説明

多孔質弾性舗装材

【課題】濡れ時のすべり抵抗性能を維持することができる多孔質弾性舗装材を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質弾性舗装材は、弾性骨材1と、硬質骨材と、バインダー3とを用いて成形されてなる多孔質弾性舗装材であって、上記硬質骨材が、多数の硬質骨材を結着剤にて凝集結着させた凝集結着体からなる凝集硬質骨材2であるという構成をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性骨材と硬質骨材とバインダーとが混合され、道路(特に、車道)の路盤等に敷設されて弾性舗装を形成する多孔質弾性舗装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車道に用いられる多孔質弾性舗装材は、従来の排水性舗装材に用いられる骨材を、ゴムチップ(弾性骨材)に置き換えることにより、ゴムチップ間等の空隙と、ゴムチップの弾性とによって、タイヤから発生するエアーポンピング音や、タイヤ加振音、タイヤ衝撃音を低減するようにしたものである。そして、その騒音の低減効果は、従来の排水性舗装材がΔ3dB程度であるのに対して、ゴムチップを用いた多孔質弾性舗装材はΔ10dB程度であり、低騒音対策に大きな効果がある。
【0003】
上記多孔質弾性舗装材は、一般に、ゴムチップと、このゴムチップ同士を接着させるバインダーとを混合し、これを予め工事にて熱プレスにより、シート状に成形するか、あるいは現場で敷き均し転圧することより、シート状に形成されている。このような多孔質弾性舗装材は、車道に用いられ、その上を自動車等の車両が通過するため、多孔質弾性舗装材中のゴムチップと、その上を通過する車両のタイヤとが接触することになる。しかし、上記ゴムチップとタイヤとは弾性体同士であり軟質なため、雨天等の濡れ時に、ゴムチップとタイヤとの間に介在する水膜を破ることができず、スリップが生じやすいという課題がある。このような課題に対して、水膜を切る成分として、微小な硬質骨材を用い、これをゴムチップやバインダーと混合することにより、ゴムチップの表面に微小な硬質骨材を点在させ、タイヤとの間に介在する水膜を、これで切ることにより、雨天等の濡れ時のすべり抵抗性能を向上させるようにした多孔質弾性舗装材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−21010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の多孔質弾性舗装材は、車道等で使用されるものであるため、日光等によるバインダーの耐候劣化と、車両の走行によるタイヤとの摩擦等により、多孔質弾性舗装材表面から硬質骨材が脱落する。そのため、ゴムチップやバインダー等の軟質材のみが、タイヤと直接接触するようになり、濡れ時のすべり抵抗性能が低下するという難点がある。そこで、バインダーの改良等により、耐候性のアップや、バインダーと硬質骨材との密着性の向上を図った多孔質弾性舗装材も提案されているが、交通量が多い場所においては、硬質骨材の脱落を防ぐことは困難である。また、混合する硬質骨材の量を増加することで、多少の寿命延長を図ることができるが、多孔質弾性舗装材自体の硬さが上がるため、騒音低減性能が悪化する。さらに、多孔質弾性舗装材の表面に、硬質骨材と、この硬質骨材を多孔質弾性舗装材表面に接着させるための接着剤とを定期的に散布する方法もあるが、補修費用がかさむことや、散布の度に交通を遮断する必要があるため、実用的とはいえない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、濡れ時のすべり抵抗性能を維持することができる多孔質弾性舗装材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の多孔質弾性舗装材は、弾性骨材と、硬質骨材と、バインダーとを用いて成形されてなる多孔質弾性舗装材であって、上記硬質骨材が、多数の硬質骨材を結着剤にて凝集結着させた凝集結着体からなる凝集硬質骨材であるという構成をとる。
【0007】
