説明

多発性硬化症を処置するためのS1P受容体モジュレーター

本発明は、脱髄疾患(例えば多発性硬化症)に関連する血管新生の処置または予防の処置における、S1P受容体モジュレーターの、例えば2−置換2−アミノプロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノプロパノール誘導体、例えば式(X):
【化1】


の基を含む化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱髄疾患(例えば多発性硬化症)に関連する血管新生の処置または予防の処置における、S1P受容体モジュレーターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
S1P受容体モジュレーターは、典型的にはスフィンゴシンアナログ、例えば2−置換2−アミノプロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノプロパノール誘導体、例えば式Xの基を含む化合物である。
【発明の概要】
【0003】
スフィンゴシン−1 ホスフェート(以後“S1P”と記載)は、天然の血清脂質である。現在、8種のS1P受容体、すなわちS1P1〜S1P8が知られている。S1P受容体モジュレーターは、典型的には、スフィンゴシンアナログ、例えば2−置換2−アミノプロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノプロパノール誘導体、例えば式X:
【化1】

[式中、
Zは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、フェニル、フェニル(OHにより置換されている)、C1−6アルキル{ハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(OHにより置換されている)からなる群から選択される1から3個の置換基によって置換されている}、または、CH−R4z{ここで、R4zは、OH、アシルオキシまたは式(a):
【化2】

(式中、Zは、直接結合またはOであり、好ましくはOであり;
5zおよびR6zは、それぞれ独立して、H、またはC1−4アルキル(所望により1、2または3個のハロゲン原子によって置換されている)である。)
の基である。}
であり;
1zは、OH、アシルオキシまたは式(a)の基であり;
2zおよびR3zは、それぞれ独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の基を含む化合物である。
【0004】
式Xの基は、少なくとも1個のZおよびR1zが式(a)の基であるかまたは式(a)の基を含む際に得られる分子が1種以上のスフィンゴシン−1−ホスフェート受容体のアゴニストとしてシグナルする限り、親水性であっても親油性であってもよくかつ1個以上の脂肪族基、脂環基、芳香族基および/またはヘテロ環状基を含む部分に末端基として結合している官能基である。
【0005】
S1P受容体モジュレーターは、1種以上のスフィンゴシン−1 ホスフェート受容体(S1P1〜S1P8)のアゴニストとしてシグナルする化合物である。S1P受容体に結合するアゴニストは、例えば、Gα−GTPおよびGβγ−GTPへの細胞内ヘテロトリマーGタンパク質の解離、および/またはアゴニスト結合受容体のリン酸化の増加および下流のシグナル伝達経路/キナーゼの活性化を起こし得る。
【0006】
S1P受容体モジュレーターの個々のヒトS1P受容体への結合親和性は、以下のアッセイで決定され得る:
化合物のS1P受容体モジュレーター活性は、ヒトS1P受容体S1P、S1P、S1P、S1PおよびS1Pについて試験される。適切なヒトS1P受容体を安定的に発現するトランスフェクトされたCHOまたはRH7777細胞から調製される膜タンパク質への化合物誘発GTP[γ−35S]結合を定量することによって、機能性受容体活性化を評価する。用いられるアッセイ法は、SPA(シンチレーション近接をベースとしたアッセイ)である。簡潔に言えば、DMSO溶解化合物を連続希釈し、S1P受容体発現膜タンパク質を、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl、10μM GDP、0.1% 脂質非含有BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200Ci/mmol)の存在下で、固定したSPAビーズ (Amersham-Pharmacia)に加える(10〜20μg/ウェル)。96ウェルマイクロタイタープレート中、室温で120分間インキュベートした後、非結合GTP[γ−35S]を遠心分離によって分離する。膜結合GTP[γ−35S]によって引き起こされるSPAビーズの発光を、TOPcountプレートリーダー(Packard)で定量する。EC50を、標準的なカーブ・フィッティング・ソフトウェアを用いて計算する。このアッセイにおいて、S1P受容体モジュレーターは、好ましくは<50nMのS1P受容体への結合親和性を有する。
【0007】
望ましいS1P受容体モジュレーターは、例えばS1P結合特性に加えてリンパ球ホーミング特性を促進させる化合物で、例えば全身性免疫抑制を惹起せずに、二次リンパ組織への循環からのリンパ球の再分配(好ましくは可逆性の)によるリンパ球減少症を誘発する化合物である。ナイーブ細胞を隔離し;血液のCD4およびCD8 T細胞およびB細胞を刺激し、リンパ節(LN)とパイエル板(PP)へ遊走させる。
【0008】
リンパ球ホーミング特性を、下記の血液リンパ球枯渇アッセイで測定し得る。
S1P受容体モジュレーターまたはビークルを、ラットに、胃管栄養法によって、経口で投与する。血液をモニターするために−1日で尾の血液を取り、個々の値のベースラインとし、そして適用後2時間、6時間、24時間、48時間および72時間で尾の血液を取る。このアッセイにおいて、S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えば<20mg/kgで投与した際に50%まで末梢血リンパ球を減少させる。
【0009】
適切なS1P受容体モジュレーターの例は、例えば以下に記載のものである。
●EP 627406A1に開示された化合物、例えば式I:
【化3】

