説明

多層配線基板の放射線検査方法および放射線検査装置ならびに放射線検査方法を実現する放射線検査プログラム

【課題】多層配線基板の接合状態に関する検査を高精度にかつ迅速に行うことができる放射線検査方法、放射線検査装置と放射線検査プログラムを提供する。
【解決手段】本方法は、多層配線基板の各配線パターンの層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得工程と、撮像した上記複数の放射線画像から3次元再構成画像を生成する再構成画像生成工程と、生成した上記3次元再構成画像から上記多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出するスライス画像抽出工程と、抽出された上記水平スライス画像より上記導通部の状態を得るための処理を行う画像処理工程と、上記画像処理工程によって得られた処理結果と基準値とを比較して上記多層配線基板の良否を判定する良否判定工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の放射線検査方法および放射線検査装置ならびに放射線検査方法を用いた放射線検査プログラムに関し、さらに詳しくは、多層貫通配線基板(以下、貫通基板と呼ぶ)や多層ビルドアップ配線基板(以下、ビルドアップ基板と呼ぶ)などの多層配線構造の検査に適した放射線検査方法およびその放射線検査装置ならびにこの放射線検査方法および装置に示される良否判定機能を実現させるための放射線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貼り合わせ工法やビルドアップ工法などによって形成された多層配線基板における品質保証のためには、各層間を接続するスルーホールに形成された内面めっき層とランド、または、はんだバンプ(以下、バンプと呼ぶ。)および/またはフィルドビアとランドとの接合状態を管理することは不可欠な事項であった。
【0003】
例えば、スルーホールの内面に形成された内面めっき層を備える貫通基板において、この内面めっき層と各層のランドとの接合状態、ならびに内面めっき層厚さの均一性および表層側等の端部での銅めっき層厚さなどを検査する必要がある。同様に、バンプやフィルドビアによって各層間が接続されるビルドアップ基板は、積層後のバンプ形状、バンプと各ランドとの接合状態、およびフィルドビアと各ランドとの接合状態などを検査する必要がある。しかし、従来の多層配線基板においては各多層配線基板の端部にテストクーポンと呼ばれる部位を設け、この部位によって、多層配線基板の接合状態の良否を判定していた。そして、このテストクーポン部を切り取って、アクリル樹脂で固め、検査対象となる縦断面を面出しするように研磨し、その研磨した縦断面を、顕微鏡による目視により検査を行っていた。
一方、多層配線基板の層間のずれを放射線を利用して検査する提案としては、スルーホール形成前の多層基板に垂直に放射線を照射して、スルーホールを形成すべき位置の周囲のランドの重なりを判定する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、貫通基板で各層の水平方向のずれを検出するために、各層の固有位置に検査用のビアホールを形成して、この基板に垂直に放射線を照射して、各ビアホールの相対位置を検査することで各層のずれを判定する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−260696号公報
【特許文献2】特開2000−340950号公報
【0005】
しかしながら、上述したテストクーポン部を切断・研磨して顕微鏡で検査する方法では、1つのテストクーポンにつき1つの縦断面しか検査できないので、仮に検査した断面とは違う箇所に不備があったとするとそれを見落としてしまう可能性がある。また、検査のための研磨作業が煩雑で時間が長くかかってしまう。また、作業者の技術によって切断面の形成にばらつきが生じてしまい、均質な検査が困難である。さらに、トレーサビリティの目的のために検査後のテストクーポン部を保存する必要があるが、テストクーポン部は現物であることからその保存管理が煩雑になってしまう。
また、スルーホール形成前の貫通基板に垂直に放射線を照射して、スルーホールを形成すべき位置の周囲の配線パターンの重なりを判定する方法では、層と配線パターンとを関連付けていないので、どの層がずれているのか判定することができない。
さらに、貫通基板に垂直に放射線を照射して、各ビアホールの相対位置を検査することで各層のずれを判定する方法では、各層に対応するビアホールを重ならないように形成する必要があるため基板が大型化してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、多層配線基板の各種配線構造等の検査を高精度にかつ迅速に行うことができる放射線検査方法および放射線検査装置ならびに放射線検査方法を実現するための放射線検査プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明では、多層配線基板の各配線パターンの層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得工程と、撮像した上記複数の放射線画像から3次元再構成画像を生成する再構成画像生成工程と、生成した上記3次元再構成画像から上記多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出するスライス画像抽出工程と、抽出された上記水平スライス画像より上記導通部の状態を得るための処理を行う画像処理工程と、上記画像処理工程によって得られた処理結果と基準値とを比較して上記多層配線基板の良否を判定する良否判定工程と、を備えるようにしている(図1および図2参照)。
従って、本発明によれば、テストクーポンに限らず、上記の貼り合わせ工法やビルドアップ工法などによって形成された各種多層配線基板の導通部の状態の良否を判定できるようになる。また、従来のテストクーポンを用いた検査方法と比べ、本発明は検査対象部を非破壊で検査可能であり作業者の技量によらず誰でも迅速に均質な検査を精度良く行うことができるようになる。また、本発明は、切断・研磨した1つの縦断面からでは得られない非常に多くの情報に基づいて解析を行うことができるために、高精度に良否を判定することができる。さらに、本発明においては、現物のテストクーポン部を保存管理する場合に比べて、検査データが電子情報であるので保存管理が極めて容易である。
【0008】
なお、放射線画像取得工程においては、放射線の出力範囲内に多層配線基板の検査対象部を配置し、透過した放射線を検出器によって撮影した放射線画像を取得する。ここで、放射線画像を取得するためには、放射線源からの放射線を検査対象である導通部に対して照射することができればよい。放射線検査装置の構造を簡易な構造とし、可動部を少なくして検査の高速化を図るためには、所定の立体角の範囲に放射線を出力することができる放射線源を採用するのが好ましい。
【0009】
本発明においては、放射線の出力範囲に検出面が含まれるように放射線の検出器を配置すればよい。すなわち、本発明においては、照射範囲に制約のある放射線管を使用するのではなく、広い範囲に放射線が照射される放射線管を使用することによって、放射線画像の撮影に際して放射線源の角度変更や移動を伴わずに複数の放射線画像を取得可能である。なお、このような放射線源としては、例えば、開放型X線管を採用すればよい。すなわち、開放型X線管においては、薄いターゲットに衝突した電子によって放射線が発生し、放射線がこのターゲットを透過して外部に出力される際にほぼ全方位(立体角2π)が出力範囲になる。
【0010】
なお、本発明において、複数の位置に配設された検出器によって複数の放射線画像を撮影するためには、単一あるいは複数の位置に配設された検出器を回転させることによって複数の放射線画像を撮影すればよい。検出器としては、2次元的に配置したCCDによって放射線の強度を計測するセンサ等を採用することができる。ただし、3次元画像を取得するための構成としては、上記のように、開放型X線管を固定して多層配線基板の検査対象部と検出器とを開放型X線管の焦点を回転軸として同期して回転させる構造や、開放型X線管または密閉型X線管と傾斜した検出器との光軸の間に多層配線基板の検査対象である導通部を配置し、導通部を中心に回転する構造を採用してもよく、多層配線基板の3次元画像を再構成するための層間の放射線画像を複数撮影できる構造を持つものであればよい。
【0011】
再構成画像生成工程においては、複数の放射線画像に基づいて再構成演算を実行することができればよく、例えば、フィルタ補正逆投影法などを採用可能である。
スライス画像抽出工程においては、生成した3次元再構成画像における任意の面についてのスライス画像を作成可能であるので、例えば、生成した3次元再構成画像を所定の間隔で水平にスライスした各水平スライス面から検査に適した面の水平スライス画像を抽出すればよい。
このための構成としては、例えば、各水平スライス面における輝度変動率(単位輝度あたりの分散)を利用してもよい。すなわち、放射線画像内においては、放射線の吸収率によって画像の濃度が異なるので、その濃度を輝度として表し、これにより各水平スライス面における輝度変動率を算出し、予め決められた閾値以上の値を示す輝度変動率近傍において極大の位置に対応する水平スライス画像を抽出することにより、配線パターンを含む水平スライス面を特定することができる(図8参照)。また、予め決められた閾値未満の値を示す輝度変動率の位置に対応する水平スライス面は、絶縁層における水平スライス面であるとして、これらより水平スライス画像を抽出する水平スライス面を特定することができる。
【0012】
画像処理工程においては、検査対象である導通部の状態を特定できる処理を実行できればよい。導通部の状態を特定するための処理としては種々の方法が採用可能である。例えば、2値化処理によって輝度で表された画像を2値画像に変換したり、Sobelフィルタ,Prewittフィルタ等を用いた輪郭抽出処理によって画像内の輪郭画素を抽出したり、モフォロジー処理によって画像内の空隙を抽出したりする方法を採用可能である。
【0013】
良否判定工程においては、画像処理工程において得られた処理結果に基づいて良否判定を行うことができればよい。例えば、パターンマッチングによって処理結果の画像と基準画像とを比較し、一致度を算出して良否を判定してもよい。また、得られた処理結果から特徴量を測定、または算出して良否を判定する場合、特徴量は検査対象が良品であることの特徴あるいは不良品であることの特徴が現れる量であればよい。すなわち、処理結果として、良品であることの特徴が現れる特徴量を算出すれば、算出された特徴量が良品での特徴量に近いか否かによって良品であるか否かを判別することができ、不良品であることの特徴が現れる特徴量を算出すれば、算出された特徴量が不良での特徴量に近いか否かによって不良品であるか否かを判別することができる。
