説明

多孔質電極、その多孔質電極を有する複合素子、およびその製造方法

【課題】
光の利用効率が高く、かつ高度な可撓性を有する電極および該電極の製造方法を提供する。
【解決手段】
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極。
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の表面に導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質を含む液を塗工し、多孔質フィルム(A)の貫通孔に前記導電性物質を充填する工程を有する多孔質電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質電極、該多孔質電極を有する複合素子、ならびに該多孔質電極または複合素子を構成部材として含む色素増感太陽電池および電気二重層キャパシターに関する。また本発明は、前記多孔質電極および複合素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などの光電変換素子はクリーンなエネルギー源として大きく期待されており、すでにpn接合型のシリコン系太陽電池などが実用化されている。しかし、前記シリコン系太陽電池は高純度材料の原料を必要とし、またその製造工程も1000℃程度の高温プロセスや真空プロセスを必要とするため、製造コストの低減が大きな課題となっている。そこで、近年、必ずしも高純度材料及び高エネルギープロセスを必要とせず、固液界面に生じる電位勾配により電荷分離を行う湿式太陽電池が注目を集めている。
【0003】
特に、半導体電極の表面に光を吸収する色素を吸着させ、半導体電極のバンドギャップより長波長の可視光を色素で吸収させることにより光電変換効率の向上を図ったいわゆる色素増感太陽電池に関する研究が盛んに行われている。
【0004】
しかしながら従来の色素増感太陽電池は、光の利用効率が極めて悪いものであった。従来半導体電極に用いられていた単結晶や多結晶の半導体は、表面が平滑で内部に細孔を持たないものであった。そのため増感色素が担持される有効面積は電極面積と同程度にすぎず、増感色素の担持量が少ない電極しか得られなかった。このような電極では、該電極の表面に担持された単分子層の増感色素しかエネルギーの発生に寄与することができず、その光の吸収量は最大吸収波長でも入射光の1%以下にすぎなかった。光捕集力を高めるために増感色素を多層にする試みも提案されているが、概して充分な効果が得られていない。
【0005】
このような状況の中で、グレッツェルらは、上記問題を解決する手段として、酸化チタン電極を多孔質化し、増感色素を担持させ、内部面積を著しく増大させる方法を提案した(非特許文献1、特許文献1参照)。
【0006】
このように多孔質酸化チタンの表面に増感色素を吸着することにより、実質的な電子の注入量を飛躍的に向上させ、光の捕集力を高めることが可能となった。
【0007】
図1は前掲の非特許文献1に記載されている色素増感太陽電池の断面構造を示す模式図である。光は透明基板11側から入射する。集電電極12としては、光電変換層が集電電極下部に存在するため酸化スズ膜のような透明導電膜が用いられる。符号13は増感色素を担持した半導体電極層を示す。半導体電極層13は粒径がほぼ50nm以下の酸化チタンが集電電極12に焼結した状態の多孔質構造をとる。符号14は電解質溶液を示し、前記色素を担持した半導体電極層13に浸潤するように設けられている。符号15は対向電極を示す。この対向電極は基板16の上に設けられている。
【0008】
上記構成からなる色素増感太陽電池は以下の作用機構で光電変換を行なう。まず、色素増感太陽電池に入射した光は、透光性のある集電電極を通り、半導体に吸着した増感色素17により吸収され、励起電子が発生する。発生した励起電子は半導体に移動し、半導体電極層13を伝って負極に達する。励起電子を失った色素は電解質溶液中に含まれる酸化還元体のうち還元状態の電解質から電子を受け取り元の状態に戻る。電子を失い酸化状態となった電解質溶液中に含まれる酸化還元体は白金膜のある対向電極15から電子を受け取り還元状態に戻る。
【0009】
【非特許文献1】B. Oregan, M. Gratzel, Nature, 353, 737(1991)
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら従来の色素増感太陽電池は、可撓性のあるプラスチックフィルムを透明基板11として採用すると、酸化チタンからなる半導体電極層がフィルムの可撓性に対応できずに亀裂や剥離が起こることがあった。酸化チタン超微粒子の目付け(塗布量)を低下させ、半導体電極層の厚み自体を低減させることにより、亀裂や剥離をある程度抑えることも可能ではあるが、その場合は受光面積あたりの酸化チタン量が減少するため光の利用効率が低下してしまうという問題があった。
【0011】
この課題に対し、いくつかの解決策が提案された。WO93/20569号公報では、塗布膜のクラックを軽減させるために、酸化チタンペーストにノニオンタイプの界面活性剤“TRITON X−100”を添加する方法が提示されている。しかし界面活性剤が酸
化チタンに対して40重量%も添加しており、酸化チタン膜中の電子伝達を阻害することがあった。特開2003−272722号公報には、フッ素ポリマーを結着剤として、酸化チタンに対して1%程度使用する方法が提示されているが、結着剤の添加量が少ないため可撓性が不十分であった。また、太陽エネルギーvol.29,No. 4,2003には、少量の結着剤を添加した酸化チタン粒子をコートした後、圧縮して粒子同士の結合性を向上させる方法が提示されている。しかしながらこの方法では、圧縮力により酸化チタン粒子の多孔質構造が破壊されてしまい、好ましくない。
【0012】
本発明者らは光の利用効率が高く、かつ高度な可撓性を有する電極としては、高度な柔軟性と表面積を兼ね備えた、いわば動物の「腸」のような構造を手本とすべきと考え鋭意検討を行った結果、微多孔構造をもった多孔質フィルムをテンプレート(鋳型)として構造形成された電極が上記課題を有効に解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1つの態様において、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極を提供する。なお、「多孔質電極」という呼称は、本発明の幾つかの態様で使用される「対向電極」や「集電電極」と区別するために用いられるものであり、その構成材料である「多孔質フィルム(A)」に因んで名づけられたものである。「多孔質電極」という名称における「多孔質」という接頭語は、この電極に関する構造上の限定を意図するものではない。すなわち、多孔質フィルム(A)の全ての貫通孔が導電性物質で閉塞されている電極であっても、「多孔質電極」と称される。
本発明は、他の態様において、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極の片面に、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が積層されている複合素子を提供する。
本発明は、他の態様において、互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に多孔質電極を介して配置された電解質とを有する色素増感太陽電池であって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、半導体が充填されている電極であり、前記第2の基板は透明基板であり、該半導体と対向電極とは接触しておらず、前記半導体の表面に増感色素が担持されていることを特徴とする色素増感太陽電池を提供する。
