説明

外壁面材の固定構造

【課題】 外壁面材を表面側からのビス留めによらずに下地フレームに固定することができ、施工が容易な外壁面材の固定構造を提供する。
【解決手段】 下地フレーム1の外壁面材2と対向する面に、上方が開いた切欠き3aを有する固定プレート3を固定状態で設ける。外壁面材2の下地フレーム1に対向する面に、固定プレート3の切欠き3aに上方から挿入されて、固定プレート3に対して下方へ移動不能、外壁面材2の水平な面方向に移動不能、および下地フレーム1と外壁面材2の並び方向に移動不能に係合する固定用金具4を設ける。固定プレート3に固定用金具4を係合させることで下地フレーム1に外壁面材2を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルコニーの腰壁等において、1つの下地フレームの両面に外壁面材を固定する場合に適した外壁面材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばバルコニーの腰壁では、厚さを抑えるために、図10に示すように、1つの下地フレーム1の両面に外壁面材2A,2Bを固定することが行われている。その場合、片側の外壁面材2Aについては裏面側から下地フレーム1に固定することができるが、反対側の外壁面材2Bについては、先に固定した外壁面材2Aが邪魔になって裏面側から固定作業ができず、表面側から下地フレーム1に固定するしかなかった。具体的には、外壁面材2Bの表面から下地フレーム1に向けてビス孔21を開け、このビス孔21から挿通したビス22により外壁面材2Bを下地フレーム1に固定し、ビス孔21をパテ埋めした後、タッチアップ塗装を施すという方法が採られていた。
【特許文献1】特公昭63−56379号公報
【特許文献2】特開平4−203144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のように外壁面材2Bを表面側から下地フレーム1にビス留めするのは、現場での施工時間が長くかかるうえ、パテ埋め等の補修跡が残り見栄えを悪くすることがある。また、固定、補修等の精度は、現場作業者の熟練度により左右される。
【0004】
そこで、この発明の目的は、外壁面材を表面側からのビス留めによらずに下地フレームに固定することができ、施工が容易な外壁面材の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の外壁面材の固定構造は、下地フレームの外壁面材と対向する面に、上方が開いた切欠きを有する固定プレートを固定状態で設けると共に、外壁面材の下地フレームに対向する面に、前記固定プレートの切欠きに上方から挿入されて、固定プレートに対して下方へ移動不能、外壁面材の水平な面方向に移動不能、および下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能に係合する固定用金具を設け、前記固定プレートに前記固定用金具を係合させることで下地フレームに外壁面材を固定することを特徴とする。
【0006】
この固定構造によれば、下地フレームの外壁面材と対向する面すなわち裏面に設けた固定プレートに、外壁面材の下地フレームに対向する面に設けた固定用金具を係合させて、下地フレームに外壁面材を固定するため、外壁面材の表面にビス孔等の跡が残らず、仕上がりが美しい。固定プレートの切欠きに固定用金具を上方から挿入することで、固定用金具を固定プレートに対して下方へ移動不能、外壁面材の水平な面方向に移動不能、および下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能に係合させられるので、外壁面材の固定が容易で、その精度が現場作業者の熟練度により左右されない。
【0007】
前記固定用金具は、前記切欠きの底面および側面に係合して、前記固定用金具を前記固定プレートに対して下方へ移動不能および外壁面材の水平な面方向に移動不能とする本体板部と、この本体板部から下地フレームと外壁面材の並び方向に位置をずらせて外壁面材の水平な面方向に拡がり、前記固定プレートの切欠きの周辺部に係合して、前記固定用金具を前記固定プレートに対して下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能とする拡張板部とを有するものとすることができる。