【0014】
従って、この良否判定においては、予め設定された良品あるいは不良品と判定される基準となる検査対象である導通部の特徴量を基準値とし、この基準値と画像処理工程において得られた処理結果に基づいて算出された特徴量とを比較することによって良否判定を行ってもよい。また、基準の導通部における特徴量を算出することなく、良品あるいは不良品である場合の特徴量が決定できるのであれば、基準値と処理結果から実測した特徴量とを比較することなく、実測した処理結果における特徴量に基づいて良否判定を行えばよい。
【0015】
請求項2のように、画像処理工程における処理結果として得られる導通部の状態を表す画像が、銅めっき層等の内側導電層、またはバンプやフィルドビア等の層間導電体と、それらに接続されているランドと、の接合部の状態を含んでいる画像である場合は、例えば、(1)内側導電層とランドとの接合部における隙間を表す画像要素の面積(もしくは有無)、(2)層間導電体とランドとの接合部における接合面を表す画像要素の面積、(3)接合部における非接合部を表す画像要素の面積もしくは接合部における接合面の輪郭を表す画像要素の曲率の変化等を特徴量として算出し、算出した特徴量によって、各種導体と各ランドとの接合状態について簡易に、精度良くかつ迅速に、良否判定を行う方法を採用することができる。本請求項における「導体」には、上記のように、(1)スルーホールの内面にめっきされて形成された銅めっき層等からなる内側導電層、ならびに(2)層間上下の導電層同士を電気的に接合する層間導電体(積層後のバンプ、および層間に設けられたビア内に導体成分が充填されているフィルドビアを含む)等を含む広い意味に用いられる。
【0016】
また、請求項3のように、画像処理工程によって得られた導通部の状態が、(1)ランドの相互の配設状態、および(2)銅めっき層等の内側導電層またはバンプやフィルドビア等の層間導電体とランドとの配設状態を含んでいる画像である場合は、算出したそれぞれの重心の位置の差分を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、各パターン層間を接続する導体の配設位置または各パターン層間を接続する導体と各ランドとの配設位置において、位置ずれを生じている場合は、例えば、その重心の位置に、一定値以上の差が生じており、この重心位置の差に基づいて良否を判定することが可能である。ここで、重心は、画像処理工程によって得られた処理結果から算出される位置毎の量を位置によって重み付けして加え合わせることで算出すればよく、位置毎の量としては面積等を採用することができる。
【0017】
より具体的には、検査対象が、ビルドアップ基板におけるバンプもしくはフィルドビアの各ランドに対する配設状態である場合、積層後のバンプもしくはフィルドビアが各ランドに対して適正に配設されている良品であれば、それぞれの重心の位置は略同一の位置となる。一方、バンプ等がランドに対して適正に配設されていない不良品であれば、それぞれの重心の位置に差が生じており、重心の位置の差は上記良品の重心の位置の差と異なる値になる。
以上より、本構成によれば、重心等に関する情報に基づいて、各ランドの相互の配設状態および/または上記各ランドの上記導体に対する配設状態についての良否を、簡易に、精度良くかつ迅速に判定することが可能である。
【0018】
さらに、請求項4のように、画像処理工程によって得られた導通部の状態がスルーホールに形成された銅めっき層等の内側導電層の厚さの均一性の状態を含んでいる画像である場合は、この内側導電層の厚さを表す値の分散値を特徴量として良否判定を行ってもよい。すなわち、良品の検査対象と不良品の検査対象とで内側導電層の厚さを表す値の分散値に一定値以上の差が生じる場合は、この内側導電層の厚さを表す値の分散値に基づいて良否を判定することが可能である。ここで、内側導電層の厚さを表す値としては、例えば、内側導電層の外周または内周における重心を中心とし、重心から内側導電層の外周および内周までの距離を複数の回転角について測定し差分を求め、それぞれの差分の分散値を特徴量として採用することが可能である。また、それぞれの差分の平均を求めれば、内側導電層の各層における平均厚さを求めることもでき、この平均厚さを特徴量として良否判定を行ってもよい。さらに、導電層の最少厚さを基準として良否判定を行ってもよい。
以上より、本構成によれば、内側導電層の厚さの均一性についての良否を、簡易に、精度良くかつ迅速に判定することが可能である。
【0019】
さらに、請求項5のように、画像処理工程によって得られた導通部の状態が多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された内側導電層の厚さの均一性の状態を含んでいる画像である場合も同様に、内側導電層の厚さを表す値の分散値および平均値を特徴量として良否判定を行ってもよい。従って、本構成によれば、表層側ランドのエッジ部に形成された内側導電層の厚さの均一性についての良否を、簡易に、精度良くかつ迅速に判定することが可能である。
【0020】
また、請求項6のように、画像処理工程によって得られた導通部の状態が各層間導電体の内部の状態を含んでいる画像である、スライス面における層間導電体の面積や層間導電体の外径をあらわす輪郭線の内側のボイドの面積、または輪郭を表す画像要素の曲率の変化等を特徴量として算出し、算出した特徴量によって良否判定を行う方法を採用することができる。この場合も、層間導電体の内部の状態についての良否を、簡易に、精度良くかつ迅速に判定することが可能である。
【0021】
さらに、請求項1〜6においては、以下に示す特徴(導通部の状態)についての良否を判定するものであるが、これらの2つ以上を適宜組み合わせて、複数の特徴を合わせて判定することもできる。
(1)導体と各ランドとの接合状態
(2)各ランドの相互の配設状態
(3)各ランドの導体に対する配設状態
(4)内側導電層の厚さの均一性
(5)表層側ランドのエッジ部に形成された内側導電層の厚さの均一性
(6)層間導電体の内部の状態
この複数の要素の判定を行うことにより、導通部の状態を多角的にかつ総合的に判定ができ、より一層精度の高い判定をすることができる。特に、内側導電層を備える場合は、上記(1)〜(5)の全部、層間導電体(バンプおよびフィルドビア等)を備える場合は上記(1)〜(3)および(6)の全部を判定対象とする場合は、さらに、多角的にかつ総合的に判定ができ、さらに一層精度の高い判定をすることができる。
さらに、上記(1)〜(6)の判定対象に、各絶縁層の厚さを加えることもできる。これにより、上記導通部の直接状態のみならず、絶縁層が所定の厚さか否か等の、広い意味での導通部周辺の状態についても判定ができる。これにより、多層配線基板の導通部周辺の状態を、さらに一層、広くかつ多角的、総合的に評価をすることができる。
【0022】
さらに、請求項7のように、導通部の状態を得るために、請求項1〜6に示す水平スライス画像に加えて、基板面に垂直な垂直スライス画像をさらに抽出する場合には、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。すなわち、従来のテストクーポンを縦方向に切断・研磨して顕微鏡で検査する方法では、1つのテストクーポン部につき、通常は1断面しか検査できないが、上記スライス画像抽出工程においては、生成した3次元再構成画像における任意の面についてのスライス画像を作成可能であるので、例えば、生成した3次元再構成画像から基板面に垂直な導通部の中心を通る複数の垂直スライス画像を抽出し、水平スライス画像に基づいた検査に加えて、抽出した各垂直スライス画像に基づいた検査を行うこともできる。この場合には、水平スライス画像の情報に、さらに、有用な垂直スライス画像の情報を合わせて総合評価できるので、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。
【0023】
また、請求項8のように、上記画像処理工程で得られた上記導通部の状態は、(a)上記導体と各ランドとの接合状態、(b)上記内側導電層の厚さの均一性、(c)多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された上記内側導電層の厚さの均一性、(d)上記内側導電層に一体的に接続されている表層側導電層の厚さの均一性、および(e)上記配線パターン層間に設けられた各絶縁層の厚さの少なくとも1つを含むものとする場合には、水平スライス画像の検査に比べて、この有用な垂直スライス画像の情報を合わせて総合評価できるので、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。特に、これらのうち、2つ以上または3つ以上を含む場合には、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。
【0024】
また、上記画像処理工程で得られた上記導通部の状態は、(a)上記導体と各ランドとの接合状態、(b)上記内側導電層の厚さの均一性、(c)多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された上記内側導電層の厚さの均一性、および(d)上記内側導電層に一体的に接続されている表層側導電層の厚さの均一性の全てとすることができる。この場合には、各種の全ての導通状態を多面的に検査するので、導通状態について極めて精度の高い良否判定を行うことが可能である。さらに、これに、(e)上記配線パターン層間に設けられた各絶縁層の厚さを加える場合は、より高い品質管理を行うことが可能である。
【0025】
特に、前記のように、内側導電層を備える場合は、水平スライス画像による上記(1)〜(5)の全部、並びに垂直スライス画像による上記(a)〜(d)の全部の特徴(導通状態を示す特徴)の判定を行うことができる。この場合は、さらに、導通部の状態を多角的に、総合的にかつより完全に判定ができ、さらに一層精度の高い判定をすることができる。また、層間導電体(バンプおよびフィルドビア等)を備える場合は、水平スライス画像による上記(1)〜(3)および(6)並びに垂直スライス画像による上記(a)の全部の特徴(導通状態を示す特徴)の判定を行うことができる。この場合は、導通部の状態を多角的、総合的かつより完全に判定することができ、さらに一層精度の高い判定をすることができる。
【0026】
また、上記に、さらに、(e)上記配線パターン層間に設けられた各絶縁層の厚さを加えることもでき、この場合は、さらに、導通部に対するより安定した品質管理を行うことが可能である。
【0027】
以上は、本発明が方法として実現される場合について説明したが、請求項9にかかる発明は、請求項1に対応した方法を実現する構成としてある。その実質的な動作については上述した方法の場合と同様である。すなわち、前記の方法発明において説明した各「工程」は、各々、各「手段」と読み替えるものであり、前記に示す「放射線検査方法」に係わる本発明において説明した事項は、全て、本「放射線検査装置」にも適用できるものである。方法発明である請求項2〜請求項8の各請求項に記載される構成要素は、本装置発明についても同様に構成可能である。