本発明は、他の態様において、互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に前記多孔質電極を介して配置されている電解質を有する電気二重層キャパシターであって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体が充填されている電極であり、該導電体と対向電極とは接触していないことを特徴とする電気二重層キャパシターを提供する。
本発明は、他の態様において、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の表面に導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質を含む液を塗工し、多孔質フィルム(A)の貫通孔に前記導電性物質を充填する工程を有する多孔質電極の製造方法を提供する。
本発明は、他の態様において、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されてなる多孔質電極の片面に、高分子と溶媒とを含有する高分子溶液を塗布して高分子溶液層を形成する工程、および、該高分子溶液層から溶媒を除去して、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)を形成する工程を有する複合素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多孔質電極は、光の利用効率が高く、かつ高度な可撓性を有する。また本発明の複合素子は、光の利用効率が高く、かつ高度な可撓性を有する。さらに本発明の多孔質電極または複合素子を構成部材として有する色素増感太陽電池あるいは電気二重層キャパシターは、光の利用効率が高く、かつ高度な可撓性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図2は本発明の多孔質電極を用いた色素増感太陽電池の断面構造を示す模式図である。図2において、符号21は透明基板を、符号22は集電電極を示す。符号23は増感色素27が担持されている本発明の多孔質電極を表す。多孔質電極23中の導電性物質231は、粒子状の導電性物質を多孔質フィルム(A)232の貫通孔内に緻密に充填することにより形成される、単位体積あたりの表面積が広い物質である。符号24は電解質溶液を示し、前記色素を担持した多孔質電極23に浸潤するように設けられている。符号25は対向電極を示し、基板26上に設けられている。
【0017】
透明基板21としては、可撓性を有するガラス基板や金属箔を用いることも可能だが、フレキシブルな太陽電池モジュールの作製にはフィルム基板の使用が好ましい。また透明基板21は光入射基板として機能するので、厚み100μmあたりのHAZE値が2%以下の材料を用いた透明なフィルムであることが好ましい。このようなフィルムとしては、ジアセテートセルロースフィルム、トリアセテートセルロースフィルム、テトラアセチルセルロースフィルムなどのセルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、塩酸ゴムフィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルムなどが使用できる。この中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルムは、強靭性且つ耐熱性に優れるため好ましく用いられる。
【0018】
透明基板21の一方の面に配設される集電電極22は、導電体の層であり、光電変換素子の負極として機能する。
【0019】
好ましい導電体としては透明導電性の金属酸化物、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素ドープした酸化錫(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化錫(SnO2)のような金属酸化物およびそれらにアンチモンをドープしたもの、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタルのような金属またはこれらを含む合金、あるいは、黒鉛のような各種炭素材料等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
集電電極22の平均厚さとしては、材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、次のようにすることができる。
集電電極22を前記の金属酸化物(透明導電性金属酸化物)で構成する場合、その平均厚さとしては、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1.5μmであることがより好ましい。
【0021】
集電電極22を前記の金属またはこれらを含む合金、あるいは、各種炭素材料で構成する場合、その平均厚さとしては、0.01〜1μmであることが好ましく、0.03〜0.1μmであることがより好ましい。
【0022】
集電電極22の表面抵抗値は低いことが好ましい。好ましい表面抵抗値の範囲としては、50Ω/cm2以下であり、より好ましくは30Ω/cm2以下である。下限値に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm2以上である。
【0023】
集電電極22の光透過率は高いことが好ましい。好ましい光透過率の範囲としては50%以上であり、より好ましくは80%以上である。十分な光を電極231に入射させることができるからである。透明な集電電極22を使用する場合、光は増感色素が担持された電極23が被着される集電電極22側から入射させることが好ましい。
【0024】
本発明の多孔質電極の製造方法は、多孔質フィルム(A)232の表面に導電性物質を含む液を塗工し、多孔質フィルム(A)の貫通孔に前記導電性物質を充填する工程を含む。導電性物質を含む液は、液状にした導電性物質であってもよいし、導電性物質を溶媒に溶解させた液であってもよい。また導電性物質粒子を溶媒に分散させた液でもよい。具体的には、多孔質フィルム(A)に導電性物質を含む液をドクターブレードやバーコーターなどを使い塗布して乾燥させる方法、スプレー法、ディップコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法などの方法により塗布して乾燥させる方法が挙げられる。塗布乾燥の際には、より効率よく分散媒を除去するために、導電性物質を含む液の塗布中および/または塗布後に、塗布面の反対面から分散媒を吸引することも有効である。また、導電性物質粒子の分散液を用いて多孔質フィルム(A)に導電性物質を充填した場合には、充填後に加熱処理又はプレスすることにより、導電性物質粒子間の密着性を向上させることも有効である。多孔質フィルム(A)への導電性物質の充填量は、導電性物質を含む液の塗布量や、塗布乾燥とプレスを繰り返すことによって制御できる。
【0025】
多孔質フィルム(A)232中の導電性物質231の充填量は、0.5〜500g/m2の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜250g/m2であり、さらに好ましくは25〜150g/m2であり、最も好ましい範囲は50〜100g/m2である。この範囲内であれば、十分な光電変換効果が得られ、かつ可撓性にも優れるからである。
【0026】
