説明

変更されたエフェクター機能を有する改良された抗体およびその抗体を産生する方法

本発明は、望ましいエフェクター機能を有する、非グリコシル化Fc含有ポリペプチド(例えば、抗体)を産生する方法を提供する。本発明はまた、上記方法により産生された非グリコシル化抗体、ならびにそのような抗体を治療法として使用する方法を提供する。本発明は、Fc領域を含む親ポリペプチドの改変体ポリペプチドを提供する。このFc領域は、好ましい側鎖化学を有する改変された第一のアミノ酸残基と、グリコシル化が減少した第二のアミノ酸残基とを含み、この改変体ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連情報)
本出願は、米国仮特許出願第60/497,193号(2003年8月22日に申請)の優先権を主張し、この仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本明細書の全体にわたって引用されたいずれの特許、特許出願、および参考文献の内容は、その全体が本明細書中に参考として援用されている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
免疫応答は、体に侵入し、感染または疾患をもたらす外来物質に対して体がそれ自身を防御するメカニズムである。このメカニズムは、宿主の可変領域を通して抗原に結合するために、産生されまたは宿主に投与された、抗体の能力に基づく。一度抗原が抗体によって結合される場合、この抗原は、抗体の定常領域またはFcドメインによって、多くの場合部分的に媒介され、破壊の標的となる
例えば、上記抗体のFcドメインの活動の1つは、標的抗原(例えば、細胞病原体)を溶解することを補助し得る、補体タンパク質に結合することである。Fc領域の別の活動は、免疫細胞(または、いわゆるエフェクター細胞)の表面のFcレセプター(FcR)に結合することであり、このエフェクター細胞は、他の免疫効果を誘発する能力を有する。これらの免疫効果としては、例えば、免疫活性物質の放出、抗体産生の調節、エンドサイトーシス、食菌作用、および細胞の死滅が挙げられる。いくつかの臨床上の適用において、これらの応答は、抗体の効力にとって重要であるが、他の場合において、これらは、望まれない副作用を引き起こす。エフェクターによって媒介された副作用の1つの例は、急性発熱反応をもたらす炎症サイトカインの放出である。別の例は、抗原保有細胞の長期欠失である。
【0004】
抗体のエフェクター機能は、Fc領域(例えば、Fab、Fab’2、または単鎖抗体(sFv))を欠く抗体フラグメントを使用することにより避けられ得るが、これらのフラグメントは、半減期の減少、2つの抗原結合部位の代わりに1つだけの抗原結合部位(例えば、Fab抗体フラグメントおよび単鎖抗体(sFv)の場合)を有し、そしてこれらのフラグメントを精製することは、より難しい。
【0005】
現在、Fc領域の他の価値のある特質を保持しながら、抗体のエフェクター機能を減少させるには限定された方法がある。1つのアプローチは、エフェクター結合相互作用に関与する抗体の表面のアミノ酸を変異することである。ある変異は、エフェクター機能の減少に結び付くが、残りの活動は通常そのままである。その上、これらの添加された変異は、抗体を免疫原性にし得る。
【0006】
エフェクター機能を減少させる別のアプローチは、Fc領域の特定の残基に結合される糖を、例えば、その糖が付着している残基を除去するかまたは変更することによってか、酵素的にその糖を除去することによってか、グリコシル化インヒビターの存在下で培養された細胞中に抗体を産生することによってか、あるいはタンパク質をグリコシル化し得ない細胞中で抗体を発現することによって、除去することである。しかし、前述のアプローチは、残基のエフェクター機能を補体依存性細胞溶解活性とFcレセプター結合との両方の形態のままにする。従って、エフェクター機能のさらなる減少が、活動の完全な除去を保証するために重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、変更されたまたは減少したエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を産生する改良された方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、最小限の変更のみを導入し、非グリコシル化抗原結合タンパク質(例えば、非グリコシル化抗体、より具体的には、非グリコシル化IgG抗体)を産生するための改良された方法を提供することによって、グリコシル化された抗体の(実際には、任意のFc含有タンパク質の)前述の問題を解決する。特に、本発明は、第一のアミノ酸残基位においてアミン酸変更を導入し、異なるまたは第二のアミノ酸残基位におけるポリペプチドのグリコシル化の減少を生じるための方法を提供する。この第一のアミノ酸は、望ましい側鎖化学を含むように改変され得、それゆえ、それは、例えば、付加的機能的部分(例えば、遮断部分、検出可能部分、診断部分、または治療部分)に結合され得る。この結果として生じる非グリコシル化抗原結合ポリペプチド(例えば、非グリコシル化IgG抗体)は、例えば、変更されたまたは減少したエフェクター機能を有する。このポリペプチドおよび本発明の方法によって提供された望まれないエフェクター機能の減少は、驚くべきことに、Fc領域をグリコシル化させない他の従来の手段よりも実質的であった。
【0009】
それゆえ、本発明は、いくつかの利点を有し、この利点は、限定されないが、以下を含むものである:
−減少されたエフェクター機能のため、治療法として適切な、非グリコシル化抗原結合ポリペプチド(例えば、非グリコシル化IgG抗体)を提供すること;
−ポリペプチドへ最小限の変更を伴い非グリコシル化抗体を産生する効率的な方法;
−望ましい機能的部分(例えば、遮断部分、検出可能部分、診断部分、または治療部分)に結合するための部位を提供しながらも、非グリコシル化抗体を産生する効率的な方法;
−免疫原性のいかなる増加を避けながら、抗体のエフェクター機能を変更する方法;および
−非グリコシル化抗原結合ポリペプチド治療を必要とする被験体を処置するための方法。
【0010】
それゆえ、1つの局面において、本発明は、Fc領域を含むポリペプチド(または改変体ポリペプチド)を提供し、このFc領域は、好ましい側鎖化学を有する改変された第一のアミノ酸残基と、改変されないポリペプチドまたは親ポリペプチドと比較してグリコシル化の減少した第二のアミノ酸残基とを有する。
【0011】
ある実施形態において、第一のアミノ酸残基の側鎖化学は、付加的部分(すなわち、機能的部分(例えば、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および/または治療部分))に結合(例えば、共有結合)され得る。
【0012】
1つの実施形態において、機能的部分は、遮断部分であり、この部分は、第二のアミノ酸残基におけるポリペプチドのグリコシル化を阻害または遮断する。この遮断部分はまた、エフェクター機能を遮断するために(例えば、ポリペプチドのFc領域のFcレセプターまたは補体タンパク質への結合を遮断することにより)機能し得る。
【0013】
好ましい実施形態において、遮断部分は、システイン付加体であり、このシステイン付加体は、第一のアミノ酸残基が、システインであるかまたはチオールを含む側鎖化学を有する場合に形成される。
【0014】
ある実施形態において、第一のアミノ酸は、システイン、システイン付加体、シスチン、混合ジスルフィド付加体、またはジスルフィド結合を含む。
【0015】
別の好ましい実施形態において、遮断部分は、ポリアルキレングリコール部分(例えばPEG部分および、好ましくはPEG−マレイミド部分)である。
【0016】
関連する実施形態において、ポリペプチドの第一のアミノ酸には、システインがあり、またはチオールを含む側鎖化学を有し、そしてPEG部分がそこに付着される。
【0017】
ある実施形態において、システインまたはチオール側鎖化学は、そのようなシステイン付加体、シスチン、混合ジスルフィド付加体、またはジスルフィド結合を除去するように減少され、そしてPEG部分が、続いて、システイン残基またはチオール側鎖に付着される。
【0018】
別の実施形態において、機能的部分は、検出可能部分(例えば、限定されないが、蛍光部分または同位体部分)である。
【0019】
別の実施形態において、機能的部分は、疾患または障害の存在を解明し得る部分である、診断部分である。
【0020】
別の実施形態において、機能的部分は、治療部分(例えば、限定されないが、抗炎症剤、抗癌剤、抗神経変性剤、または抗感染剤)である。
【0021】
別の局面において、親ポリペプチドの改変体ポリペプチドは、改変された第一のアミノ酸残基を有するFc領域を含み、この改変された第一のアミノ酸は、第二のアミノ酸におけるグリコシル化の減少が達成されるように、空間的に位置する。好ましい実施形態において、非グリコシル化改変体ポリペプチドはまた、親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する。
【0022】
関連する実施形態において、改変された第一のアミノ酸は、少なくとも1アミノ酸位置以上(例えば、約2アミノ酸残基位以上、約3アミノ酸残基位以上、約4アミノ酸残基位以上、約5アミノ酸残基位以上、約6アミノ酸残基位以上、約7アミノ酸残基位以上、約8アミノ酸残基位以上、約9アミノ酸残基位以上、または約10アミノ酸残基位以上)の間隔の分、第二のアミノ酸から離れて空間的に位置する。
【0023】
1つの実施形態において、改変された第一のアミノ酸残基は、好ましい側鎖化学を有する。関連する実施形態において、好ましい側鎖化学は、十分に立体的にかさ高くおよび/または十分な電荷を有し、それゆえこのポリペプチドは、グリコシル化の減少および/またはエフェクター機能の減少を示す。
【0024】
1つの実施形態において、減少したエフェクター機能は、Fcレセプター(FcR)(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIIIb)に対する減少した結合である。
【0025】
別の実施形態において、減少したエフェクター機能は、補体タンパク質(例えば、C1q)に対する減少した結合である。
【0026】
関連する実施形態において、減少した結合は、約1/1から約1/15以下の度合いまでである。
【0027】
別の実施形態において、ポリペプチドは、グリコシル化モチーフ(例えば、アミノ酸配列NXTまたはアミノ酸配列NXSを含むN結合グリコシル化モチーフ)の近くかまたはその中にある第一のアミノ酸残基および第二のアミノ酸残基を有する。特定の実施形態において、本方法のポリペプチドは、アミノ酸置換によって改変された第一のアミノ酸残基を有する。関連する実施形態において、カバット番号付けによると、第一のアミノ酸残基は、アミノ酸299であり、そして第二のアミノ酸残基は、アミノ酸297である。
【0028】
別の実施形態において、アミノ酸置換は、カバット番号付けによるT299A、T299N、T299G、T299Y、T299C、T299H、T299E、T299D、T299K、T299R、T299G、T299I、T299L、T299M、T299F、T299P、T299W、およびT299Vからなる群より選択される。
【0029】
特定の実施形態において、アミノ酸置換は、T299CまたはT299Aである。
【0030】
別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、改変された第一のアミノ酸残基(例えば、システイン残基)において、および特にPEG−マレイミドによって、ペグ化される。
【0031】
好ましい実施形態において、ポリペプチドは、抗体(例えば、抗体(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、またはIgG4、および好ましくは、IgGlまたはIgG4)から得られたFc領域を有する抗体)である。
【0032】
なお別の実施形態において、前述のポリペプチドは、変更されたエフェクター機能(例えば、Fcレセプター(FcR)(例えば、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIII)に対する減少した結合、または補体タンパク質(例えば、C1q)に対する減少した結合)を示す。
【0033】
別の実施形態において、前述のポリペプチドは、抗原(例えば、リガンド、サイトカイン、レセプター、細胞表面抗原、または癌細胞抗原)に結合する。
【0034】
別の実施形態において、前述のポリペプチドは、適切な薬学的キャリア中にある。
【0035】
別の局面において、本発明は、前述のポリペプチドのいずれか1つをコードする単離された核酸を提供し、この核酸は、ベクター中でコードされ得、それゆえ、例えば、同一のものをコードする核酸またはベクターが、宿主細胞中に発現され得る。
【0036】
別の局面において、本発明は、ポリペプチドを産生するために適切な培養条件下で、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含む外来宿主細胞を培養することによる、抗原結合ポリペプチドを産生するための方法を提供し、この方法に、例えば、この宿主細胞培養由来のポリペプチドを回収する工程が後に続く。
【0037】
別の局面において、本発明は、Fc領域においてグリコシル化が減少した、改変された抗原結合ポリペプチドを産生する方法を提供し、この方法において、元のポリペプチド中の元の第一のアミノ酸残基と元のポリペプチドのFc領域においてグリコシル化され得る第二のアミノ酸残基とを同定し、そして改変されたポリペプチド中に改変された第一のアミノ酸を産生するために元のポリペプチド中の元の第一のアミノ酸残基を改変し、それゆえFc領域の第二のアミノ酸残基のグリコシル化が、元のポリペプチドまたは親ポリペプチドと比較して改変されたポリペプチドまたは改変体ポリペプチドにおいて減少する。
【0038】
1つの実施形態において、上記方法は、改変された抗原結合ポリペプチドが変更されたエフェクター機能を示すか否かを確定する工程を包含し得る。
【0039】
別の局面において、本発明は、改変された場合に抗体のFc領域の第二のアミノ酸残基のグリコシル化を変更し得る、抗体の第一のアミノ酸残基を同定することにより、エフェクター機能を減少する方法を提供する。改変される第一のアミノ酸残基の同定は、例えば、モデル化のためのソフトを認識する技術を使用して、コンピューターによって補助され得る。次いで、この第一のアミノ酸残基は、Fc領域の第二のアミノ酸残基のグリコシル化が、改変されていない親抗体と比較して改変された抗体中で減少されるように、改変される。
【0040】
別の局面において、本発明は、いずれかの1つの前述の方法によって産生されたポリペプチドを提供する。
【0041】
別の局面において、本発明は、グリコシル化が減少したおよび/またはエフェクター機能が減少した本発明のポリペプチドを投与することによって動物(例えば、ヒト患者)の疾患または障害を診断、処置、または予防する方法を提供する。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、添付の詳細な説明および特許請求の範囲から明白である。
【0043】
(発明の詳細な説明)
本明細書および特許請求の範囲の明確な理解を提供するために、次ぎの定義が、以下に便宜上提供される。
【0044】
(定義)
用語「抗体」とは、モノクローナル抗体(全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびこれらのフラグメント(、グリコシル化の減少および/またはエフェクター機能の減少が、望ましい)、例えば、抗体軽鎖(VL)、抗体重鎖(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、および単一ドメイン抗体フラグメント(DAb)を含む。
【0045】
用語「親抗体」とは、グリコシル化、エフェクター機能の改変が望まれており、および/または例えば、機能的部分を添加するために好ましいまたは望ましい側鎖化学の提供が望まれている、任意の抗体を含む。従って、親抗体は、本発明の方法が実行される元の抗体を示す。この親ポリペプチドは、ネイティブの配列(すなわち、天然に存在する)抗体(天然に存在する対立改変体を含む)、または天然に存在する配列のうちの既に存在するアミノ酸配列の改変を有する抗体(例えば、挿入、欠失および/または他の変更)を含み得る。親抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。
【0046】
用語「抗体改変体」または「改変された抗体」とは、本明細書において記載されるように少なくとも1つのアミノ酸またはアミノ酸改変によって、親抗体のアミノ酸配列またはアミノ酸側鎖化学と異なるアミノ酸配列またはアミノ酸側鎖化学を有する抗体を含む。好ましい実施形態において、抗体改変体は、親抗体と比較してグリコシル化が減少しおよび、必要に応じて、エフェクター機能が減少し、ならびに/あるいはさらに1つ以上の機能的部分を含む。
【0047】
用語「第一のアミノ酸残基」とは、アミノ酸残基の挿入、置換、もしくは欠失によってか、または存在するアミノ酸残基の側鎖化学を直接的に変更することによって改変される、ポリペプチドのアミノ酸残基(または位)をいい、それゆえこの改変されたアミノ酸残基(または残基位)は、異なり、そしてそれによって、第二のアミノ酸残基のグリコシル化を減少するかまたは除去する。好ましくは、第一のアミノ酸の改変は、ポリペプチドのグリコシル化および/またはエフェクター機能に影響を与えながら(そして必要に応じて機能的部分に結合するための部位を提供しながら)、この改変は、ポリペプチドの他の望ましい機能を顕著に変更せず、それに付着した機能的部分もポリペプチドの他の望ましい機能を顕著に変更しない。例えば、Fc含有ポリペプチドが抗体である場合、第一のアミノ酸の改変は、抗体の抗原結合活性を顕著に変更しない。
【0048】
用語「第二のアミノ酸残基」とは、1以上の(例えば、グリコシル化された)炭水化物に共有結合し得るポリペプチドのアミノ酸残基をいう。
【0049】
用語「好ましい側鎖化学」とは、ポリペプチドに望ましい特徴を与える化学(例えば、アミノ酸残基側鎖またはR基化学)をいう。好ましい側鎖化学は、アミノ酸置換によって、化学的置換によって第一のアミノ酸位置に導入され、それゆえその側鎖化学は改変され、あるいは好ましい側鎖化学は、アミノ酸付加または欠失によって第一のアミノ酸位置に導入され、それゆえ異なるアミノ酸側鎖化学は、第一のアミノ酸位置に提供される。本明細書に記載されるように、親抗体の側鎖化学の改変(それゆえ、好ましい側鎖化学を含む)は、第二のアミノ酸位置におけるグリコシル化を減少し、エフェクター機能の減少をもたらす。この改変はまた、望ましい機能的部分に結合するための部位を提供する。ある実施形態において、好ましい側鎖化学に関する確定は、インシリコによってか、または第一のアミノ酸位置に導入される(例えば、置換によって)側鎖化学の立体的かさ高さおよび/もしくは電荷を確定するためのコンピューターに基づくアプローチによって伝えられ得る。
