説明

外観検査装置

【課題】複雑な形状の検査対象物を精度よく外観検査可能な外観検査装置を提供する。
【解決手段】外観検査装置100は、検査対象物10に対し傾斜配置され所定回転角度毎に検査対象物10を撮像する撮像部40と、撮像部40の画像信号を処理し輝度画像データG1〜G24を生成する輝度画像生成部S12と、輝度画像データG1〜G24において同位置の画素を輝度値の大きさ順に並び変え輝度画像データG1〜G24を変換画像データg1〜g24に変換する画像変換部S14と、変換画像データg1又は変換画像データg24の各画素の輝度値から、変換画像データg2〜g23のうちの一つの変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことで、判定用画像データg’を生成する判定用画像生成部S15と、判定用画像データg’の各画素の輝度値に基づいて、検査対象物10の外観異常を判定する異常判定部S16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材等の検査対象物の外観を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラインスキャンカメラを用いて、シール部材のリップ部における割れの有無を検査する外観検査装置が開示されている。検査対象物としてのシール部材は、油圧緩衝器や油圧シリンダ等の油圧機器に用いられる環状のオイルシールであり、油圧機器が有するロッド部の外周に摺接することで油圧機器の内部から作動油が漏れることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−244118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の外観検査装置では、ラインスキャンカメラ(撮像部)はシール部材(検査対象物)の上面に臨むように下向きに配設されているため、検査対象物が複雑な形状である場合には死角になる部分が多く、シール部材の外観検査を十分に行うことができないという問題がある。
【0005】
これに対し、撮像部によって検査対象物を斜め方向から撮像することにより、検査対象物の死角を少なくし、複雑な形状の検査対象物においても外観検査をすることができるようにも思われる。しかしながら、撮像部によって検査対象物を斜め方向から撮像すると、位置に依存した輝度値からなる画像が生成されるため、こうした位置依存の画像を用いて精度よく外観検査を行うことは難しく、依然として改善の余地が残されている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、複雑な形状の検査対象物においても精度よく外観検査を行うことが可能な外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検査対象物の外観を検査する外観検査装置において、前記検査対象物を保持する保持部と、前記検査対象物が所定方向に回転するように前記保持部を回転駆動させる駆動部と、前記検査対象物に対して傾斜するように配置され、所定回転角度毎に前記検査対象物を撮像する撮像部と、前記撮像部から出力される画像信号を処理して、輝度情報を有する複数の画素から構成される輝度画像データを生成する輝度画像生成部と、前記検査対象物の回転角度に対応して生成された複数の輝度画像データを、各輝度画像データの同位置の画素を輝度値の大きさ順に並び変えることによって、変換画像データに変換する画像変換部と、最大輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最小輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、又は、最小輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最大輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、判定用画像データを生成する判定用画像生成部と、前記判定用画像データの各画素の輝度値に基づいて、前記検査対象物の外観異常を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の外観検査装置によれば、撮像部によって検査対象物を斜め方向から撮像するので、検査対象物の死角を少なくでき、複雑な形状の検査対象物においても外観検査が可能となる。また、最大輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最小輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、又は、最小輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最大輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、位置依存の輝度成分を除去した輝度値からなる判定用画像データを生成するので、この判定用画像データに基づいて検査対象物の外観を精度よく検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による外観検査装置の概略構成図である。
