説明

変速機の変速操作装置

【課題】構成が簡単で、かつ、変速操作が軽快にできる変速機の変速操作装置を提供する。
【解決手段】変速操作装置23は、シフトセレクト軸32の軸方向に移動A可能、かつ、軸心31回りに回動B可能とされ、移動Aと回動Bにより各シフトフォーク26−29のヘッド部26a−28aに択一選択的に係合すると共にシフトフォーク26−29を連動させるインナレバー34と、インナレバー34が、基準となる中立回動位置Cから回動Bすることを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置Cから所定角回動Bした後、その所定回動位置D,Eから更に回動Bすることを弾性的に規制して位置決めするディテント装置38とを備える。フォークシャフト25を単一本だけ設ける。シフトセレクト軸32の径方向で互いに対向するインナレバー34の各部分と、変速機ケース2側との間にディテント装置38をそれぞれ設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトフォークと連結されるインナレバーが外部からの変速操作力により往復回動する動作において、この回動動作に節度感を発生させるようにして上記インナレバーを位置決めするディテント装置を備えた変速機の変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記変速機の変速操作装置には、従来、下記する特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、変速機の変速操作装置は、変速機ケースに対し軸方向に摺動可能に支持されるフォークシャフトと、全ての変速段に対応するよう設けられて上記フォークシャフトに固定により支持され、かつ、各ヘッド部が一カ所に集合配置される複数のシフトフォークと、上記変速機ケースに支持されるシフトセレクト軸とを備えている。
【0003】
また、上記変速操作装置は、インナレバーを備えている。このインナレバーは、上記シフトセレクト軸に支持され、このシフトセレクト軸の軸方向に沿って移動可能とされると共に上記シフトセレクト軸の軸心回りに回動可能とされている。また、運転者の変速操作力による上記インナレバーの上記した移動と回動により、このインナレバーは上記各シフトフォークのヘッド部に択一選択的に係合すると共にそのシフトフォークを連動させる。
【0004】
また、上記インナレバーが、基準となる中立回動位置から回動することを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置から所定角回動した後、その所定回動位置から更に回動することを弾性的に規制して位置決めするディテント装置が設けられている。このディテント装置は、上記各シフトフォークの外面に形成される凹部を備えている。また、上記ディテント装置は、通常、上記変速機ケース側に支持され、上記凹部に係脱可能に係合する係合体と、この係合体を上記凹部に係合させるよう付勢する弾性体とを備えている。
【0005】
運転者が、上記変速機に対し、所望の変速段を得ようとして変速操作をする時には、その変速操作力を入力した上記インナレバーに連動して目的のシフトフォークが上記フォークシャフトの軸方向の所定位置まで移動させられる。すると、上記ディテント装置において弾性体により付勢されている係合体が上記凹部に係合し、上記シフトフォークのそれ以上の移動が弾性的に規制される。また、この規制により、間接的に上記インナレバーの回動も弾性的に規制される。そして、上記シフトフォークの所定位置への位置決めにより、目的の変速段が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2004−132386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の技術におけるフォークシャフトは複数本設けられている。このため、上記変速機の変速操作装置は、その構成部品の点数が多くなって、その構成が複雑になりがちである。
【0007】
また、上記従来の技術では、前記のように変速機ケースに対しフォークシャフトが軸方向に摺動可能に支持され、このフォークシャフトにシフトフォークが固定により支持され、このシフトフォークの外面に凹部が形成され、この凹部に対し係合体が弾性体による弾性力で係合している。このため、この弾性力は、上記シフトフォークを介しフォークシャフトを上記変速機ケースに圧接させるよう働く。
【0008】