【0050】
用語「アミノ酸」とは、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リジン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);スレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)を含む。非伝統的アミノ酸はまた、本発明の範囲内であり、そしてノルロイシン、オミチン(omithine)、ノルバリン、ホモセリン、および他のアミン酸残基類似体(例えば、Ellmanら、Meth.Enzym.202:301−336(1991))を含む。そのような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Norenら、Science 244:182(1989)およびEllmanら、(前出)の手順が使用され得る。簡潔に、これらの手順は、天然に存在しないアミノ酸残基とともにサプレッサtRNAを化学的に活性し、そのRNAのインビトロ転写および翻訳が続くことに関与する。非伝統的なアミノ酸の導入はまた、当該分野において公知のペプチド化学を使用して達成され得る。
【0051】
用語「好ましい側鎖化学は、十分に立体的にかさ高い」とは、Fc含有ポリペプチドのグリコシル化および/またはそのエフェクター機能を阻害するために、十分に立体的にかさ高いアミノ酸残基の側鎖化学を含む。そのような残基としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、およびメチオニン、またはこれらの類似体またはこれらの模倣体が挙げられる。
【0052】
用語「好ましい側鎖化学は、十分な電荷を有する」または「静電荷」とは、Fc含有ポリペプチドのグリコシル化および/またはそのエフェクター機能を阻害するために、十分な電荷を有するアミノ酸残基の側鎖化学を含む。そのような残基としては、例えば、負に荷電したアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはこれらの類似体またはこれらの模倣体)および正に荷電したアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、およびこれらの類似体またはこれらの模倣体)が挙げられる。
【0053】
用語「好ましい側鎖化学は、十分に立体的にかさ高く、そして十分な電荷を有する」とは、Fc含有ポリペプチドのグリコシル化および/またはそのエフェクター機能を阻害するために、十分に立体的にかさ高くおよび十分な電荷を有するアミノ酸残基の側鎖化学を含む。そのような残基としては、例えば、リジン、アルギニン、チロシン、およびこれらの類似体またはこれらの模倣体が挙げられる。
【0054】
本明細書において使用される場合、用語「十分に」とは、概して、Fc含有ポリペプチド中の以下の少なくとも1つを達成する、本明細書において記載される好ましい改変をいう:ポリペプチドのグリコシル化の減少;ポリペプチドのエフェクター機能の減少;および/または機能的部分に結合するための部位の提供。
【0055】
用語「機能的部分」とは、好ましくは、改変体ポリペプチドに望ましい機能を添加する部分を含む。好ましくは、この機能は、ペプチドの内因的な望ましい活性(例えば、抗体の場合、分子の抗原結合活性)を顕著に変更することなし添加される。本発明の改変体ポリペプチドは、同じかまたは異なり得る1つ以上の機能的部分を含み得る。有用な機能的部分の例としては、限定されるのではなく、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および治療部分が挙げられる。模範的な遮断部分は、十分に立体的にかさ高いおよび/または十分な電荷を有する部分を含み、それゆえグリコシル化の減少は、例えば、ポリペプチドをグリコシル化するグリコシダーゼの能力を遮断することによって起こる。遮断部分は、さらにまたは代替的に、例えば、レセプターまたは補体タンパク質に結合するFc領域の能力を阻害することによりエフェクター機能を減少し得る。好ましい遮断部分は、システイン付加体、シスチン、混合ジスルフィド付加体、およびPEG部分を含む。模範的な検出可能部分としては、蛍光部分、ラジオ同位体部分、ラジオパク部分などが挙げられる。模範的な診断部分は、疾患または障害の指標の存在を解明するために適切な部分を含む。模範的な治療部分は、例えば、抗炎症剤、抗癌剤、抗神経変性剤、および抗感染剤を含む。機能的部分はまた、1つ以上の上に述べた機能を有し得る。他の有用な機能的部分は、当該分野において公知であり、以下に説明される。
【0056】
用語「ペグ化」、「ポリエチレングリコール」、または「PEG」とは、カップリング剤を有するかもしくは有さない、またはカップリング部分もしくは活性化部分(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート(tresylate)、アジリジン、オキシラン、または好ましくはマレイミド部分(例えば、PEG−マレイミド))との誘導体化を有するかもしくは有さない、ポリアルキレングリコール化合物またはその誘導体を含む。他の適切なポリアルキレングリコール化合物は、限定されないが、マレイミド(maleimido)モノメトキシPEG、活性化PEGポリプロピレングリコールを含み、そしてまた以下のタイプの荷電したポリマーまたは中性ポリマーを含む:デキストラン、コロミン酸、または他の炭水化物に基づくポリマー、アミノ酸のポリマー、およびビオチン誘導体。
【0057】
用語「空間的に位置する」とは、ポリペプチド中の改変された第一のアミノ酸位置と第二のアミノ酸位置との間の相対位または相対距離を含み、第一のアミノ酸位置を改変することにより第二のアミノ酸位置におけるグリコシル化を変更するかまたは減少することが望ましい。約1アミノ酸位置以上、約2アミノ酸位置以上、約3アミノ酸位置以上、約4アミノ酸位置以上、約5アミノ酸位置以上、約6アミノ酸位置以上、約7アミノ酸位置以上、約8アミノ酸位置以上、約9アミノ酸位置以上、約10アミノ酸位置以上、約10〜20アミノ酸位置以上のアミノ酸の距離、または前述の範囲の任意の間隔は、本発明の範囲内である。第一のアミノ酸および第二のアミノ酸の望ましい空間的位置付けが望ましい効果(例えば、グリコシル化の減少および/またはエフェクター機能の減少)を達成することを確定する方法は、当該分野において公知であり、そして本明細書において記載される(例えば、実施例1および実施例4を参照のこと)。
【0058】
用語「エフェクター機能」とは、免疫系のタンパク質および/または細胞を結合する抗体のFc領域または定常領域の機能的能力をいう。代表的なエフェクター機能は、補体タンパク質(例えば、補体タンパク質C1q)、および/またはFcレセプター(FcR)(例えば、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIIIb)に結合する能力を含む。1つ以上の前述のものに結合し得る機能的結果としては、オプソニン作用、食菌作用、抗原依存性細胞障害(ADCC)、補体依存性細胞障害(CDC)および/またはエフェクター細胞調節が挙げられる。エフェクター機能の減少とは、抗体(またはそのフラグメント)の可変領域の抗原結合活性を維持しながら、1つ以上の生化学的活性または細胞活性の減少をいう。エフェクター機能(例えば、Fcレセプターまたは補体タンパク質へのFc結合)の減少は、減少の度合い(例えば、1/1、1/2、など、まで減少される)の見地から表され得、そして例えば、本明細書において記載されるアッセイ(例えば、実施例4を参照のこと)または当該分野において公知のアッセイを使用して決定させる結合活性のパーセント減少に基づいて計算され得る。
【0059】
用語「グリコシル化」とは、ポリペプチドへの1つ以上の炭水化物の共有結合をいう。代表的には、グリコシル化は、翻訳後の事象であり、これは、細胞またはそこからの抽出物の細胞内の環境中で起こり得る。用語、グリコシル化とは、例えば、N結合グリコシル化(1つ以上の糖がアスパラギン残基に結合される場合)および/またはO結合グリコシル化(1つ以上の糖がヒドロキシル基(例えば、セリンまたはスレオニン)を有するアミノ酸残基に結合される場合)を含む。
【0060】
本明細書において、ポリペプチドのFc領域に関する全てのアミノ酸の番号付けは、例えば、Kabatら、“Sequences of Proteins of Immunological Interest"、U.S.Dept.Health and Human Services、1983および1987に記載されるカバット番号付けシステムに対応する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
(詳細な説明)
方法が、第二のアミノ酸残基におけるグリコシル化を阻害する第一のアミノ酸残基を変更することにより、非グリコシル化抗原結合ポリペプチド(例えば、抗体またはFc含有融合タンパク質)を産生するために発展してきた。この方法は本質的に、ポリペプチドへ最小限のアミノ酸変更のみを有する真核生物細胞の治療用の非グリコシル化Fc含有ポリペプチドを産生するために特によく適している。それによって、本発明の方法は、免疫原であり得るポリペプチドアミノ酸配列に導入することを避ける。
【0062】
好ましくは、第一のアミノ酸の改変は、ポリペプチドのグリコシル化および/またはエフェクター機能に影響を与えながら(および必要に応じて機能的部分に結合するための部位を提供しながら)、ポリペプチドの他の望ましい機能を顕著に変更せず、そこに付着した機能的部分も変更しない。例えば、Fc含有ポリペプチドが抗体である場合、第一のアミノ酸の改変は、抗体の抗原結合活性を顕著に変更しない。
【0063】
それゆえ、変更されたまたは減少したエフェクター機能が望ましい場合、本方法は、治療用の抗体(例えば、IgG抗体)を産生するために適切である。変更したまたは減少したエフェクター機能は、本発明の方法(図1)を使用して、抗体のFc領域のグリコシル化を減少または除去することによって達成される。特に、第一のアミノ酸残基は、第二のアミノ酸残基のグリコシル化を阻害する改変(例えば、置換、挿入、欠失、または化学的改変による)の標的にされる。結果として生じる抗体は、第二のアミノ酸残基においてグリコシル化されず、そして変更したまたは減少したエフェクター機能(例えば、補体結合活性またはエフェクター細胞活性(例えば、Fcレセプターへの結合))を有する。
【0064】
ある実施形態において、減少したエフェクター機能は、Fcレセプター(FcR)(例えば、FcγRIレセプター、FcγRIIレセプター、FcγRIIIレセプター、および/またはFcγRIIIbレセプター)または補体タンパク質(例えば、補体タンパク質C1q)に対する減少した結合である。結合に関するこの変化は、約1/1以下(例えば、約1/2以下、約1/3以下、約1/4以下、約1/5以下、約1/6以下、約1/7以下、約1/8以下、約1/9以下、約1/10以下、約1/15以下、約1/50以下、または約1/100以下)の度合いまでかまたはその間隔もしくはその範囲までであり得る。
【0065】
エフェクター機能(例えば、Fcレセプターまたは補体タンパク質に対するFc結合)におけるこれらの減少は、例えば、本明細書において記載されるアッセイ(例えば、実施例4を参照のこと)または当該分野において公知のアッセイを使用して決定させる結合活性のパーセント減少に基づいて容易に計算される。
【0066】
別の実施形態において、第一のアミノ酸残基は、十分に立体的にかさ高いおよび/または十分な電荷を有する好ましい側鎖化学を含むように改変されまたは置換され、それゆえグリコシル化の減少およびまたはエフェクター機能の減少が達成される。
【0067】
十分に立体的にかさ高い側鎖化学を有する模範的なアミノ酸残基としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、およびメチオニン、またはこれらの類似体またはこれらの模倣体が挙げられる。
【0068】
十分な電荷を有する模範的なアミノ酸残基としては、例えば、負に荷電したアミノ残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸類似体またはこれらの模倣体)および正に荷電したアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、およびこれらの類似体またはこれらの模倣体)が挙げられる。
【0069】
さらに、生理的pHを変更する環境に存在する場合、生理的pHにて荷電されていないアミノ酸残基は、荷電し得る(例えば、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、およびこれらの類似体またはこれらの模倣体)。例えば、荷電されていないアミノ酸残基は、折りたたまれたタンパク質の内側に埋められ、そしてpKaの移動を経験し得、それによって生理的pHにおける電荷と比較して、残基の電荷を変更し得る。
【0070】
1つの実施形態において、好ましいアミノ酸残基は、十分に立体的にかさ高くそして十分な電荷を有し、それゆえこの残基は、第二のアミノ酸位置におけるグリコシル化を阻害する。そのようなアミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニン、およびチロシンが挙げられる。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、改変されるアミノ酸残基は、付加的特性(例えば、ポリペプチドに対して望ましい特性を与える望ましい機能的部分を結合するための部位として役立つ)に関して選択され得る。そのような好ましい部分の例としては、例えば、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および治療部分が挙げられる。
【0072】
別の実施形態としては、親ポリペプチドの改変体ポリペプチドは、改変された第一のアミノ酸残基を含むFc領域を含み、この改変された第一のアミノ酸は、空間的に位置し、それゆえ第二のアミノ酸においてグリコシル化の減少が達成され、それによって改変体ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する。
【0073】
好ましい空間的位置付けは、第一のアミノ酸の第二のアミノ酸に対する予測された近接性ならびに第一のアミノ酸位置に導入される好ましい側鎖化学の立体的かさ高さおよび/または電荷に基づき得る。あるいは、最適な空間的位置付けに関する確定は、1位以上の好ましいアミノ酸側鎖化学の置換後の経験的な観察によるか、ならびに/あるいはインシリコまたは立体的かさ高さ、電荷、および/または第二のアミノ酸位置からの第一のアミノ酸位置の距離を確定するためのコンピューターに基づくアプローチを認識する技術を使用して、伝えられ得る。約1残基位以上、約2残基位以上、約3残基位以上、約4残基位以上、約5残基位以上、約6残基位以上、約7残基位以上、約8残基位以上、約9残基位以上、約10残基位以上、約10〜20残基位以上のアミノ酸の距離、または前述の範囲の任意の間隔は、本発明の範囲内である。従って、ある好ましい実施形態において、改変された第一のアミノ酸は、少なくとも1アミノ酸位置以上(例えば、2アミノ酸位置以上、3アミノ酸位置以上、4アミノ酸位置以上、5アミノ酸位置以上、6アミノ酸位置以上、7アミノ酸位置以上、8アミノ酸位置以上、9アミノ酸位置以上、または10アミノ酸位置以上)の間隔の分、第二のアミノ酸から離れて空間的に位置する。
【0074】
第一のアミノ酸および第二のアミノ酸の望ましい空間的位置付けが、望ましい効果(例えば、グリコシル化の減少および/またはエフェクター機能の減少)を達成することを確定する方法が、本明細書において記載される(例えば、実施例1および実施例4を参照のこと)。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、Fc含有ポリペプチド(例えば抗体、そして好ましくはIgG免疫グロブリン(例えば、そのサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、そして好ましくはサブタイプIgG1またはIgG4))である。好ましい実施形態において、前述のポリペプチドは、抗原(例えば、リガンド、サイトカイン、レセプター、細胞表面抗原、または癌細胞抗原)に結合する。
【0076】
本発明は前述のポリペプチドのいずれか1つをコードする単離された核酸を提供するので、この核酸は、ベクターに導入され得、そして宿主細胞中に発現され得る。それゆえ、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドを産生するための適切な培養条件下で、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含む適切な宿主細胞を培養することによって産生され得る。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、システイン残基またはその側鎖化学(すなわち、チオール)を有するように改変された第一のアミノ酸を有し、それゆえこのポリペプチドは、上記培養条件下で、その培養条件下において提供された遊離システインを有する付加体を形成し得る。好ましい実施形態において、その結果として生じるポリぺプチドは、等価の減少およびエフェクター機能の減少を有する。
【0078】
関連する実施形態において、上記ポリペプチドは、さらに操作され得(例えば、還元条件を受ける)、それゆえシステイン付加体、シスチン、混合ジスルフィド付加体、またはジスルフィド結合は除去され、それによって機能的部分(例えば、ペグ化部分)を有するポリペプチドをさらに改変するための部位を提供する。
【0079】
別の実施形態において、ポリペプチドは、グリコシル化モチーフ(例えば、アミノ酸配列NXTまたはアミノ酸配列NXSを含むN結合グリコシル化モチーフ)の近くかまたはその中の第一のアミノ酸残基および第二のアミノ酸残基を有する。特定の実施形態において、本方法のポリペプチドは、アミノ酸置換によって改変された第一のアミノ酸残基を有する。関連する実施形態において、カバット番号付けによると、第一のアミノ酸残基は、アミノ酸299であり、そして第二のアミノ酸残基は、アミノ酸297である。
【0080】
別の実施形態において、アミノ酸置換は、カバット番号付けによるT299A、T299N、T299G、T299Y、T299C、T299H、T299E、T299D、T299K、T299R、T299G、T299I、T299L、T299M、T299F、T299P、T299W、およびT299Vからなる群より選択される。
【0081】
特定の実施形態によると、アミノ酸置換は、T299CまたはT299Aである。
