多段遠心ターボ機械
【課題】全流路に沿って流体を良好に制御できる中間流体輸送装置を提供すること。
【解決手段】多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置が、遠心インペラ5を備えた第1のステージの出口を他の遠心インペラ55を備えた第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路11〜20を具備し、連続戻り通路の各々は、変化する複数の断面111〜115、131から形成され、該複数の断面は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線140に対して垂直なっており、中心線140が、ターボ機械の中心軸線Ozと交差する所定の平面P1、P2、P3内に配置されており、中心線140は、直線状の第1の部分141と、円弧状の湾曲した第2の部分142と、直線状の第3の部分143とを含む。
【解決手段】多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置が、遠心インペラ5を備えた第1のステージの出口を他の遠心インペラ55を備えた第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路11〜20を具備し、連続戻り通路の各々は、変化する複数の断面111〜115、131から形成され、該複数の断面は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線140に対して垂直なっており、中心線140が、ターボ機械の中心軸線Ozと交差する所定の平面P1、P2、P3内に配置されており、中心線140は、直線状の第1の部分141と、円弧状の湾曲した第2の部分142と、直線状の第3の部分143とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段遠心ターボ機械の連続する2つのステージ間で流体を輸送するための装置に関し、前記装置は、ターボ機械の1つのステージの遠心インペラから流出する高速流体を捕捉して前記流体を整流、減速およびターボ機械において隣接するステージの遠心インペラに輸送する複数の連続戻り通路を備えたステータ集成体を備えた多段遠心ターボ機械の流体輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に公知となっている多段ターボポンプを示す。このターボポンプは低温ロケットエンジンに装着され、ロケットエンジンに液体水素を供給するために用いられる。図3のターボポンプは、ケース301、302の内部に2段遠心ポンプが配設されている。各ステージにはインペラ305、355が設けられている。インペラ305、355は、ブレード306、356を有し、共通の回転軸322に取り付けられている。誘導部331がポンプの入口において作動流体供給ダクトに配設されており、この誘導部により良好な吸引特性が得られ、約35000rpmの高速回転が可能となる。
【0003】
回転軸322は、2段ポンプとタービンにより形成される集成体の前部と後部に設けられたボールベアリング323、324により支持されている。参照番号310、304は、ポンプの第1ステージの出口とポンプの第2ステージの入口の間のリンクダクトと、ポンプの第2ステージの出口から作動流体を輸送するためのダクトを示しており、ディフューザ307がトロイダル輸送ダクト304に配設されている。
【0004】
リンクダクト310は中間ステータの本体を貫通して形成されており、3つの部材、つまり、厚いブレードを有する半径ディフューザ308と、ブレードを備えていない戻りベンド309と、戻りブレードを有する求心整流器311から成る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この構成は、半径ディフューザ308が大きい場合には良好な流体特性を与えるが、半径方向に大型化してしまう。半径ディフューザ308からの出口における断面の急激な変化と、求心整流器311への入口における流入による損失は制御が困難である。満足いく効率を得るために、ディフューザ308はターボ機械の半径方向に長くしなければならない。ブレードが設けられていないベンド309は正接方向の速度を低減することも、機械的強度を高めることもない。整流器311は流入に対して適切に取り付けられなければならない。その結果、図3の構成ではリンクダクトを形成することが複雑となり、小型化することが難しい。
【0006】
第1の遠心インペラからの流体を高速で捕捉し整流する中間ステータは、流速を低減し、第2のインペラに供給するので、多段ターボ機械(遠心ポンプまたは遠心コンプレッサ)の1つの主要な構成要素となっており、ターボ機械の半径方向および軸方向の大きさを決定する。
【0007】
本発明は、既述した欠点を克服することを技術課題としており、全流路に沿って流体を良好に制御できる中間流体輸送装置を提供することを目的としている。本発明によれば、この装置は、特に半径方向に小さく、製造が単純であり、また、機械的なストレスも小さくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置において、
遠心インペラを備えた前記ターボ機械の前記第1のステージの出口を他の遠心インペラを備えた前記ターボ機械の前記第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路を含むステータ組立体を具備し、
前記連続戻り通路の各々が、連続する個々の管部材から形成され、1つの連続戻り通路は、変化する複数の断面から形成され、前記複数の断面は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線に対して垂直なっており、前記中心線が、前記ターボ機械の中心軸線と交差する所定の平面内に配置されており、前記中心線は、直線状の第1の部分と、円弧状の湾曲した第2の部分と、直線状の第3の部分とを含み、ターボ機械の中心軸線回りに所定間隔で複数の連続戻り通路が配設されており、前記第1のステージから排気される高速流体を前記戻り通路を通じて整流、減速するようになっており、
