説明

多孔性集合体の評価方法

【課題】繊維や粒子等の構成要素が複数集合してなる多孔性集合体の表面から内部の構造までを非破壊で直接観察することにより多孔性集合体の性能を的確に評価する。
【解決手段】構成要素が複数集合した多孔性集合体に、該構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体を含浸させた後、顕微鏡で観察することにより、0.4μm以上の構成要素の有無を確認することを特徴とする多孔性集合体の評価方法。本発明の測定方法により、構成要素が複数集合した多孔性集合体の内部の構造までを非破壊で直接観察して構成要素の大きさを確認し、この結果を多孔性集合体及びこの多孔性集合体を用いた各種の材料を製造する際の工程管理、製品管理に反映することにより、所望の品質の製品を安定に製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性集合体の評価方法に係り、詳しくは、繊維や粒子等の構成要素が複数集合してなる多孔性集合体の表面から内部の構造までを非破壊で直接観察することにより、多孔性集合体の性能を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野で構成要素が複数集合した多孔性集合体が使用されている。例えば、フィルターや不織布、織物、膜といったものが挙げられるが、このような多孔性集合体がどのような構造になっているか、特に内部がどのようになっているかを確認する方法は、確立されていなかった。
【0003】
特に、この構成要素が、繊維や粒子である場合、多孔性集合体の内部は必ずしも均一な構造とされているわけではなく、さらには、構成要素、例えば繊維や粒子に繊維径ないし粒径分布がある場合には、その内部構造はさらに不均一になることが予想される。このような内部構造は、多孔性集合体の性能を左右する場合が多く、従って、多孔性集合体の内部構造を的確に検出する方法の確立が重要となる。
【0004】
一方、近年、液晶や有機EL等のディスプレイ用基板として、ガラス板に変わるプラスチック基板が検討されている。これは、ガラス板は比重が大きく軽量化が困難で、割れやすい、曲げられない、厚みが必要などの欠点があるためであり、具体的には、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等を用いたディスプレイ用基板が使用されている。
【0005】
しかしながら、これら従来のガラス代替用プラスチック材料は、ガラス板に比べて線膨張率が大きいため、基板上に薄膜トランジスタ等のデバイス層を高温で蒸着させるプロセスにおいて、反りや蒸着膜の割れ、半導体の断線などの問題が生じ易く、実用は困難であった。
即ち、これらの用途には、高透明性、高耐熱性、低吸水性かつ低線膨張率のプラスチック材料が求められている。
【0006】
このような要求性能を満足しうる材料として、より小さな構造単位からなる繊維を樹脂に分散させることで透明性を向上させたガラス代替用プラスチック複合材料が開発されている。このより小さな構造単位として、天然セルロースを微細化してナノファイバー化した繊維が好適に用いられている。セルロースは伸びきり鎖結晶を有することから、低線膨張率、高弾性率、高強度を発現することが知られている。また、微細化することにより微小かつ高結晶性のセルロースナノファイバーが得られ、その繊維の隙間をマトリクス材料で埋めることで高い透明性と低線膨張率を有する複合材料が得られることが報告され、微細化したセルロース繊維を不織布等の多孔性集合体として、その繊維の隙間をマトリクス材料で埋めた複合材料が提供されている。
【0007】
しかしながら、セルロースナノファイバーの製造工程で、パルプ等の大きな繊維径の原料(例えば数十mmから数μm径)から微細化してナノサイズの径の繊維を得る際、繊維径に分布ができてしまい、その繊維径分布が得られる複合材料の透明性に影響を与えることが知られている。従って、複合材料中の繊維径を確認ないし測定し、透明性の制御に反映させることが必要となる。
【0008】
しかし、複合材料中の繊維径の分布を、一般的な粒径分布測定機で正確に測定することは困難である。また、微細化されたセルロース繊維の分散液の状態でSEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)を用いて観察することはできるが、不織布等の多孔性集合体については、数十〜数百nm程度の表面の観察はできてもその内部構造をSEMやTEMで直接観察して、多孔性集合体内の繊維の繊維径を確認ないし測定することは困難であった。
【0009】
特許文献1には、セルロースを含有する不織布をトルエンに浸液した状態で、波長850nmの光の透過率を測定することで、不織布の微細性を規定している。しかし、この方法は、不織布と樹脂を複合化した際の透明性との相関をみることはできるが、全体的な傾向がわかるだけであり、個々の繊維の分布を直接的に観察できる方法ではない。
【特許文献1】特開2006−316253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、繊維や粒子のような構成要素よりなる多孔性集合体の構造は、当該多孔性集合体の性能を左右する場合が多いことから、多孔性集合体の構造を確認することが重要となる。また、近年開発されている、例えばセルロース等の繊維を微細化して得た不織布等の多孔性集合体にマトリクス材料を複合化させてなる複合材料にあっては、その透明性への影響の観点から、多孔性集合体の構造の把握が重要である。
【0011】
