説明

多官能化ビオチン類似体を用いた生体分子標識

天然ビオチンのウレイド環と共に、任意に修飾されたチオフェン環、好ましくは、カルボン酸、アミン、アルコール、チオール、アルデヒドおよびハライドからなる群より選択される官能性末端基を有する修飾された側鎖、前記側鎖の他の場所に位置する少なくとも1つの生物直交反応性の化学基を含む、2-アジドビオチンのような新規のビオチン類似体。前記類似体は、ペプチドおよびタンパク質のような標的構造および生体分子を、インビトロまたはインビボで標識するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ビオチン類似体、ならびにペプチドおよびタンパク質のような標的構造および生体分子をインビトロまたはインビボで標識するためのその使用方法に関する。
【0002】
細胞性シグナル伝達経路の要素としてのタンパク質の発現、局在化および/または立体配座の変化の追跡は、フルオロフォアまたは他の有用なプローブを用いてタンパク質をインビボで部位特異的に標識するための一般的なツールを作製することを必要とする。伝統的な化学的方法は、システインまたはリジン側鎖の求核性に依存するが、インビボで使用するには非常に不正確である。緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合のような遺伝的方法は、大きな重量を有し(GFPは、238アミノ酸である)、色の範囲および分光器の読出しの性質が制限される。
【0003】
小さな特異的ペプチド配列を有するタンパク質への小分子プローブの部位特異的な付加のための多数の方法が、ここ数年間にわたって紹介されてきた(テトラCys/FlAsH システム(B.A. Griffin, S.R. dams, R.Y. Tsien, Science, 1998, 281, 269-272)、ヘキサHisの標識 (S. Lata, M. Gavutis, R. Tampe, J. Piehler, JACS, 2006, 128, 2365-2372) おおよびポリAspタグ (H. Nonaka, S. Tsukiji, A. Ojida, I. Hamachi, JACS, 2007, 129, 15777-157779)を含む)。いくつかの酵素媒介標識システムも報告され、ソルターゼA/Sorタグ (M.W. Popp, J.M. Antos, G.M. Grotenbreg, E. Spooner, H.L. Ploegh, Nature Chem. Biol. 2007, 3, 707-708; T. Tanaka, T. Yamamoo, S. Tsukiji, T. Nagmune, CemBioChem, 2008, 9, 802-807)、トランスグルタミナーゼ/Q-タグ (C.W. Lin, A.Y. Ting, JACS, 2006, 128, 4542-4543)、ビオチンリガーゼ (I. Chen, M. Howarth, W. Lin, A.Y. Ting, Nature Methods, 2005, 2, 99-104; M. Howarth, K. Takao, Y. Hyashi, A.Y. Ting, PNAS, 2005, 102, 7583-7588; M. Howarth et al. Nature Methods, 2006, 3, 267-273) およびリポ酸リガーゼ (M. Fernandez-Suarez et al. Nature Biotech. 2007, 25, 1483-1487; H. Baruh, S. Puthebveetil, Y.A. Choi, S. Shah, A.Y. Ting, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2008, 47, 7018-7021)が含まれる。
【0004】
多くの天然酵素は、その生物学的機能を果たすために際立った基質特異性を進化させてきた。1つの例は、CO2を炭酸水素塩から有機酸へ移し、種々の細胞代謝産物を形成することに関与するE. coli酵素ビオチンリガーゼ (BirA)である(Chapman-Smith et al. J. Nutr. 129:477S-484S, 1999.)。それは、細菌中にただ1つの天然基質を有する:それはビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)であり、リジン122をビオチン化し、炭酸水素塩によるカルボキシル化のためにそれを準備する。Schatzらは、ペプチドパニング(peptide panning)を使用し、BirAにより認識され、酵素的にビオチン化され得る最低15のアミノ酸ペプチド配列を同定した(Schatz et al. Biotechnology 11:1138-1143, 1993; Beckett et al. Protein Sci. 8:921-929, 1999.)。15アミノ酸配列TTNWVAQAFKMTFDP (SEQ. ID No. 19) は、ファージディスプレイライブラリから酵母ビオチンリガーゼに対して同定された最も有効な15-アミノ酸アクセプターペプチド配列である(I. Chen, Y.-A. Choi and A.Y. Ting, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 6619)。精製されたBirAおよびこの修飾配列をインビトロまたは生きた細菌の部位特異的なビオチン化のために関心のあるタンパク質上に導入するためのクローニングベクター(「Avi-Tag(商標)」と呼ばれる)は、商業的に入手可能である(Avidity, Boulder, Colo. USA)(Invitrogenにより商標BioEaseとして供給される、K. pneumoniae BCCPに由来する72-アミノ酸配列)。BioEase(商標)発現系は、ビオチン化組み換えタンパク質を発現、精製および検出するための方法を提供する。BioEase(商標)ベクターは、特定のリジン残基のインビボビオチン化を誘導するオキザロ酢酸脱炭酸酵素に由来する72アミノ酸配列を含む。ベクターにおいて作られたタンパク質は、この配列を有する融合タンパク質として発現する。
【0005】
ビオチン(ビタミンHまたはB7)およびその類似体についても、これまでに、インビトロまたはインビボでのペプチドおよびタンパク質の標識に関連して報告されている。BirAは、ケトンビオチン(Chen et al Nature Meth. 2005, 2, 99-104; McNeill et al. Organic Lett. 2006 8, 4593-4595)を、特定の15アミノ酸配列に含まれるリジンのα−アミノ基と高い選択性で結合させられることが知られている。ケトンビオチンの使用に伴う問題は、そのケトン基が酵素の非存在下において相対的に結合性を有し、ビオチンリガーゼにおけるリジン側鎖または反応系に存在する他のタンパク質との結合を生じることである。さらに、BirAライゲーションの発生を50%以下に阻害する生成物を与える化合物が見出された。
【0006】
他のビオチン類似体も製造されている。Tingらデスチオビオチンアジド、シス-N-プロパルギルビオチン、およびトランス-N-プロパルギルビオチンを製造し、多くの種に由来するビオチンリガーゼの基質としてこれらを試験した(ヒト、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、トリパノソーマ・クルーズ(Trypanosoma cruzi)、グラルディア・ランブリア(Glardia lamblia)、メタノコックス・ジャンナスキイ(Methanococcus jannaschii)および大腸菌 (BirA)) (Slavoff et al. J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 1160)。酵母(Saccharomyces cerevisiae)酵素がシス-N-プロパルギルビオチンを利用できる一方、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)酵素はデスチオビオチンおよびシス-N-プロパルギルビオチンを基質として使用できることが示された。しかしながら、これら類似体は、天然のビオチンと同レベルの有効性で15アミノ酸アクセプターペプチドに添加されなかった。さらに、ビオチンにおける生物直交性(bioorthogonal)の基の位置により、これらビオチン類似体は、アビジン、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体またはアビジンに結合する他のタンパク質に対する親和性が低いことが予想される。一度適切な相手と反応すると、これらの分子は、これらタンパク質に対してずっと低い親和性を示す可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、ビオチンリガーゼに対する基質である新規のビオチン類似体であって、天然のビオチンと実質的に同様の許容可能な程度の有効性で、Avitag(商標)ペプチドのような特定のペプチドに添加されるビオチン類似体を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、許容可能な、好ましくは可逆的なアビジン、ストレプトアビジンもしくは他の突然変異体またはこれらの相同体に対する結合親和性を有する新規のビオチン類似体を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、より少ない工程でより容易に、および/または従来の方法で製造されたビオチン類似体よりも高い収量で合成される新規のビオチン類似体を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、タンパク質およびペプチドのような標的生体分子構造を、親和性タグとして、またはさらなる分子プローブに対する共有結合の特定のポイントとして使用され得る新規化合物で標識する方法を提供することである。
【0011】
従って、本発明の第1の側面は、天然ビオチンのウレイド環と共に、官能性末端基を有する少なくとも1つの修飾された側鎖または修飾されたチオフェン環、ならびに側鎖の他の場所に位置する少なくとも1つの生物直交性の基を含むビオチン類似体を提供する。
【0012】
より好ましくは、ビオチン類似体は、天然ビオチンの非修飾チオフェン環と共に、官能性末端基および側鎖の他の場所に位置する少なくとも1つの生物直交性の基を有する1つの修飾された側鎖を有する。しかしながら、チオフェン環の硫黄は、CH2、O、NHおよびC=Oから選択される他の基で置換されてよく、例えば、修飾されたバレリル側鎖における官能基が、チオフェン環に硫黄が存在することで不安定になる場合である。あるいは、前記類似体は、修飾されたバレリル側鎖を有するデスチオビオチンを含んでよい。
【0013】
好ましくは、官能性末端基は、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、アミン、チオールおよびハライドからなる群より選択される。
【0014】
天然ビオチンの構造を以下に示す:
【化1】

【0015】
上記構造におけるビオチン骨格上に示した数字は、この開示全体にわたって使用する。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの生物直交性の官能基は、アジド、アルキン、アルケン、ヘテロ環基、ジエン基および/またはS、N、Se、PおよびOから選択される1つ以上のへテロ原子からなる群より選択される。より好ましくは、反応性基は、以下の式に示すように、ビオチン類似体のバレリル側鎖上に、バレリル側鎖の一部として、バレリル側鎖の代わりに存在する:
【化2】

【0017】
式中、Rは、官能性末端基を有し、側鎖のほかの場所に位置するアジド、アルキン、アルケン、ヘテロ環基、ジエン基からなる群より選択される少なくとも1つの第2の官能基、および/またはS、N、Se、PおよびOから選択される1つ以上のへテロ原子を含む。好ましくは、官能性末端基は、カルボン酸、アミン、アルコール、チオール、アルデヒドおよびハライドからなる群より選択される。
【0018】
生物直交性の反応性基は、バレリル鎖(-(CH2)4CO2H)の2〜5位のいずれか1つに位置してよい。好ましくは、バレリル側鎖の5炭素骨格は、本発明の第1の側面によるビオチン類似体において維持される。しかしながら、別の実施形態において、ビオチン類似体のバレリル基は、SP、SP2またはSP3混成であってよい異なる数の炭素原子(好ましくは1〜10の炭素原子)を含んでよく、および/またはS、N、Se、PおよびOからなる群より選択される1つ以上のへテロ原子を含んでよい。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、生物直交性の反応性基は、バレリル側鎖の2位に提供される。本発明の第1の側面による好ましいビオチン類似体は、バレリル側鎖の2位にアジドを有する2−アジドビオチンである:
【化3】

【0020】
R-および/またはS-2-アジドビオチン類似体が使用されてよい。
【0021】
カルボン酸塩末端基は、以下に示す構造により表されるように、ビオチン類似体の意図される適用に応じて異なる官能基で置換されてよいと解釈されるべきである:
【化4】

【0022】
末端官能基は、さらに修飾され、タンパク質のような標的構造に類似体を結合させるために使用され得るBirAのような酵素によってインビボで形成され得る中間体を形成してもよい。そのような基は当該分野で既知であり、例えば5’-アデニレートが含まれる。BirAまたは他のビオチンリガーゼに対する基質として作用する他の修飾された末端基は、カルボン酸塩または活性化エステルである。例えば、本発明は、以下の一般式で示される2-アジドビオチンを含む:
【化5】

【0023】
本発明のさらなる側面は、5’-アデニレート、関連するヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体ならびにペンタフルオロフェニル、ビニルおよびp-ニトロフェニルエステルのような単純な活性化エステルからなる群より選択される修飾された末端基を有する本発明の第1の側面によるビオチン類似体を提供する。より好ましくは、末端基は、5’-アデニレート基である。修飾類似体は、酵素により、または酵素の非存在下で合成的に製造されてよい。
【0024】
そのような好ましいビオチン類似体の例は、以下に示す2-アジドビオチニルアデニレートである:
【化6】

【0025】
本発明の第1の側面による別のビオチン類似体は、バレリル側鎖の2位にアルキン置換基を有する2-プロパルギル(2-プロピニル)ビオチンである:
【化7】

【0026】
アルキン置換基は、異なる数の炭素原子(好ましくは1〜8炭素原子)を有するバレリル側鎖に結合してよい。アルキン置換基は、バレリル側鎖の異なる位置にあってもよい。また、カルボン酸塩末端基は、アミン、アルコール、チオールまたはハライドのような他の官能基で置換され得る。
【0027】
本発明の第1の側面による別のビオチン類似体は、以下に示す修飾されたバレリル側鎖の1つを組み込んでもよい:
【化8】

【0028】
本発明の第1の側面によるビオチン類似体のさらなる例は、以下の構造を含み、式中のXはCH2、O、NHまたはC=Oであり、YはN、CHまたはSである:
【化9】

