説明

多層型担体の製造方法、多層型担体、および排ガス浄化用触媒

【課題】熱的安定性に優れた多層型担体、熱的安定性に優れた多層型担体をもつ排ガス浄化用触媒、および熱的安定性に優れた多層型担体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】多層型担体の製造方法における焼成工程において、遷移元素の水酸化物、アルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属元素の水酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化ケイ素、水酸化亜鉛、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化スズ、水酸化ビスマス、水酸化マグネシウム、から選ばれる少なくとも一種を主成分とする水酸化物材料を酸素を含む雰囲気中で焼成する焼成工程を備え、水酸化物材料中の酸化第2鉄(Fe)と酸化珪素(SiO)との含有量の和が水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化物材料を焼成してなる多層型担体およびその製造方法と、この多層型担体を備える排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型担体は層間に隙間を持つ多層構造をなす担体である(例えば、特許文献1参照)。多層型担体は、一般に、水酸化アルミニウムなどの水酸化物材料を焼成することで得られる。特許文献1に紹介されているように、多層型担体における層間の隙間の幅(以下、層間距離と呼ぶ)は非常に小さい(例えば2〜50nm程度)。したがってこの層間に触媒金属を担持すれば、高温時における触媒金属の移動を抑制でき、触媒金属の粒成長を抑制できる。触媒金属の粒成長を抑制できれば、耐熱性および耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を得ることができると考えられる。
【0003】
しかし近年では、排ガス浄化用触媒の耐熱性および耐久性をより向上させるため、熱的安定に優れた多層型担体(高熱に曝されても層間距離が増大し難い多層型担体)が要求されている。
【特許文献1】特開2004−141864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、熱的安定性に優れた多層型担体、熱的安定性に優れた多層型担体を使用した排ガス浄化用触媒、および熱的安定性に優れた多層型担体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の多層型担体の製造方法は、遷移元素の水酸化物、アルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属元素の水酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化ケイ素、水酸化亜鉛、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化スズ、水酸化ビスマス、水酸化マグネシウム、から選ばれる少なくとも一種を主成分とする水酸化物材料を酸素を含む雰囲気中で焼成する焼成工程を備え、水酸化物材料中の酸化第2鉄(Fe)と酸化珪素(SiO)との含有量の和は、水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満であることを特徴とする。
【0006】
本発明の多層型担体の製造方法は、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを備えるのが好ましい。
(1)上記水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、上記水酸化物材料100質量部に対して0.008質量部未満である。
(2)上記水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、上記水酸化物材料100質量部に対して0.0007質量部未満である。
(3)上記水酸化物材料は、水酸化アルミニウムを主成分とする。
(4)(3)の場合、上記焼成工程において、上記水酸化物材料を空気中にて1000〜1200℃で焼成する。
【0007】
上記課題を解決する本発明の多層型担体は、上述した本発明の多層型担体の製造方法の何れかで製造されてなることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化用触媒は、本発明の多層型担体と、この多層型担体に担持されている触媒金属と、を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発明者は鋭意研究の結果、水酸化物材料に含まれる夾雑物の一種(FeおよびSiO)の含有量を少なくすると、熱的安定性に優れた多層型担体が得られることを見出した。詳しくは、水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和を、水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満にすることで、熱的安定性に優れた多層型担体を得ることができる。
【0010】
上記(1)〜(4)の少なくとも一つを備える本発明の多層型担体の製造方法を用いると、より熱的安定性に優れる多層型担体を製造できる。
【0011】
本発明の多層型担体は、本発明の多層型担体の製造方法によって製造されたものであるため、熱的安定性に優れる。
【0012】
また、本発明の排ガス浄化用触媒における触媒金属は、熱的安定性に優れた本発明の多層型担体に担持されている。このため本発明の排ガス浄化用触媒は、高温時における多層型担体の層間距離の増大を抑制でき、触媒金属の移動および粒成長を抑制できる。よって、本発明の排ガス浄化用触媒は、耐熱性および耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の多層型担体における水酸化物材料としては、遷移元素の水酸化物、アルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属元素の水酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化ケイ素、水酸化亜鉛、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化スズ、水酸化ビスマス、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種を主成分とする材料を使用できる。なお、水酸化物材料として水酸化アルミニウムを主成分とする材料を使用することが特に好ましい。上述した特許文献1にも開示されているように、水酸化アルミニウムを焼成して得られるアルミナは、層間に隙間を持つ多層構造をなし、かつ、熱的安定性に優れる為である。