連続戻り通路の中心線が、第1の点P1と、第2の点P2と、第3の点P3により予め定められた平面内にあり、第1と第2の点P1、P2が前記ターボ機械の中心軸線に垂直な平面内にあり、第2と第3の点P2、P3がターボ機械の中心軸線と交差する平面内にあり、第1の点P1の配置が、第1の通路の入口と、該入口に対設された遠心インペラの出口の間の所定の距離に対応して決定され、第1と第2の点P1、P2により定義されるベクトルP1P2の方向、および、第2と第3の点P2、P3により定義されるベクトルP2P3の方向が、前記連続戻り通路の中心線の直線状の第1と第3の部分の方向と各々一致し、かつ、ベクトルP1P2が、概ね、第1の遠心インペラを備えた前記第1のステージの出口における上流の流れの方向であることを特徴とする装置を要旨とする。
【0009】
本発明の連続戻り通路により、該通路全体に沿って流体を制御可能となる。所定の平面にある中心線を特定することにより、連続戻り通路の設計、製造が容易になり、解析的に最小の大きさ、最適な作用を与える連続戻り通路の形状を記述することが可能となる。特に、通路の方向が急激に変化することをなくし、デフレクタベンドの両側に配設された直線部分において生じる流れの拡散を確実にすることにより最適な作用を与えるようにした。
【0010】
本発明の流体輸送装置では、連続戻り通路の軸方向端部にはブレードが配設されていない。これにより、第2のインペラへの入口において流れを変形または歪ませる周縁二次流れの発生が防止される。
【0011】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1の連続戻り通路の中心軸線に垂直な断面が、その面積、パラメータA、B、m、および、角断面の局所軸と前記平面に垂直なベクトルbとの間の角度αにより定義される。
【0012】
一例として、前記第1の連続戻り通路の中心軸線に垂直な断面が以下の式にて定義される。
Xm/Am+Ym/Bm=1
ここで、A、B、mはパラメータである。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、所定の平面内にある前記第1の連続戻り通路の中心軸線が以下のパラメータにて定義される。
R0:連続戻り通路の入口における流体輸送装置の平均半径
β0:入口における連続戻り通路の中心線と、平均半径R0により定義される円に対する正接の間の角度
b0:入口における通路の幅
R2h:連続戻り通路の出口に対設された第2のインペラの入口におけるハブの半径
R2t:第2のインペラの入口におけるケースの半径
lc:連続戻り通路の軸方向長さ
Rco1:中心線の湾曲した第4の部分の半径
Rco2:中心線の湾曲した第2の部分の半径
φm:ターボ機械の子午線面内での連続戻り通路の中心線の傾斜角l
ax:中心線の湾曲した第4の部分の湾曲中心と、通路の出口の間の軸方向距離である。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、前記第1の連続戻り通路の前記中心線を決定するために、Ozをターボ機械の中心軸線に対応させ、中心線の第1の直線部分に平行にOxを定義し、中心軸線Ozの原点Oを連続戻り通路の入口の平面に対応するようにして、絶対座標系を定義し、平面を定義する第1と第2と第3の点P1、P2、P3の座標を決定し、特定の点L1が入口に対応し、特定の点L2が直線状の第1の部分と湾曲した第2の部分の間の遷移部分に対応し、特定の点L5が湾曲した第2の部分と直線状の第3の部分の間の遷移部分に対応し、特定の点L6が直線状の第3の部分の終端で連続戻り通路の出口に対応し、特定の点L7がケースとハブにより構成される2つの軸対称面により定義される1つの共通領域内において他方の遠心インペラの入口に対応するように、中心線の特定の点L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7を決定する。
【0015】
より詳細には、前記第1の連続戻り通路の中心線に垂直な断面の面積が、特定の点L1において連続戻り通路の入口の寸法の関数として、そして、特定の点L7において、前記他のインペラへの入口における前記ハブの波形R2hと、前記ケースの半径R2tの関数として定義され、前記中心線の湾曲した第2の部分において中心線に垂直な断面は、特定点L1におけるダ面の面積の約2倍で面積が一定であり、直線状の第1の部分および第3の部分において中心線に垂直な断面は中心線に沿って線型に変化する。
【0016】
本発明の他の特徴によれば、所定平面に含まれる前記連続戻り通路の中心線の各点において、変換する断面の方向は、該断面の局所軸eと、前記中心線を含む前記平面の垂直ベクトルbの間の角度αにより局所的に定義され、前記αが前記所定点L1、L6において30°〜35°の範囲の値を、L2、L5において値0を有し、かつ、角度αは隣接する点L1とL2の間、L2とL5の間、L5とL6の間では線型に変化する。
【0017】
連続戻り通路の変化する断面は、特定点L1、L6において実質的に矩形を呈し、特定L2、L5において楕円形を呈する。本発明の装置は8から15個の連続戻り通路を具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の中間流体輸送ステータ装置を備えた多段遠心ターボポンプの軸方向断面図である。
【図2】連続戻り通路の斜視図である。
【図3】従来技術の多段遠心ターボポンプの断面図である。
【図4】連続戻り通路の中心線を三次元座標系で示す図である。
【図5】連続戻り通路の入口の三次元的位置を示す図である。
【図6】連続戻り通路の断面の一例を示す図である。
【図7】図4の中心線をある平面に投影した図である。
【図8】図4の中心線を他の平面に投影した図である。
【図9】図4の中心線を更に他の平面に投影した図である。
【図10】中心線を含む平面内における中心線の略図である。
【図11】連続戻り通路の断面の変化を示す図である。
【図12】連続戻り通路の断面のパラメータを示す図である。
【図13】連続戻り通路の断面が中心線線に沿って変化する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2に示す連続戻り流路11から20が多段遠心ポンプまたは遠心コンプレッサのステータ要素10を構成している。一例として、図1に水素等の低温推進剤を加圧、輸送するために適した遠心ターボポンプを示す。このポンプは2段ターボポンプであり、ブレード6を有する第1の遠心インペラ5と、ブレード56を有する第2の遠心インペラ55とを具備している。回転軸22が、ボールベアリング23、24により回転支持されており、2つのタービンホイール32、33により回転駆動される。回転軸22は、第1と第2のインペラ5、55を駆動する。
