説明

外皮用防菌皮膜形成剤

【課題】耐久性の高い皮膜を皮膚に形成することができる、菌付着防止性に優れた、菌付着そのものを抑制する全く新しい外皮用防菌皮膜形成剤の提供。
【解決手段】2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと式(1)


(式中、Lは、−C−、−(C=O)−NH−、−O−、−(C=O)−O−及び−O−(C=O)−O−からなる群より選ばれる基を示し、Lは炭素数1〜18のアルキル基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。)で示される疎水性基含有単量体により構成される重量平均分子量50000〜5000000の共重合体0.01〜10質量%と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールから選ばれる一種以上の低級アルコール15〜95質量%および水を含み、塗布した後、乾燥して用いることを特徴とする外皮用防菌皮膜形成剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性の高い皮膜を皮膚に形成することができる、菌付着防止性に優れた、菌付着そのものを抑制する全く新しい外皮用防菌皮膜形成剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病原性ウイルスや細菌類による感染症の拡大が懸念されており、各種感染防止関連製品の開発が行われている。中でも、手指用殺菌消毒剤は、使用時に手指に塗布または噴霧するだけで殺菌消毒でき、タオルで拭取る必要が無い等の利点を有し、医療機関をはじめとして広く普及している。しかし、上記殺菌消毒剤は、殺菌成分としてアルコールや逆性石鹸などを含むため、これらの成分に過敏な反応を示す患者や、日常的にこれを使用する看護師らに対して皮膚障害を誘発する場合があった。また、殺菌成分の多くは効果が即時的であり、抗菌活性の持続性はなかった。
【0003】
特許文献1によれば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性基含有単量体の共重合物は生化学用プレートのコーティング剤などに応用されており、蛋白質や微生物の付着を抑制する効果が知られているが、これは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性基含有単量体の共重合物をコーティングした材料表面が緩衝溶液や培地などの液体によって濡れた状態で潤滑機能を発現する医用基材に関するものである。
【0004】
また、防菌皮膜形成を特徴とする発明として、特許文献2には、無機系材粉末80%〜97%と、無機銅粉末20%〜3%を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌組成物がある。しかし、皮膚に用いることはできない。特許文献3には、水溶性および/または水性エマルジョン性重合体よりなる皮膜を形成するための、う蝕防止用歯科用組成物があるが、手指などの外皮に用いることはできない。特許文献4には、乾燥によって透明な、耐久性の高い皮膜を基材表面に形成することができる皮膜形成用組成物が記載されるが、光触媒を用いるものであり、また皮膚に用いるものではなかった。
【0005】
こうした状況で、医療機関に勤務する医師や看護師らなどから、皮膚障害などを生じることなく、手軽且つ安全に乾燥状態で皮膚に常時用いることのできる新しいタイプの防菌剤が強く要望されていた。
【特許文献1】特開2003−180801号公報
【特許文献2】特開2006−249041号公報
【特許文献3】特開2006−124293号公報
【特許文献4】特開2005−154750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外皮用防菌皮膜形成剤を手指に用いる際には、皮膜形成性に優れるのみならず、形成された皮膜が柔軟性に優れ手指の屈伸に追従することが求められる。皮膜形成性に劣れば手指の皮膚表面を十分に覆うことができず、柔軟性に劣れば皮膜が破損して菌付着防止性は不十分となる。本発明は、MPC重合体を含有することにより、皮膚に塗布した後に高い菌付着防止性を示す外皮用防菌皮膜形成剤の提供を課題とする。
【0007】
即ち、菌付着防止成分として2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPC単量体と略記することもある)と疎水性基含有単量体の共重合物(以下、MPC重合体と略記することもある)を含み、菌付着そのものを抑制する全く新しい外皮用防菌皮膜形成剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、MPC単量体と疎水性基含有単量体により構成される共重合体を用いて外皮用防菌皮膜形成剤としたとき、高い皮膜形成能を示し、かつ柔軟性に優れるとともに、皮膚上塗布した際に高い菌付着防止性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、次の〔1〕および〔2〕である。
〔1〕
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Lは、−C−、−(C=O)−NH−、−O−、−(C=O)−O−及び−O−(C=O)−O−からなる群より選ばれる基を示し、Lは炭素数1〜18のアルキル基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。)で示される疎水性基含有単量体により構成される重量平均分子量50000〜5000000の共重合体0.01〜10質量%と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールから選ばれる一種以上の低級アルコール15〜95質量%および水を含み、塗布した後、乾燥して用いることを特徴とする外皮用防菌皮膜形成剤。
【0012】
〔2〕
更に殺菌剤を0.01〜5.0質量%含む、前記〔1〕項記載の外皮用防菌皮膜形成剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、皮膜形成性に優れるのみならず、形成された皮膜が柔軟性に優れ、手指の屈伸に追従する菌付着防止性に優れた、乾燥して用いることのできる安全性の高い外皮用防菌皮膜形成剤を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、MPC重合体を含有することで、高い皮膜形成能を有し、かつ柔軟性に優れ、皮膚上塗布した際に高い菌付着防止機能を示すことができる。
本発明に用いるMPC重合体は、MPC単量体とLA単量体を共重合する事により得られる。
前記、MPC単量体としては市販の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを好適に用いることができる。
前記、LA単量体としては、下記式(1)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Lは、−C−、−(C=O)−NH−、−O−、−(C=O)−O−及び−O−(C=O)−O−からなる群より選ばれる基を示し、Lは炭素数1〜18のアルキル基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。)で表される市販のLA単量体が用いられる。
【0017】
前記、式(1)のLA単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体のうち、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが、皮膜形成能、皮膜柔軟性及び皮膚への密着性の点からより好ましい。これらのLA単量体は、MPC重合体の製造にあたって単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。
【0018】
尚、LA単量体は、MPC重合体を構成したとき、MPC重合体を皮膚上に密着させる上で重要な役割を果たす。これは、LA単量体を含むことによりMPC重合体の皮膜形成性及び皮膜柔軟性が向上するためであり、また、LA単量体中の疎水性基が皮膚に対してアンカー効果を示すことにより、MPC重合体の皮膜と皮膚との密着性を向上させるためである。
【0019】
本発明に用いるMPC重合体は、市販品を用いても良いが、MPC単量体とLA単量体を含む単量体組成物を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等、公知の方法に従って重合することによっても得ることができる。例えば溶液重合の場合、単量体組成物を低級アルコールなどの有機溶媒中に溶解し、窒素、アルゴン等不活性ガスの雰囲気下、アゾ化合物や過酸化物等のラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより、本発明に用いるMPC重合体を得ることができる。
【0020】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤に用いるMPC重合体は、MPC単量体とLA単量体により構成されるものであるが、好ましくは、MPC単量体に由来する共重合組成比が10〜90モル%、LA単量体に由来する共重合組成比が90〜10モル%である共重合体が用いられる。即ち、MPC重合体中における各単量体の共重合組成比については、10:90〜90:10(MPC単量体:LA単量体、モル%)の範囲で適宜選定することができるが、皮膜形成性と菌付着防止機能の点から、各単量体由来の共重合組成比が30:70〜80:20(モル%)の範囲がより好ましい。MPC単量体の共重合組成比が10モル%より小さい場合、十分な菌付着防止能が得られないことがあり、LA単量体の共重合組成比が10モル%より小さい場合、十分な皮膜形成能が得られないことがあるので好ましくない。
【0021】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤に用いるMPC重合体の重量平均分子量については、50000〜5000000の範囲で適宜選定することができるが、皮膜形成性と取り扱いやすさの点から、100000〜3000000の範囲がより好ましい。