すなわち、本発明者らは、濡れ時のすべり抵抗性能を維持することができる多孔質弾性舗装材を得るため、鋭意研究を重ねた。そして、濡れ時のすべり抵抗性能の低下原因を探求する過程で、この性能低下は、タイヤ等の摩擦により、硬質骨材が脱落するとともに、硬質骨材が脱落した後の多孔質弾性舗装材の表面が、タイヤ等の摩擦によって削り取られて平滑になるため、水膜を切ることができない。その結果、濡れ時のすべり抵抗性能が低下し、タイヤがスリップすることを突き止めた。そこで、これらの問題を解決するため、硬質骨材を中心に研究を続けたところ、弾性骨材(ゴムチップ)およびバインダーとともに、硬質骨材として、多数の硬質骨材を結着剤にて凝集結着させた凝集結着体からなる凝集硬質骨材を用いることが有効であることを見出した。すなわち、これを用いた多孔質弾性舗装材は、タイヤとの摩擦により、凝集硬質骨材の表面が削られ表面に存在する硬質骨材が脱落したとしても、凝集硬質骨材の表面に新たな硬質骨材が露出し、これにより、水膜を切断することができるため、濡れ時のすべり抵抗性能を維持することができ、耐久性に優れるようになる。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の多孔質弾性舗装材は、弾性骨材およびバインダーとともに、多数の硬質骨材を結着剤にて凝集結着させた凝集結着体からなる凝集硬質骨材を用いて成形されている。そのため、タイヤとの摩擦等により、凝集硬質骨材の表面が削られたとしても、その削り跡には、次層の凝集硬質骨材の硬質骨材が露呈し、これにより、水膜を切断することができるため、濡れ時のすべり抵抗性能を維持することができ、耐久性に優れるという効果が得られる。
【0009】
そして、上記凝集硬質骨材中の硬質骨材の比率が、25〜95体積%(vol%)の範囲内であると、硬質骨材が脱落しても次の硬質骨材が露呈し、濡れ時のすべり抵抗性能を長期間維持することができるとともに、タイヤが凝集骨材の上を通過した時に凝集硬質骨材体が破壊することなく、長期的に濡れ時のすべり抵抗性を維持することができる。
【0010】
また、上記凝集硬質骨材が、樹脂およびゴムの少なくとも一方を用いて硬質骨材を凝集結着させてなるものである場合には、弾性骨材同士を結合するバインダーとの接着性が良く、凝集硬質骨材自体の脱落がなく、長期間すべり抵抗性を維持することができる。
【0011】
また、上記凝集硬質骨材の大きさ(直径)が、弾性骨材の直径の1/2以上であると、凝集硬質骨材の脱落をより抑制することができ、耐久性がより向上する。ここで、直径とは、上記凝集硬質骨材が球形でない多角形状等でも適応する概念であり、例えば、凝集硬質骨材が長円形断面のものであるときには短軸方向の距離をいい、立方体形状のときには、対向する面と面との距離のうち最小距離をいう。そして、この大きさは、上記凝集硬質骨材群から任意の数の部材を抽出して測定した平均値を意味する。
【0012】
さらに、上記凝集硬質骨材の形状が、真球状以外の、楕円球状、長円柱状または多面体形状であると、弾性骨材との接触面積が大きくなるため、凝集硬質骨材が脱落しにくくなるとともに、タイヤとの接触面積も大きくなるため、濡れ時のすべり抵抗性能がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の多孔質弾性舗装材は、例えば、図1に示すように、弾性骨材1と、凝集硬質骨材2と、バインダー3とを用いて成形されてなるものである。
【0015】
ここで、本発明は、上記凝集硬質骨材2が、図2に示すように、多数の硬質骨材2aを、結着剤2bにて凝集結着させた凝集結着体からなるのであって、これが最大の特徴である。すなわち、上記凝集硬質骨材2は、タイヤとの摩擦等により表面が削られ最表面の硬質骨材2aが脱落したとしても、その跡には、図2(b)に示すように、次層の凝集硬質骨材2の硬質骨材2aが露呈する。さらに、この凝集硬質骨材2がタイヤとの摩擦等により削られたとしても、その跡には、図2(c)に示すように、次層の凝集硬質骨材2の硬質骨材2aが露呈する。このように、上記凝集硬質骨材2は、その表面がタイヤとの摩擦等により削られたとしても、その跡には、次層の凝集硬質骨材2の硬質骨材2aが露呈し、これにより、水膜を切断することができる。そのため、濡れ時のすべり抵抗性能を維持でき、耐久性に優れるという効果を奏する。
【0016】
