説明

変速装置

【課題】装置の回転軸線の方向の長さを低減でき、装置の小型化に有利な変速装置を提供する。
【解決手段】第2MG12と出力軸18との間に介在する変速装置10において、第1ドライブギア33が取り付けられて第2MG12のロータ12bと同軸に設けられた第1シャフト31と、第2ドライブギア34が取り付けられて第1シャフト31が内部に同軸に挿入された中空円筒状の第2シャフト32と、ロータ12bの内側に配置されてロータ12bの接続先を切り替えるドグスリーブ41とを備え、第1シャフト31の一方の端部に第1軸受35が設けられ、第1シャフト31と第2シャフト32との間に第2軸受36が設けられ、第2シャフト32の外周に第3軸受38が第2軸受36と径方向に並ぶように設けられ、第1軸受35と第3軸受38との間に第1ドライブギア33及び第2ドライブギア34が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ・ジェネレータ等の回転電機の回転を変速して出力部材に伝達する変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用動力源として内燃機関及び電動モータが搭載されたハイブリッド車両が知られている。このようなハイブリッド車両の動力伝達装置として、内燃機関及び電動モータの回転を変速装置を介して駆動輪に伝達可能に構成された装置が知られている。例えば、電動モータのロータの内側に変速装置として遊星歯車機構が設けられ、その遊星歯車機構のリングギアに内燃機関が中間軸を介して接続されるとともに電動モータのロータが接続され、サンギアと駆動輪とが中間軸と同軸に設けられた中空円筒状の出力軸を介して接続された動力伝達装置が知られている(特許文献1参照)。この装置では、出力軸の両端がそれぞれ軸受を介してケースに支持されている。また、中間軸は一端が軸受を介してケースに支持され、他端が軸受を介して出力軸に支持されている。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−179326号公報
【特許文献2】国際公開第09/051143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、遊星歯車機構を電動モータのロータの内側に配置するため、電動モータの外径が大きくなる可能性がある。遊星歯車機構の代わりに互いに変速比が相違する複数の変速ギア対のうちのいずれか1つとロータとを選択的に接続する変速装置を設ける方法がある。しかしながら、一般にマニュアル式の自動車に搭載されるような変速装置では、変速ギア対を切り替えるためのスリーブを変速ギア対の間に設ける必要がある。そのため、スリーブを設ける回転軸の長さが長くなり、装置がその回転軸の軸線方向に長くなるおそれがある。また、特許文献1の装置では、中間軸及び出力軸の両端をそれぞれ軸受で支持する必要がある。そして、中間軸は一端を除く残りの部分が出力軸に覆われている。そのため、中間軸の軸受間の部分に変速ギア対のギアを配置することができない。中間軸に変速ギア対のギアを設ける場合には、そのギアを軸受よりも外側に配置する必要がある。この場合、装置が軸線方向にさらに長くなるおそれがある。従って、装置が大型化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、装置の回転軸線の方向の長さを低減でき、装置の小型化に有利な変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の変速装置は、互いに変速比が相違する第1変速ギア対及び第2変速ギア対を備え、回転電機と出力部材との間に介在して前記回転電機と前記出力部材との間の動力伝達に使用される変速ギア対を前記第1変速ギア対と前記第2変速ギア対とに切り替え可能な変速装置において、前記第1変速ギア対の一方のギアが一体回転するように取り付けられて前記回転電機のロータと同軸に設けられた第1シャフト部材と、中空円筒状に形成されて外周面に前記第2変速ギア対の一方のギアが一体回転するように取り付けられ、かつ少なくとも前記第1シャフト部材の一方の端部及び前記第1変速ギア対の一方のギアが外に配置されるようにして前記第1シャフト部材が内部に同軸に挿入された第2シャフト部材と、少なくとも一部が前記ロータの内周に形成された空間に配置され、かつ前記ロータが前記第1シャフト部材と連結される第1位置と前記ロータが前記第2シャフト部材と連結される第2位置とに移動可能な係合部材と、を備え、前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材は、ケース