MPC重合体の外皮用防菌皮膜形成剤への配合量については、0.01〜10質量%の範囲で適宜選定することができるが、手指への塗布時における使用感の点から、0.05〜5質量%の範囲がより好ましい。
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤の製造に用いるMPC重合体の形態としては、粉状、溶液状又は均一分散液体状のいずれでもよい。
【0022】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、皮膚に対して均一に塗布しやすくする目的から低級アルコールを含有する。低級アルコールを含有することにより、製剤の界面張力が低下して皮膚上に広がりやすくなるため、使用感が向上するとともに、皮膜形成時の均一性も向上する。本発明に用いる低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールが挙げられ、使用に際しては1種または2種以上の低級アルコールを混合して用いても良い。このうち、臭いや使用感の観点から、エタノール及び/又はイソプロパノールがより好ましい。低級アルコールの含有割合は、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤中、15〜95質量%、好ましくは25〜85質量%の範囲である。該含有割合が15質量%未満の場合、得られる皮膜にムラが生じる。また、該含有割合が95質量%を超えて配合しても皮膜の均一性に及ぼす効果は変らない。
【0023】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、MPC重合体と低級アルコールの他に、水を含有する。低級アルコールと水の混合溶媒を用いることにより、皮膚に対するMPC重合体の密着性を向上させることができる。これは製剤の乾燥時において、低級アルコールと水の蒸散速度が異なることを利用して、MPC重合体中のホスホリルコリン基を空気界面に稠密に配向させ、また、疎水性基を皮膚界面に効果的に配向させるためである。本発明に用いる水については特に限定されないが、不純物の含有量が少ないイオン交換水、精製水及び注射用水などを用いることが好ましい。水の含有割合は、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤中、5〜85質量%、好ましくは15〜75質量%の範囲である。該含有割合が5質量%未満の場合若しくは、85質量%を超えて配合する場合、皮膚に対するMPC重合体の密着性が低下するので好ましくない。
【0024】
また、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、湿潤剤を含んでも良い。該湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、エチルヘキサンジオール、イソペンチルジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール等のポリオール系化合物類が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。これら湿潤剤の中でも、外皮への馴染みの良さから、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンがより好ましい。湿潤剤を含有させる場合の割合は、本発明の所望の効果を損なうことのない範囲で、外皮用防菌皮膜形成剤の全量当り、通常0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0025】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、更に、外皮上に元々存在する菌を減少させるために殺菌剤を好ましく含んでも良い。本発明に用いる殺菌剤としては、MPC重合体の皮膜形成性を阻害しないものを用いることができ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等のビグアナイド系化合物、ヨウ素イオン、ヨウドホルム、ポビドンヨード等のヨウ素系化合物、銀イオン等の無機系化合物、クレゾール、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール系化合物を配合することができる。これらの使用に際しては、外皮用防菌皮膜形成剤中、0.01〜5.0質量%の範囲で1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
尚、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、前記成分の他に、公知の外用剤に使用される添加剤を含有させても良い。前記添加剤としては、例えば、増粘剤、起泡剤、エアゾール剤、有機酸、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、色素、色材等を本発明の性能を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤の製造に際しては、前記各成分を適宜混合しても良いが、例えば次のように製造することもできる。MPC重合体の形態が粉状の場合は、水に加えてからよく攪拌混合し、均一溶解させる。MPC重合体の形態が溶液状または均一分散液体状の場合は、水に加えて攪拌混合して均一にする。このようにして得られたMPC重合体溶液に対して低級アルコールを加えて混和することにより、外皮用防菌皮膜形成剤を簡便に得ることができる。
また、殺菌剤、添加剤など他成分を加える場合は、あらかじめこれらの成分を水又はアルコールに加えて攪拌混合し、よく溶解させた後、MPC重合体溶液と混和することにより、外皮用防菌皮膜形成剤を簡便に得ることができる。
【0028】
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤の形状については、使用時の簡便さや安全性の観点などから、ディスペンサーポンプ付き容器に充填した液吐出型、スプレーポンプ付き容器に充填した噴霧型、フォーマーポンプ付き容器又はエアゾール容器に充填した泡吐出型が望ましい。いずれの場合においても、使用に際しては外皮用防菌皮膜形成剤を1〜3mL程度の適量を取り、手に擦り込みながら塗布した後、乾燥することにより効果が得られる。特に、外皮用防菌皮膜形成剤が乾燥せず、皮膚が濡れたままでは、物品等への接触により、塗布面から薬剤がふき取られ、防菌皮膜が形成され難いので、室温で風に当てるなどして、皮膚上の外皮用防菌皮膜形成剤を十分に乾かして使用するのが良い。皮膚に塗布した後、乾燥が不十分であると、菌付着防止効果が十分に発揮されない場合があるので注意が必要である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。
実施例1
精製水73.0gに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とn−ブチルメタクリレート(BMA)の共重合体(MPC/BMA=8/2)(以下、MPC重合体Aと略記)の5%水溶液2.0g(ポリマー固形分0.1g、精製水1.9gを含有)を添加し、系が均一になるまで攪拌した。次いでエタノール25.0gを添加し、系が均一になるまで攪拌し、外皮用防菌皮膜形成剤100gを調製した。これについて、次の(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)を行い、判定結果を表1に記した。
【0030】
(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性について、次の方法により評価した。即ち、外皮用防菌皮膜形成剤を所定量取り、フッ素樹脂加工シャーレに展開して室温で乾燥させた後、40℃にて減圧乾燥させた。乾燥後、固形物がフィルム状で得られた場合は皮膜形成性あり、フィルムとして得られなかった場合(糊状や粉状等)は皮膜形成性なしと判定した。
<判定結果;皮膜形成性>
フィルム化する:○、フィルム化しない:×
【0031】
(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)
本発明の外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性について、次の方法により評価した。即ち、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤を所定量取り、人工皮革(白色)に塗布して室温で乾燥させた後、気温30℃、相対湿度65%の環境下に15分置いた後、直角に折り曲げて、皮膜層に亀裂が生じるか評価した。亀裂が生じなかった場合は柔軟性あり、亀裂が生じた場合は柔軟性なしと判定した。
また、皮膜均一性を次の方法により評価した。即ち、あらかじめインクで着色した外皮用防菌皮膜形成剤を用いて、前記と同様の方法にて人工皮革に塗布し、乾燥後、色ムラを目視判定して皮膜形成均一性を評価した。
<判定結果;皮膜柔軟性>
亀裂が生じなかった:○、亀裂が生じた:×
<判定結果;皮膜均一性>
ムラなし:○、ムラあり:×
【0032】
(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)
市販の消毒用エタノール3mLを手指に取り20秒間擦りこむ操作を2回行い、手指が十分に乾燥した後、パームスタンプ(日研生物医学研究所製、一般細菌(SCD)培地)上に手のひらをスタンプした。次に本発明の外皮用防菌皮膜形成剤3mLを手指に取り20秒間擦りこむ操作を2回行い、被験者にはそのまま通常どおりに生活してもらい、3時間後、同様にスタンプを行った。各製剤について、被験者5名で同じ操作を行った。スタンプ後の各培地を37℃のインキュベータ内にて24時間培養し、培地上に菌コロニー数をカウントした。消毒直後のコロニー数(A)及び外皮用防菌皮膜形成剤塗布後3時間経過時点でのコロニー数(B)をカウントし、それぞれの対数値(logA、logB)を算出した。logBからlogAを差し引いた値を「対数増加値」とし、被験者5名について平均をとって「平均対数増加値」を算出した。菌付着防止機能について、前記の平均対数増加値が0.3未満を著効、0.3以上1.0未満を有効、1.0以上を無効と判定した。
<判定結果;菌付着防止機能>
著効:◎、有効:○、無効:×
【0033】
【表1】

