説明

多層配線構造及びその製造方法、並びに多層配線構造を用いた半導体装置

【課題】製造過程において反りが発生した場合でも、反りを矯正できる多層配線構造及びその製造方法、並びに多層配線構造を用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造において、最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層は、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く、上記最上層及び上記最下層のうちの少なくとも一方の表面は略平坦である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線構造及びその製造方法、並びに多層配線構造を用いた半導体装置に関し、特に良好な接続信頼性を確保できる多層配線構造及びその製造方法、並びに多層配線構造を用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等に代表される電気機器の多くは、プリント配線基板を用いて構成されている。このプリント配線基板に搭載される部品に大規模集積回路(LSI: Large Scale Integration)等の半導体装置がある。半導体装置のパッケージは、BGA(Ball Grid Array)等が使用されるケースが多い。近年、これら半導体装置等を搭載するプリント配線基板は、電気機器の高密度実装を実現するため薄型化が進んでいる。このプリント配線基板の薄型化に伴って、基板を構成する部材の熱膨張率の差から生じるパッケージの反りが大きくなり、後工程の部品実装時における接続不良、または接続信頼性の悪化を招く場合がある。
【0003】
この課題を解決するために、特許文献1には、パッケージの反りに応じてパッド上に印刷する半田ペーストの量を制御して接続を行うことが記載されている。図8(a)はこのような背景技術の多層配線基板の断面図である。図8(a)は、プリント配線基板201上に、BGAの形態をした半導体パッケージを搭載する場合を示している。この半導体パッケージは、基板205の一主表面上に半導体素子206が搭載され、基板205の他主表面上に多数の半田ボール204が搭載された形態のものである。この半導体パッケージは下に凸に反った形状である。図8(a)では、半導体パッケージの反りを吸収するために、プリント配線基板201のパッド202上に印刷する半田ペースト203の量を、パッケージの反りが大きい場所は多く、反りが小さい場所は少なく制御している。
【0004】
特許文献2には、パッケージの半田を受けるパッドの面積や形状を変更することで反りを吸収し、半田接続を行うことが記載されている。図8(b)はこのような背景技術の多層配線基板を説明するための断面図である。図8(b)は、プリント配線基板201上に、BGAの形態をした半導体パッケージを搭載する場合を示している。半導体パッケージは下に凸に反った形状である。この半導体パッケージもまた、図8(a)と同様に、基板205の一主表面上に半導体素子206が搭載され、基板205の他主表面上に多数の半田ボール204が搭載された形態のものである。図8(b)では、半導体パッケージの反りを吸収するため、プリント配線基板201上のパッド202の面積を、パッケージの反りが大きい場所は小さく、反りが小さい場所は大きく、形成している。
【0005】
特許文献3には、加熱しながらプリント配線板をプレスすることにより、プリント配線板の反りを矯正することが記載されている。
【0006】
特許文献4には、4層の配線層を積層した構成の多層配線基板について、一つの配線層を補強用配線層とし、この補強用配線層の厚さを他の配線層の厚さよりも厚くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−135276号公報
【特許文献2】特開平9−8081号公報
【特許文献3】特開平03−239528号公報
【特許文献4】特開2007−73766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した背景技術には以下のような課題がある。
【0009】
第1の課題は、半導体パッケージの反りに応じて半田量を制御することや、設計段階でパッドの面積を変更することは困難であるためである。
【0010】
半導体パッケージの反り量は、温度によって変化する。このため、特許文献1のように半導体パッケージの反り量に合わせて半田量を決定することは、現実には困難である。また多量の半田ペーストを用いた場合、隣接するパッドとのショート不良を引き起こす可能性もあり、大きな反りを吸収することは困難である。また、特許文献2のように半導体パッケージの反り量に合わせてパッドの大きさを設計段階で決定することは、現実には困難である。かつパッドのピッチ制限から大きな面積のパッドを形成することは困難であり、その結果、あまり大きな反りを吸収することはできないという課題がある。
【0011】
第2の課題は、特許文献3のように加熱や加圧により半導体パッケージの反りを矯正する場合、半導体パッケージ内に残留応力が残る可能性がある。その結果、パッケージ搭載後の後工程において接続部分に残留応力が伝わり、接続部分の信頼性悪化を招くという課題がある。
【0012】
第3の課題は、特許文献4のように一つの配線層を補強用配線層としても、製造過程において反り発生を完全に抑制することはできないため、製造過程において反りが発生してしまう可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、製造過程において反りが発生した場合でも、反りを矯正できる多層配線構造及びその製造方法、並びに多層配線構造を用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る多層配線構造は、メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造において、
