説明

多層フィルムの製造方法

本発明は、彫刻層が補助支持フィルム上に部分的に印刷され、その際、彫刻層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、上張層が部分的な彫刻層の上に、特に部分的な彫刻層のすぐ上に全面的に施される多層フィルムの製造方法に関する。上張層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、かつ彫刻層の上に印刷されることを提案する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に基づくフィルムの製造方法ならびに請求項17の前提部に基づく多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、機械、電気機器、および電子機器の部品、出荷包装などを標識のため、例えば型式プレートとして、プロセス進行のための制御ラベルとして、保安ラベルとして、または保証標章および検査標章として、工業用ラベルがますます使用されている。
【0003】
このようなプレートまたはラベルを刻印するために、文字、コード、およびそれに類するものなどのマークを形成する高性能であり制御可能なレーザが広く普及して使用されている。刻印すべき材料には高い要求が課されている。つまり、刻印を高速で行え、解像度が高く、適用が簡単であるべきであり、かつこの材料は機械的、物理的、および化学的な影響に対して高い耐性を有するべきである。一般に流通している材料は、例えば印刷された紙、陽極酸化処理もしくは塗装されたアルミニウム、またはPVCフィルムであり、これらは、これらすべての要求は満たしてはいない。
【0004】
さらに、たいていの適用分野ではラベルの個別化に対する要望があり、個別化は刻印前に既になされているべきである。このような個別化は、例えば顧客専用のデザインを含み得るであろう。このような顧客別の個別化は、通常はラベル材料を単純に印刷することで達成される。このような印刷は、例えば個別化されていないフィルムを後から印刷することで容易に偽造できるという欠点を有している。それだけでなくこの印刷は、ラベル材料の他の部分に比べて隆起しており、このことは他方で、低い摩擦強度しか生じさせないとう事態をまねく。
【0005】
従来技術(DE10142638A1(特許文献1))から、顧客別の個別化部を有するラベルが公知であり、この個別化部はラベル材料内に包埋されており、これにより耐摩擦性が上昇し、加えて材料の模造が困難にされている。このラベルを製造するため、最初に補助支持フィルムの部分面に、顧客別に個別化されたパターンの形のエンボス層が印刷される。このエンボス層はUV硬化可能な印刷塗料であり、この印刷塗料は印刷直後にUV照射によって硬化される。次いで、黒く着色された電子線硬化可能なポリウレタンアクリレート塗料の中間層が彫刻層として、補助支持フィルム上に全面的に、または部分面の彫刻層が塗布される。次いでこのアクリレート塗料層上にもう1つの電子線硬化可能な塗料のいわゆるベース層がドクターブレードコーティングされる。次に両方のアクリレート塗料層が共に電子照射によって硬化される。続いて補助支持フィルムが剥離され、つまり塗料層から取り外され、こうして多層の層構造が、顧客別に個別化されてエンボス加工された識別子を有するレーザ刻印可能なレーザラベル材料として後に残る。
【0006】
従来技術から公知のこのフィルムは高い要求を満たしているが、それでもなおさらなる適用可能性を目指してさらに発展する潜在的可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE10142638A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の基礎とする課題は、レーザ刻印可能なフィルムの簡単かつ安価に実施可能な製造方法を提供すること、ならびに多種多様に使用できるレーザ刻印可能なフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題を、請求項1の前提部の特徴を備えた方法の場合に、請求項1の特徴部分の特徴によって解決する。代替的な解決策は請求項2に基づく方法が提供する。対応するフィルムは請求項17に記載されている。好ましい形態および変形形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0010】
