説明

多口加熱調理器

【課題】電気ヒータを同時使用した場合において、赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度を向上させること。
【解決手段】加熱コイル13により誘導加熱される負荷鍋11からの赤外線放射を検知する第1の赤外線センサ16と、赤外線センサ16の出力より負荷鍋11の温度を算出する温度算出手段17と、第2の加熱手段18と、第2の加熱手段18からの赤外線放射を検出する第2の赤外線センサ19と、第1の誘導加熱手段15および第2の加熱手段18の通電を制御する制御手段20とを備え、第2の赤外線センサ19の出力に応じて温度算出手段17での算出温度を補正する補正手段19を設けて、第2の加熱手段18から放射されトッププレート12内を反射して赤外線センサ16に入射される赤外線の影響を補正して低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサを用いた多口加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多口加熱調理器は、鍋を載置するトッププレートにサーミスタなどの感温素子を接触させて、鍋の温度を検知していた。
【0003】
また、鍋の温度検知の応答性を向上させるために、鍋から出力される赤外線強度を赤外線センサで検知することにより、鍋の温度を検知していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、従来構成の多口加熱調理器の誘導加熱調理の制御について図6を参照して説明する。図6において、トッププレート42は負荷鍋41を載置し、、加熱コイル43は負荷鍋41を誘導加熱し、赤外線センサ44は負荷鍋41からの赤外線放射を検知し、温度検知手段45は赤外線センサ44からの出力により負荷鍋41の温度を算出し、制御手段46は赤外線センサ44からの出力に応じて加熱コイル43への高周波電流供給を制御する構成である。
【0005】
以上のように構成された多口加熱調理器の誘導加熱調理の制御では、負荷鍋41の温度を鍋底から放射される赤外線で直接検知していたので、熱応答性に優れた温度検知を行うことが可能であった。
【特許文献1】特開平3−184295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記従来の構成では、機器内部に電気ヒータなど赤外線を放射する他の加熱手段を有する場合、電気ヒータ温度は約600℃程度まで上昇するため、電気ヒータから放射される赤外線は、100〜200℃の負荷鍋41の鍋底から放射される赤外線に対して数十倍のエネルギーとなり、電気ヒータから放射される赤外線の一部がトッププレート42内を反射して伝えられ、赤外線センサ44に入射されると、赤外線センサ44にて正確な温度検知ができなくなるという課題があった。
【0007】
この場合、赤外線センサ44により他の加熱手段(電気ヒータ)の影響を受けずに正確な温度検知を行うために、例えば、電気ヒータと誘導加熱手段とを同時に使用できないので、複数の加熱手段が同時に使用できないという課題もあった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するもので、電気ヒータなど他の加熱手段を同時使用した場合においても、他の加熱手段からの赤外線放射による影響を低減して、赤外線センサによる温度検知精度を向上した多口加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の多口加熱調理器は、第2の加熱手段からの赤外線放射を検知する第2の赤外線センサを備え、前記第2の赤外線センサの出力に応じて第1の赤外線センサの温度算出手段での算出温度を補正する補正手段を設けた構成とするものである。
【0010】
これにより、第2の加熱手段から放射されトッププレート内を反射して第1の赤外線センサに入射される赤外線の影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多口加熱調理器は、赤外線センサで温度制御する加熱手段と、赤外線を放射する他の加熱手段とを同時使用する場合においても、他の加熱手段の赤外線放射による赤外線センサ出力増加分を補正することで、赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、トッププレート上の負荷鍋を加熱する第1の誘導加熱手段と、前記第1の誘導加熱手段により加熱される前記負荷鍋からの赤外線放射を検知する第1の赤外線センサと、前記第1の赤外線センサの出力より前記負荷鍋の温度を算出する温度算出手段と、前記トッププレート上の