説明

多層硬質磁石、データ記憶装置のための読取書込ヘッド、および硬質磁石の製造方法

【課題】高い保持力および比較的小さな磁性粒度をともなう磁性材料を提供する。
【解決手段】硬質磁石1600は、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第1の成分を含むシード層1602、第1の成分を含むキャップ層1612、ならびにシード層1602とキャップ層1612との間の多層積層体1604を含む。多層積層体1604は、第1の成分と、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第2の成分とを含む第1の層1606を含む。第2の成分は第1の成分と異なる。多層積層体1604はさらに、第1の層1606上に形成され第2の成分を含む第2の層1608と、第2の層1608上に形成され第1の成分および第2の成分を含む第3の層1610とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2008年4月30日に提出された米国特許出願連続番号第12/112,671号の一部継続出願であり、その全内容をここに引用により援用する。
【背景技術】
【0002】
背景
磁気データ記憶装置は磁気読取書込ヘッドを含む。それは、磁気記憶媒体の磁気特性を検知し変更する。たとえば、読取書込ヘッドは、印加磁界に応じて抵抗を変化させる磁気抵抗センサを含む。この抵抗変化に基づいて、読取書込ヘッドは、磁気記憶媒体の磁気特性を感知または変更する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの局面では、この開示は、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第1の成分を含むシード層、第1の成分を含むキャップ層、ならびにシード層とキャップ層との間の多層積層体を含む、硬質磁石に向けられる。開示のこの局面によれば、多層積層体は、第1の成分と、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第2の成分とを含む第1の層を含んでもよく、第2の成分は第1の成分と異なる。多層積層体は、さらに、第1の層上に形成され第2の成分を含む第2の層、ならびに第2の層上に形成され第1の成分および第2の成分を含む第3の層を含んでもよい。
【0004】
この発明の1つ以上の実施例の詳細は、添付図面および以下の記載において述べられる。これらおよびさまざまな他の特徴および利点は以下の詳細な記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】ハードディスクドライブの概略図である。
【図2】トンネル磁気抵抗センサを含むハードディスク読取ヘッドを示すブロック図である。
【図3】ハードディスク読取ヘッドを示すブロック図である。
【図4】別のハードディスク読取ヘッドを示すブロック図である。
【図5】白金−鉄二元系のための相図である。
【図6】L10相構成白金−鉄二元合金の結晶単位セルである。
【図7】シード層、キャップ層および中間合金層を含む多層構造のブロック図である。
【図8A】単一膜層として形成された鉄−白金の磁性材料に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図8B】白金シード層とともに形成された鉄−白金の磁性材料に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図8C】白金キャップ層とともに形成された鉄−白金の磁性材料に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図8D】白金シード層および白金キャップ層の両方とともに形成された鉄−白金の磁性材料に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図9A】銀または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図9B】銀または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図9C】銀または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図10A】鉄または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図10B】鉄または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図10C】鉄または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図10D】鉄または白金のうちの1つを含むシード層とキャップ層とともに形成された鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図11A】白金シードおよびキャップ層とともに形成されたさまざまな組成の鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図11B】白金シードおよびキャップ層とともに形成されたさまざまな組成の鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図11C】白金シードおよびキャップ層とともに形成されたさまざまな組成の鉄−白金合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図12A】アニーリング前における白金シード層および白金キャップ層を備えた鉄−白金磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)顕微鏡写真である。
【図12B】アニーリング後における白金シード層および白金キャップ層を備えた鉄−白金磁性材料の透過型電子顕微鏡(TEM)顕微鏡写真である。
【図13A】アニーリング前における白金シード層および白金キャップ層を備えた鉄−白金磁性材料に対する濃度対深さのプロットである。
【図13B】アニーリング後における白金シード層および白金キャップ層を備えた鉄−白金磁性材料に対する濃度対深さのプロットである。
【図14】白金シード層および白金キャップ層とともに形成された鉄−白金磁性材料に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【図15】異なる組成で2つの層を含む多層の鉄−白金合金のブロック図である。
【図16A】例示的多層硬質磁石に対する断面図である。
【図16B】例示的多層硬質磁石に対する組成のプロットである。
【図17A】例示的多層硬質磁石に対する断面図である。
【図17B】例示的多層硬質磁石に対する組成のプロットである。
【図18A】例示的多層硬質磁石に対する断面図である。
【図18B】例示的多層硬質磁石に対する組成のプロットである。
【図18C】例示的読取センサの断面図である。
【図19A】例示的多層硬質磁石に対する断面図である。
【図19B】例示的多層硬質磁石に対する組成のプロットである。
【図20】多層硬質磁石を形成する例示的方法を示す流れ図である。
【図21】鉄−白金硬質磁石に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な記載
この開示は、データ記憶用途で使用される磁性材料に一般に向けられる。いくつかの実施例では、磁性材料は、磁気データ記憶装置のための読取書込ヘッドにおいて使用されてもよい。磁性材料は、白金(Pt)および鉄(Fe)を含む合金から形成されてもよく、たとえば、合金、シード層およびキャップ層の低温アニーリングによって形成されてもよい。磁性材料は、好ましくは、L10相構成を含んでいて、望ましいように高い保磁力および大きな飽和磁化を有する。
【0007】
いくつかの実施例では、磁性材料は多層硬質磁石として形成されてもよい。たとえば、多層硬質磁石は、シード層、キャップ層、およびシード層とキャップ層との間の多層積層体を含んでいてもよい。多層積層体は少なくとも2つの層を含んでいてもよく、それらの層は異なる組成を含んでいてもよい。たとえば、多層積層体は、組成傾斜に帰着する複数の層を含んでいてもよく、それらはシード層およびキャップ層からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面に関して対称であってもよく、または非対称であってもよい。いくつかの実施例では、多層積層体は、異なる部分において異なる磁気モーメントを有する磁石を提供してもよい。
【0008】
この開示はディスクドライブのための読取書込ヘッドにおけるバイアス磁石としての磁性材料の使用について議論しているが、磁性材料は、高い保磁力および比較的小さな磁性粒度をともなう磁性材料が望まれる他の適用例において役立ってもよい。たとえば、ここに記載された磁性材料は、磁気媒体に役立ってもよい。
【0009】
図1は、この開示の1つの局面によって読取書込ヘッドを含む例示的な磁気ディスクドライブ100を示す。ディスクドライブ100は、部分的に切断されて示された基部102およびトップカバー104を含む。基部102はトップカバー104と組合わさって、ディスクドライブ100のハウジング106を形成する。ディスクドライブ100はさらに1つ以上の回転可能な磁気データディスク108を含む。データディスク108はスピンドル114に取付けられており、それは中心軸に関してディスク108を回転させるよう動作する。磁気記録および読取ヘッド112はデータディスク108に隣接している。アクチュエータアーム110は、各データディスク108との通信のために磁気記録および読取ヘッド112を担持する。
【0010】
データディスク108は、情報を、磁気的に配向されたビットとして、磁性膜上に記憶する。磁気読取書込ヘッド112は、データディスク108上の磁性膜のディスクリートな区域を磁化するのに十分な磁界を生成する記録(書込)ヘッドを含む。磁性膜のこれらのディスクリートな区域は各々、「0」に相当する1つの磁化配向、および「1」に相当する実質的に反対の磁化配向で、データのビットを表わす。磁気記録および読取ヘッド112は、さらに、磁性膜のディスクリートな磁区の磁界を検知することができる読取ヘッドを含む。
【0011】
図2は、図1において磁気読取書込ヘッド112とともに使用されてもよいハードディスク読取ヘッド200の実施例を示す概略的ブロック図である。読取ヘッド200は、磁気抵抗を利用して、図1のデータディスク108のようなデータディスクからデータを読取る。読取ヘッド200の厳密な性質は広く変動してもよいが、あるトンネル磁気抵抗読取ヘッドは、開示される磁性材料が利用されてもよい読取ヘッド200の1つの例として記載される。しかしながら、ここに記載される磁性材料は、たとえば、現在の膜面垂直巨大磁気抵抗ヘッド、巨大磁気抵抗ヘッドなどのような、任意の読取ヘッド200において使用されてもよいことが理解される。さらに、磁性材料は、高い保磁力および/または大きな飽和磁化が望まれる他の多くの適用例に使用を見出してもよい。
【0012】
図1〜図2を再び参照して、読取ヘッド200は、データディスク108の回転によって形成された空気軸受上においてデータディスク108の表面上を飛ぶ。データディスク108は複数のデータトラック228を有し、そのうちの1つが図2に示される。データトラック228は複数のビットに分割されてもよい。ディスク108が矢印によって示されるように回転するとともに、読取ヘッド200はデータトラック228を辿り、データトラック228がセンサ218の下を通過するなか、データトラック228の各ビットを読んでもよい。