最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層は、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く、
上記それ以外のメタル層と絶縁層は反りが生じた状態になっており、
上記最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦となっていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る多層配線構造を用いた半導体装置は、メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造を用いた半導体装置において、
上記多層配線構造は、最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層が、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く、
上記それ以外のメタル層と絶縁層は反りが生じた状態になっており、
上記最上層及び上記最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦となっており、
上記多層配線構造に半導体部品が搭載されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る多層配線構造の製造方法は、メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層する多層配線構造の製造方法において、
最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の上記メタル層と上記絶縁層を、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く形成し、上記最上層及び上記最下層のうちの少なくとも一方の表面を、略平坦とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多層配線構造によれば、最上層及び最下層以外のメタル層と絶縁層に反りが生じた状態になっていながらも、最上層及び最下層のうちの少なくとも一方のメタル層と絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の表面が略平坦なので、後工程において良好な接続信頼性を確保することができる。
【0018】
本発明の多層配線構造の製造方法によれば、製造過程で多層配線構造に反りが発生した場合でも、内部に残留応力を残すことなく、多層配線構造の反りを矯正することができる。その結果、後工程において良好な接続信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の多層配線構造のプロトタイプを説明するための断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による、多層配線構造及びその製造方法を説明するための、工程順の断面図である。
【図3】本発明の多層配線構造のプロトタイプを説明するための断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による、多層配線構造及びその製造方法を説明するための、工程順の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態による、多層配線構造を用いた半導体装置を説明するための断面図である。
【図6】図5の半導体装置の製造方法を説明するための、製造工程順の断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態による多層配線構造を説明するための断面図である。
【図8】(a)及び(b)はそれぞれ背景技術を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態について説明する前に、本発明のプロトタイプについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の多層配線構造のプロトタイプを説明するための断面図である。図3は、本発明の多層配線構造の他のプロトタイプを説明するための断面図である。
【0021】
図1に示される多層配線構造10は、メタル層11と絶縁層12とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造10である。この多層配線構造10は、メタル5層構造であり、メタル層11間はビア13を介して電気的に接続されている。特に、最上層及び最下層のメタル層と絶縁層が、それ以外のメタル層11と絶縁層12より膜厚が厚く、最上層又は最下層、或いは最上層及び最下層の表面が略平坦であるように、したものである。
【0022】
すなわち、多層配線構造10の最下層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第1の反り調整層14から構成されており、最下層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第1のパッド16から構成されている。この反り調整層14及びパッド16の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。さらに、多層配線構造10の最上層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第2の反り調整層15から構成されており、最上層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第2のパッド17から構成されている。この反り調整層15及びパッド17の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。多層配線構造10では、第2のパッド17は第2の反り調整層15に覆われておらず、メタル露出部18が形成されている。このパッド17のメタル露出部18は、他部品との接続に使用される。さらに、第1の反り調整層14及び第2の反り調整層15の表面が、略平坦となっている。
