説明

変速機の変速操作機構

【課題】変速機の変速操作機構の軽量化を図る。
【解決手段】変速操作機構1は、シフトレバー6と、シフトロッド4と、保持部材3と、押圧機構2と、を備えている。シフトロッド4は、シフトレバー6と連動するように設けられた部材であって、変速機本体のケース5により相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に支持されている。保持部材3はシフトロッド4に設けられている。押圧機構2はケース5に固定されている。押圧機構2は、保持部材3に当接する第1ボール部材26を有しており、第1ボール部材26を保持部材3に押し付ける。保持部材3は、ケース5に対してシフトロッド4がセレクト操作方向(回転方向)に保持されるように第1ボール部材26が嵌り込み可能な中立保持部C1と、ケース5に対してシフトロッド4がシフト操作方向(軸方向)に保持されるように第1ボール部材26が嵌り込み可能な第1速保持部Q1と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速操作機構、特に手動変速機の変速操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の変速機として手動変速機が知られている。手動変速機は、変速機本体と、シフトレバーを介して変速機本体の変速動作を操作するための変速操作機構と、を備えている。変速機本体は、ケースと、入力シャフトと、メインシャフトと、複数のギヤと、複数のシンクロ機構と、を有している。入力シャフトおよびメインシャフトは、ケースにより相対回転可能に支持されている。シンクロ機構のスリーブが軸方向に移動することで、ギヤとシャフトとの連結状態が切り換えられる。シンクロ機構のスリーブの動作は、変速操作機構により操作される。
【0003】
一般に、変速操作機構は主に、シフトレバーと、シフトロッドと、を有している。シフトロッドは、変速機本体により相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に支持されている。シフトロッドの軸方向の位置および回転角度により、複数のシンクロ機構での切り換え状態が決まる。変速機本体に対するシフトロッドの位置は、シフトレバーにより操作することができる。例えば、シフトロッドの回転方向をセレクト操作方向、シフトロッドの軸方向をシフト操作方向とする。
【0004】
さらに、変速操作機構には、セレクトチェック機構と、セレクトリターン機構と、セレクトストッパ機構と、シフトチェック機構と、シフトストッパ機構と、が設けられている。セレクトチェック機構は、シフトロッドを中立位置に保持するための機構である(例えば、特許文献1を参照)。セレクトリターン機構は、シフトロッドを中立位置に戻すための機構である。シフトロッドを中立位置からセレクト操作方向に回転させた際に、シフトロッドに回転力を与えることでシフトロッドが中立位置に戻る。
【0005】
セレクトストッパ機構はシフトロッドのセレクト操作方向の回転角度を所定角度の範囲内に制限している。シフトチェック機構は、各変速段に合わせてシフトロッドのシフト操作方向の位置決めを行う。シフトストッパ機構はシフトロッドのシフト操作方向の移動範囲を所定の範囲に制限している。
【特許文献1】実開平3−49460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の変速操作機構では、前述のセレクトチェック機構などの機構がそれぞれ独立して設けられているため、部品点数が多くなる。この結果、変速機の重量が増大する。
【0007】
本発明の課題は、変速機の変速操作機構の軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る変速操作機構は、シフトレバーと、シフトロッドと、保持部材と、押圧機構と、を備えている。シフトレバーは変速機本体のケースに支持されている。シフトロッドは、シフトレバーと連動するように設けられた部材であって、セレクト操作方向に移動あるいは回転可能なように、かつ、シフト操作方向に移動あるいは回転可能なよう、ケースにより支持されている。保持部材はケースおよびシフトロッドのうち一方に設けられている。押圧機構は、ケースおよびシフトロッドのうち他方に固定された機構であって、保持部材に当接する当接部材を有し当接部材を保持部材に押し付ける。保持部材は、ケースに対してシフトロッドがセレクト操作方向に保持されるように当接部材が嵌り込み可能な第1保持部と、ケースに対してシフトロッドがシフト操作方向に保持されるように当接部材が嵌り込み可能な第2保持部と、を有している。
【0009】
