説明

外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法

本願は、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外傷性脳損傷(TBI)は、脳に対する外傷により引き起こされる頭部の損傷である。そのダメージは、脳の一つの領域に限定される(限局性)こともあるし、また、脳の一つ以上の領域に及ぶ(びまん性)こともある。TBIは、軽度、中等度または重度であり得る。いくつかの症状は直ちに現れ、その他はTBIイベントから数日後、数週間後、数ヶ月後または数年後まで現れない。軽度TBIの症状には、頭痛、錯乱、浮動性めまい(dizziness)、目のかすみ、気分の変化ならびに認知機能、例えば記憶、学習および注意における機能障害が含まれる。中等度〜重度TBIの症状には、軽度TBIで観察されるものに加えて、吐き気、痙攣または発作、発語の不明瞭、四肢のしびれおよび協調運動の喪失が含まれる。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)に対する外傷性損傷後の生理学的イベントのカスケード、例えば、最初の衝撃により生じる、グルタミン酸、アセチルコリン、コリン作動性、GABAAおよびNMDA受容体系を破壊する炎症性免疫反応および興奮毒性等は、神経細胞の喪失をもたらし得る。さらに、外傷性CNS損傷の後に脳浮腫が発生することが多く、これは損傷のカスケードを亢進し、さらなる二次的細胞死をもたらし、患者の死亡率を高める。
【0003】
たいていの脳損傷はしばしば脳出血または脳腫脹を伴うものであるが、多くの症例では、神経細胞およびそれらの連結繊維に対するびまん性のダメージが観察される。順行性トレーサーを用いた実験は、外傷性軸索損傷が、軸索原形質輸送の限局的機能障害を含む進行性のイベントであり、TBIから数時間〜数日内に軸索の腫脹および完全離断をもたらすことを明らかにした(Raghupathi R et al., J Neurotrauma. 17: 927-38 (2000)(非特許文献1))。最初の軸索原形質膜の破壊が、イオンチャネルの異常調節およびカルシウムホメオスタシスの喪失を引き起こす。その後、カルシウム依存カスケード系が活性化され、それによりミトコンドリアがダメージを受け、チトクロムcが放出される。最終的に、チトクロムc放出は、細胞骨格基質のタンパク質分解的切断のカスパーゼ-3媒介性アポトーシスカスケードを活性化し、それによって外傷性軸索損傷の特徴である軸索離断を引き起こし得る(Wang et al., Science 284: 5412 339-343 (1999)(非特許文献2); Buki et al., J. Neurosci. 20: 2825-2834 (2000)(非特許文献3); Eldadah et al., J. Neurotrauma. 17: 10 811-829 (2000)(非特許文献4))。
【0004】
TBIの伝統的な考え方はまた、一次および二次の損傷フェーズを含むというものである。一次損傷は、直線的な加速-減速もしくは回転様式のいずれかまたはその両方の組み合わせの運動エネルギーおよび力ベクトルの付加の結果である、衝撃のモーメントにより表される。髄液腔内での脳の移動に加えて、脳とその下部にある頭蓋骨の不規則な表面との接触、脳組織内での微小のバキューム現象の発生ならびに神経細胞、特にそれらの突起に対する引き裂き損傷および機械的損傷が、局所的ダメージおよび遠位的ダメージの両方をもたらし得る。臨床レベルでの処置は、低血圧、低酸素および浮腫を予防または処置することにより二次損傷を最小限にする取り組みである。
【0005】
TBIの三次フェーズに含まれるのは、グルコース利用、細胞代謝ならびに膜流動性、シナプス機能および構造統合性における異常の進行と現時点で認識されているものである(Hovda, Crit Care Med. 35: 663-4 (2007)(非特許文献5);2009年7月9日に電子的に発表されたAoyama et al, Brain Res. 1230: 310-9 (2008)(非特許文献6))。一般に、進行性の様式で、軸索膜が損傷し、イオン漏出が起こり、そして軸索輸送が妨げられる。この考え方は、接触系プロスポーツ選手に対する最近の剖検所見が、幾度もの脳振盪による複数回および複数領域の損傷を表すと考えられる、tau抗体染色において顕著な、神経細胞およびそれらの突起の多発的ダメージ領域を示したことにより、強固になっている(Omalu et al., Neurosurgery 57: 128-34 (2005)(非特許文献7); Omalu et al., Neurosurgery 59: 1086-92 (2006)(非特許文献8))。
【0006】
外傷性脳損傷の処置は、利尿薬、抗痙攣薬およびAMPA/NMDA受容体アンタゴニストを利用するものである。しかし、外傷性脳損傷に関連する神経学的ダメージの危険を、特に、外傷性脳損傷における最初の傷害につながるイベントの複雑な生理学的カスケードに照らして軽減することができる予防的神経保護効果を提供することができる処置が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Raghupathi R et al., J Neurotrauma. 17: 927-38 (2000)
【非特許文献2】Wang et al., Science 284: 5412 339-343 (1999)
【非特許文献3】Buki et al., J. Neurosci. 20: 2825-2834 (2000)
【非特許文献4】Eldadah et al., J. Neurotrauma. 17: 10 811-829 (2000)
【非特許文献5】Hovda, Crit Care Med. 35: 663-4 (2007)
【非特許文献6】Aoyama et al, Brain Res. 1230: 310-9 (2008)
【非特許文献7】Omalu et al., Neurosurgery 57: 128-34 (2005)
【非特許文献8】Omalu et al., Neurosurgery 59: 1086-92 (2006)
【発明の概要】
【0008】
本願は、外傷性脳損傷に関連する病理学的影響の危険を軽減する予防的処置方法を提供する。本発明の態様において、DHAを含む組成物が、外傷性脳損傷の危険のある対象に対して、その対象が外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前に投与される。
【0009】
いくつかの態様において、方法は、外傷性脳損傷の危険のある対象に対して、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む組成物を投与する工程を包含し、この組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与される。
【0010】
いくつかの態様において、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法は:(a)外傷性脳損傷の危険のある対象を選択する工程;および(b)DHAを含む組成物を対象に投与する工程を包含し、この組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与される。
【0011】
本発明の態様において、DHAを含む組成物は、DHAが予防的治療効果を達成するための投与のために十分な量で存在する任意の供給源であり得る。いくつかの態様において、DHA含有組成物は、魚油を含み、魚油には特に、オメガ-3脂肪酸が豊富な魚油、例えばマグロ、イワシ、アンチョビおよびサバ由来の油が含まれる。いくつかの態様において、DHA含有組成物は、プリムローズ油、アマニ油、キャノーラ油、クルミ油およびヒマワリ油を含む。いくつかの態様において、異なる供給源由来の油の組み合わせが組成物を調製するのに使用され得る。これらの供給源由来のDHAは、アルキルエステル、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸の形態で調製され得る。
【0012】
いくつかの態様において、組成物は、4:1超のDHA対EPA比を有する。いくつかの態様において、DHA対EPA比は、少なくとも10:1または少なくとも100:1である。
【0013】
DHAがアルキルエステルの形態である態様において、(アルキルエステル形態の)DHAの含有量は、組成物の総脂肪酸含有量の少なくとも約85wt%である。いくつかの態様において、アルキルエステル組成物は、総脂肪酸含有量の約85〜約96wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、アルキルエステル組成物は、総脂肪酸含有量の約85〜96wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の約0.1wt%またはそれ未満のEPA含有量を有する。
【0014】
方法のいくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の少なくとも約40wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約40〜約50wt%のDHA含有量を有する。特定の態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約40〜約50wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の約3wt%もしくはそれ未満または2wt%もしくはそれ未満のEPA含有量を有する。特定の態様において、EPA含有量は、総脂肪酸含有量の0.2wt%未満である。
【0015】
いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の少なくとも約55wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約55〜65wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約55〜65wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の0.2wt%未満のEPA含有量を有する。
【0016】
いくつかの態様において、DHAを含む組成物は、微生物油であるかまたは微生物油から得られたものであり、例えば、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)またはシゾキトリウム(Schizochytrium)種由来である。
【0017】
本発明のいくつかの態様において、処置される対象は、閉鎖性頭部損傷、例えば脳振盪または脳挫傷の危険のある対象である。そのような損傷の危険のある対象には、特に、脳振盪を発生させる運動イベントに参加する対象が含まれ得る。このカテゴリーの例示の対象には、特に、フットボール選手、ボクサーおよびホッケー選手が含まれる。
【0018】
いくつかの態様において、処置される対象は、穿通性頭部損傷の危険のある対象である。穿通性頭部損傷の危険のある対象には、特に、武力紛争下の戦闘員、例えば兵士が含まれ得る。
【0019】
いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、十分な期間、対象に投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約28日間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約6週間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約2ヶ月間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約6週間〜約6ヶ月間、少なくとも約2〜約6ヶ月間、または少なくとも約4ヶ月間〜約6ヶ月間、対象に投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約2〜約4ヶ月間、対象に投与される。
【0020】
本願の方法において、対象に予防有効量のDHAが投与される。いくつかの態様において、DHAは、約4 mg/kg体重/日〜約85 mg/kg体重/日の量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、約4 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日;約5 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日、約10 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日、約20 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日;約10 mg/kg体重/日〜約40 mg/kg体重/日;または約20 mg/kg体重/日〜約40 mg/kg体重/日の量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、約40 mg/kg体重/日の量で投与される。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は、ヒト対象の脳を保護する方法に関し、この方法は、対象に対して、潜在的外傷性脳損傷イベントに関連する活動の前に、少なくとも900 mgのDHAを含む経口用剤形を投与する工程を包含し、この剤形は総脂肪酸含有量の少なくとも約35wt%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、この剤形は総脂肪酸含有量の約2wt%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する。いくつかの態様において、成句「脳を保護する」は、脳震盪の病理学的影響の予防、または脳震盪に関連する病理学的影響の軽減、特に外傷性脳損傷、例えば脳震盪に関連する学習および/もしくは記憶欠損の最小化をさす。いくつかの態様において、成句「脳を保護する」は、外傷性脳損傷イベントにおける脳の回復の増進、例えば、外傷性脳損傷後に任意の学習および/または記憶欠損を軽減/解消するのに必要とされる時間の短縮、をさす。
【0022】
いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベントに関連する活動は、ボクシング、フットボール、サッカーまたはホッケーからなる群より選択され、特に高校、大学またはプロレベルのイベントである。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベントに関連する活動は、武力紛争または脳手術からなる群より選択される。
【0023】
いくつかの態様において、本発明は、ヒト対象の脳を保護する方法に関し、この方法は、(1)外傷性脳損傷イベントを経験する危険のある対象を特定する工程、および(2)対象に対して、潜在的外傷性脳損傷イベントに関連する活動の前に、少なくとも900 mgのDHAを含む経口用剤形を投与する工程を包含し、この剤形は総脂肪酸含有量の少なくとも約35wt%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、この剤形は総脂肪酸含有量の約2wt%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書の記載および添付の特許請求の範囲に関して、単数形("a"、"an"および"the")は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を包含する。したがって、例えば、「化合物」に対する参照は、一つ以上の化合物をさす。
【0025】
また、「または」の使用は、そうでないことが示されない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む」、「含有する」および「包含する」("comprise"、"comprises"、"comprising"、"include"、"includes"および"including")は置換可能であり、限定を意図するものではない。
【0026】
さらに、様々な態様についての説明が用語「〜を含む、包含する」を使用している場合、当業者は、いくつかの具体例において、態様が、代替的に、「本質的に〜からなる」または「〜からなる」という語を用いて表現され得ることを理解していることが理解されるべきである。
【0027】
本願に関して、本明細書の説明の中で使用されている技術・科学用語は、そうでないことが個別に定義されていない限り、当業者に一般に理解されている意味を有する。
【0028】
外傷性脳損傷(TBI)は、脳損傷およびそれに付随する一つまたはそれ以上の神経学的機能の機能障害を引き起こし得るイベントの中で最も頻繁に起こりかつ広く知られているものである。外傷性損傷の特徴の一つは、多価不飽和遊離脂肪酸およびジアシルグリセロールの迅速かつ持続的な増加である(Homayoun et al., Neurochemical Research 25: 269-276 (2000))。本願においては、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するために、外傷性脳損傷イベントの前に、DHA含有組成物が対象に投与される。
【0029】
したがって、本発明の態様において、外傷性損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法は、外傷性脳損傷の危険のある対象にDHAを含む組成物を投与する工程を包含し得、この組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「外傷性脳損傷」または「TBI」は、外傷が脳にダメージを与える、後天性の脳損傷または頭部損傷をさす。そのダメージは限局的なもの、すなわち、脳の一つの領域に限定されるもの、または、脳の一つ以上の領域に及ぶ、びまん性のものであり得る。本明細書で使用される場合、「外傷性脳損傷」は、虚血/再灌流により誘導される脳損傷を含まない。
【0031】
いくつかの態様において、対象は、閉鎖性頭部損傷の危険のある対象であり得る。「閉鎖性頭部損傷」は、頭部が突発的にかつ激しく物体と衝突するが、その物体が頭蓋骨を突き破らない場合の脳損傷をさす。いくつかの態様において、閉鎖性頭部損傷は、脳振盪または脳挫傷である。脳振盪は、穏やかな形態の外傷性脳損傷であり、神経学的機能の一時的な機能障害を引き起こすがそれは直ちに自然回復し、かつ、一般には、その状態の結果として脳に対して全体構造的な変化をもたらさないものである。閉鎖性頭部損傷の危険のある対象の例には、脳振盪を発生させるスポーツ、例えばボクシング、フットボールまたはホッケーに参加する選手が含まれる。
【0032】
いくつかの態様において、対象は、穿通性頭部損傷の危険のある対象であり得る。穿通性損傷は、物体が頭蓋骨を貫き、脳組織に侵入する場合の脳損傷である。典型的には、髄膜の外層である硬膜が、物体、例えば、高速の投射物もしくは低速の物体、例えばナイフ、または頭蓋骨骨折の場合の脳に向かって進む骨片、により貫かれまたは引き裂かれる。穿通性頭部損傷に起因する外傷性脳損傷の危険のある対象の例は、武力紛争下の戦闘員である。特定の態様において、穿通性頭部損傷の危険のある対象は、脳手術を受ける患者である。
【0033】
当業者は、外傷性脳損傷の危険のある対象を容易に特定し、そして外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するためにDHAの組成物を予防的に投与することができる。したがって、いくつかの態様において、外傷性損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法は、(a)外傷性脳損傷の危険のある対象を選択する工程;および(b)対象にDHAを含む組成物を投与する工程を包含し得、この組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与される。
【0034】
いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベントの可能性を高めることが公知の活動、例えば、ボクシング、フットボール、サッカー、ホッケー、武力紛争または脳手術の前に本発明の組成物を投与することにより、それらの活動後の脳衛生(brain health)を改善することができる。脳衛生という用語は、当業者に公知の任意の標準技術または評価法による脳機能の任意の公知の維持または改善法をさし、本明細書に提供されるそのような技術および評価法を含む。