始めに本発明の教示は、支持材料上に単一の印刷塗料層を施すだけでなく、重なり合った複数の、一部では部分的な印刷塗料層をそれぞれ相互に独立して施すことも可能であるという基本的な知見に基づいている。支持体は印刷後に、安定したプロセスにおいて印刷層複合体から剥離することができる。つまり印刷塗料層を施す支持体とは、印刷塗料層を施して硬化した後に再び取り外される補助支持フィルムである。これは特に、印刷塗料層から形成されるフィルムが自立的に構成される場合、つまり追加の支持体が設けられない場合に有利である。ただし代替的または補充的に、フィルム構造内に追加的で永続的な支持体を設けることもできる。
【0011】
この可能性はこれまで分かっていなかった。なぜなら印刷塗料層系の表面が支持体の側で完全に平滑であり、この表面と支持体の固定が明確に規定され、これにより支持体がいつでもフィルムの亀裂なしに印刷塗料層から取り外せることを保証するためには、複数の印刷塗料層、特に部分的な印刷塗料層の塗布が、各印刷塗料層の印刷法の精密な調和を必要とするからである。
【0012】
本印刷塗料層は、他の塗料層に比べ、およびラミネート層に比べても比較的薄く塗布し得るという利点を提供する。比較的薄い層は、レーザ刻印の際の印刷塗料の除去量が比較的少ないことからより高速に刻印できるので、これはより高速のレーザ刻印を可能にする。詳しく言えば、特に印刷塗料層は約1μm〜約5μmの層厚で塗布されるが、これに対し電子線硬化性アクリレート塗料層の層厚は一般的に少なくとも8μmである。
【0013】
要約すると、始めは過度に思われる手間とはいえ、ロゴを電子線硬化性塗料中だけでなくUV硬化可能な印刷塗料中にも包埋し得ることが分かった。スクリーンローラ、印刷速度、UV線量、および使用する印刷塗料を適切に層に応じて適応させることにより、安定したプロセスでの多色塗布を印刷技術によっても達成でき、したがって特に、フィルムの表面に多色の標識を含むことができ、この標識は非常に高い耐性を有しており、かつフィルム複合体の製造中にしか付与することができず、したがって模造に対する非常に高い保護機能を提供することが分かった。
【0014】
本発明によれば、多層フィルムの製造方法では、彫刻層が部分的に印刷される。彫刻層と呼ばれるのは、特にレーザ照射により例えば彫刻層を局所的に取り去ること、または光学的特性(例えば反射、透過、色)を局所的に変化させること、またはそれに類することによって標識を付与し得る層である。ただし印刷塗料をベースとする任意の他の層も彫刻層と呼ぶ。
【0015】
この部分的な彫刻層の印刷は補助支持フィルム上に行われ、この補助支持フィルムは、レーザ刻印可能なフィルムを製造した後に再び剥離される。その際、部分的な彫刻層はUV硬化可能な印刷塗料から形成される。部分的な印刷は、特に顧客別に選択されたパターン、例えばロゴまたはその類似物の形で行われる。
【0016】
その後、部分的な彫刻層の上に上張層が施され、この上張層もまたUV硬化可能な印刷塗料から形成、印刷される。ここでは透明か有色かに関係なく各印刷インクを印刷塗料と呼ぶ。これに関し重要なことは、この施しが印刷技術によって、好ましくはフレキソ印刷において行われることである。
【0017】
特に、この上張層は全面的に施され、したがって上張層は、部分的な彫刻層およびその下にある支持体を完全に覆う。それゆえ彫刻層と上張層の間にさらなる中間層を設けない場合には、部分的な彫刻層は完全に上張層内に包埋される。上張層と部分的な彫刻層の間に全面的な中間層を設ける場合には、この全面的な中間層内に彫刻層が包埋される。特に、このような全面的な中間層は金属光沢層、つまり金属的な光沢を有する層であることができる。このような層内には、特に本出願人の並行特許出願において記載されているような金属光沢顔料が混入される。金属光沢顔料としては、特にアルミニウム粉末、ブロンズ粉末、真珠光沢顔料、金粉末、銀粉末、および/または銅粉末が考えられる。
【0018】
好ましい実施形態では、レーザ刻印可能なフィルムは支持体を備えて形成される。このために上張層の上に例えばフィルムをラミネートすることができるが、上張層の上に電子線硬化性アクリレート塗料から成る全面的な支持層を施すこともできる。
【0019】
例えば部分的な彫刻層に重ね印刷することで生じ得る印刷塗料複合体の層厚変動は、補助支持体に面していない側でしか発生しない。系および製造に起因して、プロセスライナの剥離後に露出した側には、異なる彫刻層の間に段または縁のない非常に平滑な表面が常に存在し、これにより非常に高い表面耐性を達成することができる。同時にこの剥離プロセスによって、このような表面特質と組み合わされたこのような層構造は、フィルムを後から改ざんすることでは得られないことが保証される。
【0020】