【0013】
読取ヘッド200は、第1のシールド層202および第2のシールド層203、トンネル磁気抵抗センサ218ならびに2つの硬質磁石204および205を含む。第1および第2のシールド層202および203は、たとえばデータディスク108上の隣接したビットからのもののような外来磁場を、センサ218に影響を与えないよう低減するかまたは実質的にブロックして、それにより、センサ218の性能を改善する。理想的には、第1および第2のシールド層202および203は、センサ218直下のビットのみからの磁界がセンサ218に影響し、したがって読取られることを可能にする。したがって、ビットの物理的サイズが減少し続けるとともに、シールドからシールドへの間隔も減少し続けてもよい。
【0014】
センサ218は、反強磁性シード層214、ピンド層212、基準層211、トンネル障壁層210、自由層208およびキャップ層206を含む複数の層を含む。反強磁性層214は、第1の電極221に電気的に結合され、キャップ層206は第2の電極220に電気的に結合される。ピンド層212は、反強磁性層214上に形成され、反強磁性層214に交換結合される。交換結合は、ピンド層212の磁気モーメントを、既知の配向性で固定する。同様に、ピンド層212の磁気モーメントは、基準層211において実質的に反平行の磁界を引き起こす。ともに、ピンド層212および基準層211は合成反強磁性体213を形成する。ピンド層212および基準層211の各々の磁気モーメントは、対象の範囲の磁界(たとえばデータディスク108上に記憶されるデータのビットによって生成された磁界)の下で回転するようには許されない。基準層211およびピンド層212の磁気モーメントは、(たとえば図2の面に入って出る)矢印尾部224および矢印頭部225によって示されるように、図2の面に垂直で、かつ互いに反平行に、概ね配向付けられる。
【0015】
センサ218はさらに自由層208を含むが、それは反強磁性体に交換結合されない。したがって、自由層208の磁気モーメントは、自由に対象の範囲中において印加磁界の影響下で回転する。
【0016】
読取ヘッド200はさらに1対のバイアス磁石204および205を含み、それらは、矢印226によって示されるように、図の面と平行で、かつ概ね水平に配向付けられた磁気モーメントで自由層208にバイアスをかける磁界を生じさせる。このバイアスは、自由層208の磁気モーメントが、たとえば読取ヘッド200によって感知されるデータにノイズを導入するかもしれない熱エネルギーによりドリフトするのを防ぐ。しかし、バイアスは十分に小さく、自由層208の磁気モーメントは、データディスク108上に記憶されたデータビットの磁界のような印加磁界に応じて変化し得る。センサ218、電極220、221は、それぞれ、絶縁材222、223によって、バイアス磁石204および205から分離され電気的に隔離される。
【0017】
トンネル障壁層210は自由層208と基準層211とを分離する。トンネル障壁層210は十分に薄く、量子力学的電子トンネル効果が基準層211と自由層208との間に生じる。電子トンネル効果は電子スピンに依存し、センサ218の磁気応答を、基準層211および自由層208の相対的配向およびスピン偏極の関数にする。基準層211および自由層208の磁気モーメントが平行の場合、電子トンネル効果の最も高い確率が生じ、基準層211および自由層208の磁気モーメントが反平行の場合、電子トンネル効果の最も低い確率が生じる。したがって、センサ218の電気抵抗は印加磁界に応じて変化する。ディスク108上のデータビットは、図2の面に垂直な方向において、図の面の中に向かって、または図の面からでるように、磁化される。したがって、センサ218がデータビット上を通ると、自由層208の磁気モーメントは、センサ218の下を通過するビットによって生じた磁界に応じて、図2の面内に、または図2の面から出るように回転し、センサ218の電気抵抗を変化させる。センサ218によって感知されるビットの値(たとえば1または0のいずれか)は、したがって、第1の電極221から第2の電極220に流れる電流に基づいて判断されてもよい。
【0018】
ディスクドライブのような磁気データ記憶装置の記憶容量を増加させるために、データディスク108上の磁気的に配向された区域(ビット)のサイズは、より高いデータ密度を生じさせるよう、継続的に、より小さくされつつある。したがって、読取ヘッド200のサイズは、継続的に、より小さくされてもよく、特に、シールドからシールドの間隔が減じられてもよく、センサ218は、データディスク108上の隣接したビットの磁界から実質的に隔離される。図3および図4は、シールドからシールドの間隔が減少する場合において生じるかもしれない例示的問題を示す。
【0019】
図3は、距離301だけ離れた第1のシールド302および第2のシールド303含む読取ヘッド300の実施例を示す。読取ヘッド300は、読取ヘッド200と同様に、センサ318、第1のバイアス磁石304、および第2のバイアス磁石305を含む。センサ318の層は、明瞭にするため、図3には示されない。第1のバイアス磁石304は、各々矢印324によって表わされる磁化方向をともなう、複数の磁区322を含む。第1のバイアス磁石304は、磁束線320aおよび320b(まとめて「磁束線320」)によって表わされる磁界を生じさせる。示されるように、磁束線320bのうちのいくつかは、磁石304、305およびセンサ318の面においては放たれないが、その代り、シールド302またはシールド303のうちの1つと交差する。これらの磁束線は、センサ318の自由層のバイアスをかけることに寄与しない、第1のバイアス磁石304により生じた磁界の量を表わす。しかしながら、磁束線320aは、センサ318を通って進む。磁界のこの部分のうちの少なくともいくらかは、水平方向(つまり磁束線320aと平行)でのセンサ318の自由層のバイアスをかけることに寄与する。
【0020】
図4は、次いで、データディスク108上のより小さな磁区を読取るよう使用されてもよい、より小さなシールドからシールドの間隔401を含む読取ヘッド400を示す。図4に示される実施例では、バイアス磁石404および405のサイズは、センサ418のように、図3におけるものと比較してより小さく示されている。しかしながら、これはすべての実施例においてそうでなくてもよい。たとえば、いくつかの実施例では、バイアス磁石404、405およびセンサ418は同じサイズのままである一方、絶縁材428の厚みだけがより小さくされてもよい。
【0021】
バイアス磁石404、405およびセンサ418のサイズがより小さいかどうかにかかわらず、シールドからシールドの間隔401の低減の結果、磁束線420bによって表わされるように、バイアス磁石404により生成された磁界のうちのより大きな部分が、第1のシールド402または第2のシールド403の1つに向かう。シールド402および403のうちの1つに向かう磁界の部分が増加する結果、一本の磁束線420aによって表わされるように、自由層(図4に示されない)にバイアスをかけることに対して利用可能な磁界の部分が小さくなる。このより低いバイアスのために、センサ418の信号対ノイズ比は、センサ318の信号対ノイズ比より低いかもしれず、それは不利である。
【0022】
図3〜図4は、より小さな読取ヘッド400で生じるかもしれない別の問題を示す。たとえば、バイアス磁石404は、バイアス磁石304の磁気グレイン322に対して、より小さな磁気グレイン422を含む。より小さな磁気グレイン422は、矢印426によって示されるように、系に存在する熱エネルギーが個々のグレイン422の磁気モーメントにそれ自体を再配向させることになる、より高い確率に帰着する。個々の磁気グレイン422の磁気モーメントの再配向は、バイアス磁石404の全体的な磁気モーメントを減少させるかもしれず、時間にわたって実際著しく磁気モーメントを減少させるかもしれない。
【0023】
したがって、より高い飽和磁化および保磁力を備えた、バイアス磁石404および405が望まれる。より高い磁化は、自由層にバイアスをかけるのに役立つバイアス磁石404および405の磁束を増加させ、より高い保磁力は、磁化の安定性を増加させるだろう。これは、次いで、ハードディスクドライブ(たとえばディスクドライブ100)の読取ヘッド400におけるより小さなセンサ(たとえばセンサ418)の使用を促進させるだろう。
【0024】
鉄および白金族金属を含む合金は比較的高い保磁力および磁気モーメントを提供するだろう。Pt族金属は、たとえばPt、Pd、Ir、RhおよびRu、またはその組合わせから選択されてもよい。Ptを含むPt族金属が好まれ、Ptが特に好まれる。
【0025】
合金は、さらに、(たとえば)銅、金、銀などのように、他の元素を低比率で含んでいてもよい。しかしながら、高い保磁力および高い磁気モーメントを提供するためには、鉄−白金合金は、好ましくは、高異方性L10または面心正方(FCT)相構成を含むべきである。
【0026】
たとえば、図5の鉄−白金(FePt)の二元系相図において示されるように、L10相構成は、約35の原子百分率(at.%)と約57at.%との間の白金(Pt)と、残余Feおよび付随的不純物(たとえば約1at.%未満の不純物)を含む固溶体であり得る。より好ましくは、図6は、Pt原子602およびFe原子604が(約50at.%Ptおよび約50at.%Feで、付随的不純物含まない合金に対して)1:1原子数比で交互するシートに規則付けられたL10相構成を示す。
【0027】
L10相は、L10相構成においてPtおよび鉄(Fe)の原子の規則構造を生じさせるよう、FCC不規則合金(A1相合金とも呼ばれる)の比較的高温(約500℃より高い)アニーリングを典型的には必要とする。この高温アニーリングステップは、読取ヘッド200のようなハードディスク読取ヘッドにおけるFePt合金の使用を妨げる。なぜならば、読取ヘッド200の残りの構成要素(たとえばセンサ218)は、そのような温度で劣化するからである。
【0028】
1つの局面では、この開示は、高温アニーリングステップを必要とせずに、規則相構成を有する合金を形成する方法に向けられる。この方法は、一般に、シード層とキャップ層とを含む多層構造の使用を含む。多層構造は、合金を含む少なくとも1つの中間層をさらに含む。いくつかの実施例では、シード層および/またはキャップ層は、合金の成分を含み、いくつかの好ましい実施例では、シード層および/またはキャップ層成分は合金の少数成分である。
【0029】
図7は、高異方性を備えた規則相構成合金を生産するよう使用されてもよい多層構造700を示す。多層構造700は、シード層702、キャップ層704、およびシード層702とキャップ層704との間に形成された中間合金層706を含む。合金層706、シード層702およびキャップ層704は、たとえば、強磁性合金、フェリ磁性合金または反強磁性合金の生産のためにPt、Fe、Mn、Ir、Co、などを含む広範囲の成分から形成されてもよい。いくつかの実施例では、シード層702およびキャップ層704は、合金層706中に存在する成分を含む。他の実施例では、シード層702およびキャップ層704は、合金層706中に存在しない成分を含む。
【0030】