鍋を加熱する第2の加熱手段と、前記第2の加熱手段からの赤外線放射を検知する第2の赤外線センサと、前記第1の誘導加熱手段および前記第2の加熱手段の通電を制御する制御手段とを備え、前記第2の赤外線センサの出力に応じて前記温度算出手段での算出温度を補正する補正手段を設けた構成とすることにより、第2の加熱手段から放射されトッププレート内を反射して第1の赤外線センサに入射される赤外線の影響を低減することができ、第1の誘導加熱手段と第2の加熱手段とを同時に使用する場合においても、第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度を向上することができる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の第2の赤外線センサを、第1の赤外線センサと第2の加熱手段の間に配置する構成とすることにより、第2の赤外線センサは第2の加熱手段から第1の赤外線センサの方向に放射される赤外線を確実に検知して補正するので、第1の誘導加熱手段と第2の加熱手段とを同時に使用する場合の第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度をより向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の補正手段を、第2の加熱手段の通電時に補正値を算出する構成とすることにより、誘導加熱手段を単独で使用する場合は、第2の加熱手段からの赤外線が入射されない第1の赤外線センサの出力のみで温度算出するので、第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度をより向上させることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第3の発明の補正手段を、第2の加熱手段の通電停止時に第2の赤外線センサの出力が所定以上で補正値を算出する構成とすることにより、第2の加熱手段の通電停止後、第2の加熱手段の電気ヒータ温度が低下するまで第2の加熱手段からの赤外線放射が継続する場合においても、それに応じて第1の赤外線センサの算出温度を補正することができ、第2の加熱手段の通電停止から電気ヒータ温度低下安定までの間も第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度を向上させることができる。
【0016】
第5の発明は、特に、第1または第2の多口加熱調理器を、第2の赤外線センサ近傍に温度検知手段を備え、補正手段は第2の加熱手段の通電停止時に前記温度検知手段の検知温度が所定以上で補正値の算出を禁止する構成とすることにより、第2の赤外線センサ上方に高温の鍋などが載置されて、第1の赤外線センサへの影響が少なく、第2の赤外線センサの出力のみが増加する場合に、第2の加熱手段以外からの赤外線放射分を補正することなく、第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度を向上させることができる。
【0017】
第6の発明は、特に、第1〜5の発明の多口加熱調理器を、第2の赤外線センサの視野角範囲となるトッププレート上面に遮光手段を備えた構成とすることにより、第2の赤外線センサの出力が、第2の加熱手段の影響ではない、太陽光や照明、あるいは加熱された鍋からの赤外線放射による影響を低減し、安定した状態で補正値を算出することができ、第1の赤外線センサによる負荷鍋の温度検知精度をより向上させることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における断面図を示すものである。
【0020】
図1において、トッププレート12は負荷鍋11を載置し、加熱コイル(第1の誘導加熱手段)13は負荷鍋11を誘導加熱し、インバータ回路(第1の誘導加熱手段)14は加熱コイル13に高周波電流を供給し、加熱コイル13とインバータ回路14にて第1の誘導加熱手段は構成されている。第1の赤外線センサ16は負荷鍋11からの赤外線放射を検出し、温度算出手段17は第1の赤外線センサ16からの出力により負荷鍋11の鍋底温度を算出し、第2の加熱手段18はラジェントヒータにより構成されている。第2の赤外線センサ19は第2の加熱手段18からの赤外線放射を検出し、補正手段20は第2の赤外線センサ19からの出力に応じて第1の赤外線センサ16による算出温度を補正し、制御手段21は第1の誘導加熱手段15および第2の加熱手段18の加熱通電を制御し、かつ補正手段20に第2の加熱手段18の通電状態を出力し、遮光手段22は第2の赤外線センサ19の視野角範囲を覆うようにトッププレート12の上面に配設され、トッププレート12上方から第2の赤外線センサ19への赤外線放射を遮光する。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施の形態における平面図を示すものである。