【0023】
図3に示される多層配線構造20は、メタル層11と絶縁層12とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造20である。この多層配線構造20は、メタル5層構造であり、メタル層11間はビア13を介して電気的に接続されている。特に、最上層及び最下層のメタル層と絶縁層が、それ以外のメタル層11と絶縁層12より膜厚が厚く、最上層又は最下層、或いは最上層及び最下層の表面が略平坦であるように、したものである。
【0024】
多層配線構造20の最下層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第1の反り調整層14から構成されており、最下層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第1のパッド16から構成されている。この反り調整層14及びパッド16の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。さらに、多層配線構造20の最上層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第3の反り調整層22から構成されており、最上層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第2のパッド17から構成されている。この反り調整層22及びパッド17の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。多層配線構造20では、図1に示される多層配線構造10とは異なり、第2のパッド17は反り調整層22に埋まった状態となって覆われており、メタル未露出部21が形成されている。さらに、第1の反り調整層14及び第2の反り調整層22の表面が、略平坦となっている。この多層配線構造20は、多層配線構造に反りが発生することを想定して、パッド17上に他部品との接続用のメタル露出部を形成する工程をあえて省いた構造である。
【0025】
〔第1実施形態〕
このようなプロトタイプを改良して、本発明の第1実施形態による多層配線構造及びその製造方法について、説明する。図2は、本発明の第1実施形態による多層配線構造及び多層配線構造の製造方法として、反り矯正方法を説明するための、工程順の断面図である。
【0026】
本実施形態による多層配線構造は、図2(c)に示されるように、メタル層11と絶縁層12とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造である。この多層配線構造は、メタル5層構造であり、メタル層11間はビア13を介して電気的に接続されている。特に、最上層及び最下層の上記メタル層と上記絶縁層は、それ以外のメタル層11と絶縁層12より膜厚が厚く、上記それ以外のメタル層11と絶縁層12には反りが生じた状態になっている。さらに、上記最上層及び上記最下層の上記メタル層と上記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦なフラット面112が形成されているように、したものである。
【0027】
すなわち、多層配線構造の最下層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第1の反り調整層14から構成されており、最下層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第1のパッド16から構成されている。この反り調整層14及びパッド16の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。さらに、多層配線構造の最上層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第2の反り調整層15から構成されており、最上層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第2のパッド17から構成されている。この反り調整層15及びパッド17の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。第1の反り調整層14及び第2の反り調整層15の表面が、略平坦となっている。
【0028】
次に、多層配線構造の製造方法として、反り矯正方法を説明する。図2(a)は、メタル5層構造の多層配線構造を示す。この多層配線構造は、下に凸に反っている。本実施形態の多層配線構造では、第2のパッド17は第2の反り調整層15に覆われておらず、メタル露出部18が形成されている。このパッド17のメタル露出部18は、他部品との接続に使用される。図2(b)に示すように、多層配線構造に対し、第1の研磨ライン110及び第2の研磨ライン111を設定する。第1の研磨ライン110は、研磨後に多層配線構造の下面がフラットになるように、多層配線構造の下面側最下層の反り調整層14及びパッド16が研磨されるように設定する。また、第2の研磨ライン111は、研磨後に多層配線構造の上面がフラットになるように、多層配線構造の上面側最上層の反り調整層15及びパッド17が研磨されるように設定する。この研磨は、多層配線構造を研磨プレート上に押し付けることで実施する。研磨したい箇所に多層配線構造上から圧力を加え、所定量の研磨19を行う。