【0082】
本明細書において記載される本発明の方法は、Fc領域(アミノ酸297)(図1〜2)の特定の残基において通常Nグリコシル化されるIgG抗体を使用するが、この方法は、任意のポリペプチド中のFc領域に平等に適用され得ると理解される。ポリペプチドが抗体である場合、この抗体は、人工のものか、天然に由来するか(例えば、血清から)、細胞株によって産生されるか(例えば、ハイブリドーマ)、またはトランスジェニック生物体中に産生され得る。なおさらに、この方法はまた、ポリペピチドが少なくとも1つのグリコシル化部位を含む場合、Fc領域を含まないポリペプチドに適用され得る。
【0083】
上記方法は、現在の変異誘発方法においていくつかの利点を提供するのは、例えば、この方法は、最小限に混乱を起こさせる方法で(図2、左のパネル)(例えば、通常グリコシル化される残基の変異、グリコシル化部位の欠失、または糖部分の酵素的除去を伴わない)、ポリペプチドのグリコシル化を阻害するように使用され得るからである。それゆえ、このポリペプチドの構造は維持され、このポリペプチドの抗原に対する結合親和性が維持され、このポリペプチドの免疫原性が回避され、そしてこのポリペプチドは、もし所望ならば、望ましい機能的部分に結合され得る(図2、右のパネル)。そのような機能的部分はさらに、エフェクター機能を排除し得、またはポリペプチドの半減期を改良し得、または望ましい治療機能を達成し得る。その上、本発明の方法は、標準的な遺伝子操作技術を使用して実行され得る。
【0084】
(1.グリコシル化部位の同定)
本方法は、Fc含有ポリペプチド(例えば、抗体、1つの実施形態においてはIgG抗体)のグリコシル化部位を同定することによって実行される。グリコシル化部位の同定は、実験的であり得るかまたは配列分析もしくはモデル化のためのデータに基づき得る。コンセンサスモチーフ(すなわち、種々のグリコシルトランスフェラーゼによって認識されるアミノ酸配列)が、説明されている。例えば、N結合グリコシル化モチーフのためのコンセンサスモチーフは、頻繁にNXTまたはNXSであり、Xは、プロリンを除いた任意のアミノ酸であり得る(図2)。潜在的なグリコシル化モチーフを位置付けるためのいくつかのアルゴリズムがまた、記載されている。それゆえ、抗体またはFc含有フラグメント中の潜在的なグリコシル化部位を同定するために、抗体の配列が、例えば、公に入手可能なデータベース(例えば、the Center for Biological Sequence Analysisによって提供されるウェブサイト(N結合グリコシル化部位を予測するためにwww.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/およびO結合グリコシル化部位を予測するためにwww.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc/を参照のこと))を使用することによって調べられる。抗体のグリコシル化部位を変更するためのさらなる方法は、例えば、米国特許第6,350,861号および同第5,714,350号に記載されている。
【0085】
ある場合には、所定のモチーフのグリコシル化は、タンパク質の他の特性、細胞または細胞抽出物の種類、および抗体が産生されるまたは抗体がそのような細胞もしくは抽出物と接触される条件に依存する。所定の細胞または抽出物が所定のモチーフのグリコシル化をもたらす程度に、このモチーフがグリコシル化されているか否かを確定するための技術を認識する技術は、例えば、本明細書中に記載されたようなゲル電気泳動および/または質量分光法を使用して、入手可能である。
【0086】
実際のまたは潜在的なグリコシル化モチーフの同定はまた、糖が共有結合される残基を解明する。例えば、N結合グリコシル化は、アスパラギン残基における末端側鎖窒素への糖残基(グリカン)の結合をもたらす。別の例において、O結合グリコシル化は、ヒドロキシル側基(例えば、セリンまたはスレオニン)を有するアミノ酸残基への糖残基(グリカン)の共有結合をもたらす。どちらかの場合においても、本発明の方法は、1つ以上の糖が共有結合される残基を変更しない。むしろ、本発明の方法は、シスにおいて作動するメカニズムによって糖残基に通常共有結合される残基と異なる残基の変更を利用し、それによって糖への結合し得る(すなわち、グリコシル化された)実際の残基の変更を必要とすることなしに、残基への1つ以上の糖の連結を阻害する。
【0087】
本発明の方法は、真核生物細胞を使用した非グリコシル化ポリペプチドの生物生産を含む、種々の使用へ適用可能である。そのような非グリコシル化ポリペプチド(例えば、抗体)は、ヒト疾患の処置のための望ましい治療法である。
【0088】
(2.変更されたFc領域を有する抗体の産生)
改良される抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または人工抗体)を選択し、種々の方法が、そのような抗体を産生するために入手可能である。コードの変質のため、種々の核酸配列が、各抗体アミノ酸配列をコードする。望ましい核酸配列は、デノボ固相DNA合成によってかまたは抗体をコードする早期に調製されたポリヌクレオチドのPCR突然変異誘発によって産生され得る。オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発は、第二の(通常、近接した)アミノ酸のグリコシル化を減少する変更(例えば、変更されたコドン)の置換、欠失、または挿入を調製するための1つの方法である。例えば、標的ポリペプチドDNAは、単鎖DNAテンプレートに望ましい変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブッド形成することによって変更される。ハイブリッド形成の後、DNAポリメラーゼが、オリゴヌクレオチドプライマーを取り込むテンプレートの全体の第二の相補鎖を合成するために使用され、そして改変体ポリペプチドDNA中に選択された変更をコードする。1つの実施形態において、遺伝子工学(例えば、プライマーに基づくPCR突然変異誘発)は、真核生物細胞中において発現される場合、非グリコシル化領域(例えば、非グリコシル化Fc領域)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを産生するための、本明細書に規定されるような第一のアミノ酸を変更するのに差し支えない。上述のように産生された抗体は、代表的には、ヒト定常領域(Fc)の少なくとも一部(代表的には、ヒト免疫グロブリンの一部)を含む。通常、抗体は、軽鎖定常領域と重鎖定常領域との両方を含む。この重鎖定常領域は、通常CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。しかし、本明細書において記載された抗体は、全てのタイプの定常領域(IgM、IgG、IgD、およびIgEを含む)および任意のアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)を有する抗体を含む。1つの実施形態において、ヒトアイソタイプIgG1が、使用される。別の実施形態において、ヒトアイソタイプIgG4が使用される。軽鎖定常領域は、λまたはκであり得る。ヒト化抗体は、1を超えるクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含み得る。抗体は、別個の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvとして、または単鎖抗体(sFv)として、2つの軽鎖および2つの重鎖を含むテトラマーとして発現され得、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、スペーサーを通じて結合される。
【0089】
Fc領域(例えば、抗体)を含むポリペプチドのエフェクター機能を確定するための方法は、本明細書において記載され、そしてFcレセプターへ結合するための改変されたFc領域の能力の変化を確定するための細胞に基づく架橋アッセイを含む。他の結合アッセイは、補体タンパク質(例えば、C1q補体タンパク質)へ結合するためのFc領域の能力を確定するために使用され得る。改変されたFc領域のエフェクター機能を確定するためのさらなる技術は、当該分野において説明される。
【0090】
(3.機能的部分およびそのような部分をFc含有ポリペプチドへ結合する化学)
本発明は、抗体およびFc含有ポリペプチドを提供し、この抗体およびFc含有ポリペプチドは、さらに望ましい効果を提供するために改変され得る。例えば、好ましい実施形態において、第一のアミノ酸は、第二の部位におけるポリペプチドのグリコシル化を改変するだけでなく望ましい側鎖化学の提供もする残基へ改変される。
【0091】
ある好ましい実施形態において、アミノ酸残基の側鎖化学は、付加的部分(すなわち、機能的部分(例えば、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および/または治療部分))へ結合(例えば、共有結合)され得る。模範的な機能的部分は、始め以下に記載され、そのような機能的部分を異なるアミノ酸側鎖化学へ結合するための有用な化学が続けられる。
【0092】
(3.1 機能的部分)
有用な機能的部分の例としては、限定されないが、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および治療部分が挙げられる。
【0093】
模範的な遮断部分は、十分に立体的にかさ高いおよび/または十分な電荷を有する部分を含み、それゆえ糖下の減少が例えば、グリコシダーゼのポリペプチドをグリコシル化する能力を遮断することによって起こる。この遮断部分は、付加的にまたは代替的に、例えば、Fc領域のレセプターまたは補体タンパク質へ結合する能力を阻害することによってエフェクター機能を減少し得る。好ましい遮断部分は、システイン付加体およびPEG部分を含む。
【0094】
好ましい実施形態において、遮断部分は、システインであり、好ましくは、例えば、細胞培養中において、Fc含有ポリペプチドの、例えば翻訳の間かまたは翻訳後に、遊離システインと関連するシステインである。他の遮断システイン付加体としては、シスチン、混合ジスルフィド付加体、またはジスルフィド結合が挙げられる。
【0095】
別の好ましい実施形態において、遮断部分は、ポリアルキレングリコール部分(例えばPEG部分、そして好ましくはPEG−マレイミド部分)である。好ましいペグ化部分(または関連するポリマー)は、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、ポリオキシエチル化グリセロール(「POG」)および他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール(「PVA」)および他のポリアルキレン酸化物、ポリオキシエチル化ソルビトール、またはポリオキシエチル化グルコースであり得る。上記ポリマーは、それが少なくとも1つの活性スルホン部分を有する限り、ホモポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、上に一覧にされたモノマーに基づくターポリマー、直鎖または分岐鎖、置換鎖または非置換鎖であり得る。ポリマー部分は、任意の長さまたは分子量であり得るが、これらの特徴は、生物学的特性を影響し得る。薬学的適用においてクリアランス速度を減少するために特に有用なポリマーの平均分子量は、2,000〜35,000 daltonの範囲にある。さらに、2つの基がポリマーに結合される場合(1つの基が各末端に結合される)、ポリマーの長さは、2つの基の間の有効距離および他の空間的関係に影響し得る。従って、当業者は、望ましい生物活性を最適化するためかまたは与えるためにポリマーの長さを変動し得る。PEGは、いくつかの理由で生物学的適応において有用である。PEGは、代表的に、透明、無色、無臭、水に溶け、熱に対して安定、多くの化学的試薬に対して不活性であり、加水分解せず、そして無毒である。ペグ化は、分子の外見上の分子量を増加させることによって分子の薬物動態学上の性能を改良し得る。この増加された外見上の分子量は、皮下投与または全身投与に続く体からのクリアランス速度を減少する。多くの場合、ペグ化は、抗原性および免疫原性を減少し得る。さらに、ペグ化は、生物活性分子の溶解度を増加し得る。
【0096】
ペグ化された抗体および抗体フラグメントは、概して、本明細書において記載される抗体および抗体フラグメントの投与により軽減または調節され得る条件を処置するために使用され得る。概して、ペグ化された非グリコシル化抗体および抗体フラグメントは、ペグ化されず非グリコシル化抗体および抗体フラグメントと比較して、半減期を増加する。ペグ化され非グリコシル化抗体および抗体フラグメントは、単独で、ともに、または他の薬学的組成物と組み合わせて使用され得る。
【0097】
本発明の方法およびポリペプチドにおいて有用な検出可能部分の例としては、蛍光部分、ラジオ同位体部分、ラジオパク部分、など(例えば、検出可能標識(例えば、ビオチン、発蛍団、発色団、スピン共鳴プローブ、またはラジオ標識))が挙げられる。模範的な発蛍団としては、蛍光染色(例えば、フルオレセイン、ローダミン、など)および他のルミネセント分子(例えば、ルミナール)が挙げられる。発蛍団は、環境に敏感であり得、それゆえ、それが基質(例えば、ダンシルプローブ)に結合する際に構造的変化を受ける改変されるタンパク質中の1つ以上の残基の近くに位置付けされる場合、その蛍光は変化する。模範的なラジオ標識は、1つ以上の感受性の低い核を有する低分子含有原子(13C、15N、H、125I、123I、99Tc、43K、52Fe、67Ga、68Ga、111Inなど)を含む。他の有用な部分は、当該分野において公知である。
【0098】
本発明の方法およびポリペプチドにおいて有用である診断部分の例としては、疾患または障害の存在を解明するために適切な検出可能部分が挙げられる。代表的には、診断部分は、分子(例えば、疾患または障害に関連する標的ペプチド、タンパク質、または複数のタンパク質)の存在、非存在、またはレベルを確定することを可能にする。そのような診断はまた、疾患または障害およびその進行の予後診断および/または診断するために適している。
【0099】
本発明の方法およびポリペプチドにおいて有用である治療部分の例としては、例えば、抗炎症剤、抗癌剤、抗神経変性剤、および抗感染剤が挙げられる。この機能的部分はまた、1つ以上の上に述べられた機能を有する。
【0100】
模範的な治療法としては、核DNAに複数の鎖切断をもたらし得る高エネルギー電離放射線を有する放射性核種が挙げられ、それゆえ(例えば、癌の)細胞死を誘導するために適切である。模範的な高エネルギー放射性核種としては、90Y、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Reおよび188Reが挙げられる。これらのアイソトープは、代表的に、短い道程を有する高エネルギーα粒子またはβ粒子を産生する。そのような放射性核種は、それが非常に近接にある細胞(例えば、接合が付着したかまたは入った腫瘍性細胞)を死滅させる。この放射性核種は、局在化されていない細胞に対しわずかな影響かまたは影響がなく、そして本質的に非免疫原性である。
【0101】
模範的な治療法としてはまた、細胞障害剤(例えば、細胞増殖抑制剤(例えば、アルキル化剤、DNA合成インヒビター、DNA挿入剤または架橋剤、またはDNA−RNA転写調節因子)、酵素インヒビター、遺伝子調節因子、細胞障害ヌクレオシド、チューブリン結合剤、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、抗新脈管形成剤、など)が挙げられる。
【0102】
模範的な治療法としてはまた、アルキル化剤(例えば、アントラサイクリン族の治療薬(例えば、アドリアマイシン、カルミノマイシン(carminomycin)、シクロスポリンA、クロロキン、メトプテリン、ミトラマイシン、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、ストレプトニグリン、ポルフィロマイシン、アントラセンジオンおよびアジリジン)が挙げられる。別の実施形態において、化学療法部分は、細胞増殖抑制剤(例えば、DNA合成インヒビター)である。DNA合成インヒビターの例としては、制限されないが、メトトレキサート、およびジクロロメトトレキサート、3−アミノ−1,2,4−ベンゾトリアジン1,4−ジオキシド、アミノプテリン、シトシンβ−D−アラビノフラノシド、5−フルオロ−5’−デオキシウリジン、5−フルオロウラシル、ガンシクロビル、ヒドロキシ尿素、アクチノマイシン−D、およびマイトマイシン−Cが挙げられる。模範的なDNA挿入剤または架橋剤としては、限定されないが、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、シス−ジアミン白金(II)ニ塩化物(シスプラチン)、メルファラン、ミトザントロン、およびオキサリプラチンが挙げられる
模範的な治療法としてはまた、転写調節因子(例えば、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ホモハリングトニン(homoharringtonine)、およびイダルビシンが挙げられる。本発明と両立する他の模範的な細胞障害剤としては、アンサマイシンベンゾキノン、キノイド誘導体(例えば、キノロン、ゲニステイン、バクタサイクリン(bactacyclin))、ブスルファン、イホスファミド、メクロレタミン、トリアジクオン(triaziquone)、ジアジクオン(diaziquone)、カルバジルキノン、インドールキノンEO9、ジアジリジニル(diaziridinyl)−ベンゾキノンメチルDZQ、トリエチレンホスホラミド、およびニトロソ尿素類化合物(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)が挙げられる。
【0103】
模範的な治療法としてはまた、細胞障害ヌクレオシド(例えば、アデノシンアラビノシド、シタラビン、シトシンアラビノシド、5−フルオロウラシル、フルダラビン(fludarabine)、フロクスウリジン、フトラファー(ftorafur)、および6−メルカプトプリン;チューブリン結合剤(例えば、タキソイド(taxoids)(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、タキサン類)、ノコダゾール(nocodazole)、リゾキシン(rhizoxin)、ドラスタチン(dolastatin)(例えば、ドラスタチン−10、−11、または−15)、コルヒチンおよびコルヒチノイド(colchicinoid)(例えば、ZD6126)、コンブレタスタチン(combretastatin)(例えば、コンブレタスタチンA−4、AVE−6032)、およびビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン(vinorelbine)(ナベルビン(navelbine));抗血管形成化合物(例えば、アンジオスタチンK1−3、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、および(±)−サリドマイドが挙げられる