【0014】
水酸化物材料としては、上述した各種の水酸化物のみからなるものを用いても良いが、FeとSiOとの含有量の和が水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満であれば、水酸化物以外の夾雑物を含むものを用いても良い。
【0015】
焼成工程において水酸化物材料を焼成する温度(以下、焼成温度と呼ぶ)が低すぎると、多層型担体のなかで層状をなす部分が少なくなる。一方、焼成温度が高すぎる場合にも、多層型担体のなかで層状をなす部分が少なくなる。よって、焼成温度には好ましい範囲が存在する。焼成温度は1000〜1200℃であることが好ましい。なお、製造直後の層間距離をより小さくするためには、焼成温度が1000〜1100℃であることが好ましい。
【0016】
本発明の多層型担体の製造方法においては、焼成工程において水酸化物材料を堆積する厚さは特に問わない。すなわち、水酸化物材料をるつぼ等の容器に入れて水酸化物材料を厚く堆積させた状態で焼成しても良いし、セラミック板などの上に水酸化物材料を薄く堆積させた状態で焼成しても良い。
【0017】
本発明の多層型担体は、排ガス浄化用触媒用の担体として好ましく用いられるが、その他の用途に供しても良い。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上述した本発明の多層型担体と、触媒金属とを含む。触媒金属としては、Pt、Rh、Pd、Ir、Ru等、従来の排ガス浄化用触媒に用いられているものを使用できる。このうちPtおよびPdは、高い触媒活性を有するが粒成長し易いことが知られている。本発明の多層型担体は、触媒金属の粒成長を抑制できるため、本発明の多層型担体は触媒金属としてPtまたはPdを選択する場合に、高い触媒活性と高い耐熱性および耐久性とを両立できる。なお触媒金属は、100質量部の多層型担体に0.1質量部以上担持させるのが好ましい。より好ましくは、100質量部の多層型担体に0.5〜20質量部の触媒金属を担持させるのが良い。
【0019】
本発明の排ガス浄化用触媒において、触媒金属は既知の方法で多層型担体に担持させ得る。例えば、触媒金属を溶媒に分散あるいは溶解させ、得られた液体を毛細管現象を利用して多層型担体に含浸させれば、多層型担体の層間に触媒金属を担持させ得る。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は酸化触媒や三元触媒として利用できるが、多層型担体にさらにBaやK等のNO吸蔵材を担持させれば、NO吸蔵還元型触媒として利用できると考えられる。
【0020】
また、多層型担体に触媒金属を担持させてなる排ガス浄化用触媒に既知の熱処理を施して、触媒金属を予め粒成長させても良い。この場合には、多層型担体からの触媒金属の脱離を抑制できると考えられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の多層型担体の製造方法および多層型担体を、例を挙げて説明する。
【0022】
(実施例1)
(乾燥工程)水酸化物材料としての水酸化アルミニウム粉末(住友化学製、CHP−340S)を、120℃の空気中にて24時間以上乾燥させて、乾燥水酸化物材料を得た。の水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、水酸化物材料100質量部に対して0.0006質量部であった。詳しくは、この水酸化物材料中のFeの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.0002質量部であった。また、この水酸化物材料中のSiOの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.0004質量部であった。
【0023】
(焼成工程)乾燥工程で得た乾燥水酸化物材料を、アルミナの薄板(厚さ約2.5mm)上に堆積させた。詳しくは、乾燥水酸化物材料を薄板の表面積20cmあたり1gの割合で薄板上にほぼ均一に堆積させた。このとき薄板上に堆積した乾燥水酸化物材料の厚さは約0.5mmであった。薄板上に堆積させた乾燥水酸化物材料を、空気中で薄板とともに焼成して実施例1の多層型担体を得た。なお、このときの焼成温度(材料温度)は、約1050℃であった。またこのとき、焼成開始後約60〜90分で材料温度が目標焼成温度に到達するようにした。また、材料温度が目標焼成温度に到達した直後に、材料温度を徐々に低下させて多層型担体を冷却した。詳しくは、材料温度が目標焼成温度に到達した後に、8時間あたり150℃の割合で雰囲気温度が室温にまで低下するようにした。
【0024】
(実施例2)
実施例2の多層型担体の製造方法は、水酸化物材料(水酸化アルミニウム粉末)として日本軽金属社製のBW103を用いたこと以外は、実施例1の多層型担体の製造方法と同じである。この水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、水酸化物材料100質量部に対して0.007質量部であった。詳しくは、この水酸化物材料中のFeの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.006質量部であった。また、この水酸化物材料中のSiOの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.001質量部であった。実施例2の多層型担体の製造方法によって、実施例2の多層型担体を得た。
【0025】
(実施例3)