【図2】外観検査装置に設けられる制御ユニットが実行する外観検査制御を示すフローチャートである。
【図3】(A)は撮像されたシール部材の輝度画像データであり、(B)は検査領域のみを抽出した輝度画像データである。
【図4】(A)は輝度画像データを撮像順に並べた様子を示す模式図であり、(B)は輝度画像データを変換画像データに変換する様子を示す模式図である。
【図5】(A)は撮像順に並べた輝度画像データであり、(B)は輝度値の大きさ順に並べた変換画像データである。
【図6】(A)は変換画像データに基づいて生成された判定用画像データであり、(B)は判定用画像データの生成の仕方を示す模式図である。
【図7】他の態様における判定用画像データの生成の仕方を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態による外観検査装置100について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、検査対象物の外観を検査する外観検査装置100の構成について説明する。図1は、外観検査装置100の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、外観検査装置100は、シール部材10の外観を検査する装置である。検査対象物としてのシール部材10は、油圧緩衝器や油圧シリンダ等の油圧機器に用いられる環状のオイルシールであり、複数のリップ部を有するゴム部11をリング状のインサートメタル12に一体形成することによって構成される。このように、シール部材10は、複数のリップ部を有する複雑な形状を有している。本実施形態による外観検査装置100は、主にシール部材10の外周面10A及び内周面10Bを検査して、外周面10A及び内周面10Bにおけるゴム部11の外観異常を判定する。
【0013】
外観検査装置100は、載置されるシール部材10を保持可能な保持部20と、保持部20を回転駆動する駆動部30と、シール部材10を撮像する撮像部40と、駆動部30及び撮像部40の動作を制御する制御ユニット50と、を備える。
【0014】
保持部20は、ターンテーブル21及びターンテーブル21の下面中心から下方に突出する回転軸22を有している。保持部20は、回転軸22を介して、枠体60に回転自在に支持される。
【0015】
保持部20のターンテーブル21は、シール部材10を載置可能に形成される。ターンテーブル21は、図示しない保持機構によって、保持部20の回転中心とシール部材10の中心とが一致するようにシール部材10を保持する。なお、図1では、シール部材10は、インサートメタル12の露出部分が上側となるようにターンテーブル21上に配置されているが、インサートメタル12の露出部分が下側となるようにターンテーブル21上に配置することもできる。
【0016】
駆動部30は、保持部20の回転軸22を回転駆動するステッピングモータであり、枠体60内に設置される。駆動部30の駆動力は、図示しない動力伝達機構を介して回転軸22に伝達される。駆動部30の駆動力に基づいて回転軸22が太矢印の方向に回転駆動されることによって、ターンテーブル21とともにシール部材10が回転する。
【0017】
なお、本実施形態では、駆動部30としてステッピングモータを採用したが、これに限られず、サーボモータ等を採用してもよい。駆動部30としてステッピングモータを採用した場合には、簡単な回路構成で正確な位置決め制御を実現でき、制御ユニット50の構成を簡素化することが可能となる。
【0018】
撮像部40は、モノクロイメージセンサを内蔵するカメラである。撮像部40は、その軸心がシール部材10の回転中心軸に対して傾斜するように配置され、斜め上方からシール部材10を撮像する。撮像部40の軸心とシール部材10の回転中心軸とのなす傾斜角度θは、検査対象物の形状等に応じて0°以外に任意に調整される。
【0019】
撮像部40は、シール部材10が一回転する間に、15°間隔でシール部材10を撮像するように設定されている。したがって、撮像部40は、シール部材10が一回転する際に、シール部材10を24回撮像する。
【0020】
なお、本実施形態では、撮像部40は、シール部材10が一回転する間に15°間隔でシール部材10を撮像するように設定されているが、これに限られない。つまり、シール部材10の回転角度は15°に限られず適宜変更してもよく、この回転角度の変更に応じて撮像部40による撮像回数も変更される。
【0021】
撮像部40の前方には、シール部材10の撮像時に使用される発光部70が設けられる。発光部70は貫通孔71を有しており、撮像部40は貫通孔71を介してシール部材10を撮像する。発光部70は、撮像部40の撮像タイミングに対応して発光し、照射光をシール部材10に照射する。これにより、撮像部40によってシール部材10を鮮明に撮像することが可能となる。
【0022】
制御ユニット50は、駆動部30及び撮像部40のそれぞれに接続する。制御ユニット50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インターフェイス(I/Oインターフェイス)を有するコンピュータである。