いくつかの実施例では、シード層702およびキャップ層704の少なくとも1つは、合金層706中に存在する2つ以上の成分を含む。たとえば、シード層702、キャップ層704および合金層706は各々、第1の成分および第2の成分を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、シード層702およびキャップ層704の少なくとも1つは、合金層706の中に低比率で存在する成分を高比率で含む。たとえば、シード層702およびキャップ層704の少なくとも1つは、高比率のPtおよび低比率のFeを含んでいてもよく、合金層706は、高比率のFeおよび低比率のPtを含む。いくつかの実施例では、シード層702およびキャップ層704の両方は、合金層706の中に低比率で存在する成分を高比率で含む。
【0031】
シード層702、合金層706およびキャップ層704は、たとえば、スパッタリング、イオンビーム蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、分子線エピタキシー、レーザアブレーションなどを含む多くの技術を使用して堆積されてもよい。1つの実施例では、シード層702は、これらの技術のうちの1つを使用して、基板上に堆積され、合金層706は、同じまたは異なる技術を使用して、シード層702上に堆積され、キャップ層704は、それらの技術のうちのどれでもを使用して、合金層706上に堆積される。
【0032】
シード層702およびキャップ層704の利用は、単一膜の合金のアニーリング、シード層702だけを備えた合金のアニーリング、またはキャップ層704だけを備えた合金のアニーリングと比較して、有利かもしれない。図8A〜図8Dは1つのそのような利点を示す。これらのプロットにおいて示される重要な1つのパラメーターは合金の保磁力である。保磁力は、磁気モーメントがゼロと等しい磁界、または磁気モーメント−磁界曲線が磁界軸(x軸)と交差する点である。面内保磁力は、原子が規則相構成へ規則付けられる程度、および合金における磁気異方性の程度を示す。すなわち、より高い面内保磁力は、より大きな磁気異方性を備えたより高規則性合金を示す。
【0033】
たとえば、図8Aは、印加磁界に応じたFePt合金の磁気モーメントを示す。図8AのFePt合金は、アニーリング前において、約38at.%Ptおよび約62at.%Feを含み、約300℃の温度で約4時間アニーリングされた。理解できるように、曲線801および802の保磁力の絶対値の平均により計算された面内保磁力は、約1420Oeである。図8Bは、次いで、Ptシード層702とともに形成された、図8Aの合金と同じ組成のFePt合金を示す。図8Bにおけるサンプルは、図8Aのサンプルと同様に、約300℃の温度で約4時間アニーリングされた。図8Bのサンプルは、曲線803および804の保磁力の絶対値の平均により計算されて、約2400Oeの面内保磁力を示す。
【0034】
図8Cは、再び、アニーリング前において、約38at.%Ptおよび約62at.%Feを含む、FePt合金サンプルからの結果を示す。サンプルはPtのキャップ層704とともに約300℃の温度で約4時間アニーリングされた。サンプルは、曲線805および806の保磁力の絶対値の平均により計算されて、図8Bの合金と同様に、約2200Oeに面内保磁力を示す。
【0035】
図8Dは、次いで、アニーリング前において、約38at.%Ptおよび約62at.%Feを含み、Ptシード層702およびPtキャップ層704とともに形成され、約4時間、約300℃の温度でアニーリングされた、FePt合金サンプルからの結果を示す。サンプルは、曲線807および808の保磁力の絶対値の平均により計算されて、約5100Oeの面内保磁力を示し、それは、図8A〜図8Cに示されるサンプルのうちのどれよりも有意に高い。どのような理論によっても拘束されることは望まないが、現在利用可能なデータは、この効果はシード層702/合金層706界面およびキャップ層704/合金層706界面の両方で生じる相互拡散によることを示し、それはFeおよびPt原子をL10相構成に規則化することを促進する。
【0036】
いくつかの実施例では、シード層702およびキャップ層704は、中間合金層706の中にない成分を含んでもよい。たとえば、1つの実施例では、シード層702および/またはキャップ層704は銀を含み、その一方で合金層706はFePt合金を含む。
【0037】
図9A〜図9Cは、異なるシード層702およびキャップ層704組成とともに形成された3つのFePt合金に対する磁気モーメント対磁界のプロットである。図9Aが示すように、アニーリング前において、約38at.%Ptおよび約62at.%Feを含み、銀のシード層702および銀のキャップ層704を備えたFePt合金を約4時間約300℃でアニーリングして、約200Oeの比較的低い面内保磁力を備えたFePt合金を生産する。図9Bは、同じ条件でアニーリングされた後における、銀のシード層702および白金キャップ層704とともに形成された図9Aと同じ組成のFePt合金の応答を示す。面内保磁力は、はるかにより高く、約1300Oeである。図9Cは、次いで、同じ条件でアニーリングされた後における、白金シード層702および銀のキャップ層704とともに形成された図9Aと同じ組成のFePt合金の応答を示す。このサンプルの面内保磁力は約2300Oeである。これらの保磁力は、Ptシード層702およびPtキャップ層704とともに形成された、図8Dにおいて示されるサンプルの保磁力よりはるかに低い。
【0038】
シード層702およびキャップ層704は、さらに、中間合金層706において低比率(つまり50at.%未満)で存在する成分、または中間合金層706において高比率(つまり50at.%を超える)で存在する成分のどちらかを含んでもよい。中間合金層706において低比率で存在する成分を含むシード層702およびキャップ層704を利用することはいくつかの実施例において有利かもしれない。たとえば、高比率のFeを含むL10FePt合金を生産するために、Ptシード層702およびPtキャップ層704が使用されてもよい。別の例として、高比率のPtを含むL10FePt合金を生産するために、Feシード層702およびFeキャップ層704が使用されてもよい。
【0039】
中間合金層706において低比率で存在する成分を含むシード層702およびキャップ層704を利用する結果、シード層702およびキャップ層704のその成分は合金層706へ拡散し、一方、他方の成分(合金層706に高比率で存在する成分)は合金層706からシード層702およびキャップ層704に拡散する。この2成分拡散の結果、開始合金の50:50比により近い組成を備えた合金に帰着する。2成分拡散は、さらに、L10相への相転移を生じさせるのに必要である原子の再規則化を促進する。
【0040】
図10A〜図10Dは、アニーリング前において、約36at.%Feおよび約64at.%Ptを含む一連のサンプルを、約4時間約300℃の温度でアニーリングした後のものを示す。図10Aは、Ptシード層702およびPtキャップ層704とともに形成されたサンプルに対する磁気モーメント対磁界のプロットを示す。サンプルは低い面内保磁力を示して、原子の貧弱な規則化および低い異方性を示す。図10Bは、Ptシード層702およびFeキャップ層704とともに形成された同様の合金の応答を示す。面内保磁力はより大きく、約700Oeであり、それは、Ptシード層702およびキャップ層704とともに形成されたサンプルに対してよりも、FeおよびPt原子のL10相構成へのよりよい規則化を示す。図10Cは、Feシード層702およびPtキャップ層704とともに形成された別の同様の合金の応答のプロットである。面内保磁力は、約600Oeであり、図10Bにおいて示されるサンプルのそれと同様である。
【0041】
図10Dは、Feシード層702およびFeキャップ層704とともに形成された合金の応答を示す。面内保磁力は、実質的により高く、約1500Oeであり、合金層706のFeおよびPt原子のL10相構成へのよりよい規則化およびより高い高異方性を示す。
【0042】
図9A〜図9Cおよび図10A〜図10Dで示される結果は、シード層702およびキャップ層704の組成が合金層706の規則相構成の形成において重要な役割を果たすことを示しており、それは合金706の保磁力によって示されている。たとえば、図9A〜図9Cは、アニーリング工程は、シード層702およびキャップ層704が合金層706の成分を含む場合に合金層706に高異方性を有する規則相構成をより有効に生じさせることを示唆する。図10A〜図10Dは、次いで、アニーリング工程は、シード層702およびキャップ層704が合金層706に低比率で存在する成分を含む場合に高異方性を有する規則相構成の形成においてさらにより有効であることを示す。
【0043】
シード層702およびキャップ層704の使用は、高異方性を有する規則相構成の形成を促進するよう意図される。どのような理論によっても拘束されることは望まないが、シード層702およびキャップ層704は、合金成分、ならびにシード層702およびキャップ層704の成分の、シード層702および中間合金層706の界面、ならびにキャップ層704および合金層706の界面での相互拡散を増強するかもしれない。この界面での成分の改善された相互拡散は、合金層706全体の規則化を改善するかもしれず、さらに、合金層706の組成をより化学量論的な成分比へ向かわせるかもしれない。これは、L10相構成、L12相構成などのような高異方性を有する規則相構成を含む合金に帰着する。
【0044】
シード層702およびキャップ層704の使用によって提供される増強された相互拡散のため、高保磁力合金がはるかに低いアニーリング温度で形成され得る。たとえば、FePtL10合金は、約6時間以内で約250℃から約400℃までの範囲の温度で多層構造700をアニーリングすることにより生産されてもよい。好ましくは、多層構造700は、約250℃から約350℃までの温度で、より好ましくは約300℃でアニーリングされてもよい。いくつかの実施例では、アニーリングは、好ましくは約4時間であってもよい。
【0045】
より低い温度でのアニーリングは、より高温度でのアニーリングと比較して、合金におけるグレインの成長を制限するかもしれない。これは、たとえば、磁気記憶媒体において使用されることになっている磁性材料に対して特に望ましいかもしれない。なぜなら、データ密度は磁性材料のグレインサイズと関係があるからである。
【0046】
低温アニーリングによって生じる、合金の規則化および異方性の量、ならびにしたがって保磁力は、合金層706におけるFeおよびPtの相対量にも依存する。図11A〜図11Cは、3つの合金組成に関する、Ptシード層702およびキャップ層704とともに約300℃で約4時間アニーリングされた後の磁気モーメント対磁界のプロットである。たとえば、図11Aは、アニーリング前において約62at.%Feおよび約38at.%Ptを含む合金の応答を示す。図8Dにおけるように、曲線1101および1102の保磁力の絶対値の平均により計算された面内保磁力は、約5100Oeであると分かった。図11Bは、アニーリング前において約70at.%Feおよび約30at.%Ptを含む合金の応答を示す。曲線1103および1104の保磁力の絶対値の平均により計算された面内保磁力は約4000Oeであると分かった。最後に、図11Cは、アニーリング前において約77at.%Feおよび約23at.%Ptを含む合金の応答を示す。曲線1105および1106の保磁力の絶対値の平均により計算された面内保磁力は約1200Oeであると分かった。これらの結果は、Fe含有量が増加するとともにFePt合金の保磁力が減少することを示す。どのような理論によっても拘束されることは望まないが、減少した保磁力は、FePt合金のL10相構成への規則化の減少によると考えられる。
【0047】