[式中、
は、(C12−22)の直鎖または分枝鎖であり、
該鎖中、二重結合、三重結合、O、S、NR(ここで、Rは、H、C1−4アルキル、アリール−C1−4アルキル、アシルまたは(C1−4アルコキシ)カルボニルである。)、およびカルボニルから選択される結合またはヘテロ原子を有していてもよく、かつ/または
置換基として、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキル−オキシ、アシル、C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)−カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有していてもよく;あるいは
は、
フェニルアルキル (ここで、アルキルは直鎖または分枝鎖の(C6−20)炭素鎖である。)であるか;または
フェニルアルキル (ここで、アルキルは、直鎖または分枝鎖の(C1−30)炭素鎖である。)であって、ここで、当該フェニルアルキルは、
所望によりハロゲンによって置換されている直鎖または分枝鎖の(C6−20)炭素鎖、
所望によりハロゲンによって置換されている直鎖または分枝鎖の(C6−20)アルコキシ鎖、
直鎖または分枝鎖の(C6−20)アルケニルオキシ、
フェニル−C1−14アルコキシ、ハロフェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシ−C1−4アルコキシまたはフェノキシ−C1−4アルキル、
6−20アルキルによって置換されているシクロアルキルアルキル、
6−20アルキルによって置換されているヘテロアリールアルキル、
ヘテロ環C6−20アルキル、または
2−20アルキルによって置換されているヘテロ環アルキル
{ここで、該アルキル部分は、
該炭素鎖中、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニルまたはNR(ここで、Rは上で定義した通りである。)から選択される結合またはヘテロ原子を有していてもよく、
置換基として、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキルオキシ、アシル、C1−4アルキル−アミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有していてもよい。}
によって置換されており;
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の化合物、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物;
【0010】
●EP 1002792A1に開示された化合物、例えば式II:
【化4】

[式中、mは、1から9であり、R'、R'、R'およびR'は、それぞれ独立して、H、C1−6アルキルまたはアシルである。]
の化合物、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物;
【0011】
●EP0778263 A1に開示された化合物、例えば式III:
【化5】

[式中、WはH;C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;非置換またはOHによって置換されているフェニル;R''O(CH);またはC1−6アルキル (ハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(OHによって置換されている)からなる群から選択される、1から3個の置換基によって置換されている)であり;
Xは、H、または非置換もしくは置換されたp個の炭素原子を有する直鎖のアルキル、または非置換もしくは置換された(p−1)個の炭素原子を有する直鎖のアルコキシであって、例えばC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニルおよびフェニル(C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンからなる群から選択される1から3個の置換基によって置換されている)からなる群から選択される、1から3個の置換基によって置換されており;Yは、H、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり;Zは、一重結合またはq個の炭素原子を有する直鎖のアルキレンであり、
pおよびqは、それぞれ独立して、1から20の整数であり、ただし、6p+q23であり、m'は、1、2または3であり、nは、2または3であり、
R''、R''、R''およびR''は、それぞれ独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の化合物、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物;
【0012】
●WO 02/18395に開示された化合物、例えば式IVaまたはIVb:
【化6】

