説明

多層プリント配線基板及びその製造方法

【課題】導体回路層とビアとの間のクラックの進行を効果的に抑制して、層間接続の信頼性を向上させる。
【解決手段】多層プリント配線基板100は、第1及び第2プリント配線基材10,20を積層してなる。第1及び第2導体回路層11,12は、ビアホール13内のビア14により層間接続されている。第1導体回路層11のビアホール13側の面には、ビアホール13の開口径W1よりも第1絶縁基材19の面10a方向に大径の内径W2を有する凹部15が形成されている。ビア14は、ビアホール13及び凹部15内に充填された導電ペーストなどの導電材からなる。第1導体回路層11とビア14との接合界面の面積が、従来のインナービアを用いたものよりも大きいので、接合界面に沿ったクラックの進行経路長を延長し、進行方向を変化させ、接合界面の近傍が完全に破断することを抑制して、層間接続の信頼性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導体回路層が層間接続される多層プリント配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路層が層間接続される多層プリント配線基板においては、例えばIVH(Interstitial Via Hole)で層間を接続することが行われている。しかし、IVH内に形成される導電ペーストビアと樹脂基材との密着性は良好ではないため、外部からの応力や屈曲等による影響で、ビアが破断したり、導体回路層とビアとの間で破断したりする不具合が生じることがあった。
【0003】
このような不具合を防止するために、下記特許文献1に開示された多層積層体では、導体回路層側のIVHの孔径を、IVHの中心部辺りの孔径よりも大径に形成し、ビアで樹脂基材を挟み込むようにしている。これにより、樹脂基材とビアを強固に固定して、上記不具合を防止し、層間接続の信頼性を向上させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−45008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された多層積層体では、硬い合金層である導体回路層とビアとの接合界面の近傍において、外部からの応力によるクラックが生じた場合、樹脂基材の面方向に沿ってクラックが容易に進行してしまい、簡単に破断が生じることとなり、層間接続の信頼性は著しく低下することとなる。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、導体回路層とビアとの間のクラックの進行を効果的に抑制して、層間接続の信頼性を向上させることができる多層プリント配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多層プリント配線基板は、絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板であって、前記導体回路層には、前記ビアの積層方向の中央部の径よりも大径の内径を有する凹部が形成され、前記ビアは、端部が前記凹部内に充填された状態で前記導体回路層と接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る多層プリント配線基板によれば、導体回路層にビアの積層方向の中央部の径よりも大径の内径を有する凹部が形成され、ビアは、端部が凹部内に充填された状態で導体回路層と接続されているので、導体回路層とビアとの接合界面の面積を従来より大きくすることができる。
【0009】
このため、上記のような接合界面に沿ったクラックの進行経路長を延ばすことができると共に、クラックの進行方向を変化させることができる。これにより、クラックが発生したとしても、最後まで進行し難い構造とすることができ、接合界面の近傍が完全に破断することを抑制して、層間接続の信頼性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明によれば、凹部に充填されたビアの端部が、その中央部よりも大径になっているので、ビアに対して相対的に絶縁基材の積層方向に作用する応力が加わったとしても、ビアの端部の大径部と絶縁基材等の間で生じるアンカー効果により接合界面近傍に生じる応力を緩和させることができる。従って、上記のようにクラックによって接合界面の近傍が完全に破断することを抑制し、更に層間接続の信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明の一つの実施形態においては、絶縁基材には前記ビアが充填されるビアホールが形成され、前記導体回路層の凹部が、その導体回路層が形成された絶縁基材側の面に前記ビアホールの開口部を覆うように形成され、前記ビアの端部が、前記ビアホールの開口部から前記絶縁基材の面に沿って拡がるように前記凹部内に充填されている。
【0012】
また、本発明の他の実施形態においては、前記導体回路層の凹部が、その導体回路層が形成された絶縁基材と反対側の面に形成され、前記導体回路層の凹部側に配置されたビアの端部が、前記凹部内に充填されている。
【0013】
本発明の更に他の実施形態においては、前記導体回路層の両面に前記凹部が形成されている。
【0014】
