説明

外装部品および車体への外装部品の取付方法

【課題】外装部品を車体に取り付けるための工程数を実質的に減らすことができる、外装部品およびその取付方法を提供する。
【解決手段】外装部品1は、部品本体11と、部品本体11に対して車体2側に設けられた粘着層13と、粘着層13における車体2側の面に貼り合わされた水溶性フィルム14とを備える。外装部品1の車体2への取付けに際して、まず、水溶性フィルム14が車体2に対向する状態で、外装部品1が車体2に対して仮固定される。次に、外装部品1と車体2との間に水が供給される。これにより、水溶性フィルム14が水に溶けて消失し、粘着層13が露出する。その後、粘着層13が車体2に貼着されて、外装部品1が車体2に対して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体に取り付けられる外装部品およびその外装部品の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体には、エンブレムやモールなどの外装部品が取り付けられる。
【0003】
この取付けには、両面粘着テープが広く用いられている。すなわち、外装部品の裏面に、両面粘着テープの一方の粘着面が貼着されている。両面粘着テープの他方の粘着面には、粘着面への塵埃の付着などを防止するために、剥離紙(離型紙)が貼り合わされている。外装部品の取付けの際には、両面粘着テープから剥離紙が剥がされて、外装部品が車体に対して位置決めされた後、両面粘着テープの粘着面が車体に貼着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−41984号公報
【特許文献2】特開2009−126276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の外装部品では、車体に取り付けるために、剥離紙を剥がす工程、外装部品を位置決めする工程および両面粘着テープの粘着面を車体に押しつける工程の3工程を必須とし、その工程数を削減することはできない。外装部品を車体に取り付けるための工程数を減らすことができれば、自動車の製造効率が上昇する。
【0006】
本発明の目的は、外装部品を車体に取り付けるための工程数を実質的に減らすことができる、外装部品およびその取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係る外装部品は、自動車の車体に取り付けられる外装部品であって、部品本体と、前記部品本体に対して前記車体側に設けられる粘着層と、前記粘着層における前記車体側の面に貼り合わされた水溶性フィルムとを備えることを特徴としている。
【0008】
そして、この外装部品は、本発明の他の局面に係る取付方法により、自動車の車体に取り付けられる。その取付方法は、前記外装部品を前記水溶性フィルムを前記車体に対向させた状態で車体に対して仮固定する仮固定工程と、前記仮固定工程後、前記外装部品と前記車体との間に水を供給する水供給工程と、前記水供給工程後、前記粘着層を前記車体に貼着して、前記外装部品を前記車体に対して固定する本固定工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
外装部品の車体への取付けに際して、まず、水溶性フィルムが車体に対向する状態で、外装部品が車体に対して仮固定される。次に、外装部品と車体との間に水が供給される。これにより、水溶性フィルムが水に溶けて消失し、粘着層が露出する。その後、粘着層が車体に貼着されて、外装部品が車体に対して固定される。
【0010】
従来の外装部品では、車体に取り付けるために、両面粘着テープの粘着面から剥離紙を剥がす工程が必須となる。
【0011】
自動車の製造工程には、シャワーテストや車体を水洗する工程が含まれる。このシャワーテストや車体を水洗する工程を利用して、外装部品と車体との間に水を供給することができ、水溶性フィルムを水に溶かして消失させることができる。そのため、シャワーテストや車体を水洗する工程とは別に、外装部品と車体との間に水を供給する水供給工程を追加する必要がない。その結果、両面粘着テープの粘着面から剥離紙を剥がす工程に相当する工程を省略することができ、外装部品を車体に取り付けるための工程数を実質的に減らすことができる。
【0012】
また、従来の外装部品では、剥離紙を剥がした後、その剥離紙を廃棄物として処分する必要がある。これに対し、水溶性フィルムは、水に溶けて消失するので、廃棄物として処分する必要がない。よって、廃棄物の量を減らすことができ、また、廃棄物を処分する手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外装部品を車体に取り付けるための工程数を実質的に減らすことができるので、自動車の製造効率を上げることができる。また、廃棄物の量を減らすことができ、廃棄物を処分する手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る外装部品の側面図であり、外装部品が車体に取り付けられる前の状態を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る外装部品の側面図であり、外装部品が車体に仮固定された状態(仮固定工程)を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る外装部品の側面図であり、外装部品から水溶性フィルムが消失した状態(水供給工程)を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る外装部品の側面図であり、外装部品が車体に本固定された状態(本固定工程)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1,2,3,4は、本発明の一実施形態に係る外装部品の側面図である。
【0017】
図1〜4に示される外装部品1は、たとえば、エンブレムまたはモールであり、自動車の車体2に取り付けられる。外装部品1は、部品本体11と、部品本体11の裏面に突設された複数の位置決めピン12と、部品本体11の裏面上に形成された粘着層13と、粘着層13に貼り合わされた水溶性フィルム14とを備えている。
【0018】
部品本体11は、樹脂からなる。部品本体11の裏面は、平面に形成されている。
【0019】