以上のような放射線検査装置は、単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることも可能である。
【0028】
また、発明の思想としては、上記に示す放射線検査方法および放射線検査装置に限らず、各種の態様を含むものである。従って、本発明思想は、プログラム、ソフトウェアであったり、ハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
発明の思想の具現化例として上記方法を制御するためのソフトウェアとなる場合には、かかるプログラム、ソフトウェア、あるいはソフトウェアを記録した記録媒体上においても存在し、利用される。その一例として、請求項10にかかる発明(プログラム)は、請求項1に対応した機能をソフトウェアで実現する構成、コンピュータに実現させる構成としてある。すなわち、本発明は、コンピュータを請求項1〜8の放射線検査方法および請求項9の放射線検査装置(システム)として機能させることができるプログラムとしてある。勿論、請求項2〜請求項8に対応したプログラム、ソフトウェアも構成可能である。
【0029】
また、プログラム、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)放射線検査処理:
(2−1)良否判定処理:
(3)他の実施形態:
【0031】
(1)本発明の構成:
図1は本発明にかかる多層配線基板の放射線検査方法によって実現された放射線検査装置10の概略ブロック図である。同図において、この放射線検査装置10は、放射線発生器11とX−Yステージ12と放射線検出器13aと搬送装置14とを備えており、各部をCPU25によって制御する。すなわち、放射線検査装置10はCPU25を含む制御系として放射線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23と搬送機構24とCPU25と入力部26と出力部27とメモリ28とを備えている。この構成において、CPU25は、メモリ28に記録された図示しないプログラムを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0032】
メモリ28はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、予め検査位置データ28aと撮像条件データ28bとが記録されている。検査位置データ28aは、検査対象部の位置を示すデータであり、本実施形態においては、基板12aに形成されたスルーホールやバンプ、フィルドビアを放射線検出器13aの視野に配設するためのデータである。撮像条件データ28bは、放射線発生器11にて放射線を発生させる際の条件を示すデータであり、放射線管に対する印加電圧,撮像時間、撮像回数等を含む。
【0033】
また、メモリ28には、CPU25の処理過程で生成される各種データを記憶することが可能である。例えば、上記放射線検出器13aによって取得した放射線画像を示す放射線画像データ28cや、この放射線画像データ28cに基づいて再構成演算を行った3次元画像データ28dを記憶することができる。なお、メモリ28はデータを蓄積可能であればよく、RAMやHDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0034】
放射線制御機構21は、上記撮像条件データ28bを参照し、放射線発生器11を制御して所定の放射線を発生させることができる。放射線発生器11は、放射線の出力位置である焦点Fからほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲に放射線を出力する。なお、放射線発生器11より出力される放射線としては、検査対象部の透過画像を撮像することができればよく、種々の放射線を採用可能である。例えば、X線、γ線等が採用可能である。また、放射線発生器11は撮像倍率を変化させるための図示しない昇降機構を備えているが、放射線画像取得時には放射線検査装置10において固定的に配置されている。すなわち、撮像倍率を変化させるためにZ軸方向へ移動する以外は放射線発生器11の位置や角度は変更されず、放射線画像取得時には装置に対して固定されたまま移動されることはない。
【0035】
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、上記検査位置データ28aに基づいて同X−Yステージ12を制御する。また、搬送機構24は、搬送装置14を制御して基板12aをX−Yステージ12に搬送する。すなわち、搬送装置14によって一方向に基板12aを搬送し、X−Yステージ12において基板12aに形成されたスルーホールやバンプ、フィルドビアを検査し、搬送装置14にて検査後の基板12aを搬送する処理を連続的に実施できるように構成されている。
【0036】
本実施形態において、検査対象はスルーホールやバンプ、フィルドビアであり、スルーホールやバンプ、フィルドビアが配設された基板をX−Yステージ12上に載置して良否判定を行う。なお、上述のように検査位置データ28aは基板12aの検査対象部を放射線検出器13aの視野に配設するためのデータであり、ステージ制御機構22は、基板12aに形成されたスルーホールやバンプ、フィルドビアが放射線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を制御する。
【0037】
画像取得機構23は放射線検出器13aに接続されており、同放射線検出器13aが出力する検出値によって検査対象部の放射線画像を取得する。取得した放射線画像は、放射線画像データ28cとしてメモリ28に記憶される。本実施形態における放射線検出器13aは、2次元的に分布したセンサを備えており、検出した放射線から放射線強度に関する2次元分布を示す放射線画像データを生成することができる。
【0038】
放射線検出器13aはアームを介して回転機構13bに接続されており、放射線検出器13aは、放射線発生器11の焦点Fから鉛直上方に延ばした軸Aを中心に半径Rの円周上を回転可能である。この回転機構13bは、画像取得機構23のθ制御部23aによって制御される。また、放射線発生器11の焦点Fから放射線検出器13aにおける検出面の中心に対して延ばした直線と、この検出面とが直交するように検出面が配向されている。
【0039】
出力部27は上記放射線画像等を表示するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU25の処理によって得られる種々の演算結果と放射線画像データと3次元画像データとスライス画像データと検査対象部の良否判定結果等を出力部27に表示することができる。
【0040】
CPU25は、メモリ28に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、導通部の検査を行うために、図1に示す搬送制御部25aと放射線制御部25bとステージ制御部25cと画像取得部25dと再構成画像生成部25eとスライス画像抽出部25fと画像処理部25gと良否判定部25hとにおける演算を実行する。搬送制御部25aは、搬送機構24を制御して、適切なタイミングで基板12aをX−Yステージ12に供給し、また、適切なタイミングで搬送装置14を駆動して検査済みの基板12aをX−Yステージ12から取り除く。
【0041】
放射線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、上記放射線制御機構21を制御して所定の放射線を放射線発生器11から出力させる。ステージ制御部25cは、上記検査位置データ28aを取得し、個々の導通部を逐次放射線検出器13aの視野内に配置するための座標値を算出し、ステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、それぞれの座標値を持つ導通部が放射線検出器13aの視野に含まれるようにX−Yステージ12を移動させる。
【0042】
画像取得部25dは、画像取得機構23のθ制御部23aに指示を行い、放射線検出器13aを回転させる。また、画像取得機構23が取得する放射線画像データ28cをメモリ28に記録する。上記放射線画像データ28cは、複数の角度によって個々の導通部を撮影して得られるデータである。なお、画像取得部25dにおいては、上記複数の角度のピッチを適宜調整可能であり、高精度の良否判定に十分な撮影回数となるようにピッチを狭くしてもよいし、代表的な複数の角度で撮影し、間の角度における放射線画像は画像補間演算によって取得してもよい。
再構成画像生成部25eは、上記各放射線画像データ28cを用いて3次元画像を再構成し3次元画像データ28dとしてメモリ28に記録する。
【0043】
スライス画像抽出部25fは、上記3次元画像データ28dより検査対象における各層の水平スライス画像を抽出し、抽出したスライス画像データ28eとしてメモリ28に記録する。
画像処理部25gは、上記抽出した各スライス画像データ28eを用いて検査対象である導通部に対する所定の画像処理を実行し、その処理結果を画像処理データ28fとしてメモリ28に記録する。
良否判定部25hは、上記画像処理データ28fを用いて、検査対象の個々の導通部の良否を判定すると共に、基板全体としての良品、不良品の判定を行う。
【0044】
(2)放射線検査処理:
本実施形態においては、上述の構成において図2に示すフローチャートに従ってスルーホール内側の銅めっき層やバンプ、フィルドビアを有する基板12aの良否判定を行う。本実施形態においては、多数の基板12aを搬送装置14によって搬送し、X−Yステージ12上で基板12aの導通部を検査する。このため、検査に際しては、まずステップS100にて搬送制御部25aが搬送機構24に指示を出し、搬送装置14によって検査対象の基板12aをX−Yステージ12上に搬送する。
【0045】
次に、特定の導通部を放射線検出器13aの視野内に移動させて放射線画像を取得するため、変数nおよびmをそれぞれ"1"に初期化する(ステップS105)。続いて、画像取得部25dはθ制御部23aに指示を行い、回転機構13bを駆動して予め決められた回転位置に放射線検出器13aを移動させる(ステップS110)。本実施形態においては、回転角θnをθn=(n/N)×360°と定義しており、θ=0°(=360°)における放射線検出器13aの配置は予め決めてある。
【0046】
また、上記変数nは最大値をNとする整数である。従って、放射線検出器13aは360°/Nずつ回転することになる。Nは、放射線画像を撮影する回転位置の数であり、良否判定において基準情報と比較される画像処理データを得るに十分な3次元再構成画像が得られるように決定すればよい。本実施例においては、説明の簡略化のため、N=4(90°ピッチ、4カ所で撮影)における例として説明するが、例えば、20層以上の高多層配線基板の場合に、N=180以上(2°ピッチ、180カ所で撮影)の放射線画像から生成される3次元再構成画像が検査を行うに当たって最も適当である。