ここで、保持部材とケースもしくはシフトロッドとは、別部材であってもよいし、一体的に形成されていてもよい。
【0010】
この変速操作機構では、保持部材の第1保持部に押圧機構の当接部材が嵌り込むと、シフトロッドがセレクト操作方向に保持される。第2保持部に当接部材が嵌り込むと、シフトロッドがシフト操作方向に保持される。つまり、セレクトチェック機構およびシフトチェック機構が押圧機構と保持部材とにより実現されている。これにより、セレクトチェック機構およびシフトチェック機構を1つの機構にまとめることができ、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に係る変速操作機構では、部品点数を削減することができるため、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<変速操作機構の全体構成>
図1を用いて本発明の実施形態としての変速操作機構1について説明する。図1は変速操作機構1の概略構成図である。
【0014】
手動変速機(図示せず)は、変速機本体(図示せず)と、変速操作機構1と、を備えている。変速操作機構1は、変速機本体の変速動作を操作するための機構であり、例えば6段変速に対応している。図1に示すように、変速操作機構1は、シフトレバー6と、シフトロッド4と、押圧機構2と、シフトロッド4に固定された保持部材3と、を備えている。
【0015】
シフトロッド4は、変速機本体のケース5により回転軸A回りに相対回転可能かつ回転軸Aに沿った方向(軸方向)に相対移動可能に支持されている。図1に示すように、軸方向右側をS1側、軸方向左側をS2側と定義する。また、図1に示すように、右側から見て時計回りを回転方向R1側、反時計回りを回転方向R2側と定義する。押圧機構2は変速機本体のケース5に固定されている。シフトロッド4の端部にはシフトレバー6が連結されている。シフトレバー6を操作することにより、シフトロッド4を軸方向に移動させたり回転軸A回りに回転させたりすることができる。シフトロッド4の回転方向は、セレクト操作方向の一例であり、軸方向はシフト操作方向の一例である。
【0016】
<変速操作機構の詳細構成>
この変速操作機構1では、押圧機構2および保持部材3により、セレクトチェック機構、セレクトリターン機構、セレクトストッパ機構、シフトチェック機構およびシフトストッパ機構が実現されている。以下、図2〜図4を用いて変速操作機構1の詳細構成について説明する。図2は図1のII−II断面図である。図3は図2のIII−III断面図である。図4は保持部材3の概略斜視図である。図2および図3はシフトロッド4が中立位置にある状態を示している。
【0017】
(1)押圧機構
図2および図3に示すように、押圧機構2は、保持部材3に押圧力を与えるための機構であり、軸受支持部材22と、軸受支持部材22により相対移動可能に支持されたシリンダ25と、シリンダ25の端部に回転可能に設けられた第1ボール部材26(当接部材の一例)と、第1ボール部材26を保持部材3に押し付けるスプリング27と、を有している。軸受支持部材22の端部はケース5に嵌め込まれている。例えば、軸受支持部材22の中心線である軸線Dは、回転軸Aと直交している。シリンダ25および第1ボール部材26の移動方向は、軸線Dとほぼ一致している。スプリング27は軸受支持部材22内に予め圧縮された状態で配置されている。第1ボール部材26は球状であり、第1ボール部材26の中心は軸線D上に配置されている。第1ボール部材26とシリンダ25との間には、複数の第2ボール部材28(転動体の一例)が配置されている。第2ボール部材28により第1ボール部材26はシリンダ25に対して回転可能である。
【0018】
さらに押圧機構2は、円筒状の保護部材23と、軸受支持部材22に対して保護部材23を回転可能に支持する軸受24と、を有している。軸受支持部材22のフランジ22aにより保護部材23および軸受24は支持されている。スプリング27により第1ボール部材26は保持部材3の凹凸面に押し付けられている。
【0019】
(2)保持部材
保持部材3は、ケース5に対してシフトロッド4の位置決めを行うための部材であり、スリーブ41を介してシフトロッド4に固定されている。保持部材3は例えば金属製の部材である。保持部材3の押圧機構2側の上面には、位置決めを行うための凹凸が形成されている。保持部材3は、これらの凹凸を含めて一体成形されている。これらの凹凸に前述の押圧機構2の第1ボール部材26が押し付けられると、保持部材3の形状に応じてシフトロッド4の位置が保持される。
【0020】
具体的には図4に示すように、保持部材3は、中立保持部C1(第1保持部の一例)と、第1案内部C2(案内部の一例)と、第2案内部C3(案内部の一例)と、を有している。
【0021】
