説明

多孔性複合体粒子、その製造方法および脱塩素剤

【課題】 ゴミを焼却する際の排ガス又は廃プラスチック・廃油の熱分解の際に発生する排ガス中に含まれるダイオキシン類などの有機塩素化合物を効率的に吸着し及び/又は分解・脱塩素化し、且つ、長期間に渡り高い除去機能を発揮する多孔性複合体粒子および脱塩素剤を提供する。
【解決手段】 無機化合物粒子と炭素とから成る多孔性複合体粒子であって、無機化合物粒子の含有量が20〜80重量%であり、炭素の含有量が20〜80重量%であり、平均粒子径が1〜1000μmであり、細孔容積分布において細孔径10nm以上の領域に細孔容積の最大ピークが存在することから成る多孔性複合体粒子およびその製造方法に係わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性複合体粒子、その製造方法および脱塩素剤に関する。詳しくは、本発明は、高い吸着能を有し、且つ、優れた触媒活性を長期間維持することの出来る多孔性複合体粒子、その製造方法、および、ゴミを焼却する際の排ガス中または廃プラスチック・廃油のリサイクル処理における熱分解の際に発生する排ガス中に含まれる有機塩素化合物から塩素を有効に除去する脱塩素剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可燃ごみの焼却処分の際に排出される排ガス中および廃プラスチックや廃油などの廃棄物のリサイクル処理、例えば、熱分解油化プロセス処理の際に発生する排ガス中には有機塩素化合物、例えば、ダイオキシン類などが含まれており、化学物質による環境や人体に有害な物質の発生原因として社会問題となっている。そこで、吸着機能と触媒機能とを併せ持った多孔性粒子を使用して排ガス中の有機塩素化合物を取り除く方法が提案されている。
【0003】
上記の多孔性粒子として、鉄を主成分とする酸化物粒子などの無機化合物粒子とカーボンとから成り、粒子の表面および内部に平均細孔直径5nm以下の細孔を有し、平均粒子径が1〜1000μmであって、比表面積値が45〜200m2/gである多孔性複合体粒子が知られている。
【特許文献1】特開2001−179101号公報
【0004】
しかしながら、上述の多孔性複合体粒子は、吸着機能と触媒機能とを併せ持った多孔性粒子ではあるが、排ガス中の有機塩素化合物に対する吸着機能と触媒機能とが長期間に渡ってより高いレベルで維持されるものとは言えず、前述の社会問題を考慮すると、排ガス中の有機塩素化合物に対して長期間に渡り高い除去機能を発揮する多孔性粒子の提供が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴミを焼却する際の排ガス又は廃プラスチック・廃油の熱分解の際に発生する排ガス中に含まれるダイオキシン類などの有機塩素化合物を効率的に吸着し及び/又は分解・脱塩素化し、且つ、長期間に渡り高い除去機能を発揮する多孔性複合体粒子および脱塩素剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、有機塩素化合物の分解触媒機能を発現する特定量の無機化合物粒子が含有され、細孔容積分布において細孔径10nm以上の領域に細孔容積の最大ピークが存在する多孔性複合体粒子は、意外にも、排ガス中のダイオキシン類などの有機塩素化合物をより効率的に吸着し及び/又は分解・脱塩素化すると共に、長期間に渡り高い除去効率を維持することが出来る。
【0007】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、無機化合物粒子と炭素とから成る多孔性複合体粒子であって、無機化合物粒子の含有量が20〜80重量%であり、炭素の含有量が20〜80重量%であり、平均粒子径が1〜1000μmであり、細孔容積分布において細孔径10nm以上の領域に細孔容積の最大ピークが存在することを特徴とする多孔性複合体粒子に存する。
【0008】
本発明の第2の要旨は、水性媒体中で無機化合物粒子の存在下フェノール類およびアルデヒド類を重合反応させてフェノール樹脂を結合樹脂とする造粒複合体粒子を生成する工程と、以下の(A)又は(B)の工程とから成ることを特徴とする多孔性複合体粒子の製造方法に存する。
【0009】
(A)得られた造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程、および、溶解処理した造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程。
(B)得られた造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程、および、炭化した造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程。
【0010】