【0029】
この研磨の結果、図2(c)に示すように、下面及び上面にフラット面112を備える本実施形態の多層配線構造が得られる。この研磨後の多層配線構造113は、下面側最下層の反り調整層14及び上面側最上層の反り調整層15が研磨されることによって、内部に残留応力が残っていない。このようにして、下面及び上面にフラット面112を備え、内部に残留応力が残っていない多層配線構造113を得ることができる。
【0030】
〔第2実施形態〕
次に、上記プロトタイプを改良して、本発明の第2実施形態による多層配線構造及びその製造方法について、説明する。図4は、本発明の第2実施形態による多層配線構造及び多層配線構造の製造方法として、反り矯正方法を説明するための、工程順の断面図である。
【0031】
本実施形態による多層配線構造は、図4(c)に示されるように、メタル層11と絶縁層12とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造である。この多層配線構造は、メタル5層構造であり、メタル層11間はビア13を介して電気的に接続されている。特に、最上層又は最下層の上記メタル層と上記絶縁層は、それ以外のメタル層11と絶縁層12より膜厚が厚く、上記それ以外のメタル層11と絶縁層12には反りが生じた状態になっている。さらに、上記最上層及び上記最下層の上記メタル層と上記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦なフラット面112が形成されているように、したものである。
【0032】
すなわち、多層配線構造の最下層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第1の反り調整層14から構成されており、最下層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第1のパッド16から構成されている。この反り調整層14及びパッド16の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。さらに、多層配線構造の最上層の絶縁層は、絶縁層12より膜厚が厚い第3の反り調整層22から構成されており、最上層のメタル層は、メタル層11より膜厚が厚い第2のパッド17から構成されている。この反り調整層22及びパッド17の厚さは、矯正する反り量を考慮して、所定の厚さで形成する。さらに、第1の反り調整層14及び第2の反り調整層22の表面が、略平坦となっている。
【0033】
次に、多層配線構造の製造方法として、反り矯正方法を説明する。図4(a)は、メタル5層構造の多層配線構造を示す。この多層配線構造は、下に凸に反っている。この多層配線構造は、多層配線構造に反りが発生することを想定して、パッド17上に他部品との接続用のメタル露出部を形成する工程をあえて省いた構造である。図4(b)に示すように、多層配線構造に対し、第3の研磨ライン114及び第4の研磨ライン115を設定する。第4の研磨ライン115は、研磨後に多層配線構造の下面がフラットになるように、多層配線構造の下面側最下層の反り調整層14及びパッド16が研磨されるように設定する。また、第3の研磨ライン114は、研磨後に多層配線構造の上面がフラットになるように、多層配線構造の上面側最上層の反り調整層22及びパッド17が研磨されるように設定する。この研磨は、多層配線構造を研磨プレート上に押し付けることで実施する。研磨したい箇所に多層配線構造上から圧力19を加え研磨プレート上に押し付けて、所定量の研磨を行う。
【0034】
この研磨の結果、図4(c)に示すように、下面及び上面にフラット面112を備えた、本実施形態の多層配線構造が得られる。図3では反り調整層22に埋まった状態であった第2のパッド17は、多層配線構造の上面に露出する。この研磨後の多層配線構造113は、下面側最下層の反り調整層14及び上面側最上層の反り調整層22が研磨されることによって、内部に残留応力が残っていない。このようにして、下面及び上面にフラット面112を備え、内部に残留応力が残っていない多層配線構造113を得ることができる。
【0035】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態による、多層配線構造を用いた半導体装置を説明するための断面図である。図5は、本発明の第3実施形態による、多層配線構造を用いた半導体装置を説明するための断面図である。図6は、図5の半導体装置の製造方法を説明するための、製造工程順の断面図である。
【0036】
図5に、研磨後の多層配線構造113の上面に、半導体部品の一例としてLSI(大規模集積回路: Large Scale Integration)32を搭載し、下面に半田ボール31を組み立てて構成した半導体装置30を示す。この半導体装置30は、第1の実施形態で説明した研磨後の多層配線構造113を用いている。
【0037】
この研磨後の多層配線構造113はその上面に、表面が研磨されてフラット面112となった反り調整層15を備えている。反り調整層15には、LSI搭載用のメタル露出部を備える第2のパッド17を備えている。LSI32はフリップチップ方式で研磨後の多層配線構造113上に搭載されている。LSI32の底面の接続端子33と多層配線構造113との間の空間はアンダーフィル樹脂34で充填され、接続端子33と多層配線構造113とが固定されている。研磨後の多層配線構造113は、上面にフラット面112を備えるので、狭ピッチな接続端子のLSI32との接続においても高い接続信頼性を実現できる。
【0038】