【0022】
図2において、第1の赤外線センサ16は加熱コイル13中央に配置されており、第2の赤外線センサ19は、第1の赤外線センサ16の中心と第2の加熱手段18の中心を結ぶ線上に配置されている。
【0023】
以上のように構成された多口加熱調理器についてその動作を説明する。
【0024】
加熱コイル13に高周波電流が供給されると、加熱コイル13上方に載置された負荷鍋11が加熱される。負荷鍋11の鍋底からは鍋の温度に応じた赤外線が放射されており、負荷鍋11から発した赤外線はトッププレート12を透過して第1の赤外線センサ16に入力される。第1の赤外線センサ16からの入力信号により温度算出手段17は負荷鍋11の温度を算出し、設定された加熱状態となるように制御手段21は加熱コイル13に流れる高周波電流を制御する。
【0025】
第2の加熱手段18を同時に使用する場合は、図3に示すように第2の加熱手段18から放射される赤外線の一部はトッププレート12内部を反射して第1の赤外線センサ16、およびに第2の赤外線センサ19に入射される。
【0026】
第2の赤外線センサ19の上方には遮光手段22があるので、太陽光や照明、あるいは第2の赤外線センサ上方に載置された鍋(後述、図5参照)など、第2の加熱手段18以外からの赤外線放射による赤外線を低減し、第2の赤外線センサ19が影響を受けにくい構造となっている。
【0027】
第2の加熱手段18の通電を開始すると、第2の加熱手段18からの赤外線放射により第1の赤外線センサ16の出力が増加するが、第2の赤外線センサ19で第2の加熱手段18からの赤外線放射を検知しているので、第2の赤外線センサ19からの入力信号に応じて補正手段20にて補正値を算出し、温度算出手段17は第1の赤外線センサ16と補正手段20との信号により負荷鍋11の鍋底温度を算出する。
【0028】
第2の加熱手段18の通電が停止した後も、第2の赤外線センサへの赤外線の入射が多く、第2の加熱手段18の温度が低下するまでは、第1の赤外線センサ16の出力に影響する赤外線が第2の加熱手段18から放射されるので、温度算出手段17は第1の赤外線センサ16と補正手段20との信号により負荷鍋11の鍋底温度の算出を行い、第2の赤外線センサへの赤外線の入射が少なく、第2の加熱手段18から放射される赤外線が第1の赤外線センサ16の出力に影響しなくなるまで低下すると、温度算出手段17は補正手段20の信号を無視し、第1の赤外線センサ16からの信号により負荷鍋11の鍋底温度の算出を行う。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては第2の加熱手段18の通電時に温度算出手段17は第1の赤外線センサ16と、第2の赤外線センサ19の出力に応じて得られる補正手段20の補正値より温度を算出するので、第2の加熱手段18からトッププレート12内を反射して赤外線センサ16に入射される赤外線の影響を低減することができ、第1の赤外線センサ16による温度制御時に第2の加熱手段18の加熱通電を禁止する必要もなく、第1の誘導加熱手段15と第2の加熱手段18を同時に使用した場合の第1の赤外線センサ16による負荷鍋11の鍋底温度検知精度を向上することができる。
【0030】
なお、本実施例では第2の加熱手段18をラジェントヒータで構成したが、ハロゲンヒータやシーズヒータなどヒータの輻射熱にて加熱する構成であれば同様の効果が得られる。
【0031】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における断面図を示すものである。
【0032】
図4において、符号11から22は本発明の第1の実施の形態と同一であり説明を省略する。温度検出手段23は第2の赤外線センサ19の視野角範囲外でかつ、第2の赤外線センサ19近傍のトッププレート12下面温度を検出する。
【0033】
以上のように構成された多口加熱調理器についてその動作を説明する。
【0034】
