説明

多孔質カーボン電極基材およびその作成方法

【課題】カーボン繊維紙から、多孔質カーボン電極基材を作成するために、均一な繊維配向を持ち、空洞率、電気伝導率、厚み、曲げ強度の適当な組み合わせを有する多孔質カーボン電極基材を提供する。
【解決手段】厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する織物構造の多孔質カーボン電極基材とし、(a) 酸化した織物または予め炭化した酸化した織物を提供する工程、(b) 織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、(c) 樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、および(d) 加熱圧縮した織物を炭化する工程を含む製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質カーボン電極基材に関し、特に固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池用の電極基材に関する。本発明はまた、多孔質カーボン電極基材を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燐酸燃料電池用の電極と比較して、固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池用の多孔質カーボン電極は、耐久性および電池組立てのための圧縮強度の他に、気体および液体の拡散および透過ができ、電気的伝導性および柔軟性が必要である。さらに、小型化の要求に見合うように、固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池用の多孔質カーボン電極は通常、電池の総体積を減少させるためにシート状または紙状に電極として作成される。
【0003】
固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池用の多孔質カーボン電極は従来、湿式抄紙法のよって作成されている。湿式抄紙法において、カーボン短繊維が抄紙プロセスに供せられ、熱硬化性樹脂の含浸、硬化プロセスおよび高温炭化処理が施される。炭素繊維の均一な分散を抄紙プロセスのパルプ形成処理の間に達成するが困難であるので、カーボン繊維が均一な分散のカーボン繊維紙を製造することは困難である。それゆえ、カーボン繊維紙の空洞率は通常大きすぎて満足する電気伝導率をもつ電極を提供できない。また、不均一なカーボン繊維の分散によって、不均一な厚みおよび不均一な電気伝導率になる。
【0004】
上記の問題に関して、日本国特開平7−142068A(1995年)において、炭素質のミルドファイバを混合して変性多孔質カーボン電極基材を提供することが開示されている。しかしながら、このようにして作成された電極基材は厚すぎて固体高分子燃料電池用には十分な柔軟性がない。日本国特開平9−157052(1997年)では、他の多孔質カーボンシートおよびその作成法が開示されている。同様に、そこで作成された電極は密度が低すぎて満足する電気伝導率を提供できない。
【0005】
台湾(ROC)特許公報第489544号に対応する米国特許第6713034B2(2004年)において、燃料電池用多孔質カーボン電極基材および電極基材の製造法が開示されている。米国特許第6713034B2(2004年)で開示された方法は湿式抄紙技術を用いている。その方法は、水中にカーボン短繊維を解繊し、カーボン短繊維をバインダーとしてのポリビニルアルコールの短繊維と十分に混合し、抄紙工程を実施してカーボン繊維紙を提供する方法を含んでいる。その後で、カーボン繊維紙にフェノール樹脂を含浸し、加熱圧縮して樹脂を硬化させ、1600から2000℃の温度で炭化させて多孔質電極基材を提供する。それにもかかわらず、米国特許第6713034B2(2004年)で開示された方法によって作成された多孔質電極基材は、繊維配向が不均一で繊維の配向に垂直な方向の強度が不足しがちである。それゆえ、多孔質電極基材の気孔率または気体透過率をコントロールすることは困難である。
【0006】
特開平11−185771A(1999年)において、電気抵抗を減少させるために抄紙材料として短く、細いカーボン繊維の使用が開示されている。抄紙処理の間に、細いカーボン繊維の分散が困難であるから、このように作成されても、カーボン繊維の不均一な分散の問題は依然としてある。それゆえ、作成される多孔質カーボン電極基材の気孔率または気体透過率のコントロールは依然困難である。
【0007】
上記の開示に鑑み、カーボン繊維紙から多孔質カーボン電極基材を作成する現行技術は、作成のための均一な繊維配向をもつカーボン繊維紙を提供することができないことは明らかである。
【0008】
本発明は上記のニーズを対象とし、空洞率、電気伝導率、厚み、曲げ強度の適当な組合せを有し、燃料電池用に適する多孔質カーボン電極基材を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する織物構造の多孔質カーボン電極基材を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する織物構造の多孔質カーボン電極基材を作成する方法であって、