反対側に発生する層厚変動は、例えばアクリレート塗料または十分に厚い接着剤を後からドクターブレードコーティングすることで補整できる。
【0021】
さらに反転彫刻層を、彫刻層に対して逆のパターンで、実質的に見当どおりに部分的に印刷することができ、この反転彫刻層も同様にUV硬化可能な印刷塗料から形成される。その際、両方のUV硬化可能な印刷塗料は特に相互に異なる色であり、ただし色コントラストをできるだけ大きくし得るよう、上張層とも異なる色で形成される。これに対し両方の印刷塗料を同色にする実施形態は、塗料の1つに追加的な顔料、例えばUV蛍光顔料が加えられる場合に好ましい。この場合、形成の違いは特定の条件下でしか目に見えず、したがってこれにより標識の隠匿を達成することができる。
【0022】
彫刻層および/または反転彫刻層に関しては、これをUV硬化可能な印刷塗料の複数の層から形成することができる。これは特に、既にパターンが多色で形成または多色で刻印されるべき場合に有利である。
【0023】
これに関し好ましい実施形態では、部分的な彫刻層および反転彫刻層あるいは多層形態での対応する一連の層が、基本的に同じ層厚で施される。この場合には、全面的な上張層も基本的に一定の層厚を有する。これにより上張層に刻印する際にレーザパラメータを種々異なる層厚に適合させなくてもよいので、これは特に簡単なレーザ刻印に対して有利である。そのうえこれにより、プロセスライナから離れている側の表面も湾曲または段を有さないことが達成され得る。
【0024】
さらに、上張層の上にさらなる印刷塗料層を施すことができ、この印刷塗料層は特に異なる色のUV硬化可能な印刷塗料から形成される。これは特に多色刻印の可能性に対して有利である。このさらなる印刷塗料層は全面的に形成されるのが好ましい。さらなる好ましい実施形態では、補助支持フィルムが最初に特に透明な印刷塗料層により全面的に印刷される。次いでこの印刷塗料層上に部分的な彫刻層が印刷され、その上に全面的な上張層が施される。
【0025】
好ましい実施形態では、印刷塗料層はそれぞれ直接重なり合わせて配置されており、つまりさらなる中間層は設けられていない。これは特に、できるだけ薄く、かつ安価にフィルムの形態に関して有利である。
【0026】
さらなる好ましい一実施形態では、彫刻層および/または反転彫刻層がさらなる保安要素を有している。このような保安要素は、印刷塗料中に混入された例えばUV蛍光発光顔料であることができる。この場合、印刷塗料自体は特に透明に形成される。
【0027】
上張層の印刷塗料および/または印刷塗料層の印刷塗料には、レーザ照射で良好に刻印できることを達成するため、特にレーザ吸収剤を混入させる。レーザ吸収剤として特に二酸化チタンおよび/またはカーボンブラックを混入させる。両方の添加剤は、優れたレーザ吸収剤としての特色を持つ。加えてこの両方の添加剤は、印刷塗料のその他の成分との良好な適合性を特色とする。さらに、レーザ吸収剤として二酸化チタンおよび/またはカーボンブラックを加えることにより、任意の色の印刷塗料を使用することができる。印刷塗料の本来の着色顔料が、レーザ吸収に関して特別な吸収特性を満たす必要はもはやなくなる。したがって特に、レーザ刻印可能な印刷塗料層を黄色の印刷塗料層として形成することができる。これは過去において他の系では可能でなかった、または非常に大きな手間を掛けなければ可能でなかったことである。
【0028】
添加剤の二酸化チタンに関し、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%の割合が特に有利であることが分かった。カーボンブラックに関しては少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%の割合が最適であると分かった。
【0029】
要するに好ましくは、印刷塗料層は彫刻層でもあり、つまり印刷塗料層内にさらに、レーザ照射により、例えば彫刻層を局所的に除去すること、または光学的特性(例えば反射、透過、色)を局所的に変化させること、またはそれに類することによって標記を付与することができる。とはいえ印刷塗料層をレーザ吸収剤なしで、例えば透明な層として形成することもできる。ただしこの場合はレーザ刻印を可能にするため、下方に彫刻層としての印刷塗料層を形成するのがよい。
【0030】
一方では十分な色コントラストを達成し、他方ではできるだけ高い刻印効率を可能にするため、特に部分的な彫刻層は、しかし好ましくはさらなる印刷塗料層も、約0.5μmから約10μmの間、好ましくは約1μmから約5μmの間の層厚を有するのがよい。もちろん反転彫刻層を設けない場合には、部分的な彫刻層のすぐ上にさらなる印刷塗料層が、この部分的な彫刻層を完全に覆うような厚さで形成するのがよい。