【0029】
いずれかの適切な合成方法が、本発明の第1の側面によるビオチン類似体を製造するために使用されてよい。しかしながら、好ましくは、ビオチン類似体はビオチンから製造される。好ましくは、類似体2-アジドビオチンは、中間体N,N’-ジ(p-メトキシベンジル)ビオチンメチルエステルを介してトリシルアジドと反応させることによりビオチンから製造される。あるいは、中間体N,N’-ジベンジルビオチンまたはそのメチルエステルが使用されてもよい。本発明の好ましい方法において、N,N’-ジベンジルビオチンをけん化し、高い溶解性を有するN,N’-p-メトキシベンジルビオチンを得る。その後、オキザリルクロリドと反応させてメトキシベンジルビオチンの酸塩化物を形成し、オキサゾリジノンをn-BuLi処理で置換することにより3-(N,N’-p-メトキシベンジルビオチノイル) オキサゾリジン-2-オンを形成し、脱保護により2-アジドビオチンを形成する。
【0030】
本発明の第1の側面によるビオチン類似体は、タンパク質、ペプチド、発光体、放射性物質、MRI造影剤、PET造影剤、量子ドットまたは合成ポリマーのような特定の標的構造に結合し得る。本発明の第2の側面は、特定の標的構造に結合した本発明の第1の側面によるビオチン類似体を提供する。
【0031】
より好ましくは、特定の標的構造は、生体分子構造であり、特にビオチン類似体により標識される標的タンパク質またはペプチドである。本発明の好ましい実施形態において、標的タンパク質またはペプチドには、標的タンパク質をビオチン類似体に結合させる酵素に対する特異的な基質として作用するアクセプターペプチドが含まれる。アクセプターペプチドは、核酸レベルで、または翻訳後に、標的タンパク質および/またはビオチン類似体と融合し得る。一般的に、酵素には、大腸菌に由来するビオチンリガーゼ(BirA)もしくはその変異体または他の種における相同体が含まれる。
【0032】
本発明の第3の側面は、アクセプターペプチドを介して標的生物分子構造(好ましくはタンパク質)と結合する、本発明の第1の側面によるビオチン類似体を含む。インビトロまたはインビボでの結合の方法は、ビオチン類似体をアクセプターペプチドと融合した標的タンパク質(すなわち、標識されるべきタンパク質)(まとめて、「融合タンパク質」と称する)と、ビオチンリガーゼの存在下で接触させることと、ビオチン類似体を融合タンパク質と結合させるために十分な時間をおくことを含む。ATPも、存在している必要がある。反応スキームを、添付の図面における図3に示す。ビオチンリガーゼ活性に適した時間および反応条件は、一般的に、当該分野で既知の野生型ビオチンリガーゼに対するものと同等である。
【0033】
前記方法をインビボで行う場合、融合タンパク質をコードする核酸配列が細胞に導入され、転写および翻訳される。前記方法を細胞のない環境(インビトロ)で行う場合、融合タンパク質は、例えば試験管またはマルチウェルプレートのウェル中の反応混合物(ビオチン類似体、BirAおよびATP)に単純に添加される。
【0034】
ここで使用する場合、インビボでのタンパク標識は、細胞に関連するタンパク質の標識を意味する。前記方法は、細胞内タンパク質または細胞表面タンパク質であるタンパク質を標識するために使用され得る。細胞は、対象(例えば、ショウジョウバエのような昆虫、マウスのようなげっ歯類、ヒト等を含むいずれかの生物体)中に存在してよく、あるいは培養中に存在してもよい。
【0035】
ビオチンリガーゼは、いくつかの場合において、細胞により発現されてもよい。しかしながら、他の場合において、ビオチンリガーゼ変異体は、反応混合物(インビトロの場合)または細胞(標的タンパク質が細胞表面タンパク質であり、アクセプターペプチドが標的タンパク質の細胞外ドメインに位置する場合)に単純に添加されてよい。
【0036】
上記から理解されるように、アクセプターペプチドは、好ましくは、ビオチンリガーゼまたはその変異体の1つに対する基質として作用するものである。大腸菌における野生型ビオチンリガーゼの唯一の既知の天然基質は、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質BCCPのリジン122である (Chapman-Smith et al. J. Nutr. 129:477S-484S, 1999.) 。リジン122を包含する13〜15アミノ酸の最小基質配列は、ビオチンリガーゼに対する最小のペプチド認識配列として同定されている。
【0037】
ビオチンリガーゼとその基質との間の反応は、直交性と言われている。これは、リガーゼもその基質も、天然環境中(すなわち、細菌性細胞)または本発明の目的のためにより重要な非天然の環境中(例えば、哺乳類細胞)にいずれかの他の酵素または分子が存在する場合であっても、それらと反応しないことを意味する。従って、本発明は、ビオチンリガーゼとその基質の間に生じた高度な特異性という利点を有する。
【0038】
ここで使用する場合、「アクセプターペプチド」は、ビオチンリガーゼ、その変異体もしくは相同体の1つに対する基質として認められるアミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドである(すなわち、ビオチンリガーゼ変異体は、ペプチドを認識し、ビオチン類似体またはビオチンとペプチドを結合させる。)。アクセプターペプチドは、以下のアミノ酸配列を有してよい:
Leu Xaa.sub.1 Xaa.sub.2 Ile Xaa.sub.3 Xaa.sub.4 Xaa.sub.5
Xaa.sub.6 Lys Xaa.sub.7 Xaa.sub.8 Xaa.sub.9 Xaa.sub.10 (SEQ. ID NO:3);ここで、Xaa.sub.1は、いずれかのアミノ酸であり、Xaa.sub.2は、大きな疎水性アミノ酸(例えば、Leu, Val, Ile, Trp, Phe, Tyr)以外のいずれかのアミノ酸であり;Xaa.sub.3は、PheまたはLeuであり、Xaa4は、GluまたはAspであり; Xaa.sub.5は、Ala、Gly、Ser、またはThrであり; Xaa.sub.6は、GlnまたはMetであり; Xaa.sub.7は、Ile、Met、またはValであり; Xaa.sub.8は、Glu、Leu、Val、Tyr、またはIleであり;
Xaa.sub.9は、Trp、Tyr、Val、Phe、Leu、またはIleであり; Xaa.sub.10は、好ましくはArgまたはHisであるが、AspまたはGluのような酸性アミノ酸以外のいずれかのアミノ酸であってよい。
【0039】
好ましい実施形態において、アクセプターペプチドは以下のアミノ酸配列の1つを含み、結合点は下線を引いたリジン残基である:
GLNDIFEAQKEWHE SEQ. ID No. 4
DTLCIVEAMKMMNQI SEQ. ID No. 5
GLNDIFEAQKIEWHE SEQ. ID No. 6
他の実施形態において、アクセプターペプチドは、ビオチンリガーゼまたはその変異体の1つに対する基質として作用することが既知の、または後に既知となる他のアミノ酸を含む。例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,723,584; 5,874,239および5,932,433に記載されている。
【0040】
アクセプターペプチドは、標準的なペプチド合成技術を用いて合成することができ、そのDNAコード化形態が、標準的な分子生物技術を用いて関心のある遺伝子と融合する。それらは、商業的に入手することも可能であり、例えば、Invitrogen 社製BioEase(商標)およびAvidity (Boulder, Colo.)社製AviTag(商標)である−例えば、上記SEQ. ID No. 6を参照されたい。SEQ ID No. 6は、以下の態様で、AviTag(商標)技術を用いて、タンパク質のN-またはC-末端に導入される:
N-末端タグ配列: MSGLNDI FEAQK I EWHE
C-末端タグ配列: LERAP GGLNDI FEAQK I EWHE
種々の生物体に対する既知のアクセプターペプチド配列の他の例を以下に示す(ぞれぞれ、上から順に配列番号7〜18):
【化10】