模範的な治療法としてはまた、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト(例えば、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンまたはメドロプロゲステロン)、エストロゲン、(例えば、ジエチルスチルベストロール)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)、アンドロゲン(例えば、テストステロン)、アロマターゼインヒビター(例えば、アミノグルテチミド)、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−アミノ−1,8−ナフサリミド、アピゲニン、ブレフェルジン(brefeldin)A、シメチジン、ジクロロメチレン−二リン酸、ロイプロリド(ロイプロレリン(leuprorelin))、黄体化ホルモン放出ホルモン、ピフィスリン(pifithrin)−α、ラパマイシン、性ホルモン結合グロブリン、およびタプシガルジン)が挙げられる。
【0104】
模範的な治療法としてはまた、酵素インヒビター(例えば、S(+)−カンプトセシン、クルクミン、(−)−デグエリン(deguelin)、5,6−ジクロロベンズ−イミダゾール1−β−D−リボフラノシド、エトポシド、ホルメスタン(formestane)、ホストリエシン(fostriecin)、ヒスピジン(hispidin)、2−イミノ−1−イミダゾリジン酢酸(シクロクレアチン)、メビノリン、トリコスタチンA、チルホスチン(tyrphostin)AG 34、およびチルホスチンAG 879)が挙げられる。
【0105】
模範的な治療法としてはまた、遺伝子調節因子(例えば、5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−アザシチジン、コレカルシフェロール(ビタミンD)、4−ヒドロキシタモキシフェン、メラトニン、ミフェプリストーン、ラロキシフェン、トランス−レチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチン酸、ビタミンA酸、9−シス−レチン酸、13−シス−レチン酸、レチノール(ビタミンA)、タモキシフェン、およびトログリタゾン)が挙げられる。
【0106】
模範的な治療法としてはまた、細胞障害剤(例えば、プテリジン族の治療薬、ジイネン(diynene)、およびポドフィロトキシン)が挙げられる。これらのクラスの特に有用なメンバーとしては、例えば、メトプテリン、ポドフィロトキシン、またはポドフィロトキシン誘導体(例えば、エトポシドまたはエトポシドリン酸、リューロシジン(leurosidine)、ビンデシン、リューロイシン(leurosine)など)が挙げられる。
【0107】
本明細書の教義と両立するさらに他の細胞毒性としては、アウリスタチン(auristatin)(例えば、アウリスタチンEおよびモノメチルアウリスタンE)、カリーチアミシン(calicheamicin)、グラミシジンD、メイタンサノイド(例えば、メイタンシン)、ネオカルチノスタチン、トポテカン、タキサン類、サイトカラシンB、エチジウム臭化物、エメチン、テノポシド(tenoposide)、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトザントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、プロマイシン、およびこれらの類似体またはこれらの相同体が挙げられる。
【0108】
機能的部分の他のタイプは、当該分野において公知であり、そして本明細書に含まれる教義に基づく本発明の方法および組成物において容易に使用され得る。
【0109】
(3.2.機能的部分をアミノ酸側鎖に結合するための化学)
前述の機能的部分(それは、低分子、核酸、ポリマー、ペプチド、タンパク質、化学治療法剤、または他のタイプの分子)を特定のアミノ酸側鎖に結合するための化学は、当該分野において公知である(特定のリンカーの詳細な概説に関しては、例えば、Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)を参照のこと)。
【0110】
スルフヒドリル部分(例えば、システイン、またはチオール側鎖化学)に関する基を結合すると認識される模範的な技術は、限定されないが、活性化アシル基(例えば、α−ハロアセテート、クロロ酢酸、またはクロロアセトアミド)、活性化アルキル基、Michaelアクセプター(例えば、マレイミド)またはアクリル基、レドックス反応を介してスルフヒドリル部分と反応する基、および活性化ジスルフィド基を含む。スルフヒドリル部分はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、Nアルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジルジスルフィド、p−クロロマーキュリベンゾアート、2−クロロマーキュリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって結合され得る。
【0111】
好ましい実施形態において、システイン側鎖化学またはチオール側鎖化学は、Fc含有ポリペプチドの生成の間またはその生成後に結合される。例えば、細胞培養を使用して改変されたFc含有ポリペプチドを産生する場合、溶液中の遊離システインが、Fc含有ポリペプチドのチオール側鎖を有するシステイン付加体を形成し得るような条件が提供される。そのように形成された付加体は、グリコシル化および/またはエフェクター機能を阻害するために使用され得、または続いてこの付加体を除去するための還元条件を受け、そしてそれによって1つの前述のスルフヒドリル化学の使用を可能にする。
【0112】
ヒドロキシル部分(例えば、セリン、スレオニン、またはチロシン側鎖化学)に関する基を結合すると認識される模範的な技術は、スルフヒドリル部分(活性化アシル基、活性化アルキル基、およびMichaelアクセプターを含む)に関する上述の部分を含む。
【0113】
アミン部分(例えば、アスパラギンまたはアルギニン側鎖化学)に関する基を結合すると認識される模範的な技術としては、限定されないが、N−スクシニミジル、N−スルホスクシニミジル、N−フタリミジル、N−スルホフタリミジル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、3−スルフォニル−4−ニトロフェニル、3−カルボキシ−4−ニトロフェニル、イミドエステル(例えば、メチルピコリニミデート)、ピリドキサルリン酸、ピリドキサル、クロロボロハイドライド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイオ尿素(methyliosurea)、および2,4−ペンタンジオンが挙げられる。
【0114】
酸部分(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン側鎖化学)に関する基を結合すると認識される模範的な技術は、活性化エステルおよび活性化カルボニルを含む。酸部分はまた、カルボジイミド(R’N‐C‐N‐R’)(例えば、1−シクロヘキシル−3−[2‐モルホリニル−(4‐エチル)]カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に改変され得る。
【0115】
望ましい機能的部分が、ペグ化部分である場合、当該分野において公知のペグ化反応が、利用され、または本明細書において記載されるようなものである(例えば、実施例3も参照のこと)。例えば、1つの方法において、ペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実行される。本発明の抗体および抗体フラグメントのペグ化のための水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。別の実施形態において、ペグ化のためのポリマーは、ポリエチレングリコール−マレイミド(すなわち、PEG−マレイミド)である。
【0116】
本発明のペグ化抗体および抗体フラグメントを調製するための方法は、概して、a)抗体または抗体フラグメントが1つ以上のPEG基に付着されるような条件下で、抗体または抗体フラグメントをポリエチレングリコール(例えば、反応性エステルまたはPEGのアルデヒド誘導体)と反応させる工程、およびb)この反応産生物を得る工程を包含する。公知のパラメーターおよび望ましい結果に基づく最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは、当業者にとって明白である。1つの実施形態において、特定のアミノ酸残基は、例えば、第二のアミノ酸残基のグリコシル化を阻害するために変更された、標的とされる第一のアミノ酸残基(そして好ましくは第一のアミノ酸がシステインであるかまたはチオール化学を有する場合)であり得る。
【0117】
(4.組み換え抗体の発現)
本発明の改変された抗体は、代表的には、組み換え発現によって産生される。必要に応じて定常領域に結合される、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸が、発現ベクターに挿入される。この軽鎖および重鎖は、同じかまたは異なる発現ベクター中にクローニングされ得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター中の制御配列へ実施可能に結合される。発現制御配列としては、制限されないが、プロモーター(例えば、天然に関連するまたは異種のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、および転写終止配列が挙げられる。好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし得るベクター中の真核生物のプロモーター系である。一度このベクターが適切な宿主中に取り込まれた場合、この宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現に適切な条件下で、および交差反応している抗体の収集および精製に適切な条件下で維持される。
【0118】
これらの発現ベクターは、代表的に、エピソームとしてかまたは宿主染色体DNAの一体部分としてのどちらかで宿主生物体中において複製可能である。一般に、発現ベクターは、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、望ましいDNA配列を伴って形質転換されたそれらの細胞の検出を可能にする(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照のこと)。
【0119】
E.coliは、本発明のポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)をクローニングするために特に有用である原核生物宿主の1つである。使用に適切な他の細菌宿主は、バシルス属(例えば、Bacillus subtilus)および他の腸内細菌科(例えば、Salmonella、Serratia、および種々のPseudomonas種)を含む。
【0120】
他の微生物(例えば、酵母)もまた、発現のために有用である。SaccharomycesおよびPichiaは、望まれるような発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製の起源、終止配列などを有する適切なベクターを有する模範的な酵母宿主である。代表的なプロモーターは、3−ホスホグリセラートキナーゼおよび他の解糖酵素を含む。誘導酵母プロモーターは、中でも、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロームC、ならびにメタノール、マルトース、およびガラクトース利用の原因となる酵素由来のプロモーターを含む。
【0121】
微生物に加えて、哺乳動物組織培養もまた、本発明のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)を発現および産生するために使用され得る。Winnacker、From Genes to Clones、VCH Publishers、N.Y.、N.Y.(1987)を参照のこと。異種のタンパク質(例えば、無処理の免疫グロブリン)を分泌し得る多数の適切な宿主細胞株が当該分野において発展され、そしてこの宿主細胞株には、CHO細胞株、種々のCOS細胞株、HeLa細胞、293細胞、骨髄腫細胞株、形質転換されたB細胞、およびハイブリドーマを含むため、真核生物細胞が、実際には好ましい。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列(例えば、複製の起源、プロモーター、およびエンハンサー)(Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))、および重要なプロセシング情報部位(例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列)を含み得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40,アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照のこと。
【0122】
あるいは、抗体コード配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入およびその後のトランスジェニック動物の乳中での発現のためにトランスジーンの中に取り込まれ得る(例えば、Deboerら、US 5,741,957、Rosen、US 5,304,489、およびMeadeら、US 5,849,992を参照のこと)。適切なトランスジーンは、乳腺に特異的な遺伝子(例えば、カゼインまたはβラクトグロブリン)由来のプロモーターとエンハンサーとの実施可能な結合における軽鎖および/または重鎖のためのコード配列を含む。
【0123】
所定のポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖および軽鎖コード配列および発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主のタイプに依存して変化する周知の方法によって宿主細胞中に移転され得る。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核生物細胞に対して一般に利用されるが、リン酸カルシウム処置、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃、またはウイルスに基づくトランスフェクションが、他の細胞宿主に対し使用され得る(一般に、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、第2版、1989を参照のこと)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクタの使用を含む(一般に、Sambrookら、前出、を参照のこと)。トランスジェニック動物の産生のために、トランスジーンが、受精した卵細胞に微量注入され得るか、または胚幹細胞のゲノムに取り込まれ得、そしてそのような細胞の核は、摘出された卵細胞に移転される。
【0124】
本発明の抗体は、1つのベクターまたは2つのベクターを使用して発現され得る。抗体重鎖および軽鎖が別個の発現ベクターにクローニングされる場合、これらのベクターは、無処理の免疫グロブリンの発現および集団を得るために同時トランスフェクトされる。発現された場合、本発明の全体の抗体、これらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリンの形態が、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動など(一般に、Scopes、Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.、(1982)を参照のこと)を含む技術の標準的な手順によって精製され得る。実質的に、純粋な免疫グロブリンの少なくとも約90%〜95%の同一性が、薬学的な使用のために好ましく、98%〜99%以上の同一性が最も好ましい。
【0125】
(5.予防方法、診断方法、および治療方法)
本発明はまた、免疫障害(例えば、治療用抗体を使用して抗原に結合することが望ましいが、エフェクター機能を誘発することを避ける場合の障害を含む)に関連する疾患の予後診断、診断または処置のために適切な非グリコシル化抗体の産生に特に導かれる。
【0126】
それゆえ、ある実施形態において、本発明の非グリコシル化抗体または抗原結合フラグメントは、例えば糸球体腎炎、強皮症、肝硬変、多発硬化症、ループス腎炎、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、または慢性関節リウマチを含む免疫障害の予防または処置において有用である。別の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、限定されないが、アルツハイマー病、重度の喘息、アトピー皮膚炎、悪液質、CHF虚血、冠動脈再狭窄、クローン病、糖尿病性腎症、リンパ腫、乾癬、放射線誘導線維症、若年性関節炎、脳卒中、外傷によってもたらされた脳または中枢神経系の炎症、および潰瘍性大腸炎を含む炎症障害を処置または予防するために使用され得る。
【0127】
本発明の非グリコシル化抗体または抗原結合フラグメントにより予防され得または処置され得る他の炎症障害は、角膜移植、慢性閉塞性肺疾患、肝炎C、多発骨髄腫、および変形性関節症に起因する炎症を含む。
【0128】
別の実施形態において、本発明の抗体またはFc含有フラグメントは、限定されないが、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、カポジ肉腫、黒色腫、卵巣癌、小細胞肺癌、胃癌、白血病/リンパ腫、および多発骨髄腫を含む新形成を予防または処置するために使用され得る。さらなる新形成条件は、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、非扁平細胞肺癌、および前立腺癌を含む。
【0129】