導電性物質が導電性物質粒子の集合体である場合、導電性物質粒子を溶媒に分散させた液を用いて多孔質電極を製造するが、このときの分散液中の導電性物質粒子の粒径は、1〜1000nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、電解質が多孔質フィルム(A)232の中に十分浸透して、優れた光電変換特性を得ることができるからである。特に好ましい導電性物質粒子の粒径の範囲は、5〜100nmである。
【0027】
導電性物質231は、導電体および半導体からなる群から選択される物質であり、導電体、半導体、または両者の組み合せ(混合物)であってよい。
半導体としては、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物;SrTiO3、CaTiO3などのペロブスカイト;CdS、ZnS、In23、PbS、Mo2S、WS2、Sb23、Bi23、ZnCdS2、Cu2Sなどの硫化物;CdSe、In2Se3、WSe2、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド;その他GaAs、Si、Se、Cd23、Zn23、InP、AgBr、PbI2、HgI2、BiI3など;前記導電性物質から選ばれる少なくとも一種を含む複合体、例えばCdS/TiO2、CdS/AgI、Ag2S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdSx/CdSe1-x、CdSx/Te1-x、CdSex/Te1-x、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO2/Cd32、CdS/CdSeCdyZn1-yS、CdS/HgS/CdSなどが挙げられる。中でもTiO2が、グレッツェル・セルにおいて電解質溶液中への光溶解の回避と高い光電変換特性を実現できる点で好ましい。
導電体としては、例えば黒鉛、活性炭、カーボンブラック等の炭素質粉末や、銅、鉄、アルミニウム、金などの金属が挙げられる。
電気二重層キャパシターの要素として本発明の多孔質電極を用いる場合には、導電性物質としては導電体を使用するのが一般的であり、導電体としては炭素質粉末が好ましく、活性炭が特に好ましい。電気二重層キャパシターの静電容量の観点から、炭素質粉末の比表面積は700〜2500m2/gであることが好ましく、特に好ましくは1000〜1800m2/gである。また、活性炭粉末以外に、カーボンブラック、ポリアセン等の大比表面積の材料も好ましく使用できる。特に、高比表面積の活性炭粉末と、カーボンブラックを混合して使用することが好ましい。
【0028】
多孔質フィルム(A)232としては、濾過用フィルター(メンブレンフィルター)用多孔質フィルム、公知の一次又は二次電池セパレータ用多孔質フィルム等が使用できる。なお、多孔質フィルム(A)には、電解質溶液中の電解質が通過できるようにフィルムの表面から裏面に通じる貫通孔(空隙)がなければならない。多孔質フィルム(A)が有する貫通孔は、該フィルムの一方の面から他方の面を直線的に貫く孔であってよい。また、貫通孔は、多孔質フィルム(A)の内部に、該フィルムの構成材料で形成された三次元ネットワーク構造よって画成されており、該フィルムの一方の面から他方の面に連通している三次元ネットワーク状の空間であってもよい。このような三次元ネットワーク状の空間からなる貫通孔を有する多孔質フィルムの例としては、米国特許公開2002−0192454号の特許請求の範囲と明細書に記載された多孔質フィルムが挙げられる。
【0029】
多孔質フィルム(A)232を構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;ポリアミド類;ポリイミド;アセタール化ポリビニルアルコール(ビニロン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;ポリフェニレンスルフィドが好適である。多孔質材料は、単一であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
多孔質フィルム(A)232の厚みとしては特に限定されないが、一般的には0.1〜50μmである。多孔質フィルム(A)232が厚すぎると、電解質の移動距離が長くなるため、電池性能が低下する傾向にある。
【0031】
多孔質フィルム(A)232の空孔率は40〜90%である。空孔率が40%より低ければ、導電性物質の担持量が少なくなることや、電解質溶液の移動を妨げてしまうことにより、エネルギー変換効率が低下する。また空孔率が90%以上であると、実質的に貫通孔を有していない基板を使用するのと同じことになり、エネルギー効率が悪くなり、可撓性にも劣る。
【0032】
多孔質フィルム(A)の空孔率とは、空孔率=(1−V1/V)×100で定義される。ここで、V1はフィルムの真の体積であり、Vは同じフィルムの見掛け体積である。空孔率は、以下の方法で求めることができる。まず、多孔質フィルムを直径32mmの円盤状に打ち抜き、得られた試験片の見掛け体積(V)を水中置換法により測定する。一方、同じ多孔質フィルムから採取した同様の試験片の真体積(V1 )を、島津製作所製のオートピクノメーター アキュピック 1320 型を用いて測定する。得られたVの値とV1の値を用いて空孔率を算出する。
【0033】
多孔質フィルム(A)232の平均孔径d1は、0.02〜3μmであり、好ましくは0.04〜1μmである。平均孔径d1が小さすぎると導電性物質231の充填が困難となり、大きすぎると導電性物質の単位体積あたりの表面積が小さくなり、光電変換効果が不十分となる。
【0034】
多孔質フィルム(A)の平均孔径d1とは、JIS K1150に準拠し、水銀圧入法により求められる平均孔半径r(μm)を2倍した値、すなわち2rである。平均孔半径は、オートポア III9420(MICROMERITICS社製)を用いて測定する。
【0035】
導電性物質粒子を多孔質フィルム(A)232の空孔中に充填して多孔質電極とする場合、多孔質フィルム(A)232の孔径の下限は、導電性物質粒子の粒径とほぼ等しいことが好ましい。
【0036】
このような多孔質フィルム(A)232は、概して、ガーレー値(JIS P8117に準ずる)が厚さ25μmあたり10〜500秒/100cm3 であることを一つの目安とすることが出来る。
【0037】
前記したような多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電性物質が充填されている多孔質電極は、光の利用効率が高く、かつ可撓性に優れるものである。さらに引張り応力に対しても耐性があり、ロールトゥロール方式での集電電極との貼合工程や、後述する増感色素の担持工程、所望の幅に切るスリット工程など、激しい機械的な変形を伴う工程を経ても破壊されることがなく、生産性に優れたものである。
本発明において、導電性物質は、その全量が多孔質フィルム(A)中の貫通孔内に収容されていてもよく、また、一部の導電性物質が多孔質フィルム(A)の表面上に存在してもよい。適当量の導電性物質が多孔質フィルム(A)の表面上に存在している態様は、好ましい態様の1つである。ただし、過度に多量に多孔質フィルムの表面上に存在すると、多孔質電極を変形させたときにクラックが発生しやすくなる。
【0038】
