説明

多光子光増感系

光反応性組成物が、(a)酸またはラジカル開始化学反応を受けることができる少なくとも1つの反応性種と、(b)(1)2つ以上の光子の吸収によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する半導体ナノ粒子量子ドットの少なくとも1つのタイプと、(2)前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる、前記反応性種と異なった組成物と、の光化学的に有効な量を含む光開始剤系と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多光子活性化可能な光反応性組成物、およびそれらから得られた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
分子二光子吸収は、1931年にゴッペルト−マイヤー(Goppert−Mayer)によって予測された。1960年のパルスルビーレーザーの発明で、二光子吸収の実験的観察が現実のものとなった。引き続いて、二光子励起が、生物学および光学データ記憶、ならびに他の分野に適用された。
【0003】
二光子誘起光プロセスと単一光子誘起プロセスとの間に2つの基本的な違いがある。単一光子吸収が入射放射線の強度によって一次的に増減するのに対し、二光子吸収が二次的に増減する。より高いオーダーの吸収は、入射強度の相関した、より大きな累乗によって増減する。結果として、三次元空間分解能を有する多光子方法を行うことが可能である。又、多光子プロセスは、2つ以上の光子の同時吸収を必要とするので、吸収発色団は、利用される多光子光増感剤の電子励起状態のエネルギーにその総エネルギーがほぼ同じである多数のフォトンで励起される。励起光は、硬化性母材または材料中の単一光子吸収によって減衰されないので、材料におけるその深さに集束されるビームを使用することによって、単一光子励起によって可能であるよりも大きな、材料中の深さにおいて分子を選択的に励起することが可能である。これらの2つの現象はまた、例えば、ティッシューまたは他の生物学材料中の励起に適用される。
【0004】
多光子吸収を光硬化および極小加工の領域に適用することによって、多数の利点が達成されている。例えば、多光子リソグラフィまたはステレオリソグラフィにおいて、強度による多光子吸収の一次増減により、利用される光の回折限界より小さい寸法を有する特徴を書くことができ、(ホログラフィのためにもまた重要である)三次元の特徴を書くことができる。しかしながら、現在の多光子活性化可能な光反応性組成物の低い感光性のために、かかる作業は、緩慢な書き込み速度および高いレーザ出力に限定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、改良された感光性を有する多光子活性化可能な光反応性組成物が必要とされていることを我々は認識する。本発明は、多光子吸収によって効率的に活性化され得るかかる光反応性組成物を提供する。前記組成物が、
(a)酸またはラジカル開始化学反応を受けることができる少なくとも1つの反応性種(好ましくは、硬化性種、より好ましくは、モノマー、オリゴマー、および反応性ポリマーからなる群から選択された硬化性種)と、
(b)(1)2つ以上の光子の吸収によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する半導体ナノ粒子量子ドットの少なくとも1つのタイプと、
(2)前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる、前記反応性種と異なった組成物と、の光化学的に有効な量を含む多光子光開始剤系と、を含む。
【0006】
本発明の組成物は、半導体ナノ粒子量子ドットを多光子光増感剤として用いることによって、増強された多光子感光性を示す。半導体ナノ粒子量子ドットは、反応開始種(ラジカル、酸など)の形成によって化学反応を起こすために従来の光開始剤系成分と(例えば、蛍光アップ変換または電荷移動によって)相互作用する。多光子光増感剤として一般に用いられる有機染料と異なり、粒子の組成および/または大きさを変えることによって、半導体ナノ粒子量子ドットの電子構造(例えば、酸化または還元ポテンシャルおよび吸収あるいは発光エネルギー)を、選択された従来の光開始剤系成分の電子構造に整合させることができる。さらに、半導体ナノ粒子量子ドットは、大きな多光子吸収断面の計算値を有し、従って、改良された感光性を有する多光子活性化可能な光反応性組成物に対して我々が認めた必要性に対処するために使用できる。
【0007】
他の態様において、この発明はまた、上記の光反応性組成物の反応から得られる組成物、および反応した組成物を含む物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
定義
この特許出願において用いるとき、
「実質的に可溶性」は、光反応性組成物の全重量に対して、約1.0重量パーセントより大きい溶解度を有することを意味する。
【0009】
「ナノ粒子量子ドット」は、約1ナノメーター〜約50ナノメーターの範囲の平均直径を有する粒子を意味する。
【0010】
「多光子吸収」は、同じエネルギーの単一光子の吸収によってエネルギー的に達成可能でない反応性電子励起状態に達する電磁放射線の2つ以上の光子の同時または連続吸収を意味する。
【0011】
「同時の」は、10-14秒以下の時間内に起こる2つの事象を意味する。
【0012】
「多光子アップ変換」は、多光子吸収を受け、その後に、吸収された光子よりも高いエネルギー(より短い波長)の単一光子を発光できることを意味する。
【0013】
「電子励起状態」は、その電子基底状態よりもエネルギーが高く、電磁放射線の吸収によって達成可能であり、10-13秒より長い寿命を有する半導体ナノ粒子、分子、またはイオンの電子状態を意味する。
【0014】
「硬化」は、重合を引き起こすことおよび/または架橋を引き起こすことを意味する。
【0015】
「光学システム」は、光を制御するための装置、すなわち、レンズなどの屈折光学要素、鏡などの反射光学要素、および格子などの回折光学要素から選択された少なくとも1つの要素を備える装置を意味する。光学要素にはまた、拡散体、導波路、および光学技術に周知の他の要素を含めるものとする。
【0016】
「三次元光パターン」は、光エネルギー分布が容積においてあるいは単一平面ではなく多平面において存在する光学画像を意味する。
【0017】
「露光システム」は、光学システムと光源とを併せたものを意味する。
【0018】
「十分な光」は、多光子吸収を達成するために十分な強度および適した波長の光を意味する。
【0019】
「光増感剤」は、活性化のために光開始剤によって必要とされるより低いエネルギーの光を吸収し、光開始剤と相互作用して(それによって「光増感して」)それから光開始種を製造することによって、光開始剤を活性化するために必要とされるエネルギーを減少させる種を意味する。
【0020】
又、(例えば、光開始剤系の成分の)「光化学的に有効な量」は、(例えば、濃度、粘度、色、pH、屈折率、または他の物理的もしくは化学的性質の変化によって示されるように)選択された露光条件下で少なくとも部分的な反応を反応性種が受けることができるのに十分な量を意味する。
【0021】
反応性種
光反応性組成物中で使用するのに適した反応性種には、硬化性種および非硬化性種の両方がある。硬化性種が概して好ましく、例えば、付加重合性モノマーおよびオリゴマーおよび付加架橋性ポリマー(フリーラジカル重合性または架橋性エチレン性不飽和種、例えば、アクリレート、メタクリレートの他、スチレンなどの特定のビニル化合物、等)、ならびにカチオン重合性モノマーおよびオリゴマーおよびカチオン架橋性ポリマー(その種は、最も一般的には酸によって開始され、例えば、エポキシ、ビニルエーテル、シアネートエステルなどがある)等、およびそれらの混合物などがある。
【0022】
適したエチレン性不飽和種は、例えば、パロゾット(Palazzotto)らによって、米国特許第5,545,676号明細書、第1欄、65行目〜第2欄、26行目に記載されており、モノ−、ジ−、およびポリ−アクリレートおよびメタクリレート(例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、トリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート、分子量約200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号明細書に記載されているようなアクリル化モノマーの共重合性混合物、および米国特許第4、642,126号明細書に記載されているようなアクリル化オリゴマー)、不飽和アミド(例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミドおよびベータ−メタクリルアミノエチルメタクリレート)、ビニル化合物(例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、およびジビニルフタレート)等、およびそれらの混合物などがある。適した反応性ポリマーには、例えば、1つのポリマー鎖中に1〜約50の(メタ)アクリレート基を有する、(メタ)アクリレート側基を有するポリマーがある。かかるポリマーの例には、サートマー(Sartomer)製のサーボックス(Sarbox)TM樹脂(例えば、サーボックスTM400、401、402、404、および405)などの芳香族酸(メタ)アクリレート半エステル樹脂がある。フリーラジカル化学によって硬化可能な他の有用な反応性ポリマーには、米国特許第5,235,015号明細書(アリ(Ali)ら)に記載されているポリマーのような、フリーラジカル重合性官能価がそれに結合したヒドロカルビル主鎖およびペプチド側基を有するそれらのポリマーがある。2つ以上のモノマー、オリゴマー、および/または反応性ポリマーの混合物もまた、必要ならば使用することができる。好ましいエチレン性不飽和種には、アクリレート、芳香族酸(メタ)アクリレート半エステル樹脂、およびフリーラジカル重合性官能価がそれに結合したヒドロカルビル主鎖およびペプチド側基を有するポリマーがある。
【0023】
適したカチオン反応性種は、例えば、オックスマン(Oxman)らによって、米国特許第5,998,495号明細書および同6,025,406号明細書に記載されており、エポキシ樹脂が挙げられる。概してエポキシドと呼ばれるかかる材料には、モノマーエポキシ化合物およびポリマータイプのエポキシドがあり、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であってもよい。これらの材料は概して、平均して、1分子中に少なくとも1個(好ましくは、少なくとも約1.5、より好ましくは、少なくとも約2)の重合性エポキシ基を有する。ポリマーエポキシドには、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、オキシラン骨格単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、およびエポキシ側基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマーまたはコポリマー)がある。エポキシドは高純度化合物であってもよく、または1分子中に1、2またはそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。これらのエポキシ含有材料は、それらの主鎖および置換基の性質において非常に変化することができる。例えば、主鎖はどんなタイプであってもよく、その上の置換基は、室温においてカチオン硬化を実質的に妨げないどんな基であってもよい。許容範囲の置換基を例示すると、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、ホスフェート基などがある。エポキシ含有材料の分子量は、約58〜約100,000以上に変化することができる。
【0024】
有用なエポキシ含有材料には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートによって代表される、エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのシクロヘキセンオキシド基を含有する材料がある。この性質の有用なエポキシドのさらに詳細なリストを米国特許第3,117,099号明細書に示す。
【0025】
有用である他のエポキシ含有材料には、式
【化1】

のグリシジルエーテルモノマーがあり、上式中、R’がアルキルまたはアリールであり、nが1〜6の整数である。例を挙げると、多価フェノールをエピクロロヒドリンなどのクロロヒドリンの過剰量と反応させることによって得られた多価フェノールのグリシジルエーテル(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)−プロパンのジグリシジルエーテル)がある。このタイプのエポキシドのさらに別の例は、米国特許第3,018,262号明細書、およびエポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)、リー(Lee)およびネヴィル(Neville)共著、マグロー・ヒル・ブック・カンパニー(McGraw−Hill Book Co.)、ニューヨーク(New York)(1967年)に記載されている。
【0026】
多数の市販のエポキシ樹脂もまた、利用することができる。特に、容易に入手できるエポキシドには、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、以前はシェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Co.)であるが、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products)から商品名エポン(Epon)TM828、エポンTM825、エポンTM1004、およびエポンTM1010、ならびにダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Co.)からデル(DER)TM−331、デルTM−332、およびデルTM−334として入手できるビスフェノールAのジグリシジルエーテル)、ビニルシクロへキセンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション(Union Carbide Corp.)製のERL−4206)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4221、シラキュア(Cyracure)TMUVR6110またはUVR6105)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4201)、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4289)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−0400)、ポリプロピレングリコールから改質された脂肪族エポキシ(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4050およびERL−4052)、ジペンテンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL4269)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMCコーポレーション(FMC Corp.)製のオキシロン(OxironTM)2001)、エポキシ官能価を含有するシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、デル(DER)TM580、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能な臭素化ビスフェノールタイプエポキシ樹脂)、フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ダウ・ケミカル・カンパニー製のデン(DEN)TM−431およびデンTM−438)、レソルシノールジグリシジルエーテル(例えば、コッパー・カンパニー(Koppers Company,Inc.)