説明

多発性硬化症を治療するためのクラドリビン投薬計画

本発明は、経口投与されるものであり、且つ、再治療が可能である、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症又は初期の二次進行型多発性硬化症の治療用製剤の製造におけるクラドリビンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性硬化症、特に、再発寛解型多発性硬化症、又は初期の二次進行型多発性硬化症の治療のためのクラドリビン反復投与の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、ヒトの中枢神経系の最もよく知られている慢性炎症性脱髄性疾患である。疾患の発症は、通常、20〜40歳の間に起こる。女性は、男性の約2倍多く罹患する。
時間が経つにつれて、MSは様々な神経性廃疾の累積をもたらす可能性がある。MSの臨床的障害は、組織萎縮に通じる、度重なる炎症性損傷とその後のミエリン及び軸索の損失の結果であると思われる。
【0003】
MSは、身体的症状(再発と障害進行)、中枢神経系(中枢神経系)炎症、大脳萎縮、及び認知障害に現れる。主症状は、限局性感覚欠損、限局性脱力(focal weakness)、視覚の問題、平衡失調、及び疲労感を含む。性機能障害と括約筋機能不全が起こる可能性がある。MSの患者の約半分は、認知障害又は鬱病になる可能性がある。
MSは、現在、多相性疾患であると考えられており、臨床的静止(寛解)期間が増悪の間に生じる。寛解は、期間が異なり、数年続くかもしれないが、稀に永久的である。
【0004】
疾患の4つの経過:再発寛解型(RR)、二次進行型(SP)、一次進行型(PP)、及び進行性再発型(PR)の多発性硬化症、が個別化されている。80%を超えるMS患者が、初めに、神経症状の臨床的増悪を伴うRR経過を呈し、その後に完全であるかどうか分からない回復が続く(Lublin及びReingold、Neurology、1996年、46:907-911ページ)。
【0005】
RRMSの間、障害の累積は、再発からの不完全な回復から生じる。ざっと、RRMS患者の半数が、病変発現の10年後にSPMSと呼ばれる進行性の経過に切り替わる。SP相の間、障害の悪化は、増悪後の残留症状の累積に由来するが、増悪の合間の潜行性の進行にも由来する(Lublin及びReingold、前記)。10%のMS患者が、疾病発現からの症状の潜行性進行を特徴とするPPMSに罹患している。5%未満の患者が、PRMSに罹患し、そして、多くの場合、PPMSと同じ予後を有すると考えられている。異なった発病メカニズムが異なった患者サブグループに関与し、疾患分類のために広範囲のかかわりを持つ可能性があることが示唆される(Lassmannら、2001年、Trends Mol Med., 7、115-121ページ;Lucchinettiら、Curr. Opin. Neurol.、2001年、14、259-269ページ)。
【0006】
MS発現は、CNS機能不全の最初の神経症状の発生によって規定される。脳脊髄液(CSF)分析と磁気共鳴画像法(MRI)の進歩は、診断過程を簡素化し、初期の診断を容易にした(Noseworthyら、The New England Journal of Medicine、2000年、343, 13、938-952ページ)。MS診断の国際的な識者は、MSの診断を容易にし、且つ、臨床検査法及び補助的な臨床検査法を伴うMRIを含む改訂基準を出した(McDonaldら、2001年、Ann. Neurol., 50:121-127ページ)。
【0007】
疾患を調節する治療である、すなわち、MSの経過を調節する現在のMS用の投薬は、免疫系を調節するか又は抑制する。4種類のFDA承認されたRRMS用免疫調節薬:3種類のベータ・インターフェロン(Betaseron(登録商標)、Berlex;Avonex(登録商標)、Biogen;Rebif(登録商標)、Serono)及び酢酸グラチラマー(Copaxone(登録商標)、Amgen)が存在する。1種類のFDA承認された悪化したMS用免疫抑制薬、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標)、Amgen)も存在する。PDAで承認されていないが、他のいくつかの免疫抑制薬が使用されている。
それらの中で、塩素化プリン類似体である2-クロロ-2'-デオキシアデノシン類似体(2-CdA)であるクラドリビンが、MSの治療に有用であることが示唆された(EP 626853B1及びUS 5,506,214)。
【0008】
多発性硬化症の患者におけるクラドリビンを用いたいくつかの臨床試験が、MSにおける静脈内及び皮下クラドリビン使用を調査した。
【0009】