本発明の多孔質電極は、導電性物質が多孔質フィルム(A)の厚み方向に密度勾配を形成して充填されていることが好ましい。前記密度勾配の程度は、多孔質フィルム(A)の一方の面における導電性物質の密度の、他方の面における導電性物質の密度に対する比の値が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。また、この比の値は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。導電性物質が多孔質フィルム(A)の厚み方向に密度勾配を形成して充填されてなる多孔質電極は、より高い可撓性を有するものである。また実際に電池として機能する際の動作原理に照らしても、電解質の拡散勾配が起電力をもたらすことに鑑みれば、集電電極22との対向面が多孔質フィルム(A)における導電性物質充填率の高い面、対向電極25との対抗面が導電性物質充填率の低い面となるように多孔質電極を設置することにより、光の利用のさらなる高効率化を期待できる。
【0039】
このような多孔質フィルム(A)の厚み方向における導電性物質の密度勾配は、導電性物質粒子径、導電性物質粒子分散液の濃度や水素イオン濃度の調整、多孔質フィルムの孔径、多孔質フィルムへの導電性物質粒子分散液の塗工条件(ライン速度、乾燥速度等)によって制御できる。多孔質フィルムの孔径に比して導電性物質粒子の粒径が小さすぎると密度勾配がつきにくく、大きすぎると多孔質フィルムの貫通孔内に導電性物質粒子を充填しにくくなる傾向がある。また十分に小さな粒径の導電性物質粒子を用いたとしても、分散液の濃度が高い場合や、水素イオン濃度の影響などにより導電性物質粒子が二次凝集している場合などは、導電性物質粒子径が大きい場合と同様導電性物質粒子を充填しにくいことがある。
【0040】
導電性物質の密度勾配を測定する方法としては、多孔質電極23の断面を電子顕微鏡により観察しながら、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により着目する元素濃度の空間分布を測定する手法を挙げることができる。その他にもTOF−SIMS、オージェ電子分光法などを用いてもよい。
【0041】
また、多孔質フィルム(A)として貫通孔の内壁が金属で被膜されてなるものを用いることにより、導電性物質に注入された電子を効率よく集電電極に導くことができる。このような多孔質フィルム(A)を用いることは、多孔質フィルム(A)中で導電性物質粒子が孤立していたり、互いの密着性が不十分で粒界抵抗が大きい場合に特に有効である。図3は、多孔質フィルム(A)の空孔内において、導電性物質231中の増感色素27で励起された電子(e-)が、導電性物質231を経て金属被膜34に伝わり、集電電極に向かって運ばれる様子を模式的に示している。
【0042】
多孔質フィルムの空孔内壁に金属被膜を形成する方法としては公知の方法を利用することができる。例えば、蒸着法(特開昭60−261502号)、金属無電解めっき法(特開昭64−56106号、特開平6−304454号)、スパッタリング法(特開昭63−152404号)などが挙げられる。
【0043】
これらのうち特に好ましい方法は、特開平6−304454号に提案されているような、多孔質フィルムの貫通孔の内壁表面をエッチング処理した後、金属無電解めっきする方法である。この方法によれば、貫通孔の内壁表面と金属被膜とを強固に密着させることができるため、可撓性により優れた多孔質電極を得ることができる。
【0044】
高濃度のエッチング処理を樹脂について行うと、樹脂の脱水素化、樹脂の酸化、樹脂の開裂、加水分解等により、炭素ラジカル,カルボキシル基(−COOH),カルボニル基(−C=O),水酸基(−OH)基、スルホン基(−SO3 H)、ニトリル基(−CN)等、金属と化学結合可能な官能基が樹脂側に生じる。これらの官能基が金属原子又は金属イオン(M)と結合することにより、例えば、−CM基,−COOM基,−COM基,−OM基、−SO3 M基,−CNM基を形成して金属が樹脂に化学的に結合する。
【0045】
エッチング処理液としては、金属と化学結合可能な官能基を樹脂に導入できるものであればよく、高濃度のクロム酸・硫酸溶液、高濃度の硫酸・硝酸混合液、高濃度の水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の強塩基、フッ化水素アンモニウム・硝酸等が挙げられる。エッチング処理液は樹脂に官能基を導入可能な濃度であればよく、具体的には、クロム酸濃度が30〜50%で硫酸濃度が10〜40%のクロム酸・硫酸溶液、10〜30%の強アルカリ、10〜30%硫酸と10〜30%硝酸とからなる硫酸・硝酸混液、10〜40%フッ化水素アンモニウムと40〜70%の硝酸とからなるフッ化水素アンモニウム・硝酸混液が挙げられる。
【0046】
多孔質フィルムの空孔内壁に金属を化学的に結合させるための無電解処理の際には、金属の還元反応を促進する触媒を介在させてこの金属を化学的に結合することが望ましく、特に、無電解処理の触媒となるPd又はPd,Snのような触媒金属を介在させることが望ましい。この場合、空孔内壁に一旦触媒金属が結合する。
【0047】
このように触媒金属が結合した樹脂を金属イオン、錯形成剤、及び還元剤を含有する金属の溶液で処理すると、触媒金属表面で金属イオンの還元反応が生じ、金属層が均一に形成される場合がある。
【0048】
無電解処理に際して金属イオンを発生させるための金属塩としては、硫酸塩,塩化物,硝酸塩の如く水溶性のものであれば良く特に限定されない。無電解処理により多孔質フィルムの空孔内壁を被覆する金属としては、例えば、Ni,Co,Fe,Mo,W,Cu,Re,Au,Agの少なくとも一種が挙げられる。還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム等のリン化合物、ホウ素化水素等のボロン化合物の他、ホルマリン、ブドウ糖等公知のものが使用される。また、錯化剤としては、金属イオンと安定した錯体を形成できるものであればよく、アンモニア、クエン酸、酒石酸、シュウ酸等公知のものが挙げられる。
【0049】
無電界めっきされた多孔質フィルムを、さらに電解処理してもよい。電解処理される金属としては、例えば、Cr,Zn,Ag,Au,Pt,Al,Mn,Bi,Se,Te,Cd,Ir,Ti,Niが挙げられる。
【0050】
金属被膜の厚みは特に制限はないが0.001μmから1μm程度が好ましい。金属被膜が薄すぎると導電性が保ちにくくなる傾向があり、厚すぎると可撓性が損なわれるおそれがある。
【0051】
図4は、本発明の複合素子を用いた色素増感太陽電池の断面構造を示す模式図である。多孔質フィルム(B)432は、実質的に導電性物質を含まない層であり、導電性物質231と対向電極25との物理的接触による短絡を防止する機能を持つ、いわゆるセパレータである。多孔質電極23と多孔質フィルム(B)432をあわせた素子が複合素子43である。
【0052】
本発明の複合素子は、多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電性物質が充填されている多孔質電極と、その片面に積層された多孔質フィルム(B)とからなる。
多孔質フィルム(B)432は、導電性物質231と対向電極45とが短絡することのないように隔離するとともに、電解質イオンが移動できるように貫通孔を有することが必要である。
【0053】
多孔質フィルム(B)432を構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;ポリアミド類;ポリイミド;アセタール化ポリビニルアルコール(ビニロン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;ポリフェニレンスルフィドが好適である。多孔質材料は、単一であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0054】
多孔質フィルム(B)432の厚みとしては特に限定されないが、0.1〜10μmであることが、電解質の移動容易性および絶縁性の観点から好ましい。