本発明に係る第1の多層プリント配線基板の製造方法は、絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して複数の前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板の製造方法であって、第1絶縁基材の一方の面に前記導体回路層を形成し、前記第1絶縁基材の前記導体回路層形成面と反対側の面から、前記導体回路層に到達するビアホールを形成し、前記ビアホールを介して前記導体回路層の前記ビアホール側の面に、エッチングにより前記ビアホールの開口部の開口径よりも前記第1絶縁基材の面方向に大径の内径を有する凹部を形成し、前記第1絶縁基材の前記ビアホール及び前記凹部内に導電材を充填することによってビアを形成し、第2絶縁基材を前記第1絶縁基材に積層することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る第2の多層プリント配線基板の製造方法は、絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して複数の前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板の製造方法であって、第1絶縁基材にビアホールを形成し、前記ビアホールに導電材を充填することによってビアを形成し、第2絶縁基材の一方の面に前記導体回路層を形成すると共に前記導体回路層の前記第2絶縁基材側とは反対側の面に凹部を形成し、前記ビアの端部が前記凹部の内部に充填されるように前記第1絶縁基材を前記第2絶縁基材に積層することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る第1及び第2の多層プリント配線基板の製造方法によれば、導体回路層の凹部の内部に充填されたビアによって導体回路層が相互に接続されるので、上述のように、導体回路層とビアとの接合界面の面積を従来より大きくすることができ、導体回路層とビアとの間のクラックの進行を効果的に抑制して、層間接続の信頼性を向上させることができる多層プリント配線基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導体回路層とビアとの間のクラックの進行を効果的に抑制して、層間接続の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。
【図2】同多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図4】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図5】同多層プリント配線基板と比較例との構造上の相違点を示す断面図である。
【図6】同多層プリント配線基板と比較例との構造上の相違点を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。
【図8】同多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図9】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図10】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。
【図13】同多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図14】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図15】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【図16】同多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係る多層プリント配線基板及びその製造方法を詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。第1の実施形態に係る多層プリント基板100は、第1プリント配線基材10と第2プリント配線基材20とを積層してなる。第1プリント配線基材10は、第1絶縁基材19と、この第1絶縁基材19の一方の面10a上に形成された第1導体回路層11と、第1絶縁基材19の他方の面10b側に形成された接着層9とを備えている。
【0021】
また、第1プリント配線基材10は、第1絶縁基材19に積層方向に貫通形成されたビアホール13内に充填形成されたビア14を備えている。第2プリント配線基材20は、第2絶縁基材29と、この第2絶縁基材29の一方の面20a上に形成された第2導体回路層12とを備えている。第1及び第2導体回路層11,12は、ビア14によって電気的に層間接続されている。なお、第1導体回路層11には、ビアホール13側の面に、ビアホール13の積層方向の中央部の径W1よりも第1絶縁基材19の面10a方向に大径の内径W2を有する凹部15が形成されている。
【0022】
凹部15は、底面11a及び内側面11bで囲まれた構造からなり、ビア14の端部14aは、ビアホール13内から第1導体回路層11の凹部15内に充填された状態で、第1絶縁基材19の面10aに沿って拡がるように形成されている。第1及び第2絶縁基材19,29は、例えば厚さ25μm程度の樹脂フィルムにより構成されている。樹脂フィルムとしては、例えば熱可塑性のポリイミド、ポリオレフィン、液晶ポリマーなどからなる樹脂フィルムや、熱硬化性のエポキシ樹脂からなる樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0023】
