説明

多層プリント配線板の製造方法および積層体

【課題】より迅速に多層プリント配線板を製造することができ、また、多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる多層プリント配線板の製造方法および積層体を提供する。
【解決手段】多層プリント配線板30を製造するにあたり、積層体20a、20b、20c、20dを複数重ね合わせ、この重ね合わせ体をまとめて挟圧する。また、複数の積層体20a、20b、20c、20dを重ね合わせる前に、導電性バンプ16が形成された積層体20cに対向する積層体20b、20dの絶縁層14に凹凸形状を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板を製造するための多層プリント配線板の製造方法、および多層プリント配線板を製造する際に材料として用いられる積層体に関し、とりわけ、より迅速に多層プリント配線板を製造することができ、また、多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる多層プリント配線板の製造方法および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銅箔等の基板シートの表面に複数の略円錐状の導電性バンプが形成された導電性バンプ付き基板シートと、プリプレグ等の絶縁層(非導電性シート)とを交互に重ね合わせることにより形成される多層プリント配線板が知られている。このような多層プリント配線板において、基板シートの表面に形成された導電性バンプが絶縁層を貫通することによって、当該絶縁層の両側にある基板シート同士が導電性バンプによって電気的に接続(層間接続)されるようになっている(例えば、特許文献1乃至3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3167840号
【特許文献2】特開2004−6577号公報
【特許文献3】特開2002−305376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多層プリント配線板を製造するにあたり、この多層プリント配線板に用いられる絶縁層は熱硬化性樹脂であり、この熱硬化性樹脂の硬化処理に時間を要するため、多数の基板シートや絶縁層を積層する際に、片面板の積層回数の削減が求められている。ここで、片面板とは、平板状の基板シート、この基板シートの一方の表面に設けられた熱硬化性樹脂からなる絶縁層、およびこの絶縁層を貫通するよう基板シートの一方の表面に設けられた導電性バンプからなるものである。しかしながら、従来の多層プリント配線板の製造方法では、片面板を1枚ずつ積層していたため、片面板の積層回数が多くなってしまい、迅速に多層プリント配線板を製造することができないという問題があった。
【0005】
このため、片面板の積層回数を削減するため、複数の片面板または二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体をまとめて上下方向から挟圧するとともに加熱するような多層板一括積層法が用いられる場合もある。ここで、二層板とは、2枚の片面板を重ね合わせ、一方の片面板の導電性バンプと他方の片面板の基板シートとを接合させたものをいう。しかしながら、このような方法では、絶縁層の熱硬化性樹脂は、硬化開始温度に達する前の状態では軟化状態となるために過剰な流動性を生じさせ、絶縁層よりも導電性バンプが硬くなってしまうことにより、ある片面板や二層板の絶縁層が隣り合う他の片面板や二層板の導電性バンプに押圧されてしまうことにより、導電性バンプに押圧された絶縁層が変形してしまったり湾曲してしまったりするおそれがある。このことにより、ある片面板や二層板の導電性バンプと、隣り合う他の片面板や二層板の基板シートとの間で接続不良が生じてしまうおそれがあり、多層プリント配線板の製品不良が高割合で発生してしまう。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、片面板や二層板の積層回数を削減することができ、このためより迅速に多層プリント配線板を製造することができ、また、基板シートと導電性バンプとの間で接続不良が生じることを抑制することができ、このため多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、このような多層プリント配線板を製造する際に材料として用いられる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、平板状の基板シート、この基板シートの表面に設けられた絶縁層、およびこの絶縁層を貫通するよう前記基板シートに設けられた導電性バンプからなる積層体を準備する工程と、複数の前記積層体を重ね合わせ、この重ね合わせ体を挟圧することにより各々の隣り合う一対の積層体における一方の積層体の基板シートと他方の積層体の導電性バンプとを接合させ、多層プリント配線板を形成する工程と、を備え、複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設けることを特徴とする。なお、積層体は、片面板や二層板等からなるものである。