内に収容され、前記第1シャフト部材の一方の端部には、前記第1シャフト部材を前記ケースに対して回転可能に支持する第1軸受が設けられ、前記第1シャフト部材の外周面と前記第2シャフト部材の内周面との間には、前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材とを相対回転可能とする第2軸受が設けられ、前記第2シャフト部材の外周には、前記第2シャフト部材を前記ケースに対して回転可能に支持する第3軸受が前記第2軸受と径方向に並ぶように設けられ、前記第1軸受と前記第3軸受との間に、前記第1変速ギア対の一方のギア及び前記第2変速ギア対の一方のギアが配置されている(請求項1)。
【0007】
本発明の変速装置よれば、係合部材の少なくとも一部がロータの内周の空間に配置されるため、その空間に配置した分装置の回転軸線の方向の長さを低減できる。また、本発明によれば、各変速ギア対の一方のギアをそれぞれ第1軸受と第3軸受の間に配置するので、これらのギアを軸受の外側に配置する場合と比較して装置の回転軸線の方向の長さをさらに低減できる。従って、装置を小型化できる。
【0008】
本発明の変速装置の一形態において、前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材は前記ケースに対して前記第1軸受及び前記第3軸受のみで回転可能に支持されていてもよい(請求項2)。この形態によれば、第1シャフト部材及び第2シャフト部材が第1軸受及び第3軸受のみでケースに回転可能に支持されるため、各シャフト部材の両端に軸受を設ける場合と比較して軸受の数を低減できる。そのため、装置の回転軸線の方向の長さをさらに低減できる。
【0009】
本発明の変速装置の一形態においては、前記第1変速ギア対及び前記第2変速ギア対が前記ロータの軸線方向の一方の側に配置され、前記一方の側とは前記ロータを挟んで反対の前記ロータの他方の側には、前記係合部材を前記第1位置と前記第2位置とに駆動する駆動手段が設けられていてもよい(請求項3)。この形態によれば、第1変速ギア対及び第2変速ギア対と回転電機とを近付けることができるので、装置を小型化できる。また、回転電機の一方の側に装置の部品が集中して配置されることを防止できる。
【0010】
この形態において、前記係合部材は、前記軸線方向に移動するように設けられ、前記駆動手段は、電動モータであり、前記回転電機は、中空円筒状のロータ軸を備え、前記ロータ軸内には、前記電動モータの回転運動を前記軸線方向の直線運動に変換する運動変換機構が設けられていてもよい(請求項4)。このように運動変換機構をロータ軸内に設けることにより、装置の回転軸線の方向の長さを低減できる。
【0011】
本発明の変速装置の一形態において、前記変速装置は、前記回転電機と前記出力部材を駆動可能な内燃機関とが走行用動力源として設けられたハイブリッド車両に搭載され、前記出力部材は、前記車両の駆動輪と動力伝達可能に接続され、前記係合部材は、前記ロータが前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材の両方と切り離されるニュートラル位置にさらに移動可能に設けられていてもよい(請求項5)。この形態によれば、係合部材をニュートラル位置に移動させることによって回転電機を出力部材から切り離すことができる。この場合、出力部材によって回転電機が回転駆動されることを防止できる。そのため、出力部材が内燃機関で駆動されている場合には係合部材をニュートラル位置に動かすことにより燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明の変速装置によれば、係合部材の少なくとも一部をロータの内周の空間に配置するとともに第1シャフト部材及び第2シャフト部材を第1軸受及び第3軸受のみで支持するため、装置の回転軸線の方向の長さを低減できる。そのため、装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一形態に係る変速装置が搭載された車両を概略的に示す図。
【図2】変速装置を拡大して示す図。
【図3】ドグスリーブが高速位置に切り替えられたときの変速装置を示す概略的に示す図。
【図4】ドグスリーブがニュートラル位置に切り替えられたときの変速装置を概略的に示す図。
【図5】軸線の方向から見た駆動装置を示す図。