ビア14は、ビアホール13及び凹部15内に充填された導電ペーストなどの導電材からなる。導電ペーストは、例えばニッケル、金、銀、亜鉛、アルミニウム、鉄、タングステンなどから選択される1種類以上の低電気抵抗の金属粒子と、ビスマス、インジウム、鉛などから選択される1種類以上の低融点の金属粒子とを含む。そして、導電ペーストは、これらの金属粒子に錫を成分として含有させ、エポキシ、アクリル、ウレタンなどを主成分とするバインダ成分を混合したペーストからなる。
【0024】
このように構成された導電ペーストは、例えば含有された錫と低融点の金属が200℃以下で溶融し合金を形成することができ、特に銅や銀などとは金属間化合物を形成することができる特性を備える。なお、導電ペーストは、例えば粒子径がナノレベルの金、銀、銅、ニッケル等のフィラーが、上記のようなバインダ成分に混合されたナノペーストで構成することもできる。その他、導電ペーストは、上記ニッケル等の金属粒子が、上記のようなバインダ成分に混合されたペーストで構成することもできる。この場合、導電ペーストは、金属粒子同士が接触することで電気的接続が行われる特性となる。
【0025】
導電ペーストの充填方法としては、印刷工法、スピン塗布工法、スプレー塗布工法、ディスペンス工法、ラミネート工法、及びこれらの工法を併用した工法などを用いることができる。
【0026】
第1及び第2導体回路層11,12は、第1及び第2絶縁基材19,29の面10a,20a上に、フォトリソグラフィ、印刷、インクジェットなどの方式により、パターン形成された厚さ10〜20μm程度の銅などの導体層(導電部材)からなる。第1導体回路層11の凹部15は、ビアホール13を介して、エッチング(例えば、ウェットエッチング)が施されることにより形成される。凹部15の底面11aまでの深さは、例えば5〜10μm程度に設定される。なお、ビア14の他方の端部14bは、接着層9内で第2導体回路層12の表面と接続され、第1絶縁基材19の面10bと接触している。
【0027】
このように構成された多層プリント配線基板100は、例えば次のように製造される。図2は、多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。また、図3及び図4は、多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。まず、図3(a)に示すように、銅箔などの導体層16が面10a上に形成された第1絶縁基材19を準備する(ステップS100)。導体層16が形成された第1絶縁基材19は、例えば片面銅張積層板(片面CCL)などを用いることができる。
【0028】
なお、図示は省略するが、第1絶縁基材19としては、シード層が形成されたものを用いることもできる。シード層が形成されたものを用いれば、後述する第1導体回路層11を形成する際に、サブトラクティブ法ではなくセミアディティブ法を選択することが可能となる。この場合、シード層としては、ニッケル、クロムなどの一般的な金属材料を適宜選択して用いることができる。
【0029】
本例でシード層を用いる場合は、第1導体回路層11のパターン形成の安定性及びエッチング液の種類の多様性、環境面への影響などを考慮して、ニッケルを用いることが望ましい。成膜の厚さのばらつきを抑え、微細なパターン形成を可能にするために、シード層の厚さは、0.01〜10μm程度であることが望ましい。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、導体層16上にマスク材17を形成し、露光・現像などを行って所望のパターンとなるように加工する。そして、図中矢印で示すようにエッチングを行い、図3(c)に示すように、パターン形成された第1導体回路層11を形成する(ステップS102)。
【0031】
そして、第1導体回路層11上のマスク材17を除去して、図3(d)に示すように、第1導体回路層11形成側の面10aとは反対側の面10b上に、ポリイミド系接着フィルムなどからなる接着層9を形成する(ステップS104)。なお、接着層9はマスク付き接着フィルムにより構成されていてもよい。その後、図3(e)に示すように、例えば第1絶縁基材19を反転させた上で、第1導体回路層11に向けてレーザ照射装置LDからレーザ光Lを第1絶縁基材19の面10b側の接着層9上から照射する。これにより、第1導体回路層11に到達するビアホール13を第1絶縁基材19に形成する(ステップS106)。
【0032】
ビアホール13を形成したら、図4(f)に示すように、ビアホール13内に図中矢印で示すようにエッチング液を充填し、ウェットエッチングを行う。これにより、第1導体回路層11のビアホール13側の面に、凹部15を形成する(ステップS108)。その後、図4(g)に示すように、ビアホール13内に各種半田、ACF、銀ペースト、これらのペーストの混合材や、微量の異種金属を混合したペースト材などからなる、上述したような導電ペーストを充填する。これにより、ビアホール13及び第1導体回路層11の凹部15にわたる(これらを満たした状態の)ビア14を形成する(ステップS110)。
【0033】
このビア14は、図示のように端部14aが凹部15内に充填されて面10aに沿って拡がるように形成されると共に、端部14bが接着層9の表面よりも突出した状態で形成される。突出部の形成方法としては、充填マスクの厚み分だけ突起を形成する方法、ディスペランス工程によって突起を形成する方法などが使用可能である。端部14bの突出量は、マスクの厚さを予め調整しておくことで任意の量に設定できる。ここまでの処理で、図4(g)に示すような第1プリント配線基材10を形成することができる。
