説明

多層微多孔膜ならびにかかる膜を製造および使用するための方法

本発明は、内層間に位置するブレンド領域を有する積層微多孔膜または、場合によってはこれらブレンド領域が互いに表面接触している積層微多孔膜に関する。本発明は、このような膜を製造するための方法、およびこのような膜を、例えば電池セパレータとして、使用するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年10月24日に出願された米国仮出願第61/108243号;2009年4月22日に出願された米国仮出願第61/171686号;2009年7月17日に出願された米国仮出願第61/226442号;2009年7月17日に出願された米国仮出願第61/226481号、2009年8月10日に出願された米国仮出願第61/232671号、2008年12月22日に出願されたEP081725073.9、2009年5月25日に出願されたEP09160968.5、からの優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0002】
本発明は、少なくとも第一および第二ポリマー組成物のブレンドを含む領域を有する積層微多孔膜に関する。いくつかの実施形態においては、これら領域は、第一ポリマー組成物を含む第1の層と第二組成物を含む第二の層との間に位置するブレンド領域である。本発明は、このような膜を製造するための方法およびこのような膜を、例えば電池セパレータとして、使用するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
多層微多孔性高分子膜は、例えばリチウム一次電池およびリチウムイオン二次電池などの一次電池および二次電池におけるセパレータとして使用することができる。例えば、PCT特許公開WO2008016174A1では、微多孔性を与える繊維状構造を有し、かつ、ポリオレフィンを含有する、多層微多孔膜が開示されている。この文献では、ポリマーと希釈剤との混合物を共押出しし、この押出物を少なくとも1つの平面方向に延伸し、次いで希釈剤を除去して多層微多孔性高分子膜を形成することによって製造される押出物が開示されている。本開示によれば、当該繊維状構造は押出物の延伸に起因するものであり、これにより、多数のフィブリル(fibril)がもたらされる。これらフィブリルは、三次元の不規則に繋がった網目構造を形成し、微多孔性を有する膜を提供する。
【0004】
層の数が増加した(および所望により繊維状構造を有する)微多孔膜を提供することが望ましいが、これは、このことによって、例えばメルトダウン温度、シャットダウン温度、機械的強度、空孔率、透過性等の、膜性能のバランスに対する制御を改善することが可能となるためである。WO2008016174A1では、3つ以上の単層押出物を積層するか、または、ポリマーと希釈剤との3つ以上の混合物を共押出しし、その後、この多層押出物を延伸して微多孔性を付加し、次いで希釈剤を除去して膜を製造することによってこのような膜を製造することができるということが開示されている。このような共押出しおよび積層は、層の数が増加するにつれて次第に、特に三層を超えると、複雑になる。
【0005】
延伸は、通常、向かい合った連続レールと、押出物の端部をつかみ押出物をテンター型装置を通して移動させるためのこれらレールに可動的に連結されたクリップとを有するテンター型延伸装置を用いて達成される。比較的高い速度および高い倍率での延伸により、フィルムの厚さの不均一性が生じる可能性があり、また、フィルムの裂けさえも生じる可能性がある。さらに、膜の端部をつかむこれらクリップによって膜が破損すると、膜のこの破損部分は切除され、当該プロセスから除外され、それにより、膜の収率が減少する。
【0006】
多層微多孔膜は、通常、押し出されて多層押出物を形成する個々の層の組成によっても限定される。例えば、液体透過性の多層高分子膜を製造するための従来の共押出しプロセスでは、共押出しされた層は、拡散が生じた薄いブレンド領域によって隔てられる。このような2つの層が共押出しされた膜を、膜の濃度プロファイルとともに、図1に概略的に示す。図1によって示されているように、このような押出物100は、第一共押出層101および第二共押出層102を有する。この第一共押出層101は、組成物Aを有する。濃度プロファイルに示されているように、Aの濃度は、当該層101の厚さを通して本質的に一定である。同様に、共押出層102は、層101の組成物とは異なる組成物Bを有する。これらの層101および102が共押出しプロセスの際に出会う場所には、狭いブレンド領域103が形成される。Aの濃度は、当該第二共押出層に到達するまで、ブレンド領域103の厚さを通して減少する。
【0007】
従来の二層共押出PE/PPフィルムの顕微鏡像により、比較的狭いブレンド領域がPE−PP界面に形成されるということが示されている。このようなブレンド領域の厚さは約10nm未満である。よって、従来の共押出しプロセスによって、比較的広いブレンド領域を形成すること、および多数の層を有する構造を形成することは、困難である。
【0008】
したがって、膜層および/またはブレンド領域の数が増加した多層微多孔膜を、押出物の延伸が少なく、かつ、許容可能な量で、製造するためのプロセスが望まれている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施形態は、ポリマーと希釈剤とを含む組成物に対して多層化法を適用することによって生じる構造に向けられたものである。一局面では、本発明の実施形態は、厚さT1を有する第一ブレンド領域、厚さT3を有する第三ブレンド領域、および、第一ブレンド領域と第三ブレンド領域との間に位置し、かつ厚さT2を有する第二ブレンド領域を含み、;[(T1−T2)/T1]≧0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05である、積層微多孔性高分子膜を提供する。
【0010】
別の局面では、本発明の実施形態は、第一ポリマーと第二ポリマーとを含む第一ブレンド領域であって、第一ブレンド領域の厚さ方向に変化する第一ポリマーの第一濃度プロファイルを有する第一ブレンド領域;および、この第一ブレンド領域と表面接触し、かつ、第一ポリマーと第二ポリマーとを含む第二ブレンド領域であって、第二ブレンド領域の厚さ方向に変化する第一ポリマーの第二濃度プロファイルを有する第二ブレンド領域、を含む微多孔膜を提供する。
【0011】
別の局面では、本発明の実施形態は、第一ポリマーと第二ポリマーとを含む微多孔膜であって、第一ポリマーの組成が、厚さ方向に、フィルムの第一表面からフィルムの第二表面まで、連続的に変化する微多孔膜に関する。
【0012】
さらに別の局面では、本発明の実施形態は微多孔膜を製造する方法に関する。微多孔膜を製造するためのかかる方法には、:第一層と第二層とを含む第一積層物であって、第一層が第一希釈剤と第一ポリマーとを含み、第二層が、第一希釈剤に混和性の第二希釈剤と、第一ポリマーとは異なる第二ポリマーとを含む第一積層物を操作して、第一ポリマー組成物と第二ポリマー組成物とを含む第一および第二の近接するブレンド領域を含む、層の数が増加した第二積層物を作製すること;ならびに、この第一および第二希釈剤の少なくとも一部を当該第二物から除去して、当該微多孔膜を製造すること、が含まれる。
【0013】
多層微多孔膜を製造するための当該記載した方法に関する特定の実施形態には、第一層と第二層とを含み第一厚さを有する積層物であって、この第一層が第一ポリマーと少なくとも1種類の第一希釈剤とを含み、この第二層が、第二ポリマーと、第一希釈剤に混和性の少なくとも1種類の第二希釈剤とを含み、この第一希釈剤と第二希釈剤とが第一および第二ポリマーに混和性であり、かつ、この第一および第二ポリマーが、異なるポリマーまたはポリマーの組み合わせである、積層物を形成すること;この積層物を操作して、第一厚さよりも大きい第二厚さを有し、第一積層物と比較して層の数が増加した第二積層物を形成すること、ならびに、この第二積層物を成形して、第二厚さを減少させること、が含まれる。
【0014】
本発明の実施形態は、これらの方法によって製造される繊維状押出物にも関する。本発明の実施形態には、第一および第二希釈剤の少なくとも一部を当該繊維状押出物から除去して、積層微多孔膜を製造することもさらに含まれ、これもまた、そのように製造される膜がそうであるのと同様に、本発明の範囲内である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の微多孔膜は、電池セパレータとして用いて、電池を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1 従来法による共押出フィルムの横断面の概略図。
【0017】
図2 本発明の一実施形態に従った、ブレンド領域を有するフィルムの横断面の概略図。
【0018】
図3 本発明の一実施形態に従った、表面接触している第一および第二ブレンド層を有するフィルムの横断面の概略図。
【0019】
図4 本発明の一実施形態に従った、表面接触している第一および第二ブレンド層を有するフィルムの横断面の概略図。
【0020】
図5 対称に関係したブレンド領域を有するフィルムの横断面の概略図。
【0021】
図6 本発明の実施形態に従った、フィルムを製造する方法の概略図。
【0022】
図7 多層化の際のブレンド領域形成の概略図。
【0023】
図8Aおよび8B 本発明の実施形態のプロセスにおいて有用な、多層化プロセスにおける共押出し装置およびダイの立体配置の概略図。
【0024】
図9〜12は、本発明に従った、好例のフィルムの顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、各内層の反対側の面と表面接触(例えば、面と面とで(face-to-face)接触)している、種々の厚さのブレンド領域を有する多層微多孔膜の発見に部分的に基づいている。
【0026】
本明細書で用いられているように、「層」という語は、1)選択されたポリマー成分の濃度(またはそれを表すもの(representation thereof))が膜の厚さ方向において変化しない膜の領域、または、2)この選択されたポリマー成分の濃度の、近接する最大値および最小値によって境界が定められる、厚さ方向の膜の領域、を指す。
【0027】
本明細書で用いられているように、「濃度プロファイル」という語は、選択されたポリマーの、層の厚さ方向の濃度を指す。押出成形によって形成される層の平均組成が名目上同一の20μm単層膜について観察されるよりも大きい、膜の厚さ方向の、選択されたポリマー成分の濃度の変化が存在する場合に、濃度プロファイルが「変化する」と言う。当然ながら、この濃度プロファイルは、層の厚さ全体を通じて連続的である必要はなく、また、直線の傾向、またはそうでなければ層の厚さ全体に分布した少なくとも3つの点によって暗示される傾向により定めることができる。濃度プロファイルは、Zhao and Macosko, AIChE Journal, Vol. 53, No. 4, pp. 978-985 (April 2007)に記載されている。
【0028】
「傾き」という語は、通常は、一次関数に対して適用されるものであるが、濃度プロファイルは直線である必要はなく、傾きを有する。本開示の目的のために、層における特定の濃度プロファイルの傾きは、層を定める近接する最大値および最小値により決定される。当該濃度プロファイルが変化しない場合、傾きはゼロである。
【0029】
図およびそれらに対する言及は、事実上、概略的なものとして解釈されるべきものである。個々別々の図の特徴の相対的な大きさ、数、および関係は、単に説明のためのものであり、本発明の任意の実施形態に対して適用されると解釈されるべきではない。ただし、そのような解釈が明示的に必要である場合を除く。
[1]多層微多孔膜の組成および構造
【0030】
一実施形態では、当該膜は、1対の外層(例えば、四層膜中の第一層および第四層)と、それら外層の間に位置する少なくとも2つの層(内層と呼ばれる)とを有する積層微多孔膜である。当該膜は、各内層の相反する表面と表面接触した種々の厚さのブレンド領域を含む。所望により、これら外層は、膜の表面(または「スキン」)層であってもよい。すなわち、外層と膜の表面との間にさらなる層が存在しなくてもよい。
【0031】
一実施形態では、当該膜の1つの外層および少なくとも1つの内層は第一ポリマーを含む。この第一ポリマーは、例えば、単一のポリマー種(例えば特定の分子量および分子量分布のポリエチレンなど)または組み合わせポリマーであってもよい。これらの層における第一ポリマーの平均濃度(これにより、例えば非抽出希釈剤(un-extracted diluent)の領域がもたらされる)は、層の厚さを通じて増加または減少しない。第二外層と少なくとも1つの内層は、少なくとも1種類の第二ポリマーを含み、この第二ポリマーは第一ポリマーとは異なるものである。第一ポリマーの場合におけるように、第二ポリマーは、例えば、単一のポリマー種(例えば特定の分子量および分子量分布のポリエチレンなど)または組み合わせポリマーであってもよい。一実施形態では、第二ポリマーは、第二外層中および第二ポリマーを含有する内層中に均一に分布し、;その結果、第一外層と同様に、第二外層中(および第二ポリマーを含有する内層中)の第二ポリマーの平均濃度が、第二層の厚さを通じて増加も減少もしない。第一および第二ポリマーは、ポリマーの組み合わせであってもよく、例えば、ポリオレフィンの組み合わせ、例えば1種類以上のポリエチレンとポリプロピレンとの組み合わせなど、であってもよい。当該膜は、所望により、それぞれが第三、第四、第五などのポリマーまたはポリマーの混合物を含有する、1つ以上のさらなる内層をさらに含んでいてもよい。
【0032】
そのような代表的な構造の1つが、図2の膜または押出物により概略的に示されている。膜200は、組成物Aを含む第一ポリマー(201、205)と、組成物Bを有する第二ポリマー(203、207)とによる交互に現れる層(alternating layers)を有する。層201、205は、それぞれ、厚さL1、L3を有する。第一ポリマー組成物の層201、205の厚さを通じて、組成プロファイルは変化しないが、これは、中間層の拡散がこれらの層に達しなかったためである。同様に、層203、207は、第二ポリマー組成物を含み、厚さL2、L4を有する。層203、207を通じて、第一ポリマー組成物の量は最小値に達し、変化しない。第一ポリマー組成物の層201、205、および第二ポリマー組成物の層203、207は、製作中に組成物Aおよび組成物Bの相互拡散によって形成されるブレンド領域202(厚さ「T1」を有する)、204(厚さ「T2」を有する)、206(厚さ「T3」を有する)によって隔てられている。ブレンド領域202および206は、厚さ方向に、それぞれ、層203および207に向かって動く際のAの濃度の減少を特徴とする組成プロファイルを有する。界面のブレンド領域204は、厚さ方向に、層205に向かって動く際のAの濃度の増加を特徴とする濃度プロファイルを有する。そのような膜のいくつかは、2008年10月24日に出願された同時係属中の米国仮出願第61/108,243号、および2009年4月22日に出願された第61/171,686号に記載されており、これら文献の開示内容は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0033】
そのような膜のいくつかは、これらのブレンド領域の厚さ間の関係性によって記述することができる。例えば、当該膜が少なくとも4つの層と少なくとも3つのブレンド領域とを有する場合には、第一および第三ブレンド領域202および206は、ほぼ等しい厚さを有していてもよい。第二ブレンド領域204は、T2が<T1であり、かつ、T2が<T3となるような厚さを有する。別の実施形態では、[(T1−T2)/T1]≧約0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05であり、例えば[(T1−T2)/T1]は約0.05〜約0.95の範囲であってもよく、[(T3−T2)/T3]は約0.05〜約0.95の範囲であってもよく、例えば[(T1−T2)/T1]が約0.10〜約0.75の範囲かつ[(T3−T2)/T3]が約0.10〜約0.75の範囲などである。
【0034】
一実施形態では、第一および第二ポリマーはこれらブレンド領域中に均一には分布していない。例えば、図2に示されてもいるように、第一ブレンド領域の場合、第一ポリマーの量は、第一層付近の最大値から第二層付近の最小値へと減少する。同様に、この第一ブレンド領域中の第二ポリマーの量は、第一層付近の最小量から第二層付近の最大量へと増加する。特定のブレンド領域では、第一および第二ポリマーの相対量は、第一ポリマーを含有する近接層と第二ポリマーを含有する近接層との間で、厚さ方向に、それぞれ、同じ比率で(しかし逆の傾きで)減少する。言い換えれば、当該ブレンド領域中の第一ポリマーの濃度の増加率は、第二ポリマーの濃度の減少率と同じであってもよく、逆もまた同様である。第一または第二ポリマーの厚さ方向の濃度変化の量(「濃度プロファイル」)は重要ではなく、例えば、直線、二次式、正弦または余弦、誤差関数、ガウシアン等の、当該プロファイルを有してもよく、その線分およびその線分の組み合わせを含んでいてもよい。
【0035】
ブレンド領域の厚さは膜の厚さ方向における距離と定義され、この距離の間では、第一ポリマーの濃度は、このブレンド領域と面と面とで接触している第一ポリマーを含む層中の第一ポリマーの重量を基準に、第一層に見られる濃度と本質的に同じである最大量から、近接する第二層における濃度と本質的に同じであってもよい近接する最小量へと減少する。所望により、最も内部のブレンド領域(例えば、四層膜における第二ブレンド領域)は最も小さい厚さを有する。ブレンド領域の厚さは、通常、25nm以上であり、例えば25nm〜5μm、または35nm〜1μm、の範囲である。
【0036】