2回の二重盲検の、プラシーボを対照とした第II相試験が、それぞれ、慢性進行型MS(Selbyら、1998年、Can. J. Neural Sci., 25:295-299ページ)及び再発寛解型MS(Romineら、1999年、Proceedings of the Association of American Physicians, 111, 1、35-44ページ)の治療において、それぞれ行われた。第1試験において、使用されたクラドリビン用量は、連続した静脈内注入によって7日間、0.1mg/kg/日であった。治療は、連続した4カ月間繰り返された。第2臨床試験において、使用されたクラドリビン用量は、皮下注射によって5日間、0.07mg/kg/日であった。治療は、連続した6カ月間繰り返された。さらに、プラシーボを対照とした第III相試験が、一次進行型(PP)又は二次進行型(SP)の多発性硬化症の患者において行われた(Riceら、2000年、Neurology, 54, 5、1145-1155ページ)。この試験において、両患者群は、0.07mg/kg/日の用量にて皮下注射によってクラドリビンを受けた。治療は2カ月又は6カ月繰り返された。
【0010】
第II相臨床試験は、Kurtzkeの総合障害状態尺度(EDSS)、スクリップスの神経症状評価尺度(SNRS)のスコア、及び磁気共鳴画像法(MRI)の所見に関するMS患者におけるクラドリビンの好ましい効果に関する証拠を提供した(Beutlerら、1996年、Proc. Nat Acad. Sci. USA, 93、1716-1720ページ;Romineら、1999年、前記)。第III相試験の結果は、磁気共鳴画像法で計測した脳病巣の顕著な減少に関して陽性であった(Riceら、2000年、前記)。
【0011】
いくつかの副作用(AEs)、例えば、免疫機能又は骨髄抑制不全に関連する感染発生の増加等が、最も高い用量で観察された(Selbyら、1998年、前記;Beutlerら、1994年、Acta hematol., 91:10-15ページ)。有効用量とAEsの発生用量の間の僅かな安全域に起因して、これまで、多発性硬化症におけるクラドリビンに関する全ての臨床試験が、静脈内又は皮下投与のいずれかを使用して行われてきた。その結果、Beutlerら(Beutlerら、1996年、Seminars in Hematology, 33, 1(S1)、45-52ページ)は、クラドリビンでの多発性硬化症の治療に関して経口経路を除外した。
【0012】
Griebらは、クラドリビンが約4〜5.7mg/kg(それぞれ、約52と約75キロの患者)の総用量、すなわち、2〜2.85mg/kgの総有効用量にて5日間の月々の治療単位で6カ月の間、経口投与される、11人の再発寛解型多発性硬化症の患者における小規模な試験を報告した(Griebら、1995年、Archivum Immunologiae et Therapiae Experimentalis, 43 (5-6)、323- 327ページ)。何人かの患者に関して、5日間の単回の再治療が、3カ月又は6カ月の無クラドリビン期間の後に0.4〜0.66mg/kgの累積量で実施された。前記投薬計画によって観察された副作用は、クラドリビンの静脈内注入によって治療された慢性進行型多発性硬化症を患う患者に関する研究で観察されたものよりも重症度が低いと言われているが(Sipeら、1994年、Lancet, 344、9-13ページ)、それでもまだ存在していた。加えて、静脈内注入療法に対して前記経口投薬計画の治療効率は、疑問視され(Griebら、1995年、前記)、且つ、「非応答者」群が同定された(Stelmasiakら、1998年、Laboratory Investigations, 4(1)、4-8ページ)。
【0013】
そのため、MS病巣に対して同じか又は改善された効果を可能にする一方で、有害事象の発生及び/又は重さを軽減する、クラドリビンの経口投与を含む多発性硬化症を治療する方法を有することが望まれるであろう。加えて、MSが慢性疾患である場合に、再治療が可能であるような方法において有害事象の発生、及び/又は重さを軽減することが望まれるであろう。治療期間の合間のクラドリビン治療の持続した恩恵も望ましい。
【発明の開示】
【0014】
本発明の概要
本発明は、経口投与されるものである多発性硬化症の治療用医薬製剤の製造のためのクラドリビンの使用に向けられる。特に、本発明は、再発寛解型多発性硬化症又は初期の二次進行型多発性硬化症の治療用、且つ、再治療が可能である医薬品の製造のためのクラドリビンの使用に向けられる。
【0015】
本発明の態様は、多発性硬化症の治療におけるクラドリビンに関する改善された投与計画を提供する。
本発明の更なる態様は、副作用が軽減されクラドリビンの更なる使用を可能にする、多発性硬化症の治療用医薬製剤の製造のためのクラドリビンの使用を提供する。
【0016】
1つの態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
に従って経口投与される、医薬製剤の製造のためのクラドリビンの使用を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、以下のステップ:
(i)誘導治療、ここでは、誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持治療、ここでは、維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
を含む、クラドリビン又はその製剤を必要とする患者におけるクラドリビン又はその製剤の経口投与を含む多発性硬化症の治療方法を提供する。
【0018】
本発明の詳細な説明
定義