固定用金具を上記構成とすると、簡略な構成でありながら、確実に、固定用金具を固定プレートに対して下方へ移動不能、外壁面材の水平な面方向に移動不能、および下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能に係合させることができる。
【0008】
この発明において、外壁面材の下地フレームに対向する面に、前記固定プレートに前記固定用金具を係合させた状態で、固定用金具に対する固定プレートの相対的な下方移動を規制する戻り止め部材を設けてもよい。
戻り止め部材を設けると、固定用金具に対する固定プレートの相対的な下方移動が規制されるため、外壁面材が上方に外れない。
【0009】
前記戻り止め部材は、前記固定プレートの下端を受ける段部を有し、前記固定プレートの切欠きへの前記固定用金具の挿入時には、前記固定プレートにより前記戻り止め部材の段部が固定プレートに対し干渉しない位置へ押し退けられ、挿入完了時に自らの弾性反発力で前記段部が前記固定プレートの下端を受ける位置へ復帰するものとすることができる。
戻り止め部材に上記弾性を持たせると、単品の戻り止め部材だけで、固定用金具に対する固定プレートの相対的な下方移動を規制することができる。そのため、構成が簡略になり、固定作業の容易化およびコスト低下が図れる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の外壁面材の固定構造は、下地フレームの外壁面材と対向する面に、上方が開いた切欠きを有する固定プレートを固定状態で設けると共に、外壁面材の下地フレームに対向する面に、前記固定プレートの切欠きに上方から挿入されて、固定プレートに対して下方へ移動不能、外壁面材の水平な面方向に移動不能、および下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能に係合する固定用金具を設け、前記固定プレートに前記固定用金具を係合させることで下地フレームに外壁面材を固定するため、外壁面材を表面側からのビス留めによらずに下地フレームに固定することができ、施工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1ないし図3は下地フレーム1の片面に外壁面材2を固定した状態、図4は固定前の状態、図5は固定途中の状態をそれぞれ示す。下地フレーム1は、軽量鉄骨材からなる断面溝形の縦フレーム1a、横フレーム1b、および中桟(図示せず)を枠組状に組み合わせて構成されている。外壁面材2は、GRC(ガラス繊維強化セメント)等からなる。
【0012】
下地フレーム1の外壁面材2と対向する面には、縦フレーム1aから内側に張り出させた固定プレート3が、溶接により固定して設けられている。図3に示すように、固定プレート3は、上方が開いた略長方形の切欠き3aを有する。切欠き3aの上端は先広がり形状とされている。例えば、固定プレート3は、左右両縦フレーム1aの上下両端部の計4箇所に設けられる。ここで、左右とは、外壁面材2の水平な面方向のことである。
【0013】
一方、外壁面材2の下地フレーム1に対向する面には、前記固定プレート3の位置に対応させて、固定用金具4および戻り止め部材5が設けられている。図6に示すように、これら固定用金具4および戻り止め部材5は、外壁面材2に設置したアンカー6に、ボルト7、ナット8、およびスプリングワッシャ9により取付けられている。アンカー6は、一対の脚部6aが外壁面材2に埋め込まれており、外壁面材2から突出する側面形状U字状の本体部6bに、前記ボルト7を挿通するボルト孔6cが形成されている。この実施形態では、アンカー本体部6bの外壁面材2側を向く面に前記ナット8が溶接等により固定されているが、ナット8はアンカー6と別体としてもよい。
【0014】
固定用金具4は、鋼板を加工して成形したものであり、ボルト孔4aを有する本体板部4bと、この本体板部4bの左右両端から外壁面材2に対し若干後退して左右両側に拡がる拡張板部4cと、この拡張板部4cの先端から外壁面材2に対し後退する側に延びる案内板部4dと、前記本体板部4bの上端から外壁面材2に向かって屈曲した屈曲部4eとでなる。前記案内板部4dの下辺は、外壁面材2に対し後退する側ほど下位に位置する傾斜状とされている。
【0015】