必要なことではないが、第一ポリマーを含有する層は、すべて、ほぼ同じ厚さを有していてもよい。同様に、必要なことではないが、第二ポリマーを含有する層は、すべて、同じ厚さを有していてもよい。第一ポリマーを含有する層の厚さは、所望により、第二ポリマーを含有する層の厚さとほぼ同じであってもよい。当該膜のすべての層は、所望により、特に当該膜が約20個の層を含む場合には、ほぼ同じ厚さであってもよい。層の数が増加するにつれて、これらの層の厚さの差は、通常、減少する。膜の層の厚さおよび相対的な厚さは重要なパラメータではない。通常、層の厚さは、層中のポリマーの回転半径(「Rg」)の約2倍よりも大きく、例えば25nm〜50μm、例えば100nm〜10μm、または250nm〜1μm、の範囲である。Rgは、式:
【数1】

から決定することができ、式中、「a」はポリマーの統計的セグメント長であり、Nは、4つの炭素の繰り返し単位に基づくポリマーにおけるセグメントの数である。Rgの値は、例えば、米国特許第5,710,219号に記載の方法によって決定することができる。層およびブレンド領域は、Chaffin, et al., Science 288, 2197-2190に記載されているように、例えばTEMを用いて、(例えば、厚さを測定する目的で)画像化することができる。
【0037】
当業者は、押し出された層または押し出された層から生じた層、例えば本明細書に記載の層など、が、不完全性を、特に厚さ方向に、有することがある、ということを理解するであろう。本願の目的のために、層の厚さは、膜の1mm長にわたり等しい間隔をあけて並んだ50μm幅の5つの領域を選択し、5つの50μm領域のそれぞれの中に含まれる等しい間隔をあけて並んだ10個の点における横断面の厚さを測定することによって決定される、平均の層の厚さと定義される。2つの層は、それらの個々の平均の厚さが1μm以下であって、その差が10%未満である場合には、実質的に同じ厚さを有すると考える。
【0038】
四層膜および八層膜は本発明の例であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。当該膜中の内層の数は、2以上、例えば4以上、または16以上、または32以上、または64以上であり、例えば、2〜10個の層、または8〜2048個の層、または16〜1024個の層、などの範囲であり、;また、ブレンド領域の数は、3以上、例えば5以上、または15以上、または31以上、または63以上であり、例えば、3〜(10−1)個のブレンド領域、または7〜2047個のブレンド領域、または15〜1023個のブレンド領域、などの範囲である。一実施形態では、当該膜は2つの外層と偶数個の内層とを含む対称膜であり、ここでは、この2つの外層はスキン層であってもよく、また、この内層は、層の対で配置され、(i)この対のそれぞれの層は同じ厚さを有し、かつ、膜の対称軸から等距離に位置し、また、(ii)この対の一方の層は第一ポリマーを含み、もう一方の層は第一ポリマーとは異なる第二ポリマーを含む。所望により、外層を含む層対の層は最も大きい厚さを有する。膜の対称面の両側に近接かつ隣接して位置する層の中心対の層は、最も小さい厚さを有する。
【0039】
一実施形態では、対称面は当該膜中の最も中心のブレンド領域を二分する。所望により、当該膜は、奇数個のブレンド領域を含有する。所望により、膜の対称面に最も近いブレンド領域(このブレンド領域は、例えば、当該対称面によって二分されていてもよい)は、ブレンド領域の中でも最も小さい厚さを有する。残りのブレンド領域はブレンド領域の対として配置されていてもよく、ここでは、この対のそれぞれのブレンド領域は所望によりほぼ等しい厚さであり、かつ所望により当該対称面からほぼ等距離に位置する。所望により、当該外層対に近接するブレンド領域は最も大きい厚さを有し、膜の対称面により近いブレンド領域の対ほど、その厚さは徐々に小さくなっていく。
【0040】
拡散が増加するにつれて、また、界面が拡大するにつれて、第一ポリマーまたは第二ポリマーを含む層はブレンド領域中へと取り込まれていく。いくつかの実施形態においては、ブレンド領域の拡張により、ブレンド領域が融合した膜がもたらされる。その結果が、平面接触し、かつ、第一および第二ポリマーを含む、少なくとも第一および第二ブレンド領域を有する膜であって、第一または第二ポリマーのうちの少なくとも1つの濃度がブレンド領域の厚さ方向に変化する膜である。特定の実施形態には、第一ポリマーを含む第一ミクロ層および第二ポリマーを含む第二ミクロ層も含まれ、ここでは、第一および第二ブレンド領域は、第一ミクロ層と第二ミクロ層との間に位置する。
【0041】
以下、そのような実施形態の1つを、図3を参照して説明する。かかる一実施形態では、第一ポリマー組成物および第二ポリマー組成物の個々の層の相互拡散が生じ、その結果、表面接触している少なくとも2つのブレンド領域301、302が膜300の内部において発達した。図3には、このような一実施形態の一般的な濃度プロファイルも示されている。膜300の外層303、304は、成分X、通常は第一ポリマー組成物、第二ポリマー組成物、の組成プロファイルまたはそれを表すものを有し、これは、押出成形によって形成されるAまたはBの層の平均組成が名目上同一の20μm単層膜について観察されるであろうよりも大きくは変化しない。よって、第一ポリマー組成物が外層303を形成する場合には、第一ポリマー組成物を表す変数の濃度は、層303の厚さを通じて変化しない。ブレンド領域301に到達すると、第一ポリマー組成物を表す変数の濃度は減少し始め、通常は、最小値に達するまで減少し続ける。層303の境界からブレンド領域302へと動く際の、第一ポリマー組成物を表す変数の濃度の変化、すなわち傾きは、通常、負である。ブレンド領域302中では、第一ポリマー組成物を表す変数の濃度は、層304に向かう方向に増加する。すなわち、傾きが正である。この明示した実施形態では、第一ポリマー組成物の層は外層304を形成し、ここでは、変数の濃度は第一ポリマー組成物を表している。
【0042】
本発明の別の好例の実施形態を図4に示す。膜400は、外層401および405をそれぞれ有する。所望により、図4に示されているように、層401は第一ポリマー組成物を有し、層405は、第一ポリマー組成物とは異なる第二ポリマー組成物を有する。ブレンド領域402と403とは平面接触しており、ブレンド領域402については、フィルムの厚さ方向にブレンド領域403に向かって動く際の、第一ポリマー組成物を表す変数の値は減少する。ブレンド領域403のブレンド領域402に隣接する側からブレンド領域404に向かって動く際の、第一ポリマー組成物を表す変数の値は増加し、このブレンド領域404では、第一ポリマー組成物を表す変数の値は、外層405に到達するまで減少し始める。
【0043】
図5は、本発明の膜の特定の実施形態において存在し得る層の種々の配列を例示するものである。膜500は、所望により含有されるミクロ外層501および509ならびに好例のブレンド領域502〜508を示すものである。いくつかの実施形態においては、第一ブレンド領域、例えばブレンド領域502、の厚さは、所望により含有されるミクロ外層501および502の個々の厚さよりも大きい。ブレンド領域502の濃度プロファイルは負の傾きを有する。すなわち、膜500の外部表面に最も近い層502の表面から、膜500の中心により近い表面に向かって動く際の、ポリマーAを表す変数の濃度は減少する。ブレンド領域503の濃度プロファイルは正の傾きを有する。また、膜500は、その濃度プロファイルが厚さ方向に、所望により負の傾きで、変化する、例えばブレンド領域504などの、第三ブレンド領域をも含んでいてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態においては、膜500の第三ブレンド領域は、第一ブレンド領域と表面接触している。例えば、第一ブレンド領域505の第一表面は、第二ブレンド領域504と表面接触している。第三ブレンド領域506は、第一ブレンド領域505の第二表面に接触する。特定の配置では、ブレンド領域504および506は、それぞれ、第一ブレンド領域505の厚さよりも大きい厚さを有する。
【0045】
他の実施形態では、例えば膜500などの膜は、第一ブレンド領域、例えば層504、と表面接触した、第三ブレンド領域、例えば層503、を有し、かつ、第二および第三ブレンド領域、例えば層505および503、は、それぞれ、第一ブレンド領域504の厚さよりも小さい厚さを有する。
【0046】
いくつかの実施形態においては、複数のブレンド領域は一連の繰り返し単位として配置され、ここでは、各単位は、少なくとも1つの第一ブレンド領域と少なくとも1つの第二ブレンド領域とを含む。一単位には、第一および第二ポリマーを含む1つ以上のさらなるブレンド領域がさらに含まれていてもよい。例えば、一単位は、複数の第二ブレンド領域と交互に現れる複数の第一ブレンド領域を有していてもよく、ここでは、1つ以上のさらなるブレンド領域は、所望により、それらの間に、例えばA/B/A/B/A/B/A...、またはB/A/B/A/B/A/...、またはA/R/B/A/R/B/A/R/B/A/R/B....、またはB/R/A/B/R/A/B/R/A...、の形で位置し、ここで、「A」はブレンド領域の第一の単位を表し、「B」はブレンド領域の第二の単位を表し、「R」は、第一の単位と第二の単位との間の1つ以上のブレンド領域の第三の単位を表すものである。さらなる層はブレンド領域である必要はないが、所望される場合には、この、さらなる層もまた、含まれていてもよい。本明細書で用いられているように、「繰り返し単位」という語は、1つ以上のブレンド領域の特徴またはそれを表すもの、例えば層の厚さまたは濃度プロファイルなど、の反復を指す。かかる「反復」は、膜の厚さ方向に沿って並進対称(translational symmetry)を反転して直線的に現れるものであってもよく、または、1つ以上の対称的動作、例えば膜の横断面における反転の反転中心または平面など、を介して現れるものであってもよい。そのような実施形態の1つを図5の膜500において示す。ここでは好例の繰り返し単位510、511(破線で示されている)は、反転動作を介して関係している。
【0047】
一実施形態では、当該液体透過膜は、それぞれが実質的に同じ厚さ、例えば1.0μm以下を有する、ミクロ層の対を含む。所望により、当該液体透過膜は、膜の通常は平らな表面に平行でありかつ例えば厚さ方向の膜の中程に位置する、対称面を有する。所望により、1対のミクロ層に含まれるそれぞれのミクロ層は、当該対称面の相反する側に、例えば、当該対称面から実質的に等距離に、配置される。一実施例では、図5を参照すると、層502および508は実質的に同じ厚さを有する1対のミクロ層を含み、一方、層504および506は、第一対の層の厚さと実質的に同じかまたはそれよりも小さい厚さをそれぞれが有するミクロ層の第二対を形成する。第一対のミクロ層は、液体透過膜の対称面から実質的に等距離に存在する。この、膜の対称面は、第二対の2つのミクロ層の間に(かつ第二対の2つのミクロ層から実質的に等距離に)位置する。
【0048】
これらの膜中の層の数は、特に限定されない。例えば、当該液体透過膜は、2以上、例えば4以上、または16以上、または32以上、または64以上の多数のブレンド領域を含んでいてもよく、例えば2〜1.0×106個の層、または8〜2,048個の層、または16〜1,024個の層、などの範囲であってもよい。一実施形態では、当該膜は、2つの外層と多数の内部ブレンド領域対とを含む対称膜であり、ここでは、この2つの外層はスキン層であってもよく、また、この内部ブレンド領域対は、それらの間に配置され、(i)この対のそれぞれの層は実質的に同じ厚さを有し、かつ、膜の対称軸から等距離に位置し、また、所望により(ii)各対の一方の層は濃度[A](単位は重量%)の第一ポリマーを含み、もう一方の層は濃度が100−[A](単位は重量%)の第一ポリマーを含む。
【0049】
一実施形態では、当該液体透過膜の対称面は、膜中の最も中心の層を二分する。所望により、当該膜は、奇数個のブレンド領域を含有する。所望により、膜の対称面に最も近いブレンド領域(このブレンド領域は、例えば、当該対称面によって二分されていてもよい)は、ブレンド領域の中でも最も小さい厚さを有する。残りのブレンド領域は対として配置されていてもよく、ここでは、この対のそれぞれのブレンド領域が所望により実質的に同じ厚さであり、かつ所望により、膜の厚さの仮想中心線から実質的に等距離に位置する。所望により、膜の中心線から遠位にあるブレンド領域は、この中心線により近い層よりも厚くなる。特定の実施形態では、交互に現れるブレンド領域は、それに隣接する各層よりも小さい厚さを有する。
[2]当該微多孔膜を製造するために使用する材料
【0050】
第一および第二ポリマーは、例えば、独立して選択されるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物であってもよい。当該膜は、当該膜がポリオレフィンを含有する場合には、「ポリオレフィン膜」と称されることがある。当該膜はポリオレフィンのみを含有していてもよいが、これは必要なことではなく、また、このポリオレフィン膜がポリオレフィンおよび/またはポリオレフィンではない材料を含有することは、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態では、第一ポリマーはポリエチレンであり、第二ポリマーはポリプロピレンである。当該微多孔膜は、通常、当該膜を製造するために使用するポリマーまたはポリマーの組み合わせを含む。また、処理の際に導入される少量の希釈剤または他の化学種は、通常、当該微多孔膜の重量を基準に、約1重量%未満の量で存在していてもよい。処理の際に少量のポリマーMwの低下が生じ得るが、これは許容可能なものである。一実施形態では、処理の際の分子量の低下は、生じる場合には、膜中のポリマーのMWDの値が、当該膜を製造するのに使用する第一ポリマーまたは第二ポリマーのMWDに比べて、約5%以下、例えば約1%以下、例えば約0.1%以下、の差を生じる原因となる。
【0051】
好ましいポリオレフィンとしては、C2〜C40オレフィン、好ましくはC2〜C20オレフィン、のホモポリマーまたはコポリマー、より好ましくはアルファ−オレフィンモノマーと別のオレフィンまたはアルファ−オレフィンコモノマーのコポリマーが挙げられる(本発明の目的のため、エチレンはアルファ−オレフィンであると定義されている)。適切なオレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、イソペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、イソヘキセン、シクロヘキセン、ヘプテン、イソヘプテン、シクロヘプテン、オクテン、イソオクテン、シクロオクテン、ノネン、シクロノネン、デセン、イソデセン、ドデセン、イソデセン、4−メチル−ペンテン−1、3−メチル−ペンテン−1、3,5,5−トリメチルヘキセン−1が挙げられる。また、適切なコモノマーとしては、ジエン、トリエン、およびスチレン系モノマーが挙げられ、これらには、スチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−アルキルスチレン(例えばパラ−メチルスチレンなど)、ヘキサジエン、ノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、ヘプタジエン、オクタジエン、およびシクロペンタジエンが含まれるが、これらに限定されることはない。エチレンのコポリマーに対する好ましいコモノマーとしては、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよび/またはオクテンが挙げられる。
【0052】
好ましくは、当該ポリオレフィンは、ホモポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンおよび/またはブテンと共重合したプロピレン、プロピレン、ブテンまたはヘキセンのうちの1つ以上と共重合したエチレン、ならびに所望により選択されるジエン、であるか、または、これらを含む。他の好ましいポリオレフィンとしては、熱可塑性ポリマー、例えば、極低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、高アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、プロピレンおよびエチレンおよび/またはブテンおよび/またはヘキセンのランダムコポリマー、例えばエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ネオプレンなどのエラストマー、ならびに、例えば熱可塑性エラストマーおよびゴム強化プラスチックなどの、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーのブレンド、などが挙げられる。
【0053】
好ましい、メタロセンによって触媒されたポリオレフィンとしては、メタロセンポリエチレン(mPE)およびメタロセンポリプロピレン(mPP)、ならびにその組み合わせまたはブレンド、が挙げられる。mPEおよびmPPのホモポリマーまたはコポリマーは、モノ−またはビス−シクロペンタジエニル遷移金属触媒を、アルモキサンの活性化剤および/または非配位性アニオンと組み合わせて、溶液、スラリー、高圧または気相中で用いて製造することができる。この触媒および活性化剤は担持されていても担持されていなくてもよく、また、シクロペンタジエニル環は置換されていても置換されていなくてもよい。そのような触媒/活性化剤の組み合わせによって製造されたいくつかの商品が、テキサス州ベイタウンのエクソンモービルケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)から、EXCEED(商標)、ACHIEVE(商標)およびEXACT(商標)という商品名で市販されている。かかるホモポリマーおよびコポリマーを製造するための方法および触媒/活性化剤に関するさらなる情報については、PCT特許公開WO94/26816;WO94/03506;WO92/00333;WO91/09882;WO94/03506;米国特許第5,153,157号;第5,198,401号;第5,240,894号;第5,017,714号;第5,324,800号;第5,264,405号;第5,096,867号;第5,507,475号;第5,055,438号;EP277,003;EP277,004;EP129,368;EP520,732;EP426 637;EP573 403;EP520 732;EP495 375;EP500 944;EP570 982およびCA1,268,753を参照のこと。