また、本発明の第3の要旨は、上記の多孔性複合体粒子から成ることを特徴とする脱塩素剤に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴミを焼却する際の排ガス又は廃プラスチック・廃油のリサイクル処理における熱分解の際に発生する排ガス中に含まれるダイオキシン類などの有機塩素化合物を効率的に分解・脱塩素化し及び/又は吸着し、且つ、長期間に渡り安定して高い除去効率を維持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の多孔性複合体粒子は、20〜80重量%の無機化合物粒子と80〜20重量%炭素とから成り、平均粒子径が1〜1000μmであり、細孔容積分布において細孔径10nm以上の領域に細孔容積の最大ピークが存在する。
【0013】
本発明で使用する無機化合物粒子は、水に溶解せず又は水によって変質・変性しないものであれば、特に制限されない。例えば、ヘマタイト粒子、含水酸化第二鉄粒子、マグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、これらにコバルトを被着させ又は含有させた粒子、バリウム、ストロンチウム又はバリウム−ストロンチウムを含むマグネトプランバイト型フェライト粒子、マンガン、ニッケル、亜鉛、リチウム及びマグネシウム等から選択された1種又は2種以上の元素を含むスピネル型フェライト粒子などの酸化鉄粒子、酸化チタン粒子、酸化カルシウム粒子、酸化珪素粒子、酸化マンガン粒子、酸化アルミニウム粒子などの金属酸化物粒子、鉄、ニッケル、マグネシウム等の金属粒子が挙げられる。なお、無機化合物粒子として、上述の粒子を二種以上混合して使用してもよい。
【0014】
無機化合物粒子の粒子形状は、立方体状、多面体状、球状、板状などの何れの形状でもよい。無機化合物粒子の平均粒子径は、目的とする複合体粒子の平均粒子径よりも小さい粒子であれば、特に制限されない。例えば、平均粒子径は、通常0.01〜5.0μm、好ましくは0.05〜2.0μmである。
【0015】
多孔性複合体粒子中の無機化合物粒子の含有量は、20〜80重量%、好ましくは25〜78重量%、より好ましくは30〜75重量%である。20重量%未満の場合は、無機化合物粒子の触媒機能が十分に発揮されない。また、80重量%を超える場合は、炭素の含有量が不十分で、吸着機能が不十分となる。
【0016】
無機化合物粒子は、必要により親油化処理をしておいてもよい。親油化処理がされた無機化合物粒子を使用した場合には、造粒複合体粒子中における無機化合物粒子の含有量をより高めることができると共に、球状の造粒複合体粒子が得やすくなる。
【0017】
親油化処理方法としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤で処理する方法又は界面活性剤を含む水性媒体中に無機化合物粒子を分散させ、粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法などが挙げられる。
【0018】
シラン系カップリング剤としては、疎水性基、エポキシ基、アミノ基を有するシラン系カップリング剤が挙げられる。例えば、疎水性基を有するシラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン等が挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネ-ト等が挙げられる。
【0019】
エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等が挙げられ、アミノ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、市販の界面活性剤を使用することができ、例えば、無機化合物粒子やその粒子表面に有する水酸基と結合可能な官能基を有するものが好ましい。
【0021】
親油化処理剤の量は、無機化合物粒子に対して通常0.1〜5.0重量%である。0.1%未満の場合は、造粒複合体粒子中における無機化合物粒子の含有量をより高める効果が得られ難い。5.0%を越える場合には、造粒複合体粒子の粒子表面に存在する親油化処理剤によって、複合体粒子相互が密着し、凝集しやすくなるため好ましくない。
【0022】
多孔性複合体粒子中のフェノール樹脂由来の炭素の含有量は、20〜80重量%、好ましくは22〜75重量%、より好ましくは25〜70重量%である。20重量%未満の場合は、吸着機能が不十分となる。80重量%を超える場合は、無機化合物粒子の触媒機能が不十分となる。
【0023】
本発明に係る多孔質複合体粒子の平均粒子径は、1〜1000μm、好ましくは2〜900μmである。平均粒子径が上記範囲外の複合体粒子は、工業的に生産することが困難である。
【0024】
多孔性複合体粒子は、その細孔容積分布において、細孔径10nm以上、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜80nmの領域に細孔容積の最大ピークを有する。細孔径10nm未満に細孔容積の最大ピーク値がある場合は、長期間に渡る高い除去効率が維持されない。
【0025】