【0047】
放射線検出器13aの回転動作を行うと、この回転後の検出器の視野内に基板12aの最初の導通部が含まれるようにX−Yステージ12を移動させる(ステップS115)。このとき、ステージ制御部25cは上記検査位置データ28aを参照し、座標(x,y)が放射線検出器13aの視野中心となるようにステージ制御機構22に指示する。この結果、ステージ制御機構22はX−Yステージ12を移動させ、座標(x,y)を放射線検出器13aの視野中心に配置する。
【0048】
すなわち、座標(x,y)は、導通部を放射線検出器13aの視野内に移動させるために予め基板12a上に設定された座標であり、放射線検出器13aが上記回転角θnに配設されているときの視野中心は、放射線検出器13aと放射線発生器11の焦点Fとの相対関係から取得することができる。そこで、座標(x,y)を放射線検出器13aの視野内に移動させることで、導通部の透過像が放射線検出器13aで取得されるように基板12aの位置を制御することができる。
【0049】
図3,図4は、この例を説明するための図であり、座標系および放射線検出器13a、放射線発生器11の位置関係を示す図である。これらの図においては、X−Yステージ12による移動平面をx−y平面とし、この平面に垂直な方向をz方向としている。図3は、z−x平面を眺めた図であり、図4はx−y平面を眺めた図である。
【0050】
図3に示すように、放射線検出器13aの検出面は、その中心と焦点Fとを結ぶ直線lに対して垂直になるように配向されている。すなわち、軸Aに対して傾斜され、x−y平面と検出面とに対して所定の角度(傾斜角α)、例えば、α=60°が与えられている。上記直線lは、放射線検出器13aの視野中心に相当するので、放射線検出器13aの回転角θnから図4に示すように視野領域FOVを特定することができる。
【0051】
すなわち、上記直線lと上記x−y平面との交点を含む所定の領域が放射線検出器13aの視野領域FOVとなるので、図4に示す例のように変数nが1〜4であることを想定すれば、図4に破線の矩形で示すように、視野領域FOVを特定することができる。そこで、上記ステージ制御機構22は図4の各矩形における中心と座標(x,y)とが一致するように、X−Yステージ12を移動させることになる。
【0052】
なお、図4においては、中心Oから−y方向に延ばした直線をθ=0°とし、時計回りの回転角がθnであり、θn=90°,180°,270°,360°の視野領域をそれぞれFOV1〜FOV4としている。むろん、ステップS115においては、放射線検出器13aの視野内に導通部を配設することができる限りにおいて種々の制御手法を採用可能である。また、説明を容易にするためにθを90°としたが、θを0°として撮影を開始してもよい。
【0053】
ステップS115にて、座標(x,y)を放射線検出器13aの視野中心に配置したら、放射線制御部25bおよび画
像取得部25dの制御により、放射線検出器13aにて回転角θnの放射線画像Pθnを撮影する(ステップS120)。すなわち、放射線制御部25bは、上記撮像条件データ28bを取得し、この撮像条件データ28bに示される条件で放射線を出力するように放射線制御機構21に対して指示を行う。この結果、放射線発生器11が立体角2πの範囲で放射線を出力するので、画像取得部25dは放射線検出器13aが検出した放射線画像(透過像)を取得する。
【0054】
ステップS120にて回転角θnの放射線画像Pθnを撮影すると、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS125)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS130)、ステップS110以降の処理を繰り返す。ステップS125にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには必要な回数の撮影が終了しているので、再構成画像生成部25eは、放射線画像Pθ1〜PθNを用いて3次元画像の再構成演算を行い(ステップS135)、3次元画像データ28dとしてメモリ28に記録する。
【0055】
再構成演算は、検査対象部の3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においては、まず、放射線画像Pθ1〜PθNのいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。なお、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0056】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、放射線検出器13aの検出面におけるある位置の像に対応する軌跡は、放射線発生器11の焦点Fとこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に上記画像を逆投影する。以上の逆投影を放射線画像Pθ1〜PθNの全てについて行うと、3次元空間上で銅等の導電性金属からなる導通部が存在する部分の放射線吸収係数分布が強調され、検査対象部の3次元形状を示す3次元画像データ28dが得られる。そこで、スライス画像抽出部25fは、上記3次元画像データ28dより、水平スライス画像を抽出し、この水平スライス画像の輝度変動率sを算出する(ステップS140)。この輝度変動率sは閾値Thと比較される(ステップS145)。すなわち、図8のように、閾値Th以上の値を示す輝度変動率近傍において極大の位置に対応する水平スライス画像は、放射線吸収率の高い配線パターンを含む水平スライス画像、すなわち、配線パターン層における水平スライス画像であると判定され(ステップS150)、また、それ以外の、閾値Th未満の値を示す輝度変動率の位置に対応する水平スライス画像は絶縁層における水平スライス画像であると判定される(ステップS155)。これらより抽出する水平スライス画像を特定することができる。判定が終了した水平スライス画像は、スライス画像データ28eとしてメモリ28に記録される(ステップS160)。
なお、上記のステップS140において、配線パターン層のスライス画像の抽出に、配線パターンによる輝度値の変化(輝度変動率s)を用いる方法を提示したが、この方法に限定されるものではなく、配線パターンによるエッジ量の変化(エッジ強度)として配線パターン層の有無を判別してもよく、種々の方法を用いることが可能である。
【0057】
次に、変数mが最大値Mに達しているか否かを判別し(ステップS165)、最大値Mに達していると判別されなければ変数mをインクリメントして(ステップS170)、ステップS140以降の処理を繰り返す。ステップS165にて変数mが最大値Mに達していると判別されたときにはすべての水平スライス画像の判定が終了しているので、良否判定が実行される(ステップS175)。
なお、Mは導通部のスライス画像をスライス画像データ28eに記録するために予め設定する枚数であるが、スライス画像データ28eに記録するデータとしては上記した配線パターン層のスライス画像の他に、絶縁層の間のスライス画像を加えた総枚数をMとしてもよい。この場合、絶縁層をスライスするタイミングは、既知である絶縁層の厚みと上記した水平スライス画像を抽出するピッチとによって記録する各絶縁層の位置を設定しておけばよい。
【0058】
また、上記輝度変動率sを算出することによって絶縁層の厚さを測定することができる。すなわち、例えば、図8のように、所定の間隔において抽出された各スライス画像の輝度変動率sは、閾値Th以上の値を示す輝度変動率近傍において極大の位置が配線パターン層に対応している。隣り合う2つの極大位置間の水平スライス画像の数は、絶縁層を挟んで隣り合う2つの配線パターン層間における所定の間隔の水平スライス画像の数であるので、この間の水平スライス画像の数に基づいて極大位置間の距離を算出し、その距離と既知の配線パターン層の厚さ(実測値または設計値等)との差分が絶縁層の厚さとなる。絶縁層の厚さに基準値を設けてこれと比較することにより、絶縁層厚さの良否を判定することもできる。
【0059】
(2−1)良否判定処理:
以下の特徴に対する良否判定処理について検討した。
1.スルーホール内面に形成された銅めっき層(内側導電層)を備える貫通基板
(1)銅めっき層と各ランドとの接合状態
(2)各ランドの銅めっき層に対する配設状態および各ランドの相互の配設状態(レジストレーション)
(3)銅めっき層の厚さの均一性
(4)表層側ランドのエッジ部に形成された銅めっき層の厚さの均一性
2.バンプ導体またはフィルドビア導体を備えるビルドアップ基板
(1)バンプ導体またはフィルドビア導体と各ランドとの接合状態
(2)各ランドの相互の配設状態および上記各ランドのバンプ導体またはフィルドビア導体に対する配設状態
(3)バンプ導体またはフィルドビア導体の内部の状態
3.垂直スライス画像を用いた検査および水平スライス画像と垂直スライス画像とを併用した場合の検査
【0060】
1.スルーホール内面に形成された銅めっき層(内側導電層)を備える貫通基板
(1)銅めっき層と各ランドとの接合状態
本例の検査に用いられる多層基板は、貫通基板であり、一例を示すと、図5に示すように、積層基板を貫通するスルーホールHと、この内面に銅めっきにより形成された銅めっき層(「内側導電層」ともいう。)30と、この銅めっき層30に接続されかつ各層に設けられた各ランド31と、各ランド31に接続される各パターン層部32と、各ランドおよび各パターン層部からなる各パターン層間に配設される絶縁層33と、を備えるものである。図5中のHはスルーホールを示し、30aは表層側に形成された銅めっき層を示す。尚、この例では、絶縁層が7層および導電パターン層が8層の多層基板であるが、この積層数は特に限定されず、10層以上、例えば20〜30層の多層とすることもできる。
【0061】
本例において、前記ステップS175(図2参照)における良否判定処理の詳細な説明を、以下にする。例として、上記に示す貫通基板におけるスルーホールの内面に形成された銅めっき層と各ランドとの接合状態の特徴量を得る場合における、この良否判定処理のフローチャートを図6に示す。
本実施形態においては、画像処理データ28f(図1等参照)から、上記についての良否の特徴が現れる特徴量を算出し、この特徴量に基づいて良否判定を行っている。
【0062】
まず、多層配線基板におけるスルーホールの内面に形成された銅めっき層30と各ランド31との接合状態の特徴量を得る場合について説明する。
銅めっき層30とランド31の接合部において接合が正常である場合には、図7(A)のように、接合面に隙間は見られない。しかし、図7(D)のように、銅めっき層30とランド31の接合部において接合不良が発生している場合には、銅めっき層30とランド31の接合部を表す境界に隙間31sが存在している。この隙間31sの面積を特徴量として算出し、良否の判定を行う。