【0054】
当該膜中の第一ポリマーの総量は、当該膜の重量を基準に、1重量%以上の範囲であってもよい。例えば、当該膜中の第一ポリマーの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、約10重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約70重量%、の範囲であってもよい。当該膜中の第二ポリマーの総量は、第一ポリマーの当該量から、独立して選択される。一実施形態では、当該膜中の第二ポリマーの総量は、当該膜の重量を基準に、1重量%以上の範囲である。例えば、当該膜中の第二ポリマーの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、約10重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約70重量%、の範囲であってもよい。一実施形態では、当該膜は、実質的に等しい量の第一および第二ポリマーを含有し、例えば、当該膜の総重量を基準に、いずれも約50重量%である。
【0055】
一実施形態では、第一ポリマーは、第一ポリエチレンおよび/または第一ポリプロピレンを含む。第二ポリマーは、第二ポリエチレンおよび/または第二ポリプロピレンを含む。第一ポリマー中のポリエチレン(第一ポリエチレン)の総量は、例えば、第一ポリマーの重量を基準に、3重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。第二ポリマー中のポリエチレン(第二ポリエチレン)の総量は、第一ポリマー中のポリエチレンの当該量から、独立して選択されるものであり、例えば、第二ポリマーの重量を基準に、2重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。
【0056】
第一ポリマー中のポリプロピレン(第一ポリプロピレン)の総量は、存在する場合には、第一ポリマーの重量を基準に、低値である約5重量%、10重量%、15重量%、または25重量%から、高値である約25重量%、50重量%、75重量%、または90重量%までの範囲であってもよい。第二ポリマー中のポリプロピレン(第二ポリプロピレン)の総量は、存在する場合には、第二ポリマーの重量を基準に、低値である約5重量%、10重量%、15重量%、または25重量%から、高値である約25重量%、50重量%、75重量%、または90重量%までの範囲であってもよい。
【0057】
当該微多孔膜中のポリエチレンの総量は、存在する場合には、当該微多孔膜の重量を基準に、低値である約10重量%、20重量%、25重量%、または30重量%から、高値である約35重量%、50重量%、75重量%、または90重量%までの範囲であってもよい。当該微多孔膜中のポリプロピレンの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、低値である約10重量%、20重量%、25重量%、または30重量%から、高値である約35重量%、50重量%、75重量%、または90重量%までの範囲であってもよい。
【0058】
一実施形態では、当該多層膜は、4つ以上の層を含有し、このうち、少なくとも2つの層は第一ポリマー(またはポリマーの組み合わせ)から作製され、少なくとも2つの層は第二ポリマー(またはポリマーの組み合わせ)から作製される。第一および第二ポリマーは、それぞれ、例えばポリオレフィンであってもよい。第一および第二ポリマーは、それぞれ、ポリオレフィンの組み合わせ(例えば混合物)であってもよい。例えば、第一ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンとポリプロピレンの両方を含んでいてもよい。第二ポリマーは、第一ポリマーと同じではなく、所望により第一ポリマー中で不混和性である。例えば、第一ポリマーがポリエチレンである場合には、第二ポリマーはポリエチレンであってもよい。但し、第二ポリマーのポリエチレンは、第一ポリマーのポリエチレンと同じポリエチレンではない(例えば、Mwおよび/またはMWDが異なる)ものとする。第一ポリマーがポリマーの組み合わせ、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、である場合には、第二ポリマーは、(i)ポリエチレン、(ii)ポリプロピレン、または(iii)第一ポリマーの組み合わせとは異なるポリプロピレンおよびポリエチレンの組み合わせ(異なるポリエチレンの種類および/もしくは量、異なるポリプロピレンの種類および/もしくは量、またはそれらの、ある組み合わせ)であってもよい。
【0059】
当該微多孔膜中の第一ポリマーの総量は重要ではなく、当該膜の重量を基準に、通常は、1重量%以上の範囲である。例えば、当該膜中の第一ポリマーの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、約10重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約70重量%、の範囲であってもよい。当該微多孔膜中の第二ポリマーの総量は、第一ポリマーの当該量から、独立して選択されるが、重要なパラメータではない。一実施形態では、当該膜中の第二ポリマーの総量は、当該膜の重量を基準に、1重量%以上の範囲である。例えば、当該膜中の第二ポリマーの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、約10重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約70重量%、の範囲であってもよい。一実施形態では、当該膜は、実質的に等しい量の第一および第二ポリマーを含有し、例えば、当該膜の重量を基準に、いずれも約50重量%である。
【0060】
一実施形態では、第一ポリマーは、第一ポリエチレンおよび/または第一ポリプロピレンを含む。第二ポリマーは、第二ポリエチレンおよび/または第二ポリプロピレンを含む。第一ポリマー中のポリエチレン(第一ポリエチレン)の総量は、例えば、第一ポリマーの重量を基準に、0重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。第二ポリマー中のポリエチレン(第二ポリエチレン)の総量は、第一ポリマー中のポリエチレンの当該量から、独立して選択されるものであり、例えば、第二ポリマーの重量を基準に、0重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。
【0061】
第一ポリマー中のポリプロピレン(第一ポリプロピレン)の総量は、例えば、第一ポリマーの重量を基準に、0重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。第二ポリマー中のポリプロピレン(第二ポリプロピレン)の総量は、第一ポリマー中のポリプロピレンの当該量から、独立して選択されるものであり、例えば、第二ポリマーの重量を基準に、0重量%〜100重量%、または25重量%〜75重量%、の範囲であってもよい。
【0062】
当該微多孔膜中のポリエチレンの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、約0重量%〜約100重量%、例えば約20重量%〜約80重量%、の範囲である。当該微多孔膜中のポリプロピレンの総量は、当該微多孔膜の重量を基準に、0重量%〜100重量%、例えば約20重量%〜約80重量%、の範囲である。
【0063】
以下、第一および第二ポリエチレンならびに第一および第二ポリプロピレンについて、より詳細に説明する。
第一ポリエチレン
【0064】
一実施形態では、第一ポリエチレンは、約1×10〜約1.5×10、例えば約1×10〜約5×10、例えば約2×10〜約3×10、の範囲の重量平均分子量(「Mw」)を有するポリエチレンを含む。重要なことではないが、第一ポリエチレンは、例えば、当該ポリエチレン中の10,000個の炭素原子あたり2つ以上の末端不飽和を有していてもよい。所望により、第一ポリエチレンは、138℃以下の、例えば122℃〜138℃の範囲の、融点を有する。末端不飽和は、例えば従来の赤外分光法または核磁気共鳴法によって測定することができる。第一ポリエチレンは、1つ以上の種類のポリエチレンであってもよく、それらは例えば「PE1」、「PE2」、「PE3」等と称される。PE1は、約1×10〜約1.5×10の範囲のMwを有するポリエチレンを含む。所望により、当該PE1は、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンのうちの1つ以上であってもよい。重要なことではないが、HDPEのMwは、1×10未満であってもよく、例えば、約1×10〜約1×10、または約2×10〜約9×10、または約3×10〜約8×10、の範囲であってもよい。一実施形態では、PE1は、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等の通常はエチレンの量に比べて相対的に少ない量の第三α−オレフィンとのコポリマー、のうちの少なくとも1つである。このようなコポリマーは、シングルサイト触媒を用いて製造することができる。一実施形態では、第一ポリマーはPE1を含む。
【0065】
一実施形態では、第一ポリエチレンはPE2を含む。PE2は、1×10以上のMwを有するポリエチレンを含む。例えば、PE2は、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってもよい。一実施形態では、PE2は、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、通常はエチレンの量に比べて相対的に少ない量で存在する第四α−オレフィンとのコポリマー、のうちの少なくとも1つである。この第四α−オレフィンは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンのうちの1つ以上であってもよい。重要なことではないが、PE2のMwは、約1×10〜約15×10、または約1×10〜約5×10、または約1×10〜約3×10の範囲であってもよい。
【0066】
一実施形態では、第一ポリエチレンはPE3を含む。PE3は、115.0℃〜130.0℃の範囲のTm、および5.0×10〜4.0×10の範囲のMwを有する低融点ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの有用なポリエチレンホモポリマーおよびコポリマーは、8.0×10〜2.0×10の範囲のMwを有する。一実施形態では、このポリエチレンホモポリマーまたはコポリマーは、1.0×10〜1.0×10または1.0×10〜7.0×10の範囲のMwを有する。所望により、このエチレン系ポリマーは、50以下の、例えば1.5〜20、約1.5〜約5、または約1.8〜約3.5の範囲の、MWDを有する。
【0067】
特定の実施形態では、当該低融点ポリエチレンは、エチレンと例えばα−オレフィンなどのコモノマーとのコポリマーである。このコモノマーは、通常はエチレンの量に比べて相対的に少ない量で存在する。例えば、このコモノマー量は、100モル%の当該コポリマーを基準に、通常は10モル%未満であり、例えば1.0モル%〜5.0モル%などである。当該コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン、または他のモノマー、特にヘキセン−1もしくはオクテン−1、のうちの1つ以上であってもよい。このようなコポリマーは、シングルサイト触媒などの、任意の適切な触媒を用いて製造することができる。例えば、当該ポリマーは、米国特許第5,084,534号において開示されている方法(例えば当該文献中の実施例27および41に開示されている方法など)に従って製造することができる。ここで、この米国特許第5,084,534号は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0068】
一実施形態では、第一ポリエチレンは、PE1、PE2、PE3またはその組み合わせを含む。この場合には、第一ポリエチレン中のPE2および/またはPE3の量は、第一ポリエチレンの重量を基準に、0重量%よりも多く100重量%よりも少ない範囲、例えば約25重量%〜約75重量%の範囲であってもよい。
第二ポリエチレン
【0069】
第二ポリエチレンは、PE1、PE2、PE3またはその組み合わせを含んでいてもよい。第二ポリエチレンが、PE1ならびにPE2および/またはPE3の組み合わせを含む場合には、第一ポリエチレン中のPE2および/またはPE3の量は、第二ポリエチレンの重量を基準に、0重量%よりも多く100重量%よりも少ない範囲、例えば約25重量%〜約75重量%の範囲であってもよい。
【0070】
一実施形態では、第一および/または第二ポリエチレンは、以下の、独立して選択される特徴のうちの1つ以上を有する:
(1)第一ポリエチレンはPE1を含み、所望によりPE3を含む。
(2)第一ポリエチレンはPE1から本質的になるか、またはPE1からなる。
(3)第一ポリエチレンはPE2を含み、所望によりPE3を含む。
(4)第一ポリエチレンは、PE2から本質的になるか、またはPE2からなる。
(5)第一ポリエチレンはPE1とPE2の両方を含み、所望によりPE3を含む。
(6)第一ポリエチレンはPE1およびPE2から本質的になるか、またはPE1およびPE2からなる。
(7)第一ポリエチレンのPE2はUHMWPEである。
(8)PE1はHDPEである。
(9)PE1は、約1〜約100、または約2〜約15、または4〜約12の範囲の分子量分布(Mw/Mnと定義される「MWD」)を有する。
(10)PE2は、約1〜100の範囲、例えば約2〜8の範囲、のMWDを有する。
第一ポリプロピレン
【0071】
第一ポリプロピレンは、例えば「PP1」であってもよく、このPP1は、(i)プロピレンホモポリマー、または(ii)プロピレンコポリマー、のうちの1つ以上を含む。このプロピレンコポリマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等;ならびに/または例えばブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィン、から製造される、ランダムまたはブロックコポリマーであってもよい。当該コポリマー中のこれらの化学種の量は、好ましくは、例えば耐熱性、耐圧縮性、耐熱収縮性、等の、多層微多孔膜の性質に悪い影響を与えない範囲内である。例えば、その量は、当該コポリマーの重量を基準に、10重量%未満であってもよい。所望により、PP1は、以下の性質のうちの1つ以上を有する:(i)当該PP1は、約1×10〜約4×10、もしくは約3×10〜約3×10の範囲のMwを有し、;(ii)当該PP1は、約1.01〜約100、もしくは約1.1〜約50の範囲のMWDを有し、;(iii)当該PP1はアイソタクチックであり、;(iv)当該PP1は、(示差走査熱量計(DSC)によりJIS K7122に従って測定される)少なくとも約90ジュール/グラム(J/g)、例えば約100〜約120J/gの融解熱「ΔHm」を有し、;(v)当該PP1は、少なくとも約160℃の融解ピーク(第二融解)を有し、(vi)当該PP1は、約230℃の温度および25秒−1の歪み速度(strain rate)で測定した場合に、少なくとも約15のトルートン比を有し、;ならびに/または(vii)当該PP1は、230℃の温度および25秒−1の歪み速度で、少なくとも約50,000Pa秒の伸張粘度(elongational viscosity)を有する。一実施形態では、当該ポリプロピレンのΔHmは、95J/g以上、または100J/g以上、または110J/g以上、または115J/g以上である。
【0072】
一実施形態では、PP1は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:1×10以上の、例えば約3×10〜約1×10の範囲のMw、および90J/g以上、例えば約95〜約125J/g、例えば110J/g〜120J/g、のΔHm、および少なくとも1.5の、例えば約2〜約50または約3〜約6のMWD。MwおよびΔHmに関する上記の条件が満たされてさえいれば、PP1について選択される当該ポリプロピレンの種類は特に重要ではないが、それは、プロピレンホモポリマー、プロピレンとその他のα−オレフィンとのコポリマー、またはその混合物であってもよく、好ましくは当該ホモポリマーである。
第二ポリプロピレン
【0073】
第二ポリプロピレンはPP1を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、第二ポリプロピレン(「PP2」)は、2.0×10以上の、例えば3.0×10以上などのMFR、85.0℃〜130.0℃の範囲のTm、および10℃以下のTe−Tmを有するポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーを含む。所望により、PP2は、3.5×10以上、例えば4.5×10以上などのMFR、例えば、5.0×10〜4.0×10、例えば5.5×10〜3.0×10などの範囲のMFR;および、95.0℃または105.0℃または110.0℃または115.0℃または120.0℃から、123.0℃または124.0℃または125.0℃または127.0℃または130.0℃までの範囲のTmを有する。所望により、PP2は、1.0×10〜2.0×10、例えば1.5×10〜5.0×10などの範囲のMw;50.0以下の、1.4〜20、例えば1.5〜5.0の範囲のMWD;40.0J/g以上の、例えば40.0J/g〜85.0J/gの範囲の、例えば50.0J/g〜75.0J/gなどの範囲の、ΔHm;0.850g/cm〜0.900g/cmの範囲、例えば0.870g/cm〜0.900g/cm、または0.880g/cm〜0.890g/cmなどの範囲の密度;45℃または50℃から、55℃または57℃または60℃までの範囲の結晶化温度(「Tc」)を有する。所望により、PP2は、DSCによって決定される、顕著な肩の無い、単一ピークの融解転移を有する。