図5に示すように遮光手段22がない場合では、第2の加熱手段18の通電を停止している状態で、第2の赤外線センサ19上方に加熱された鍋24が載置されると、第2の赤外線センサ19に鍋24から放射される赤外線が直接入力され出力が増加する。一方第1の赤外線センサ16にも鍋24から放射される赤外線がトッププレート12を反射して入力されるが、鍋24からの放射エネルギーは前述の第2の加熱手段18より表面温度が低くかなり小さいので、トッププレート12内での反射により赤外線量が減衰しているため、第1の赤外線センサ16の出力はほとんど増加しない。この時、第2の赤外線センサ19近傍に設置された温度検知手段23は、鍋24の温度をトッププレート12を介して検知しており、温度検知手段23の検知温度が、第2の赤外線センサ19の検知出力に影響がでる温度以上では、補正手段20による補正は行わないように補正を禁止している。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては第2の赤外線センサ19上方に加熱された鍋24が置かれて、第1の赤外センサ16への影響は無視でき、第2の赤外線センサ19の出力にのみ影響がでる場合には、第2の赤外線センサ19の出力に応じた補正手段20での補正を禁止することで誤った補正をしないので、第1の赤外線センサ16による負荷鍋の鍋底温度検知精度を向上することができる。
【0036】
なお、遮光手段22により鍋24から放射される赤外線の影響は遮光して低減できる、この場合も、温度検知手段23の検知温度と第1の赤外線センサ16への影響との関係に応じて補正内容を設定し、同様の効果がえられる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる多口加熱調理器は、電気ヒータから放射される赤外線の影響を低減し、電気ヒータ同時使用時の赤外線センサによる温度検知精度を向上させることができるので、赤外線センサを用いた湯沸かしや炊飯、焼き物といった自動調理と、電気ヒータによる加熱調理を同時に進行する調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における多口加熱調理器の断面を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における多口加熱調理器の平面を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における第2の加熱手段から第1及び第2の赤外線センサに入射される赤外線を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における多口加熱調理器の断面を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における鍋から第1及び第2の赤外線センサに入射される赤外線を示す図
【図6】従来の多口加熱調理器の断面を示す図
【符号の説明】
【0039】
11 負荷鍋
12 トッププレート
13 加熱コイル(第1の誘導加熱手段)
14 インバータ回路(第1の誘導加熱手段)
16 第1の赤外線センサ
17 温度算出手段
18 第2の加熱手段
19 第2の赤外線センサ
20 補正手段
21 制御手段
22 遮光手段
23 温度検知手段
24 鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トッププレート上の負荷鍋を加熱する第1の誘導加熱手段と、前記第1の誘導加熱手段により加熱される前記負荷鍋からの赤外線放射を検知する第1の赤外線センサと、前記第1の赤外線センサの出力より前記負荷鍋の温度を算出する温度算出手段と、前記トッププレート上の鍋を加熱する第2の加熱手段と、前記第2の加熱手段からの赤外線放射を検知する第2の赤外線センサと、前記第1の誘導加熱手段および前記第2の加熱手段の通電を制御する制御手段とを備え、前記第2の赤外線センサの出力に応じて前記温度算出手段での算出温度を補正する補正手段を設けた多口加熱調理器。
【請求項2】
第2の赤外線センサは、第1の赤外線センサと第2の加熱手段の間に配置する構成とした請求項1に記載の多口加熱調理器。
【請求項3】
補正手段は、第2の加熱手段の通電時に補正値を算出する請求項1または2に記載の多口加熱調理器。
【請求項4】
補正手段は、第2の加熱手段の通電停止時に第2の赤外線センサの出力が所定以上で補正値を算出する請求項3に記載の多口加熱調理器。
【請求項5】
第2の赤外線センサ近傍に温度検知手段を備え、補正手段は第2の加熱手段の通電停止時に前記温度検知手段の検知温度が所定以上で補正値の算出を禁止する請求項1または2に記載の多口加熱調理器。
【請求項6】
第2の赤外線センサの視野角範囲となるトッププレート上面に遮光手段を備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の多口加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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