多孔質体の流動抵抗値算出方法及びその装置
【課題】多孔質体における流体の流動挙動を測定できる装置を開発し,流動挙動を高精度かつ短時間で予測できる多孔質体のモデル化方法を確立し,流動抵抗値を算出する。
【解決手段】多孔質体を挟み込んだ金型を減圧し,金型外部から多孔質体に流体を注入して,透明素材で形成された金型を用いた可視化測定,または,金型表面に設置した圧力センサによる流体到達の感知によって,多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)を測定する装置を提供する。解析モデルとして,微細構造を有する多孔質体を複数の円管からなるポーラス体としてモデル化し,前記測定装置を用いて求めた多孔質体内の流体の流動挙動の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を決定する。
【解決手段】多孔質体を挟み込んだ金型を減圧し,金型外部から多孔質体に流体を注入して,透明素材で形成された金型を用いた可視化測定,または,金型表面に設置した圧力センサによる流体到達の感知によって,多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)を測定する装置を提供する。解析モデルとして,微細構造を有する多孔質体を複数の円管からなるポーラス体としてモデル化し,前記測定装置を用いて求めた多孔質体内の流体の流動挙動の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マイカやガラス繊維などの固体部材と部材の隙間からなる多孔質体の樹脂含浸成形加工技術に係り,特に多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動の測定装置,前記測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値算出方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動の測定装置,前記測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値の算出手法に関する従来技術として、特許文献1乃至3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1は多孔質体の液体展開速度測定装置と測定方法の発明であり,液溜めから多孔質体へ測定液が流動する状況を撮像し,画像処理によって液体展開速度を測定する方法および装置について記載されている。
【0004】
特許文献2はRTM(Resin Transfer Molding)成形法における樹脂流動の制御方法および装置に関する発明であり,金型内表面に多数配置された流動センサによって流動先端を検出し,予め決定した最適流動パターンに近づくように注入装置の圧力,温度を制御する方法および装置について記載されている。
【0005】
特許文献3は液体の含浸状況のモニタリング方法およびFRP構造体の製造方法の発明であり,基材の両面に電極を設け,電気回路の電気的特性を測定することにより,液体の含浸位置をモニタリングする方法および装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−52931号公報
【特許文献2】特開2003−39479号公報
【特許文献3】特開2007−47067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発電機や電動機のステーターコイル絶縁層,風力発電機のブレードなどには,多孔質体に樹脂を含浸成形させる方法が用いられている。この含浸成形品は軽量,高強度の特徴があり,飛行機の筐体などにも適用を拡大している。
【0008】
多孔質体における樹脂含浸成形における問題点は,マイカやガラス繊維などの固体部材と部材の隙間からなり,微細構造を有する多孔質体における樹脂の流動挙動の予測方法が無いため,新規形状の製品の樹脂含浸成形の試作期間が長く,試作コストが高くなることである。
【0009】
ここで,多孔質体の流動挙動を流体解析で予測する場合には,微細構造の多孔質体をそのままモデル化すると計算時間が長くなる問題が生じる。
【0010】
このため,流動挙動の予測が行える多孔質体における流体の流動挙動測定装置の開発が必要となる。更に,前記流動挙動の測定値を一定の誤差で再現できる流体解析における多孔質体のモデル化方法の確立および流動抵抗値の算出により,含浸成形挙動を高精度かつ短時間で予測できる含浸成形シミュレーション技術の構築が必要である。
【0011】
前記した従来技術は、いずれも,樹脂注入方向は多孔質体の平面方向であり,多孔質体の平面方向と厚さ方向の流動挙動を同時測定する方法は記載されていない。また,得られた測定データから多孔質体の流動抵抗値を算出する手法も記載されていない。
【0012】
本発明の目的は、多孔質体における流体の流動挙動の予測を可能とする含浸成形シミュレーションにより多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動を測定し,測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値の算出手法を用いた多孔質体の流動抵抗値算出方法及びその装置を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する装置を,試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、計測試料を内部に設置する容器手段と、容器手段の内部を真空に排気する排気手段と、容器手段の内部に設置された計測試料の1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、容器手段の内部に設置された計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、排気手段で排気された容器手段の内部で流体供給手段により計測試料に供給された流体が試験体を流れる状態を撮像手段で撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求める処理手段とを備えて構成した。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する装置を,試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、計測試料の内部を真空に排気する排気手段と、計測試料の1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、排気手段で排気された計測試料に内部において流体供給手段により供給された流体が試験体を流れる状態を撮像手段で撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求める処理手段とを備えて構成した。
【0015】
そして、本発明における処理手段は、試験体の流動抵抗値を求めることを、多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,撮像して得た画像から多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、測定した値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を試験体の流動抵抗値として求めるようにした。
【0016】
更に、上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する方法において,試験体の周囲を囲むようにして配置されて一部に開口を有する部材とこの部材に周囲を囲まれた試験体とを光学的に透明な1対の板材で上下から密着して挟み込んで形成した計測試料の内部を真空に排気し、真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を供給し、流体が供給された試験体を流体が流れる状態を撮像し、撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求めるようにした。
【0017】
そして、試験体の流動抵抗値を求めることを、多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,撮像して得た画像から多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、測定した値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を試験体の流動抵抗値として求めるようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多孔質体内の流体の流動挙動の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を用いた信頼性の高い含浸成形シミュレーションが可能になり,多孔質体における流体の流動挙動の予測が可能となり試作期間短縮,試作コスト低減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図2】第1の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施例における流動面積算出の操作画面の正面図である。
【図4】第1の実施例における流動面積算出のフローチャートである。
【図5】第1の実施例における流動抵抗値算出の操作画面の正面図である。
【図6】第1の実施例における流動抵抗値算出のフローチャートである。
【図7】第1の実施例における流動抵抗値算出の出力画面の正面図である。
【図8】第1の実施例における流動面積の解析値と実測値の比較結果を示すグラフである。
【図9】第2の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図10】第2の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図12】第3の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では,減圧容器内に多孔質体を挟み込んだ金型に減圧容器外から流体を注入したり,減圧機構を有し,多孔質体を挟み込んだ金型内に流体を注入したりすることにより,多孔質体における流体の流動挙動を測定する装置およびその方法に関するものである。
【0021】
本発明では,透明素材で形成された金型を用いた可視化測定,または,金型表面に設置した圧力センサによる流体到達の感知によって,多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)を測定して得たデータと、微細構造を有する多孔質体を複数の円管からなるポーラス体としてモデル化した含浸成形シミュレーションの解析モデルとを用いて,測定データから求めた多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を決定するようにした。
【0022】
なお,多孔質体の構造によっては,多孔質体における樹脂の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向では流動挙動が異なる場合がある。この場合には、測定装置において貫層方向と,沿層方向における流体の流動挙動を同時に測定し,含浸成形シミュレーションにおいて,前記流動抵抗値を流体の粘度と断面固有の抵抗値の関数で表し,各方向に対して断面固有の流動抵抗値を独立に設定することもできるようにした。
