説明

外来タンパク質を保持する酵母及びその利用

【課題】酵母細胞表層において、外来タンパク質を活性発現に好ましい形態で保持する技術を提供する。
【解決手段】外来タンパク質を細胞表層に保持するための酵母において、セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン、タイプIIドックリンドメイン及び特定のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメインを含む第1の骨格タンパク質と、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来タンパク質を高い活性を発揮可能に酵母の細胞表層に保持するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の酵素の協同的又は段階的な反応により一連の反応を進行させるためには、関連する酵素が一定の順序で配列されていることが好ましいと考えられている。
【0003】
例えば、セルロースなどの生体高次構造物を分解利用するには、複数の酵素の協同的でかつ段階的な反応が必要とされている。セルロースを分解するある種の微生物は、細胞表面にセルロースを分解するための多種類の酵素の複合体(セルロソーム)を備えている。セルロソームは、複数のセルロース分解酵素が結合するセルロース結合タンパク質を備えることで、難分解性の結晶セルロースを効率的に分解すると考えられている。
【0004】
このことから、セルロソームの構造を模倣して、酵素を機能的に配列させて反応効率に優れた酵素系列を人工的に構築する試みもなされている。例えば、複数の酵素がクロストリジウム・ジョスィ(Clostridum josui)等の由来の複数の酵素結合用ドメインを有するセルロース結合タンパク質を利用するものがある(特許文献1、2)。
【0005】
また、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)においてミニセルロソームを分泌させるものも開示されている(非特許文献1)。さらに、クロストリジウム・セルロヴォランス(Clostridium cellulovorans)由来のコヘシン(cohesin)とスタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)由来のZZドメインとをリンカーで連結したタンパク質を酵母細胞表層に連結する試みもある(非特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−157282号公報
【特許文献2】特開2004−236504号公報
【非特許文献1】S. Perret et al., J. Bacterol., 186(1), 253-257(2004)
【非特許文献2】伊藤ら、C106、第71回化学工学会予稿集(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した文献の方法は、酵母の細胞表層において保持したエンドグルカナーゼなどのセルラーゼの良好な活性を実現するものではなかった。理由としては、線状の足場タンパク質の保持量が少ない、足場タンパク質への酵素の結合量が少ない、結合した状態での酵素活性が低い等、種々想定されるものの明らかではなかった。セルロース系バイオマスを循環利用可能な資源として活用するには、酵母の細胞表層に保持したセルラーゼによるセルロースの効率的な分解が必須であった。
【0008】
以上説明したように、現状において、酵母の細胞表層においてセルラーゼを発現させる場合において、より効率的なセルラーゼ活性、すなわち、より高いセルロースの分解活性を得るための技術が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、酵母細胞表層において、外来タンパク質を活性発現に好ましい形態で保持する技術を提供することを一つの目的とする。より具体的には、外来タンパク質を活性発現に好ましい形態で細胞表層に備える酵母を、当該酵母を得るための発現ベクター及びセット、当該酵母の作製方法、及び当該酵母を用いた有用物質生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した課題を解決するべく、酵母の細胞表層において保持させる線状の足場タンパク質の構造につき種々検討したところ、セルロソームを産生する細菌のセルロソームのスキャホールディンタンパク(以下、本明細書において骨格タンパク質という。)に含まれる親水性アミノ酸に富むドメイン(Xモジュールと称される。)を足場タンパク質に含めることによって、外来タンパク質を細胞表層に保持し、しかも外来タンパク質による高い活性を発揮する酵母が得られるという知見を得た。本発明によれば以下の手段が提供される。
【0011】
本発明によれば、外来タンパク質を細胞表層に保持するための酵母であって、
以下の3つのドメイン;
(a)セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の外来タンパク質結合ドメイン、
(b)前記タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン、及び
(c)前記タイプIスキャホールディンタンパク質の前記タイプIIドックリンドメインに隣接する配列番号1に記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン、
を含む第1の骨格タンパク質と、
セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、
を備え、
前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、
前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されている、酵母が提供される。
【0012】
本発明の酵母において、前記骨第1の骨格タンパク質は、さらに、セルロース結合ドメインを含むことができる。また、前記第1の骨格タンパク質の前記(a)のドメイン、前記(b)のドメイン及び前記(c)のドメインは、それぞれ、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のセルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質に由来していてもよく、前記第1の骨格タンパク質は、3個以上の前記(a)のドメインを備えていてもよい。さらに、前記第1の骨格タンパク質は、4個以上7個以下の前記(a)のドメインを備えることができる。さらにまた、前記第1の骨格タンパク質を細胞外に分泌するものであってもよい。
【0013】
前記第2の骨格タンパク質は、前記第1の骨格タンパク質結合ドメインを複数個タンデムに有していてもよく、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のセルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質に由来するものであってもよい。また、前記第2の骨格タンパク質を細胞表層提示するものであってもよい。
【0014】
前記(a)のドメインは、セルロースを分解する酵素群から選択される1腫又は2種以上を結合可能とすることができる。
【0015】
本発明によれば、また、細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、
上記(a)〜(c)のドメインを備える第1の骨格タンパク質と、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、を備え、前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されている、酵母が提供される。
【0016】
上記酵母においては、前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上とすることができ、好ましくは、前記外来タンパク質は、少なくともβ−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼからなる群から選択される2種以上を含んでいる。さらに、前記酵母は、外来タンパク質の生産能を有していないことが好ましい。
【0017】
本発明によれば、上記記載の外来タンパク質を細胞表層に保持するための酵母の作製方法であって、上記のいずれかに記載の酵母であって、前記外来タンパク質を結合可能な前記(a)のドメインを備える酵母を準備する工程と、前記外来タンパク質を前記酵母の外部から供給して、前記酵母の細胞表層側に前記外来タンパク質を保持させる工程と、を備える、作製方法が提供される。
【0018】
前記タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1又は2種以上とすることができる。
【0019】
本発明によれば、セルロースの分解方法であって、セルロース系材料中のセルロースと、