(a) 酸化した織物または予め炭化した酸化した織物を提供する工程、
(b) 織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、
(c) 樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、および
(d) 加熱圧縮した織物を炭化する工程を含む方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する織物構造の多孔質カーボン電極基材を作成する方法であって、
(a) 酸化した織物を提供する工程、
(b) 酸化した織物を予め炭素化する工程、
(c) 織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、
(d) 樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、
(e) 加熱圧縮した織物を炭化する工程を含む方法を提供することである。
【0012】
本発明を実施する詳細な技術および好適な実施態様は、請求の範囲に記載されている発明の特徴をよりよく理解するために当業者に対して以下の段落で説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は織物構造の多孔質カーボン電極基材を提供し、カーボン短繊維から作成される従来の電極基材に典型的に共通する繊維配向に垂直な方向の強度が不足する欠点がなく、それゆえ、本発明の多孔質カーボン電極基材は固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池用に適している。具体的には、本発明の電極基材は、厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する。
【0014】
本発明の多孔質カーボン電極基材は以下の工程を含む方法で作成することができる。
(a)酸化した織物または予め炭化した酸化した織物を提供する工程、
(b)織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、
(c)樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、および
(d)加熱圧縮した織物を炭化する工程。
【0015】
本発明に適する酸化した織物は典型的に40以上の限界酸素指数を有する。酸化した織物は、限定されないが、1つ以上の次の材料、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維、アスファルト繊維、フェノール樹脂繊維およびセルロース繊維からなる織物の熱処理のようなプロセスによって作成することができる。例えば、適する酸化した織物はPAN織物を空気中で200℃から300℃の温度で加熱することにより得ることができる。好ましくは、酸化した織物はPAN繊維および/またはフェノール樹脂繊維から作成され、最も好ましくは、酸化したPAN繊維から作成されたPAN織物である。
【0016】
本発明に適する予め炭化した酸化した織物は酸化した織物を予め炭化することにより作成できるが、それは典型的に55重量%以上のカーボン含有量および1.5g/cm3を超える密度を有する。例えば、予め炭化した酸化した織物が、少なくとも40の限界酸素指数を有する酸化した織物を600から3000℃の温度で真空中または窒素、ヘリウム、アルゴン、およびそれらの組合せからなる群から選択される不活性ガスの保護の下、予め炭化することにより作成することができる。好ましくは、予めの炭化は、繊維間の気孔率を減少させ、得られた予め炭化した酸化した織物から作成される電極基材の電気伝道率を増加させるために、酸化した織物が自然に収縮するよう張力のない条件で実施される。
【0017】
燃料電池の小型化の要求に合うように、本発明で用いる織物は好ましくは適当な厚みの電極基材を提供できるように厚さが0.1から1mmの範囲である。織物の厚みが0.1mm未満の場合、厚み方向の強度が不十分になるかも知れない。一方、厚みが1mmを越える場合、組み立てられた電池セルスタックの全体の厚みが厚くなりすぎ実際の要求に合わなくなる。
【0018】
含浸工程において、酸化したまたは予め炭化した酸化した織物を樹脂材料で含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する。樹脂材料は織物の繊維間に橋を形成し、最終製品の曲げ強度を増加さすように繊維間の結合を高める。樹脂材料は限定されないが、フェノール樹脂、フラン樹脂あるいはそれらの組合せのような熱硬化性樹脂、または限定されないがポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂または、それらの組合せのような熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂材料を溶媒に溶解し、樹脂溶液を用いて含浸工程を実施するのが適切である。例えばフェノール樹脂を使用する場合、メタノール溶液はフェノール樹脂をメタノールに溶解して作成することができ、メタノール溶液は酸化した織物または予め炭化した酸化した織物を含浸するために用いられる。
【0019】