【0031】
そのうえ、好ましい実施形態では各印刷塗料層は、次の印刷塗料層による印刷の前に硬化される。これにより個々の印刷塗料層の混合、したがってそれぞれの色の混合が回避されることを保証することができる。個々の印刷塗料層の硬化は、特にUV照射によって行われる。
【0032】
支持体の層厚は約50μmから約200μmの間であることが好ましい。支持体として、基本的にはすべてのフィルムおよびフィルム複合系が考えられる。特に、例えばポリエチレンフィルム、PVCフィルム、またはその類似物のようなポリマーフィルムが適している。支持体に関しては、支持体への印刷塗料層の良好な付着性だけを保証すべきである。これは場合によっては、従来技術から既知の付着剤を追加的に施すことで行うことができる。
【0033】
特別好ましい実施形態ではレーザ刻印可能なフィルムは、接着層が施されることで接着フィルムとして、特に自己接着性の接着フィルムとして形成される。この接着層は、従来技術から既知の任意の接着剤をベースとすることができ、特にいわゆる感圧接着剤または熱活性可能な接着剤をベースとすることができる。レーザ刻印可能なフィルムが永続的な支持体を備えている場合には、製造が簡単であるという理由から、支持体の印刷塗料層とは反対の側に接着層を施すのが好ましい。しかし代替策として、接着層を一番上の塗料層上に施すこともできる。ただしこの場合には、支持体を通して刻印を判読できるよう支持体を透明に形成するのがよい。この配置は、貼り付けた後では、塗料層、つまりそこに書き込まれた識別子を破損させずにフィルムを剥がすことができないという利点を有する。つまり印刷塗料層を非常に脆く調整することができ、したがって支持体なしでは、貼り付けた後に損傷させずに剥がすことはできない。しかし支持体は塗料層より上に配置されているので、改ざんを試みようとすると印刷塗料層が損傷する。
【0034】
以下に本発明のさらなる詳細、目的、特徴、および利点を例示的実施形態に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による方法の第1の実施形態に基づいて製造したレーザ刻印可能なフィルムの概略的な縦断面図である。
【図2】図1の実施形態に基づく刻印されたラベルの平面図である。
【図3】レーザ刻印可能なフィルムの代替的な実施形態の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、第1の例示的実施形態に基づくレーザ刻印可能なフィルム1がどのように製造されるかが示されている。補助支持フィルム2として、ここでは厚さ50μmのポリエステルフィルムを使用する。この補助支持フィルム2上に、UV硬化可能な印刷塗料が部分的に、パターンまたはその類似物の形で、すなわちここでは繰り返される文字列「tesa」の形で、フレキソ印刷法によって印刷される。次いで印刷塗料がUV照射によって硬化され、部分的な彫刻層3が形成される。
【0037】
続いて部分的な彫刻層3、および補助支持フィルム2の露出したままの領域が、さらなるUV硬化可能な印刷塗料によって全面的に重ね刷りされ、これにより上張層4が形成される。この層もUV照射によって硬化される。ここでは、そして好ましくは、その後にもう1つのさらなる、特に全面的な、UV硬化可能な印刷塗料の印刷塗料層5が続き、この印刷塗料層5もまた、それ自体が硬化される。
【0038】
続いて印刷塗料層5の上にさらに支持体6が施される。それはここでは層厚約80μmの電子線硬化可能なアクリレート塗料である。ただし代替策として他の支持体、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどをベースとするポリマーフィルムを用いることもできる。ここで支持体6は、最終製品では(接着層7は別として)下側に配置されており、ここでは白く形成されている。
【0039】
次いで支持体6の上に接着層7が施され、この接着層は、好ましくは感圧接着剤をベースとする接着層7であり、つまり室温で既に粘着性である。接着層はここでは約30μmの層厚を有する。
【0040】
ここでは接着層7がさらに剥離層10によって覆われており、この剥離層は、通常は物品にフィルム1を貼る直前になって初めて取り外される。剥離層10は、貼る前の接着層7を保護するために用いられる。剥離層10として、基本的にはすべての低付着性平面構造物、例えばシリコーン処理された紙またはその類似物が適している。
【0041】