細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、上記(a)〜(c)の3つのドメインを含む第1の骨格タンパク質と、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、を備え、前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されており、前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素である酵母と、を接触させて、前記酵素によりセルロースを分解する工程、を備える、分解方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、セルロースを利用する有用物質の生産方法であって、セルロース系材料中のセルロースと、細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、上記(a)〜(c)の3つのドメインを含む第1の骨格タンパク質と、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、を備え、前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されており、前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素である酵母と、を接触させて、前記酵素によりセルロースを分解する工程と、前記酵素によって得られるセルロース分解産物を前記酵母によって資化し有用物質に変換する工程と、を備える生産方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、外来タンパク質を保持する酵母及びその利用に関している。本発明の酵母の細胞表層の一例を図1に示す。本発明の酵母は、足場タンパク質である第1の骨格タンパク質が、上記(a)〜(c)の3つのドメインを有し、第2の骨格タンパク質が、タイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを備えていることにより、外来タンパク質の高い活性を発揮する酵母を得ることができる。
【0022】
このような効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、このような骨格タンパク質の組み合わせ及び3つのドメインの組み合わせによると、結果として外来タンパク質をその機能を発揮しやすい状態で保持されたか、あるいは、多数個の外来タンパク質が細胞表層に保持されたことが推測される。
【0023】
以下、本発明の各種実施形態に関し、外来タンパク質を保持のための酵母、外来タンパク質を保持した酵母及びその作製方法、セルロースの分解方法並びに有用物質の生産方法について順次説明する。
【0024】
(外来タンパク質を保持するための酵母)
本発明の外来タンパク質を保持するための酵母(以下、外来タンパク質保持用酵母という。)は、特定の3つのドメインを含む第1の骨格タンパク質と、当該第1の骨格タンパク質を結合するドメインを含む第2の骨格タンパク質と、を備えている。この外来タンパク質保持用酵母は、外来タンパク質を細胞表層に保持し、当該外来タンパク質の高い活性を発揮することができる。かかる酵母は、酵母が本来的には資化できない材料を、細胞表層で分解して酵母が資化可能な栄養源に変換するのに用いることができる。この結果、酵母が従来資化できないセルロースなどの材料をあたかも酵母自身が資化するかのように効率的に利用することができるようになる。
【0025】
(酵母)
外来タンパク質保持用酵母に用いる酵母としては、特に限定されない。例えば、ピキア属、サッカロマイセス属及びカンジダ属から選択されるいずれかであることが好ましい。ピキア属としては、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等が挙げられ、サッカロマイセス属としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等が挙げられる。また、カンジダ属としては、カンジダ・クルゼイ(Candida krusei)等が挙げられる。また、天然にある酵母のほか遺伝子工学的に改変した酵母であってもよいし、化学的な手法により変異させた酵母であってもよい。
【0026】
(外来タンパク質)
外来タンパク質保持用酵母において保持しようとする外来タンパク質は特に限定されない。外来タンパク質としては1種類のみならず2種類以上を同時に保持することができる。好ましくは、協同的又は段階的に機能する多数個又は複数種類のタンパク質である。こうしたタンパク質としては、その構造の観点からは、ペプチド鎖を有していれば足り、糖タンパク質、脂質タンパク質などのタンパク質と他の生体成分等とのタンパク質複合体であってもよい。また、その機能の観点からは、特に限定されないが、例えば、酵素、抗体、受容体、抗原として機能するものが挙げられる。
【0027】
外来タンパク質保持用酵母が保持するタンパク質としては、酵素が好ましい。特に、複数種類の酵素が協同的又は段階的に作用する酵素反応系を構成する当該複数酵素群の少なくとも一部であることが好ましい。本発明の外来タンパク質保持用酵母によれば、多数個又は複数種類の酵素を近接配置することができるため、複数の酵素反応が必要とされる酵素反応系における全体の反応速度を高めることができる。こうした酵素群の一つとしては、セルロースを分解する酵素であるセルラーゼやデンプンを分解する酵素群が挙げられる。セルラーゼについては、後段にて詳述する。
【0028】
(第1の骨格タンパク質)
本発明のタンパク質保持用酵母は、第1の骨格タンパク質をその表層側に備えることができる。換言すれば、酵母の細胞表層において露出された状態で第1の骨格タンパク質を備えている。また、タンパク質保持用酵母は、細胞表層に保持された第2の骨格タンパク質を介して第1の骨格タンパク質を備えている。
【0029】
第1の骨格タンパク質は、基本的に単鎖のポリペプチド鎖から構成されるタンパク質であり、少なくとも以下の3つの異なるドメインを備えている。以下、各ドメインについて説明する。
【0030】
(セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の外来タンパク質結合ドメイン)
外来タンパク質結合ドメインは、酵母にとっての外来タンパク質を結合保持するためのドメインである。このドメインは、セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメインに由来している。スキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメインは、以下の表1に示す各種のセルロソーム生産微生物の形成するセルロソーム(セルラーゼ複合体)のタイプIのスキャホールディンタンパク質において触媒活性のあるセルラーゼを非共有結合にて結合するドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50、Demain, A. L., et al., Microbiol Mol. Biol Rev., 69(1), 124-54(2005), Doi, R. H., et al., J. Bacterol., 185(20), 5907-5914(2003)等)。こうしたタイプIコヘシンドメインとしては、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIコヘシンのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。
【表1】

【0031】
セルロソームは、嫌気性細菌や嫌気性糸状菌によって菌体外に形成され、通常、微生物表面に結合して又は培養液中に存在している。セルロソームとしては、表1に示すセルロソームを形成する微生物を含む嫌気性微生物等、公知のセルロソーム生産微生物が生産するセルロソーム及び将来的に明らかにされるセルロソーム並びにこれらの改変体のいずれであっても本発明の第1の骨格タンパク質や後述する第2の骨格タンパク質に用いることができる。セルロース分解能力の高さ等を考慮すると、クロストリジウム・サーモセラム等の好熱嫌気性微生物やクロストリジウム・セルロリティカム等のクロストリジウム属菌の生産するセルロソーム又はその改変体を本発明において用いることができる。
【0032】
第1の骨格タンパク質の外来タンパク質結合ドメインとしては、例えば、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のタイプIスキャホールディンタンパク質、クロストリジウム・ジョスィ(Clostridium josui)のタイプIスキャホールディンタンパク質等のタイプIコヘシンドメインを用いることができる。また、C.cellulolyticum(NCBIのホームページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、アクセッション番号:U40345)、C.cellulovorans(同ホームページ、アクセッション番号:M73817)、C.acetobutylicum(同ホームページ、アクセッション番号:AE001437)に開示されるタイプIコヘシンドメインも挙げられる。
【0033】
なお、本明細書において、タンパク質の所定のドメインに由来している、とは、天然に存在する当該所定のドメインのアミノ酸配列又はその改変配列からなることを意味している。改変配列は、当該所定のドメインと同一の作用を発揮する範囲でアミノ酸配列が改変された配列である。こうしたアミノ酸配列は、例えば、当該所定のドメインのアミノ酸配列と好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有するものである。
【0034】
なお、本明細書において同一性及び類似性とは、当業者において知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術分野で“同一性 ”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する好ましい方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
【0035】
第1の骨格タンパク質は、こうした外来タンパク質結合ドメインを複数個タンデムに有することが好ましい。「タンデムに有する」とは、アミノ酸配列において、複数個の当ドメインが並んだ状態であればよく、並んだタンパク質結合ドメイン間における離間配列の存在の有無、離間間隔が一定であること及び異種のドメインの存在を問わない。好ましくは、ドメイン間に離間配列を有している。複数個の外来タンパク質結合ドメインは、1種類のアミノ酸配列からなる同一種類のドメインであってもよいし、2種類以上の異なるアミノ酸配列からなるドメインであってもよい。異なる種類の外来タンパク質結合ドメインを用いることで、異なる外来タンパク質を第1の骨格タンパク質上に配列させることができる。