【0041】
大腸菌ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)の3次元構造のβ鎖を形成する残基には下線を引き、疎水性コア残基は黒い四角で示す。ビオチニル化リジン残基には、Dを記す。影は、配列データを入手可能な全てのビオチンドメインにおいて非常に高度に保存される残基を意味する。アミノ酸置換がビオチン化の効率を減少させることが既知である位置は、黒い三角で示す(アラインメントは、Clustal Wを用いて行った (A. Chapman-Smith and J.E. Cronan J. Nutritional Science 1999, 129 477S))。
【0042】
アクセプターペプチドは、本発明の方法において、ビオチンリガーゼにより標識されるべきタグタンパク質を識別するために使用される。アクセプターペプチドおよび標的タンパク質は、核酸またはアミノ酸レベルで相互に融合し得る。標的タンパク質およびアクセプターペプチドの両方をコードする融合核酸を産生するための組み換えDNA技術は、当該分野で既知である。さらに、アクセプターペプチドは、例えば天然の化学的ライゲーションを介して、翻訳後に標的タンパク質と融合してよい。そのような結合は、切断可能なリンカーまたは一度望ましい標識が達成されると切断され得る結合を含んでよい。好ましくは、バレリル側鎖は、ビオチン類似体の二環式コアと末端カルボン酸塩および生物直交性基との間に切断可能なリンカーを導入するために修飾される。一度切断されると、アクセプターペプチド上で、カルボキシレート基および生物直交性の反応性基を有する近傍の炭素は、さらなる反応のための準備をするが、アクセプターペプチド/タンパク質は、もはやアビジン/ストレプトアビジンまたはそれらの相同体と結合することができない。そのような結合は、特定のpH、またはある波長のエネルギー等に曝すことにより切断され得る。切断され得る官能基のタイプの例には、限定するものではないが、ジスルフィド結合(-S-S-)、イミン(-C=N-)およびジアゾ(-N=N-)が含まれる。
【0043】
アクセプターペプチドは、いずれかの位置において標的タンパク質と融合し得る。いくつかの場合において、融合は標的タンパク質の活性を妨げないことが好ましく、アクセプターペプチドはタンパク質の活性を妨げない位置でタンパク質と融合することが好ましい。
【0044】
一般的に、アクセプターペプチドは、C末端またはN末端において標的タンパク質と結合し得る。他の場合において、アクセプターペプチドは、内部の位置で標的タンパク質と融合する可能性もある(例えば、可撓性内部ループ)。これらのタンパク質は、その後、インビボおよびインビトロにおけるビオチンリガーゼおよびビオチンリガーゼ変異体による特異的な識別を受け易い。
【0045】
好ましくは、本発明のビオチン類似体は、アビジン、ストレプトアビジンもしくはそれらの相同体、または抗ビオチン抗体と結合可能である。ビオチン類似体は、上述した基質と、非常に高いまたは中程度の親和性で非共有結合性の相互作用を形成する。そのような相互作用は、ビオチン類似体自体および/または標的タンパク質および/またはそこに結合した標識との間で形成される。
【0046】
ビオチン類似体(標的タンパク質および/またはそれへの標識結合がある場合もない場合も)は、pH、塩濃度の変化のような条件の変化またはビオチンまたはそれ以外もしくはその類似体の添加により、アビジン、ストレプトアビジンまたはそれらの変異体もしくは相同体との相互作用あるいは抗ビオチン抗体との相互作用から遊離可能であることが好ましい。例えば、strep-タグII ペプチド配列 (Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys)(Schmidt TGM and Skerra A,NATURE PROT. 2007, 2, 1528-1535)またはアビジン、ストレプトアビジン、それらの変異体もしくは相同体または抗ビオチン抗体に対する中程度または良好な結合親和性を有することが既知の他の分子(例えば、4-ヒドロキシアゾベンゼン-2-カルボン酸 (HABA))である。
【0047】
一度アクセプターペプチド/タンパク質に結合すると、本発明の第1の側面によるビオチン類似体は、親和性タグ/リガンドとして使用されてよく、それを、表面、ポリマーまたは(磁気)ビーズ支持体上に固定化された抗ビオチン抗体、またはアビジン、ストレプトアビジンもしくはそれらの変異体および相同体と結合させることにより、混合物において、ビオチン化タンパク質を非ビオチン化タンパク質から分離することが可能になる。
【0048】
あるいは、またはさらに、バレリル側鎖における生物直交性官能基は、アルキン(Huisgen 環化)またはホスフィン(Staudinger ligation including traceless variations)(Baskin and Bertozzi, QSAR & Comb. Sci. 2007, 26, 1211-1219; Hackenberger and Schwarzer Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 10030-10074)と選択的に反応し、アクセプターペプチド/タンパク質が化学標識、第2のタンパク質または他の生体高分子で官能化されるか、または合成ポリマー(例えばデンドリマー)または表面に結合することを可能にする。
【0049】
上述したアクセプターペプチドへの付着、アビジン/ストレプトアビジンとの結合および生物直交性の化学反応は、いずれかの方法で行われてよい。
【0050】
ビオチン類似体と融合タンパク質の上述した接合方法は、タンパク質のタイプに依存しないため、いずれのタンパク質もこの方法で標識され得る。この標識反応の生成物は、ビオチン類似体の性質に依存して、直接的または間接的に検出可能であってよい。従って、接合したビオチン類似体を検出可能な標識と反応させる必要があり得る。インビボで行われる場合、検出可能な標識は、好ましくは、細胞中に拡散することができるものである。ビオチン類似体の極性が大きく、細胞膜を通過できない場合、類似体は、より極性の小さな形態(例えば、限定するものではないが、メチル、エチルまたはピバロイルエステルを含むエステル形態)に誘導体化されるべきである。前記方法が細胞表面タンパク質を標識するために使用される場合、好ましくは、ビオチン類似体は膜不透過性の標識で標識され、細胞内への標識の侵入および蓄積を減少させる。ビオチン類似体は、融合タンパク質との接合の前または後に標識されてよい。
【0051】
タンパク質の標識は、そのようなタンパク質の動きおよび活性を追跡することを可能にする。また、そのようなタンパク質を発現する細胞を追跡および画像化することも、場合によっては可能にする。前記方法は、昆虫、酵母、カエル、蠕虫、魚、げっ歯類、ヒト等を含む、実質的にいずれかの有機体に由来する細胞において使用できる。
【0052】
前記方法は、実質的に、任意のタンパク質を標識するために使用することができる。非限定的な例には、シグナルトランスダクションタンパク質(例えば、細胞表面受容体、キナーゼ、アダプタータンパク質)、核タンパク質(転写因子、ヒストン)、ミトコンドリアタンパク質(シトクロム、転写因子)およびホルモン受容体が含まれる。
【0053】
上述したように、本発明の第1の側面によるビオチン類似体は、直接的または間接的に検出可能であってよい。ビオチン類似体は、適切に官能化されたアビジン、ストレプトアビジンもしくはそれらの相同体または標識された抗ビオチン抗体との結合を介して、直接的に検出可能であってよい。
【0054】
あるいは、またはさらに、ビオチン類似体は、該類似体をフルオロフォアのような検出可能部分と結合させるための生物直交性のライゲーション反応により、他の検出可能部分との反応を受け得る(アクセプターペプチドとの接合の前または後)。結果として得られる部分は、ヒドラジン、ホスフィンまたはアジドであってよいが、これらに限定されない。最後に、本発明の第4の側面は、直接的または間接的に検出可能な標識と結合した、本発明の第1の側面によるビオチン類似体を提供する。
【0055】
従って、それ自体が直接的に検出可能でないビオチン類似体は、検出可能な部分と反応すべきである。このカテゴリーの各ビオチン類似体は、その官能基および反応相手の官能基に依存して、特異的な反応を受け得る。例えばアジドは、Staudinger反応において、ホスフィンと反応し得る。アジドおよびアリールホスフィンは、一般的に、細胞性の相対物を有さない。結果として、反応は完全に特異的になる。pH6〜8の水における加水分解に対する安定性が改善されたアジド変異体も、本発明の方法において有用である。Click化学 (Wang et al. J. Am. Chem. Soc. 125:11164-11165, 2003)に基づくアルキン/アジド[3+2] 環状付加化学も、特に2つの反応パートナーが細胞性の相対物を有さない場合(すなわち、2つの官能基が天然のものでない場合)に特異的である。
【0056】
ビオチン類似体は、蛍光発生性であってもよい。ここで使用する場合、蛍光発生性化合物は、それ自体検出可能(例えば、蛍光性)でないが、他の部分と接合させた場合に蛍光性になる化合物である。この例は、アジドと反応して蛍光性クマリンを生じる非蛍光性クマリンホスフィンである。
【0057】
上述したように、ビオチン類似体は、検出可能な標識と接合してよい。「検出可能な標識」は、ここで使用する場合、蛍光、電気伝導性、放射能、大きさ等を含む種々の方法により検出され得る分子または化合物である。標識は、化学的なもの(例えば、糖、脂質等)、ペプチドまたは核酸であってよく、これらに限定されるものではない。標識は、例えば、その特定の波長の光を放出および/または吸収する能力により、直接的に検出され得る。標識は、その他の化合物と結合し、他の化合物を漸増(recruit)し、およびいくつかの場合、他の化合物を切断する(もしくは切断される)ことによりエネルギーを放出または吸収する能力により、間接的に検出され得る。間接的な検出の例は、基質を可視生成物に付着させる酵素標識の使用である。
【0058】
使用される標識のタイプは、限定されるものではないが、最後に標識されるタンパク質の性質のような種々の因子に依存する。標識は、ビオチン類似体、アクセプターペプチドおよび標的タンパク質と、立体的および化学的に親和性を有するべきである。ほとんどの場合において、標識は、標的タンパク質の活性を妨げないべきである。
【0059】
ビオチン類似体およびその接合ペプチドの適切な検出を提供するために適切であるとして選択され得る広い種類の標識化剤が存在する。一般的に、標識は、蛍光分子、化学発光分子(例えば、化学発光基質)、燐光分子、放射性同位体、酵素、酵素基質、親和分子、リガンド、抗原、ハプテン、抗体、抗体断片、発色基質、造影剤、MRI造影剤、PET標識、および燐光標識等からなる群より選択されてよい。
【0060】
適切な標識の特定の例には、以下のものが含まれる:32Pまたは3Hのような放射性同位元素; ジゴキシゲニンおよびジニトリフェニルのようなハプテン; FLAG タグ、HAタグ、ヒスチジンタグ、GSTタグのような親和性タグ; アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼのような酵素タグ等。
【0061】
他の標識には、例えば、フルオレセインイソチオシアナート("FITC")、テトラメチルローダミンイソチオシアナート ("TRITC")および4, 4-ジフルオロ-4-ボラ-3a、および4a-ジアザ-s-インダセン ("BODIPY")のようなフルオロフォアが含まれる。
【0062】
標識は、抗体もしくは抗体断片またはそれらに対応する抗原、エピトープ、またはハプテン結合の結合相手であってもよい。そのように結合した抗体およびタンパク質またはペプチドの検出は、当業者に周知の技術により達成されるため、ここに詳細を記載する必要はない。
【0063】
反応によりハプテン接合体を形成する抗体/抗原複合体は、ハプテンまたはハプテンを認識する抗体に標識を結合させ、標識の位置を検出することにより、容易に検出される。あるいは、抗体は、使用される一次抗体に特異的な二次抗体またはその断片を用いて可視化されてよい。
【0064】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体が使用されてもよい。抗体断片には、Fab, F(ab).sub.2, FdおよびCDR3領域を含む抗体断片が含まれる。接合体は、二重特異性抗体(dual specificity antibody)を用いて標識されてもよい。
【0065】
あるいは、標識は造影剤であってもよい。造影剤は、患者に投与され、特定のイメージング形式(限定するものではないが、X線、超音波およびMRI)を増強する分子である。適切な造影剤は、当該分野で既知であるため、ここでさらに記載する必要はない。
【0066】
標識は、99 mテクネチウムまたは18FDGのような陽電子放射断層撮影(PET)標識であってよい。
【0067】
標識は、ポルフィリンまたは光線力学的治療法において以前より使用されている他の基(非限定的な例は、レゾルフィン、マラカイトグリーン、フルオレセイン、ベンジジンおよびその類似体)を含む一重項酸素ラジカル生成源であってもよい。これらの分子は、EM染色において有用であり、局所毒性を誘導するためにも使用され得る。
【0068】
標識は、限定するものではないが、金属キレート化剤(例えば、銅キレート化剤)のような検体結合基であってもよい。金属キレート化剤の例には、EDTA、EGTA、ならびにピリミジン置換基、イミダゾール置換基、および/またはチオール置換基を有する分子が含まれる。これらの標識は、標的タンパク質の局所環境(例えば、Ca.sup.2+濃度)を分析するために使用され得る。
【0069】
標識は、重元素キャリアを含んでよい。重元素キャリアの例は、ヨウ素、鉄、またはガドリニウムである。そのような標識は、特に、標的タンパク質のX線結晶学的研究のために使用される。X線結晶学において使用される重元素の非限定的な例には、Au、PtおよびHgが含まれる。
【0070】
標識は、光活性化可能な架橋剤であってもよい。光活性化可能な架橋剤は、放射線(例えば、紫外線、可視光等)に曝すことにより反応性になる架橋剤であり、ベンゾフェノン、アジリジン、ジアジリンおよびトリフルオロメチルケトンならびに当該分野で既知のものからなる群より選択される。
【0071】
標識は、光変換可能(photoswitchable)な標識であってもよい。光変換標識は、放射線との反応において立体配座の変化を受ける分子である。例えば、前記分子は、その立体配座をシスからトランスに変化させ、放射線との反応により再び戻ってよい。立体配座の変換を引き起こすのに必要な波長は、特定の光変換標識に依存する。光変換可能な標識の例には、アゾベンゼン、3-ニトロ-2-ナフタレンメタノールおよびスピロピランが含まれる。
【0072】
標識は、光に不安定な保護基であってもよい。光に不安定な保護基の例には、ニトロベンジル基、ジメトキシニトロベンジル基、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)、2-(ジメチルアミノ)-5-ニトロフェニル(DANP)、ビス(o-ニトロフェニル)エタンジオール、臭素化ヒドロキシキノリン、およびクマリン-4-イルメチル誘導体が含まれる。光に不安定な保護基は、反応性官能基の光ケージング(photocaging)のために有用である。
【0073】
標識には、非天然アミノ酸が含まれてよい。システイン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、プロリン、およびカルボキシル基の修飾は、当該分野で既知であり、米国特許第6,037,134号に記載されている。これらのタイプの標識は、酵素の構造および機能を調べるために使用され得る。
【0074】
標識は、酵素または酵素基質であってよい。これらの例には、以下の酵素(基質)が含まれる:アルカリホスファターゼ (4-メチルウンベリフェリルホスフェート二ナトリウム塩; 3-フェニルウンベリフェリル ホスフェートヘミピリジン塩);
アミノペプチダーゼ (L-アラニン-4-メチル-7-クマリニルアミドトリフルオロアセテート;
Z-L-アルギニン-4-メチル-7-クマリニルアミドヒドロクロリド;
Z-グリシル-L-プロリン-4-メチル-7-クマリニルアミド);
アミノペプチダーゼ B (L-ロイシン-4-メチル-7-クマリニルアミドヒドロクロリド);
アミノペプチダーゼ M (L-フェニルアラニン 4-メチル-7-クマリニルアミドトリフルオロアセテート);
ブチレートエステラーゼ (4-メチルウンベリフェリル ブチレート);
セルラーゼ (2-クロろ-4-ニトロフェニル-β-D-セロビオシド);
コリンエステラーゼ (7-アセトキシ-1-メチルキノリニウムヨウ化物; レゾルフィン ブチレート);
α-キモトリプシン, (グルタリル-L-フェニルアラニン 4-メチル-7-クマリニルアミド)- ;
N-(N-グルタリル-L-フェニルアラニル)-2-アミノアクリドン;
N-(N-スクシニル-L-フェニルアラニル)-2-アミノアクリドン);
シトクロムP450 2B6 (7-エトキシクマリン);
サイトゾルアルデヒドデヒドロゲナーゼ (エステラーゼ活性) (レゾルフィンアセテート);
デアルキラーゼ (O.sup.7-ペンチルレゾルフィン);
ドパミンβ-ヒドロキシラーゼ (チラミン);
エステラーゼ (8-アセトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩;
3-(2-ベンゾキサゾリル)ウンベリフェリル アセテート;
8-ブチリルオキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩;
2',7'-ジクロロフルオレセインジアセテート;
フルオレセインジブチレート;
フルオレセインジラウレート;
4-メチルウンベリフェリル アセテート;
4-メチルウンベリフェリルブチレート;
8-オクタノイルオキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩;
8-オレオイルオキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩; レゾルフィン アセテート);
活性化因子X (Xa) (4-メチルウンベリフェリル 4-グアニジノベンゾエートヒドロクロリド一水和物);
フコシダーゼ, α-L-(4-メチルウンベリフェリル-α-L-フコピラノシド);
ガラクトシダーゼ, α-(4-メチルウンベリフェリル-α-D ガラクトピラノシド);
ガラクトシダーゼ, β-(6,8-ジフルオロ-4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド;
フルオレセインジ(β-D-ガラクトピラノシド);
4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド;
4-メチルウンベリフェリル-β-D-ラクトシド:
レゾルフィン-β-D-ガラクトピラノシド;
4-(トリフルオロメチル)ウンベリフェリル-β- D-ガラクトピラノシド;
2-クロロ-4-ニトロフェニル-β-D-ラクトシド);
グルコサミニダーゼ, N-アセチル-β-(4-メチルウンベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド二水和物);
グルコシダーゼ, α-(4-メチルウンベリフェリル-α-D-グルコピラノシド); グルコシダーゼ, β-(2-クロロ-4-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド;
6,8-ジフルオロ-4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド;
4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド;
レゾルフィン-β-D-グルコピラノシド;
4-(トリフルオロメチル)ウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド);
グルクロニダーゼ, β-(6,8-ジフルオロ-4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニドリチウム塩;
4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド三水和物);
ロイシンアミノペプチダーゼ(L-ロイシン-4-メチル-7-クマリニルアミドヒドロクロリド);
リパーゼ (フルオレセインジブチレート; フルオレセインジラウレート; 4-メチルウンベリフェリル ブチレート; 4-メチルウンベリフェリル エナンタート; 4-メチルウンベリフェリル オレエート; 4-メチルウンベリフェリル パルミテート; レゾルフィン ブチレート);
リゾチーム (4-メチルウンベリフェリル-N,N',N'-トリアセチル-β-キトトリオシドキトトリオシド);
マンノシダーゼ, α- (4-メチルウンベリフェリル -α-D-マンノピラノシド- );
モノアミンオキシダーゼ (チラミン);
モノオキシゲナーゼ (7-エトキシクマリン);
ノイラミニダーゼ (4-メチルウンベリフェリル-N-アセチル-α-D-ノイラミン酸ナトリウム塩二水和物);
パパイン (Z-L-アルギニン-4-メチル-7-クマリニルアミドヒドロクロリド);
ペルオキシダーゼ (ジヒドロローダミン123);
ホスホジエステラーゼ (1-ナフチル 4-フェニルアゾフェニルホスフェート; 2-ナフチル 4-フェニルアゾフェニルホスフェート);
プロリルエンドペプチダーゼ (Z-グリシル-L-プロリン-4-メチル-7-クマリニルアミド; Z-グリシル-L-プロリン-2-ナフチルアミド; Z-グリシル-L-プロリン-4-ニトロアニリド);
スルファターゼ (4-メチルウンベリフェリル スルフェートカリウム塩);
トロンビン (4-メチルウンベリフェリル 4-グアニジノベンゾエートヒドロクロリド一水和物);
トリプシン (Z-L-アルギニン-4-メチル-7-クマリニルアミドヒドロクロリド; 4-メチルウンベリフェリル 4-グアニジノベンゾエートヒドロクロリド一水和物);
チラミンデヒドロゲナーゼ (チラミン)。
【0075】
前記標識の多くがビオチン類似体であってもよいと解されるべきである。すなわち、使用される特定のビオチンリガーゼに依存して、種々の前記標識は、ビオチン類似体として機能し得る。それ自体、これらビオチン類似体は、直接的に検出可能なビオチン類似体であると考えられる。いくつかの場合において、それらはさらなる修飾を必要としない。
【0076】
標識は、類似体がアクセプターペプチドに接合する前または後に、ビオチン類似体に結合してよく、標識はビオチンリガーゼの活性を妨げないと推測される。標識は、当該分野で既知のいずれかのメカニズムによりビオチン類似体に結合してよい。
【0077】
ビオチン類似体接合体に結合する標識は、標識に関係する適切な検出系を用いて検出されてよい。検出系は、当該分野で既知の任意の数の検出系から選択されるため、ここで詳細を記載する必要はない。検出系は、例えば、蛍光検出系、写真フィルム検出系、化学発光検出系、酵素検出系、原子間力顕微鏡(AFM)検出系、走査トンネル顕微鏡(STM)検出系、光学検出系、核磁気共鳴(NMR)検出系、近接場(near field)検出系、および内部全反射(TIR)検出系を含んでよい。
【0078】
本発明の標識方法は、一般的に、ビオチン類似体を認識し、アクセプターペプチドを介して融合タンパク質上にビオチン類似体を接合する野生型ビオチンリガーゼまたは変異体の活性に依拠する。本発明は、ビオチン類似体(いくつかの場合はビオチン)を認識するビオチンリガーゼ野生型および変異体を提供する。ここで使用する場合、ビオチンリガーゼ変異体は、ビオチン類似体(ここで記載されているような)に対して酵素的に活性を有するビオチンリガーゼの変異体である。ここで使用する場合、「酵素的に活性を有する」は、変異体がビオチンまたはビオチン類似体を認識し、アクセプターペプチドに接合させられることを意味する。
【0079】
ビオチンリガーゼ変異体は、1つ以上のアミノ酸の付加、削除または置換を含む種々の変異体を有し得る。
【0080】
ビオチンリガーゼ変異体は、ビオチンに対するいくらかの程度の活性を保持していてよい。そのビオチンに対する結合活性は、野生型ビオチンリガーゼのものと同様であってよい。結果として、アクセプターペプチドへのビオチンの接合は、ビオチン類似体の存在下でより低くなり得る。さらに他の実施形態において、ビオチンリガーゼ変異体は、ビオチンに対して結合親和性を有さない。
【0081】
ビオチンリガーゼ変異体は、当業者に既知の標準的な分子生物学の技術を用いて作ることができる。例えば、変異体は、変異体をコードする核酸配列からの転写および翻訳により形成されてよい。そのような核酸配列は、野生型ビオチンリガーゼ配列の教示ならびにアミノ酸置換の位置およびタイプに基づいて作ることができる。
【0082】
コドン最適化ビオチンリガーゼは、接合タンパク質の形成のために使用され得る。Bir A酵素のコドン最適化は、タンパク質のより高い発現および標的タンパク質のビオチン化の効率改善を導く(Cristele Gilbert et al., Journal of Biotechnology. Vol 116, Issue 3, 30 March 2005, pages 245-249)。
【0083】
ビオチン類似体は、相互作用および活性化ドメインにおいてビオチンリガーゼと結合する。好ましくは、それは、野生型ビオチンリガーゼのビオチンに対する結合親和性と一致する親和性で結合する。しかしながら、より低い親和性で結合するビオチン類似体も、本発明において有用である。いくつかの重要な実施形態において、ビオチン類似体は、大腸菌または他の細胞型(例えば、標識化反応が進行している細胞)に由来する野生型ビオチンリガーゼにより認識されない。
【0084】
ビオチン類似体は、細胞膜の通過を妨げる化合物で標識されてよい。あるいは、その意図された適用に依存して、ビオチン類似体は、細菌、真菌、植物、哺乳動物または他の真核生物の膜を通過することができる速度を改善する化合物で標識されてよい。
【0085】
本発明は、いくつかの場合において、ビオチンリガーゼおよび/またはビオチン類似体の単離形態を提供する。ここで使用する場合、単離されたビオチンリガーゼは、十分に純粋な形態で天然環境から分離されたビオチンリガーゼであり、本発明の目的のいずれか1つのために操作され、または使用されてよい。それ故、単離は、(i)抗体を産生し、および/または単離するため、(ii)分析における試薬として、または(iii)シークエンシングのため等を目的として使用できるように十分に純粋であることを意味する。
【0086】
単離されたビオチン類似体は、同様に、その天然環境(それが天然に存在する場合)またはその合成環境から実質的に分離された類似体である。従って、ビオチン類似体は、その合成反応において存在する、標的タンパク質、アクセプターペプチド、ビオチンリガーゼ、または標識化反応に対して毒性を有するか、あるいは有害であるいずれかのまたは全ての試薬から実質的に分離される。
【0087】
本発明の種々の方法は、インビボでの融合タンパク質の発現も必要とする。融合タンパク質は、一般的に、組み換え技術により産生されるタンパク質であり、ビオチンリガーゼアクセプターペプチドを含む。そのような融合は、事実上いずれかのタンパク質から作られ、当業者はそのような方法を熟知している。さらなる接合方法論は、米国特許第5,932,433号; 5,874,239号および5,723,584号にも記載されている。
【0088】
いくつかの実施形態において、ビオチンリガーゼおよび可能であれば融合タンパク質は、誘導性プロモーターの制御下におかれることが望ましい。誘導性プロモーターは、特定の部分の存在下(または非存在下)で活性を有するものである。従って、それは恒常的に活性を有するわけではない。誘導性プロモーターの例は、当該分野で既知であり、テトラサイクリン誘導性T7プロモーターシステムのようなテトラサイクリン反応性プロモーターおよび制御配列、ならびに低酸素誘導性システムが含まれる(Hu et al. Mol Cell Biol. 2003 December;23(24):9361-74)。特定の位置からの発現を制御するための他の方法は、合成された短い干渉RNAs (siRNAs)の使用を含む。
【0089】
成分は、上述したように、標的構造の標識に有効な量で投与される。有効な量は、投与方法、標的細胞の位置、存在する標的構造の量、および望ましい標識化の程度に依存する。
【0090】
本発明によるビオチン類似体は、広範な種類の用途において使用され得ると理解されるべきである。例えば、類似体は、限定するものではないが、タンパク質精製;細胞選別;インビボでのタンパク質輸送;タンパク質固定化;タンパク質検出;多タンパク質の結合が含まれる方法において使用されてよい。本発明は、バイオセンサー;診断キット;薬物送達;薬物ターゲッティング;薬物活性化システム;ハイスループットアッセイ;近接アッセイ(proximity assay;共鳴エネルギー伝達に関するものを含む);結合親和性アッセイならびに他のアッセイおよびデバイスの鍵となる成分を提供するために使用されてもよい。
【0091】
本発明は、酵素Bir Aまたはビオチンリガーゼ活性を有する他の酵素により、標識または標的構造にビオチン類似体を結合させることに限定されないと解されるべきである。類似体をDNAおよびRNA、タンパク質、多糖類、糖タンパク質等のようなある一定の生体分子構造に結合させるために、標準的な結合化学(酵素の関与がないもの)が使用されてよい。例えば、標準的なペプチド結合化学を使用することができる(EDC、DCC、pyBOPまたは他のカルボキシレート活性化剤)。他の方法には、限定するものではないが、ビオチンが同様に使用される方法(すなわち、ビオチン化の方法)が含まれる。これらには、限定するものではないが、1級アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、糖タンパク質および非特異的ビオチン化が含まれる。バレリル側鎖カルボキシレートを有する本発明の第1の側面によるビオチン類似体は、アミン、アルコール、チオール、アルデヒドまたはハライドにより置換され、適切な求核性または求電子性の相手と反応し、新たな共有結合を形成してもよい。ビオチン類似体は、金属錯体の形成を介してタンパク質または合成ポリマーと結合してもよい。
【0092】
2-アジドビオチンは、上記種の1つに対するアジド官能基の前または後の結合を介してさらに修飾されてよい。他の類似体の修飾は、同様に、前または後の結合であってよい。修飾には、限定するものではないが、上述したBir A/アクセプタータンパク質の方法を用いて2-アジドビオチンおよびビオチン類似体をタンパク質と結合させることに関してここに挙げた、全てのものが含まれる。これらの化学的に修飾された種は、上述した方法において使用することができるが、それらに限定されない。さらなる使用には、限定するものではないが、アレイ技術、ELISA、ポイント・オブ・ケア(point-of-care)診断、生物学的イメージング、チップ上のラボ(lab-on-a-chip)技術およびビオチン-(strep)アビジン結合を利用する技術が含まれる。
【0093】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう:実施例1Aおよび1Bでは、本発明の第1の側面の1つの実施形態による新規のビオチン類似体である2-アジドビオチンの合成方法の1つについて述べ、該方法の最適化を検討する;実施例2では、2-アジドビオチンの合成のための代替ルートについて述べる;実施例3では、本発明の好ましい方法による2-アジドビオチンの合成のためのさらなるルートについて述べる;実施例4では、ビオチンリガーゼを用いた2-アジドビオチンのアクセプターペプチドへの付加について検討する;実施例5では、アビジンに対する2-アジドビオチンの結合親和性について研究する;実施例6では、2-アジドビオチンと生物直交性の官能化タグの反応について検討する;実施例7では、本発明の範囲外の2つのビオチン類似体の結合親和性について検討し、これを2-アジドビオチンと比較する。実施例においては、付属の図面を参照する。
【0094】
本発明は、大腸菌もしくはその変異体、または他の種において見出されたこの酵素の相同体からのビオチンリガーゼの基質であってよい新規のビオチン類似体の設計、合成および適用に関する。そのような類似体は、中程度〜高い親和性で、タンパク質アビジン、ストレプトアビジン(もしくはそれらの相同体)または抗ビオチン抗体または合成均等物と結合する。ビオチン類似体は、生物学的な液体または細胞の細胞質のような複合媒質の存在下で、高い選択性(生物直交性)の化学反応を受けることができる化学反応基で官能化され、タンパク質のような特定の反応相手と安定な結合を形成する。
【0095】
特にここに記載した新規のビオチン類似体は、これまでに開示されたビオチン類似体では観察されていない多くの鍵となる特性を有する。第1に、本発明による類似体は、BirAビオチンリガーゼに対する基質として作用し、天然ビオチンと同様の有効性で、ATPの存在下、Avitag(商標)ペプチド (GLNDIFEAQKIEWHE*)に添加される。ビオチン類似体は、等温滴定熱量測定を用いてアビジンに対する適度な (Kd~10-7 M) 結合親和性を有すること、および上記のSlavoffらにより報告されたアジドビオチン類似体よりもアビジンに対して優位に高い親和性を有することも示されている。
【0096】
実施例1A:2-アジドビオチンの合成
2-アジドビオチンは、ビオチンから5つのステップで、以下に示すように12%の全体収率で調製された。
【化11】