【0020】
このターボ機械は、外ケース要素1、2と、ターボ機械の入口において加圧すべき流体の通路に配設された誘導部31と、タービン32、33を駆動するために高温ガスを導入するための環状体34と、ポンプの第2ステージの出口に配設され作動流体を供給するための環状ダクト4とを具備している。中間ステータ10は複数の連続戻り通路11〜20を具備している。連続戻り通路11〜20は第1の遠心インペラ5からの流体を高速で捕捉し、これを整流、減速して、第2のインペラ55に導入する。
【0021】
第1のインペラ5の出口における動圧から第2のインペラ55の入口での静圧への変換は、以下の式にて定義される圧力回復係数Cpにより評価される。
Cp=(SPI2−SPO1)/(1/2ρVO12)
ここで、
SPO1:第1のインペラの出口における静圧
SPI2:第2のインペラの出口における静圧
VO1:第1のインペラからの出口流速ρ:流体密度
である。
【0022】
図3に示す従来の連続戻り通路では圧力回復係数Cpは0.6を越えることはなかったが、本発明の連続戻り通路11〜20によれば圧力回復係数Cpは0.7〜0.8となる。
【0023】
図4から図13を参照して、第1のインペラ5の出口から第2のインペラ55の入口に到る全流路において流体を制御可能とする連続戻り通路の3次元的形状を規定する種々のパラメータを説明する。
【0024】
管状に形成される第1の連続戻り通路11を説明する。他の連続戻り通路12〜20は第1の連続戻り通路11と同様に形成され、ターボ機械の中心軸線Ozを中心として等間隔に配設される。連続戻り通路12〜20の各々は、単に第1の連続戻り通路11とは中心軸線Ozの角度位置が異なるだけである。
【0025】
8〜15の連続戻り通路を配設することができる。中実の部材から機械加工するよりも管部材から成形することが簡単である。更に、連続戻り通路は変化する単純な断面を有し、モールディングにより成形することが可能である。また、連続戻り通路の端部近傍は真っ直ぐな通路となっており、製造検査が容易となっている。
【0026】
連続戻り通路11〜20の形状は予め定義した平面P1、P2、P3に含まれる中心線(mean line)140により与えられる。中心線140は、中間ステータ要素10の半径方向の寸法を最小にするように、かつ、第1のインペラ5の背後に配設された部材(ベアリング23、ガスケット等、図1参照)の関数として中間ステータ要素10の軸方向の寸法を適合させるように定義される。
【0027】
ある平面に含まれ、第1の連続戻り通路11のために定義される中心線140は連続戻り通路11の種々の部分の形状を比較的単純かつ分析的方法にて説明可能とし、従って、基本的な形状(直線ディフューザ、種々の形状の単純な曲げ形状)で得られた試験結果から利益を得ることが可能となる。中心線140は、また、方向の急激な変化を除去し、拡散領域およびベンド部において流れを制御できるように定義される。
【0028】
中心線140を含む平面は、第1の連続戻り通路11に対して点P1、P2、P3(図4および図7から図10参照)により定義される。点P1、P2はターボ機械の中心軸線Ozに垂直な平面に含まれる。ベクトルP1P2の方向は、拡散を提供する直線的な第1の通路部分110を形成する、中心線140の第1の部分141の平均方向(mean direction)を与える。ベクトルP1P2の方向は、主として中間流体輸送装置の上流の流れに依存している。
【0029】
点P2、P3は、ターボ機械の中心軸線Ozを含まない平面に含まれている。ベクトルP2P3は、拡散を提供する直線的な第3の通路部分130を形成する、中心線140の第3の部分143の平均方向(mean direction)を与える。第1と第3の通路部分110、130は、中心線140の第2の部分142(図2、4)に対応して最適なベンド形状を有する第2の通路部分120により連結される。
【0030】
既述のように定義される平面P1、P2、P3において、第1の連続戻り通路11の中心線140は、それ自体種々の特定点L1〜L7により定義される。特定点L1は連続戻り通路11の入口111に配置される。特定点L1とL2の間の部分141では中心線140は直線である。中心線140は、点L2とL5の間に、中心O2を中心とし半径Rco2とする円弧部分142を含んでいる。中間点L3、L4は円弧部分142の角度位置40°と90°の点である。中心線140は、点L5と連続戻り通路11の出口である点L6(図4、図7から図10および図13)の間の部分143では直線である。点L6と点L7の間では、中心線140は、ターボ機械の中心軸線Ozと平行になるように、平面(O、P2、P3)内の半径Rco1の円弧144となっている。点L7は、第2のインペラ55の入口に一致し、第2のインペラ55の入口においてケースとハブにより構成される2つの軸対称面により定義される1つの共通領域内にある。
【0031】
連続戻り通路11からの出口における軸方向の連結は、中心線140の円弧部分144で切断されない。従って、第2のインペラ55への入口において流れを変化させる周縁二次流れの形成が除去される。
【0032】
中心線140に垂直な連続戻り通路11の断面は変化すると共に、その面積、3つのパラメータA、B、m、および、平面P1、P2、P3に垂直な方向に対する断面の局所軸線の方向とにより定義される。
【0033】
断面は、全圧力勾配が最小となるように変化する。従って、連続戻り通路11の変化する断面は点L1、L6において概ね矩形となし、点L2、L5では楕円とし、一連の特定点L1、L2、L5、L6の間では円滑に変化するようにできる。
【0034】
一般的に、拡散は連続戻り通路11の直線部分110、130でほとんど生じ、それが良好な性能を与えるのである。通路120における偏りは単純なベンド(中心線140においては部分142)で生じる。ベンドにおける垂直断面の各々の主軸は平面P1、P2、P3に垂直となっている。性能を最適化するために、ベンド部120の垂直断面の楕円形が短軸に対する主軸の比が2となるように選択することが有利である。
【0035】