【0036】
第1の骨格タンパク質は、酵母が凝集性を獲得する程度に外来タンパク質結合ドメインを有していることが好ましい。酵母に酵素等のタンパク質を保持させて利用するとき、こうした酵母が凝集可能であれば、凝集された酵母上において酵素等を集約させることができるほか、酵母を効率的に回収して繰り返し利用することができる。
【0037】
第1の骨格タンパク質により酵母に凝集性を付与するのにあたり、3個以上の外来タンパク質結合ドメインを有していることが好ましい。3個以上であると、酵母に凝集性を付与しやすくなる傾向があるからである。好ましくは4個以上である。4個以上であると明らかに酵母に凝集性を付与しやすくなるからである。凝集性の観点からは外来タンパク質結合ドメイン数の上限は特に限定されない。なお、発現量を容易に確保するという観点からは、7個程度以下であることが好ましい場合がある。
【0038】
外来タンパク質結合ドメインは、タイプIコヘシンドメインに基づく結合性で外来タンパク質を結合保持することができる。すなわち、タイプIコヘシンドメインは、タイプIドックリンドメインを有する外来タンパク質と結合することができる。タイプIドックリンドメインは、タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンと非共有結合で結合する部位であり、セルロソームを構成するセルラーゼが備えるドメインである。例えば、外来タンパク質結合ドメインが、クロストリジウム・サーモセラム由来のタイプIコヘシンに由来するとき、タイプIドックリンドメインとしては、配列番号2で表されるアミノ酸配列が挙げられ、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・サーモセルロボランス、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・アセトブチリカム、ルミノコッカス・フレイブファシエンス(R. fravefaciens)、アシドサーモス・セルロリティカス(A. cellulolyticus)、バクテロイデス・セルロソルベンス(B.cellulosolvens)由来のタイプIコヘシンに由来するとき、それぞれ、配列番号3〜配列番号9で表されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0039】
外来タンパク質結合ドメインは、第1の骨格タンパク質において、第2の骨格タンパク質との結合を妨げない箇所に備えられていればよい。典型的には、N末端以外の部位に備えられている。
【0040】
(タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン)
第2の骨格タンパク質結合ドメインは、後述する第2の骨格タンパク質を結合するためのドメインである。このドメインは、セルロソームにおいて、タイプI骨格タンパク質を非共有結合でタイプII骨格タンパク質上に保持するためのドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50等)。こうしたタイプIIドックリンドメインとしては、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIIドックリンドメインのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。例えば、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIIドックリンドメインとしては、配列番号10に記載されるアミノ酸配列が挙げられ、アシドサーモス・セルロリィカス及びルミノコッカス・フレイブファシエンスの同ドメインとしては、それぞれ配列番号11及び12に記載されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0041】
第2の骨格タンパク質結合ドメインは、第2の骨格タンパク質結合ドメインを結合するドメインであることから、第1の骨格タンパク質のC末端若しくはN末端又はこれらの近傍に第2の骨格タンパク質を結合可能に備えられる。典型的には、第1の骨格タンパク質のC末端又はその近傍に備えられる。
【0042】
(配列番号1で表されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン)
このドメイン(以下、本明細書において第3のドメインという。)を備えることで、第3のドメインを備えない酵母よりも、結果として、外来タンパク質の活性を増強することができる。第3のドメインが結果として外来タンパク質の活性を増強することへの作用は既に説明したように必ずしも明らかではない。配列番号1で表されるアミノ酸配列は、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンに隣接するXモジュールと呼ばれる配列である。Xモジュールの機能は必ずしも明らかでなく、また、クロストリジウム・サーモセラム又はクロストリジウム属でもなく、しかも真菌である酵母細胞表層に保持させる第1の骨格タンパク質に用いるときにどのように作用するかは全く知られていない。
【0043】
このような第3のドメインとしては、配列番号1で表されるアミノ酸配列のほか、当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を用いることができる。より好ましくは95%以上である。すなわち、配列番号1で表されるアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び付加から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。好ましくは、1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下の変異であり、さらに好ましくは、1個以上3個以下である。
【0044】
なお、本明細書の開示によれば、本発明に用いることのできる第3のドメインは、上記のように配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列に限定されるものではなく、第2の骨格タンパク質結合ドメインが由来するセルロソーム産生微生物と同一の株又は種のタイプIスキャホールディンタンパク質のXモジュールに由来する必要はなく、同一種の異なる株や他の種のセルロソーム産生微生物に由来していてもよいが、同一種又は株のXモジュールに由来していることが好ましい。
【0045】
配列番号1で表されるアミノ酸配列の起源であるクロストリジウム・サーモセラム以外に由来する第3のドメインのアミノ酸配列としては、例えば、アシドサーモス・セルロリィティカス由来のXモジュールである配列番号13で表されるアミノ酸配列(配列番号1との同一性が62%である。)、ルミノコッカス・フレイブファシエンス由来のXモジュールである配列番号14で表されるアミノ酸配列(配列番号1との同一性が21%である。)が挙げられる。
【0046】
第1の骨格タンパク質は、第3のドメインを第2の骨格タンパク質結合ドメインの近傍、好ましくは第2の骨格タンパク質結合ドメインに隣接して、第2の骨格タンパク質結合ドメインが存在する末端よりも中央よりの部位に備える。第2の骨格タンパク質結合ドメインは、C末端側にある場合には、第2の骨格タンパク質結合ドメインのN末端側に隣接して備えられることが好ましい。
【0047】
(セルロース結合ドメイン)
外来タンパク質保持用酵母が、セルロースの分解に用いる場合には、第1の骨格タンパク質は、セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のセルロース結合ドメイン(CBD)由来のセルロース結合ドメインを有していることが好ましい。セルロース結合ドメインは、タイプIのスキャホールディンタンパク質において基質であるセルロースに結合するドメインとして知られている(前述粟冠ら)。セルロース結合ドメインは、1個又は2個以上備えられていてもよい。なお、酵母が備える第1の骨格タンパク質の全てにおいてセルロース結合ドメインを要するものではない。
【0048】
各種のセルロソーム生産微生物のセルロソームにおけるCBDのアミノ酸配列及びDNA配列の多くが決定されており、これらの各種のCBDのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。例えば、クロストリジウム・サーモセラムのセルロース結合ドメインとしては、配列番号15で表されるアミノ酸配列が挙げられる。また、クロストリジウム・セルロリティカス、クロストリジウム・セルロボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ジョスイ、アシドサーモス・セルロリティカス、バクテロイデス・セルロボランスのセルロース結合ドメインとしては、ぞれぞれ配列番号16〜21で表されるアミノ酸配列を有するドメインが挙げられる。
【0049】
セルロース結合ドメインは、第1の骨格タンパク質においては、好ましくはN末端若しくはその近傍又はその全長においてN末端よりに備えられている。
【0050】
以上説明した第1の骨格タンパク質は、各要素を人工的に組み合わせた人工タンパク質であってもよいし、セルロソーム生産微生物のタイプIスキャホールディンタンパク質に由来するものであってもよい。すなわち、タイプIスキャホールディンタンパク質の全体若しくはその一部又はこれらの改変体であってもよい。改変体とは、セルロソーム生産微生物のセルロソームから取得されるタイプIスキャホールディンタンパク質の塩基配列及び/又はアミノ酸配列の全体又はその一部において少なくとも部分的に改変したものをいう。第1の骨格タンパク質は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のタイプIスキャホールディンタンパク質、クロストリジウム・ジョスィ(Clostridum josui)のタイプIスキャホールディンタンパク質の全体若しくはその一部又はその改変体を利用することができる。