製のコポキシテ(Kopoxite)TM)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4299またはUVR−6128)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のERL−4234)、ビニルシクロへキセンモノオキシド1,2−エポキシヘキサデカン(例えば、ユニオン・カーバイド・コーポレーション製のUVR−6216)、アルキルC8−C10グリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシ(Heloxy)TMモディファイアー(Modifier)7)、アルキルC12−C14グリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー8)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー61)、クレジルグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー62)、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー65)、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどの多官能性グリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー67)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー68)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー107)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー44)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー48)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー84)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のヘロキシTMモディファイアー32)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、エポンTM−1138またはチバ・ガイギー・コーポレーション(Ciba−Geigy Corp.)製のGY−281)、および9,9−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]フルオレノン(例えば、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製のエポンTM1079)などがある。
【0027】
他の有用なエポキシ樹脂は、グリシドールのアクリル酸エステル(グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートなど)と1つ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーを含む。かかるコポリマーの例は、1:1スチレン−グリシジルメタクリレート、1:1メチルメタクリレート−グリシジルアクリレート、および62.5:24:13.5メチルメタクリレート−エチルアクリレート−グリシジルメタクリレートである。他の有用なエポキシ樹脂が周知であり、エピクロロヒドリン、アルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)、スチレンオキシド、アルケニルオキシド(例えば、ブタジエンオキシド)、およびグリシジルエステル(例えば、エチルグリシド酸)などのかかるエポキシドを含有する。
【0028】
有用なエポキシ官能性ポリマーには、米国特許第4,279,717号明細書(エクバーグ(Eckberg))に記載されているようなエポキシ官能性シリコーンがあり、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(General Electric Company)から市販されている。これらは、米国特許第5,753,346号明細書(ケッセル(Kessel))に記載されているような、ケイ素原子の1〜20モル%がエポキシアルキル基(好ましくは、エポキシシクロヘキシルエチル)で置換されたポリジメチルシロキサンである。
【0029】
様々なエポキシ含有材料のブレンドもまた、利用することができる。かかるブレンドは、エポキシ含有化合物の2つ以上の重量平均分子量分布(低分子量(200より少ない)、中間分子量(約200〜10,000)、高分子量(約10,000より多い)など)を含むことができる。代わりにまたは付加的に、エポキシ樹脂は、異なった化学的性質(脂肪族および芳香族など)または機能性(極性および無極性など)を有するエポキシ含有材料のブレンドを含有することができる。必要ならば、他のカチオン反応性ポリマー(ビニルエーテルなど)を付加的に混入することができる。
【0030】
好ましいエポキシには、芳香族グリシジルエポキシ(レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツから入手可能なエポンTM樹脂)および脂環式エポキシ(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能なERL−4221およびERL−4299など)がある。
【0031】
又、適したカチオン反応性種には、ビニルエーテルモノマー、オリゴマー、および反応性ポリマー(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(ニュージャージー州、ウェインのインターナショナル・スペシャルティズ・プロダクツ(International Specialty Products,Wayne,NJ)製のラピ・キュア(Rapi−Cure)TMDVE−3)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル(例えば、ニュージャージー州、マウントオリーブのBASFコーポレーション(BASF Corp.,Mount Olive,NJ)製のTMPTVE)、およびアライド・シグナル(Allied Signal)製のヴェクトマー(Vectomer)TMジビニルエーテル樹脂(例えば、ヴェクトマーTM2010、ヴェクトマーTM2020、ヴェクトマーTM4010、およびヴェクトマーTM4020および他の製造元から入手可能なそれらの同等物)、およびそれらの混合物がある。1つ以上のビニルエーテル樹脂および/または1つ以上のエポキシ樹脂の(任意の比率の)ブレンドもまた、利用できる。ポリヒドロキシ官能材料(例えば、米国特許第5,856,373号明細書(カイサキ(Kaisaki)ら)において記載されているようなポリヒドロキシ官能材料)もまた、エポキシ−および/またはビニルエーテル官能材料と組合わせて利用することができる。
【0032】
非硬化性種には、例えば酸−またはラジカル誘起反応に基づいて溶解度を増大させることができる反応性ポリマーなどがある。かかる反応性ポリマーには、例えば、光発生酸によって水可溶性酸基に変換され得るエステル基を有する水不溶性ポリマー(例えば、ポリ(4−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)がある。又、非硬化性種には、R.D.アレン(R.D.Allen)、G.M.ワルラフ(G.M.Wallraff)、W.D.ヒンズバーグ(W.D.Hinsberg)、およびL.L.シンプソン(L.L.Simpson)共著、「化学増幅フォトレジストの用途のための高性能アクリルポリマー(“High Performance Acrylic Polymer for Chemically Amplified Photoresist Applications”)」、J.Vac.Sci.Technol.B、9、3357(1991年)に記載された化学増幅フォトレジストがある。化学増幅フォトレジストの概念は、特に、サブ0.5ミクロン(またはさらにサブ0.2ミクロン)の特徴を有する、マイクロチップの製造のために現在広く用いられている。かかるフォトレジストシステムにおいて、触媒種(典型的に水素イオン)を照射によって発生させることができ、それが化学反応のカスケードを誘導する。このカスケードは、水素イオンがより多くの水素イオンまたは他の酸種を発生させる反応を開始するときに起こり、それによって反応速度を増幅する。代表的な酸触媒化学増幅フォトレジストシステムの例には、脱保護(例えば、米国特許第4,491,628号明細書に記載されているようなt−ブトキシカルボニルオキシスチレンレジスト、テトラヒドロフラン(THP)メタクリレート系材料、米国特許第3,779,778号明細書に記載されているようなTHP−フェノール材料、R.D.アレン(R.D.Allen)ら著、Proc.SPIE2438、474(1995年)に記載されているようなt−ブチルメタクリレート系材料など)、脱重合(例えば、ポリフタルアルデヒド系材料)、および再配列(例えば、ピナコール再配列に基づいた材料)などがある。
【0033】
有用な非硬化性種にはまた、ロイコ染料があり、それらは、多光子光開始剤系によって生成された酸によって酸化されるまで無色である傾向があり、又、酸化されると、可視色を示す。(酸化された染料は、電磁スペクトルの可視部分の光(約400〜700nm)のそれらの吸光度によって着色される。)本発明に有用なロイコ染料は、適度な酸化条件下で反応性または酸化可能であり、しかも、一般的な環境条件下で酸化するほど反応性ではないロイコ染料である。画像形成の化学者に周知のロイコ染料の多くのかかる化学クラスがある。
【0034】
本発明の反応性種として有用なロイコ染料には、アクリル化ロイコアジン、フェノキサジン、およびフェノチアジンなどがあり、一部は、構造式:
【化2】

によって表すことができ、式中、XがO、S、および−N−R11から選択されるが、Sが好ましく、
1およびR2が独立に、Hおよび1〜約4個の炭素原子のアルキル基から選択され、R3、R4、R6、およびR7が独立に、Hおよび1〜約4個の炭素原子のアルキル基、好ましくはメチルから選択され、R5が、1〜約16個の炭素原子のアルキル基、1〜約16個の炭素原子のアルコキシ基、および約16個までの炭素原子のアリール基から選択され、R8が、-N(R1)(R2)、H、1〜約4個の炭素原子のアルキル基から選択され(R1およびR2が独立に選択され、上記のように規定される)、R9およびR10が独立に、Hおよび1〜約4個の炭素原子のアルキル基から選択され、R11が、1〜約4個の炭素原子のアルキル基および約11個までの炭素原子のアリール基(好ましくは、フェニル基)から選択される。下記の化合物は、ロイコ染料のこのタイプの例である。
【化3】

【0035】
他の有用なロイコ染料には、ロイコクリスタルバイオレット(Leuco Crystal Violet)(4,4’,4”−メチリジントリス−(N,N−ジメチルアニリン))、ロイコマラカイトグリーン(Leuco Malachite Green)(p,p’−ベンジリデンビス−(N,N−ジメチルアニリン))、構造:
【化4】

を有するロイコアタクリルオレンジ(Leuco Atacryl Orange)−LGM(カラーインデックス塩基性オレンジ21、Comp.No.48035(フィッシャー塩基型化合物))、構造:
【化5】

を有するロイコアタクリルブリリアントレッド−4G(カラーインデックス塩基性赤14)、
構造:
【化6】

を有するロイコアタクリルイエロー−R(カラーインデックス塩基性黄11、Comp.No.48055)、ロイコエチルバイオレット(4,4’,4”−メチリジントリス−(N,N−ジエチルアニリン)、ロイコビクトリアブルー(Leuco Victoria Blu)−BGO(カラーインデックス塩基性青728a、Comp.No.44040;4,4’−メチリジンビス−(N,N,−ジメチルアニリン)−4−(N−エチル−1−ナフタルアミン))、およびロイコアトランティックフクシン粗原料(Leuco Atlantic Fuchsine Crude)(4,4’,4”−メチリジントリス−アニリン)などがあるがそれらに限定されない。
【0036】
ロイコ染料は(s)概して、感光層(light sensitive layer)の全重量の少なくとも約0.01重量%(好ましくは、少なくとも約0.3重量%、より好ましくは、少なくとも約1重量%、最も好ましくは、少なくとも約2重量%〜10重量%以上)のレベルにおいて存在することができる。バインダー、可塑剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、コーティング助剤、潤滑剤、充填剤などの他の材料もまた、感光層中に存在することができる。
【0037】
必要ならば、異なったタイプの反応性種の混合物を光反応性組成物中で利用することができる。例えば、フリーラジカル反応性種およびカチオン反応性種の混合物、硬化性種および非硬化性種の混合物等もまた、有用である。
【0038】
半導体ナノ粒子量子ドット
本発明の組成物中で多光子光増感剤として使用できる半導体ナノ粒子量子ドットには、2つ以上の光子の吸収(好ましくは、同時吸収)によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する半導体ナノ粒子量子ドットがある。好ましくは、前記量子ドットは、反応性種に実質的に可溶性である(従って、実質的に凝集しない)。好ましいナノ粒子量子ドットは概して、光反応性組成物の全成分の全重量に対して、約1.0重量パーセントより大きい(好ましくは、約2.0パーセントより大きい、より好ましくは、約5.0パーセントより大きい)、反応性種への溶解度を示す。ナノ粒子量子ドットは好ましくは、反応性種に十分に可溶性であり、光反応性組成物は、人間の目によって見られる時に光学的に透明である。
【0039】
適したナノ粒子量子ドットは概して、約1nm〜約50nmの平均直径の範囲である。好ましくは、ナノ粒子量子ドットは、少なくとも約1.5nm、より好ましくは、少なくとも約2nmの平均直径を有する。ナノ粒子量子ドットは好ましくは、平均直径が約30nm以下、より好ましくは、約10nm以下である。かなり狭い大きさの分布を有するナノ粒子量子ドットが、一光子吸収を避けるために好ましい。
【0040】
ナノ粒子量子ドットが1つ以上の半導体材料を含むことができる。有用な半導体材料には、例えば、II−VI族半導体(例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgTe、等)、III−V族半導体(例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlAs、AlP、AlSb、AlS、等)、IV族半導体(例えば、Ge、Si、等)、I−VII族半導体(例えば、CuCl、等)、それらの合金、およびそれらの混合物(例えば、三元および四元混合物)などがある。好ましい半導体ナノ粒子量子ドットは、IV族またはII−VI族半導体(より好ましくは、II−VI族半導体、最も好ましくは、亜鉛またはカドミウムを含むII−VI族半導体)を含む。
【0041】
有用な半導体ナノ粒子量子ドットには、前記半導体のバルク励起子ボーア半径以下の平均半径を有する好ましいナノ結晶があり、物質の分子とバルク形状との間の中間の材料のクラスを構成する。量子ドットにおいて、3次元全ての電子と正孔との両方の量子閉じ込めは、粒度の減少による半導体の有効バンドギャップの増大につながる。従って、粒度が小さくなる時に(電子親和力の相応する減少およびイオン化ポテンシャルの増加によって)粒子の吸収エッジおよび発光波長が高エネルギー側にシフトする。この効果を用いて、粒子の有効酸化ポテンシャルおよび還元ポテンシャルを調節することができ(例えば、Brus,J.Phys.Chem.,79:5566(1983年)を参照のこと)、粒子の発光波長を調整して光開始剤系の他の成分の吸収バンドを整合させることができる。
【0042】
特に好ましい半導体ナノ粒子量子ドットは、第2の半導体材料の「シェル」によって囲まれた1つ以上の第1の半導体材料の「コアー」(「コアー/シェル」半導体ナノ粒子量子ドット)を含む。コアー材料の原子間隔に近い原子間隔を有するように、周囲のシェル材料を選択することができる。ルミネセンスの増強が望ましいとき、電子と正孔との両方がコア材料中に存在することがエネルギー的に好ましいように、コア/シェル対のバンドギャップおよびバンドオフセットを選択することができる。電子−正孔対の電荷分離の可能性を高めることが望ましいとき、電子がシェルに存在し、正孔がコアーに存在すること、またはその逆がエネルギー的に好ましいように、コア/シェル対のバンドギャップおよびバンドオフセットを選択することができる。