戻り止め部材5は、上部にボルト孔5aを有し、このボルト孔5aの下方の位置に、外壁面材2に対し後退する側に曲げられた段部5bが形成され、さらにこの段部5bに続いて、外壁面材2側へ斜めに延びる傾斜部5cが形成されている。戻り止め部材5の上端は、外壁面材2に向かって屈曲した屈曲部5dになっている。戻り止め部材5は、ばね用鋼を折り曲げ加工して成形したものであり、全体に弾性を有する。
【0016】
アンカー本体部6bの外壁面材2と反対側面に戻り止め部材5、固定用金具4、スプリングワッシャ9の順に重ね合わせ、各ボルト孔4a,5a,6cに固定用金具4側からボルト7を挿通し、その先端をナット8に螺着させることにより、固定用金具4および戻り止め部材5が外壁面材2に取付けられる。この取付状態では、固定用金具4および戻り止め部材5の屈曲部4e,5dがアンカー本体部6bの上面に係合している。
【0017】
下地フレーム1に外壁面材2を取付ける方法を説明する。図4に示す下地フレーム1に外壁面材2を対面させた状態から、固定用金具4が固定プレート3よりも高い位置になるように外壁面材2を持上げ、図5に示すように、戻り止め部材5が固定プレート3に当たる位置まで外壁面材2を下地フレーム1の側に移動させる。固定プレート3に押付けられた戻り止め部材5は、撓み変形する。
【0018】
図5の状態から外壁面材2を下ろすことにより、固定プレート3の切欠き3aに固定用金具4の本体板部4bが挿入される。切欠き3aの上端は先広がり形状とされているため、切欠き3aに固定用金具4の本体板部4bを無理なく挿入することができる。その際、下辺が傾斜状になった固定用金具4の案内板部4dによって固定プレート3が案内されて、固定プレート3の切欠き3aと固定用金具4の本体板部4bの、下地フレーム1と外壁面材2の並び方向の位置が揃えられる。そして、切欠き3aの底部まで固定用金具4の本体板部4bが挿入されると、固定プレート3の下端が戻り止め部材5の段部5bを乗り越えて、戻り止め部材5は自らの弾性力により元の自然状態に復帰する。それにより、図4に示すように、戻り止め部材5の段部5bが固定プレート3の下端を受ける状態となり、下地フレーム1への外壁面材2の固定が完了する。
【0019】
図1に示す固定完了状態では、固定プレート3の切欠き3aに固定用金具4の本体板部4aが当たることで、固定用金具4は固定プレート3に対して下方および左右への移動が規制されている。また、固定プレート3の切欠き3a周辺部が、固定用金具4の拡張板部4cと戻り止め部材5とによって挟み付けられていることにより、固定用金具4は固定プレート3に対して下地フレーム1と外壁面材2の並び方向への移動が規制されている。さらに、戻り止め部材5の段部5bが固定プレート3の下端を受けていることにより、前固定用金具4に対する固定プレート3の相対的な下方移動、言い換えると固定用金具4の固定プレート3に対する上方への移動が規制されている。
【0020】
このように、下地フレーム1の外壁面材2と対向する面すなわち裏面に設けた固定プレート3に、外壁面材2の下地フレーム1に対向する面に設けた固定用金具4を係合させることで下地フレーム1に外壁面材2を固定するため、外壁面材2の表面にビス孔等の跡が残らず、仕上がりが美しい。固定プレート3の切欠き3aに固定用金具4を上方から挿入することで、固定プレート3へ固定用金具4を係合させられるので、外壁面材2の固定が容易で、その精度が現場作業者の熟練度により左右されない。
【0021】
図1ないし図5では、下地フレーム1の片面にだけ外壁面材2を固定した状態を示しているが、下地フレーム1の両面に外壁面材2を固定する場合は、もう一方の面にも外壁面材2が固定される。その場合、もう一方の面については、内側からのビス留めにより外壁面材2を固定してもよく、あるいはこの発明の外壁面材の固定構造を適用して外壁面材2を固定してもよい。内側からのビス留めによる場合は、その面の外壁面材2の固定を先に行う。
【0022】
上記実施形態は、左右両縦フレーム1aの上下両端部の計4箇所に、それぞれ切欠き3aを有する固定プレート3を設けた構成としたが、図7に示すように、左右の縦フレーム1a間を繋ぐ固定プレート3を設け、この固定プレート3の両端部の近傍にそれぞれ切欠き3aを形成した構成としてもよい。
【0023】
また、図8に示すように、縦フレーム1aのリブ1aaの一部を内側に延ばして代用固定プレート13とし、この代用固定プレート13に切欠き13aを設けてもよい。