[式中、Xは、O、S、NR1s、または基−(CH)na− (ここで、該基は、非置換であるか、または1から4個のハロゲンによって置換されている。)であり;nは、1または2であり;R1sは、Hまたは(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている。)であり;R1aは、H、OH、(C1−4)アルキル、またはO(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、または1から3個のハロゲンによって置換されている。)であり;R1bは、H、OH、または(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている。)であり;それぞれのR2aは、H、または(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている。)から独立して選択され;R3aは、H、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている。)であり;R3bは、H、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはヒドロキシによって置換されている。)、またはO(C1−4)アルキル (ここで、アルキルは、非置換であるか、またはハロゲンによって置換されている。)であり;Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、R4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。]
の化合物、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物;
【0013】
●WO 02/06268AIに開示された化合物、例えば式V:
【化7】

[式中、R1dおよびR2dは、それぞれ独立して、H、またはアミノ保護基であり;
3dは、水素、ヒドロキシ保護基または式:
【化8】

の基であり;
4dは、C1−4アルキルであり;
は、1から6の整数であり;
は、エチレン、ビニレン、エチニレン、式:−D−CH− (ここで、Dは、カルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである。)を有する基、アリールまたはアリール(以下に定義したグループaから選択される3個までの置換基によって置換されている)であり;
は、単結合、C1−10アルキレン、C1−10アルキレン(グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されている)、炭素鎖の中間または末端にOまたはSを有するC1−10アルキレン、または、炭素鎖の中間または末端にOまたはSを有するC1−10アルキレン(グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されている)であり;
5dは、水素、C3−6シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、C3−6シクロアルキル(グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されている)、アリール(グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されている)、またはヘテロ環基(グループaおよびbから選択される3個までの置換基によって置換されている)であり;
6dおよびR7dは、それぞれ独立して、H、または、グループaから選択される置換基であり;
8dおよびR9dは、それぞれ独立して、HまたはC1−4アルキル(所望によりハロゲンによって置換されている)であり;
<グループa>は、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ−低級アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;
<グループb>は、C3−6シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環基であり、それぞれは、所望によりグループaから選択される3個までの置換基によって置換されており;
ただし、R5dが水素であるとき、Yは単結合または直鎖C1−10アルキレンである。]
の化合物、その薬理学的に許容される塩、エステル、またはそれらの水和物;
【0014】
●JP-14316985 (JP2002316985)に開示された化合物、例えば式VI:
【化9】

[式中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、n、XおよびYは、JP-14316985に開示された通りである。]
の化合物、その薬理学的に許容される塩、エステルまたは水和物;
【0015】
●WO 03/062252A1に開示された化合物、例えば式VII:
【化10】

[式中、
Arは、フェニルまたはナフチルであり;mおよびnは、それぞれ独立して、0または1であり;Aは、COOH、PO、POH、SOH、PO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;R1gおよびR2gは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、COOHまたはC1−4アルキル(所望によりハロゲンによって置換されている)であり;R3gは、H、またはC1−4アルキル(所望によりハロゲンまたはOHによって置換されている)であり;それぞれのR4gは、独立して、ハロゲンであるか、または所望によりハロゲン置換されているC1−4アルキルまたはC1−3アルコキシであり;RおよびMは、それぞれ、WO 03/062252A1中でBおよびCについてそれぞれ示した意味の一つを有する。]
の化合物、その薬理学的に許容される塩、それらの溶媒和物または水和物;
【0016】
●WO 03/062248A2に開示された化合物、例えば式VIII:
【化11】

[式中、Arは、フェニルまたはナフチルであり;nは、2、3または4であり;Aは、COOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO、PO、−SOHまたはPO(R5h)OHであって、ここで、R5hは、C1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニル (ここで、該フェニルまたはフェニル部分は、所望により置換されている。)から選択され;R1hおよびR2hは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノで置換されたC1−6アルキルまたはフェニルであり;R3hは、H、またはC1−4アルキル(所望によりハロゲンおよび/またはOHによって置換されている)であり;それぞれのR4hは、独立して、ハロゲノ、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1または21−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシであり、ここで、該アルキル部分は、所望により1〜3個のハロゲンによって置換されていてもよく;RおよびMは、それぞれ、WO 03/062248A2中でBおよびCについてそれぞれ示した意味を有する。]
の化合物、その薬理学的に許容される塩、それらの溶媒和物または水和物;
【0017】
●WO 04/103306A、WO 05/000833、WO 05/103309またはWO 05/113330に開示された化合物、例えば式IXaまたはIXb:
【化12】