【0035】
外傷性脳損傷の様々な病理学的影響は、損傷の形態およびその重篤度に依存する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷の病理学的影響には、直後の発作、水頭症または外傷後脳室拡張、脳脊髄液漏出、血管損傷、脳神経損傷、ならびに認知(思考、記憶および推理)、感覚処理(視覚、聴覚、触覚、味覚および嗅覚)、コミュニケーション(表現および理解)および挙動または精神衛生(うつ、不安、人格変化、攻撃性、行為的表出(acting out)および社会不適応)の機能障害が含まれる。
【0036】
いくつかの態様において、外傷性脳損傷の病理学的影響は、脳震盪後症候群(PCS)である。PCSの症状には、頭痛、浮動性めまい、回転性めまい(vertigo)、記憶問題、睡眠問題、および集中困難が含まれる。一部の患者は、順行性または逆行性のいずれかの外傷後健忘症(PTA)を経験する場合がある。順行性PTAは外傷性脳損傷後に起きたイベントの記憶の機能障害であり、逆行性PTAは外傷性脳損傷前に起きたイベントの記憶の機能障害である。
【0037】
認知欠損を経験する多くの軽度〜中等度頭部損傷患者は、より高レベルの、いわゆる実行機能(executive function)に関する問題、例えば計画、整理、抽象推理、問題解決および判断に関する問題も有し、それらは損傷を受ける前に行っていた活動の再開を困難にするものであり得る。一部は、発声言語および文字言語の理解および生成が困難になることと定義される、失語症を経験するかもしれない。他の病理は、コミュニケーションの繊細な局面、例えばボティランゲージおよび感情的・非言語的なシグナルに影響する。いくつかの態様において、病理学的影響は、非流暢性失語症であり、これはブローカ失語症または運動性失語症とも呼ばれる。
【0038】
外傷性脳損傷の長期的な病理学的影響には、特に、パーキンソン病およびその他の運動の問題;アルツハイマー病;ボクサー認知症;ならびに外傷後認知症の発病率上昇が含まれる。実際、神経細胞に対する損傷の一つの影響は、アルツハイマー病に関連するタンパク質であるβ-アミロイド前駆体タンパク質の増加である。
【0039】
いくつかの態様において、以下でさらに考察されるように、有効量のDHAは、対象に対して、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への対象の予想される参加の少なくとも6週間前に投与される。いくつかの態様において、有効量のDHAは、対象に対して、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への対象の予想される参加の少なくとも2ヶ月前に投与される。いくつかの態様において、有効量のDHAは、対象に対して、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への対象の予想される参加の前、少なくとも約2ヶ月間〜約6ヶ月間またはそれ以上投与される。いくつかの態様において、有効量のDHAは、対象に対して、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への対象の予想される参加の前、少なくとも約2ヶ月間〜約4ヶ月間またはそれ以上投与される。
【0040】
いくつかの態様において、外傷性脳損傷の危険のある対象に、ドコサヘキサエン酸すなわちDHAを含む組成物が投与される。本発明の態様において、「ドコサヘキサエン酸」は、(全Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸およびそれらの任意の塩または誘導体をさす。したがって、ドコサヘキサエン酸または「DHA」という用語は、遊離酸DHAならびにDHAアルキルエステルおよびDHAを含有するトリグリセリドを包含する。DHAは、ω-3多価不飽和脂肪酸である。したがって、様々な態様において、方法で使用されるDHAは、リン脂質、トリグリセリド、遊離脂肪酸およびアルキルエステルの形態であり得る。いくつかの態様において、アルキルエステルには、以下にさらに記載されるように、DHAのメチルエステル、エチルエステルまたはプロピルエステルが含まれ得る。
【0041】
本発明の態様において、DHAを含む組成物は、DHAが予防的治療効果を達成するための投与のために十分な量で存在する任意の供給源であり得る。これらには、非限定的な例として、動物、植物および微生物供給源が含まれる。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物および方法に適したDHAを含有する油の供給源は、動物供給源である。動物供給源の例には、水生動物(例えば、魚;海洋哺乳動物;甲殻類、例えば沖醤蝦(krill)およびその他のオキアミ(euphausids);ワムシ等)ならびに動物組織(例えば、脳、肝臓、目等)および動物生産物、例えば卵または母乳から抽出した脂質が含まれる。植物供給源の例には、巨大藻類、アマニ、ナタネ、コーン、イブニングプリムローズ、ダイズおよびルリヂサが含まれる。いくつかの態様において、組成物は、魚油を含み、魚油には特に、オメガ-3脂肪酸が豊富な魚油、例えばマグロ、イワシ、アンチョビおよびサバ由来の油が含まれる。いくつかの態様において、DHA含有組成物は、プリムローズ油、アマニ油、キャノーラ油、クルミ油またはヒマワリ油を含む。これらの供給源由来のDHAは、アルキルエステル、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸の形態であり得る。
【0042】
いくつかの態様において、方法において使用されるDHA含有組成物は、少なくとも2:1〜最大4:1 wt/wtのDHA対エイコサペンタエン酸(EPA)比を有する。用語「エイコサペンタエン酸」または「EPA」は、その化学名(全Z)5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸により知られているエイコサペンタエン酸およびそれらの任意の塩または誘導体をさす。したがって用語「EPA」は、遊離酸EPAならびにEPAアルキルエステルおよびEPAを含有するトリグリセリドを包含する。EPAはまた、ω-3多価不飽和脂肪酸である。高脂肪魚において見い出されるオメガ-3脂肪酸の典型的な含有量は、wt/wtで4:1またはそれ未満のDHA対EPA比を有する。したがって、少なくとも約2:1〜最大4:1 wt/wtのDHA対EPA比を有するDHA含有組成物は、魚油、例えば、上述のような、マグロ、イワシ、アンチョビおよびサバから採取され得る。
【0043】
いくつかの態様において、方法において使用されるDHA含有組成物は、4:1 wt/wtより高いDHA対EPA比を有する。方法のいくつかの態様において、DHAの組成物は、少なくとも5:1 wt/wt、少なくとも6:1 wt/wt、7:1 wt/wt、少なくとも8:1 wt/wt、少なくとも9:1 wt/wt、少なくとも10:1 wt/wt、少なくとも12:1 wt/wt、少なくとも14:1 wt/wt、少なくとも16:1 wt/wt、少なくとも18:1 wt/wt、少なくとも20:1 wt/wt、少なくとも40:1 wt/wt、少なくとも60:1 wt/wt、少なくとも80:1 wt/wt、少なくとも100:1 wt/wtまたはそれより高いDHA対EPA比を有する。方法のいくつかの態様において、DHAの組成物は、約10:1 wt/wt、12:1 wt/wt、14:1 wt/wt、16:1 wt/wt、18:1 wt/wt、20:1 wt/wt、40:1 wt/wt、60:1 wt/wt、80:1 wt/wtまたは100:1 wt/wtのDHA対EPA比を有する。
【0044】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、実質的にEPAフリーである。本明細書で使用される場合、「実質的にEPAフリー」であるDHAの組成物は、EPAが、組成物の総脂肪酸含有量の約3wt%未満または約2wt%未満であるDHAの調製物をさす。したがって、いくつかの態様において、実質的にEPAフリーの組成物は、組成物の総脂肪酸含有量の2wt%未満、組成物の総脂肪酸含有量の1wt%未満、組成物の総脂肪酸含有量の0.5wt%未満、組成物の総脂肪酸含有量の0.2wt%未満または組成物の総脂肪酸含有量の0.01wt%未満を有し得る。いくつかの態様において、EPAは、当技術分野で公知の技術によっては組成物から検出できない。例示的なEPA量検出技術は、油の直接メチル基転移により脂肪酸メチルエステル(FAME)を形成した後、その生成物をHPLC、ガス・液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィー・質量分析により分離する方法である(例えば、Fournier et al., J Chromatogr A. 1129: 21-8 (2006)を参照のこと)。いくつかの態様において、DHA組成物はEPAを含まない。
【0045】
DHAはまた、実質的にアラキドン酸(ARA)フリーで投与され得る。ARAは、(全Z)-5,8,11,14-エイコサテトラエン酸化合物((5Z,8Z,11Z,14Z)-イコサ-5,8,11,14-テトラエン酸とも称される)およびそれらの任意の塩または誘導体をさす。したがって、用語「ARA」は、遊離酸ARAならびにARAアルキルエステルおよびARAを含有するトリグリセリドを包含する。ARAはω-6多価不飽和脂肪酸である。DHAは、ARAがその剤形の総脂肪酸含有量の約3%(wt/wt)未満である場合に、「実質的にARAフリー」である。いくつかの態様において、ARAは、剤形の総脂肪酸含有量の約2%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の1%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.5%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.2%(wt/wt)未満または剤形の総脂肪酸含有量の0.01%(wt/wt)未満を占める。いくつかの態様において、剤形は、検出可能な量のARAを有さない。
【0046】
DHAはまた、実質的にドコサペンタエン酸22:5 n-6(DPAn-6)フリーで投与され得る。用語「DPAn-6」は、その化学名(全Z)-4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸により知られているドコサペンタエン酸、オメガ6およびそれらの任意の塩またはエステルをさす。用語「DPAn-6」は、遊離酸DPAn-6ならびにDPAn-6アルキルエステルおよびDPAn-6を含有するトリグリセリドを包含する。DPAn-6は、ω-6多価不飽和脂肪酸である。DHAは、DPAn-6がその剤形の総脂肪酸含有量の約3%(wt/wt)未満である場合に、「実質的にDPAn-6フリー」である。いくつかの態様において、DPAn-6は、剤形の総脂肪酸含有量の約2%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の1%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.5%(wt/wt)未満、剤形の総脂肪酸含有量の0.2%(wt/wt)未満または剤形の総脂肪酸含有量の0.01%(wt/wt)未満を占める。いくつかの態様において、剤形は、検出可能な量のDPAn-6を有さない。
【0047】
いくつかの態様において、本発明の剤形は、測定可能な量のドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);ドコサペンタエン酸22:5n-6(DPAn-6);および/または4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)を含まない。
【0048】
いくつかの態様において、DHAは、治療レベルのアルブミンおよびその薬学的に許容できる塩の実質的に非存在下で投与される。いくつかの態様において、DHAは、100 mg未満、特に10 mg未満、特に5 mg未満、特に1 mg未満のアルブミンおよびその薬学的に許容できる塩と共に投与される。いくつかの態様において、DHAは、検出可能な量のアルブミンを伴わずに投与される。
【0049】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、追加の脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「脂質」には、リン脂質(PL);遊離脂肪酸;脂肪酸のエステル;トリアシルグリセロール(TAG);ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;ホスファチド;ワックス(アルコールと脂肪酸のエステル);ステロールおよびステロールエステル;カロテノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド);炭化水素;ならびに当業者に公知のその他の脂質が含まれる。脂質は、DHAと組み合わせて投与された場合に、最小限の健康副作用しか有さないまたはDHAの効能に最小限の影響しか及さないように選択され得る。
【0050】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、追加の不飽和脂質を含み得る。いくつかの態様において、不飽和脂質は、多価不飽和脂質、例えばオメガ-3脂肪酸またはオメガ-6脂肪酸である。組成物において使用され得る例示的なオメガ-6脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(DPA)であり、これにはDPAn-6またはDPAn-3が含まれる。
【0051】
本発明の方法および組成物においては、追加の脂肪酸が剤形または単位用量または組成物に存在し得る。これらの脂肪酸には、精製プロセス中に除去されなかった脂肪酸、すなわち、生物からDHAと共に単離された脂肪酸が含まれ得る。いくつかの態様において、特定の非DHA脂肪酸の所望濃度を達成するよう、一つまたはそれ以上の非DHA脂肪酸が、剤形または単位用量に添加され得る。これらの脂肪酸はいずれも、様々な濃度で存在し得る。例えば、いくつかの態様において、剤形または単位用量は、0.01%〜約4% (wt/wt)のオレイン酸を含む。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の一つまたはそれ以上を0.01%〜0.5% (wt/wt)含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ヘプタデカン酸;(g)ステアリン酸;(h)オレイン酸;(i)リノール酸;(j)α-リノレン酸;(k)アラキジン酸;(l)エイコセン酸;(m)アラキドン酸;(n)エルカ酸;(o)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);および(p)ネルボン酸。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の一つまたはそれ以上を0.01%〜0.1% (wt/wt)含む:(a)ラウリン酸;(b)ヘプタデカン酸;(c)ステアリン酸;(d)アラキジン酸;(e)エイコセン酸;および(f)アラキドン酸。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の各々を0.5% (wt/wt)未満含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ヘプタデカン酸;(g)ステアリン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)アラキジン酸;(k)エイコセン酸;(l)アラキドン酸;(m)エルカ酸;(n)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);および(o)ネルボン酸。いくつかの態様において、本発明の剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の一つまたはそれ以上を測定可能な量含まない:(a)カプリン酸;(b)リノール酸;(c)α-リノレン酸;および(d)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3)。
【0052】
いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の一つもしくはそれ以上またはそのエステルを0.1%〜60% (wt/wt)含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6(DPAn-6);および(k)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の一つもしくはそれ以上またはそのエステルを20%〜40% (wt/wt)含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6(DPAn-6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。いくつかの態様において、剤形または単位用量は、以下の脂肪酸の各々またはそのエステルを1% (wt/wt)未満含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸22:5n-3(DPAn-3);(k)ドコサペンタエン酸22:5n-6(DPAn-6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0053】
本明細書に記載されるDHA剤形の態様のいくつかにおいて、剤形は、一つまたはそれ以上の以下の脂肪酸(またはそれらのエステル)により特徴付けられる。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のカプリン酸(C10:0)を含み得る。本発明の態様はさらに、約6%またはそれ未満(wt/wt)のラウリン酸(C12:0)を含み得る。本発明の態様はさらに、約20%もしくはそれ未満(wt/wt)、または約5%〜約20%(wt/wt)のミリスチン酸(C14:0)を含み得る。本発明の態様はさらに、約20%(wt/wt)もしくはそれ未満、または約5%〜約20%(wt/wt)のパルミチン酸(C16:0)を含み得る。本発明の態様はさらに、約3%(wt/wt)またはそれ未満のパルミトレイン酸(C16:1n-7)を含み得る。本発明の態様はさらに、約2%(wt/wt)またはそれ未満のステアリン酸(C18:0)を含み得る。本発明の態様はさらに、約40% (wt/wt)もしくはそれ未満、または約10%〜約40% (wt/wt)のオレイン酸(C18:1n-9)を含み得る。本発明の態様はさらに、約5%(wt/wt)またはそれ未満のリノール酸(C18:2)を含み得る。本発明の態様はさらに、約2%(wt/wt)またはそれ未満のネルボン酸(C24:1)を含み得る。本発明の態様はさらに、約3%(wt/wt)またはそれ未満の他の脂肪酸またはそれらのエステルを含み得る。前出の特徴を有するDHA剤形は、DHASCO(登録商標)を含み得、これはクリプテコディニウム・コーニーから得られた、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油である。
【0054】
例示的なクリプテコディニウム・コーニーから得られたDHA(トリグリセリド)含有油は、表1に列挙される特定量の成分により特徴付けられ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0055】
(表1)

【0056】
例示的なクリプテコディニウム・コーニーから得られた未希釈DHA(トリグリセリド)含有油は、本明細書に記載されるDHAの量、および以下の表2に列挙される特徴の一つもしくはそれ以上またはすべてにより特徴付けられ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0057】
(表2)未希釈DHA油の特徴

【0058】