図12Aおよび図12Bは、アニーリング前後におけるPt−FePt−Pt多層構造の透過型電子顕微鏡(TEM)顕微鏡写真をそれぞれ示す。図12Aの下部および上部のより暗い帯は、それぞれPtシード層1202aおよびキャップ層1204aであり、一方、より明るい中間層1206aはFePt合金である。約300℃で約4時間アニーリングされた後、Pt層1202b、1204bから中間層1206bへの転移はそれほど明確ではなくなり、層1206bそれ自体はより一様な影であり、より一様な相構造の形成を暗示する。
【0048】
図13Aおよび図13Bは、図12Aおよび図12Bにおいて示されるサンプルに類似のサンプルに対する組成対深さの例示的プロットを示す。図13Aは、純粋なPt層1302a、1304aを、表面、および約200〜250Åの深さで示す。中間領域1306aは、約50Åから約200Åまでで、約60at.%Feおよび約40at.%Ptを含む合金を含む。約4時間約300℃の温度でアニーリングされた後に、サンプルは再度測定され、図13Bにおいて示されるプロットが生じた。理解され得るように、Ptは、純粋なPt層の両方からFePt合金へ拡散した。したがって、層1302bおよび1304bのPt含有量は約95at.%まで落ち、FePtの合金の中間領域1306bのPt含有量は、約45at.%まで上がった。さらに、図示されないが、相構成はFCCからL10に変わった。
【0049】
図14は、約64at.%Feおよび約36at.%Ptを含むFePt二元合金の磁気応答のプロットを示す。サンプルは磁気応答の測定に先立って約4時間の間約300℃の温度でアニーリングされており、Ptシード層およびPtキャップ層とともに形成された。合金は、約9130Oeの面内保磁力を示す。
【0050】
上記の方法によって形成されたL10相構成を備えたFePt合金は、ハードディスク読取ヘッドのために望ましいバイアス磁石を形成してもよい。L10FePt合金は、所望の磁化配向で自由層にバイアスをかけるよう好適に高い保磁力および磁気モーメントを有する。さらに、合金におけるFeおよびPtの相対量は、バイアス磁石に所望の特性をあたえるよう設計されてもよい。たとえば、より高いFe含有量をともなう合金の形成は、より高い飽和磁化に到るが、より低い保磁力に到る。反対に、より高いPt含有量をともなう合金の形成は、より低い飽和磁化に到るが、より高い保磁力に到る。
【0051】
バイアス磁石は、アニーリング前において、約80at.%Feおよび約20at.%Ptから約30at.%Feおよび約70at.%Pt、好ましくは、約65at.%Feおよび約35at.%Ptから約40at.%Feおよび約60at.%Ptを含んでもよい。
【0052】
FePtバイアス磁石は、ハードディスク読取ヘッドの形状に少なくとも部分的に依存する厚みを有してもよい。たとえば、現在のハードディスク読取ヘッドのシールドからシールドの距離は約150Åから約700Åの範囲に亘ってもよい。したがって、多層構造700の厚みは約700Åまでの厚みであってもよい。いくつかの好ましい実施例では、シード層702およびキャップ層704は、各々、約200Åまで、より好ましくは約25Åから約125Åまでの範囲の厚みを含む。中間合金層706は、約400Åまで、好ましくは約100Å〜300Åの厚みを含んでいてもよい。
【0053】
バイアス磁石は、読取ヘッド(たとえば読取ヘッド200)の製造の1ステップとして読取ヘッドに形成され、読取ヘッド全体を、その後、L10相構成を形成するのに必要な低温アニーリングに晒してもよい。アニーリングの温度は読取ヘッド(たとえばセンサ218)の残りの部分の性能に影響しないよう十分に低い。
【0054】
この開示のL10相構成FePt合金は、異なる組成の多層をさらに含んでいてもよい。たとえば、合金はPtに富んだ層およびFeに富んだ層を含んでいてもよい。異なる組成の多層を含むことは、バイアス磁石によって生じた磁界、ならびにしたがってセンサの自由層および他の層にあたえられるバイアスのさらなる調整を可能にするだろう。
【0055】
たとえば、多くの実施例では、最小のバイアスが基準層およびピンド層上にある状態で、比較的高いバイアスを自由層上に有することが望ましいだろう。これを達成するために、図15に示されるように、バイアス磁石は、Feに富んだ層1506を自由層1512にほぼ隣接して含み、Feにそれほど富んでいない層1504を、トンネル障壁層1514、基準層1516および/またはピンド層1518にほぼ隣接して含んでもよい。Feに富んだ層1506は、磁束線1508によって表わされる十分に大きな磁界を生じさせて、自由層1512にバイアスをかけ、一方、Feにそれほど富んでいない層1504は高い保磁力を所有するが、磁束線1510によって表わされる比較的より弱い磁界を生じ、したがって、基準層1516およびピンド層1518に同じように強く影響しない。バイアス磁石1500は、さらに、Ptシード層1502およびPtキャップ層1520を含み、それらは、上に記載されるように、Feにそれほど富んでいない層1504およびFeに富んだ層1506におけるL10相構成の形成を可能にする。
【0056】
さらに、規則化相構成合金を生産する方法は、他の材料の合金に拡張されてもよい。たとえば、シード層およびキャップ層を使用する方法は、高異方性磁性材料を必要とする適用例での使用のためにL10相CoPt合金を生産するために使用されてもよい。さらに、この方法は、反強磁性体として使用されるために、L12相構成IrMn3またはPtMn3材料を生産するために使用されてもよい。
【0057】
上に記載されているように、いくつかの実施例では、バイアス磁石は、シード層とキャップ層との間に複数の層(多層積層体)を含んでいてもよい。多層積層体はバイアス磁石に1つ以上の特性をあたえてもよい。たとえば、いくつかの実施例では、シード層、キャップ層、およびシード層とキャップ層との間の多層積層体を含む、バイアス磁石を、低減された温度でアニーリングして、規則相、たとえばL10相への相転移を引き起こしてもよい。そのような実施例では、個々の層の組成は異なってもよく、隣接層間の組成の差は、1つの層の1つ以上の成分の隣接層への、およびその逆の拡散に帰着してもよい。そのような拡散は、規則化相の形成を促進し、単一の中間合金層を含むバイアス磁石と比較して、規則化相を生じさせるために用いられてもよいアニーリング温度を下げるだろう。たとえば、いくつかの実施例では、シード層、キャップ層、およびシード層とキャップ層との間の多層積層体から形成された、バイアス磁石は、約200℃から約500℃までの温度で規則相を形成するためにアニーリングされてもよい。他の実施例では、バイアス磁石は、約200℃から約300℃の温度、または約280℃の温度で規則化相を形成するためにアニーリングされてもよい。いくつかの例においては、層は交互する組成、たとえば、交互するPtに富んだ層およびFeに富んだ層を含んでもよい。
【0058】
他の例においては、多層積層体の層は、組成傾斜、すなわち1つ以上の方向に沿って変化する組成を有する、バイアス磁石に帰着する組成を有してもよい。シード層、キャップ層、およびシード層とキャップ層との間の多層積層体を含む、バイアス磁石は、バイアス磁石の少なくとも一方向において変化する磁気モーメントおよび/または保磁力をあたえてもよい。磁気モーメントおよび/または保磁力は、バイアス磁石の組成に依存してもよい。このように、1つ以上の方向に沿って変化する組成を有する、バイアス磁石は、1つ以上の方向に沿って変化する磁気モーメントおよび/または保磁力を有する、バイアス磁石に帰着してもよい。たとえばPtリッチからFeリッチへの組成傾斜を有するバイアス磁石は、磁気モーメント傾斜、保磁力傾斜、または両方を有してもよい。
【0059】
図16Aは、シード層1602、キャップ層1612、およびシード層1602とキャップ層1612との間の多層積層体1604を含んでいてもよい、例示的な、バイアス磁石1600を示す。図16Aおよび図16Bにおいて示される実施例では、多層積層体1604は、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610を含む。他の実施例では、多層積層体1604はより多くまたはより少ない層を含んでいてもよい。
【0060】
一般に、シード層1602およびキャップ層1612は、上に記載された少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。たとえば、シード層1602および/またはキャップ層1612は、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、Coなどの少なくとも1つを含んでいてもよい。Pt族金属は、Pt、Pd、Ir、RhおよびRuの少なくとも1つを含んでいてもよい。いくつかの実施例では、シード層1602およびキャップ層1612の少なくとも1つは、Fe、Mn、Ir、Co、Pt族金属などのうちの少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。シード層1602およびキャップ層1612は同じ成分を含んでいてもよく、または、シード層1602およびキャップ層1612は異なる成分を含んでもよい。
【0061】
同様に、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610は各々、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、Coなどの少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施例では、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の少なくとも1つは、少なくとも2つの成分の合金を含んでもよい。第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の各々は、同じ成分、同じ成分の合金、異なる成分、または異なる成分の合金を含んでもよい。いくつかの実施例では、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610は、同様の成分を含み、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の少なくとも1つは、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の少なくとも1つの他のものと異なる組成(たとえば異なる割合の同じ成分)を含む。
【0062】
図16Bは、バイアス磁石1600の1つの例の組成のプロットであり、100at.%Ptの組成から100at.%Feの組成まで延びる。図16Bは、アニーリングされる前(線1614、1616、1618、1620および1622)、およびアニーリングされた後(線1624)における、バイアス磁石1600の例示的組成を示す。図16Bに示されるように、シード層1602およびキャップ層1612は、線1614および線1622によってそれぞれ表わされるように、各々、約100at.%Pt含んでいてもよい。図16Bにおいては示されないが、シード層1602および/またはキャップ層1612は、Ptに加えて、またはPtの代わりに、他の成分を含んでもよい。さらに、シード層1602はいくつかの実施例においてはキャップ層1612とは異なっている組成を含んでもよい。
【0063】