【0074】
一実施形態では、PP2は、プロピレン由来の単位と、10.0モル%以下の、例えば1.0モル%〜10.0モル%の、例えばポリオレフィンなどの、1種類以上のコモノマー由来の単位、例えばエチレンおよび/または1種類以上のC〜C12のα−オレフィン由来の1つ以上の単位、とのコポリマーである。「コポリマー」という語には、1つのコモノマー種を用いて製造されるポリマー、2つ以上のコモノマー種を用いて製造されるポリマー、例えばターポリマーなど、が含まれる。所望により、PP2は、3.0モル%〜15モル%の範囲、または4.0モル%〜14モル%の範囲、例えば5.0モル%〜13モル%の範囲、例えば6.0モル%〜10.0モル%などの範囲のコモノマー含有量を有するポリプロピレンコポリマーである。所望により、2種類以上のコモノマーが存在する場合には、特定の1種類のコモノマーの量は、1.0モル%未満であり、合わせたコモノマー含有量は、1.0モル%以上である。適切なコポリマーの、非限定的な例としては、プロピレン−エチレン、プロピレン−ブテン、プロピレン−ヘキセン、プロピレン−ヘキセン、プロピレン−オクテン、プロピレン−エチレン−オクテン、プロピレン−エチレン−ヘキセンおよびプロピレン−エチレン−ブテンのポリマーが挙げられる。特定の一実施形態では、当該コモノマーは、ヘキセンおよび/またはオクテンを含む。
【0075】
一実施形態では、PP2は、プロピレンと、エチレン、オクテン、またはヘキセンのコモノマーのうちの少なくとも1つとのコポリマーであり、ここで、PP2は、1.5×10〜5.0×10の範囲のMw、および1.8〜3.5の範囲のMWD、100.0℃〜126.0℃の範囲のTm、ならびに2.0℃〜4.0℃の範囲のTe−Tmを有する。
【0076】
PP2は、例えば、任意の従来の重合プロセスによって製造することができる。所望により、当該PP2は、完全混合型(well-mixed)連続供給重合反応器中で行なわれる一段階の定常状態重合プロセスにおいて製造される。当該重合は溶液中で行うことができるが、他の重合手順、例えば、一段階の重合および連続供給反応器の要件を満たす、気相重合、超臨界重合、またはスラリー重合など、を用いることもできる。PP2は、プロピレンおよび所望により1種類以上の他のα−オレフィンの混合物を、キラル触媒(例えばキラルメタロセン)の存在下で重合することによって調製することができる。
【0077】
当該PP2は、チーグラー−ナッタまたはシングルサイト重合触媒を用いる重合プロセスにおいて製造することができる。所望により、当該ポリプロピレンは、メタロセン触媒を用いる重合プロセスにおいて製造する。例えば、PP2は、米国特許第5,084,534号において開示されている方法(例えば当該文献中の実施例27および41に開示されている方法など)に従って製造することができる。ここで、この米国特許第5,084,534号は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。一実施形態では、第二ポリマーは、PP1、PP2、PE1、PE2、およびPE3のうちの1つ以上を含有する。但し、この第二ポリマーは、第一ポリマーとは異なるポリマーまたはポリマーの組み合わせであるものとする。
【0078】
本発明の微多孔膜は、コポリマー、無機種(例えばケイ素原子および/またはアルミニウム原子を含有する化学種など)、および/または耐熱性ポリマー、例えばPCT特許公開WO2008/016174に記載されているものなど、を含有していてもよいが、これらは必要なことではない。一実施形態では、当該多層膜は、このような材料を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、当該微多孔膜中のこのような材料の量が、当該微多孔膜の総重量を基準に、約1重量%未満、例えば約0.1重量%未満、または約0.01重量%未満である、ということを意味する。
第一および第二ポリマーの特徴決定をするための方法
【0079】
Tmは、JIS K7122に従って測定する。ポリマー試料(210℃でメルトプレスした0.5mm厚の成形物)を周囲温度で、示差走査熱量計(パーキンエルマー社から市販されているPyris Diamond DSC)の試料ホルダー中に入れ、230℃で1分間、窒素雰囲気中で加熱処理し、30℃へと10℃/分で冷却し、30℃で1分間保持し、230℃へと10℃/分の速度で加熱する。Tmは、DSC曲線から決定される、融解の範囲内の、最も大きい熱吸収の温度、と定義される。ポリマーは、融解終了転移(end-of-melt transition)、および または第一のピークに近接する第二の融解ピーク(複数)を示すことがあるが、本明細書における目的のために、そのような第二の融解ピーク(複数)を共に単一の融点とみなすとともに、これらのピークのうちの最も高いものをTmと考えるものとする。
【0080】
MwおよびMWDは、示差屈折率検出器(DRI)を備えた、高温サイズ排除クロマトグラフ(High Temperature Size Exclusion Chromatograph)、すなわち「SEC」(ポリマーラボラトリーズ社製GPC PL 220)、を用いて決定する。測定は、Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDの決定のために、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社から市販されている)を用いる。ポリエチレンの場合には、名目上の流速は0.5cm/分であり、;名目上の注入量は300μLであり、;ならびにトランスファーライン、カラム、および当該DRI検出器を、145℃に維持したオーブンに入れる。ポリプロピレンの場合には、名目上の流速は1.0cm/分であり、;名目上の注入量は300μLであり、;ならびにトランスファーライン、カラム、および当該DRI検出器を、160℃に維持したオーブンに入れる。
【0081】
使用するGPC溶媒は、およそ1,000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製、試薬グレード(reagent grade)の1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。当該SECへ導入する前に、このTCBを、オンラインデガッサーを用いて、脱気した。SEC溶出液と同じ溶媒を使用する。乾いたポリマーをガラス製容器中に入れ、所望の量の当該TCB溶媒を添加し、次いで、この混合物を160℃で連続的に撹拌しながら約2時間加熱することによって、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液の濃度は、0.25〜0.75mg/mlであった。試料溶液は、GPCへ注入する前に、2μmフィルターにより、SP260型Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社から市販されている)を用いて、オフラインで濾過する。
【0082】
当該カラムセットの分離効率は、Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種類の個々のポリスチレン標準を用いて作成した検量線によって較正する。これらのポリスチレン標準は、ポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)から入手する。各PS標準に対する当該DRIシグナルのピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを2次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp 対 保持容量)を作成する。試料は、Wave Metrics社から市販されているIGOR Proを用いて分析する。
【0083】
CDBIは、組成が、ポリエチレンの組成分布における中央値(median)コモノマー組成の50%以内である、ポリエチレンコポリマーのパーセントと定義される。この「組成分布」は、以下の手順に従って測定することができる。約30gの当該コポリマーを切って、一辺あたり約1/8インチの小さな立方体にする。これら立方体を、スクリューキャップで蓋をした、壁の厚いガラス瓶の中へ、50mgの、チバガイギー社から市販されている抗酸化剤Irganox 1076とともに、投入する。次いで、425mlのヘキサン(直鎖状異性体(normal isomer)とイソ異性体(iso isomer)との原則的な(principle)混合物)をこの瓶の中身へと加え、この密閉した瓶を、約23℃で約24時間保持する。この期間の終わりに、この溶液をデカントし、その残渣を、追加のヘキサンで、さらに24時間処理する。この期間の終わりに、この2つのヘキサン溶液を合わせ、蒸発させて、23℃で可溶性の当該コポリマーの残渣を得る。この残渣に、体積を425mLにするのに十分なヘキサンを加え、この瓶を、約31℃で24時間、覆いをした循環水浴中で保持する。この可溶性のコポリマーをデカントし、約31℃にて、さらに24時間の間、追加量のヘキサンを加え、その後、デカントする。このようにして、40℃、48℃、55℃、および62℃で可溶性の当該コポリマー成分の分画を、段階間でおよそ8℃の温度上昇にて、得る。60℃を超える温度のための当該溶媒として、ヘキサンの代わりにヘプタンを用いる場合には、95℃への温度の上昇を許容することができる。この可溶性のコポリマー分画を、乾燥させ、秤量し、組成について、例えば重量パーセントエチレン含有量で、分析する。近接する温度範囲において試料から得た可溶性分画を、「近接分画」とする。少なくとも75重量%のコポリマーが2つの近接分画において単離され、それぞれの分画の組成の差が、当該コポリマーの平均重量%モノマー含有量の20%以下である場合に、コポリマーが「狭い組成分布」を有する、と言う。
【0084】
当該ポリプロピレンのMwおよびMnは、PCT特許公開WO2007/132942に開示されている方法によって決定する。このPCT特許公開WO2007/132942は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0085】
当該ポリプロピレンのΔHmは、PCT特許公開WO2007/132942に開示されている方法によって決定する。このPCT特許公開WO2007/132942は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0086】
メソペンタッド分率は、100MHzにて125℃においてNMR分光計Varian VXR 400上で得た13C NMRデータから決定することができる。90℃パルス、3.0秒のデータ取得時間、および20秒のパルス遅延を用いる。スペクトルは、広帯域デカップルされ、ゲート付きデカップリング(gated decoupling)なしで取得される。同様の緩和時間および核オーバーハウザー効果が、ポリプロピレンのメチル共鳴に対して期待されるが、これらのメチル共鳴は、通常は、定量目的で用いられる唯一のホモポリマー共鳴である。収集される典型的な過渡現象数(number of transients)は2,500である。当該試料を、15重量%の濃度で、テトラクロロエタン−d中に溶解する。内部テトラメチルシラン標準に関し、すべてのスペクトル周波数を記録する。ポリプロピレンホモポリマーの場合には、mmmmについては、内部テトラメチルシラン標準について報告されている文献値である21.855ppmに近い、21.81ppmに関してメチル共鳴を記録する。用いるペンタッド帰属(pentad assignments)は十分に確立されている。
【0087】
抽出可能な化学種の量(例えば比較的低分子量および/または非晶質の材料
など、例えば非晶質ポリエチレン)は、以下の手順に従い、キシレン中での、135℃における溶解度により決定する。2グラムの試料(ペレットの形または粉砕したペレットの形のいずれかのもの)を300mlの三角フラスコ中へと量り分ける。200mlのキシレンをこの三角フラスコ中に撹拌バーとともに注ぎ、このフラスコを加熱油浴中で確保する。この加熱油浴を作動させ、このフラスコを油浴中に135℃で約15分間入れておくことによって当該ポリマーを融解させる。融解したら、加熱を中止するが、冷却プロセス中は撹拌を継続する。この溶解したポリマーを一晩、自発的に冷却しておく。沈殿物をテフロン濾紙で濾過し、次いで、真空下で、90℃にて、乾燥させる。キシレン可溶物の量は、室温における、全ポリマー試料(「A」)から沈殿物(「B」)を差し引いた重量パーセント[可溶物含有量=((A−B)/A)×100]を算出することによって決定する。
第一および第二希釈剤
【0088】
当該微多孔膜は、第一ポリマーと少なくとも1種類の第一希釈剤とを混合して第一混合物を作製すること、および、第二ポリマーと少なくとも1種類の第二希釈剤とを混合して第二混合物を作製することによって製造する。第一積層物(例えば押出物)はこれら混合物から作製され、第二層を含む少なくとも1つの層を含む。当該膜は、当該積層物を操作して、第一厚さよりも大きい第二厚さを有し、かつ、第一積層物と比較して層の数が増加した、第二積層物を形成すること、;この第二積層物を成形して、第二厚さを減少させること、;ならびに、第一および第二希釈剤の少なくとも一部を、この成形した第二積層物から除去して、当該多層微多孔膜を製造すること、によって製造することができる。第一および第二希釈剤は混和性である。所望により、第一および第二希釈剤は、第一および第二ポリマーとともに、分散可能であるか、溶解可能であるか、またはスラリーを形成可能であり、例えば、第一および第二希釈剤は、第一および第二ポリマーのための溶媒であってもよい。この場合には、これら希釈剤は「膜形成」溶媒と称されることもある。第一希釈剤は、第二希釈剤と同じであってもよい。
【0089】
一実施形態では、第一および第二希釈剤は、例えば流動パラフィンなどの、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンのための溶媒である。第一および第二希釈剤は、PCT公開WO2008/016174において記載されているものの中から選択することができる。このPCT公開WO2008/016174は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。これら希釈剤は、米国特許出願公開第2006/0103055号において記載されているもの、すなわち当該ポリマーの結晶化温度以上の温度で熱誘起型の液−液相分離を起こす希釈剤、の中からも選択することができる。
[3]当該微多孔膜を製造するための方法
【0090】
一実施形態では、第一および第二ポリマーは、前述のポリマーの樹脂、例えば、PE1、PE2、および/またはPP1の樹脂、から作製する。第一ポリマーを少なくとも1種類の第一希釈剤と混合して第一混合物を形成し、第二ポリマーを少なくとも1種類の第二希釈剤と混合して第二混合物を形成する。少なくとも2つの層を有する第一積層物を、この第一および第二混合物から、例えば、押し出し、共押出し、または積層によって形成する。ここでは、この第一積層物は、第一混合物を含有する少なくとも1つの層と、第二混合物を含有する第二の層とを含む。
【0091】
以下に続く説明では、この第一積層物の製造について共押出しの観点から記載するが、製造方法はこれに限定されない。例えば流延および積層などの従来法を含む他の方法を用いてもよい。
【0092】
一実施形態では、微多孔膜は、:
(1)第一ポリマーと少なくとも1種類の第一希釈剤とを混合して第一混合物を形成すること、および、少なくとも1種類の第二ポリマーと、第一希釈剤に混和性の少なくとも1種類の第二希釈剤とを混合すること(ここでは第一希釈剤と第二希釈剤とは第一および第二ポリマーに混和性であるものとする);
(2)この第一および第二混合物を、ダイを通して共押出しし、第一厚さを有する第一積層押出物を形成すること;
(3)この第一積層押出物を操作して、第一厚さよりも大きい第二厚さを有し、かつ、第一積層押出物と比較して層の数が増加した第二積層押出物を形成すること;
(4)この第二積層押出物を成形して、第二厚さを、例えば、およそ第一厚さ以下まで、減少させること;ならびに
(5)希釈剤の少なくとも一部を、この成形した第二積層押出物から除去して、当該多層微多孔膜を製造すること、
によって製造する。この、形成、操作、または成形する時間の長さは重要ではない。例えば、この、形成、操作、および成形のそれぞれは、0.3秒〜100秒の範囲の時間にわたって行なってもよい。
【0093】
これらの工程に加え、1つ以上の所望により実施される冷却工程(2a)を、工程(2)の後の1つ以上の時点で行なってもよく、また、所望により実施される当該押出物を延伸するための工程(4a)を、工程(4)と(5)との間に行ってもよく、また、所望により実施される当該膜を乾燥させるための工程(5a)を、工程(5)の後に行ってもよく、また、所望により実施される当該微多孔膜を延伸するための工程(6)を、工程(5)の後に行なってよく、また、1つ以上の所望により実施される熱処理工程(7)を、工程(5)の後に行ってもよい。特に断りのない限り、これらの所望により実施される工程の順序は重要ではない。
1.第一および第二混合物の調製
(A)第一混合物の調製
【0094】
第一ポリマーは、上述のポリマー樹脂、例えばPE1およびPE2およびPP1のうちの1つ以上、を含み、これを、第一希釈剤とともに、例えば乾式混合または融解ブレンドにより混合することによって、第一混合物を得ることができる。第一混合物は、添加剤、例えば1種類以上の抗酸化剤など、を含有してもよい。一実施形態では、そのような添加剤の量は、第一混合物の重量を基準に、約1重量%を超えないものとする。第一希釈剤、混合条件、押し出し条件等の選択は、例えば、PCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