[式中、
は、COOR5k、OPO(OR5k)、PO(OR5k)、SOOR5k、POR5kOR5k、または1H−テトラゾール−5−イルであって、R5kは、HまたはC1−6アルキルであり;
は、結合、C1−3アルキレン、またはC2−3アルケニレンであり;
は、C6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリールであり、所望によりハロゲン、OH、NO、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ;ハロ置換C1−6アルキル、およびハロ置換C1−6アルコキシから選択される1から3個の基によって置換されており;
は、WO 04/103306Aで示したヘテロ環基、例えばアゼチジンであり;
1kは、C6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリール(所望によりC1−6アルキル、C6−10アリール、C6−10アリールC1−4アルキル、C3−9ヘテロアリール、C3−9ヘテロアリールC1−4アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルまたはC3−8ヘテロシクロアルキルC1−4アルキルによって置換されている)であり;ここで、R1kの全てのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、およびハロ置換−C1−6アルキルまたは−C1−6アルコキシから選択される1から5個の基によって置換されていてもよく;
2kは、H、C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであり:
3kまたはR4kは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、またはハロ置換C1−6アルキルもしくはC1−6アルコキシであり;
の化合物、およびそのN−オキシド誘導体またはプロドラッグ、
またはその薬理学的に許容される塩、それらの溶媒和物または水和物。
【0018】
式IからIXbの化合物は、遊離形で存在しても塩形で存在してもよい。式IからVIの化合物の薬学的に許容される塩は、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、および硫酸)との塩、有機酸(例えば、酢酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、およびベンゼンスルホン酸)との塩を含み、あるいは、適切なときは、金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアルミニウム塩)、アミン(例えばトリエチルアミン)との塩および二塩基性アミノ酸(例えばリジン)との塩を含む。本発明の化合物と塩の組み合わせは、水和物および溶媒和物の形態を含む。
【0019】
上で記載したアシルは、基R−CO− (ここで、Rは、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである。)であってもよい。特記しない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖であっても分子鎖であってもよい。
アリールは、フェニルであってもナフチルであってもよく、好ましくはフェニルである。
【0020】
式Iの化合物において、Rとしての炭素鎖が置換されているとき、それは、好ましくは、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシによって置換されている。炭素鎖が所望により置換されているフェニレンによって隔てられているとき、該炭素鎖は好ましくは非置換である。フェニレン部分が置換されているとき、それは、好ましくは、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシによって置換されている。
【0021】
好ましい式Iの化合物は、RがC13−20アルキル(所望によりニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシによって置換されている)である化合物であり、より好ましくは、Rがフェニルアルキル(C6−14アルキル鎖(所望によりハロゲンによって置換されている)によって置換されている)であって、かつ該アルキル部分が所望によりヒドロキシによって置換されているC1−6アルキルである化合物である。より好ましくは、Rは、フェニル−C1−6アルキル(該フェニル上で、直鎖または分枝鎖の、好ましくは直鎖のC6−14アルキル鎖によって置換されている)である。該C6−14アルキル鎖は、オルト位、メタ位またはパラ位であってもよく、好ましくはパラ位である。
好ましくは、RからRはそれぞれHである。
【0022】
上の式Vにおいて、“ヘテロ環基”は、S、OおよびNから選択される1から3個のヘテロ原子を有する5員から7員のヘテロ環基を表す。該ヘテロ環基の例は、上で記載したヘテロアリール基、および部分的にまたは完全に水素化されたヘテロアリール基に対応するヘテロ環化合物、例えばフリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニルまたはピラゾリジニルを含む。好ましいヘテロ環基は、5員または6員のヘテロアリール基であり、最も好ましいヘテロ環基は、モルホリニル、チオモルホリニルまたはピペリジニル基である。
【0023】
式Iの好ましい化合物は、2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。特に好ましい式IのS1P受容体アゴニストは、FTY720、すなわち以下に示した遊離形または薬学的に許容される塩形(例えば塩酸塩)の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Aとする。)である。
【化13】

