説明

外装部材、外装部材の製造方法、及び電子機器筐体

【課題】耐久性及び密着性を有し、製造時の効率が向上した新規かつ改良された外装部材、外装部材の製造方法、及び電子機器筐体を提供すること。
【解決手段】基板の表面に形成され、塗料含有物を含む第1の層と、前記第1の層の表面に積層され、前記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な光透過材料を含む第2の層と、を備え、前記第1の層は、当該第1の層の少なくとも一部に前記波長の光をレーザ照射することで前記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を有する、外装部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部材、外装部材の製造方法、及び電子機器筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザマーキングによって模様が付された様々な成型品が、製品として市場に流通している。そのような製品として、例えば、ノート型PCの筐体に、レーザマーキングによって様々な模様が付されたものがある。
【0003】
一般的に行われている筐体にレーザマーキングを施すための方法として、まず基板の表面に塗装層を形成して、レーザで模様をマーキングしてから、樹脂などを有する透明塗料をコーティングしてクリア層を形成する方法がある。しかしながら、上記の方法では、製造時の効率が低いという問題があった。
【0004】
このような問題に鑑み、上記の製造時の効率を向上させる方法として、例えば、特許文献1には、塗装層を形成して透明塗料をコーティングしてからレーザでマーキングする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−155117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような現状に対して、上記の特許文献1に開示されている技術のように高い製造時の効率を維持させ、塗装層の基板に対する密着性及び塗装層の耐久性を更に向上させることが希求されていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、高い製造時の効率を維持させ、塗装層の基板に対する密着性及び塗装層の耐久性を更に向上させた外装部材、外装部材の製造方法、及び電子機器筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基板の表面に形成され、塗料含有物を含む第1の層と、上記第1の層の表面に積層され、上記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を含む第2の層と、を備え、上記第1の層は、当該第1の層の少なくとも一部に上記波長の光をレーザ照射することで上記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を有する、外装部材が提供される。
【0009】
上記外装部材は、上記第1の層と上記第2の層との間に、無機材料を含む第3の層を更に備えていてもよい。
【0010】
上記無機材料は、金属、パール、マイカ、又はガラスのうちの少なくとも何れか一つを含んでいてもよい。
【0011】
上記第1の層は、第1の波長の光がレーザ照射されることにより形成される第1のマーキング部と、第2の波長の光がレーザ照射されることにより形成される第2のマーキング部と、を少なくとも有していてもよい。
【0012】
上記第1の層が、相異なる塗料含有物を含む複数の領域からなり、上記マーキング部が、上記複数の領域のうちの少なくとも2以上の領域に形成されてもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板の表面に塗料含有物をコーティングして第1の層を形成し、上記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を上記第1の層の表面にコーティングして第2の層を形成し、上記第1の層に上記波長の光をレーザ照射することで上記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を形成する、外装部材の製造方法が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基板の表面に形成され、塗料含有物を含む第1の層と、上記第1の層の表面に積層され、上記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を含む第2の層と、を備え、上記第1の層は、当該第1の層の少なくとも一部に上記波長の光をレーザ照射することで上記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を有する、外装部材を用いて形成される、電子機器筐体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、高い製造時の効率を維持させ、塗装層の基板に対する密着性及び塗装層の耐久性を更に向上させた外装部材、外装部材の製造方法、及び電子機器筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の各実施形態に係る外装部材を用いて形成される電子機器筐体を有するノート型PCの外観構成を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係る外装部材を用いて形成された電子機器筐体の外観構成を示す写真である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る外装部材の構成を示す断面図である。