次に、図4から図13を参照して、平面P1、P2、P3に含まれる中心線140の決定方法を説明する。先ず、パラメータR0、β0、b0の値を演算するために、第1のインペラ5からの出口における流れの条件が使用される。
ここで、
R0:連続戻り通路11の入口111における流体輸送装置10の平均半径
β0:入口111における連続戻り通路11の中心線140と、平均半径
R0により定義される円に対する正接の間の角度
b0:入口111における通路11の幅
である。
【0036】
与えられた機械に対してパラメータR2h、R2t、lcが与えられる。
ここで、
R2h:第1のインペラ5出口131に対設された第2のインペラ55の入口におけるハブの半径
R2t:第2のインペラ55の入口におけるケースの半径
lc:通路11の軸方向長さ
である。
【0037】
所定の寸法の制約の下で、既述したようにパラメータRco1、Rco2に対して可能な最大値が選択される。
【0038】
また、入口111とベンド120の開始との間で拡散容量を与えながら、寸法上の制約を満足するようにパラメータφm、laxが調節される。
ここで、
φm:ターボ機械の子午線面内での連続戻り通路11の中心線140の傾斜角lax:中心線140の湾曲した第4の部分144の湾曲中心と、通路11の出口131の間の軸方向距離
である。
【0039】
中心線140の第1の直線部分141に平行にOxをとり、中心軸線Ozの原点Oを連続戻り通路11の入口の平面にとるようにして、軸線Ozをターボ機械の中心軸線に一致させた、三次元絶対座標系Oxyzを定義すると、平面P1、P2、P3を定義する点P1、P2、P3の座標が決定可能となり、また、中心線140の特定の点L1からL7が決定可能となる。
【0040】
平面P1、P2、P3に対する正接t、垂直ベクトルn、垂直ベクトルbが中心線140の各点に関して決定可能となる(図6、10参照)。
【0041】
図11から図13および図6を参照すると、中心線140に沿って通路11のの垂直断面の変化が示されている。図11、13を参照すると、垂直断面111から116および131の面積は種々の特定点L1からL6において定義される。
【0042】
点L1における入口断面111の面積SL1は、入口、特にその幅b0により決定される。点L2からL5における断面112〜115のの面積SL2〜SL5は等しく、入口断面111の面積SL1の約2倍の面積を有している。点L1とL2の間の断面は線型に変化している。
【0043】
点L6における出口断面131の面積SL6は、パラメータR2tおよびR2hに基づき決定され、点L2からL5における断面112〜115のの面積SL2〜SL5の約2倍となっている。断面116などの点L5とL6の間の断面は線型に変化している。点L6とL7の間の断面は変化しない(図10)。
【0044】
中心線140に垂直断面の形状は以下の式にて定義されるフェルマー曲線により定義できる。
Xm/Am+Ym/Bm=1
ここで、A、B、mはパラメータである。
【0045】
面積が与えられると、残りは2自由度である。図12は、点L1、L6の間でパラメータmを変化させる1つの方法を示している。この場合、mはL1とL2の間で8から2へ直線的に変化し、L2とL5の間では2であり、L5とL6の間では2から8へ直線的に変化している。
【0046】
点L1とL6における垂直断面111、131は概ね矩形である。垂直断面112〜115は楕円であり、短半径Aに対する長半径Bの比は2である。より詳細には、長半径Bは点L1からL6の間で直線的に変化し、短半径Aは面積と値mの関数として定義される。
【0047】
図6は、入口111に適した垂直断面の一例を示している。各垂直断面の方向は、断面の局所軸線eと、中心線140を含む平面P1、P2、P3の垂直ベクトルbとの間の角度αにより定義される。(図6、10、13参照)
【0048】
角度αは、特定の点L1、L6において、好ましくは30°から35°の範囲の値を有しており、点L2、L5において0(零)であり、角度αは、点L1、L2の間、および、L2、L5の間、および、L5、L6の間では直線的に変化する。
【0049】
図7から図9は、平面Oxy、OxzおよびOP2、P3への投影であり、これらの平面への中心線140の投影は140A、140B、140Cにて示されている。
【符号の説明】
【0050】
5 第1のインペラ
10 中間ステータ
11 連続戻り通路
32 タービン
33 タービン
55 第2のインペラ
140 中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段遠心ターボ機械の連続する2つのステージ間で流体を輸送するための装置に関し、前記装置は、ターボ機械の1つのステージの遠心インペラから流出する高速流体を捕捉して前記流体を整流、減速およびターボ機械において隣接するステージの遠心インペラに輸送する複数の連続戻り通路を備えたステータ集成体を備えた多段遠心ターボ機械の流体輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に公知となっている多段ターボポンプを示す。このターボポンプは低温ロケットエンジンに装着され、ロケットエンジンに液体水素を供給するために用いられる。図3のターボポンプは、ケース301、302の内部に2段遠心ポンプが配設されている。各ステージにはインペラ305、355が設けられている。インペラ305、355は、ブレード306、356を有し、共通の回転軸322に取り付けられている。誘導部331がポンプの入口において作動流体供給ダクトに配設されており、この誘導部により良好な吸引特性が得られ、約35000rpmの高速回転が可能となる。
【0003】
回転軸322は、2段ポンプとタービンにより形成される集成体の前部と後部に設けられたボールベアリング323、324により支持されている。参照番号310、304は、ポンプの第1ステージの出口とポンプの第2ステージの入口の間のリンクダクトと、ポンプの第2ステージの出口から作動流体を輸送するためのダクトを示しており、ディフューザ307がトロイダル輸送ダクト304に配設されている。
【0004】