【0023】
制御ユニット50は、所定の入力データをマニュアル入力可能な入力部51と、種々の表示データを表示可能な表示部52と、を備える。入力部51は例えばキーボードであり、表示部52は例えばモニタである。
【0024】
制御ユニット50の入力部51を介して外観検査開始操作が行われた場合には、制御ユニット50は、ROMに記憶されたプログラム等に基づいて外観検査制御を実行する。
【0025】
外観検査制御では、制御ユニット50は、シール部材10を撮像するように撮像部40を制御し、撮像部40の画像信号に基づいて各回転角度におけるシール部材10の輝度画像データを生成する。そして、制御ユニット50は、これら輝度画像データにおいて同座標位置の画素を輝度値に応じて並び変えることで各輝度画像データをそれぞれ変換画像データに変換し、これら変換画像データに基づいて一個の判定用画像データを生成して、この判定用画像データに基づいてシール部材10の外観異常を判定する。
【0026】
図2〜図6を参照して、外観検査装置100の制御ユニット50が実行する外観検査制御の詳細について説明する。
【0027】
図2は、制御ユニット50が実行する外観検査制御の内容を示すフローチャートである。図3は、図2のステップ12の輝度画像生成処理に関する図である。図3(A)は輝度画像データであり、図3(B)は検査領域のみを抽出した輝度画像データである。図4及び図5は、図2のステップ14の画像変換処理に関する図である。図4(A)は複数の輝度画像データを撮像順に並べた様子を示す模式図であり、図4(B)は各輝度画像データをそれぞれ変換画像データに変換する様子を示す模式図である。図5(A)は撮像順に並べた輝度画像データであり、図5(B)は輝度値の大きさ順に並べた変換画像データである。図6は、図2のステップ15の判定用画像生成処理に関する図である。図6(A)は判定用画像データであり、図6(B)は判定用画像データの生成の仕方を示す模式図である。
【0028】
図2に示すように、ステップ10では、制御ユニット50は、保持部20によって保持されているシール部材10を撮像するように撮像部40を制御する。外観検査開始時には、撮像部40は、回転角度0°の初期位置で停止しているシール部材10を撮像する。
【0029】
ステップ11では、制御ユニット50は、保持部20を15°回転させるように駆動部30を制御する。保持部20の回転に伴って、ターンテーブル21上のシール部材10も15°回転する。
【0030】
ステップ12では、制御ユニット50は、ステップ10で撮像したシール部材10の輝度画像データGを生成する輝度画像生成処理を実行する。ステップ12の処理が、特許請求の範囲に記載の輝度画像生成部に相当する。
【0031】
輝度画像生成処理では、制御ユニット50は、ステップ10での撮像後に撮像部40から出力される画像信号を処理して、図3(A)に示すようなシール部材10の輝度画像データGを生成する。輝度画像データGは、輝度情報を有する複数の画素から構成されている。輝度画像データGは200万画素のモノクロ画像データであり、輝度画像データGの各画素には輝度情報として0〜255の輝度値が割り当てられている。輝度画像データGでは、輝度値が小さくなるほど画素は黒くなり、輝度値が大きくなるほど画素は白くなる。
【0032】
さらに、輝度画像生成処理では、制御ユニット50は、図3(A)のように生成した輝度画像データGのうち、外観検査を行う検査領域以外の領域の輝度情報を破棄する。外観検査装置100はシール部材10の外周面10A及び内周面10Bにおけるゴム部11の検査を行うように構成されているため、シール部材10の上面及びターンテーブル21の上面に対応する領域の輝度情報が破棄される。したがって、輝度画像データGは、図3(B)に示すように、シール部材10の外周面10A及び内周面10Bのみが抽出された画像データとなる。
【0033】
このように、輝度画像データGにおいて、検査領域以外の領域の輝度情報を破棄することで、その後の処理における制御ユニット50の演算負荷を低減でき、外観検査にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0034】
ステップ13では、制御ユニット50は、一回転分のシール部材10の輝度画像データGが生成されたか否かを判定する。
【0035】
制御ユニット50は、シール部材10の回転角度に対応して24個の輝度画像データGが生成されたか否かを判定し、24個の輝度画像データGが生成されている場合にはステップ14の処理を実行する。
【0036】
これに対して、24個の輝度画像データGが生成されていない場合には、制御ユニット50はステップ10の処理を再度実行する。これにより、前回位置から15°回転して停止しているシール部材10が、撮像部40によって撮像される。
【0037】
ステップ14では、制御ユニット50は、輝度画像データGを変換画像データgに変換する画像変換処理を実行する。ステップ14の処理が、特許請求の範囲に記載の画像変換処理部に相当する。
【0038】