【図4】同実施形態の変形例に係る外装部材の外観構成を示す平面図及び構成を示す断面図である。
【図5】同実施形態に係る外装部材の構成を示す断面図である。
【図6】同実施形態に係る外装部材の製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る外装部材の構成を示す断面図である。
【図8】同実施形態に係る外装部材の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
[説明の流れについて]
本稿における説明の流れは次の通りである。まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の各実施形態に係る外装部材を用いて形成される電子機器筐体の外観構成について説明する。次いで、図3〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る外装部材の構成について説明する。次いで、図6を参照しながら、同実施形態に係る外装部材の製造方法について説明する。次いで、図7を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る外装部材の構成について説明する。次いで、図8を参照しながら、同実施形態に係る外装部材の製造方法について説明する。
【0019】
1.電子機器筐体の外観について
2.第1実施形態
3.第2実施形態
【0020】
[1.電子機器筐体の外観について]
まず、図1を参照しながら、本発明の各実施形態に係る外装部材を用いて形成される電子機器筐体1について、ノート型PCを例にとって説明する。図1は、同実施形態に係る外装部材を有する電子機器の一例としてノート型PCを示す説明図である。
【0021】
図1に示したノート型PCの電子機器筐体1は、外装部材100(外装部材200でもよい。以下、図1を参照して説明する記載について同じである。)を用いて形成される。ノート型PCのディスプレイが設けられた側の外観は、例えばノート型PCを閉じた状態で持ち運ぶ際に、最も目立つ部分である。そのため、上記外装部材100は、デザイン面における美観が求められる。本発明の各実施形態に係る外装部材100を用いて形成される電子機器筐体1は、レーザによってマーキングされることで、模様が付されている。
【0022】
次に、図2を参照しながら、外装部材100、200に施されたマーキングについて説明する。図2は、マーキングが施された外装部材100を撮影した説明図である。外装部材100にレーザマーキングが施されることで、マーキング部110が形成され、例えば、図2に示したような模様が付される。このように、外装部材100に模様を付して、マーキング部110を形成することにより、ノート型PCの美観を向上することができる。なお、マーキングが施される外装部材100としては、ノート型PCを例に挙げたが、外装部材100の用途は特に限定されず、その用途としては、例えば、TV、デジタルカメラ、携帯電話、パーソナルオーディオ等のような電子機器や、自動車や建築物等がある。
【0023】
[2.第1実施形態]
<2−1.第1実施形態に係る外装部材100の構造について>
続いて、図3及び図4を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る外装部材100の構成について詳細に説明する。図3は、同実施形態に係る外装部材100の構成を示す断面図である。図4は、外装部材100の外観構成を示す平面図及び構成を示す断面図である。ここで、図3及び図4に示すX方向とは、外装部材100が積層される厚み方向と垂直な方向を指す。図3及び図4に示すY方向とは、外装部材100が積層される厚み方向と垂直であり、上記X方向と直行する方向を指す。また、図3及び図4に示すZ方向とは、外装部材100が積層される厚み方向を指す。なお、後述する図5〜図8における、X方向、Y方向、及びZ方向も図3及び図4に示すX方向、Y方向、及びZ方向と実質的に同一であるため、以下では説明を省略する。
【0024】
図3に示すように、外装部材100は、基板104上に、塗装層106と、光透過層108とが積層された構造を有する。なお、塗装層106は、本実施形態に係る第1の層の一例である。また、光透過層108は、本実施形態に係る第2の層の一例である。
【0025】
塗装層106は、基板104の表面に最下層として形成される。この塗装層106は、塗料含有物で構成される。当該塗料含有物には、染料又は顔料を含む色材、樹脂、及び溶剤等が含まれる。本実施形態では、塗装層106に、光102がレーザ照射されてマーキング部110が形成されればよく、所定の波長の光102の照射によって塗装層106にマーキング部110が形成可能であれば、どのような塗料含有物であってもよい。具体的に、上記塗料含有物は、熱硬化性樹脂塗料、及び熱可塑製樹脂塗料の何れでもよい。例えば、上記塗料含有物としては、アクリル系合成樹脂塗料、アクリルメラミン系合成樹脂塗料、エポキシ系合成樹脂塗料、ポリエステル系合成樹脂塗料、ウレタン系合成樹脂塗料、アルキド系合成樹脂塗料、メラミン系合成樹脂塗料等が挙げられる。また、上記塗料含有物としては、フェノール系合成樹脂塗料、尿素系合成樹脂塗料、不飽和ポリエステル系合成樹脂塗料、ポリイミド系合成樹脂塗料等も挙げられる。
【0026】
また、塗装層106は、所定の波長の光102がレーザ照射されることによって形成されるマーキング部110を有する。このマーキング部110は、上述した塗料含有物の光学特性を変化させることができる波長の光102を塗装層106の少なくとも一部に照射することにより、塗装層106中の塗料含有物の光学特性が変化して形成された部分である。