印刷塗料層3、4、5はそれぞれ彫刻層として形成されており、つまりレーザ照射によって局所的に変化させること、特に局所的に取り去ることができる層として形成されている。これに関し印刷塗料層はそれぞれレーザ照射に対してできるだけ高い感度を提供するため、したがって高速刻印を可能にするためレーザ吸収剤を有している。ここでは印刷塗料にレーザ吸収剤として二酸化チタンもカーボンブラックも混入されている。なぜならこの組合せが特に有利と判明したからである。ここで、二酸化チタンの割合は好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも約10%である。カーボンブラックの割合は好ましくは少なくとも約2%、さらに好ましくは少なくとも約4%である。割合はそれぞれの印刷塗料層で相互に異なっていてもよく、すなわち割合は、印刷塗料層のさらなる成分(着色性顔料、結合剤など)、規定された層厚などに依存して、できるだけ効率のよい刻印を可能にするよう確定される。
【0042】
部分的な彫刻層3の層厚は、約0.5μmから約5μmの間の範囲内にあることが好ましい。この層厚はここでは約1μmである。これに対し上張層4の層厚は、その中に部分的な彫刻層3が包埋されるような大きさとするのがよい。上張層の最大層厚は、基本的には約1μmから約10μmの間であるのがよい。ここでは、部分的な彫刻層の上での層厚が約2μmであり、補助支持フィルム2上では約3μmである。他方で印刷塗料層5の層厚は、約1μmから約5μmの間の範囲内にあることが好ましい。この層厚はここでは約4μmである。
【0043】
部分的な彫刻層3と上張層4は異なる色で形成されるべきであり、これにより、ここでは文字列「tesa」の形のパターンが明らかにはっきり現れる。図1に示したレーザ刻印可能なフィルム1では、部分的な彫刻層3は黒く形成されており、つまり印刷塗料が黒い着色顔料を含んでいる。これに対し上張層4は赤く形成されており、印刷塗料は赤い着色顔料を含んでおり、したがって上張層4は、部分的な彫刻層3に対して顕著なコントラストを形成している。その一方で印刷塗料層5は黄色い着色顔料を含んで黄色い層を形成しており、この印刷塗料層5に対しては他方で白い支持体6も良好なコントラストを形成している。要望に応じ、レーザ刻印によって、ここではレーザ照射によりそれぞれ1つまたは複数の層を局所的に除去することによって、多色刻印を達成することができる。
【0044】
次いでフィルム1からラベルが裁断または型抜きされ、このラベルはその後、レーザ刻印の前または後に、標識をすべき物品に貼ることができる。レーザラベルの裁断は、レーザによって、特にレーザ刻印にも使用される同じレーザによって行われることが好ましい。この場合、裁断および刻印を1つの共通の工程段階で行うことができる。その際、特にラベル形状と刻印内容とを相関させることもできる。情報は、例えば、ラベルの形状においてバーコードまたはその類似物に倣ったラベル周縁での同じ幅および/または異なる幅の1つまたは複数の刻み目によって格納することができる。これに加え情報は刻印によって格納される。この両方の情報は、情報を部分的または完全に、場合によっては暗号化して繰り返すという意味で相関させることができる。代替策としてこの相関は、両方の情報が一緒になって初めて完全な情報に補い合うというふうに成り立たせることもできる。
【0045】
図2は、上述のフィルムから裁断され、既に刻印されているラベル1の平面図を示している。部分的な彫刻層3によって形成された文字列「tesa」の形でのパターン8をはっきりと認識することができる。さらに文字列「Laser」の形での刻印9を認識することができるが、ここでは白黒でしか示されていない。ところでこの刻印は、レーザ刻印がどのように行われたかに応じて一色または多色であることができ、詳しく言えば、特に色は黄色および白あるいは部分的に彫刻層3の下で赤く表示することができる。この図からは、部分的な彫刻層3が刻印を邪魔せず、むしろ部分的な彫刻層3を通り抜けて刻印を行えることも明らかになる。
【0046】
図3は、レーザ刻印可能なフィルム1の代替的な形態の概略的な縦断面を示している。ここでは補助支持フィルム2の上の配置が示されている。
【0047】
ここで補助支持体2上に施されている部分的な彫刻層3は、ここでは異なる色で、詳しく言えば黄色の印刷塗料によって形成された第1の部分的な彫刻層3aおよび赤い印刷塗料によって形成された第2の部分的な彫刻層3bによって実現されている。したがって彫刻層3によって形成されたパターンが既に多色で、すなわちここでは2色で形成されている。
【0048】