いくつかの態様において、油は、総脂肪酸含有量のwt%で表される、一つまたはそれ以上の以下の脂肪酸(またはそれらのエステル)により特徴付けられる。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のカプリン酸(C10:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約6%またはそれ未満(wt/wt)のラウリン酸(C12:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約20%もしくはそれ未満、または約10〜約20%(wt/wt)のミリスチン酸(C14:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約15%もしくはそれ未満、または約5〜約15%(wt/wt)のパルミチン酸(C16:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約5%またはそれ未満(wt/wt)のパルミトレイン酸(C16:1n-7)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のステアリン酸(C18:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約20%もしくはそれ未満、または約5%〜約20% (wt/wt)のオレイン酸(C18:1n-9)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のリノール酸(C18:2)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のネルボン酸(C24:1)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約3%またはそれ未満(wt/wt)の他の脂肪酸を含み得る。前出の特徴を有する油は、クリプテコディニウム・コーニーから得られた、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油であり得る。
【0059】
いくつかの態様において、剤形は、遊離脂肪酸の百分率で測定された場合、約35〜65%、約40〜55%、約35〜57%または約57〜65%のDHA(22:6 n-3);約0〜2%のカプリン酸(10:0);約0〜6%のラウリン酸(12:0);約10〜20%のミリスチン酸(14:0);約5〜15%のパルミチン酸(16:0);約0〜5%のパルミトレイン酸(16:1);約0〜2%のステアリン酸(18:0);約5〜20%または5〜25%のオレイン酸(18:1);約0〜2%のリノール酸(18:2);および約0〜2%のネルボン酸(24:1, n-9)を含む。一つの態様において、そのような油は、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)属の微生物由来である。別の態様において、遊離脂肪酸含有量は、0.4%未満である。
【0060】
本発明はまた、少なくとも約40wt%のDHAおよび少なくとも約0.1wt%のDPAn-3を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸の百分率で、少なくとも約55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65wt%のDHAを含み、このDHAは場合によりトリグリセリド形態である。
【0061】
例示的なクリプテコディニウム・コーニーから得られたDHA含有油は、表3に列挙される特定量の成分により特徴付けられ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0062】
(表3)

【0063】
いくつかの態様において、油は、総脂肪酸含有量のwt%(すなわち、wt/wt)で表される、一つまたはそれ以上の以下の脂肪酸(またはそれらのエステル)により特徴付けられる。本明細書に提供される態様はさらに、約0.1%もしくはそれ未満(wt/wt)のミリスチン酸(C14:0)を含み得る、またはこれは検出不可能である。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のパルミチン酸(C16:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のパルミトレイン酸(C16:1n-7)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%もしくはそれ未満(wt/wt)のステアリン酸(C18:0)を含み得る、またはこれは検出不可能である。本明細書に提供される態様はさらに、約4%またはそれ未満(wt/wt)のオレイン酸(C18:1n-9)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、0.1%未満(wt/wt)のリノール酸(C18:2)を含み得る、またはこれは検出不可能である。本明細書に提供される態様はさらに、0.1%未満(wt/wt)のエイコサペンタエン酸(C20:5)を含み得る、またはこれは検出不可能である。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のドコサペンタエン酸(22:5n-3)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約1%またはそれ未満(wt/wt)のオクタコサオクタエン酸(28:8 n-3)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のテトラコサエン酸(24:1n9)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約1%またはそれ未満(wt/wt)の他の脂肪酸を含み得る。クリプテコディニウム,コーニー種から調製された藻油から調製された、前出の特徴を有する油中のDHAは、DHAエステル、好ましくはアルキルエステル、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはそれらの組み合わせの形態であり得る。
【0064】
方法のいくつかの態様において、使用される組成物は、総脂肪酸含有量の少なくとも約40wt%のDHA量を有する。いくつかの態様において、組成物中のDHAの重量%は、総脂肪酸含有量の少なくとも50wt%、総脂肪酸含有量の少なくとも55wt%、総脂肪酸含有量の少なくとも60wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも70wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも80wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも85wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも90wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも95wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも96wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも97wt%;総脂肪酸含有量の少なくとも98wt%;または総脂肪酸含有量の少なくとも99wt%である。上記のように、DHAは、アルキルエステル、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸の形態であり得る。
【0065】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約99%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約45%〜約98%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約65%〜約99.9%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約95%(wt/wt)の量で存在する。いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約65%(wt/wt)超、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約85%(wt/wt)超、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約90%(wt/wt)超、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約95%(wt/wt)超の量で存在する。いくつかの態様において、油は、所望の脂肪酸濃度を達成するために、他の油、例えばヒマワリ油で希釈され得る。
【0066】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約30%(wt/wt)もしくはそれ以上、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約30%〜約99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約60%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約50%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約37%〜約45%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約38%〜約43%(wt/wt)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約35%、約37%、約38%、約39%または約40%(wt/wt)超である。いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約30%〜約99.5%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約65%(wt/wt)である。
【0067】
これらの態様のいくつかにおいて、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約40%〜約45%(wt/wt)を占める。これらの態様のいくつかにおいて、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約35%〜約45%(wt/wt)を占める。態様のいくつかにおいて、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約55%〜約67%(wt/wt)を占める。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約70%(wt/wt)超を占める。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約99.5%(wt/wt)を占める。
【0068】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約80%(wt/wt)超、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約80%〜99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約85%〜約99%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約87%〜約98%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総油含有量の約90%〜約97%(wt/wt)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総油含有量の約95%、約97%、約98%、約99%または約99.5%(wt/wt)超である。DHAと総脂肪酸含有量または総油含有量の比較に関して、重量%は、標準的手段を用いて曲線下面積(AUC)を計算することにより、例えば、DHA AUCを総脂肪酸AUCで除算することにより、計算することができる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「またはそれ未満」または「約〜未満」は、0%、すなわち現在の手段で検出できない量を含む比率をさす。本明細書で使用される場合、「最大」は、0%、すなわち現在の手段で検出できない量を含む比率をさす。
【0070】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約80%(wt/wt)超、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約80%〜99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約85%〜約99%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約87%〜約98%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総脂肪酸含有量の約90%〜約97%(wt/wt)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総脂肪酸含有量の約95%、約97%、約98%、約99%または約99.5%(wt/wt)超である。
【0071】
いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の重量の約35%〜約96%を占める。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の重量の約38%〜約42%を占める。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の総重量の約35%〜約45%を占める。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の総重量の約55%を占める。いくつかの態様において、剤形または単位用量中のDHAは、剤形または単位用量の総重量の約85%〜約96%を占める。
【0072】
いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約30%(wt/wt)もしくはそれ以上、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約30%〜約99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約35%〜約99.9%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約35%〜約60%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約35%〜約50%(wt/wt)、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約37%〜約45%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総油含有量の約38%〜約43%(wt/wt)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形または単位用量の総油含有量の約35%、約37%、約38%、約39%または約40%超(wt/wt)である。いくつかの態様において、DHAは、剤形もしくは単位用量の総油含有量の約30%〜約99.5%(wt/wt)、または剤形もしくは単位用量の総油含有量の約40%〜約65%(wt/wt)である。
【0073】
いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約40〜約50wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約40〜約50wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の約3wt%もしくはそれ未満または2wt%もしくはそれ未満のEPA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約40〜50wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の0.2wt%未満のEPA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約55〜60wt%のDHA含有量を有する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約55〜60wt%のDHA含有量および総脂肪酸含有量の約0.2wt%未満のEPA含有量を有する。これらの態様のいくつかにおいて、DHAはトリグリセリドの形態である。
【0074】
本明細書に記載される態様において、4:1 wt/wtより大きいDHA対EPA比を有するDHAの組成物は、当技術分野で公知の標準的技術により入手され得る。いくつかの態様において、EPAは、DHAの精製時に除去され得るか、あるいはDHAは、本明細書に記載されるEPAレベルと共にDHAを産生する生物由来であり得る、例えば、非実質量のEPAと共にDHAを産生する産生生物が選択される。DHAは、様々なレベルに精製され得る。DHAの精製は、当業者に公知の任意の手段により達成することができ、これらには、DHAを産生する生物からの総油分の抽出が含まれ得る。いくつかの態様において、EPA、ARAおよび/またはDPAn-6は、その後、総油分から、例えばクロマトグラフィー法を通じて除去される。あるいは、DHAの精製は、DHAを産生するが、EPA、ARA、DPAn-6および/またはフラボノイドについては、産生するとしても、少量しか産生しない生物からの総油分の抽出により達成され得る。いくつかの態様において、油は、所望の脂肪酸濃度を達成するため、他の油、例えばヒマワリ油で希釈され得る。
【0075】
本発明において有用な微生物油は、当業者に公知の任意の適当な手段により、微生物供給源から回収され得る。例えば、油は、溶媒、例えばクロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、メタノール等による抽出により、または超臨界流体抽出により、回収され得る。あるいは、油は、どちらも2001年1月19日に出願され、「Solventless extraction process」という表題が付され、どちらもそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,750,048号および国際公報第WO 2001/053512号に記載されるような抽出技術を用いて抽出され得る。様々な形態のDHAを調製するプロセスはまた、特に、参照により本明細書に組み入れられる、Raman et al.による米国公報第2009/0023808号「Production and Purification of Esters of Polyunsaturated Fatty Acids」およびEllisによる米国公報第2007/0032548号「Polyunsaturated fatty acids for treatment of dementia and pre-dementia-related conditions」に記載されている。
【0076】
さらなる抽出および/または精製技術は、国際公報第WO 2001/076715号;国際公報第WO 2001/076385号;米国公報第2007/0004678号;米国公報第2005/0129739号;米国特許第6,399,803号;および国際公報第WO 2001/051598号に教示されており;すべての文献について、それらの全体を参照により本明細書に組み入れる。抽出油は、減圧下で蒸発され、油濃縮物のサンプルが生成され得る。脂質の回収のためのバイオマスの酵素処理プロセスは、国際公報第WO 2003/092628号;米国公報第2005/0170479号;欧州特許公報第0776356号および米国特許第5,928,696号に開示されており、最後の二つには、「Process for extracting native products which are not water-soluble from native substance mixtures by centrifugal force」という表題が付されており、すべての文献について、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0077】