【0027】
ここで、上記の光学特性の変化には、例えば、光102のレーザ照射により、塗料含有物中の色材が反応して、分解することや、光の反射率や吸収率が変わったりすること等がある。また、上記の光学特性の変化は、例えば、色材以外の樹脂や溶剤等が反応して、分解したり、光の反射率や吸収率が変わったりすることであってもよい。また、光102のレーザ照射による塗装層106の塗料含有物の光学特性の変化の度合いは、塗料含有物中の色材、樹脂、及び溶剤の種類などによって異なる。さらに、上記光学特性の変化の度合いは、光102の波長や、光102を照射するレーザの強度や、光102の照射時間、及びそれらの相互作用などによっても異なる。よって、上記の塗料含有物中の色材、樹脂、及び溶剤の種類や、光102の波長や、光102を照射するレーザの強度や、光102の照射時間等を、光102を照射する場所ごとに変えることで、塗装層106は、色の濃淡や色味等が異なる複数種類のマーキング部110を有することとなる。これにより、外装部材100の表面に、より繊細で複雑なデザインを施すことができる。
【0028】
ここで、色の濃淡や色合い等が異なる複数種類のマーキング部110を有する塗装層106の一例について、図4(a)及び図4(b)を参照しながら説明する。図4(a)は、外装部材100の表面をZ軸正方向から見た平面図である。また、図4(b)は、図4(a)に示した外装部材100をI−I線で切断した断面図である。この図4(a)及び図4(b)に示した例では、塗装層106が、相異なる塗料含有物を含む3つの領域を有し、それぞれの領域にマーキング部が形成されている。すなわち、図4(a)及び図4(b)に示すように、塗装層106は、第1の塗料含有物を含む領域116と、第2の塗料含有物を含む領域126と、第3の塗料含有物を含む領域136とを有する。また、領域116にはマーキング部120が形成され、領域126にはマーキング部130が形成され、領域136にはマーキング部140が形成されている。
【0029】
上述のように、マーキング部120と、マーキング部130と、マーキング部140とが形成されている各領域116、126、136に含まれる塗料含有物は異なっている。そのため、各領域116、126、136のそれぞれに、所定の波長の光102をレーザ照射すると、各領域116、126、136に含まれる塗料含有物ごとに光学特性の変化の度合いが異なる。図4(a)に示すように、マーキング部120、マーキング部130、マーキング部140の夫々の色の濃淡や色合い等が異なることとなる。このようにして、図4(a)に示すような、場所によってマーキング部の色の濃淡や色合い等が異なる模様を外装部材100に付すことができる。
【0030】
以上、図4を参照しながら、XY方向において異なる塗料含有物で形成される複数の領域を有する塗装層106について説明した。次に、図5を参照しながら、塗装層106が、Z方向において異なる塗料含有物で形成される複数の領域を有する例について説明する。
【0031】
図5に示すように、塗装層106は、塗装層146と塗装層156とが基板104上に順に積層された構造を有している。上述したように、塗装層106にはマーキング部が形成されるが、その形態としては、塗装層146と塗装層156の双方に形成される形態(マーキング部160)と、光透過層108側の塗装層156のみに形成される形態(マーキング部170)とがある。
【0032】
より具体的には、Z方向において、光透過層108側の塗装層156が、光学特性を変化させる塗料含有物を含み、且つ当該塗料含有物が、光102の一部を透過可能である場合には、光102の一部が塗装層146にも照射される。その結果、塗装層146及び塗装層156中の塗料含有物の光学特性が変化して、マーキング部160が形成される。一方、光透過層108側の塗装層156の塗料含有物が、光102を透過可能ではない場合には、光102は塗装層146に照射されずに、塗装層156中の塗料含有物の光学特性のみが変化して、マーキング部170が形成される。
【0033】
ここで、光透過層108側から外装部材100を見た場合に、マーキング部160は、
塗装層146の光学特性の変化と、塗装層156の光学特性の変化とが重畳されたものとして、ユーザの目には認識される。一方、光透過層108側から外装部材100を見た場合に、マーキング部170は、光学特性が変化していない塗装層146そのものと、塗装層156の光学特性の変化とが重畳されたものとして、ユーザの目には認識される。従って、マーキング部160とマーキング部170とは、ユーザの目に濃淡や色合い等が異なったものとして認識される。このように、マーキング部160やマーキング部170等が形成されることで、外装部材100の表面に、より繊細で複雑なデザインを施される。
【0034】
次に、再び図3を参照しながら、外装部材100の構成についての説明を続ける。
【0035】
光透過層108は、塗装層106の表面に最上層として積層される。この光透過層108は、光102を透過可能な光透過材料を用いて形成される。この光透過材料は、光102を透過することができる材料であるが、光102の全てを透過することができなくてもよく、一部の光102のみを透過できるものであってもよい。また、光透過材料は、無色透明であってもよいが、必ずしも無色である必要はなく着色されていてもよい。つまり、光透過材料は、レーザ照射された光102を透過可能な材料であればよい。
【0036】