中立保持部C1は、シフトロッド4を中立位置に保持するための部分であり、第1案内部C2および第2案内部C3の間に形成された軸方向に延びる溝Gを含んでいる。溝Gの深さは、シフトレバー6に所定の操作力が作用した際に第1ボール部材26が抜け出せる程度に設定されている。
【0022】
図2に示すように、第1案内部C2および第2案内部C3は、回転軸Aを中心とした仮想線Kよりも半径方向外側に配置されている。つまり、中立保持部C1から離れるにしたがって、回転軸Aからの距離が長くなるように、第1案内部C2および第2案内部C3は形成されている。言い換えると、第1案内部C2および第2案内部C3は、中立保持部C1に向かって下るように若干傾斜している。このような構成により、第1案内部C2および第2案内部C3において押圧機構2の押圧力がシフトロッド4の回転力に変換される。
【0023】
例えば、保持部材3が中立位置から回転すると、第1案内部C2に押圧機構2の第1ボール部材26が押し付けられる。この結果、押圧機構2の押圧力の一部が、第1案内部C2により保持部材3の回転力に変換される(後述の図5参照)。このため、押圧機構2の押圧力により保持部材3が回転すると、第1ボール部材26が第1案内部C2により中立保持部C1まで案内され、第1ボール部材26が中立保持部C1に嵌り込む。第2案内部C3についても第1案内部C2と同様である。
【0024】
また、図4に示すように、保持部材3は、第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6を有している。第1速〜第6速保持部Q1〜Q6は、第2保持部の一例である。
【0025】
第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6は、シフトロッド4を第1速〜第6速の状態に保持するための部分である。第1ボール部材26が第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6に嵌り込んだ状態では、シフトロッド4が少なくとも軸方向に保持される。図4に示すように、第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6により、中立保持部C1の溝Gが形成されていると言える。
【0026】
第1速保持部Q1は、第1突出部P1および第1傾斜部P11により形成されている。第2速保持部Q2は、第2突出部P2および第2傾斜部P12により形成されている。第3速保持部Q3は、第3突出部P3および第3傾斜部P13により形成されている。第4速保持部Q4は、第4突出部P4および第4傾斜部P14により形成されている。第5速保持部Q5は、第5突出部P5および第5傾斜部P15により形成されている。第6速保持部Q6は、第6突出部P6および第6傾斜部P16により形成されている。
【0027】
また、中立保持部C1は、主に第3突出部P3および第4突出部P4により形成されている。第1案内部C2は第1突出部P1および第2突出部P2により形成されている。第2案内部C3は第5突出部P5および第6突出部P6により形成されている。
【0028】
第1突出部P1〜第6突出部P6は、変速段が切り換わっているか否かをドライバに認識させるために、変速段を切り換えるときに抵抗力を発生させる部分である。変速段が切り換わっているか否かという感覚を、一般に、節度感という。
【0029】
第1突出部P1、第2突出部P2、第5突出部P5および第6突出部P6は、2つの傾斜面を有する山形であり、それぞれほぼ同じ形状を有している。第1突出部P1、第2突出部P2、第5突出部P5および第6突出部P6の回転軸Aを基準とした高さ(図4における上下方向の距離)は、概ね同じである。第1傾斜部P11、第2傾斜部P12、第5傾斜部P15および第6傾斜部P16は、1つの傾斜面を有しており、回転軸Aを基準とした高さが概ね同じである。
【0030】
これらの構成により、第1速保持部Q1、第2速保持部Q2、第5速保持部Q5および第6速保持部Q6は、回転軸Aを基準とした高さが概ね同じとなっている。
【0031】
一方、第3突出部P3および第4突出部P4は、2つの傾斜面を有する山形であり、それぞれほぼ同じ形状を有している。第3突出部P3および第4突出部P4の回転軸Aを基準とした高さ(図4における上下方向の距離)は、概ね同じである。第3傾斜部P13および第4傾斜部P14は、1つの傾斜面を有しており、回転軸Aを基準とした高さが概ね同じである。第3突出部P3、第4突出部P4、第3傾斜部P13および第4傾斜部P14により、溝Gの底面が形成されている。
【0032】