画像変換処理では、シール部材10の回転角度に対応して生成された24個の輝度画像データG1〜G24において同座標位置の画素を輝度値の大きさ順に並び変えることによって、各輝度画像データG1〜G24をそれぞれ変換画像データg1〜g24に変換する。
【0039】
例えば、図4(A)に示すように、輝度画像データG1、G2が白色、灰色、黒色の三色で表現される画像データであり、輝度画像データG3〜G24が黒色のみの画像データである場合には、輝度画像データG1、G2の間で同座標位置の画素が輝度値の大きさ順に並び変えられる。座標位置f及びhにおける輝度画像データG1の画素は灰色であり、同座標位置における輝度画像データG2の画素の輝度値よりも小さいので、座標位置f及びhにおける画素が輝度画像データG1、G2の間で入れ替えられ、図4(B)に示すように輝度画像データG1、G2がそれぞれ変換画像データg1、g2に変換される。
【0040】
なお、輝度画像データG3〜G24は、黒色のみの画像データであるため、そのまま変換画像データg3〜g24となる。
【0041】
上述の通り、画像変換処理では、輝度画像データG1〜G24は、同座標位置の画素が輝度値に応じて並び変えられ、それぞれ変換画像データg1〜g24に変換される。したがって、変換画像データg1は最大輝度値の画素群によって構成される画像データとなり、変換画像データg24は最小輝度値の画素群によって構成される画像データとなる。なお、変換画像データg2〜g23は、最大輝度値と最小輝度値との間で輝度値が小さくなるように順列された画素群によって構成される画像データとなる。
【0042】
シール部材10の外周面10Aに異物が付着している等の異常がある場合には、輝度画像データGにおいて異物のある部分の輝度値とその他の部分の輝度値とが異なり、例えば図5(A)に示すように異物のある部分が白く表示される。このようなシール部材10の輝度画像データG1〜G24に画像変換処理が施されると、図5(B)に示すように、変換画像データg1〜g24のうち最大輝度値の画素群によって構成される変換画像データg1が、異物等の外観異常情報を含んだ画像データとなる。このように、変換画像データg1には、他の変換画像データg2等よりも異物等の影響が強く反映される。
【0043】
図2に示すように、画像変換処理後のステップ15では、制御ユニット50は、シール部材10の外観異常を判定するための判定用画像データg’を生成する判定用画像生成処理を実行する。ステップ15の処理が、特許請求の範囲に記載の判定用画像生成部に相当する。
【0044】
判定用画像生成処理では、制御ユニット50は、最大輝度値の画素群によって構成される変換画像データg1と、変換画像データg1の次に大きい輝度値の画素群によって構成される変換画像データg2とに基づいて、一個の判定用画像データg’を生成する。つまり、制御ユニット50は、変換画像データg1の各画素の輝度値から、変換画像データg1の各画素に対応する変換画像データg2の各画素の輝度値を差し引くことによって、図6(A)に示すような判定用画像データg’を生成する。
【0045】
図6(B)は、図5(B)の変換画像データg1、g2及び図6(A)の判定用画像データg’の破線位置に対応する画素の輝度値を図示したものである。
【0046】
図6(B)に示すように、変換画像データg1の輝度線Aは、曲線であって、異物のある位置における輝度値が大きくなっている。これに対して、変換画像データg2の輝度線Bは、異物の影響を受けておらず、滑らかな曲線となっている。ここで、変換画像データg1及び変換画像データg2に判定用画像生成処理を施すと、判定用画像データg’の輝度線Cに示すように、異物等の外観異常に関連する輝度値が相対値として抽出される。
【0047】
これにより、異物等に依存する輝度成分とシール部材10の位置に依存する輝度成分とを含む輝度値からなる変換画像データg1から位置依存の輝度成分を除去でき、異物等に依存する輝度成分の輝度値からなる判定用画像データg’を生成することができる。
【0048】
図2に示すように、判定用画像生成処理後のステップ16では、制御ユニット50は、判定用画像データg’に基づいて、シール部材10の外周面10A及び内周面10Bに異常があるか否かを判定する。
【0049】
シール部材10の外観に異常があるか否かは、判定用画像データg’の各画素の輝度値と予め定められた基準輝度値とを比較することによって判定される。制御ユニット50は、例えば所定画素範囲内において基準輝度値を超える部分の面積が所定値よりも大きい場合に、外観異常があると判定する。ステップ16の処理が、特許請求の範囲に記載の異常判定部に相当する。
【0050】
シール部材10の外観が正常である場合には、制御ユニット50はステップ17の処理を実行する。これに対して、シール部材10の外観に異常がある場合には、制御ユニット50はステップ18の処理を実行する。
【0051】
ステップ17では、制御ユニット50は、制御ユニット50の表示部52にシール部材10の外観が正常であることを報知するメッセージ等を表示し、外観検査制御を終了する。
【0052】
ステップ18では、制御ユニット50は、制御ユニット50の表示部52にシール部材10の外観に異常があることを報知するメッセージ等を表示し、外観検査制御を終了する。
