説明

外壁の断熱気密構造とその形成方法

【課題】簡便な施工で外壁を支持する鉄骨梁周りの断熱気密性能を向上させた外壁の断熱気密構造及びその形成方法を提供する。
【解決手段】外壁と鉄骨梁に沿って設けられる断熱層を、外壁に沿う沿外壁断熱体と、沿外壁断熱体の上端部に対向し鉄骨梁の下面を覆う沿梁下断熱体と、沿外壁断熱体と沿梁下断熱体により形成される隅部の入り隅部に設けた断熱ブロックを用いて構成する。好ましくは、断熱ブロックは断面三角形状に形成し、両面接着気密テープによって沿梁下断熱体に貼着し、断熱ブロックの傾斜面と沿外壁断熱体の表面に亘って接着気密テープを貼着して、前記隅部に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の断熱気密構造とその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、鉄骨で梁や柱等の躯体を形成すると共に外壁材としてALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete panelsの略。軽量気泡コンクリートともいう)パネルを用いるのが一般的に行われている。また、この種の建物においては、暖房効率や冷房効率を向上させて省エネルギー化を図ることを目的としてALCパネルに沿って断熱材が充填されており、当該ALCパネルの有する断熱性と、断熱材の断熱性とによって建築物としての断熱効果を得ている。
一方、鉄骨造の建物においては、躯体を構成する梁や柱等の構造部材が熱伝導率の大きな鉄や鋼等により形成されるため、外壁を支持する梁や柱が屋内外の熱の伝達経路となり、熱橋となってしまう問題がある。かかる問題を解決するには、これら躯体を構成する構造部材に対しても断熱材を設けることが好ましいが、これら構造部材の形状や取合いは外壁の平板面等と比較して著しく複雑であり、よって構造部材に対し断熱性を効果的に発揮させることを可能とする断熱材の取付方法について研究開発がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、I型鋼からなる鉄骨梁の下フランジの下面に亘って板状の断熱材を設け、当該断熱材と外壁に沿って設けられる断熱材とを突き付けて接合させ、これらの接合部に気密テープを貼着した構成が開示されている。
【0004】
しかしながら、外壁に沿って設けられる断熱材と鉄骨梁の下面に沿って設けられる断熱材とが特許文献1の構成の如く単純に突き付けであるという場合等においては、各断熱材の部材精度や施工精度、周辺金物等の影響によりこれら断熱材間に隙間が生じ易いものとなり、単に突き付け部分に沿って気密テープを貼着するのみでは当該隙間が断熱気密の弱点となりかねない虞があった。また、特許文献1の構成においては、断熱材の突き付け部分に貼着する気密テープを直角に折り曲げつつ貼り付けなければならないため、当該気密テープの貼着には熟練を要し、作業者によって個人差が生じ易いという問題もある。
【特許文献1】特開2004−76314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な施工で外壁を支持する鉄骨梁周りの断熱気密性能を向上させることができる外壁の断熱気密構造及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明に係る外壁の断熱気密構造は、
(1)躯体を形成する鉄骨梁と、該鉄骨梁の外方を周り込んで設置される外壁と、これら外壁及び鉄骨梁に沿って設けられる断熱層とを備え、
該断熱層は、外壁に沿って配置される板状の沿外壁断熱体と、該沿外壁断熱体の上端部に密着或いは僅かな隙間を介して対向すると共に前記鉄骨梁の下面を覆う沿梁下断熱体とを備え、
前記沿外壁断熱体と沿梁下断熱体により形成される隅部の入り隅部には、これら沿外壁断熱体と沿梁下断熱体の対向部に被さる断熱ブロックが設けられていることを特徴としている。
【0007】
これによれば、沿外壁断熱体と沿梁下断熱体との間に形成される隅部が断熱ブロックによって内側から塞がれることとなるので、これによって、当該隅部の断熱性能を断熱ブロックによって確保することができ、部材精度等に起因して当該隅部に隙間等が生じる場合であっても、当該隅部周りの断熱性能は低下することはない。また、当該断熱ブロックによって隅部が塞がれることとなるので、従来の如く単に気密テープを貼着する構成よりも容易に当該隅部周りの気密性も確保することができる。