しかしながら、従来において、様々な分野で使用されている構成要素が複数集合した多孔性集合体、例えば、フィルターや不織布、織物、膜といったものがどのような構造になっているか、特に内部がどのようになっているかを確認する方法は、これまで確立されていなかった。
【0012】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、繊維や粒子等の構成要素が複数集合してなる多孔性集合体の表面から内部の構造までを非破壊で直接観察して、当該多孔性集合体の性能を的確に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の方法を用いることで、多孔性集合体の内部構造を非破壊で観察して構成要素の大きさを確認ないし測定できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0014】
[1] 構成要素が複数集合した多孔性集合体に、該構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体を含浸させた後、顕微鏡で観察することにより、0.4μm以上の構成要素の有無を確認することを特徴とする多孔性集合体の評価方法。
【0015】
[2] 前記構成要素が、繊維及び/又は粒子であって、繊維径0.4μm以上の繊維及び/又は粒径0.4μm以上の粒子の有無を確認する[1]に記載の多孔性集合体の評価方法。
【0016】
[3] 前記構成要素が結晶性成分である[1]又は[2]に記載の多孔性集合体の評価方法。
【0017】
[4] 前記構成要素がセルロースである[1]ないし[3]のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【0018】
[5] 偏光顕微鏡で観察することを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【0019】
[6] 0.4μm以上の構成要素を確認すると共に、その大きさを測定する[1]ないし[5]のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【0020】
[7] 前記構成要素が繊維であり、その繊維長及び/又は繊維径を測定する[6]に記載の多孔性集合体の評価方法。
【0021】
[8] 前記構成要素が粒子であり、その粒径を測定する[6]に記載の多孔性集合体の評価方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構成要素が複数集合した多孔性集合体に、該構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体を含浸させた状態で顕微鏡観察することにより、多孔性集合体の表面のみならず内部構造までも非破壊で直接観察することが可能となり、0.4μm以上の構成要素の有無の確認ないしはその大きさの測定を行うことができる。
【0023】
このような本発明の多孔性集合体の評価方法は、特に、この構成要素が繊維及び/又は粒子の場合、さらには結晶性成分である場合により一層有効であり、本発明の測定方法により、構成要素が複数集合した多孔性集合体の内部の構造までを非破壊で直接観察して構成要素の大きさを確認し、この結果を多孔性集合体及びこの多孔性集合体を用いた各種の材料を製造する際の工程管理、製品管理に反映することにより、所望の品質の製品を安定に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0025】
〔構成要素〕
本発明は、構成要素が複数集合した多孔性集合体中のある大きさ以上の構成要素の有無を確認して当該多孔性集合体を評価する方法に関するものである。本発明で測定対象とする多孔性集合体を形成する構成要素については特に限定されるものではないが、例えば繊維や粒子が挙げられる。
【0026】
繊維としては、様々なものが挙げられるが、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維、食物繊維等の天然繊維、あるいは合成繊維、半合成繊維、再生繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の化学繊維等が挙げられる。
これらの中でも結晶性の繊維が測定上好適である。これは偏光顕微鏡を用いて測定した場合、繊維が明確に見えやすいためである。結晶性繊維としては例えば、セルロース、鉱物繊維、結晶性合成高分子からなるポリエステル繊維やポリイミド繊維等が挙げられる。
【0027】
繊維の大きさとしては、特に限定されるものではないが、通常長さは数十nmから数cm、太さ(繊維径)は数nmから数mmである。
【0028】
粒子としては、様々なものが挙げられるが、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機物粒子、ポリマー粒子等の有機物粒子、それらが複合化された粒子等が挙げられる。これらの中でも結晶性の粒子が測定上好適である。粒子の形状としては特に制限はなく、球状、楕円球状(ラグビーボール状)、立方体や直方体状、フレーク状(鱗片状)、その他の異形形状等、種々の形状をとりうる。
【0029】
粒子の大きさとしては特に限定されるものではないが、通常数nmから数mmである。なお、ここで粒子の大きさ(粒径)とは、球状の粒子であればその直径に該当するが、その他の形状の粒子の場合、当該粒子を2枚の平行な板で挟んだとき、その板の間隔が最も大きくなる部分の寸法をさす。
【0030】