多孔性複合体粒子のBET比表面積は、通常100m/g以上、好ましくは100〜800m/g、より好ましくは150〜800m/gである。BET比表面積が100m/g未満の場合は、有機塩素化合物の吸着機能が十分とは云えない。
【0026】
多孔性複合体粒子の細孔容積は、通常0.20cm/g以上、好ましくは0.25〜1.00cm/gである。細孔容積が0.20cm/g未満の場合は、有機塩素化合物の吸着機能が十分とは云えない。
【0027】
多孔性複合体粒子の細孔指数(細孔容積/[BET比表面積×炭素量])は、通常0.01以下、好ましくは0.008以下である。細孔指数が0.01を超える場合は、その触媒機能が十分持続されるとは云えない。
【0028】
多孔性複合体粒子の粒子形状は、通常粒状または球状であり、好ましくは球状である。多孔性複合体粒子の短軸径と長軸径との比は、通常1.0〜1.5である。
【0029】
次に、本発明に係る多孔性複合体粒子の製造方法について述べる。その製造方法は、水性媒体中で無機化合物粒子の存在下フェノール類およびアルデヒド類を重合反応させて得られるフェノール樹脂を結合樹脂とする造粒複合体粒子を生成する工程と、以下の(A)又は(B)の工程とから成る。
【0030】
(A)得られた造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程、および、溶解処理した造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程。
(B)得られた造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程、および、炭化した造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程。
【0031】
先ず、アンモニア水などの水媒体中で、重合開始剤としての塩基性触媒を使用し、無機化合物粒子の存在下においてフェノール類とホルマリンとを通常50〜90℃の温度範囲で反応させてフェノール樹脂を形成した後、通常40℃以下に冷却して、無機化合物粒子とフェノール樹脂とから成る造粒複合体粒子が含有する水分散液を得る。
【0032】
フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールA等のアルキルフェノール類、ベンゼン核、又は、アルキル基の一部または全部が塩素原子、臭素原子などで置換されたハロゲン化フェノール類などのフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。中でも、フェノールが好ましい。
【0033】
アルデヒド類としては、ホルマリン又はパラホルムアルデヒドの形態のホルムアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。中でもホルムアルデヒドが好ましい。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比は、通常1〜4:1、好ましくは1.2〜3:1である。
【0034】
塩基性触媒としては、通常のレゾール樹脂製造に使用される塩基性触媒が使用される。例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキルアミンが挙げられる。フェノール類に対する塩基性触媒のモル比は、通常0.02〜0.7:1である。
【0035】
なお、造粒複合体粒子の製造において、フェノール樹脂の代わりに、エポキシ樹脂を使用してもよい。その製造方法としては、例えば、水性媒体中にビスフェノール類とエピハロヒドリンと無機化合物粒子を分散させ、アルカリ水性媒体中で反応させる方法が挙げられる。
【0036】
次に、この水分散液を濾過、遠心分離などの定法に従って固液を分離した後、乾燥することにより、造粒複合体粒子を得る。
【0037】
造粒複合体粒子の熱処理温度は、フェノール樹脂が分解して炭化するのに必要な温度、例えば、400〜800℃で、好ましくは500〜750℃である。処理温度が400℃未満の場合は、フェノール樹脂の炭化が進行しないことがある。また、800℃を超える場合は、無機化合物粒子としてのマグネタイトが樹脂によって還元されて、その一部または全部がウスタイトや鉄に変換され、その結果、酸化され易くなるため好ましくない。加熱処理時間は、通常1〜3時間である。
【0038】
使用する熱処理炉としては、固定式または回転式の処理炉が挙げられる。熱処理中の不活性雰囲気は、ヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスを熱処理炉内に流すことによって形成される。不活性ガスとしては、コスト的な面から窒素ガスが好適である。不活性ガスの流量は、無機化合物粒子として鉄やマグネタイト等を使用した場合の無機化合物粒子の酸化を防止するために、通常1L/分以上、好ましくは2〜5L/分である。
【0039】
本発明においては上述の様にして得られた造粒複合体粒子または炭化した造粒複合体粒子を溶解処理して、含有されている無機化合物粒子の一部を溶解することが重要である。
【0040】