【0024】
好ましい式IIの化合物は、遊離形または薬学的に許容される塩形(例えば塩酸塩)の、R'からR'がそれぞれHであり、mが4である化合物、すなわち2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Bとする。)である。
【0025】
好ましい式IIIの化合物は、遊離形または薬学的に許容される塩形(例えば塩酸塩)の、WがCHであり、R''からR''がそれぞれHであり、Zがエチレンであり、Xがヘプチルオキシであり、YがHである化合物、すなわち2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以後化合物Cとする。)である。そのR−エナンチオマーが特に好ましい。
【0026】
化合物は、リン酸化された形態であってもよい。好ましい式IVaの化合物は、FTY720−ホスフェート(R2aがHであり、R3aがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHである)である。好ましい式IVbの化合物は、化合物C−ホスフェート(R2aがHであり、R3bがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YがOであり、R4aがヘプチルである)である。好ましい式Vの化合物は、化合物B−ホスフェートである。
【0027】
好ましい式VIの化合物は、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
【0028】
好ましい式IXaの化合物は、例えば、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、またはそのプロドラッグである。
【0029】
S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えばEP 627406A1、WO 04/103306、WO 05/000833、WO 05/103309、WO 05/113330またはWO 03/097028に開示されたように、腫瘍の処置において、免疫抑制特性または抗血管新生特性を有するとして知られている。
【0030】
多発性硬化症(MS)は、運動および感覚機能の進行性減退および持続性能力障害を引き起こす慢性炎症脱髄を伴う中枢神経系の免疫介在疾患である。多発性硬化症の治療は、部分的にのみ有効であり、ほとんどの場合で、抗炎症処置および免疫抑制処置にもかかわらず、疾患の進行を短期間遅らせるのみである。従って、生物に影響を与える症候の減退、軽減、安定化または緩和を含む、脱髄性疾患(例えば多発性硬化症またはギランバレー症候群)の阻害または処置に有効である薬剤の要請がある。
【0031】
脱髄性疾患の特徴的な病理学的特徴は、炎症、脱髄、および、軸索およびオリゴデンドロサイト喪失を含む。さらに、病変部はまた、著大な血管系成分を有し得る。近年、慢性炎症および血管新生の間には確かな関連性が確立され、血管新生は、疾患の進行に重要な役割を有すると見られている。
【0032】
現在、S1P受容体モジュレーターが、脱髄性疾患(例えばMS)に関連する血管新生に対して阻害効果を有することが見出されている。
【0033】
さらなる特定のまたはその他の態様において、本発明は、以下に示すものを提供する。
1.1 必要な対象において、脱髄性疾患(例えばMS)に関連する血管新生を予防、阻害または処置する方法であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター(例えば式IからIXbの化合物)を投与することを含む方法;
1.2 必要な対象において、脱髄性疾患(例えば多発性硬化症またはギランバレー症候群)の症候を緩和するまたは進行を遅らせる方法(該方法において、該疾患に関連する血管新生が予防されるまたは阻害される)であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター(例えば式IからIXbの化合物)を投与することを含む方法;
1.3 必要な対象において、脱髄性疾患(例えば多発性硬化症またはギランバレー症候群)において、再発を軽減、予防または緩和する方法(該方法において、該疾患に関連する血管新生が予防されるかまたは阻害される)であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター(例えば式IからIXbの化合物)を投与することを含む方法;
1.4 疾患の再発−寛解相である対象において、脱髄性疾患(例えば多発性硬化症またはギランバレー症候群)の進行を遅らせる方法(該方法において、該疾患に関連する血管新生が予防されるまたは阻害される)であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター(例えば式IからIXbの化合物)を投与することを含む方法;
1.5 上で示した方法であって、S1P受容体モジュレーターが間歇投与される方法、例えばS1P受容体が2もしくは3日に1回または週に1回投与される方法;
2. 1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、S1P受容体モジュレーター(例えば上で定義した式IからIXbの化合物)を含む、方法1.1から1.5の何れか1つに使用するための医薬組成物;
3. 方法1.1から1.5の何れか1つに使用するためのS1P受容体モジュレーター、例えば上で定義した式IからIXbの化合物;
4. 方法1.1から1.5の何れか1つに使用する医薬の製造に使用するためのS1P受容体モジュレーター(例えば上で定義した式IからIXbの化合物)。
【0034】
臨床医は、通常、MSを有する患者を以下の4タイプの疾患パターンに類別する:
・再発−寛解型(RR−MS):1〜2週間に亘って起こり、かつしばしば1〜2ヶ月に亘って回復する、別個の運動、感覚、小脳または視覚の発作。各エピソードで能力障害を起こすが再発までの間は臨床的に安定している患者もいる。約85%の患者は、当初、 MSのRR形態を経験するが、10年以内に約半数が二次進行型に進行する;
・二次進行型(SP−MS):当初のRRに続いて、再発が起こっても起こらなくても徐々に能力障害が拡大する。主要な不可逆性能力障害は、その大部分がしばしばSPの間に現れる;
・一次進行型(PP−MS):再発または寛解を一切することなく始めから疾患の進行が起こる。約15%のMS患者がかかる;
・進行−再発型(PR−MS):始めから明確な急性再発を有する進行性疾患;再発の間の期間における進行の継続によって特徴付けられる。
【0035】
従って、S1P受容体モジュレーター、例えば上で定義した式IからIXbの化合物は、再発−寛解型(RR−MS)、二次進行型(SP−MS)、一次進行型(PP−MS)および進行−再発型(PR−MS)のうちの1種以上の処置に有用であり得る。
【0036】
特に、本明細書で記載したS1P受容体モジュレーター、例えばFTY720、すなわち2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル) エチル]プロパン−1,3−ジオールは、PP−MSを処置するのに有用である。
【0037】
S1P受容体モジュレーター、例えば式Xの基を含むS1P受容体モジュレーターの、上で特記した脱髄性疾患に関連する血管新生の予防または処置への有用性は、動物試験法および臨床試験で、例えば以下に記載した方法に従って実証され得る。
【0038】
In vivo:再発性実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)
疾患を、メスのLewisラットにおいて、完全フロイントアジュバント中に乳化させたモルモット脊髄組織での免疫処置によって誘発させる。これは、11日目までに急性疾患を引き起こし、続いて16日目付近でほぼ完全に寛解し、26日目付近で再発を起こす。26日目に、ラットを、イソフルラン(3%, 20L/分)で深く麻酔した後、胸郭切除し、心臓の左心室を通じて灌流する。左心室を、リンス溶液(NaCl 0.9%, 250,000U/lヘパリン, 35℃)を含む気密性加圧シリンジに繋いだ翼状灌流セット(winged infusion set)(SV-19BLK; Termudo, Elkton, MD)の19径ニードルで穿孔する。右心房を流出口とするために穿孔し、120mmHgの正確に制御された圧力下で、灌水を注入する。灌流を5分間続け(20ml/分の一定速度で)、続いて、前固定溶液(pre-fixation solution)(PBS中2% 過ホルムアルデヒド, 35℃)を加える。最後に、30ml以下のポリウレタン樹脂(PUII4; Vasqtec, Zuerich, Switzerland)を同じ速度で注入する。48時間後、樹脂充填脳および脊髄を動物から摘出し、7.5% KOH中、50℃で24時間解離させることによって、柔組織を除去する。次いで、キャストを蒸留水で徹底的に洗浄し、蒸留水中で保存した後、凍結乾燥によって乾燥する。これらの血管キャストを、ミクロコンピュータ断層撮影法を用いて定量化する。
【0039】
このアッセイにおいて、S1P1受容体モジュレーター、例えば化合物Aは、動物に、0.1から20mg/kgで経口投与されたとき、疾患関連血管新生を著しく遮断する。例えば化合物Aの塩酸塩は、疾患関連血管新生を完全に遮断し、0.3mg/kgで経口投与されたとき、再発相を完全に阻害する。化合物Aの塩酸塩が、0.3mg/kgで、2もしくは3日に1回または週1回、経口投与されるとき、同様の効果が得られる。
【0040】
C. 臨床試験
S1P受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物、例えば化合物Aの臨床的有益性試験
再発−寛解型MSを有する20人の患者に、該化合物を、0.5、1.25または2.5mgの1日用量で経口投与する。患者の全身の臨床状態を、週1回内科医および臨床検査によって調べる。疾病状態および疾患進行における変化を、2月毎に放射線検査(MRI)および身体検査によって評価する。始めに、患者は2〜6月間処置を行う。その後、疾患が進行せず、かつ薬物が満足のいく耐容性を示す限り、処置を続ける。
評価のための主要な変数:安全性(有害事象)、標準血清生化学および血液学、磁気共鳴画像(MRI)。
【0041】
S1P受容体モジュレーターが単独で用いられるとき、本発明の方法を行うのに必要な1日投与量は、例えば、用いられる化合物、宿主、投与方法および処置される状態の重症度に依存して変化する。好ましい1日用量範囲は、1回投与または分割投与として、0.1から100mgである。患者に適切な1日投与量は、例えば0.1から50mgのオーダーの経口投与である。S1P受容体モジュレーターは、何れの慣用の経路によって投与されてもよく、特に経腸で、例えば経口で、例えば錠剤、カプセル剤、飲用溶液で、経鼻で、肺へ(吸入によって)、または、非経腸で、例えば注射用溶液または懸濁液の形態で投与され得る。経口投与に適切な単位投与形は、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、約0.1から30mg、通常0.25から30mgのS1P受容体モジュレーターを含む。すでに述べた通り、S1P受容体モジュレーター(例えば化合物A)は、あるいは、例えば0.5から30mgの用量で、1日おきに、または週1回、間歇投与してもよい。
【0042】
本発明の別の態様に従って、該S1P受容体モジュレーターは、唯一の活性成分として、または、例えばアジュバントとしてVEGF受容体アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。
【0043】