いくつかの態様において、DHAは、a)多価不飽和脂肪酸を含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させて、トリグリセリドから多価不飽和脂肪酸のエステルを生成する工程;ならびにb)この組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含む画分を回収する工程、を包含する方法を用いることで、エステルとして調製することができ、場合により、この方法はさらに、c)多価不飽和脂肪酸のエステルを含む画分と尿素を媒体中で組み合わせる工程;d)その媒体を冷却または濃縮して、尿素含有沈殿物および液体画分を形成させる工程;ならびにe)沈殿物と液体画分を分離する工程、を包含する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国公報第2009/0023808号を参照のこと。いくつかの態様において、精製プロセスは、脱不純物・脱色・脱臭油(RBD油)から出発し、アセトンを用いる低温分留を行って濃縮物を提供する工程を包含する。最終DHA産物を生成するためのこの濃縮物は、塩基触媒エステル交換、蒸留およびシリカ脱不純物により入手され得る。
【0078】
脂肪酸の純度レベルを決定する方法は当技術分野で公知であり、例えば、クロマトグラフィー法、例えば、HPLC銀イオンクロマトグラフィーカラムが含まれ得る。あるいは、純度レベルは、DHAから対応するアルキルエステルへの変換を行うまたは行わないガスクロマトグラフィーによって決定され得る。脂肪酸の比率はまた、脂肪酸メチルエステル(FAME)分析を用いて決定され得る。
【0079】
いくつかの態様において、DHAエステルは、単細胞微生物由来の未希釈油から得ることができ、いくつかの態様においては、未希釈DHASCO-T(登録商標)(Martek Biosciences Corporation, Columbia, MD)から得ることができる。いくつかの態様において、DHA組成物を得ることができる油には、植物油工業において一般的な方法を用いる制御発酵プロセスおよびその後の油の抽出精製により製造される単細胞微生物油が含まれる。特定の態様において、油の抽出精製工程は、脱不純物、脱色および脱臭を含み得る。いくつかの態様において、未希釈DHA油は、重量で約40%〜約50%のDHA(約400〜500 mg DHA/g油)を含む。特定の態様において、未希釈DHA油は、本発明の活性DHAを生成するため、冷温分留により濃縮することができ(それにより約60% wt/wtのDHAトリグリセリドを含有する油が得られる)、DHA画分は、場合により、エステル交換およびさらなる下流処理に供され得る。本発明のいくつかの態様において、油の下流処理には、蒸留および/またはシリカ脱不純物が含まれる。
【0080】
したがって、DHAを得ることができる油を生成するために、特定の局面において、以下の工程が使用され得る:DHA産生微生物の発酵;バイオマスの収集;バイオマスの噴霧乾燥;バイオマスからの油の抽出;油の脱不純物;油の脱色;油の冷却ろ過;油の脱臭;および油への抗酸化剤の添加。いくつかの態様において、微生物培養物は、小スケールの発酵槽から生産サイズの発酵槽に徐々に移動され得る。いくつかの態様において、事前に設定された時間の制御培養後、培養物は、遠心分離により収集され、その後、低温殺菌され、そして噴霧乾燥され得る。特定の態様において、乾燥させたバイオマスは、-20℃で凍結保存する前に、窒素で洗浄され、パッケージされ得る。特定の態様において、DHA油は、細胞を破壊し油と細胞残骸を分離するバッチプロセスにおいて、乾燥させたバイオマスから、バイオマスとn-ヘキサンまたはイソヘキサンを混合することにより、抽出され得る。特定の態様において、溶媒はその後、除去され得る。
【0081】
いくつかの態様において、DHAの原油はその後、遊離脂肪酸およびリン脂質を除去するための脱不純物プロセスに供され得る。脱不純物DHA油は、任意の残留する極性化合物および酸化促進金属の除去を促進し、脂質酸化産物を分解するために真空脱色容器に移され得る。脱不純物・脱色DHA油は、油の冷却およびろ過による最終清澄化プロセスに供され、任意の残留する不溶性油脂、ワックスおよび固形物が除去され得る。
【0082】
場合により、DHAは、充填カラム・逆流水蒸気蒸留脱臭装置において真空下で脱臭され得る。場合により、油の安定化を補助するため、脱臭油に抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、アルファ-トコフェロールおよびトコトリエノールが添加され得る。いくつかの態様において、最終品の未希釈DHA油は、さらなる処理まで-20℃で凍結維持される。
【0083】
いくつかの態様において、DHA油は、当技術分野で公知の方法によりDHAエステルに変換され得る。いくつかの態様において、本発明のDHAエステルは、以下の工程によりDHA油から生成され得る:DHA油の冷温分留およびろ過(例えば約60%トリグリセリド油を生成する);直接エステル交換(約60% DHAエチルエステルを生成する);分子蒸留(約88% DHAエチルエステルを生成する);シリカ脱不純物(約90% DHAエチルエステルを生成する);ならびに抗酸化物質の添加。
【0084】
いくつかの態様において、冷温分留工程は、以下のように実施され得る:約500 mg/g DHAの未希釈DHA油(トリグリセリド)をアセトンと混合し、-80℃の冷却能力を有するタンク内で制御速度で冷却する。飽和トリグリセリドは溶液から結晶化させ、約600 mg/g DHAの多価不飽和トリグリセリドは液体状態で維持する。約300 mg/gを含有する固形物は、20ミクロンのステンレス鋼スクリーンにより、約600 mg/g DHAを含有する液体の流れからろ過され得る。その後、固形物の流れは加熱(融解)および回収され得る。600 mg/g DHAの液体の流れは、加熱および真空により溶媒除去され、その後、エステル交換反応装置に移され得る。
【0085】
いくつかの態様において、エタノールおよびナトリウムエトキシドを用いる直接エステル交換を通じて実行されるエステル交換工程が、600 mg/g DHA油に対して実施される。エステル交換物(DHA-エチルエステル)は、その後、分子蒸留に供され、それによって、他の飽和脂肪酸ならびにステロール類および非鹸化物の大部分を除去するようさらに蒸留(3パス、重、軽、重)され得る。DHA-エチルエステル(DHA-EE)は、シリカカラムを通すことによってさらに脱不純物化され得る。
【0086】
DHAの遊離脂肪酸(DHA-FFA)は、例えば、上記のDHA含有油を用いて生成され得る。いくつかの態様において、DHA-FFAは、DHAエステルから得ることができる。例えば、遊離脂肪酸を生成するため、DHAトリグリセリドが、鹸化され、その後、尿添加工程に供され得る。
【0087】
本明細書に記載の組成物および方法には、例えば、動物、植物および微生物供給源を含む任意のDHA供給源が使用され得る。動物供給源の例には、水生動物(例えば、魚、海洋哺乳動物、甲殻類、ワムシ等)および動物組織(例えば、脳、肝臓、目等)から抽出した脂質が含まれる。植物供給源の例には、巨大藻類、アマニ、ナタネ、コーン、イブニングプリムローズ、ダイズおよびルリヂサが含まれる。微生物の例には、微細藻類、原生生物、細菌および真菌(酵母を含む)が含まれる。例えば、DHAは、魚油、植物油、種油またはその他の天然由来油から、DHA対EPA比が本明細書に記載の範囲内になるよう精製され得る。いくつかの態様において、DHAの供給源は、DHAを生成するよう操作された、遺伝子修飾植物または遺伝子修飾微生物であり得る。
【0088】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、微生物油であるかまたは微生物油から得られたものである。「微生物油」は、微生物によって自然産生される油をさす。「〜から得られる」は、微生物油の加工物、例えば、微生物油から調製されたエステル;単離もしくは精製された微生物油の成分;または微生物油の成分のパーセント重量を変化させるその他の微生物油の処理、例えば、油の濃縮、をさす。微生物油を得ることができる例示的な微生物には、特に、ストラメノパイル界(Stramenopiles)、ヤブレツボカビ科(Thraustochytrids)およびラビリンチュラ科の微生物群が含まれる。ストラメノパイル界には、以下の微生物群を含む微細藻類および藻様微生物が含まれる:ハマトレス類(Hamatores)、プロテロモナズ類(Proteromonads)、オパリン類(Opalines)、デヴェロパイエラ(Develpayella)、ディプロフリス属(Diplophrys)、ラビリンチュラ科、ヤブレツボカビ科、ビオセシド(Biosecids)、卵菌類(Oomycetes)、サカゲツボカビ網(Hypochytridiomycetes)、コマチオン(Commation)、レティキュロスフェラ(Reticulosphaera)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ペラゴコッカス(Pelagococcus)、オリコラ(Ollicola)、アウレオコッカス(Aureococcus)、パルマ目(Parmales)、ディアトマ属(Diatoms)、黄緑色藻綱(Xanthophytes)、褐藻網(Phaeophytes)(褐藻類)、真正眼点藻綱(Eustigmatophytes)、ラフィド藻網(Raphidophytes)、シヌリド(Synurids)、アキソジン(Axodines)(リゾクロムリナ目(Rhizochromulinaales)、ペディネラ目(Pedinellales)、ディクチオカ目(Dictyochales)を含む)、クリソメラ目(Chrysomeridales)、サルキノクリシス目(Sarcinochrysidales)、ミズオ目(Hydrurales)、ヒッバーディア目(Hibberdiales)およびクロムリナ目(Chromulinales)。ヤブレツボカビ科には、シゾキトリウム属(種にはアグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)が含まれる)、ヤブレツボカビ属(種にはアルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)が含まれる)、ウルケニア(Ulkenia)属(種にはアモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属(種にはハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi)が含まれる)、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属(種にはマリヌム(marinum)が含まれる)、アルソルニア(Althornia)属(種にはクロウチイ(crouchii)が含まれる)およびエリナ(Elina)属(種にはマリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica)が含まれる)が含まれる。ラビリンチュラ科には、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属(種にはアルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフェンシス(roscofensis)、バルカノビイ(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfi)が含まれる)、ラビリントミキサ(Labyrinthomyxa)属(種にはマリナ(marina)が含まれる)、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)属(種にはハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、ディプロフリス(Diplophrys)属(種にはアルケリ(archeri)が含まれる)、ピロソルス(Pyrrhosorus)*属(種にはマリヌス(marinus)が含まれる)、ソロジプロフリス(Sorodiplophrys)*(種にはステルコレア(stercorea)が含まれる)およびクラミドミクサ(Chlamydomyxa)*(種にはラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana)が含まれる)が含まれる(*=これらの属の正確な分類学的位置には現時点で一般的なコンセンサスはない)。
【0089】
いくつかの態様において、微生物油の供給源は、油糧微生物、例えば特定の海藻類である。本明細書で使用される場合、「油糧微生物」は、それらの細胞の乾燥重量の20%超を脂質の形態で蓄積することができる微生物と定義される。いくつかの態様において、DHAは、光栄養性または従属栄養性の単細胞生物または多細胞生物、例えば藻類、から入手されるまたはそれらから得られるものである。したがって、いくつかの態様において、微生物油は藻油である。例えば、DHAは、珪藻類、例えば海生渦鞭毛藻類(藻類)、例えばクリプテコディニウム種、ヤブレツボカビ種、シゾキトリウム種またはそれらの組み合わせから入手され得るかまたはそれらから得られるものであり得る。C. コーニーの例示的なサンプルは、Rockville, MDのAmerican Type Culture Collectionに寄託され、アクセッション番号40750、30021、30334〜30348、3054130543、30555〜30557、30571、30572、30772〜30775、30812、40750、50050〜50060および50297〜50300が割り当てられている。
【0090】
本明細書で使用される場合、微生物という用語または任意の特定タイプの生物には、野生株、変異体または組み換え体のタイプが含まれる。高レベルのDHA含有油を産生することができる生物は、本発明の範囲内であるとみなされる。例えば、渦鞭毛藻類、例えばC.コーニーの培養は、以前に報告されている。例えば、米国特許第5,492,938号およびHenderson et al., Phytochemistry 27: 1679-1683 (1988)を参照のこと。より費用対効果の高い基質を効率的に使用しつつ対応する野生型株と同量のDHAを産生するよう設計された微生物も含まれる。
【0091】
DHAの産生に有用な生物には、また、任意の様式のトランスジェニック生物またはその他の遺伝子修飾生物、例えば、DHAを産生するよう操作された遺伝子修飾植物または遺伝子修飾微生物、例えば、培養発酵物または作物植物のいずれかとして成長させた植物、例えば穀類、例えばトウモロコシ、オオムギ、コムギ、コメ、ソルガム、トウジンビエ、コーン、ライムギおよびオートムギ;またはマメ、ダイズ、コショウ、レタス、エンドウマメ、アブラナ種(例えば、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ムギキャベツ、ナタネおよびダイコン)、ニンジン、ビート、ナス、ホウレンソウ、キュウリ、カボチャ、メロン、マスクメロン、ヒマワリ、ベニバナ、キャノーラ、アマ、ピーナツ、カラシ、ナタネ、ヒヨコマメ、レンティル、シロツメクサ、オリーブ、パーム、ルリヂサ、イブニングプリムローズ、リンシードならびにタバコ、が含まれる。いくつかの態様において、DHAは、野生型および遺伝子修飾ダイズ供給源を含む、ダイズ供給源から得られる。
【0092】
いくつかの態様において、DHAは、当業者に公知の任意の手段により、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたはそれらの組み合わせの形態で精製され得る。いくつかの態様において、DHAはエステルを含む。用語「エステル」は、DHA分子のカルボン酸基の水素が別の置換基で置き換わっているものをさす。典型的なエステルは当業者に公知であり、その考察は、"Pro-drugs as Novel Delivery Systems," Vol.14, A.C.S. Symposium Series, Bioreversible Carriers in Drug Design, Ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association, Pergamon Press (1987)においてHiguchi, T.およびV. Stellaにより、ならびにProtective Groups in Organic Chemistry, McOmie ed., Plenum Press, New York (1973)により提供されている。いくつかの態様において、エステルは、アルキルエステルである。より一般的なエステルの例には、C1〜C6エステル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはそれらの分枝型、例えばイソプロピル、イソブチル、イソペンチルまたはt-ブチルが含まれる。いくつかの態様において、エステルは、カルボン酸保護エステル類、アラルキル(例えばベンジル、フェネチル)とのエステル、低級アルケニル(例えばアリル、2-ブテニル)とのエステル、低級アルコキシ-低級アルキル(例えばメトキシメチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル)とのエステル、低級アルカノイルオキシ-低級アルキル(例えばアセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、1-ピバロイルオキシエチル)とのエステル、低級アルコキシカルボニル-低級アルキル(例えばメトキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル)とのエステル、カルボキシ-低級アルキル(例えばカルボキシメチル)とのエステル、低級アルコキシカルボニルオキシ-低級アルキル(例えば1-(エトキシカルボニルオキシ)エチル、l-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル)とのエステル、カルバモイルオキシ-低級アルキル(例えばカルバモイルオキシメチル)とのエステル等である。いくつかの態様において、付加される置換基は、環状炭化水素基、例えば、C1〜C6シクロアルキルまたはC1〜C6アリールエステルである。その他のエステルには、ニトロベンジル、メトキシベンジル、ベンズヒドリルおよびトリクロロエチルが含まれる。いくつかの態様において、エステル置換基は、DHAが精製または準精製状態にある場合、DHAの遊離酸分子に付加される。あるいは、DHAエステルは、トリグリセリドからエステルへの変換により形成される。当業者は、非エステル化DHA分子、例えばエステル化されなかったDHA分子または切断された、例えば加水分解されたDHAトリグリセリドエステル結合が、ある程度はDHA組成物中に存在し得ることを理解できるであろう。いくつかの態様において、非エステル化DHA分子またはDHAトリグリセリド分子は、総DHA分子の3% (mol/mol)未満、約0.01%〜約2% (mol/mol)、約0.05%〜約1% (mol/mol)、または約0.01%〜約0.5% (mol/mol)を占める。いくつかの態様において、組成物中のDHAのエチルエステルの量は、少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%であり得る。
【0093】
いくつかの態様において、本発明のDHAは、トリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドである。「トリグリセリド」は、グリセロールが3つの脂肪酸基でエステル化されているグリセリドである。典型的なトリグリセリドは当業者に公知である。いくつかの態様において、DHAは、一つまたはそれ以上のDHA以外の脂肪酸基がトリグリセリドまたはジグリセリド中に存在しているトリグリセリドまたはジグリセリドの形態である。いくつかの態様において、DHAは、トリグリセリドまたはジグリセリド分子中の唯一の脂肪酸基である。いくつかの態様において、トリグリセリドの一つまたはそれ以上の脂肪酸基は、加水分解または切断されている。
【0094】
いくつかの態様において、本発明のDHAは、遊離脂肪酸の形態である。「遊離脂肪酸」は、それらの酸性状態にある脂肪酸化合物およびそれらの塩誘導体をさす。
【0095】