【0097】
(i)(+)-ビオチン-メチルエステルの合成
(Aubert, D. G. L. University of Nottingham PhD Thesis, 2004):
【化12】

【0098】
窒素の不活性雰囲気下、0℃で、アセチルクロリド (0.61 mL, 8.51 mmol) を、無水メタノール (10 mL) 中の (+)-ビオチン (490 mg, 2.0 mmol) 溶液に加えた。溶液を室温で一晩撹拌し、その後、真空下で溶媒を除去し、淡黄色の固体を得た。これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、ジクロロメタン:メタン (15:1) で溶出し、生成物を白色粉末として得た(505 mg, 1.96 mmol, 収率98%)。
【0099】
M.p.162.0-162.3 oC. [α]25D + 49.5 (c 1.0, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.77 (br s, 1H, NH), 5.39 (br s, 1H, NH), 4.51 (dd, J = 7.2, 4.8 Hz, 1H, NCH), 4.31 (dd, J = 6.8, 4.8 Hz, 1H, NCH), 3.66 (s, 3H, CH3), 3.17-3.14 (m, 1H, SCH), 2.91 (dd, J = 12.8, 5.1 Hz, 1H, SCHAH), 2.74 (d, J = 12.8 Hz, 1H, SCHBH), 2.34 (t, J = 7.6 Hz, 2H, CH2CO), 1.78-1.57 (m, 4H, (CH2)2), 1.53-1.34 (m, 2H, CH2); 13C NMR (100 MHz, MeOH-d4): δ 175.82, 165.96, 63.89, 62.22, 56.87, 52.01, 40.83, 34.52, 29.68, 29.41, 25.87; FI-IR (CHCl3溶液中): 3272.5, 2923.4, 1743.2, 1698.6, 1464.2 cm-1; ESI-MS m/z 259.1054 ([M + H]+); HRMS calcd. for C11H19N2O3S ([M + H]+) 259.1116; found 259.1110。
【0100】
(ii)N, N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステルの合成
【化13】

【0101】
無水DMF (12 mL) 中のステップ(i)で調製したビオチンメチルエステル (517 mg, 2.0 mmol) の溶液を、窒素の不活性雰囲気下、0℃で、無水DMF (9.6 mL) 中のNaH懸濁液 (鉱油中で60%分配) (240 mg, 6.0 mmol)にゆっくりと加え、20分後、4-メトキシベンジルクロリド (0.940 g, 6.0 mmol) を反応混合物にゆっくりと加えた。添加後、混合物を室温で4時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液で中和した。減圧溶媒を真空蒸発により除去し、残留物を酢酸エチルに溶解し、水、飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。真空乾燥後、淡黄色の油を得た。これをフラッシュクロマトグラフィーで精製し、酢酸エチル:石油エステル (1:2) で溶出し、無色の油を得た(425 mg, 0.85 mmol, 収率43%)。
【0102】
[α]23D - 43.1 (c 1.05, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.17 (t, J = 8.4 Hz, 4H, Ar-H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 4H, Ar’-H), 5.00 (d, J = 14.8 Hz, 1H, ArCHAHO), 4.66 (d, J = 14.8 Hz, 1H, ArCHBHO), 4.08 (d, J = 14.8 Hz, 1H, Ar’CHAHO), 3.88 (d, J = 14.8 Hz, 1H, Ar’CHBHO), 3.97-3.81 (m, 2H, NCH および N’CH), 3.80 (s, 6H, CH3OAr および CH3OAr’), 3.68 (s, 3H, COOCH3), 3.11-3.03 (m, 1H, SCH), 2.32 (dd, J = 12.4, 4.0 Hz, 1H, SCHAH), 2.30 (dd, J = 12.4, 6.0 Hz, 1H, SCHBH), 2.31 (td, J = 6.4, 2.0 Hz, 2H, CH2CO), 1.75-1.23 (m, 6H, (CH2)3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 173.89, 160.91, 159.01, 158.98, 129.52, 129.46, 128.88, 128.78, 113.96, 113.91, 62.38, 60.96, 55.19, 54.13, 51.48, 47.23, 45.90, 34.71, 33.79, 28.54, 28.38, 24.57; FI-IR (CHCl3 溶液中) 3606.8, 2936.6, 2838.0, 2400.0, 1729.0, 1683.6, 1612.1, 1586.0, 1456.8, 1381.2 cm-1; ESI-MS m/z 499.2391 ([M + H]+); HRMS calcd. for C27H34N2NaO5S ([M + Na]+) 521.2086; found 521.2094。
【0103】
(iii)N, N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチンメチルエステルの合成:
(Pearson, A.J., Zhang, P.and Lee. K. J. Org. Chem., 1996. 61, 6581-6586)
【化14】