【0053】
上記した本実施形態の外観検査装置100によれば、以下の効果を奏することができる。
【0054】
外観検査装置100では、撮像部40によってシール部材10を斜め方向から撮像するようにしたので、シール部材10の死角を少なくでき、例えば複雑な形状であるシール部材10の外周面10A及び内周面10Bを同時に検査することが可能となる。この外観検査装置100では、各回転角度におけるシール部材10の輝度画像データG1〜G24において同座標位置における画素を輝度値に応じて並び変えて変換画像データg1〜g24を生成し、変換画像データg1の各画素の輝度値から変換画像データg2の各画素の輝度値を差し引いて異物等に依存する輝度成分の輝度値からなる判定用画像データg’を生成するので、判定用画像データg’に基づいてシール部材10の外観を精度よく検査することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態では、外観検査装置100の制御ユニット50は変換画像データg1、g2に基づいて判定用画像データg’を生成するが、これに限られるものではない。シール部材10の外周面10Aのゴム部11に割れ等の異常がある場合には、輝度画像データGにおいて割れのある部分の輝度値とその他の部分の輝度値とが異なり、例えば割れのある部分が黒く表示される。ここで、輝度画像データG1〜G24に画像変換処理が施されると、変換画像データg1〜g24のうち最小輝度値の画素群によって構成される変換画像データg24が割れ等の外観異常情報を含んだ画像データとなる。この場合には、変換画像データg24と、変換画像データg24の次に小さい輝度値の画素群によって構成される変換画像データg23とに基づいて、判定用画像データg’が生成される。
【0056】
図7は、変換画像データg23、g24及び判定用画像データg’において、割れのある部分を含む所定位置に対応する画素の輝度値を図示したものである。線Dは変換画像データg23の輝度線であり、線Eは変換画像データg24の輝度線である。線Fは、変換画像データg24の各画素の輝度値から変換画像データg23の各画素の輝度値を差し引いた時の輝度線である。線Gは、判定用画像データg’の輝度線である。なお、変換画像データg24の輝度線Eで凹んでいる部分に割れ等の外観異常が含まれている。
【0057】
図7に示すように、変換画像データg24の各画素の輝度値(線E)から、変換画像データg24の各画素に対応する変換画像データg23の各画素の輝度値(線D)を差し引き(線F)、その後正負の符号を反転させることによって判定用画像データg’が生成される(線G)。これにより、割れ等に依存する輝度成分とシール部材10の位置に依存する輝度成分とを含む輝度値からなる変換画像データg24から位置依存の輝度成分を除去でき、割れ等に依存する輝度成分の輝度値からなる判定用画像データg’が生成される。この判定用画像データg’に基づいて、ステップ16で説明した手法により外観異常を判定することで、シール部材10の外観を精度よく検査することが可能となる。
【0058】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0059】
例えば、外観検査装置100では、変換画像データg1、g2に基づいて判定用画像データg’を生成するが、変換画像データg2の代わりに変換画像データg3〜g23のいずれか一つの変換画像データを用いて判定用画像データg’を生成してもよい。ここで、変換画像データg24を除いたのは、変換画像データg24には外観異常に関する輝度情報が含まれている可能性があるからである。
【0060】
外観検査装置100は、変換画像データg23、g24に基づいて判定用画像データg’を生成するが、変換画像データg23の代わりに変換画像データg2〜g22のいずれか一つの変換画像データを用いて判定用画像データg’を生成してもよい。ここで、変換画像データg1を除いたのは、変換画像データg1には外観異常に関する輝度情報が含まれている可能性があるからである。
【0061】
外観検査装置100は、モノクロイメージセンサを内蔵するカメラとしたが、カラーイメージセンサを内蔵するカメラとしてもよい。カラーイメージセンサが赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三つの画像信号を得ことができるものである場合には、例えば緑色(G)に対応する画像信号のみを抽出して各画素に対応する輝度値を導出することで輝度画像データを生成することができる。
【0062】
外観検査装置100では、環状のシール部材10を検査対象物としたが、検査対象物の種類はシール部材に限定されず、検査対象物の形状も環状に限定されない。例えば、平面視正八角形の部材等に対しては、回転角度45°毎に輝度画像データを生成することで輝度画像データに表示される形状がそれぞれ同一の形状となるため、外観検査装置100によって外観を検査することができる。つまり、検査対象物は、所定回転角度毎の輝度画像データに表示される形状がそれぞれ同形状となるような部材であればよい。
【0063】