いくつかの態様において、DHAは、当業者に公知の任意の手段により、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質またはトリグリセリドの形態で精製され得る。様々な形態のDHAを調製するプロセスは、特に、参照により本明細書に組み入れられる、Raman et al.による米国公報第2009/0023808号 "Production and Purification of Esters of Polyunsaturated Fatty Acids"およびEllisによる米国公報第2007/0032548号 "Polyunsaturated fatty acids for treatment of dementia and pre-dementia-related conditions"に記載されている。本明細書で使用される場合、「エステル」は、DHA分子のカルボン酸基の水素が別の置換基で置き換えられている分子をさす。一般的なエステルの例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、t-ブチル、ベンジル、ニトロベンジル、メトキシベンジル、ベンズヒドリルおよびトリクロロエチルが含まれる。いくつかの態様において、エステルは、アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステルまたはプロピルエステルである。いくつかの態様において、エステルの置換基は、DHAが精製または準精製状態にある場合、DHAの遊離酸分子に付加される。あるいは、DHAエステルは、トリグリセリドからエステルへの変換により形成される。いくつかの態様において、組成物中のDHAのアルキルエステルの量は、少なくとも約80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%であり得る。いくつかの態様において、DHAアルキルエステルは、組成物の総脂肪酸含有量の少なくとも約85wt%である。特定の態様において、DHAアルキルエステルは、総脂肪酸含有量の約85〜96wt%である。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸含有量の約85〜96wt%のDHAアルキルエステル含有量および総脂肪酸含有量の約0.1wt%またはそれ未満のEPA含有量を有する。特定の態様において、DHAアルキルエステルは、エチルエステルである。当業者は、非エステル化DHA分子、例えばエステル化されなかったDHA分子または切断された、例えば加水分解されたDHAエステル結合が、ある程度は組成物中に存在し得ることを理解できるであろう。いくつかの態様において、非エステル化DHA分子は、総DHA分子の3% (mol/mol)未満、約2%〜約0.01% (mol/mol)、約1%〜約0.05% (mol/mol)、または約5%〜約0.1% (mol/mol)を占める。あるいは、いくつかの態様において、DHAは、遊離酸形態または塩形態で精製され得る。
【0096】
例示的なDHAエステル生成方法は:a)DHAを含む組成物をアルコールおよび塩基の存在下で反応させて、トリグリセリド中のDHAから多価不飽和脂肪酸のエステルを生成する工程;およびb)この組成物を蒸留し、多価不飽和脂肪酸のエステルを含む画分を回収する工程、を包含し得し、場合により、この方法はさらに、c)多価不飽和脂肪酸のエステルを含む画分と尿素を媒体中で組み合わせる工程;d)その媒体を冷却または濃縮して、尿素含有沈殿物および液体画分を形成させる工程;およびe)沈殿物と液体画分を分離する工程、を包含する。いくつかの態様において、精製プロセスは、脱不純物・脱色・脱臭油(RBD油)から出発し、アセトンを用いる低温分留を行って濃縮物を提供する工程を包含する。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国出願第12/163,555号を参照のこと。DHA産物を生成するためのこの濃縮物は、塩基触媒エステル交換、蒸留およびシリカ脱不純物により入手され得る。
【0097】
上記のように、脂肪酸の純度レベルを決定する方法は当技術分野で公知であり、例えば、クロマトグラフィー法、例えば、HPLC銀イオンクロマトグラフィーカラムが含まれ得る。あるいは、純度レベルは、DHAから対応するアルキルエステルへの変換を行うまたは行わないガスクロマトグラフィーによって決定され得る。脂肪酸の比率はまた、脂肪酸メチルエステル(FAME)分析によって決定され得る。
【0098】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、追加の脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「脂質」には、リン脂質(PL);遊離脂肪酸;脂肪酸のエステル;トリアシルグリセロール(TAG);ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;ホスファチド;ワックス(アルコールと脂肪酸のエステル);ステロールおよびステロールエステル;カロテノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド);炭化水素;ならびに当業者に公知のその他の脂質が含まれる。脂質は、DHAと組み合わせて投与された場合に、最小限の健康副作用しか有さないまたはDHAの効能に最小限の影響しか及さないように選択され得る。
【0099】
いくつかの態様において、DHAの組成物は、追加の不飽和脂質を含み得る。いくつかの態様において、不飽和脂質は、多価不飽和脂質、例えば別のオメガ-3脂肪酸またはオメガ-6脂肪酸である。組成物において使用され得る例示的なオメガ-6脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(DPA)であり、これにはDPAn-6またはDPAn-3が含まれる。
【0100】
いくつかの態様において、剤形は、以下の脂肪酸の一つまたはそれ以上を0.1%〜20%含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)DPA n-3(22:5, n-3);(k)DPA n-6(22:5, n-6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。いくつかの態様において、剤形は、以下の脂肪酸の一つまたはそれ以上を1%〜5%含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)DPA n-3(22:5, n-3);(k)DPA n-6(22:5, n-6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。いくつかの態様において、剤形は、以下の脂肪酸の各々を1%未満含む:(a)カプリン酸;(b)ラウリン酸;(c)ミリスチン酸;(d)パルミチン酸;(e)パルミトレイン酸;(f)ステアリン酸;(g)オレイン酸;(h)リノール酸;(i)α-リノレン酸;(j)ドコサペンタエン酸 22:5n-3、22:5w3(DPAn-3);(k)ドコサペンタエン酸 22:5n-6、22:5w6(DPAn-6);および(l)4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)。
【0101】
いくつかの態様において、DHA組成物はDHASCO(登録商標)を含み得る。DHASCO(登録商標)は、多量のドコサヘキサエン酸(DHA)を含有するクリプテコディニウム・コーニーから得られた油であり、より詳細には、総脂肪酸の百分率として、これらの脂肪酸を以下のおおよその例示の量で含む:ミリスチン酸(14:0)10〜20%;パルミチン酸(16:0)10〜20%;パルミトレイン酸(16:1)0〜2%;ステアリン酸(18:0)0〜2%;オレイン酸(18:1)10〜30%;リノール酸(18:2)0〜5%;アラキドン酸(20:0)0〜1%;ベヘン酸(22:0)0〜1%;ドコサペンタエン酸(22:5)0〜1%;ドコサヘキサエン酸(22:6)(DHA)40〜45%;ネルボン酸(24:1)0〜2%;およびその他0〜3%。DHASCOの組成は、Kyle et al.による米国特許第5,397,591号、Kyle et al.による米国特許第5,407,957号、Kyle et al.による米国特許第5,492,938号、およびKyle et al.による米国特許第5,711,983号にも記載されており;これらは参照により本明細書に組み入れられる。当業者に理解されていることであるが、様々な成分の含有量は、製造プロセスにおけるばらつきに起因して変化し得るものであり、DHA含有量のばらつきは、総脂肪酸含有量の約40〜50wt%であり得る。いくつかの態様において、DPAn-6対EPA比は約6:1〜約7:1 wt/wtであり、DHA対DPAn-6比は約2:1〜約3:1 wt/wtである。
【0102】
あるいは、いくつかの態様において、DHA組成物は、多量のDHAを含有しドコサペンタエン酸(n-6)(DPAn-6)も含有するヤブレツボカビ科のシゾキトリウム種から得られた油であるLife's DHA(商標)(公式にはDHA(商標)-SおよびDHASCO(登録商標)-Sとしても参照される)を含み得る。より詳細には、DHA(商標)-Sは、総脂肪酸の百分率として、これらの脂肪酸を以下のおおよその例示の量で含む:ミリスチン酸(14:0)8.71%;パルミチン酸(16:0)22.15%;ステアリン酸(18:0)0.66%;リノール酸(18:2)0.46%;アラキドン酸(20:4)0.52%;エイコサペンタエン酸(20:5, n-3)1.36%;ドコサペンタエン酸(22:5, n-6)(DPAn-6)16.28%;ドコサヘキサエン酸(DHA)(22:6, n-3)41.14%;およびその他8%。DHASCO(登録商標)-Sの特徴は、参照により本明細書に組み入れられるRyan et al., Amer. J. Therapeutics 16: 183-192 (2009)にも記載されている。当業者に理解されていることであるが、様々な成分の含有量は、製造プロセスにおけるばらつきに起因して変化し得るものであり、DHA含有量のばらつきは、総脂肪酸含有量の約40〜50wt%であり得る。DHAアルキルエステルは、参照により本明細書に組み入れられる、2009年10月1日出願の米国出願第12/572,263号にも記載されている。DHAアルキルエステルは、当技術分野で公知の技術、例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,395,778号の技術により調製され得る。
【0103】
いくつかの態様において、組成物は、クリプテコディニウム・コーニーから得られた、エチルエステルの形態のDHAを含み、このエステルは組成物の総脂肪酸含有量の約89wt%である。より詳細には、組成物は、重量で、以下の脂肪酸エステル(すなわちエチルエステル)を以下の例示の量で含む:ドコサヘキサエン酸(22:6 w3)89%;ミリスチン酸(14:0)0.1%;パルミチン酸(16:0)0.48%;パルミトレイン酸(16:1 w7)0.39%;オレイン酸(18:1 w9)3.9%;ドコサペンタエン酸(22:5 w3)1.26%;オクタコサオクタエン酸(28:8 w3)0.87%;テトラコサエン酸(24:1 w9)0.29%;およびその他4.87%。EPAは、公知のEPA測定法によっては検出可能でない。当業者に理解されていることであるが、様々な成分の含有量は、製造プロセスにおけるばらつきに起因して変化し得るものであり、DHAエチルエステル含有量のばらつきは、総脂肪酸含有量の85〜96wt%であり得る。
【0104】
いくつかの態様において、剤形は、総遊離脂肪酸含有量の重量パーセントで測定すると、約35〜65%、40〜55%、35〜57%または57〜65%のDHA(22:6 n-3);約0〜2%のカプリン酸(10:0)、約0〜6%のラウリン酸(12:0);約10〜20%のミリスチン酸(14:0);約5〜15%のパルミチン酸(16:0);約0〜5%のパルミトレイン酸(16:1);約0〜2%のステアリン酸(18:0);約5〜20%または5〜25%のオレイン酸(18:1);約0〜2%のリノール酸(18:2);ならびに約0〜2%のネルボン酸(24:1n-9)を含む。特定の態様において、そのような油は、ヤブレツボカビ属の微生物由来である。他の態様において、遊離脂肪酸含有量は0.4%未満である。いくつかの態様において、剤形は、総遊離脂肪酸含有量の重量パーセントで測定すると、約35〜45%のDHA(22:6n-3);約0〜2%のラウリン酸(12:0);約5〜10%のミリスチン酸(14:0);約5〜20%のパルミチン酸(16:0);約0〜5%のパルミトレイン酸(16:1);約0〜5%のステアリン酸(18:0);約0〜5%のバクセン酸またはオレイン酸(それぞれ、18:1 n-7およびn-9);約0〜2%のリノール酸(18:2, n-6);約0〜5%のステアリドン酸(18:4 n-3);約0〜10%の20:4 n-3、n-5またはn-6;約0〜2%のアドレン酸22:4 n-6;約0〜5%のDPAn-3(22:5);約10〜25%のDPAn-6(22:5);ならびに0〜2%の24:0を含む。いくつかの態様において、そのような油は、シゾキトリウム属の微生物由来である。
【0105】
例示的なシゾキトリウム種から得られたDHA(トリグリセリド)含有油は、表4に列挙される特定量の成分により特徴付けられ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0106】
(表4)

【0107】
いくつかの態様において、DHA含有組成物は、少なくとも約40wt%のDHAおよび少なくとも約0.1wt%の4,7,10,13,16,19,22,25オクタコサオクタエン酸(C28:8)を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸の百分率で、少なくとも約55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65wt%のDHAを、場合によりトリグリセリド形態で含む。他の態様において、組成物は、総脂肪酸の百分率で、少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%のDHAを、場合によりエチルエステル形態で含む。特定の態様において、組成物中のC28:8の量は、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5wt%であり得る。C28:8は、トリグリセリドまたはエステル形態を含む任意の形態で存在し得る。例えば、C28:8は、エチルエステル形態で存在し得る。特定の態様において、組成物は、DHA、C28:8およびDPAn-3の3つすべてを上記の濃度範囲で含む。
【0108】
本発明はまた、少なくとも約40wt%のDHAおよび少なくとも約0.1wt%のDPAn-3を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、総脂肪酸の百分率で、少なくとも約55、56、57、58、69、60、61、62、63、64、65wt%のDHAを、場合によりトリグリセリド形態で含む。他の態様において、組成物は、総脂肪酸の百分率で、少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%のDHAを、場合によりエチルエステル形態で含む。特定の態様において、組成物中のDPAn-3の量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0wt%のDPAn-3であり得る。DPAn-3は、トリグリセリドまたはエステル形態で存在し得る。例えば、DPAn-3は、エチルエステル形態で存在し得る。
【0109】
特定の態様において、組成物は、DHA、C28:8およびDPAn-3の3つすべてを上記の濃度範囲で含む。
【0110】
さらなる態様において、組成物は、DHAおよびC28:8に加えて、約1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1wt%未満のEPAを含み得る。一つの態様において、組成物は、約0.25wt%未満のEPAを含み得る。EPAは、トリグリセリドまたはエステル形態を含む任意の形態で存在し得る。いくつかの態様において、組成物は、0wt%のEPAを含み得る。
【0111】
本発明はまた、少なくとも約90wt%のDHAおよび少なくとも一つの追加の脂肪酸またはそれらの誘導体を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物中のDHAの量は、少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%であり得る。特定の態様において、追加の脂肪酸は、0.8 mmHg圧の下で約150〜170℃の沸点を有し得る。
【0112】
DHAがエチルエステルを含む、クリプテコディニウム・コーニーの藻油から得られた例示的なDHA含有油は、表5に列挙される特定量の成分により特徴付けることができ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0113】
(表5)

ND=検出可能でない
【0114】
いくつかの態様において、油は、総脂肪酸含有量のwt%で表される、一つまたはそれ以上の以下の脂肪酸(またはそれらのエステル)により特徴付けられる。本明細書に提供される態様はさらに、約12%もしくはそれ未満または約6%〜約12%(wt/wt)のミリスチン酸(C14:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約28%もしくはそれ未満または約18%〜約28%(wt/wt)のパルミチン酸(C16:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のステアリン酸(C18:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約8%またはそれ未満(wt/wt)のオレイン酸(C18:1n-9)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のリノール酸(C18:2)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のアラキドン酸(C20:4)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約3%またはそれ未満(wt/wt)のエイコサペンタエン酸(C20:5)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約18%もしくはそれ未満または約12%〜約18%(wt/wt)のドコサペンタエン酸(22:5n-6)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約10%またはそれ未満(wt/wt)の他の脂肪酸を含み得る。これらの態様のいくつかにおいて、DHAのwt%対DPAn-6のwt%の比は、約2.5〜約2.7である。前出の特徴を有する油は、Martek Biosciences, Columbia, MD製のLife's DHA(商標)(公式にはDHA(商標)-SおよびDHASCO(登録商標)-Sとしても参照される)を含み得、これは多量のDHAを含有しかつドコサペンタエン酸(n-6)(DPAn-6)も含有する、ヤブレツボカビ科のシゾキトリウム種から得られた油である。
【0115】
本発明はさらに、少なくとも約70wt%のDHAおよび少なくとも約15、20または25wt%のDPAn-6を含む組成物を包含する。
【0116】
本発明の組成物はまた、DPAn-6およびDHAの組み合わせを少なくとも約90wt%含む組成物を包含する。特定の態様において、組成物は、DPAn-6およびDHAの組み合わせを少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%含み得る。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも約10wt%のDHAおよび少なくとも約10wt%のDPAn-6を含み得る。他の態様において、組成物は、少なくとも約15または20wt%のDHAおよび少なくとも約15または20wt%のDPAn-6を含み得る。
【0117】
本発明はまた、DPAn-6およびDHAの組み合わせを少なくとも約90wt%、ならびに少なくとも一つの追加の脂肪酸またはそれらの誘導体、例えばエステルを含む組成物を提供する。特定の態様において、組成物は、DPAn-6およびDHAの組み合わせを少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98または99wt%含み得る。いくつかの態様において、追加の脂肪酸は、0.8 mmHg圧の下で約150〜170℃の沸点を有し得る。