次に、部分的な彫刻層3の間隙内には反転彫刻層11が設けられている。この反転彫刻層11は、重なり合って施された色の異なる2つのUV硬化可能な印刷塗料から、詳しく言えば黒い印刷塗料層11aおよび白い印刷塗料層11bから形成されている。彫刻層3および反転彫刻層11は、ほぼ同じ層厚を有しており、詳しく言えばここでは約5μmである。
【0049】
彫刻層3および反転彫刻層11の上には、ここでもUV硬化可能な印刷塗料の全面的な上張層4が設けられている。この層は緑色に形成されており、つまりレーザ刻印の際にさらなる色の効果を可能にする。
【0050】
この場合、上張層4上にはさらに接着層7および剥離層10が続いている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムの製造方法であって、
彫刻層が補助支持フィルム上に部分的に印刷され、
その際、彫刻層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、
上張層が部分的な彫刻層の上に、特に部分的な彫刻層のすぐ上に全面的に施される方法において、
上張層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、かつ彫刻層の上に印刷されることを特徴とする方法。
【請求項2】
多層フィルムの製造方法であって、
彫刻層が補助支持フィルム上に部分的に印刷され、
その際、彫刻層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、
上張層が部分的な彫刻層の上に、特に部分的な彫刻層のすぐ上に全面的に施される方法において、
上張層が金属光沢層として形成され、かつ
金属光沢層上にさらなる彫刻層、特にUV硬化可能な印刷塗料から成る印刷塗料層が、好ましくは全面的に、施されることを特徴とする方法。
【請求項3】
上張層の上に、支持体、特に電子線硬化性アクリレート塗料から成る全面的な支持層をベースとする支持体が施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反転彫刻層が、彫刻層と逆のパターンで実質的に見当どおりに、特に補助支持フィルム上に、部分的に印刷され、その際、反転彫刻層がUV硬化可能な印刷塗料から形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
彫刻層および反転彫刻層が、実質的に同じ層厚で施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
彫刻層および/または反転彫刻層が、UV硬化可能な印刷塗料の複数の層から形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
上張層の上に1つまたは複数のさらなる印刷塗料層が印刷され、その際、前記印刷塗料層がUV硬化可能な印刷塗料から形成され、好ましくは、
前記印刷塗料層が支持層の下に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる印刷塗料層が、全面的または部分的に形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
補助支持フィルムが印刷塗料層により全面的に印刷され、前記印刷塗料層上に部分的な彫刻層が印刷されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
補助支持フィルムまたは印刷塗料層が金属光沢層により印刷され、前記金属光沢層上に彫刻層が印刷されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の、好ましくはすべての印刷塗料層が、約0.5μmから約10μmの間、好ましくは約1μmから約5μmの間の厚さで施されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
部分的な彫刻層が、約0.5μmから約5μmの間の厚さで施されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
部分的な彫刻層および/または反転彫刻層が、保安要素、特にUV蛍光発光顔料を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
上張層の印刷塗料および/または印刷塗料層の印刷塗料に、レーザ吸収剤、特にTiOおよび/またはカーボンブラックが混入されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
上張層が、約1μmから約10μmの間、好ましくは約1μmから約5μmの間の厚さで施されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
