説明

外被で覆われた客体表面の認証マークを識別する方法と装置

包装フォイル又は物品の表面に設けた認証マークを、外被を通して視覚式及び/又は電子式の識別装置によって識別する方法が、超音波技術又はX線技術によって実施される。特に、認証マークは、マイクロメートル範囲の微小構成体を有する少なくとも1つのエンボス加工された認証マークを含み、かつまた認証マークがエンボス加工される包装フォイル表面又は物品区域表面は、金属被覆されるか又は金属製である。前記方法では、検査のさい、包装を開けたり破壊したりする必要はなく、認証マークは、可視光下で外部からは識別不可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外被を通して包装フォイル表面又は物品表面にエンボス加工された認証マークを識別する方法と装置であって、請求項1の前文に記載された、主として巻煙草の包装ないし巻煙草の認証をも行う形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光不透過性の外被を通して表面を識別して客体を同定することは、US 2005/206500 A1により公知である。この公知技術では、一方で、比較的大きい客体及びマークに言及され、他方では、外被を透過可能な使用放射線が挙げられているだけで、特定されていない。より詳しく言えば、X線、異なる種類のRF放射線、RMI技術、音響イメージ法が提案されている。
またDE 36 13 549 A1には、バーコード情報を音波によって読み取る方法が開示されているが、この方法は、バーコードの設計によって、複数空所が異なる透過特性を示す事実を利用したものである。
【0003】
EP−B−1 236 192から、本発明の出願人は、他の安全手段に加えて設けられた少なくとも1認証マークによって物品が識別可能であるという知見を得ている。該認証マークは、特定のエンボスパターンを作るエンボス装置でエンボス加工される。前記特許明細書の冒頭には、認証マークや認証手段を設けることに関する種々の文書が引用されているので、ここには列挙しない。
EP−B−1 236 192の明細書と請求項5及び請求項6との説明によれば、認証マークは、巻煙草の包装を通して、詳しく言えば、巻煙草の包装に設けられた相応の窓を通して識別されるという。しかし、該文書には、包装を通して認証マークを識別する具体的な方法は指示されていない。
【0004】
またEP−A−1 216 819によれば、第1層にエンボス加工されたマークが、第2層に設けられた窓を介して読み取られる。これらの層は巻煙草の包装フォイルである。
似たような認証マークは、チョコレートやバター等の食品類、又は他の物品−例えば製薬工業分野のカプセルや錠剤等−、又はその他PCカード等の物品の包装フォイルに設けることもできるが、PCカードの場合は、厚紙等の包装を通して識別せねばならない。
別の問題領域は、時計類、詳しく言えば腕時計や懐中時計の認証である。懐中時計の場合、認証マークを識別できるように設けるには、時計の側の外側に設けるか、時計を開けられるようにせねばならない。開けるには、概して専門員が必要である。したがって、文字盤又は裏蓋(bottom)を通して識別できるのが極めて好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、増加する不正行為に対抗して、これまでより小さい認証マークをエンボス加工する方法と装置が、出願人により開発された。例えばUS 7 229 681であり、これに基づいて、本発明が目的とするところは、きわめて小さな安全手段、例えば、煙草製品、食品、薬剤、PC部品等の包装フォイルの表面に設けたマイクロメートル範囲の認証マーク及び/又は認証手段を、包装を通して、また時計の表面の認証マーク及び/又は認証手段は、外被、例えば文字盤又は裏蓋を通して、十分な精度及び信頼性をもって識別可能な方法と装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の方法及び請求項15に記載の装置により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下で、本発明を典型的な実施例につき、更に詳しく説明する。既述の物品を代表して、これらの実施例では、巻煙草の包装又は巻煙草各々の認証について説明する。「認証マーク」という用語は、一方では、冒頭で述べたエンボス加工の方法及び装置によって包装フォイルにエンボス加工されるか、又は時計の一部に従来の方法によってエンボス加工される安全性又は法的認証の特徴を表し、他方では、被検対象の性質を構成している特色全体、例えば同一の又は別々の包装フォイルに設けたエンボスパターンを表すものである。