【0118】
上記のDHA/DPAn-6組成物はさらに、約4%未満の飽和脂肪酸またはそれらのエステルを含み得る。特定の態様において、組成物は、約3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%または0.5%未満の飽和脂肪酸またはそれらの誘導体を含み得る。
【0119】
油中のDHAは、ヤブレツボカビ科のシゾキトリウム種から得られた藻油から調製されたDHAエステル、好ましくはアルキルエステル、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはそれらの組み合わせ、の形態であり得る。例示的なシゾキトリウム種から得られたDHA(エチルエステル)含有油は、参照により本明細書に組み入れられるWO 2009/006317の表4に列挙される特定量の成分により特徴付けられる。これらの態様のいくつかにおいて、油は、油または単位用量の総脂肪酸含有量の約57%(wt/wt)超、特に約70%(wt/wt)超のDHAを含む。これらの態様のいくつかにおいて、DHAのwt%対DPAn-6のwt%の比は、約2.5〜約2.7である。
【0120】
いくつかの態様において、組成物または油は、総脂肪酸含有量のwt%で表される、一つまたはそれ以上の以下の脂肪酸(またはそれらのエステル、特にエチルエステル)により特徴付けられる。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のラウリン酸(C12:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約2%またはそれ未満(wt/wt)のミリスチン酸(C14:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のミリストレイン酸(C14:1)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約1%またはそれ未満のパルミチン酸(C16:0)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約1%またはそれ未満(wt/wt)のリノール酸(C18:2)(n-6)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約3%またはそれ未満(wt/wt)のジホモガンマリノレン酸(C20:3)(n-6)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約0.5%またはそれ未満(wt/wt)のエイコサトリエン酸(C20:3)(n-3)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約1%またはそれ未満(wt/wt)のアラキドン酸(C20:4)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約3%またはそれ未満(wt/wt)のエイコサペンタエン酸(C20:5)(n-3)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約3%またはそれ未満(wt/wt)のドコサトリエン酸(22:3)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約27%またはそれ未満(wt/wt)のドコサペンタエン酸(22:5)(n-6)を含み得る。本明細書に提供される態様はさらに、約10%またはそれ未満(wt/wt)の他の成分を含み得る。これらの態様のいくつかにおいて、DHAのwt%対DPAn-6のwt%の比は、約2.5〜約2.7である。前出の特徴を有する油は、ヤブレツボカビ科のシゾキトリウム種の油から得られたエチルエステル油を含み得る。
【0121】
いくつかの態様において、別の例示的なDHA(遊離脂肪酸)含有油は、表6に列挙される(エチルエステルとしての)特定量の成分により特徴付けられ、同表において「最大」は、その成分の量がその特定量まで存在し得ることをさす。
【0122】
(表6)

【0123】
いくつかの態様において、別の例示的なDHA(遊離脂肪酸)含有油は、表7に列挙される特定量の成分により特徴付けられる。
【0124】
(表7)

【0125】
いくつかの態様において、飽和脂肪酸またはそれらのエステルは、20個未満の炭素を含有し得る、例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9または8個の炭素を含有する飽和脂肪酸またはそれらのエステルであり得る。特定の態様において、飽和脂肪酸またはそれらのエステルは、14または16個の炭素を含有し得る。
【0126】
いくつかの態様において、DHAの組成物はさらに、ビタミンEを含み得る。ビタミンE群の化合物は、抗酸化性を有する脂溶性ビタミンであり、8つの関連するα-、β-、γ-およびδ-トコフェロールおよびそれに対応する4つのトコトリエノールを含む。いくつかの態様において、組成物中のビタミンEは、トコフェロールである。いくつかの態様において、トコフェロールは、α-、β-、γ-およびδ-トコフェロールから選択されるかまたはそれらの組み合わせである。
【0127】
本明細書で使用される場合、対象は、外傷性脳損傷に罹患する危険のあるヒト対象をさす。患者は、現在または将来のある時点で、軽度、中等度および重度の形態の閉鎖性脳損傷または穿通性脳損傷を含む外傷性脳損傷に罹患する危険のある患者であり得る。
【0128】
本発明の態様において、DHAの組成物は、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するための有効量で投与される。本明細書で使用される場合、「病理学的影響の危険を軽減する」は、その目的が、望ましくない生理学的状態もしくは障害を処置するもしくは和らげることまたは対象がその状態もしくは障害に苦しんでいる場合は有益もしくは望ましい臨床的結果を得ることである、予防的治療的処置をさす。本発明の目的上、有益または望ましい臨床的結果には、外傷性脳損傷に関連する症状の軽減もしくは緩和;外傷性脳損傷に関連する状態の程度の縮小;検出可能であるか検出不可能であるかによらず、外傷性脳損傷の状態もしくは障害の軽減もしくは緩和;または外傷性脳損傷に関連する状態もしくは障害の向上もしくは改善、が含まれるがこれらに限定されない。予防的処置には、処置を受けない場合の予想寿命と比較して寿命を延ばすことも含まれる。
【0129】
本発明の目的上、DHAの組成物は、外傷性脳損傷の病理学的影響を患う危険を軽減するための予防有効量で投与される。本明細書で使用される場合、「予防有効量」は、外傷性脳損傷の病理学的影響を軽減する上で所望の治療的反応を達成するのに有効なDHA量をさす。DHAの予防有効量は、個人の年齢、性別および体重等の要因により変化し得るものである。予防有効量のDHAの投与は、外傷性脳損傷に罹患した対象に対して治療的利益を提供するのに十分な、頻度および期間に幅のある、様々な投与計画を用いて達成され得る。いくつかの態様において、DHAの投与は、連続する日数の間毎日であるか、あるいは、剤形は一日おき(二日ごと)に投与される。投与は、一日またはそれ以上の日数行われる場合がある。
【0130】
いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、十分な期間、対象に投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約28日間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約6週間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約2ヶ月間投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約6週間〜約6ヶ月間、少なくとも約2〜約6ヶ月間、または少なくとも約4ヶ月間〜約6ヶ月間、対象に投与される。いくつかの態様において、予防有効量のDHAは、外傷性脳損傷の危険に関連する活動への予想される参加の前に、少なくとも約2〜約4ヶ月間、対象に投与される。
【0131】
本明細書で使用される場合、「1日用量」、「1日投薬レベル」、「1日投薬量」または「1日投薬あたり」は、1日(約24時間の期間)あたりに投与される(例えば、遊離脂肪酸、アルキルエステルまたはトリグリセリドの形態の)DHAの総量をさす。例えば、1日あたり2gの用量のDHAの対象への投与は、DHAが2 gのDHAを含む単一剤形として投与されるかあるいは各々500 mgのDHAを含む4個の剤形(合計2 gのDHA)として投与されるかによらず、その対象が1日基準で合計2gのDHAを受け取ることを意味する。DHAの組成物は、1日あたり1回の適用または複数回の適用により摂取され得る。例えば、各カプセルが500 mgのDHAを含む4個のカプセルを毎日摂取する場合、4個すべてのカプセルを1日あたり1回摂取することもできるし、2個のカプセルを1日あたり2回摂取することもできるし、1個のカプセルを6時間ごとに摂取することもできる。いくつかの態様において、DHAを含有する組成物は、1日あたり少なくとも1回(例えば単一剤形を毎日)または1日あたり少なくとも2回(例えば、2つまたはそれ以上の剤形を毎日)投与される。いくつかの態様において、DHAは、1週間に少なくとも2回投与される。
【0132】
いくつかの態様において、DHAは、約4 mg/kg体重/日〜約85 mg/kg体重/日の量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、約4 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日;約5 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日、約10 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日、約20 mg/kg体重/日〜約60 mg/kg体重/日;約10 mg/kg体重/日〜約40 mg/kg体重/日;または約20 mg/kg体重/日〜約40 mg/kg体重/日の量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、約40 mg/kg体重/日の量で投与される。
【0133】
いくつかの態様において、DHAは、1日あたり約300 mg〜約6 g;1日あたり約0.5 g〜1日あたり約6 g;1日あたり約1 g〜1日あたり6 g;または1日あたり約2 g〜1日あたり6 g DHAの量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、1日あたり約300 mg〜約5 g、1日あたり約0.5 g〜1日あたり約5 g;1日あたり約1 g〜1日あたり約5 g、または1日あたり2 g〜1日あたり約5 g DHAの量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、1日あたり約300 mg〜約4 g、1日あたり約0.5 g〜1日あたり約4 g、1日あたり約1 g〜1日あたり約4 g、または1日あたり約2 g〜1日あたり約4 g DHAの量で投与される。
【0134】
いくつかの態様において、DHAは、1日あたり体重1 kgあたり約1.5 mg〜1日あたり体重1 kgあたり約125 mgの量で投与される。いくつかの態様において、DHAは、1日あたり約150 mg〜約10 g;1日あたり約0.5 g〜1日あたり約5 g;または1日あたり約1 g〜1日あたり約5 gの量で投与される。
【0135】
いくつかの態様において、投与されるDHAの1日量は、1日あたり約200 mg、400 mg、450 mg、500 mg、520 mg、540 mg、600 mg、700 mg、800 mg、900 mg、1 g、1.5 g、1.8 g、2.0 g、2.5 g、2.7 g、3.0 g、3.2 g、3.3 g、3.4 g、3.5 g、3.6 g、3.7 g、3.8 g、3.9 g、4.0 g、4.5 g、5.0 g、6.0 g、6.5 g、7 g、8 g、9 gまたは10 g DHAを含む。いくつかの態様において、DHAは、1日あたり少なくとも約1 gの量で投与される。
【0136】
いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約860 mg〜約6 gまで、特に約1.7 g〜約6 gまで、約2.6 g〜約6 gまで、特に約3.4 g〜約6 gまで、特に約4.3 g〜約6 g、特に約5.1 g〜約6 gの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約860 mg〜約4 gまで、特に約1.7 g〜約4 gまで、約2.6 g〜約4 gまで、特に約3.4 g〜約4 gまでの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約860 mg〜約1 gまで、特に約860 mg〜約950 mgまでの範囲である。いくつかの態様において、投与されるDHAの1日用量は、約1.7 g〜約2 gまで、特に約1.7 g〜約1.8 gまでの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約2.6 g〜約3 gまで、特に約2.6 g〜約2.8 gまでの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約3.4 g〜約4 gまで、特に約3.4 g〜約3.8 gまでの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約4.3〜約5 g、特に約4.3 g〜約4.8 gの範囲である。いくつかの態様において、ヒト対象に投与されるDHAの1日用量は、約5.1〜約6 g、特に約5.1〜約5.7 gの範囲である。
【0137】
いくつかの態様において、1日用量は単位用量として提供される。
【0138】
いくつかの態様において、投与されるDHAの量は、1日あたり約300 mg、400 mg、450 mg、500 mg、520 mg、540 mg、600 mg、700 mg、800 mg、900 mg、1 g、1.5 g、1.8 g、2.0 g、2.5 g、3.0 g、3.5 g、4.0 g、5.0 gまたは6.0 gのDHAを含む。いくつかの態様において、DHAは、1日あたり約2 gの量で投与される。
【0139】
いくつかの態様において、様々な量のDHAが剤形中に存在し得る。いくつかの態様において、剤形は、約5 g未満のDHA、約100 mg〜約3.8 gのDHA、約200 mg〜約3.6 gのDHA、約500 mg〜約4.0 gのDHA、または約1 g〜約2.0 gのDHAを含む。いくつかの態様において、剤形は、約4 g未満のDHA、約200 mg〜約3.9 gのDHA、約500 mg〜約3.7 gのDHA、約750 mg〜約3.5 gのDHA、または約1 g〜約2 gのDHAを含む。いくつかの態様において、DHAの剤形は、約3.8 g未満のDHA、約900 mg〜約3.6 gのDHA、または約1.8 g〜約2.7 gのDHAである。いくつかの態様において、DHAの剤形は、約200 mg、400 mg、450 mg、500 mg、900 mg、1 g、1.5 g、1.8 g、2.0 g、2.5 g、2.7 g、3.0 g、3.2 g、3.3 g、3.4 g、3.5 g、3.6 g、3.7 g、3.8 g、3.9 g、4.0 g、4.5 g、5.0 g、6.0 g、6.5 g、7 g、8 g、9 gまたは10 gのDHAを含む。
【0140】
DHAの投与は、様々な投与計画を用いて達成され得る。例えば、いくつかの態様において、DHAの投与は、連続する日数、毎日であるか、あるいは、剤形は一日おき(二日ごと)に投与される。投与は、一日またはそれ以上の日数行われる場合がある。例えば、いくつかの態様において、DHAは、対象の生涯を通して毎日、または1年〜20年もしくは5年〜10年投与される。いくつかの態様において、DHA剤形の投与は、7、14、21または28日間行われる。いくつかの態様において、DHAは、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも1.5年間、少なくとも2年間または少なくとも5年間投与される。いくつかの態様において、DHAの投与は、専門医によって決定された標的に対して、認知症またはADの症状、例えば認知能力の喪失が制止または軽減されるまで行われる。
【0141】
いくつかの態様において、DHAは継続的に投与される。用語「継続的」、「連続的」は、本明細書で「投与」に対して使用される場合、投与頻度が少なくとも1日1回であることを意味する。しかし、投与頻度は、本明細書で特定される投薬レベルが達成される限り、1日1回以上であっても「継続的」、「連続的」であり得、例えば、1日2回さらには3回または4回であり得ることに注意されたい。
【0142】
いくつかの態様において、投与されるDHAの量は、DHA含有組成物の投与により達成可能な最大の脳リン脂質中DHA量をもたらす量である。いくつかの態様において、DHA組成物は、総脳リン脂質の少なくとも約15wt%の脳リン脂質画分中DHA量を達成するよう投与される。いくつかの態様において、DHA組成物は、総脳リン脂質含有量の約15〜22wt%の脳リン脂質画分中DHA量を達成するよう投与される。いくつかの態様において、DHA組成物は、総脳リン脂質含有量の約18〜20wt%の脳リン脂質画分中DHA量を達成するよう投与される。脳リン脂質画分における指定のDHAレベルを達成するのに必要とされるDHAの投与量および投与期間は、当業者により決定され得ることである。いくつかの態様において、DHAを含む組成物は、脳リン脂質中に存在する最大DHA量を達成するために1日あたり約2 g〜1日あたり4 gのDHA用量を提供するよう投与される。
【0143】
処置の効能は、当技術分野で一般に受け入れられている外傷性脳損傷の重篤度を決定する方法、例えば、脳内での骨折および血液流出の証拠(出血)、大きな血餅(血腫)、打撲を受けた脳組織(脳挫傷)ならびに脳組織の腫脹を可視化するコンピューター断層(CAT)走査法;脳内での小さな出血を検出する高感度法である磁化率強調画像法(SWI)および直交方向に設定された拡散傾斜による最小6つの走査からなる拡散テンソル画像法(DTI)を含む磁気共鳴画像法(MRI)、を含む脳画像化技術を用いて評価され得る。いくつかの態様において、外傷性脳損傷は、脳の腫脹により生じ得る頭蓋内圧を測定することによって評価され得る。
【0144】
神経行動学的な、特に認知に関連する問題は、外傷性脳損傷の主要な影響であることから、認知機能を評価するのに使用される様々な方法が、予防的処置の効能を評価するのに使用することができる。そのような評価法には、特に、以下のものが含まれる:通常の加齢から軽度の認知機能障害そして全認知症重篤度ステージにいたる連続評価段階に沿って認知機能障害を分類する認知症ステージ分類手段である、臨床的認知症尺度(CDR);一般に使用されている見当識および総合認知機能の評価法であり、医師および医療介護提供者が認知力低下をスクリーンするのに使用する、フォルスタインミニメンタルステート検査(MMSE);ならびに認知症およびMCIを検出するのに反復測定設定で一般に使用されている試験である、アルツハイマー病評価尺度・認知機能検査(ADAS-C)。
【0145】