【0043】
好ましくは、半導体ナノ粒子量子ドット(以下、半導体ナノ粒子または単にナノ粒子)の表面の少なくとも一部が、反応性種中のナノ粒子の相溶性および分散性を促進するために改質される。この表面改質を、本技術分野に周知である様々な異なった方法によって行うことができる。(例えば、Science281,2013(1998年)においてブルッチェズ(Bruchez)らによっておよび米国特許第5,990,479号明細書においてワイス(Weiss)らによって記載された表面改質技術を参照のこと。)
【0044】
概して、適した表面処理剤は、反応性種への溶解度をもたらすために選択される少なくとも1つの部分(可溶化または安定化部分)と半導体表面に対する親和性を有する少なくとも1つの部分(結合部分)とを含む。適した結合部分には、半導体表面との相互作用のために有効である少なくとも1つの電子対を含む部分(例えば、酸素、硫黄、窒素、またはリンを含む部分)が挙げられる。かかる結合部分を含む表面処理剤の例には、アミン、チオール、ホスフィン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、等がある。かかる結合部分は、主に、結合基の窒素、硫黄、酸素、またはリン原子の孤立電子対の配位結合によって半導体表面に付着する。しかしながら、化学結合の他のタイプ(例えば、共有結合またはイオン結合)によってかまたは物理的相互作用によってナノ粒子の表面に付着することができる結合部分を含む表面処理剤もまた、上記のように用いることができる。
【0045】
表面処理剤は好ましくは、ナノ粒子の表面の少なくとも一部が、ナノ粒子を反応性種に実質的に可溶性にするために十分に改質されるような量で用いられる。得られたナノ粒子は、表面に付着または表面に結合した有機基を有する。
【0046】
ナノ粒子の表面の原子の、有機不活性化配位子(organic passivating ligands)との反応による表面改質は、反応性種へのナノ粒子の溶解度を高めるだけでなく、コアーのエネルギー的に禁じられたギャップ内にあるナノ粒子の表面のエネルギーレベルを除くのにさらに役立つ。これらの表面エネルギー状態は、半導体材料のルミネセンス性質を低下させることがある電子および正孔のトラップとして作用する。
【0047】
半導体ナノ粒子(例えば、ケイ素またはゲルマニウムなどの単元素半導体およびGaAs、InP、CdSe、またはZnSなどの化合物半導体)を、標準コロイド化学に基づいた湿式化学プロセスを用いて合成することができる。一般的な合成は、ナノ粒子の成長の制御および凝結を防ぐのに役立つ場合がある高温配位溶剤(例えば、アミンまたはホスフィン)中に半導体の分子前駆体(例えば、CdSeのためのCd(CH32)および(TMS)2Se)を(例えば、注入によって)急速に添加することを必要とする(例えば、マーレー(Murray)ら著、J.Am.Chem.Soc.115:8706(1993年)を参照のこと)。前駆体の高反応性の性質のためにおよび/または成長ナノ粒子の酸化を防ぐかまたは最小にするために、合成は概して、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)中で行われる。
【0048】
溶液中の前駆体の初期の高い濃度は概して、半導体の単一分散種の核の形成をもたらす。前駆体の濃度が核形成の域値を下回るとき、残存する材料の、表面への堆積によってナノ粒子が成長する。前駆体が溶液から消耗されるとき、オストワルド熱成によってか(比較的大きいナノ粒子が成長し、他方、比較的小さいナノ粒子が溶解する。温度を上昇させることによってこれを促進することができる)、または分子前駆体をさらに添加することによって付加的な成長を達成することができる(例えば、ペング(Peng)ら著、J.AmChem.Soc.120:5343(1998年)を参照のこと)。熱を加えるのをやめることにより成長プロセスを止めることによって、特定の大きさのナノ粒子を得ることができる。
【0049】
非溶剤を用いて沈殿によって、得られたナノ粒子を単離および精製することができる。次いで、合成において用いられた表面処理剤(用いる場合)のタイプに応じて、ナノ粒子を様々な溶剤および母材(例えば、ポリマー)中に再分散させることができる。表面処理剤が利用されたとき、必要ならば、異なった表面処理剤(例えば、ニート液体表面処理剤または濃縮表面処理剤溶液)を含有する媒体中に半導体ナノ粒子を混入することによって、得られた表面に付着または表面に結合した基を異なった基で部分的または完全に置換することができる。
【0050】
例えば、ハインズ(Hines)ら(J.Phys.Chem.100:468(1996年))およびダボウシ(Dabbousi)ら(J.Phys.Chem B101:9463(1997年))よって開発された次の一般的な方法によってコアー/シェルナノ粒子を合成することができる。(第1の半導体材料を含む)半導体ナノ粒子のコアーおよび第2の半導体材料に熱変換可能な前駆体を配位溶剤に混入することによって、コアー/シェルナノ粒子の成長を達成することができる。前駆体を第2の半導体材料に変換するのに十分だが、半導体ナノ粒子のコアーの著しい成長を起こすには不十分な温度に配位溶剤を維持することができる。第2の半導体材料のシェルは概して、第1の半導体材料のコアー上に形成される。第2の半導体材料に熱変換可能な前駆体の量を調節することによって、シェルの厚さを制御することができる。かかる無機シェルで不活性化された粒子は概して、有機的に不活性化された粒子よりもやや強靭であり、概して、様々な媒体(本発明の光反応性組成物において用いられた反応性種など)中にそれらを混入するために用いられた加工条件に対して、幾分、より大きな許容度を有する。
【0051】
適した半導体ナノ粒子を作製するための他の方法には、例えば、マーレー(Murray)ら著、J.Am.Chem.Soc.115、8706(1993年)、カタリ(Katari)ら著、J.Phys.Chem.98、4109(1994年)、ペングら著、Chem.Eur.J.8(#2)、335(2002年)およびそこに記載された文献、ヘングライン(Henglein)ら著、Chem.Rev.89、1861(1989年)、スタイガーウォールド(Steigerwald)ら著、J.AmChem.Soc.111、4141(1989年)、ハリソン(Harrison)ら著、Adv.Mater.12(#2)、123(2000年)、ダボウシら著、J.Phys.Chem.101、9463(1997年)、ペングら著、J.Am.Chem.Soc.119、7019(1997年)、ハインズ(Hines)ら著、J.Phys.Chem.100、468(1996年)、レバプラサドゥ(Revaprasadu)ら著、Chem.Comm.1573(1999年)、ハインズら著、J.Phys.Chem.B102、3655(1998年)、ニケシュ(Nikesh)ら著、Semicond.Sci.Technol.16、687(2001年)、ミシック(Micic)ら著、J.Lum.70、95(1996年)、アリビサトス(Alivisatos)ら著、米国特許第5,505,928号明細書、ミシックら著、A.P.L.75(#4)、478(1999年)、グゼリアン(Guzelian)ら著、J.PhysChem.100、7212(1996年)、ミシックら著、J.Phys.Chem.99、7754(1995年)、グゼリアンら著、A.P.L.69(#10)、1432(1996年)、リタウ(Littau)ら著、J.Phys.Chem.97、1224(1993年)、およびホームズ(Holmes)ら著、J.Am.Chem.Soc.123、3743(2001年)に記載された方法がある。
【0052】
光開始剤系の他の成分
半導体ナノ粒子と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物が、一成分系、二成分系、または三成分系であってもよい。1つの適した一成分系は、半導体ナノ粒子のアップ変換電子発光バンドと重なる電子吸収バンドを有する少なくとも1つの一光子光開始剤(すなわち、半導体ナノ粒子によって放射された光を吸収することができ、反応開始種を生成することができる化合物)の光化学的に有効な量を含む。かかる化合物の例には、フリーラジカル源を生成するフリーラジカル光開始剤および電磁スペクトルの紫外部分または可視部分の波長を有する放射線に露光された時に酸(プロトン酸またはルイス酸のどちらか)を生成するカチオン性光開始剤がある。
【0053】
有用なフリーラジカル光開始剤には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アリールグリオキサレート、アシルホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントン、クロロアルキルトリアジン、ビスイミダゾール、トリアシルイミダゾール、ピリリウム化合物、スルホニウムおよびヨードニウム塩、メルカプト化合物、キノン、アゾ化合物、有機過酸化物、およびそれらの混合物などがある。かかる光開始剤の例は、例えば、米国特許第4,735,632号明細書(第3欄、26−47行目を参照)、および同6,054,007号明細書(第16欄、58行目〜第17欄、7行目を参照)に記載されている。
【0054】
有用なカチオン性光開始剤には、オニウムカチオンと金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンとを有するメタロセン塩がある。他の有用なカチオン性光開始剤には、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩、ならびに有機金属錯カチオンと金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンとを有するメタロセン塩(例えば、米国特許第4,751,138号明細書(例えば、第6欄、65行目〜第9欄、45行目を参照)および同5,238,744号明細書(第10欄、12行目〜第11欄、3行目を参照)にさらに記載されているような)がある。光開始剤の混合物もまた、有用である。
【0055】
かかるフリーラジカル光開始剤およびカチオン性光開始剤ならびにそれらの調製方法は、本技術分野において周知である。多くが市販されている。
【0056】
他の適した一成分系が、電子供与体化合物または、代わりに、電子受容体化合物を含む。1つの適した二成分系が、電子供与体化合物と電子受容体化合物との両方を含む。
【0057】
他の有用な二成分および三成分系が、(1)半導体ナノ粒子のアップ変換電子発光バンドと重なる電子吸収バンドを有する少なくとも1つの一光子光増感剤と、(2)(i)前記一光子光増感剤の電子励起状態に電子を供与できる、前記一光子光増感剤と異なった少なくとも1つの電子供与体化合物(好ましくは、ゼロより大きくp−ジメトキシベンゼンの酸化ポテンシャル以下である酸化ポテンシャルを有する電子供与体化合物)、および(ii)前記一光子光増感剤の電子励起状態から電子を受容することによって光増感され、少なくとも1つのフリーラジカルおよび/または酸の形成をもたらすことができる少なくとも1つの光開始剤または電子受容体化合物(好ましくは、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アジニウム塩、クロロメチル化トリアジン、およびトリアリールイミダゾリルダイマーからなる群から選択された光開始剤)のどちらかまたは両方と、の光化学的に有効な量を含む。
【0058】
(1)一光子光増感剤
光反応性組成物の光開始剤系に使用するのに適した一光子光増感剤は、半導体ナノ粒子の少なくとも1つのアップ変換電子発光バンドと重なる少なくとも1つの電子吸収バンドを有する一光子光増感剤である。従って、一光子光増感剤の選択は、ある程度、利用される半導体ナノ粒子の特定のタイプに依存する。ナノ粒子の大きさを調節することによって、ナノ粒子の発光と光増感剤の吸収とのスペクトルの重複を微調整することができる。しかしながら、一光子光増感剤は好ましくは、好ましい半導体ナノ粒子が概してかかる波長の光を放射するので、約250〜約800ナノメーター(より好ましくは、約350〜約700ナノメーター、最も好ましくは、約350〜約600ナノメーター)の波長の範囲内のどこかの光を吸収可能である。
【0059】
好ましくは、一光子光増感剤は、反応性種の反応を実質的に妨げる官能価を実質的に含有せず、(反応性種が液体である場合)反応性種に可溶性であるか、または反応性種と相溶性であり、および組成物中に含有される(下記のような)いずれのバインダーとも相溶性であり、半導体ナノ粒子の発光最大において大きな一光子吸収率(約100M-1cm-1より大きい)を有する。一光子光増感剤が、照射波長において実質的に一光子吸収を有さないこともまた、好ましい。最も好ましくは、一光子光増感剤はまた、米国特許第3,729,313号明細書に記載された試験手順を用いて、一光子光増感剤の単一光子吸収スペクトルと重なる波長範囲において連続照射下(単一光子吸収条件)、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを増感することができる。現在入手可能な材料を用いて、その試験を以下のように実施することができる。
【0060】
以下の組成物、すなわち、分子量45,000〜55,000の、9.0〜13.0%ヒドロキシル含有量のポリビニルブチラール(モンサント(Monsanto)製のブトバル(Butbar)TMB76)の5%(w/v)メタノール溶液5.0部と、0.3部のトリメチロールプロパントリメタクリレートと、0.03部の2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(Bull.Chem.Soc.Japan、42、2924〜2930(1969年)を参照)を有する標準試験溶液を調製することができる。この溶液に、光増感剤として試験される化合物0.01部を添加することができる。次いで、0.05mmのナイフオリフィスを用いて、得られた溶液を、0.05mmの透明ポリエステルフィルム上にナイフコートすることができ、コーティングを約30分間、空気乾燥させることができる。0.05mmの透明ポリエステルカバーフィルムを、空気の閉じ込めを最小にして、乾燥された軟質かつ粘着性コーティングの上に注意深く配置することができる。次に、得られたサンドイッチ構造体を3分間、可視範囲および紫外範囲の両方の光を提供するタングステン光源(ゼネラル・エレクトリック製のFCHTM650ワット石英ヨウ素ランプ)からの入射光161,000ルクスに露光することができる。前記構造体の露光および未露光領域を提供するために、ステンシルを通して露光を行うことができる。露光後にカバーフィルムを除去することができ、ゼログラフィーにおいて通常に用いられるタイプのカラートナー粉末など、微細着色粉末でコーティングを処理することができる。試験された化合物が光増感剤である場合、トリメチロールプロパントリメタクリレートモノマーは、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンから光によって発生されたフリーラジカルによって露光領域において重合される。重合された領域は本質的に不粘着性であるので、着色粉末は事実上、コーティングの粘着性未露光領域にだけ選択的に付着し、ステンシルの視覚像に相応する視覚像を提供する。
【0061】
好ましくは、一光子光増感剤はまた、一部は、貯蔵安定性の問題に基づいて選択される場合がある。したがって、特定の光増感剤の選択は、利用された特定の反応性種に(ならびに電子供与体化合物および/または光開始の選択に)ある程度、依存する場合がある。
【0062】
適した一光子光増感剤には、以下のカテゴリーの化合物、すなわち、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、シアニン染料、およびピリジニウム染料があると考えられる。キサンテン染料、シアニン染料、ケトン(例えば、モノケトンまたはアルファ−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、およびp置換アミノスチリルケトン化合物が好ましい一光子光増感剤である。光増感剤の混合物もまた、利用することができる。高い感度を必要とする適用については、ジュロリジニル部分を含有する一光子光増感剤を使用することが概して好ましい。
【0063】