すなわち、沿外壁断熱材と沿梁下断熱体との隅部を断熱ブロックによって塞ぐことにより、鉄骨梁周りの断熱性及び気密性を充分に確保することができる。
【0008】
(2)また、前記断熱ブロックは、前記沿外壁断熱体に密着する外壁対向面と、沿梁下断熱体に密着する梁対向面と、該梁対向面と外壁対向面とを連結する傾斜面とを有する断面三角形状に形成されていることが好ましい。より好ましくは、梁対向面と外壁対向面が直交する断面直角三角形状である。
【0009】
上記鉄骨梁の下方は、天井裏から壁内部に向かう(或いはその逆)配線や配管(以下、配管等と称する)の通過スペースとなっており、当該通過スペースを可及的広く確保することが望まれるが、上述の如く断熱ブロックを断面三角形状に形成することにより、両断熱材間の隅部の断熱性と気密性を確保した状態で断熱ブロックのスリム化を図ることができ、上記配管等の通過スペースを確保することができるばかりでなく、傾斜面に沿って配管等を配設することができ、該傾斜面を配管等のガイド面とすることができることとなる。
【0010】
(3)また、前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか一方が両面接着気密テープを介して対向する沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に貼着されると共に、前記傾斜面から前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか他方の表面に亘って気密テープが鈍角状に貼着されていることが好ましい。
これによれば、梁対向面又は外壁対向面の何れか一方にのみ両面接着気密テープを貼着することで該両面接着気密テープを貼着していない外壁対向面又は梁対向面を、当該面が対向する沿外壁断熱体又は沿梁下断熱体の表面上で摺動させることができる。したがって、外壁対向面又は梁対向面を沿外壁断熱体又は沿梁下断熱体の表面上を滑らせ、梁対向面又は外壁対向面をそれらに対向する沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に近接させつつ該断熱ブロックの位置を調整することができ、その後、断熱ブロックの梁対向面又は外壁対向面を対応する沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に貼着することにより、容易且つ正確に断熱ブロックを隅部の入り隅部に取り付けることができる。また、断熱ブロックの傾斜面と沿外壁断熱体又は沿外壁断熱体の表面に沿って気密テープが鈍角状に貼着されることとなるので、該気密テープの貼り付け作業も著しく容易なものとなり、施工性が向上することとなる。
【0011】
また、本発明に係る外壁の断熱気密構造の形成方法は、
(4)躯体を形成する鉄骨梁と、該鉄骨梁の外方を周り込んで設置される外壁とに沿って断熱層を設置する外壁の断熱気密構造の形成方法において、
前記外壁の内側に沿って板状の沿外壁断熱体を配し、
前記鉄骨梁の下面側に、前記沿外壁断熱体の上端部に密着或いは僅かな隙間を介して対向させて、沿梁下断熱体を配し、
前記沿外壁断熱体と沿梁下断熱体により形成される隅部の入り隅部に、断熱ブロックを配して、沿外壁断熱体と沿梁下断熱体の対向部を覆う
ことを特徴としている。
【0012】
このような方法によれば、沿外壁断熱材と沿梁下断熱体は従来のままの構造とし、それに断熱ブロックを追加して配するのみで、断熱材の部材精度等に起因する不具合を解消でき、鉄骨梁周りの断熱性及び気密性を充分に確保することができる上、特殊な形状の断熱材を製作する場合のように施工費用が嵩むこともない。また、沿外壁断熱材と沿梁下断熱体を含む既存の構造に対しても施工することができる利点もある。
【0013】
(5)また、前記形成方法においては、前記断熱ブロックを、略直交する一対の面と該一対の面を連結する傾斜面とを有する断面三角形状(特に、直角三角形状)に形成し、前記一対の面の一方を前記沿外壁断熱体に密着させ、他方を沿梁下断熱体に密着させるのが好ましい。
このような方法によれば、沿外壁断熱材と沿梁下断熱体との間の隅部の断熱性と気密性を確保しながらも、配管等の通過スペースを確保することができ、傾斜面を配管等のガイド面とすることができる。