別の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、限定されないが、アルツハイマー病、脳卒中、および外傷性脳または中枢神経系損傷を含む神経変性障害を予防または処置するために使用され得る。さらなる神経変性障害は、ALS/運動ニューロン疾患、糖尿病性末梢神経障害、糖尿病性網膜症、ハンティングトン病、筋肉変性、およびパーキンソン病を含む。
【0130】
さらに別の実施形態において、本発明の抗体またはFc含有フラグメントは、病原体(例えば、ウイルス、原核生物生物体、また真核生物生物体)によってもたらされた感染を予防または処置するために使用され得る。
【0131】
臨床適用において、被験体は、疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状を表すことによって上に述べられた条件の1つを発展したかまたは発展する危険があると同定される。本発明の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合フラグメントあるいは本発明の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物が、例えば、上に述べられたような疾患または障害の少なくとも1つの症状を処置するのに十分な量で投与される。1つの実施形態において、被験体は、有害なCD154活性(CD40リガンドまたはCD40Lとしても公知である;例えば、Yamadaら、Transplantation、73:S36−9(2002);Schonbeckら、Cell.Mol.Life Sci.58:4−43(2001);Kirkら、Philos.Trans.R.Soc.Lond.B.Sci.356:691−702(2001);Fiumaraら、Br.J.Haematol.113:265−74(2001);およびBianconeら、Int.J.Mol.Med.3(4):343−53(1999)参照のこと)に関連する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状を表すように同定される。
【0132】
それゆえ、本発明の非グリコシル化抗体は、例えば、本明細書において記載されるような、例えば、疾患または障害の予防または処置のために被験体に有益な治療応答を生み出す条件下で、被験体への治療用の免疫学的な試薬として投与するために適切である。
【0133】
本発明の治療試薬は、代表的に、望ましくない汚染から実質的に純粋である。このことは、試薬は代表的に、少なくとも約50重量%純度であること、ならびに干渉するタンパク質および汚染が実質的にないことを意味する。時々、この試薬は、少なくとも約80重量%純度、より好ましくは、少なくとも90重量%純度または約95重量%純度である。しかし、従来のタンパク質精製技術を使用して、例えば、本明細書に記載されるように、少なくとも99重量%の同質のペプチドが、得られ得る。
【0134】
本方法は、無症状の被験体と現在疾患の症状を表している被験体との両方に使用され得る。そのような方法で使用される抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または非ヒト抗体、またはこれらのフラグメント(例えば、抗原結合フラグメント)であり得、そしてモノクローナルかまたはポリクローナルであり得る。
【0135】
別の局面において、本発明は、薬学的組成物としての薬学的キャリアと共に抗体を投与することを特徴とする。あるいは、この抗体は、少なくとも1つの抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを投与することによって被験体に投与され得る。このポリヌクレオチドは、被験体中に抗体鎖を産生するために発現される。必要に応じて、このポリヌクレオチドは、抗体の重鎖および軽鎖をコードする。このポリヌクレオチドは、被験体中に重鎖および軽鎖を産生するために発現される。模範的な実施形態において、この被験体は、被験体の血液に投与された抗体のレベルに関してモニターされる。
【0136】
従って、本発明は、免疫条件(例えば、CD154関連免疫条件)を予防または回復するための治療体制のための積年の必要性を充足する。
【0137】
本発明の抗体は、診断上の適用または調査上の適用(特に例えば、エフェクター機能の減少が望ましい場合の細胞に基づくアッセイを含む診断上の適用または調査上の適用)に関して適切であることも理解される。
【0138】
(6.非グリコシル化抗体の有効性をテストするための動物モデル)
本発明の抗体は、例えば、獣医の目的か、またはヒト疾患(例えば、上に述べられた免疫疾患または条件)の動物モデルとしてのいずれかで、非グリコシル化抗体治療の必要がある非ヒト哺乳動物に投与され得る。後者に関して、そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療上の有効性を評価するために有用であり得る(例えば、投与のエフェクター機能、量、および時間経過をテストすること)。
【0139】
慢性関節リウマチ(RA)を予防または処置するための本発明の抗体または抗原結合フラグメントの治療有効性を評価するために使用され得る動物モデルの例としては、アジュバント誘導RA、コラーゲン誘導RA、およびコラーゲンmAb誘導RAが挙げられる
(Holmdahlら、(2001)Immunol.Rev.184:184;Holmdahlら、(2002)Ageing Res.Rev.1:135;Van den Berg(2002)Curr.Rheumatol.Rep.4:232)。
【0140】
炎症性腸疾患(IBD)を予防または処置するための本発明の抗体または抗原結合フラグメントの治療有効性を評価するために使用され得る動物モデルの例としては、TNBS誘導IBD、DSS誘導IBD、が挙げられる(Padolら(2000)Eur.J.Gastrolenterol.Hepatol.12:257;Murthyら(1993)Dig.Dis.Sci.38:1722)。
【0141】
糸球体腎炎を予防または処置するための本発明の抗体または抗原結合フラグメントの治療有効性を評価するために使用され得る動物モデルの例としては、抗GBM誘導糸球体腎炎(Wadaら(1996)Kidney Int.49:761−767)および抗thy1誘導糸球体腎炎(Schneiderら(1999)Kidney Int.56:135−144)が挙げられる。
【0142】
多発硬化症を予防または処置するための本発明の抗体または抗原結合フラグメントの治療有効性を評価するために使用され得る動物モデルの例としては、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)が挙げられる(LinkおよびXiao(2001)Immunol.Rev.184:117−128)。
【0143】
動物モデルはまた、例えば、MRL−Faslprマウスを使用して、CD154関連状態(例えば、全身紅斑性狼蒼(SLE))を予防または処置するための本発明の抗体または抗体結合フラグメントの治療有効性を評価するために使用され得る(Schneider、前出;Teschら(1999)J.Exp.Med.190)。
【0144】
(7.処置の体制および量)
予防用の適用において、薬学的組成物または医薬が、Fc領域を有するポリペプチドによって処置され得る障害(例えば、免疫系障害)に苦しむ被験体に、障害の危険を除去または減少させ、重症度を軽減し、障害(障害、その合併症および障害の発展中に表れる中間の病態学上の表現型の生化学的、組織学的および/または行動に現れる症状を含む)の発生を遅らせるのに十分な量で、投与される。治療用の適用において、組成物または医薬が、そのような障害の疑いのある、またはそのような障害に既に罹っている被験体に、(生化学的、組織学的および/または行動に現れる)障害の症状(その合併症および障害の発展段階における中間の病態学上の表現型を含む)を治癒、または少なくとも部分的に押さえるのに十分な量で投与される。本発明のポリペプチドは、特に、血液中に存在する細胞表面抗原の生物活性を調節するために有用であり、処置または予防される疾患は、少なくとも部分的には抗原の異常に高いかまたは低い生物活性によってもたらされる。
【0145】
いくつかの方法において、試薬の投与は、免疫障害(例えば、CD154活性に関連する炎症)を減少または除去する。治療処置または予防処置を達成する適切な量は、治療有効量または予防有効量として規定される。予防体制と治療体制との両方において、試薬は、通常十分な免疫応答が達成されるまで、何回かの投薬によって投与される。
【0146】
上述の条件の処置に関する本発明の組成物の有効量は、多くの異なる要因(投与方法、標的部位、被験体の生理状態、被験体がヒトかまたは動物か、他の医薬が投与されたか、および処置が予防用かまたは治療用か)に依存して変動する。通常、被験体は、ヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物もまた処置され得る。
【0147】
抗体を用いる受動的な免疫に関して、投与量は、宿主の体重の約0.0001mg/kg〜100mg/kg、そしてより一般には0.01mg/kg〜20mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1mg/kg〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。被験体は、そのような量を毎日、一日置きに、毎週または実証的分析によって決定された任意の他のスケジュールによって投与され得る。模範的な処置は、長期(例えば、少なくとも6ヶ月)にわたる複数回の投与を必要とする。さらなる模範的な処置体制は、2週間ごとに1度、または1ヶ月に1度、または3〜6ヶ月に1度の投与を必要とする。模範的な投与のスケジュールとしては、連続した日において1mg/kg〜10mg/kgまたは15mg/kg、一日置きにおいて30mg/kg、または毎週60mg/kgが挙げられる。いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体は、同時に投与され、この場合において、投与される各抗体の量は、指摘された範囲内に収まる。
【0148】
抗体は、通常複数の回数において投与される。単一の投与の間の間隔は、週毎、月毎、または年毎であり得る。ある方法において、投与量は、血しょう抗体濃度の1〜1000μg/mlになるよう調節され、そしてある方法においては、25〜300μg/mlである。あるいは、抗体は、持効性処方物として投与され得、この場合、より少ない回数の投与が必要とされる。投与量および回数は、被験体中の抗体の半減期に依存して変動する。概して、ヒト抗体が、最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体が続く。
【0149】
投与の量および回数は、上記処置が、予防用かまたは治療用かに依存して変動し得る。予防用の適用において、本抗体またはそのカクテルを含む組成物は、被験体の抵抗を促進するために、既に疾患状態にない被験体に投与される。そのような量は、「予防有効量」として規定される。この使用において、正確な量はまた、被験体の健康状態および一般的な免疫に依存するが、概して1回の投与につき0.1mg〜25mg(特に、1回の投与につき0.5mg〜2.5mg)の範囲である。比較的少ない量が、長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。何人かの被験体は、その残りの人生の間、処置を受けることを続ける。
【0150】
治療用の適用において、比較的短い間隔において比較的多い量(例えば、1回の投与につき約1mg〜200mgの抗体、5mg〜25mgの量がより一般的には使用される)が、疾患の進行が減少または止まるまで、そして好ましくは被験体が疾患の症状の部分的な回復または完全な回復を示すまで、時々必要とされる。その後、この特許が、予防体制に与えられ得る。
【0151】
抗体をコードする核酸の量は、1人の被験体につき約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mgまたは30μg〜300μgのDNAの範囲である。感染ウイルスベクターの量は、1回の投与につき10〜100ビリオン(virion)以上に変動する。
【0152】
治療剤は、予防処置および/または治療処置のために非経口的手段、局所的手段、静脈的手段、経口的手段、皮下的手段、動脈的手段、頭蓋内手段、腹膜腔的手段、鼻腔的手段、または筋肉内手段によって投与され得る。タンパク質医薬品の投与の最も代表的な経路は、血管内、皮膚下、または筋肉内であるが、他の経路も効果的であり得る。ある方法において、試薬は、特定の組織に直接的に注射される(沈着物が、例えば頭蓋内注射剤を蓄積した場合)。ある方法において、抗体は、持効性組成物または装置(例えば、MedipadTM装置)として投与される。タンパク質医薬品はまた、例えば、乾燥粉末吸入装置を使用して、気道を介して投与され得る。
【0153】
本発明の試薬は、必要に応じて、免疫障害の処置に少なくとも部分的には有効である他の試薬と組み合わせて投与され得る。
【0154】
(8.薬学的組成物)
本発明の治療組成物は、薬学的に受容可能なキャリアの中に、本発明の少なくとも1つの非グリコシル化抗体または抗体フラグメントを含む。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、通常活性成分の投与のために使用される薬学的調整物の少なくとも一部分をいう。そのようなものとして、キャリアは、当該分野において使用される任意の薬学的賦形剤および投与のための任意の形態のビヒクルを含み得る。組成物は、例えば、注射可能な溶液、水溶性懸濁液または水溶液、非水溶性懸濁液または非水溶液、固形および液体経口処方物、軟膏剤(salve)、ゲル、軟膏剤(ointment)、皮内斑、クリーム、ローション、錠剤、カプセル、持効性処方物などであり得る。さらなる賦形剤としては、例えば、着色料、味遮蔽試薬、溶解補助剤、懸濁試薬、圧縮試薬、エンテリックコーティング、持効性補助剤などが挙げられる。
【0155】
本発明の試薬は、多くの場合、いわゆる活性治療試薬および種々の他の薬学的に受容可能な成分を含む薬学的組成物として投与される。Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania(1980))を参照のこと。好ましい形態は、投与および治療用の適用の意図される様式に依存する。この組成物はまた、望ましい処方物に依存して、動物またはヒト投与のための薬学的組成物を処方するために通常使用されるビヒクルとして規定される、薬学的に受容可能な、非中毒性キャリアまたは希釈液を含み得る。この希釈液は、組み合わせの生物活性を影響しないように選択される。そのような希釈液の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デクストロース溶液、およびハンク溶液である。さらに、薬学的組成物または薬学的処方物としてはまた、他のキャリア、アジュバント、または非中毒、非治療、非免疫原性安定剤などが挙げられ得る。
【0156】
抗体は、蓄積注射または移植製剤の形態で投与され得、この蓄積注射または移植製剤は、活性成分の持効性を可能とするような様式で処方され得る。模範的な組成物は、HClでpHの6.0に調節された50mMのL−ヒスチジン、150mMのNaClからなる緩衝水溶液中に処方される、5mg/mLのモノクローナル抗体を含む。
【0157】
代表的に、組成物は、溶液または懸濁液のいずれかとしての注射可能物質として調整される。注射前の液体ビヒクルの溶液または懸濁液に適切な固体形態もまた、調整され得る。この調整物はまた、上で考察されたように、リポソーム中かまたは微粒子(例えば、促進されたアジュバント効果のためのポリ乳酸、ポリグリコリド、またはコポリマー)中に乳化され得るかまたは被包され得る(Langer、Science 249:1527(1990)およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)を参照のこと)。
【0158】
(9.処置の経過をモニターすること)
疾患または障害(例えば、免疫障害)に苦しむ被験体の処置は、標準的な方法を使用してモニターされ得る。いくつかの方法は、ある量の試薬を投与する前に、例えば、抗体レベルのベースライン値または被験体のプロフィールのベースライン値を確定することを必要とし、そしてこれを、処置後のプロフィールまたはレベルの値と比較することを必要とする。このレベルまたはプロフィールの値の有意な増加(すなわち、同じサンプルの反復測定における実験誤差の代表的な限度よりも大きく、そのような測定の平均から1標準偏差として表現される)は、正の処置結果を示す(すなわち、この試薬の投与は、望ましい応答を達成した)。免疫応答の値が有意に変化しない、または減少する場合、負の処置結果が示される。
【0159】
他の方法において、レベルまたはプロフィールのコントロール値(すなわち、平均および標準偏差)が、コントロール集団に関して決定される。代表的には、コントロール集団の中の個体は、前処置を受けない。治療試薬を投与した後の被験体のレベルまたはプロフィールの測定された値は、次いで、コントロール値と比較される。コントロール値と比較して有意な増加(例えば、平均から1標準偏差大きい)は、正のまたは十分な処置結果を示す。有意な増加の欠如または減少は、負のまたは不十分な処置結果を示す。上記レベルがコントロール値と比較して増加している一方で、試薬の投与は、一般に続けられる。以前のように、コントロール値と比較して水平状態の到達は、処置の投与が中止され得るかまたは投与量および/もしくは回数において減少し得ることの指標である。
【0160】
他の方法において、コントロール値の上記レベルまたはプロフィール(例えば、平均および標準偏差)が、治療試薬の処置を受け、そしてそのレベルまたはプロフィールが処置に対する応答において水平状態になった、個体のコントロール集団から決定される。被験体のレベルまたはプロフィールの測定された値が、コントロール値と比較される。被験体の測定されたレベルが、コントロール値から有意に異ならない場合(例えば、1標準偏差を超える)、処置は中止され得る。被験体のレベルが有意にコントロール値以下である場合、試薬の投与の継続は保証される。次いで、被験体のレベルが、コントロール値以下を持続する場合、処置の変化が指摘され得る。
【0161】
他の方法において、現在処置を受けていないが以前処置の経過を受けた被験体は、処置の再開が必要とされるか否かを確定するために抗体レベルまたはプロフィールに関してモニターされる。この被験体の測定されたレベルまたはプロフィールは、前の処置の経過の後に被験体において以前達成された値と比較され得る。以前の測定と比較して有意な減少は(すなわち、同じサンプルの反復測定における代表的な許容限界を超える)、処置が再開され得るという指標である。あるいは、被験体の測定された値は、処置の経過を受けた後の被験体の集団において確定されたコントロール値(平均および標準偏差)と比較され得る。あるいは、被験体の測定された値は、疾患の症状がないままの予防的に処置された被験体の集団、または疾患の特徴の回復を示す治療的に処置された被験体の集団のコントロール値と比較され得る。これらすべての場合において、コントロールレベルと比較した有意な減少は(すなわち、標準誤差を超える)、処置が被験体におけて再開されるべきであるという指標である。