実施例1の多層型担体100質量部に、触媒金属である白金を3.3質量部担持し、500℃の空気中で2時間乾燥させた。乾燥後の多層型担体−触媒金属複合体100質量部に、20質量部のγアルミナ粉末(Grace社製)を混合した。この混合物を9.8×10Paの圧力で押し固めた。押し固めた混合物を、金属ふるいを用いて開砕し、0.5〜1.7mm径のペレットに整粒し、ペレット状をなす実施例3の排ガス浄化用触媒を得た。
【0026】
(実施例4)
実施例4の排ガス浄化用触媒は、多層型担体として実施例2の多層型担体を用いたこと以外は実施例3の排ガス浄化用触媒と同じである。
【0027】
(比較例1)
比較例1の多層型担体の製造方法は、水酸化物材料(水酸化アルミニウム粉末)として住友化学社製のC12Sを用いたこと、および、乾燥工程と焼成工程との間に微粉化工程を加えたこと以外は、実施例1の多層型担体の製造方法と同じである。この水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部であった。詳しくは、この水酸化物材料中のFeの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.01質量部であった。また、この水酸化物材料中のSiOの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.01質量部であった。
【0028】
微粉化工程は、以下の手順でおこなった。
【0029】
(微粉化工程)乾燥工程で得た乾燥水酸化物材料500gを、直径5mmのアルミナボール約800個とともに容量役5Lのセラミック容器に入れた。このセラミック容器を回転数約750rpmで約4時間回転させ、乾燥水酸化物材料を微粉化した。
【0030】
この比較例1の多層型担体の製造方法によって、比較例1の多層型担体を得た。
【0031】
(比較例2)
比較例2の排ガス浄化用触媒は、多層型担体として比較例1の多層型担体を用いたこと以外は実施例3の排ガス浄化用触媒と同じである。
【0032】
(熱的安定性評価試験)
実施例1〜2および比較例1の多層型担体を1000℃の空気に曝して熱処理をおこなった。熱処理時間は25時間、50時間の2水準であった。熱処理前の各多層型担体、25時間熱処理した各多層型担体、および50時間熱処理した各多層型担体について、水銀圧入法によって細孔容積頻度分布を測定した。詳しくは、水銀気孔率測定装置(水銀ポロシメータ)によって、各多層型担体0.2gに約5.5kPa〜228MPaの浸透圧力を負荷して、各多層型担体の細孔に水銀を連続的に注入することで、細孔径6.4nm〜230μmの細孔について細孔容積頻度分布を求めた。実施例1の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフを図1に示す。実施例2の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフを図2に示す。比較例1の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフを図3に示す。なお、図中横軸は細孔径(μm)を表す。図中縦軸は細孔容積の頻度割合(%)を表す。
【0033】
図1に示すように、実施例1の多層型担体における焼成直後の最頻細孔径(容積の頻度割合が最大になる細孔径、以下単に細孔径と略する)は約0.017μmであった。25時間熱処理後の細孔径は約0.036μmであり、50時間耐熱処理後の細孔径は約0.050μmであった。
【0034】
図2に示すように、実施例2の多層型担体における焼成直後の細孔径は約0.011μmであり、25時間熱処理後の細孔径は約0.041μmであり、50時間耐熱処理後の細孔径は約0.052μmであった。
【0035】
図3に示すように、比較例1の多層型担体における焼成直後の細孔径は約0.011μmであり、25時間熱処理後の細孔径は約0.053μmであり、50時間耐熱処理後の細孔径は約0.063μmであった。なお、ここで測定された細孔径は、層間距離に相当すると考えられる。
【0036】
実施例1〜2の多層型担体は、比較例1の多層型担体に比べて、焼成直後の細孔径を基準とした場合の25時間熱処理後および50時間熱処理後の細孔径の変化が小さい。この結果から、FeとSiOとの含有量の和を水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満にすることで、熱的安定性に優れた多層型担体を製造できることがわかる。なお、FeとSiOとの含有量の和は実施例1では0.0006質量部、実施例2では0.007質量部である。このことから、FeとSiOとの含有量の和を水酸化物材料100質量部に対して0.008質量部未満にすることで、熱的安定性に特に優れた多層型担体を製造できることがわかる。
【0037】
また、実施例1の多層型担体は、実施例2の多層型担体に比べて、焼成直後の細孔径を基準とした場合の25時間熱処理後および50時間熱処理後の細孔径の変化が小さい。この結果から、FeとSiOとの含有量の和を水酸化物材料100質量部に対して0.0007質量部未満にすることで、さらに熱的安定性に優れた多層型担体を製造できることがわかる。
【0038】
なお、実施例1で用いた水酸化物材料中のFeの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.0002質量部であった。一方、実施例2で用いた水酸化物材料中のFeの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.006質量部であった。上述したように、実施例1の多層型担体は実施例2の多層型担体よりも熱的安定性に優れる。このため、Feの含有量を水酸化物材料100質量部に対して0.0003質量部未満にすることで、熱的安定性に優れた多層型担体を製造できると考えられる。
【0039】
さらに、実施例1で用いた水酸化物材料中のSiOの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.0004質量部であった。一方、実施例2で用いた水酸化物材料中のSiOの含有量は、水酸化物材料100質量部に対して0.001質量部であった。実施例1の多層型担体は実施例2の多層型担体よりも熱的安定性に優れるため、SiOの含有量を水酸化物材料100質量部に対して0.0005質量部未満にすることで、熱的安定性に優れた多層型担体を製造できると考えられる。
【0040】