本発明に係る多孔性集合体中には、これらの繊維の1種又は2種以上が含まれていてもよく、またこれらの粒子の1種又は2種以上が含まれていてもよく、また、繊維と粒子とが含まれていてもよく、さらに繊維と粒子以外の他の構成要素が含まれていてもよい。
【0031】
〔多孔性集合体〕
本発明において、多孔性集合体とは、上記のような構成要素が複数集合した集合体をさす。構成要素が複数集合することにより、例えば繊維間や粒子間に空孔が生じる。例えば繊維や粒子は点や線あるいは面で接触あるいは結合する場合もあるが、集合体を形成する時に、大変形を起こして密着しない限り、空孔をもった集合体となる。このような集合体を本発明に係る多孔性集合体(以下、「本発明の多孔性集合体」と称す場合がある。)とする。
【0032】
多孔性集合体中の構成要素間の空孔の大きさは、構成要素の大きさあるいは大きさの分布、集合体の形成方法にもよるが、通常数nmから数mmである。
【0033】
また、多孔性集合体の空孔構造も、構成要素の大きさあるいは大きさの分布、集合体の形成方法にもよるが、多孔性集合体中に直線のトンネル状に空孔がある場合、曲がりくねったトンネル状に空孔がある場合、空孔が閉じて壺状になっている場合など様々である。
【0034】
さらに、多孔性集合体の形状としても任意であり、例えば、厚みを持った構造体、シート状、膜状、フィルム状、また、織物や不織布などが挙げられる。
【0035】
〔多孔性集合体の製造方法〕
本発明の多孔性集合体として、例えば構造体、シート、膜、フィルムの製造方法には特に制限はなく、一般的な方法により製造される。多孔性にするために、例えば発泡成形のような手法がとられる場合もある。
【0036】
本発明の多孔性集合体のうち、不織布の製造方法としては、構成要素である繊維を水等の溶媒中に懸濁し、ネット等で漉きウェブを作り、脱溶媒し、加熱して乾燥させる湿式法;原料を、加熱、溶融し、ノズルから押し出して直接紡糸し、溶出したエンドレスの長繊維からウェブを形成する乾式法;などが挙げられる。
【0037】
〔構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体〕
<種類>
本発明においては、多孔性集合体中の構成要素の顕微鏡観察に先立ち、まず、多孔性集合体に、多孔性集合体の構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体(以下「含浸液体」と称す場合がある。)を含浸させる。
【0038】
含浸液体の屈折率と構成要素の屈折率との差が1を超えると、含浸液体含浸後の多孔性集合体が透明とならず、顕微鏡により多孔性集合体の内部構造を観察することができない。この含浸液体の屈折率と構成要素の屈折率との差は小さいほど好ましく、特に0.5以下、とりわけ0.3以下であることが好ましい。
【0039】
本発明で用いる含浸液体は、多孔性集合体中の構成要素に応じて、適宜選択することができ、例えば、構成要素がセルロース繊維の場合、セルロースの屈折率は1.6であるので、含浸液体の屈折率は0.6〜2.6の範囲であることが好ましく、1.1〜2.1の範囲であることがより好ましく、1.3〜1.9の範囲であることがさらに好ましい。
【0040】
含浸液体の具体例としては、標準屈折液が挙げられ、油浸オイル、イマージョンオイル、マッチングオイル、イマージョンリキッド等であり、幅広い屈折率のものを入手及び作成することができる。イマージョンオイルとしては例えばCARGILLE LABORATORIES社製IMMERSION OIL等が挙げられる。
【0041】
<含浸方法>
多孔性集合体に含浸液体を含浸させる方法には、特に制限はなく、例えば、含浸液体中に多孔性集合体を浸漬する方法や、含浸液体を多孔性集合体にスプレーする方法、含浸液体を多孔性集合体に滴下(流下)する方法などが挙げられる。
【0042】
なお、顕微鏡観察に供する試料の大きさは、顕微鏡観察用のスライドガラスに載る程度の適切な大きさ(例えば5mm角〜10mm角)であることが好ましく、従って、含浸液体を含浸させる多孔性集合体は予めこのような大きさに切断する。
【0043】
このようにして、含浸液体を多孔性集合体に含浸させた後は、含浸液体を含む多孔性集合体をカバーガラスで覆い、この状態で1時間以上、好ましくは6時間以上、更に好ましくは12時間以上放置して、液体の含浸状態を安定化させる。なお、この放置時間が過度に長くてもそれ以上の効果は得られないことから、通常、放置時間の上限は3日以下、好ましくは2日以下である。
【0044】
この放置の際の圧力は常圧でも、若干の減圧又は加圧状態でも良い。また、安定化後の多孔性集合体は、含浸液体に揮発性がある場合は、乾燥前に速やかに測定する必要があるが、オイルのように揮発性のない場合は、長期保存が可能である。
【0045】
<含浸液体の硬化>
本発明においては、多孔性集合体に含浸液体を含浸させた後、この含浸液体を光や熱により硬化させても良い。このような硬化性の含浸液体としては、具体的には光重合開始剤や熱重合開始剤を含むアクリレートやメタクリレートのモノマー(以後「(メタ)アクリレート」と表記する。「(メタ)アクリル」についても同様である。)やエポキシ樹脂モノマーやオキセタン樹脂モノマー等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤としては紫外線などの光によりラジカルを発生させる化合物であればよい。例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0047】