よって、上記変速操作力により、上記シフトフォークと共にフォークシャフトを変速機ケースに対し摺動させるとき、その摩擦抵抗が大きくなり、その分、大きい変速操作力が要求されることとなって、軽快な変速操作が阻害されるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、構成が簡単で、かつ、変速操作が軽快にできる変速機の変速操作装置を提供することである。
【0010】
請求項1の発明は、変速機ケース2に支持されるフォークシャフト25と、全ての変速段に対応するよう設けられて上記フォークシャフト25に支持され、かつ、各ヘッド部26a−28aが一カ所に集合配置される複数のシフトフォーク26−29と、上記変速機ケース2に支持されるシフトセレクト軸32と、このシフトセレクト軸32に支持され、このシフトセレクト軸32の軸方向に沿って移動A可能とされると共に上記シフトセレクト軸32の軸心31回りに回動B可能とされ、変速操作力による上記移動Aと回動Bにより上記各シフトフォーク26−29のヘッド部26a−28aに択一選択的に係合すると共にそのシフトフォーク26−29を連動させるインナレバー34と、このインナレバー34が、基準となる中立回動位置Cから回動Bすることを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置Cから所定角回動Bした後、その所定回動位置D,Eから更に回動Bすることを弾性的に規制して位置決めするディテント装置38とを備えた変速機の変速操作装置において、
上記フォークシャフト25を単一本だけ設け、
上記シフトセレクト軸32の径方向で互いに対向する上記インナレバー34の各部分と、上記変速機ケース2側との間に上記ディテント装置38をそれぞれ設けたことを特徴とする変速機の変速操作装置である。
【0011】
請求項2の発明は、上記変速機ケース2が、ケース本体3と、このケース本体3に着脱可能に支持されて上記シフトセレクト軸32を支持するブラケット5とを備え、上記各ディテント装置38が、それぞれ上記インナレバー34の上記各部分に形成される係合凹部40と、上記ブラケット5に支持され、上記係合凹部40に係脱可能に係合する係合体44と、この係合体44を上記係合凹部40に係合させるよう付勢する弾性体49とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の変速機の変速操作装置である。
【0012】
請求項3の発明は、上記ブラケット5に上記弾性体49を固定する締結具53を設け、上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから回動Bして上記所定回動位置D,Eを越えようとするとき、それ以上の回動Bを上記締結具53が阻止するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の変速機の変速操作装置である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、変速機ケースに支持されるフォークシャフトと、全ての変速段に対応するよう設けられて上記フォークシャフトに支持され、かつ、各ヘッド部が一カ所に集合配置される複数のシフトフォークと、上記変速機ケースに支持されるシフトセレクト軸と、このシフトセレクト軸に支持され、このシフトセレクト軸の軸方向に沿って移動可能とされると共に上記シフトセレクト軸の軸心回りに回動可能とされ、変速操作力による上記移動と回動により上記各シフトフォークのヘッド部に択一選択的に係合すると共にそのシフトフォークを連動させるインナレバーと、このインナレバーが、基準となる中立回動位置から回動することを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置から所定角回動した後、その所定回動位置から更に回動することを弾性的に規制して位置決めするディテント装置とを備えた変速機の変速操作装置において、
上記フォークシャフトを単一本だけ設けている。
【0016】
このため、上記フォークシャフトが複数本であった従来の技術に比べて変速機の変速操作装置の構成部品の点数が少なくなり、よって、この変速操作装置の構成を簡単にできる。
【0017】
また、上記シフトセレクト軸の径方向で互いに対向する上記インナレバーの各部分と、上記変速機ケース側との間に上記ディテント装置をそれぞれ設けている。
【0018】
このため、上記各ディテント装置がインナレバーを中立回動位置や所定回動位置に弾性的に位置決めする際、上記各ディテント装置からインナレバーに与えられる弾性力は、上記シフトセレクト軸の径方向で互いに対向して相殺される。よって、上記インナレバーとこのインナレバーを支持する他の部材との間に摩擦抵抗が生じることは防止される。