【0014】
(6)また、前記形成方法においては、前記断熱ブロックを、両面接着気密テープによって沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体の何れか一方に貼着し、該断熱ブロックの傾斜面と前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか他方の表面に亘って接着気密テープを貼着することが好ましい。
このような方法によれば、断熱ブロックの一面を該一面が対向する沿外壁断熱体又は沿梁下断熱体の表面上を滑らせ、他面を該他面が対向する沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に近接させつつ断熱ブロックの位置を調整し、沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に貼着することができ、沿外壁断熱体と沿梁下断熱体との間の隅部への断熱ブロックの貼付けを容易に且つ正確に行うことが可能になる。また、断熱ブロックの傾斜面と沿外壁断熱体又は沿梁下断熱体の表面に沿って気密テープを貼付するので、気密テープを鈍角状に貼着することができ、貼り付け作業が容易になり、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外壁の断熱層によれば、簡便な施工で外壁を支持する鉄骨梁周りの断熱気密性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1及び図2に基づき、本発明を実施した形態につき、詳細に説明する。
図1に示す如く、本発明に係る建物は、基礎10と、該基礎10上に組み上げられる構造躯体11と、該構造躯体11に支持される外壁12と、該外壁12及び構造躯体11に沿って設けられる断熱層13と、建物の居室の壁面及び天井面を形成する内装構造14とを備えて形成される地上2階の組立住宅である。
【0017】
基礎10は、外壁12や間仕切り壁の長さ方向に連続する同一断面の鉄筋コンクリート製の布基礎として形成されている。
構造躯体11は、基礎10上に立設される鉄骨柱(図示省略)と、該鉄骨柱間に架け渡される鉄骨梁15と、基礎10や鉄骨梁15に支持される床スラブ16とを備えて形成される鉄骨の軸組構造として構成されている。また、鉄骨柱の間に耐震要素(図示省略)を設置する構成も採用可能であり、この場合は鉄骨軸組ブレース構造として構成されることとなる。
鉄骨柱は、鋼製の角パイプにより又は該角パイプの端部に柱頭部材や柱脚部材を取り付けて形成されている。耐震要素は、一対の角パイプをブレースや制振フレームにより連結して形成される。
【0018】
図2に示す如く、鉄骨梁15は、上下一対のフランジ15a、15bと、該上下一対のフランジ15a、15bの中央部間を連結するウェブ15cとを備えて形成される所謂I型鋼又はH型鋼により形成されており、同じく鋼製のジョイントピースを介して鉄骨柱に連結支持されている。
なお、これら鉄骨柱、ジョイントピース、鉄骨梁15間の接続は高力ボルト接合等の機械的手段によりなされており、これによって溶接接合を排することとして作業者の熟練によらず接合部位の品質を一定のものとしている。
【0019】
床スラブ16は、1階床スラブ16a、2階床スラブ16b、屋根スラブ16cからなり、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の床パネルを敷設することにより形成されている。図1に示す如く、1階床スラブ16aを形成する床パネルは、端部を基礎10の上面に載置した状態で当該基礎10に支持されている。また、2階の床スラブ16b及び屋根スラブ16cを形成する床パネルは、端部を鉄骨梁15の上フランジ15a上面に載置した状態で、該鉄骨梁15に取り付けられた剛床金物(図示省略)を介して当該鉄骨梁に支持されている。
【0020】
外壁12は、1階外壁12a及び2階外壁12bからなり、それぞれ、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁パネルを並べて配備することにより形成されている。また、各外壁パネルは、当該各階の床スラブ16(16a、16b)の下面から鉄骨梁15の上フランジ15aの上面に至る少なくとも各階の高さに相当する高さを有している。
