と、棘突起が嵌合する2本の対向する溝をもつ弾性変形可能なウェッジを含む請求項6の方法。
【請求項8】
棘突起間スペーサーが更に固定用連結材を含む請求項7の方法。
【請求項9】
棘突起間ウェッジが更に、
a)棘突起を溝に保持するための固定用連結材と;
b)第1の連結手段をもち、連結材が第1の方向に並進移動するときにこれを通ってスライドすることができ、連結材が第1の方向と逆の第2の方向に並進移動しないように固定するように構成された取外し可能なセルフロッキング固定部材を含み;及び
c)従って、側壁の少なくとも一方では、連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材は第2の方向に並進移動しないように固定され;
d)更に、ウェッジの側壁の少なくとも一方には、第1の連結手段と共働して取外し可能なセルフロッキング固定部材を側壁に連結するための第2の連結手段が配置されており、連結材の自由端が移動して連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材はブロックに対して第2の方向に並進移動しないように固定される請求項6の方法。
【請求項10】
椎弓根スクリュー型装置が動的外部スペーサー安定化システム、フレキシブルジョイントロッド、ヘリカルロッド、椎間補助移動用装置、及び完全後方脊椎システムから構成される群から選択される請求項5の方法。
【請求項11】
椎間板外インプラントが生体適合性ハイドロゲルと結合している請求項5から10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
ハイドロゲルが治療剤を含む請求項11の方法。
【請求項13】
椎間板インプラントが椎間板内安定化インプラントである請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項14】
椎間板内インプラントがハイドロゲルを含む請求項13の方法。
【請求項15】
椎間板内インプラントが椎間板の既存髄核又はその一部を支持又は置換する人工髄核である請求項10の方法。
【請求項16】
人工髄核が耐荷重性ポリマーを含む請求項15の方法。
【請求項17】
人工髄核が非耐荷重性ポリマーを含む請求項16の方法。
【請求項18】
人工髄核が生体適合性ハイドロゲルを含む請求項15から17のいずれか一項の方法。
【請求項19】
人工髄核がI型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリルから構成される群から選択される生体材料を含む請求項15から17のいずれか一項の方法。
【請求項20】
炎症促進性サイトカインを阻害する物質がTNFα阻害剤又は抗IL1阻害剤を含む請求項1から19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
抗TNFα阻害剤が抗体又はその抗原結合部分である請求項20の方法。
【請求項22】
抗TNFα抗体がいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項21の方法。
【請求項23】
抗TNFα抗体が、
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもつ;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつ
特性をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項21の方法。
【請求項24】
抗TNFα抗体が配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項21の方法。
【請求項25】
抗TNFα抗体又はその抗原結合部分がHumira(D2E7;アダリムマブ)、ゴリムマブ、又はRemicade(インフリキシマブ)である請求項21の方法。
【請求項26】
抗TNFα阻害剤がEnbrel(エタネルセプト)を含む融合蛋白である請求項20の方法。
【請求項27】
抗IL1阻害剤が抗体又はその抗原結合部分である請求項20の方法。
【請求項28】
増殖因子がTGFβスーパーファミリーのメンバーである請求項1から19のいずれか一項の方法。
【請求項29】
増殖因子がBMP2又はBMP7である請求項28の方法。
【請求項30】
血管新生を抑制する物質がVEGFを阻害する請求項1から19のいずれか一項の方法。
【請求項31】
抗酵素剤が抗アグリカナーゼ剤又は抗メタロプロテイナーゼ剤である請求項1から19のいずれか一項の方法。
【請求項32】
抗アグリカナーゼ剤がADAMTS5に対する請求項31の方法。
【請求項33】
治療剤が直接注射、薬剤送達インプラントの移植、及び遺伝子治療から構成される群から選択される送達手段を使用して送達される請求項1から32のいずれか一項の方法。
【請求項34】
自家細胞又は椎間板組織を復元もしくは改善する再生増殖因子を投与することを更に含む請求項1から33のいずれか一項の方法。
【請求項35】
細胞が軟骨細胞、間葉幹細胞、及び脂肪幹細胞から構成される群から選択される請求項34の方法。
【請求項36】
軟骨細胞が変性椎間板、無傷の非変性椎間板、及び非椎間板軟骨原料から構成される群から選択される少なくとも1種の原料から得られる請求項35の方法。
【請求項37】
疾患が椎間板変性疾患である請求項1から36のいずれか一項の方法。
【請求項38】
椎間板変性疾患に羅患している対象における損傷又は変性椎間板の椎間板品質の改善方法であって、
a)対象において耐荷重性椎間板安定化装置により椎間板の荷重を軽減することと;
b)治療剤を対象に投与することを含み、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される前記方法。
【請求項39】
対象における損傷又は変性椎間板の治療用治癒環境の促進方法であって、
a)対象において耐荷重性椎間板安定化装置により椎間板の荷重を軽減することと;
b)治療剤を対象に投与することを含み、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される前記方法。
【請求項40】
治療剤の投与前、投与と同時、又は投与後に椎間板安定化装置を対象に移植する請求項38又は39の方法。
【請求項41】
椎間板安定化装置が椎間板外安定化装置又は椎間板内安定化装置である請求項38又は39の方法。