【0008】
このような多層プリント配線板の製造方法によれば、片面板や二層板等からなる積層体を複数重ね合わせ、この重ね合わせ体をまとめて挟圧することにより多層プリント配線板を製造しているので、片面板や二層板の積層回数を削減することができ、このためより迅速に多層プリント配線板を製造することができる。また、複数の積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設けている。このため、複数の積層体を重ね合わせた後、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧したときに、各々の積層体の絶縁層(硬化処理が行われていない絶縁層)が流動性を有するものであったとしても、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状が形成されているので、一方の積層体に形成された導電性バンプと、他方の積層体の絶縁層の凸部とが対向する場合は、この一方の積層体の導電性バンプにより他方の積層体の絶縁層が押されて変形してしまうことを抑制することができる。なぜならば、一方の積層体の導電性バンプにより押される他方の積層体の絶縁層の領域はその厚さが比較的大きくなっており、導電性バンプにより押されたときに残留する応力が大きくなっているからである。このようにして、積層体の絶縁層が大きく変形したり湾曲したりすることを抑制することができる。このため、基板シートと導電性バンプとの間で接続不良が生じることを抑制することができ、多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる。
【0009】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、隣り合うべき一対の積層体における一方の積層体の導電性バンプが形成された領域に対向する他方の積層体の領域の絶縁層の厚さを当該他方の積層体における他の領域の絶縁層の厚さよりも大きくすることが好ましい。このことにより、一方の積層体の導電性バンプが形成された領域に対向する他方の積層体の特定の領域の絶縁層の厚さが比較的大きくなるので、積層体の導電性バンプによりこの積層体に隣り合う積層体の絶縁層が押されて変形してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0010】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、隣り合うべき一対の積層体における一方の積層体の導電性バンプが形成された領域に対向する他方の積層体の領域の絶縁層の厚さについて、この他方の積層体における導電性バンプが形成された箇所の絶縁層の厚さは当該他方の積層体における前記他の領域の絶縁層の厚さと略同一の大きさとしてもよい。
【0011】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体の絶縁層の表面の一部を削ることが好ましい。
【0012】
この場合、積層体の絶縁層の表面の一部を削る際に、この絶縁層の表面の一部に対してエンボス加工を行うことがより好ましい。
【0013】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては、複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体において、均一な厚さを有する絶縁層に対して、絶縁層の表面の一部に追加の絶縁層を設けてもよい。
【0014】
あるいは、複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体に対して型枠によりプレス加工を行うことによってこの積層体の一部の領域を押圧して圧縮させてもよい。
【0015】
本発明の積層体は、多層プリント配線板を製造する際に材料として用いられる積層体であって、平板状の基板シートと、前記基板シートの表面に設けられた絶縁層と、前記絶縁層を貫通するよう前記基板シートに設けられた導電性バンプと、を備え、絶縁層に凹凸形状が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような積層体によれば、当該積層体を用いて多層プリント配線板を製造することによって、より迅速に多層プリント配線板を製造することができ、また、基板シートと導電性バンプとの間で接続不良が生じることを抑制することができ、このため多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる。
【0017】
本発明の積層体においては、多層プリント配線板が製造される際に隣り合うべき他の積層体における導電性バンプが形成された領域に対向する領域の絶縁層の厚さが他の領域の絶縁層の厚さよりも大きくなっていることが好ましい。
【0018】