(触媒耐久性評価試験1)
実施例3〜4の排ガス浄化用触媒および比較例2の排ガス浄化用触媒を1000℃の空気に5時間曝して、耐久処理をおこなった。耐久処理後の各排ガス浄化用触媒1gを、それぞれ石英ガラス製の反応管に詰め、この反応管に自動車の排ガスを模したモデルガス(混合ガス)を流通させた。そして、この混合ガスの温度を100℃から600℃まで徐々に上昇させ、排ガス浄化用触媒の三元反応によるプロピレン(C)窒素酸化物(NO)および一酸化炭素(CO)の浄化率(%)を連続的に記録した。そして、各排ガス浄化用触媒についてCの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)、NOの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)、およびCOの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)をそれぞれ算出した。触媒耐久性評価試験1の結果を表すグラフを図4に示す。
【0041】
(触媒耐久性評価試験2)
実施例3〜4の排ガス浄化用触媒および比較例2の排ガス浄化用触媒を1100℃の酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に繰り返し曝す耐久処理をおこなった。酸化雰囲気は、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとし、全体を100体積%としたときに5体積%の酸素ガスを含む。また、還元雰囲気は、一酸化炭素ガスと窒素ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとし、全体を100体積%としたときに2体積%の一酸化炭素ガスを含む。耐久処理の累積時間は5時間であった。耐久処理後の各排ガス浄化用触媒について、上述した触媒耐久性評価試験1と同じ方法で、Cの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)、NOの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)、およびCOの浄化率が50%となるときの混合ガスの温度(℃)をそれぞれ算出した。触媒耐久性評価試験2の結果を表すグラフを図5に示す。
【0042】
図4および図5に示すように、実施例3の排ガス浄化用触媒は、比較例2の排ガス浄化用触媒に比べて耐久処理後のCの浄化温度、NOの浄化温度、およびCOの浄化温度が低い。この結果から、実施例3の排ガス浄化用触媒は、比較例2の排ガス浄化用触媒に比べて熱処理後の活性が高く、耐熱性および耐久性に優れることがわかる。これは、実施例3の多層型担体の層間距離が比較例2の多層型担体の層間距離よりも小さいことに起因すると考えられる。
【0043】
なお、図4および図5に示すように、実施例4の排ガス浄化用触媒は、実施例3の排ガス浄化用触媒および比較例2の排ガス浄化用触媒に比べて耐久処理後のCの50%浄化温度、NOの50%浄化温度、およびCOの50%浄化温度が高い。しかし、上述したように実施例2の多孔質担体は、耐熱処理を長時間(25時間、50時間)おこなった後の細孔径が比較例1の多孔質担体に比べて小さい。このため、触媒耐久性評価試験1、2を長時間行った場合には、実施例4の排ガス浄化用触媒の浄化温度が比較例2の排ガス浄化用触媒の浄化温度よりも低くなると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフである。
【図2】実施例2の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフである。
【図3】比較例1の多層型担体についての熱的安定性評価試験の結果を表すグラフである。
【図4】触媒耐久性評価試験1の結果を表すグラフである。
【図5】触媒耐久性評価試験2の結果を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移元素の水酸化物、アルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属元素の水酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化ケイ素、水酸化亜鉛、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化スズ、水酸化ビスマス、水酸化マグネシウム、から選ばれる少なくとも一種を主成分とする水酸化物材料を酸素を含む雰囲気中で焼成する焼成工程を備え、
該水酸化物材料中の酸化第2鉄(Fe)と酸化珪素(SiO)との含有量の和は、該水酸化物材料100質量部に対して0.02質量部未満であることを特徴とする多層型担体の製造方法。
【請求項2】
前記水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、前記水酸化物材料100質量部に対して0.008質量部未満である請求項1に記載の多層型担体の製造方法。
【請求項3】
前記水酸化物材料中のFeとSiOとの含有量の和は、前記水酸化物材料100質量部に対して0.0007質量部未満である請求項1〜2の何れかに記載の多層型担体の製造方法。
【請求項4】
前記水酸化物材料は、水酸化アルミニウムを主成分とする請求項1〜3の何れかに記載の多層型担体の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程において、前記水酸化物材料を1000〜1200℃で焼成する請求項4に記載の多層型担体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の多層型担体の製造方法で製造されてなることを特徴とする多層型担体。
【請求項7】
請求項6に記載の多層型担体と、該多層型担体に担持されている触媒金属と、を備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−623(P2009−623A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163927(P2007−163927)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】