【0051】
(第2の骨格タンパク質)
第1の骨格タンパク質が細胞の表層に備える他の一つの形態は、第1の骨格タンパク質が細胞の表層に結合した第2の骨格タンパク質と非共有結合により結合した結果、細胞の表層側に保持される形態である。第2の骨格タンパク質は、第1の骨格タンパク質を非共有結合で結合可能な第1の骨格タンパク質結合ドメインを有して細胞の表層側に配置されている。
【0052】
第2の骨格タンパク質は、基本的に単鎖のポリペプチド鎖から構成されるタンパク質である。第1の骨格タンパク質結合ドメインとは、そのアミノ酸配列に基づき、非共有結合で第1の骨格タンパク質を結合できるドメインである。第2の骨格タンパク質に対して非共有結合で第1の骨格タンパク質を結合させることができるため、第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質に対して容易に結合させたり第2の骨格タンパク質から容易に分離・回収したりすることができる。
【0053】
こうした第1の骨格タンパク質結合ドメインとしては、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質(アンカータンパク質とも言われる。)のタイプIIコヘシンドメイン由来のドメインを用いることができる。タイプIIコヘシンドメインは、セルロソームにおいて、タイプIスキャホールディンタンパク質を非共有結合でタイプIIスキャホールディンタンパク質上に保持するためのドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50等)。タイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメインには、タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメインが結合することが知られている。
【0054】
こうしたタイプIIドックリンドメインとしては、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIIコヘシンのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。
【0055】
第1の骨格タンパク質結合ドメインとしては、例えば、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIIコヘシンであるSdbA,Orf2,OlpBのタイプIIコヘシンドメインを用いることができる。また、アシドサーモス・セルロリティカスのScaD,ScaBのタイプIIコヘシンドメイン、バクテロイデス・セルロソルベンスのScaAのタイプIIコヘシンドメイン等が挙げられる。
【0056】
第2の骨格タンパク質は、第1の骨格タンパク質結合ドメインを1個のみ有していてもよいが、複数個タンデムに備えていてもよい。複数個備えることで、外来タンパク質をより高密度に酵母表層上に保持しやすくなる。
【0057】
複数個の第1の骨格タンパク質結合ドメインは、1種類のアミノ酸配列からなる同一種類のドメインであってもよいし、2種類以上の異なるアミノ酸配列からなるドメインであってもよい。異なる種類の骨格タンパク質結合ドメインを用いることで、異なる第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質上に配列させることができる。
【0058】
第2の骨格タンパク質は細胞の表層側に結合される必要がある。第2の骨格タンパク質は、細胞の表層と共有結合又は非共有結合により結合される。共有結合にて第2の骨格タンパク質を細胞の表層に結合している場合には、洗浄等によっても第2の結合タンパク質が細胞から分離されないで保持されるというメリットがあり、非共有結合による場合には、逆に洗浄等により細胞から第2の骨格タンパク質及び第1の骨格タンパク質を分離できるというメリットがある。いずれにしても、第2の骨格タンパク質は、酵母表層と結合するための酵母表層結合ドメインを有している。
【0059】
第2の骨格タンパク質を酵母表層側に結合させるシステムとしては、公知の各種の酵母表層提示システムを用いることができる。第2の骨格タンパク質は、直接細胞表層に結合するためにこれらの各種システムにおいて必要とされる細胞表層結合ドメインを有することができる。酵母表層提示システムとしては、例えば、表層タンパク質であるα−アグルチニン又はそのレセプターを利用することができる。アグルチニンを利用したタンパク質の細胞表層提示システムは、例えば、インビトロジェン社からpYD1ベクター及びEBY100サッカロマイセス・セレビジエを含む酵母用ディスプレイキットとして入手することができる。また、細胞表層提示システムとしては、このほか、SAG1、FLO1〜FLO11などの細胞表層タンパク質を用いるシステム等を用いることができる。
【0060】
このような第2の骨格タンパク質としては、上記した第1の骨格タンパク質結合ドメインと酵母細胞表層結合ドメインとを人工的に組み合わせた融合タンパク質として構築してもよいし、セルロソーム生産微生物のタイプII骨格タンパク質由来としてもよい。すなわち、当該骨格タンパク質の一部又は全部あるいはこれらの改変体であってもよい。こうしたタイプII骨格タンパク質としては、クロストリジウム・サーモセラムのタイプII骨格タンパク質、クロストリジウム・ジョスィのタイプII骨格タンパク質又はその改変体を利用することができる。
【0061】
(外来タンパク質保持用酵母の作製方法)
このような酵母は、第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質を介して細胞表層に結合させて外来タンパク質保持用酵母を作製するには、第2の骨格タンパク質を酵母において発現させて、細胞表層に結合させ、外部から第1の骨格タンパク質を供給して、第2の骨格タンパク質に第1の骨格タンパク質を結合保持させる形態が挙げられる。このような製造方法によれば、第1の骨格タンパク質を酵母に合成させなくてもよいため、酵母の増殖能やアルコール発酵能への影響を少なくすることができる。
【0062】
当業者であれば、タイプIIのスキャホールディンタンパク質のアミノ酸配列、第1の骨格タンパク質結合ドメインのアミノ酸配列を取得し、公知の細胞表層提示システムを利用することで、酵母を遺伝子工学的に改変して第2の骨格タンパク質を細胞表層に結合した状態で発現させることができる。酵母を含む各種細胞に対するこうした遺伝子導入による外来タンパク質の発現のための各種操作は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual second edition(Maniatis et al.,Cold Spring Harbor Laboratory press.1989)等のプロトコールに従うことができる。
【0063】
また、第1の骨格タンパク質を準備するには、タイプIのスキャホールディンタンパク質のアミノ酸配列、外来タンパク質結合ドメイン、第3のドメイン及びセルロース結合ドメイン等のアミノ酸配列を取得し、大腸菌を利用したタンパク質発現システムや無細胞合成系等を利用することができる。第1の骨格タンパク質を利用することで、酵母を遺伝子工学的に改変して第2の骨格タンパク質を細胞表層に結合した状態で発現させることができる。大腸菌等を用いた外来タンパク質の発現のための各種操作については、上記プロトコール等に従うことができる。
【0064】
外来タンパク質保持用酵母の作製方法の他の形態としては、第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質をそれぞれ酵母において遺伝子組換え等により発現させ、第2の骨格タンパク質を細胞表層に結合させ、細胞外に分泌させた第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質に結合保持させてもよい。本発明者らによれば、第1の骨格タンパク質をシグナルペプチド等を付与して分泌発現させるとともに、第2の骨格タンパク質を細胞表層提示システムを用いて酵母細胞表層に提示させるように改変した酵母を取得し、培養することで、第1の骨格タンパク質を細胞表層に保持する酵母を得られることがわかっている。
【0065】
このほか、第1の骨格タンパク質を酵母で分泌発現させるとともに、第2の骨格タンパク質を酵母外で準備し外部から供給するようにしてもよい。この場合、第2の骨格タンパク質は、前述のアグルチニン等の細胞表層提示システムに基づく細胞表層結合ドメインを備えるようにするのが好ましい。さらに、他の形態として、第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質を、いずれも酵母外で準備して、酵母に供給するようにしてもよい。この場合、第2の骨格タンパク質は、アグルチニン等の細胞表層提示システムに基づく細胞表層結合ドメインを備えるようにすることが好ましい。
【0066】
本発明の外来タンパク質保持用酵母の製造方法によれば、容易に細胞表層で外来タンパク質を保持し、当該外来タンパク質に基づく高い活性を発揮する酵母を得ることができる。また、特別な処理なく、第2の骨格タンパク質に対して第1の骨格タンパク質を結合保持させることができるため、容易に酵母の細胞表層に二次元骨格を付与することができる。
【0067】
(外来タンパク質を細胞表層に保持した酵母)
本発明の外来タンパク質を細胞表層に保持した酵母(以下、外来タンパク質表層保持酵母)は、その細胞表層に外来タンパク質を保持することができ、当該外来タンパク質の高い活性を発現することができる。
【0068】