【0023】
以下,添付の図面を参照しながら,本発明に係る実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
まず,可視化による沿層および貫層方向の流動挙動の測定金型100に付いて図1を用いて説明する。
【0025】
測定金型100は、上金型2と、下金型5、多孔質体3及びスペーサ4で構成される。
【0026】
上金型2は流体注入孔1を有し,可視光が透過する透明素材で形成されている。下金型5も透明素材で形成されており、上金型2と下金型5との間に多孔質体3を挟みこみ,上金型2と下金型5をクランプすることで多孔質体3を上金型2と下金型5とに密着させて固定する。多孔質体3にはマイカ,ガラス繊維などを固体部材とし,部材間に微細隙間を有する構造体を用いる。クランプにはネジ止め等を用いる。
【0027】
なお,上金型2と下金型5の透明素材として,アクリル,ポリカーボネートなどの有機材料,ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0028】
多孔質体3の厚さ調整が必要な場合には上金型2と下金型5の間に挟むスペーサ4の厚さを調整することで多孔質体3の厚さ調整を行う。これにより,多孔質体の圧縮率を任意に調節できる。スペーサ4には減圧用の開口部6を設けてある。真空ポンプ(図2参照)を用いてスペーサ4と上金型2と下金型5とで囲まれた空間を開口部6から排気することにより,多孔質体3の内部を減圧する。
【0029】
次に,多孔質体の沿層および貫層方向の流動挙動測定装置200について図2を用いて説明する。
【0030】
流動挙動測定装置200は、図1で説明した流動挙動の測定金型100を内部に配置する減圧容器10と真空ポンプ11、上下1対のビデオカメラ12-1と12-2、流体注入用バルブ13、減圧バルブ14、減圧容器10の外部から注入液体9を減圧容器10の内部に配置された測定金型100の内部に流体注入口1から流入させるためのチューブ15、一対の支持台16、一対のブロック18、制御部210、及び処理ユニット220を備えて構成される。
【0031】
減圧容器10と真空ポンプ11とは、真空配管17で接続されており、真空配管17の中間に減圧バルブ14が取付けられていて減圧容器10と真空ポンプ11との間の排気経路の開閉を行う。
【0032】
流体注入用バルブ13は制御部210で制御されて、チューブ15の内部に供給した注入液体9が減圧容器10の内部に配置された測定金型100の内部に流入する量を制御する。
【0033】
減圧容器10の上面10-1と下面10-2とは可視光を透過する材料で形成されている。減圧容器10は一対のブロック18上に載置され、減圧容器10の上面10-1を介して減圧容器10の上方からビデオカメラ12-1で測定金型100に収納されている多孔質体3の上面が撮像される。また、減圧容器10の下面10-2を介して減圧容器10の下方からビデオカメラ12-2で測定金型100に収納されている多孔質体3の下面が撮像される。
【0034】
処理ユニット220は、記憶部221、画像処理部222、演算部223及び表示画面225を備えた入出力部224を備えている。
次に、流動挙動測定装置200の操作方法を説明する。
まず、ビデオカメラ12-1と12−2とを、それぞれ多孔質体3の全領域が視野内に入るように,減圧容器10の上方及び下方に設置する。多孔質体3が厚く高密度で,沿層方向と貫層方向の流動に大きな差がある場合は,ビデオカメラ12-1と12−2とを用いて撮像する。2台のビデオカメラ12-1と12−2との同期は制御部210で制御する。
【0035】
次に、流動挙動の測定用の金型100を減圧容器10内の支持台16上に設置した状態で金型100の流体注入孔1と接続するチューブ15の途中に設置した流体注入用バルブ13を閉める。この状態で減圧容器10の外からチューブ15内に注入流体9を注ぎ,チューブ15内の流体注入用バルブ13で停留させる。
【0036】
次に、制御部210から指示を出して減圧バルブ14を開き,真空ポンプ11を始動させて減圧容器10の内部を真空排気する。減圧容器10の内部の圧力値を減圧容器10に取付けた真空計8で読み取り,制御部210で真空計8の出力をモニタし,設定値に達したら,減圧バルブ15を閉じ,真空ポンプ11のスイッチを切る。真空計8の設定値は50kPa以下が望ましい。このとき、測定金型100の内部は開口部6から排気されて、減圧容器10の内部とほぼ同じ圧力になっている。この状態でビデオカメラ12-1及び12−2を作動させて多孔質体3の録画を開始する。
【0037】
次に、制御部210から指示を出して流体注入バルブ13を開け,チューブ15から注入流体9を流体注入口1を介して測定金型100内に注入する。この注入流体9を測定金型100の内部に注入している状態をビデオカメラ12-1及び12−2で撮影した動画データおよび録画開始から、流体注入バルブ13を開け、注入流体9の測定金型100の内部への注入が完了するまでの時間は制御部210を介して記憶部221に保存される。
【0038】
ここで,注入流体9は,図示していない加圧機構をチューブ15に取り付けることにより、加圧された状態で測定金型100の内部に注入させることもできる。また,注入流体9は着色水,エポキシ樹脂などの有機材料を用いることができる。
【0039】
以上では,2ヶ所からの動画撮影する例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,1つ以上の動画または静止画撮影で記録することでも実現可能である。
【0040】
次にビデオカメラ12-1,12-2で撮影した動画データから各時間の流動面積を計算する手法の一例を図4を用いて説明する。
【0041】
流動面積の計算は図3で示す操作構成で図4のフローを備えたソフトウェアが画像処理部222で実行されることにより,機能する。
【0042】
処理ユニット220の画像処理部222は図4で示すフローチャートに従い,計算を実行する。結果を記憶部221に記憶させた後,入出力部224の表示画面225に表示する。
【0043】
図示していないが,入出力部224には,当然キーボードやマウス等の入力デバイスを備えている。
【0044】
次に,図4のフローチャートに沿って動画データから各時間の流動面積を計算する。
まず,準備段階として、記録された動画データを呼び出すように,オペレータに催促する表示301を表示画面225に表示し,記憶部221からこれらのデータを読み出す。さらに,ビデオカメラ12-1,12-2の録画開始から流体注入バルブ13を開けるまでの測定時間と静止画への分割時間を入力するように,オペレータに催促する表示302を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付け,画像処理部222で動画から指定時間毎の静止画データを作成する。作成した静止画データは,記憶部221に保存する。
【0045】
これで準備段階を終了し、次に図4に示したフローに従ってデータ処理を行う。なお、ここでは説明を簡単にするために、多孔質体3における流体の流動挙動が貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)とで同じであると仮定して説明する。
【0046】
まず記憶部221に保存されている注入前の静止画データを1枚選び,ソフトウェア上に読み込むように,オペレータに催促する表示303を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S101)。
【0047】
次に,ステップ101で読み込んだ静止画の1画素の寸法をソフトウェア上で入力するように,オペレータに催促する表示304を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S102)。
【0048】
更に,記憶部221に保存されている注入後の静止画データを1枚選び,ソフトウェア上に読み込むように,オペレータに催促する表示305を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S103)。
【0049】
次に,S101のステップで読み込んだ注入前の静止画データとステップ103で読み込んだ注入後の静止画データの輝度値の差分画像データを作成し,表示画面225上で差分画像表示306を指示することにより作成した差分画像を表示画面225の画像表示領域320に出力する(S104)。差分画像を用いることで,注入前と変化のない流体以外の領域では,輝度値はゼロになるため,輝度値がゼロより大きくなる流体領域を明確に表すことができる。
【0050】
次に,S104のステップで作成した差分画像データに対し,輝度値の閾値を入力するように,オペレータに催促する表示307を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S105)。画像処理部222において入力した閾値により,流動領域のみを抽出した画像を作成し,表示画面225上で流動領域表示308を指示することにより表示画面225の画像表示領域320に出力する。
【0051】
次に,S105のステップで作成した流動領域のみの画像の画素数をカウントするように,オペレータに催促する表示309を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S106)。画像処理部222においてステップ102で計算した1画素の寸法を代入し,流動面積を計算して,記憶部221に保存する。
【0052】
次に,未計算の静止画データ数のカウントするように,オペレータに催促する表示310を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S107)。未計算の静止画データ数がゼロの場合は計算を終了する(S108)。一方,未計算の静止画データ数がゼロでない場合は,ステップ103に戻り,次の注入後の静止画データを選び,ステップ104〜107の操作を繰り返す。
以上では,流動面積の計算方法の例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,流体到達時間,流体流動距離も求めることができる。
【0053】
上記したフローの説明では、表示画面225上で対話形式で処理を進める処理であったが、本発明はこれに限るものではなく、表示画面225上からの入力を行わずに一連の処理を自動で行うことも可能である。
【0054】
図4に示した処理フローを実行することにより得られた流動面積の時間,または流体到達時間,または流体流動距離を用いて,シミュレーションから多孔質体の流動抵抗値を求める方法を説明する。
【0055】
流動抵抗値の計算は図5で示す操作構成で,図6のフローを備えたソフトウェアが実行されることにより,機能する。
【0056】
モデル形状作成ステップS201では,解析モデル構築をオペレータに催促する表示501を表示画面225に表示し,入出力部224から入力されて特定された解析対象モデル,つまり,流動挙動の測定装置の前記金型と前記多孔質体の形状データを演算部223においてソフトウェア上で構築する。
【0057】
次に,3次元ソリッド要素作成のステップS202では,有限要素形状作成をオペレータに催促する表示502を表示画面225に表示し,入出力部224から入力された指示に基づいて演算部223においてS201のステップで作成したモデル形状を複数の特定空間(3次元ソリッドの有限要素)に分解し,各有限要素の形状データを作成する。
【0058】