また、研磨後の多層配線構造113はその下面に、表面が研磨されてフラット面112となった反り調整層14を備えている。研磨後の多層配線構造113の下面には、他の基板と接続するための複数の半田ボール31が組み立てられ、ボールグリッドアレイの形態の半導体装置30を構成している。研磨後の多層配線構造113下面がフラットなので、信頼性の高い半田ボール31の組み立てが実現できる。
【0039】
次に、この多層配線構造113を用いた半導体装置30の製造方法について説明する。図6(a)に示すように、メタル5層構造の多層配線構造35を用意する。この多層配線構造35は、下に凸に反っている。多層配線構造35は、下面側最下層に反り調整層14を、また上面側最上層に反り調整層22を備える。反り調整層22は、外部入出力用のパッド17と絶縁層22で構成される。パッド17は、反り調整層22内に埋まった状態であり、パッド17上には、メタル未露出部21を備える。本実施形態は、図3で示した実施形態と異なりLSI搭載用の多層配線構造35であるので、反り調整層22内部の外部入出力用のパッド17のピッチを狭ピッチとしている。図6(a)に示すような研磨ライン114が、研磨後にパッド17のメタル表面が露出し、かつ多層配線構造35の上面がフラットになるよう、上面側最上層の反り調整層22を研磨するように設定されている。研磨は、多層配線構造35の上面を研磨プレート上に押し付けることで実施する。研磨したい箇所に多層配線構造35の研磨面の反対側から圧力を加え、所定量の研磨19を行う。図6(b)に、上面のみ研磨を行った多層配線構造35の断面図を示す。多層配線構造35の上面には、パッド17のLSI接続面が露出した、フラット面112が形成される。
【0040】
次に、図6(c)に示すように、多層配線構造35の上面にLSI32を搭載する。LSI32はフリップチップ方式で多層配線構造35上に搭載され、LSI32底面の接続端子33は、アンダーフィル樹脂34で固定する。上面研磨後の多層配線構造35は、上面にフラット面112を備えているので、LSI32が狭ピッチの接続端子33を備えていても、高い接続信頼性を実現できる。
【0041】
次に、図6(d)に示すように、LSI32搭載後の多層配線構造35の下面側最下層に位置する反り調整層14に、研磨ライン115を設定する。研磨ライン115は、研磨後に多層配線構造35の下面がフラットになるように、下面側最下層に備える反り調整層14を研磨するように設定する。この時点で多層配線構造35の反りは、LSI32搭載による影響も受けていることになる。研磨19は、LSIを搭載した多層配線構造35の下面を研磨プレート上に押し付けることで実施する。研磨したい箇所に多層配線構造35の研磨面の反対側から圧力を加え、所定量の研磨19を行う。図6(e)に、下面の研磨を行った多層配線構造35の断面図を示す。LSI搭載用パッケージ35の下面には、パッド16のメタル面が露出した、フラット面112が形成される。次に、図6(f)に示すように、研磨が終わった多層配線構造35の下面に他の基板と接続するための複数の半田ボール31を組み立てる。本半導体装置30は、ボールグリッドアレイの形態のパッケージを構成している。
【0042】
本実施形態の半導体装置30は、下面にフラット面112を備えているので、信頼性の高い半田ボール31の組み立てが実現できる。なお、本実施形態では、LSI搭載用の多層配線構造35に反りがある場合を想定し、さらにLSI32搭載側から研磨及び部品搭載を行う製造工程にて説明した。しかしながら、半田ボール30の組み立て側から、研磨及び部品搭載を行ってもよい。また、LSI搭載用の多層配線構造35に発生する反りや凹凸が後工程で問題とならない範囲内にあるときは、研磨工程を省略することも可能である。
【0043】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態による多層配線構造及びその製造方法について、説明する。図7は、本発明の第4実施形態による多層配線構造を説明するための断面図である。
【0044】
本実施形態の多層配線構造40は、図2で示した反り矯正工程により形成される研磨後多層配線構造113の上面及び下面にネジ止め用パッド43をさらに備えている。このネジ止め用パッド43は、ネジ止め部の周辺に配置されている。ネジ止め用パッド43は、多層配線構造40の内層と接続している。内層は例えばグランド層である。多層配線構造40は、多層配線構造40の上下に位置するネジ止め用パッド43を貫くように機械穴42を備えている。機械穴42は、多層配線構造を研磨後に形成しているので、研磨後の多層配線構造113の上下面に対して垂直に形成されている。従って、機械穴42と多層配線構造の内層とは、必ずしも直交していない。
【0045】
さらに、多層配線構造40の下面のネジ止め用パッド43の表面には、ドーナツ状の金属製スティフナ44が取り付けられている。金属製スティフナ44は、ネジ止め用の機械穴を備え、ネジ45とワッシャー41によって多層配線構造の下面に固定されている。機械穴42に上面からネジ45を挿入し、金属製スティフナ44をネジ止めしている。第4の多層配線構造40は、上面及び下面に研磨後のフラット面112を備えている。
【0046】
この第4の多層配線構造40は、下面及び上面にフラット面112を備える多層配線構造が、内部に残留応力を残さない状態で、ネジ45及び金属製スティフナ44により固定される。よって、後工程の部品搭載時における反り発生のリスクをより抑制することができる。
【0047】