本発明の多孔質弾性舗装材の成形に用いる上記弾性骨材1としては、特に限定はなく、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム材や、熱可塑性エラストマー、発泡ポリウレタン等の弾性を有する合成樹脂等を、ひじき状、粒状等のチップ形状に粉砕したものが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)や、これらのブレンドゴム等があげられる。これらのなかでも、資源再利用の観点から、廃タイヤより作製されるゴムチップ等が好適に用いられる。
【0017】
また、上記弾性骨材1の形状は、ひじき状〔直径(太さ):0.25〜10mm、長さ:1〜30mm)が好ましいが、特に限定はなく、粒状であっても差し支えない。
【0018】
つぎに、上記弾性骨材1とともに用いられる、本発明に係る凝集硬質骨材2は、前記図2に示したように、多数の硬質骨材2aを、結着剤2bにて凝集結着させた凝集結着体からなるものである。
【0019】
上記硬質骨材2aとしては、特に限定はなく、例えば、珪砂、エメリーアルミナ、炭化珪素、ダイヤモンド、窒化ホウ素等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0020】
また、上記硬質骨材2aの大きさ(直径)は、50〜1000μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは100〜500μmの範囲内である。なお、上記硬質骨材2aの形状は特に限定はなく、粒状であっも、ひじき状であっても差し支えない。
【0021】
上記硬質骨材2aの硬さ(モース硬度)は、8以上が好ましく、特に好ましくは10以上である。すなわち、上記硬質骨材2aの硬さ(モース硬度)が8未満であると、タイヤと弾性舗装材との間の水膜を切る効果が小さくなり、すべり抵抗性が悪化するおそれがあるからである。
【0022】
また、上記硬質骨材2aを凝集結着させる結着剤2bとしては、バインダー3との相溶性に優れたものであれば特に限定はなく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ゴム系接着剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0023】
ここで、上記凝集硬質骨材2は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、硬質骨材2aと、結着剤2bとを混合し、これを押出機にて押し出し成形した後、ひじき状等の所定形状にカットすることにより、多数の硬質骨材2の凝集結着体からなる凝集硬質骨材2を作製することができる。なお、上記凝集硬質骨材2は、硬質骨材2aと、結着剤2bとを混合し、金型成形により作製しても差し支えない。
【0024】
なお、上記硬質骨材2aは、接着性の向上のため、予めその表面をシランカップリング剤等により、浸漬処理もしくはスプレー処理等しても差し支えなく、また、硬質骨材2aの表面を予め金属メッキ処理しても差し支えない。
【0025】
上記凝集硬質骨材2中の硬質骨材2aの比率は、25〜95vol%の範囲内が好ましく、特に好ましくは50〜90vol%の範囲内である。すなわち、上記硬質骨材2aの比率が25vol%未満であると、硬質骨材2aによる水膜を切る効果が小さく、濡れ時のすべり抵抗性能が悪くなり、逆に95vol%を超えると、硬質骨材2a同士を結着する力が低くなり、タイヤが接触した際に割れて短期間にすべり抵抗性能が低下する傾向がみられるからである。ここで、上記硬質骨材2aの比率とは、硬質骨材2aの表面を予めシランカップリング剤等により処理した場合には、その表面処理済みの硬質骨材2aの比率を意味する。
【0026】
上記凝集硬質骨材2の形状は、真球状よりも、断面形状が長円状の楕円球状、ないし断面形状が長方形状の長円柱状、もしくは多面体形状等の粒状の方が、弾性骨材1との接触面積が大きくなるため、凝集硬質骨材2が脱落しにくくなるとともに、タイヤとの接触面積も大きくなるため、濡れ時のすべり抵抗性能がさらに向上し、好ましい。
【0027】