「総用量」又は「累積量」は、治療中に投与されたクラドリビンの総用量、すなわち、日用量を加算することによって計算される治療の終了時点で到達する用量を表す。例えば、5日間の1日あたり0.7mg/kgのクラドリビン治療に相当するクラドリビンの総用量は3.5mg/kgであり、5日間の1日あたり0.35mg/kgのクラドリビン治療に相当するクラドリビンの総用量は1.7mg/kgである。
【0019】
「総有効量」又は「累積有効量」は、所定の投与期間後の生物学的に利用可能なクラドリビン用量、すなわち、生物学的利用能係数によって減量された日用量を加算することによって計算される治療の終了時点で到達する生物学的に利用可能な用量を表す。例えば、クラドリビンの生物学的利用能が約40%である、5日間の1日あたり0.7mg/kgのクラドリビン治療に相当するクラドリビンの総有効量は、1.4mg/kgであり、クラドリビンの生物学的利用能が約40%である、5日間の1日あたり0.35mg/kgのクラドリビン治療に相当するクラドリビンの総有効量は、0.7mg/kgである。
【0020】
通常、本発明に関連して使用されるクラドリビン又はクラドリビン製剤の生物学的利用能は、約30%〜約90%、好ましくは、約40%〜約60%、例えば、50%等である。
【0021】
「1週間」は、約5、約6、又は約7日間の期間を表す。
「1カ月」は、約28、約29、約30、又は約31日間の期間を表す。
【0022】
「治療」は、連続した一連の「誘導治療」と、少なくとも「維持治療」を含む。通常、本発明による治療は、「誘導治療」と、約1、約2、又は約3回の維持治療を含む。通常、本発明による治療は、約2年(約24カ月)、約3年(約36カ月)、又は約4年(約48カ月)のものである。
【0023】
「誘導治療」とは、連続した一連の(i)本発明のクラドリビン又はクラドリビン医薬品が経口投与される誘導期、及び(ii)無クラドリビン期である。誘導期は、最長約4カ月間、最長約3カ月間、又は最長約2カ月間続く。例えば、誘導期は、約2カ月間〜約4カ月間続く。誘導期とは、毎月約1〜約7日間のクラドリビン又はその医薬品の経口投与である。
【0024】
「無クラドリビン期」は、患者にクラドリビンが全く投与されない時期である。無クラドリビン期中、患者は、偽薬又は他の薬物が投薬されるかもしれないのを別にすれば、あらゆる投与がないかもしれない。無クラドリビン期は、最長約10カ月、最長9カ月、又は最長約8カ月続く。例えば、無クラドリビン期は、約8〜約10カ月、通常、少なくとも約8カ月続く。
【0025】
「維持治療」とは、連続した一連の(i)本発明のクラドリビン又はクラドリビン医薬品が誘導治療中に経口投与されたクラドリビン用量よりも低用量で経口投与される維持期、及び(ii)無クラドリビン期である。維持期は、最長約4カ月間、最長約3カ月間、又は最長約2カ月、好ましくは、最長約2カ月間続く。例えば、維持期は、約2〜約4カ月間、好ましくは、約2カ月間続く。維持期とは、毎月約1〜約7日間のクラドリビン又はその医薬品の経口投与である。
【0026】
本願発明に関係する中で、これだけに制限されることなく、疾患発現後の病理学的進行の弱化、減少、低下、又は縮小を含めた有益な効果は、1回以上の「治療」の後、「誘導治療」の後、「維持治療」の後、又は無クラドリビン期中に見られるかもしれない。
【0027】
「日用量」は、毎日の投与で患者に経口投与されるクラドリビンの総用量を表す。日用量は、1日あたり単回又は複数回、例えば、1日1回、1日2回、又は1日3回等の投与を通じて到達されてもよい。
【0028】
単回又は複数回用量として個々に投与される投与量は、薬物動態学特性、患者の病態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、体格)、症状の程度、併用治療、治療頻度、並びに所望の効果を含めたさまざまな要因によって異なる。MSを患う患者は、例えば、Schumacher又はPoserの基準に従って臨床的に確定される又は検査で確定されるMSに罹っていると規定されることができる(Schutnacherら、1965年、Ann. NY Acad. Sci. 1965年;122:552-568ページ;Poserら、1983年、Ann. Neurol. 13(3):227-31ページ)。
【0029】
「再発」は、通常、何日かにわたるが、時に何時間又はさらに数分の短さで生じる神経学的問題を伴う。これらの発病は、ほとんどの場合、疾患の初期に運動、知覚、視覚、又は協調運動の問題を伴う。その後、膀胱、腸管、性的、及びで認知の問題を示す可能性がある。発病開始は、数週間にわたって生じる時がある。典型的なMS再発は、神経学的欠損の進行を伴う悪化期、次に、患者は少しも回復しないが、少しも悪化しないプラトーとそれに続く回復期を含む。回復は、通常、数週間以内に始まる。
【0030】