次に,流体の物性値入力ステップS203では,注入する流体の物性値である密度,粘度を入力するように,オペレータに催促する表示503を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。流体として樹脂を用いる場合には時間の関数である粘度式(数1)を入力する。ここで,η;粘度,η0;初期粘度,t;時間,T;温度,A,tg;材料固有の定数とする。
【0059】
【数1】
【0060】
次に,境界条件入力ステップS204において,オペレータに対して,3次元ソリッド要素内に流体が流入する際の流体圧力,金型内圧力,金型温度などの境界条件を入力するように,オペレータに催促する表示504を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0061】
次に,設定値入力ステップS205において,図4のS101からS108までのステップで保存した流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離の測定値と解析値との誤差の設定値を入力するように,オペレータに催促する表示505を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0062】
次に,多孔質体の流動抵抗値を規定する断面固有の抵抗値入力ステップS206において,オペレータに対して,多孔質体の断面固有の抵抗値を入力するように,オペレータに催促する表示506を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0063】
ステップS207で,流動抵抗値は粘度と断面固有の抵抗値の関数として, (数2)で算出する。ここで,K;流動抵抗値,η;粘度,t;時間,T;温度,β;断面固有の抵抗値とする。
【0064】
【数2】
【0065】
βは互いに直交する3方向に対して独立に設定可能であり,この値を規定することで各時間および各温度における各方向の流動抵抗値を規定できる。
【0066】
また,流動抵抗値から規定される単位体積当りの流動抵抗力は流動方向と逆方向に作用し, (数3)で表すことができる。ここで,ρ;流体密度,K;流動抵抗値,t;時間,T;温度,u;流速とする。
【0067】
【数3】
【0068】
ステップS208として,流動解析の開始をオペレータに催促する表示507を表示画面225に表示し,演算部223で指示を受け付け、この指示に基づいて,記憶部221に格納された連続の式 (数4)および運動方程式 (数5)を呼び出し,これまで入力を受け付けた,流体の密度,粘度,流体圧力,金型内圧力,金型温度,断面固有の抵抗値を代入し,注入流体が流動する際の,速度,圧力,密度,粘度,流動体積,流動面積,流動距離,任意位置の流体到達時間を計算する。ここで,u;流速,ρ;流体密度,P;圧力,η;粘度,G;重力加速度,β;断面固有の抵抗値,t;時間,T;温度とする。
【0069】
【数4】
【0070】
【数5】
【0071】
以上では, (数4)および(数5)を用いた計算を行ったが,エネルギ方程式を用いて熱計算も同時に行うことができる。
【0072】
ステップS209において,オペレータに対して,図4のS101からS108までのステップで保存した流動挙動の測定装置から画像処理を用いて計算した時間毎の流動面積の測定値を入力するように,オペレータに催促する表示508を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0073】
ステップS210において,収束判定をオペレータに催促する表示509を表示画面225に表示し,入出力部224から指示を受け付け、S208のステップで保存した流動解析から求めた各時間の流動面積,または任意の位置の流体到達時間,または時間毎の流体流動距離と,S209のステップで入力した流動面積,また任意の位置の流体到達時間,または時間毎の流体流動距離の測定値との差が設定値以下となる場合は,計算を終了し(S211),求めた流動抵抗値を記憶部221に保存する。一方,設定値より大きくなる場合はステップS206に戻り,断面固有の抵抗値を再設定し,設定値以下となるまで繰り返し計算を行う。
【0074】
なお,S203のステップで入力した粘度式(数1)として,樹脂反応率,またはせん断速度を含む関数も用いることができ,一定粘度の計算もできるものとする。
【0075】
なお,S210のステップで算出した流動抵抗値Kは粘度ηと断面固有の係数βの積としたが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,少なくとも粘度ηと断面固有の係数βを含む任意の関数とし,せん断速度なども含むことができる。
【0076】
前記の流動抵抗値算出方法により決定した断面固有の抵抗値および流動抵抗値は図7の表示701,702に示すように計算結果として出力される。
【0077】
計算が終了すると結果出力をオペレータに催促する表示510を表示画面225に表示し,入出力部224から指示を受け付け、表示画面225の画像表示部520に計算の結果を表示する。
【0078】
この計算による結果の一例として,多孔質体にガラスクロスを用いた時の流動抵抗値の導出について以下に示す。ガラスクロス(幅;140 mm,長さ;140 mm,厚さ;0.145 mm,密度;1.02 g/cm)を下金型上に2枚積層し,上金型を乗せて固定した。上下面での流動面積に大きな差が無かったため,(数2)の断面固有の抵抗値βは沿層方向と貫層方向とも同じ値とした。流動挙動の測定装置を用いた実験は常温(25℃)で行い,流体は着色水(密度;0.99705 g/cm3, 粘度;0.00089 Pa・s)を用いた。減圧条件は0.25気圧( atm)と0.75 atmの2条件で行った。流動面積の実測値と解析値の誤差の設定値を5%以下とし,繰り返し計算の結果,断面固有の抵抗値β=2.9×106 cm/g,流動抵抗値K=2.6×104 1/sとなった。
【0079】
図8はビデオカメラ12-2により測定金型100の下面からの撮影によって求めた流動面積の実測値と解析値との比較を示している。図中の実線および破線が計算によって決定した流動抵抗値を導入したときの流動面積の変化であり,実線は容器内圧力を0.25 atm,破線は0.75 atmとしたときの解析値である。一方,プロット点は流動挙動の測定装置から求めた流動面積の実測値であり,菱形点は容器内圧力を0.25 atm,三角点は0.75 atmとしたときの結果である。
【0080】
以上では,着色水を用いた例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,流体はエポキシ,フェノールなどの高分子材料を用いることができる。
【0081】
以上では,多孔質体にガラスクロスを用いたが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,集成マイカ,はがしマイカなども用いることもできる。
【0082】
以上では,着色水を用いた流体粘度一定の例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,任意の流体の粘度変化式を用いることもできる。
【0083】
なお,上記実施例においては、説明を簡単にするために、多孔質体3における流体の流動挙動が貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)とで同じであるとして、ビデオカメラ12-1又は12-2の何れかで撮像した画像を用いて処理する場合について説明した。しかし、多孔質体3の構造によっては,多孔質体3における流体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と,前記貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)では流動挙動が異なる場合がある。この場合には、測定装置200においてビデオカメラ12-1と12-2により多孔質体の上下面を同時に測定した画像から貫層方向(下金型5の方向からビデオカメラ12-2で撮像して得た画像)と,沿層方向(上金型2の方向からビデオカメラ12-1で撮像して得た画像)における流体の流動挙動を同時に測定し,含浸成形シミュレーションにおいて,前記流動抵抗値を流体の粘度と断面固有の抵抗値の関数で表し,各方向に対して断面固有の抵抗値を独立に設定することもできる。
【0084】
本実施例によれば、測定金型を減圧容器内に設置するだけで容易に測定金型の内部を減圧することができ、多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【実施例2】
【0085】
第1の実施例においては、測定金型100を減圧容器10の内部に設置して減圧容器10の内部を真空排気する構成であったが、本実施例においては、減圧容器10を用いずに、測定金型900に真空排気手段を直接取付けた構成とした。その構成を図9と図10とに示す。
【0086】
図9に示した構成において、測定金型900は、流体注入孔91が設けられた上金型92と、下金型95、多孔質体93、スペーサ94及び真空計97で構成される。真空計97がスペーサ94に直接取り付けられている点が実施例1の場合と異なる。
【0087】
本実施例においては、実施例1と同様に、上金型92と下金型95とは可視光が透過する透明素材で形成されている。また、多孔質体93にはマイカ,ガラス繊維などを固体部材とし,部材間に微細隙間を有する構造体を用いる点でも実施例1と同じである。
【0088】
次に,本実施例における流動挙動測定装置1000の構成を図10に示す。実施例1で説明した図2に示した構成との違いは、減圧容器10がなく、真空ポンプ11と接続する排気管1017が測定金型900のスペーサ94の開口部96と直接接続されている点である。
その他の構成および動作、流動解析の手順は実施例1の場合と同様なので、説明を省略する。
【0089】
本実施例によれば、大掛かりな減圧容器を用いずに測定金型の内部を減圧することができ、多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【実施例3】
【0090】
前記の可視化用金型の代わりに,多孔質体と接触する金型表面に複数の圧力センサを用いて,流動状態のセンシングおよび流動抵抗値の算出方法について説明する。
【0091】
この場合,金型構造を図11に示した測定金型1100のように変更し,図12に示した流動挙動測定装置1200に組み込む。
【0092】
まず,圧力センサによる沿層方向および貫層方向の流動挙動測定用金型1100の構成について図11を用いて説明する。
【0093】
多孔質体23と接触する金型表面の複数の箇所(図11の例では下金型に5箇所)に圧力センサ28-1〜28-5を埋設した上金型22と下金型25で,多孔質体23を挟み込み固定する。圧力センサは下金型だけでなく,上金型にも設置できる。上金型22には流体注入孔21が形成されている。多孔質体23の厚さ調整が必要な場合にはスペーサ24を上金型22と下金型25の間に設置し,スペーサ24を介して上金型22と下金型25をクランプする。
スペーサ24には減圧用の開口部26が設けられている。
【0094】
次に,この図11に示した構成の測定金型1100を多孔質体の沿層および貫層方向の流動挙動測定装置1200について図12を用いて説明する。
【0095】
流動挙動測定装置1200は、図11で説明した流動挙動の測定金型1100を内部に配置する減圧容器1210と真空ポンプ1211、流体注入用バルブ1213、減圧バルブ1214、減圧容器1210の外部から注入液体1209を減圧容器1210の内部に配置された測定金型1100の内部に流体注入口21から流入させるためのチューブ1215、一対の支持台1216、一対のブロック1218、制御部1230、及び処理ユニット1240を備えて構成される。