【請求項42】
椎間板外装置が棘突起間型装置又は椎弓根スクリュー型装置である請求項41の方法。
【請求項43】
棘突起間型装置が棘突起間スペーサー、棘突起間減圧(IPD)装置、椎間補助移動用装置、及びU字形椎間装置から構成される群から選択される請求項42の方法。
【請求項44】
椎間装置が、2本の棘突起の間に挿入され、及び2つの側壁と、棘突起が嵌合する2本の対向する溝をもつ弾性変形可能なウェッジを含む請求項39の方法。
【請求項45】
棘突起間スペーサーが更に固定用連結材を含む請求項44の方法。
【請求項46】
棘突起間スペーサーが更に、
a)棘突起を溝に保持するための固定用連結材と;
b)第1の連結手段をもち、連結材が第1の方向に並進移動するときにこれを通ってスライドすることができ、連結材が第1の方向と逆の第2の方向に並進移動しないように固定するように構成された取外し可能なセルフロッキング固定部材を含み;及び
c)従って、側壁の少なくとも一方では、連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材は第2の方向に並進移動しないように固定され;
d)更に、ウェッジの側壁の少なくとも一方には、第1の連結手段と共働して取外し可能なセルフロッキング固定部材を側壁に連結するための第2の連結手段が配置されており、連結材の自由端が移動して連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材はブロックに対して第2の方向に並進移動しないように固定される請求項43の方法。
【請求項47】
椎弓根スクリュー型装置が動的外部スペーサー安定化システム、フレキシブルジョイントロッド、ヘリカルロッド、椎間補助移動用装置、及び完全後方脊椎システムから構成される群から選択される請求項42の方法。
【請求項48】
椎間板内装置が生体適合性ハイドロゲルを含む請求項41の方法。
【請求項49】
椎間板内装置が椎間板の既存髄核又はその一部を支持又は置換する人工髄核である請求項41の方法。
【請求項50】
人工髄核が生体適合性ハイドロゲルを含む請求項49の方法。
【請求項51】
人工髄核がI型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリルから構成される群から選択される生体材料を含む請求項50の方法。
【請求項52】
炎症促進性サイトカインを阻害する物質がTNFα阻害剤又は抗IL1阻害剤を含む請求項38から51のいずれか一項の方法。
【請求項53】
抗TNFα阻害剤が抗体又はその抗原結合部分である請求項52の方法。
【請求項54】
抗TNFα抗体がいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項53の方法。
【請求項55】
抗TNFα抗体が、
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもつ;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつ
特性をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項53の方法。
【請求項56】
抗TNFα抗体が配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項53の方法。
【請求項57】
抗TNFα抗体がHumira(D2E7;アダリムマブ)又はRemicade(インフリキシマブ)である請求項53の方法。
【請求項58】
変性脊椎疾患に羅患している対象の損傷又は変性椎間板に椎間板内安定化装置を移植することと、損傷又は変性椎間板に関連する炎症プロセスを抑制する治療剤を投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法。
【請求項59】
椎間板内装置が生体適合性ハイドロゲルを含む請求項58の方法。
【請求項60】
炎症プロセスの抑制の前、抑制と同時、又は抑制後に椎間板内装置を対象に移植する請求項58又は59の方法。
【請求項61】
椎間板内装置が椎間板の既存髄核又はその一部を支持又は置換する人工髄核である請求項58から60のいずれか一項の方法。
【請求項62】
人工髄核が生体適合性ハイドロゲルを含む請求項61の方法。
【請求項63】
人工髄核がI型コラーゲン、キトサン、フィブリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸塩、セルロース、グリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLA)フォーム、及びポリアクリロニトリルから構成される群から選択される生体材料を含む請求項62の方法。
【請求項64】
椎間板外安定化装置を移植することを更に含む請求項58から63のいずれか一項の方法。
【請求項65】
ハイドロゲルが炎症促進性サイトカインを阻害する物質を含む請求項59から62のいずれか一項の方法。
【請求項66】
変性脊椎疾患に羅患している対象の損傷又は変性椎間板に椎間板外安定化装置を移植することと、損傷又は変性椎間板に関連する炎症プロセスを抑制する治療剤を投与することを含む椎間板変性疾患の治療方法。
【請求項67】
椎間板外装置が棘突起間型装置又は椎弓根スクリュー型装置である請求項66の方法。
【請求項68】
棘突起間型装置が棘突起間スペーサー、棘突起間減圧(IPD)装置、椎間補助移動用装置、及びU字形椎間装置から構成される群から選択される請求項67の方法。
【請求項69】
椎間インプラントが、2本の棘突起間に挿入され、及び2つの側壁と、棘突起が嵌合する2本の対向する溝をもつ弾性変形可能なウェッジを含む請求項62の方法。
【請求項70】
棘突起間スペーサーが更に固定用連結材を含む請求項69の方法。
【請求項71】
棘突起間スペーサーが更に、
a)棘突起を溝に保持するための固定用連結材と;
b)第1の連結手段をもち、連結材が第1の方向に並進移動するときにこれを通ってスライドすることができ、連結材が第1の方向と逆の第2の方向に並進移動しないように固定するように構成された取外し可能なセルフロッキング固定部材を含み;及び
c)従って、側壁の少なくとも一方では、連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材は第2の方向に並進移動しないように固定され;