外傷性脳損傷由来の認知機能障害を評価するさらなる方法には、特に、様々な神経心理学試験、例えば以下のものが含まれ得る:単語の発音の測定法であり、信頼性のある一般知的機能の発病前予測手段であるウェクスラー成人読解試験(Wechsler Test of Adult Reading; WTAR);一般知的機能を測定するのに使用される、ウェクスラー成人知能尺度3(Wechsler Adult Intelligence Scale-3; WAIS-3)-カウフマン4要素略式版(Kaufman tetrad short form);記憶、注意、言語および空間視覚/構成機能を含む複数領域の神経認知機能の、包括的であるが比較的迅速な、標準化された測定法である、反復可能神経心理学的評価バッテリー(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status; RBANS);広く使用されている認知処理および視覚運動速度の測定法であり、B部と共に以前からMCIの研究にも使用されている、トレイルメイキングテストA部(Trails A);精神的柔軟性および作業記憶に関連する実行要求を用いる複雑な認知処理測定法である、トレイルメイキングテストB部(Trails B);認知症の評価およびMCIの研究に慣用的に使用されている、認知速度低下および実行機能の機能障害を検出する周知の音素統制下言語流暢性測定法である、統制発語連合検査(Controlled Oral Word Association Test; COWAT);軽度の認知機能障害または初期認知症を有する老齢集団における認知衰退の一般的な特徴である名称失語または換語困難を検出するのに利用される視覚対面物呼称測定法である、ボストン呼称検査(Boston Naming Test; BNT);注意および集中、反応時間、作業記憶、新規学習および記憶、ならびに情報処理速度を含む、脳振盪後の変化に敏感であることが知られている様々な認知領域を評価するよう設計されたコンピューター検査である、自動神経心理学的評価マトリクス(Automated Neuropsychological Assesment Metrics; ANAM);ならびに身体機能、身体的健康が原因の日常役割制限、体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、感情的問題が原因の日常役割制限および心の健康を含む、8つの健康領域を測定する、SF-36。
【0146】
いくつかの態様において、対象はヒトであり、そして、外傷性脳損傷イベントの前に、長期間、例えば1ヶ月〜3ヶ月間、本明細書に記載されるDHAを含む組成物を約5 mg/kg/日〜約40 mg/kg/日の範囲で投与される。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、神経炎症系の副作用を和らげ、かつ、軽度〜中等度/重度の脳損傷、特に、脳に対する穿通性の創傷および「過剰な」構造的ダメージがない脳損傷後の正常な脳機能を支援する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、脳損傷後の神経細胞における正常なエネルギー代謝を支援する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、軽度〜中等度の脳損傷後の神経細胞および神経軸索の構造統合性および機能を維持および/または改善する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、軽度〜中等度の脳損傷後の神経細胞の生存および機能を支援する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、白質統合性および最適な(例えば、正常な)神経伝達を支援する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、損傷後の正常な認知機能を促進する。いくつかの態様において、外傷性脳損傷イベント前のDHAを含む組成物の投与は、損傷後の正常な記憶および学習機能を支援する。
【0147】
DHAの組成物は、薬学的に許容できる剤形として処方され得る。「薬学的に許容できる」は、適当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに適しており、過度の毒性またはその他の合併症を生じず、合理的な利益/危険比の釣り合いがとれている組成物をさす。いくつかの態様において、本発明の化合物(例えばDHA)、組成物および剤形は、薬学的に許容できるものである。これらの剤形には、錠剤(チュアブル錠、速溶錠、発泡錠、多層および二層錠を含む)、カプセル(軟質および硬質ゼラチンカプセルを含む)、カプレット、カシェー、ロゼンジ(チュアブルロゼンジを含む)、ビーズ、ペレット、乳液、液剤、丸剤、ジェルキャップ、エリキシル、粉末(再構成用粉末を含む)、顆粒ならびに分散顆粒;ならびに本願で提供される有効量のDHAを含む溶液、懸濁物、乳液、粒子、微粒子、被覆粒子および乾燥粉末を含むがこれらに限定されない非経口用剤形、が含まれ得るがこれらに限定されない。様々な粒子被覆物質が当技術分野で公知であり、それらには、セルロース誘導体、例えば微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;ポリアルキレングリコール誘導体、例えばポリエチレングリコール;タルク、デンプン、メタクリレート等が含まれる。いくつかの態様において、剤形は、DHAを含む溶液、懸濁物または乳液で充填されたカプセルである。そのような処方物において活性成分が薬学的に許容できる賦形剤、例えば希釈剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、保湿剤(humectants)、保湿クリーム(moisturizers)、溶解剤、保存剤、香味剤、矯味剤、甘味剤等と合わせて含まれ得ることも当技術分野で公知である。適当な賦形剤には、例えば、植物油(例えばコーン、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリまたはキャノーラ油)が含まれ得る。いくつかの態様において、保存剤は、抗酸化剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、チオグリセロール、チオソルビトール、塩酸システイン、トコフェロールおよびそれらの組み合わせであり得る。投与の手段および方法は当技術分野で公知であり、当業者はその手引きとして様々な薬理学分野の参考文献を参照することができる。例えば、"Modern Pharmaceutics", Banker & Rhodes, Informa Healthcare, 4th ed. (2002);および"Goodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis o/Therapeutics", McGraw-Hill, New York, 10th ed. (2001)を閲覧することができる。
【0148】
いくつかの態様において、米国公報第2006/0094654号および2004年11月29日に電子的に発表されたBelayev et al., Stroke 36: 118-23 (2005)に記載されるようなDHAとアルブミンの複合体は、外傷性脳損傷の処置における投与のためのDHA含有組成物から個別に除外される。
【0149】
DHAの投与は、経口経路によるものでも非経口経路(例えば、皮下、静脈内(ボーラスもしくは注入)、筋内または腹腔内)によるものでもよい。いくつかの態様において、異なる投与経路の組み合わせが使用され得る。異なる経路により投与される場合、投与は同時にまたは逐次的に実施され得る。例えば、DHAの組成物は、慢性投与(例えば、外傷性脳損傷の危険のある活動に参加する前の数週間、数ヶ月間)のために経口的に投与され、次いで、外傷性脳損傷の危険のある活動に参加する前に対象に非経口的に投与され得る。あるいは、DHAの組成物は、異なる経路を通じて、例えば非経口および経口経路を通じて、同時に投与され得る。これらの投与様式のための剤形には、液状の溶液もしくは懸濁物、注射前に液状の溶液もしくは懸濁物にするのに適した固形物の形態、または乳化物のいずれかの従来型の形態が含まれ得る。
【0150】
いくつかの態様において、投与経路は、経口投与によるものである。DHA組成物は、栄養補助品、食品、薬学的処方物または飲料品、特に食品、飲料品または栄養補助品、特に食品および飲料品、特に食品の形態で、対象に投与され得る。好ましい食品のタイプは、医療用食品(例えば、医師の外部からの指導の下で摂取および投与されるよう処方されている食品ならびに承認された科学的原理に基づく個々の栄養必要量が医学的評価により確立されている疾患または状態の個別の食事管理を目的とする食品)である。
【0151】
いくつかの態様において、剤形は、薬学的剤形である。「薬学的に許容できる」は、適当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに適しており、過度の毒性またはその他の合併症を生じず、合理的な利益/危険比の釣り合いがとれている組成物をさす。いくつかの態様において、本発明の化合物(例えばDHA)、組成物および剤形は、薬学的に許容できるものである。
【0152】
DHAは、剤形として処方され得る。これらの剤形には、錠剤、カプセル、カシェー、ペレット、丸剤、ゼラチンカプセル、粉末および顆粒;ならびに本願で教示される有効量のDHAを含む溶液、懸濁物、乳液、被覆粒子および乾燥粉末を含むがこれらに限定されない非経口用剤形、が含まれ得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、剤形は、食用品に挿入または混合され得る。様々な粒子被覆物質が当技術分野で公知であり、それらには、セルロース誘導体、例えば微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;ポリアルキレングリコール誘導体、例えばポリエチレングリコール;タルク、デンプン、メタクリレート等が含まれる。いくつかの態様において、剤形は、DHAを含む溶液、懸濁物または乳液で充填されたカプセルである。そのような処方物において活性成分が薬学的に許容できる賦形剤、例えば希釈剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、保湿剤、保湿クリーム、溶解剤、保存剤、香味剤、矯味剤、甘味剤等と合わせて含まれ得ることも当技術分野で公知である。適当な賦形剤には、例えば、植物油(例えばコーン、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリまたはキャノーラ油)が含まれ得る。いくつかの態様において、保存剤は、抗酸化剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、チオグリセロール、チオソルビトール、塩酸システイン、トコフェロールおよびそれらの組み合わせであり得る。投与の手段および方法は当技術分野で公知であり、当業者はその手引きとして様々な薬理学分野の参考文献を参照することができる。例えば、"Modern Pharmaceutics", Banker & Rhodes, Informa Healthcare, 4th ed. (2002);"Goodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics", McGraw-Hill, New York, 10th ed. (2001);およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., 2001を閲覧することができる。
【0153】
本発明のDHAは経口的に有効であり、この投与経路が本明細書に記載の方法に使用できる。したがって、投与形態には、DHAおよび一つまたはそれ以上の適当な薬学的に許容できる担体を含む錠剤、ドラジェ、カプセル、カプレット、ゼラチンカプセルおよび丸剤が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0154】
経口投与用剤形には、DHAおよび一つまたはそれ以上の適当な薬学的に許容できる担体を含む錠剤、ドラジェ、カプセル、カプレット、ジェルキャップおよび丸剤が含まれ得るがこれらに限定されない。DHAは、これらの化合物を、当技術分野で周知の薬学的に許容できる担体と組み合わせることによって容易に処方され得る。このような担体は、DHAの組成物を、処置される対象による経口摂取用の錠剤、ジェルキャップ、丸剤、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物等として処方することを可能にする。いくつかの態様において、剤形は、錠剤、ジェルキャップ、丸剤またはカプレットである。経口用の薬学的調製物は、固形賦形剤を添加し、場合により得られる混合物を粉砕し、そして望ましい場合は適当な補助成分を添加した後に、錠剤またはドラジェのコアが得られるよう顆粒の混合物を処理することによって製造され得る。適当な賦形剤には、増量剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトールを含むがこれらに限定されない糖;トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等であるがこれらに限定されないセルロース調製物、植物油(例えばダイズ油)、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)が含まれるがこれらに限定されない。望ましい場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはそれらの塩、例えばアルギン酸ナトリウム等であるがこれらに限定されない崩壊剤が添加され得る。経口的に使用され得る薬学的調製物には、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセルおよびゼラチン(例えばブタまたはウシ由来のゼラチン)および可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで作られた軟質密閉カプセルが含まれるがこれらに限定されない。カプセルシェルは、非動物性成分、すなわち植物性成分、例えばカラギーナン、アルギン酸塩、加工デンプン、セルロースおよび/またはその他の多糖から構成され得る。特定の態様において、ゼラチンカプセルは、ブタ、ウシ、植物またはアルギン酸塩系のゼラチンカプセルであり得る。すべての経口投与用処方物は、そのような投与に適した投薬量とされるべきである。
【0155】
いくつかの態様において、剤形は、約200 mg〜約2 gのDHA量および薬学的に許容できる賦形剤を有するジェルキャップである。いくつかの態様において、ジェルキャップは、約200 mg、250 mg、300 mg、350 mg、400 mg、450 mg、500 mg、900 mg、1 g、1.5 gまたは2 gのDHA量および薬学的に許容できる賦形剤を有する。
【0156】
本発明の処方物は、上記の具体的に言及されている成分に加えて、その他の適当な薬剤、例えば香味剤、保存剤および抗酸化剤を含み得ることが理解されるべきである。特に、DHAの酸化を防止するために、微生物油に抗酸化剤を混合するのが望ましい。そのような抗酸化剤は薬学的に許容できるものであり、ビタミンE、カロテン、BHTまたは当業者に公知のその他の抗酸化剤が含まれ得る。
【0157】
いくつかの態様において、剤形は、栄養補給食品剤形である。用語「栄養補給食品」は、(1)医療的および/もしくは健康的な利益を提供する食物もしくは食事の一品目であるか、または(2)以下の食成分:ビタミン、ミネラル、ハーブもしくはその他の植物類、アミノ酸、1日の総摂取量を増やすことにより食事を補うために使用される食用物、もしくは医療的および/もしくは健康的な利益を提供するこれらの成分の濃縮物、代謝産物、構成成分、抽出物もしくは組み合わせの一つまたはそれ以上を保有または含有する食事の補助を目的とする製品である、任意の物質をさす。医療的および/または健康的な利益には、本明細書に記載される神経学的障害の危険の軽減が含まれ得る。
【0158】
いくつかの態様において、DHAは、補助食品、医療用食品または動物用飼料として提供され得る。「補助食品」は、動物またはヒトの食事を補うのに使用される化合物または組成物をさす。いくつかの態様において、補助食品はさらに、食事を補うことが意図されているさまざまな「食用成分」を含み得る。「食用成分」にはさらに、ビタミン、ミネラル、ハーブまたはその他の植物類、アミノ酸、ならびに酵素、器官組織、生物腺(glandular)および代謝産物等の物質が含まれ得る。食用成分には、抽出物または濃縮物も含まれ得る。いくつかの態様において、DHAの剤形は、補助食品として投与される。
【0159】
本発明はまた、約430 mg〜約6 gのドコサヘキサエン酸(DHA)から本質的になり、約1%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)および約2%未満のドコサペンタエン酸22:5n-6(DPAn-6)を含む経口用剤形の使用に関する。いくつかの態様において、経口用剤形は、単位剤形、特にゼラチンカプセルである。場合により、ゼラチンカプセルは、着色剤、香味剤および/または抗酸化剤も含む。
【0160】
本発明はまた、経口用剤形であって:(a)約200 mg〜約4 gのDHA、ここで、DHAは剤形の総脂肪酸含有量の約40%〜約99.5%(wt/wt)またはそれ以上である;および(b)薬学的に許容できる賦形剤、を含み、剤形は実質的にEPAフリーであり、DHA、例えばDHAアルキルエステルは藻類供給源から得られたものである、剤形の使用に関する。
【0161】
本発明は、ゼラチンカプセルを包含し、これは硬質または軟質ゼラチンカプセルである。いくつかの態様において、カプセル化材料は、ゼラチン、可塑剤および水を含む。特定の態様において、カプセル化材料は、植物性、すなわち、植物、海藻(例えばカラギーナン)、食品用デンプン、加工コーンデンプン、ジャガイモデンプンおよびタピオカを含む非動物性材料から製造されたものである。他の態様において、カプセル化材料は、ブタ、ウシおよび魚ベースの材料、例えばゼラチンを含む、動物から得られたものである。本発明の可塑剤には、グリセリン、グリセロール、ポリオールおよびそれらの混合物が含まれる。いくつかの態様において、可塑剤は、高沸点ポリオール、例えばグリセロールまたはソルビトールである。
【0162】
いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、ゼラチン、グリセロールおよび水から製造され、DHAおよび抗酸化剤が充填された、軟質ゼラチンカプセルである。特定の態様において、ゼラチンカプセルは、動物または植物由来である。いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは0.5 gの剤形を含み、剤形の充填重量は約450 mg〜約550 mgであり、ゼラチンカプセルは約430 mg〜約480 mgのDHAを含む。いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、500 mgの剤形あたり約450 mgのDHAを含む。いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、500 mgの剤形あたり約450 mgのDHAを含む。いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、1 gの剤形を含み、剤形の充填重量は約950 mg〜約1050 mgであり、ゼラチンカプセルは1000 mgの剤形あたり約860 mg〜約950 mgのDHAを含む。いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、1,000 gの剤形あたり約900 mgのDHAを含む。
【0163】
特定の態様において、ゼラチンカプセルは植物性である。いくつかの態様において、カプセル調製物は、動物生産物を含まず、かつ、グリセロール(および/またはその他のポリオール)、海藻抽出物(カラギーナン)および水を含む。いくつかの態様において、水は精製されたものである。いくつかの態様において、着色剤、香味剤および/または甘味剤が添加される。カプセル化の際、いくつかの態様において、分留ヤシ油が滑沢剤として使用される。
【0164】
いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、カプセル調製物、活性成分、ならびに場合により着色剤および/または抗酸化剤を含む。別の態様において、i)カプセル調製物は、ゼラチン(酸処理ウシ皮)、グリセリンおよび精製水を含み、ii)活性成分は、DHA-EEを含み、iii)任意成分の着色剤は、二酸化チタン、FD&Cイエロー#5、FD&Cレッド40およびそれらの組み合わせから選択され;そしてiv)抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビルである。いくつかの態様において、原材料はUSP原材料である。
【0165】
いくつかの態様において、ゼラチンカプセルは、表8に示される範囲の特性
を有する約1 gの軟質ゼラチンカプセルである。
【0166】
(表8)1g DHAエチルエステルゼラチンカプセルの特性

【0167】
表9に示されているのは、いくつかの態様において、DHA-EE軟質ゼラチンカプセルの製造に使用される成分および成分ごとの少なくとも一つの対応する機能の一覧である。
【0168】
(表9)1g DHAエチルエステル軟質ゼラチンカプセルの成分一覧

【0169】