【0034】
(表の説明)
*ポリマー成分
MPC重合体A:2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とn−ブチルメタクリレート(BMA)の共重合体(MPC/BMA=8/2)
MPC重合体B:MPCとBMAの共重合体(MPC/BMA=3/7)
MPC重合体C:MPCとラウリルメタクリレート(LMA)の共重合体(MPC/LMA=3/7)
MPC重合体D:MPCとステアリルメタクリレート(SMA)の共重合体(MPC/SMA=3/7)
【0035】
**平均対数増加値(被験者5名)
={log(塗布後3時間経過時点でのコロニー数)−log(消毒直後のコロニー数)}÷5
判定基準:0.3未満:著効、0.3以上1.0未満:有効、1.0以上:無効
【0036】
実施例2〜7
配合成分の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、実施例2〜7の外皮用防菌皮膜形成剤、各100gを調製した。これについて、実施例1と同様に(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)を行い、判定結果を表1に記した。
【0037】
実施例8
精製水64.9gにグリセリン0.1gを添加し、系が均一になるまで攪拌した。次いでMPC重合体Aの5%水溶液10.0g(ポリマー固形分0.5g、精製水9.5gを含有)を添加し、系が均一になるまで攪拌した。次いでエタノール25.0gを添加し、系が均一になるまで攪拌し、外皮用防菌皮膜形成剤100gを調製した。これについて、実施例1と同様に(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)を行い、判定結果を表1に記した。
【0038】
実施例9〜11
グリセリンに替えてグルコン酸クロルヘキシジン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリソルベート80を用いて、配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例8に記載の方法に準じて、実施例9〜11の外皮用防菌皮膜形成剤、各100gを調製した。これについて、実施例1と同様に(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)を行い、判定結果を表1に記した。
【0039】
比較例1〜5
配合成分の種類及び配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、比較例1〜5のサンプル、各100gを調製した。これについて、実施例1と同様に(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜形成性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の皮膜柔軟性及び皮膜均一性の評価)、(外皮用防菌皮膜形成剤の菌付着防止機能の評価)を行い、判定結果を表2に記した。
【0040】
【表2】