外来タンパク質表層保持酵母が保持する外来タンパク質は、既に説明したように各種の態様とすることができる。例えば、酵母が直接利用できないかあるいは利用が困難なタンパク質、リグニン、デンプン、セルロース等などの高分子を分解する酵素とすることが好ましい。より好ましくは、酵母が直接利用できないが有用な未利用炭素源であるセルロースを分解するセルラーゼが挙げられる。
【0069】
セルロースは複数の酵素が協同的及び段階的に作用することで初めて効率的に分解される。特に不溶性セルロース及び結晶性セルロースにおいてその傾向がある。本発明の外来タンパク質表層保持酵母は、複数種類のセルラーゼを近接して備えることができるため、セルロースを効率的に分解することができる。特に、本発明酵母は、タイプIコヘシン由来の外来タンパク質結合ドメインを有しているため、セルラーゼの結合に有利である。また、第1の骨格タンパク質がセルロース結合ドメインを備えている場合には、さらに有利である。
【0070】
セルラーゼは、D−グルコースがβ−1,4結合で結合したセルロースを加水分解してD−グルコースまで分解する過程において作用する酵素からなる酵素群から選択されるものであればよく、その由来も特に限定されない。したがって、セルラーゼとしては、例えば、国際生化学・分子生物学連合酵素委員会においてEC3.2.1.Xの番号が与えられるセルロース分解酵素が挙げられる。この番号が与えられる酵素としては、エンドグルカナーゼ(1,4−β−D−グルカングルカノヒドラーゼ、EC3.2.1.4)、β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)、1,4−β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.74)及びエキソセロビオヒドロラーゼ(セルロース1,4−β−セロビオシダーゼ、EC3.2.1.91)が挙げられる。本発明において用いるセルラーゼは、こうしたセルラーゼから選択される1種のみであってもよいし2種以上が組み合わされていてもよい。なお、セルラーゼとしては、これらの作用以外であっても上記分解過程に寄与する酵素も含めることができる。
【0071】
本複合材料は、2種類以上のセルラーゼを備えていることが好ましい。より好ましくは、エンドグルカナーゼ及びエキソセロビオヒドロラーゼから選択される1種類又は2種類を含むことが好ましい。これらの酵素を備えることにより結晶性又は不溶性セルロースを分解することができる。これらの酵素を備えることにより一層効果的に結晶性又は不溶性セルロースを分解することができる。これらのセルラーゼは、セルロースに対して相乗的に作用し効果的に分解できると考えられるからである。さらに、これらのセルラーゼによるセルロースの分解産物である新たな低分子セルロースやセロビオースに作用するβ−グルコシダーゼや1,4−β−グルコシダーゼのいずれか又は双方を備えることが好ましい。一層好ましくは、β-グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びエキソセロビオヒドロラーゼを備える。
【0072】
セルラーゼの由来は特に限定されないが、セルラーゼは表1に示すようなセルロソーム生産微生物のセルロソームを構成するセルラーゼや以下の表2に示すセルロース分解性微生物の生産するセルラーゼ及びこれらの改変体を使用できる。改変体とは、天然のセルラーゼ又はセルロソームから取得されるセルラーゼの塩基配列及び/又はアミノ酸配列において少なくとも部分的に改変したものをいう。なお、改変には、アミノ酸の挿入、置換、欠失及び付加のいずれかあるいは2種類以上のほか、アミノ酸配列に影響しない改変も含む。
【0073】
セルラーゼは、以下の表に示すような各種の天然のセルラーゼ生産微生物又はセルラーゼ又はその改変体若しくはその一部を形成するように人工的に改変した微生物から取得できる。こうした改変微生物は、以下の表に由来する微生物を親株又は宿主とするものであってもよいし、酵母等の工業的利用に適した微生物を親株又は宿主とするものであってもよい。セルラーゼはこれら微生物の菌体外に分泌されるのが通常であり、これらの微生物の培養液からセルラーゼ活性画分を回収することでセルラーゼを容易に取得できる。さらに、タンパク質の無細胞合成系によって取得することもできる。
【表2】

【0074】
本発明の酵母がセルラーゼを結合保持するものであるとき、セルラーゼ以外の酵素を結合保持していてもよい。例えば、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ等のリグノセルロース系材料中のヘミセルロースを分解する酵素を備えることで、リグノセルロース系材料中のヘミセルロースを分解できるようになる。例えば、クロストリジウム・サーモセラムのセルロソームは、キシラナーゼ、リケナーゼ及びマンナナーゼ等の活性も見出されている。また、リグニンを分解するリグニンペルオキシダーゼやマンガンペルオキシダーゼを備えていてもよい。リグニン分解酵素を備えている場合、セルロース系材料の分解のみならずリグノセルロース系材料の分解に本複合材料を用いることができる。なお、リグニン分解酵素を結合保持してリグニンを分解する複合材料を併用することでリグノセルロース系材料を分解することもできるし、別途リグニン分解酵素単体を併用してリグノセルロース系材料を分解することもできる。
【0075】
外来タンパク質としてセルラーゼを保持する酵母は、セルラーゼによるセルロースの分解産物であるグルコース等を酵母自体が備える能力に基づき資化して有用物質を生産することができる。酵母は、アルコール発酵によりアルコールを産生することができる。また、公知の乳酸などの有機酸生産酵母は乳酸などを製造でき、その他有用物質生産能力を変異によりあるいは遺伝子工学的に取得した酵母は、当該有用物質を生産できる。セルラーゼを保持する本発明の酵母は、セルロースの分解産物を炭素源としてこうした有用物質を生産することができる。
【0076】
なお、酵母としては、既に説明したほか、遺伝子組換えにより酸や塩に対して耐性が強化された酵母が挙げられる。こうした酵母の一例として、特開2004−344084に記載されるMF−121株が挙げられる。なお、これらの公報に記載の内容の全ては引用により本明細書の一部に組み込まれる。
【0077】
有機酸を生産する酵母としては、酵母などの微生物を宿主として遺伝子改変により乳酸などの有機酸を生産可能とした公知の形質転換体を用いることができる。こうした乳酸生産酵母などの形質転換酵母は、例えば、特開2003−334092、特開2004−187643、特開2005−137306、特開2006−6271、特開2006−20602、特開2006−42719、特開2006−75133、特開2006−296377等に開示されており、本発明においてはこれらの形質転換酵母を用いることができる。これらの公報に記載の内容の全ては引用により本明細書の一部に組み込まれる。
【0078】
なお、分解対象であるセルロースは、いかなる形態であってもよい。通常、セルロースは、セルロース系のバイオマス材料(以下、セルロース系材料)に含まれている。セルロース系材料としては、セルロースを含有していればよく、どのような由来や形態であってもよい。したがって、セルロース系材料としては、例えば、リグノセルロース系材料、結晶性セルロース材料、不溶性セルロース材料などの各種セルロース系材料等が含まれる。リグノセルロース系材料としては、例えば、木本植物の木質部や葉部及び草本植物の葉、茎、根等においてリグニン等を複合した状態のリグノセルロース系材料が挙げられる。こうしたリグノセルロース系材料としては、例えば、稲ワラ、麦ワラ、トウモロコシの茎葉、バガス等の農業廃棄物、収集された木、枝、枯葉等又はこれらを解繊して得られるチップ、おがくず、チップなどの製材工場廃材、間伐材や被害木などの林地残材、建設廃材等の廃棄物であってもよい。結晶性セルロース系材料及び不溶性セルロース系材料としては、リグノセルロース系材料からリグニン等を分離後の結晶性セルロース及び不溶性セルロースを含む結晶性又は不溶性セルロース系材料が挙げられる。セルロース材料としては、また、使用済み紙製容器、古紙、使用済みの衣服などの使用済み繊維製品、パルプ廃液を由来としてもよい。さらに、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)等のセルロース生産微生物が生産するセルロースを由来としてもよい。
【0079】
さらに、セルロース系材料は、本複合材料による分解に先だってセルラーゼによる分解を容易化するために適当な前処理等がなされていてもよい。例えば、セルロースが非晶質化されたものであってもよい。セルロースの非晶質化は同時に低分子化を伴うことが多い。
例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸などの無機酸による酸性条件下等で、セルロースを部分加水分解することにより、セルロースを非晶質化あるいは低分子化できる。この他、超臨界水、アルカリ、加圧熱水などの処理によってもセルロースの非晶質化又は低分子化を行うことができる。
【0080】
なお、セルラーゼを保持する本発明の酵母によって得られる分解産物は、分解するセルロース系材料、結合保持するセルラーゼの種類等によって相違する。したがって、必ずしもD−グルコースを最終産物とするものではなく、セロビオースやオリゴ糖を主体とする分解産物組成を有していてもよい。
【0081】
以上説明したように、本発明の外来タンパク質保持用酵母は、外来タンパク質の作用を高度に発揮できる酵母であるため、外来タンパク質の作用と酵母本来との作用との相乗効果が期待することができる。しかも、複数種類及び/又は高密度に外来タンパク質を保持できる人工骨格を細胞表層に形成できるため、複数の外来タンパク質による相乗効果を発揮させることができる。
【0082】
(外来タンパク質表層保持酵母の作製方法)
本発明の外来タンパク質表層保持酵母の作製方法は、本発明の外来タンパク質保持用酵母に、第1の骨格タンパク質上の外来タンパク質結合ドメインに結合可能な相互作用ドメインを有する1種又は2種以上のタンパク質を前記酵母内から分泌させて又は酵母外部から供給する工程を備えている。これにより、外来タンパク質結合ドメインに1種又は2種以上の外来タンパク質を結合させて、外来タンパク質表層保持酵母を得ることができる。