以上好ましい実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものでなく、様々な変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態の多層配線構造では、上面側最上層及び下面側最下層の両方に反り調整層を備えた例を示しているが、上面側最上層のみ、あるいは下面側最下層のみに反り調整層を備えることも可能である。また、多層配線構造は、実施形態で例示した反りが下に凸の場合だけではなく、上に凸の場合や、さらに凹凸やうねりを持つような場合にも対応可能である。また実施形態で説明した反り矯正のための研磨工程を、周辺温度を考慮して行うことで、所定の温度環境下でパッケージの上下面をフラットに制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、半導体装置等のパッケージを用いた電気機器全般に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、20、35、40 多層配線構造
11 メタル層
12 絶縁層
13 ビア
14、15,22 反り調整層
16、17 パッド
18 メタル露出部
21 メタル未露出部
30 半導体装置
31 半田ボール
32 LSI
33 接続端子
34 アンダーフィル樹脂
110、111、114、115 研磨ライン
112 フラット面
113 研磨後の多層配線構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造において、
最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層は、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く、
前記それ以外のメタル層と絶縁層は反りが生じた状態になっており、
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦となっていることを特徴とする多層配線構造。
【請求項2】
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記絶縁層の表面は略平坦であり、この平坦面に前記最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層が露出しており、前記露出したメタル層は前記平坦面の一部を構成していることを特徴とする、請求項1に記載の多層配線構造。
【請求項3】
前記それ以外のメタル層と絶縁層は、それぞれ略均一の厚さで形成され、反りが生じた状態になっていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の多層配線構造。
【請求項4】
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層は、反り調整層を構成していることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多層配線構造。
【請求項5】
周辺部にその上下面を貫通するように設けられた機械穴と、下面に配置されたスティフナと、前記貫通穴に上面から挿入されて前記スティフナをネジ止めするネジとをさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多層配線構造。
【請求項6】
メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層して形成された多層配線構造を用いた半導体装置において、
前記多層配線構造は、最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層が、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く、
前記それ以外のメタル層と絶縁層は反りが生じた状態になっており、
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層は、厚さが厚い箇所と厚さが薄い箇所とが存在しており、これによりその表面が略平坦となっており、
前記多層配線構造に半導体部品が搭載されていることを特徴とする、多層配線構造を用いた半導体装置。
【請求項7】
メタル層と絶縁層とを交互に複数層積層する多層配線構造の製造方法において、
最上層及び最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層と前記絶縁層を、それ以外のメタル層と絶縁層より膜厚が厚く形成し、
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の表面を、略平坦とすることを特徴とする多層配線構造の製造方法。
【請求項8】
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記絶縁層を研磨することにより、前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の表面を、略平坦とすることを特徴とする、請求項7に記載の多層配線構造の製造方法。
【請求項9】
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記絶縁層を研磨することにより、前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記メタル層を露出させることを特徴とする、請求項8に記載の多層配線構造の製造方法。
【請求項10】
前記最上層及び前記最下層のうちの少なくとも一方の前記絶縁層を、所定の温度環境下で研磨することを特徴とする請求項9に記載の多層配線構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4911(P2013−4911A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137551(P2011−137551)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】