【0095】
第一混合物中の第一ポリマーの量は、第一混合物中の第一ポリマーと希釈剤とを合わせた重量を基準に、25重量%〜約99重量%、例えば約5重量%〜約40重量%、または15重量%〜約35重量%の範囲であってもよい。
(B)第二混合物の調製
【0096】
第二混合物は、第一混合物を調製するために用いる同じ方法によって調製することができる。例えば、第二混合物は、当該ポリマー樹脂を第二希釈剤とともに融解ブレンドすることによって調製することができる。第二希釈剤は、第一希釈剤と同じ希釈剤の中から選択することができる。第二希釈剤は、第一希釈剤と同じであってもよく、また、第一希釈剤と適合性のものでなければならない。
【0097】
第二混合物中の第二ポリマーの量は、第二ポリマーと希釈剤とを合わせた重量を基準に、25重量%〜約99重量%、例えば約5重量%〜約40重量%、または15重量%〜約35重量%の範囲であってもよい。当該プロセス中の都合のよい任意の時点で、例えば押し出しの前または最中に、第一ポリマーを第一希釈剤と混合してもよく、第二ポリマーを第二希釈剤と混合してもよい。
2.押し出し
【0098】
一実施形態では、第一混合物を第二混合物とともに共押出しし、第一ポリマー、第二ポリマー、第一希釈剤および第二希釈剤を含有する界面層により、(第二混合物から形成された)第二押出物層の平らな表面から隔てられている(第一混合物から形成された)第一押出物層の平らな表面を有する、第一厚さの、第一積層押出物を作製する。ダイ(1つまたは複数)および押し出し条件の選択は、例えば、PCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。第一および第二混合物は、通常、押し出しの際に高温に曝される(「押し出し温度」)。例えば、この押し出し温度は、≧当該押出物中の融点が高い方のポリマー(第一ポリマーまたは第二ポリマー)の融点(「Tm」)、である。一実施形態では、押し出し温度は、Tm+10℃〜Tm+120℃の範囲、例えば約170℃〜約230℃の範囲である。
【0099】
連続および半連続処理において、押し出し(およびその後の、押出物および膜の処理)の方向を、機械方向、または「MD」と呼ぶ。この機械方向と、押出物(および膜)の厚さとの両方に直角である方向を、横方向、または「TD」と呼ぶ。押出物の平らな表面(例えば上面と底面)は、MDとTDとを含有する平面によって定義される。
【0100】
押し出しを用いることによって、2つの層を有する膜を作製することができるが、押し出し工程はそれに限定されない。例えば、複数のダイおよび/またはダイアセンブリを用いることで、前述の実施形態の押し出し法を用いて4つ以上の層を有する第一積層押出物を作製することができる。このような第一積層押出物では、各外層または内層は、第一混合物および/または第二混合物を用いて作製することができる。
【0101】
第一積層押出物を作製するための一実施形態を、図1にて概略的に説明する。第一および第二混合物(100および102)は、多層フィードブロック104へと導かれる。通常、融解および初期供給は、各混合物に対して1つの押出機を使用して達成する。例えば、第一混合物100は押出機101へと導くことができ、かつ、第二混合物102は第二押出機103へと独立して導くことができる。多層押出物105がフィードブロック104から導出される。多層フィードブロックは従来型のものであり、例えば、米国特許第6,827,886号;第3,773,882号;および第3,884,606号に記載されている。これらの特許文献は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。当該第一積層押出物および当該微多孔膜は、コポリマー、無機種(例えばケイ素原子および/またはアルミニウム原子を含有する化学種など)、および/または耐熱性ポリマー、例えばPCT公開WO2008/016174に記載されているものなど、を含有していてもよいが、これらは必要なことではない。一実施形態では、当該第一積層押出物および当該膜は、このような材料を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、当該微多孔膜中のこのような材料の量が、当該押出物を作製するために使用するポリマーの総重量を基準に、約1重量%未満、例えば0.1重量%未満、例えば0.01重量%未満である、ということを意味する。
3.第二積層押出物の形成
【0102】
第一積層押出物の第一厚さよりも大きい第二厚さおよび第一積層押出物よりも多い数の層を有する第二積層押出物を作製することのできる任意の方法を用いて、第二押出物を作製することができる。例えば、第一押出物を(例えばMDに沿って)切って2つ以上の部分にし、次いで、これらの部分を面と面とで接触させた状態で積み重ねてもよい。あるいは、第一押出物を(例えばMDに沿って)1回以上折り畳み、この第一押出物のこれら折り畳み部分を面と面とで接触するように配置させてもよい。第二押出物を作製するために第一押出物の厚さおよびその層数を増加させることを、「多層化」と呼ぶことができる。従来の多層化の装置、例えば米国特許第5,202,074号および第5,628,950号に記載されているものなど、は本発明の多層化工程に適している。これらの特許文献は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。従来の多層化プロセスとは異なり、本発明の多層化工程には、ポリマーならびに相当(例えば、これらポリマーと希釈剤とを合わせた重量を基準に、1重量%よりも大きいか、または5重量%よりも大きい)量の第一および/または第二希釈剤を含有する押出物を作製することが含まれる。上述したように、当該希釈剤は、第一ポリマーと第二ポリマーの両方と適合性のものである(か、または第一ポリマーと第二ポリマーの両方に対して優れた溶媒である)ので、第一押出物の第一部分を第一押出物の第二部分と合わせることにより、それらの間に位置する、同じ界面接触時間で希釈剤なしで作製したブレンド領域に比べて、より幅の広い領域またはブレンド領域が生じる。このブレンド領域は、第一および第二希釈剤の存在下、多層化条件下における第一および第二ポリマーの相互拡散に起因するものである。
【0103】
一実施形態では、第一押出物は、多層化の際に、高温に曝される(「多層化温度」)。例えば、この多層化温度は、当該押出物中の最も高い融点を有するポリマーのTm以上である。一実施形態では、多層化温度は、Tm+10℃〜Tm+120℃の範囲である。一実施形態では、当該押出物は、当該押し出し温度と同じくらい(+/−5℃)の温度に曝される。
【0104】
再び図1を参照すると、従来の多層化装置(layer multiplier)106を用いて、第一積層押出物の第一部分および第二部分を、機械方向に沿って、押出物の平らな表面に直角の直線上で分けることができる。この多層化装置により、1つの部分は、第二の部分のわきへ、または上へと、面と面とで接触した状態で、向きを変え、かつ、「積み重なり」、その結果、押し出される層の数が増加し、第二積層押出物が生じる。所望により、非対称多層化装置(asymmetric multiplier)を用いて、第二積層押出物における層の当該積み重ね全体にわたる層の厚さの偏差を導入し、かつ、層の厚さの勾配を生じさせてもよい。所望により、ポリマーと希釈剤との第三混合物108(スキン層用)をスキン層フィードブロック110へと導くことにより、1つ以上のスキン層111を第二積層押出物の外層に塗布してもよい。これらスキン層は、例えばPE1および2ならびにPP1などの、第一および第二混合物を作製するのに使用する同じポリマーおよび希釈剤から作製することができるが、これは必要なことではない。
【0105】
所望する場合には、さらなる多層化工程(図には掲載されていない)を行なって、第二積層押出物中の層の数を増加させてもよい。これらのさらなる多層化工程は、第一および第二ポリマーを相溶化するのに十分な希釈剤(通常は、押出物の重量を基準に、少なくとも10重量%)が存在しさえすれば、第一多層化工程後の当該プロセス中の任意の時点において(例えば、工程4の成形の前または後に)行うことができる。
【0106】
第一および第二ポリマーは、ともに、当該希釈剤(1種類または複数種類)に適合性または混和性であるので、多層化の際に相互拡散(interdiffusuion)が生じ、それにより、第一または第二積層押出物の第一部分の平らな表面が、第二部分の平らな表面上に層をなすたびに、新たなブレンド領域が形成される。ブレンド領域は、当該ブレンド領域に隣接する(かつ、面と面とで接触している)層中のポリマーおよび希釈剤から形成される。これらブレンド領域中の第一および第二ポリマーの厚さおよび相対量(および、厚さ方向におけるその勾配)は、多層化および成形の際の、層接触時間、第一および第二ポリマー用に選択されるポリマー種、希釈剤、ならびに押出物温度に大きく依存する。
【0107】
2つの層およびその間にある界面の層を有する第一積層押出物については、多層化の結果、第二積層押出物において合計で2(n+2)−1個の別々の領域(層にブレンド領域をプラスした数)が生じる。ここで「n」は1以上の整数であり、多層化の数を表すものである。第一および第二ポリマーが、希釈剤の非存在下で、不混和性(フローリーパラメータχ≧0;例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)であるか、または適合性に乏しい場合であっても、そのようになる。例えば、ポリエチレンの層とアイソタクチックポリプロピレンの層との間の境界は、これらポリマーのブレンドおよび共押出フィルムにおいておよそ4nmの厚さを有する。不混和性のポリマーを用い、かつ、適合性の希釈剤を用いない、従来の多層化プロセスでは、2n+1個の別々の領域が生じる。このような従来のプロセスによって作製されたフィルムは、ブレンド領域を有しない(すなわち、25nm以上の厚さを有する層−層境界がない)。
【0108】
一実施形態では、当該微多孔性高分子膜は、15個の組成上の領域(8つの層プラス7つのブレンド領域)を有する八層膜である。第一および第二混合物の初期押し出し(または例えば流延)により、図7中に示されているような、2つの層と1つのブレンド領域とを有する第一押出物が生じ、ここで、層701は第一混合物から作製されるものであり、層702は第二混合物から作製されるものである。層703は、押し出しプロセスの際の第一および第二混合物の拡散に起因するものである。第一多層化の結果、図7中に示されているような七層膜が生じ、ここで、層701(a)は第一混合物から作製されるものであり、層702(a)は第二混合物から作製されるものである。ブレンド領域703(a)は、近接層701(a)および702(a)の部分を吸収し続け、新たなブレンド領域704は、当該積み重ねが出会う界面を形成する。第二多層化の結果、15層の押出物が生じ、ここで、層701(b)は第一混合物から作製されるものであり、層702(b)は、第二混合物から作製される第三世代層である。第三世代ブレンド領域703(b)および第二世代ブレンド領域704(a)は成長し続け、ブレンド領域705が形成される。内側層701(a〜b)および702(a〜b)は両方の表面からの拡散を経験するため、これらは、図7中に示されているような外層701(a〜b)および702(a〜b)に先んじて消費される。ここで、層706〜718はブレンド領域であり、層701(m)および702(m)は、それぞれ、第一および第二ポリマー混合物の残留層を構成するものである。拡散条件下におけるさらなる多層化により、外側層、例えば外側層701(a、b、m)および702(a、b、m)、も消費されてブレンド領域へと変換された押出物が生じる。所望する場合には、追加の多層化は、単独でまたは工程(4)の成形と組み合わせてのいずれかで、行なってもよい。所望により、当該膜は対称膜であり、例えば対称面を有するものである。当該膜が対称な八層膜である一実施形態では、対称面は第四ブレンド領域を二分し、ここでは、第四ブレンド領域の50重量%は、第四ブレンド領域の、第一外層に面した側に位置し、かつ、第四ブレンド領域の50重量%は、第四ブレンド領域の、第二外層に面した側に位置する。所望により、1つ以上の追加の層(およびブレンド領域)が、第一および/または第二外層と膜の平らな表面との間に位置してもよい。
【0109】
この実施形態では、n回の多層化後の押出物中の層の数は、2n+1に等しい。押出物中のブレンド領域の数は、2n+1−1に等しい。押出物中の別々の領域(層 プラス ブレンド領域)の合計数は、第一および第二ポリマーが不混和性のポリマーである場合であっても、2n+2−1に等しい。
【0110】
押出物のブレンド領域の厚さは、内層接触時間「t」に依存する。第一および第二ポリマーの交互に現れる層の多層構造について考える。第一および第二ポリマーをともに導いて、時間t=0においてそれぞれ厚さL1およびL2を有する層を形成する場合には、シャープな界面がL1とL2との間に形成される。t>0では、第一混合物を含有するL1と第二混合物を含有するL2とが互いに相互拡散し、よって、それらの界面は、厚さTを有するブレンド領域へと成長する。この、厚さTは、接触時間と拡散係数との関数であり、第一混合物を含有する層と第二混合物を含有する層との間に(例えば、L1とL2との間に)形成されたブレンド領域についての、層の厚さがブレンド領域よりもずっと厚いという仮定の、簡易化した一次元拡散モデルを用いて推定することができる。パラメータφは、ブレンド領域中の第一混合物の体積濃度と定義され、ここで、φは、0(L2)〜1(L1)の範囲である。言い換えれば、φ=1は均質な第一混合物の存在を示し、φ=0は均質な第二混合物を示す。ブレンド領域の厚さ「T」は、次の式によって定義される
【数2】

【0111】
第一および第二混合物について一定の拡散係数Dを仮定すれば、当該拡散式を用いて、φの値を、ブレンド領域における厚さ(「x」)の関数として決定することができ、ここでは、初期条件(L2ではt=0においてφがゼロであり、L1ではt=0においてφ=1である「I.C.」)が与えられる。空間的境界条件(spatial boundary condition)は、φ(−∞、t)=0;およびφ(+∞、t)=1である。
【数3】

φL1に対する解析解は次のようになる:
【数4】

【0112】
界面の厚さは、押出物中に適合性の溶媒が存在する限り、φについてのこの式に従って増加し続ける。拡散定数Dは、従来の方法によって決定することができる。第一ポリマーの第二領域中への拡散は、第一ポリマーが、第二ポリマーとは異なるポリマーまたはポリマーの混合物であるため、濃度勾配によって駆動されると考えられる。例えば、適合性の溶媒、例えば流動パラフィンなど、が存在する場合には、共通のポリオレフィンの混合物に対する多層化温度におけるDの値は、通常、10−11/秒〜10−15/秒の範囲である。ポリエチレンとポリプロピレンの両方に対する1.3×10−13/秒のDについては、例えば、L1がポリエチレンを含有し、L2がポリプロピレンを含有し、かつ、希釈剤が流動パラフィンである場合には、10秒の接触時間により、厚さT=4.5μmを有するブレンド領域が生じる。当該押出物のブレンド領域の厚さは、通常、0.3μm以上であり、例えば0.5μm〜100μmまたは0.7μm〜10μmの範囲である。
【0113】
(従来の多層化にみられるように)相溶性(compatibilizing)希釈剤が存在しない場合には、ポリエチレンとポリプロピレンとの不混和性によって、相互拡散がほとんど、または、全くない(2*Rgよりも小さい)シャープな内層境界の形成が引き起こされるであろう。この場合(従来の場合)には、層間の境界は、それらはともかく存在すべきであるが、一定の、または極限の、10Å〜200Åの範囲の厚さを有するであろう。
4.第二積層押出物の成形
【0114】
第二積層押出物を成形して、その厚さを減少させることができる。所望により、第二積層押出物の積層構造、すなわち、互いに対しておよび押出物の平らな面に対して実質的に平行な(例えば、約1°以内の)層は、成形の間、保存される。厚さの減少量は重要ではなく、例えば、第一積層押出物の厚さの、125%〜約75%、例えば、105%〜95%の範囲であってもよい。一実施形態では、当該成形により、第二積層押出物の厚さは、第一積層押出物の厚さにほぼ等しくなるまで減少する。第二積層押出物の厚さの減少は、通常は、第二積層押出物の重量を基準に、単位長さあたりの重量で、約10%よりも大きい減少を生じることなく行われ;したがって、通常は、成形によって、第二積層押出物の幅(TDに測定される)に、比例的増加が生じる。一例として、当該成形は、ダイ112(1つまたは複数)を用いて達成することができる。当該成形は、当該押出物を、当該押出物中の最も高い融点を有するポリマー(第一または第二ポリマー)のTm以上の温度(「成形温度」)に曝しながら行ってもよい。一実施形態では、この成形温度は、Tm+10℃〜Tm+140℃の範囲である。一実施形態では、当該押出物は、押し出し温度と同じくらい(+/−5℃)の温度に曝される。別の実施形態では、第二積層押出物(または第三、第四、等の積層押出物)を、成形の前に、さらなる多層化に供する。
【0115】
多層化の際にスキン層が共押出される一実施形態では、フィルムはスキン層フィードブロック110およびダイ112(1つまたは複数)に通して導かれるため、フィルムの上側表面および/または下側表面上で流動するスキン層を有することがほとんどの場合において望ましい。スキン層が共押出されない場合には、押出物の外層がスキン層になる。ダイ(1つまたは複数)から出る押出物は、通常は融解した形態である。
【0116】
第二積層押出物をダイの中へと導くことにより、第二積層押出物の層におけるポリマーの繊維状の形態、すなわち第一押出物の均質な形態とは異なる形態、を生じるのに十分な圧縮剪断(compressive shear)が行われる、と考えられる。この繊維状構造は、望ましいものであり、微多孔フィルムを製造するための従来の「湿式」プロセスにおいて、押出物を、例えばテンター型装置にて延伸することによって生じるものである。第一押出物の成形によってこの望ましい繊維状構造が生じるため、成形により、延伸の(全部ではない場合には)少なくとも一部が不要となるが、これは、そうでなければ、従来の湿式処理法においては必要なものである。