無機化合物粒子の溶解は、酸または塩基によって行われる。酸としては、塩酸、硫酸、シュウ酸、燐酸などの酸が挙げられ、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられる。使用する酸または塩基の濃度は、含有されている無機化合物粒子の量に応じて適宜選択すればよいが、例えば、通常1〜7規定、好ましくは2〜6規定である。
【0041】
無機化合物粒子の溶解の程度は、目的とする多孔性複合体粒子に応じて適宜選択すればよい。例えば、溶解の程度は、溶解前の複合体粒子に含まれる無機化合物粒子の通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。
【0042】
本発明の脱塩素剤は、多孔性複合体粒子から成る。脱塩素剤としての使用形態は、ゴミを焼却した際の排ガス又は廃プラスチック・廃油のリサイクル処理における熱分解の際に発生する排ガスと、脱塩素剤とを接触させればよい。例えば、固定床流通式反応装置に触媒層として脱塩素剤を充填し、常圧下、空間速度(SV)が通常100〜300/hr、好ましくは100〜200/hr、接触(充填層)温度が通常300〜400℃、好ましくは320〜400℃で排ガスを通常1.0〜5.0ml/分、好ましくは1.0〜3.0ml/分の速度で通過させる方法が挙げられる。
【0043】
吸着機能と触媒機能とを併せ持った多孔性複合体粒子から成る脱塩素剤は、ゴミを焼却した際に発生するダイオキシン類などの有機塩素化合物および廃プラスチックや廃油を熱分解する際に発生する有機塩素化合物を吸着、分解して、塩素を効果的に除去することが出来る。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。なお、造粒複合体粒子、多孔性複合体粒子および脱塩素剤の特性は、以下の方法で測定した。
【0045】
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製)により計測した値で示し、また、粒子の粒子形態は、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、「S−800」(商品名))で観察した。
【0046】
フェノール抽出量は、乾燥した多孔性複合体粒子10gを水100ccに分散させ、60℃で30分間加熱処理してフェノールを溶出させ、多孔性複合体粒子を分離した後、4−アミノアンチピリンによる比色定量法により測定した。
【0047】
粒子の球形度は、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−800」(商品名))により複合体粒子をランダムに250個以上抽出し、平均長軸径l及び平均短軸径wを求め、式:球形度=l/w(但し、l:球形複合体粒子の平均長軸径、w:球形複合体粒子の平均短軸径)によって算出した。
【0048】
BET比表面積は,NOVA1200(Quantachrome社製)により測定した値で示した。
【0049】
平均細孔直径および細孔容積は、Tri Star3000(島津製作所社製)を用いて25℃の条件で測定した値で示した。
【0050】
炭素量は、カーボン/サルファ・アナライザー(堀場製作所社製「EMIA・2200」(商品名))を用いて測定した。
【0051】
触媒活性および吸着能の程度は、以下のクロロシクロヘキサンの脱塩素化率の値で示した。各試料1mlを内径14mm,400mmのガラス製カラムに充填し、350℃の温度で、クロロシクロヘキサンを0.02ml/minの速度で流通させる。カラムを通過したガスをガスクロマトグラフィー質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS−QP5050」(商品名))を用いて、未反応のクロロシクロヘキサン、脱塩素したものであるクロロシクロヘキセンの各量を別途作成した検量線から定量した。流通を開始直後、1時間流通後、5時間流通後の各サンプルの分析を行った。
【0052】
実施例1:
<造粒複合体粒子の製造>
ヘンシェルミキサー内に平均粒径0.24μmの球状マグネタイト粒子1Kgを仕込み、十分に良く攪拌して、次に、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤(信越化学工業製「KBM−403」(商品名))5.0gを添加混合して表面処理した。
【0053】
別に、1Lのフラスコに、フェノール120g、37%ホルマリン180g、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤で表面処理された球状マグネタイト粒子1Kg、25%アンモニア水35g及び水130gを仕込み、攪拌しながら60分間で85℃に上昇させ、同温度で120分間反応・硬化させて、フェノール樹脂と球状マグネタイト粒子から成る造粒複合体粒子を製造した。
【0054】
次に、フラスコの内容物を30℃に冷却し、上澄み液を除去し、さらに下層の沈殿物を濾過し、通風乾燥機を使用して80℃で7時間乾燥して造粒複合体粒子を得た。