【0034】
そして、図4(h)に示すように、第1プリント配線基材10の第1絶縁基材19の第1導体回路層11形成側の面10aと反対側の面10bに、別途形成しておいた第2導体回路層12が形成された第2プリント配線基材20を、第2導体回路層12がビア14の端部14bと対向するように配置して、図中矢印で示すように加熱プレスする(ステップS112)。これにより、図4(i)に示すように、接着層9を介して第1及び第2プリント配線基材10,20が積層された多層プリント配線基板100を製造することができる。
【0035】
なお、ビア14の端部14bは、接着層9内において第2導体回路層12上で拡がるように潰れて第2導体回路層12と接合されるので、確実に層間接続される構造となっている。
【0036】
このような多層プリント配線基板100は、次のような特性を有する。図5及び図6は、多層プリント配線基板と比較例との構造上の相違点を示す断面図であり、図5はクラックについて、図6は引張り応力についてそれぞれ説明するための図である。図5(a)に示すように、比較例の多層プリント配線基板900は、第1絶縁基材910の一方の面910a上に第1導体回路層911が形成され、他方の面910b上に接着層9が形成されている。
【0037】
第1絶縁基材910には、第1導体回路層911に到達するビアホール913が形成され、このビアホール913内に充填された導電ペーストにより、ビア914が形成されている。第1導体回路層911とビア914との接合箇所には、面910aに沿うような合金層8が形成されている。この比較例の多層プリント配線基板900では、硬い合金層8の近傍にクラック7が発生した場合、このクラック7は、合金層8に沿って一方向に進行し、容易に破断することとなり、層間接続の接続信頼性は著しく低下する。
【0038】
一方、図5(b)に示すように、第1の実施形態に係る多層プリント配線基板100は、第1プリント配線基材10の第1絶縁基材19の一方の面10a上に第1導体回路層11が形成され、例えば他方の面10bに接着層9が形成されている。第1絶縁基材19には、第1導体回路層11に到達するビアホール13が形成され、第1導体回路層11に凹部15が形成されている。
【0039】
ビアホール13内及び凹部15内を満たす状態で充填された導電ペーストにより、端部14aが面10aに沿って拡がったビア14が形成されている。第1導体回路層11とビア14との接合箇所には、凹部15の内側面11b及び底面11aに沿うようなコの字状の硬い合金層8が形成されている。
【0040】
第1の実施形態に係る多層プリント配線基板100では、合金層8の近傍にクラック7が発生した場合、このクラック7は、合金層8に沿って進行するが、クラック7の進行経路長が図5(a)に示す比較例と比べて格段に長くなる。また、クラック7の進行方向が、図5(a)に示す比較例のような一方向と比べて、内側面11b及び底面11aに沿って複雑に変化する。このため、容易に破断することなく、層間接続の接続信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、図6(a)に示すように、比較例の多層プリント配線基板900において、図中白抜き矢印で示すような引張り力Fが作用した場合、合金層8の近傍に最大引張り応力が発生し、容易に破断することとなり、層間接続の接続信頼性を確保することが困難となる。
【0042】
これに対し、第1の実施形態に係る多層プリント配線基板100において、図6(b)に示すように、図中白抜き矢印で示す引張り力Fが作用した場合、合金層8の近傍ではなく、ビア14における面10aに沿った部分に最大引張り応力が発生することとなる。また、凹部15内の面10aとの境界上に位置するビア14の端部14aの大径部が、第1絶縁基材19との間で生じるアンカー効果を発揮するため、合金層8の近傍に生じる応力を緩和させることができる。これにより、比較例と比べて、層間接続の接続信頼性を確実に確保することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。第2の実施形態に係る多層プリント基板200は、第1の実施形態に係る多層プリント配線基板100と基本的に同様の構成となっているが、第2プリント配線基材20の第2導体回路層12の第2絶縁基材29と反対側の面に凹部15が形成されている点が相違している。
【0044】
従って、ビア14は、ビアホール13内に充填されると共に第2導体回路層12の凹部15内に端部14bが充填された状態で形成される。このような構造によっても、第1及び第2プリント配線基材10,20の第1及び第2導体回路層11,12間の層間接続の接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0045】
すなわち、第2の実施形態に係る多層プリント配線基板200によれば、第2導体回路層12とビア14の端部14bとの接合界面の面積をより大きくすることができ、また、ビア14が接着層9内でアンカー効果を発揮するので、上記第1の実施形態に係る多層プリント配線基板100と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0046】