【0117】
液体透過性のミクロ層膜を製造するための代替的な実施形態も、第一および第二ポリマーを含む混合物を押し出すことで開始し、第一実施形態の記載にあるように、多層押出物を得る。図8Aは、第二実施形態に従って当該ミクロ層膜を形成するための共押出し装置10を図示したものである。この装置は、それぞれの定量ポンプ16および18を通って共押出しブロック20へと連結された1対の向かい合ったスクリュー押出機12および14を含む。複数の多層化素子(multiplying element)22a〜gは、当該共押出しブロックから連続して伸びており、また、所望により、スクリュー押出機12および14にほぼ直角に配向される。これら多層化素子のそれぞれは、当該共押出し装置の、ポリマーと希釈剤との混合物の通路中に配置されたダイ素子(die element)24を含む。最後の多層化素子22gは、吐出しノズル25に取り付けられている。多層化された押出物は、吐出しノズル25を通って押し出る。
【0118】
装置10によって行なわれる多層化プロセスの概略図が図8Bにおいて図示されており、ここでは、多層化素子22a〜gのそれぞれの中に配置されたダイ素子24の構造も図示されている。各ダイ素子24により、ポリマーと希釈剤との混合物の通路は2つの通路26および28へと分割され、隣接するブロック31および32は、分割壁33により隔てられる。ブロック31および32のそれぞれは、傾斜路34および拡張台(expansion platform)36を含む。それぞれのダイ素子ブロック31および32の傾斜路34は、メルトフロー通路の相対する側から、メルトフロー通路の中心に向かって傾斜している。拡張台36は、もう一方の上部にある傾斜路34から伸びている。
【0119】
このもう一つの実施形態では、当該液体透過性のミクロ層膜は、装置10を用い、第一ポリマーと第一希釈剤とを含む第一混合物および第二ポリマーと第二希釈剤とを含む第二混合物を押し出すことによって製造する。第一混合物は、第一の一軸スクリュー押出機12を通って共押出しブロック20中へと押し出され、第二混合物は、第二の一軸スクリュー押出機14を通って同じ共押出しブロック20中へと押し出される。この共押出しブロック20では、例えば図8B中の段階Aで図示されているような二層押出物38が、第一混合物を含む層42が第二混合物を含む層40の上にある状態で、形成される。次いで、この積層押出物は、一連の多層化素子22a〜gに通して押し出されて、256個のミクロ層を有する押出物が形成され、ここでは、第一混合物を含むミクロ層は第二混合物を含むミクロ層と交互に現れ、ブレンド領域はそれら交互に現れるミクロ層の間にある。この積層押出物38は第一多層化素子22aを通して押し出されるため、ダイ素子24の分割壁33により、この積層押出物38は、図8B中の段階Bにおいて示されているように、それぞれが第一ポリマーを含む層40と第二ポリマーを含む層42とを有する2つの部分44および46へと(所望により半分に)分けられる。この積層押出物38は分割されるため、当該半分44および46のそれぞれは、それぞれの傾斜路34に沿って導かれ、それぞれの拡張台36に沿ってダイ素子24の外へと導かれる。当該積層押出物のこの再配置(押出物の厚さを減少させるための操作)は、図8B中の段階Cに図示されている。積層押出物38の分割部分がダイ素子24から出る場合には、拡張台36により、分割部分44および46は、もう一方の上部に配置され、実質的に平行な積み重ね配列を有する押出物50が形成される。当該積層押出物が多層化素子22b〜gのそれぞれを通って進む際には、このプロセスが繰り返される。当該押出物が吐出しノズル25を通って吐出されるときには、当該押出物は、例えば256個のミクロ層を含む。
【0120】
よって、当該第二実施形態は、第一実施形態とは、これらの積層押出物部分が積み重ねられる前に当該部分が成形され(押出物の厚さが減少し、かつ、面積が増加し)て、より多い層の数を有する積層押出物が形成される、という点で異なる。第二実施形態におけるプロセスパラメータ、例えば、ポリマーおよび希釈剤の選択および量、成形パラメータ、プロセス温度、等、は、第一実施形態の類似箇所に記載されていものと同じであってもよい。第二実施形態のミクロ層装置は、Mueller et al.による、Novel Structures By Microlayer Extrusion-Talc-Filled PP, PC/SAN, and HDPE-LLDPEという表題の論文において、より詳細に記載されている。同様のプロセスが、米国特許第3,576,707号;第3,051,453号;および第6,261,674号に記載されており、これら文献の開示内容は、本明細書において参照によりその全体が組み入れられるものとする。
【0121】
第一および第二実施形態において、所望により実施される冷却および延伸工程を用いてもよい。例えば、押出物を、成形後に冷却してもよい。冷却速度および冷却温度は特に重要ではない。例えば、当該積層押出物を、少なくとも約50℃/分の冷却速度で、それの温度(冷却温度)が当該押出物のゲル化温度とほぼ等しく(またはそれより低く)なるまで、冷却してもよい。冷却に関するプロセス条件は、例えば、PCT特許公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。所望する場合には、当該積層押出物を延伸してもよい。用いる場合には、延伸(stretching)(「延伸(orientation)」とも称される)は、押出物成形の前および/または後に行なってもよい。成形の際に当該積層押出物中に繊維状構造が生じる場合であっても、延伸を用いることができる。延伸を用いる場合には、当該押出物中に第一および第二希釈剤が存在することにより、比較的均一な延伸倍率がもたらされる、と考えられている。当該押出物を、特に延伸の開始時に、または、延伸の比較的早期の段階(例えば、延伸の50%が完了するより前)において、高温(延伸温度)に曝すことは、延伸の均一性の助けになるとも考えられている。一実施形態では、延伸温度は、当該押出物中の最も低い(最も冷たい)融解ピークを有するポリマーのTm以下である。延伸が、対称であっても、非対称であってもよいのと同様に、延伸方法の選択も、延伸倍率の度合いも特に重要ではない。延伸の順序は逐次または同時であってもよい。延伸条件は、例えば、PCT特許公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
【0122】
前述の実施形態によって作製したミクロ層押出物の第一層および第二層の相対的な厚さは、例えば、(i)第一および第二混合物の押出機中への相対的供給比を制御すること、(ii)第一および第二混合物中のポリマーおよび希釈剤の相対量を制御すること、等のうちの1つ以上によって調整することができる。加えて、1つ以上の押出機を当該装置に追加して、当該ミクロ層膜中の異なるポリマーの数を増加させることができる。例えば、第三押出機を追加して、当該膜に結合層(tie layer)を追加することができる。
5.希釈剤の除去
【0123】
一実施形態では、多層微多孔膜を形成するために、第一および第二希釈剤(例えば膜形成溶媒)の少なくとも一部を当該成形押出物から除去(または置換)する。置換(または「洗浄」)溶媒を用いて第一および第二希釈剤を除去(洗浄、または置換)することができる。第一および第二希釈剤を除去するためのプロセス条件は、例えば、PCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。希釈剤を除去する(および以下に記載されているように押出物を冷却する)ことにより、拡散係数Dの値が減少し、その結果、ブレンド領域の厚さの増加はほとんどまたはそれ以上生じない。
6.所望により実施される冷却
冷却押出物、例えば多層ゲル様シート、の形成
【0124】
所望する場合には、当該押出物を、成形後に冷却してもよい。冷却速度および冷却温度は特に重要ではない。例えば、当該第二積層押出物を、少なくとも約50℃/分の冷却速度で、それの温度(冷却温度)が当該押出物のゲル化温度とほぼ等しく(またはそれより低く)なるまで、冷却してもよい。冷却に関するプロセス条件は、例えば、PCT特許公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
7.所望により選択実施される第一延伸
【0125】
延伸した第二押出物を得るために、当該希釈剤(1種類または複数種類)を当該押出物から除去する工程の前に(例えば、工程5の前の1つ以上の時点で)、当該押出物を延伸してもよい。延伸は、用いる場合には、成形の前および/または後に行なうことができる。従来の「湿式」プロセスとは異なり、延伸は所望により実施されるものであるが、これは、成形の際に押出物中に繊維状構造が生じるためである。延伸を用いる場合には、当該押出物中に第一および第二希釈剤が存在することにより比較的均一な延伸倍率がもたらされる、と考えられている。当該押出物を加熱することは、特に延伸の開始時に、または、延伸の比較的早期の段階(例えば、延伸の50%が完了するより前)において、延伸の均一性の助けになるとも考えられている。
【0126】
延伸方法の選択も、延伸倍率の度合いも特に重要ではなく、延伸は、対称であっても、非対称であってもよく、延伸の順序は逐次または同時であってもよい。延伸条件は、例えば、PCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
8.所望により実施される膜の乾燥
【0127】
一実施形態では、残留する任意の揮発性種の少なくとも一部を、希釈剤除去の後に、当該膜から除去する(膜「乾燥」)。例えば、当該膜は、洗浄溶媒の少なくとも一部を除去することによって乾燥させることができる。例えば加熱乾燥、風乾燥(動く空気)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することのできる任意の方法を用いることができる。例えば洗浄溶媒などの揮発性種を除去するためのプロセス条件は、例えば、PCT公開WO2008/016174に開示されているものと同じであってもよい。
9.所望により実施される多層膜の延伸
【0128】
一実施形態では、当該多層微多孔膜は、工程(5)の後の任意の時間において延伸することができる。選択される延伸方法は重要ではなく、例えばテンター法などによる従来の延伸方法を用いてもよい。所望により、当該膜は、延伸の際に加熱する。延伸は、例えば、一軸であっても、二軸であってもよい。二軸延伸を用いる場合には、延伸は同時に、例えばMD方向およびTD方向に、行なってもよく、あるいは、多層微多孔性ポリオレフィン膜を、例えば、まずMDに、次いでTDに、などと、順次延伸してもよい。一実施形態では、同時二軸延伸を用いる。多層押出物を、工程(7)に記載されているように延伸した場合には、工程(9)における、乾いた多層微多孔性ポリオレフィン膜の延伸は、乾式延伸(dry-stretching)、再延伸、または乾式延伸(dry-orientation)と呼ぶことで、膜の延伸を押出物の延伸とは区別してもよい。
【0129】
延伸の際の当該多層微多孔膜の温度(「乾式延伸温度」)は重要ではない。一実施形態では、乾式延伸温度は、Tmとほぼ等しいかそれより低く、例えば、およそ結晶分散温度(「Tcd」)から、およそTmまでの範囲であり、ここで、Tmとは、当該膜中の最も高い融点を有するポリマーの融点である。乾式延伸温度がTmよりも高い場合には、乾いた多層微多孔性ポリオレフィン膜を横方向に延伸する場合に、特に横方向に、比較的均一な透気度特性とともに比較的高い耐圧縮性を有する多層微多孔性ポリオレフィン膜を製造することはより困難となる可能性がある。延伸温度がTcdよりも低い場合には、第一および第二ポリマーを十分に軟化させることはより困難となる可能性があり、それにより、延伸の際の裂け、および、均一な延伸の欠如に繋がる可能性がある。一実施形態では、乾式延伸温度は、約90℃〜約135℃、例えば約95℃〜約130℃、の範囲である。
【0130】
乾式延伸を用いる場合には、延伸倍率は重要ではない。例えば、当該多層微多孔膜の延伸倍率は、少なくとも1つの平面方向(例えば横方向)に、約1.1倍〜約1.8倍の範囲であってもよい。よって、一軸延伸の場合には、延伸倍率は、縦方向(すなわち「機械方向」)または横方向に、約1.1倍〜約1.8倍の範囲であってもよく、膜を縦方向に延伸するのか、または横方向に延伸するのかに依存する。一軸延伸は、縦方向と横方向との間の平面軸に沿って達成されてもよい。1.8倍よりも大きい倍率に乾式延伸することにより、MDもしくはTD、またはMDとTDの両方における膜の熱収縮率の悪化が引き起こされると考えられる。
【0131】
一実施形態では、二軸延伸(すなわち2つの平面軸に沿った延伸)を、両延伸軸に沿って、例えば縦方向と横方向の両方に沿って、約1.1倍〜約1.8倍の延伸倍率で用いる。縦方向における延伸倍率は、横方向における延伸倍率と同じである必要はない。言い換えれば、二軸延伸では、延伸倍率は、独立して選択されてもよい。一実施形態では、乾式延伸倍率は両方の延伸方向において同一である。
【0132】
一実施形態では、乾式延伸には、当該膜を、上記に記載した中間サイズへと(通常は、乾式延伸の開始時における延伸方向の膜のサイズよりも約1.1倍〜約1.8倍大きい倍率へと)延伸すること、および、次いで、この膜を延伸の方向に緩和させ(例えば収縮させ)て、中間サイズよりも小さいが、乾式延伸の開始時における延伸方向の膜のサイズよりも大きい、最終膜サイズを延伸方向において達成することが含まれる。通常、緩和の際には、当該フィルムは、当該中間サイズへと乾式延伸する際の場合と同じ温度に曝される。別の実施形態では、いずれかの、または両方の平面方向(MDおよび/またはTD)における膜の最終サイズ(例えば、延伸がTDに沿ったものである場合にTDに沿って測定される幅)が、乾式延伸工程の開始時におけるフィルムのサイズの1.1〜1.8倍の範囲である限り、当該膜は、乾式延伸の開始時における膜のサイズの約1.8倍よりも大きい中間サイズへと延伸される。非限定的な例として、当該膜はMDおよび/またはTDに約1.4〜1.7倍の初期倍率へと延伸されて中間サイズとなり、次いで、約1.2〜1.4倍の倍率で最終サイズへと緩和されるが、これらの倍率は、乾式延伸工程の開始時における延伸の方向のフィルムのサイズを基準としたものである。別の実施形態では、当該膜を、TDに初期倍率で乾式延伸して、TDにおける中間サイズ(中間幅)を有する膜を生じさせ、次いで、TDにおける中間サイズの約1%〜約30%、例えば約5%〜約20%、の範囲であるTDにおける最終サイズへと緩和する。この緩和は、例えば、膜の端部をつかむテンタークリップを機械方向の中心線に向かって動かすことによって達成することができる。
【0133】
延伸速度は、好ましくは延伸方向に3%/秒以上である。一軸延伸の場合には、延伸速度は、縦方向または横方向に3%/秒以上である。二軸延伸の場合には、延伸速度は、縦方向と横方向の両方向に3%/秒以上である。3%/秒未満の延伸速度では、膜の透過性が減少し、測定される性質(特に透気度)がTDに沿った膜全体に大きくばらついた膜が生じることが観察される。延伸速度は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上である。特に重要ではないが、当該膜が延伸の際に破断しさえしなければ、延伸速度の上限値は50%/秒以上であってもよい。
追加工程
【0134】
所望する場合には、例えば(10)加熱処理、(11)架橋結合、および(12)親水化処理などの、所望により実施されるさらなる工程を、例えばPCT公開WO2008/016174に開示されている条件下で行なってもよい。
[4]当該多層微多孔膜の性質
【0135】
一実施形態では、当該多層微多孔膜は、1μm以上の厚さ、例えば約3μm〜約250μm、例えば約5μm〜約50μmの範囲の厚さを有する。膜の厚さの測定には、例えば株式会社ミツトヨから市販されているライトマチックなどの厚さ計が適している。例えば光学的厚さ測定法などの-、非接触式の厚さ測定方法も適している。一実施形態では、当該膜中の別々の組成上の領域(第一ポリマーを含有する層、第二ポリマーを含有する層、ならびに第一および第二ポリマーの両方を含有するブレンド領域)の数の合計は、2n+2−1に等しい奇数であり、ここで「n」は、1以上の整数であり、多層化の数に等しい数であってもよい。「ベータ因子」(「β」)を用いて当該多層微多孔膜を表すことができる。βは、最も薄いブレンド領域の厚さで割った最も厚いブレンド領域の厚さに等しい。通常、本発明の膜に関しては、βは1を越える、例えば、約1.05〜10、または1.2〜5、または1.5〜4の範囲である。
【0136】
所望により、当該膜は、以下の性質のうちの1つ以上を有していてもよい:
A.20%以上の空孔率
【0137】
膜の空孔率は、膜の実際の重量を、等価な100%ポリエチレンの非多孔性膜(同一の長さ、幅、および厚さを有するという意味での等価)の重量と比較することにより、従来法で測定する。次いで、空孔率を、式: 空孔率%=100×(w2−w1)/w2を用いて決定する。式中、「w1」は、微多孔膜の実際の重量であり、「w2」は、同一のサイズおよび厚さを有する等価な(同ポリマーの)非多孔性膜の重量である。一実施形態では、膜の空孔率は、25%〜85%の範囲である。
B.20秒/100cm/20μm以上の正規化透気度(20μmの膜の厚さにおける等価な値に正規化した)
【0138】
一実施形態では、(JIS P8117に従って測定される)多層微多孔性ポリオレフィン膜の正規化透気度は、ガーレー値(秒/100cmという単位)を/20μmの膜の厚さにおける等価なガーレー値に正規化したものとして表し、よって、秒/100cm/20μmという単位で表す。当該膜の正規化透気度は、約20秒/100cm/20μm〜約500秒/100cm/20μm、または約100秒/100cm/20μm〜約400秒/100cm/20μmの範囲である。実際の平均厚さTを有する微多孔膜の、JIS P8117に従って測定した透気度Pは、式 P=(P×20μm)/Tを用いて、20μmの厚さにおける透気度Pに正規化することができる。