また、図2中に示す如く、各階の外壁パネルは、鉄骨梁15や基礎10から外壁パネルに向けて突出した状態に取り付けられる自重受け金具やイナズマプレート等の各種支持金物17を介して鉄骨梁15や基礎10に上下端部が支持されている。
上述の如く軽量気泡コンクリートにより形成される床スラブ16や外壁12は、軽量で且つ高い断熱性能を有するものとなる。
なお、本実施形態においては、外壁12として軽量気泡コンクリートからなる外壁パネルを採用しているが、PCコンクリート製のパネル、木製パネルやサイディング、及びこれらのパネルに外装部材等を取り付けたもの等、上記鉄骨梁15よりも熱伝達率が大きく、これによって鉄骨梁15が相対的に熱橋を形成することとなる構成であれば、如何なる材料により外壁12を形成することとしても構わない。
【0021】
また、鉄骨梁15の上方には、該鉄骨梁15に支持される床スラブ16と該床スラブ16に対向する2階の外壁12の下端部との間となる位置に間隙が形成されており、該間隙は、上記剛床金物、自重受け金物やイナズマプレート等の各種金物17を梁に取り付けるためのスペースであって、これら各種金物17、床スラブ16及び外壁12の設置後にモルタル18が充填される。
【0022】
また、内装構造14は、居室の壁面を構成する壁板19と、該壁板19を支持する下地部材20と、居室の天井を形成する天井板21と、該天井板21を支持する野縁部材22とを備えている。下地部材20は、外壁12に所定の間隔を空けて対向する位置で格子状に組み立てられており、該下地部材20に壁板19が隙間なく敷設されている。
【0023】
野縁部材22は、床スラブ16に所定の間隔を空けて対向する位置で格子状に組み立てられており、該野縁部材22に天井板21が隙間なく敷設されている。また、野縁部材22は、吊木部材(図示省略)を介して鉄骨梁に支持されている。
これら壁板19と外壁12の間の隙間により形成される壁内空間S1と天井板21と床スラブ16の間の隙間により形成される天井裏空間S2とは鉄骨梁15の下方で連通されており、これによって、天井裏空間S2から壁内空間S1に亘って配管等23の配設が可能となっている。
【0024】
断熱層13は、1階外壁12a及び2階床スラブ16bを支持する鉄骨梁15に沿って設けられる1階断熱層13aと、2階外壁12b及び屋根スラブ16cを支持する2階断熱層13bと、屋根スラブ16c上に設けられる屋根断熱層13cと、1階床スラブ16a上に設けられる床断熱層13dとを備えている。
【0025】
各階断熱層13a、13bは、上記壁内空間S1から鉄骨梁15の存する天井裏空間S2に亘って連続して設けられており、外壁12a、12bに沿って設けられる沿外壁断熱体24と、該沿外壁断熱体24に連続して鉄骨梁15の下フランジ15bの下面から該下フランジ15bの屋内側の端部を回り込んで設けられる沿下フランジ断熱体(沿梁下断熱体)25と、該沿下フランジ断熱体25上に立設されて鉄骨梁15のウェブ15cと対向する沿ウェブ断熱体26と、沿ウェブ断熱体26と床スラブ16及び鉄骨梁15の上フランジ15aに挟持されつつ沿ウェブ断熱体26の姿勢を保持する保持部材27と、沿外壁断熱体24と沿下フランジ断熱体25の接合部に設けられる断熱ブロック28とを備えている。
以下では、図2を参照して1階断熱層13aについて説明することとし、2階断熱層13bの構成については当該1階断熱層13aの構成と同じであるのでその説明を省略する。
【0026】
沿外壁断熱体24は、硬質ウレタンフォームや押出法ポリスチレンフォーム保温板或いはフェノール樹脂発泡体等の成形体や発泡体等、住宅の省エネルギー基準の解説」(財団法人建築環境・省エネルギー機構発行(第1版:平成14年6月1日発行)137頁〜138頁の「発泡プラスチック系断熱材」に規定されている各種の断熱材を含む硬質プラスチック系断熱材を板状に形成して構成されており、下端の小口面を下階の床スラブ16又は該床スラブ16と外壁12との間のモルタル18に当設させて該外壁12に沿って起立すると共に、上端の小口面を鉄骨梁15の下フランジ15bの下面に当接させた状態でこれら床スラブ16と鉄骨梁15の間に設けられている。
【0027】