【0096】
減圧容器1210と真空ポンプ1211とは、真空配管1217で接続されており、真空配管1217の中間に減圧バルブ1214が取付けられていて減圧容器1210と真空ポンプ1211との間の排気経路の開閉を行う。
【0097】
流体注入用バルブ1213は制御部1230で制御されて、チューブ1215の内部に供給した注入液体1209が減圧容器1210の内部に配置された測定金型1100の内部に流入する量を制御する。
【0098】
減圧容器1210は一対のブロック1218上に載置されている。
処理ユニット1240は、記憶部1241、演算部1243及び表示画面1245を備えた入出力部1244を備えている。
測定金型1100の上金型22と下金型25とに埋設された圧力センサ28の出力信号は、制御部1230に入力され、処理ユニット1240の演算部1243に送られて処理される。
【0099】
次に、流動挙動測定装置1200の操作方法を説明する。
まず、流動挙動の測定用の測定金型1100を減圧容器1210内の支持台1216上に設置した状態で測定金型1100の流体注入孔21と接続するチューブ1215の途中に設置した流体注入用バルブ1213を閉める。この状態で減圧容器1210の外からチューブ1215内に注入流体1209を注ぎ,チューブ1215内の流体注入用バルブ1213で停留させる。
【0100】
次に、制御部1230から指示を出して減圧バルブ1214を開き,真空ポンプ1211を始動させて減圧容器1210の内部を真空排気する。減圧容器1210の内部の圧力値を減圧容器1210に取付けた真空計1208で読み取り,制御部1230で真空計1208の出力をモニタし,設定値に達したら,減圧バルブ1215を閉じ,真空ポンプ1211のスイッチを切る。真空計1208の設定値は50kPa以下が望ましい。このとき、測定金型1100の内部は開口部26から排気されて、減圧容器1210の内部とほぼ同じ圧力になっている。
【0101】
次に、制御部1230から指示を出して流体注入バルブ1213を開け,チューブ1215から注入流体1209を流体注入口21を介して測定金型1100内に注入する。この測定金型1100の内部に注入された注入流体1209が圧力センサ28-1〜28-5の位置に時差をもって達すると圧力センサ28-1〜28-5が順次圧力の変化を感知して制御部1230に信号を出力する。流体注入バルブ1213を開いた時点から、注入流体1209が測定金型1100の内部へ注入され,それぞれの圧力センサ28-1〜28-5の位置に到達して,圧力センサ28-1〜28-5で検出されるまでの時間が制御部1230を介して処理ユニット1240の記憶部1241に保存される。
【0102】
この圧力センサ28-1〜28-5で検出された信号を用いた流動解析の手順は実施例1の場合と同様なので、説明を省略する。
【0103】
本実施例によれば、撮像手段を用いずに多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【符号の説明】
【0104】
1,21、91・・・流体流入孔 2,22,92・・・上金型 3、23,93
・・・多孔質体 4,24,94・・・スペーサ 5,25,95・・・下金型 6,26,96・・・開口部 8,98,1208・・・真空計 9,1009,1209・・・注入流体 10,1210・・・減圧容器 11,1011,1211・・・真空ポンプ 12-1,12-2,1012-1,1012-2・・・ビデオカメラ 13、1013,1213・・・流体注入用バルブ 14、1014,1214・・・減圧バルブ 15、1015,1215・・・チューブ 210,1010,1230・・・制御部 220, 1020,1240・・・処理ユニット 221,1021,1241・・・記憶部 222,1022・・・画像処理部 223,1023,1243・・・演算部 224,1024,1244・・・入出力部 225, 1025,1245・・・表示画面 28−1〜5・・・圧力センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は,マイカやガラス繊維などの固体部材と部材の隙間からなる多孔質体の樹脂含浸成形加工技術に係り,特に多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動の測定装置,前記測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値算出方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動の測定装置,前記測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値の算出手法に関する従来技術として、特許文献1乃至3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1は多孔質体の液体展開速度測定装置と測定方法の発明であり,液溜めから多孔質体へ測定液が流動する状況を撮像し,画像処理によって液体展開速度を測定する方法および装置について記載されている。
【0004】
特許文献2はRTM(Resin Transfer Molding)成形法における樹脂流動の制御方法および装置に関する発明であり,金型内表面に多数配置された流動センサによって流動先端を検出し,予め決定した最適流動パターンに近づくように注入装置の圧力,温度を制御する方法および装置について記載されている。
【0005】
特許文献3は液体の含浸状況のモニタリング方法およびFRP構造体の製造方法の発明であり,基材の両面に電極を設け,電気回路の電気的特性を測定することにより,液体の含浸位置をモニタリングする方法および装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−52931号公報
【特許文献2】特開2003−39479号公報
【特許文献3】特開2007−47067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発電機や電動機のステーターコイル絶縁層,風力発電機のブレードなどには,多孔質体に樹脂を含浸成形させる方法が用いられている。この含浸成形品は軽量,高強度の特徴があり,飛行機の筐体などにも適用を拡大している。
【0008】
多孔質体における樹脂含浸成形における問題点は,マイカやガラス繊維などの固体部材と部材の隙間からなり,微細構造を有する多孔質体における樹脂の流動挙動の予測方法が無いため,新規形状の製品の樹脂含浸成形の試作期間が長く,試作コストが高くなることである。
【0009】
ここで,多孔質体の流動挙動を流体解析で予測する場合には,微細構造の多孔質体をそのままモデル化すると計算時間が長くなる問題が生じる。
【0010】
このため,流動挙動の予測が行える多孔質体における流体の流動挙動測定装置の開発が必要となる。更に,前記流動挙動の測定値を一定の誤差で再現できる流体解析における多孔質体のモデル化方法の確立および流動抵抗値の算出により,含浸成形挙動を高精度かつ短時間で予測できる含浸成形シミュレーション技術の構築が必要である。
【0011】
前記した従来技術は、いずれも,樹脂注入方向は多孔質体の平面方向であり,多孔質体の平面方向と厚さ方向の流動挙動を同時測定する方法は記載されていない。また,得られた測定データから多孔質体の流動抵抗値を算出する手法も記載されていない。
【0012】
本発明の目的は、多孔質体における流体の流動挙動の予測を可能とする含浸成形シミュレーションにより多孔質体を含浸成形する際の多孔質体における樹脂材料の流動挙動を測定し,測定した流動挙動を再現できる3次元流動解析における多孔質体の解析モデル化方法および多孔質体の流動抵抗値の算出手法を用いた多孔質体の流動抵抗値算出方法及びその装置を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する装置を,試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、計測試料を内部に設置する容器手段と、容器手段の内部を真空に排気する排気手段と、容器手段の内部に設置された計測試料の1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、容器手段の内部に設置された計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、排気手段で排気された容器手段の内部で流体供給手段により計測試料に供給された流体が試験体を流れる状態を撮像手段で撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求める処理手段とを備えて構成した。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する装置を,試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、計測試料の内部を真空に排気する排気手段と、計測試料の1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、排気手段で排気された計測試料に内部において流体供給手段により供給された流体が試験体を流れる状態を撮像手段で撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求める処理手段とを備えて構成した。
【0015】
そして、本発明における処理手段は、試験体の流動抵抗値を求めることを、多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,撮像して得た画像から多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、測定した値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を試験体の流動抵抗値として求めるようにした。
【0016】
更に、上記目的を達成するために、本発明では、多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定して流動抵抗値を算出する方法において,試験体の周囲を囲むようにして配置されて一部に開口を有する部材とこの部材に周囲を囲まれた試験体とを光学的に透明な1対の板材で上下から密着して挟み込んで形成した計測試料の内部を真空に排気し、真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を供給し、流体が供給された試験体を流体が流れる状態を撮像し、撮像して得た画像を処理して試験体の流動抵抗値を求めるようにした。
【0017】
そして、試験体の流動抵抗値を求めることを、多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,撮像して得た画像から多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、測定した値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を試験体の流動抵抗値として求めるようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多孔質体内の流体の流動挙動の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を用いた信頼性の高い含浸成形シミュレーションが可能になり,多孔質体における流体の流動挙動の予測が可能となり試作期間短縮,試作コスト低減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図2】第1の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施例における流動面積算出の操作画面の正面図である。