リンクダクト310は中間ステータの本体を貫通して形成されており、3つの部材、つまり、厚いブレードを有する半径ディフューザ308と、ブレードを備えていない戻りベンド309と、戻りブレードを有する求心整流器311から成る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この構成は、半径ディフューザ308が大きい場合には良好な流体特性を与えるが、半径方向に大型化してしまう。半径ディフューザ308からの出口における断面の急激な変化と、求心整流器311への入口における流入による損失は制御が困難である。満足いく効率を得るために、ディフューザ308はターボ機械の半径方向に長くしなければならない。ブレードが設けられていないベンド309は正接方向の速度を低減することも、機械的強度を高めることもない。整流器311は流入に対して適切に取り付けられなければならない。その結果、図3の構成ではリンクダクトを形成することが複雑となり、小型化することが難しい。
【0006】
第1の遠心インペラからの流体を高速で捕捉し整流する中間ステータは、流速を低減し、第2のインペラに供給するので、多段ターボ機械(遠心ポンプまたは遠心コンプレッサ)の1つの主要な構成要素となっており、ターボ機械の半径方向および軸方向の大きさを決定する。
【0007】
本発明は、既述した欠点を克服することを技術課題としており、全流路に沿って流体を良好に制御できる中間流体輸送装置を提供することを目的としている。本発明によれば、この装置は、特に半径方向に小さく、製造が単純であり、また、機械的なストレスも小さくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置において、
遠心インペラを備えた前記ターボ機械の前記第1のステージの出口を他の遠心インペラを備えた前記ターボ機械の前記第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路を含むステータ組立体を具備し、
前記連続戻り通路の各々が、連続する個々の管部材から形成され、1つの連続戻り通路は、変化する複数の断面から形成され、前記複数の断面は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線に対して垂直なっており、前記中心線が、前記ターボ機械の中心軸線と交差する所定の平面内に配置されており、前記中心線は、直線状の第1の部分と、円弧状の湾曲した第2の部分と、直線状の第3の部分とを含み、ターボ機械の中心軸線回りに所定間隔で複数の連続戻り通路が配設されており、前記第1のステージから排気される高速流体を前記戻り通路を通じて整流、減速するようになっており、
連続戻り通路の中心線が、第1の点P1と、第2の点P2と、第3の点P3により予め定められた平面内にあり、第1と第2の点P1、P2が前記ターボ機械の中心軸線に垂直な平面内にあり、第2と第3の点P2、P3がターボ機械の中心軸線と交差する平面内にあり、第1の点P1の配置が、第1の通路の入口と、該入口に対設された遠心インペラの出口の間の所定の距離に対応して決定され、第1と第2の点P1、P2により定義されるベクトルP1P2の方向、および、第2と第3の点P2、P3により定義されるベクトルP2P3の方向が、前記連続戻り通路の中心線の直線状の第1と第3の部分の方向と各々一致し、かつ、ベクトルP1P2が、概ね、第1の遠心インペラを備えた前記第1のステージの出口における上流の流れの方向であることを特徴とする装置を要旨とする。
【0009】
本発明の連続戻り通路により、該通路全体に沿って流体を制御可能となる。所定の平面にある中心線を特定することにより、連続戻り通路の設計、製造が容易になり、解析的に最小の大きさ、最適な作用を与える連続戻り通路の形状を記述することが可能となる。特に、通路の方向が急激に変化することをなくし、デフレクタベンドの両側に配設された直線部分において生じる流れの拡散を確実にすることにより最適な作用を与えるようにした。
【0010】
本発明の流体輸送装置では、連続戻り通路の軸方向端部にはブレードが配設されていない。これにより、第2のインペラへの入口において流れを変形または歪ませる周縁二次流れの発生が防止される。
【0011】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1の連続戻り通路の中心軸線に垂直な断面が、その面積、パラメータA、B、m、および、角断面の局所軸と前記平面に垂直なベクトルbとの間の角度αにより定義される。
【0012】
一例として、前記第1の連続戻り通路の中心軸線に垂直な断面が以下の式にて定義される。
Xm/Am+Ym/Bm=1
ここで、A、B、mはパラメータである。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、所定の平面内にある前記第1の連続戻り通路の中心軸線が以下のパラメータにて定義される。
R0:連続戻り通路の入口における流体輸送装置の平均半径
β0:入口における連続戻り通路の中心線と、平均半径R0により定義される円に対する正接の間の角度
b0:入口における通路の幅
R2h:連続戻り通路の出口に対設された第2のインペラの入口におけるハブの半径
R2t:第2のインペラの入口におけるケースの半径
lc:連続戻り通路の軸方向長さ
Rco1:中心線の湾曲した第4の部分の半径
Rco2:中心線の湾曲した第2の部分の半径
φm:ターボ機械の子午線面内での連続戻り通路の中心線の傾斜角l
ax:中心線の湾曲した第4の部分の湾曲中心と、通路の出口の間の軸方向距離である。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、前記第1の連続戻り通路の前記中心線を決定するために、Ozをターボ機械の中心軸線に対応させ、中心線の第1の直線部分に平行にOxを定義し、中心軸線Ozの原点Oを連続戻り通路の入口の平面に対応するようにして、絶対座標系を定義し、平面を定義する第1と第2と第3の点P1、P2、P3の座標を決定し、特定の点L1が入口に対応し、特定の点L2が直線状の第1の部分と湾曲した第2の部分の間の遷移部分に対応し、特定の点L5が湾曲した第2の部分と直線状の第3の部分の間の遷移部分に対応し、特定の点L6が直線状の第3の部分の終端で連続戻り通路の出口に対応し、特定の点L7がケースとハブにより構成される2つの軸対称面により定義される1つの共通領域内において他方の遠心インペラの入口に対応するように、中心線の特定の点L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7を決定する。