支持層が、約50μmから約200μmの間の厚さで形成されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
多層フィルム、特に請求項1〜16のいずれか一つに基づいて製造された多層フィルムであって、
UV硬化可能な印刷塗料から成る部分的な彫刻層と、前記彫刻層の上に全面的に配置された上張層とを備えたフィルムにおいて、
上張層がUV硬化可能な印刷塗料から形成されていることを特徴とするフィルム。
【請求項18】
上張層が彫刻層のすぐ上に配置されていることを特徴とする請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
彫刻層と上張層の間に金属光沢層が配置されていることを特徴とする請求項17に記載のフィルム。
【請求項20】
上張層の上に、全面的な支持層、特に電子線硬化性アクリレート塗料から成る全面的な支持層が配置されていることを特徴とする請求項17〜19のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項21】
反転彫刻層が、彫刻層に対し逆のパターンで実質的に見当どおりに、彫刻層の空白部内に部分的に配置されており、かつ反転彫刻層がUV硬化可能な印刷塗料から形成されていることを特徴とする請求項17〜20のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項22】
彫刻層および/または反転彫刻層が、UV硬化可能な印刷塗料の複数の層から形成されていることを特徴とする請求項17〜21のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項23】
彫刻層および反転彫刻層が、実質的に同じ層厚を有することを特徴とする請求項17〜22のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項24】
上張層の上に1つまたは複数のさらなる印刷塗料層が配置されており、その際、印刷塗料層がそれぞれUV硬化可能な印刷塗料から形成されており、好ましくは、印刷塗料層がそれぞれ全面的に形成されており、
さらに好ましくは、印刷塗料層が支持層の下に配置されていることを特徴とする請求項17〜23のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項25】
彫刻層の下に、印刷塗料層および/または金属光沢層が配置されていることを特徴とする請求項17〜24のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項26】
1つまたは複数の印刷塗料層、好ましくはすべての印刷塗料層が、約0.5μmから約10μmの間、好ましくは約1μmから約5μmの間の層厚を有し、かつ/または
彫刻層が、約0.5μmから約5μmの間の層厚を有することを特徴とする請求項17〜25のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項27】
支持層が、約50μmから約200μmの間の層厚を有しており、かつ/または
上張層が、約1μmから約10μmの間、好ましくは約1μmから約5μmの間の層厚を有することを特徴とする請求項17〜26のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項28】
彫刻層および/または反転彫刻層が、保安要素、特にUV蛍光発光顔料を有することを特徴とする請求項17〜27のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項29】
上張層の印刷塗料および/または印刷塗料層の印刷塗料が、レーザ吸収剤、特にTiOおよび/またはカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項17〜28のいずれか一つに記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−501823(P2012−501823A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525510(P2011−525510)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061116
【国際公開番号】WO2010/028960
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】