【図4】第1の実施例における流動面積算出のフローチャートである。
【図5】第1の実施例における流動抵抗値算出の操作画面の正面図である。
【図6】第1の実施例における流動抵抗値算出のフローチャートである。
【図7】第1の実施例における流動抵抗値算出の出力画面の正面図である。
【図8】第1の実施例における流動面積の解析値と実測値の比較結果を示すグラフである。
【図9】第2の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図10】第2の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施例における可視化による沿層および貫層方向の流動挙動測定用金型を分解して示した斜視図である。
【図12】第3の実施例における沿層および貫層方向の流動挙動測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では,減圧容器内に多孔質体を挟み込んだ金型に減圧容器外から流体を注入したり,減圧機構を有し,多孔質体を挟み込んだ金型内に流体を注入したりすることにより,多孔質体における流体の流動挙動を測定する装置およびその方法に関するものである。
【0021】
本発明では,透明素材で形成された金型を用いた可視化測定,または,金型表面に設置した圧力センサによる流体到達の感知によって,多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)を測定して得たデータと、微細構造を有する多孔質体を複数の円管からなるポーラス体としてモデル化した含浸成形シミュレーションの解析モデルとを用いて,測定データから求めた多孔質体内の流体の流動挙動(流体の流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離など)の測定値を一定の誤差範囲内で再現できるポーラス体の流動抵抗値を決定するようにした。
【0022】
なお,多孔質体の構造によっては,多孔質体における樹脂の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向では流動挙動が異なる場合がある。この場合には、測定装置において貫層方向と,沿層方向における流体の流動挙動を同時に測定し,含浸成形シミュレーションにおいて,前記流動抵抗値を流体の粘度と断面固有の抵抗値の関数で表し,各方向に対して断面固有の流動抵抗値を独立に設定することもできるようにした。
【0023】
以下,添付の図面を参照しながら,本発明に係る実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0024】
まず,可視化による沿層および貫層方向の流動挙動の測定金型100に付いて図1を用いて説明する。
【0025】
測定金型100は、上金型2と、下金型5、多孔質体3及びスペーサ4で構成される。
【0026】
上金型2は流体注入孔1を有し,可視光が透過する透明素材で形成されている。下金型5も透明素材で形成されており、上金型2と下金型5との間に多孔質体3を挟みこみ,上金型2と下金型5をクランプすることで多孔質体3を上金型2と下金型5とに密着させて固定する。多孔質体3にはマイカ,ガラス繊維などを固体部材とし,部材間に微細隙間を有する構造体を用いる。クランプにはネジ止め等を用いる。
【0027】
なお,上金型2と下金型5の透明素材として,アクリル,ポリカーボネートなどの有機材料,ガラスなどの無機材料を用いることができる。
【0028】
多孔質体3の厚さ調整が必要な場合には上金型2と下金型5の間に挟むスペーサ4の厚さを調整することで多孔質体3の厚さ調整を行う。これにより,多孔質体の圧縮率を任意に調節できる。スペーサ4には減圧用の開口部6を設けてある。真空ポンプ(図2参照)を用いてスペーサ4と上金型2と下金型5とで囲まれた空間を開口部6から排気することにより,多孔質体3の内部を減圧する。
【0029】
次に,多孔質体の沿層および貫層方向の流動挙動測定装置200について図2を用いて説明する。
【0030】
流動挙動測定装置200は、図1で説明した流動挙動の測定金型100を内部に配置する減圧容器10と真空ポンプ11、上下1対のビデオカメラ12-1と12-2、流体注入用バルブ13、減圧バルブ14、減圧容器10の外部から注入液体9を減圧容器10の内部に配置された測定金型100の内部に流体注入口1から流入させるためのチューブ15、一対の支持台16、一対のブロック18、制御部210、及び処理ユニット220を備えて構成される。
【0031】
減圧容器10と真空ポンプ11とは、真空配管17で接続されており、真空配管17の中間に減圧バルブ14が取付けられていて減圧容器10と真空ポンプ11との間の排気経路の開閉を行う。
【0032】
流体注入用バルブ13は制御部210で制御されて、チューブ15の内部に供給した注入液体9が減圧容器10の内部に配置された測定金型100の内部に流入する量を制御する。
【0033】
減圧容器10の上面10-1と下面10-2とは可視光を透過する材料で形成されている。減圧容器10は一対のブロック18上に載置され、減圧容器10の上面10-1を介して減圧容器10の上方からビデオカメラ12-1で測定金型100に収納されている多孔質体3の上面が撮像される。また、減圧容器10の下面10-2を介して減圧容器10の下方からビデオカメラ12-2で測定金型100に収納されている多孔質体3の下面が撮像される。
【0034】
処理ユニット220は、記憶部221、画像処理部222、演算部223及び表示画面225を備えた入出力部224を備えている。
次に、流動挙動測定装置200の操作方法を説明する。
まず、ビデオカメラ12-1と12−2とを、それぞれ多孔質体3の全領域が視野内に入るように,減圧容器10の上方及び下方に設置する。多孔質体3が厚く高密度で,沿層方向と貫層方向の流動に大きな差がある場合は,ビデオカメラ12-1と12−2とを用いて撮像する。2台のビデオカメラ12-1と12−2との同期は制御部210で制御する。
【0035】
次に、流動挙動の測定用の金型100を減圧容器10内の支持台16上に設置した状態で金型100の流体注入孔1と接続するチューブ15の途中に設置した流体注入用バルブ13を閉める。この状態で減圧容器10の外からチューブ15内に注入流体9を注ぎ,チューブ15内の流体注入用バルブ13で停留させる。
【0036】
次に、制御部210から指示を出して減圧バルブ14を開き,真空ポンプ11を始動させて減圧容器10の内部を真空排気する。減圧容器10の内部の圧力値を減圧容器10に取付けた真空計8で読み取り,制御部210で真空計8の出力をモニタし,設定値に達したら,減圧バルブ15を閉じ,真空ポンプ11のスイッチを切る。真空計8の設定値は50kPa以下が望ましい。このとき、測定金型100の内部は開口部6から排気されて、減圧容器10の内部とほぼ同じ圧力になっている。この状態でビデオカメラ12-1及び12−2を作動させて多孔質体3の録画を開始する。
【0037】
次に、制御部210から指示を出して流体注入バルブ13を開け,チューブ15から注入流体9を流体注入口1を介して測定金型100内に注入する。この注入流体9を測定金型100の内部に注入している状態をビデオカメラ12-1及び12−2で撮影した動画データおよび録画開始から、流体注入バルブ13を開け、注入流体9の測定金型100の内部への注入が完了するまでの時間は制御部210を介して記憶部221に保存される。
【0038】
ここで,注入流体9は,図示していない加圧機構をチューブ15に取り付けることにより、加圧された状態で測定金型100の内部に注入させることもできる。また,注入流体9は着色水,エポキシ樹脂などの有機材料を用いることができる。
【0039】
以上では,2ヶ所からの動画撮影する例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,1つ以上の動画または静止画撮影で記録することでも実現可能である。
【0040】
次にビデオカメラ12-1,12-2で撮影した動画データから各時間の流動面積を計算する手法の一例を図4を用いて説明する。
【0041】
流動面積の計算は図3で示す操作構成で図4のフローを備えたソフトウェアが画像処理部222で実行されることにより,機能する。
【0042】
処理ユニット220の画像処理部222は図4で示すフローチャートに従い,計算を実行する。結果を記憶部221に記憶させた後,入出力部224の表示画面225に表示する。
【0043】
図示していないが,入出力部224には,当然キーボードやマウス等の入力デバイスを備えている。
【0044】
次に,図4のフローチャートに沿って動画データから各時間の流動面積を計算する。
まず,準備段階として、記録された動画データを呼び出すように,オペレータに催促する表示301を表示画面225に表示し,記憶部221からこれらのデータを読み出す。さらに,ビデオカメラ12-1,12-2の録画開始から流体注入バルブ13を開けるまでの測定時間と静止画への分割時間を入力するように,オペレータに催促する表示302を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付け,画像処理部222で動画から指定時間毎の静止画データを作成する。作成した静止画データは,記憶部221に保存する。
【0045】
これで準備段階を終了し、次に図4に示したフローに従ってデータ処理を行う。なお、ここでは説明を簡単にするために、多孔質体3における流体の流動挙動が貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)とで同じであると仮定して説明する。
【0046】
まず記憶部221に保存されている注入前の静止画データを1枚選び,ソフトウェア上に読み込むように,オペレータに催促する表示303を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S101)。
【0047】
次に,ステップ101で読み込んだ静止画の1画素の寸法をソフトウェア上で入力するように,オペレータに催促する表示304を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S102)。
【0048】
更に,記憶部221に保存されている注入後の静止画データを1枚選び,ソフトウェア上に読み込むように,オペレータに催促する表示305を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S103)。
【0049】
次に,S101のステップで読み込んだ注入前の静止画データとステップ103で読み込んだ注入後の静止画データの輝度値の差分画像データを作成し,表示画面225上で差分画像表示306を指示することにより作成した差分画像を表示画面225の画像表示領域320に出力する(S104)。差分画像を用いることで,注入前と変化のない流体以外の領域では,輝度値はゼロになるため,輝度値がゼロより大きくなる流体領域を明確に表すことができる。
【0050】