【0055】
多孔質フィルム(B)432は、電解質の移動容易性の観点から、空孔率が40〜90%であることが好ましい。
【0056】
多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも多孔質フィルム(B)の平均孔径が大きいと、複合素子に応力が加えられた場合に、多孔質フィルム(A)だけが収縮し、多孔質フィルム(A)に充填されていた導電性物質が多孔質フィルム(A)から突出し、多孔質フィルム(B)の貫通孔を通って対向電極45と接触し、短絡してしまうおそれがある。よって多孔質フィルム(B)は、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも小さい平均孔径の孔を有する。
多孔質フィルム(B)の平均孔径は、0.002μm〜0.7d1であることが好ましい。ここでd1は多孔質フィルム(A)の平均孔径である。多孔質フィルム(B)の平均孔径が小さすぎると電解質が移動しにくくなることがある。
【0057】
複合素子の製造方法は、2つのタイプに大別される。
第1は、まず、多孔質フィルム(A)の貫通孔内に導電性物質を充填して多孔質電極を調製し、次いで、その多孔質電極の一方の面上に多孔質フィルム(B)を配置する方法である。具体的には、例えば、貫通孔を有する前記多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極の片面に、高分子を溶媒に溶解した高分子溶液を塗布して高分子溶液層を形成した後、該高分子溶液層から溶媒を除去することにより、多孔質フィルム(B)を設ける工程を有する方法である。
【0058】
第2は、まず、多孔質フィルム(A)と多孔質フィルム(B)とからなる積層多孔質フィルムを作製し、次いで、多孔質フィルム(A)の貫通孔のみに導電性物質を充填する方法である。
具体的には、例えば、適宜の方法で作製した多孔質フィルム(A)と多孔質フィルム(B)とが積層されている積層多孔質フィルムにおける多孔質フィルム(A)面に、導電性物質を含む液を塗工し、多孔質フィルム(A)の貫通孔に導電性物質を充填する工程を有する方法が挙げられる。ただしこの場合には、多孔質フィルム(B)に導電性物質が充填されないようにすることが必要である。例えば導電性物質を含む液として、粒子径が多孔質フィルム(A)の平均孔径よりも小さく、かつ多孔質フィルム(B)の平均孔径よりも大きい導電性物質粒子分散液を用いればよい。
【0059】
多孔質フィルム(B)432と多孔質フィルム(A)232とからなる積層多孔質フィルムを得る方法については、特に制限はないが、下記(1)、(2)および(3)の方法が例示される。
(1)別々に調製された多孔質フィルム(A)と多孔質フィルム(B)とを熱接着やドライラミネート法などの公知の方法により積層する方法
(2)フィラーを含有する2種の樹脂材料を共押出法により積層して2層共押出体を得、ついでそれを延伸して各層を多孔質化する方法
(3)特開平9−38475、特開2003−40999に開示されているごとく、一方の多孔質フィルムの表面に、他方の多孔質フィルムの材料の溶液を塗布して溶液層を形成し、次いで該溶液層から溶媒を除去して、元の多孔質フィルムの上に新たな多孔質フィルムを形成する方法などが例示できる。
多孔質フィルム(B)の平均孔径が多孔質フィルム(A)の平均孔径d1より小さいという要件を満たす複合素子を得るためには、上記(1)の方法においては、例えば、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい多孔性フィルムを選択すればよい。(2)の方法においては、例えば、多孔性フィルム(A)用材料に配合するフィラーの粒径よりも小さい粒径を有するフィラーを多孔性フィルム(B)用材料に配合すればよい。さらに、(3)の方法においては、例えば、塗布する溶液の濃度を調節したり、溶液を塗布した後に急冷却して溶質と溶媒とをミクロ相分離させたりすればよい。
【0060】
導電性物質表面に担持させる増感色素としては、従来の色素増感性光電変換素子で常用される色素であれば全て使用できる。このような色素は、例えば、RuL2(H2O)2タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、ルテニウム−トリス(RuL3)、ルテニウム−ビス(RuL2)、オスニウム−トリス(OsL3)、オスニウム−ビス(OsL2)タイプの遷移金属錯体、亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。有機色素としては、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。この中でもルテニウム−ビス(RuL2)誘導体は、可視光域で広い吸収スペクトルを有するため、特に好ましい。
【0061】
導電性物質表面に増感色素を担持させる方法は、例えば、増感色素を溶かした溶液に、導電性物質を充填した多孔質電極を浸漬させる方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドなど増感色素を溶解可能なものであれば全て使用できる。また、増感色素溶液に多孔質電極を浸漬しているときに、加熱したり、超音波を印加することもできる。増感色素溶液から多孔質電極を取り出した後、導電性物質に固着していない増感色素を取り除くために、多孔質電極を適当な温度(例えば、室温または沸点)のアルコールで洗浄することが望ましい。
【0062】
導電性物質中の増感色素の担持量としては、1×10-8〜1×10-6mol/cm2の範囲内であればよく、特に1×10-8〜9.0×10-7mol/cm2が好ましい。この範囲内であれば、経済的且つ十分に光電変換効率向上の効果を得ることができる。
【0063】
本発明の多孔質電極あるいは複合素子を対向電極と集電電極との間に配置して色素増感太陽電池または電気二重層キャパシターを作製する際には、一般に、対向電極と集電電極との間に電解質溶液を存在させる。該電解質溶液は、多孔質電極あるいは複合素子の貫通孔の内部にも存在することになる。電解質溶液は電解質と溶媒から構成される。
電解質としては、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、およびテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などのヨウ化物と、I2との組み合わせ;LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物、およびテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩などの臭化物と、Br2との組み合わせ;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物;ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノンなどが挙げられる。これらの中でも、LiI、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドとI2との組み合わせが好ましい。上記の電解質は2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
溶媒としては、粘度が低く、イオン移動度を向上させ、誘電率が高く、有効キャリア濃度を向上させるような優れたイオン伝導性を発現させる化合物が望ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類;メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物;ジメチルスルフォキシド、スルフォランなど非プロトン極性物質;水などが挙げられる。