【0104】
KHMDS (0.4 mL, トルエン中0.5 N) を、−78℃、アルゴンの不活性雰囲気下で、無水THF (3.0 mL)中のN, N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル (73 mg, 0.15 mmol) 溶液にゆっくりと加え、30分後、−78℃に予め冷却した無水THF (1.6 mL)中のトリシルアジド (53 mg, 0.17 mmol) の溶液を、カニューレにより反応溶液に加え、1時間後、氷酢酸 (0.02 mL) を加え、室温で3時間撹拌し、溶液を白色スラリーとした。溶媒を減圧除去した後、残留物をジクロロメタンに溶解し、その後、飽和炭酸水素ナトリウム、水および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧蒸発の後、淡黄色の油が得られ、フラッシュクロマトグラフィーでそれを精製し、酢酸エチル:石油エーテル (1 : 2) で溶出し、無色の油を得た(55 mg, 0.10 mmol, 収率 67%)。
【0105】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.18-7.14 (m, 4H, Ar-H), 6.83 (d, J = 8.4 Hz, 4H, Ar’-H), 5.00 (d, J = 14.8 Hz, 0.6H, ArCHAH) (主要な異性体), 4.96 (dd, J = 14.8, 2.4 Hz, 0.4 H, ArCHAH) (微量の異性体), 4.67 (d, J = 15.2 Hz, 0.6H, ArCHBH) (主要な異性体), 4.66 (d, J = 14.8 Hz, 0.4 H, ArCHBH) (微量の異性体), 4.07 (d, J = 15.2 Hz, 1H, Ar’CHAH ), 3.87 (d, J = 15.2 Hz, 1H, Ar’CHBH), 3.97-3.73 (m, 8H), 3.67 (s, 3H, COOCH3), 3.10-3.00 (m, 1H, SCH), 2.70-2.60 (m, 2H, SCH2), 2.30 (td, J = 7.2, 2.0 Hz, 1H, CH2CO), 1.90-1.20 (m, 6H, (CH2)3); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 173.91, 170.81, 160.92, 160.85, 159.07, 159.02, 158.99, 129.55, 129.53, 129.47, 128.88, 128.79, 128.69, 113.99, 113.98, 113.94, 113.92, 62.64, 62.60, 62.39, 61.76, 61.68, 60.97, 60.94, 55.20, 54.14, 53.69, 52.62, 52.60, 51.49, 47.29, 47.24, 45.98, 45.91, 34.72, 34.66, 33.81, 31.00, 28.55, 28.39, 28.08, 25.20, 25.09, 24.58 (2つの異性体の混合物); FI-IR (CHCl3溶液中) 2935.7, 2838.2, 2109.0, 1732.3, 1682.8, 1612.4, 1456.4, 1356.4, 1038.2 cm-1; ESI-MS m/z 540.2253 ([M + H]+); HRMS calcd. for C27H33N5NaO5S ([M + Na]+) 562.2095; found 562.2095。
【0106】
(iv)2-アジドビオチンメチルエステルの合成
【化15】

【0107】
N, N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル (104 mg, 0.19 mmol) をトリフルオロ酢酸 (1.0 mL) に溶解し、1時間還流した後、トリフルオロ酢酸を減圧蒸発により除去し、淡赤色の油を得た。それをフラッシュクロマトグラフィーで精製し、酢酸エチル:石油エーテル (2 : 1) で溶出し、無色の粘性を有する油を得た(57 mg, 0.19 mmol, 収率 100%)。
【0108】
1H NMR (400 MHz, MeOH-d4): δ 4.48 (dd, J = 7.6, 4.8 Hz, 1H, NCH), 4.29 (dd, J = 8.0, 4.8 Hz, 1H, N’CH), 3.65 (s, 3H, OCH3), 3.22-3.15 (m, 1H, SCH), 2.92 (dd, J = 12.8, 4.2 Hz, 1H, SCHAH), 2.70 (d, J = 12.8 Hz, 1H, SCHBH), 2.34 (t, J = 7.2 Hz, 1H, CHN3), 1.90-1.40 (m, 6H, (CH2)3) (そのエピマーから分離できない); 13C NMR (100 MHz, MeOH-d4): δ 175.92, 166.33, 63.40, 61.65, 56.95, 52.01, 41.02, 34.56, 29.70, 29.46, 25.92; FI-IR (CHCl3溶液中) 3466.4, 2929.5, 2109.6, 1707.5, 1456.1, 1331.5 cm-1; ESI-MS m/z 300.1150 ([M + H]+); HRMS calcd. for C11H18N5O3S ([M + H]+) 300.1125; found 300.1111。
【0109】
(v)2-アジドビオチンの合成:
【化16】

【0110】
2-アジドビオチンメチルエステル (52 mg, 0.17 mmol) をメタノール (0.7 mL) およびTHF (0.7 mL)に溶解した後、混合物を0℃に冷却し、水酸化リチウム溶液 (水中0.9 M) (0.77 mL, 0.7 mmol) を加え、4℃で4時間撹拌した。溶媒を減圧蒸発で除去し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、0.25% TFAを含むジクロロメタン:メタノール (10 : 1)で溶出し、白色固体を得た(20 mg, 0.47 mmol, 収率 41%)。
【0111】
1H NMR (400 MHz, MeOH-d4): δ 4.48 (dd, J = 7,6 Hz, 4.0 Hz, 1H, NCH), 4.30 (dd, J = 7.6, 4.4 Hz, 1H, N’CH), 3.96 (dd, J = 8.4, 5.2 Hz, 1H, CHN3), 3.21 (dt, J =9.2, 5.2 Hz, 1H, SCH), 2.93 (dd, J = 12.4, 4.8 Hz, 1H, SCHAH), 2.71 (d, J = 12.8 Hz, 1H, SCHBH), 1.92-1.80 (m, 1H), 1.80-1.68 (m, 2H), 1.68-1.50 (m, 3H); 13C NMR (125 MHz, MeOH-d4): δ 175.10, 166.14, 63.851, 63.374, 61.59, 56.88, 41.06, 32.56(主要な異性体), 32,49 (微量の異性体)) 29.37(主要な異性体), 29.22 (微量の異性体), 26.66 (主要な異性体), 26.53 (微量の異性体); FI-IR (KBr固体) 3375.40, 2932.65, 2865.26, 2112.17, 1725.17, 1630.18, 1219.94 cm-1; ESI-MS m/z 284.0766 ([M - H]-); HRMS calcd. for C10H14N5O3S ([M - H]-) 284.0823; found 284.0826。
【0112】
実施例1B:実施例1Aの合成ルートを使用した2-アジドビオチンの調製方法の最適化
上記(A)において使用した合成スキームを以下に概要を示すように再び実行し、収率を17%に改善することができた:
【化17】

【0113】
i) AcCl, MeOH, N2, 0°C 〜 r.t., 97%; ii) 60% NaH, DMF, PMB-Cl, 0°C 〜 r.t., 81%; iii) KHMDS, THF, -78°C, その後 Trisyl-N3, THF, -78°C, その後氷酢酸, -78°C 〜 r.t., 37%; iv) TFA, 還流, 91%; v) LiOH, THF/MeOH/dH2O (1:1:1), 0 - 4°C, 64%。
【0114】
(i)ビオチンメチルエステル(1)の合成
D-(+)-ビオチン (1.80 g, 7.37 mmol) を、窒素雰囲気下で無水メタノール (30 ml) 中に懸濁し、0℃に冷却し、アセチルクロリド (4 equiv., 29.59 mmol, 2.1 ml) を滴下した。混合物を外界温度で一晩撹拌し、真空中で溶媒を除去し、黄色の固体をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(1 MeOH : 15 DCM; rf 〜 0.29)、白色結晶の固体として1の化合物を得た (1.84 g, 7.12 mmol, 97%)。
【0115】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.69 (1H br s, NH), 4.54 (1H, ddd, J=7.8, 5.0, 1.0, NCH), 4.34 (1H, dd, J=7.8, 4.6, NCH), 3.69 (3H, s, OCH3), 3.21 - 3.16 (1H, m, SCH), 2.94 (1H, dd, J=12.8, 5.0, SCH2), 2.77 (1H, d, J=12.8, SCH2), 2.36 (2H, t, J=7.5, CH2CO), 1.80 - 1.62 (4H, m, 2CH2), 1.55 - 1.38 (2H, m, CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 174.1, 163.4, 62.0, 60.2, 55.3, 51.6, 40.5, 33.7, 28.3, 28.2, 24.8 ppm. Mp. 162 - 163°C (Lit2b 162.0 - 162.3°C). FT-IR (KBr固体) νMax 3274.9 (NH), 2922.2 (CH), 1745.0 (C=Oエステル), 1708.7 (C=O尿素) cm-1. HRMS m/z calc. C11H18N2O3SNa [M+Na]+ requires 281.0930, found 281.0931。
【0116】
(ii)N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル(2)の合成
0℃、窒素雰囲気下において、無水DMF (35 ml)中のビオチンメチルエステル 1 (1.54 g, 5.96 mmol) を、カニューレを介して無水DMF (20 ml) 中のNaH (3 equiv., 17.90 mmol, 716 mg) 懸濁液に加えた。懸濁液を20分間撹拌し、p-メトキシベンジルクロリド (3 equiv., 17.90 mmol, 2.43 ml) を10分かけて滴下した。混合物を0℃で5分間撹拌し、外界温度で一晩撹拌した。水性NH4Cl (sat.; 20 ml) を加え、全ての溶媒を減圧除去した。残留物をEtOAc (20 ml) に溶解し、水 (2 x 20 ml) およびブライン (20 ml) で洗浄し、乾燥し (MgSO4) 、黄色の油を得た。フラッシュクロマトグラフィーによる精製により (1 - 33% EtOAc in PE, rf 〜 0.32; 2 - 33% Et2O in PE, rf 〜 0.28)、無色の油として2の化合物の2つのサンプルが得られ、1つ目 (1.50 g, 3.02 mmol, 51%) は約95%のNMR純度を有しており、2つ目 (901 mg, 1.81 mmol, 30%) は約86%のNMR純度を有していた。
【0117】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19 (4H, t, J=8.4, 4ArH), 6.87 (4H, d, J=8.4, 4ArH), 5.00 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.67 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.11 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.00 - 3.84 (3H, m, NCH2Ar, 2NCH), 3.81 (6H, s, 2ArOCH3), 3.70 (3H, s, CO2CH3), 3.12 - 3.05 (1H, m, SCH), 2.74 (1H, dd, J=12.5, 4.2, SCH2), 2.68 (1H, dd, J=12.5, 6.2, SCH2), 2.31 (2H, td, J=7.3, 2.0, CH2CO), 1.73 - 1.32 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 173.9, 161.0, 159.2, 159.1, 129.6, 129.6, 129.0, 128.9, 114.1, 114.0, 62.6, 61.1, 55.3, 54.2, 51.5, 47.3, 46.0, 34.8, 33.9, 28.6, 28.5, 24.7 ppm. FT-IR (NaCl液体) νMax 2997.8, 2934.7, 2858.3, 2835.7 (CH), 1734.3 (C=Oエステル), 1697.1 (C=O尿素), 1611.5, 1584.8, 1416.9 (Ar C-C) cm-1. HRMS m/z calc. C27H34N2O5SNa [M+Na]+ requires 521.2081, found 521.2079。
【0118】
(iii)N,N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチンメチルエステル(3)の合成
N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル2 (512 mg, 1.03 mmol) およびトリシルアジド (1.15 equiv., 365 mg, 1.18 mmol) を、室温、減圧下、乾燥用ガラス器具中で1時間乾燥し、アルゴンでパージした。2の化合物を無水THF (25 ml) に溶解し、−78℃に冷却し、KHMDS (1.33 equiv., 1.37 mmol, 2.73 ml)を滴下した。混合物を30分間撹拌し、予め冷却したTHF (1.5 ml, -78°C) 中のトリシルアジドをカニューレを介して加え、連続して1時間撹拌した。氷酢酸 (2.4 equiv., 2.46 mmol, 0.14 ml) を加え、混合物を4時間かけて外界温度まで温めた。溶媒を減圧除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し (DCM中の3%アセトン, rf 〜 0.35)、無色の油として3の化合物が得られ (203 mg, 0.38 mmol, 37%) 2の化合物 (118 mg, 23%) を回収した。
【0119】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19 (4H, dd, J=8.6, 5.4, 4ArH), 6.87 (4H, d, J=8.6, 4ArH), 4.95 (1H, dd, J=15.0, 2.8, NCH2Ar), 4.66 (1H, d, J=15.0, NCH2Ar), 4.11 (1H, d, J=15.0, NCH2Ar), 4.00 - 3.85 (4H, m, NCH2Ar, 2NCH, CHN3), 3.85 - 3.80 (9H, m, 2ArOCH3, CO2CH3), 3.11 - 3.02 (1H, m, SCH), 2.77 - 2.66 (2H, m, SCH2), 1.92 - 1.24 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 170.9, 170.9, 160.9, 159.2, 159.1, 129.6, 129.6, 128.9, 128.8, 114.1, 114.1, 62.8, 62.8, 61.9, 61.8, 61.1, 55.3, 53.7, 52.7, 52.6, 47.4, 47.4, 46.1, 34.7, 31.1, 28.2, 25.2, 25.1 ppm. FT-IR (NaCl液体) νMax 3000.0, 2932.2, 2861.0, 2835.8 (CH), 2106.4 (N3), 1742.0 (C=Oエステル), 1691.2 (C=O尿素), 1611.4, 1584.8, 1512.0 (Ar C-C) cm-1. HRMS m/z calc. C27H33N5O5SNa [M+Na]+ requires 562.2095, found 562.2088。
【0120】
(iv)2-アジドビオチンメチルエステル(4)の合成
N,N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチンメチルエステル 3 (203 mg, 0.38 mmol) を、TFA (2 ml) に溶解し、加熱して1時間還流した。TFAを真空中で除去し、得られた赤色の残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(EtOAc中の5% MeOH , rf 〜 0.17)、無色の油として化合物4を得た (102 mg, 0.34 mmol, 91%)。
【0121】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.19 (0.5H, s, 0.5NH), 6.06 (0.5H, S, 0.5NH), 5.72 (1H, br s, NH), 4.48 - 4.40 (1H, m, NCH), 4.28 - 4.22 (1H, m, NCH), 3.87 - 3.79 (1H, m, CHN3), 3.73 (3H, s, CO2CH3), 3.12 - 3.04 (1H, m, SCH), 2.85 (1H, dd, J=12.8, 5.0, SCH2), 2.66 (1H, d, J=12.8, SCH2), 1.90 - 1.34 (6H, m, 6CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 171.1, 171.0, 164.3, 62.2, 62.1, 61.8, 61.7, 60.3, 55.4, 55.3, 52.7, 40.5, 31.2, 31.1, 28.1, 28.0, 25.3, 25.2 ppm. FT-IR (KBr 固体) νMax 3234.5 (NH), 2944.9, 2863.7 (CH), 2116.6 (N3), 1698.7 (C=O 尿素) cm-1. HRMS m/z calc. C11H17N5O3SNa [M+Na]+ requires 322.0944, found 322.0941。
【0122】
(v)2-アジドビオチン(5)の合成
2-アジドビオチンメチルエステル4 (81 mg, 0.27 mmol) を、MeOHとTHFの混合物 (3.6 ml, 1:1) に溶解し、0℃に冷却し、LiOH (6 equiv., 1.61 mmol, 0.9 M水溶液の1.8 mlとして添加) を滴下し、混合物を4時間、4℃で撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をNaHCO3 (sat., 5 ml, 水で1:1に希釈) に溶解し、不純物をDCM (3 x 5 ml)で抽出した。水相を酸性化し (1M HCl, pH 2) 、2-アジドビオチンを4℃で一晩結晶化させ、白色針状結晶として化合物5を得た (41 mg, 0.14 mmol, 53%)。さらに、水相を蒸発させ、残留物を1M HCl (aq.)から4℃で一晩結晶化することにより、クリーム色の粉末として化合物5を得た (8 mg, 0.03 mmol, 11%)。
【0123】
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 13.29 (1H, br s, CO2H), 6.43 (1H, s, NH), 6.35 (1H, s, NH), 4.35 - 4.27 (1H, m, NCH), 4.17 - 4.11 (1H, m, NCH), 4.11 - 4.05 (1H, m, CHN3), 3.17 - 3.08 (1H, m, SCH), 2.84 (1H, dd, J=12.4, 5.2, SCH2), 2.59 (1H, d, J=12.4, SCH2), 1.85 - 1.33 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, d6-DMSO) δ 172.3 (微量), 172.3 (主要), 163.1, 61.7, 61.5, 61.4, 59.7 (主要), 59.6 (微量), 55.7 (微量), 55.6 (主要), 31.2 (微量), 31.1 (微量), 28.3 (微量), 28.2 (微量), 25.5 (微量), 25.4 (微量) ppm. Mp. 209 - 210°C. FT-IR (KBr固体) νMax 3298.7 (NH), 2927.7 (CH), 2497.4 (OH), 2112.7 (N3), 1725.9 (C=O酸), 1626.4 (C=O尿素) cm-1. HRMS m/z calc. C10H14N5O3S [M-H]- requires 284.0823, found 284.0809。
【0124】
化合物1を得るためのメチルエステル形成は、メタノール水溶液中のビオチン懸濁液をアセチルクロリドで処理することにより、精製後に優れた収率で達成された。続く、PMB-クロリドでのN,N’-ウレイドの保護による化合物2の合成は、主にPMB-Cl出発物質の純度またはその後の反応条件下での分解により、より困難であることが分かった。PMB-ClのNMR分析は、それが良好な純度であることを示したが、TLC(4スポット)によると同様の結果が得られなかった。フラッシュクロマトグラフィーによる反応性生物の最初の精製(EtOAc 中の33% PE; rf 〜 0.31)は、うまくいかないことが分かった。移動相を使用した第2のカラム(PE中の33% EtOAc ; rf〜 0.32) によると、TLCでは純粋であるが、NMR分析では化合物2の混合物および芳香族不純物(すなわち、2つの共溶出TLCスポット)の存在が確認され、PMB-Clの分解生成物に関連するものであると推測された。第3のカラム (Et2O中の33% PE; rf 〜 0.28) は、PMB保護された生成物2を精製するために使用したが、不純物はTLCにより明確には観察されなかったため、1H NMRを使用して濃縮前に生成物含有画分の純度を確認した。この得られた化合物2のいくつかの部分は、1H NMR純度が95% (50% 非修正収率) および86% (30% 非修正収率)であることが見積もられ、純粋な生成物の含量がより少ない画分は捨てた。
【0125】
アジド化ステップの完了は、Y. Q. Yangにより行われた場合を除いて(未だ出版されていない)、首尾よく達成するのが困難であることが以前に示されている。THFは、ナトリウム/ベンゾフェノンから新たに蒸留され、4Å分子篩を通して不活性雰囲気下で保存され、KHMDSおよびトリシルアジドの新規のバッチを購入した。これらの実験において使用される全てのガラス器具/カニューレは、使用前に加熱乾燥し、デシケーター中/アルゴンの気流下で外界温度まで冷却した。さらに、無水条件は、アルゴン雰囲気下で反応を完了させることにより維持され、N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル(2)およびトリシルアジドは、実験において使用する前に減圧下、外界温度で乾燥し、アルゴンでパージした。
【0126】
反応条件および反応の成功におけるこれらの効果を見出すために、いくつかの小規模な反応(〜30mg)を行い、その詳細を以下の表1に示す。
【表1】