次に,S104のステップで作成した差分画像データに対し,輝度値の閾値を入力するように,オペレータに催促する表示307を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S105)。画像処理部222において入力した閾値により,流動領域のみを抽出した画像を作成し,表示画面225上で流動領域表示308を指示することにより表示画面225の画像表示領域320に出力する。
【0051】
次に,S105のステップで作成した流動領域のみの画像の画素数をカウントするように,オペレータに催促する表示309を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S106)。画像処理部222においてステップ102で計算した1画素の寸法を代入し,流動面積を計算して,記憶部221に保存する。
【0052】
次に,未計算の静止画データ数のカウントするように,オペレータに催促する表示310を表示画面225に表示し,入出力部224からこのデータを受け付ける(S107)。未計算の静止画データ数がゼロの場合は計算を終了する(S108)。一方,未計算の静止画データ数がゼロでない場合は,ステップ103に戻り,次の注入後の静止画データを選び,ステップ104〜107の操作を繰り返す。
以上では,流動面積の計算方法の例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,流体到達時間,流体流動距離も求めることができる。
【0053】
上記したフローの説明では、表示画面225上で対話形式で処理を進める処理であったが、本発明はこれに限るものではなく、表示画面225上からの入力を行わずに一連の処理を自動で行うことも可能である。
【0054】
図4に示した処理フローを実行することにより得られた流動面積の時間,または流体到達時間,または流体流動距離を用いて,シミュレーションから多孔質体の流動抵抗値を求める方法を説明する。
【0055】
流動抵抗値の計算は図5で示す操作構成で,図6のフローを備えたソフトウェアが実行されることにより,機能する。
【0056】
モデル形状作成ステップS201では,解析モデル構築をオペレータに催促する表示501を表示画面225に表示し,入出力部224から入力されて特定された解析対象モデル,つまり,流動挙動の測定装置の前記金型と前記多孔質体の形状データを演算部223においてソフトウェア上で構築する。
【0057】
次に,3次元ソリッド要素作成のステップS202では,有限要素形状作成をオペレータに催促する表示502を表示画面225に表示し,入出力部224から入力された指示に基づいて演算部223においてS201のステップで作成したモデル形状を複数の特定空間(3次元ソリッドの有限要素)に分解し,各有限要素の形状データを作成する。
【0058】
次に,流体の物性値入力ステップS203では,注入する流体の物性値である密度,粘度を入力するように,オペレータに催促する表示503を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。流体として樹脂を用いる場合には時間の関数である粘度式(数1)を入力する。ここで,η;粘度,η0;初期粘度,t;時間,T;温度,A,tg;材料固有の定数とする。
【0059】
【数1】
【0060】
次に,境界条件入力ステップS204において,オペレータに対して,3次元ソリッド要素内に流体が流入する際の流体圧力,金型内圧力,金型温度などの境界条件を入力するように,オペレータに催促する表示504を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0061】
次に,設定値入力ステップS205において,図4のS101からS108までのステップで保存した流動面積,または流体到達時間,または流体流動距離の測定値と解析値との誤差の設定値を入力するように,オペレータに催促する表示505を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0062】
次に,多孔質体の流動抵抗値を規定する断面固有の抵抗値入力ステップS206において,オペレータに対して,多孔質体の断面固有の抵抗値を入力するように,オペレータに催促する表示506を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0063】
ステップS207で,流動抵抗値は粘度と断面固有の抵抗値の関数として, (数2)で算出する。ここで,K;流動抵抗値,η;粘度,t;時間,T;温度,β;断面固有の抵抗値とする。
【0064】
【数2】
【0065】
βは互いに直交する3方向に対して独立に設定可能であり,この値を規定することで各時間および各温度における各方向の流動抵抗値を規定できる。
【0066】
また,流動抵抗値から規定される単位体積当りの流動抵抗力は流動方向と逆方向に作用し, (数3)で表すことができる。ここで,ρ;流体密度,K;流動抵抗値,t;時間,T;温度,u;流速とする。
【0067】
【数3】
【0068】
ステップS208として,流動解析の開始をオペレータに催促する表示507を表示画面225に表示し,演算部223で指示を受け付け、この指示に基づいて,記憶部221に格納された連続の式 (数4)および運動方程式 (数5)を呼び出し,これまで入力を受け付けた,流体の密度,粘度,流体圧力,金型内圧力,金型温度,断面固有の抵抗値を代入し,注入流体が流動する際の,速度,圧力,密度,粘度,流動体積,流動面積,流動距離,任意位置の流体到達時間を計算する。ここで,u;流速,ρ;流体密度,P;圧力,η;粘度,G;重力加速度,β;断面固有の抵抗値,t;時間,T;温度とする。
【0069】
【数4】
【0070】
【数5】
【0071】
以上では, (数4)および(数5)を用いた計算を行ったが,エネルギ方程式を用いて熱計算も同時に行うことができる。
【0072】
ステップS209において,オペレータに対して,図4のS101からS108までのステップで保存した流動挙動の測定装置から画像処理を用いて計算した時間毎の流動面積の測定値を入力するように,オペレータに催促する表示508を表示画面225に表示し,入出力部224からこれらのデータを受け付ける。
【0073】
ステップS210において,収束判定をオペレータに催促する表示509を表示画面225に表示し,入出力部224から指示を受け付け、S208のステップで保存した流動解析から求めた各時間の流動面積,または任意の位置の流体到達時間,または時間毎の流体流動距離と,S209のステップで入力した流動面積,また任意の位置の流体到達時間,または時間毎の流体流動距離の測定値との差が設定値以下となる場合は,計算を終了し(S211),求めた流動抵抗値を記憶部221に保存する。一方,設定値より大きくなる場合はステップS206に戻り,断面固有の抵抗値を再設定し,設定値以下となるまで繰り返し計算を行う。
【0074】
なお,S203のステップで入力した粘度式(数1)として,樹脂反応率,またはせん断速度を含む関数も用いることができ,一定粘度の計算もできるものとする。
【0075】
なお,S210のステップで算出した流動抵抗値Kは粘度ηと断面固有の係数βの積としたが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,少なくとも粘度ηと断面固有の係数βを含む任意の関数とし,せん断速度なども含むことができる。
【0076】
前記の流動抵抗値算出方法により決定した断面固有の抵抗値および流動抵抗値は図7の表示701,702に示すように計算結果として出力される。
【0077】
計算が終了すると結果出力をオペレータに催促する表示510を表示画面225に表示し,入出力部224から指示を受け付け、表示画面225の画像表示部520に計算の結果を表示する。
【0078】
この計算による結果の一例として,多孔質体にガラスクロスを用いた時の流動抵抗値の導出について以下に示す。ガラスクロス(幅;140 mm,長さ;140 mm,厚さ;0.145 mm,密度;1.02 g/cm)を下金型上に2枚積層し,上金型を乗せて固定した。上下面での流動面積に大きな差が無かったため,(数2)の断面固有の抵抗値βは沿層方向と貫層方向とも同じ値とした。流動挙動の測定装置を用いた実験は常温(25℃)で行い,流体は着色水(密度;0.99705 g/cm3, 粘度;0.00089 Pa・s)を用いた。減圧条件は0.25気圧( atm)と0.75 atmの2条件で行った。流動面積の実測値と解析値の誤差の設定値を5%以下とし,繰り返し計算の結果,断面固有の抵抗値β=2.9×106 cm/g,流動抵抗値K=2.6×104 1/sとなった。
【0079】
図8はビデオカメラ12-2により測定金型100の下面からの撮影によって求めた流動面積の実測値と解析値との比較を示している。図中の実線および破線が計算によって決定した流動抵抗値を導入したときの流動面積の変化であり,実線は容器内圧力を0.25 atm,破線は0.75 atmとしたときの解析値である。一方,プロット点は流動挙動の測定装置から求めた流動面積の実測値であり,菱形点は容器内圧力を0.25 atm,三角点は0.75 atmとしたときの結果である。
【0080】
以上では,着色水を用いた例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,流体はエポキシ,フェノールなどの高分子材料を用いることができる。
【0081】
以上では,多孔質体にガラスクロスを用いたが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,集成マイカ,はがしマイカなども用いることもできる。
【0082】
以上では,着色水を用いた流体粘度一定の例を示したが,本発明はこれだけに限定されるものではなく,任意の流体の粘度変化式を用いることもできる。
【0083】
なお,上記実施例においては、説明を簡単にするために、多孔質体3における流体の流動挙動が貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)とで同じであるとして、ビデオカメラ12-1又は12-2の何れかで撮像した画像を用いて処理する場合について説明した。しかし、多孔質体3の構造によっては,多孔質体3における流体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向(多孔質体3の厚み方向)と,前記貫層方向と直交する沿層方向(多孔質体3の表面に沿った方向)では流動挙動が異なる場合がある。この場合には、測定装置200においてビデオカメラ12-1と12-2により多孔質体の上下面を同時に測定した画像から貫層方向(下金型5の方向からビデオカメラ12-2で撮像して得た画像)と,沿層方向(上金型2の方向からビデオカメラ12-1で撮像して得た画像)における流体の流動挙動を同時に測定し,含浸成形シミュレーションにおいて,前記流動抵抗値を流体の粘度と断面固有の抵抗値の関数で表し,各方向に対して断面固有の抵抗値を独立に設定することもできる。
【0084】
本実施例によれば、測定金型を減圧容器内に設置するだけで容易に測定金型の内部を減圧することができ、多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【実施例2】
【0085】
第1の実施例においては、測定金型100を減圧容器10の内部に設置して減圧容器10の内部を真空排気する構成であったが、本実施例においては、減圧容器10を用いずに、測定金型900に真空排気手段を直接取付けた構成とした。その構成を図9と図10とに示す。
【0086】