【0065】
電解質溶液中の電解質濃度は、0.1〜5mol/l程度が好ましい。また、電解質溶液にヨウ素を添加する場合の添加濃度は、0.01〜0.5mol/l程度が好ましい。
【0066】
電解質溶液には、J.Am.Ceram.Soc.,80(12)3157−3171(1997)に記載されているように、ter−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジンなどの塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物を添加する場合の添加濃度は、0.05〜2mol/l程度が好ましい。
【0067】
電解質溶液に代えて、固体電解質を用いてもよい。ここで、固体電解質とは、電解質とイオン伝導性高分子化合物の混合物である。イオン伝導性高分子化合物としては、例えば、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリアミン類、ポリスルフィド類などの極性高分子化合物が挙げられる。
【0068】
また、電解質溶液に代えて、電解質、溶媒およびゲル化剤を用いて作製したゲル電解質を用いてもよい。ゲル化剤としては、高分子ゲル化剤が良好に用いられる。例えば、架橋ポリアクリル樹脂誘導体や架橋ポリアクリロニトリル誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、シリコン樹脂類、側鎖に含窒素複素環式四級化合物塩構造を有するポリマーなどの高分子ゲル化剤などが挙げられる。
【0069】
更にまた、電解質溶液に代えて、溶融塩ゲルを用いることもできる。この場合、溶融塩が電解質である。溶融塩ゲルとしては、ゲル材料に常温型溶融塩を添加したものを用いることができる。常温型溶融塩としては、ピリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類などの含窒素複素環式四級アンモニウム塩化合物類が良好に用いられる。
【0070】
対向電極は光電変換素子を光電気化学電池としたときに正極として作用するものであり、一般的には、支持基板とその上に形成された導電性材料からなる導電層とからなる。導電性材料としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。中でも白金、金、銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましい。支持基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板である。導電層は、支持基板上に上記導電性材料を塗布又は蒸着して形成される。導電層の厚さは特に制限されないが3nm〜10μmであるのが好ましい。対向電極の表面抵抗は低い程よく、50Ω/cm2以下であるのが好ましく、20Ω/cm2以下であるのがより好ましい。
【0071】
基板26は、透明基板21と同じ材料を使用することができる。基板の透光性は透明、不透明のいずれでもよいので、ニッケル、亜鉛、チタンなどの金属箔を使用することもできるが、透明であれば両側の基板21、26から光を入射させることができるので好ましい。
【0072】
本発明の多孔質電極あるいは該多孔質電極に多孔質フィルム(B)が積層された複合素子は、光電変換効率に優れ、かつ可撓性にも優れるため、色素増感太陽電池や電気二重層キャパシターの構成部材として好適に用いられる。
【0073】
本発明の1つの態様である色素増感太陽電池は、互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に多孔質電極を介して配置された電解質とを有する色素増感太陽電池であって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、半導体が充填されている電極であり、前記第2の基板は透明基板であり、該半導体と対向電極とは接触しておらず、前記半導体の表面に増感色素が担持されている色素増感太陽電池である。半導体と対向電極との非接触を確実に達成するために、前記多孔質電極と前記対向電極との間に、該多孔質電極の表面に積層された、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が配置されていることが好ましい。この改良された態様は、本発明の複合素子の応用である。多孔質フィルム(B)の貫通孔には実質的に導電性物質が充填されていないことが好ましい。なお、多孔質フィルム(A)の貫通孔には、半導体と共に導電体が充填されていることが好ましい。
【0074】
色素増感太陽電池は、基板と透明基板の間に対向電極、多孔質電極(ただし、導電性物質は少なくとも半導体を含む)または複合素子、集電電極の順に挟んで容器中に収納し、この容器内に電解質溶液またはその等価物を好ましくは減圧状態で注入し、この電解質溶液またはその等価物を多孔質電極または複合素子に十分に含浸せしめた後、容器を封止することによって作製することができる。多孔質電極に多孔質フィルム(B)が積層された複合素子を用いる場合には、該複合素子の多孔質フィルム(B)側と対向電極とが積層されるようにする。色素増感太陽電池の製造においては、増感色素が担持されている多孔質電極を使用する。
【0075】
本発明の1つの態様である電気二重層キャパシターは、互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に前記多孔質電極を介して配置されている電解質を有する電気二重層キャパシターであって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体が充填されている電極であり、該導電体と対向電極とは接触していない電気二重層キャパシターである。導電体と対向電極との非接触を確実に達成するために、前記多孔質電極と前記対向電極との間に、該多孔質電極の表面に積層された、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が配置されていることが好ましい。この改良された態様は、本発明の複合素子の応用である。なお、前記導電体は炭素質粉末であることが好ましく、活性炭であることがより好ましい。
【0076】
電気二重層キャパシターは、例えば、電気二重層キャパシターは2枚の基板の間に、対抗電極、多孔質電極(ただし、導電性物質は導電体である)または複合素子、集電電極の順に挟んで容器中に収納し、この容器内に非水電解質溶液またはその等価物を好ましくは減圧状態で注入し、この電解質溶液またはその等価物を多孔質電極または複合素子に十分含浸せしめた後、容器を封止することによって作製することができる。多孔質電極に多孔質フィルム(B)が積層された複合素子を用いる場合には、該複合素子の多孔質フィルム(B)側と対向電極とが積層されるようにする。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
(1)フィルム厚み測定
フィルムの厚みは、Mitsutoyo 社製デジタルマイクロメーターVL−50を用いて、幅方向、長さ方向にわたり、10点でフィルムの厚みを測定し、全測定値の平均値を算出した。その平均値をフィルムの厚みとした。
【0079】
(2)平均孔径
JIS K1150に準拠し、水銀圧入法により、オートポア III9420(MICROMERITICS社製)にて平均孔半径r(μm)を測定し、平均孔径を2rとした。
【0080】
(3)空孔率