【0019】
この結果、外部からの変速操作力により、上記インナレバーをシフトセレクト軸の軸心回りに回動させて所望位置に弾性的に位置決めし、所望の変速段を得ようとする場合に、その変速操作を軽快にすることができる。また、その分、上記ディテント装置による節度感がより明確に生じさせられることとなって、良好な変速操作感覚が向上する。
【0020】
請求項2の発明は、上記変速機ケースが、ケース本体と、このケース本体に着脱可能に支持されて上記シフトセレクト軸を支持するブラケットとを備え、上記各ディテント装置が、それぞれ上記インナレバーの上記各部分に形成される係合凹部と、上記ブラケットに支持され、上記係合凹部に係脱可能に係合する係合体と、この係合体を上記係合凹部に係合させるよう付勢する弾性体とを備えている。
【0021】
このため、上記ブラケット、シフトセレクト軸、インナレバー、およびディテント装置は一体的に組み付けられた組み付け体とされる。そして、この組み付け体の上記ケース本体への組み付けは、単に、上記組み付け体のブラケットをケース本体に固定することで達成される。よって、上記変速機の組み立て作業は、まず、上記組み付け体の組み付け作業を上記ケース本体に影響されない広い作業空間で行い、次に、上記組み付け体を上記のようにケース本体に組み付ければよい。このため、上記変速機の組み立て作業の作業性が向上する。
【0022】
請求項3の発明は、上記ブラケットに上記弾性体を固定する締結具を設け、上記インナレバーが上記中立回動位置から回動して上記所定回動位置を越えようとするとき、それ以上の回動を上記締結具が阻止するようにしている。
【0023】
このため、上記ブラケットに弾性体を固定する締結具が、上記インナレバーの位置決め用に利用される。よって、その分、上記変速機の変速操作装置の構成部品の点数を少なくできて、この変速機の構成を更に簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の変速機の変速操作装置に関し構成が簡単で、かつ、変速操作が軽快にできる変速機の変速操作装置を提供する、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0025】
即ち、変速機の変速操作装置は、変速機ケースに支持されるフォークシャフトと、全ての変速段に対応するよう設けられて上記フォークシャフトに支持され、かつ、各ヘッド部が一カ所に集合配置される複数のシフトフォークと、上記変速機ケースに支持されるシフトセレクト軸と、このシフトセレクト軸に支持され、このシフトセレクト軸の軸方向に沿って移動可能とされると共に上記シフトセレクト軸の軸心回りに回動可能とされ、変速操作力による上記移動と回動により上記各シフトフォークのヘッド部に択一選択的に係合すると共にそのシフトフォークを連動させるインナレバーと、このインナレバーが、基準となる中立回動位置から回動することを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置から所定角回動した後、その所定回動位置から更に回動することを弾性的に規制して位置決めするディテント装置とを備えている。
【0026】
上記フォークシャフトが単一本だけ設けられている。また、上記シフトセレクト軸の径方向で互いに対向する上記インナレバーの各部分と、上記変速機ケース側との間に上記ディテント装置が設けられている。
【実施例】
【0027】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0028】
図において、符号1は、車両に搭載される変速機であり、これはエンジンの駆動力を変速して、駆動車輪に伝達可能とする。また、矢印Frは、この自動車の進行方向の前方を示している。なお、下記する左右とは、上記前方に向かっての自動車の幅方向をいうものとする。
【0029】
上記変速機1は、その外殻を構成して車体に支持される変速機ケース2を備えている。また、この変速機ケース2は、ケース本体3と、このケース本体3の天井板4に締結具により着脱可能に固定されるブラケット5とを備えている。
【0030】
上記ブラケット5は、上記天井板4に形成された開口7を閉じるよう上記天井板4に固定されるカバー板8と、このカバー板8の外面に突設される外部ブラケット9と、上記カバー板8の内面から上記開口7を通り上記変速機ケース2内に向かうよう突設され、左右方向で互いに対向する左右一対の対向板10と、これら対向板10の後縁部同士およびカバー板8を互いに一体的に結合する結合板11と、上記両対向板10および結合板11の各下縁部同士を互いに一体的に結合する底板12とを備えている。