図9に示した構成において、測定金型900は、流体注入孔91が設けられた上金型92と、下金型95、多孔質体93、スペーサ94及び真空計97で構成される。真空計97がスペーサ94に直接取り付けられている点が実施例1の場合と異なる。
【0087】
本実施例においては、実施例1と同様に、上金型92と下金型95とは可視光が透過する透明素材で形成されている。また、多孔質体93にはマイカ,ガラス繊維などを固体部材とし,部材間に微細隙間を有する構造体を用いる点でも実施例1と同じである。
【0088】
次に,本実施例における流動挙動測定装置1000の構成を図10に示す。実施例1で説明した図2に示した構成との違いは、減圧容器10がなく、真空ポンプ11と接続する排気管1017が測定金型900のスペーサ94の開口部96と直接接続されている点である。
その他の構成および動作、流動解析の手順は実施例1の場合と同様なので、説明を省略する。
【0089】
本実施例によれば、大掛かりな減圧容器を用いずに測定金型の内部を減圧することができ、多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【実施例3】
【0090】
前記の可視化用金型の代わりに,多孔質体と接触する金型表面に複数の圧力センサを用いて,流動状態のセンシングおよび流動抵抗値の算出方法について説明する。
【0091】
この場合,金型構造を図11に示した測定金型1100のように変更し,図12に示した流動挙動測定装置1200に組み込む。
【0092】
まず,圧力センサによる沿層方向および貫層方向の流動挙動測定用金型1100の構成について図11を用いて説明する。
【0093】
多孔質体23と接触する金型表面の複数の箇所(図11の例では下金型に5箇所)に圧力センサ28-1〜28-5を埋設した上金型22と下金型25で,多孔質体23を挟み込み固定する。圧力センサは下金型だけでなく,上金型にも設置できる。上金型22には流体注入孔21が形成されている。多孔質体23の厚さ調整が必要な場合にはスペーサ24を上金型22と下金型25の間に設置し,スペーサ24を介して上金型22と下金型25をクランプする。
スペーサ24には減圧用の開口部26が設けられている。
【0094】
次に,この図11に示した構成の測定金型1100を多孔質体の沿層および貫層方向の流動挙動測定装置1200について図12を用いて説明する。
【0095】
流動挙動測定装置1200は、図11で説明した流動挙動の測定金型1100を内部に配置する減圧容器1210と真空ポンプ1211、流体注入用バルブ1213、減圧バルブ1214、減圧容器1210の外部から注入液体1209を減圧容器1210の内部に配置された測定金型1100の内部に流体注入口21から流入させるためのチューブ1215、一対の支持台1216、一対のブロック1218、制御部1230、及び処理ユニット1240を備えて構成される。
【0096】
減圧容器1210と真空ポンプ1211とは、真空配管1217で接続されており、真空配管1217の中間に減圧バルブ1214が取付けられていて減圧容器1210と真空ポンプ1211との間の排気経路の開閉を行う。
【0097】
流体注入用バルブ1213は制御部1230で制御されて、チューブ1215の内部に供給した注入液体1209が減圧容器1210の内部に配置された測定金型1100の内部に流入する量を制御する。
【0098】
減圧容器1210は一対のブロック1218上に載置されている。
処理ユニット1240は、記憶部1241、演算部1243及び表示画面1245を備えた入出力部1244を備えている。
測定金型1100の上金型22と下金型25とに埋設された圧力センサ28の出力信号は、制御部1230に入力され、処理ユニット1240の演算部1243に送られて処理される。
【0099】
次に、流動挙動測定装置1200の操作方法を説明する。
まず、流動挙動の測定用の測定金型1100を減圧容器1210内の支持台1216上に設置した状態で測定金型1100の流体注入孔21と接続するチューブ1215の途中に設置した流体注入用バルブ1213を閉める。この状態で減圧容器1210の外からチューブ1215内に注入流体1209を注ぎ,チューブ1215内の流体注入用バルブ1213で停留させる。
【0100】
次に、制御部1230から指示を出して減圧バルブ1214を開き,真空ポンプ1211を始動させて減圧容器1210の内部を真空排気する。減圧容器1210の内部の圧力値を減圧容器1210に取付けた真空計1208で読み取り,制御部1230で真空計1208の出力をモニタし,設定値に達したら,減圧バルブ1215を閉じ,真空ポンプ1211のスイッチを切る。真空計1208の設定値は50kPa以下が望ましい。このとき、測定金型1100の内部は開口部26から排気されて、減圧容器1210の内部とほぼ同じ圧力になっている。
【0101】
次に、制御部1230から指示を出して流体注入バルブ1213を開け,チューブ1215から注入流体1209を流体注入口21を介して測定金型1100内に注入する。この測定金型1100の内部に注入された注入流体1209が圧力センサ28-1〜28-5の位置に時差をもって達すると圧力センサ28-1〜28-5が順次圧力の変化を感知して制御部1230に信号を出力する。流体注入バルブ1213を開いた時点から、注入流体1209が測定金型1100の内部へ注入され,それぞれの圧力センサ28-1〜28-5の位置に到達して,圧力センサ28-1〜28-5で検出されるまでの時間が制御部1230を介して処理ユニット1240の記憶部1241に保存される。
【0102】
この圧力センサ28-1〜28-5で検出された信号を用いた流動解析の手順は実施例1の場合と同様なので、説明を省略する。
【0103】
本実施例によれば、撮像手段を用いずに多孔質体3における流体の流動挙動の観察が容易に行える。その結果、多孔質体における流体の流動挙動をシミュレーションにより短時間で精度良く求めることができるようになり、設計・開発期間を短縮することが可能になった。
【符号の説明】
【0104】
1,21、91・・・流体流入孔 2,22,92・・・上金型 3、23,93
・・・多孔質体 4,24,94・・・スペーサ 5,25,95・・・下金型 6,26,96・・・開口部 8,98,1208・・・真空計 9,1009,1209・・・注入流体 10,1210・・・減圧容器 11,1011,1211・・・真空ポンプ 12-1,12-2,1012-1,1012-2・・・ビデオカメラ 13、1013,1213・・・流体注入用バルブ 14、1014,1214・・・減圧バルブ 15、1015,1215・・・チューブ 210,1010,1230・・・制御部 220, 1020,1240・・・処理ユニット 221,1021,1241・・・記憶部 222,1022・・・画像処理部 223,1023,1243・・・演算部 224,1024,1244・・・入出力部 225, 1025,1245・・・表示画面 28−1〜5・・・圧力センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,
前記試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、
該計測試料を内部に設置する容器手段と、
該容器手段の内部を真空に排気する排気手段と、
前記容器手段の内部に設置された計測試料の前記1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、
前記容器手段の内部に設置された計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、
前記排気手段で排気された容器手段の内部で前記流体供給手段により前記計測試料に供給された流体が前記試験体を流れる状態を前記撮像手段で撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める処理手段と
を供えたことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項2】
前記容器手段は、一部に光学的に透明な壁面を有し、該光学的に透明な壁面は、前記容器手段の内部に設置された計測試料を前記容器手段の外部から前記撮像手段で撮像可能なように配置されていることを特徴とする請求項1記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項3】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,
前記試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、
該計測試料の内部を真空に排気する排気手段と、
前記計測試料の前記1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、
前記計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、
前記排気手段で排気された前記計測試料に内部において前記流体供給手段により供給された流体が前記試験体を流れる状態を前記撮像手段で撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める処理手段と
を供えたことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記試験体の流動抵抗値を求めることを、前記多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,前記撮像して得た画像から前記多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、該測定した値を一定の誤差範囲内で再現できる前記ポーラス体の流動抵抗値を前記試験体の流動抵抗値として求めることを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記試験体の流動抵抗値を、前記試験体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向とに分けて求めることを特徴とする請求項4記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項6】
前記計測試料は、前記試験体を上下から密着して挟み込む光学的に透明な1対の板材と、該1対の板材の間で前記試験体の周囲を囲むようにして配置されて前記1対の板材に密着された前記試験体の高さを維持するためのスペーサ材とを備えて構成され、前記1対の板材の一方には前記流体供給手段から前記試験体に前記流体を供給するための貫通穴が設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項7】
前記スペーサは一部に開口部を有し、前記試験体を含む前記スペーサと前記1対の板材とで囲まれた領域を前記開口部から排気することを特徴とする請求項4に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項8】
前記流体供給手段は、前記流体を加圧して前記試験体に供給することを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、前記試験体の前記1対の板材と密着している両面を撮像する1対のカメラを備えていることを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項10】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する方法であって,