第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6は、1対の第1側壁部33と、1対の第2側壁部34と、により囲まれている。具体的には図2〜図4に示すように、第1側壁部33は、押圧機構2(より詳細には、保護部材23)と回転方向に当接可能なように配置されている。第2側壁部34は、押圧機構2(より詳細には、保護部材23)と軸方向に当接可能なように配置されている。
【0033】
図2〜図4に示すように、第1側壁部33は、軸方向に延びる板状の部分である。一方の第1側壁部33は、第1速保持部Q1、第1案内部C2および第2速保持部Q2と回転方向に並んで配置されおり、より詳細には、第1速保持部Q1、第1案内部C2および第2速保持部Q2の回転方向外側(中立保持部C1と反対側)に配置されている。他方の第1側壁部33は、第5速保持部Q5、第2案内部C3および第6速保持部Q6と回転方向に並んで配置されており、より詳細には、第5速保持部Q5、第2案内部C3および第6速保持部Q6の回転方向外側(中立保持部C1と反対側)に配置されている。第2側壁部34は、概ね回転方向に延びる板状の部分である。一方の第2側壁部34は、第1傾斜部P11、第3傾斜部P13および第5傾斜部P15と軸方向に並んで配置されており、より詳細には、第1傾斜部P11、第3傾斜部P13および第5傾斜部P15の軸方向外側(中立保持部C1と反対側)に配置されている。他方の第2側壁部34は、第2傾斜部P12、第4傾斜部P14および第6傾斜部P16と軸方向に並んで配置されており、第2傾斜部P12、第4傾斜部P14および第6傾斜部P16の軸方向外側(中立保持部C1と反対側)に配置されている。
【0034】
このように、第1側壁部33および第2側壁部34により、押圧機構2および保持部材3の回転方向および軸方向の相対移動が所定範囲内で制限されている。
【0035】
<変速操作機構の動作>
図2〜図9を用いて変速操作機構1について説明する。図5〜図9の左上あるいは左下にシフトレバー6の位置を示す。
【0036】
図2および図3に示すように、押圧機構2の第1ボール部材26が中立保持部C1(より詳細には、溝G)に嵌り込んだ状態では、所定の操作力がシフトレバー6に作用しないと、保持部材3が回転しない。つまり、押圧機構2および中立保持部C1により、保持部材3を中立位置に保持するセレクトチェック機構が実現されている。
【0037】
第1ボール部材26が中立保持部C1に嵌り込んでいる中立状態から、ドライバがシフトレバー6をセレクト操作方向(回転方向)に操作すると、例えば、保持部材3が回転軸Aを中心としてR2側に回転する。このとき、シフトレバー6の操作力がスプリング27の押圧力(押圧機構2および中立保持部C1により発生する保持力)に打ち勝つと、スプリング27が圧縮される。この結果、溝Gへの第1ボール部材26の嵌り込みが解除され、第1ボール部材26が第1案内部C2上を回転しながら移動する(図5)。
【0038】
前述のように、第2案内部C3が仮想線Kよりも半径方向外側に配置されているため、保持部材3が回転すると第1案内部C2が軸線Dに対して傾斜する。この結果、第1ボール部材26から第1案内部C2に伝達される押圧力の作用する方向が軸線Dに対して傾き、保持部材3に回転軸A回りの回転力が作用する。このため、図5に示す状態でシフトレバー6の操作力を解除すると、保持部材3がR1側に回転し、第1ボール部材26が中立保持部C1の溝Gに嵌り込む(図2)。第2案内部C3の場合も第1案内部C2と同様である。
【0039】
このように、押圧機構2、第1案内部C2および第2案内部C3により、シフトロッド4を中立位置に戻すセレクトリターン機構が実現されている。
【0040】
また、保持部材3がR2側に所定角度だけ回転すると、押圧機構2の保護部材23が第1側壁部33に当接する。このため、保持部材3から押圧機構2が脱落するのを防止できる。つまり、押圧機構2および第1側壁部33によりセレクトストッパ機構が実現されている。
【0041】
図5および図6に示す状態からシフトレバー6を第1速側に操作すると、シフトロッド4および保持部材3がS1側へ移動し、図7に示すように、第1ボール部材26が回転しながら第1突出部P1上を登る。このとき、スプリング27の圧縮量が増え、それに伴ってスプリング27の押圧力が大きくなる。この押圧力は、シフトレバー6を操作する際の抵抗力となり、この抵抗力により、ドライバは変速段が切り換わっているか否かを認識し得る。
【0042】
シフトレバー6を第1速側にさらに操作すると、図8に示すように、第1ボール部材26が第1突出部P1を乗り越え第1速保持部Q1に嵌り込む。第1速保持部Q1では、第1ボール部材26が第1突出部P1および第1傾斜部P11と当接しているため、図8に示す状態でケース5に対する保持部材3の軸方向の位置が決まり、保持部材3およびシフトロッド4が軸方向に保持される。