【0031】
上記変速機ケース2内で、左右に延びる軸心16回りに回転可能となるよう変速軸17が上記変速機ケース2に支持されている。上記変速軸17には、その軸心16回りに遊転可能となるよう複数の変速用歯車18が支持されると共に、上記変速軸17と共に回転するよう複数のハブ19が支持されている。また、上記各歯車18と各ハブ19とのうち、所望の前進段を得るために、目的の歯車18とハブ19とを係脱可能に係合させるスリーブ20が設けられている。また、後進段を得るために、上記変速軸17の軸心16と平行な不図示の他の軸心回りに回転可能、かつ、その軸方向に移動可能となるようリバースアイドル歯車22が上記変速機ケース2に支持されている。
【0032】
運転者の手動による外部からの変速操作力の入力により、上記各変速段のうち、所望の変速段が得られるようにする変速操作装置23が設けられている。以下、この変速操作装置23につき説明する。
【0033】
上記変速軸17の軸心16と平行な軸心24の軸方向に往復移動可能となるよう単一本のフォークシャフト25が上記変速機ケース2に支持されている。上記フォークシャフト25に支持され、上記スリーブ20とリバースアイドル歯車22とに係合して上記した全ての変速段に対応する複数のシフトフォーク、即ち、第1、2速シフトフォーク26、第3、4速シフトフォーク27、第5速シフトフォーク28、およびリバースシフトフォーク29が設けられている。これら各シフトフォーク26−29において、上記変速操作力の入力部であるヘッド部26a−28aは、一カ所に集合配置され、この順序で、上、中、下段となるよう互いに近接配置されている。
【0034】
なお、上記各シフトフォーク26−29は必ずしも分岐構造のものでなくてもよく、要するに、上記各ヘッド部26a−28a側と各歯車18,22側とを連動させるシフト部材であればよい。
【0035】
縦方向に延びる軸心31を有するシフトセレクト軸32が上記ブラケット5に支持されている。上記シフトセレクト軸32はその軸方向で移動A可能、かつ、上記軸心31回りに回動B可能となるよう上記ブラケット5の外部ブラケット9と底板12とに跨って支持されている。上記シフトセレクト軸32に固定ピン33により固定されて支持されるインナレバー34が設けられている。このインナレバー34は、上記シフトセレクト軸32と共に移動A可能、かつ、回動B可能とされている。
【0036】
上記各ヘッド部26a−28aは、上記シフトセレクト軸32の軸方向に沿って上記のように上下に配置されている。上記変速操作力による上記シフトセレクト軸32とインナレバー34との上記移動Aと回動Bとにより、このインナレバー34の自由端部である係合部35が上記各シフトフォーク26−29に形成された凹形状のヘッド部26a−28aに択一選択的に係合可能とされ、かつ、このように係合されたシフトフォーク26−29が上記フォークシャフト25の軸方向に移動可能とされる。
【0037】
各図中、実線で示すように、上記インナレバー34をシフトセレクト軸32の軸心31回りでの基準となる中立回動位置Cに位置させたとき、このインナレバー34に上記シフトフォーク26−29を介し連動する各スリーブ20およびリバースアイドル歯車22は、いずれの歯車18にも噛合しない中立状態とされる。
【0038】
上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから回動Bすることを弾性的に規制すると共に、上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから一方と他方とへそれぞれ所定角回動Bした後、その所定回動位置D,E(図1中、一点、二点鎖線)から更に回動Bすることを弾性的に規制して、上記インナレバー34を位置決めする左右一対のディテント装置38が設けられている。これら両ディテント装置38は、上記シフトセレクト軸32の径方向で互いに対向する上記インナレバー34の各部分と、上記ブラケット5の各対向板10との間に設けられている。より具体的には、上記両ディテント装置38は、上記シフトセレクト軸32の軸心31を基準として、径方向対称位置に設けられている。
【0039】
上記ディテント装置38につき、より詳しく説明する。
【0040】