フィルムを直径32mmの円盤状に打ち抜き、水中置換により見掛け体積(V)を測定する。これとは別に、島津製作所製のオートピクノメーター アキュピック 1320 型を用いて真体積(V1)を測定する。フィルムの空孔率は、空孔率=(1−V1/V)×100 とする。
【0081】
(4)可撓性試験
図5に示すように直径2mmの針金を挟むようにしてフィルムを180°に折りたたみ、広げた。次に裏面についても同様に針金を挟んで折りたたみ、フィルムを広げた。裏面を折る際には、表面と同じところで折りたたむようにした。折れ目の部分にクラックが入っているかどうかを目視で確認した。クラックが入っていなければ可撓性があることを示している。
【0082】
(実施例1)
炭酸カルシウム(Vigot10、白石カルシウム社製、平均粒子径0.1μm)56重量%と、ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン340M,三井化学製、重量平均分子量300万、融点136℃)32重量%とポリエチレンワックス(ハイワックス110P,三井化学製、重量平均分子量1000、融点110℃)12重量%の混合ポリエチレン樹脂を強混練できるようセグメント設計した2軸混練機(プラスチック工学研究所製)を使用して混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をロール圧延(ロール温度151℃)することにより、約60μmの膜厚の原反フィルムを作製した。
【0083】
得られた原反フィルムをテンター延伸機により延伸温度110℃で約6.5倍に一軸延伸し多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムを酸水溶液(塩酸濃度2mol/L、界面活性剤0.4重量%を含む)に浸漬して炭酸カルシウムを除去し、炭酸カルシウムを含まない多孔質フィルム(A)を得た。
得られた多孔質フィルム(A)は厚み14μm、空孔率48%、平均孔径0.1μmであった。
次いで、チタニアゾル溶液(触媒化成製 HPW−18NR:TiO2は15nm)と4重量%の界面活性剤水溶液(界面活性剤:三洋化成製サンモリン11)とを重量比100:7で混合して親油性チタニアゾル溶液を調製し、この溶液をアルミ板上に固定された多孔質フィルム(A)に手動にてバーコートした。バーとしてはガラス棒を用い、液膜厚みが50μmとなるようにスペーサーを敷設して行った。その後室温(25℃)にて乾燥させ電極を作製した。得られた電極の目付を測定し、塗布したチタニアの目付けを求めたところ約13g/m2であった。次いで本電極の半導体の密度勾配を測定するために、上記電極をエポキシ樹脂に包埋した後、クライオミクロトームで厚み方向断面を切り出し、SEM(電子顕微鏡)観察しながら、チタニア中のチタン元素の分布をEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
(1) 機種 EPMA-1610(島津製作所製)
(2) 加速電圧 15 kV
(3) ビーム電流 30.2 nA
(4) ビーム径 約 1μm
(5) 1点あたりの測定時間 5 msec.
(6) 検出波長 2.7 angstrom (Ti Kα)
4.7 angstrom (Cl Kα)
24 angstrom (O Kα)
(7) 分光結晶 PET (pentaerythritol;Ti、Cl)
LS5A (累積膜;O)
得られたEPMA像を図6(61)に、示す。61中、領域62が本発明の電極部であり、領域63は包埋に用いたエポキシ樹脂である。即ち方向64が多孔質フィルム(A)の深さ方向であり、65側が塗工表面、66側が塗工裏面である。電極における領域67のチタン元素の密度分布チャートを、図6(68)に示す。EPMA像に対応してチタン密度分布が分かりやすいようにチャート68をレイアウトしている。
半導体の密度勾配は、チタン元素の密度勾配に等しいとして以下のように算出した。
チャート68に見るように、チタン元素濃度は塗工表面65から深さ1μmで極大値を取り、その後なだらかに低下している。表面で最大値をとらず、それより少し深い位置で極大値をとる理由は、ビーム径が1μm程度なので、最表面では100%ビームが利用されていないことによる。したがって、深さ1μmの極大値をもって多孔質フィルム(A)最表面のチタン元素濃度とする。
一方塗工裏面のチタン濃度は、同様の理由によって、表面から1μmの深さの値とする。元素濃度に比例する放射線の強度(カウント数)は、塗工表面で75、塗工裏面で9.0であるから、その比はおよそ8:1である。得られた電極を用いて可撓性試験を行ったところ、クラックは発生していなかった。
【0084】
(実施例2)
複合素子
(1)パラアラミド溶液の合成
撹拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する5リットル(l)のセパラブルフラスコを使用してポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(以下、PPTAと略す)の合成を行った。十分乾燥したフラスコに4200gのNMPを投入し、さらに200℃で2時間乾燥した塩化カルシウム272.65gを添加して100℃に昇温した。塩化カルシウムが完全に溶解した後室温に戻して、パラフェニレンジアミン(以下、PPDと略す)132.91gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド(以下、TPCと略す)243.32gを10分割して約5分おきに添加した。その後溶液を20±2℃でに1時間保持し、気泡を抜くため減圧下30分撹拌した。得られた重合液は光学的異方性を示した。一部をサンプリングして水で再沈してポリマーとして取り出し、得られたPPTAの固有粘度を測定したところ1.97dl/gであった。次に、この重合液100gを、攪拌翼、温度計、窒素流入管および液体添加口を有する500mlのセパラブルフラスコに秤取し、NMP溶液を徐々に添加した。最終的に、PPTA濃度が2.0重量%のPPTA溶液を調製し、これをP液とした。
【0085】
(2)パラアラミド溶液の塗布と積層多孔質フィルムの作製
実施例1記載の多孔質フィルム(A)をガラス板上に固定し、テスター産業株式会社製バーコーター(間隙200μm)により、P液を塗布した。その後、湿度50%、温度23℃の条件下に保持してPPTAを析出させた後、イオン交換水に浸漬し、5分後に膜状物をガラス板から剥離し、イオン交換水を流しながら充分に水洗した後、60℃で減圧しながら膜状物を乾燥して積層多孔質フィルムを得た。該積層多孔質フィルムは、多孔質フィルム(A)に、PPTAからなる多孔質フィルム(B)が積層されてなるフィルムであった。
得られた積層多孔質フィルムは厚み18μm、空孔率51%、平均孔径0.029μmであった。
【0086】
次いで、実施例1と同様に、チタニアゾル溶液(触媒化成製 NR-18:TiO2は15nm)と4重量%の界面活性剤水溶液(界面活性剤:三洋化成製サンモリン11)とを重量比100:7で混合して親油性チタニアゾル溶液を調製し、積層多孔質フィルムの多孔質フィルム(A)側に塗布した後、室温(25℃)にて乾燥させ電極を作製した。得られた複合素子の目付を測定し、塗布したチタニアの目付けを求めたところ約12g/m2であった。
【0087】
得られた複合素子の可撓性試験を行ったところクラックは発生していなかった。
また、得られた複合素子の各面についてSEM観測(倍率10000倍)を行ったところ多孔質フィルム(A)面側にはチタニアが観察されたが、多孔質フィルム(B)面側にはチタニアは観察されなかった。
即ち多孔質フィルム(B)は絶縁層として作用していることが確認できた。
【0088】
(比較例1)