酸化した織物または予め炭化した酸化した織物中の樹脂材料の含有量は好ましくは、0.001から50重量%、より好ましくは0.01から40重量%、最も好ましくは0.02から30重量%である。含有量は、織物が以後明細書で説明する加熱圧縮処理に供された後に酸化した織物または予め炭化した酸化した織物中の樹脂材料の濃度について用いる。上述したように、炭化後の樹脂材料の電気伝導率はカーボン繊維よりも低い。それゆえ、作成される多孔質カーボン電極基材の形状維持および所望の電気伝導率をもつ電極基材を提供する観点から、樹脂材料の含有量は0.2から30重量%が好ましい。
【0020】
これ以降説明する炭化処理において、(予め炭化した)酸化した織物中の繊維はカーボン繊維に変換する一方で、樹脂の大半は分解され揮発して、製作される多孔質カーボン電極基材の液体および気体の透過性を増加するように空洞が形成される。
【0021】
任意選択的に、樹脂材料は、最終製品の電気伝導率を高めるために1つ以上の導電性物質を含有することができる。伝導性物質の例として限定されないが、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛粉末、炭素質ミルドファイバ、等方性黒鉛粉末、気相成長カーボンファイバ、ナノカーボンチューブ、メソフェーズピッチ粉末などが挙げられる。樹脂材料中の伝導性物質の濃度は樹脂材料の全量に基づいて、好ましくは0.1から50重量%、より好ましくは0.1から20重量%である。伝導性物質の濃度が0.1重量%未満の場合、伝導率改良効果が僅かになりがちの点で不利であり、濃度が50重量%を超える場合、伝導率改良効果が飽和しがちでコスト増になる点で不利である。
【0022】
加熱圧縮工程において、織物に担持された樹脂が、織物の繊維間の結合を増加するように硬化し織物に十分浸透する。加熱圧縮工程を70℃から320℃の温度、1から200kg/cm2、0.5分から12時間でバッチ的に実施するのが好ましい。好ましくは、加熱圧縮工程は10から200kg/cm2で実施される。10kg/cm2以上の圧縮圧力を使用することにより、樹脂を織物の繊維間の結合を高めるために織物に浸透できるように、熱硬化しながら樹脂の十分な流動が達成できる。また、200kg/cm2以下での圧縮によって、樹脂硬化の時間に樹脂から生成した蒸気の外部への開放が容易になる。
【0023】
本発明において、炭化工程は好ましくは1050℃から3000℃の温度で実施される。炭化の間、樹脂および繊維の化学構造が変化し、繊維はカーボン繊維に変換し、樹脂はカーボン構造を有する材料を形成するので電気的に伝導性である。それにもかかわらず、上記で説明したように樹脂の炭化による材料の電気伝導率は酸化したまたは予め炭化した酸化した繊維からのカーボン繊維よりも低い。一般的に、より高い炭化温度はよりよい電気伝導率をもつ最終製品を提供する。
【0024】
炭化の間に繊維が灰になるのを避けるため、炭化処理は真空中または不活性ガスの保護のもと実施するのが好ましい。例えば、炭化処理は1つ以上のガス、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンからなる不活性ガス中で実施することができる。任意選択的に、炭化は上述の予め炭化処理において張力のない条件で実施することができる。
【0025】
上記から判断すると、本発明の多孔質カーボン電極基材は以下の工程を含む方法でも作成することができる。
(a) 酸化した織物を提供する工程、
(b) 酸化した織物を予め炭素化する工程、
(c) 予め炭素化した酸化した織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、
(d) 樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、
(e) 加熱圧縮した織物を炭化する工程。
酸化した織物の選択、予めの炭化工程、含浸工程、加熱圧縮工程および炭化工程の作業の詳細は上に説明したのと同じである。
【0026】
以下の実施例は本発明をさらに明らかにするために提供される。実施例において、物理的値などは以下のように測定される。
【0027】
A 密度
【0028】
作成された電極基材の密度は真密度計(Accupyc 1330 Pycnometwr;Micromeritics Instrument 社製)によって測定された。サンプルを乾燥し秤量のため計器の容器に入れ、それから高圧のヘリウムを平衡状態に達するまで計器の中に導入した。サンプルの平均密度を得るために、サンプルの体積は理想気体の状態方程式(PV=nRT)を用いて計算した。
【0029】
B 曲げ強度、σb
【0030】
作成された電極基材の曲げ強度はASTM−D790に従って、曲げ強度試験装置CY-6040A8(台湾、Chun Yen Testing Machines 社製)を用いて測定した。支持点間距離(L)は30mmに設定し、荷重を0.5mm/分の歪速度で適用した。圧縮楔の破壊荷重kgf(Pmax)を荷重の適用開始からサンプルが破壊する瞬間まで測定した。曲げ強度Mpa(σb)は以下の式によって計算した。
【0031】
【数1】

【0032】
式中、bはサンプルの幅(mm)、tはサンプルの高さ(mm)
【0033】
曲げ弾性率、Eb
【0034】
作成された電極基材の曲げ弾性率は以下の式によって計算した。
【0035】
【数2】

【0036】
式中、P/δは、横軸が応力で縦軸が歪であるS-S曲線の初期勾配である。