また、光透過材料は、樹脂、及び溶剤を含む。ここで、具体的に、上記光透過材料は、熱硬化性樹脂クリア塗料、及び熱可塑性樹脂クリア塗料の何れでもよい。例えば、上記光透過材料としては、UV硬化性樹脂クリア塗料、アクリル系合成樹脂クリア塗料、アクリルメラミン系合成樹脂透明塗料、エポキシ系合成樹脂透明塗料、ポリエステル系合成樹脂透明塗料等を挙げることができる。また、上記光透過材料としては、フェノール系合成樹脂透明塗料、尿素系合成樹脂透明塗料、不飽和ポリエステル系合成樹脂透明塗料、ポリイミド系合成樹脂透明塗料等も挙げることができる。また、上記光透過材料としては、アルキド系合成樹脂透明塗料、ウレタン系合成樹脂透明塗料、メラミン系合成樹脂透明塗料等も挙げることができる。
【0037】
上記光透過材料は、マーキング部の形成に使用されるレーザが発する光102を透過する。そのため、外装部材100に上記光102がレーザ照射されても、光透過層108が破壊されたり、塗装層106が基板104から剥離されたりせず、塗装層106が露出されないように保護することができる。その結果、外装部材100の塗装層106の基板104に対する密着性及び塗装層106の耐久性が確保される。なお、上記耐久性には、外装部材100を構成する塗装層106及び光透過層108の機械的強度や耐光性等が含まれる。
【0038】
<2−2.第1実施形態に係る外装部材100の製造方法について>
続いて、図6を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る外装部材100の製造方法について説明する。図6は、外装部材100の製造方法を示す説明図である。
【0039】
まず、図6(a)に示すように、基板104の表面に、塗料含有物がコーティングされ、塗装層106が形成される。ここで、上記塗料含有物のコーティング手段としては、例えばスプレーによる吹付け、刷毛塗り、ローラコータ又はバーコータによるコーティング、インクジェットプリンタによる印刷等がある。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、形成された上記塗装層106の表面に光透過材料がコーティングされ、クリア層が形成される。上記光透過材料のコーティング手段としては、塗料含有物のコーティング手段と同様である。その結果、図6(c)に示すように、Z軸の正方向に対して、基板104上に、塗装層106、光透過層108が順に積層されることとなる。
【0041】
次に、図6(c)に示すように、光透過層108の側から塗装層106に向けて、光102がレーザ照射される。その結果、図6(d)に示すように、外装部材100の塗装層106の光102が照射された部分にマーキング部110が形成される。更に、あるマーキング部110が形成された後に、任意の箇所に対して光102を照射することで、新たなマーキング部110が形成される。このようにして、図6(e)に示すように、外装部材100の複数の箇所にマーキング部110が形成される。
【0042】
ここで、マーキング部110を形成する際、光透過層108の光透過材料は、上記波長の光を透過することができるので、光透過層108が光102の照射によって破壊されたりすることがない。そのため、塗装層106が光透過層108によって保護された状態で、マーキング部110が光102の照射によって形成される。つまり、外装部材100は耐久性及び密着性を維持したまま、模様付けされることが可能となる。
【0043】
また、一般的に、外装部材の製造方法では、高速且つ精密な層形成が求められており、インクジェットプリンタ等による多層製膜が行われる場合がある。この場合の製造方法では、インクジェットプリンタ等による多層製膜を行っている際に、クリア層を破壊させないようにするため、層の形成を一旦停止してレーザでマーキングを行ってからクリア層を形成していた。しかし、本実施形態に係る外装部材100の製造方法では、光102の照射が、基板104、塗装層106、及び光透過層108の全てを形成してから行われるので、従来と比較して製造効率が向上する。
【0044】
また、上記の光102を照射するレーザとしては、例えば、YAG(YAl12:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザを使用できる。なお、光102は、YAGレーザに限られず、他のレーザであってもよい。当該YAGレーザを使用する場合、上記マーキング部110を形成するための光102の波長は、532nm又は1064nmとなる。マーキング部110の濃淡等の変化の度合いを調整するために、X方向又はY方向の位置に応じて光102の波長を変えてもよい。さらに、波長の異なる光102が同一箇所に照射されてもよい。
【0045】
また、光102の強度を制御することで、マーキング部110の変色度合いを調整することもできる。
【0046】
[3.第2実施形態]
<3−1.第2実施形態に係る外装部材200の内部構成について>
次に、図7を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る外装部材200の構成について詳細に説明する。外装部材200は、基板104上に、塗装層106と、無機物層112と、光透過層108とが積層された構造を有する。なお、無機物層112は、本実施形態に係る第3の層の一例である。
【0047】
図7に示すように、基板104、塗装層106、及び光透過層108については、第1の実施形態に係る基板104、塗装層106、光透過層108と実質的に同一の構成である。従って、本発明の第2の実施形態では、外装部材200の構成のうち、無機物層112について中心に説明し、上記第1の実施形態と同様の構成についての説明は省略する。
【0048】