また、上記凝集硬質骨材2の大きさ(直径)は、特に限定はないが、小さすぎると弾性骨材1のまわりに付着しやすくなり、タイヤとの摩擦により、凝集硬質骨材2自体が脱落し、ゴム表面が露出しやすくなる。上記弾性骨材1と弾性骨材1との間に、凝集硬質骨材2を配置させるためには、上記弾性骨材1の直径の1/2以上の大きさが好ましく、また、凝集硬質骨材2の大きさの上限は、多孔質弾性舗装材の厚み以下とするのが好ましい。具体的には、上記凝集硬質骨材2の大きさ(直径)は、0.5〜20mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜10mmの範囲内である。ここで、直径とは、前記定義したとおりである。
【0028】
上記凝集硬質骨材2の配合量は、上記弾性骨材1と、凝集硬質骨材2と、バインダー3との合計量全体の5〜80vol%の範囲内に設定することが好ましく、特に好ましくは30〜60vol%の範囲内である。すなわち、上記凝集硬質骨材2の配合量が5vol%未満であると、濡れ時のすべり摩擦係数(μwet)が小さすぎる傾向がみられ、逆に、凝集硬質骨材2の配合量が80vol%を超えると、多孔質弾性舗装材の強度が低下する傾向がみられるからである。
【0029】
つぎに、上記弾性骨材1および凝集硬質骨材2とともに用いられるバインダー3としては、特に限定はなく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アスファルト、ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、柔軟性(変形への追従性)や接着性の点で、ウレタン樹脂が好適に用いられる。
【0030】
上記ウレタン樹脂としては、例えば、一液湿気硬化型ウレタン樹脂、二液混合型ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等があげられる。
【0031】
また、上記バインダー3の配合量は、上記弾性骨材1と、凝集硬質骨材2と、バインダー3との合計量全体の5〜30vol%の範囲内に設定することが好ましく、特に好ましくは10〜20vol%の範囲内である。すなわち、上記バインダー3の配合量が5vol%未満であると、多孔質弾性舗装材の強度が低下する傾向がみられ、逆に、上記バインダー3の配合量が30vol%を超えると、加工性、作業性が悪化する傾向がみられるからである。
【0032】
ここで、本発明の多孔質弾性舗装材は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記弾性骨材1と、凝集硬質骨材2と、バインダー3とを、所定の割合で攪拌機を用いて混合し、その混合物を金型に投入した後、金型を熱プレスにて所定の条件(例えば、150℃で30分間)で加熱処理することにより、平板状(厚み20〜50mm)の多孔質弾性舗装材を作製することができる。ただし、成型方法、処理条件(温度および時間)については、これに限定されるものではない。
【0033】
また、本発明の多孔質弾性舗装材は、上記弾性骨材1と、凝集硬質骨材2と、バインダー3とを混ぜ合わせ、これを路面に敷き詰めた後、熱ローラー等を用いて転圧成型することにより作製することも可能である。
【0034】
本発明の多孔質弾性舗装材は、空隙率が30〜50%の範囲内が好ましく、特に好ましくは空隙率が35〜45%の範囲内である。なお、上記空隙率は、例えば、下記の式(1)によって算出される。
【0035】
【数1】

【0036】
本発明の多孔質弾性舗装材は、例えば、地面に設けたコンクリートやアスファルト等の路盤上に、エポキシ系やウレタン系等の接着剤を用いて、本発明の多孔質弾性舗装材を敷設することにより形成することができる。なお、敷設方法、接着方法、接着剤については特に限定するものではない。
【0037】
本発明の多孔質弾性舗装材の用途としては、道路用のみに限定されるものではなく、例えば、遊歩道や競技場のフィールド等に使用することも可能である。
【実施例】
【0038】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0039】
〔実施例〕