図16Bに戻って、線1616および線1620によってそれぞれ表わされるように、第1の層1606および第3の層1610は、シード層1602およびキャップ層1612より多くのFeを含んでもよい。他の実施例では、第1の層1606および第3の層1610は、線1616および線1620によって表わされる合金よりFeに富んだ合金またはFeにそれほど富んでいない合金を含んでいてもよい。次いで、線1618によって示されるように、第2の層1608は、最も大きな量のFeを含んでもよい。図16Bによれば、第2の層1608はPtとFeとの合金を含むが、他の実施例では、第2の層1608はFeのみを含んでいてもよく、または図16Bにおいて表わされる合金よりFeに富んだ合金またはFeにそれほど富んでいない合金を含んでいてもよい。図16Aおよび図16Bが示すように、バイアス磁石1600は、アニーリング前後の両方において、シード層1602およびキャップ層1612からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面1626に関して実質的に対称である組成プロファイルを有する。
【0064】
線1624によって示されるように、バイアス磁石1600のアニーリングは、アニーリングの前の組成プロファイルと比較して、ぼかされた、または滑らかにされた組成プロファイルに帰着してもよい。線1624が示すように、個々の層1602、1606、1608、1610および1612の成分は、アニーリング中に、バイアス磁石1600の隣接層間に拡散してもよい。たとえば、第1の層1606におけるFeの一部はシード層1602へ拡散してもよく、シード層1602からのPtは第1の層1606へ拡散してもよい。同様の拡散が、さらに他の隣接層間、たとえば、第1の層1606と第2の層1608との間、第2の層1608と第3の層1610との間、および第3の層1610とキャップ層1612との間で生じてもよい。バイアス磁石1600の隣接層間の成分の拡散は、より滑らかな、またはぼかされた組成傾斜に帰着してもよく、層の原子の、L10相構造のような規則化結晶構造への規則化を促進してもよい。図16Bは、丸められた段差を含み、完全には滑らかでない、アニーリング後の組成プロファイルを示すが(線1624)、他の実施例では、組成プロファイルはより滑らかであってもよいし、またはそれほど滑らかでなくてもよい。アニーリングの後の特定の組成プロファイルは、たとえば、アニーリング時間、アニーリング温度、層1602、1606、1608、1610および1612の厚み、層1602、1606、1608、1610および1612の組成などを含めて、多くのパラメーターの関数であってもよい。いずれにせよ、より滑らかなものおよびより滑らかでないもの両方の、他の組成プロファイルがこの開示によって企図される。
【0065】
上に記載されるように、より高いパーセンテージのFeを含む、バイアス磁石1600は、より低いパーセンテージのFeを含む、バイアス磁石より、より高い磁気モーメントおよびより低い保磁力を有してもよい。同様に、より高いパーセンテージのFeを含む層は、より低いパーセンテージのFeを含む層より、より高い磁気モーメントおよびより低い保磁力を有してもよい。このように、第2の層1608は、第1の層1606、第3の層1610、シード層1602およびキャップ層1612より、より高い磁気モーメントおよびより低い保磁力を有してもよい。いくつかの実施例では、第2の層1608は、読取センサの自由層、たとえば自由層208(図2)とほぼ整列してもよく、シード層1602、第1の層1606、第3の層1610およびキャップ層1612は、センサの他の層、たとえばセンサ218(図2)の他の層に近接してもよい。これらのような実施例では、自由層208以外のセンサ218の層に影響を及ぼす磁界の強度は低減されてもよく、それはセンサ218の読取り性能を改善するだろう。たとえば、バイアス磁石1600およびセンサ218の、記載された整列は、センサの信号対ノイズ比を改善するだろう。
【0066】
シード層1602およびキャップ層1612の各々の厚みは約200Åまで、より好ましくは約25Åから約125Åまでの範囲であってもよい。多層積層体1604は、約400Åまでの、およびいくつかの実施例では、約100Å〜約300Åの総厚みを含んでいてもよい。第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610は、同様の厚みまたは異なる厚みを有してもよい。第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の各々の厚みは約50Åまで、およびいくつかの実施例では、約5Å〜約30Å、または約10Å〜約15Åの厚みであってもよい。
【0067】
シード層1602、第1の層1606、第2の層1608、第3の層1610およびキャップ層1612は、たとえばスパッタリング、イオンビーム蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、分子線エピタキシー、レーザアブレーションなどを使用して形成されてもよい。層の各々は、同じ技術を使用して形成されてもよく、または、層の少なくとも1つは、層の少なくとも1つの他のものとは異なる技術によって形成されてもよい。
【0068】
図16Aは3つの層1606、1608および1610を含む多層積層体1604を含む、バイアス磁石1600を示しているが、他の実施例では、多層積層体は2つの層または3つを超える層を含んでいてもよい。たとえば、図17Aにおいて示されるように、バイアス磁石1700は5つの層1706、1708、1710、1712および1714を含む多層積層体1704を含んでいてもよい。バイアス磁石1600に類似して、バイアス磁石1700の層は、バイアス磁石1700のアニーリング前後両方において、図17Bにおいて示されるように、シード層1702およびキャップ層1716からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面1734に関して実質的に対称である組成傾斜を生じさせてもよい。
【0069】
図17Aおよび図17Bにおいて示されるように、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の各々は、ほぼ同じ厚みを有してもよい。たとえば、図16Aおよび図16Bに関して上に記載されるように、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の各々の厚みは約50Åまでであってもよい。他の例においては、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の各々は、約5Å〜約30Å、または約10Å〜約15Åの厚みであってもよい。いくつかの実施例では、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の少なくとも1つは、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の少なくとも1つの他のものの厚みと異なる厚みを有してもよい。
【0070】
図17Aおよび図17Bにおいて示される実施例では、シード層1702およびキャップ層1716は、約100at.%Ptを含む。他の実施例では、シード層1702およびキャップ層1716の少なくとも1つは、たとえばPd、Ir、RhまたはRuのような、別のPt族元素から形成されてもよく、または2つ以上のPt族元素の合金から形成されてもよく、またはPt族元素に加えて、もしくはその代替物として、少なくとも1つの元素を含んでもよい。たとえば、シード層1702およびキャップ層1716の少なくとも1つは、Mn、Co、Ir、Feなどの少なくとも1つを、Pt族元素に加えて、またはPt族元素の代わりに含んでもよい。
【0071】
図17Bは、第1の層1706および第5の層1714を、PtとFeとの合金、およびより特には高比率のPtを含むPtおよびFeの合金、つまりPtに富んだ合金を含むものとして示す。他の実施例では、第1の層1706および第5の層1714の少なくとも1つは、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金、たとえばPt族元素、Fe、Mn、Co、Irなどのうちの少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。さらに、図17Bは第1の層1706および第5の層1714をほぼ同じ組成を含むとして示しているが、他の実施例では、第1の層1706および第5の層1714は異なる組成を含んでいてもよい。他の実施例では、第1の層1706および第5の層1714の少なくとも1つは、高比率のFeを含む合金、つまりFeに富んだ合金を含んでいてもよい。
【0072】
図17Bは、さらに、第2の層1708および第4の層1712を、PtとFeとの合金、およびより特には高比率のFeを含むPtおよびFeの合金、つまりFeに富んだ合金を含むものとして示す。再び、他の実施例では、第2の層1708および第4の層1712の少なくとも1つは、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第2の層1708および第4の層1712の少なくとも1つは、Feに富んだ合金でない合金、たとえば約50at.%未満Feを含む合金を含んでいてもよい。さらに、図17Bは第2の層1708および第4の層1712をほぼ同じ組成を含むとして示しているが、他の実施例では、第2の層1708および第4の層1712は異なる組成を含んでいてもよい。
【0073】
図17Bにおいて示されるように、第3の層1710は実質的にFeのみを含んでいてもよい。他の実施例では、第3の層1710は、FeとPtとの合金を含んでいてもよく、別の元素、たとえばPt族、Co、Mn、Irを含んでいてもよく、またはFe、Co、Mn、IrおよびPt族元素の少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。上に記載されるように、いくつかの実施例では、第3の層1710が最も高い磁気モーメントを有し、したがって、最も高い原子百分率Feを含むことが望ましくてもよい。第3の層における原子百分率Feは、第1の層1706、第2の層1708、第4の層1712および第5の層1714における原子百分率Feより大きくてもよい。
【0074】
バイアス磁石1600(図16)と同様に、バイアス磁石1700の層は、実質的に別個の個々の層として形成されてもよい。たとえば、形成の後、シード層は線1718によって示されるように約100at.%Ptを含んでいてもよく、第1の層1706は線1720によって表わされるPtに富んだ合金を含んでいてもよく、第2の層1708は、線1722によって表わされるFeに富んだ合金を含んでいてもよい。第3の層1710は線1724によって示されるように約100at.%Feを含んでいてもよい。第4の層1712は、線1726によって表わされるFeに富んだ合金を含んでいてもよく、第5の層1714は、線1728によって表わされるPtに富んだ合金を含んでいてもよく、キャップ層1716は約100at.%Ptを含んでいてもよい。
【0075】