適切なVEGF受容体アンタゴニストの例は、例えば、VEGF受容体チロシンキナーゼを阻害する、VEGF受容体を阻害する、またはVEGFに結合する化合物、タンパク質または抗体を含み、例えば、以下の文献に一般的におよび具体的に開示された化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体、特に、WO 98/35958に開示されたもの、例えば1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたはその薬学的に許容される塩、例えばコハク酸塩、WO 00/27820に開示されたもの、例えばN−アリール(チオ)アントラニル酸アミド誘導体、例えば2−[(4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたは2−[(1−オキシド−4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−トリフルオロメチルフェニル]ベンズアミド、またはWO 00/09495、WO 00/59509、WO 98/11223、WO 00/27819、WO 01/55114、WO 01/58899およびEP 0 769 947に開示されたもの;M. Prewett et al, Cancer Research 59 (1999) 5209-5218に記載されたもの、F. Yuan et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, Dec. 1996に記載されたもの、Z. Zhu et al, Cancer Res. 58, 1998, 3209-3214に記載されたもの、およびJ. Mordenti et al, Toxicologic Pathology, Vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999に記載されたもの;WO 00/37502 および WO 94/10202に記載されたもの;M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328に記載されたAngiostatin(商標);M. S. O'Reilly et al, Cell 88, 1997, 277-285に記載されたEndostatin(商標);アントラニル酸アミド類;ZD4190;ZD6474;SU5416;SU6668;または抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体、例えばRhuMabである。
【0044】
4−ピリジルメチル−フタラジン誘導体は、例えば、VEGF受容体チロシンキナーゼの好ましい阻害剤である。該誘導体およびその製造、医薬製剤、および該化合物の製造方法は、WO 00/59509、EP 02/04892、WO 01/10859、特に米国特許第6,258,812号に記載されており、これらは言及することによって本明細書に組み込まれる。
【0045】
S1P受容体モジュレーターをVEGF受容体アンタゴニストと共に投与するとき、共投与したVEGF受容体アゴニストの投与量は、用いられる併用薬のタイプ(例えばそれがステロイドであるかまたはカルシニューリン阻害剤であるか)、用いられる特定の薬物、処置される状態などに応じて当然に変化するであろう。
【0046】
前述に従って、本発明はまた、さらなる態様において、以下に示すものを提供する。
5. 非毒性治療有効量のS1P受容体モジュレーターおよびVEGF受容体アンタゴニスト、例えば上記のVEGF受容体アンタゴニストを、同時にまたは連続して共投与することを含む、上で定義した方法;
6. 本明細書で開示した、遊離形または薬学的に許容される塩形のS1P受容体モジュレーターである第1薬物、および
b) VEGF受容体アンタゴニスト、例えば上記のVEGF受容体アンタゴニスト
を含む、薬学的組み合わせ物、例えばキット。該キットは、投与方法のための指示書を含んでもよい。
【0047】
“共投与”または“併用投与”という用語などは、本明細書で用いられるとき、複数の選択された治療薬を1人の患者に投与することを含み、また、当該薬物は、必ずしも同一の投与経路によって、または同時に投与されない処置レジメを含むことを意図している。
【0048】
“薬学的組み合わせ物”という用語は、本明細書で用いるとき、1種以上の活性成分を混合してまたは組み合わせて得られる製品を意味し、活性成分の固定化された組み合わせおよび固定化されない組み合わせを含む。“固定化された組み合わせ”という用語は、活性成分(例えばS1P受容体モジュレーターおよびVEGF受容体アンタゴニスト)が、1人の患者に、同時に1個の投与形で両方とも投与されることを意味する。“固定化されない組み合わせ”という用語は、活性成分(例えばS1P受容体モジュレーターおよびVEGF受容体アンタゴニスト)が、1人の患者に、別の投与形で、同時に(simultaneously)、同時に(concurrently)、または連続して、特定の時間制限なしで、両方とも投与されることを意味し、該投与は、患者の体内で、治療有効量の2種の化合物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性疾患、例えば多発性硬化症に関連する血管新生を予防する、阻害するまたは処置する医薬の製造における、S1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した式IからIXbの化合物の使用。
【請求項2】
PP−MSを予防する、阻害するまたは処置する医薬の製造における、S1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した式IからIXbの化合物の使用。
【請求項3】
該S1P受容体モジュレーターが、式X:
【化1】