【0063】
図6に示すフローチャートのように、最初に変数nを"1"に初期化する。(ステップS200)。上記変数nは最大値をNとする整数で、このNは、良否判定に用いられるスライス画像データ28e(図1参照)の数である。画像処理部25g(図1参照)は、上記輝度変動率sに基づいて抽出するスライス画像データ28eを特定し、このスライス画像データ28eより画像処理データ28f(図1参照)を取得し、この画像処理データ28fに基づいて、銅めっき層と各ランドとの接合部における未接合を表す隙間を抽出する(ステップS205)。隙間を抽出するための画像処理としては特に限定されないが、モフォロジー処理等を採用可能である。
【0064】
抽出された隙間31sの面積A1nを算出し(ステップS210)、算出した隙間の面積A1nが、予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS215)。ここで、閾値Thは、良品の断面における隙間の面積の許容値に基づいて決定されている。許容される隙間の面積に対して所定のマージンを設けて閾値Thを定義すれば、隙間31sを表す領域の面積A1nがこの閾値Thより小さい場合に良品であると判別することができ、この場合にはステップS220において良判定を行う。そして、隙間31sを表す領域の面積A1nがこの閾値Thより大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS225において不良判定を行う。
【0065】
ここで、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS230)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS235)、ステップS205以降の処理を繰り返す。ステップS230にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには、銅めっき層と各ランドとの接合状態の良否判定は終了する。
【0066】
また、画像処理データ28fより処理画像内における銅めっき層の外側輪郭が示す半径(以下外径という)の重心G1nを算出し、重心G1nを中心とした隙間の角度を算出し、これを判定基準として良否判定を行ってもよい。すなわち、図7の(D)のように、銅めっき層の外径の重心G1nから、隙間を表す画素の各端点の画素を通過する2本の直線において、この2線間の角度θ1nを算出し、算出した隙間の角度θ1nが、予め決められた閾値より大きいか否かを判別することもできる。ここで、この重心G1nの座標は、処理画像内における銅めっき層の外径のすべての輪郭画素との距離の和が最小になる点として算出することができる。また、重心Gの座標(X1n,Y1n)は、X1n=∫∫xdxdy/A,Y1n=∫∫ydxdy/Aとしても算出可能である。Aは銅めっき層の外径の輪郭の内側の面積である。
さらに、上記各良否判定では、隙間の大きさを表す特徴量を判定基準として良否判定を行っているが、大きさにかかわらず、隙間が認められる場合には不良と判定してもよい。
【0067】
以上により、上記良否判定を各層における銅めっき層と各ランドとの接合部において行い、銅めっき層と各ランドとの全ての接合部に閾値以上の大きさ隙間を有さない、または隙間が存在しないことを確認することにより、銅めっき層と各ランドとの全ての接合は良好であると判定することができる。
【0068】
(2)各ランドの銅めっき層に対する配設状態および各ランドの相互の配設状態(レジストレーション)
次に、貫通基板における各ランドの銅めっき層に対する配設状態の特徴量を得る場合について説明する。銅めっき層30とランド31の配設状態において配設が正常である場合には、図7(A)のように、銅めっき層30とランド31は同心であるが、図7(B)のように、銅めっき層30とランド31の配設状態において配設不良が発生している場合には、銅めっき層30とランド31の重心位置にずれが発生している。このずれ量を特徴量として算出し、良否を判定する。
【0069】
図9に示すフローチャートのように、最初に、変数nを"1"に初期化する(ステップS300)。上記変数nは最大値をNとする整数で、このNは、良否判定に用いられるスライス画像データ28e(図1参照)の数である。画像取得部25d(図1参照)は、上記輝度変動率sに基づいて抽出するスライス画像データ28eを特定し、このスライス画像データ28eより画像処理データ28f(図1参照)を取得し、この画像処理データ28fに基づいて、配線パターン層におけるランドの外径および銅めっき層の外径の輪郭を抽出する(ステップS305)。輪郭を抽出するための画像処理としては特に限定されないが、Sobelフィルタ、PrewittフィルタおよびLaplacianフィルタ等を用いたエッジ抽出処理等を採用することができる。
【0070】
上記画像処理データ28fより抽出した、ランドおよび銅めっき層のx−y平面における外径の輪郭より、ランドおよび銅めっき層のx−y平面における外径の重心G2nおよびG3nをそれぞれ算出する(ステップS310)。この重心を算出する方法は、特に限定されないが、上述のように、全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点として算出することができる。
【0071】
ここで、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS315)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS320)、ステップS305以降の処理を繰り返す。ステップS310にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには、取得したすべての銅めっき層の外径の重心G3nの平均G3Avを算出する(ステップS325)。
【0072】
次に、再び変数nを"1"に初期化する(ステップS330)。上記算出した重心G2nからG3Avまでの距離lを算出する(ステップS335)。この距離lは銅めっき層の重心を基準とした各ランドのx−y平面におけるずれ量を表している。算出した距離lは、予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS340)。ここで、閾値Thは、良品の銅めっき層の重心を基準とした各ランドのx−y平面におけるずれ量の許容値に基づいて決定される。許容されるずれ量に対して略同値または所定のマージンを設けて閾値Thを定義すれば、ずれ量を表す距離lがこの閾値Thより小さい場合に良品であると判定することができ、この場合にはステップS345において良判定を行う。そして、ずれ量を表す距離lがこの閾値Thより大きい場合に不良品であると判定することができ、この場合にはステップS350において不良判定を行う。
【0073】
ここで、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS355)、最大値Nに達していないと判別した場合には変数nをインクリメントして(ステップS360)、ステップS335以降の処理を繰り返す。一方、ステップS355にて変数nが最大値Nに達していると判別した場合には、各ランドの銅めっき層に対する配設状態の良否判定は終了する。
【0074】
上記良否判定において、ずれ量を表す距離lは各層における銅めっき層の重心の平均値を利用して算出したが、各層において算出した個別の銅めっき層の重心を利用して算出するようにしてもよい。また、上記良否判定と同様にして算出した各ランドの各重心の位置ずれ量により、各ランドの相互の配設状態の良否を判定することも可能である。
【0075】
以上により、貫通基板における各ランドの銅めっき層に対する配設状態において、閾値以上の大きさの各ランドおよび銅めっき層の重心のx−y平面方向における位置のずれがないことを確認することにより、各ランドの銅めっき層に対する配設状態は良好であると判定することができる。
【0076】
(3)銅めっき層の厚さの均一性および表層側ランドのエッジ部に形成された銅めっき層の厚さの均一性
貫通基板における銅めっき層厚さの均一性を特徴量として得る場合について説明する。銅めっき層30において均一にめっきが施されている場合には、図7(A)のように、銅めっき層30の厚さX1,X2,Y1およびY2は均一であるが、図7(C)のように、銅めっき層30においてめっき不良が発生している場合には、銅めっき層30の厚さX1,X2,Y1およびY2は不均一になっている。このめっき層厚さの均一性を特徴量として算出し、良否を判定する。
【0077】
最初に、図10に示すように、変数mおよびnを"1"にそれぞれ初期化する(ステップS400)。上記変数mは最大値をMとする整数であり、上記変数nは最大値をNとする整数で、このM及びNは、それぞれ良否判定に用いられる銅めっき層の厚さの測定回数とスライス画像データ28e(図1参照)の数である。画像処理部25gは(図1参照)、スライス画像データ28eより画像処理データ28f(図1参照)を取得し、この画像処理データ28fに基づいて、銅めっき層の外径および内径の輪郭を抽出する(ステップS405)。ここで、銅めっき層は、基板面に垂直な方向に貫通形成されているスルーホールの内側に形成されているため、銅めっき層の外径および内径の輪郭を取得するために用いる画像処理データ28fは、基板面に垂直な方向における所定の間隔のn個の各画像処理データ28fとする。
【0078】
上記画像処理データ28fより取得した銅めっき層のx−y平面における外径および内径の輪郭より、銅めっき層のx−y平面における外径の重心G4nを算出する(ステップS410)。この重心G4nの座標(xG4n,yG4n)を算出する方法は、特に限定されないが、上述のように、全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点として算出することができる。また、貫通基板の基板面に垂直に形成されているスルーホールは、機械加工により形成され、水平スライス面においてはほぼ真円となっており、このスルーホール内面に形成された銅めっき層のx−y平面における外径も略真円であるとして、この外径の輪郭の直径を2等分した位置は銅めっき層のx−y平面における外径の重心G4nであるとしてもよい。
【0079】
次に、図11に示すように、上記算出した重心G4nの座標(xG4n,yG4n)を通過する所定の角度の直線において、重心G4nの座標(xG4n,yG4n)から銅めっき層の各外径の輪郭画素までの距離を算出し(ステップS415)、これを角度θにおける距離Rθmとし、さらに、重心G4nの座標(xG4n,yG4n)から角度θにおける銅めっき層の各内径の輪郭画素までの距離を算出し(ステップS420)、これを角度θにおける距離rθmとする。この角度θはθ=2π×m/Mと定義してあり、m番目の距離算出時における、重心G4nを原点とする直線の角度である。ステップS415およびステップS420にてm番目のRθmおよびrθmを算出すると、この外径までの距離Rθmと内径までの距離rθmの差分tθmを算出する(ステップS425)。この外径までの距離Rθmと内径までの距離rθmの差分tθmは、銅めっき層30の厚さを表している。