このような多層プリント配線基板200は、例えば次のように製造される。図8は、多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。図9及び図10は、多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。なお、図8に示すフローチャートのステップS200〜ステップS206の処理は、上記図2に示したフローチャートのステップS100〜S106の処理と同様であるため、図2及び図3を参照することとして、ここでは説明を省略する。
【0047】
図8に示すように、ステップS200〜S206までの処理で、図3(e)に示すようなビアホール13を第1プリント配線基材10の第1絶縁基材19に形成したら、図9(f)に示すように、ビアホール13内に導電ペーストを充填して、端部14bが接着層9から突出するビア14を形成する(ステップS208)。
【0048】
次に、図9(g)に示すように、導体層16が面20a上に形成された第2樹脂基材29を準備し(ステップS210)、導体層16上にマスク材17を形成し、図中矢印で示すようにエッチングを行う。すると、図9(h)に示すように、導体層16の一部が凹んだ状態となるので、図9(i)に示すように、マスク材17を除去した上で更にマスク材17を凹み上を覆うように形成し、図中矢印で示すようにエッチングを行って、導体層16をパターニングする。
【0049】
その後、マスク材17を除去すれば、図9(j)に示すように、第2絶縁基材29側と反対側に凹部15を有する第2導体回路層12が形成される(ステップS212)。なお、ビア14の端部14bは、上述したようにマスクなどにより突出させてもよいし、上記ディスペンス工法により形成してもよい。
【0050】
そして、図10に示すように、突出したビア14の端部14bと第2導体回路層12の凹部15とを位置合わせして、第1及び第2プリント配線基材10,20を図中矢印で示す方向に積層する(ステップS214)。積層時に、端部14bは、凹部15内を満たすように潰れて変形し接合される。これにより、図7に示すような第2の実施形態に係る多層プリント配線基板200を製造することができる。
【0051】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。第3の実施形態に係る多層プリント配線基板300は、図11に示すように、第1の実施形態に係る構造と第2の実施形態に係る構造とを組み合わせた構造を備えている。すなわち、第1及び第2プリント配線基材10,20を接着層9を介して積層し、第1絶縁基材19の一方の面10a上には、第1絶縁基材19側に凹部15を有する第1導体回路層11が形成され、第2絶縁基材29の一方の面20a上には、第2絶縁基材29とは反対側に凹部15を有する第2導体回路層12が形成されている。
【0052】
そして、第1絶縁基材19の他方の面10bと第2絶縁基材29の一方の面20aとの間には、接着層9が形成されている。第1及び第2導体回路層11,12の各凹部15内には、ビア14の端部14a,14bがそれぞれ充填されている。このような構造によっても、第1及び第2導体回路層11,12の層間接続の接続信頼性を向上させることができる。この第2の実施形態に係る多層プリント配線基板300の製造方法については、上述した製造方法を選択的に組み合わせることにより実現することができるので、ここでは説明を省略する。
【0053】
[第4の実施形態]
図12は、本発明の第4の実施形態に係る多層プリント配線基板の構造を示す断面図である。第4の実施形態に係る多層プリント基板400は、中間層の導体回路層22の両面に凹部15が形成されている点が、先の実施形態に係るものとはいずれも相違している。
【0054】
すなわち、第2プリント配線基材20の第2絶縁基材29の一方の面20a上に形成された中間導体回路層22は、第1プリント配線基材10のビア14の端部14bが拡がるように充填される、第2絶縁基材29側とは反対側に形成された凹部15と、ビア14の端部14aが充填される第2絶縁基材29側に形成された凹部15とを備える。これにより、各プリント配線基材10,20間の導体回路層11,22間の層間接続の接続信頼性を、上記と同様に向上させることが可能となる。
【0055】
このような多層プリント配線基板400は、例えば次のように製造される。図13は、多層プリント配線基板の製造工程を示すフローチャートである。図14〜図16は、多層プリント配線基板を製造工程順に示す断面図である。なお、図4(g)に示すような凹部15が形成された第1導体回路層11及びビア14を有する第1プリント配線基材10は、別途製造されて予め用意されていることとする。
【0056】
まず、図14(a)に示すように、一方の面20a上に上述した導体層16よりも厚めの導体層18が形成された第2絶縁基材29を準備し(ステップS300)、導体層18上にマスク材17を形成し、図中矢印で示すようにエッチングを行う。すると、図14(b)に示すように、導体層18の一部が凹んだ状態となるので、図14(c)に示すように、マスク材17を除去した上で更にマスク材17を凹み上を覆うように形成し、図中矢印で示すようにエッチングを行って、導体層18をパターニングし、図14(d)に示すような中間導体回路層22を形成する。
【0057】