上記シフトセレクト軸32の軸心31に沿った視線でみて(図1)、上記インナレバー34の上記各部分には、径方向外方に突出する山形状の突出部39が形成されている。そして、これら各突出部39の突出端部の端面に上記シフトセレクト軸32の軸方向に延びる溝形状の係合凹部40が形成されている。また、上記突出部39の突出端面には、上記係合凹部40を挟むように一対の係合斜面41が形成されている。
【0041】
左右方向で、上記係合凹部40に対向する上記ブラケット5の各対向板10の部分にそれぞれ貫通孔43が形成されている。上記各係合凹部40に係脱可能に係合する係合体44が上記貫通孔43に移動可能に嵌入されている。上記係合体44は、上記係合凹部40に直接係合する球体45と、この球体45を基準として、上記係合凹部40とは反対側に配置される円柱形状の押動体46とを備えている。
【0042】
上記係合体44を上記係合凹部40に係合させるよう付勢する弾性体49が設けられている。この弾性体49は、上記ブラケット5の両対向板10と結合板11とにその後方から嵌合する平面視コの字形状の板ばね材により形成され、左右方向で互いに対向する左右一対の対向板50と、これら対向板50の後縁部同士を互いに一体的に結合する結合板51とを備えている。この結合板51が締結具53により上記ブラケット5の結合板11に固定されている。
【0043】
上記インナレバー34の後端面には、上記締結具53に向かって開口する凹所55が形成され、この凹所55に上記締結具53の一部53aが挿入されている。上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから回動Bして、上記所定回動位置D,Eを越えようとするとき、上記凹所55の内面が上記締結具53の一部53aに当接して、それ以上の回動Bが阻止されるようになっている。
【0044】
上記インナレバー34は上記中立回動位置Cに位置しているとき、上記弾性体49の各対向板50の付勢力により上記各係合体44が各係合凹部40に係合して、上記インナレバー34は上記中立回動位置Cに位置決めされる。また、上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから回動Bすることは、上記各係合体44を介しての上記各弾性体49の付勢力により弾性的に規制される。
【0045】
また、上記インナレバー34が上記各所定回動位置D,Eに位置しているとき、上記弾性体49の各対向板50の付勢力により上記各係合体44が各係合斜面41に圧接して係合すると共に、上記中立回動位置Cから離れる方向への上記インナレバー34の回動Bが上記締結具53の一部53aに対する凹所55の内面の当接により阻止されて、上記インナレバー34は上記所定回動位置D,Eに位置決めされる。また、上記インナレバー34が上記各所定回動位置D,Eから中立回動位置Cに向かって回動Bすることは、上記各係合体44を介しての上記各弾性体49の付勢力により弾性的に規制される。
【0046】
上記インナレバー34が中立回動位置Cにあるときのみ、このインナレバー34の係合部35が上記各ヘッド部26a−28aの各凹部内を通り、上記シフトセレクト軸32の軸方向で移動A可能とされる。そして、この移動Aにより、上記ヘッド部26a−28aに択一選択的に上記インナレバー34の係合部35が係合させられる。また、この際、上記インナレバー34が係合していない他のヘッド部の全てに係合して、これら他のヘッド部を有するフォークレバーが上記フォークシャフト25の軸方向に移動することを阻止する移動阻止体57が設けられている。
【0047】
上記移動阻止体57は、上記インナレバー34に外嵌して、このインナレバー34と共に、上記シフトセレクト軸32の軸方向に移動A可能とされている。また、上記移動阻止体57は、上記シフトセレクト軸32の軸心31回りでこのシフトセレクト軸32およびインナレバー34と相対回動B可能となるようこのシフトセレクト軸32に支持されている。
【0048】
しかし、上記移動阻止体57は上記各ヘッド部26a−28aに対し、上記シフトセレクト軸32の軸心31回りで相対回動不能とされている。具体的には、上記移動阻止体57には、上記シフトセレクト軸32の軸方向に長く延びる長孔58が形成されている。この長孔58を上記締結具53の一部53aが貫通している。上記長孔58は、上記締結具53の一部53aにかかわらず、上記移動阻止体57がインナレバー34と共にシフトセレクト軸32の軸方向に移動Aすることを許容する。しかし、上記移動阻止体57が上記各ヘッド部26a−28aに対し、上記シフトセレクト軸32の軸心31回りで相対回動しようとするとき、上記締結具53の一部53aと長孔58の内面とが上記シフトセレクト軸32の周方向で互いに当接して、上記相対回動が阻止される。