硬質骨材である6号珪砂(オクムラセラム社製)と、結着剤である二液湿気硬化型ウレタンバインダー(三井武田ケミカル社製、タケネートA114)とを同体積量計量し、押出機にて太さ2mmで押し出し成形した。これを硬化後の長さが約10mmになるようにひじき状にカットし、多数の硬質骨材の凝集結着体からなる凝集硬質骨材を作製した。ついで、この凝集硬質骨材と同体積分のひじき状ゴムチップ(ミサワ東洋社製、ファイバーゴム612)〔直径(太さ):0.5〜2mm、長さ:5〜10mm〕を配合するとともに、これら凝集硬質骨材と、ひじき状ゴムチップとの合計100vol%に対して、一液湿気硬化型ウレタンバインダー(三井武田ケミカル社製、タケネートF181P)15vol%を配合し、攪拌混合した。そして、成型後の空隙率が40%になるように秤量し、金型に投入した後、加熱圧縮(150℃×30分)することにより、厚み30mmの平板状の多孔質弾性舗装材(400mm×400mm)を作製した。
【0040】
〔比較例〕
ひじき状ゴムチップ(ミサワ東洋社製、ファイバーゴム612)100vol%に対して、一液湿気硬化型ウレタンバインダー(三井武田ケミカル社製、タケネートF181P)30vol%と、6号珪砂(オクムラセラム社製)20vol%とを配合し、攪拌混合した。そして、成型後の空隙率が40%になるように秤量し、金型に投入した後、加熱圧縮(150℃×30分)することにより、厚み30mmの平板状の多孔質弾性舗装材(400mm×400mm)を作製した。
【0041】
このようにして得られた実施例品および比較例品の多孔質弾性舗装材を用いて、図3に示す促進試験装置により、促進試験を行った後のすべり摩擦係数(μwet)を測定した。その結果を、図4のグラフ図に示した。
【0042】
〔促進試験装置の説明〕
図3に示す、促進試験装置は、フレーム(図示せず)に、多孔質弾性舗装材Pを載置固定できる載置台10と、この載置台10をスライド往復させる往復駆動機20と、タイヤ状体T0 のトレッド部Tを転動自在に上記弾性舗装材Pに圧接する圧接機30と、上記多孔質弾性舗装材Pの表面に、硬質粒体(珪砂等)と水とをそれぞれ散布する各散布機40,50とが設けられている。上記タイヤ状体T0 は、そのトレッド部Tと、このタイヤ状体T0 の中空部に内嵌されるホイールWと、ホイールWの中心軸を同軸的に貫通するシャフトSとからなり、そのシャフトSの両端部は、雄ねじが螺刻されている。
【0043】
上記載置台10は、タイヤ状体T0 のトレッド部Tの通過路よりも広い略四角形の板状に形成されており、上記フレームに固定された一対のガイドレールRに乗って矢印A方向にスライド自在に設けられている。また、上記載置台10の一端の固定部には、下記往復駆動機20の接続ロッド23が取り付けられる接続ピン11が設けられている。
【0044】
上記往復駆動機20は、駆動モータ21と、この駆動モータ21の動力により回転される円板クランク22と、この円板クランク22の偏心軸22aと上記載置台10の一端の接続ピン11とを接続する接続ロッド23とを備えている。そして、円板クランク22の矢印B方向への回転により、上記載置台10がスライド往復するようになっている。なお、図において、24は減速機である。
【0045】
上記圧接機30は、タイヤ状体T0 を回転自在に固定するコ字状の固定部31と、この固定部31を上下させる油圧シリンダ32とを備えている。上記固定部31は、コ字状の開放端を下にして設けられており、コ字状の対面する2つの板の下端中央に、上方に延びる切り欠き溝(図では隠れている)が形成されている。そして、上記タイヤ状体T0 の固定は、上記切り欠き溝の開放端からタイヤ状体T0 のシャフトSを挿入し、ナットNにより締め付けて固定する。
【0046】
上記散布機40,50は、硬質粒体と水をそれぞれ収容する容器41,51と、この容器41,51の下部から硬質粒体と水をそれぞれ吐出させるノズル42,52と、その吐出量をそれぞれ調節する調節弁(図示せず)とを備えている。そして、ノズル42,52の先端は、上記弾性舗装材Pの表面とタイヤ状体T0 のトレッド部Tとが当接する領域の方向に向けられ、その領域に硬質粒体と水とがそれぞれ散布されるようになっている。
【0047】
〔耐光劣化試験〕
上記図3に示す促進試験装置を用いての促進試験に先立ち、つぎのようにして耐光劣化試験をおこなった。すなわち、実施例および比較例の多孔質弾性舗装材を、キセノンウェザオメーター(スガ試験機、SX75)にて、耐光劣化させた。なお、試験は、JIS K6266−1966に準拠し、ブラックパネル温度60℃、照射102分後、18分間の照射および水噴霧を繰り返し、試験時間400時間の条件で行った。