本発明による治療の「有効性」は、本発明による使用に対応した疾患経過の変化に基づいて計測されるかもしれない。MS治療の有効性は、RRMSの再発頻度、並びに、例えば、MRI技術等の方法を使用して検出されるCNSの新しい病巣の有無によって計測することができる(Millerら、1996年、Neurology, 47(補足4):S217ページ;Evansら、1997年、Ann. Neurology, 41:125-132ページ)。(活性な炎症領域を表すと考えられる)MRI T1ガドリニウム強調病巣の減少、及び/又は抑制の観測は、第1の有効性変数を与える。第2の有効性変数は、MRI T1強調脳病巣の容積、MRI T1強調病巣数、(総疾患負担、すなわち、髄鞘脱落、神経膠症、炎症、及び軸索の損失を表すと考えられる)MRI T2病巣容積、(主として髄鞘脱落と軸索の損失を表すと考えられる)MRI T1強調低信号病巣の容積、MS進行までの期間、増悪の頻度及び重さ、増悪の期間、総合障害状態尺度のスコア、並びにスクリップスの神経症状評価尺度(SNRS)スコア(Sipeら、1984年、Neurology, 34、1368-1372ページ)を含んでいる。多発性硬化症、並びに疾病進行後の早期の及び正確な診断方法は、Malison、2002年、Expert Rev. Neurotherapeutics, 319-328の中に記載されている。
【0031】
MS患者の障害の程度は、例えば、Kurtzkeの総合障害状態尺度(EDSS)スコア(Kurtzke、1983年、Neurology, 33、1444-1452ページ)によって計測されるかもしれない。通常、EDSSスコアの減少は疾患の改善に合致し、逆に、EDSSスコアの増加は疾患の悪化に合致する。
【0032】
クラドリビン(2-CdA)
2-CdA及び薬理学的に許容されるその塩が、本願発明の実施に使用できる。クラドリビンは、経口投与に好適なあらゆる医薬品に処方されることができる。2-CdAの代表的な経口製剤は(WO 96/19230;WO 96/19229;US 6,194,395;US 5,506,214;WO 2004/087100;WO 2004/087101)の中に記載されており、上記文献の内容を本明細書中に援用する。経口製剤のための成分の実例を以下に示す。
【0033】
2-CdAの製造過程は当該技術分野で周知である。例えば、2-CdAの調製は、(EP 173,059;WO 04/028462;WO 04/028462;US 5,208,327;WO 00/64918)及びRobinsら、J. Am. Chem. Soc.、1984年、106:6379ページの中に記載されている。あるいは、2-CdAの医薬品は、Bedford Laboratories、Bedford, Ohioから購入できる。
【0034】
クラドリビンの経口投与は、カプセル剤、錠剤、経口懸濁液剤、又はシロップ剤の形態であるかもしれない。錠剤又はカプセル剤は、約3〜500mgのクラドリビンを含むことができる。好ましくは、それらは、約3〜約10mgのクラドリビン、より好ましくは、約3、約5、又は約10mgのクラドリビンを含むことができる。カプセル剤は、ゼラチン・カプセルであってもよく、そして、先に示した数量のクラドリビンに加え、少量の、例えば、5重量%未満のステアリン酸マグネシウム又は他の賦形剤を含むかもしれない。典型的な糖衣を有する錠剤は、前記の量の化合物と、ゼラチン溶液、水中のデンプンのり、水中のポリビニル・アルコールなどであるかもしれない結合剤を含むかもしれない。
【0035】
組成物
本願発明の組成物は、1種類以上の医薬として許容される追加成分、例えば、ミョウバン、安定化剤、抗微生物剤、緩衝物質、着色料、着香料、補助剤などをさらに含むことができる。
【0036】
本願発明の組成物は、従来の様式で処方された錠剤又はロゼンジ剤の形態であってもよい。例えば、経口投与のための錠剤及びカプセル剤は、これだけに制限されることなく、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、及び湿潤剤を含めた従来の賦形剤を含んでもよい。結合剤は、これだけに制限されることなく、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、デンプン粘質物、及びポリビニールピロリドンを含む。増量剤は、これだけに制限されることなく、ラクトース、糖、微細結晶性セルロース、トウモロコシ・デンプン、リン酸カルシウム、及びソルビトールを含む。滑沢剤は、これだけに制限されることなく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、及びシリカを含む。崩壊剤は、これだけに制限されることなく、ジャガイモ・デンプン及びデンプン・グリコール酸ナトリウムを含む。湿潤剤は、これだけに制限されることなく、ラウリル硫酸ナトリウムを含む。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によってコートされるかもしれない。
【0037】
本発明の組成物は、これだけに制限されることなく、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、エリキシールを含めた液体製剤でもあるかもしれない。組成物は、また、使用前の水又は他の好適な溶媒を用いた構成のための乾燥製品として処方されてもよい。そのような液体製剤は、これだけに制限されることなく、懸濁化剤、乳化剤、非水性媒体、及び保存料を含めた添加物を含むかもしれない。懸濁化剤は、これだけに制限されることなく、ソルビトール・シロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウム・ゲル、及び水素化硬化食用油脂を含む。乳化剤は、これだけに制限されることなく、レシチン、ソルビタン・モノオレエート、及びアカシアを含む。非水性媒体は、これだけに制限されることなく、食用油、アーモンド油、分留ココナッツ油、油のエステル、プロピレングリコール、及びエチルアルコールを含む。保存料は、これだけに制限されることなく、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、あるいはソルビン酸を含む。