制御ユニット50は、所定画素範囲内において基準輝度値を超える部分の面積が所定値よりも大きい場合に外観異常があると判定しており、基準輝度値を超える部分の面積を判定基準としていたが、これに限られない。例えば、制御ユニット50は、所定画素範囲内において基準輝度値を超える部分があった場合に外観異常があると判定し、基準輝度値を超える部分の有無を判定基準としてもよい。要するに、判定用画像データの各画素の輝度値と予め定められた基準輝度値とを比較することによって、外観異常を判定すればよい。
【0064】
また、制御ユニット50は、判定用画像データの各画素の輝度値と予め定められた基準輝度値とを比較することによって外観異常を判定する代わりに、所定画素範囲内における輝度値の標準偏差を算出し、その算出した標準偏差が所定値よりも大きい場合に、外観異常があると判定してもよい。要するに、判定用画像データの各画素の輝度値に基づいて、検査対象物の外観異常を判定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、種々の検査対象物の外観を検査する装置に適用することができ、検査対象物の外観を精度よく検出できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0066】
100 外観検査装置
10 シール部材
10A 外周面
10B 内周面
11 ゴム部
12 インサートメタル
20 保持部
30 駆動部
40 撮像部
50 制御ユニット
51 入力部
52 表示部
G 輝度画像データ
g 変換画像データ
g’ 判定用画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の外観を検査する外観検査装置において、
前記検査対象物を保持する保持部と、
前記検査対象物が所定方向に回転するように前記保持部を回転駆動させる駆動部と、
前記検査対象物に対して傾斜するように配置され、所定回転角度毎に前記検査対象物を撮像する撮像部と、
前記撮像部から出力される画像信号を処理して、輝度情報を有する複数の画素から構成される輝度画像データを生成する輝度画像生成部と、
前記検査対象物の回転角度に対応して生成された複数の輝度画像データを、各輝度画像データの同位置の画素を輝度値の大きさ順に並び変えることによって、変換画像データに変換する画像変換部と、
最大輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最小輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、又は、最小輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から最大輝度値の画素群から構成される変換画像データ以外の所定の変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、判定用画像データを生成する判定用画像生成部と、
前記判定用画像データの各画素の輝度値に基づいて、前記検査対象物の外観異常を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記検査対象物は、環状部材であり、
前記保持部は、前記保持部の回転中心と前記環状部材の中心とが一致するように前記環状部材を保持し、
前記撮像部は、前記環状部材が一回転するまでの間に、前記環状部材を等回転角度毎に撮像することを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記判定用画像生成部は、最大輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から、最大輝度値の次に大きい輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、前記判定用画像データを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記判定用画像生成部は、最小輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値から、最小輝度値の次に小さい輝度値の画素群から構成される変換画像データの各画素の輝度値を差し引くことによって、前記判定用画像データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記輝度画像生成部は、前記輝度画像データのうち、外観検査を行う検査領域以外の領域の輝度情報を破棄することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記判定用画像データの各画素の輝度値と予め定められた基準輝度値とを比較することによって、前記検査対象物の外観異常を判定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198047(P2012−198047A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60850(P2011−60850)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】