ケトン光増感剤の好ましいクラスは、以下の一般式:
ACO(X)b
によって表されるケトン光増感剤を含み、上式中、XがCOまたはCR12であり、R1およびR2が同一であるかまたは異なっていてもよく、水素、アルキル、アルカリール、またはアラルキルであってもよく、bが0であり、AおよびBが同一であるかまたは異なっていてもよく、置換されるか(1つ以上の非干渉置換基を有する)または非置換アリール、アルキル、アルカリール、またはアラルキル基であってもよく、またはAおよびBが全体として、置換または非置換脂環式、芳香環、ヘテロ芳香環、または縮合芳香環であってもよい環状構造を形成することができる。
【0064】
上記の式の適したケトンには、2,2−、4,4−、または2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−または2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−または9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−または4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリンなどのモノケトン(b=0)がある。適したジケトンには、アラルキルジケトン、例えば、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−およびp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−および1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−および9,10−ジアセチルアントラセン、等がある。適したアルファ−ジケトン(b=1およびx=CO)には、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−へキサンジオン、3,4−へキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−33’−および4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファキノン)、ビアセチル、1,2−シクロへキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノン、等がある。
【0065】
好ましいケトクマリンおよびp置換アミノスチリルケトン化合物には、3−(p−ジメチルアミノシンナモイル)−7−ジメチル−アミノクマリン、3−(p−ジメチルアミノシンナモイル)−7−ジメチル−アミノクマリン、3−(p−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジメチル−アミノクマリン、3−(p−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジメチル−アミノクマリン、9’−ジュロリジン−4−ピペリジノアセトフェノン、9’−ジュロリジン−4−ピペリジノアセトフェノン、9−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、9−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、9−(4−ジシアノエチルアミノシンナモイル)−1,2,4,5−テトラ−ヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]−キノリジン−10−オン、9−(4−ジシアノエチルアミノシンナモイル)−1,2,4,5−テトラ−ヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]−キノリジン−10−オン、2,3−ビス(9’−ジュロリジン)シクロペンタノン、2,3−ビス(9’−ジュロリジン)シクロペンタノン、9−エトキシカルボニル−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、9−エトキシカルボニル−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、2−(4’−ジエチルアミノベンジリジン)−1−インダノン、2−(4’−ジエチルアミノベンジリジン)−1−インダノン、9−アセチル−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、9−アセチル−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−i,j]キノリジン−10−オン、5,10−ジエトキシ−12,16,17−トリクロロビオラントレン、および5,10−ジエトキシ−12,16,17−トリクロロビオラントレン、等がある。
【0066】
特に好ましい一光子光増感剤には、ローズベンガル(すなわち、4,5,6,7−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセインジナトリウム塩(CAS632−69−9))、3−メチル−2−[(1E,3E)−3−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)プロプ−1−エニル]−1,3−ベンゾチアゾール−3−イウムヨージド、カンファキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロへキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1,2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−へキサンジオン、3,4−へキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、および1,2−シクロへキサンジオンなどがある。
【0067】
(2)電子供与体化合物
光反応性組成物の光開始剤系において有用な電子供与体化合物は、電子を一光子光増感剤の電子励起状態にかまたは半導体ナノ粒子の電子励起状態に供与することができる(一光子光増感剤自体以外の)それらの化合物である。場合によりかかる化合物を用いて、増大した多光子感光性を提供し、それによって、光反応性組成物の光反応を行うために必要とされる露光を低減することができる。電子供与体化合物は好ましくは、ゼロより大きくp−ジメトキシベンゼンの酸化ポテンシャル以下の酸化ポテンシャルを有する。好ましくは、飽和カロメル電極(「S.C.E.」)に対して酸化ポテンシャルが約0.3〜2Vである。
【0068】
電子供与体化合物はまた、好ましくは反応性種に可溶性であり、一部は、(上記のように)貯蔵安定性の問題に基づいて選択される。適した供与体は概して、所望の波長の光に露光したときに硬化速度または光反応性組成物の画像濃度を増加させることができ、好ましくは、半導体粒子との望ましくない副反応を触媒しない。
【0069】
カチオン反応性種と作用するとき、当業者は、電子供与体化合物が、かなりの塩基度を有する場合、カチオン反応に悪影響を及ぼすことがあることを理解するであろう。(例えば、米国特許第6,025,406号明細書(オックスマンら)の第7欄、62行目〜第8欄、49行目の考察を参照のこと)。この忠告はまた、半導体粒子および/または表面処理剤の選択にもに当てはまる場合がある。
【0070】
概して、(例えば、米国特許第4,859,572号明細書(ファリッド(Farid)ら)に記載されているように)3つの成分の酸化および還元ポテンシャルを比較することによって、特定の一光子光増感剤、半導体ナノ粒子、および光開始剤と共に使用するために適した電子供与体化合物を選択することができる。かかるポテンシャルを(例えば、R・J・コックス(R.J.Cox)著、Photographic Sensitivity、第15章、アカデミック・プレス(Academic Press)(1973年)に記載された方法によって)実験的に測定することができ、またはN.L.ワインバーグ(N.L.Weinburg)編、Technique of Electroorganic Synthesis Part II Techniques of Chemistry、Vol.V(1975年)、およびC.K.マン(C.K.Mann)およびK.K.バーンズ(K.K.Barnes)、Electrochemical Reactions in Nonaqueous Systems(1970)などの文献から得ることができる。前記ポテンシャルは、相対エネルギーの関係を反映し、電子供与体化合物の選択を導くために以下のように使用できる。
【0071】
一光子光増感剤または半導体ナノ粒子が電子励起状態にあるとき、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の最高被占分子軌道(HOMO)中の電子を、より高いエネルギー準位(すなわち、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の最低空分子軌道(LUMO))に上げ、それが初期に占めた分子軌道に空孔を残す。光開始剤が、より高いエネルギー軌道からの電子を受容することができ、特定の相対エネルギーの関係が満たされる場合、電子供与体化合物が電子を供与して最初に占めた軌道の空孔を充填することができる。
【0072】
光開始剤の還元ポテンシャルが一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の還元ポテンシャルよりも負側にない(またはより正側にある)場合、これは発熱プロセスを表すので、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の高い側のエネルギー軌道の電子は、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子から光開始剤の最低空分子軌道(LUMO)に容易に移される。プロセスが代わりにわずかに吸熱となる(すなわち、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の還元ポテンシャルが光開始剤の還元ポテンシャルよりも0.1ボルトまで負側にある)場合でも、周囲熱活性化がかかる小さな障害を容易に克服することができる。
【0073】
同様にして、電子供与体化合物の酸化ポテンシャルが一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の酸化ポテンシャルよりも正側にない(またはより負側にある)場合、電子供与体化合物のHOMOから一光子光増感剤または半導体ナノ粒子中の軌道空位(orbital vacancy)に移動する電子は、より高いポテンシャルからより低いポテンシャルに移動しており、それがまた、発熱プロセスを表す。プロセスがわずかに吸熱となる(すなわち、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の酸化ポテンシャルが電子供与体化合物の酸化ポテンシャルよりも0.1ボルトまで正側にある)場合、周囲熱活性化がかかる小さな障害を容易に克服することができる。
【0074】
一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の還元ポテンシャルが光開始剤の還元ポテンシャルよりも0.1ボルトまで負側にあるか、または一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の酸化ポテンシャルが電子供与体化合物の酸化ポテンシャルよりも0.1ボルトまで正側にあるわずかな吸熱反応は、光開始剤または電子供与体化合物のどちらが最初にその励起状態の一光子光増感剤または半導体ナノ粒子と反応するかに関係なく、全ての場合に起こる。光開始剤または電子供与体化合物がその励起状態の一光子光増感剤または半導体ナノ粒子と反応しているとき、反応が発熱となるかまたはわずかにだけ吸熱となるのが好ましい。光開始剤または電子供与体化合物が一光子光増感剤のイオン基と反応しているとき、発熱反応がやはり好ましいが、さらに多くの吸熱反応が、多くの場合に起こることを予想できる。このように、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の還元ポテンシャルが、次いで反応する光開始剤の還元ポテンシャルよりも0.2ボルトまで(またはそれ以上)、負側にある場合があり、または一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の酸化ポテンシャルが、次いで反応する電子供与体化合物の酸化ポテンシャルよりも0.2ボルトまで(またはそれ以上)、正側にある場合がある。
【0075】
適した電子供与体化合物には、例えば、D.F.イートン(D.F.Eaton)著、Advances in Photochemistry、B.ボーマン(B.Voman)ら編、13巻、427〜488ページ、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク(New York)(1986年)、オックスマン(Oxman)らによって、米国特許第6,025,406号明細書の第7欄、42〜61行目、およびパラゾット(Palazzotto)らによって、同5,545,676号明細書の第4欄、14行目〜第5欄、18行目に記載された電子供与体化合物がある。かかる電子供与体化合物には、アミン(トリエタノールアミン、ヒドラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリフェニルアミン(およびそのトリフェニルホスフィンおよびトリフェニルアルシン類似体など)、アミノアルデヒド、およびアミノシラン)、アミド(ホスホルアミドなど)、エーテル(チオエーテルなど)、尿素(チオ尿素など)、スルフィン酸およびそれらの塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸およびその塩、ジチオカルバミド酸およびその塩、キサンテートの塩、エチレンジアミンテトラ酢酸の塩、(アルキル)n(アリール)mボレート(n+m=4)の塩(テトラアルキルアンモニウム塩が好ましい)、SnR4化合物(各Rが独立に、アルキル、アラルキル(特に、ベンジル)、アリール、アルカリール基のうちから選択される)(例えば、n−C37Sn(CH33、(アリル)Sn(CH33、および(ベンジル)Sn(n−C373などの化合物)などの様々な有機金属化合物、フェロセン等、およびそれらの混合物などがある。電子供与体化合物が非置換であってもよく、または1つ以上の非干渉置換基で置換されてもよい。特に好ましい電子供与体化合物は、電子供与体原子(窒素、酸素、リン、または硫黄原子など)および電子供与体原子のアルファ位の炭素またはケイ素原子に結合した抽出可能な水素原子を含有する。
【0076】
好ましいアミン電子供与体化合物には、アルキル−、アリール−、アルカリール−およびアラルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、トリエタノールアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、2,4−ジメチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、o−、m−およびp−トルイジン、ベンジルアミン、アミノピリジン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−2−ブテン−1,4−ジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−へキサンジアミン、ピペラジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−エチレンジピペリジン、p−N,N−ジメチル−アミノフェネタノールおよびp−N−ジメチルアミノベンゾニトリル)、アミノアルデヒド(例えば、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジエチルアミノベンズアルデヒド、9−ジュロリジンカルボキサルデヒド、および4−モルホリノベンズアルデヒド)、およびアミノシラン(例えば、トリメチルシリルモルホリン、トリメチルシリルピペリジン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン、N,N−ジエチルアミノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン、トリス(メチルシリル)アミン、トリス(ジメチルシリル)アミン、ビス(ジメチルシリル)アミン、N,N−ビス(ジメチルシリル)アニリン、N−フェニル−N−ジメチルシリルアニリン、およびN,N−ジメチル−N−ジメチルシリルアミン)、およびそれらの混合物などがある。第三芳香族アルキルアミン、特に、芳香環に少なくとも1つの電子吸引基を有する第三芳香族アルキルアミンが、特に良好な貯蔵安定性を提供することがわかった。