【0038】
組み合わせ
本発明により、クラドリビンは、単独で、あるいはIFN-βと組み合わせて、治療として有効な量の他の治療的投薬計画又は剤(例えば、多剤投薬計画)、特に、多発性硬化症の治療のための治療薬に先立って、それと同時に、又は連続して、個体に予防的に又は治療的に投与されるかもしれない。他の治療薬と同時に投与される活性物質は、同じ又は別の組成物で、そして、同じ又は別の投与経路で投与されるかもしれない。
【0039】
1つの態様において、クラドリビンがIFN-βと組み合わせて投与されるとき、無クラドリビン期中、IFN-βが投与される。
他の態様において、クラドリビンがIFN-βと組み合わせて投与されるとき、本発明による「治療」の後にIFN-βが投与される。
【0040】
本明細書中に使用される場合、用語「インターフェロン-β(IFN-β)」は、体液からの分離によって得られるか、又は原核生物若しくは真核生物の宿主細胞からDNA組み換え技術によって得られる、特に、ヒト由来の線維芽細胞インターフェロン、並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及び活性フラグメントを含むことが意図される。本発明による好適なIFN-βは、例えば、Rebif(登録商標)(Serono)、Avonex(登録商標)(Biogen)、又はBetaferon(登録商標)(Schering)として市販されている。ヒト由来のインターフェロンの使用は、本発明によって好まれる。本明細書中に使用される場合、インターフェロンという用語は、その塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及び活性フラグメントを包含することが意図される。Rebif(登録商標)(組み換えヒト・インターフェロン-β)は、多発性硬化症(MS)のためのインターフェロン療法における最新の成果であり、治療において著しい進歩を示した。Rebif(登録商標)は、哺乳動物細胞株から産生されるインターフェロン(IFN)-β 1aである。1週間に3回、皮下に与えられインターフェロン-β-1aが、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の治療において効果的であることは、立証されている。インターフェロン-β-1aは、再発の回数と重さを軽減し、そして、MRIによって計測される疾患の負担と疾患活動性を軽減することによって、MSの長期の経過に対して好ましい効果を有することができる。
【0041】
本発明による再発寛解型MSの治療におけるIFN-βの投薬は、使用されるIFN-βのタイプに依存する。
【0042】
本発明によると、IFNがBetaseron(登録商標)の商品名で市販されている、E.コリ(E. Coli)で産生される組み換えIFN-β 1bである場合には、好ましくは、1人あたり約250〜300μg、又は8MIU〜9.6MIUの投与量にて1日おきに皮下に投与されるかもしれない。
【0043】
本発明によると、IFNがAvonex(登録商標)の商品名で市販されている、チャイニースハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で産生される組み換えIFN-β 1aである場合には、好ましくは、1人あたり約30〜33μg、又は6MIU〜6.6MIUの投与量にて1週間に1度、筋中に投与されるかもしれない。
【0044】
本発明によると、IFNがRebif(登録商標)の商品名で市販されている、チャイニースハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で産生される組み換えIFN-β 1aである場合には、好ましくは、1人あたり約22〜44μg、又は6MIU〜12MIUの投与量にて1週間に3度(TIW)、皮下に投与されるかもしれない。
【0045】
患者
本発明による患者は、多発性硬化症、好ましくは、RRMS又は初期のSPMSに罹患している患者である。
本発明の態様において、患者は、18〜55歳のヒト男性又は女性から選択される。
本発明の他の態様において、患者は、治療の12カ月前までに少なくとも1回の再発があった。
【0046】
本発明による使用
1つの態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与されて、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用製剤の製造におけるクラドリビンの使用を提供する。
【0047】
更なる態様において、本発明は、誘導期が最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続く、本発明による使用を提供する。
更なる態様において、本発明は、誘導期が最長約2カ月続く、本発明による使用を提供する。
更なる態様において、本発明は、誘導期が最長約4カ月続く、本発明による使用を提供する。
【0048】
更なる態様において、本発明は、誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである、本発明による使用を提供する。