本実施形態においては、沿外壁断熱体24として、フェノール樹脂発泡体からなるものを採用しており、具体的には、本件出願人が開発して既に国際出願(特願2000−558158)した技術(ネオマフォーム(登録商標))に係るものを用いている。当該技術に係るフェノール樹脂発泡体は、断熱材として好ましく使用することが可能で、且つ気密材としても好ましく使用することが可能である。
上記技術に係るフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂基体部と、多数の微細気泡から形成される気泡部とを有し、密度を10kg/m〜100kg/mとするフェノールフォームである。また、該フェノール樹脂発泡体は、微細気泡が炭化水素を含有し且つ平均気泡径が5μm〜200μmの範囲にあり、大部分の微細気泡の気泡壁が滑らかなフェノール樹脂基体面によって構成されている。そして、発泡剤が炭化水素であるにも関わらず、従来のフロン系発泡剤と遜色のない熱伝導率を持ち、且つ熱伝導率の経時的な変化もなく、圧縮強度等の機械的強度に優れ、脆性が改善される。
【0028】
上記フェノール樹脂発泡体では、高い断熱性と気密性を有し、且つこれらの性能を長期間維持し得る性質を有している。フェノール樹脂発泡体に於ける断熱性は、気泡径が5μm〜200μmの範囲、好ましくは10μm〜150μmと小さく、且つ独立気泡率を80%以上と高く保持することによって確保することが可能である。またフェノール樹脂発泡体は高い耐燃焼性を有しており、火炎が作用したとき、表面が炭化することで、着火することがなく、且つガスが発生することがない。
例えば、フェノール樹脂発泡体の密度を27kg/mに設定した場合、20℃に於ける熱伝導率は0.02W/m・Kであり、圧縮強さは15N/cm、熱変形温度は200℃である。
【0029】
ところで、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種は、熱伝導率;0.028W/m・K、圧縮強さ;20N/cm、熱変形温度;80℃であり、硬質ウレタンフォーム保温板2種は熱伝導率;0.024W/m・K、圧縮強さ;8N/cm、熱変形温度;100℃である。したがって、前記フェノール樹脂発泡体はこれら押出法発泡ポリスチレンフォーム保温板3種や硬質ウレタンフォーム保温板2種よりも充分に高い性能を有する。
このため、フェノール樹脂発泡体からなる断熱材では、従来の押出法発泡ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームの約2/3程度の厚さで略同等の断熱性能を発揮することが可能である。
また、フェノール樹脂発泡体は比較的脆い材料であるため、少なくとも片面にクラフト紙や不織布からなる保護層を設けるのが一般的である。特に、本件出願人が開発して特許出願している特開平11−198332号公報に開示されたフェノール樹脂発泡体積層板は、保護層を形成する不織布を改良することによって接着性能を向上させたものであり、この不織布によってフェノール樹脂発泡体の強度を改善して、強度、断熱性共に優れた建築用断熱材料として提供されるものである。
【0030】
沿下フランジ断熱体25は、ポリエチレンフォームBを加工して形成されており、下フランジ15bの下面に沿う平板部25aと、該平板部25aから突出する中間部25bと、該中間部25bに連結されて且つ平板部25aに平行に延設される折返し部25cとを備えている。折返し部25cは、中間部25bにより形成される隙間を介して平板部25aと対向している。当該隙間に鉄骨梁15の下フランジ15bを嵌合させることにより、該沿下フランジ断熱体25は下フランジ15bを下面から屋内側端部に亘って覆う状態で鉄骨梁15に取り付けられることとなる。また、沿下フランジ断熱体25を鉄骨梁15の下フランジ15bに取り付けると、平板部25aは沿外壁断熱体24に突き付けられることとなり、該平板部25aの小口面は沿外壁断熱体24の表面に当接または僅かな隙間を介して対向し、これら断熱体25、24によって当該断熱層13に隅部が形成されることとなる。
【0031】
沿ウェブ断熱体26は、沿外壁断熱体24と同様のフェノール樹脂発泡体を板状に形成して構成されている。また、保持部材27は、上記ポリエチレンフォームBにより形成されており、沿ウェブ断熱体26の上端部を覆う断面コ字状の保持部27aと、該保持部27aの一端から突出して鉄骨梁15の上フランジ15aと対向すると共に床スラブ16に当接する突出部27bとを備えて形成されている。沿ウェブ断熱体26は、折返し部25c上に起立させると保持部材27を介して床スラブ16又は鉄骨梁15の上フランジ15aに挟持されることとなる。