【0037】
たわみ、δ
【0038】
測定はASTM−D790に準拠して、曲げ強度試験装置CY-6040A8(台湾、Chun Yen Testing Machines 社製)を用いて実施した。支持点間距離(L)は30mmに設定し、荷重を0.5mm/分の歪速度で適用した。たわみを測定するため、圧縮楔の移動距離を荷重の適用開始からサンプルが破壊する瞬間まで測定した。
【0039】
表面抵抗率、ρs
【0040】
電極基材の表面抵抗率(ρs)は、電圧と表面単位幅当たりの表面に沿う電流との比として定義された(ρs=V/I×RCF、Vは電圧、IはアンペアおよびRCFは補正因子)。作成された電極基材の表面抵抗率値はJIS K7194に準拠して、表面抵抗率計(Loresta GP Model MCP-T600; 三菱化学(株)製)を用いて測定した。作成された電極基材を適当な寸法に切断し、表面抵抗率値は表面抵抗率計を用いて直接測定した。
【0041】
気体透過率
【0042】
測定はASTM D737に準拠して、透気度試験機(TESTEST FX3300; TEXTEST AG CO.製)を用いて測定し、試験サンプルの面積は38cm2であった。
【0043】
気孔率(%)
【0044】
材料に関し、2つのタイプの気孔率、即ち、開放気孔率と閉気孔率がある。本明細書で気孔率と称したのは開放気孔率であった。作成された電極基材の開放気孔率はASTM D−570に従って測定した。サンプルを50±3℃に設定された炉で24時間乾燥し、それから乾燥容器内で冷却した。サンプルの重量(W1)を冷却してすぐに測定した。その後、サンプルを脱イオン水中に24時入れ、表面の水を拭き取って後、秤量(W2)した。
気孔率(%)={(W2−W1)/W1}×100%
【実施例1】
【0045】
平織で、厚さ0.73mm、タテ21本/吋、ヨコ21本/吋、310g/m2である酸化した織物(台湾、Challenge Carbon Technology製)をフェノール樹脂(フェノール樹脂;PF-650; 台湾、Chang Chun Plastics社製)の15%メタノール溶液に浸した。樹脂材料を担持した織物を70℃で15分乾燥し、それから170℃の温度、10kg/cm2で15分加熱圧縮して樹脂を硬化させ、12.24重量%の樹脂含有量の織物を準備した。それから、その織物を窒素ガス雰囲気中、1300℃で加熱して織物を炭化して、厚さ0.63mmの多孔質カーボン電極基材を作成した。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、多孔質カーボン電極基材は気体透過率、曲げ強度および電気伝度率の良好な性質の組合せを有した。
【実施例2】
【0046】
加熱圧縮後の織物の樹脂含有量11.1重量%および炭化処理を2500℃の温度で実施したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、良好な気体透過率および気孔率に加えて、より高い炭化温度を用いて作成した電極基材はより高い電気伝導率を有した。
【実施例3】
【0047】
メタノール溶液がフェノール樹脂を30重量%含有し、加熱圧縮処理後の織物の樹脂含有量が26.0重量%であったことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、樹脂含有量の増加は作成した多孔質カーボン電極基材の曲げ強度に有利である。作成した電極基材は気体透過率および電気伝導率も適切であった。
【実施例4】
【0048】
メタノール溶液が15重量%のカーボンブラック(カーボンブラック N-660; Korea Steel Chemical 社製)も含有していたことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂およびカーボンブラックの全含有量は11.9重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、カーボンブラックの添加は、良好な気体透過率および気孔率のほかに多孔質カーボン電極基材のよりよい曲げ強度および曲げ弾性率の結果となった。
【実施例5】
【0049】
メタノール溶液が15重量%の(MCMB)(メソフェーズピッチ粉末 GCSMB; 台湾、CHINA STEEL CHEMICAL社製)も含有していたことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂およびMCMBの全含有量は10.9重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、MCMBの添加は、適当な気孔率および電気伝導率のほかに多孔質カーボン電極基材の良好なたわみ、曲げ強度および曲げ弾性率の結果となった。
【実施例6】
【0050】
厚さ0.84mm、タテ25本/吋、ヨコ21本/吋、475g/m2である酸化した織物を用いたことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂含有量は12.0重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は良好な曲げ強度、電気伝度率、気体透過率および気孔率を有した。
【実施例7】
【0051】