【0080】
ここで、変数mが最大値Mに達しているか否かを判別し(ステップS430)、最大値Mに達していないと判別した場合には変数mをインクリメントして(ステップS435)、ステップS415以降の処理を繰り返す。ステップS430にて変数mが最大値Mに達していると判別した場合には、角度θを所定の間隔で重心G4nまわりに360°1周してtθmを取得し、このtθmの平均値tθmAvおよび分散値tθmsを算出する(ステップS440)。
【0081】
ステップS440にてn番目の画像処理データ28fより平均値tθmAvおよび分散値tθmsを算出すると、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS445)、最大値Nに達していないと判別した場合には変数nをインクリメントして(ステップS450)、ステップS405以降の処理を繰り返す。ステップS445にて変数nが最大値Nに達していると判別した場合には、すべての画像処理データ28fについての銅めっき層厚さの平均値tθmAvおよび分散値tθmsの算出が終了しているので、スルーホール全体の銅めっき層厚さの平均値tθmAviおよび分散値tθmsiの算出を行い(ステップS455)、スルーホール全体の銅めっき層厚さの均一性の良否判定を行う。
【0082】
算出したスルーホール全体の銅めっき層の厚さの平均値tθmAviおよび分散値tθmsiと、予め決められた閾値ThおよびThならびにThおよびThの範囲内であるかを判別する(ステップS460)。ここで、閾値ThおよびThならびにThおよびThは、良品の断面において同様に算出した銅めっき層の厚さの平均値および分散値の許容値に基づいて決定されている。すなわち、許容される銅めっき層の厚さの平均値および分散値に対して略同値または所定のマージンを設けて閾値ThおよびThならびにThおよびThを定義すれば、上記スルーホール全体の銅めっき層の厚さの平均値tθmAviおよび分散値tθmsiがこの閾値ThおよびThならびにThおよびThそれぞれの範囲内である場合に良品であると判別することができ、ステップS465において良品判定を行い、範囲外である場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS470において不良判定を行う。
【0083】
以上より、貫通基板における各ランドの銅めっき層の厚さの均一性において、閾値の範囲外のスルーホール全体の銅めっき層の厚さの平均値および分散値を有さないことを確認することにより、各ランドの銅めっき層の厚さの均一性は良好であると判定することができる。
【0084】
また、貫通基板の各上下面に配設されている表層側ランドのエッジ部においては、銅めっき層(図5の表層側めっき層30aの中心側でかつ表層側ランドのエッジ部に近い部分)が薄くなり、導通不良となりやすい。このため、上記、銅めっき層の厚さの均一性に基づいた多層配線基板の良否判定の方法において、特に、貫通基板の各上下面に配設されている表層側ランドのエッジ部に形成された銅めっき層の厚さを評価することにより、この銅めっき層の厚さの均一性の良否判定についても同様に用いて良否判定を行うことができる。さらに、表層側ランドのエッジ部近傍に対応する水平スライス画像を多く用いることにより、この厚さの均一性について、より詳細な良否判定を行うことも可能である。
【0085】
2.バンプおよびフィルドビアを備えるビルドアップ基板の良否判定
(1)バンプ、フィルドビアとランドとの接合状態
ビルドアップ基板におけるバンプ40またはフィルドビア50の層間導電体とランド41、51との接合状態の特徴量を得る場合において、バンプ40とランド41を例として説明する(図12〜図15参照)。なお、図12と図13は、ビルドアップ工法のバリエーションとしての銀ペーストをバンプとして用いるBit技法(Burried Bump Interconnection Technology)による多層配線基板の断面を示している。また、図15は、スルーホールに内面めっきの施されたコア基板(貫通基板)に対して基板を積層しフィルドビア(めっき等を施したビア)により接合した多層配線基板の断面を示している。
【0086】
図12(2)および(3)ならびに図14(c)に示すように、バンプ40とランド41との接合状態が正常である場合には、バンプとランドとの接合面における接合面積は所定の大きさであり、外径も略円形で、かつボイドや欠けも見られない。しかし、接合不良が発生している場合は、図13(2)のように接合面積が小さかったり、図13(3)のように外径がひずんでいたり、図13(4)のようにボイドや欠けが発生していたり、といった状態となる。これらの不良箇所を判定するために、本良否判定においては、バンプとランドとの接合面における接合面積、バンプとランドとの接合面の直径、およびバンプとランドとの接合面におけるボイドや欠けの面積を特徴量として算出し、良否の判定を行う。
また、フィルドビア(図15の50参照)およびこれに接合されるランド51a、51bの場合も、上記と同様の接合不良を判定することによって良否の判定を行うことができる。
【0087】
上記良否判定を実行するにあたって、図16に示すフローチャートのように、最初に、変数nを"1"に初期化する(ステップS500)。ここで、上記変数nは最大値をNとする整数で、このNは、良否判定に用いられるスライス画像データ28e(図1参照)の数である。画像処理部25g(図1参照)は、上記輝度変動率sと予め既知の設計データに基づいて抽出するスライス画像データ28eを特定し、このスライス画像データ28eより画像処理データ28f(図1参照)を取得した後、この画像処理データ28fに基づいて、バンプとランドとの接合面における外径の輪郭およびこの輪郭内側の空隙を抽出する(ステップS505)。
輪郭を抽出するための画像処理としては、特に限定されないが、Sobelフィルタ、PrewittフィルタおよびLaplacianフィルタ等を用いたエッジ抽出処理等を採用することができる。また、空隙を抽出するための画像処理としては、特に限定されないが、モフォロジー処理等を採用することができる。このバンプとランドとの接合位置におけるスライス画像データ28eは、上述の輝度変動率を用いて特定することができる。
【0088】
すなわち、配線パターン層と絶縁層の厚さは設計データによって既知であり、輝度変動率sが極大の位置は配線パターン層の中心に対応しており、その輝度変動率sが極大の位置から配線パターン層と絶縁層の特定のスライス位置におけるスライス画像データ28eを抽出することができる。
【0089】
次に、抽出されたバンプとランドとの接合位置における接合面の輪郭から、この輪郭内側の断面積A2nを算出する(ステップS510)。バンプとランドとの接合位置における接合面の断面積A2nを取得したら、断面積A2nと予め決められた閾値Thとを比較し、断面積A2nが閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS515)。ここで、閾値Thは、良品の断面積の大きさの許容値に基づいて決定されており、許容される断面積の大きさに対して、閾値Thを良品の断面積の大きさと略同値、あるいは所定のマージンを設けて良品の断面積の大きさより大きな値と定義されている。
【0090】
この結果、断面積A2nが閾値Thより大きいか否かを判別することで、バンプとランドとの接合位置における接合面の断面積が良品であるか否かを判別することができる。そこで、断面積A2nが閾値Thより小さい場合に不良であるとし、ステップS545において不良判定を行う。
【0091】
次に、ビルドアップ基板におけるバンプとランドとの接合状態の特徴量として、接合面におけるバンプの外径等の状態を得る場合には、バンプとランドとの接合面における2つの径D,Dの比D/Dを算出し(ステップS520)、この比が予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS525)。ここで、閾値Thは、良品の断面における径の比に基づいて決定されている。すなわち、図12(2)および(3)に示すように、バンプとランドとの接合状態が正常である場合には、バンプとランドとの接合面における外径は略円形であり、径の比は略1である。そこで、1に対して所定のマージンを設けて閾値Thを定義すれば、上記比D/Dがこの閾値Thより大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS545において不良判定を行う。
【0092】
より具体的には、不良品において、バンプとランドとの接合面における断面は、図13(3)のように、歪んでいる。従って、この断面において略最大の径と略最小の径を上記2つの径D,Dとすれば、両者の比は1より大きくなる。従って、2つの径の比D/Dに基づいて上述のように不良であるか否かを判別することができる。
【0093】
なお、断面において略最大の径Dと略最小の径Dを算出する手法は、特に限定されず、例えば、水平スライス画像を2値化し、バンプの輪郭を算出するとともに、任意の輪郭画素から他の輪郭画素への距離を算出し、最大の距離となる線分を略最大の径Dとすることができる。また、上記2値化した画像においてバンプの重心G(全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点)を通る直線と輪郭とが交わる2つの点同士の距離が最小となる線分を略最小の径Dとすることができる。
【0094】
上述の例以外にも種々の手法を用いて略最大の径Dと略最小の径Dを算出することができる。例えば、上述のようにして算出した断面A上の重心Gの通る直線と輪郭とが交わる2つの点同士の距離が最大の線分を略最大の径Dとしてもよい。いずれにしても、ここでは径の比に基づいて歪みを評価することができればよく、差分を含むところの最大と最小の径の比によって断面の歪みを評価することができる限りにおいて、種々の手法で径を算出可能である。
【0095】
さらに、バンプとランドとの接合面におけるボイドおよび欠けの有無の確認として、バンプとランドとの接合面における画像内の空隙の有無を求める。例えば、図13(4)のように、バンプにおいてボイド(空隙)が存在する場合には、画像処理結果として得られた2値画像内におけるバンプの断面の面積をあらわす領域の内側にボイドが存在している。このボイドの面積A3nを算出し、算出したボイドの面積A3nと、予め決められた閾値Thより大きいか否かを判別する(ステップS535)。ここで、閾値Thは、良品の断面におけるボイドの面積の許容値に基づいて決定されている。すなわち、良品の断面におけるボイドの面積を閾値Thとして、許容されるボイドの面積に対して所定のマージンを設けて閾値Thを定義すれば、上記ボイドを表す領域の面積A3nがこの閾値Thより大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS545において不良判定を行う。さらに、上記良否判定では、ボイドおよび欠け(図13(4)参照)の面積を判定基準として良否判定を行っているが、この大きさにかかわらず、ボイドおよび/または変形(図13(4)および(3)参照)が認められる場合には、不良と判定することができる。