【0083】
外来タンパク質を酵母で分泌発現させる場合には、適当なシグナルペプチドと外来タンパク質との融合タンパク質をコードするDNAを用いて酵母を形質転換させるなどすればよい。
【0084】
外来タンパク質は、酵母外部から酵母に対して供給してもよい。外来タンパク質が外来タンパク質保持用酵母の第1の骨格タンパク質の外来タンパク質結合ドメインと相互作用可能なドメイン(タイプIドックリンドメインなど)を有している場合には、当該外来タンパク質をそのまま酵母に対して供給することができる。外来タンパク質が、そのようなドメインを備えていない場合には、遺伝子工学的にそのようなドメインを融合した融合タンパク質を準備する。当業者であれば、既に記載したプロトコール集に基づきこのような融合タンパク質を適宜準備することができる。細胞外から外来タンパク質を供給して保持させることで、酵母における骨格タンパク質の産生能を低下させたり増殖能を低下させたりすることがなく、保持させようとする外来タンパク質を所望の量だけ供給することができる。
【0085】
本発明の外来タンパク質保持用酵母に酵母外から外来タンパク質を供給して細胞表層に結合保持させるには、本保持用酵母と外来タンパク質とを適当な水性媒体下に接触させればよい。本保持用酵母を含む水性媒体に対して外来タンパク質を供給してもよいし、タンパク質を含有する水性媒体中に本保持用酵母を供給してもよい。
【0086】
供給工程で用いる水性媒体は、本保持用酵母と外来タンパク質との生理活性が維持される限りに特に限定されない。これらの生理活性が維持される条件は、タンパク質と酵母とについてその生理活性が吸着工程後も維持される条件である。例えば、これらについて適切なpH、浸透圧及び温度が確保されていればよい。pHは、タンパク質及び細胞によっても異なるが、通常は、pH6以上9以下の範囲である。また、浸透圧も微生物などの細胞に対しておおよそ等張性であることが好ましい。なお、浸透圧は緩衝液や等張化剤のほか適当な塩類を使用して調節することができる。また、温度は、タンパク質の変性等を考慮すると1℃以上10℃以下であることが好ましく、より好ましくは2℃以上5℃以下である。こうした水性媒体としては、塩類溶液等とすることができる。例えば、20mM〜50mM程度のトリス塩酸バッファーとしてもよい。また、0mM超20mM以下、より好ましくは5mM以上15mM以下のCaCl溶液などのカルシウムイオンが存在する水性媒体としてもよい。さらに好ましくは、約10mMのカルシウムイオンが存在する水性媒体とする。こうしたカルシウムイオン含有水性媒体は、典型的にはCaCl2水溶液が挙げられる。こうしたイオン環境において本保持用酵母への外来タンパク質の結合保持傾向が強くなる傾向がある。
【0087】
水性媒体の攪拌にあたっては、その強度を適宜調節すればよい。適切な攪拌強度等の攪拌条件は、所望の外来タンパク質と本保持用酵母とを適切な水性媒体下で各種の攪拌条件で攪拌して、その結果得られた細胞画分のタンパク質量や酵素活性等を測定することで決定することができる。なお、接触回数を増加させるには、供給するタンパク質濃度を増加させるのも有効である。
【0088】
本複合材料を製造するにあたっては、複数種類のタンパク質を本人工骨格材料に同時に供給してもよいし、順次供給してもよい。結合保持させようとするタンパク質が有する相互作用ドメインによって結合すべきタンパク質結合ドメインを予め決めておくことができるため、結合させようとするタンパク質結合ドメインが互いに相違している場合には同時供給することができる。一方、例えば、結合させるべきタンパク質結合ドメインが共有の場合、同時に複数種類のタンパク質を供給すると、タンパク質の結合量を制御することが困難な場合がある。したがって、このような場合において、タンパク質の結合量を調整したい場合には、異なるタンパク質を順次供給するようにする。
【0089】
こうした供給工程によって、外来タンパク質を第1の骨格タンパク質の外来タンパク質結合ドメインに結合保持させるには、上記水性媒体を攪拌することが好ましい。攪拌により、両者の接触確率が向上するからである。
【0090】
(回収工程)
外来タンパク質が細胞表層に結合された酵母を回収するには、水性媒体を公知の固液分離手段により固液分離して菌体画分を回収すればよい。例えば、遠心分離によりペレットとしてセルラーゼ等が保持された微生物を回収することができる。
【0091】
本発明の外来タンパク質表層保持酵母の作製方法は、以上のとおりの形態で実施することができる。このため、上記したとおり、新たなセルラーゼを備える固相担体を提供するとともに、微生物のセルロース分解能を容易に調節することができる。
【0092】
なお、本発明の外来タンパク質表層保持酵母の作製方法に関し、既に説明した、外来タンパク質保持用酵母、外来タンパク質表層保持酵母、外来タンパク質について既に説明した各種の態様を、適用することができる。
【0093】
(セルロースの分解方法)
本発明のセルロースの分解方法は、セルロース系材料のセルロースと、セルラーゼを外来タンパク質として表層保持する本発明の外来タンパク質表層保持酵母と、を接触させて、前記セルラーゼにより前記セルロースを分解する工程、を備えることができる。この分解方法によれば、セルラーゼの高い活性を発揮できる酵母が効率的にセルロースを分解できる。さらに、セルロースの分解産物を酵母が利用して増殖や発酵が可能である。
【0094】
セルロース系材料とセルラーゼを保持する酵母とを接触させる方法は、特に限定しない。酵母及びセルラーゼの活性が維持できる状態であればよい。したがって、酵母の増殖又は発酵条件及びセルラーゼの至適pH、至適温度等を考慮して適宜決定される。また、分解対象であるセルロース系材料の形態は特に限定しないが、分解しようとするセルロース系材料の形態に応じて、酵母が保持するセルラーゼ及びその組み合わせが適宜選択される。なお、本発明の分解方法に関し、既に説明した、外来タンパク質保持用酵母、外来タンパク質表層保持酵母、セルロース系材料及びセルラーゼについて既に説明した各種の態様を、適用することができる。
【0095】
(セルロースを利用する有用物質の生産方法)
本発明のセルロースを利用する有用物質を生産方法は、セルロース系材料中のセルロースとセルラーゼを保持する本発明の外来タンパク質表層保持酵母とを接触させて、前記セルロースを分解する工程と、前記セルラーゼによって分解されたセルロース分解産物を前記酵母によって資化し有用物質に変換する工程と、を備えることができる。
【0096】
この生産方法によれば、セルロース系材料中のセルロースを酵母の表層に結合保持されたセルラーゼが分解するとともに、その分解産物をその酵母が資化して有用物質に変換することができる。このため、効率的にセルロースを利用することができる。特に、従来セルロースを直接利用困難であった酵母が、セルロースを利用して有用物質に変換することができるようになる。なお、本発明の生産方法に関し、既に説明した、外来タンパク質保持用酵母、外来タンパク質表層保持酵母、セルロース系材料及びセルラーゼ並びにセルロースの分解について既に説明した各種の態様を、適用することができる。
【0097】
本発明の生産方法においては、前記細胞として、エタノール生産微生物とすることが好ましい。エタノール生産微生物であれば、セルロース系材料から燃料としても有用であるエタノールを直接生産することができる。また、前記細胞として乳酸などの有機酸生産微生物としてもよい。
【0098】
なお、分解工程〜変換工程は、利用するセルロース系材料及び細胞や変換する有用物質の種類に応じて実施すればよい。すなわち、当該有用物質を生産する微生物等の細胞及び当該有用物質に応じて実施すればよい。例えば、エタノール等の有用物質への変換等のための発酵工程は、以下のようにして実施できる。培地としては、炭素源として上記セルロース系材料のほか、炭素源の一部としてセルロース又はセルロースから分解酵素により生成されるオリゴ糖類又は単糖類を添加することができる。こうすることで、特に培養開始時から培養初期において微生物に効果的に資化可能な単糖類を供給できる。なお、糖類は、分解酵素を抑制しない程度に添加され、好ましくは培養開始時から培養初期(培養開始から2〜10時間以内程度)まで一定期間にのみ糖類を添加するようにする。窒素源及び無機塩類としては、公知のものを適宜選択して利用することができる。
【0099】
なお、培養は、静置培養、振とう培養または通気攪拌培養等を用いることができる。通気条件は、嫌気条件下、微好気条件下及び好気条件等、適宜選択することができる。培養温度も、特に限定しないが、25℃〜55℃等の範囲とすることができる。また、培養時間も必要に応じて設定されるが、6〜150時間程度とすることができる。また、pHの調整は、無機あるいは有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。なお、変換工程終了後、培養液から微生物を除去してエタノール等の有用物質含有画分を回収する工程、さらにこれを濃縮する工程を実施してもよい。
【0100】
有用物質としては特に限定しないが、グルコースを利用して微生物が生成可能なものが好ましい。例えば、エタノールなどの低級アルコール、イソプレノド合成経路の追加によるファインケミカル(コエンザイムQ10、ビタミン及びその原料等)、解糖系の改変によるグリセリン、プラスチック・化成品原料など、バイオリファイナリー技術が対象とする材料が挙げられる。なお、グルコースを利用する微生物としては、特に限定しないが、例えば、グルコースからの代謝系の1種又は2種以上の酵素を遺伝子組換えにより置換、追加等して本来の代謝物でない化合物を産生可能に改変したものであってもよい。
【0101】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することができる。
【実施例1】
【0102】
(タイプIIコヘシンを含む第2の骨格タンパク質発現用ベクターの構築及び当該ベクターによる形質転換)