市販のPETフィルム(東洋紡製:A4100)に実施例1に記載の親油性チタニアゾル溶液を塗布し、30℃にて乾燥を行い電極を得た。
得られた電極の目付けを測定し、チタニアの塗布目付けを求めたところ4g/m2であった。
得られた電極の可撓性試験を行ったところクラックが多数発生した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】従来の色素増感太陽電池の概要断面図の一例である。
【図2】本発明の色素増感太陽電池の概要断面図の一例である。
【図3】空孔内壁が金属で被膜されてなる多孔質フィルム(A)の概要断面図の一例である。
【図4】本発明の色素増感太陽電池の概要断面図の一例である。
【図5】可撓性試験方法の概略図である。
【図6】(a)実施例1で得られた電極の厚み方向断面のEPMA像である。 (b)(a)の領域67のチタン元素密度チャートである。
【符号の説明】
【0090】
11・・透明基板
12・・集電電極
13・・半導体電極層
14・・電解質溶液
15・・導電膜
16・・基板
17・・増感色素
21・・透明基板
22・・集電電極
23・・多孔質電極
231・・導電性物質
232・・多孔質フィルム (A)
24・・電解質溶液
25・・対向電極
26・・基板
27・・増感色素
34・・金属被膜
43・・複合素子
432・・多孔質フィルム(B)
51・・電極または複合素子
52・・針金(直径2mm)
61・・EPMA像
62・・電極部
63・・包埋に用いたエポキシ樹脂
64・・深さ方向
65・・塗工表面
66・・塗工裏面
67・・チタン元素の分析領域
68・・チタン密度分布チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極。
【請求項2】
多孔質フィルム(A)の平均孔径d1が0.04〜1μmである請求項1に記載の多孔質電極。
【請求項3】
導電性物質が多孔質フィルム(A)の厚み方向に密度勾配を形成して充填されている請求項1または2に記載の多孔質電極。
【請求項4】
多孔質フィルム(A)の一方の面における導電性物質の密度の、他方の面における導電性物質の密度に対する比の値が2以上である請求項3に記載の多孔質電極。
【請求項5】
多孔質フィルム(A)の貫通孔の内壁が金属で被膜されている請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質電極。
【請求項6】
導電性物質が半導体である請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質電極。
【請求項7】
導電性物質が酸化チタンである請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質電極。
【請求項8】
導電性物質の表面に増感色素が担持されている請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質電極。
【請求項9】
導電性物質が導電体である請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質電極。
【請求項10】
導電性物質が炭素質粉末である請求項9に記載の多孔質電極。
【請求項11】
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されている多孔質電極の片面に、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が積層されている複合素子。
【請求項12】
多孔質フィルム(B)の貫通孔には実質的に導電性物質が充填されていないことを特徴とする請求項11に記載の複合素子。
【請求項13】
互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に多孔質電極を介して配置された電解質とを有する色素増感太陽電池であって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、半導体が充填されている電極であり、前記第2の基板は透明基板であり、該半導体と対向電極とは接触しておらず、前記半導体の表面に増感色素が担持されていることを特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項14】
多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、さらに導電体が充填されていることを特徴とする請求項13に記載の色素増感太陽電池。
【請求項15】
前記多孔質電極と前記対向電極との間に、該多孔質電極の表面に積層された、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が配置されていることを特徴とする請求項13または14に記載の色素増感太陽電池。
【請求項16】
多孔質フィルム(B)の貫通孔には実質的に導電性物質が充填されていないことを特徴とする請求項15に記載の色素増感太陽電池。
【請求項17】
互いに対向する第1及び第2の基板と、両基板の間に、第1の基板から近い順に配置されている対向電極、多孔質電極および集電電極、ならびに前記対向電極と集電電極との間に前記多孔質電極を介して配置されている電解質を有する電気二重層キャパシターであって、前記多孔質電極は、貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体が充填されている電極であり、該導電体と対向電極とは接触していないことを特徴とする電気二重層キャパシター。
【請求項18】
前記多孔質電極と前記対向電極との間に、該多孔質電極の表面に積層された、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)が配置されていることを特徴とする請求項17に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項19】
多孔質フィルム(B)の貫通孔には実質的に導電性物質が充填されていないことを特徴とする請求項18に記載の電気二重層キャパシター。
【請求項20】
前記導電体は炭素質粉末であることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の電気二重層キャパシター。
【請求項21】
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の表面に導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質を含む液を塗工し、多孔質フィルム(A)の貫通孔に前記導電性物質を充填する工程を有する多孔質電極の製造方法。
【請求項22】
貫通孔を有し、平均孔径d1が0.02〜3μmであり、空孔率が40〜90%である多孔質フィルム(A)の貫通孔中に、導電体と半導体とからなる群から選択される導電性物質が充填されてなる多孔質電極の片面に、高分子と溶媒とを含有する高分子溶液を塗布して高分子溶液層を形成する工程、および、該高分子溶液層から溶媒を除去して、多孔質フィルム(A)の平均孔径d1よりも平均孔径が小さい貫通孔を有する多孔質フィルム(B)を形成する工程を有する複合素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−156337(P2006−156337A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186131(P2005−186131)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】