【0032】
断熱ブロック28は、上記ポリエチレンフォームBにより形成されており、沿外壁断熱体24の上端部と沿下フランジ断熱体25の平板部25aの側端部との接合部に長手方向に沿って内側から被さった状態で設けられている。或いは、該沿外壁断熱体24と沿下フランジ断熱体25とを突き付けることにより形成されるこれら断熱体24、25間の継目を覆った状態で断熱ブロック28が設けられていると言うことができる。断熱ブロック28の長さは任意であり、取り扱いを容易にするために一定長さのものとしてそれを複数突き合わせて設置するようにしてもよいし、突き合わせ部が生じないように長尺体としてもよい。
また、断熱ブロック28は、沿外壁断熱体24に密着する外壁対向面28aと、沿下フランジ断熱体25に密着する梁対向面28bと、該梁対向面28bと外壁対向面28aとを連結する傾斜面28cとを有する断面直角三角形状に形成されている。該断熱ブロック28が沿外壁断熱体24と沿下フランジ断熱体25との接合部となる隅部(突き付け部)の入り隅部に取り付けられることにより、該隅部の接合部が断熱ブロック28に覆われるばかりでなく、該隅部の断熱層の厚さが増大する。また、当該隅部の入り隅部は、沿外壁断熱体24の表面→断熱ブロック28の傾斜面28c→沿下フランジ断熱体25の下面によって面取り状に形成されることとなる。
【0033】
また、断熱ブロック28は、梁対向面28bが、一面が該梁対向面28bにその長手方向全体に亘って貼付された両面接着気密テープ29を介して沿下フランジ断熱体25の平板部25aに貼着されると共に、傾斜面28cから沿下フランジ断熱体25の内面に亘ってかつ断熱ブロック28の長手方向全体に沿って接着気密テープ30が貼着されおり、これによって、断熱ブロック28と沿下フランジ断熱体25及び沿外壁断熱体24との間の継目もこれら接着気密テープ29、30に塞がれることとなる。或いは、断熱ブロック28と沿下フランジ断熱体25との間の継目は両面接着気密テープ29により塞がれ、断熱ブロック28と沿外壁断熱体25との間の継目は接着気密テープ30により目張りされることとなる、と言うこともできる。
【0034】
以上、本願発明の構成を詳述したが、次の本発明の外壁の断熱気密構造の形成方法、なかでも従来の方法と特に異なる部分である上記断熱ブロック28の取付方法について、図3を用いて説明する。
【0035】
図3(a)に示す如く、断熱ブロック28の取付けに先立って、沿外壁断熱体24、沿下フランジ断熱体25及び沿ウェブ断熱体26は設けられている。
なお、沿外壁断熱体24と沿下フランジ断熱体25は、いずれを先に配備することとしても構わない。
この状態から断熱ブロック28を取り付けるにつき、先ず、断熱ブロック28の梁対向面28bにのみ、その長手方向に沿って連続に両面接着気密テープ29を貼着する。
【0036】
そして、断熱ブロック28の外壁対向面28aを沿外壁断熱体24の表面に当接させ、該外壁対向面28aを、沿外壁断熱体24の表面上を滑らせ(摺動させ)つつ該断熱ブロック28を沿下フランジ断熱体25に近接させていく。そして、断熱ブロック28を沿下フランジ断熱体25に押し付ける。そうすると、図3(b)に示す如く、断熱ブロック28は、両面接着気密テープ29を介して沿下フランジ断熱体25に密着し、沿下フランジ断熱体25と沿外壁断熱体24の接合部を覆った状態でこれら断熱体24、25により形成される隅部の入り隅部に位置付けられることとなる。
【0037】
その後、図3(c)に示す如く、断熱ブロック28の傾斜面28cと沿外壁断熱体24の表面に亘って接着気密テープ30を貼着し、これらの接合部を接着気密テープ30により塞ぐ。
これにより、断熱ブロック28の隅部への取付が完了する。
【0038】
本実施形態によれば、沿外壁断熱体24と沿梁下断熱体(沿下フランジ断熱体)25との間に形成される接合部が断熱ブロック28によって内側から塞がれるばかりでなく、当該隅部の厚さも断熱ブロック28の厚さの分だけ増大することとなり、これによって、当該接合部の断熱性能が向上するものとなる。したがって、沿外壁断熱体24や沿下フランジ断熱体25の部材精度等に起因して当該接合部に隙間等が生じる場合であっても、当該隅部の断熱性能は低下することはない。また、当該断熱ブロック28によって接合部が塞がれることとなるので、気密テープを直角に折り曲げながら当該隅部の入り隅部に貼着するよりも容易に当該接合部周りの気密性が確保される。