【0162】
投与に続く抗体のプロフィールは、代表的には、抗体濃度の即時のピークを示し、指数関数的な減退が後に続く。さらなる投与なしに、この減退は、投与される抗体の半減期に依存して、数日から数ヶ月の期間のうちに処置以前のレベルに近付く。例えば、あるヒト抗体の半減期は、ほぼ20日間程度である。
【0163】
いくつかの方法において、被験体の所定の抗原に対する抗体のベースライン測定は、投与前になされ、第二の測定は、ピーク抗体レベルを確定するためにその後直ぐになされ、そして一回以上のさらなる測定は、抗体レベルの減退をモニターするための間隔でなされる。抗体レベルが、ベースラインまたはベースラインよりも少ないピークの所定のパーセンテージに減少した場合(例えば、50%、25%または10%)、さらなる量の抗体の投与がなされる。いくつかの方法において、基礎値よりも少ないピークまたはその後の測定されたレベルが、他の被験体における有益な予防または治療処置体制を形成するために既に確定された基準レベルと比較される。測定した抗体レベルが、基準レベルよりも有意に少ない場合(例えば、平均から、処置により利益を受ける被験体の集団の基準レベルの1標準偏差を引いた値よりも少ない)、さらなる量の抗体の投与が指摘される。
【0164】
付加的方法は、処置の経過にわたって障害を診断またはモニターするために研究者または医者によって日常的に依存されている生理学的症状(例えば、肉体的または精神的症状)を認識する任意の技術をモニターすることを含む。
【0165】
以下の実施例が説明の目的で含められるが、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0166】
(例示)
実施例全体を通して、他に述べられない限り、以下の材料および方法を使用した。
【0167】
(材料と方法)
概して、本発明の実施には、他に指摘されない限り、化学、分子生物学、組み換えDNA技術、免疫学(特に、例えば、抗体技術)および電気泳動の標準技術を利用する。例えば、Sambrook,FritschおよびManiatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology),510,Paul,S.,Humana Pr(1996);Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series,169),McCafferty,Eds.,Irl Pr(1996);Antibodies:A Laboratory Manual,Harlowら,C.S.H.L.Press,Pub.(1999);およびCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubelら,John Wiley & Sons(1992)を参照のこと。
【0168】
(改変された抗体の産生)
本発明の改変された抗体を産生するために、モデルヒト抗体(hu5c8)、その改変体抗体、または対応するFc領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドを標準的な発現ベクターの中に導入した。このヒト抗体hu5c8およびその改変体は、例えば、米国特許第5,474,771号および同第6,331,615号に記載される。cDNA配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、hu5c8 IgG1重鎖(配列番号:1〜2)、hu5c8軽鎖(配列番号:3〜4)、hu5c8 IgG1 Fc領域(配列番号:5〜6)、hu5C8 IgG4重鎖(配列番号:7〜8)、hu5c8 IgG4改変体(S228P)(配列番号:9〜10)、およびhu5c8 IgG4改変体(S228P/T299A)(配列番号:11〜12)に関する配列表に提供する。次いで、ベクターを、大規模一過性トランスフェクション技術を使用してEBNA 293細胞中に導入した。このトランスフェクトされた293細胞を、標準培地およびインキュベーション条件を使用して培養した。細胞に、代表的に、トランスフェクトした1日後に再度栄養を与え、次いで、1〜3日間組み換えタンパク質の発現および分泌を可能にした。分泌された組み換え抗体またはFc領域を含む培養培地を、次いで精製のために収集した。
【0169】
(改変された抗体の精製)
抗体精製を実行するために、真核生物細胞中に産生された組み換え非グリコシル化抗体を細胞培養培地から収集し、そしてその後のクロマトグラフィー技術を受けさせた。特に、組み換えプロテインAカラム(5mL)を調整し、そして100mLの0.1N NaOHで洗浄し、次いで、中和されるまでPBSを用いて平衡化した。馴化培地(約1.5L)を次いで、10mL/分にてカラムを通してポンプで汲み出した。ロード後、このカラムを100mLの3X PBSで洗浄し、次いで10mLの1X PBSで洗浄した。この抗体を、即時の中和反応のために0.3mLの1M HEPES(pH8)を含む収集管の中へ100mMのNaHPO(pH2.8)の1.3mL画分で溶出した。溶出された抗体を含む画分を、各画分の1:10希釈溶液の光吸収度(A280)を使用して濃度をモニターすることによって同定した。この精製工程を、一過性トランスフェクションの規模に比例して拡大または縮小した。
【0170】
結果として生じたプロテインAプールを、さらに1.6mL Poros HSカラム上のクロマトグラフィーによって精製した。この組み換えプロテインプール(約8mL)を、25mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で10倍に希釈し、そしてBioCad HPLCを使用して2つの各精製ランに、半分ずつロードした。このタンパク質を、5mL/分の流速でロードし、このカラムを希釈緩衝液の10カラム体積で洗浄し、次いで、希釈緩衝液の25カラム体積勾配の0〜1M NaClで溶出した。0.8mLの画分を収集し、そして光吸収度(A280)によってタンパク質濃度に関してモニターした。
【0171】
あるいは、小規模調製から結果として生じたプロテインAプールを、プロテインLクロマトグラフィーによって精製した。プロテインLカラム(1mL)を調整し、そして10mLの0.1N NaOHで洗浄し、次いで中和するまでPBSで平衡化した。中和されたプロテインAプール(3mL)を次いで1mLアリコートにロードした。ロード後、このカラムを10mLの3X PBSで洗浄し、次いで10mLの1X PBSで洗浄した。この抗体を、即時の中和反応のために0.1mLの1M HEPES(pH8)を含む収集管の中へ100mMのNaHPO(pH2.8)の0.4mL画分で溶出した。溶出された抗体を含む画分を、各画分の1:5希釈溶液の光吸収度(A280)を使用して濃度をモニターすることによって同定した。
【0172】
光吸収度に加えて、組み換えタンパク質を含む溶出物質をまた、屈折率検出器(Waters)およびPrecision Detector PD2020光散乱機器を用いてモニターした。分子量を、Precision Detectorソフトウェアを用いて計算した。全ての改変体抗体(hu5c8の4つの形態)が、1つの主要なピークと軽微な量の高分子量物質(ダイマー)を示しながら、SECカラムから等しく溶出した。148,300の分子量を、T299C hu5c8改変体の主要ピークに関して光散乱によって確定した。huIgG1 Fc改変体のサイズ排除クロマトグラフィーを、全長抗体と等しく実行した。4つのFcタンパク質の全てが、53,000〜55,000Daltonの範囲の計算された分子量の主要ピークを生じながら、等しく作動した。最終的に、組み換えタンパク質サンプルを得て、PBSに対して透析し、無菌ろ過し、そしてさらなる分析のために必要とされるまで、10mgアリコートの中で4℃にて組み換えタンパク質サンプルを保存した。
【0173】
(SDS−PAGE)
SDS−PAGEを実行するために、タンパク質サンプルを、代表的に、還元条件のための25mM DTTかまたは非還元条件のための25mM NEMのいずれかを含むLaemmli SDS−PAGEサンプル緩衝液中で200μg/mLまで希釈した。2.5μlおよび10μlのアリコートを、4〜20%勾配ゲルにロードした。
【0174】
(質量分光法)
質量分光法を実行するために、タンパク質サンプルを、分析の前に、pH7.8にて9mM DTT中で還元した。このサンプルを、C4ガードカラム(C4 guard column)を用いて脱塩し、そして三倍四極(triple quadrupole)機器を使用してESMSによってオンラインで分析した。このESMSの原データを、荷電されていない質量スペクトルを産生するために、MaxEntプログラムによって逆重畳積分した。この手順は、分子量の確定のための1つのピークに分解するために、複数の荷電したシグナルを可能にする。
【0175】
(ペグ化)
本発明の非グリコシル化ポリペプチドのペグ化を実行するために、T299AおよびT299C改変体Fcの0.94mg/mL溶液の50μLアリコートを、一晩−20℃にて、1mLのエタノールを用いて始めに沈殿した。結果として生じる沈殿物を、次いで、ペレット化し、そしてエタノールを除去し、そして6.4M尿素、2% SDSおよび10mM EDTA(pH8)の50μLの溶液を添加し、そしてこの溶液を5分間100℃まで加熱した。還元のため、サンプルの半分を、30分間室温で4mM TCEPで処置した。pH6.5にて1M MES緩衝液の5μLのアリコートを次いで添加し、続いて50μLのH2Oまたは5mMのPEG(5K)−マレイミド溶液のいずれかを添加した。室温にて30分後、Laemmli SDS−PAGEサンプル緩衝液の4X溶液の10μLアリコートを30μLの反応混合物に添加し、そしてこの溶液を5分間100℃まで加熱した。次いで、5μLおよび15μLアリコートの組み換えタンパク質を、発生したペグ化の相対量の確定のために4〜20%勾配ゲルにロードした。
【実施例】
【0176】
(実施例1:非グリコシル化抗体を産生および特徴付けるための方法)
以下の実施例は、真核生物細胞における非グリコシル化抗体の産生およびその結果として生じる抗体の特徴付けを記載する。
【0177】
CD154リガンドに対する結合親和性を有するIgG1サブタイプのモデルヒト抗体(hu5c8)をコードする核酸は、いくつかの変更の1つを有するように遺伝子的に操作された。第一の変更は、野生型アミノ酸残基(すなわち、299位のスレオチン、アラニン(T299A))の代わりにコードするコドンを含む。別の変更において、299位のスレオニンをコードするコドンを、システイン(T299A)をコードするように変化させた。コントロール変更もまた含め、その中で、グリコシル化される特定のアスパラギンが変異される(N297Q)(図3、図5〜図7)。さらに、このT299A変異を、IgG4サブタイプのモデルヒト抗体hu5C8中へ導入した。このIgG4配列は、分子間鎖ジスルフィドを安定化するために(非グリコシル改変と関連のない問題点)、ヒンジペプチド(S228P)にさらなる改変を有していた(図4)。各改変を、発現ベクター中に取り込み、そして本明細書に記載される方法を使用して、真核生物細胞株の中に導入した。さらに、前述の変更をまた、対応する可変領域から離れたFc領域の状況に関してテストした。対応するコントロール抗体または抗体フラグメントに共に各改変された抗体またはそのFcフラグメントを、次いで細胞培養中で発現し、細胞培養培地から収集し、そして標準的な技術を使用して精製した。各抗体または抗体フラグメントを、次いで、その非グリコシル化および結合活性について特徴付けた。
【0178】
各抗体または抗体フラグメントに関する非グリコシル化を、標準ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー技術を使用して特徴付けた。特に、ネイティブ条件下で、還元および非還元SDS−PAGEならびにサイズ排除クロマトグラフィーを実行し、そしてテスト抗体(hu5c8)およびそのフラグメント(すなわち、huIgG1 Fc)のT299AおよびT299C改変体は、予測された分子サイズおよびサブユニット機構であったことを示した。T299AおよびT299C抗体改変体のグリコシル化の欠如を、還元SDS−PAGEにおけるタンパク質の重鎖のより急速な移動によって示した(図3)。さらに、還元条件下の質量分光法はまた、構築物の予想された質量およびT299AおよびT299C改変体におけるグリカンの欠如を確定した(図8〜図11)。還元条件下の質量分光法はまた、huIgG1 T299C Fc改変体上のシステイン付加体の存在を示した(図8〜図11)。
【0179】
T299A改変体の質量は、予測したタンパク質ダイマーに対応した(予測値51,824.7、測定値51,826)。対照的に、T299C改変体の質量は、予測値より246Dalton大きかった(予測値51,886、測定値52,132)(図3)。これは、Fcダイマーへの2つのシステイン付加体の付加に対応する(2×120=240)(図5)。
【0180】
それゆえ、グリコシル化モチーフへ近接する第一のアミノ酸の変更は、第二のアミノ酸残基における抗体のグリコシル化を阻害し、それによって真核生物細胞における非グリコシル化抗体を産生するための効率的なおよび依存できるアプローチを提供したと結論した。
【0181】
(実施例2:十分に立体的にかさ高いおよび/または十分な電荷のアミノ酸置換を使用して減少したエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を産生するための方法)
以下の実施例は、グリコシル化を阻害するために十分に立体的にかさ高いおよび/または十分な電荷の残基を有する第一のアミン酸残基における抗体を変更することによる非グリコシル化抗体の産生を記載する。
【0182】
候補抗体(例えば、IgG1またはIgG4サブタイプの抗体)をコードする核酸を、グリコシル化および/またはエフェクター機能を阻害するように予測されたいくつかの変更の1つを有するように遺伝子的に操作した。理論に束縛されることは望まないが、システイン付加体に関して上で得られた結果は、十分にかさ高いおよび/または十分に荷電した残基は、Fc含有ポリペプチドをグリコシル化することからグリコシダーゼを阻害し、そして望ましくないエフェクター機能を減少するという理論的説明を支持する。例えば、かさ高いまたは電荷した残基を有するカバット位の299(例えば、T299)における置換は、例えば、297位における抗体をグリコシル化することからグリコシダーゼを阻害すると予測される。さらに、そのようなアミノ酸置換はまた、Fcレセプターへの抗体の結合を調節すると予測される。抗体Fc領域とFcレセプター(例えば、FcγIIIbレセプター)との間の結合複合体において、抗体Fc領域の残基T299を、FcγIIIbレセプターとの結合界面に非常に近接するように配置する。特に、FcγIIIbレセプターのY150およびH152残基へのT299残基の側鎖化学の距離は、それぞれ、4.2Åおよび5.6Åである。従って、T299を十分に立体的にかさ高さを有する残基(例えば、F、H、Q、W、またはY)と置換することによって、この抗体は、好ましくない立体的相互作用に起因して、非グリコシル化だけではなく、Fcレセプターへの減少したFc結合親和性を有する。
【0183】
なおさらに、グリコシル化およびFc結合の阻害を、荷電した側鎖化学(例えば、D、E、K、またはR)を有するT299で置換することによって調節し得る。結果として生じる抗体改変体は、好ましくない静電気相互作用に起因して、グリコシル化が減少するだけでなく、Fcレセプターへの減少したFc結合親和性を有する。
【0184】
それゆえ、第一のアミノ酸残基側鎖化学を十分に立体的なかさ高さおよび/または十分な電荷を有するアミノ酸側鎖化学に改変することは、第二のアミノ酸残基における抗体のグリコシル化を阻害し、ならびにFcレセプターへのFc結合を減少すると予測される。従って、本発明は、真核生物細胞において減少したエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を産生するための効率的なおよび依存的なアプローチを提供する。
【0185】
(実施例3:非グリコシル化抗体をペグ化するための方法)
以下の実施例は、真核生物細胞における非グリコシル化抗体の産生および結果として生じる抗体のペグ化を記載する。
【0186】
特に、T299C抗体改変体を、始めにTCEPでタンパク質を還元し、システイン付加体を除去し、何日にもわたってタンパク質を透析することによってヒンジジスルフィドを再形成することを可能にし、そしてPEG−マレイミドと反応させることによって、非変性条件下でPeg−マレイミドを用いて特異的に改変されたと確定した。T299A抗体改変体を、これらの条件下でPEGを用いて改変し得なかった(図6)。
【0187】
簡潔に、テストタンパク質を還元するために、200μLの0.94mg/mLのT299AおよびT299C Fc抗体改変体調製物を、3時間室温にて、4μLの500mM EDTA(pH8)(最終濃度10mM)および10μLの100mM TCEP(最終濃度5mM)で処置した。この還元されたタンパク質を、4日間にわたって、1:1000の体積比率において5回の変更を伴い、PBSに対して透析した。アリコート(5μL)のタンパク質調製物を、次いで非変性条件において1時間、5μLの5mM PEG−マレイミド(5,000mw)で処置し、そして次いで、100mM DTTを含む5μLの4X Laemmli SDS−PAGEサンプル緩衝液を付加することによってSDS−PAGEを調製した。T299C抗体改変体のみが、PEG付加体を有すると観察した(図7)。
【0188】
T299Cシステインがシステインジスルフィド結合を形成したとの確証を、Fcをチオール特異性改変試薬のPEG−マレイミドと反応するよう試みることによって得た。非還元条件ではなく、変性条件下(6.4M尿素、2%SDS)において、PEG−マレイミドとの反応は起きなかった。還元条件下において、T299C改変体は、PEG−マレイミドと反応し、T299A改変体よりも大きい産生物を産生し、余分のシステインの存在を示した(図3)。
【0189】
それゆえ、第二のアミノ酸残基における抗体のグリコシル化を阻害し得るグリコシル化モチーフに近接する第一のアミノ酸の変更(システイン残基に変更した場合)はまた、効率的なおよび依存的なペグ化残基を提供すると結論した。
【0190】
(実施例4:非グリコシル化抗体の変更されたエフェクター機能を確定する方法)
以下の実施例は、本発明の非グリコシル化抗体の変更されたエフェクター機能を確定するためのアッセイを記載する。
【0191】