アニーリングの後、バイアス磁石1700の組成は、線1732によって表わされてもよい。特に、バイアス磁石1700のアニーリングは、アニーリングの前のバイアス磁石1700の組成プロファイルと比較して、ぼかされるか滑らかにされる組成プロファイルに帰着してもよい。線1732が示すように、個々の層1702、1706、1708、1710、1712、1714、1716の成分は、アニーリング中にバイアス磁石1700の近接層に拡散してもよい。たとえば、第1の層1706におけるFeの一部はシード層1702へ拡散してもよく、シード層1702におけるPtは第1の層1706へ拡散してもよい。同様の拡散が、さらに他の隣接層間、たとえば第1の層1706と第2の層1708との間、第2の層1708と第3の層1710との間などに生じてもよい。そのような拡散は、より滑らかな、またはぼかされた組成傾斜に帰着してもよく、層の原子の、L10相構造のような規則化結晶構造への規則化を促進してもよい。図17Bは、丸められた段差を含み、完全には滑らかでない、アニーリング後の組成プロファイルを示すが(線1732)、他の実施例では、組成プロファイルは図17Bより滑らかであってもよいし、またはそれほど滑らかでなくてもよい。アニーリングの後の特定の組成プロファイルは、たとえば、アニーリング時間、アニーリング温度、層1702、1706、1708、1710、1712、1714、1716の厚み、層1702、1706、1708、1710、1712、1714および1716の組成などを含めて、多くのパラメーターの関数であってもよい。いずれにせよ、より滑らかなものおよびより滑らかでないもの両方の、他の組成プロファイルがこの開示によって企図される。
【0076】
図18A〜図18Cは、シード層1802とキャップ層1816との間に多層積層体1804を含む、バイアス磁石1800の例を示す。図16A、図16B、図17Aおよび図17Bにおいて示される例とは対照的に、バイアス磁石1800は、シード層1802およびキャップ層1816からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面1834に関して非対称である組成傾斜を含む。面1834に関して非対称の組成傾斜は、最も大きな磁界強度を生じさせるバイアス磁石1800の部分の制御を促進してもよい。図18Bおよび図18Cは、バイアス磁石1800(図18B)および読取センサ1838(図18C)の例示的整列を示す。
【0077】
図18Aおよび図18Bにおいて示されるように、バイアス磁石1800は面1834より下に4つの層、つまりシード層1802、第1の層1806、第2の層1808および第3の層1810を含んでいてもよい。バイアス磁石1800は、さらに、面1834より上に、3つの層、つまり第4の層1812、第5の層1814およびキャップ層1816を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、シード層1802およびキャップ層1830は、図18Aにおいてそれぞれ線1818および線1830によって示されるように、約100at.%Ptを含んでいてもよい。他の実施例においては、上に記載されるように、シード層1802およびキャップ層1830の少なくとも1つは、別のPt族元素、Fe、Co、Mn、Irなど、別の元素を含んでいてもよく、またはこれらの元素の少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。
【0078】
図18Aが示すように、5つの層1806、1808、1810、1812および1814の各々は、異なる組成を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第1の層1806は、PtとFeとの合金、およびより特に、高比率のPtを含むPtおよびFeの合金、たとえば線1820によって表わされるようにPtに富んだ合金を含んでいてもよい。他の実施例では、第1の層1806は、図18Aにおいて示されるより大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金、たとえばPt族元素、Fe、Mn、Co、Irなどのうちの少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第1の層1806はFeに富んだ合金、つまり約50at.%より大きなFeを含む合金を含んでいてもよい。
【0079】
図18Aの線1822は、第2の層1808がPtとFeとの合金、およびより特には第1の層1806より大きな原子百分率Feを含むPtおよびFeの合金を含むことを示す。再び、他の実施例では、第2の層1808は図18Aにおいて示されるより大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第2の層1808は、高比率のFeを含むPt族元素およびFeの合金、たとえばFeに富んだ合金を含んでいてもよい。
【0080】
図18Aにおいて示されるように、線1824によって図18Aにおいて表わされる第3の層1810は、高比率のFeを含むPtおよびFeの合金を含んでいてもよい。他の実施例では、第3の層1810は、より大きなパーセンテージまたはより少ないパーセンテージのFeを含むFeとPtとの合金(Ptに富んだ合金を含む)を含んでもよく、また別の元素、たとえば別のPt族元素、Co、Mn、Ir、またはFe、Co、Mn、IrおよびPt族元素の少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。図18Aが示すように、第1の層1806、第2の層1808および第3の層1810は各々、キャップ層1816よりシード層1802に接近していてもよい。すなわち、第1の層1806、第2の層1808、および第3の層1810は、シード層1802およびキャップ層1816からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面1834より部分的にまたは完全に下に位置してもよい。
【0081】
図18Aにおける線1826によって示されるように、第4の層1812は実質的にFeのみを含んでいてもよく、またはPt族金属、Co、Ir、Mnなどのような別の元素のみを実質的に含んでいてもよい。他の実施例では、第4の層1812は、Fe、Co、Ir、MnおよびPt族金属の少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第4の層1812は、第1の層1806、第2の層1808、第3の層1810、第4の層1812および第5の層1814の最大の磁気モーメントを有することが望まれてもよい。したがって、第4の層1812は、最も高い原子百分率Fe、または高い磁気モーメントを提供する別の元素の最も高い原子百分率を含んでいてもよい。
【0082】
第5の層1814は、第4の層1812より低いパーセンテージのFeを含んでいてもよい。たとえば、図18Aにおいて線1828によって示されるように、第5の層1814は、約50at.%Feおよび50at.%Ptを含むPtとFeとの合金を含んでいてもよい。他の実施例では、第5の層1814は、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよい。たとえば、第5の層1814は高比率のFe、たとえばFeに富んだ合金、または高比率のPt、たとえばPtに富んだ合金を含んでいてもよい。他の実施例では、第5の層1814は、少なくとも1つの他の元素、たとえば別のPt族元素、Co、Ir、Mnなどを含んでいてもよく、またはFe、Co、Ir、Mn、Fe、Pt族元素などの少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。
【0083】
5つの層1806、1808、1810、1812および1814の少なくとも1つは、5つの層1806、1808、1810、1812および1814の少なくとも1つの他のものとは異なる厚みであってもよい。たとえば、図18Aおよび図18Bにおいて示されるように、第1の層1806、第2の層1808および第3の層1810は、ほぼ同じ厚みであってもよい。図18Aおよび図18Bはさらに第4の層1812および第5の層1814を同様の厚みであるとして示す。他の例においては、層の各々は異なる厚みであってもよく、または、層の各々はほぼ同じ厚みであってもよい。いずれにしても、図16Aおよび図16Bに関して上に記載されるように、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の各々の厚みは約50Åまでであってもよい。他の実施例では、5つの層1706、1708、1710、1712および1714の各々は、約5Åと約30Å、または約10Åと約15Åとの間の厚みを有してもよい。
【0084】
バイアス磁石1600(図16Aおよび図16B)およびバイアス磁石1700(図17Aおよび図17B)と同様に、バイアス磁石1800の層は、実質的に別個の個々の層として形成されてもよい。たとえば、形成の後、シード層1802は線1818によって示されるように約100at.%Ptを含んでいてもよく、第1の層1806は線1820によって表わされるFePt合金組成を含んでいてもよく、第2の層1808は、線1822によって表わされるFePt合金組成を含んでいてもよい。第3の層1810は線1824によって示されるようにFePt合金組成を含んでいてもよい。第4の層1812は、線1826によって表わされるように約100at.%Feを含んでいてもよい。第5の層1814は、線1828によって表わされるFePt合金組成を含んでいてもよく、キャップ層1816は約100at.%Ptを含んでいてもよい。アニーリングの後、バイアス磁石1800の組成は線1832によって表わされてもよい。特に、バイアス磁石1800のアニーリングは、アニーリングの前のバイアス磁石1800の組成プロファイルと比較して、ぼかされるか滑らかにされる組成プロファイルに帰着してもよい。線1832が示すように、個々の層1802、1806、1808、1810、1812、1814、1816の成分は、アニーリング中にバイアス磁石1800の近接層に拡散してもよい。たとえば、第1の層1806におけるFeの一部はシード層1802へ拡散してもよく、シード層1802におけるPtは第1の層1806へ拡散してもよい。同様の拡散が、さらに他の隣接層間、たとえば第1の層1806と第2の層1808との間、第2の層1808と第3の層1810との間などに生じてもよい。そのような拡散は、より滑らかな、またはぼかされた組成傾斜に帰着してもよく、層の原子の、L10相構造のような規則化結晶構造への規則化を促進してもよい。図18Aは、丸められた段差を含み、完全には滑らかでない、アニーリング後の組成プロファイルを示すが(線1832)、他の実施例では、組成プロファイルは図18Aより滑らかであってもよいし、またはそれほど滑らかでなくてもよい。アニーリングの後の特定の組成プロファイルは、たとえば、アニーリング時間、アニーリング温度、層1802、1806、1808、1810、1812、1814、1816の厚み、層1802、1806、1808、1810、1812、1814および1816の組成などを含めて、多くのパラメーターの関数であってもよい。いずれにせよ、より滑らかなものおよびより滑らかでないもの両方の、他の組成プロファイルがこの開示によって企図される。
【0085】
図18Bおよび図18Cは、バイアス磁石1800および読取センサ1838の整列を示す。読取センサ1838は図2に示されるトンネル磁気抵抗センサ218と同様であってもよい。特に、センサ1838は、反強磁性シード層1850、ピンド層1848、基準層1846、トンネル障壁層1844、自由層1842およびキャップ層1840を含んでいてもよい。図18Bおよび図18Cによって示されるように、バイアス磁石1800の第4の層1812は、読取センサ1838の自由層1842と実質的に整列してもよい。上に記載されるように、第4の層1812は最も高い原子百分率Feを含んでいてもよく、このため、最も高い磁気モーメントを有してもよい。第1の層1806、第2の層1808、第3の層1810および第5の層1814は、第4の層1812より低い原子百分率Feを含んでいてもよく、したがって、より低い磁石モーメントを有してもよい。第4の層1812を自由層1842と実質的に整列させることによって、第4の層1812の磁気モーメントは、読取センサ1838の残りの層に可能な限り大きく影響しない一方で、自由層1842の磁気モーメントにバイアスをかけてもよい。さらに、シード層1802、第1の層1806、第2の層1808、第3の層1810、第5の層1814およびキャップ層1816の磁気モーメントは、第4の層1812のそれ未満であってもよく、読取センサ1838の残りの層に近接して位置決めされる場合に第4の層1812と同様の磁気モーメントを有する層よりも、読取センサ1838の残りの層により少ない程度影響してもよい。このように、バイアス磁石1800の構築は、バイアス磁石1800の磁気モーメントの、自由層1842以外の読取センサ1838の層に対する、望ましくない影響を低減してもよい。