【0096】
さらに、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS550)、最大値Nに達していないと判別した場合には変数nをインクリメントして(ステップS555)、ステップS505以降の処理を繰り返す。また、ステップS550にて変数nが最大値Nに達していると判別した場合には良否判定を終了する。
【0097】
以上により、上記各良否判定を各層におけるボイドとランドの接合部において行い、
バンプとランドとの接合位置に閾値以上の大きさの接合面(断面積)を有し、かつその形状に歪が無く略円形で、かつボイドもしくは欠けが存在しない、または許容範囲内とされる大きさであることを確認することにより、バンプとランドとの接合は良好であると判定することができる。なお、バンプまたはフィルドビアの内部の状態、すなわち、ボイドもしくは欠けの有無、または形状等に基づいて良否を判定する場合においても、上記の方法と同様の方法を用いて良否判定をすることができる。
【0098】
(2)各ランドの相互の配設状態および上記各ランドのバンプに対する配設状態
ビルドアップ基板における各層間導電体の相互の配設状態および各ランドの層間導電体に対する配設状態の特徴量を得る場合において、各ランドのバンプに対する配設状態を例として説明する。図12(1)のように、各ランドのバンプに対する配設状態が正常である場合には、バンプの重心とランドの重心とを結ぶ線は略直線的に並んでいるが、不良が発生している場合は、図13(1)のように各重心にずれが生じている。このような各ランドのバンプに対する配設状態を判定するために、本良否判定においては、各バンプの重心と各ランドの中心を算出し、良否の判定を行う。
また、フィルドビアの場合(図15参照)も、各フィルドビアの重心と各ランドの重心を算出することにより、良否の判定を行うことができる。
【0099】
図17に示すフローチャートのように、最初に、変数mおよびnを"1"にそれぞれ初期化する(ステップS600)。上記変数mは最大値をMとする整数であり、上記変数nは最大値をNとする整数で、このM及びNは、それぞれ、良否判定に用いられるスライス画像データ28e(図1参照)の数である。画像処理部25g(図1参照)は、上記輝度変動率sに基づいて抽出する配線パターン層および絶縁層における複数のスライス画像データ28eを特定し、スライス画像データ28eより画像処理データ28f(図1参照)を取得した後、この画像処理データ28fに基づいて、ランドの外径の輪郭を抽出する(ステップS605)。輪郭を抽出するための画像処理としては、特に限定されないが、Sobelフィルタ、PrewittフィルタおよびLaplacianフィルタ等を用いたエッジ抽出処理等を採用可能である。
【0100】
上記画像処理データ28fより取得したランドの外径の輪郭よりランドの重心G5n(面積重心)を算出する(ステップS610)。この重心G5nの座標(xG5n,yG5n)を算出する方法は特に限定されないが、上述のように、全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点として算出することができる。
【0101】
ここで、変数nがランドの数に相当する最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS615)、最大値Nに達していると判別されなければ変数nをインクリメントして(ステップS620)、ステップS605以降の処理を繰り返す。ステップS615にて変数nが最大値Nに達していると判別されたときには、画像処理部25gは、さらに、上記の方法により画像処理データ28fを取得し、この画像処理データ28fに基づいて、バンプの外径の輪郭を抽出する(ステップS625)。
【0102】
次に、上記画像処理データ28fより取得したバンプの外径の輪郭より、バンプの重心G6mを算出する(ステップS630)。この重心G6mの座標(xG6m,yG6m,zG6m)を算出する方法は特に限定されないが、1つのバンプに設定した複数のスライス位置に対するそれぞれのバンプの輪郭の画素から各スライス面における面積重心を求めた値を平均化して算出してもよいし、各バンプの3次元画像に対して全ての輪郭画素との距離の和が最小になる点を直接に算出してもよい。
【0103】
ここで、変数mがバンプの数に相当する最大値Mに達しているか否かを判別し(ステップS635)、最大値Mに達していないと判別した場合は変数mをインクリメントして(ステップS640)、ステップS625以降の処理を繰り返す。ステップS635にて変数mが最大値Mに達していると判別されたときには、再び、変数mおよびnを"1"にそれぞれ初期化する(ステップS645)。
【0104】
次に、上記算出したランドの面積重心G5nおよびバンプの体積重心G6mより、各ランドのバンプに対する配設状態の特徴量として、各ランドおよび各バンプのそれぞれの重心G5nおよびG6mのx−y平面上における距離をlとし、その絶対値│l│を算出する(ステップS650)。この算出した重心のx−y平面上における距離の絶対値│l│と、予め決められた閾値Th10より大きいか否かを判別する(ステップS655)。ここで、閾値Th10は、良品における配設状態の許容値に基づいて決定されており、許容されるずれ量に対して略同値または所定のマージンを設けて閾値Th10を定義すれば、ずれ量を表す距離lがこの閾値Th10より小さい場合に良品であると判定することができ、この場合にはステップS660において良判定を行う。そして、ずれ量を表す距離lがこの閾値Th10より大きい場合に不良品であると判定することができ、この場合にはステップS665において不良判定を行う。
【0105】
ここで、変数nとmが最大値NとMに達しているか否かを判別し(ステップS670)、最大値NとMに達していないと判別した場合には変数nおよびmをインクリメントして(ステップS675)、ステップS650以降の処理を繰り返す。ステップS670にて変数nとmが最大値NとMに達していると判別した場合には、各ランドの各バンプに対する配設状態の良否判定は終了する。また、上記良否判定と同様にして、各ランドの相互の配設状態の良否を判定することも可能である。
【0106】
以上より、ビルドアップ基板における各ランドの各バンプに対する配設状態において、閾値以上の大きさの各ランドおよび各バンプの重心のx−y平面方向における位置のずれを有さないことを確認することにより、各ランドの各バンプに対する配設状態は良好であると判定することができる。
なお、各ランドのバンプに対する配設状態の特徴量としての距離lを算出するに当たっては、各ランドの重心位置のバラツキが設定値以下であることを前提として上記の処理を実施する。
【0107】
3.垂直スライス画像に基づいた検査の併用
上述の各良否判定の方法は、水平スライス画像に基づいて特徴量を取得することによる良否判定の方法であるが、さらに、水平スライス画像に加えて基板面に垂直な垂直スライス画像に基づいて特徴量を算出する場合には、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。すなわち、従来のテストクーポン部を縦方向に切断・研磨して顕微鏡で検査する方法では1つのテストクーポンにつき通常は1断面しか検査できないが、上記スライス画像抽出工程においては、生成した3次元再構成画像における任意の面についてのスライス画像を作成可能である。従って、例えば、生成した3次元再構成画像から基板面に垂直な導通部の中心を通る複数の垂直スライス画像を抽出し、水平スライス画像に基づいた検査に加えて、抽出した各垂直スライス画像に基づいた検査を行うことができる。
【0108】
例として、スルーホール内面に形成された銅めっき層を備える貫通基板における良否判定の場合について説明する。基板面に垂直なスライス面において、銅めっき層30とランド31との接合が正常である場合には、図5の断面Cのように接合面に隙間は見られないが、図5の断面Dのように、銅めっき層30とランド31の接合部において接合不良が発生している場合には、銅めっき層30とランド31の接合部を表す境界に隙間31sが存在している。この隙間の面積を特徴量として算出し、良否の判定を行う。
【0109】
図18に示すフローチャートのように、最初に変数nを"1"に初期化する(ステップS700)。上記変数nは最大値をNとする整数で、このNは、良否判定に用いられるスライス画像データ28eの数である。画像処理部25gは、スルーホールの中心軸を通る、角度θにおける垂直のスライス画像データ28eより画像処理データ28fを取得し、この画像処理データ28fに基づいて、銅めっき層と各ランドとの接合部における未接合を表す隙間を抽出する(ステップS705)。ここで、この角度θはθ=2π×n/Nと定義してあり、n番目のスライス画像抽出時における、スルーホールの中心軸を通る平面の角度である。隙間を抽出するための画像処理としては特に限定されないが、モフォロジー処理等を採用することができる。
【0110】
抽出された隙間31sの面積Aθnを算出し(ステップS710)、算出した隙間の面積Aθnが、予め決められた閾値Thθより大きいか否かを判別する(ステップS715)。ここで、閾値Thθは、良品の断面における隙間の面積の許容値に基づいて決定されている。許容される隙間の面積に対して略同値または所定のマージンを設けて閾値Thθを定義すれば、隙間31sを表す領域の面積Aθnがこの閾値Thθより小さい場合に良品であると判別することができ、この場合にはステップS720において良判定を行う。そして、隙間31sを表す領域の面積Aθnがこの閾値Thθより大きい場合に不良品であると判別することができ、この場合にはステップS725において不良判定を行う。
【0111】
ここで、変数nが最大値Nに達しているか否かを判別し(ステップS730)、最大値Nに達していないと判別した場合には変数nをインクリメントして(ステップS735)、ステップS705以降の処理を繰り返す。ステップS730にて変数nが最大値Nに達していると判別した場合には、垂直スライス画像に基づいた各ランドの銅めっき層に対する配設状態の良否判定は終了する。また、上記良否判定では、隙間の面積を判定基準として良否判定を行っているが、大きさにかかわらず、隙間が認められる場合には不良と判定してもよい。
【0112】