【0043】
このように、押圧機構2および第1速保持部Q1により、シフトロッド4を軸方向に保持するシフトチェック機構が実現されている。
【0044】
また、図8に示す状態からシフトレバー6を第1速側にさらに操作すると、押圧機構2の保護部材23が第2側壁部34と当接する。このため、保持部材3から押圧機構2が脱落するのを防止できる。つまり、押圧機構2および第2側壁部34によりシフトストッパ機構が実現されている。
【0045】
ここでは、第1速にシフトレバー6を操作した場合を例に説明しているが、第2速〜第6速の場合も動作は同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
<変速操作機構の特徴>
変速操作機構1の特徴は以下の通りである。
【0047】
(1)
この変速操作機構1では、保持部材3の中立保持部C1に押圧機構2の第1ボール部材26が接触すると、押圧機構2の押圧力および中立保持部C1の形状により、ある特定の軸方向位置においてシフトロッド4が回転方向に保持される。つまり、押圧機構2および中立保持部C1によりセレクトチェック機構が実現されている。
【0048】
また、例えば、第1速保持部Q1に第1ボール部材26が嵌り込むと、ケース5に対する保持部材3およびシフトロッド4の位置が決まる。この状態では、押圧機構2および保持部材3によりシフトロッド4が軸方向に保持されている。つまり、押圧機構2および第1速保持部Q1によりシフトチェック機構が実現されている。
【0049】
以上に説明したように、この変速操作機構1では、セレクトチェック機構およびシフトチェック機構を、押圧機構2および保持部材3からなる1つの機構にまとめることができる。これにより、部品点数を削減することができ、軽量化を図ることができ、さらには、変速機の小型化も図ることができる。
【0050】
なお、第1速保持部Q1と同様に、第2速保持部Q2、第5速保持部Q5および第6速保持部Q6の場合も、軽量化を図ることができる。
【0051】
(2)
この変速操作機構1では、保持部材3が第1案内部C2および第2案内部C3を有している。第1案内部C2では、第1ボール部材26が中立保持部C1に向かって案内されるようにスプリング27の押圧力の一部が保持部材3およびシフトロッド4の回転力に変換される。このため、シフトレバー6をセレクト操作方向(回転方向)に操作した際に、スプリング27の押圧力を利用して保持部材3を中立位置(中立保持部C1の位置)に戻すことができる。第2案内部C3の場合も第1案内部C2と同様である。
【0052】
このように、この変速操作機構1では、セレクトチェック機構およびシフトチェック機構に加えて、押圧機構2および第1案内部C2によりセレクトリターン機構を実現することができる。
【0053】
(3)
この変速操作機構1では、第1ボール部材26が中立保持部C1に嵌り込んでいる状態では、中立保持部C1によりシフトロッド4が回転方向および軸方向に保持されるため、セレクトチェック機構に加えて、押圧機構2および中立保持部C1により中立位置でのシフトチェック機構を実現することができる。
【0054】
(4)
この変速操作機構1では、中立保持部C1が軸方向に延びる溝Gを含んでいる。溝Gは第1ボール部材26が嵌り込むように設けられている。このため、中立保持部C1に第1ボール部材26が嵌り込みやすくなり、セレクトチェック機構を確実に実現できる。
【0055】
(5)
この変速操作機構1では、保持部材3がシフトロッド4とは別部材としてシフトロッド4に固定されているため、シフトロッド4の強度に関係なく保持部材3を最適な形状に成形することができる。
【0056】
(6)
この変速操作機構1では、押圧機構2と回転方向に当接可能な第1側壁部33を、保持部材3が有しているため、保持部材3が回転すると第1案内部C2上を第1ボール部材26が移動し、やがて押圧機構2が第1側壁部33に当接する。つまり、押圧機構2および保持部材3の第1側壁部33により、セレクト操作方向(回転方向)の保持部材3の移動範囲を制限するセレクトストッパ機構を実現することができる。
【0057】
(7)
この変速操作機構1では、押圧機構2と軸方向に当接可能な第2側壁部34を、保持部材3が有しているため、第1速保持部Q1に第1ボール部材26が嵌り込んでいる状態から、さらに保持部材3が軸方向に移動しても、押圧機構2が第2側壁部34と当接する。つまり、押圧機構2および第2側壁部34により、シフト操作方向(軸方向)の保持部材3の移動範囲を制限するシフトストッパ機構を実現することができる。
【0058】
(8)