【0086】
図18Bおよび図18Cが示すように、第4の層1812および自由層1842は厳密には整列しない。たとえば、第4の層1812は自由層1842より厚い。他の実施例では、第4の層1812および自由層1842はより完全に整列してもよい。たとえば、第4の層1812および自由層1842はほぼ同じ厚みを有してもよい。他の実施例では、第4の層1812および自由層1842は、それほど厳密に整列しなくてもよい。たとえば、第4の層1812および自由層1842の境界のどちらも整列しなくてもよく、第4の層1812および自由層1842は異なる厚みを有してもよい。
【0087】
図18Aおよび図18Bは非対称の組成プロファイルを含む5つの層1806、1808、1810、1812および1814を有する多層積層体1804を含む、バイアス磁石1800を示しているが、他の実施例では、バイアス磁石は5つ未満の層または5つを超える層を含んでいて、非対称の組成プロファイルを有してもよい。たとえば、バイアス磁石は4つの層または6つの層を含んでもよく、非対称の組成プロファイルを有してもよい。さらに、バイアス磁石1800と読取センサ1838との間の整列は図18Bおよび図18Cにおいて示されるそれとは異なってもよい。たとえば、第3の層1810および自由層1842がほぼ整列してもよく、または、第5の層1814および自由層1842がほぼ整列してもよい。バイアス磁石1800および読取センサ1838の他の整列は明白で、本開示によって企図される。
【0088】
いくつかの実施例では、多層積層体を含むバイアス磁石は組成傾斜を含んでいなくてもよく、その代わりに、多層積層体の全体にわたってほぼ一様な組成プロファイルを含んでいてもよい。たとえば、図19Aおよび図19Bにおいて示されるように、バイアス磁石1900は、シード層1902、キャップ層1916、ならびに5つの層1906、1908、1910、1912および1914を含む多層積層体1904を含んでいてもよい。図19Aおよび図19Bは、バイアス磁石1900を、PtとFeとを含むものとして示す。他の実施例では、バイアス磁石1900は、Feおよび別のPt族元素、たとえばPd、Ir、RhまたはRuなどを含んでいてもよく、またはCo、Ir、Mn、FeおよびPt族元素の少なくとも2つを含んでいてもよい。
【0089】
示される実施例では、シード層1902およびキャップ層1916は各々約100at.%Ptを含む。他の実施例では、シード層1902およびキャップ層1916の少なくとも1つは、たとえばPd、Ir、RhまたはRuのような、別のPt族元素から形成されてもよく、または2つ以上のPt族元素の合金から形成されてもよく、またはPt族元素加えて、またはその代替物として少なくとも1つの元素を含んでもよい。たとえば、シード層1902およびキャップ層1916の少なくとも1つは、Mn、Co、Ir、Feなどの少なくとも1つを、Pt族元素に加えて、またはPt族元素の代わりに含んでもよい。
【0090】
図19Bは、第1の層1906、第3の層1910および第5の層1914を、PtとFeとの合金、およびより特定的には高比率のFeを含むPtおよびFeの合金、たとえばFeに富んだ合金を含むものとして示す。他の実施例では、第1の層1906、第3の層1910および第5の層1914の少なくとも1つは、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金、たとえばPt族元素、Fe、Mn、Co、Irなどのうちの少なくとも2つの合金を含んでいてもよい。さらに、図19Bは、第1の層1906、第3の層1910および第5の層1914をほぼ同じ組成を含むとして示しているが、他の実施例では、第1の層1906、第3の層1910および第5の層1914の少なくとも1つは異なる組成を含んでいてもよい。他の実施例では、第1の層1906、第3の層1910および第5の層1914の少なくとも1つは、高比率のPtを含む合金、つまりPtに富んだ合金を含んでいてもよい。
【0091】
図19Bは、さらに、第2の層1908および第4の層1912を、PtとFeとの合金、およびより特定的には高比率のPtを含むPtおよびFeの合金、つまりPtに富んだ合金を含むものとして示す。再び、他の実施例では、第2の層1908および第4の層1912の少なくとも1つは、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよく、または1つ以上の追加の元素を含んでいてもよく、または異なる元素の合金を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、第2の層1908および第4の層1912の少なくとも1つは、Feに富んだ合金でない合金、たとえば約50at.%未満Feを含む合金を含んでいてもよい。さらに、図19Bは第2の層1908および第4の層1912をほぼ同じ組成を含むとして示しているが、他の実施例では、第2の層1908および第4の層1912は異なる組成を含んでいてもよい。
【0092】
シード層1902、第1の層1906、第2の層1908、第3の層1910、第4の層1912、第5の層1914およびキャップ層1916の各々は、図19Bにおいて示される組成と異なる組成を含んでいてもよい。たとえば、シード層1902、第1の層1906、第2の層1908、第3の層1910、第4の層1912、第5の層1914およびキャップ層1916の少なくとも1つは、より大きな原子百分率Feまたはより少ない原子百分率Feを含んでいてもよい。シード層1902、第1の層1906、第2の層1908、第3の層1910、第4の層1912、第5の層1914およびキャップ層1916の少なくとも1つの異なる組成は、アニーリング前および/または後におけるバイアス磁石1900とは異なる組成プロファイルを有する、バイアス磁石に帰着してもよい。
【0093】
バイアス磁石1600(図16A)と同様に、バイアス磁石1900の層は、実質的に別個の個々の層として形成されてもよい。たとえば、形成の後、シード層1902は、線1918によって示されるように、約100at.%Ptを含んでいてもよく、第1の層1906は線1920によって表わされるFeに富んだ合金組成を含んでいてもよく、第2の層1908は、線1922によって表わされるPtに富んだ合金組成を含んでいてもよい。線1924によって示されるように、第3の層1910はFeに富んだ合金を含んでいてもよく、第4の層1912は、線1926によって表わされるPtに富んだ合金組成を含んでいてもよく、第5の層1914は、線1928によって表わされるFeに富んだ合金組成を含んでいてもよく、キャップ層1916は約100at.%Ptを含んでいてもよい。
【0094】
アニーリングの後、バイアス磁石1900の組成は、線1932によって表わされてもよい。特に、バイアス磁石1900のアニーリングは、アニーリングの前のバイアス磁石1900の組成プロファイルと比較して、ぼかされるか滑らかにされる組成プロファイルに帰着してもよい。線1932が示すように、個々の層1902、1906、1908、1910、1912、1914、1916の成分は、アニーリング中にバイアス磁石1900の近接層に拡散してもよい。たとえば、第1の層1906におけるFeの一部はシード層1902へ拡散してもよく、シード層1902におけるPtは第1の層1906へ拡散してもよい。同様の拡散が、さらに他の隣接層間、たとえば第1の層1906と第2の層1908との間、第2の層1908と第3の層1910との間などに生じてもよい。そのような拡散は、より滑らかな、またはぼかされた組成傾斜に帰着してもよく、層の原子の、L10相構造のような規則化結晶構造への規則化を促進してもよい。図19Bは、丸められた段差を含み、完全には滑らかでない、アニーリング後の組成プロファイルを示すが(線1932)、他の実施例では、組成プロファイルは図19Bより滑らかであってもよいし、またはそれほど滑らかでなくてもよい。アニーリングの後の特定の組成プロファイルは、たとえば、アニーリング時間、アニーリング温度、層1902、1906、1908、1910、1912、1914、1916の厚み、層1902、1906、1908、1910、1912、1914および1916の組成などを含めて、多くのパラメーターの関数であってもよい。いずれにせよ、より滑らかなものおよびより滑らかでないもの両方の、他の組成プロファイルがこの開示によって企図される。
【0095】
いくつかの実施例では、バイアス磁石は、5つを超える層または5つ未満の層を含む多層積層体を含んでいてもよい。いくつかの実施例では、より多くの数の層を含む多層積層体は、より少数の層を有する多層積層体と比較して、規則相構造を形成するために必要なアニーリング温度を下げてもよい。
【0096】
図20はバイアス磁石、たとえば、バイアス磁石1600(図16A)が形成されてもよい例示的技術の流れ図である。最初に、シード層1602が形成されてもよい(2002)。シード層1602は、たとえばスパッタリング、イオンビーム蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、分子線エピタキシー、レーザアブレーションなどを含めて、さまざまな技術のうちのいずれによって形成されてもよい。シード層1602は、たとえば絶縁材222または223(図2)のようなさまざまな基板上に形成されてもよい。上に記載されるように、シード層1602の厚みは約200Åまでであってもよく、いくつかの実施例では、約25Åと約125Åとの間の厚みを有してもよい。
【0097】
その後、多層積層体1604がシード層1602の上に形成される(2004)。図16Aおよび図16Bに関して記載されるように、多層積層体1604は2つの層、3つの層または3つを超える層を含んでいてもよい。多層積層体1604における層は同様かまたは異なる組成を含んでもよい。多層積層体1604における第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の各々は、個々に形成されてもよく、各層1606、1608、1610は、たとえばスパッタリング、イオンビーム蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、分子線エピタキシー、レーザアブレーションなどによって形成されてもよい。第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の各々の厚みは約50Åまでであってもよい。いくつかの実施例では、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の少なくとも1つは、約5Åと約30Åとの間の厚みを有してもよく、他の実施例では、第1の層1606、第2の層1608および第3の層1610の少なくとも1つは、約5Åと約15Åとの間の厚みを有してもよい。
【0098】