【0049】
上記シフトセレクト軸32の上端部は連動機構60を介し不図示のシフトレバーに連動連結されている。
【0050】
そして、運転者が変速機1に対し、所望の変速段を得ようとして上記シフトレバーを変速操作すれば、その変速操作力が上記連動機構60を介しシフトセレクト軸32に伝達される。
【0051】
すると、まず、上記中立回動位置Cのインナレバー34が上記シフトセレクト軸32と共に、その軸方向に移動Aさせられて、上記インナレバー34の係合部35が上記各ヘッド部26a−28aのうち、所望のヘッド部に係合させられる(セレクト動作)。次に、この係合状態から、上記インナレバー34が上記シフトセレクト軸32と共に、その軸心31回りに回動Bさせられて上記所定回動位置D,Eのうち、いずれか一方に位置させられる。すると、上記インナレバー34の回動Bに上記所望のヘッド部を有するフォークシャフトが連動して、上記フォークシャフト25の軸方向に移動させられる(シフト動作)。そして、これに連動する各スリーブ20やリバースアイドル歯車22により、所望の変速段が得られるようになっている。
【0052】
具体的には、上記インナレバー34のヘッド部26aへの係合による第1、2速シフトフォーク26の移動により、前進変速段である第1−第5変速段のうち、第1、2変速段のいずれか一方が得られる。また、上記インナレバー34のヘッド部27aへの係合による上記第3、4速シフトフォーク27の移動により、第3、第4変速段のいずれか一方が得られる。また、上記インナレバー34のヘッド部28aへの係合による上記第5速シフトフォーク28の移動により第5変速段が得られる。また、上記インナレバー34のヘッド部28aへの係合による上記リバースシフトフォーク29の移動により後進変速段が得られる。
【0053】
上記構成によれば、全ての変速段に対応するシフトフォーク26−29を支持するよう設けられているフォークシャフト25は、単一本とされている。
【0054】
このため、上記フォークシャフト25が複数本であった従来の技術に比べて変速機1の変速操作装置23の構成部品の点数が少なくなり、よって、この変速操作装置23の構成を簡単にできる。
【0055】
また、上記シフトセレクト軸32の径方向で互いに対向する上記インナレバー34の各部分と、上記変速機ケース2側との間に上記ディテント装置38をそれぞれ設けている。
【0056】
このため、上記各ディテント装置38がインナレバー34を中立回動位置Cや所定回動位置D,Eに弾性的に位置決めする際、上記各ディテント装置38からインナレバー34に与えられる弾性力は、上記シフトセレクト軸32の径方向で互いに対向して相殺される。よって、上記インナレバー34とこのインナレバー34を支持する他の部材との間に摩擦抵抗が生じることは防止される。
【0057】
この結果、運転者による外部からの変速操作力により、上記インナレバー34をシフトセレクト軸32の軸心31回りに回動Bさせて所望位置に弾性的に位置決めし、所望の変速段を得ようとする場合に、その変速操作を軽快にすることができる。また、その分、上記ディテント装置38による節度感がより明確になされることとなって、良好な変速操作感覚が向上する。
【0058】
また、前記したように、変速機ケース2が、ケース本体3と、このケース本体3に着脱可能に支持されて上記シフトセレクト軸32を支持するブラケット5とを備え、上記各ディテント装置38が、それぞれ上記インナレバー34の上記各部分に形成される係合凹部40と、上記ブラケット5に支持され、上記係合凹部40に係脱可能に係合する係合体44と、この係合体44を上記係合凹部40に係合させるよう付勢する弾性体49とを備えている。
【0059】
このため、上記ブラケット5、シフトセレクト軸32、インナレバー34、およびディテント装置38は一体的に組み付けられた組み付け体とされる。そして、この組み付け体の上記ケース本体3への組み付けは、単に、上記組み付け体のブラケット5をケース本体3に固定することで達成される。よって、上記変速機1の組み立て作業は、まず、上記組み付け体の組み付け作業を上記ケース本体3に影響されない広い作業空間で行い、次に、上記組み付け体を上記のようにケース本体3に組み付ければよい。このため、上記変速機1の組み立て作業の作業性が向上する。
【0060】
また、前記したように、ブラケット5に上記弾性体49を固定する締結具53を設け、上記インナレバー34が上記中立回動位置Cから回動Bして上記所定回動位置D,Eを越えようとするとき、それ以上の回動Bを上記締結具53が阻止するようにしている。
【0061】