【0127】
上記結果から、全ての場合において化合物2から3への完全な変換が得られたが、MSによりジアゾ副産物が同定された場合はないことが分かった(Evans, D. A. et al., JACS, 1990, 112, 4011 - 4030)。化合物2から化合物3への変換を最大化するように反応条件を最適化するために、温度およびアジド化ステップの時間を検討した。反応は、−60℃までの温度耐性を示した(AおよびB)が、アジド化ステップを−50℃まで温めたところ、有害なアジド転移を示した(C)。反応時間は、以前に報告された2分(E)(上述したEvans)よりも1時間のアジド化が至適である(D)ことが示され、氷酢酸に媒介される中間分解の間、3〜4時間より長く反応を続けた場合(A, C, DおよびE)、MSにより同定されないポリマー生成物をしばしば生じた(単一のポリマー単位質量74)。それ故、最適且つ最も再現性のある反応条件は、反応Dの条件であると考えられ、-78℃で30分間のKHMDS (1.33 ×)での処理、−78℃で1時間のトリシルアジド (1.15 ×) での処理、氷酢酸の添加 (2.4 ×)、3〜4時間にわたる外界温度への加温が含まれる (Yang et al; 未公開および Pearson, A. J. et al., JOC, 1996, 61, 6581 - 6586)。これらの条件が反応において使用された場合、N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル2とN,N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチンメチルエステル3の混合物が得られ、これはフラッシュクロマトグラフィーで分離するのが難しいことが分かっている。移動相 (PE中の33% EtOAc) を利用する試みは、分離を達成できなかった。多くの努力の後、化合物2と化合物3の分離のための最適な溶媒が見出され (DCM中の3%アセトン; rf 2 〜 0.39, rf 3 〜 0.30)、この反応のスケールアップに応じて、化合物3を37%の収率で得られ、および23%の回収された化合物2が得られた。
【0128】
PMB脱保護は、TFAの還流において達成され、化合物4を91%生成した。しかしながら、生成物は、クロマトグラフィーの移動相 (EtOAc中の33% PE) に対して極性が大きすぎることが分かり、代わりのものが使用された (EtOAc中の5% MeOH; rf 〜 0.17)。最後に、化合物4のメチルエステルのけん化は、LiOHを使用し、水性反応溶液の酸化により、2-アジドビオチン生成物5を溶液から自発的に結晶化させた。
【0129】
実施例2:2-オキサゾリジノンを使用した2-アジドビオチンの代替の調製方法
キラルでないEvansの補助的な類似体2-オキサゾリジノンをビオチンに直接添加するために、多くの合成方法が試みられてきた。これらには、ビオチンの酸塩化物を使用するルートが含まれ、その後、補助的なペプチドカップリング反応 (DCC, EDCI, HBTU)での置換、混合性無水物の方法(AcCl, Piv-Cl)、活性化 N-ヒドロキシスクシンイミド生成物の置換が試みられた。しかしながら、これらの方法は全て、主に多くの有機溶媒におけるビオチン出発物質および得られる反応生成物の固有の不溶性により、うまくいかないことが示された。
【0130】
続いて、PMB-保護されたN,N’-ウレイド官能基が化合物の溶解性に対して有意な利益を提供するため、以下に示す合成ルート2が提案された。それ故、ルート2では、最初は上述したルート1に従って、PMB保護されたビオチンメチルエステル2を得た。この段階において、より純粋でない化合物2の画分 (1H NMR により約86%) をけん化し、N,N’-p-メトキシベンジルビオチン6を91〜100%の収率で得た。出発物質中に存在する不純物の程度が十分に知られていないため、このステップの正確な収率は不明であるが、生成物の単離の間に、全ての不純物が酸/塩基抽出により除去された。これは、前のステップにおいて従来のフラッシュクロマトグラフィー方法による精製が難しいことが示されている物質に対して、早く単純な精製を提供する。
【0131】
スキーム2:2-アジドビオチンの合成
【化18】