位置決めピン12は、樹脂からなり、略円柱状をなしている。位置決めピン12の基端部は、部品本体11の内部に埋め込まれている。そして、位置決めピン12は、部品本体11の裏面から突出し、部品本体11の裏面と直交する方向に延びている。位置決めピン12の先端部には、その基端側の部分よりも径方向外側に少し膨出した第1膨出部15が形成されている。また、位置決めピン12には、第1膨出部15と車体2における外装部品1が取り付けられる部分の厚さ(当該部分を構成するパネルの厚さ)に等しい間隔を空けた位置に、第1膨出部15と同形状の第2膨出部16が形成されている。
【0020】
粘着層13は、たとえば、アクリル系粘着剤を部品本体11の裏面に塗布することにより形成されている。粘着層13の粘着面(車体2との対向面)と第2膨出部16との間には、車体2における外装部品1が取り付けられる部分の厚さに等しい間隔が空けられている。
【0021】
水溶性フィルム14は、たとえば、オブラートからなる。水溶性フィルム14は、粘着層13と同じサイズに形成され、粘着層13の粘着面の全域を覆うように貼り合わされている。
【0022】
車体2における外装部品1が取り付けられる部分には、各位置決めピン12と対応する位置に、位置決めピン12を挿通可能な位置決め孔17が貫通して形成されている。
【0023】
外装部品1の車体2への取付けに際しては、図1に示されるように、まず、車体2の外側において、外装部品1が位置決めピン12が位置決め孔17と対向する位置に配置される。
【0024】
次に、外装部品1が車体2に近づけられて、位置決めピン12が位置決め孔17に挿入される。第1膨出部15は、縮径するように弾性変形しつつ位置決め孔17を通過する。そして、図2に示されるように、第1膨出部15が位置決め孔17を通り抜け、第1膨出部15が車体2の内側に配置されると、第2膨出部16が車体2の外表面に当接し、第1膨出部15と第2膨出部16との間に車体2が挟持された状態となる。これにより、位置決めピン12が車体2に支持され、外装部品1が車体2に対して仮固定される。
【0025】
この外装部品1が車体2に対して仮固定された状態で、車体2における水漏れの有無をチェックするためのシャワーテストが行われる。シャワーテストにより、外装部品1と車体2との間に水が供給される。その結果、図3に示されるように、水溶性フィルム14が水に溶けて消失し、粘着層13の粘着面が露出する。
【0026】
その後、外装部品1が車体2側に押圧される。この押圧により、第2膨出部16が縮径するように弾性変形しつつ位置決め孔17を通過する。そして、図4に示されるように、第2膨出部16が車体2の内側に配置されると、粘着層13の粘着面が車体2の外表面に貼着されて、外装部品1の車体2への取付けが達成される。
【0027】
従来の外装部品では、それを車体2に取り付けるために、両面粘着テープの粘着面から剥離紙を剥がす工程が必須となる。
【0028】
自動車の製造工程には、シャワーテストが含まれる。このシャワーテストを利用して、外装部品1と車体2との間に水を供給することができ、水溶性フィルム14を水に溶かして消失させることができる。そのため、シャワーテストとは別に、外装部品1と車体2との間に水を供給する水供給工程を追加する必要がない。よって、両面粘着テープの粘着面から剥離紙を剥がす工程に相当する工程を省略することができ、外装部品1を車体2に取り付けるための工程数を実質的に減らすことができる。その結果、自動車の製造効率を上げることができる。
【0029】
また、従来の外装部品では、剥離紙を剥がした後、その剥離紙を廃棄物として処分する必要がある。
【0030】
これに対し、水溶性フィルム14は、水に溶けて消失するので、廃棄物として処分する必要がない。よって、外装部品1の構成によれば、廃棄物の量を減らすことができ、また、廃棄物を処分する手間を軽減することができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0032】
たとえば、外装部品1と車体2との間に水を供給する工程は、シャワーテストに限らず、車体2を水洗する工程であってもよい。
【0033】
また、外装部品1が車体2に仮固定された状態において、車体2の外表面と水溶性フィルム14との間の隙間は必ずしも生じていなくてもよい。たとえば、外装部品1の構成として、位置決めピン12の先端部に、その基端側の部分よりも径方向外側に少し膨出した膨出部が形成されるとともに、膨出部と粘着層13の粘着面(車体2との対向面)との間に、車体2における外装部品1が取り付けられる部分の厚さに等しい間隔が空けられた構成が採用されてもよい。この構成では、外装部品1が車体2に仮固定された状態において、膨出部が車体2の内側に配置される。これにより、位置決めピン12が弾性変形により延びた状態となり、その復元力により、水溶性フィルム14が車体2の外表面に圧接される。そして、その仮固定後のシャワーテストまたは車体2の水洗工程において、水溶性フィルム14が水に溶けて消失すると、粘着層13の粘着面が車体2の外表面に貼着して、外装部品1の車体2への取付けが達成される。
【0034】
その他、前述した構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 外装部品
2 車体
11 部品本体
13 粘着層
14 水溶性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に取り付けられる外装部品であって、
部品本体と、
前記部品本体に対して前記車体側に設けられる粘着層と、
前記粘着層における前記車体側の面に貼り合わされた水溶性フィルムとを含む、外装部品。
【請求項2】
自動車の車体に外装部品を取り付ける方法であって、
部品本体、前記部品本体に対して前記車体側に設けられる粘着層および前記粘着層における前記車体側の面に貼り合わされた水溶性フィルムを備える外装部品を、前記水溶性フィルムを前記車体に対向させた状態で車体に対して仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定工程後、前記外装部品と前記車体との間に水を供給する水供給工程と、
前記水供給工程後、前記粘着層を前記車体に貼着して、前記外装部品を前記車体に対して固定する本固定工程とを含む、外装部品の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171488(P2012−171488A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35421(P2011−35421)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】