【0077】
好ましいアミド電子供与体化合物には、N,N−ジメチルアセタミド、N,N−ジエチルアセタミド、N−メチル−N−フェニルアセタミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサエチルホスホルアミド、ヘキサプロピルホスホルアミド、トリモルホリノホスフィンオキシド、トリピペリジノホスフィンオキシド、およびそれらの混合物などがある。
【0078】
好ましいアルキルアリールボレート塩には、
Ar3B(n−C49-N(C254+
Ar3B(n−C49-N(CH34+
Ar3B(n−C49-N(n−C494+
Ar3B(n−C49-Li+
Ar3B(n−C49-N(C6134+
Ar3B(C49-N(CH33(CH22CO2(CH22CH3+
Ar3B(C49-N(CH33(CH22OCO(CH22CH3+
Ar3B(sec−C49-N(CH33(CH22CO2(CH22CH3+
Ar3B(sec−C49-N(C6134+
Ar3B(C49-N(C8174+
Ar3B(C49-N(CH34+
(p−CH3O−C643B(n−C49-N(n−C494+
Ar3B(C49-N(CH33(CH22OH+
ArB(n−C493-N(CH34+
ArB(C253-N(CH34+
Ar2B(n−C492-N(CH34+
Ar3B(C49-N(C494+
Ar4-N(C494+
ArB(CH33-N(CH34+
(n−C494-N(CH34+
Ar3B(C49-P(C494+
(上式中、Arがフェニル、ナフチル、置換(好ましくは、フルオロ置換)フェニル、置換ナフチル、より多数の縮合芳香環を有する同じ基である)、ならびにテトラメチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルボレートおよびテトラブチルアンモニウムn−ヘキシル−トリス(3−フルオロフェニル)ボレート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からCGI437およびCGI746として入手可能)、およびそれらの混合物がある。
【0079】
適したエーテル電子供与体化合物には、4,4’−ジメトキシビフェニル、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,2,4,5−テトラメトキシベンゼン等、およびそれらの混合物などがある。適した尿素電子供与体化合物には、N,N’−ジメチル尿素、N,N−ジメチル尿素、N,N’−ジフェニル尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−ブチルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジエチルチオ尿素等、およびそれらの混合物などがある。
【0080】
フリーラジカル誘起反応のための好ましい電子供与体化合物には、1つ以上のジュロリジニル部分を含有するアミン、アルキルアリールボレート塩、および芳香族スルフィン酸の塩がある。しかしながら、かかる反応については、必要ならば(例えば、光反応性組成物の貯蔵安定性を改良するためにか、または分解能、コントラスト、および相反性を改質するために)、電子供与体化合物を除くこともできる。酸誘起反応のための好ましい電子供与体化合物には、4−ジメチルアミノ安息香酸、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、4−ジメチルアミノフェネチルアルコール、および1,2,4−トリメトキシベンゼンなどがある。
【0081】
(3)二成分系および三成分系のための光開始剤
光反応性組成物の反応性種のために適した光開始剤(すなわち、電子受容体化合物)には、一光子光増感剤または半導体ナノ粒子の電子励起状態から電子を受容することによって光増感され、少なくとも1つのフリーラジカルおよび/または酸の形成をもたらすことができる光開始剤が挙げられる。かかる光開始剤には、ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、クロロメチル化トリアジン(例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、および2−アリール−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、ジアゾニウム塩(例えば、アルキル、アルコキシ、ハロ、またはニトロなどの基で場合により置換されたフェニルジアゾニウム塩)、スルホニウム塩(例えば、アルキルまたはアルコキシ基で場合により置換されたトリアリールスルホニウム塩、隣接したアリール部分を架橋する2,2’オキシ基を場合により有する)、アジニウム塩(例えば、N−アルコキシピリジニウム塩)、およびトリアリールイミダゾリルダイマー(好ましくは、アルキル、アルコキシ、またはハロなどの基で場合により置換された、2,2’,4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾールなどの2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマー)等、およびそれらの混合物がある。
【0082】
光開始剤は好ましくは、反応性種に可溶性であり、好ましくは貯蔵安定性がある(すなわち、光増感剤および電子供与体化合物の存在下でその中に溶解したときに反応性種の反応を自発的に促進しない)。したがって、特定の光開始剤の選択は、ある程度、上記のような、選択された特定の反応性種、半導体ナノ粒子、光増感剤、および電子供与体化合物に依存する。反応性種が酸開始化学反応を受けることができる場合、光開始剤はオニウム塩(例えば、ヨードニウム、スルホニウム、またはジアゾニウム塩)である。
【0083】
適したヨードニウム塩には、パラゾット(Palazzotto)らによって、米国特許第5,545,676号明細書の第2欄、28〜46行目に記載されたヨードニウム塩がある。適したヨードニウム塩はまた、米国特許第3,729,313号明細書、同3,741,769号明細書、同3,808,006号明細書、同4,250,053号明細書および同4,394,403号明細書に記載されている。ヨードニウム塩は、単塩(例えばCl-、Br-、I-またはC45SO3-などのアニオンを含有する)または金属錯塩(例えばSbF6-、PF6-、BF4-、テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、SbF5OH-またはAsF6-を含有する)である場合がある。必要ならばヨードニウム塩の混合物を用いることができる。
【0084】
有用な芳香族ヨードニウム錯塩光開始剤の例には、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,2’−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−アセタミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等、およびそれらの混合物などがある。べリンガー(Beringer)ら著、J.Am.Chem.Soc.81、342(1959年)の教示によって、相応する芳香族ヨードニウム単塩(例えば、ジフェニルヨードニウムビサルフェートなど)の複分解によって芳香族ヨードニウム錯塩を調製することができる。
【0085】
好ましいヨードニウム塩には、ジフェニルヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートなど)、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(例えば、サートマー・カンパニー(Sartomer Company)製のサーキャット(SarCat)TMCD1012)、およびそれらの混合物などがある。
【0086】
有用なクロロメチル化トリアジンには、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−メチル−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなど、米国特許第3,779,778号明細書(スミス(Smith)ら)の第8欄、45−50行目に記載されたクロロメチル化トリアジンがあり、より好ましいのは、米国特許第3,987,037号明細書および同3,954,475号明細書(ボナム(Bonham)ら)に開示された発色団置換ビニルハロメチル−s−トリアジンである。
【0087】
有用なジアゾニウム塩には、米国特許第4,394,433(ガツケ(Gatzke))に記載されたジアゾニウム塩があり、それらは、感光性芳香族部分(例えば、ピロリジン、モルホリン、アニリン、およびジフェニルアミン)、外部ジアゾニウム基(−N+=N)およびそれと会合したアニオン(例えば、塩化物、トリ−イソプロピルナフタレンスルホネート、テトラフルオロボレート、およびビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチド)を含む。有用なジアゾニウムカチオンの例には、1−ジアゾ−4−アニリノベンゼン、N−(4−ジアゾ−2,4−ジメトキシフェニル)ピロリジン、1−ジアゾ−2,4−ジエトキシ−4−モルホリノベンゼン、1−ジアゾ−4−ベンゾイルアミノ−2,5−ジエトキシベンゼン、4−ジアゾ−2,5−ジブトキシフェニルモルホリノ、4−ジアゾ−1−ジメチルアニリン、1−ジアゾ−N,N−ジメチルアニリン、1−ジアゾ−4−N−メチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、等がある。
【0088】
有用なスルホニウム塩には、米国特許第4,250,053号明細書(スミス)の第1欄、66行目〜第4欄、2行目に記載されたスルホニウム塩があり、それらを式:
【化7】

によって表すことができ、上式中、R1、R2、およびR3が各々、独立に、約4〜約20個の炭素原子を有する芳香族基(例えば、置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニル、およびフラニルであり、置換がアルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、アリールスルホニウム、などの基によってであってもよい)および1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。本明細書中で用いるとき、用語「アルキル」には、(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、またはアリールなどの基で置換された)置換アルキルを含める。R1、R2、およびR3の少なくとも1つが芳香族であり、好ましくは、各々が独立に芳香族である。Zが、共有結合、酸素、硫黄、−S(=O)−、−C(=O)−、−(O=)S(=O)−、および−N(R)−からなる群から選択され、Rが(フェニルなど、約6〜約20個の炭素の)アリール、(アセチル、ベンゾイルなど、約2〜約20個の炭素の)アシル、炭素−炭素結合、または-(R4−)C(−R5)−であり、R4およびR5が独立に、水素、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基、および約2〜約4個の炭素原子を有するアルケニル基からなる群から選択される。X-が、下記のようなアニオンである。
【0089】
スルホニウム塩のために(および光開始剤の他のタイプのどれかのために)適したアニオン、X-には、例えば、イミド、メチド、ホウ素中心、リン中心、アンチモン中心、ヒ素中心、およびアルミニウム中心アニオンなどの様々なアニオンのタイプがある。
【0090】
適したイミドおよびメチドアニオンの非限定的な具体例には、(C25SO22-、(C49SO22-、(C817SO23-、(CF3SO23-、(CF3SO22-、(C49SO23-、(CF3SO22(C49SO2)C-、(CF3SO2)(C49SO2)N-、((CF32NC24SO22-、(CF32NC24SO2-(SO2CF32、(3,5−ビス(CF3)C63)SO2-SO2CF3、C65SO2-(SO2CF32、C65SO2-SO2CF3などがある。このタイプの好ましいアニオンには、式(RfSO23-によって表されるアニオンがあり、Rfが、1〜約4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。
【0091】
適したホウ素中心アニオンの非限定的な具体例には、F4-、(3,5−ビス(CF3)C634-、(C654-、(p−CF3644-、(m−CF3644-、(p−FC644-、(C653(CH3)B-、(C653(n−C49)B-、(p−CH3643(C65)B-、(C653FB-、(C653(65)B-、(CH32(p−CF3642-、(C653(n−C1837O)B-などがある。好ましいホウ素中心アニオンは概して、ホウ素に結合した3個以上のハロゲン置換芳香族炭化水素基を含有し、フッ素が最も好ましいハロゲンである。好ましいアニオンの非限定的な具体例には、(3,5−ビス(CF3)C634-、(C654-、(C653(n−C49)B-、(C653FB-、および(C653(CH3)B-などがある。
【0092】
他の金属またはメタロイド中心を含有する適したアニオンには、例えば、(3,5−ビス(CF3)C634Al-、(C654Al-、(C6524-、(C65)F5-、F6-、(C65)F5Sb-、F6Sb-、(HO)F5Sb-、およびF6As-などがある。他の有用なホウ素中心非求核性塩、ならびに他の金属またはメタロイドを含有する他の有用なアニオンは、当業者には(前述の一般式から)すぐに明らかであるので、前述のリストは完全であることを意図されない。
【0093】
好ましくは、アニオンX-は、(例えば、エポキシ樹脂などのカチオン反応性種と共に使用するために)テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、およびヒドロキシペンタフルオロアンチモネートから選択される。
【0094】
適したスルホニウム塩光開始剤の例には、
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
メチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
ジメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
ジフェニルナフチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート
トリトリスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
アニシルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリ(4−フェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート
ジ(4−エトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート
4−アセトニルフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
4−チオメトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
ジ(メトキシスルホニルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
ジ(ニトロフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
ジ(カルボメトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
4−アセタミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
ジメチルナフチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート
p−(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
p−(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
ジ−[p−(フェニルチオフェニル)]フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
ジ−[p−(フェニルチオフェニル)]フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
4、4’−ビス(ジフェニルスルホニウム)ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)
4、4’−ビス(ジフェニルスルホニウム)ジフェニルスルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)
10−メチルフェノキサチイニウムヘキサフルオロホスフェート
5−メチルチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート
10−フェニル−9,9−ジメチルチオキサンテニウムヘキサフルオロホスフェート
10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムテトラフルオロボレート
5−メチル−10−オキソチアントレニウムテトラフルオロボレート
5−メチル−10,10−ジオキソチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート
およびそれらの混合物などがある。
【0095】
好ましいスルホニウム塩には、混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのトリアリール置換塩(例えば、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なUVI−6974)、混合トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なUVI−6990)、およびアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩(例えば、サートマー・カンパニーから入手可能なサーキャットTMKI85)などがある。
【0096】
有用なアジニウム塩には、ピリジニウム、ジアジニウム、またはトリアジニウム部分などのアジニウム部分を含有する米国特許第4,859,572号明細書(ファリッド(Farid)ら)の第8欄、51行目〜第9欄、46行目に記載されたアジニウム塩がある。アジニウム部分は、1つ以上の芳香環、典型的には、アジニウム環と接合した炭素環芳香環(例えば、キノリニウム、イソキノリニウム、ベンゾジアジニウム、およびナフトジアゾニウム部分)を含有することができる。アジニウム環中の窒素原子の四級化置換基は、一光子光増感剤の電子励起状態からアジニウム光開始剤に電子が移動する時にフリーラジカルとして放出され得る。1つの好ましい形態において、四級化置換基はオキシ置換基である。アジニウム部分の環の窒素原子を四級化するオキシ置換基−O−Tを、合成に都合のよい様々なオキシ置換基の中から選択することができる。部分Tは、例えば、メチル、エチル、ブチル等のアルキル基であってもよい。アルキル基を置換することができる。例えば、アラルキル(例えば、ベンジルおよびフェネチル)およびスルホアルキル(例えば、スルホメチル)基が有用である場合がある。別の形態において、Tが-OC(O)−T1基などのアシル基であってもよく、T1が上記の様々なアルキルおよびアラルキル基であってもよい。さらに、T1がフェニルまたはナフチルなどのアリール基であってもよい。そして次に、アリール基を置換することができる。例えば、T1がトリルまたはキシリル基であってもよい。Tが典型的に、1〜約18個の炭素原子を含有し、上の各場合のアルキル部分が好ましくは低級アルキル部分であり、各場合のアリール部分が好ましくは、約6〜約10個の炭素原子を含有する。オキシ置換基−O−Tが1または2個の炭素原子を含有する場合、最高の活性レベルが達成された。アジニウム核が、四級化置換基以外の置換基を含有しない必要がある。しかしながら、他の置換基の存在が、これらの光開始剤の活性に支障となりはしない。
【0097】
有用なトリアリールイミダゾリルダイマーには、米国特許第4,963,471号明細書(トラウト(Trout)ら)の第8欄、18〜28行目に記載されたダイマーがある。これらのダイマーには、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、および2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−[3,4−ジメトキシフェニル]−1,1’−ビイミダゾールなどがある。
【0098】
好ましい光開始剤には、ヨードニウム塩(より好ましくは、アリールヨードニウム塩)、クロロメチル化トリアジン、トリアリールイミダゾリルダイマー(より好ましくは、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマー)、スルホニウム塩、およびジアゾニウム塩などがある。アリールヨードニウム塩およびクロロメチル化トリアジン、および2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーがより好ましい(アリールヨードニウム塩およびトリアジンが最も好ましい)。
【0099】
必要ならば、光開始剤、一光子光増感剤、電子受容体、および/または電子供与体を半導体ナノ粒子の表面に物理的または化学的に付着(好ましくは、化学的に結合)させて反応開始種を生成する可能性を高めることができる。光開始剤、一光子光増感剤、電子受容体、電子ドナー、および/または半導体ナノ粒子の電子構造に著しく影響を与えない結合部分を含む拘束剤(tethering agent)の使用によってかかる付着を達成することができる。好ましくは、拘束剤が、少なくとも1つのテトラ配位炭素原子を含む。有用な拘束剤の例には、上記の表面処理剤等、ならびに米国特許第4,954,416号明細書(ライト(Wright)ら)に記載された拘束剤がある。
【0100】
光反応性組成物の調製
反応性種、半導体ナノ粒子、一光子光増感剤、電子供与体化合物、および光開始剤(または電子受容体化合物)を上記の方法によって、または本技術分野に周知の他の方法によって調製することができ、多くが商業的に入手可能である。配合のいずれかの順序および方法を用いて(場合により、かき混ぜまたは撹拌によって)「安全光」条件下でこれらの成分を配合することができるが、光開始剤を最後に(および他の成分の溶解を容易にするために場合により用いられるどれかの加熱工程の後に)添加することが(貯蔵寿命および熱安定性の見地から)時々好ましい。ナノ粒子が最も可溶性である光反応性組成物の最も高粘度成分に半導体ナノ粒子を最初に添加して、ナノ粒子が完全に分散されるまで得られた配合物を混合し、次に残りの成分を添加することもまた、好ましい場合がある。組成物の成分と相当に反応しないように溶剤が選択される限り、必要ならば、溶剤を使用することができる。適した溶剤には、例えば、アセトン、ジクロロメタン、およびアセトニトリルなどがある。反応性種自体が、時々、他の成分のための溶剤として役立つ場合もある。
【0101】
多光子光開始剤系の成分が、(上に規定したように)光化学的に有効量において存在する。概して、光反応性組成物が、1つ以上の反応性種を少なくとも約5重量%(好ましくは、少なくとも約10重量%、より好ましくは、少なくとも約20重量%)から約99.79重量%まで、半導体ナノ粒子を少なくとも約0.01重量%(好ましくは、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは、少なくとも約0.2重量%)から約10重量%まで(好ましくは、約5重量%まで、より好ましくは、約2重量%まで)、および半導体ナノ粒子と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物を少なくとも約0.1重量%(好ましくは、少なくとも約0.2重量%、より好ましくは、少なくとも約0.3重量%)から約15重量%まで(好ましくは、約10重量%まで、より好ましくは、約5重量%まで)含有することができる。
【0102】
相互作用組成物が一光子光増感剤を含有するとき、光反応性組成物は概して、1つ以上の一光子光増感剤を少なくとも約0.01重量%(好ましくは、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは、少なくとも約0.2重量%)から約10重量%まで(好ましくは、約5重量%まで、より好ましくは、約2重量%まで)と、(i)1つ以上の電子供与体化合物を約10重量%まで(好ましくは、約5重量%まで)(好ましくは、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%)および(ii)1つ以上の電子受容体化合物を約0.1重量%〜約10重量%(好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%)、のどちらかまたは両方と、を含有することができる。
【0103】
相互作用組成物が一光子光増感剤を含有しないとき、光反応性組成物は概して、(i)1つ以上の電子供与体化合物を約0.01重量%(好ましくは、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは、少なくとも約0.2重量%)から約10重量%まで(好ましくは、約5重量%まで)、および(ii)1つ以上の電子受容体化合物を約0.1重量%〜約10重量%(好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%)、のどちらかまたは両方を含有することができ、または、代わりに、光反応性組成物が、1つ以上の光開始剤化合物を約0.01重量%(好ましくは、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは、少なくとも約0.2重量%)から約10重量%まで(好ましくは、約5重量%まで)含有することができる。反応性種がロイコ染料であるとき、前記組成物は概して、1つ以上の反応性種を約0.01重量%〜約10重量%(好ましくは、約0.3重量%〜約10重量%、より好ましくは、約1%〜約10%、最も好ましくは、約2%〜約10%)含有することができる。上記のパーセンテージは、固形分の全重量(すなわち、溶剤以外の成分の全重量)に基づいている。
【0104】
多種多様な補助剤が、所望の最終的な使用に応じて、光反応性組成物中に含有されてもよい。適した補助剤には、溶剤、希釈剤、樹脂、バインダー、可塑剤、顔料、染料、無機または有機強化もしくは増量充填剤(組成物の全重量に基づいて約10重量%〜90重量%の好ましい量)、チキソトロピー剤、指示薬、抑性剤、安定剤、紫外吸収体、薬剤(例えば、抽出可能なフッ化物)などがある。かかる補助剤の量およびタイプおよび組成物へのそれらの添加の仕方は、当業者には周知である。
【0105】
例えば、粘度を制御するためにおよびフィルム形成性質を提供するために組成物中に非反応性ポリマーバインダーを含有することは、この発明の範囲内である。かかるポリマーバインダーは概して、反応性種と相溶性であるように選択される。例えば、反応性種のために用いられる同じ溶剤中に可溶性であり、又、反応性種の反応の進行に悪影響を及ぼすことがある官能基を含有しないポリマーバインダーを利用することができる。バインダーは、所望のフィルム形成性質および溶液レオロジーを達成するのに適した分子量(例えば、約5,000〜1,000,000ダルトンの分子量、好ましくは約10,000〜500,000ダルトン、より好ましくは、約15,000〜250,000ダルトン)であり得る。適したポリマーバインダーには、例えば、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン)−co−(アクリロニトリル)、酢酸酪酸セルロースなどがある。
【0106】
露光する前に、必要ならば、当業者に周知の様々なコーティング方法(例えば、ナイフコーティングおよびスピンコーティングなど)のどれかによって、得られた光反応性組成物を基材上にコートすることができる。特定の適用および利用される露光方法に応じて、基材を多種多様なフィルム、シート、および他の表面から選択することができる。好ましい基材は概して、均一な厚さを有する光反応性組成物の層の作製を可能にするために十分に平坦である。コーティングがそれほど望ましくない適用については、光反応性組成物は、代わりに、バルクの形で露光されてもよい。
【0107】
露光システムおよびその使用
有用な露光システムは、少なくとも1つの光源と少なくとも1つの光学要素とを備える。選択された半導体ナノ粒子に適した波長(例えば、ナノ粒子の長波長の可視または近赤外吸収と整合される波長)において(多光子吸収を達成するために)十分な強度を提供するいずれの光源でも利用することができる。かかる波長は概して、約500〜約1700nm、好ましくは、約600〜約1100nm、より好ましくは、from約750〜約1000nmの範囲であってもよい。照明は連続的またはパルス、あるいはそれらの組合せであってもよい。
【0108】
適した光源には、例えば、アルゴンイオンレーザ(例えば、コヒーレント・インノバ(Coherent Innova))によってポンピングされた、例えば、フェムトセカンド近赤外チタンサファイア発振器(例えば、コヒーレント・マイラ・オプティマ(Coherent Mira Optima)900−F)などがある。76MHzにおいて動作するこのレーザは、200フェムトセカンドより小さいパルス幅を有し、700〜980nmに調整可能であり、1.4ワットまでの平均出力を有する。QスイッチNd:YAGレーザ(例えば、スペクトラ・フィジックス・クオンタ・レイ・プロ(Spectra−Physics Quanta−Ray PRO))、可視波長色素レーザ(例えば、スペクトラ・フィジックス・クオンタ・レイ・プロによってポンピングされるスペクトラ・フィジックス・シラ(Spectra−Physics Sirah))、およびQスイッチダイオードポンピングレーザ(例えば、スペクトラ・フィジックス・FCbarTM)もまた、利用することができる。ピーク強度は概して、少なくとも約106W/cm2である。パルス流の上限は概して、光反応性組成物の融蝕域値によって規定される。
【0109】
好ましい光源には、約10-8秒未満(より好ましくは、約10-9秒未満、最も好ましくは、約10-11秒未満)のパルス長を有する近赤外パルスレーザがある。上述のピーク強度およびパルス流の基準が満たされるならば、他のパルス長を用いることができる。
【0110】
本発明の方法を実施するのに有用な光学要素には、例えば、屈折光学要素(例えば、レンズおよびプリズム)、反射光学要素(例えば、再帰反射器または集束鏡)、回折光学要素(例えば、格子、フェーズマスクおよびホログラム)、偏光光学要素(例えば、リニア偏光子および波長板)、拡散体、ポッケルスセル、導波路、波長板、および複屈折液晶、などがある。かかる光学要素は、集束、ビーム照射、ビーム/モード整形、パルス整形、およびパルスタイミングのために有用である。概して、光学要素の組み合わせを利用してもよく、他の適切な組み合わせは当業者によって理解されよう。大きな開口数(NA)を有する光学素子を用いて高集束光を提供することがしばしば望ましい。しかしながら、所望の強度分布(およびその空間配置)を提供する光学要素のどの組み合わせを利用することもできる。例えば、露光システムは、0.75NA対物レンズ(ツァィス(Zeiss)の20Xフラー(Fluar))を備えた走査共焦点顕微鏡(バイオラド(BioRad) MRC600)を備えることができる。
【0111】
概して、組成物中の光強度の3次元空間分布を制御するための手段として光学システムと共に(上に記載したような)光源を用いて、光反応性組成物の露光を行うことができる。例えば、焦点が組成物の容積中にあるように、連続波またはパルスレーザからの光を集束レンズに通過させることができる。焦点を所望の形状に相応する3次元パターンに走査または翻訳することができ、それによって、所望の形状の3次元画像を形成することができる。組成物自体を移動させるかまたは光源を移動させる(例えば、ガルボミラーを用いてレーザビームを移動させる)かのどちらかによって、組成物の露光または照明された容積を走査することができる。得られた露光された組成物を、必要ならば、露光後熱処理にかけることができる。