熱重合開始剤としては加熱によりラジカルを発生させる化合物であればよい。例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の1種又は2種以上が挙げられる。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)ジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等を用いることができる。
【0048】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個または3個或いはそれ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン系化合物、アクリル酸誘導体などが挙げられる。
【0049】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能メタクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
分子中に2個又は3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0051】
分子内に3〜8個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル等が利用できる。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリテールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールセプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
スチレン系化合物としては、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0053】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0054】
また、エポキシ樹脂モノマーやオキセタン樹脂モノマーを用いる場合には紫外線等の光で酸を発生させる光カチオン重合開始剤を用いる。これは、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる化合物であり、例えば、芳香族スルホニウム塩として、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドテトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0055】
芳香族ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボネート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0056】
芳香族ジアゾニウム塩としては、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
芳香族鉄化合物としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラフルオロボレート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0057】
エポキシ樹脂モノマーは、分子中にエポキシ環を有する化合物である。これは、多価フェノール化合物、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造される、ジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応による、ジまたはポリグリシジルエーテル等があり、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル等のグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0058】
脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個のシクロヘキセン、又はシクロペンテン等のシクロアルカンを有する化合物を、過酸化水素、過酸等の酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたは、シクロペンテンオキサイドなどが挙げられる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0059】
また、オキセタン樹脂モノマーとしては、分子中にオキセタンを有する化合物であり、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル{[3−(トリエトキシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。
分子中に2個のオキセタンを有する化合物としては、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等が挙げられる。3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、分枝状のポリアルキレンオキシ基やポリシロキシ基と3−アルキル−3−メチルオキセタンの反応物などが挙げられる。
【0060】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0061】