【0015】
より詳細には、前記第1の連続戻り通路の中心線に垂直な断面の面積が、特定の点L1において連続戻り通路の入口の寸法の関数として、そして、特定の点L7において、前記他のインペラへの入口における前記ハブの波形R2hと、前記ケースの半径R2tの関数として定義され、前記中心線の湾曲した第2の部分において中心線に垂直な断面は、特定点L1におけるダ面の面積の約2倍で面積が一定であり、直線状の第1の部分および第3の部分において中心線に垂直な断面は中心線に沿って線型に変化する。
【0016】
本発明の他の特徴によれば、所定平面に含まれる前記連続戻り通路の中心線の各点において、変換する断面の方向は、該断面の局所軸eと、前記中心線を含む前記平面の垂直ベクトルbの間の角度αにより局所的に定義され、前記αが前記所定点L1、L6において30°〜35°の範囲の値を、L2、L5において値0を有し、かつ、角度αは隣接する点L1とL2の間、L2とL5の間、L5とL6の間では線型に変化する。
【0017】
連続戻り通路の変化する断面は、特定点L1、L6において実質的に矩形を呈し、特定L2、L5において楕円形を呈する。本発明の装置は8から15個の連続戻り通路を具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の中間流体輸送ステータ装置を備えた多段遠心ターボポンプの軸方向断面図である。
【図2】連続戻り通路の斜視図である。
【図3】従来技術の多段遠心ターボポンプの断面図である。
【図4】連続戻り通路の中心線を三次元座標系で示す図である。
【図5】連続戻り通路の入口の三次元的位置を示す図である。
【図6】連続戻り通路の断面の一例を示す図である。
【図7】図4の中心線をある平面に投影した図である。
【図8】図4の中心線を他の平面に投影した図である。
【図9】図4の中心線を更に他の平面に投影した図である。
【図10】中心線を含む平面内における中心線の略図である。
【図11】連続戻り通路の断面の変化を示す図である。
【図12】連続戻り通路の断面のパラメータを示す図である。
【図13】連続戻り通路の断面が中心線線に沿って変化する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2に示す連続戻り流路11から20が多段遠心ポンプまたは遠心コンプレッサのステータ要素10を構成している。一例として、図1に水素等の低温推進剤を加圧、輸送するために適した遠心ターボポンプを示す。このポンプは2段ターボポンプであり、ブレード6を有する第1の遠心インペラ5と、ブレード56を有する第2の遠心インペラ55とを具備している。回転軸22が、ボールベアリング23、24により回転支持されており、2つのタービンホイール32、33により回転駆動される。回転軸22は、第1と第2のインペラ5、55を駆動する。
【0020】
このターボ機械は、外ケース要素1、2と、ターボ機械の入口において加圧すべき流体の通路に配設された誘導部31と、タービン32、33を駆動するために高温ガスを導入するための環状体34と、ポンプの第2ステージの出口に配設され作動流体を供給するための環状ダクト4とを具備している。中間ステータ10は複数の連続戻り通路11〜20を具備している。連続戻り通路11〜20は第1の遠心インペラ5からの流体を高速で捕捉し、これを整流、減速して、第2のインペラ55に導入する。
【0021】
第1のインペラ5の出口における動圧から第2のインペラ55の入口での静圧への変換は、以下の式にて定義される圧力回復係数Cpにより評価される。
Cp=(SPI2−SPO1)/(1/2ρVO12)
ここで、
SPO1:第1のインペラの出口における静圧
SPI2:第2のインペラの出口における静圧
VO1:第1のインペラからの出口流速ρ:流体密度
である。
【0022】
図3に示す従来の連続戻り通路では圧力回復係数Cpは0.6を越えることはなかったが、本発明の連続戻り通路11〜20によれば圧力回復係数Cpは0.7〜0.8となる。
【0023】
図4から図13を参照して、第1のインペラ5の出口から第2のインペラ55の入口に到る全流路において流体を制御可能とする連続戻り通路の3次元的形状を規定する種々のパラメータを説明する。
【0024】
管状に形成される第1の連続戻り通路11を説明する。他の連続戻り通路12〜20は第1の連続戻り通路11と同様に形成され、ターボ機械の中心軸線Ozを中心として等間隔に配設される。連続戻り通路12〜20の各々は、単に第1の連続戻り通路11とは中心軸線Ozの角度位置が異なるだけである。
【0025】
8〜15の連続戻り通路を配設することができる。中実の部材から機械加工するよりも管部材から成形することが簡単である。更に、連続戻り通路は変化する単純な断面を有し、モールディングにより成形することが可能である。また、連続戻り通路の端部近傍は真っ直ぐな通路となっており、製造検査が容易となっている。
【0026】
連続戻り通路11〜20の形状は予め定義した平面P1、P2、P3に含まれる中心線(mean line)140により与えられる。中心線140は、中間ステータ要素10の半径方向の寸法を最小にするように、かつ、第1のインペラ5の背後に配設された部材(ベアリング23、ガスケット等、図1参照)の関数として中間ステータ要素10の軸方向の寸法を適合させるように定義される。
【0027】
ある平面に含まれ、第1の連続戻り通路11のために定義される中心線140は連続戻り通路11の種々の部分の形状を比較的単純かつ分析的方法にて説明可能とし、従って、基本的な形状(直線ディフューザ、種々の形状の単純な曲げ形状)で得られた試験結果から利益を得ることが可能となる。中心線140は、また、方向の急激な変化を除去し、拡散領域およびベンド部において流れを制御できるように定義される。
【0028】
中心線140を含む平面は、第1の連続戻り通路11に対して点P1、P2、P3(図4および図7から図10参照)により定義される。点P1、P2はターボ機械の中心軸線Ozに垂直な平面に含まれる。ベクトルP1P2の方向は、拡散を提供する直線的な第1の通路部分110を形成する、中心線140の第1の部分141の平均方向(mean direction)を与える。ベクトルP1P2の方向は、主として中間流体輸送装置の上流の流れに依存している。
【0029】