本発明の非グリコシル化改変体抗体のエフェクター機能を、抗体を結合し、そしてまたFcレセプターまたは補体分子(例えば、C1q)も結合する能力によって特徴付けた。特に、FcγR結合親和性を、CD154抗原とFcレセプターを保有する細胞との間に「橋」を形成する抗体の能力に基づくアッセイを用いて測定した。C1q結合親和性を、CD154抗原とC1qとの間に「橋」を形成する抗体の能力に基いて測定した(図14〜図15)。
【0192】
簡潔に、FcγR架橋アッセイを、96ウェルMaxisorb ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester、NY、USA)を、組み換え可溶性ヒトCD154リガンドでコーティングすることによって実行した(すなわち、PBS中に4℃にて一晩1μg/mlの濃度にて;Karpusas、Hsuら、1995)。抗CD154抗体(hu5c8)のグリコシル化されたまたは非グリコシル化形態の滴定を次いで、37℃にて30分間、CD154へ結合し、次いで、このプレートを洗浄し、そして蛍光標識化U937(CD64)細胞の結合を測定した。U937細胞を、10%FBS、10mM HEPES、L−グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI培地で増殖し、1:2に分割し、そしてFcレセプター(FcγRI)発現を増加させるために1000ユニット/mlのIFNγとのアッセイの前に1日、活性した。
【0193】
上記アッセイの別の改変において、本発明の抗体のさらに別のFcレセプター(特に、FcγRIII(CD16))に結合する(または、むしろ結合しない)能力を、CD16発現構築物でトランスフェクトされた蛍光標識化ヒトT細胞(Jurkat細胞)に対して上記の架橋アッセイを使用して実行した。上記リガンドを、96ウェル組織培養プレート(Corning Life Sciences Acton、MA、USA)において増殖された一層のCD154発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生した。このCHO−CD154細胞を、1×10細胞/mlにて96ウェルプレートに接種し、そして10%の透析されたFBS、100nMメトトレキサート、L−グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco−BRL Rockville、MD、USA)を伴うαMEM中の集密度まで増殖した。このCD16Jurkat細胞を、10%FBS、400μg/mlのGeneticin、10mM HEPES、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco−BRL)を伴うRPMI中にて増殖し、そしてこのアッセイを実行する1日前に1:2に分割した。
【0194】
両方のレセプターに関するアッセイにおいて、Fcレセプター保有細胞を、20分間37℃にて2’,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオロセインアセトキシメチルエステル(BCECF−AM)(Molecular Probes Eugene、OR、USA)で標識化した。過剰の標識を除去するために洗浄した後、1×10の標識化細胞を、30分間37℃にてアッセイにおいてインキュベートした。結合されていないFcγR陽性細胞を、数回洗浄することによって除去し、そしてプレートを、485nmの興奮波長および530nmの放出波長にてマイクロプレートリーダー(Cytofluor2350Fluorescent Microplate Reader、Millipore Corporation Bedford、MA、USA)上で読み取った。
【0195】
各架橋アッセイにおいて、FcyRI(上のパネル)またはFcγRIII(下のパネル)結合の機能として本発明の非グリコシル化IgG1抗体改変体のエフェクター機能の減少を、観察した(図12〜図13)。特に、グリコシル化されずおよびシステイン付加体を形成し得るT299C改変体を、単に非グリコシル化抗体(図12、上のパネル)と比較して少ないエフェクター機能(FcγRI結合)を有することを観察した。この非グリコシルIgG4 T299A抗体改変体をまた、例外的に低いFcRγIへの結合(IgG1 T299A改変体よりも低い)を見い出した。このことは、グリコシル化されたIgG1およびIgG4抗体はこのアッセイにおいて類似の結合を示すので(図13)、予測されなかった。
【0196】
C1q結合アッセイを、96ウェルMaxisorb ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester、NY、USA)を、PBS中で一晩4℃にて10μg/mlの50μlの組み換え可溶性ヒトCD154リガンド(Karpusasら、Structure、15;3(12):1426(1995))で、コーティングすることによって実行した。このウェルを、吸引し、そして3回洗浄緩衝液(PBS、0.05% Tween 20)で洗浄し、そして1時間以上、200μl/ウェルの遮断/希釈緩衝液(0.1M NaHPO、pH7、0.1M NaCl、0.05% Tween 20、0.1%ゼラチン)で遮断した。テストされる抗体を、3倍の希釈溶液を用いた遮断/希釈緩衝液中で、15μg/mlで開始して、希釈した。1ウェルにつき50μlを添加し、そしてこのプレートを、2時間室温にてインキュベートした。上記のように吸引および洗浄後、遮断/希釈緩衝液中で希釈した50μl/ウェルの2μg/mlのSigmaヒトC1q(C0660)を添加し、そして1.5時間室温にてインキュベートした。上記のように吸引および洗浄後、遮断/希釈緩衝液中で3,560倍に希釈した50μl/ウェルのヒツジ抗C1q(Serotec AHP033)を添加した。1時間室温にてインキュベートした後、このウェルを上記のように吸引しそして洗浄した。遮断液/希釈液で1:10,000に希釈された50μl/ウェルのロバ抗ヒツジIgG HRP接合体(Jackson ImmunoResearch 713−035−147)を、次いで添加し、そしてこのウェルを1時間室温にてインキュベートした。上記のように吸引および洗浄後、100μlのTMB基質(420μM TMB、0.1Mの酢酸ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液、pH4.9、中の0.004% H)を添加し、そして100μlの2N硫酸との反応を止める前に2分間インキュベートした。吸収度を、Softmax PRO機器を用いて450nmと読み取り、そしてSoftmaxソフトウェアを、4−パラメータフィット(4−parameter fit)を用いて相対結合親和力(C値)を確定するために使用した。
【0197】
図14〜図15に示されるように、T299C変異体は、hu5c8抗体以下だけではなく非グリコシル化N297QおよびT299A改変体以下のC1q結合親和性を有し、このことは、システインへの変異は、予想外に有益であることを指摘する。IgG4 T299A変異体は、非グリコシル化IgG4と類似してC1qへの結合を示さなかった。
【0198】
それゆえ、グリコシル化モチーフに近接する第一のアミノ酸の変更は、第二のアミノ酸残基における抗体のグリコシル化を阻害し、そして第一のアミノ酸がシステイン残基である場合、この抗体はエフェクター機能をより減少したと結論した。さらに、IgG4サブタイプの抗体のグリコシル化の阻害は、予想したよりもFcγRI結合に著しい影響を与えた。
【0199】
(等価物)
当業者にとって、日常の実験法だけを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に相当する物は多い。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は、代表的な抗原結合ポリペプチド(IgG抗体)の構造および抗体の抗原結合およびエフェクター機能(例えば、Fcレセプター(FcR)結合)の機能的特性を示す。また、どのように抗体のCH2ドメインにおける糖の存在(グリコシル化)が、エフェクター機能(FcR結合)を変更するかを示し、抗原結合に影響しないことを示す。
【図2】図2は、本発明の抗体のFc領域の構造および配列を示し、グリコシル化されたアミノ酸残基に近接している残基は、グリコシル化を阻害するために変更し得る(左のパネル)。また、第一のアミノ酸残基がシステインである場合、グリコシル化が阻害されるだけでなく、システイン残基は機能的部分(例えば、遮断部分(例えば、システイン付加体またはペグ化部分(図示されている)あるいは他の機能的部分(図示されず))を結合するための部位を提供することも示す(右のパネル)。
【図3】図3は、非還元条件(レーン1〜5)および還元条件(レーン7〜11)下の、グリコシル化された抗体および非グリコシル化抗体IgG1改変体のSDS−PAGE分析のデジタル画像を示す。この非グリコシル化抗体改変体(またはそのFc領域)は、グリコシル化されたコントロールよりも早く移動する。なぜなら、この改変体は、添加された糖部分を欠くからである(レーン2とレーン3〜5とおよびレーン8とレーン9〜11とを比較すること)。特に、レーン1は、コントロ−ルである全長の抗体(モノクローナルIgG1)を含み、レーン2は、コントロールである野生型(グリコシル化された)Fc領域(IgG1)を含み、レーン3は、非グリコシル化Fc改変体(N297QヒトIgG1)を含み、レーン4は、非グリコシル化Fc改変体(T299AヒトIgG1)を含み、レーン5は、非グリコシル化Fc改変体(T299CヒトIgG1)を含み、レーン6は、分子量標準(molecular weight standard)を含み、レーン7は、コントロールである全長の抗体(モノクローナルIgG1)を含み、レーン8は、コントロールである野生型(グリコシル化された)Fc領域(IgG1)を含み、レーン9は、非グリコシル化Fc改変体(N297QヒトIgG1)を含み、レーン10は、非グリコシル化Fc改変体(T299AヒトIgG1)を含み、そしてレーン11は、非グリコシル化Fc改変体(T299CヒトIgG1)を含む。
【図4】図4は、非還元条件(レーン1〜3)および還元条件(レーン5〜7)下の、グリコシル化された抗体および非グリコシル抗体IgG4改変体のSDS−PAGE分析のデジタル画像を示す。IgG4非グリコシル抗体改変体は、グリコシル化されたコントロールよりも早く移動する。なぜなら、この改変体は、添加された糖部分を欠くからである(レーン2とレーン3とおよびレーン6とレーン7とを比較すること)。特に、レーン1とレーン5は、コントロ−ルであるIgG1を含み、レーン2およびレーン6は、コントロールであるIgG4抗体を含み、そしてレーン3およびレーン7は、IgG4非グリコシル改変体(T299A)を含む。レーン4は、分子量標準を含む。
【図5】図5は、ペグ−マレイミドの存在下(レーン3、レーン4、レーン8、およびレーン9)およびペグ−マレイミドの非存在下(レーン1、レーン2、レーン6、およびレーン7)でシステインが遮断されることを示している非還元条件下の、非グリコシル化抗体改変体(Fc領域)のSDS−PAGE分析のデジタル画像を示す。特に、レーン10で分子量標準を有しており、レーン1〜4は、T299Cを含み、そしてレーン6〜9は、T299Aを含む。
【図6】図6は、減少した移動性によって証拠付けされた、導入されたシステイン(T299C)はペグ化されるが、アラニン残基(T299A)はペグ化されないことを示す還元条件下で、非グリコシル化抗体改変体(Fc領域)のSDS−PAGE分析のデジタル画像を示す。特に、レーン1〜2は、増加する量(2.5μg、7.5μg)のFc T299Cをロードされ、レーン3〜4は、ペグ化されたFc T299Cをロードされ、レーン5〜6は、増加する量のFc T299Aをロードされ、レーン7〜8は、ペグ化されたFc T299Aをロードされ、そしてレーン9は、タンパク質分子量マーカーをロードされた。
【図7】図7は、始めにシステイン付加体を除去するためにTCEPを用いてテストタンパク質を還元した後、減少した移動性によって証拠付けされた、導入したシステイン(T299C)はペグ化されるが、アラニン残基(T299A)はペグ化されないことを示すペグ化が続く、非還元および非変性条件下で、抗体改変体T299A(Fc領域)と比較した抗体改変体T299C(Fc領域)のペグ化のSDS−PAGE分析のデジタル画像を示す。特に、レーン1は、還元および再酸化後に非還元ゲルの条件でFc T299Aをロードされ、レーン2は、還元および再酸化後に非還元ゲルの条件でFc T299Cをロードされ、レーン3は、タンパク質分子量マーカーをロードされ、レーン4は、還元されるゲルの条件でペグ−マレイミドを伴わないFc T299Aをロードされ、レーン5は、還元されるゲルの条件でペグ−マレイミドを伴わないFc T299Cをロードされ、レーン6は、還元されるゲルの条件でFc T299Aおよびペグ−マレイミドをロードされ、そしてレーン7は、還元されるゲルの条件でFc T299Cおよびペグ−マレイミドをロードされた。
【図8】図8〜11は、還元条件および非還元条件下で、システイン(T299C)変異またはアラニン(T299A)変異を有する非グリコシル化抗体改変体の質量分光法ヒストグラム分析を示す。この質量分光法データは、非還元条件下において、T299C抗体改変体は、299位においてシステインと連結したシステイン付加体の形成に起因して質量を添加したことを示すが、アラニンが存在する場合(すなわち、T299A)、そのような付加体は形成されないことを示す。
【図9】図8〜11は、還元条件および非還元条件下で、システイン(T299C)変異またはアラニン(T299A)変異を有する非グリコシル化抗体改変体の質量分光法ヒストグラム分析を示す。この質量分光法データは、非還元条件下において、T299C抗体改変体は、299位においてシステインと連結したシステイン付加体の形成に起因して質量を添加したことを示すが、アラニンが存在する場合(すなわち、T299A)、そのような付加体は形成されないことを示す。
【図10】図8〜11は、還元条件および非還元条件下で、システイン(T299C)変異またはアラニン(T299A)変異を有する非グリコシル化抗体改変体の質量分光法ヒストグラム分析を示す。この質量分光法データは、非還元条件下において、T299C抗体改変体は、299位においてシステインと連結したシステイン付加体の形成に起因して質量を添加したことを示すが、アラニンが存在する場合(すなわち、T299A)、そのような付加体は形成されないことを示す。
【図11】図8〜11は、還元条件および非還元条件下で、システイン(T299C)変異またはアラニン(T299A)変異を有する非グリコシル化抗体改変体の質量分光法ヒストグラム分析を示す。この質量分光法データは、非還元条件下において、T299C抗体改変体は、299位においてシステインと連結したシステイン付加体の形成に起因して質量を添加したことを示すが、アラニンが存在する場合(すなわち、T299A)、そのような付加体は形成されないことを示す。
【図12】図12は、FcγRI(上のパネル)またはFcγRIII(下のパネル)結合の機能として、本発明の非グリコシル化抗体IgG1改変体のエフェクター機能の減少を示す。グリコシル化されずそしてシステイン付加体により改変されるT299C改変体は、単に非グリコシル化抗体(上のパネル)と比較して、より弱いエフェクター機能(FcγRI結合)を有する。
【図13】図13は、FcγRI(上のパネル)またはFcγRIII(下のパネル)結合の機能として、本発明の非グリコシル化抗体IgG4改変体のエフェクター機能の減少を示す。T299A IgG4改変体は、非グリコシル化IgGl形態と比較して、より弱いエフェクター機能(FcγRI結合)を有する。
【図14】図14は、補体タンパク質であるC1qに対する結合の機能として、非グリコシルIgG1抗体(すなわち、hu5c8)のエフェクター機能の減少を示す。グリコシル化されずそしてシステイン付加体により改変されるT299C改変体は、非グリコシル化形態と比較して、より弱いエフェクター機能(すなわち、C1q結合)を有する。
【図15】図15は、補体タンパク質であるC1qに対する結合の機能として、非グリコシルIgG4抗体(すなわち、hu5c8)のエフェクター機能の減少を示す。T299A IgG4改変体は、非グリコシル化IgG1改変体と比較して、より弱いエフェクター機能(すなわち、C1q結合)を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc領域を含む親ポリペプチドの改変体ポリペプチドであって、該Fc領域は、好ましい側鎖化学を有する改変された第一のアミノ酸残基と、グリコシル化が減少した第二のアミノ酸残基とを含み、該改変体ポリペプチドは、該親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する、改変体ポリペプチド。
【請求項2】
Fc領域を含む親ポリペプチドの改変体ポリペプチドであって、該Fc領域は、システインチオールを含む好ましい側鎖化学を有する改変された第一のアミノ酸残基と、グリコシル化が減少した第二のアミノ酸残基とを含み、該改変体ポリペプチドは、該親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する、改変体ポリペプチド。
【請求項3】
Fc領域を含むポリペプチドであって、該Fc領域は、好ましい側鎖化学を有する改変された第一のアミノ酸残基と、該第一のアミノ酸残基の改変を伴わないポリペプチドと比較してグリコシル化が減少した第二のアミノ酸残基とを含む、ポリペプチド。
【請求項4】
Fc領域を含む親ポリペプチドの改変体ポリペプチドであって、該Fc領域は、改変された第一のアミノ酸残基を含み、該改変された第一のアミノ酸は、第二のアミノ酸におけるグリコシル化の減少が達成されるように空間的に位置し、それによって、該改変体ポリペプチドは、該親ポリペプチドと比較して減少したエフェクター機能を有する、改変体ポリペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリペプチドであって、前記改変された第一のアミノ酸は、少なくとも1アミノ酸位置以上、少なくとも2アミノ酸位置以上、少なくとも3アミノ酸位置以上、少なくとも4アミノ酸位置以上、少なくとも5アミノ酸位置以上、少なくとも6アミノ酸位置以上、少なくとも7アミノ酸位置以上、少なくとも8アミノ酸位置以上、少なくとも9アミノ酸位置以上、および少なくとも10アミノ酸位置以上からなる群より選択される間隔の分、前記第二のアミノ酸から離れて空間的に位置する、ポリペプチド。
【請求項6】