また、前記積層体の絶縁層の厚さについて、この積層体における導電性バンプが形成された箇所の絶縁層の厚さは前記他の領域の絶縁層の厚さと略同一の大きさとなっていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多層プリント配線板の製造方法および積層体によれば、より迅速に多層プリント配線板を製造することができ、また、多層プリント配線板の製品不良の発生率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一の実施の形態における、多層プリント配線板の材料として用いられる二層板を形成する方法を示す説明図である。
【図2】複数の二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体を挟圧するとともに加熱することにより多層プリント配線板を製造する方法を示す説明図である。
【図3】絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板の他の製造方法を示す説明図である。
【図4】絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板の更に他の製造方法を示す説明図である。
【図5】絶縁層の厚さが全て均一である二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧することにより多層プリント配線板を製造する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は、本発明による多層プリント配線板の製造方法および積層体の一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、多層プリント配線板の材料として用いられる二層板を形成する方法を示す説明図であり、図2は、複数の二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体を挟圧するとともに加熱することにより多層プリント配線板を製造する方法を示す説明図である。
【0022】
以下、本実施の形態の多層プリント配線板の製造方法について順次説明する。
【0023】
〔片面板および二層板の製造方法〕
最初に、図1(a)に示すような片面板10の製造方法について説明する。まず、平板状の銅箔等の基板シート12を準備する。次に、この基板シート12に対して、スクリーン印刷等により1または複数の導電性バンプ16を形成する。そして、導電性バンプ16付き基板シート12が平板状部材(図示せず)に乗せられた状態で、この導電性バンプ16付き基板シート12における導電性バンプ16が形成された面にプリプレグ等の熱硬化性材料からなる絶縁層14を載せる。
【0024】
その後、平板状部材、導電性バンプ16付き基板シート12、および絶縁層14の重ね合わせ体を例えば一対のローラ等により上下方向から挟圧することにより、導電性バンプ16が絶縁層14を貫通するようにする。そして、平板状部材、導電性バンプ16付き基板シート12、および絶縁層14の重ね合わせ体から、平板状部材を取り除くことにより、図1(a)に示すような片面板10が得られる。
【0025】
ここで、図1(a)に示すように、片面板10は、平板状の基板シート12、この基板シート12の一方の表面に設けられた絶縁層14、およびこの絶縁層14を貫通するよう基板シート12の一方の表面に設けられた導電性バンプ16から構成されている。また、片面板10の絶縁層14は未だ硬化処理が行われておらず、この絶縁層14は流動性を有するようになっている。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、片面板10における絶縁層14の表面を部分的に削る。より具体的には、片面板10を上下一対のローラ18、19の間で上下方向から挟圧する。この際に、上下一対のローラ18、19のうち、絶縁層14に接触する上側のローラ18はエンボスローラとなっており、このローラ18の表面は鋸刃状となっている。また、上下一対のローラ18、19はそれぞれ図示しない加熱部により加熱させられている。このことにより、片面板10を上下一対のローラ18、19の間で上下方向から挟圧されたときに、この片面板10の絶縁層14は上側のローラ18によりその表面が削られる。なお、上側のローラ18により削られる絶縁層14の領域の詳細については後述する。このようにして、図1(c)に示すように、片面板10の絶縁層14に凹凸形状が設けられる。より具体的には、片面板10の特定の領域14aにおける絶縁層14の厚さは、片面板10における他の領域14bの絶縁層14の厚さよりも大きくなる。
【0027】
その後、図1(a)に示す片面板10と構造が類似するような積層体の上に図1(c)に示す片面板10を重ね合わせ、この重ね合わせ体を上下一対のローラにより上下方向から挟圧するとともに加熱することにより、図1(d)に示すように下側の積層体の導電性バンプ16と上側の積層体の基板シート12とが接合し、二層板20が得られる。本実施の形態においては、このような二層板20を積層体という。
【0028】
〔多層プリント配線板の製造方法〕