無機物層112は、無機材料を含む。この無機材料は、例えば金属、パール、マイカ、又はガラスの少なくとも何れか一つを含む。上記金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。
【0049】
無機物層112が金属を含む場合には、当該金属が光を反射するため、外装部材200は光沢感を有するようになる。また、無機物層112が含みうる無機材料は、機械的強度が高いため、耐久性を向上させることができる。
【0050】
<3−2.第2実施形態に係る外装部材200の製造方法について>
続いて、本発明の第2実施形態に係る外装部材200の製造方法について説明する。図8は、外装部材200の製造方法を示す説明図である。
【0051】
まず、図8(a)に示すように、基板104の表面に、塗料含有物がコーティングされ、塗装層106が形成される。次に、図8(b)に示すように、形成された上記塗装層106の表面に無機材料がコーティングされ、無機物層112が形成される。次に、形成された無機物層112の表面に光透過材料がコーティングされて光透過層108は形成される。図8(c)に示すように、Z軸の正方向に対して、基板104上に、塗装層106、無機物層112、光透過層108が順に積層されることとなる。上記の基板104上に塗装層106、無機物層112、光透過層108の順に積層する製造方法は、第1実施形態に係る外装部材100の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、無機物層112は、塗装層106や光透過層108の形成方法と同様の方法で形成されうる。
【0052】
次に、図8(d)に示すように、光透過層108の側から塗装層106に向けて、光102がレーザ照射されると、図8(e)に示すように、塗装層106にマーキング部110が形成される。この場合に、光102のレーザ照射によって無機物層112にもマーキング部110が形成されてもよい。なお、無機物層112に形成されるマーキング部110の有無に関わらず、光透過層108が塗装層106を保護するため、塗装層106の耐久性及び塗装層106の基板104に対する密着性は保たれる。また、図8に示すように、無機物層112にマーキング部110が形成されない場合には、無機物層112も光透過層108と共に、塗装層106を保護する役割を果たす。また、無機物層112に金属を含む場合には、無機物層112の金属が光を反射するため、外装部材200は光沢感を有することとなる。このように、外装部材200は、無機物層112を有しているために、光沢感が増すこととなり、高級感を有する外装部材200が形成されうる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
100、200 外装部材
102 光
104 基板
106、146、156 塗装層
116、126、136 領域
108 光透過層
110、120、130、140、150、160、170 マーキング部
112 無機物層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成され、塗料含有物を含む第1の層と、
前記第1の層の表面に積層され、前記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を含む第2の層と、
を備え、
前記第1の層は、当該第2の層の少なくとも一部に前記波長の光をレーザ照射することで前記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を有する、外装部材。
【請求項2】
前記第1の層と前記第2の層との間に、無機材料を含む第3の層を更に備える、請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
前記無機材料は、金属、パール、マイカ又はガラスのうちの少なくとも何れか一つを含む、請求項2に記載の外装部材。
【請求項4】
前記第1の層は、
第1の波長の光がレーザ照射されることにより形成される第1のマーキング部と、
第2の波長の光がレーザ照射されることにより形成される第2のマーキング部と、
を少なくとも有する、請求項1に記載の外装部材。
【請求項5】
前記第1の層は、相異なる塗料含有物を含む複数の領域からなり、
前記マーキング部は、前記複数の領域のうちの少なくとも2以上の領域に形成される、請求項1に記載の外装部材。
【請求項6】
基板の表面に塗料含有物をコーティングして第1の層を形成し、
前記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を前記第1の層の表面にコーティングして第2の層を形成し、
前記第1の層に前記波長の光をレーザ照射することで前記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を形成する、外装部材の製造方法。
【請求項7】
基板の表面に形成され、塗料含有物を含む第1の層と、
前記第1の層の表面に積層され、前記塗料含有物の光学特性を変化させることが可能な波長の光が透過可能な材料を含む第2の層と、
を備え、
前記第1の層は、当該第1の層の少なくとも一部に前記波長の光をレーザ照射することで前記塗料含有物の光学特性が変化した部分であるマーキング部を有する、外装部材を用いて形成される、電子機器筐体。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−214897(P2010−214897A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66784(P2009−66784)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】