【0039】
また、断熱ブロック28を、下地部材20、野縁部材22等の内装材と対向する面を傾斜させた断面直角三角形状に形成することにより、隅部の入り隅部に、天井裏空間S2と壁内空間S1の間の連通路を狭めかねない断熱ブロック28を配備すると雖も、天井裏の空間と壁内の空間の連通路となる断熱層13と内装構造14との間の間隔は確保され、これによって配管等23の通過スペースを確保することができるばかりでなく、断熱ブロック28の傾斜面28cに沿って配管等23を配設することができ、該傾斜面28cを配管等23のガイドとすることも可能となる。
【0040】
また、上記施工方法によれば、外壁対向面28aを沿外壁断熱体24の表面上を滑らせつつ断熱ブロック28を沿下フランジ断熱体25に当接させることできわめて容易に沿梁下断熱体25に断熱ブロック28を貼着して該断熱ブロック28を入り隅部に取り付けることができ、断熱ブロック28の位置決めがきわめて容易なものとなって施工性が向上するものとなる。さらには、断熱ブロック28の傾斜面28cと沿外壁断熱体24の表面に亘って接着気密テープ30を貼着すればよいので、気密テープを鈍角面に貼り付ける著しく容易な作業となり、これによっても施工性が向上する。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではない。
例えば、断熱ブロック28は、沿外壁断熱体24に対向する面と沿下フランジ断熱体25に対向する面とを直交させる構成であれば、他の面は如何なる形状であっても良く、断面四角形状とする場合であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態の断熱ブロック28の傾斜面28cは外壁対向面28a及び梁対向面28bのいずれに対しても45°の傾きを有するものであるが、該傾きの角度は例えば内装構造14や配管等23との関係において如何なる角度に形成しても構わない。
【0042】
また、両面接着気密テープ29は断熱ブロック28の外壁対向面28aのみに貼着してもよく、その場合、断熱ブロック28の梁対向面28bを沿下フランジ断熱体25の表面に当接させ、梁対向面28bを沿下フランジ断熱体25の表面上を滑らせ(摺動させ)つつ該断熱ブロック28を沿外壁断熱体24に近接させていく。そして、断熱ブロック28を沿外壁断熱体24に押し付ける。そうすると、断熱ブロック28は、両面接着気密テープ29を介して沿外壁断熱体24に密着し、沿外壁断熱体24と沿下フランジ断熱体25の接合部を覆った状態でこれら断熱体24、25より形成される隅部の入り隅部に位置付けられることとなる。その後、断熱ブロック28の傾斜面28cと沿下フランジ断熱体25の表面に亘って接着気密テープ30を貼着し、これらの接合部を接着気密テープ30により塞ぐ構成であっても構わない。
【0043】
また、図4に示す如く保持部材を床スラブに沿って鉄骨梁から離間する方向に膨出させる構成を採用する場合であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
また、上記実施形態は、2階を支持する1階天井梁周りについての構成であるが、3階建て以上の建物の中間階や最上階の梁に採用することも可能である。また、梁の形状も上記I型又はH型の開断面のもののみでなく、断面ロ字状の閉断面のものを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る外壁の断熱気密構造を示す側断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示した側断面図である。
【図3】本発明の外壁の断熱気密構造の形成方法を説明するための概略側断面図であり、(a)は断熱ブロックを沿梁下断熱体に向けて移動させている状態を示し、(b)は断熱ブロックを沿梁下断熱体に貼付けた後に、気密テープによって断熱ブロックと沿外壁断熱体の継目を被覆しようとしている状態を示し、(c)は断熱ブロックの設置が終了した状態を示す。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る外壁の断熱気密構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 基礎