C.2,000mN以上の正規化ピン穿刺強度(20μmの膜の厚さにおける等価な値に正規化した)
【0139】
ピン穿刺強度(pin puncture strength)は、Tの実際の平均厚さを有する微多孔膜を、球状の先端表面(曲線半径R:0.5mm)を有する直径1mmの針を用いて2mm/秒の速度で突き刺したときに(グラム重量(grams Force)すなわち「gF」で)測定される最大荷重と定義される。この、膜の測定ピン穿刺強度(「S」)を、式 S=20μm*(S)/Tを用いて、20μmの膜の厚さにおける値に正規化する。式中、Sは測定ピン穿刺強度であり、Sは正規化ピン穿刺強度であり、Tは膜の実際の平均厚さである。
【0140】
一実施形態では、当該膜の正規化ピン穿刺強度は、3,000mN/20μm以上、例えば5000mN/20μm以上であり、例えば3,000mN/20μm〜8,000mN/20μmなどの範囲である。
D.1200Kg/cm以上の引張強度
【0141】
引張強度は、ASTM D-882Aに従って、MDおよびTDにおいて測定する。一実施形態では、膜のMDの引張強度は、1000Kg/cm〜2,000Kg/cmの範囲であり、TDの引張強度は、1200Kg/cm〜2300Kg/cmの範囲である。
E.140℃以下のシャットダウン温度
【0142】
微多孔膜のシャットダウン温度は、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社から市販されているTMA/SS6000)によって次のようにして測定する:3mm×50mmの長方形試料を、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になるように、かつ、短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10mmで、熱機械分析装置中にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離は10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。これらのチャックと試料とを、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、温度を増加させながら、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し記録する。温度は、200℃まで増加させる。「シャットダウン温度」は、膜の製造に使用するポリマーのうちの最も低い融点を有するポリマーの融点付近において観察される変曲点の温度と定義される。一実施形態では、シャットダウン温度は、140℃以下であり、例えば128℃〜133℃の範囲である。
F.145℃以上のメルトダウン温度
【0143】
メルトダウン温度は、次の手順によって測定する:3mm×50mmの長方形試料を、試料の長軸が、本プロセスにおいて微多孔膜を製造する際の、微多孔膜の横方向と一直線になるように、かつ、短軸が機械方向と一直線になるように、微多孔膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10mmで、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社から市販されているTMA/SS6000)中にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離は10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。これらのチャックと試料とを、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、温度を増加させながら、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し記録する。温度は、200℃まで増加させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破損する温度と定義され、通常、約145℃〜約200℃の範囲の温度である。一実施形態では、メルトダウン温度は、145℃〜195℃の範囲であり、例えば150℃〜約190℃の範囲である。
[5]電池セパレータ
【0144】
一実施形態では、上記実施形態のうちのいずれかにおける微多孔膜は、例えばリチウムイオン電池などの変換装置およびエネルギー貯蔵において電極を隔てるのに有用である。
[6]電池
【0145】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池およびリチウムイオン二次電池などにおける、電池セパレータとして有用である。このような電池はPCT公開WO2008/016174に記載されている。
【0146】
当該電池は1つ以上の電気部品または電子部品に動力を供給するのに有用である。このような部品としては、例えば受動素子を含む、例えばレジスタ、キャパシタ、インダクタなどの、受動部品;例えば電動機および発電機などの起電装置、ならびに、例えばダイオード、トランジスタ、および集積回路などの電子装置、が挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて当該電池に連結して電池システムを形成することができる。これら回路は当該電池に直接連結しても、間接的に連結してもよい。例えば、当該電池から流れる電気は、この電気が消費されるか、またはこれらの部品のうちの1つ以上の中に蓄積されるよりも前に、電気化学的に(例えば、二次電池または燃料電池により)および/または電気機械的に(例えば、発電機を作動させる電動機により)変換することができる。当該電池システムは、比較的高い出力の装置、例えば電動工具中の電動機、および、電気自動車またはハイブリッド電気自動車など、に電力を供給するための電源として用いることができる。
【0147】
以下、特定の実施形態を、別々に番号を付けた以下の項に関して説明する。
1.特定の実施形態では、当該微多孔膜は、
a) 第一ポリマーと第二ポリマーとを含む第一ブレンド領域であって、第一ブレンド領域の厚さ方向に変化する第一ポリマーの第一濃度プロファイルまたはそれに該当するものを有する第一ブレンド領域;および
b) この第一ブレンド領域と表面接触し、かつ、第一ポリマーと第二ポリマーとを含む第二ブレンド領域であって、第二ブレンド領域の厚さ方向に変化する第一ポリマーの第二濃度プロファイルまたはそれに該当するものを有する第二ブレンド領域、
を含む。
2.1.0μm以下の厚さを有する第一微多孔性ミクロ層(M1)、および1.0μm以下の厚さを有する第二微多孔性ミクロ層をさらに含み、前記第一および第二ブレンド領域が前記第一微多孔層と前記第二微多孔層との間に位置する、項1に記載の膜。
3.前記第一微多孔性ミクロ層が前記第一ポリマーを含み、かつ、前記第二微多孔性ミクロ層が前記第一ポリマーを含む、項2に記載の膜。
4.前記第一微多孔性ミクロ層が前記第一ポリマーを含み、かつ、前記第二微多孔性ミクロ層が前記第二ポリマーを含む、項2に記載の膜。
5.前記膜が液体透過性である、項1〜4のいずれか一項に記載の膜。
6.前記第一ポリマーが、前記第二ポリマーと非適合性のものである、項1〜5のいずれか一項に記載の膜。
7.前記第一ポリマーがポリエチレンを含み、かつ、前記第二ポリマーがポリプロピレンを含む、項1〜6のいずれか一項に記載の膜。
8.前記第一ポリマーが、a)1.0×10未満のMwおよび10,000個の炭素原子あたり0.20未満の末端ビニル含有量を有するポリエチレン;b)1.0×10以上の分子量を有するポリエチレン;ならびに、c)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー、のうちの少なくとも1つから選択され、;かつ、前記第二ポリマーが、:a)1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱を有するポリプロピレン;ならびに、b)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー、のうちの少なくとも1つから選択される、項7に記載の膜。
9.前記第一ブレンド領域の厚さが、前記第一および第二微多孔性ミクロ層の個々の厚さよりも大きい、項1〜8のいずれか一項に記載の膜。
10.前記第一濃度プロファイルが負の傾きを有し、かつ、前記第二濃度プロファイルが正の傾きを有する、項1〜9のいずれか一項に記載の膜。
11.第三ブレンド領域の厚さ方向に変化する前記第一ポリマーの第三濃度プロファイルを有し、かつ、前記第一微多孔性ミクロ層と前記第二微多孔性ミクロ層との間に位置する、少なくとも1つの第三ブレンド領域をさらに含む、項1〜10のいずれか一項に記載の膜。
12.前記第二および第三ブレンド領域が、それぞれ、前記第一ブレンド領域の厚さよりも大きい厚さを有し、かつ、前記第三ブレンド領域が前記第一ブレンド領域と表面接触している、項11に記載の膜。
13.前記第二および第三ブレンド領域が、それぞれ、前記第一ブレンド領域の厚さよりも小さい厚さを有し、かつ、前記第三ブレンド領域が前記第一ブレンド領域と表面接触している、項11に記載の膜。
14.前記第一ポリマーと前記第二ポリマーとを含み、かつ、前記第一微多孔性ミクロ層と前記第二微多孔性ミクロ層との間に位置する、複数のさらなるブレンド領域をさらに含む、項1〜13のいずれか一項に記載の膜。
15.前記膜が、12〜4,000個の層を含む、項1〜14のいずれか一項に記載の膜。
16.前記膜が、50秒/100cm〜1,000秒/100cmの範囲の正規化透気度を有する、項1〜15のいずれか一項に記載の膜。
17.前記膜が、200gF〜1,000gFの範囲の正規化ピン穿刺強度を有する、項1〜16のいずれか一項に記載の膜。
18.前記膜が、少なくとも1つの平面方向に、10%以下の105℃熱収縮を有する、項1〜17のいずれか一項に記載の膜。
19.前記膜が3μm〜100μmの範囲の厚さを有する、項1〜18のいずれか一項に記載の膜。
20.前記第一および第二ブレンド領域がそれぞれ25nm〜0.5μmの範囲の厚さを有する、項1〜19のいずれか一項に記載の膜。
21.第一ポリマーと第二ポリマーとを含む微多孔膜であって、前記第一ポリマーの組成が、厚さ方向に、フィルムの第一表面からフィルムの第二表面まで、連続的に変化する微多孔膜。
22.前記第一および第二ポリマーが、:a)1.0×10未満のMwおよび10,000個の炭素原子あたり0.20未満の末端ビニル含有量を有するポリエチレン;b)1.0×10以上の分子量を有するポリエチレン;c)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー;d)1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱を有するポリプロピレン;ならびに、e)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー、のうちの少なくとも1つから選択される、項21に記載の膜。
23.少なくとも8つの層を含む、25μm以下の厚さを有する微多孔膜であって、各層が3.3μm以下の厚さを有し、;前記層のそれぞれが、第一ポリマーと第二ポリマーとを含み、かつ、前記のそれぞれの層の厚さ方向に変化する前記第一ポリマーの濃度プロファイルを有するが、但し、前記膜の前記スキン層は、独立して、前記第一ポリマーまたは前記第二ポリマーのいずれかから本質的に成っていてもよい、微多孔膜。
24.前記第一および第二ポリマーが、:a)1.0×10未満のMwおよび10,000個の炭素原子あたり0.20未満の末端ビニル含有量を有するポリエチレン;b)1.0×10以上の分子量を有するポリエチレン;c)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー;d)1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱を有するポリプロピレン;ならびに、e)5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー、のうちの少なくとも1つから選択される、項23に記載の膜。
25.第一ポリマーを含む第一層および第三層;第二ポリマーを含む第二層および第四層;ならびに、それぞれが前記第一および第二ポリマーを含む第一、第二、および第三ブレンド領域;を有する微多孔膜であって、前記第一ブレンド領域が、前記第一層と前記第二層との間に、それらと面と面とで接触して位置し、かつ、厚さT1を有し、;前記第二ブレンド領域が、前記第二層と前記第三層との間に、それらと面と面とで接触して位置し、かつ、厚さT2を有し、;および、前記第三ブレンド領域が、前記第三層と前記第四層との間に、それらと面と面とで接触位置し、かつ、厚さT3を有し、;T2が、[(T1−T2)/T1]≧0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05の関係性を満たし、;ならびに、T1、T2、およびT3がそれぞれ25nm〜5μmの範囲である、微多孔膜。
26.1.05以上のβを有する多層微多孔性高分子膜。
27.βが1.2〜5の範囲である、項23に記載の多層微多孔性高分子膜。
28.厚さT1を有する第一ブレンド領域、厚さT3を有する前記第三ブレンド領域、および前記第一ブレンド領域と前記第三ブレンド領域との間に位置し、かつ厚さT2を有する第二ブレンド領域を含み、;[(T1−T2)/T1]≧0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05であり、20%以上の空孔率、20秒/100cm/20μm以上の正規化透気度、140℃以下のシャットダウン温度、および、145℃以上のメルトダウン温度を有する、多層微多孔性高分子膜。
29.微多孔膜を製造するための方法であって、:
a) 第一層と第二層とを含む第一積層物であって、第一層が第一希釈剤と第一ポリマーとを含み、第二層が、第一希釈剤に混和性の第二希釈剤と、第一ポリマーとは異なる第二ポリマーを含む、第一積層物を操作して、第一ポリマー組成物と第二ポリマー組成物とを含む第一および第二の近接するブレンド領域を含む、層の数が増加した第二積層物を作製すること;ならびに
b) 第一および第二希釈剤の少なくとも一部を当該第二物から除去して、当該微多孔膜を製造すること、
を含む方法。
30.前記第一積層物の操作が、前記第一物の少なくとも1つの部分の、厚さを減少させること、および幅を増加させることを、前記第二物の作製の前に含む、項29に記載の方法。
31.前記第一積層物の操作が、前記第二物の少なくとも1つの部分の、厚さを減少させること、および幅を増加させることを含む、項29に記載の方法。
32.前記希釈剤の少なくとも一部を除去する前に、前記第二物を少なくとも1つの平面方向に延伸することをさらに含む、項29に記載の方法。
33.前記希釈剤の少なくとも一部を除去した後に、前記第二物を少なくとも1つの平面方向に延伸することをさらに含む、項29に記載の方法。
34.前記希釈剤の少なくとも一部を除去する前に、前記第二物を冷却することをさらに含む、項29に記載の方法。
35.前記希釈剤の少なくとも一部を除去した後に、前記膜を高温に曝すことをさらに含む、項29に記載の方法。
36.前記第一および第二希釈剤が流動パラフィンを含む、項29に記載の方法。
37.項25〜32のいずれか一項に従って製造される微多孔膜。
38.項1〜24のいずれか一項に記載の膜を含む、電池セパレータ。
39.項34に記載の電池セパレータを含む、電池。
40.電解質、負極、正極、および前記負極と前記正極との間にあるポリマーセパレータを含む電池であって、前記セパレータが、厚さT1を有する第一ブレンド領域、厚さT3を有する前記第三ブレンド領域、および前記第一ブレンド領域と前記第三ブレンド領域との間に位置し、かつ厚さT2を有する第二ブレンド領域、を含み、;[(T1−T2)/T1]≧0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05である、電池。
【0148】
以下、下記の実施例を参照し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲を限定するという意図はないものとする。
[実施例]
[7]実施例
【0149】
以下、下記の例を参照し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲を限定するという意図はないものとする。
実施例1
(1)第一混合物の調製
【0150】
(a)2.0×10のMwおよび5.1のMWDを有する18重量%のポリエチレン樹脂(UHMWPE)、ならびに(b)5.6×10のMw、4.1のMWD、135℃のTc、および100℃のTcdを有する82.0重量%のポリエチレン樹脂(HDPE)、を含む第一ポリマーを、乾式プレンドによって調製する。これらの重量パーセントは、第一ポリマーの重量を基準にしたものである。
【0151】
25重量%の第一ポリマーを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練二軸スクリュー押出機の中に充填し、75重量%の流動パラフィン(40℃で50cSt)を、サイドフィーダーを介して、この二軸スクリュー押出機へと供給して、第一混合物を得る。これらの重量パーセントは、第一混合物の重量を基準にしたものである。第一押出機における特定の条件は、表2に記載されている。
(2)第二混合物の調製
【0152】