「外被」という用語は、可視光不透過性の厚紙又は紙の包装を表し、時計の場合は、音波透過性又は放射線透過性の材料で作られた文字盤又は時計の裏蓋を表す。
【0008】
冒頭に引用したEP−B−1 236 192には、異なる商業レベルが定義されており、それらのレベルは、本発明に適用できる限りにおいて、ここでの説明に実施例の一部として取り入れられている。
US 2007/0289701 A1によれば、EP−B−1 236 192による方法を更に発展させることで、認証マーク配列を線上(on−line)パターンとしてエンボス加工し、適当な装置で読み取り、画像処理法によって評価することができる。エンボスパターンに関しては、公知のどの種類のエンボス加工も適用できる。この方法を実施する装置には、エンボス装置に加えて読み取りユニットと評価ユニットが含まれる。特に、この方法により、エンボス加工品質又は読み取り品質に対する要求は緩和されるが、必要な安全性が損なわれることはない。
【0009】
冒頭で述べたように、先行技術の場合、比較的大きな客体が外被を通して識別されるか、又は既述の物品が直接に読み取られ識別される。このことは、フォイル又は物品に接近して認証マークを読み取るには、包装を開けねばならないことを含意している。また包装の窓を通して物品を認証する提案の場合は、窓を付加せねばならないため、製造費が高くなる上に、窓の位置により認証マークの位置が制限される。このことは、物品が時計の場合にも当てはまる。
これまでより小さな構成体を光透過性の外被を通して識別するには、使用する放射線又は音波が該構成体を解像可能でなければならないことは、冒頭に引用した先行技術に照らして当業者には明らかである。しかし、この知見だけでは、意図する目的を達成するには不十分である。そればかりか、そのことにより、物品の特定表面と、相応の音波又は放射線との間に相互作用があるに違いないことを認める必要が生じる。
【0010】
検出目的に音波を使用するには、事実上2つの形式、すなわち透過モードと反射モードとがある。音波又は放射線は、まず外被を通過し、続いて有効な信号を発する必要があるため、検出信号を反射によって得るには、反射面が、例えば金属被覆された包装フォイル又はアルミニウム・フォイルのように、金属被覆材料又は金属材料であれば、好都合である。
最近、0.1mm未満の高解像能を有する超音波装置が開発され、それによってまた、ここで考察かつ言及されている認証マーク及び認証手段も解像かつ識別可能になった。そのような超音波カメラは、一般に開示されており、インターネットでアクセスでき、「オプテル(Optel)超音波技術/指紋認証」というタイトルでダウンロードできる。
【0011】
ドレースデン工科大学の「超音波顕微鏡検査」と題する2004年の別の刊行物には、最高230MHzの定格周波数を有するトランスデューサを備えた装置が記載され、これにより、最高10μmの横方向解像能が得られる。これらの方法、すなわち、いわゆるインパルス・エコー技術により、検査される表面又は凹部は、適当なトランスデューサにより走査される。検査された区域の3次元画像は、振幅、位相、後方反射信号の遅れを評価することで再構成される。
ディジタル信号処理及び画像処理の方法も、この目的に適用できる。後者は、問題の画像区域を分離して、それぞれ関連情報を引き出すのに使用できる。その点で、付加的な相関方法を、一定の隠されたパターンをよりよく引き出すのに適用することができる。
【0012】
EP−A1−1 437 213により、本発明の出願人は、マクロやミクロの構成体となるようにエンボスロールの歯を変更し、該構成体が、包装フォイルの金属被覆された表面にエンボス加工により転移できるようにした。この技術により、冒頭に述べたマクロ又はミクロの構成体を有する認証マーク及び認証手段をエンボス加工できる。
これらの認証マーク又は認証手段は、その場合、反射モードの超音波装置によって包装を通して読み取り可能でなければならない。この目的のために、所望周波数で構成体、つまり認証マーク又は認証手段を読み取ることができる適当なソニック・トランスデューサを、より詳しく言えば、5〜500MHzの範囲に含まれる定格周波数のソニック・トランスデューサを使用することで、認証マークの構成や寸法に応じて必要となる広い帯域の解像能を得ることができる。更に、超音波ビームを集束させ指向させることにより、過剰な損失なしに包装を通して認証マークに到達させ、かつその後方反射放射線を検出することができる。
【0013】
認証マークは、更に、歯の構成の相違によって、例えば意図する箇所で形状の相違する個々の歯又は歯群によって形成でき、例えば、長方形の水平突出部を有する中央部に丸形の又は丸形水平の突出部が設けられた歯、又は歯間の間隔が異なる歯によって形成できる。