【図6】第2MGの動作モードとドグスリーブの位置との関係を示す作動係合表を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一形態に係る変速装置が搭載された車両を概略的に示している。この車両1はいわゆるハイブリッド車両として構成されている。車両1には、車両1を走行させるための駆動装置2が搭載されている。駆動装置2は、車両1のフロント部分に搭載されて前輪を駆動する。駆動装置2は、内燃機関10と、第1モータ・ジェネレータ(以下、第1MGと略称することがある。)11と、回転電機としての第2モータ・ジェネレータ(以下、第2MGと略称することがある。)12とを備えている。内燃機関10は、ハイブリッド車両に搭載される周知のものであるため、詳細な説明を省略する。第1MG11及び第2MG12は、電動機及び発電機として機能する周知のものである。第1MG11は、出力軸としてのロータ軸11aと一体回転するロータ11bと、ロータ11bの外周に同軸に配置されて不図示のケースに固定されたステータ11cとを備えている。第2MG12も同様に、出力軸としてのロータ軸12aと一体回転するロータ12bと、ロータ12bの外周に同軸に配置されてケースに固定されたステータ12cとを備えている。
【0015】
内燃機関10の出力軸10a及び第1MG11のロータ軸11aは、動力分配機構13と接続されている。動力分配機構13は、遊星歯車機構14を備えている。遊星歯車機構14は、シングルピニオン型の遊星歯車機構として構成されている。遊星歯車機構14は、外歯歯車であるサンギアSと、そのサンギアSに対して同軸的に配置された内歯歯車としてのリングギアRと、これらのギアS、Rに噛み合うピニオンギアPを自転可能かつサンギアSの周囲を公転可能に保持するキャリアCとを備えている。キャリアCは内燃機関10の出力軸10aと一体回転するように連結されている。また、内燃機関10の出力軸10aは、オイルポンプ15の駆動軸15aとも一体回転するように連結されている。サンギアSは、第1MG11のロータ軸11aと一体回転するように連結されている。リングギアRは、外歯歯車であるドライブギア16と一体回転するように接続されている。この図に示すように内燃機関10、第1MG11、遊星歯車機構14、及びオイルポンプ15は、第1軸線Ax1上に同軸に配置されている。
【0016】
この図に示すように動力分割機構13には、不図示の駆動輪に動力を出力するための出力部17も接続されている。出力部17は、出力部材としての出力軸18と、第1ドリブンギア19と、第2ドリブンギア20と、出力ギア21とを備えている。出力軸18は、2個の軸受22を介して第2軸線Ax2回りに回転可能なようにケース3(図2参照)に支持されている。第1ドリブンギア19、第2ドリブンギア20、及び出力ギア21は、出力軸18に同軸かつ一体回転するように取り付けられている。この図に示すように第1ドリブンギア19は、ドライブギア16と噛み合うように設けられている。
【0017】
出力部17には、変速装置30を介して第2MG12が接続されている。図2は第2MG12及び変速装置30を拡大して示している。この図に示すように第2MG12及び変速装置30はケース3内に収容されている。第2MG12のロータ軸12aは、中空円筒状に形成されている。このロータ軸12aは、2個のボール軸受23を介して第3軸線Ax3回りに回転可能なようにケース3に支持されている。
【0018】
変速装置30は、第1シャフト部材としての第1シャフト31と、第2シャフト部材としての中空円筒状の第2シャフト32とを備えている。第1シャフト31は、第2MG12のロータ12bと同軸かつ出力軸18と平行に設けられている。第1シャフト31には、第1ドリブンギア19と噛み合う第1ドライブギア33が一体回転するように取り付けられている。第1シャフト31は、一方の端部31a及び第1ドライブギア33が外に配置されるように第2シャフト32に同軸に挿入されている。この図に示すように第1シャフト31は第2シャフト32内を貫通している。そのため、第1シャフト31の他方の端部31bも第2シャフト32の外に配置されている。第2シャフト32の外周面には、第2ドリブンギア20と噛み合う第2ドライブギア34が一体回転するように取り付けられている。この図に示すように第2ドライブギア34は、第2シャフト32の一方の端部32aに配置されている。第2ドリブンギア20と第2ドライブギア34との変速比には、第1ドリブンギア19と第1ドライブギア33との変速比よりも小さい値が設定されている。そのため、第1ドリブンギア19と第1ドライブギア33で構成されるギア対が本発明の第1変速ギア対に相当し、第2ドリブンギア20と第2ドライブギア34で構成されるギア対が本発明の第2変速ギア対に相当する。また、第1ドライブギア33が本発明の第1変速ギア対の一方のギアに、第2ドライブギア34が本発明の第2変速ギア対の一方のギアにそれぞれ相当する。