次に、図1(d)に示すような二層板(積層体)20と構造が類似する二層板20a、20b、20c、20dを用いて多層プリント配線板を製造する方法について図2を用いて説明する。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、図1(d)に示すような二層板20と構造が類似する4つの二層板20a、20b、20c、20dを重ね合わせる。ここで、4つの二層板20a、20b、20c、20dのうち、2つの二層板20a、20cの絶縁層14の厚さは均一となっている。一方、2つの二層板20b、20dにおいては、それぞれ、絶縁層14に凹凸形状が設けられている。より具体的には、特定の領域14aにおける絶縁層14の厚さが、他の領域14bの絶縁層14の厚さよりも大きくなっている。
【0030】
ここで、絶縁層14の厚さが比較的大きい特定の領域14aは、各二層板20b、20dと隣り合う二層板20cの中央の導電性バンプ16が形成された領域に対向している。すなわち、図2(a)に示すように、二層板20cの長手方向(図2(a)の左右方向)における中央部分には導電性バンプ16が形成されているが、この二層板20cの上側および下側に配置される各々の二層板20b、20dにおいて、二層板20cの中央の導電性バンプ16が形成された領域に対向する二層板20b、20dの領域(特定の領域)14aの厚さを、これらの二層板20b、20dにおける他の領域14bの厚さよりも大きくしている。このように、図1(b)に示すような片面板10における絶縁層14の表面を部分的に削る工程において、二層板20b、20dを構成する片面板10の絶縁層14における、これらの二層板20b、20dと隣り合う二層板20cの導電性バンプ16が形成された領域に対向する領域(特定の領域)14a以外の領域(他の領域)14bの表面を削る。このことにより、4つの二層板20a、20b、20c、20dを重ね合わせたときに、二層板20cにおける導電性バンプ16が形成された箇所と、二層板20b、20dにおける絶縁層14の厚さが比較的大きい特定の領域14aの箇所とが上下方向において位置合わせされる。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、4つの二層板20a、20b、20c、20dが重ね合わせられた重ね合わせ体をプレス装置50に送り、このプレス装置50で重ね合わせ体を上下方向から挟圧するとともに加熱する。具体的には、例えば一対のローラ(図示せず)により、図2(b)に示すような重ね合わせ体を上下方向から挟圧する。このことにより、各々の隣り合う一対の二層板20a、20b、20c、20dにおける一方の二層板(例えば二層板20b)の下部にある基板シート12と他方の二層板(例えば二層板20c)の上部にある導電性バンプ16とを接合させる。このようにして、図2(b)に示すように、基板シート12が8層となっている多層プリント配線板30が製造される。
【0032】
図2においては、基板シート12が合計で8層となっている多層プリント配線板30の製造方法について説明したが、基板シート12の層の数が9層より多い多層プリント配線板や7層より少ない多層プリント配線板を製造する際には、重ね合わせるべき二層板20の数を増減させたり、一部の二層板20の代わりに図1(a)や図1(c)に示すような片面板10を用いたりする。
【0033】
以上のように本実施の形態の多層プリント配線板30の製造方法によれば、二層板(積層体)20a、20b、20c、20dを複数重ね合わせ、この重ね合わせ体をまとめて挟圧することにより多層プリント配線板30を製造しているので、二層板20a、20b、20c、20dの積層回数を削減することができ、このためより迅速に多層プリント配線板30を製造することができる。
【0034】
また、複数の二層板20a、20b、20c、20dを重ね合わせる前に、導電性バンプ16が形成された二層板20cに対向する二層体20b、20dの絶縁層14に凹凸形状を設けている。このため、複数の二層板20a、20b、20c、20dを重ね合わせた後、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧したときに、各々の二層板20a、20b、20c、20dの絶縁層14(硬化処理が行われていない絶縁層)が流動性を有するものであったとしても、中央部分に導電性バンプ16が形成された二層板20cに対向する二層板20b、20dの絶縁層14に凹凸形状が形成されているので、一方の二層板20cに形成された導電性バンプ16と、他方の二層板20b、20dの絶縁層14の凸部(領域14a)とが対向する場合は、この一方の二層板20cの導電性バンプ16により他方の二層板20b、20dの絶縁層14が押されて変形してしまうことを抑制することができる。なぜならば、二層板20cの導電性バンプ16により押される二層板20b、20dの絶縁層14の領域14aはその厚さが比較的大きくなっており、導電性バンプ16により押されたときに残留する応力が大きくなっているからである。
【0035】