メタノール溶液中に含有する樹脂が熱可塑性樹脂(BMI-H/DABPA ポリイミド樹脂 5952; 米国、Ciba-Geigy Chemical 社製)であったことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂含有量は32.8重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は良好な曲げ強度、電気伝度率、気体透過率および気孔率を有した。
【実施例8】
【0052】
メタノール溶液に浸す前に、酸化した織物を窒素ガス雰囲気中1000℃で予め炭化して、タテ24本/吋、ヨコ24本/吋、275g/m2、1.9085g/cm3およびカーボン含有量が95.43重量%である予め炭化した酸化した織物を準備したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂含有量は13.2重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は良好な曲げ強度、曲げ弾性率、たわみ、電気伝率および気体透過率を有した。
【実施例9】
【0053】
メタノール溶液に浸す前に、酸化した織物を窒素ガス雰囲気中1300℃で予め炭化して、タテ25本/吋、ヨコ24本/吋、235g/m2、厚み0.54mm、密度1.5456g/cm3およびカーボン含有量が95.57重量%である予め炭化した酸化した織物を準備したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂含有量は12.9重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は良好な曲げ強度、曲げ弾性率、たわみ、電気伝度率および気体透過率を有した。
【実施例10】
【0054】
メタノール溶液(フェノール樹脂5重量%を含有)に浸す前に、酸化した織物を窒素ガス雰囲気中1000℃で予め炭化して、タテ24本/吋、ヨコ24本/吋、240g/m2、密度1.9085g/cm3およびカーボン含有量が95.43重量%である予め炭化した酸化した織物を準備したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮後、織物の樹脂含有量は6.8重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は良好な曲げ強度、曲げ弾性率、たわみ、電気伝度率および気体透過率を有した。
【実施例11】
【0055】
メタノール溶液に浸す前に、酸化した織物を炉中で以下のように予め炭化したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。:織物をまず窒素ガス雰囲気下で、炉の温度を室温から2℃/分の速度で1000℃まで上昇させそれから10℃/分の速度で室温にもどすように加熱し、それからアルゴン雰囲気下で、炉の温度を室温から10℃/分の速度で2500℃まで上昇させそれから10℃/分の速度で室温にもどすように加熱した。このようにして作成された予め炭化した酸化した織物は重さ230g/m2、タテ24本/吋、ヨコ24本/吋、密度1.7702g/cm3およびカーボン含有量が96.60重量%を有した。さらに、用いたメタノール溶液はフェノール樹脂5重量%を含有し、加熱圧縮処理後、織物の樹脂含有量は7.3重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材は非常に柔軟で、曲げ強度、曲げ弾性率およびたわみが記録できなかった。作成した基材の電気伝度率および気体透過率も良好であった。
【0056】
[比較例1]
炭化処理を窒素ガス雰囲気中600℃の温度で実施したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮処理後、織物の樹脂含有量は12.9重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材の気体透過率および電気伝導率は良くなかった。
【0057】
[比較例2]
炭化処理を窒素ガス雰囲気中1000℃の温度で実施したことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。加熱圧縮処理後、織物の樹脂含有量は11.5重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材の電気伝導率はやはり良くなかった。
【0058】
[比較例3]
酸化した繊維フェルトを電極基材の製作に用いたことを除き、実施例1と同じようにして電極基材を得た。ここで繊維フェルトは直径13から15μm長さ65mmの酸化したポリアクリロニトリル(PAN)繊維(限界酸素指数50から60有する酸化したPAN繊維、日本、東邦レーヨン(株)社製)を穿刺して作成した。加熱圧縮処理後、フェルトの樹脂含有量は3.2重量%であった。このようにして作成した基材の物理的性質が試験されて記録された。表1に示すように、作成した多孔質カーボン電極基材の気体透過率は良くなかった。
【0059】
実施例および比較例の電極基材の物理的性質
【0060】
【表1】

【0061】
注a:表面抵抗率(Ω/sq、Ω/□)は試験したサンプルの面積に依存しない。
b:実施例11で作成した電極基材の曲げ強度、曲げ弾性率およびたわみは、試験手順の間に柔らすぎて破壊されず記録できなかった。