その後、マスク材17を除去すると、図15(e)に示すような、第2絶縁基材29側と反対側に凹部15が形成される(ステップS302)。これと共に、第2絶縁基材29の他方の面20b上に接着層9を形成する(ステップS304)。そして、図15(f)に示すように、例えば第2絶縁基材29を反転させた上で、中間導体回路層22側に向けてレーザ照射装置LDからレーザ光Lを接着層9側から照射し、ビアホール13を第2絶縁基材29に形成する(ステップS306)。
【0058】
次に、図15(g)に示すように、ビアホール13内に図中矢印で示すようにエッチング液を充填し、ウェットエッチングを行って、中間導体回路層22の第2絶縁基材29側に凹部15を形成する(ステップS308)。そして、図15(h)に示すように、ビアホール13内に上述した導電ペーストを充填し、ビアホール13及び凹部15にわたるビア14を形成する(ステップS310)。
【0059】
こうして、ここまでの処理を繰り返すことにより形成された、両面に凹部15を有する中間導体回路層22及びビア14を備える第2プリント配線基材20を、複数準備する(ステップS312)。また、第1絶縁基材19側に凹部15を有する第1導体回路層11及びビア14を備える第1プリント配線基材10を多層構造の表層に準備する(ステップS314)。
【0060】
こうして準備した第1及び第2プリント配線基材10,20を、図16に示すように、ビア14の端部14bと凹部15とを位置合わせして重ね合わさるようにし、図中矢印で示すように積層すれば(ステップS316)、図12に示すような第4の実施形態に係る多層プリント配線基板400を製造することができる。
【0061】
この第4の実施形態に係る多層プリント配線基板400においても、導体回路層11,22とビア14との接合界面の面積をより大きくすることができ、上記第1〜第3の実施形態に係る多層プリント配線基板と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
9 接着層
10 第1プリント配線基材
11 第1導体回路層
12 第2導体回路層
13 ビアホール
14 ビア
14a,14b 端部
15 凹部
16,18 導体層
19 第1絶縁基材
20 第2プリント配線基材
22 中間導体回路層
29 第2絶縁基材
100 多層プリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板であって、
前記導体回路層には、前記ビアの積層方向の中央部の径よりも大径の内径を有する凹部が形成され、
前記ビアは、端部が前記凹部内に充填された状態で前記導体回路層と接続されている
ことを特徴とする多層プリント配線基板。
【請求項2】
前記絶縁基材には前記ビアが充填されるビアホールが形成され、
前記導体回路層の凹部は、その導体回路層が形成された絶縁基材側の面に前記ビアホールの開口部を覆うように形成され、
前記ビアの端部は、前記ビアホールの開口部から前記絶縁基材の面に沿って拡がるように前記凹部内に充填されている
ことを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線基板。
【請求項3】
前記導体回路層の凹部は、その導体回路層が形成された絶縁基材と反対側の面に形成され、
前記導体回路層の凹部側に配置されたビアの端部は、前記凹部内に充填されている
ことを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線基板。
【請求項4】
前記導体回路層は、両面に前記凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線基板。
【請求項5】
絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して複数の前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板の製造方法であって、
第1絶縁基材の一方の面に前記導体回路層を形成し、
前記第1絶縁基材の前記導体回路層形成面と反対側の面から、前記導体回路層に到達するビアホールを形成し、
前記ビアホールを介して前記導体回路層の前記ビアホール側の面に、エッチングにより前記ビアホールの開口部の開口径よりも前記第1絶縁基材の面方向に大径の内径を有する凹部を形成し、
前記第1絶縁基材のビアホール及び前記凹部に導電材を充填することによってビアを形成し、
第2絶縁基材を前記第1絶縁基材に積層する
ことを特徴とする多層プリント配線基板の製造方法。
【請求項6】
絶縁基材に導体回路層を形成したプリント配線基材が複数積層され、積層方向に貫通するビアを介して複数の前記導体回路層が相互に接続された多層プリント配線基板の製造方法であって、
第1絶縁基材にビアホールを形成し、
前記ビアホールに導電材を充填することによってビアを形成し、
第2絶縁基材の一方の面に前記導体回路層を形成すると共に前記導体回路層の前記第2絶縁基材側とは反対側の面に凹部を形成し、
前記ビアの端部が前記凹部の内部に充填されるように前記第1絶縁基材を前記第2絶縁基材に積層する
ことを特徴とする多層プリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−73990(P2013−73990A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210188(P2011−210188)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】