以上より、スルーホールの中心軸を通る所定の角度毎の複数の垂直スライス画像に基づいた上記良否判定を、銅めっき層と各ランドとの接合部において行い、銅めっき層とランドとの接合部に閾値以上の大きさの隙間を有さない、または隙間が存在しないことを確認することにより、銅めっき層とランドとの接合は良好であると判定することができる。
また、上記においては、銅めっき層30とランド31との接合部における接合状態について判定しているが、これに限らず、前記を参考にして、上記銅めっき層の厚さの均一性、多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された上記内側導電層の厚さの均一性、上記内側導電層に一体的に接続されている表層側導電層の厚さの均一性、または上記配線パターン層間に設けられた各絶縁層の厚さについて判定することもでき、さらには、これらの2つ以上を組み合わせて判定する場合には、極めて精度の高い判定をすることができる。
【0113】
以上のように、基板面に垂直な垂直スライス画像により算出した特徴量に基づいた良否判定を、水平スライス画像に基づいた良否判定と併用して行う場合には、より精度の高い良否判定を行うことが可能である。
【0114】
また、上記多様な接合状態の特徴に基づいた良否判定は、これらの2つ以上を組み合わせて判定する場合には多面的に判定することができ、一層精度の高い判定をすることもできる。さらに、全てを同時に判定する場合には、導通状態の全ての要素を総合的かつ多面的に判定することができ、さらに一層精度の高い判定をすることもできる。
そこで、本願発明は、上記した水平スライス画像を用いることにより種々の接合工法若しくはそれらの工法を組み合わせた接合構造を持つ全ての種類の導通部に対しての適用が可能であるが、垂直スライス画像による良否判定を加えることにより一層複雑な接合構造を備える導通部に対する適用が可能となる。
【0115】
また、上記については、水平スライス画像の抽出を用いる場合およびこれに垂直スライス画像の抽出を組み合わせて用いる場合について、説明しているが、これに限らず、垂直スライス画像のみを抽出して、前記導通部の状態を、前記に示す同様な方法および装置を用いて判定・検査をすることもできる。この場合、使用する垂直スライス画像を多くすることにより(例えば10枚以上もしくは20枚以上、72枚以下もしくは90枚以下等)精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明にかかる放射線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】放射線検査処理のフローチャートである。
【図3】放射線検査装置の構成を座標系とともに説明する説明図である。
【図4】視野領域の例を示す図である。
【図5】スルーホール内面に形成された銅めっき層を備える貫通基板の一部要部断面図である。
【図6】ランドとめっき層との接合状態を示す放射線検査処理のフローチャートである。
【図7】図5に示すランドとめっき層との接合状態の一部を示す説明図である。
【図8】各水平スライス画像における各像の輝度変動率を示す説明図である。
【図9】各ランドの銅めっき層に対する配設状態および各ランドの相互の配設状態を示す放射線検査処理のフローチャートである。
【図10】銅めっき層の厚さの均一性を示す放射線検査処理のフローチャートである。
【図11】銅めっき層の厚さ算出方法を説明する図である。
【図12】バンプ導体を備えるビルドアップ型多層配線基板の一部要部断面図である。
【図13】バンプ導体を備えるビルドアップ型多層配線基板の他の態様を示す一部要部断面図である。
【図14】積層後のバンプ導体の状態を示す説明図である。
【図15】フィルドビア導体を備えるビルドアップ基板の一部要部断面図である。
【図16】ビルドアップ基板の導体とランドとの接合状態等を示す放射線検査処理のフローチャートである。
【図17】ビルドアップ基板において各ランドのバンプに対する配設状態を示す放射線検査処理のフローチャートである。
【図18】垂直スライス画像に基づいて多層配線基板の放射線検査処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
10…放射線検査装置
11…放射線発生器
12…X−Yステージ
12a…基板
13a…放射線検出器
13b…回転機構
14…搬送装置
21…放射線制御機構
22…ステージ制御機構
23…画像取得機構
23a…θ制御部
24…搬送機構
25…CPU
25a…搬送制御部
25b…放射線制御部
25c…ステージ制御部
25d…画像取得部
25e…再構成画像生成部
25f…スライス画像抽出部
25g…画像処理部
25h…良否判定部
26…入力部
27…出力部
28…メモリ
28a…検査位置データ
28b…撮像条件データ
28c…放射線画像データ
28d…3次元画像データ
28e…スライス画像データ
28f…画像処理データ
30…銅めっき層(内側導電層)
31、41、51…ランド
31s…ランドと銅めっき層との間に生じた隙間
33…絶縁層
40…積層後のバンプ
50…フィルドビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線基板の各配線パターンの層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得工程と、
撮像した上記複数の放射線画像から3次元再構成画像を生成する再構成画像生成工程と、
生成した上記3次元再構成画像から上記多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出するスライス画像抽出工程と、
抽出された上記水平スライス画像より上記導通部の状態を得るための処理を行う画像処理工程と、
上記画像処理工程によって得られた処理結果と基準値とを比較して上記多層配線基板の良否を判定する良否判定工程と、を備えることを特徴とする多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項2】
上記画像処理工程によって得られた上記導通部の状態は、上記多層配線基板の内層に形成され且つ各配線パターン層間の導通を確保するための導体と、該各配線パターン層に備えられ且つ該導体に接続された各ランドと、の接合状態を含む請求項1に記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項3】
上記画像処理工程によって得られた上記導通部の状態は、上記各ランドの相互の配設状態及び上記各ランドの上記導体に対する配設状態の少なくとも一方を含む請求項2に記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項4】
上記導体は、上記多層配線基板に形成されている貫通穴の内面に形成された内側導電層であって、該内側導電層に上記各ランドは接続されており、
上記画像処理工程によって得られた上記導通部の状態は、上記内側導電層の厚さの均一性を含む請求項2または3に記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項5】
上記導体は、上記多層配線基板に形成されている上記貫通穴の内面に形成された上記内側導電層であって、該内側導電層に上記各ランドは接続されており、
上記画像処理工程によって得られた上記導通部の状態は、上記多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された上記内側導電層の厚さの均一性を含む請求項2乃至4のいずれかに記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項6】
上記導体は、上記多層配線基板の上記内層に設けられた層間導電体であって、該層間導電体の表面及び裏面が上記各ランドと接続されており、
上記画像処理工程によって得られた上記導通部の状態は、上記各層間導電体の内部の状態を含む請求項2または3に記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項7】
上記スライス画像抽出工程は、上記水平スライス画像に加えて基板面に垂直な垂直スライス画像をさらに抽出し、
上記画像処理工程は、上記水平スライス画像と上記垂直スライス画像とにより上記導通部の状態を得る請求項1乃至6のいずれかに記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項8】
上記画像処理工程で得られた上記導通部の状態は、上記導体と各ランドとの接合状態、上記内側導電層の厚さの均一性、多層配線基板の各上下面に配設された表層側ランドのエッジ部に形成された上記内側導電層の厚さの均一性、上記内側導電層に一体的に接続されている表層側導電層の厚さの均一性、および上記配線パターン層間に設けられた各絶縁層の厚さの少なくとも1つを含む請求項7に記載の多層配線基板の放射線検査方法。
【請求項9】
多層配線基板を放射線によって検査する放射線検査装置であって、
多層配線基板の各配線パターン層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得手段と、
撮像した上記複数の放射線画像から3次元再構成画像を生成する再構成画像生成手段と、
生成した上記3次元再構成画像から上記多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出するスライス画像抽出手段と、
抽出された上記水平スライス画像より上記導通部の状態を得るための処理を行う画像処理手段と、
上記画像処理手段によって得られた処理結果と基準値とを比較して上記多層配線基板の良否を判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする多層配線基板の放射線検査装置。
【請求項10】
多層配線基板を放射線によって検査する放射線検査プログラムであって、
多層配線基板の各配線パターン層間を接続する導通部に放射線を照射して異なる位置に配設した検出器によって複数の放射線画像を撮像する放射線画像取得機能と、
撮像した上記複数の放射線画像から3次元再構成画像を生成する再構成画像生成機能と、
生成した上記3次元再構成画像から上記多層配線基板の基板面に水平な各層の水平スライス画像を抽出するスライス画像抽出機能と、
抽出された上記水平スライス画像より上記導通部の状態を得るための処理を行う画像処理機能と、
上記画像処理機能によって得られた処理結果と基準値とを比較して上記多層配線基板の良否を判定する良否判定機能とをコンピュータに実現させることを特徴とする多層配線基板の放射線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−14693(P2009−14693A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180362(P2007−180362)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】