【0062】
上記の例で説明したように、本発明の方法を用いて作成した電極基材は気体透過率、気孔率、曲げ強度および表面抵抗率の適切な組合せを有し、カーボン短繊維から作成される電極基材のもつ不均一な電気伝導率の欠点がない。
【0063】
上記の開示は詳細な技術内容およびその創見に富んだ特徴に関連している。当業者は記載した本発明の開示および示唆に基づきその特質から逸脱せず、さまざまな修正および置き換えを進めるかもしれない。それでもなお、そのような修正および置き換えは上記明細書に完全には開示できないけれども、それらは添付する以下の特許請求の範囲で実質的に網羅されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.1から1.0mm、曲げ強度が0.7MPa以上、気孔率が50%以上および表面抵抗率が1.0Ω/sq以下の性質の組合せを有する織物構造の多孔質カーボン電極基材。
【請求項2】
前記基材が燃料電池用である請求項1に記載の多孔質カーボン電極基材。
【請求項3】
燃料電池が固体高分子燃料電池または直接メタノール燃料電池である請求項2に記載の多孔質カーボン電極基材。
【請求項4】
請求項1に記載の多孔質カーボン電極基材を作成する方法であって、
(a) 酸化した織物または予め炭化した酸化した織物を提供する工程、
(b) 織物に樹脂材料を含浸して樹脂材料を担持した織物を提供する工程、
(c) 樹脂材料を担持した織物を加熱圧縮する工程、および
(d) 加熱圧縮した織物を炭化する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
工程(a)の織物の厚みが0.1から1.0mmである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の酸化した織物が40以上の限界酸素指数を有する請求項4に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の織物が1つ以上の次の材料、ポリアクリロニトリル繊維、アスファルト繊維、フェノール樹脂繊維およびセルロース繊維からなる織物の熱処理によって作成される酸化した織物である請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の織物が、酸化した織物を600から3000℃の温度で処理して得られる予め炭化した酸化した織物であり、酸化した織物が40以上の限界酸素指数を有する請求項4に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の織物が、少なくとも55重量%のカーボン含有量および1.5g/cm3を超える密度を有する予め炭化した酸化した織物である請求項4に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の織物が酸化した織物であり、工程(b)を実行する前に酸化した織物を予め炭化する工程をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)の樹脂材料がフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミドおよびポリアミドからなる群から選択される樹脂である請求項4に記載の方法。
【請求項12】
樹脂がフェノール樹脂である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
樹脂材料がさらに、樹脂材料の全重量に基づいて0.1から50重量%の電気伝導性物質を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
樹脂材料が0.1から20重量%の電気伝導性物質を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
電気伝導性物質がカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛粉末、炭素質ミルドファイバ、等方性黒鉛粉末、気相成長カーボンファイバ、ナノカーボンチューブ、メソフェーズピッチ粉末およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)で得られる織物が0.01から40重量%の樹脂含有量を有する請求項4に記載の方法。
【請求項17】
加熱圧縮工程(c)が70から320℃の温度および1から200k/cm2の圧力で実施される請求項4に記載の方法。
【請求項18】
工程(d)の炭化処理が1050℃から3000℃の温度で実施される請求項4に記載の方法。
【請求項19】
工程(d)の炭化処理が真空中または不活性雰囲気下で実施される請求項4に記載の方法。
【請求項20】
不活性雰囲気が窒素、ヘリウム、アルゴンおよびそれらの組合せからなる群から選択されるガスからなる請求項19に記載の方法。

【公開番号】特開2007−184224(P2007−184224A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159897(P2006−159897)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(504117165)私立逢甲大學 (5)
【Fターム(参考)】