【0019】
この図に示すように第1シャフト31及び第2シャフト32は、ケース3内に収容されている。第1シャフト31の一方の端部31aには、第1シャフト31をケース3に対して回転可能に支持する第1軸受35が設けられている。第1シャフト31の外周面と第2シャフト32の内周面との間には、第1シャフト31と第2シャフト32とが相対回転可能となるように2個の第2軸受36が設けられている。また、第2シャフト32の一方の端部32aには、第1ドライブギア33を第3軸線Axの方向から回転可能と支持するスラスト軸受37が設けられている。第2シャフト32の外周には、ケース3に対して第2シャフト32を回転可能に支持する第3軸受38が設けられている。第3軸受38は、第2軸受36と径方向に並ぶように設けられている。この図に示すように第1ドライブギア33及び第2ドライブギア34は、第1軸受35と第3軸受38との間に配置されている。また、第1シャフト31及び第2シャフト32は、ケース3に対して第1軸受35及び第3軸受38のみを介して回転可能に支持されている。なお、第1軸受35及び第3軸受38には周知のボール軸受が用いられる。第2軸受36には、周知のニードル軸受が用いられる。第1シャフト31の内部には、第2軸受36及びロータ軸12a内などにオイルを供給するためのオイル通路31cが設けられている。
【0020】
変速装置30は、第2MG12のロータ軸12aの接続先を第1シャフト31と第2シャフト32とに切り替える変速段切替機構40を備えている。変速段切替機構40は、係合部材としてのドグスリーブ41を備えている。第2MG12のロータ軸12aの内周には第3軸線Ax3の方向に延びるドグ歯12dが設けられている。また、ドグスリーブ41の外周にも第3軸線Ax3の方向に延びるドグ歯41aが設けられている。ドグスリーブ41は、そのドグ歯41aがロータ軸12aのドグ歯12dと噛み合うようにロータ軸12aの内側に同軸に設けられている。これによりドグスリーブ41は、ロータ軸12aと一体回転するとともに第3軸線Ax3の方向に移動可能なようにロータ軸12aに支持される。ドグスリーブ41の内周にも外周と同様に第3軸線Ax3の方向に延びるドグ歯41bが設けられている。第1シャフト31の他方の端部31bには、そのドグ歯41bと噛み合うことが可能なドグ歯31dが設けられている。第2シャフト32の他方の端部32bには、ドグスリーブ41の外周のドグ歯41aと噛み合うことが可能なドグ歯32cが設けられている。
【0021】
この変速段切替機構40では、ドグスリーブ41を図1及び図2に示す低速位置と図3に示す高速位置との間で駆動することにより第2MG12のロータ軸12aの接続先を切り替える。なお、図3はドグスリーブ41が高速位置に切り替えられたときの変速装置30を概略的に示している。図1及び図2に示すように低速位置では、ドグスリーブ41の外周のドグ歯41aがロータ軸12aのドグ歯12dと噛み合うとともに内周のドグ歯41bが第1シャフト31のドグ歯31dと噛み合う。そして、この位置では、外周のドグ歯41aが第2シャフト32のドグ歯32cとは噛み合わない。そのため、この低速位置では、図2に破線L1で示したように第2MG12のロータ軸12aと第1シャフト31とが動力伝達可能に接続される。従って、低速位置が本発明の第1位置に相当する。
【0022】
一方、図3に示すように高速位置では、ドグスリーブ41の外周のドグ歯41aがロータ軸12aのドグ歯12d及び第2シャフト32のドグ歯32cとそれぞれ噛み合う。そして、この位置ではドグスリーブ41の内周のドグ歯41bと第1シャフト31のドグ歯31dとの噛み合いが外れる。そのため、この高速位置では、図2に破線L2で示したように第2MG12のロータ軸12aと第2シャフト32とが動力伝達可能に接続される。従って、高速位置が本発明の第2位置に相当する。低速位置と高速位置との間には、図4に示すようにドグスリーブ41の内周のドグ歯41bと第1シャフト31のドグ歯31dとが噛み合わず、かつドグスリーブ41の外周のドグ歯41aと第2シャフト32のドグ歯32cとが噛み合わないニュートラル位置が設けられている。この位置では、第2MG12が第1シャフト31及び第2シャフト32の両方と切り離される。
【0023】