これらの光硬化性の樹脂を前述の多孔性集合体に含浸させた後、光や熱を用いて一般的な方法により硬化させる。この場合、例えば下記の様な方法をとることが出来る。
【0062】
まず、重合性樹脂モノマーと光重合開始剤を混合した組成物を用意する。次に多孔性集合体にこの組成物を含浸させる。含浸の方法は一般的な方法を用いることが出来る。例えば、この組成物中に多孔性集合体を浸漬する方法やこの組成物を多孔性集合体にスプレーする方法などが挙げられる。この様にして組成物を含浸させた多孔性集合体に紫外線などの活性エネルギー線を照射したり、加熱することにより重合性樹脂モノマーを重合させる。活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等が挙げられるが、好ましくは波長200〜450nm程度の光であり、更に好ましくは波長250〜400nmの紫外線である。
【0063】
照射する活性エネルギー線の量は、光重合開始剤がラジカルやカチオンを発生させる範囲であれば任意であるが、極端に少ない場合は重合が不完全となるため硬化物の耐熱性、機械特性が十分に発現されず、逆に極端に過剰な場合は硬化物の黄変等の光による劣化を生じるので、モノマーの組成および光重合開始剤の種類、量に合わせて、200〜450nmの波長の紫外線を、好ましくは0.1〜200J/cmの範囲、更に好ましくは1〜20J/cmの範囲で照射する。
この際、活性エネルギー線を複数回に分割して照射すると、硬化が均一になり、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射すると、複屈折のより小さな硬化物が得られる。
使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極ランプ、紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
【0064】
なお、上述のように、含浸液体を多孔性集合体に含浸させた後、硬化させる場合、含浸液体の硬化物もまた、多孔性集合体の屈折率に対して屈折率差1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下であることが重要である。
【0065】
[顕微鏡観察]
本発明では、上述のように含浸液体を含浸させ、場合によってはこれを更に硬化させた多孔性集合体(以下「サンプル」と称す場合がある。)を、光学顕微鏡で10〜40倍の倍率で観察する。この観察倍率が小さ過ぎると0.4μm以上の構成要素を観察することはできない。観察倍率が大きすぎると鮮明な画像が得にくくなり好ましくない。
【0066】
この顕微鏡観察は、特に偏光顕微鏡で行うことが好ましく、偏光顕微鏡を用いてクロスニコル条件下で回転させながら撮影した写真を合成することで、面内配向角に依存することなく0.4μm以上の構成要素を観察することができる。
【0067】
なお、ここで「0.4μm以上の構成要素」とは、具体的には、構成要素が繊維であれば繊維径が0.4μm以上の繊維であり、構成要素が粒子の場合、球状であればその直径が、楕円球状であればその短径が、立方体であればその一辺の長さが、直方体であればその短辺が0.4μm以上であることを示し、フレーク状やその他の異形形状であれば、光学顕微鏡の投影面中に直径0.4μmの円を含むような粒子であるものとする。
【0068】
[構成要素の顕微鏡観察及び測定原理]
本発明の多孔性集合体の評価方法による構成要素の観察及び測定原理は次の通りである。
即ち、多孔性集合体中の構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下である含浸液体を多孔性集合体に含浸させると、多孔性集合体の空孔の散乱が解消され、含浸液体含浸多孔性集合体はその全体が透明になる。このような状態のサンプルに対して顕微鏡観察を行うと、サンプルの表面のみならず、内部構造において、可視光の波長(0.4μm)より大きく、光を散乱する0.4μm以上の構成要素のみを検出することが可能となる。このように多孔性集合体に含浸液体を含浸させたサンプルは全体が透明になることで、その表面及び内部を合わせたバルクの状態を顕微鏡により観察することが可能となる。ここで、サンプルの内部の観察限界は、多孔性集合体の構成要素の大きさや、用いた顕微鏡の解像度、焦点距離にもよるが、通常の光学顕微鏡等の顕微鏡による表面観察では、サンプルの表面(観察面側)から数十nm以上、数十mm以下、好ましくは数mm以下、さらに好ましくは500μm以下程度の内部構造までを観察できると考えられる。
【0069】
[構成要素の確認・測定及びその応用]
本発明によれば、上述のように、サンプルの顕微鏡観察で0.4μm以上の構成要素を観察することによって、多孔性集合体中の構成要素の大きさの分布等を把握することができる。
例えば仮に、この方法によって何も観察されなかったとすると、その多孔性集合体は、0.4μm以上の構成要素を含まず、0.4μm未満の大きさの構成要素から成ることになり、可視光で散乱される構成要素が概ねないと考えられる。
【0070】
前述の如く、近年、透明材料を補強するために、多孔性集合体に樹脂を含浸させた複合材料が用いられることが多いが、本発明による方法で何も観察されなかった場合、その多孔性集合体は0.4μm以上の構成要素を含まず、従って、この多孔性集合体を用いた複合材料の透明性は非常に高くなり、ヘーズの低い材料を得ることができる。一方、本発明による方法で、多数の構成材料が観察された場合、その多孔性集合体は0.4μm以上の構成要素を多数含み、この多孔性集合体を用いた複合材料の透明性は非常に低くなり、ヘーズの高い材料となる。