より詳細には、複数の二層板20a、20b、20c、20dを重ね合わせる前に、導電性バンプ16が形成された二層板20cに対向する二層体20b、20dの絶縁層14に凹凸形状を設ける際に、隣り合うべき一対の二層板における一方の二層板20cの導電性バンプ16が形成された領域(中央の領域)に対向する他方の二層板20b、20dの領域(特定の領域)14aの絶縁層14の厚さをこの二層板20b、20dにおける他の領域14bの絶縁層14の厚さよりも大きくしている。このことにより、一方の二層板20cの導電性バンプ16が形成された領域に対向する他方の二層板20b、20dの特定の領域14aの絶縁層14の厚さが比較的大きくなるので、二層板20cの導電性バンプ16によりこの二層板20cに隣り合う二層板20b、20dの絶縁層14が押されて変形してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0036】
このように、上述のような多層プリント配線板30の製造方法によれば、二層板20b、20dの絶縁層14が大きく変形したり湾曲したりすることを抑制することができる。このため、基板シート12と導電性バンプ16との間で接続不良が生じることを抑制することができ、多層プリント配線板30の製品不良の発生率を低減することができる。
【0037】
また、本実施の形態の二層板20は、多層プリント配線板30を製造する際に材料として用いられるものであり、平板状の基板シート12と、この基板シート12の表面に設けられた絶縁層14と、絶縁層14を貫通するよう基板シート12に設けられた導電性バンプ16と、を備え、絶縁層14には凹凸形状が設けられている。より具体的には、多層プリント配線板30が製造される際に隣り合うべき他の二層板20における導電性バンプ16が形成された領域に対向する領域(特定の領域14a)の絶縁層14の厚さが他の領域14bの絶縁層14の厚さよりも大きくなっている。
【0038】
このような二層板20によれば、当該二層板20を用いて多層プリント配線板30を製造することにより、より迅速に多層プリント配線板30を製造することができ、また、基板シート12と導電性バンプ16との間で接続不良が生じることを抑制することができ、このため多層プリント配線板30の製品不良の発生率を低減することができる。
【0039】
また、本実施の形態の多層プリント配線板30の製造方法においては、図2(a)に示すように、隣り合うべき一対の二層板20a、20b、20c、20dにおける一方の二層板(例えば、二層板20c)の導電性バンプ16が形成された領域に対向する他方の二層板(例えば、二層板20b、20d)の領域の絶縁層14の厚さについて、この他方の二層板20b、20dにおける導電性バンプ16が形成された箇所(二層板20b、20dの両端部)の絶縁層14の厚さは当該他方の二層板20b、20dにおける他の領域14bの絶縁層14の厚さと略同一の大きさとなっている。
【0040】
より詳細に検討すると、図2(a)において、二層板20aに関しては、この二層板20aと隣り合う二層板20bの導電性バンプ16が形成された領域(二層板20aの両端部)に対向する二層板20aには導電性バンプ16が設けられているので、二層板20aにおいてこの領域の絶縁層14の厚さは他の領域の絶縁層14の厚さと略同一の大きさとなっている。同様に、二層板20cに関しては、この二層板20cと隣り合う二層板20b、20dの導電性バンプ16が形成された領域(二層板20b、20dの両端部)に対向する二層板20cには導電性バンプ16が設けられているので、二層板20cにおいてこの領域の絶縁層14の厚さは他の領域の絶縁層14の厚さと略同一の大きさとなっている。理由としては、これらの二層板20a、20cにおいて、隣り合う二層板20b、20dの導電性バンプ16が形成された領域に対向するよう導電性バンプ16が設けられていることにより、これらの二層板20a、20cの絶縁層14が二層板20b、20dの導電性バンプ16に押圧されて変形してしまうことはないからである。
【0041】
また、二層板20bに関しては、この二層板20bと隣り合う二層板20a、20cの両端部の導電性バンプ16が形成された領域に対向する二層板20bの両端部には導電性バンプ16が設けられているので、二層板20bにおいてこの両端部の領域の絶縁層14の厚さは他の領域14bの絶縁層14の厚さと略同一となっている。また、二層板20dに関しては、この二層板20dと隣り合う二層板20cの両端部の導電性バンプ16が形成された領域に対向する二層板20dの両端部には導電性バンプ16が設けられているので、二層板20dにおいてこの両端部の領域の絶縁層14の厚さは他の領域14bの絶縁層14の厚さと略同一となっている。
【0042】
なお、本発明による多層プリント配線板の製造方法は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0043】
例えば、上述した多層プリント配線板の製造方法としては、積層体として図1(d)に示すような二層板20を用いているが、本発明による多層プリント配線板の製造方法においては、積層体としてこのような二層板20の代わりに図1(c)に示すような片面板10を用いてもよい。
【0044】
また、本発明による多層プリント配線板の他の製造方法について図3を用いて説明する。図3は、絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板の他の製造方法を示す説明図である。この製造方法により製造された片面板を含む二層板は、図2(a)に示す重ね合わせられた複数の二層板のうち二層板20b、20d(中央に導電性バンプ16が設けられた二層板20cと隣り合う二層板)として用いられる。