更に、認証マークは、また包装フォイル表面にエンボスロールとは異なる工具、例えば制御されたピンその他によって凹部、変形部、穴を形成することで設けることができる。
時計の場合は、認証マークが、文字盤又は裏蓋によって覆われた時計部材に設けられるので、視認はできない。その場合には、相応の超音波又はX線装置により文字盤や裏蓋を通して識別できるが、その材料は該超音波又はX線が透過可能なものでなければならない。
【0014】
解像能の限界で作業する場合には問題が生じることがあるが、エラーの修正は、例えば相応の数学アルゴリズムによって行われ、信頼性ある認証マーク識別が可能である。その点、CH−01086/06による既述の方法は、エラー修正の適用を容易にする。
相応の数学的なエラー修正による評価によって、エンボスパターンの分析が可能だが、このエンボスパターンは、エンボスローラの間で違いがあり、したがってエンボスシステムを同定するさいの特徴をなすものである。エンボス加工工程では、エンボスローラの表面輪郭が紙に転移される。
異なるエンボスローラでエンボス加工された紙は、顕微鏡レベルで相違がある。なぜなら、異なるエンボスローラの表面輪郭は、ローラの歯を特別に処理しなければ、互いに異なっているからである。それらの僅かな相違は、認証マークとして役立ち、測定され、定量化される。
【0015】
エンボス加工された紙の輪郭は、使用されたエンボスローラの作用を受けるだけでなく、紙の特性やエンボス工程で調節された工程パラメータの作用も受ける。エンボスローラの表面輪郭とエンボス加工された紙の表面輪郭とが互いに異なることが、測定実験によって判明した。したがって、一般的に言って、エンボス加工された紙の測定値は、エンボス加工された基準紙に関係するもので、エンボス加工に使用されたエンボスローラとの直接の関係はあり得ない。この基準測定値が定期的に更新されることで、工程関連の変動が補償される。したがって、認証マークにより、すなわち紙の上のパターンとエンボスローラのパターンとの差異又は相関により、紙が特定エンボスローラによりエンボス加工されたかどうを決定することが、一つの目的となる。
【0016】
理論的に考えた場合に到達する仮定は、これらの小さな相違も、超音波技術の精密化により、より詳しく言えばインパルス・エコー法の精密化により、超音波技術を用いて包装を通して検出可能だろうということである。
しかし、これらの相違が極めて小さく、特に、歯が変更されなかったエンボスローラによるエンボス加工後に相違を識別する場合、それらの相違は、超音波技術では包装を通して検出できないので、別の方法を適用せねばならない。
X線を用いる場合、冒頭に引用した先行技術文献で使用されているX線装置は、微小構成体を十分には解像できないので、適用できない。
近年、X線断層写真法やマイクロCT(コンピュータ断層撮影)の開発により、カーボン・ナノチューブ(CNT)に基づいて巻煙草の包装寸法のX線装置が作れるようになった。この装置は、1マイクロメートル未満の範囲の自己集束測定スポットを作ることができる。
【0017】
これらのX線マイクロ装置が、透過モードで巻煙草の包装を通して認証マークを検出できることは、実験によって判明している。したがって、これらの認証マークは、金属被覆されたフォイル又はアルミニウム・フォイルに設けることができる。その効果は、認証マークが、折り重ねた状態等の構造物内に位置する場合には、強化することができる。
これと同じように、時計の構成部品の場合、認証マーク、すなわちエンボス加工されたマークは、文字盤又は裏蓋を通して同定される。
放射線の検出は、認証マークの超音波検出に使用されるのと等しい設計の処理ユニットに接続された適当な半導体検出器によって達せられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フォイル又は物品の表面の認証マークを視覚式及び/又は電子式の識別装置により包装を通して識別する方法であって、該方法が超音波技術又はX線技術によって実施される形式のものにおいて、
前記認証マークが、マイクロメートル範囲の微小構成体を有する少なくとも1つのエンボス加工された認証マークを含み、かつまたエンボス加工される包装フォイル表面又は物品区域表面が、金属被覆されるか又は金属製であることを特徴とする、包装フォイル又は物品の表面の認証マークを視覚式及び/又は電子式の識別装置により包装を通して識別する方法。
【請求項2】
前記包装フォイルが、紙巻煙草等の煙草製品、チョコレート又はバター等の食品、医薬工業分野のカプセル又は錠剤、PCカード類を内包し、かつ厚紙、紙、プラスチック材料の包装に覆われていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記物品が時計であり、時計にエンボス加工された認証マークが、文字盤又は裏蓋を通して識別されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