【0132】
AcCl, MeOH, N2, 0℃ 〜 r.t., 97%; ii) 60% NaH, DMF, PMB-Cl, 0℃〜 r.t., 81%; iii) LiOH, THF/MeOH/dH2O (1:1:1), 0℃ 〜 r.t., 91%+; iv) (COCl)2, DCM, DMF, r.t. その後2-オキサゾリジノン, n-BuLi, THF, -78℃〜 r.t., 95% (2 ステップ); v) KHMDS, THF, -78°C, その後トリシル-N3, THF, -78℃, その後氷酢酸, -78℃ 〜 r.t., 66%; vi) TFA, 還流, 83%; vii) LiOH, THF/dH2O (3:1), 0℃, 50%。
【0133】
ステップ(i)および(ii)は、実施例1Bにおけるステップ(i)および(ii)に対応する。
【0134】
(iii)N,N’-p-メトキシベンジルビオチン(6)の合成
N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル2 (NMR純度約86%, 788 mg, 1.58 mmol) を、MeOHとTHFの混合物 (20 ml, 1:1) に溶解し、0℃に冷却し、LiOH (6 equiv., 9.62 mmol, 9.6 mlの1 M 水溶液として添加) を滴下し、混合物を0℃で4時間撹拌し、外界温度で一晩撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をNaHCO3 (sat., 50 ml, 水で1:1に希釈) に溶解し、不純物をEtOAc (3 × 10 ml)に抽出した。水相を酸性化し (conc. HCl, pH 2) 、生成物をEtOAc (5 × 40 ml) に抽出した。有機相をブライン (20 ml) で洗浄し、乾燥し (MgSO4) 化合物6を無色の油として得た (697 mg, 1.44 mmol, 91%+)。 Rf 〜 0.00 (1 MeOH : 15 DCM)。
【0135】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19 (4H, dd, J=8.7, 6.8, 4ArH), 6.87 (4H, d, J=8.7, 4ArH), 4.99 (1H, d, J=15.1, NCH2Ar), 4.67 (1H, d, J=15.1, NCH2Ar), 4.11 (1H, d, J=15.1, NCH2Ar), 4.00 - 3.83 (3H, m, NCH2Ar, 2NCH), 3.82 (6H, s, 2ArOCH3), 3.12 - 3.04 (1H, m, SCH), 2.78 - 2.65 (2H, m, SCH2), 2.37 (2H, td, J=7.1, 2.8, CH2CO), 1.77 - 1.30 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 178.3, 161.0, 159.2, 159.1, 129.6, 129.6, 128.9, 128.8, 114.1, 114.1, 62.7, 61.1, 55.3, 54.1, 47.4, 46.1, 34.7, 33.8, 28.5, 28.4, 24.4 ppm. FT-IR (NaCl液体) νMax 2933.0 (OHおよびCH), 1691.1 (C=O酸および尿素), 1611.4, 1585.0, 1512.2 (芳香族C-C) cm-1. HRMS m/z calc. C26H31N2O5S [M-H]- requires 483.1959, found 483.1974。
【0136】
(iv)3-(N,N’-p-メトキシベンジルビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン(7)の合成
N,N’-p-メトキシベンジルビオチン 6 (461 mg, 0.95 mmol) を、窒素雰囲気下で無水DCM (5 ml) に溶解し、オキザリルクロリド (1.4 equiv., 1.33 mmol, 0.67 ml) および無水DMF (1滴) を加え、混合物を外界温度で1時間撹拌し、溶媒を真空中で蒸発させた。2-オキサゾリジノン (1.1 equiv., 1.05 mmol, 91 mg) を、無水THF (5 ml) に溶解し、-78℃に冷却し、n-BuLi (補助的な1.01当量, 1.06 mmol, 0.66 ml) を10分間に渡って滴下した。混合物を-78℃で5分間撹拌し、無水THF (5 ml) 中の酸塩化物をカニューレを介して添加した。-78℃で30分間、その後外界温度で2時間撹拌を続け、溶媒を真空中で除去し、白色の泡を得た。これをEtOAc (50 ml) に溶解し、NaHCO3 (3 × 25 ml)、ブライン (25 ml)で洗浄し、乾燥し (MgSO4) 、化合物7を淡黄色の泡として得た (496 mg, 0.90 mmol, 95%)。Rf 〜 0.15 (DCM中の1% MeOH)。
【0137】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19 (4H, dd, J=8.7, 5.6, 4ArH), 6.87 (4H, d, J=8.7, 1.2, 4ArH), 5.01 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.68 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.46 - 4.41 (2H, m, CH2-補助), 4.10 (1H, d, J=15.2, NCH2Ar), 4.06 - 4.02 (2H, m, CH2-補助), 3.97 -3.83 (3H, m, NCH2Ar, 2NCH), 3.82 (6H, d, J=1.2, 2ArOCH3), 3.13 - 3.06 (1H, m, SCH), 2.95 (2H, t, J=7.2, CH2CO), 2.75 (1H, dd, J=12.6, 4.2, SCH2), 2.67 (1H, dd, J=12.6, 6.2, SCH2), 1.78 - 1.32 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 173.2, 161.0, 159.1, 159.1, 153.5, 129.6, 129.6, 129.0, 128.9, 114.1, 114.0, 62.5, 62.0, 61.1, 55.3, 55.3, 54.2, 47.3, 46.0, 42.5, 34.9, 34.8, 28.5, 28.5, 24.0 ppm. FT-IR (KBr 固体) νMax 2931.2, 2836.1 (CH), 1778.0 (C=Oイミド), 1691.3 (C=O 尿素), 1611.2, 1584.6, 1511.9 (芳香族C-C) cm-1.HRMS m/z calc. C29H36N3O6S [M+H]+ requires 554.2319, found 554.2312.
(v)3-(N,N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン(8)の合成
3-(N,N’-p-メトキシベンジルビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン 7 (91 mg, 0.17 mmol) およびトリシルアジド (1.15 equiv., 59 mg, 0.19 mmol) を、室温、減圧下で1時間、ガラス容器中で加熱乾燥し、アルゴンでパージした。化合物7を無水THF (3 ml) に溶解し、-78℃に冷却し、KHMDS (1.33 equiv., 0.22 mmol, 0.44 ml)を滴下した。混合物を30分間撹拌し、予め冷却したTHF中のトリシルアジド (1.5 ml; -78°C) をカニューレを介して添加し、撹拌を1時間続けた。氷酢酸 (2.4 equiv., 0.40 mmol, 23μl) を加え、混合物を4時間かけて外界温度まで温めた。溶媒を真空中で除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し (EtOAc中の33% PE, rf 〜 0.39) 、放置中に凝固した無色の油として化合物8を得た (65 mg, 0.11 mmol, 66%; 残留物はEtOAc/PEから結晶化可能であり、白色固体37%が得られる)。
【0138】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20 (4H, dd, J=8.6, 1.3, 4ArH), 6.87 (4H, dd, J=8.6, 1.8, 4ArH), 5.03 - 4.94 (2H, m, NCH2Ar, CHN3), 4.68 (1H, d, J=15.1, NCH2Ar), 4.52 (2H, t, J=8.2, CH2-補助), 4.18 - 4.03 (3H, m, NCH2Ar, CH2-補助), 3.98 - 3.85 (3H, m, NCH2Ar, 2NCH), 3.82 (6H, d, J=1.8, 2ArOCH3), 3.17 - 3.10 (1H, m, SCH), 2.75 (1H, dd, J=12.5, 4.2, SCH2), 2.69 (1H, dd, J=12.5, 6.2, SCH2), 1.95 - 1.46 (6H, m, 3CH2) ppm。
【0139】
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 171.0, 159.1, 153.0, 129.7, 129.6, 129.1, 128.8, 114.1, 114.1, 62.6, 62.6, 60.6, 61.0, 59.9, 55.3, 53.6, 47.3, 46.1, 42.6, 34.8, 30.7, 27.7, 25.1 ppm. Mp. 133 - 134°C. FT-IR (KBr固体) νMax 2930.2, 2834.8 (CH), 2110.4 (N3), 1783.7 (C=Oイミド), 1702.33 (C=O イミド), 1678.5 (C=O 尿素), 1609.4, 1512.2 (Ar C-C) cm-1.HRMS m/z calc. C29H34N6O6SNa [M+Na]+ requires 617.2153 found 617.2166。
【0140】
(vi)3-(2-アジドビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン(9)の合成
3-(N,N’-p-メトキシベンジル-2-アジドビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン 8 (137 mg, 0.23 mmol) をTFA (1.2 ml) に溶解し、加熱して1時間還流した。TFAを真空中で除去し、得られる赤色の残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(DCM中の5% MeOH, rf 〜 0.30) 、化合物9を無色の泡として得た (68 mg, 0.19 mmol, 83%)。
【0141】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.96 (0.5H, s, 0.5NH), 5.73 (0.5H, s, 0.5NH), 5.09 (1H, br s, NH), 5.06 (0.5H, dd, J=4.6, 7.5, CHN3-異性体), 4.98 (0.5H, dd, J=4.6, 8.8, CHN3-異性体), 4.58 - 4.46 (3H, m, NCH, CH2-補助), 4.38 - 4.32 (1H, m, NCH), 4.15 - 4.07 (2H, m, CH2-補助), 3.23 - 3.15 (1H, m, SCH), 2.99 - 2.91 (1H, m, SCH2), 2.75 (1H, dd, J=12.7, 4.4, SCH2), 2.03 - 1.46 (6H, m, 3CH2) ppm. FT-IR (KBr固体) νMax 3405.4 (NH), 2924.7 (CH), 2109.9 (N3), 1778.4 (C=Oイミド), 1699.1 (C=O 尿素) cm-1. HRMS m/z calc. C13H18N6O4SNa [M+Na]+ requires 377.1002, found 377.1020。
【0142】
(vii)2-アジドビオチン(5)の合成
3-(2-アジドビオチノイル)オキサゾリジン-2-オン 9 (51 mg, 0.14 mmol) をTHF (3 ml) に溶解し、0℃に冷却し、LiOH (2 equiv., 0.29 mmol, 1 mlの0.29 M水溶液として添加) を滴下し、0℃で1時間撹拌した。有機相を真空中で除去し、水相にNaHCO3 (sat., 2 ml)を加え、有機不純物をDCM (3 × 5 ml)で抽出した。水相を酸性化し (1M HCl, pH 2)、DCM (3 × 5 ml) で素早く抽出し、2-azidobiotinを水相の液体から4℃で一晩かけて自然に結晶化させ、化合物5を白色の針状結晶として得た (14 mg, 0.05 mmol, 36%)。さらに、水相を蒸発させ、4℃で一晩かけて1M HCl (aq.)から残留物を結晶化することにより、化合物5をクリーム色の粉末として得た (5 mg, 0.02 mmol, 14%)。Rf 〜 0.00 (DCM中の5% MeOH )。
【0143】
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 6.43 (1H, s, NH), 6.35 (1H, s, NH), 4.34 - 4.28 (1H, m, NCH), 4.16 - 4.11 (1H, m, NCH), 4.08 - 4.03 (1H, m, CHN3), 3.15 - 3.09 (1H, m, SCH), 2.84 (1H, dd, J=12.4, 5.2, SCH2), 2.58 (1H, d, J=12.4, SCH2), 1.84 - 1.35 (6H, m, 3CH2) ppm. 13C NMR (100 MHz, d6-DMSO) δ 172.3, 163.2, 61.8, 61.6 (微量), 61.5 (主要), 61.4, 59.7 (主要), 59.6 (微量), 55.7 (微量), 55.7 (主要), 31.3 (主要), 31.1 (微量), 28.3 (主要), 28.2 (微量), 25.5 (主要), 25.4 (微量) ppm. Mp. 209 - 210°C. FT-IR (KBr固体) νMax 3284.1 (NH), 2927.9 (CH), 2495.6 (OH), 2110.5 (N3), 1723.0 (C=O酸), 1649.1 (C=O尿素) cm-1. HRMS m/z calc. C10H14N5O3S [M-H]- requires 284.0823, found 284.0821。
【0144】
この実施例において、PMB保護されたビオチン類似体6は、ビオチンについて観察されるよりも著しく増大した溶解性を有することが示され、キラルでない補助剤の添加に対する標準的な方法を使用することを可能にする。それ故、酸塩化物6は、オキザリルクロリドとの反応により形成され、その後n-BuLi処理された2-オキサゾリジノンでin situ置換することにより、化合物7を95%得られる(2ステップ)。上述の「最適化された」アジド化方法は、要求されるアジド官能基を導入するために使用され、この場合、化合物7の完全な消費は、MSおよびTLCにより観察され、結果として単純なフラッシュ精製が生じ (EtOAc中の33% PE; rf 〜 0.39)、化合物8を66%得られた。完全なSM消費が観察されない場合であっても、化合物7と化合物8の分離はまだ達成され得ることに注意すべきである (EtOAc中の33% PE; rf 7 〜 0.35, rf 8 〜 0.45)。観察される化合物7の全体的な消費は、どのようにしてオキサゾリジノンイミドが増強された反応性を有するべきかを示し、おそらく、エステル類似体と比較して増強された酸性度αを有するマスクされたカルボン酸官能基を通して、生成物のより単純な精製および反応収率の増大が得られる。このことは以前に示されており、特異的なアジド化は、エステル官能基の存在下で、キラル補助剤に対してαを生じさせる (Evans, D. A. et al., JACS, 1990, 112, 4011 - 4030)。反応生成物の結晶化は、非対称性類似体を使用した場合に、鏡像異性体が豊富になることも示された。
【0145】
アジド化の完了後、オキサゾリジノンの酸化的脱保護を使用する必要なく、化合物5の脱保護を上述したように行い、標準的なLiOHにより媒介されるけん化を代わりに使用することが好ましい。しかしながら、PMB脱保護において、フラッシュクロマトグラフィーによる精製 (DCM 中の5% MeOH, rf 〜 0.30)は、有機不純物の抽出後に、2-アジドビオチン5を産生しない粗製の反応生成物の直接的なけん化のために必要とされることに注意するべきである。
【0146】
メチルエステル類似体2の場合と比較して、オキサゾリジノン生成物7に対するアジド化の増大した収率、ならびにルート2において利用したけん化およびイミド形成反応の高い収率により、7つのステップを使用するにもかかわらず、結果としてこのルートで、2-アジドビオチン5の同等の全体収率(13〜20%)を得られた。このルートにより単離された2-アジドビオチン(5)は、優れた分析純度を有し、実施例1において使用したルートにおいて観察されるものと同等であった。
【0147】
しかしながら、実施例2のルートは、アジド化ステップの高い収率の他に、実施例1において使用したルートと比較していくつかの他の利点を提供し、主要な利点は、N,N’-p-メトキシベンジルビオチンメチルエステル2の生成のために必要とされる困難なフラッシュクロマトグラフィーを回避できることであり、この場合、メチルエステルの化合物6への加水分解および、単純な抽出精製方法を使用することができる。それ故、ルート2による2-アジドビオチンの合成は、この点において可変性の他の強力なアルキル化類似体の中で、キラル補助剤を導入してR-およびS-2-アジドビオチンの非対称性の合成を誘導するために必要とされる方法論を確立し、2-プロパルギルビオチンが含まれてよい。
【0148】
実施例3:2-アジドビオチンの代替の調製方法
2-アジドビオチンの調製のための代替ルートは、文献の脱保護条件でベンジル保護基を使用する。以下に、スキームを示す:
【化19】

【0149】
この合成ルートは、ウレイド窒素を保護するために、より安価なベンジルブロミドを以下の条件で使用する:
Ref 1: NaH, DMF, 60 min, 90 deg C; 2.2 eq BnBr, 24 h. 90 deg C; H2O , Kyungsoo Tetrahedron Letters (2007), 48(21), 3685-3688に記載
Ref 2: 47% HBr, H2O, 125℃で5時間 (または、酸としてH2SO4およびAcOHもしくはMeSO3Hを使用)。
【0150】
他の条件は、ウレイド窒素の保護および脱保護に関する先行技術文献に記載されているように使用してよい。
【0151】
実施例4:BirAビオチンリガーゼを使用したアクセプターペプチドに対する2-アジドビオチンの付加
実施例1で調製した2-アジドビオチンを、以下のインキュベーション条件を用いて、合成アクセプターペプチド(AP):KKKGPGGLNDIFEAQKIEWHEに添加した。
【0152】
ライゲーション条件: 50 mM ビシン pH 8.3, 5mM マグネシウムアセテート, 4 mM ATP, 100 mM AP, 2.9 mM ビオチンリガーゼ (BirA), 1 mM プローブ, 30oC, 振とう器, 1h。これらは、ビオチンとこの酵素の反応に対しても使用され、以前にChenらにより報告された方法(Nature Methods, 2005, 2, 99-104)から修飾されたものである。
【0153】
ビオチンリガーゼ (BirA) は、321アミノ酸であり、大腸菌に由来する33.5 kDの酵素であり、付属の図3に示すように、ビオチン固着および生合成の経路において、ビオチンのリジン,εアミンへの環境特異的接合を触媒する。この反応は、ATP依存性である。ここに示すように、野生型ビオチンリガーゼは、野生型のビオチン化活性を有する天然の細菌性ビオチンリガーゼを意味する。付属の図1に示したSEQ ID NO: 1は、野生型ビオチンリガーゼを表し (GenBank 受付No. M10123)、SEQ ID NO: 2 (図2に示す) は、野生型ビオチンリガーゼのヌクレオチド配列を表す (GenBank 受付No. M10123)。
【0154】
ビオチン類似体の結合は、種々のアッセイを使用して決定されてよく、限定するものではないが、(1)sup.3H-ビオチンの結合、(2)非天然プローブとC-末端Avi-Tagを有するシアン蛍光タンパク質(CFP)の接合のウェスタンブロットによる検出、(3)Avi-Tagペプチド基質とプローブの結合のMALDI質量分析検出、および(4)HPLCが含まれる。これらのアッセイの1つ目では、ビオチン類似体候補およびビオチンは、ビオチンリガーゼ、その変異体もしくは相同体およびアクセプターペプチドと一緒にインキュベートされる。放射能の結合における減少は、ビオチン類似体がビオチンリガーゼまたはその変異体もしくは相同体の活性に対してビオチンと効果的に競合することの指標となる。これらのアッセイの2つ目では、ビオチン類似体とアクセプターペプチドの接合は、ビオチン類似体またはそれに接合した標識に対して特異的な抗体を使用することにより示される(例えば、抗FLAG抗体)。3つ目のアッセイにおいて、アクセプターペプチドの分子量における違いは、ビオチン類似体の結合の指標となる。最後のアッセイにおいて、長い保持時間を有するアクセプターペプチドは、ビオチン類似体結合の指標となる。
【0155】
2-アジドビオチン-アクセプターペプチド付加体は、HPLCにより分析し、ビオチンリガーゼ(BirA)を使用して同じペプチドに結合したビオチンのHPLC結果と比較した。2-アジドビオチンの変換のレベルは、ビオチンと非常に近いことが示され、添付の図4および図5にそれぞれ図示したように、同様の動力学的パラメータを有することが示された。
【0156】
実施例5:アビジンに対する2-アジドビオチンの結合親和性
ビオチンおよび2-アジドビオチン(実施例1の方法で調製)のアビジンに対する結合親和性は、以下の滴定条件を使用して、Microcal VP-ITC装置における等温滴定熱量測定法(ITC)を用いて試験した:リガンド(ビオチンまたは2-アジドビオチン 0.35 mM, アビジン 0.0078 mM バッファー pH 7.4, 20 mM ホスフェート, 150 mM NaCl)。アビジンと結合した2-アジドビオチンの等温滴定熱量測定データは、添付の図6に示す。
【0157】
収集されたデータから、アビジンと2-アジドビオチンの結合について、Kd 〜 10-7 Mであることが分かった。これは、アビジンとビオチンの場合よりもかなり低かった (Kd = 10-14M)(Green, N. M. (1975) Adv. Protein Chem. 29, 85-133)。これは、2-アジドビオチン化されていないペプチドおよびタンパク質から2-アジドビオチン化されたペプチドおよびタンパク質を分離するのに十分強い。アビジンを変性させることなく不可逆性であると考えられるビオチンとアビジンの間の相互作用とは異なり、2-アジドビオチン化タンパク質は、ビオチン、他のビオチン類似体(例えば、strep tag、HABA)の付加、またはバッファー溶液のpHもしくは塩濃度の変化によりアビジンから放出される。
【0158】
実施例6:2-アジドビオチンと生物直交性官能化タグ(プロパルギル官能化蛍光性クマリン誘導体)の反応
この実施例は、銅触媒Huisgen環化付加反応を使用して、2-アジドビオチンのアジド基がプロパルギル官能化蛍光性クマリン誘導体と反応することを示す(図7を参照されたい)。これは、以下に示すように、アビジンの存在下および非存在下の両方で達成される。
【0159】
1)タンパク質の非存在下:
【化20】