このように、本発明の評価方法を用いることで、多孔性集合体を複合材料に適用する場合において、その複合材料の透明性への影響因子を定性的ないし定量的に把握することができる。
【0071】
さらには、この測定方法で得られる画像を解析することで、0.4μm以上の構成要素の形状を解析することもできる。例えば、0.4μm以上の構成要素が繊維状である場合には、繊維長、繊維径、あるいはそのアスペクト比が測定可能であり、この構成要素が粒状である場合には、粒径及びその分布が測定可能である。
具体的には、得られた画像のコントラストから画像解析によって0.4μm以上の構成要素を拾い出し、計測することでそのサイズと分布を計測することができる。画像解析の方法としては、市販のソフト、例えば株式会社日本ローバー社製「ImageProPlus」を用いて自動的に行う方法や、手作業でトレースしたものを抽出して解析する方法を採用することができる。
【0072】
このような本発明の多孔性集合体の評価方法で得られた構成要素の情報は、多孔性集合体及びこれを用いた複合材料を製造する際の工程管理、製品管理に用いることで、所望の品質の製品を安定に製造することができるようになる。
【実施例】
【0073】
以下、製造例及び実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0074】
なお、以下の実施例において、得られた複合体のヘーズは、JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定することにより調べた。
【0075】
[製造例1:分散液の作製]
米松木粉((株)宮下木材)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。その後、脱塩水で洗浄した後、0.66重量%の亜塩素酸ナトリウムと0.14重量%の酢酸を含む水溶液に80℃にて5時間浸漬してリグニン除去を行った。次いで、脱塩水で洗浄した後、濾過し、回収した精製セルロースを脱塩水で洗浄後、5重量%の水酸化カリウム水溶液に16時間浸漬してヘミセルロース除去を行った。次いで、脱塩水で洗浄した後に、1重量%の水分散液とした。
【0076】
[製造例2:超高圧ホモジナイザー処理を行ったセルロース分散液の作製]
製造例1で得られたセルロース分散液に水を添加して、0.5重量%に調整した。この分離液をスギノマシーン社製超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー)を用いて、噴出圧力245MPaにて解繊処理を行った。この解繊処理で得られたセルロース分散液を「超高圧ホモジナイザー処理セルロース分散液」と称する。
【0077】
[製造例3:グラインダー処理を行ったセルロース分散液の作製]
増幸産業株式会社の石臼式摩砕機スーパーマスコロイダーMKCA6−2を用い、GC6−80の石臼で、ギャップ間を80μmにして回転数1500rpmに調製し、原料投入口から製造例1で得られたセルロース分散液をセルロース濃度0.5%に調整して、1リットル投入して摩砕処理を行った。摩砕機を通った処理済みセルロース分散液を再び原料投入口に投入し、合計10回摩砕機を通した。この摩砕処理で得られたセルロース分散液を以後「グラインダー処理セルロース分散液」と称する。
【0078】
[製造例4:超音波処理を行ったセルロース分散液の作製]
SMT社製超音波ホモジナイザーUH−600S(周波数20kHz、実効出力密度22W/cm)を用い、セルロース分散液の超音波処理を行った。
36mmφのストレート型チップ(チタン合金製)を用い、アウトプットボリウム8でチューニングを行い、最適なチューニング位置で60分間、50%の間欠運転にて超音波処理を行った。50%の間欠運転とは0.5秒間超音波を発振した後0.5秒間休止を行う運転である。
セルロース分散液は処理容器の外側から5℃の冷水で冷却し、分散液温度15℃±5℃に保つと共に、マグネティックスターラーにて撹拌しながら処理を行った。
【0079】
[実施例1]
<セルロース分散液の処理>
製造例2で得られた超高圧ホモジナイザー処理セルロース分散液を、再び同装置を通す処理を5回行って得られたセルロース分散液に対して、製造例4の方法に従って、超音波処理を行った。このセルロース分散液を、日立工機株式会社製のhimacCR22Gを用い、アングルローターとしてR20A2を用いて遠心分離した。遠心分離作業は50ml遠沈管8本を、回転軸から34度の角度で設置し、1本の遠沈管に入れるセルロース分散液の量は30mlとして、18000rpmにて30分間の遠心分離を行った。
【0080】
<セルロース不織布の製造>
遠心分離で得られた分離液をセルロース濃度0.127重量%になるように水で希釈して、150mlに調整し、減圧濾過を行った。濾過器としてアドバンテック社KG−90を用い、ガラスフィルターの上に同アドバンテック社製の1.0μm孔径のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブランフィルターを載せた。有効濾過面積は48cmであった。濾過時の減圧度は−0.09MPa(絶対真空度10kPa)とし、セルロース分散液の上部から30mlのイソプロピルアルコールを静かに加えて減圧濾過した。
この濾過により、PTFE製メンブランフィルターの上にセルロース繊維の堆積物が得られた。このセルロース堆積物を120℃に加熱したプレス機にて0.15MPaの圧力で5分間プレス乾燥してセルロース不織布を得た。このセルロース不織布の厚みは66μmであった。