試験体の周囲を囲むようにして配置されて一部に開口を有する部材と該部材に周囲を囲まれた前記試験体とを光学的に透明な1対の板材で上下から密着して挟み込んで形成した計測試料の内部を真空に排気し、
該真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を供給し、
該流体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を撮像し、
該撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める
ことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項11】
前記試験体の流動抵抗値を求めることを、前記多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,前記撮像して得た画像から前記多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、該測定した値を一定の誤差範囲内で再現できる前記ポーラス体の流動抵抗値を前記試験体の流動抵抗値として求めることを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項12】
前記試験体の流動抵抗値を、前記試験体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向との分けて求めることを特徴とする請求項11記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項13】
前記計測試料を真空容器の内部に設置し、該真空容器の内部を真空に排気することにより前記計測試料の内部を真空に排気することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項14】
前記真空容器の一部に設けた光学的に透明な壁面から前記液体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を撮像することを特徴とする請求項13記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項15】
前記計測試料の前記験体の周囲を囲むようにして配置された部材の前記開口部から直接真空排気することにより前記計測試料の内部を真空に排気することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項16】
前記液体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を、前記試験体の前記1対の板材と密着している両面を撮像することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項17】
前記真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を加圧して供給することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項18】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,前記試験体の上面から前記液体を供給し,前記試験体の沿層方向と貫層方向へ前記流体が流れる状態を同時に撮像またはセンサにより検知することを特徴とする多孔質体を流れる流体の流動挙動測定方法。
【請求項1】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,
前記試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、
該計測試料を内部に設置する容器手段と、
該容器手段の内部を真空に排気する排気手段と、
前記容器手段の内部に設置された計測試料の前記1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、
前記容器手段の内部に設置された計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、
前記排気手段で排気された容器手段の内部で前記流体供給手段により前記計測試料に供給された流体が前記試験体を流れる状態を前記撮像手段で撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める処理手段と
を供えたことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項2】
前記容器手段は、一部に光学的に透明な壁面を有し、該光学的に透明な壁面は、前記容器手段の内部に設置された計測試料を前記容器手段の外部から前記撮像手段で撮像可能なように配置されていることを特徴とする請求項1記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項3】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,
前記試験体を光学的に透明な1対の板材で上下から挟み込んで密着させた計測試料と、
該計測試料の内部を真空に排気する排気手段と、
前記計測試料の前記1対の板材で上下から挟み込まれた試験体に流体を供給する流体供給手段と、
前記計測試料の試験体を撮像する撮像手段と、
前記排気手段で排気された前記計測試料に内部において前記流体供給手段により供給された流体が前記試験体を流れる状態を前記撮像手段で撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める処理手段と
を供えたことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記試験体の流動抵抗値を求めることを、前記多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,前記撮像して得た画像から前記多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、該測定した値を一定の誤差範囲内で再現できる前記ポーラス体の流動抵抗値を前記試験体の流動抵抗値として求めることを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記試験体の流動抵抗値を、前記試験体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向とに分けて求めることを特徴とする請求項4記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項6】
前記計測試料は、前記試験体を上下から密着して挟み込む光学的に透明な1対の板材と、該1対の板材の間で前記試験体の周囲を囲むようにして配置されて前記1対の板材に密着された前記試験体の高さを維持するためのスペーサ材とを備えて構成され、前記1対の板材の一方には前記流体供給手段から前記試験体に前記流体を供給するための貫通穴が設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項7】
前記スペーサは一部に開口部を有し、前記試験体を含む前記スペーサと前記1対の板材とで囲まれた領域を前記開口部から排気することを特徴とする請求項4に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項8】
前記流体供給手段は、前記流体を加圧して前記試験体に供給することを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、前記試験体の前記1対の板材と密着している両面を撮像する1対のカメラを備えていることを特徴とする請求項1又は3に記載の多孔質体の流動抵抗値算出装置。
【請求項10】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する方法であって,
試験体の周囲を囲むようにして配置されて一部に開口を有する部材と該部材に周囲を囲まれた前記試験体とを光学的に透明な1対の板材で上下から密着して挟み込んで形成した計測試料の内部を真空に排気し、
該真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を供給し、
該流体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を撮像し、
該撮像して得た画像を処理して前記試験体の流動抵抗値を求める
ことを特徴とする多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項11】
前記試験体の流動抵抗値を求めることを、前記多孔質体を複数の円管からなるポーラス体とする解析モデルを作成し,前記撮像して得た画像から前記多孔質体内の流体の流動挙動を測定し、該測定した値を一定の誤差範囲内で再現できる前記ポーラス体の流動抵抗値を前記試験体の流動抵抗値として求めることを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項12】
前記試験体の流動抵抗値を、前記試験体の流動寸法が最も小さくなる貫層方向と,前記貫層方向と直交する沿層方向との分けて求めることを特徴とする請求項11記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項13】
前記計測試料を真空容器の内部に設置し、該真空容器の内部を真空に排気することにより前記計測試料の内部を真空に排気することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項14】
前記真空容器の一部に設けた光学的に透明な壁面から前記液体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を撮像することを特徴とする請求項13記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項15】
前記計測試料の前記験体の周囲を囲むようにして配置された部材の前記開口部から直接真空排気することにより前記計測試料の内部を真空に排気することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項16】
前記液体が供給された試験体を前記流体が流れる状態を、前記試験体の前記1対の板材と密着している両面を撮像することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項17】
前記真空に排気された計測試料の内部の試験体に流体を加圧して供給することを特徴とする請求項10記載の多孔質体の流動抵抗値算出方法。
【請求項18】
多孔質体の試験体を流れる流体の流動挙動を測定する装置であって,前記試験体の上面から前記液体を供給し,前記試験体の沿層方向と貫層方向へ前記流体が流れる状態を同時に撮像またはセンサにより検知することを特徴とする多孔質体を流れる流体の流動挙動測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136483(P2011−136483A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298006(P2009−298006)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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