多層積層体1604の層が形成されると、キャップ層1612を多層積層体1604の上に形成してもよい(2006)。キャップ層1612は、たとえばスパッタリング、イオンビーム蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、分子線エピタキシー、レーザアブレーションなどによって形成されてもよい。上に記載されるように、キャップ層1612の厚みは約200Åまでの厚みであってもよく、いくつかの実施例では、約25Åと約125Åとの間の厚みを有してもよい。
【0099】
最後に、バイアス磁石1600をアニーリングしてもよい(2008)。たとえば、バイアス磁石1600は約6時間以内で約200℃から約500℃までの範囲における温度でアニーリングされてもよい。いくつかの実施例では、バイアス磁石1600は約200℃〜約300℃、または約280℃の温度でアニーリングされてもよい。いくつかの実施例では、アニーリングは約4時間であってもよい。バイアス磁石1600のアニーリングは、バイアス磁石1600の隣接層間の少なくとも1つの成分の拡散を促進してもよい。そのような拡散は、規則化相、たとえばL10規則化相の形成を促進してもよい。そのような拡散は、さらにより一様な組成、たとえば図19Aおよび図19Bに帰着してもよく、またはより滑らかな組成傾斜、たとえば図16A、図16B、図17A、図17B、図18Aおよび図18Bに帰着してもよい。
【実施例】
【0100】
図21は、4つの異なる鉄−白金硬質磁石についての磁気モーメント対磁界のプロットである。曲線2102は、約280℃でアニーリングされた、Ptシード層、Feに富んだFePt合金中間層およびPtキャップ層を含む硬質磁石の残留保磁力を表わす。曲線2104は、約280℃でアニーリングされた、10ÅPtシード層、40at.%Feおよび60at.%Ptを含む10Å層、65at.%Feおよび35at.%Ptを含む150Å層、40at.%Feおよび60at.%Ptを含む10Å層、ならびに10ÅPtキャップ層を含む硬質磁石の残留保磁力を表わす。曲線2106は、約300℃でアニーリングされた、Ptシード層、Feに富んだFePt合金中間層およびPtキャップ層を含む硬質磁石の残留保磁力を表わす。曲線2108は、約300℃でアニーリングされた、10ÅPtシード層、40at.%Feおよび60at.%Ptを含む10Å層、65at.%Feおよび35at.%Ptを含む150Å層、40at.%Feおよび60at.%Ptを含む10Å層、ならびに10ÅPtキャップ層を含む硬質磁石の残留保磁力を表わす。
【0101】
図21が示すように、曲線2108によって表わされる硬質磁石には曲線2106によって表わされる硬質磁石の残留保磁力より大きい約1400Oeである残留保磁力があった。これは、ほぼ同じ温度でアニーリングされたとき、多層積層体は、単一の中間層を含む硬質磁石より大きな残留保磁力を有する硬質磁石に帰着するだろうことを示す。
【0102】
曲線2104および2106は、約280℃の温度でアニーリングされた多層積層体を含む硬質磁石は、約300℃でアニーリングされた単一の中間層を有する硬質磁石の残留保磁力に匹敵する残留保磁力を有するだろうことを示す。したがって、曲線2104および2106の比較は、シード層とキャップ層との間の多層積層体の利用により、化学的規則化温度を下げてもよいことを示す。
【0103】
この発明のさまざまな実施例が記載された。上に記載された実現例および他の実現例は、特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0104】
1600 バイアス磁石、1602 シード層、1604 多層積層体、1606 第1の層、1608 第2の層、1610 第3の層、1612 キャップ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第1の成分を含むシード層と、
前記第1の成分を含むキャップ層と、
前記シード層と前記キャップ層との間の多層積層体とを備え、
前記多層積層体は、前記第1の成分と、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第2の成分とを含む第1の層を含み、前記第2の成分は前記第1の成分と異なり、前記多層積層体はさらに、前記第1の層上に形成され前記第2の成分を含む第2の層と、前記第2の層上に形成され前記第1の成分および前記第2の成分を含む第3の層とを含む、硬質磁石。
【請求項2】
前記第1の成分はPt族金属を含み、前記第2の成分はFeを含む、請求項1に記載の硬質磁石。
【請求項3】
前記Pt族金属はPtを含む、請求項2に記載の硬質磁石。
【請求項4】
前記第1の層は、前記第2の層より低い原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第1の合金を含み、前記第3の層は、前記第2の層より低い原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第3の合金を含む、請求項2に記載の硬質磁石。
【請求項5】
前記多層積層体は、さらに、前記第1の層上に形成された第4の層、および前記第4の層上に形成された第5の層を含み、前記第4の層は、前記第1の合金より大きくかつ前記第2の層より小さい原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第4の合金を含み、前記第5の層は、前記第4の合金より大きい原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第5の合金を含む、請求項4に記載の硬質磁石。
【請求項6】
前記硬質磁石の組成プロファイルは、前記シード層および前記キャップ層からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面に関して実質的に対称である、請求項1に記載の硬質磁石。
【請求項7】
前記硬質磁石の組成プロファイルは、前記シード層および前記キャップ層からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面に関して非対称である、請求項1に記載の硬質磁石。
【請求項8】
前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層の少なくとも1つは、約10Å〜約15Åの間の厚みを有する、請求項1に記載の硬質磁石。
【請求項9】
Pt族金属を含むシード層、前記Pt族金属を含むキャップ層、および前記シード層と前記キャップ層との間の多層積層体を含む硬質磁石を備え、
前記多層積層体は、FeおよびPt族金属の第1の合金を含む第1の層と、Feを含み前記第1の層上に形成される第2の層と、Feおよび前記Pt族金属の第2の合金を含み前記第2の層上に形成される第3の層とを含む、データ記憶装置のための読取書込ヘッド。
【請求項10】
前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層の少なくとも1つは、約50Åまでの厚みを有する、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項11】
前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層の少なくとも1つは、約10Å〜約15Åの間の厚みを有する、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項12】
自由層を含む読取センサをさらに含み、前記第2の層は前記自由層とほぼ整列している、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項13】
前記第1の合金は前記第2の層より低い原子百分率のFeを含み、前記第3の合金は、前記第2の層より低い原子百分率のFeを含む、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項14】
前記多層積層体は、さらに、前記第1の層上に形成された第4の層、および前記第4の層上に形成された第5の層を含み、前記第4の層は、前記第1の合金より大きくかつ前記第2の層より小さい原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第4の合金を含み、前記第5の層は、前記第4の合金より大きい原子百分率のFeを含むFeおよび前記Pt族金属の第5の合金を含む、請求項13に記載の読取書込ヘッド。
【請求項15】
自由層を含む読取センサをさらに含み、前記第2の層は前記自由層とほぼ整列している、請求項14に記載の読取書込ヘッド。
【請求項16】
前記硬質磁石の組成プロファイルは、前記シード層および前記キャップ層からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面に関して実質的に対称である、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項17】
前記硬質磁石の組成プロファイルは、前記シード層および前記キャップ層からほぼ等距離でありかつそれらと実質的に平行である面に関して非対称である、請求項9に記載の読取書込ヘッド。
【請求項18】
Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第1の成分を含むシード層を形成するステップと、
前記シード層上に多層積層体を形成するステップとを備え、前記多層積層体は、前記第1の成分と、Pt族金属、Fe、Mn、Ir、およびCoの少なくとも1つを含む第2の成分とを含む第1の層を含み、前記第2の成分は前記第1の成分と異なり、前記多層積層体はさらに、前記第1の層上に形成され前記第2の成分を含む第2の層と、前記第2の層上に形成され前記第1の成分および前記第2の成分を含む第3の層とを含み、さらに、
前記多層積層体上にキャップ層を形成するステップを備え、前記キャップ層は前記第1の成分を含み、さらに、
前記シード層、前記多層積層体および前記キャップ層の隣接層間の相互拡散を引き起こすために前記シード層、前記多層積層体および前記キャップ層をアニーリング温度に加熱するステップを備える、方法。
【請求項19】
前記第1の成分はPt族金属を含み、前記第2の成分はFeを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多層構造をアニーリング温度に加熱するステップは、前記多層構造を約250℃と約300℃との間に加熱することを含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図13A】
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【図13B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図5】
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【図6】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図14】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−96356(P2011−96356A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238248(P2010−238248)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】