【0081】
<サンプルの作製・顕微鏡観察>
得られたセルロース不織布を5mm角に切断し、スライドガラス上で含浸オイル(CARGILLE LABORATORIES社製IMMERSION OIL TYPE B/屈折率1.5150±0.0002)を含浸させ、カバーガラスで覆った。この状態で24時間静置した後、偏光顕微鏡(ニコン社製光学顕微鏡)で観察した。また、サンプル形状を代表する視野を選んだ後、クロスニコル条件下で観察し、試料を15度おきに回転させながら10倍と40倍の倍率で撮影した写真を合成することにより、面内配向角に依存しない繊維形状像を得た。なお、この顕微鏡観察で、サンプルの表面から66μmの深さの内部構造まで、つまりサンプル全体の構造を観察することができた。
サンプルを上記方法により観察したところ、繊維径0.4μm以上の繊維は全く観察されなかった。この写真を図1(a),(b)に示す。なお、図1(b)で白く見える部分は繊維ではなく、サンプル表面の凹凸である。
【0082】
<複合体の製造・ヘーズ測定>
得られたセルロース不織布を、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン96重量部、ペンタエリスリトールテトラキスチオ(β−プロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製ルシリンTPO)0.05重量部、及びベンゾフェノン0.05重量部を混合した溶液に含浸させ、減圧下一晩静置した。これを2枚のガラス板にはさみ、無電極水銀ランプ(フュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」)を用いて、照射光量400mW/cmの下を、ライン速度7m/minで照射した。このときの光量は0.12J/cmであった。この操作をガラス面を反転して2回行った。次いで、照射光線量1900mW/cmの下をライン速度2m/minで照射した。このときの光量は2.7J/cmであった。この操作をガラス面を反転して8回行った。全照射光量は21.8J/cmであった。紫外線照射終了後、ガラス板より取り出し、190℃の真空オーブン中で4時間加熱して高分子セルロース複合体を得た。
この複合体のヘーズを上記の方法で測定したところ、0.97%と、透明性が高かった。
【0083】
[実施例2]
製造例2で得られた超高圧ホモジナイザー処理セルロース分散液を、再び同装置を通す処理を10回行ってセルロース分散液を得た。このセルロース分散液を用いて、実施例1と同様の方法でセルロース不織布を製造した。このセルロース不織布の厚みは63μmであった。
【0084】
このセルロース不織布を5mm角に切断し、スライドガラス上で含浸オイル(CARGILLE LABORATORIES社製IMMERSION OIL TYPE B/屈折率1.5150±0.0002)を含浸させ、カバーガラスで覆った。この状態で24時間静置した後、偏光顕微鏡(ニコン社製光学顕微鏡)で観察した。また、サンプル形状を代表する視野を選んだ後、クロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら10倍と40倍の倍率で撮影した写真を合成することにより、面内配向角に依存しない繊維形状像を得た。なお、この顕微鏡観察で、サンプルの表面から63μmの深さまでの内部構造、つまりサンプル全体の構造を観察することができた。
サンプルを上記測定方法により観察したところ、繊維径0.4μm以上の繊維がまばらに観察された。この写真を図2(a),(b)に示す。図2(b)で白い線状に見えるものが繊維径0.4μm以上の繊維である。
【0085】
このセルロース不織布を用いて実施例1と同様にして複合体を製造し、得られた複合体のヘーズを測定したところ、2.66%で、実施例1のものよりも透明性が若干劣るものであった。
【0086】
[実施例3]
製造例3で得られたグラインダー処理セルロース分散液をそのまま用い、実施例1と同様にしてセルロース不織布を製造した。このセルロース不織布の厚みは47μmであった。
【0087】
このセルロース不織布を5mm角に切断し、スライドガラス上で含浸オイル(CARGILLE LABORATORIES社製IMMERSION OIL TYPE B/屈折率1.5150±0.0002)を含浸させ、カバーガラスで覆った。この状態で24時間静置した後、偏光顕微鏡(ニコン社製光学顕微鏡)で観察した。また、サンプル形状を代表する視野を選んだ後、クロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら10倍と40倍の倍率で撮影した写真を合成することにより、面内配向角に依存しない繊維形状像を得た。なお、この顕微鏡観察で、サンプルの表面から47μm程度の深さまでの内部構造、つまりサンプル全体の構造を観察することができた。
サンプルを上記測定方法により観察したところ、繊維径0.4μm以上の繊維がたくさん観察された。この写真を図3(a),(b)に示す。図3(b)で白い線状に見えるものが繊維径0.4μm以上の繊維である。
【0088】
このセルロース不織布を用いて実施例1と同様にして複合体を製造し、得られた複合体のヘーズを測定したところ、5.52%と、実施例2のものよりも透明性は更に劣るものであった。
【0089】
[実施例4]