11 構造躯体
12 外壁
12a 1階外壁
12b 2階外壁
13 断熱層
13a 1階断熱層
13b 2階断熱層
13c 屋根断熱層
13d 床断熱層
14 内装構造
15 鉄骨梁
15a 上フランジ
15b 下フランジ
15c ウェブ
16 床スラブ
16a 1階床スラブ
16b 2階床スラブ
16c 屋根スラブ
17 各種金物
18 モルタル
19 壁板
20 下地部材
21 天井板
22 野縁部材
23 配管等
24 沿外壁断熱体
25 沿下フランジ断熱体(沿梁下断熱体)
25a 平板部
25b 中間部
25c 折返し部
26 沿ウェブ断熱体
27、31 保持部材
27a 保持部
27b 突出部
28 断熱ブロック
28a 外壁対向面
28b 梁対向面
28c 傾斜面
29 両面接着気密テープ
30 接着気密テープ
S1 壁内空間
S2 天井裏空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体を形成する鉄骨梁と、該鉄骨梁の外方を周り込んで設置される外壁と、これら外壁及び鉄骨梁に沿って設けられる断熱層とを備え、
該断熱層は、外壁に沿って配置される板状の沿外壁断熱体と、該沿外壁断熱体の上端部に密着或いは僅かな隙間を介して対向すると共に前記鉄骨梁の下面を覆う沿梁下断熱体とを備え、
前記沿外壁断熱体と沿梁下断熱体により形成される隅部の入り隅部には、これら沿外壁断熱体と沿梁下断熱体の対向部に被さる断熱ブロックが設けられていることを特徴とする外壁の断熱気密構造。
【請求項2】
前記断熱ブロックは、前記沿外壁断熱体に密着する外壁対向面と、沿梁下断熱体に密着する梁対向面と、該梁対向面と外壁対向面とを連結する傾斜面とを有する断面三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁の断熱気密構造。
【請求項3】
前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか一方が両面接着気密テープを介して対向する沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体に貼着されると共に、前記傾斜面から前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか他方の表面に亘って気密テープが鈍角状に貼着されていることを特徴とする請求項2に記載の外壁の断熱気密構造。
【請求項4】
躯体を形成する鉄骨梁と、該鉄骨梁の外方を周り込んで設置される外壁とに沿って断熱層を設置する外壁の断熱気密構造の形成方法において、
前記外壁の内側に沿って板状の沿外壁断熱体を配し、
前記鉄骨梁の下面側に、前記沿外壁断熱体の上端部に密着或いは僅かな隙間を介して対向させて、沿梁下断熱体を配し、
前記沿外壁断熱体と沿梁下断熱体により形成される隅部の入り隅部に、断熱ブロックを配して、沿外壁断熱体と沿梁下断熱体の対向部を覆う
ことを特徴とする外壁の断熱気密構造の形成方法。
【請求項5】
前記断熱ブロックを、略直交する一対の面と該一対の面を連結する傾斜面とを有する断面三角形状に形成し、前記一対の面の一方を前記沿外壁断熱体に密着させ、他方を沿梁下断熱体に密着させることを特徴とする請求項4に記載の外壁の断熱気密構造の形成方法。
【請求項6】
前記断熱ブロックを、両面接着気密テープによって沿梁下断熱体又は沿外壁断熱体の何れか一方に貼着し、該断熱ブロックの傾斜面と前記梁対向面又は前記外壁対向面の何れか他方の表面に亘って接着気密テープを貼着することを特徴とする請求項5に記載の外壁の断熱気密構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−37740(P2010−37740A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199128(P2008−199128)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】