点P2、P3は、ターボ機械の中心軸線Ozを含まない平面に含まれている。ベクトルP2P3は、拡散を提供する直線的な第3の通路部分130を形成する、中心線140の第3の部分143の平均方向(mean direction)を与える。第1と第3の通路部分110、130は、中心線140の第2の部分142(図2、4)に対応して最適なベンド形状を有する第2の通路部分120により連結される。
【0030】
既述のように定義される平面P1、P2、P3において、第1の連続戻り通路11の中心線140は、それ自体種々の特定点L1〜L7により定義される。特定点L1は連続戻り通路11の入口111に配置される。特定点L1とL2の間の部分141では中心線140は直線である。中心線140は、点L2とL5の間に、中心O2を中心とし半径Rco2とする円弧部分142を含んでいる。中間点L3、L4は円弧部分142の角度位置40°と90°の点である。中心線140は、点L5と連続戻り通路11の出口である点L6(図4、図7から図10および図13)の間の部分143では直線である。点L6と点L7の間では、中心線140は、ターボ機械の中心軸線Ozと平行になるように、平面(O、P2、P3)内の半径Rco1の円弧144となっている。点L7は、第2のインペラ55の入口に一致し、第2のインペラ55の入口においてケースとハブにより構成される2つの軸対称面により定義される1つの共通領域内にある。
【0031】
連続戻り通路11からの出口における軸方向の連結は、中心線140の円弧部分144で切断されない。従って、第2のインペラ55への入口において流れを変化させる周縁二次流れの形成が除去される。
【0032】
中心線140に垂直な連続戻り通路11の断面は変化すると共に、その面積、3つのパラメータA、B、m、および、平面P1、P2、P3に垂直な方向に対する断面の局所軸線の方向とにより定義される。
【0033】
断面は、全圧力勾配が最小となるように変化する。従って、連続戻り通路11の変化する断面は点L1、L6において概ね矩形となし、点L2、L5では楕円とし、一連の特定点L1、L2、L5、L6の間では円滑に変化するようにできる。
【0034】
一般的に、拡散は連続戻り通路11の直線部分110、130でほとんど生じ、それが良好な性能を与えるのである。通路120における偏りは単純なベンド(中心線140においては部分142)で生じる。ベンドにおける垂直断面の各々の主軸は平面P1、P2、P3に垂直となっている。性能を最適化するために、ベンド部120の垂直断面の楕円形が短軸に対する主軸の比が2となるように選択することが有利である。
【0035】
次に、図4から図13を参照して、平面P1、P2、P3に含まれる中心線140の決定方法を説明する。先ず、パラメータR0、β0、b0の値を演算するために、第1のインペラ5からの出口における流れの条件が使用される。
ここで、
R0:連続戻り通路11の入口111における流体輸送装置10の平均半径
β0:入口111における連続戻り通路11の中心線140と、平均半径
R0により定義される円に対する正接の間の角度
b0:入口111における通路11の幅
である。
【0036】
与えられた機械に対してパラメータR2h、R2t、lcが与えられる。
ここで、
R2h:第1のインペラ5出口131に対設された第2のインペラ55の入口におけるハブの半径
R2t:第2のインペラ55の入口におけるケースの半径
lc:通路11の軸方向長さ
である。
【0037】
所定の寸法の制約の下で、既述したようにパラメータRco1、Rco2に対して可能な最大値が選択される。
【0038】
また、入口111とベンド120の開始との間で拡散容量を与えながら、寸法上の制約を満足するようにパラメータφm、laxが調節される。
ここで、
φm:ターボ機械の子午線面内での連続戻り通路11の中心線140の傾斜角lax:中心線140の湾曲した第4の部分144の湾曲中心と、通路11の出口131の間の軸方向距離
である。
【0039】
中心線140の第1の直線部分141に平行にOxをとり、中心軸線Ozの原点Oを連続戻り通路11の入口の平面にとるようにして、軸線Ozをターボ機械の中心軸線に一致させた、三次元絶対座標系Oxyzを定義すると、平面P1、P2、P3を定義する点P1、P2、P3の座標が決定可能となり、また、中心線140の特定の点L1からL7が決定可能となる。
【0040】
平面P1、P2、P3に対する正接t、垂直ベクトルn、垂直ベクトルbが中心線140の各点に関して決定可能となる(図6、10参照)。
【0041】
図11から図13および図6を参照すると、中心線140に沿って通路11のの垂直断面の変化が示されている。図11、13を参照すると、垂直断面111から116および131の面積は種々の特定点L1からL6において定義される。
【0042】
点L1における入口断面111の面積SL1は、入口、特にその幅b0により決定される。点L2からL5における断面112〜115のの面積SL2〜SL5は等しく、入口断面111の面積SL1の約2倍の面積を有している。点L1とL2の間の断面は線型に変化している。
【0043】
点L6における出口断面131の面積SL6は、パラメータR2tおよびR2hに基づき決定され、点L2からL5における断面112〜115のの面積SL2〜SL5の約2倍となっている。断面116などの点L5とL6の間の断面は線型に変化している。点L6とL7の間の断面は変化しない(図10)。
【0044】
中心線140に垂直断面の形状は以下の式にて定義されるフェルマー曲線により定義できる。
Xm/Am+Ym/Bm=1
ここで、A、B、mはパラメータである。
【0045】
面積が与えられると、残りは2自由度である。図12は、点L1、L6の間でパラメータmを変化させる1つの方法を示している。この場合、mはL1とL2の間で8から2へ直線的に変化し、L2とL5の間では2であり、L5とL6の間では2から8へ直線的に変化している。
【0046】
点L1とL6における垂直断面111、131は概ね矩形である。垂直断面112〜115は楕円であり、短半径Aに対する長半径Bの比は2である。より詳細には、長半径Bは点L1からL6の間で直線的に変化し、短半径Aは面積と値mの関数として定義される。
【0047】
図6は、入口111に適した垂直断面の一例を示している。各垂直断面の方向は、断面の局所軸線eと、中心線140を含む平面P1、P2、P3の垂直ベクトルbとの間の角度αにより定義される。(図6、10、13参照)