【0160】
2)タンパク質(アビジン)の存在下:
0.29 mL 2-アジドビオチン溶液 (バッファーA中の3.5 mM) を0.71 mL バッファーAに溶解した後、1 mLアビジン溶液 (0.21 mM) を加えた。混合溶液を振とう器 (25℃, 100 rpm) 中に1時間置いた。その後、0.5 mL アルキニルタグ溶液 (ジオキサン中の10 mM)、0.5 mL CuSO4-TTA溶液 (tBuOH : H2O (4 : 1)溶媒中、10 mM)、0.2 mL TCEP.HCl溶液 (H2O中、50 mM)、0.5 mL NaHCO3 溶液 (H2O中、200 mM)、0.25 mL tBuOH、1mL H2Oを反応混合物に加えた。混合物を振とう器 (25℃, 100 rpm)中に2時間置き、4℃で保存した。
【0161】
バッファーA:pH 7.4 20 mM ホスフェート, 150 mM NaCl バッファー
UV光下で検出され(図8b)、クーマシーブルーで染色された(図8a)天然ゲルは、一度アジド基が「クリック」化学反応を受けると、2-アジドビオチンがアビジンに結合可能であることを示す。
【0162】
ビオチン類似体は、いずれかの適切な検出可能部分と反応してよいと解されるべきである。添付の図9は、Staudingerライゲーションにより活性化される、蛍光原色素と2-アジドビオチンとの間のStaudinger-Bertozzi反応を示す (G.A. Lemieux, C.L. de Graffenried and C.R. Bertozzi, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4708-4709)。しかしながら、検出可能部分は、フルオロフォアを有している必要はない。
【0163】
実施例7:本発明の第1の側面によるビオチン類似体と、8-アジドデスチオビオチン、6-アジドデスチオビオチンおよび他の先行技術の類似体との結合親和性の比較
8-アジドデスチオビオチンは、以下の一連のステップを用いて調製した:
【化21】

【0164】
6-アジドデスチオビオチンは、以下の一連のステップを用いて調製した:
【化22】

【0165】
これらの類似体の性質を、本発明の第1の側面によるビオチン(すなわち、2-アジドビオチン)、天然ビオチンおよび3つのさらなる先行技術の類似体(イミノビオチン、ケトンビオチンおよびcis-プロパルギルビオチン;以下に構造を示す)と比較した。
【化23】

【0166】
ビオチンおよびその種々の類似体の性質を、以下の表2にまとめる。
【表2】

【0167】
6-および8-アジドデスチオビオチンは、アビジンに対する親和性が低く、大腸菌に由来するビオチンリガーゼ(BirA)に対する基質とはならないことが分かる。対照的に、本発明によるビオチン類似体は、アビジンに対して中程度の親和性を有し、大腸菌に由来するBirAを用いた場合、ビオチンと同等のライゲーション動力学を有する。2-アジドビオチンは、中程度〜高い親和性で結合することにより、アジド基が修飾される前または後で、親和性精製タグとして使用することができる。類似体は、5ステップで、ビオチンから容易に調製することもできる。それ故、それは、ヒストンビオチン化の研究のようなタンパク質研究およびバイオテクノロジーへの適用において使用するための、有用な新規の多目的ツールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、野生型ビオチンリガーゼのアミノ酸配列である(SEQ.ID No. 1)。
【図2】図2は、野生型ビオチンリガーゼのヌクレオチド配列である(SEQ.ID No. 2)。
【図3】図3は、ビオチンリガーゼ(Bir A)により触媒されたタンパク質のアクセプターペプチドにおけるリジン側鎖のビオチン化を図示するものである。
【図4】図4は、Bir Aを用いて結合させた2-アジドビオチン-アクセプター付加体のHPLC記録である。
【図5】図5は、Bir Aを用いて図4の2-アジドビオチンに結合したものと同じペプチドに結合したビオチンのHPLC記録である。
【図6】図6は、アビジンと結合した2-アジドビオチンに対する等温滴定熱量測定のデータを示す。
【図7】図7は、Huisgen環化付加反応において形成されたトリアゾールを介してクマリン誘導体に結合したビオチン類似体に対するスペクトルである。
【図8】図8aおよび図8bは、クーマシーブルーで染色され、UV光下で観察された各天然ゲルを示し、フルオロフォアのクリック化学結合後における2-アジドビオチンとアビジンの結合を示す。
【図9】図9は、Staudingerライゲーションにより活性化される蛍光原色素と2-アジドビオチンとの間のStaudinger-Bertozzi反応を示す (G.A. Lemieux, C.L. de Graffenried and C.R. Bertozzi, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4708-4709)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ビオチンのウレイド環と共に、任意に、官能性末端基を有する修飾された側鎖および修飾されたチオフェン環、ならびに側鎖の他の場所に位置する少なくとも1つの生物直交性の反応性化学基を含む新規のビオチン類似体。
【請求項2】
請求項1に記載の新規のビオチン類似体であって、前記官能性末端基は、カルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミン、チオールおよびハライドからなる群より選択されるビオチン類似体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビオチン類似体であって、前記少なくとも1つ生物直交性の反応性化学基は、アジド、アルキン、アルケン、ヘテロ環基、ジエン基および/またはS、N、Se、PおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子からなる群より選択されるビオチン類似体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記反応性基は、ビオチン類似体のバレリル側鎖上に、バレリル側鎖の一部として、バレリル側鎖の代わりに位置するビオチン類似体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記ビオチン類似体は、CH2、O、NH、およびC=Oからなる群より選択されるもう1つの基で置換されたチオフェン環の硫黄を有するビオチン類似体。
【請求項6】
請求項1〜〜4のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記ビオチン類似体は、修飾された側鎖を有するデスチオビオチンであるビオチン類似体。
【請求項7】
以下の一般式を有する、請求項3に記載のビオチン類似体:
【化1】

式中、Rは、官能性末端基を有し、側鎖の他の場所に位置するアジド、アルキン、アルケン、ジエン基、ヘテロ環からなる群より選択される少なくとも1つの第2の官能基、および/またはS、N、Se、PおよびOから選択される1つ以上のへテロ原子を含むビオチン類似体。
【請求項8】
請求項7に記載のビオチン類似体であって、前記官能性末端基は、カルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミン、チオールおよびハライドからなる群より選択されるビオチン類似体。
【請求項9】
請求項7または8に記載のビオチン類似体であって、前記生物直交性の反応性基は、バレリル側鎖の1〜5位のいずれかに位置するビオチン類似体。
【請求項10】
請求項9に記載のビオチン類似体であって、前記生物直交性の反応性基は、前記ビオチン類似体のバレリル側鎖の2位に与えられるビオチン類似体。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記Rは、以下に示す側鎖から選択されるビオチン類似体:
【化2】

【請求項12】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記類似体のバレリル側鎖の5炭素骨格が維持されるビオチン類似体。
【請求項13】
請求項7〜10のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、前記バレリル側鎖の骨格は、1〜10の炭素原子を含むビオチン類似体。
【請求項14】
請求項12または13に記載のビオチン類似体であって、前記バレリル側鎖の骨格は、硫黄、窒素、セレン、リンまたは酸素からなる群より選択される1つ以上のへテロ原子を含むビオチン類似体。
【請求項15】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化3】

【請求項16】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化4】

【請求項17】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化5】

【請求項18】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化6】

式中、XはCH2、O、NHまたはC=Oであり、Rは官能性末端基を有し、側鎖の他の場所に位置するアジド、アルキン、アルケン、ジエン基、ヘテロ環からなる群より選択される少なくとも1つの第2の官能基、および/またはS、N、Se、PおよびOから選択される1つ以上のへテロ原子を含むビオチン類似体。
【請求項19】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化7】

式中、Xは、CH2、O、NHまたはC=Oであり、YはN、CHまたはSである。
【請求項20】
以下の構造を有する、新規のビオチン類似体:
【化8】

式中、Xは、CH2、O、NHまたはC=Oであり、YはN、CHまたはSである。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、中間体化合物を形成するための末端基上に活性化エステルを組み込むことによりさらに修飾されたビオチン類似体。
【請求項22】
以下の一般式を有する、請求項21に記載のビオチン類似体:
【化9】

【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、中程度〜高い親和性で、アビジン、ストレプトアビジンもしくはそれらの相同体、および/または抗ビオチン抗体および/または合成ビオチンレセプターと結合するビオチン類似体。
【請求項24】
請求項23に記載のビオチン類似体であって、該類似体は、条件の変化またはより強い結合リガンドによる置換により、アビジン、ストレプトアビジンまたは抗ビオチン抗体との相互作用から遊離可能であるビオチン類似体。
【請求項25】
請求項4〜24のいずれか1項に記載のビオチン類似体であって、該ビオチン類似体のバレリル側鎖は、前記ビオチン類似体の二環式コアと末端カルボン酸塩および生物直交性基との間に切断可能なリンカーを含むビオチン類似体。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のビオチン類似体で標識された、特定の標的構造。
【請求項27】
請求項26に記載の特定の標的構造であって、該標的構造は、標準的な結合化学反応によりビオチンに結合する標的構造。
【請求項28】
請求項26に記載の特定の標的構造であって、該標的構造は、タンパク質またはペプチドであり、前記ビオチン類似体がタンパク質またはペプチドに結合するための基質として作用するアクセプターペプチドを含む標的構造。
【請求項29】
請求項28に記載の特定の標的構造であって、前記アクセプターペプチドは、大腸菌に由来するビオチンリガーゼまたはその変異体もしくは相同体の1つに対する基質である標的構造。
【請求項30】
請求項28または29に記載の特定の標的構造であって、前記アクセプターペプチドは、ペプチド結合または切断可能な結合もしくはリンカーを介して標的タンパク質に融合する標的構造。
【請求項31】
請求項4〜25のいずれか1項に記載のビオチン類似体または請求項4〜25に従属する請求項26〜30のいずれか1項に記載の特定の標的構造であって、前記類似体の修飾されたバレリル側鎖における生物直交性の官能基は、反応性基と反応し、前記類似体または標的構造をさらに官能化するビオチン類似体または標的構造。
【請求項32】
請求項31に記載のビオチン類似体または特定の標的構造であって、前記ビオチン類似体は、蛍光剤、発光剤、磁気共鳴造影剤、陽電子放射断層撮影剤、燐光剤活性または触媒置換基を含むその直接的な検出のための手段を有するビオチン類似体または特定の標的構造。
【請求項33】
請求項31に記載のビオチン類似体または特定の標的構造であって、前記ビオチン類似体は、酵素、酵素基質、抗体、抗体断片、抗原、ハプテン、リガンド、親和性分子、発色基質、タンパク質、ペプチド、核酸、糖および脂質からなる群より選択される間接的に検出可能なマーカーで標識されるビオチン類似体または特定の標的構造。
【請求項34】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のビオチン類似体を、ビオチンリガーゼに対する基質として作用するアクセプターペプチドを介して標的構造に接合するステップを含む、標的構造を標識する方法。
【請求項35】
前記類似体のバレリル側鎖における生物直交性の官能基を反応性基と反応させ、前記類似体または標的構造をさらに官能化することを含む請求項34に記載の方法であって、前記反応は、前記標的構造と前記アクセプターペプチドおよび/または前記ビオチン類似体との接合の前または後に生じる方法。
【請求項36】
インビトロまたはインビボで行われる、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
請求項34、35または36に記載の方法であって、前記標的構造は細胞表面タンパク質である方法。
【請求項38】
請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法であって、前記標的タンパク質は、ビオチンリガーゼを発現する細胞内にある方法。
【請求項39】
請求項37または38に記載の方法であって、前記細胞は原核細胞または真核細胞である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−520863(P2012−520863A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500312(P2012−500312)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000528
【国際公開番号】WO2010/106347
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(503469500)ユニバーシティー・オブ・ノッティンガム (1)
【Fターム(参考)】