超音波源が5−500MHzの範囲内で、かつまた反射モードで作業することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
いわゆるインパルス‐エコー法が採用され、検出されるべき表面又は凹部が適当なソニック・トランスデューサによって走査され、検査区域の3次元画像が、反射信号の遅れ、振幅、位相を評価することにより再構成されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記識別方法が透過モードでX線装置を使用することで実施され、該X線装置の放射線が、1ミリメートル未満の範囲のスポットに集束できることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記X線装置が、1マイクロメートル未満の範囲の放射線スポットを発出するカーボン・ナノチューブに基づいて作業することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ディジタル信号処理法及び画像処理法を適用することにより、それぞれ、対象となる複数画像区域を分離し、関連情報を引き出すことを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
認証マークの配列が、パターンとして線上に(on−line)エンボス加工され、画像処理法によって評価されることを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
一定の隠されたパターンをよりよく引き出すために、相互関係のある付加的方法が適用されることを特徴とする、請求項1から請求項9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
駆動されるエンボスローラの歯が変更されることで、認証マークが包装フォイルの相応の位置にエンボス加工されることを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
駆動されるエンボスローラの歯が変更されず、ローラの製造及び/又は紙の品質に起因するエンボスパターンの相違が、認証マークとして利用され、同定されることを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記認証マークが、歯の構成の相違によって形成され、個々の歯又は歯群が、意図する箇所で異なる形状を有しており、より詳しく言えば、歯が、長方形の水平突出部を有する中央部に円形の又は円形の突出部又は円形の水平突出部を有するか、又は異なる歯間間隔を有することを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記認証マークがエンボスローラとは異なる工具、例えば制御されたピンによって、包装フォイル表面の凹部又は変形部又は穴の形式で作られることを特徴とする、請求項1から請求項10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項5までと、請求項8から請求項14までのいずれか1項記載の方法を実施する装置において、
該装置が超音波トランスデューサを含むことを特徴とする、方法を実施する装置。
【請求項16】
前記超音波トランスデューサが、5−500MHzの範囲で作業することを特徴とする、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記装置がX線装置を含み、該X線装置の放射線が1ミリメートル未満の範囲のスポットに集束され得ることを特徴とする、請求項6から請求項14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記X線装置が、1マイクロメートル未満の範囲の放射線スポットを発出するカーボン・ナノチューブに基づいて作業することを特徴とする、請求項17記載の装置。

【公表番号】特表2010−526359(P2010−526359A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504417(P2010−504417)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000204
【国際公開番号】WO2008/134910
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(501372606)ボエグリ − グラビュル ソシエテ アノニム (12)
【Fターム(参考)】