【0024】
さらに、図9に示すように、戻り止め部材15を円環状としてもよい。この円環状の戻り止め部材15は、中央部にボルト孔15aを有し、このボルト孔15aの周囲に、外壁面材2に対し後退する側に曲げられた段部15bが形成され、さらにこの段部15bに続いて、外壁面材2側へ斜めに延びる傾斜部15cが形成されている。このように戻り止め部材15を円環状とすると、ボルト7等により外壁面材2のアンカー6に取付けられた状態で、ボルト7回りの位相がずれた場合でも、常に段部15bにより固定プレート3の下端を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態にかかる外壁面材の固定構造の一部破断側面図である。
【図2】同外壁面材の固定構造の平面図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】同外壁面材の固定構造の下地フレームに外壁面材を固定する前の状態を示す一部破断側面図である。
【図5】同外壁面材の固定構造の下地フレームに外壁面材を固定する途中の状態を示す一部破断側面図である。
【図6】同外壁面材の一部を分解した側面図である。
【図7】この発明の異なる実施形態にかかる外壁面材の固定構造の下地フレームの正面図である。
【図8】この発明の異なる実施形態にかかる外壁面材の固定構造の一部の正面図である。
【図9】(A)は異なる戻り止め部材の正面図、(B)はその破断側面図である。
【図10】従来の下地フレームに外壁面材を固定する方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1…下地フレーム
2…外壁面材
3…固定プレート
3a…切欠き
4…固定用金具
4b…本体板部
4c…拡張板部
5…戻り止め部材
5b…段部
6…アンカー
7…ボルト
8…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地フレームの外壁面材と対向する面に、上方が開いた切欠きを有する固定プレートを固定状態で設けると共に、外壁面材の下地フレームに対向する面に、前記固定プレートの切欠きに上方から挿入されて、固定プレートに対して下方へ移動不能、外壁面材の水平な面方向に移動不能、および下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能に係合する固定用金具を設け、前記固定プレートに前記固定用金具を係合させることで下地フレームに外壁面材を固定することを特徴とする外壁面材の固定構造。
【請求項2】
請求項1において、前記固定用金具は、前記切欠きの底面および側面に係合して、前記固定用金具を前記固定プレートに対して下方へ移動不能および外壁面材の水平な面方向に移動不能とする本体板部と、この本体板部から下地フレームと外壁面材の並び方向に位置をずらせて外壁面材の水平な面方向に拡がり、前記固定プレートの切欠きの周辺部に係合して、前記固定用金具を前記固定プレートに対して下地フレームと外壁面材の並び方向に移動不能とする拡張板部とを有する外壁面材の固定構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、外壁面材の下地フレームに対向する面に、前記固定プレートに前記固定用金具を係合させた状態で、固定用金具に対する固定プレートの相対的な下方移動を規制する戻り止め部材を設けた外壁面材の固定構造。
【請求項4】
請求項3において、前記戻り止め部材は、前記固定プレートの下端を受ける段部を有し、前記固定プレートの切欠きへの前記固定用金具の挿入時には、前記固定プレートにより前記戻り止め部材の段部が固定プレートに対し干渉しない位置へ押し退けられ、挿入完了時に自らの弾性反発力で前記段部が前記固定プレートの下端を受ける位置へ復帰する外壁面材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−249989(P2009−249989A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102504(P2008−102504)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】