【0045】
絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板を製造するにあたり、まず、図3(a)に示すように、絶縁層14の厚さが均一であるような片面板10を準備する。そして、図3(b)に示すように、図3(a)に示す片面板10において、均一な厚さを有する絶縁層14に対して、図2(a)に示す二層板20cの中央の導電性バンプ16が形成された領域に対向する領域(特定の領域)14aに、追加の絶縁層14cを設ける。このことにより、特定の領域14aにおける絶縁層14の厚さが、他の領域14bの絶縁層14の厚さよりも大きくなる。図3(b)に示すような片面板10も、図1(c)に示すような片面板10と同様に多層プリント配線板30の材料として用いられる。
【0046】
次に、本発明による多層プリント配線板の更に他の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板の更に他の製造方法を示す説明図である。この製造方法により製造された片面板を含む二層板は、図2(a)に示す重ね合わせられた複数の二層板のうち二層板20b、20d(中央に導電性バンプ16が設けられた二層板20cと隣り合う二層板)として用いられる。
【0047】
絶縁層に凹凸形状が設けられた片面板を製造するにあたり、まず、図4(a)に示すように、絶縁層14の厚さが均一であるような片面板10を準備する。また、この準備された片面板10に対応するような型枠60を準備する。この型枠60は、片面板10における絶縁層14が設けられた側の面をプレスするようになっている。
【0048】
型枠60における、片面板10の特定の領域14aの絶縁層14に対向する箇所には凹部60aが形成されている。図4(a)に示すように、この凹部60aは比較的浅くなっており、型枠60が片面板10の絶縁層14をプレスしたときにこの凹部60a内に絶縁層14が流動して入るようになっている。また、型枠60における、片面板10の導電性バンプ16に対向する箇所には凹部60bが形成されている。この凹部60bは比較的深くなっており、型枠60が片面板10の絶縁層14をプレスしたときに片面板10の導電性バンプ16がこの凹部60bに入り導電性バンプ16が変形しないようになっている。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、片面板10における絶縁層14が設けられた面に対して型枠60によりプレス加工を行う。型枠60が片面板10の絶縁層14をプレスしたときに、絶縁層14は型枠60により押圧されることによって圧縮され、この際に、絶縁層14の一部は流動して凹部60a内に入る。そして、型枠60を片面板10から取り外すと、図4(c)に示すように、絶縁層14における、型枠60の凹部60a内に入った部分(特定の領域14a)は盛り上がり、絶縁層14における他の領域14bよりも厚さが大きくなる。図4(c)に示すような片面板10も、図1(c)に示すような片面板10と同様に多層プリント配線板30の材料として用いられる。
【0050】
なお、比較例として、絶縁層の厚さが全て均一である二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧することにより多層プリント配線板を製造する方法について説明する。図5は、絶縁層の厚さが全て均一である二層板を重ね合わせ、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧することにより多層プリント配線板を製造する方法を示す説明図である。
【0051】
まず、図5(a)に示すように、絶縁層14の厚さが全て均一である4つの二層板70a、70b、70c、70dを重ね合わせる。この際に、二層板70cの長手方向(図5(a)の左右方向)における中央部分に導電性バンプ16が形成されている。
【0052】
次に、図5(b)に示すように、4つの二層板70a、70b、70c、70dが重ね合わせられた重ね合わせ体をプレス装置50に送り、このプレス装置50で重ね合わせ体を上下方向から挟圧するとともに加熱する。具体的には、例えば一対のローラ(図示せず)により、図5(b)に示すような重ね合わせ体を上下方向から挟圧する。このことにより、各々の隣り合う一対の二層板70a、70b、70c、70dにおける一方の二層板(例えば二層板70b)の基板シート12と他方の二層板(例えば二層板70c)の導電性バンプ16とを接合させる。このようにして、図5(b)に示すように、基板シート12が8層となっている多層プリント配線板80が製造される。
【0053】
しかしながら、図5(b)に示すような多層プリント配線板80を製造するにあたり、4つの二層板70a、70b、70c、70dの重ね合わせ体を上下方向から挟圧するとともに加熱した際に、絶縁層14は流動性を有しており、この絶縁層14よりも導電性バンプ16が硬くなっているため、二層板70cの真上にある二層板70bの絶縁層14が、二層板70cの中央の導電性バンプ16により上方に押圧され、この二層板70bの絶縁層14が変形してしまったり湾曲してしまったりするおそれがある。この場合、二層板70bの基板シート12(とりわけ、下部の基板シート12)が変形してしまうことにより、二層板70bの基板シート12と二層板70cの導電性バンプ16との間で接続不良が生じてしまうおそれがあり、多層プリント配線板80の製品不良が高割合で発生してしまうという問題がある。