【0048】
〔促進試験〕
上記耐光劣化試験後の多孔質弾性舗装材を用い、上記図3に示す促進試験装置により、促進試験を行った。すなわち、多孔質弾性舗装材Pの4隅の貫通孔(図示せず)にボルト(図示せず)を挿通させ、そのボルトで上記載置台10に固定した。ついで、上記圧接機30の固定部31を下降させ、上記タイヤ状体T0 のトレッド部Tを上記多孔質弾性舗装材Pの表面に圧接した。その状態で、上記散布機40,50から、硬質粒体と水とを散布するとともに、上記往復駆動機20を作動させ、上記載置台10とともに上記多孔質弾性舗装材Pをスライド往復させた。なお、タイヤ状体T0 として、ソリッドタイヤ(リブレス、外径43cm、接地幅13cm)を用い、ソリッドタイヤのトレッド部Tと、多孔質弾性舗装材Pの表面との接地圧を0.7MPaとした。また、硬質粒体(珪砂7号)の散布量は、試験開始時と往復回数3万回毎に、500cm2 当り10gとし、水の散布量は、試験開始時と往復回数3万回毎に、500cm2 当り100cm3 とした。また、スライド往復の1往復の長さを450mm、往復回数を1時間当り5000回とした。
【0049】
〔すべり摩擦係数(μwet)〕
上記スライド往復を特定回数行った後、上記多孔質弾性舗装材Pを上記載置台10から取り外し、その多孔質弾性舗装材Pのすべり摩擦係数(μwet)を、DFテスター(日邦産業社製)を用いて、ASTM E1911−98に準じて測定した。その結果を、図4のグラフ図に示した。
【0050】
図4の結果から、実施例品は、凝集硬質骨材を用いているため、すべり摩擦係数(μwet)の経時的変化が小さく、耐久性に優れていた。
【0051】
これに対して、比較例品は、凝集硬質骨材に代えて、凝集体ではない通常の硬質骨材(6号珪砂)を用いているため、硬質骨材(6号珪砂)の脱落により、すべり摩擦係数(μwet)の経時的変化が大きく、耐久性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の多孔質弾性舗装材は、道路用のみに限定されるものではなく、例えば、遊歩道や競技場のフィールド等に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の多孔質弾性舗装材の要部を示す概略断面図である。
【図2】凝集硬質骨材の表面摩擦の状態を示す概略断面図である。
【図3】促進試験装置を示す説明図である。
【図4】実施例品および比較例品のすべり摩擦係数の測定結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0054】
1 弾性骨材
2 凝集硬質骨材
3 バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性骨材と、硬質骨材と、バインダーとを用いて成形されてなる多孔質弾性舗装材であって、上記硬質骨材が、多数の硬質骨材を結着剤にて凝集結着させた凝集結着体からなる凝集硬質骨材であることを特徴とする多孔質弾性舗装材。
【請求項2】
上記凝集硬質骨材中の硬質骨材の比率が、25〜95体積%の範囲内である請求項1記載の多孔質弾性舗装材。
【請求項3】
上記凝集硬質骨材が、樹脂およびゴムの少なくとも一方を用いて硬質骨材を凝集結着させてなるものである請求項1または2記載の多孔質弾性舗装材。
【請求項4】
上記凝集硬質骨材の大きさ(直径)が、弾性骨材の直径の1/2以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質弾性舗装材。
【請求項5】
上記凝集硬質骨材の形状が、楕円球状、長円柱状または多面体形状である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質弾性舗装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−89942(P2006−89942A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273840(P2004−273840)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】