本発明はまた、本明細書に記載される方法に従い投与される一個またはそれ以上の剤形を含むキットまたはパッケージに関する。キットまたはパッケージは、一個の剤形または一個以上の剤形(すなわち複数の剤形)を含み得る。キットまたはパッケージに複数の剤形が存在する場合、それらの複数の剤形は、場合により、逐次的投与のために並べられている。キットは、慢性的な状態を有し、本発明のDHAの長期的投与を必要とする対象に対して使い勝手のよい投与を提供するよう、十分な数の剤形を含み得る。例えば、いくつかの態様において、キットは、1、2、3または4ヶ月間のDHAの毎日の投与に十分な数の剤形を提供する。本発明のいくつかの態様において、キットは、それより短期間の投与用の剤形を含む、例えば、キットは、各剤形が約450 mg〜約12.05 gのDHAを含みかつ連日の摂取が意図されている、約7、14、21、28個またはそれ以上の経口投与用剤形を含み得る。
【0170】
キットは、場合により、当該キットの剤形に関する説明書を含み得る。そのような説明書は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式であり、その通知内容は、状態または障害を処置するためのヒトへの投与のための製造、使用または販売の当局による承認を反映するものであり得る。説明書は、本明細書に記載される方法に従うキットの剤形の使用に関する情報を伝達する任意の形式であり得る。非限定的な例として、説明書は、印刷物の形式、または記録済みのメディアデバイスの形式であり得る。
【0171】
対象を診察する過程で、医療専門家は、本明細書に記載される方法の一つに従うDHAの投与がその対象に適していることを決定することができ、または、担当医は、対象の状態が本明細書に記載される方法の一つに従うDHAの投与により改善できることを決定することができる。何らかのDHA投与計画を指示する前に、担当医は、例えば、その投与計画に関連する様々な危険および利益に関して、対象に助言することができる。対象には、投与計画に関連するすべての分かっているおよび疑いのある危険に関する完全な開示が提供され得る。そのような助言は、口頭でおよび書面の形式で提供され得る。いくつかの態様において、担当医は、投与計画に関する文献資料、例えば製品情報、教材等を対象に提供することができる。
【0172】
本発明はまた、神経学的障害を処置する方法に関して消費者を教育する方法であって、販売の時点で消費者情報と共にDHA剤形を流通させる方法に関する。いくつかの態様において、この流通は、薬剤師または医療介護提供者が立ち会う販売の時点で行われる。
【0173】
用語「消費者情報」には、英語文書、非英語文書、視覚映像、チャート、電話応答記録、ウェブサイトおよび現カスタマーサービス担当者へのアクセスが含まれ得るがこれらに限定されない。いくつかの態様において、消費者情報は、本明細書に記載される方法に従うDHA単位用量の使用、適当な年齢、使用、適応、禁忌、適当な投薬法、警告、電話番号およびウェブサイトアドレスに関する指示を提供する。いくつかの態様において、この方法はさらに、開示された本明細書に記載される方法に従う投与計画の利用に関する消費者からの質問に回答する立場にある関係者に対して専門情報を提供することを包含する。用語「専門情報」には、本発明の方法に従い投与される場合に医療専門家が消費者からの質問に回答できるようにする投与計画に関する情報が含まれるがこれらに限定されない。
【0174】
「医療専門家」には、例えば、担当医、担当医のアシスタント、看護師、薬剤師およびカスタマーサービス担当者が含まれる。本明細書に記載される様々な局面、態様および任意要素のすべては、任意かつすべてのバリエーションで組み合わせることができる。
【0175】
いくつかの態様において、DHAは、単一剤形、すなわち、1個の剤形として、または2個もしくはそれ以上の剤形として投与される。本明細書で使用される場合、「剤形」は、投与経路のための物理的形態をさす。用語「剤形」は、伝統的に使用されているまたは医学的に承認されている投与形態、例えば経口投与形態、静脈内投与形態または腹腔内投与形態をさす場合がある。いくつかの態様において、DHAは、単回用量で、すなわち単位用量で投与される。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、単回用量として、例えば1個のゲルカプセルとして対象に投与されるDHAの量をさす。用語「単位用量」はまた、短期間内に、例えば約1分、2分、3分、5分、10分、20分または30分以内に投与される、薬学的に適した固形物、液体、シロップ、飲料品または食品品目の1単位をさす場合がある。
【0176】
いくつかの態様において、処置される対象は、1日あたり少なくとも1個の単位用量を投与され得る。いくつかの態様において、剤形は、1日あたり1回の適用でまたは複数回の適用で摂取され得る。例えば、4個のカプセルが毎日摂取され、各カプセルが約500 mgのDHAを含む場合、4個すべてのカプセルを毎日一度に摂取することもできるし、2個のカプセルを毎日二度摂取することもできるし、1個のカプセルを6時間毎に摂取することもできる。様々なDHA量が単位用量に存在し得る。いくつかの態様において、単位用量は、約430 mg、約450 mg、約500 mg、約550 mg、約600 mg、約650 mg、約700 mg、約750 mg、約800 mg、約850 mg、約900 mg、約950 mg、約1 gまたは約1.5 gのDHAを含む。
【0177】
いくつかの態様において、剤形は、約0.2 g〜約2 gの総重量を有する。非限定的な例として、カプセルは、約0.2 gの総藻油重量を含み得、藻油は、藻油の総脂肪酸含有量の特定wt%のDHAを含有する。いくつかの態様において、剤形は、約0.2 g、約0.25 g、約0.3 g、約0.35 g、約0.4 g、約0.45 g、約0.5 g、約0.55 g、約0.6 g、約0.65 g、約0.7 g、約0.75 g、約0.8 g、約0.85 g、約0.9 g、約0.95 g、約1 gまたは約1.05 gの総重量を有する。
【実施例】
【0178】
本願の様々な特徴および態様が以下の代表実施例に示されているが、これらは例示を目的とするものであって、限定を意図したものではない。
【0179】
外傷性脳損傷に対するDHA事前処置の効果
実験デザイン 20匹のオス成体Sprague-Dawleyラットからなる2グループ(n=40)に対して、再現性のある重度外傷性脳損傷を導く衝撃加速損傷(impact acceleration injury; IAI)を与えた。体重350〜400 gのラットに吸引麻酔を与えた後、気管内挿管を行い、改良型医療用麻酔装置を用いて吸入麻酔を維持した。次いで、動物を剃毛して無菌手術の準備を整え、切開予定部位に局所麻酔を皮下注射した。頭皮に3 cmの正中切開を施し、骨膜を除き、ブレグマおよびラムダを露出させた。直径10 mm、厚さ3 mmの金属ディスクをシアノアクリレートで頭蓋骨に取り付け、ブレグマとラムダの中央に配置した。この動物を、金属ディスクがPlexiglasチューブの直下にくるように、スポンジベッドの上にうつ伏せに寝かせた。450 gの重さの真ちゅうを、チューブを通して2メートルの高さからディスクに当たるように落下させた。次いで、この動物に100% O2を供給しつつ、頭蓋骨を検査し切開部を修復した。動物が自発的な呼吸を回復させたら、気管内チューブを取り除き、動物を術後観察のためのケージに戻した(Foda and Marmarou, J Neurosurg 80: 301-313 (1994))。動物生体に関わるすべての手順は、Institutional Animal Care and Use Committee of West Virginia Universityによる事前の審査および承認を受けており、かつ、Institute of Laboratory Resources, National Research Council 発行のthe Guide for the Care and Use of Laboratory animals(NIH刊行物85-23-2985)の方針に従い実施した。
【0180】
動物および食事処置 2つの処置グループを、小動物飼育施設に入れ、40日間、獣医スタッフによる監視下においた。損傷付与前、離乳齢(21日)より、グループに対照食事または藻類由来DHAを補充した同じ食事を毎日与えた。各グループには、ラット飼料をアドリブで与えた。
【0181】
この食事を与えて28日後、処置グループをIAI手順に供した。IAI後、すべての食事グループに対照食事(DHAが添加されていない標準的な飼料食)を給餌した。
【0182】
免疫組織化学分析 7日間の損傷付与後生存期間の後、各グループの半分の動物を、00.5 mlのケタミンおよび0.5 mlのキシラジンの致死量注射により安楽死させた。これらの動物に対して直ちに200 mlの冷やした0.9%生理食塩水を経心臓的に灌流させ、全ての血液を洗い流した。その後、4%パラホルムアルデヒドを含むMillonigs緩衝液を40分間灌流させた。脳全体、脳幹および吻側脊髄を取り出し、直ちに4%パラホルムアルデヒド中に24時間置いた。固定後、脳幹を橋より上で切断し、小脳脚を切断し、次いで錐体に対して側方に矢状の切り目を入れることによって、脳をブロックした。皮質脊髄路および内側毛帯を含有する得られた組織は、外傷性損傷を受けた軸索を含んでいることが以前に示されている領域であり、これを次にビブラトームにより矢状に切断し、40ミクロンの切片にした。次いで、この組織に対して、以前に記載された技術を用いて温度管理マイクロ波抗原回復を行った(Stoneet al., Acta Neuropathol 97: 335-345 (1999))。簡単に説明すると、PBS中に10%正常ヤギ血清(NGS)および0.2%トリトンXを含有する溶液中で組織を40分間プレインキュベートした。
【0183】
この組織を、ベータアミロイド前駆タンパク質(B-APP)に対してウサギで惹起したポリクローナル抗体の1% NGS含有PBS中1:200希釈物中でインキュベートし、次いで、Alexa 488フルオロフォアを結合させた抗ウサギIgG二次抗体中で2時間インキュベートした。この組織を、0.1Mリン酸緩衝液中での最終洗浄に供し、次いで、褪色防止剤およびカバースリップを用いてマウントした。このスライドをアクリルで密封し、研究用冷蔵庫内の暗所で保存した(Mills et al., J Biomed Opt 8: 347-356 (2003))。同様の組織化学アプローチを使用して、損傷脳領域へのミクログリア/マクロファージの動員、神経細胞および乏突起膠細胞の生存を評価した(Huang et al., Brain 130: 3004-3019 (2007))。
【0184】
次いで、レーザースキャン共焦点顕微鏡システムおよび40x対物レンズを用いてこの組織を試験し、画像を取得した。各動物の組織から10枚のデジタル画像を取得し、次いで画像を無作為化した。個々の損傷軸索を個別に計数し、データをエクセルのスプレッドシートに保存し、データの統計学的分析を統計ソフトウェアを用いて行った。
【0185】
挙動評価 損傷付与14日後、4グループすべてに対して学習および記憶の機能評価を行った。これは、Morris水迷路課題を用いる損傷付与前および損傷付与後試験からなるものであった(Stone et al., Acta Neurophathol 97: 335-345 (1999))。脂肪酸血液試験を、損傷付与前および研究の最後に実施した。
【0186】
外傷性脳損傷を誘導する前の28日間、動物(ラット)に、DHAを含有するDHASCO油0、3、9、40 mg/kg/日を与えた。本研究の結果を以下の表10に示す。
【0187】
(表10)

【0188】
本願において引用されているすべての刊行物、特許、特許出願およびその他の文献は、各々個々の刊行物、特許、特許出願またはその他の文献がすべての目的のために参照により組み入れられることが個別に示されているものとして、すべての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
様々な具体的態様が例示され記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法:
(a)外傷性脳損傷の危険のある対象に、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む組成物を投与する工程であって、該組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与され、かつ、該組成物は、総脂肪酸含有量の約3wt%のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する、工程。
【請求項2】
以下の工程を含む、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法:
(a)外傷性脳損傷の危険のある対象を選択する工程;および
(b)該対象にドコサヘキサエン酸(DHA)を含む組成物を投与する工程であって、該組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与される、工程。
【請求項3】
DHAがトリグリセリドの形態である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
DHAがアルキルエステルの形態である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
DHAアルキルエステルが、メチル、エチル、またはプロピルエステルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
DHAアルキルエステルが、組成物の総脂肪酸含有量の少なくとも約85wt%である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
DHAアルキルエステルが、総脂肪酸含有量の約85〜約96wt%である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
DHAが、組成物の総脂肪酸含有量の少なくとも約40wt%である、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
DHAが、総脂肪酸含有量の約40〜約50wt%である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
DHAが、組成物の総脂肪酸含有量の少なくとも約55wt%である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
DHAが、総脂肪酸含有量の約55〜65wt%である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
DHA対EPA比が、少なくとも10:1である、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
DHA対EPA比が、少なくとも100:1である、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
DHAが、微生物油から得られたものである、請求項1または2記載の方法。
【請求項15】
微生物油が、藻油である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
微生物油が、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)由来である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
微生物油が、シゾキトリウム(Schizochytrium)種由来である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
外傷性脳損傷が、閉鎖性頭部損傷由来である、請求項1または2記載の方法。
【請求項19】
閉鎖性頭部損傷由来の外傷性脳損傷の危険のある対象が、脳振盪を発生させるスポーツに参加する選手である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
外傷性脳損傷が、穿通性頭部損傷由来である、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
穿通性頭部損傷由来の外傷性脳損傷の危険のある対象が、武力紛争下の戦闘員である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
DHAを含む組成物が、外傷性脳損傷の危険のある活動に参加する前に、少なくとも28日間投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
DHAを含む組成物が、外傷性脳損傷の危険のある活動に参加する前に、少なくとも6週間投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項24】
有効量が、約10 mg/kg体重/日〜約40 mg/kg体重/日のDHAの用量である、請求項1または2記載の方法。
【請求項25】
DHAを含む組成物が経口用剤形である、請求項1または2記載の方法。
【請求項26】
経口用剤形がゼラチンカプセルである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ゼラチンカプセルが、約200 mg〜約1 gのDHAおよび薬学的に許容できる賦形剤を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
以下の工程を含む、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減する方法:
(a)外傷性脳損傷の危険のある対象に、少なくとも約35wt%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含む組成物を投与する工程であって、該組成物は、外傷性脳損傷の危険に関連する活動に参加する前の、外傷性脳損傷の病理学的影響の危険を軽減するのに十分な期間、予防有効量で投与され、かつ、該組成物は、総脂肪酸含有量の約2wt%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する、工程。
【請求項29】
以下の工程を含む、ヒト対象の脳を保護する方法:
(a)対象に対して、潜在的外傷性脳損傷イベントに関連する活動の前に、少なくとも900 mgのDHAを含む経口用剤形を投与する工程であって、該剤形が、総脂肪酸含有量の少なくとも約35wt%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、該剤形が、総脂肪酸含有量の約2wt%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する、工程。
【請求項30】
外傷性脳損傷イベントに関連する活動が、ボクシング、フットボール、サッカー、ホッケー、武力紛争、または脳手術からなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
対象の脳の保護が、脳振盪の病理学的影響の予防または脳振盪に関連する病理学的影響の軽減である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
以下の工程を含む、ヒト対象の脳を保護する方法:
(a)外傷性脳損傷イベントを経験する危険のある対象を特定する工程、および
(b)対象に対して、潜在的外傷性脳損傷イベントに関連する活動の前に、少なくとも900 mgのDHAを含む経口用剤形を投与する工程であって、該剤形が、総脂肪酸含有量の少なくとも約35wt%のドコサヘキサエン酸(DHA)を含み、該剤形が、総脂肪酸含有量の約2wt%未満のエイコサペンタエン酸(EPA)含有量を有する、工程。

【公表番号】特表2013−507454(P2013−507454A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534338(P2012−534338)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/052564
【国際公開番号】WO2011/047095
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【出願人】(512096126)ウェスト バージニア ユニバーシティ リサーチ コーポレイション オフィス オブ テクノロジー トランスファー (1)
【Fターム(参考)】