【0054】
このように、絶縁層14の厚さが全て均一である二層板70a、70b、70c、70dを重ね合わせ、この重ね合わせ体を上下方向から挟圧することにより多層プリント配線板80を製造するような比較例では、二層板70cの真上にある二層板70bの絶縁層14が、二層板70cの中央の導電性バンプ16により上方に押圧され、この二層板70bの絶縁層14が変形してしまったり湾曲してしまったりするおそれがあり、図1乃至図4に示す本発明の多層プリント配線板の製造方法と比較して、比較例に係る多層プリント配線板の製造方法は劣っている。
【符号の説明】
【0055】
10 片面板
12 基板シート
14 絶縁層
14a 特定の領域
14b 他の領域
14c 追加の絶縁層
16 導電性バンプ
18、19 上下一対のローラ
20 二層板
20a、20b、20c、20d 二層板
30 多層プリント配線板
50 プレス装置
60 型枠
60a、60b 凹部
70a、70b、70c、70d 比較例に係る二層板
80 比較例に係る多層プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板シート、この基板シートの表面に設けられた絶縁層、およびこの絶縁層を貫通するよう前記基板シートに設けられた導電性バンプからなる積層体を準備する工程と、
複数の前記積層体を重ね合わせ、この重ね合わせ体を挟圧することにより各々の隣り合う一対の積層体における一方の積層体の基板シートと他方の積層体の導電性バンプとを接合させ、多層プリント配線板を形成する工程と、
を備え、
複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設けることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、隣り合うべき一対の積層体における一方の積層体の導電性バンプが形成された領域に対向する他方の積層体の領域の絶縁層の厚さを当該他方の積層体における他の領域の絶縁層の厚さよりも大きくすることを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
隣り合うべき一対の積層体における一方の積層体の導電性バンプが形成された領域に対向する他方の積層体の領域の絶縁層の厚さについて、この他方の積層体における導電性バンプが形成された箇所の絶縁層の厚さは当該他方の積層体における前記他の領域の絶縁層の厚さと略同一の大きさとすることを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体の絶縁層の表面の一部を削ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
積層体の絶縁層の表面の一部を削る際に、この絶縁層の表面の一部に対してエンボス加工を行うことを特徴とする請求項4記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体において、均一な厚さを有する絶縁層に対して、絶縁層の表面の一部に追加の絶縁層を設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
複数の前記積層体を重ね合わせる前に、導電性バンプが形成された積層体に対向する積層体の絶縁層に凹凸形状を設ける際に、この積層体に対して型枠によりプレス加工を行うことによってこの積層体の一部の領域を押圧して圧縮させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
多層プリント配線板を製造する際に材料として用いられる積層体であって、
平板状の基板シートと、
前記基板シートの表面に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層を貫通するよう前記基板シートに設けられた導電性バンプと、
を備え、
絶縁層に凹凸形状が設けられていることを特徴とする積層体。
【請求項9】
多層プリント配線板が製造される際に隣り合うべき他の積層体における導電性バンプが形成された領域に対向する領域の絶縁層の厚さが他の領域の絶縁層の厚さよりも大きくなっていることを特徴とする請求項8記載の積層体。
【請求項10】
前記積層体の絶縁層の厚さについて、この積層体における導電性バンプが形成された箇所の絶縁層の厚さは前記他の領域の絶縁層の厚さと略同一の大きさであることを特徴とする請求項9記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232478(P2010−232478A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79311(P2009−79311)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】