本実施例では、図2に示すベクター構成図に基づいて、タイプIIコヘシンを含む第2の骨格タンパク質を細胞表層提示させるための染色体導入型ベクターを構築し、酵母を形質転換した。なお、N末端側にはHisタグを備えた第2のタンパク質が発現されるようになっている。
【0103】
C.thermocellum由来のSdb遺伝子の塩基配列に基づいて、PCR法によりTypeIIコヘシン領域1個を含むDNA断片(配列番号22)を増幅断片として取得した。また、同様にPCR法により、Orf2遺伝子の塩基配列に基づいてTypeIIコヘシン領域2個を含むDNA断片(配列番号23)を、それぞれ増幅断片として取得した。それぞれの増幅断片を、制限酵素BglII-XhoI部位を用いて表層提示を行うためのSAG1、Rhizopus Oryzae由来グルコアミラーゼのシグナルペプチドと融合化し、HOR7プロモーター、SAG1ターミネーターを持つプラスミドに導入しpDL-HOR7p-T2Coh, pDL-HOR7p-T2Coh2とした。これらのプラスミドからそれぞれ取得される、HOR7プロモーター以下SAG1ターミネーターまでの断片(Sdb由来及びOrf2由来)を、相同組み換え領域Leu2U,Leu2D、マーカーとしてTrpを持つプラスミドに導入した。Sdb由来断片を保持するプラスミドを、Sse8387Iで切断して断片化した後、サッカロマイセス・セレビジエBJ5465株に常法により導入して形質転換体BJ010株を得た。また、Orf2由来断片を保持するプラスミドを、Sse8387Iで切断して断片化した後、サッカロマイセス・セレビジエEBY100株に常法により導入して形質転換体EBY020株を得た。
【実施例2】
【0104】
(形質転換体における第2の骨格タンパク質発現)
本実施例では、第2の骨格タンパク質を発現するためのベクターを構築するとともに実施例1で取得した形質転換体をYNB+0.5%カザミノ酸+2%グルコース培地を用いて30℃で培養し、OD600=2を超えたところで集菌後、OD600=0.5となるようにYNB+0.5%カザミノ酸+2%ガラクトース培地に植菌し、30℃、48時間誘導発現を行った。その後、OD600=1の1mlの菌体を、PBS1mlで洗浄し、125μlのPBSに懸濁した。この懸濁液に、一次抗体として抗His−tag抗体0.5μgとBSA最終濃度1mg/mlとを添加し、氷中30分静置し、時々懸濁を行った。次に遠心後、PBS1mlで洗浄を行い125μlのPBSに懸濁し、二次抗体としてCy5標識の抗IgG抗体0.5μgとBSA最終濃度1mg/mlとを添加し、氷中30分静置し、時々懸濁を行った。その後、遠心し、PBS1mlで洗浄して50μlのPBSで懸濁後、蛍光顕微鏡にてCy5の蛍光を測定した。その結果を図3に示す。
【0105】
図3に示すように、いずれの形質転換体にも、蛍光が認められた。このことから、各遺伝子断片がコードする第2の骨格タンパク質はそれぞれ形質転換体において細胞表層で発現していることを確認できた。
【実施例3】
【0106】
(第1の骨格タンパク質発現ベクターの構築)
(CBDとコヘシン4個の発現ベクター(pYD−4Cohベクター)の構築)
まず、ガラクトース誘導下に第1の骨格タンパク質を発現するpYD5ベクター(図4)を構築した。Ct ATCC27405からゲノムを抽出した。タイプIスキャホールディンタンパク質であるCipAタンパク質をコードするCipA遺伝子(NCBIのホームページ、アクセッション番号:L08665)(図5参照)の塩基配列に基づき、CBD(セルロース結合ドメイン)+タイプIコヘシン4個を含む断片(配列番号24)を化学合成した。このDNA断片を、pYD1のKpnI−XhoI部位に導入した。これを鋳型として、NheI、Xho1を両端に保持するように以下のプライマー(配列番号25、26)で増幅し、pYD5ベクターの同部位に導入しpYD−4Cohベクターを得た(図4参照)。
Coh4-Nhe:acgtagctagcgttttagcagctggtgcaaatacaccggtatcaggcaatttgaaggttg(配列番号25)
Coh4-Xho:cttaccttcgaagggccctctagactcg(配列番号26)
【0107】
(CBD+コヘシン4個+リンカー部+タイプIIドックリン)の発現ベクター(pYD5−LDocIベクター)の構築
次に、Ct ATCC27405のCipA遺伝子のCBDからC末端までの領域(タイプIIドックリンを含む)を以下のプライマーでゲノムからPCR法で増幅断片として取得し、TOPO BuntIIベクター(Invitorogen)にクローニングし、TOPO−CipAベクターを得た。
CBD-AGA:acgtaggtaccagcaaatacaccggtatcaggcaatttgaaggttgaattct(配列番号27)
CT-cipA-R:acgtactcgagctgtgcgtcgtaatcacttgatgtagctcc(配列番号28)
【0108】
pYD−4Cohを鋳型として、以下のプライマー(配列番号29、30)を用いてPCR法によりリンカー部(G4S3)を含むDNA断片を得た。また、TOPO−CipAを鋳型として、以下のプライマー(配列番号31、32)を用いてPCR法により、増幅断片としてタイプIIドックリン領域を含むDNA断片を得た。これらの各増幅断片を、それぞれ配列番号29及び配列番号32のプライマーで増幅して、リンカー部とタイプIIドックリンとを含むDNA断片を増幅断片として得た。この増幅断片をXhoI及びPmeIで処理して得られたDNA断片を、pYD−4Cohを同一制限酵素で処理して得られたXhoI−PmeI部位に導入して、pYD5−LDocIIベクターを得た(図6参照)。
pYD5-D2-1:tttgacggtggagtaaatgttggagatctc(配列番号29)
pYD5-D2-2:
tagaattgtctttcactatgtctccagaaccaccaccaccagatccaccaccaccagaaccaccaccacccgtagaatcgag
(配列番号30)
pYD5-D2-3: ggagacatagtgaaagacaattcta(配列番号31)
pYD5-D2-4: gggacgtagggtttaaacttactgtgcgtcgtaatcacttgat(配列番号32)
【0109】
(CBD+コヘシン4個+Xドメイン+タイプIIドックリン)の発現ベクター(pYD5−XDocIベクター)の構築
TOPO−CipAベクターを鋳型として、配列番号32のプライマー及び以下のプライマー(配列番号33)を用いて、PCR法により増幅断片として、XドメインとタイプIIドックリンを含むDNA断片を得た。このDNA断片をXhoI及びPmeIで処理して得られた断片を、pYD−4Cohを同一制限酵素で処理して得られたXhoI−PmeI部位に導入して、pYD5−XDocIIベクターとした(図7参照)。
XDoc-Xho:acgtactcgagcctgtaatagaaggatataaagtatccgga(配列番号33)
【実施例4】
【0110】
(第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質を発現する酵母の作製及びセルロースの分解)
実施例3で作製した第1の骨格タンパク質発現ベクターを実施例1で作製した2種類の第2の骨格タンパク質提示酵母に導入して、Xドメインを含む第2の骨格タンパク質を発現する酵母(Sdb+XDOCII、Orf2+XDocII)と、Xドメインを含まない第2の骨格タンパク質を発現する酵母(Sdb+LDOCII、Orf2+LDocII)とを作製した。YNB+0.5%カザミノ酸+2%ガラクトース培地に植菌し、30℃、48時間培養して誘導発現を行った。
【0111】
第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質が発現された酵母に対し、無細胞系で合成したCt由来のエンドグルカナーゼであるCelAを添加することにより取得した酵母のセルラーゼ活性を測定した。セルラーゼ活性は次のようにして測定した。
【0112】
エンドグルカナーゼCelAを供給して骨格タンパク質の機能を確認した。CBD+タイプIコヘシン1個提示酵母OD600=5,1mlを用いて20mM Tris−HCl pH8.0,10mM CaClで洗浄後、20mM Tris−HCl pH8.0,0.15M NaCl,10mM CaCl2,10mg/ml BSA溶液で4℃,1hrブロッキング操作を行い、20mM Tris−HCl pH8.0,0.1M NaCl,10mMCaCl,0.05%tween20 溶液で3回洗浄後、20mM Tris−HCl pH8.0,0.15M NaCl,10mM CaCl,10mg/ml BSA溶液中でCelA無細胞合成液50μlと混合、4℃,1時間反応を行った。次に20mM Tris−HCl pH8.0,0.1M NaCl,10mMCaCl,0.05%tween20溶液で4回洗浄を行い、CelAが結合した酵母を1%CMC,20mM 酢酸緩衝液pH6.0,10mM CaCl溶液に混合し、60℃で反応を行った。この反応液につき、TZ−アッセイ法にてCMC分解活性を測定した。これらの結果を図8に示す。
【0113】
図8に示すように、コヘシンとXドメインとタイプIIドックリンを含む第1の骨格タンパク質を発現する酵母(Sdb+XDocII及びOrf2+XDocII)は、そうでない酵母に対して優れたCMC分解活性を呈した。また、第2の骨格タンパク質が備えるタイプIIコヘシン数を1個から2個に増加することでもCMC活性が向上したが、Xドメインを含むことにより増大したCMC活性より少ない上昇量であった。
【0114】
以上のことから、第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質を酵母表層に発現させて足場を形成して、外来タンパク質を酵母表層に保持することにより、表層において外来タンパク質の高い活性を発揮する酵母を提供できることがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0115】