第二ポリマーは、以下に記載する点以外は、上記と同様に調製する。第二ポリマーの重量を基準に、(a)1.1×10のMw、5のMWD、164℃のTm、および114.0J/gのΔHmを有する50.0重量%のポリプロピレン(UHWMiPP)、(b)2.0×10のMwおよび5.1のMWDを有する1.0重量%のポリエチレン樹脂(UHMWPE)、ならびに、(c)5.6×10のMw、4.1のMWD、135℃のTc、および100℃のTcdを有する49.0重量%のポリエチレン樹脂(HDPE)、を含む第二ポリマーを、乾式プレンドによって調製する。35重量%の第二ポリマーを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混練二軸スクリュー押出機の中に充填し、65重量%の流動パラフィンを、サイドフィーダーを介して、この二軸スクリュー押出機へと供給して、第二混合物を得る。第二押出機における特定の条件は、表2に記載されている。
(3)押し出し
【0153】
この第一および第二混合物を合わせ、合計で1.0mmの厚さを有する二層押出物を得る。次いで、これを、一連の多層化段階へと導く。図8B中に概略的に示されている各段階では、この押出物を220℃の温度に曝しながら、この押出物を多層化する。
【0154】
したがって、第一混合物は、第一の一軸スクリュー押出機812を通って共押出しブロック820中へと押し出され、第二混合物は、第二の一軸スクリュー押出機814を通って同じ共押出しブロック820中へと押し出される。この共押出しブロック820では、例えば図8B中の段階Aで図示されているような二層押出物838が、第一混合物を含む層842が第二混合物を含む層840の上にある状態で、形成される。次いで、この積層押出物は、一連の多層化素子822a〜gに通して押し出されて、第一および第二ポリマーの混合物を含む層を有する80層の押出物が生じる。各多層化段階における押出物の滞在時間は、およそ2.5秒である。当該ミクロ層押出物は、1.0mmの厚さおよび0.1mの幅を有する。
【0155】
多層化の際、第一積層押出物をMDに沿って等分に分割することによって、2mmの厚さを有する第一積層押出物を2つの部分へと分け、次いでこれら部分を合わせ、4mmに等しい厚さを有する第二積層押出物を得る。多層化装置を用いて、第一押出物の第一部分と第二部分とを、機械方向に沿って、TDの中間点における直線であって押出物の平らな表面に直角の直線上で分ける。この多層化装置により、この第一部分は、第二部分の上へと、向きを変え、かつ「積み重なり」(平らな表面と平らな表面とが向かい合って)、その結果、層の数が増加し、第二押出物が生じる。この多層化は、当該押出物を表1中に記載されている温度に曝しながら行う。多層化時間は、2.5秒、すなわち、第一および第二混合物の、フィードブロックへの導入から、合計5秒である。
【0156】
第二押出物は、図2において示されているような4つの層と3つのブレンド領域とを含有する。第一多層化の終わりにおいて、第二押出物は、4mmの厚さ;0.02mの幅を有し、;それらの層の厚さL1、L2、L3、およびL4はそれぞれ1mmであり、;ブレンド領域202、206の厚さI1およびI3は81μmの厚さを有し、;その一方で、ブレンド領域204は57μmの厚さI2を有し、;かつ、β=1.42である。当該押出物は繊維状構造を有しない。
【0157】
第一多層化後、当該押出物は第二多層化を受ける。この多層化工程の条件は、第一多層化の条件と同じである。第二多層化は、第一および第二混合物がフィードブロック中に導入された10秒後に終結する。この時点において、(図7d中に示されている)当該押出物は、8mmの厚さ;0.01mの幅を有し、;それらの層の厚さはそれぞれ1mmであり、;ブレンド領域I1およびI7は115μmの厚さを有し、;I2およびI6は99μmの厚さを有し、;I3およびI5は81μmの厚さを有し、;新たに作り出された界面I4は57μmの厚さを有し、;かつ、β=2.02である。当該押出物は繊維状構造を有しない。
【0158】
この多層化プロセスを継続して、第一および第二ポリマーの混合物を含む層を有する80層の押出物を得る。各多層化段階における押出物の滞在時間は、およそ2.5秒である。当該ミクロ層押出物は、1.0mmの厚さおよび0.1mの幅を有する。
【0159】
次いで、このミクロ層押出物を、20℃で調節された冷却ローラーに通過させながら冷却し、冷却ミクロ層押出物を形成する。この冷却ミクロ層押出物は、テンター型延伸機により、115℃にて、MDとTDの両方に5倍の倍率に、同時に二軸に延伸される。この延伸押出物を、20cm×20cmのアルミニウム枠に固定し25℃で調節された塩化メチレン浴中に浸漬して、流動パラフィンを100rpmの振動で3分間除去し、空気の流れによって室温で乾燥させる。次いで、この膜を、115℃で10分間ヒートセットして、2.5mの幅および40μmの厚さを有する、完成した液体透過性のミクロ層膜を得る。当該膜は、=1.59であるβを有する。典型的な膜の性質を表2に示す。
(4)押出物の成形
【0160】
第二多層化後、当該押出物を成形して、押出物の厚さを2mmへと減少させ、押出物の幅を0.04mへと増加させる。成形温度は210℃であり、成形は2.5秒間行う。当該第二成形は、第一および第二混合物がフィードブロック中に導入された12.5秒後に終結する。この時点において、当該押出物は、2mmの厚さ;0.04mの幅を有し、;層L1からL8までの厚さはそれぞれ0.25mmであり、;ブレンド領域I1およびI7は32.25μmの厚さを有し、;I2およびI6は28.75μmの厚さを有し、;I3およびI5は24.75μmの厚さを有し、;I4は20.25μmの厚さを有し、;かつ、β=1.59である。当該押出物は繊維状構造を有する。
(5)希釈剤除去等
【0161】
第二成形後、当該押出物を、20℃で調節された冷却ローラーに通過させながら冷却し、冷却押出物を形成する。この冷却押出物は、テンター型延伸機により、119.3℃にて、機械(縦)方向と横方向の両方に5倍の倍率に、同時に二軸に延伸され、その結果、延伸押出物が生じる。この延伸押出物を、20cm×20cmのアルミニウム枠に固定し25℃で調節された塩化メチレン浴中に浸漬して、流動パラフィンを100rpmの振動で3分間除去し、空気の流れによって室温で乾燥させる。次いで、この膜を、127.3℃で10分間ヒートセットして、1mの幅および80μmの厚さを有する、完成した膜を得る。このヒートセットした膜は、=1.59のβを有する。
【0162】
実施例2〜8は、表1中にまとめられている押し出し条件を用いたこと以外は、実質的に同じようにして調製した。
【表1】

【0163】
図9は、PP層によって隔てられたPE層を含み、かつ、それらの間にブレンド領域を有する、例えば実施例5などの、20層の押出物のSEM像を示している。図10は、PEおよびPPの別々の層をブレンド領域とともに示す、別の20層の押出物の顕微鏡像を示している。これらの層およびブレンド領域は、この例においては、通常、10μm未満である。図11:フィブリル構造を形成するのに必要な延伸がより少ない、列状に核形成した構造を有するフィルムの実施例。このフィブリル構造によって、内部応力がより少なく、かつ、収縮が減少した膜がもたらされると考えられている。図12は、iPP球晶を有するiPPリッチ領域、および、列状に核形成し、かつ、整列したiPP含有層の転移層を有する好例のフィルムを示している。
比較実施例1
【0164】
実施例1の第一混合物と第二混合物とを共押出しし、7つのブレンド領域を有する八層押出物を得る。第一および第二混合物を作製するのに使用する条件は、実施例1の条件と同じである。押し出し温度は210℃である。共押出し後、当該押出物を、実施例1、工程(7)と同じ条件下で処理して、1mの幅および80μmの厚さを有する、完成した比較膜を得る。第一および第二混合物の、押出機への導入と当該冷却との間の経過時間は、5秒である。
性質
【0165】
実施例1および比較実施例1の多層微多孔膜の性質は、以下に記載する規定の手順によって測定する。その結果を表2に示す。
【表2】

【0166】
この表に見られるように、当該実施例の冷却押出物は所望の繊維状構造を有しており、一方、当該比較実施例の冷却押出物は繊維状構造を有しない。さらに、共押出しの際に生じる層の接触時間が、各層対について同じであることから、当該比較実施例の膜は、同じ厚さのブレンド領域を含有している。したがって、当該比較膜は、所望の範囲内、すなわち、β>1、のβを有しない。
【0167】
優先権書類を含む、本明細書で引用したすべての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が矛盾を生じない範囲まで完全に組み入れられ、また、このような組み入れが許される法的管轄の範囲すべてについて完全に組み入れられる。
【0168】
本明細書において開示した、説明に役立つ形態は、詳細に記載したが、当業者にとって、その他の種々の変形は明らかであり、また、当業者は本開示の精神および範囲から逸脱することなくその他の種々の変形を容易に行うことができる、とのことが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲が、本明細書に記載された実施例および説明に限定される、ということは意図されておらず、むしろ、特許請求の範囲が、本明細書中にある特許可能な新規性のある特徴すべて(本開示に関係する当業者によって等価なものとして扱われるであろうすべての特徴を含む)を包含するものとして解釈される、ということが意図されている。
【0169】
数値の下限値および数値の上限値が本明細書において記載されている場合には、任意の下限値から任意の上限値までの範囲を意図しているものとする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8A】

【図8B】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さT1を有する第一ブレンド領域、厚さT3を有する第三ブレンド領域、および、前記第一ブレンド領域と前記第三ブレンド領域との間に位置し、かつ厚さT2を有する第二ブレンド領域を含み、;[(T1−T2)/T1]≧0.05かつ[(T3−T2)/T3]≧0.05である、積層微多孔性高分子膜。
【請求項2】
[(T1−T2)/T1]が、0.10〜0.75の範囲であり、かつ、[(T3−T2)/T3]が、0.10〜0.75の範囲である、請求項1に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項3】
前記膜が、第一ポリオレフィンの少なくとも2つの層および第二ポリオレフィンの少なくとも2つの層を含み、前記第一ポリオレフィンは前記第二ポリオレフィンとは異なるものであり、前記第一ポリオレフィンを含有する各層が、前記第二ポリオレフィンを含有する近接層から、前記ブレンド領域のうちの1つによって隔てられている、請求項1または2に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項4】
前記膜が、(i)第一層および第三層が第一ポリマーを含み、第二層および第四層が第二ポリマーを含み、前記第二ポリマーが前記第一ポリマーとは異なる、第一層、第二層、第三層、および第四層;ならびに、(ii)前記第一層と前記第二層との間に位置する前記第一ブレンド領域、前記第二層と前記第三層との間に位置する前記第二ブレンド領域、および前記第三層と前記第四層との間に位置する前記第三ブレンド領域、を含む、請求項1〜3に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項5】
前記第一層および前記第三層がほぼ等しい厚さを有し、前記第二層および前記第四層がほぼ等しい厚さを有し、かつ前記第一ブレンド領域および前記第三ブレンド領域がほぼ等しい厚さを有する、請求項4に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項6】
前記第一ポリマーが前記第二ポリマーに混和性ではない、請求項4または5に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項7】
前記第一ポリマーがポリエチレンを含み、かつ、前記第二ポリマーがポリプロピレンを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項8】
前記膜が、前記第一層、前記第四層またはその両方の外側に層をさらに含み、かつ、前記膜が、前記第二領域内に対称面を有する対称膜である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項9】
各ブレンド領域が、15nm〜10μmの範囲の厚さを有し、かつ、各層が、25nm〜50μmの範囲の厚さを有する、請求項4〜8のいずれか一項に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項10】
前記第一および第二ポリマーが、約1×10〜約4×10の範囲のMwおよび100J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有する、UHMWPE、HDPE、およびポリプロピレンのうちの1つ以上から独立して選択される、請求項3〜8のいずれか一項に記載の積層微多孔性高分子膜。
【請求項11】
a) 第一ポリマーと第二ポリマーとを含む第一ブレンド領域であって、前記第一ブレンド領域の厚さ方向に変化する前記第一ポリマーの第一濃度プロファイルまたはそれに該当するものを有する第一ブレンド領域;ならびに
b) 前記第一ブレンド領域(BL1)と表面接触し、かつ、前記第一ポリマーと前記第二ポリマーとを含む第二ブレンド領域であって、前記第二ブレンド領域の厚さ方向に変化する前記第一ポリマーの第二濃度プロファイルまたはそれに該当するものを有する第二ブレンド領域、
を含む微多孔膜。
【請求項12】
1.0μm以下の厚さを有する第一微多孔性ミクロ層、および、1.0μm以下の厚さを有する第二微多孔性ミクロ層をさらに含み、前記第一および第二ブレンド領域が前記第一微多孔性ミクロ層と前記第二微多孔性ミクロ層との間に位置する、請求項11に記載の膜。
【請求項13】
前記第一ポリマーが、
a) 1.0×10未満のMwおよび10,000個の炭素原子あたり0.20未満の末端ビニル含有量を有するポリエチレン;
b) 1.0×10以上の分子量を有するポリエチレン;ならびに
c) 5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー、
のうちの少なくとも1つから選択され、;
かつ、前記第二ポリマーが、:
d) 1.0×10以上のMwおよび90J/g以上の融解熱を有するポリプロピレン;ならびに
e) 5×10〜2.0×10の範囲の分子量および115.0℃〜130.0℃の範囲の融点を有するポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー、
のうちの少なくとも1つから選択される、請求項11または12に記載の膜。
【請求項14】
前記第一および第二ブレンド領域が、それぞれ、25nm〜0.5μmの範囲の厚さを有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項15】
第一ポリマーと第二ポリマーとを含む微多孔膜であって、前記第一ポリマーの組成が、厚さ方向に、フィルムの第一表面からフィルムの第二表面まで、連続的に変化する微多孔膜。
【請求項16】
微多孔膜を製造するための方法であって、:
a) 第一層と第二層とを含む第一積層物であって、前記第一層が第一希釈剤と第一ポリマーとを含み、前記第二層が、前記第一希釈剤に混和性の第二希釈剤と、前記第一ポリマーとは異なる第二ポリマーとを含む、第一積層物を操作して、前記第一ポリマー組成物と前記第二ポリマー組成物とを含む第一および第二の近接するブレンド領域を含む、層の数が増加した第二積層物を作製すること;ならびに
b) 前記第一および第二希釈剤の少なくとも一部を前記第二物から除去して、前記微多孔膜を製造すること、
を含む方法。
【請求項17】
前記第一積層物の操作が、前記第一物の少なくとも1つの部分の、厚さを減少させること、および幅を増加させることを、前記第二物の作製の前に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記積層物が積層押出物である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記第一および第二ポリマーが不混和性である、請求項16〜18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一および第二ポリマーが、約1×10〜約4×10の範囲のMwおよび100J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有するUHMWPE、HDPE、およびポリプロピレンのうちの1つ以上から独立して選択される、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第一希釈剤が前記第二希釈剤と同じものである、請求項16〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記第一および第二希釈剤が流動パラフィンである、請求項16〜21に記載の方法。
【請求項23】
形成、操作、および成形を、それぞれ、Tm+10℃からTm+120℃までの範囲の温度で行う、請求項16〜22に記載の方法。
【請求項24】
形成、操作、および成形の際には、合わせた場合の前記第一および第二ポリマーならびに第一および第二希釈剤が、10−11/秒〜10−15/秒の範囲の拡散係数Dを有する、請求項16〜23に記載の方法。
【請求項25】
形成、操作、および成形のそれぞれを、0.5秒〜100秒の範囲の時間にわたって行う、請求項16〜24に記載の方法。

【公表番号】特表2012−506792(P2012−506792A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533330(P2011−533330)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061667
【国際公開番号】WO2010/048392
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510157580)東レ東燃機能膜合同会社 (31)
【Fターム(参考)】