このため、上記ブラケット5に弾性体49を固定する締結具53が、上記インナレバー34の位置決め用に利用される。よって、その分、上記変速機1の変速操作装置23の構成部品の点数を少なくできて、この変速操作装置23の構成を更に簡単にできる。
【0062】
なお、以上は図示の例によるが、上記係合体44は球体45と押動体46とを一体にしたものであってもよい。また、上記弾性体49はコイルばねやゴム製であってもよい。また、上記係合凹部40を上記ブラケット5に形成する一方、上記係合体44を上記インナレバー34に支持させてもよい。
【0063】
また、上記係合凹部40を上記インナレバー34の各部分の外側面にそれぞれ平行に3本設けてもよい。また、上記係合体44を、上記弾性体49の各自由端を屈曲させることにより形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図3の部分拡大断面図である。
【図2】変速機の部分展開斜視図である。
【図3】変速機の部分平面部分断面図である。
【図4】図3で示したものの部分正面図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 変速機
2 変速機ケース
3 ケース本体
5 ブラケット
23 変速操作装置
24 軸心
25 フォークシャフト
26 第1、2速シフトフォーク
26a ヘッド部
27 第3、4速シフトフォーク
27a ヘッド部
28 第5速シフトフォーク
28a ヘッド部
29 リバースシフトフォーク
31 軸心
32 シフトセレクト軸
34 インナレバー
35 係合部
38 ディテント装置
39 突出部
40 係合凹部
41 係合斜面
43 貫通孔
44 係合体
49 弾性体
50 対向板
51 結合板
53 締結具
53a 一部
55 凹所
57 移動阻止体
58 長孔
A 移動
B 回動
C 中立回動位置
D 所定回動位置
E 所定回動位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに支持されるフォークシャフトと、全ての変速段に対応するよう設けられて上記フォークシャフトに支持され、かつ、各ヘッド部が一カ所に集合配置される複数のシフトフォークと、上記変速機ケースに支持されるシフトセレクト軸と、このシフトセレクト軸に支持され、このシフトセレクト軸の軸方向に沿って移動可能とされると共に上記シフトセレクト軸の軸心回りに回動可能とされ、変速操作力による上記移動と回動により上記各シフトフォークのヘッド部に択一選択的に係合すると共にそのシフトフォークを連動させるインナレバーと、このインナレバーが、基準となる中立回動位置から回動することを弾性的に規制すると共に、この中立回動位置から所定角回動した後、その所定回動位置から更に回動することを弾性的に規制して位置決めするディテント装置とを備えた変速機の変速操作装置において、
上記フォークシャフトを単一本だけ設け、
上記シフトセレクト軸の径方向で互いに対向する上記インナレバーの各部分と、上記変速機ケース側との間に上記ディテント装置をそれぞれ設けたことを特徴とする変速機の変速操作装置。
【請求項2】
上記変速機ケースが、ケース本体と、このケース本体に着脱可能に支持されて上記シフトセレクト軸を支持するブラケットとを備え、上記各ディテント装置が、それぞれ上記インナレバーの上記各部分に形成される係合凹部と、上記ブラケットに支持され、上記係合凹部に係脱可能に係合する係合体と、この係合体を上記係合凹部に係合させるよう付勢する弾性体とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の変速機の変速操作装置。
【請求項3】
上記ブラケットに上記弾性体を固定する締結具を設け、上記インナレバーが上記中立回動位置から回動して上記所定回動位置を越えようとするとき、それ以上の回動を上記締結具が阻止するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の変速機の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−232262(P2008−232262A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72577(P2007−72577)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(591043260)明石機械工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】