【0112】
光が、例えば、反応性種の溶解度特性と異なった溶解度特性を有する材料を製造する反応性種の反応を誘導する場合、得られた画像は、場合により、露光または未露光領域のどちらかを適切な溶剤を使用して除去するか、例えば、もしくは他の、技術に周知の手段によって現像されてもよい。硬化された、複雑な3次元物体をこのようにして作製することができる。
【0113】
露光時間は概して、画像形成を起こすために用いられた露光システムのタイプ(および開口数、光強度空間分布の幾何学、例えば、レーザパルスの間のピーク光強度(ピーク光強度にほぼ相応する、より大きな強度およびより短いパルス時間)などのその随伴する変数)、ならびに露光された組成物の性質(および光増感剤、光開始剤、および電子供与体化合物のその濃度)に依存する。概して、焦点の領域のピーク光強度を高くすると、他の全ては等しい状態で、露光時間を短くすることが可能になる。リニア画像化または「書き込み」速度は概して、連続波レーザを用いるかまたは約10-8〜10-15秒(好ましくは、約10-11〜10-14秒)のレーザパルス時間および約102〜109パルス/秒(好ましくは、約103〜108パルス/秒)を有するパルスレーザを用いて、約5〜100,000ミクロン/秒であってもよい。
【実施例】
【0114】
この発明の目的および利点は以下の実施例によって示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料および量、ならびに他の条件および詳細は、この発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【0115】
実施例1 (CdSe)ZnSナノ粒子を用いる多光子光重合
CdSeナノ粒子、吸収バンドがCdSeナノ粒子からの蛍光発光バンドと相応するシアニン染料(一光子光増感剤)、電子受容体、および電子ドナーからなる光開始剤系を用いて多光子光重合を行った。J.Am.Chem.Soc.115、8706(1993年)に記載された合成を少し改良して、以下に記載したようにCdSeナノ粒子を作製した。特に記載しない限り、化学薬品はウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)から市販されている。
【0116】
(CdSe)ZnSナノ粒子の調製
30gのトリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)(マサチューセッツ州、ニューバリーポート(Newburyport,MA)のストレム・ケミカルズ(STREM Chemicals))を、温度プローブ、冷却器、および隔壁を備えた250mLの三首丸底フラスコ内で4時間、175℃の真空下で乾燥させた。次いで、TOPOを窒素下に置き、温度を350℃に上げた。このなかに、シリンジによって16mlのトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)(ドイツ、スタインハイムのフルカ(Fluka,Steinheim,Germany))、TOPに溶かしたトリ−n−オクチルホスフィンセレニド(TOPSe)の1モル溶液4mlおよびジメチルカドミウム(Cd(CH32)(マサチューセッツ州、ニューバリーポートのストレム・ケミカルズ)200μlを激しく撹拌しながら注入した。ナノ粒子を523nmの第1の吸収最大を有するまで成長させた(約3nmの平均直径を示す。マーレー(Murray)ら著、J.Am.Chem.Soc.115、8706(1993年)を参照のこと)。次に、成長溶液を冷却し、16mlのブタノールに添加した。次いで、ナノ粒子をメタノールを用いて沈殿によって単離した。
【0117】
ZnSの4つの単一層(約9.2Åまでの厚さ)の公称シェルでナノ粒子を以下のようにオーバーコートした。冷却器、隔壁を備えた添加漏斗、温度プローブ、および隔壁を備えた250mLの四首丸底フラスコ内で4時間、175℃の真空下で60gのTOPOを乾燥させた。これに、単離ナノ粒子の形の0.4mmolのCdSeを含有するヘキサン溶液を添加した。ヘキサンを60oCの真空下で除去し、次いで反応容器を窒素下に維持した。オーバーコーティングのために、20mlのTOP、0.166mlのジエチル亜鉛(ドイツ、スタインハイムのフルカ)、および0.333mlのビス(トリメチルシリル)スルフィド(ドイツ、スタインハイムのフルカ)をドライボックス内でシリンジに充填した。次いで、シリンジをドライボックスから除去し、その内容物を、隔壁を備えた添加漏斗に注入した。次に、溶液を155℃のCdSe/TOPO溶液に滴下した。次いで、温度を90℃に下げ、得られた溶液を一晩、撹拌した。得られたオーバーコートされたナノ粒子を上記のように単離し、トルエン中に分散させた。
【0118】
吸収染料の調製
3−メチル−2−[(1E,3E)−3−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)プロプ−1−エニル]−1,3−ベンゾチアゾール−3−イウムヨージドの合成法は概して、Biochemistry13、3315(1974年)に記載された方法に従った。2−メチルベンゾチアゾールのメチル化を行うために、約50mlの塩化メチレン中で5mlの2−メチルベンゾチアゾールを2.6mlのヨウ化メチルと配合し、一晩、還流した。白色の固体、ベンゾチアゾールイウムヨージド塩を生じ、それを濾過によって単離し、収量9.67gが得られた。還流ピリジンに溶かしたトリエチルオルトホルメートを用いることによって、このヨージド塩をカップリングして染料を形成した。9.67gのヨージド塩を、20mlのピリジンに溶かした5.8mlのトリエチルオルトホルメートと配合し、約5時間、還流した。得られた生成物を濾過によって単離し、常温ピリジン/水混合物で洗浄した。生成物を乾燥させ、所望の染料6.6gの収量が得られた。核磁気共鳴分光分析法(NMR)を用いて染料の構造を確認した。
【0119】
光反応性組成物の調製
10.0mgの3−メチル−2−[(1E,3E)−3−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)プロプ−1−エニル]−1,3−ベンゾチアゾール−3−イウムヨージド(以下、シアニン染料と称される)をイソシアヌレートトリアクリレート(SR368)とアルコキシル化三官能性アクリレートエステル(SR9008)(共にペンシルベニア州、ウエストチェスターのサートマー・カンパニー(Sartomer Co.,West Chester,PA)から入手可能)との50/50混合物2.02gに溶かした溶液を調製し、一晩、撹拌した。40.2mgのCD1012ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート塩(ペンシルベニア州、ウエストチェスターのサートマー・カンパニーから入手可能)および10.8mgのCGI7460ボレート塩(ニューヨーク州、タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)から入手可能)を0.11gのテトラヒドロフラン中に溶解し、次いで前記溶液に添加して原液Aを形成し、それを安全光下で調製し、次いでアンバーバイアル中に貯蔵して早期のゲル化を防いだ。
【0120】
次いで、原液Aを用いて3つの光反応性組成物を以下のように調製した。
組成物B
トルエンに溶かしたCdSeナノ粒子の0.05M溶液1.5mLを、トルエン0.5mLに溶かしたポリ(ビニルブチラール)0.433gに添加し、ナノ粒子が完全に分散されるまで20分間、撹拌した。0.461gの原液Aを添加し、得られた混合物を5分間、撹拌した。
【0121】
組成物C(比較用)
99.999%のバルクCdSe(325メッシュ、マサチューセッツ州、ウォード・ヒルのアルファアエサー(Alfa Aesar,Ward Hill,MA))38.9mgを、トルエンに溶かしたポリ(ビニルブチラール)の20重量%溶液2.20gに添加し、十分に分散されるまで20分間、撹拌した。0.439gの原液Aを添加し、得られた混合物を5分間、撹拌した。
【0122】
組成物D(比較用)
0.531gの原液Aを、トルエンに溶かしたポリ(ビニルブチラール)の20重量%溶液2.21gに添加し、5分間、撹拌した。
【0123】
組成物を、トリメチオキシ(trimethyoxy)シリルプロピルメタクリレートで処理された顕微鏡スライド上に2500rpmにおいてスピンコートし、約30ミクロンの厚さの透明なコーティングを形成した。コートされたスライドを80°Cの炉内で10分間、焼くことによって残留した溶剤を除去した。表1は、固形分の重量に基づいて3つのコーティングの組成物を記載する。
【0124】
【表1】

【0125】
800nmの波長、パルス幅80fs、80MHzのパルス繰返し率、および約2mmのビーム直径において動作するダイオードポンピングTi:サファイアレーザ(スペクトラ・フィジックス(Spectra−Physics))を用いて、コートされたスライドを露光した。光学列は、低分散回転鏡、光出力を変える光学減衰器、および光を集束させる60×顕微鏡対物レンズ(N.A.0.85)から成った。顕微鏡の対物レンズの下にスライドを連続的に移動させることによって、コートされた各スライドを光に露光した。スライド/コーティングの境界面と一致するように光ビームの焦点を配置した。較正されたフォトダイオードを用いてビームが顕微鏡の対物レンズを出る場所で、コートされたスライドに供給された平均出力(22mW)を測定した。コンピュータ制御された3軸ステージを用いて集束ビームの下に各スライドを移動させた。
【0126】
各々の光反応性組成物の感光性を試験するために、各々のコートされたスライドを77μm/s〜40mm/秒の範囲の速度において集束ビーム下で走査することによって、一連のポリマーラインを形成した。露光した後、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート中で溶剤現像によって未反応樹脂を除去し、次いで、スライドをイソプロピルアルコールで洗浄し、空気乾燥させた。次に、各スライドを光学顕微鏡下で検査し、限界書き込み速度(threshold writing speed)を、スライド上に残っているポリマーラインの数から確認した。表2は結果を記載する。最大感光性を本発明の組成物、組成物Bについて観察した。比較用組成物(組成物CおよびD)のいずれについても反応は観察されず、これらの組成物の限界書き込み速度が0.033mm/秒より小さいことを示した。
【0127】
【表2】

【0128】
実施例2 (ZnSe)ZnSナノ粒子を用いる多光子光重合
ZnSeナノ粒子および電子受容体からなる光開始剤系を用いて多光子光重合を行った。
【0129】
ZnSeナノ粒子の調製
J.Phys.Chem.B、102(19)、3655(1998年)に公開された合成を少し改良して、ZnSeナノ粒子を以下に記載したように調製した。標準エアレス技術を用いて、56.25g(75mL)のヘキサデシルアミンを乾燥させ、2時間、125℃の真空下で脱気した。次に、ヘキサデシルアミンを1気圧の窒素下で310℃まで加熱した。0.41mL(4mmol)のジエチル亜鉛(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company))を、20mLのトリオクチルホスフィン(ドイツ、スタインハイムのフルカ)と、トリオクチルホスフィンに溶かした1Mのトリオクチルホスフィンセレニド5mLと混合した。次いで、得られた溶液を、310℃の激しく撹拌されたヘキサデシルアミンに急速に注入した。得られた溶液の温度を280℃まで低下させた。2時間後に、ジエチル亜鉛(アルドリッチ、0.35mL、3mmol)を、12mLのトリオクチルホスフィンと、トリオクチルホスフィンに溶かした1Mのトリオクチルホスフィンセレニド5mLと混合し、8分にわたって前記溶液に滴下した。さらに2時間後、ジエチル亜鉛(アルドリッチ、0.35mL、3mmol)を、12mLのトリオクチルホスフィンと、トリオクチルホスフィンに溶かした1Mのトリオクチルホスフィンセレニド5mLと混合し、8分にわたって前記溶液に滴下した。得られた透明な、黄金色の溶液を3.5時間、280℃に保持し、次いで100℃まで冷却した。
【0130】
前記溶液の40mLアリコートを1インチのテフロン(登録商標)(TeflonTM)ポリ(テトラフルオロエチレン)(デュポン(DuPont)から入手可能)のコートされた撹拌棒を有する8オンスのスクリューキャップジャー内の10mLの1−ブタノールに添加した。前記ジャーを68℃の水槽中に置き、溶液を撹拌した。25mLのビュレットを用いて80mLのメタノールを添加することによってZnSeナノ粒子を沈殿させた。温かいスラリーを遠心分離(4000RPM)し、その後に、液体部分を傾瀉することによってナノ粒子を単離した。次いで、ナノ粒子を1mLのトルエンに溶解し、遠心分離にかけて(4000RPM)、少量の黒色の残留物を除去した。透過型電子顕微鏡法の測定に基づいて粒子直径は40Å(4nm)と推定された。C.A.レザーデール(C.A.Leatherdale)、W.−K.ウー(W.−K.Woo)、F.V.ミクレック(F.V.Mikulec)、およびM.G.べウェンディ(M.G.Bawendi)によってJ.Phys.Chem.B106、7619(2002年)において公開された方法を用いて、紫外−可視(UV−Vis)吸収分光分析法によって、トルエン溶液が1.31mmolのZnSeを含有することが確認された。
【0131】
ZnSでオーバーコートされたZnSeナノ粒子の調製
J.PhysChem.B101、9463(1997年)に公開された方法を少し改良して、ZnSでオーバーコートされたZnSeナノ粒子を作製した。標準エアレス技術を用いて、60mLのトリオクチルホスフィン(ドイツ、スタインハイムのフルカケミカルズ(Fluka Chemicals,Steinheim,Germany))を乾燥させ、2時間、105℃の真空下で脱気した。約1mLのトルエン中で上記のように調製したZnSeナノ粒子(1.31mmolZnSe)をトリオクチルホスフィン中に注入し、得られた混合物を1気圧の窒素下で205℃に加熱した。ジエチル亜鉛(アルドリッチ、0.25mL、2.4mmol)を30mLのトリオクチルホスフィンおよび0.5mLのビス(トリメチルシリル)スルフィド(Fluka)と混合した。次いで、得られた溶液を、80分にわたって、205℃のZnSeナノ粒子の撹拌されたトリオクチルホスフィン溶液に滴下した。次に、得られた溶液の温度を3.5時間、135℃まで低下させた。
【0132】
前記溶液を、1インチのテフロン(登録商標)ポリ(テトラフルオロエチレン)(デュポンから入手可能)でコートされた撹拌棒を有する16オンスのスクリューキャップジャーに移した。25mLのビュレットを用いて41mLのメタノールおよび275mLの2−プロパノールを添加することによって、ZnSでオーバーコートされたZnSeナノ粒子を沈殿させた。温かいスラリーを遠心分離(4000RPM)し、その後に、液体部分を傾瀉することによってナノ粒子を単離した。次いで、ナノ粒子を1mLのトルエンに溶解し、遠心分離にかけて(4000RPM)、少量の黒色の残留物を除去した。C.A.レザーデール、W.−K.ウー、F.V.ミクレック、およびM.G.べウェンディによってJ.Phys.Chem.B 106、7619(2002年)において公開された紫外−可視吸収分光分析法の方法を用いて、溶液は、ZnSのシェルでオーバーコートされたZnSeナノ粒子の形の0.78M ZnSeを含有することが確認された。
【0133】
多光子光重合
1.0重量%のCD1012、4.3重量%のテトラヒドロフラン(tetahydrofuran)(ミシガン州、マスキーゴンのバーディック&ジャクソン(Burdick & Jackson,Muskegon,MI))、47.3重量%のラウリルアクリレート(SR335)、23.7重量%のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368)、および23.7重量%のアルコキシル化三官能性アクリレートエステル(SR9008)(全て、3つのアクリレートはペンシルベニア州、ウエストチェスターのサートマー・カンパニー(Sartomer Co.,West Chester,PA)から入手可能)の原液をアンバーバイアル中で調製し、CD1012が完全に溶解されるまで20分間、撹拌した。次いで、この原液の0.1gのアリコートを別のアンバーバイアル中に置いた。トルエンに溶かした、ZnSでオーバーコートされたZnSeナノ粒子の上記の溶液0.02mLを原液に添加して光学的に透明な溶液(以下、組成物E)を形成した。比較用として、原液の0.5gのアリコートを別個のアンバーバイアル内に置き、0.1mLの高純度トルエンを添加して組成物F(比較用)を形成した。両方の組成物を一晩、光を通さない容器(light−tight container)内で撹拌した。