【0048】
角度αは、特定の点L1、L6において、好ましくは30°から35°の範囲の値を有しており、点L2、L5において0(零)であり、角度αは、点L1、L2の間、および、L2、L5の間、および、L5、L6の間では直線的に変化する。
【0049】
図7から図9は、平面Oxy、OxzおよびOP2、P3への投影であり、これらの平面への中心線140の投影は140A、140B、140Cにて示されている。
【符号の説明】
【0050】
5 第1のインペラ
10 中間ステータ
11 連続戻り通路
32 タービン
33 タービン
55 第2のインペラ
140 中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置において、
遠心インペラ(5)を備えた前記ターボ機械の前記第1のステージの出口を他の遠心インペラ(55)を備えた前記ターボ機械の前記第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路(11〜20)を含むステータ組立体(10)を具備し、
前記連続戻り通路(11〜20)の各々が、連続する個々の管部材から形成され、1つの連続戻り通路(11)は、変化する複数の断面(111〜115、131)から形成され、前記複数の断面(111〜115、131)は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線(140)に対して垂直なっており、前記中心線(140)が、前記ターボ機械の中心軸線(Oz)と交差する所定の平面(P1、P2、P3)内に配置されており、前記中心線(140)は、直線状の第1の部分(141)と、円弧状の湾曲した第2の部分(142)と、直線状の第3の部分(143)とを含み、ターボ機械の中心軸線回りに所定間隔で複数の連続戻り通路(11〜20)が配設されており、前記第1のステージから排気される高速流体を前記戻り通路(11〜20)を通じて整流、減速するようになっており、
連続戻り通路(11)の中心線が、第1の点P1と、第2の点P2と、第3の点P3により予め定められた平面(P1、P2、P3)内にあり、第1と第2の点P1、P2が前記ターボ機械の中心軸線(Oz)に垂直な平面内にあり、第2と第3の点P2、P3がターボ機械の中心軸線(Oz)と交差する平面内にあり、第1の点P1の配置が、第1の通路(1)の入口と、該入口に対設された遠心インペラ(5)の出口の間の所定の距離に対応して決定され、第1と第2の点P1、P2により定義されるベクトルP1P2の方向、および、第2と第3の点P2、P3により定義されるベクトルP2P3の方向が、前記連続戻り通路(11)の中心線(140)の直線状の第1と第3の部分(141、143)の方向と各々一致し、かつ、ベクトルP1P2が、概ね、第1の遠心インペラ(5)を備えた前記第1のステージの出口における上流の流れの方向であることを特徴とする装置。
【請求項1】
多段遠心ターボ機械の連続する第1と第2のステージの間で流体を輸送するための装置において、
遠心インペラ(5)を備えた前記ターボ機械の前記第1のステージの出口を他の遠心インペラ(55)を備えた前記ターボ機械の前記第2のステージの入口へ連通させるための複数の連続戻り通路(11〜20)を含むステータ組立体(10)を具備し、
前記連続戻り通路(11〜20)の各々が、連続する個々の管部材から形成され、1つの連続戻り通路(11)は、変化する複数の断面(111〜115、131)から形成され、前記複数の断面(111〜115、131)は所定のパラメータにより定義され、かつ、中心線(140)に対して垂直なっており、前記中心線(140)が、前記ターボ機械の中心軸線(Oz)と交差する所定の平面(P1、P2、P3)内に配置されており、前記中心線(140)は、直線状の第1の部分(141)と、円弧状の湾曲した第2の部分(142)と、直線状の第3の部分(143)とを含み、ターボ機械の中心軸線回りに所定間隔で複数の連続戻り通路(11〜20)が配設されており、前記第1のステージから排気される高速流体を前記戻り通路(11〜20)を通じて整流、減速するようになっており、
連続戻り通路(11)の中心線が、第1の点P1と、第2の点P2と、第3の点P3により予め定められた平面(P1、P2、P3)内にあり、第1と第2の点P1、P2が前記ターボ機械の中心軸線(Oz)に垂直な平面内にあり、第2と第3の点P2、P3がターボ機械の中心軸線(Oz)と交差する平面内にあり、第1の点P1の配置が、第1の通路(1)の入口と、該入口に対設された遠心インペラ(5)の出口の間の所定の距離に対応して決定され、第1と第2の点P1、P2により定義されるベクトルP1P2の方向、および、第2と第3の点P2、P3により定義されるベクトルP2P3の方向が、前記連続戻り通路(11)の中心線(140)の直線状の第1と第3の部分(141、143)の方向と各々一致し、かつ、ベクトルP1P2が、概ね、第1の遠心インペラ(5)を備えた前記第1のステージの出口における上流の流れの方向であることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−31879(P2010−31879A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261276(P2009−261276)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願平10−363203の分割
【原出願日】平成10年12月21日(1998.12.21)
【出願人】(592027148)ソシエテ・ナシオナル・デテユード・エ・ドウ・コンストリユクシオン・ドウ・モトール・ダヴイアシオン、“エス.エヌ.ウ.セ.エム.アー.” (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願平10−363203の分割
【原出願日】平成10年12月21日(1998.12.21)
【出願人】(592027148)ソシエテ・ナシオナル・デテユード・エ・ドウ・コンストリユクシオン・ドウ・モトール・ダヴイアシオン、“エス.エヌ.ウ.セ.エム.アー.” (4)
【Fターム(参考)】
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