d)更に、ウェッジの側壁の少なくとも一方には、第1の連結手段と共働して取外し可能なセルフロッキング固定部材を側壁に連結するための第2の連結手段が配置されており、連結材の自由端が移動して連結材が第1の方向に並進移動すると、棘突起は溝にクランプされ、連結材はブロックに対して第2の方向に並進移動しないように固定される請求項68の方法。
【請求項72】
椎間板外装置が生体適合性ハイドロゲルと結合されている請求項66から71のいずれか一項の方法。
【請求項73】
ハイドロゲルが治療剤を含む請求項72の方法。
【請求項74】
治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する請求項58から73のいずれか一項の方法。
【請求項75】
治療剤が直接注射、薬剤送達インプラントの移植、及び遺伝子治療から構成される群から選択される送達手段を使用して投与される請求項58から74のいずれか一項の方法。
【請求項76】
椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される付加治療剤を投与することを更に含む請求項75の方法。
【請求項77】
生体適合性ハイドロゲルと椎間板の治癒を促進する治療剤を含む損傷又は変性椎間板の治癒を促進するための椎間板内装置であって、治療剤が炎症促進性サイトカインを阻害する物質;椎間板の細胞外マトリックスの分解を抑制する抗酵素剤;椎間板における血管新生を抑制する物質;及び細胞外マトリックス産生を促進する増殖因子から構成される群から選択される前記椎間板内装置。
【請求項78】
ハイドロゲルが耐荷重性である請求項77の椎間板内装置。
【請求項79】
ハイドロゲルが非耐荷重性ポリマーである請求項70の椎間板内装置。
【請求項80】
炎症促進性サイトカインを阻害する物質がTNFα阻害剤又は抗IL1阻害剤を含む請求項70から72のいずれか一項の椎間板内装置。
【請求項81】
抗TNFα阻害剤が抗体又はその抗原結合部分である請求項73の椎間板内装置。
【請求項82】
抗TNFα抗体がいずれも表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−8M以下のKと1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準in vitro L929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項74の椎間板内装置。
【請求項83】
抗TNFα抗体が、
a)表面プラズモン共鳴法により測定した場合に1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列、あるいは1、4、5、7もしくは8位の単独アラニン置換又は1、3、4、6、7、8及び/又は9位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾されたアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインをもつ;
c)配列番号4のアミノ酸配列、あるいは2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11位の単独アラニン置換又は2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12位の1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号4から修飾されたアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインをもつ
特性をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項74の椎間板内装置。
【請求項84】
抗TNFα抗体が配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)をもつ単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である請求項74の椎間板内装置。
【請求項85】
抗TNFα抗体がHumira(D2E7;アダリムマブ)又はRemicade(インフリキシマブ)である請求項74の椎間板内装置。
【請求項86】
抗TNFα阻害剤がEnbrel(エタネルセプト)である請求項73の椎間板内装置。
【請求項87】
抗IL1剤が抗体又はその抗原結合部分である請求項73の椎間板内装置。
【請求項88】
増殖因子がTGFβスーパーファミリーのメンバーである請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。
【請求項89】
増殖因子がBMP2又はBMP7である請求項88の椎間板内インプラント。
【請求項90】
血管新生を抑制する物質がVEGFを阻害する請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。
【請求項91】
抗酵素剤が抗アグリカナーゼ剤又は抗メタロプロテイナーゼ剤である請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。
【請求項92】
抗アグリカナーゼ剤がADAMTS5に対する請求項91の椎間板内インプラント。
【請求項93】
治療剤が直接注射、薬剤送達インプラントの移植、及び遺伝子治療から構成される群から選択される送達手段を使用して送達される請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。
【請求項94】
インプラントが人工髄核を含む請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。
【請求項95】
椎間板に注入するように設計された請求項77から79のいずれか一項の椎間板内インプラント。

【公表番号】特表2008−543449(P2008−543449A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517200(P2008−517200)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/023704
【国際公開番号】WO2006/138690
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】