【0134】
各々の組成物の1滴または2滴を顕微鏡スライド上の別々の領域に置き、カバースリップを上に置いた。高蛍光性多光子吸収染料(ビス−[4−ジフェニルアミノ)スチリル]−1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−(メトキシ)ベンゼン)を含有する溶液滴を同じスライド上に置き、正確な焦点位置を確認する時に基準として用いた。60×顕微鏡の対物レンズ(NA0.85)からの高集束光の下にスライドを連続的に移動させることによって、組成物の露光を行った。スライド/組成物の境界面と一致するようにビームの焦点を配置した。光源は、800nmの波長、パルス幅80fs、80MHzのパルス繰返し率、約2mmのビーム直径において動作するダイオードポンピングTi:サファイアレーザ(スペクトラ・フィジックス)であった。光学列は、低分散回転鏡、および光出力を変える光学減衰器から成った。較正されたフォトダイオードを用いてビームが顕微鏡の対物レンズを出る場所で、スライドに供給された平均出力(45mW)を測定した。コンピュータ制御された3軸ステージを用いて集束ビームの下にスライドを移動させた。
【0135】
各々の組成物の感光性を試験するために、スライドを77μm/s秒〜40mm/秒の範囲の速度において集束ビーム下で走査することによって、一連のポリマーラインを形成した。各々の速度試験のために、ステージをX方向に沿って4回、走査し、約8ミクロン幅のラインを形成するために各パスの後にY方向に1ミクロンの増分を有した。露光した後、イソプロピルアルコール中で溶剤現像によって未反応樹脂を除去した。現像プロセスの間、カバースリップを顕微鏡スライドからそっと浮かせ、重合されたラインを露光した。次いで、スライドを光学顕微鏡下で検査し、限界書き込み速度を、各々の組成物についてスライド上に残っているポリマーラインの数から確認した。本発明の組成物の組成物Eについて、限界書き込み速度は約1.75mm/sであった。比較用組成物の組成物Fについて、画像は得られなかった。
【0136】
この発明に対する様々な改良及び変更が、この発明の範囲及び精神から逸脱することなく実施できることは、当業者には明らかであろう。この発明は、本明細書に示した具体的な実施態様及び実施例によって不当に制限することを意図するものではなく、これらの実施例及び実施態様は例として示されるにすぎず、本発明の範囲は、本明細書に記載した特許請求の範囲によってのみ制限されることを意図することが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸またはラジカル開始化学反応を受けることができる少なくとも1つの反応性種と、
(b)(1)2つ以上の光子の吸収によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する半導体ナノ粒子量子ドットの少なくとも1つのタイプと、
(2)前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる、前記反応性種と異なった組成物と、の光化学的に有効な量を含む光開始剤系と、を含む光反応性組成物。
【請求項2】
前記反応性種が硬化性種である、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項3】
前記硬化性種が、モノマー、オリゴマー、反応性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の光反応性組成物。
【請求項4】
前記硬化性種が、付加重合性モノマーおよびオリゴマー、付加架橋性ポリマー、カチオン重合性モノマーおよびオリゴマー、カチオン架橋性ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の光反応性組成物。
【請求項5】
前記反応性種が非硬化性種である、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項6】
前記反応性種がラジカル開始化学反応を受けることができる、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項7】
前記半導体ナノ粒子量子ドットが、IV族、III−V族、II−VI族、およびI−VII族の半導体からなる群から選択される半導体を含む、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項8】
前記半導体がIV族またはII−VI族半導体である、請求項7に記載の光反応性組成物。
【請求項9】
前記半導体がII−VI族半導体である、請求項8に記載の光反応性組成物。
【請求項10】
前記半導体が亜鉛またはカドミウムを含む、請求項9に記載の光反応性組成物。
【請求項11】
前記半導体ナノ粒子量子ドットが約1.5nm〜約30nmの範囲の平均直径を有する、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項12】
前記半導体ナノ粒子量子ドットが、前記半導体の励起子ボーア半径以下の平均半径を有する、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項13】
前記半導体ナノ粒子量子ドットが、前記半導体ナノ粒子量子ドットと前記反応性種とを相溶化させるのに役立つ表面に付着または表面に結合した有機基を有する、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項14】
前記半導体ナノ粒子量子ドットがコアー/シェル半導体ナノ粒子量子ドットである、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項15】
前記半導体ナノ粒子量子ドットが、2つ以上の光子の同時吸収によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項16】
前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる前記組成物が、(a)前記半導体ナノ粒子量子ドットのアップ変換電子発光バンドと重なる電子吸収バンドを有する少なくとも1つの一光子光開始剤、または(b)少なくとも1つの電子供与体化合物および/または少なくとも1つの電子受容体化合物を含む、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項17】
前記一光子光開始剤が、フリーラジカル源を生成するフリーラジカル光開始剤および紫外線または可視線に露光された時に酸を生成するカチオン性光開始剤からなる群から選択される、請求項16に記載の光反応性組成物。
【請求項18】
前記フリーラジカル光開始剤が、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アリールグリオキサレート、アシルホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントン、クロロアルキルトリアジン、ビスイミダゾール、トリアシルイミダゾール、ピリリウム化合物、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メルカプト化合物、キノン、アゾ化合物、有機過酸化物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記カチオン性光開始剤が、オニウムカチオンと金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンとを有するメタロセン塩、有機金属錯カチオンと金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンとを有するメタロセン塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の光反応性組成物。
【請求項19】
前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる前記組成物が、(1)前記半導体ナノ粒子量子ドットのアップ変換電子発光バンドと重なる電子吸収バンドを有する少なくとも1つの一光子光増感剤と、(2)(i)前記一光子光増感剤の電子励起状態に電子を供与できる、前記一光子光増感剤と異なった少なくとも1つの電子供与体化合物、および(ii)前記一光子光増感剤の電子励起状態から電子を受容することによって光増感され、少なくとも1つのフリーラジカルおよび/または酸の形成をもたらすことができる少なくとも1つの電子受容体化合物のどちらかまたは両方と、を含む、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項20】
前記電子供与体化合物と前記電子受容体化合物との両方を含む、請求項19に記載の光反応性組成物。
【請求項21】
前記一光子光増感剤が約250〜約800ナノメーターの波長の範囲内の光を吸収することができ、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを増感することができる、請求項19に記載の光反応性組成物。
【請求項22】
前記一光子光増感剤が、ケトン、クマリン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、シアニン染料、ピリジニウム染料、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の光反応性組成物。
【請求項23】
前記一光子光増感剤が、キサンテン染料、シアニン染料、ケトン、ケトクマリン、アミノアリールケトン、p置換アミノスチリルケトン化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の光反応性組成物。
【請求項24】
前記一光子光増感剤が、ローズベンガル、3−メチル−2−[(1E,3E)−3−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)プロプ−1−エニル]−1,3−ベンゾチアゾール−3−イウムヨージド、カンファキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6−テトラメチルシクロへキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1,2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2−シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−へキサンジオン、3,4−へキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、1,2−シクロへキサンジオン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の光反応性組成物。
【請求項25】
前記電子供与体化合物が、ゼロより大きくp−ジメトキシベンゼンの酸化ポテンシャル以下である酸化ポテンシャルを有する、請求項16または19に記載の光反応性組成物。
【請求項26】
前記電子供与体化合物が、標準飽和カロメル電極に対して約0.3〜2ボルトの酸化ポテンシャルを有する、請求項16または19に記載の光反応性組成物。
【請求項27】
前記電子供与体化合物が、アミン、アミド、エーテル、尿素、スルフィン酸およびそれらの塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸およびその塩、ジチオカルバミド酸およびその塩、キサンテートの塩、エチレンジアミンテトラ酢酸の塩、(アルキル)n(アリール)mボレート(n+m=4)の塩、SnR4化合物(各Rが独立に、アルキル、アラルキル、アリール、およびアルカリール基からなる群から選択される)、フェロセン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16または19に記載の光反応性組成物。
【請求項28】
前記電子供与体化合物が、1つ以上のジュロリジニル部分を含有するアミン、アルキルアリールボレート塩、芳香族スルフィン酸の塩、4−ジメチルアミノ安息香酸、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、3−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾイン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、4−ジメチルアミノフェネチルアルコール、1,2,4−トリメトキシベンゼン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の光反応性組成物。
【請求項29】
前記電子供与体化合物を含有しない、請求項16または19に記載の光反応性組成物。
【請求項30】
前記電子受容体化合物が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アジニウム塩、クロロメチル化トリアジン、トリアリールイミダゾリルダイマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16または19に記載の光反応性組成物。
【請求項31】
前記電子受容体化合物が、ヨードニウム塩、クロロメチル化トリアジン、トリアリールイミダゾリルダイマー、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の光反応性組成物。
【請求項32】
前記電子受容体化合物が、アリールヨードニウム塩、クロロメチル化トリアジン、2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項31に記載の光反応性組成物。
【請求項33】
前記反応性種を約5%〜約99.79重量%、前記半導体ナノ粒子量子ドットを約0.01%〜約10重量%、および前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物を約0.1%〜約15重量%で含む、請求項1に記載の光反応性組成物。
【請求項34】
(a)ラジカル開始化学反応を受けることができる少なくとも1つの硬化性種と、
(b)(1)2つ以上の光子の同時吸収によって達成可能である少なくとも1つの電子励起状態を有する少なくとも1つのコアー/シェル半導体ナノ粒子量子ドットと、
(2)前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物と、の光化学的に有効な量を含む光開始剤系と、を含む光反応性組成物。
【請求項35】
前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物が、(a)前記半導体ナノ粒子量子ドットのアップ変換電子発光バンドと重なる電子吸収バンドを有する少なくとも1つの一光子光開始剤、または(b)少なくとも1つの電子供与体化合物および/または少なくとも1つの電子受容体化合物を含む、請求項34に記載の光反応性組成物。
【請求項36】
前記半導体ナノ粒子量子ドットの前記励起状態と相互作用して少なくとも1つの反応開始種を形成することができる組成物が、前記反応性種と異なっている、請求項34に記載の光反応性組成物。
【請求項37】
請求項1、請求項2、または請求項34に記載の光反応性組成物の反応から得られる組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の組成物を含む物品。

【公表番号】特表2006−514711(P2006−514711A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503260(P2005−503260)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030281
【国際公開番号】WO2005/000909
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】