配列番号25〜33:プライマー
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の酵母の一例の概要を示す図である。
【図2】第2の骨格タンパク質の表層提示用の染色体導入型ベクターを示す図である。
【図3】第2の骨格タンパク質の表層提示用の染色体導入型ベクターを用いて形質転換した酵母の蛍光染色結果を示す図である。
【図4】タンパク質結合ドメインを有する第1の骨格タンパク質を発現するベクターを示す図である。
【図5】CipA遺伝子の構造を示す図である。
【図6】タンパク質結合ドメインとタイプIIドックリンドメインとを有する第1の骨格タンパク質を発現するベクターを示す図である。
【図7】タンパク質結合ドメインとタイプIIドックリンドメインとXドメインとを有する第1の骨格タンパク質を発現するベクターを示す図である。
【図8】4種類の酵母によるグルコース分解活性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外来タンパク質を細胞表層に保持するための酵母であって、
以下の3つのドメイン;
(a)セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の外来タンパク質結合ドメイン、
(b)前記タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン、及び
(c)前記タイプIスキャホールディンタンパク質の前記タイプIIドックリンドメインに隣接する配列番号1に記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン、
を含む第1の骨格タンパク質と、
セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、
を備え、
前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、
前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されている、酵母。
【請求項2】
前記骨1の骨格タンパク質は、さらに、セルロース結合ドメインを含む、請求項1に記載の酵母。
【請求項3】
前記第1の骨格タンパク質の前記(a)のドメイン、前記(b)のドメイン及び前記(c)のドメインは、それぞれ、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のセルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質に由来する、請求項1又は2に記載の酵母。
【請求項4】
前記第1の骨格タンパク質は、3個以上の前記(a)のドメインを備える、請求項1〜3のいずれかに記載の酵母。
【請求項5】
前記第1の骨格タンパク質は、4個以上7個以下の前記(a)のドメインを備える、請求項1〜4のいずれかに記載の酵母。
【請求項6】
前記第1の骨格タンパク質を細胞外に分泌する、請求項1〜5のいずれかに記載の酵母。
【請求項7】
前記第2の骨格タンパク質は、前記第1の骨格タンパク質結合ドメインを複数個タンデムに有している、請求項1〜6のいずれかに記載の酵母。
【請求項8】
前記第2の骨格タンパク質は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のセルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質に由来する、請求項7に記載の酵母。
【請求項9】
前記第2の骨格タンパク質を細胞表層提示する、請求項1〜8のいずれかに記載の酵母。
【請求項10】
前記(a)のドメインは、セルロースを分解する酵素群から選択される1腫又は2種以上を結合可能である、請求項1〜9のいずれかに記載の酵母。
【請求項11】
細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、
以下の3つのドメイン;
(a)セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の前記外来タンパク質結合ドメイン、
(b)前記タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン、及び
(c)前記タイプIスキャホールディンタンパク質の前記タイプIIドックリンドメインに隣接する配列番号1に記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン、
を含む第1の骨格タンパク質と、
セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、
を備え、
前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、
前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されている、酵母。
【請求項12】
前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上である、請求11に記載の酵母。
【請求項13】
前記外来タンパク質は、少なくともβ−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼからなる群から選択される2種以上を含む、請求項12に記載の酵母。
【請求項14】
前記外来タンパク質の生産能を有していない、請求項11〜13のいずれかに記載の酵母。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の外来タンパク質を細胞表層に保持するための酵母の作製方法であって、
請求項1〜13のいずれかに記載の酵母であって、前記外来タンパク質を結合可能な前記(a)のドメインを備える酵母を準備する工程と、
前記外来タンパク質を前記酵母の外部から供給して、前記酵母の細胞表層側に前記外来タンパク質を保持させる工程と、
を備える、作製方法。
【請求項16】
前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1又は2種以上である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
セルロースの分解方法であって、
セルロース系材料中のセルロースと、
細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、
以下の3つのドメイン;
(a)セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の前記外来タンパク質結合ドメイン、
(b)前記タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン、及び
(c)前記タイプIスキャホールディンタンパク質の前記タイプIIドックリンドメインに隣接する配列番号1に記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン、
を含む第1の骨格タンパク質と、
セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、
を備え、
前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、
前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されており、
前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素である酵母と、
を接触させて、前記酵素によりセルロースを分解する工程、
を備える、分解方法。
【請求項18】
セルロースを利用する有用物質の生産方法であって
セルロース系材料中のセルロースと、
細胞表層に外来タンパク質を保持する酵母であって、
以下の3つのドメイン;
(a)セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメイン由来の前記外来タンパク質結合ドメイン、
(b)前記タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメイン由来の第2の骨格タンパク質結合ドメイン、及び
(c)前記タイプIスキャホールディンタンパク質の前記タイプIIドックリンドメインに隣接する配列番号1に記載のアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン、
を含む第1の骨格タンパク質と、
セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質由来のタイプIIコヘシンドメイン由来の第1の骨格タンパク質結合ドメインを含む第2の骨格タンパク質と、
を備え、
前記第2の骨格タンパク質は、前記酵母の細胞表層に保持され、
前記第1の骨格タンパク質は、前記第2の骨格タンパク質を介して前記酵母表層に結合されており、
前記外来タンパク質は、セルロースを分解する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素である酵母と、
を接触させて、前記酵素によりセルロースを分解する工程と、
前記酵素によって得られるセルロース分解産物を前記酵母によって資化し有用物質に変換する工程と、
を備える、生産方法。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−142125(P2010−142125A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319377(P2008−319377)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】