この変速操作機構1では、押圧機構2が保護部材23を有しているため、第1側壁部33との衝突により軸受支持部材22が破損するのを防止できる。また、保護部材23が軸受24により回転可能に支持されているため、保護部材23が第1側壁部33と接触しながら移動しても、第1側壁部33と保護部材23との間の摩擦を低減できる。これにより、シフトレバー6の操作力が増大するのを抑制できる。
【0059】
(9)
この変速操作機構1では、保持部材3と当接する第1ボール部材26が回転可能であるため、第1ボール部材26と保持部材3との間に生じる摩擦抵抗を低減することができ、部材の損耗を抑制できる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0061】
(A)
本発明は、FF車用の手動変速機だけでなく、FR(Front Engine Rear Drive)車用の手動変速機にも適用可能である。
【0062】
(B)
前述の実施形態では、保持部材3がシフトロッド4と別部材であるが、例えば図10および図11に示すように、保持部材3がシフトロッド4と一体的に設けられていてもよい。
【0063】
このシフトロッド104は、中立保持部C11と、第1案内部C12と、第2案内部C13と、前方保持部Q11と、後方保持部Q12と、を有している。
【0064】
第1案内部C12および第2案内部C13は、回転軸Aを中心とした仮想線K2よりも半径方向外側に配置されている。前方保持部Q11は、回転方向に延びる第1溝G1を有している。後方保持部Q12は、回転方向に延びる第2溝G2を有している。
【0065】
この場合、セレクトチェック機構、セレクトリターン機構およびシフトチェック機構を実現することができる。このため、従来品に比べて、部品点数をさらに削減することができ、軽量化を図ることができる。
【0066】
(C)
前述の実施形態では、押圧機構2および保持部材3により、5つの機構(セレクトチェック機構、セレクトリターン機構、セレクトストッパ機構、シフトチェック機構およびシフトストッパ機構)が実現されているが、これらのうち少なくともセレクトチェック機構およびシフトチェック機構を実現できれば、部品点数を削減することができる。
【0067】
例えば、保持部材3が第1側壁部33および第2側壁部34を有していない場合も考えられる。この場合、他の機構によりセレクトストッパ機構およびシフトストッパ機構を実現すればよい。
【0068】
また、保持部材3が第1案内部C2および第2案内部C3を有していない場合も考えられる。この場合、例えば従来から用いられている機構などによりセレクトリターン機構を実現すればよい。
【0069】
(D)
保持部材3の形状は前述の実施形態に限定されない。例えば、第1速保持部Q1〜第6速保持部Q6は、第1ボール部材26が嵌り込んだ状態で保持部材3が軸方向に保持される程度に窪んでいればよい。
【0070】
保持部材3の形状によっては、変速段を切り換える際の節度感を実質的に同じにすることができる。
【0071】
また、第1突出部P1〜第6突出部P6は、前述の実施形態で示す形状よりも滑らかな曲面により形成されていてもよい。
【0072】
さらに、中立保持部C1の形状は前述の実施形態に限定されない。例えば、図12に示す保持部材303も考えられる。この場合、前述の中立保持部C1、C2および第2案内部C3に対応する中立保持部C31、第1案内部C32および第2案内部C33は、略V字形状の溝G3により形成されている。この場合であっても、セレクトチェック機構およびセレクトリターン機構を実現することができる。
【0073】
(E)
前述の実施形態では、押圧機構2がケース5に固定されており、保持部材3がシフトロッド4に固定されているが、押圧機構2および保持部材3の配置が逆であってもよい。例えば図13に示すように、押圧機構402がシフトロッド4に固定されており、保持部材403がケース5に固定されていてもよい。この場合であっても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(F)
前述の実施形態では、セレクト操作方向が回転方向に対応しており、シフト操作方向が軸方向に対応しているが、これらに限定されない。例えば、セレクト操作方向が軸方向に対応し、かつ、シフト操作方向が回転方向に対応していてもよい。
【0075】
(G)
後進ギヤ用の保持部を設ける場合、第1突出部P1〜第6突出部P6の高さよりも後進用の突出部の高さを高く設定することで、後進ギヤへの誤操作防止機構を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る変速操作機構であれば、軽量化を図ることができるため、本発明は変速機の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】変速操作機構の概略構成図