【0055】
得られた造粒複合体粒子は、平均粒径が15μmで、無機化合物粒子成分の含有量が88.6重量%、フェノール溶出量は1.2mg/lであった。
【0056】
<熱処理>
得られた造粒複合体粒子を内容量15Lの静置式熱処理炉内に入れ、窒素ガスを3L/分の流量で流しながら、600℃で2時間熱処理した。室温まで冷却して、マグネタイトと炭素からなる複合体粒子を得た。
【0057】
<酸処理>
得られた複合体粒子200gを1Lフラスコに入れ、5N−塩酸を600ml加え、攪拌しながら70℃で約3時間酸処理した。室温まで冷却し、固液分離した後、乾燥して多孔性複合体粒子を得た。
【0058】
実施例2〜5、比較例1:
無機化合物粒子の種類および親油化処理剤の種類および量、その他反応条件を変えた以外は、実施例1と同様にして造粒複合体粒子を得た。このときの主要製造条件および諸特性を表1〜3に示す。
【0059】
次いで、造粒複合体粒子の種類および加熱処理条件を変えた以外は、実施例1と同様にして多孔性複合体粒子を得た。このときの主要製造条件および諸特性を表4〜7に示す。
【0060】
比較例2
実施例1で得られた造粒複合体粒子を実施例1と同様の熱処理を行った後、窒素ガスの代わりにCOガスを2L/分の流量で流しながら、600℃で1時間流処理をして、多孔性複合体粒子を得た。このときの主要製造条件および諸特性を表1〜7に示す。
【0061】
比較例3
実施例1で得られた造粒複合体粒子を平均直径25mmφの円柱状成型金型に入れ、圧縮成型機を使用して、200℃の温度200kg/cmの圧力で5分間加圧して平均直径2.5cmで高さ1.0cmでの円柱状成型物を製造した。この円柱成型物1kgを内容量15Lの静置式処理炉内に入れ、窒素ガスを3L/分の流量で流しながら、600℃で2時間熱処理して多孔性複合体成型体を得た。得られた成型体の主要製造条件および諸特性を表1〜7に示す。
【0062】
比較例4
フェノール、37%ホルマリン、25%アンモニア水および水の量を変えた以外は、実施例1と同様にして造粒複合体粒子を得た。このときの主要製造条件および諸特性を表1〜3に示す。
【0063】
次いで、造粒複合体粒子の種類および加熱処理条件を変えた以外は、実施例1と同様にして多孔性複合体粒子を得た。このときの主要製造条件および諸特性を表2〜7に示す。
【0064】
実施例1〜4、比較例1、2、4で得られた多孔性複合体粒子および比較例3で得られた多孔性複合体成型体の試験開始直後、1時間経過後、5時間経過後のクロロシクロヘキサンの脱塩素化率を表7に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表中、「KBM−403」(商品名)は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで、「KBM602」(商品名)は、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランで、共に信越化学工業製の親油化処理剤である。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機化合物粒子と炭素とから成る多孔性複合体粒子であって、無機化合物粒子の含有量が20〜80重量%であり、炭素の含有量が20〜80重量%であり、平均粒子径が1〜1000μmであり、細孔容積分布において細孔径10nm以上の領域に細孔容積の最大ピークが存在することを特徴とする多孔性複合体粒子。
【請求項2】
BET比表面積が100m/g以上である請求項1に記載の多孔性複合体粒子。
【請求項3】
細孔指数(細孔容積/[BET比表面積×炭素量])が0.01以下である請求項1又は2に記載の多孔性複合体粒子。
【請求項4】
水性媒体中で無機化合物粒子の存在下フェノール類およびアルデヒド類を重合反応させてフェノール樹脂を結合樹脂とする造粒複合体粒子を生成する工程と、以下の(A)又は(B)の工程とから成ることを特徴とする多孔性複合体粒子の製造方法。
(A)得られた造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程、および、溶解処理した造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程。
(B)得られた造粒複合体粒子を不活性雰囲気下400〜800℃の温度で加熱処理して前記フェノール樹脂を炭化する工程、および、炭化した造粒複合体粒子を溶解処理して無機化合物粒子の一部を溶解する工程。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の多孔性複合体粒子から成ることを特徴とする脱塩素剤。

【公開番号】特開2006−35080(P2006−35080A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218069(P2004−218069)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】