請求項4に記載のポリペプチドであって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、好ましい側鎖化学を有する、ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1〜請求項3および請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記好ましい側鎖化学は、該ポリペプチドが減少したエフェクター機能を示すように、十分に立体的にかさ高い、ポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドであって、前記十分に立体的にかさ高い好ましい側鎖化学は、Phe、Trp、His、Glu、Gln、Arg、Lys、Met、およびTyrからなる群より選択されるアミノ酸残基の側鎖化学である、ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1〜請求項3および請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記好ましい側鎖化学は、該ポリペプチドが減少したエフェクター機能を示すように、十分な静電荷を有す、ポリペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリペプチドであって、前記好ましい側鎖化学は、Asp、Glu、Lys、Arg、およびHisからなる群より選択されたアミノ酸残基の側鎖化学である、ポリペプチド。
【請求項11】
請求項3に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、減少したエフェクター機能を示す、ポリペプチド。
【請求項12】
請求項1、請求項2、請求項4、および請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記減少したエフェクター機能は、Fcレセプター(FcR)に対する減少した結合である、ポリペプチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリペプチドであって、前記結合は、約1/1以下、約1/2以下、約1/3以下、約1/4以下、約1/5以下、約1/6以下、約1/7以下、約1/8以下、約1/9以下、約1/10以下、約1/15以下、約1/50以下、および約1/100以下からなる群より選択される度合いまで減少されている、ポリペプチド。
【請求項14】
請求項12に記載のポリペプチドであって、前記Fcレセプター(FcR)は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIからなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1、請求項2、請求項4、および請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記減少したエフェクター機能は、補体タンパク質に対する減少した結合である、ポリペプチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリペプチドであって、前記補体タンパク質は、C1qである、ポリペプチド。
【請求項17】
請求項15に記載のポリペプチドであって、前記補体タンパク質に対する減少した結合は、約1/1以下、約1/2以下、約1/3以下、約1/4以下、約1/5以下、約1/6以下、約1/7以下、約1/8以下、約1/9以下、約1/10以下、および約1/15以下からなる群より選択される度合いまでである、ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記第一のアミノ酸残基および第二のアミノ酸残基は、N結合グリコシル化モチーフの近くかまたはN結合グリコシル化モチーフ中にある、ポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドであって、前記N結合グリコシル化モチーフはアミノ酸配列NXTまたはアミノ酸配列NXSを含む、ポリペプチド。
【請求項20】
請求項19に記載のポリペプチドであって、前記N結合グリコシル化モチーフは、アミノ酸配列NXTを含む、ポリペプチド。
【請求項21】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記第一のアミノ酸残基は、アミノ酸置換によって改変されている、ポリペプチド。
【請求項22】
請求項21に記載のポリペプチドであって、前記アミノ酸置換は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Asn、Gln、Trp、Pro、Ser、Thr、Tyr、Cys、Met、Asp、Glu、Lys、Arg、およびHisからなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項23】
請求項21に記載のポリペプチドであって、前記アミノ酸置換は、非伝統的なアミノ酸残基である、ポリペプチド。
【請求項24】
請求項1〜請求項3および請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記好ましい鎖化学を有する第一のアミノ酸残基は、機能的部分に結合され得る、ポリペプチド。
【請求項25】
請求項24に記載のポリペプチドであって、前記機能的部分は、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および治療部分からなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリペプチドであって、前記遮断部分は、システイン付加体、混合ジスルフィド、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールマレイミドからなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項27】
請求項25に記載のポリペプチドであって、前記検出可能部分は、蛍光部分および同位体部分からなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項28】
請求項25に記載のポリペプチドであって、前記診断剤は、疾患または障害の存在を解明し得る、ポリペプチド。
【請求項29】
請求項25に記載のポリペプチドであって、前記治療部分は、抗炎症剤、抗癌剤、抗神経変性剤、および抗感染剤からなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項30】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記第二のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸297である、ポリペプチド。
【請求項31】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸299である、ポリペプチド。
【請求項32】
請求項21に記載のポリペプチドであって、前記アミノ酸置換は、カバット番号付けによるT299A、T299N、T299G、T299Y、T299C、T299H、T299E、T299D、T299K、T299R、T299G、T299I、T299L、T299M、T299F、T299P、T299WおよびT299Vからなる群より選択される、ポリペプチド。
【請求項33】
請求項32に記載のポリペプチドであって、前記アミノ酸置換は、T299Cである、ポリペプチド。
【請求項34】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、前記改変された第一のアミノ酸残基においてペグ化されている、ポリペプチド。
【請求項35】
請求項34に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、PEG−マレイミドによってペグ化されている、ポリペプチド。
【請求項36】
請求項1、および請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、システインまたは混合ジスルフィド付加体によって改変された、システイン残基である、ポリペプチド。
【請求項37】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、抗体である、ポリペプチド。
【請求項38】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択される抗体から得られる、ポリペプチド。
【請求項39】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、リガンド、サイトカイン、レセプター、細胞表面抗原、および癌細胞抗原からなる群より選択される抗原に結合する、ポリペプチド。
【請求項40】
適切な薬学的キャリア中において請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む、組成物。
【請求項41】
ヒト障害またはヒト疾患を処置または予防するための方法であって、該方法は、請求項40に記載の治療有効量の薬学的組成物を投与し、該ヒト疾患またはヒト障害の治療または予防が達成されるようにする工程、方法。
【請求項42】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項43】
請求項42に記載の核酸であって、前記コードされた第一のアミノ酸残基および第二のアミノ酸残基は、N結合グリコシル化モチーフの一部である、核酸。
【請求項44】
請求項43に記載の核酸であって、前記N結合グリコシル化モチーフは、アミノ酸配列NXTまたはアミノ酸配列NXSを含む、核酸。
【請求項45】
請求項42に記載の核酸であって、前記第二のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸297である、核酸。
【請求項46】
請求項42に記載の核酸であって、前記グリコシル化され得る第二のアミノ酸残基は、297位にある、核酸。
【請求項47】
請求項42に記載の核酸であって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸299である、核酸。
【請求項48】
請求項16に記載の核酸であって、前記コードされた第一のアミノ酸残基は、アミノ酸置換によって改変されている、核酸。
【請求項49】
請求項48に記載の核酸であって、前記アミノ酸置換は、T299A、T299N、T299G、T299Y、T299C、T299H、T299E、T299D、T299K、T299R、T299G、T299I、T299L、T299M、T299F、T299P、T299W、およびT299Vからなる群より選択される、核酸。
【請求項50】
請求項49に記載の核酸であって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、T299Cである、核酸。
【請求項51】
請求項42に記載の核酸であって、前記好ましい側鎖化学を有するコードされた第一のアミノ酸残基は、機能的部分に結合され得る、核酸。
【請求項52】
請求項48に記載の核酸であって、前記機能的部分は、遮断部分、検出可能部分、診断部分、および治療部分からなる群より選択される、核酸。
【請求項53】
請求項42に記載の核酸であって、前記コードされたポリペプチドが、抗体である、核酸。
【請求項54】
請求項53に記載の核酸であって、前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択される、核酸。
【請求項55】
請求項42に記載の核酸であって、前記コードされたポリペプチドは、Fcレセプター(FcR)に対する減少した結合を示す、核酸。
【請求項56】
請求項55に記載の核酸であって、前記Fcレセプター(FcR)は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIからなる群より選択される、核酸。
【請求項57】
請求項42に記載の核酸であって、前記コードされたポリペプチドは、補体タンパク質のC1qに対する減少した結合を示す、核酸。
【請求項58】
請求項42に記載の核酸であって、前記コードされたポリペプチドは、リガンド、サイトカイン、レセプター、細胞表面抗原、および癌細胞抗原からなる群より選択される抗原に結合する、核酸。
【請求項59】
請求項42に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項60】
請求項42に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項61】
抗原結合ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、請求項60に記載の宿主細胞を、該宿主細胞によって該ポリペプチドを産生するために適切な条件下で培養する工程を包含する、方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、該方法は、前記宿主細胞培養から前記ポリペプチドを回収する工程を包含する、方法。
【請求項63】
Fc領域中でグリコシル化が減少した改変された抗原結合ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、
元のポリペプチド中の第一のアミノ酸残基と、該元のポリペプチドのFc領域中でグリコシル化され得る第二のアミノ酸残基とを同定する工程であって、該第一のアミノ酸の改変は、第二のアミノ酸におけるグリコシル化を減少する、工程;
アミノ酸をその好ましい側鎖化学に関して選択する工程、および
該好ましい側鎖化学を含むように該第一のアミノ酸残基を改変して、改変されたポリペプチドを産生する工程であって、該Fc領域の第二のアミノ酸残基のグリコシル化は、該元のポリペプチドと比較して該改変されたポリペプチドにおいて減少される、工程、
を包含する、方法。
【請求項64】
抗体のエフェクター機能を減少させる方法であって、該方法は、
該抗体のFc領域中の第二のアミノ酸残基のグリコシル化を変更し得る、該抗体中の第一のアミノ酸残基を同定する工程;および
該第一のアミノ酸残基を、改変されていない抗体と比較して該改変されたポリペプチドにおいて該Fc領域の第二のアミノ酸残基のグリコシル化が減少されるように、かつ該改変されたアミノ酸が好ましい側鎖化学を有するように、改変する工程、
を包含する、方法。
【請求項65】
請求項63に記載の方法であって、該方法は、前記改変された抗原結合ポリペプチドが、変更されたエフェクター機能を示すか否かを確定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項66】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記同定する工程は、前記第一のアミノ酸が改変された場合に、前記Fc領域のアミノ酸の空間的な表示を決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項67】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、1つ以上の工程が、コンピューターによって補助される、方法。
【請求項68】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記第一のアミノ酸残基および第二のアミノ酸残基は、グリコシル化モチーフの中にあるかまたはグリコシル化モチーフに近い、方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、前記グリコシル化モチーフは、アミノ酸配列NXTまたはアミノ酸配列NXSを含む、N結合グリコシル化モチーフである、方法。
【請求項70】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記第一のアミノ酸残基の改変は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、およびアミノ酸化学改変からなる群より選択される、方法。
【請求項71】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、好ましい側鎖化学に関して選択された前記第一のアミノ酸残基は、機能的エフェクター部分に結合され得る、方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法であって、前記機能的部分は、システイン付加体、PEG−マレイミド、および治療部分からなる群より選択される、方法。
【請求項73】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記第二のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸297である、方法。
【請求項74】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、カバット番号付けによるアミノ酸299である、方法。
【請求項75】
請求項70に記載の方法であって、前記アミノ酸残基置換は、T299A、T299N、T299G、T299Y、T299C、T299H、T299E、T299D、T299K、T299R、T299G、T299I、T299L、T299M、T299F、T299P、T299W、およびT299Vからなる群より選択される、方法。
【請求項76】
請求項70に記載の方法であって、前記改変された第一のアミノ酸残基は、T299Cである、方法。
【請求項77】
請求項63または請求項64に記載の方法であって、前記ポリペプチドは、変更されたエフェクター機能を示す、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記変更されたエフェクター機能は、Fcレセプター(FcR)に対する減少した結合である、方法。
【請求項79】
請求項78に記載の方法であって、前記Fcレセプター(FcR)は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIからなる群より選択される、方法。
【請求項80】
請求項78に記載の方法であって、前記変更されたエフェクター機能は、補体タンパク質のC1qに対する減少した結合である、方法。
【請求項81】
請求項63〜請求項80のいずれか1項に記載の方法によって産生された、ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−503206(P2007−503206A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524120(P2006−524120)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/027476
【国際公開番号】WO2005/018572
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】