【図2】図1のII−II断面図
【図3】図2のIII−III断面図
【図4】保持部材の概略斜視図
【図5】変速操作機構の動作説明図
【図6】変速操作機構の動作説明図
【図7】変速操作機構の動作説明図
【図8】変速操作機構の動作説明図
【図9】変速操作機構の動作説明図
【図10】シフトロッドの概略斜視図(他の実施形態)
【図11】図10のXI−XI断面図(他の実施形態)
【図12】変速操作機構の概略断面図(他の実施形態)
【図13】変速操作機構の概略断面図(他の実施形態)
【符号の説明】
【0078】
1 変速操作機構
2 押圧機構
22 軸受支持部材
23 保護部材
24 軸受
25 シリンダ
26 第1ボール部材(当接部材)
27 スプリング(弾性部材)
28 第2ボール部材(転動体)
3 保持部材
33 第1側壁部(第1当接部の一例)
34 第2側壁部(第2当接部の一例)
4 シフトロッド
5 ケース
6 シフトレバー
C1 中立保持部(第1保持部の一例)
C2 第1案内部(案内部の一例)
C3 第2案内部(案内部の一例)
Q1〜Q6 第1〜第6速保持部(第2保持部の一例)
P1〜P6 第1〜第6突出部
G 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機本体のケースに支持されるシフトレバーと、
前記シフトレバーと連動するように設けられた部材であって、セレクト操作方向に移動あるいは回転可能なように、かつ、シフト操作方向に移動あるいは回転可能なよう、前記ケースにより支持されたシフトロッドと、
前記ケースおよびシフトロッドのうち一方に設けられた保持部材と、
前記ケースおよびシフトロッドのうち他方に固定された機構であって、前記保持部材に当接する当接部材を有し前記当接部材を前記保持部材に押し付ける押圧機構と、を備え、
前記保持部材は、前記ケースに対して前記シフトロッドが前記セレクト操作方向に保持されるように前記当接部材が嵌り込み可能な第1保持部と、前記ケースに対して前記シフトロッドが前記シフト操作方向に保持されるように前記当接部材が嵌り込み可能な第2保持部と、を有している、
変速操作機構。
【請求項2】
前記保持部材は、前記第1保持部と前記セレクト操作方向に並んで配置された部分であって、前記当接部材が前記第1保持部に向かって案内されるように前記押圧機構の押圧力の一部を前記シフトロッドの回転力に変換する案内部を有している、
請求項1に記載の変速操作機構。
【請求項3】
前記第1保持部は、前記ケースに対して前記シフトロッドが前記セレクト操作方向およびシフト操作方向に保持されるように前記摺動部材が嵌り込み可能である、
請求項1または2に記載の変速操作機構。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記シフト操作方向に延び前記当接部材が嵌り込み可能なように設けられた溝を含んでいる、
請求項1から3のいずれかに記載の変速操作機構。
【請求項5】
前記保持部材は、前記シフトロッドに固定されている、または、前記シフトロッドに一体的に設けられている、
請求項1から4のいずれかに記載の変速操作機構。
【請求項6】
前記保持部材は、前記案内部と前記セレクト操作方向に並んで配置され前記押圧機構と前記セレクト操作方向に当接可能な第1当接部を有している、
請求項2から5のいずれかに記載の変速操作機構。
【請求項7】
前記保持部材は、前記第2保持部と前記シフト操作方向に並んで配置され前記押圧機構と前記シフト操作方向に当接可能な第2当接部を有している、
請求項2から6のいずれかに記載の変速操作機構。
【請求項8】
前記押圧機構は、前記シフトロッドの回転軸に向かって延びる軸線に沿って前記当接部材が移動可能なように前記当接部材を回転可能に支持する支持部材と、前記当接部材と前記支持部材との間に配置された複数の転動体と、前記支持部材の内側に配置され前記当接部材を前記保持部材に押し付ける弾性部材と、前記支持部材の外周側に配置され前記第1当接部と当接可能な保護部材と、前記支持部材に対して前記保護部材を前記軸線回りに回転可能に支持する軸受と、を有している、
請求項6または7に記載の変速操作機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−222119(P2009−222119A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66333(P2008−66333)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390009896)愛知機械工業株式会社 (190)
【Fターム(参考)】