実施例2で得られたセルロース不織布を5mm角に切断し、スライドガラス上で含浸オイル(CARGILLE LABORATORIES社製IMMERSION OIL TYPE B/屈折率1.5150±0.0002)を含浸させ、カバーガラスで覆った。この状態で24時間静置した後、偏光顕微鏡(ニコン社製光学顕微鏡)でサンプル形状を代表する視野を選んだ後、クロスニコル条件下で観察し、試料を15度おきに回転させながら40倍の倍率で撮影した写真を合成することにより得られた、面内配向角に依存しない繊維形状像を用いて画像解析を行った。なお、この顕微鏡観察で、サンプルの表面から63μmの深さの内部構造、つまりサンプル全体の構造を観察することができた。
観察された繊維の繊維径と繊維長を計測することにより、その分布とアスペクト比を得た。
解析の結果、0.4μm以上の繊維の平均繊維長は86.8μm、平均繊維径は8.1μm、平均アスペクト比は12.5であった。
【0090】
[実施例5]
実施例1で得られた高分子セルロース複合体を、5mm角に切断し、スライドガラスにのせ、カバーガラスで覆った。これを偏光顕微鏡(ニコン社製光学顕微鏡)で観察した。また、サンプル形状を代表する視野を選んだ後、クロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら10倍と40倍の倍率で撮影した写真を合成することにより、面内配向角に依存しない繊維形状像を得た。
サンプルを上記方法により観察したところ、繊維径0.4μm以上の繊維は全く観察されなかった。この写真を図4(a),(b)に示す。
【0091】
上記実施例に示すように、本発明の評価方法を用いることで0.4μm以上の構成要素(実施例においては繊維径0.4μm以上のセルロース繊維)を観察することができた。即ち、本発明方法により、多孔性集合体の表面からは見えなくても、内部に存在する0.4μm以上の構成要素を観察することができる。
また、実施例1〜3に示すように、本発明の評価方法により、多孔性集合体中の0.4μm以上の構成要素の含有量と、この多孔性集合体に樹脂を含浸させて得られる複合体の透明性すなわちヘーズには相関がみられ、本発明の測定方法を用いることで、多孔性集合体の透明複合材料の透明性への影響因子を定量的に評価することが可能であることがわかる。
さらに、実施例4に示すように、本発明の評価方法で得られる画像を解析することで、単位体積あたりに存在する0.4μm以上の構成要素の寸法とその分布を計測することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)図は、実施例1で得られたセルロース不織布にオイルを含浸して得られたサンプルの光学顕微鏡写真であり、(b)図はクロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら撮影した写真の合成写真である。
【図2】(a)図は、実施例2で得られたセルロース不織布にオイルを含浸して得られたサンプルの光学顕微鏡写真であり、(b)図はクロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら撮影した写真の合成写真である。
【図3】(a)図は、実施例3で得られたセルロース不織布にオイルを含浸して得られたサンプルの光学顕微鏡写真であり、(b)図はクロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら撮影した写真の合成写真である。
【図4】(a)図は、実施例5で得られた高分子セルロース複合体をサンプルとする光学顕微鏡写真であり、(b)図はクロスニコル条件下で観察し、サンプルを15度おきに回転させながら撮影した写真の合成写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素が複数集合した多孔性集合体に、該構成要素の屈折率に対して屈折率差が1以下の液体を含浸させた後、顕微鏡で観察することにより、0.4μm以上の構成要素の有無を確認することを特徴とする多孔性集合体の評価方法。
【請求項2】
前記構成要素が、繊維及び/又は粒子であって、繊維径0.4μm以上の繊維及び/又は粒径0.4μm以上の粒子の有無を確認する請求項1に記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項3】
前記構成要素が結晶性成分である請求項1又は2に記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項4】
前記構成要素がセルロースである請求項1ないし3のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項5】
偏光顕微鏡で観察することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項6】
0.4μm以上の構成要素を確認すると共に、その大きさを測定する請求項1ないし5のいずれかに記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項7】
前記構成要素が繊維であり、その繊維長及び/又は繊維径を測定する請求項6に記載の多孔性集合体の評価方法。
【請求項8】
前記構成要素が粒子であり、その粒径を測定する請求項6に記載の多孔性集合体の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107336(P2010−107336A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279311(P2008−279311)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】