変速段切替機構40は、ドグスリーブ41を第3軸線Axの方向に駆動する駆動手段としての電動モータ42を備えている。図2に示したように電動モータ42の外径は第2MG12の外径よりも小さい。電動モータ42はケース3に固定されている。この図に示すように第1ドライブギア33及び第2ドライブギア34は、第2MG12の第3軸線Ax3の方向の一方の側に配置されている。電動モータ42は、この一方の側とは第2MG12を挟んで反対の他方の側に配置されている。電動モータ42の出力軸42aには、運動変換機構43を介してドグスリーブ41が取り付けられている。運動変換機構43は、電動モータ42の出力軸42aの回転運動を第3軸線Ax3の方向の直線運動に変換する機構である。この運動変換機構43は、出力軸42aが所定方向に回転した場合にはドグスリーブ41を図2の右方向に動かし、出力軸42aが所定方向とは反対の逆方向に回転した場合にはドグスリーブ41を図2の左方向に動かす。運動変換機構43としては、例えばネジ機構やボールネジ機構等が用いられる。なお、運動変換機構43には、回転運動を直線運動に変換する際に力を増幅させる機構を用いてもよい。
【0024】
図5は、軸線の方向から見た駆動装置2を示している。この図に示したように駆動装置2は、デファレンシャル機構24を備えている。デファレンシャル機構24は、ドライブシャフト25を介して車両1の駆動輪と連結されている。デファレンシャル機構24のケースにはデフリングギア24aが設けられている。出力ギア21は、このデフリングギア24aと噛み合っている。なお、このデファレンシャル機構24はデフリングギア24aに伝達された動力を左右の駆動輪に分配する周知の機構である。そのため、詳細な説明を省略する。
【0025】
この図に示したように車両1のフロント部分には、車両1の前後方向(図5の左右方向)に延びるフロントサイドメンバSmが設けられている。駆動装置2は、電動モータ42が車両1のフロントサイドメンバSmの下方に位置し、第2MG12がフロントサイドメンバSmの側方に位置するように配置されている。
【0026】
図6を参照して第2MG12の各動作モードにおけるドグスリーブ41の位置について説明する。第2MG12の動作モードとしては、低速モード、高速モード、及びフリーモードが設定されている。低速モードは、第2MG12で車両1を低速走行させる場合等に選択される。高速モードは、第2MG12で車両1を高速走行させる場合等に選択される。フリーモードは、内燃機関10で車両1を走行させる場合等に選択される。上述したように第2ドリブンギア20と第2ドライブギア34との変速比は、第1ドリブンギア19と第1ドライブギア33との変速比よりも小さい。そのため、この図に示したように低速モードでは、ドグスリーブ41が低速位置に切り替えられる。一方、高速モードでは、ドグスリーブ41が高速位置に切り替えられる。そして、フリーモードでは、ドグスリーブ41がニュートラル位置に切り替えられる。上述したようにドグスリーブ41をニュートラル位置にすると第2MG12が第1シャフト31及び第2シャフト32の両方と切り離される。そのため、第2MG12が出力軸18と切り離される。これにより第2MG12が出力軸18にて回転駆動されることを防止できるので、内燃機関10の動力が第2MG12で消費されることを防止できる。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、ドグスリーブ41及び運動変換機構43を第2MG12のロータ軸12a内に設け、ドグスリーブ41をロータ12bの内側の空間に配置したので、変速装置30の第3軸線Ax3の方向の長さを低減できる。また、ロータ12bの内側には変速装置30のドグスリーブ41のみが配置されるので、第2MG12の外径が大きくなることを抑制できる。本発明では、第1ドライブギア33及び第2ドライブギア34を第1軸受35と第3軸受38との間に配置したので、これらのギアを軸受よりも外側に配置する場合と比較して第3軸線Axの方向の長さを低減できる。また、本発明では、第1シャフト31及び第2シャフト32がケース3に対して第1軸受35及び第3軸受38のみで回転可能に支持される。そのため、各シャフト31、32の両端に軸受を設ける場合と比較して軸受の数を低減できる。これにより変速装置30の第3軸線Ax3の方向の長さをさらに低減できる。従って、変速装置30を小型化できる。
【0028】
本発明では、第2MG12より外径が小さい電動モータ42をドライブギア33、34が配置されている一方の側とは第2MG12を挟んで反対の他方の側に配置した。そのため、ドライブギア33、34と第2MG12とを近付けることができる。従って、変速装置30をさらに小型化できる。
【0029】
本発明の変速装置10では、車両1を内燃機関10で走行させる場合にはドグスリーブ41がニュートラル位置に切り替えられる。これにより内燃機関10の動力が第2MG12で消費されることを防止できるので、燃費を向上できる。
【0030】