[式中、
Zは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、フェニル、フェニル(OHにより置換されている)、C1−6アルキル(ハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(OHにより置換されている)からなる群から選択される1から3個の置換基によって置換されている)、または、CH−R4z{ここで、R4zは、OH、アシルオキシまたは式(a):
【化2】

(式中、Zは、直接結合またはOであり、好ましくはOであり;
5zおよびR6zは、それぞれ独立して、H、またはC1−4アルキル(所望により1、2または3個のハロゲン原子によって置換されている)である。}
の基である。}
であり;
1zは、OH、アシルオキシまたは式(a)の基であり;
2zおよびR3zは、それぞれ独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の基を含む、請求項1または2に記載した使用。
【請求項4】
該医薬が、VEGF受容体アンタゴニスト、例えば本明細書で定義したVEGF受容体アンタゴニストと、例えば同時にまたは連続して、共投与される、請求項1〜3の何れか1項に記載した使用。
【請求項5】
薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、S1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した式IからIXbの化合物を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載した使用のための医薬組成物。
【請求項6】
a) S1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した、遊離形または薬学的に許容される塩形の式IからXIbの化合物である第1薬物、および
b) VEGF受容体アンタゴニスト、例えば本明細書で定義したVEGF受容体アンタゴニスト
を含む、薬学的組み合わせ物、例えばキット。
【請求項7】
必要な対象において、脱髄性疾患、例えば多発性硬化症に関連する血管新生を予防する、阻害するまたは処置する方法であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した式IからIXbの化合物を投与することを含む方法。
【請求項8】
必要な対象において、PP−MSを予防する、阻害するまたは処置する方法であって、該対象に、治療有効量のS1P受容体モジュレーター、例えば本明細書で定義した式IからIXbの化合物を投与することを含む方法。
【請求項9】
該S1P受容体モジュレーターが間歇投与される、請求項8に記載した方法。
【請求項10】
該S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストが、遊離形または薬学的に許容される塩形の、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパン−ジオール、または、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸である、請求項1〜9の何れか1項に記載した方法、使用、医薬組成物、または薬学的組み合わせ物。
【請求項11】
該S1P受容体モジュレーターが、遊離形または薬学的に許容される塩形の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールである、請求項1〜10の何れか1項に記載した方法、使用、医薬組成物または薬学的組み合わせ物。

【公表番号】特表2009−541386(P2009−541386A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516964(P2009−516964)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005597
【国際公開番号】WO2008/000419
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】