【0041】
以上の実施例、比較例より、本発明の外皮用防菌皮膜形成剤は、比較例で用いたサンプルよりも皮膜の均一性に優れ、更に菌付着防止機能にも優れることが明らかとなった。皮膜の均一性が維持されない場合、防菌皮膜が形成されず、菌付着防止機能が発揮されない為、皮膜の均一性が得られることは本発明にとって重要である。本発明の外皮用防菌皮膜形成剤においては、MPC重合体と低級アルコール、水との配合割合を適切に制御していることから、ホスホリルコリン基を空気界面に稠密に配向させることができ、皮膚上でホスホリルコリン基を持つ皮膜の均一性を維持し、防菌効果を発揮することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと式(1)
【化1】

(式中、Lは、−C−、−(C=O)−NH−、−O−、−(C=O)−O−及び−O−(C=O)−O−からなる群より選ばれる基を示し、Lは炭素数1〜18のアルキル基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。)で示される疎水性基含有単量体により構成される重量平均分子量50000〜5000000の共重合体0.01〜10質量%と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノールから選ばれる一種以上の低級アルコール15〜95質量%および水を含み、塗布した後、乾燥して用いることを特徴とする外皮用防菌皮膜形成剤。
【請求項2】
更に殺菌剤を0.01〜5.0質量%含む、請求項1記載の外皮用防菌皮膜形成剤。

【公開番号】特開2010−5161(P2010−5161A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168381(P2008−168381)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】