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、運動変換機構はロータ軸内に配置しなくてもよい。また、ドグスリーブの全体をロータ軸内に配置しなくてもよく、一部をロータ軸の外に配置してもよい。ドグスリーブを駆動する駆動源は電動モータに限定されない。油圧シリンダ等の種々のアクチュエータでドグスリーブを駆動してよい。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
3 ケース
10 内燃機関
12 第2モータ・ジェネレータ
12a ロータ軸
12b ロータ
18 出力軸(出力部材)
30 変速装置
31 第1シャフト(第1シャフト部材)
31a 第1シャフトの一方の端部
32 第2シャフト(第2シャフト部材)
33 第1ドライブギア(第1変速ギア対の一方のギア)
34 第2ドライブギア(第2変速ギア対の一方のギア)
35 第1軸受
36 第2軸受
38 第3軸受
41 ドグスリーブ(係合部材)
42 電動モータ(駆動手段)
43 運動変換機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに変速比が相違する第1変速ギア対及び第2変速ギア対を備え、回転電機と出力部材との間に介在して前記回転電機と前記出力部材との間の動力伝達に使用される変速ギア対を前記第1変速ギア対と前記第2変速ギア対とに切り替え可能な変速装置において、
前記第1変速ギア対の一方のギアが一体回転するように取り付けられて前記回転電機のロータと同軸に設けられた第1シャフト部材と、中空円筒状に形成されて外周面に前記第2変速ギア対の一方のギアが一体回転するように取り付けられ、かつ少なくとも前記第1シャフト部材の一方の端部及び前記第1変速ギア対の一方のギアが外に配置されるようにして前記第1シャフト部材が内部に同軸に挿入された第2シャフト部材と、少なくとも一部が前記ロータの内周に形成された空間に配置され、かつ前記ロータが前記第1シャフト部材と連結される第1位置と前記ロータが前記第2シャフト部材と連結される第2位置とに移動可能な係合部材と、を備え、
前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材は、ケース内に収容され、
前記第1シャフト部材の一方の端部には、前記第1シャフト部材を前記ケースに対して回転可能に支持する第1軸受が設けられ、
前記第1シャフト部材の外周面と前記第2シャフト部材の内周面との間には、前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材とを相対回転可能とする第2軸受が設けられ、
前記第2シャフト部材の外周には、前記第2シャフト部材を前記ケースに対して回転可能に支持する第3軸受が前記第2軸受と径方向に並ぶように設けられ、
前記第1軸受と前記第3軸受との間に、前記第1変速ギア対の一方のギア及び前記第2変速ギア対の一方のギアが配置されている変速装置。
【請求項2】
前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材は前記ケースに対して前記第1軸受及び前記第3軸受のみで回転可能に支持されている請求項1に記載の変速装置。
【請求項3】
前記第1変速ギア対及び前記第2変速ギア対が前記ロータの軸線方向の一方の側に配置され、
前記一方の側とは前記ロータを挟んで反対の前記ロータの他方の側には、前記係合部材を前記第1位置と前記第2位置とに駆動する駆動手段が設けられている請求項1又は2に記載の変速装置。
【請求項4】
前記係合部材は、前記軸線方向に移動するように設けられ、
前記駆動手段は、電動モータであり、
前記回転電機は、中空円筒状のロータ軸を備え、
前記ロータ軸内には、前記電動モータの回転運動を前記軸線方向の直線運動に変換する運動変換機構が設けられている請求項3に記載の変速装置。
【請求項5】
前記変速装置は、前記回転電機と前記出力部材を駆動可能な内燃機関とが走行用動力源として設けられたハイブリッド車両に搭載され、
前記出力部材は、前記車両の駆動輪と動力伝達可能に接続され、
前記係合部材は、前記ロータが前記第1シャフト部材及び前記第2シャフト部材の両方と切り離されるニュートラル位置にさらに移動可能に設けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87840(P2013−87840A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227830(P2011−227830)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】