更なる態様において、本発明は、誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約3.5mg/kgである、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期が最長約10カ月、最長約9カ月、最長約8カ月続く、本発明による使用を提供する。
【0049】
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(ii)が最長約8カ月続く、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(ii)が少なくとも約8カ月続く、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(ii)が最長約10カ月続く、本発明による使用を提供する。
【0050】
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(iv)が最長約10カ月続く、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(iv)が少なくとも約8カ月続く、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期(ii)、及び/又は(iv)が約8〜約10カ月続く、本発明による使用を提供する。
【0051】
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期中に偽薬が投与される、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、無クラドリビン期にあらゆる投与がない、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、維持期が最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月、好ましくは、最長約2カ月続く、本発明による使用を提供する。
【0052】
他の更なる態様において、本発明は、維持期(iii)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである、本発明による使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、ステップ(iii)〜(iv)が少なくとも1回又は2回繰り返される、本発明による使用を提供する。
【0053】
好ましい態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない;
ここで、上記誘導期を、最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(ii)を、最長約10カ月、最長約9カ月、又は最長約8カ月続け;上記維持期(iii)を最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(iv)を最長約10カ月続け;上記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が、約1.7mg/kgであり、そして、ステップ(iii)〜(iv)を、1回、2回、又は3回繰り返して実施する、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用製剤の製造におけるクラドリビンの使用を提供する。
【0054】
他の態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kg〜約1.4mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期(iii)の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用製剤の製造におけるクラドリビンの使用を提供する。
【0055】
更なる態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kg〜約1.4mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない;
ここで、上記誘導期を、最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(ii)を、最長約10カ月、最長約9カ月、又は最長約8カ月続け;上記維持期(iii)を最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(ii)を最長約10カ月続け;上記維持期の終了時点で到達する総有効量のクラドリビンが、約0.7mg/kgであり、そして、ステップ(iii)〜(iv)を、1回、2回、又は3回繰り返して実施する、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用製剤の製造におけるクラドリビンの使用を提供する。
【0056】
好ましい態様において、本発明は、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない;
ここで、上記誘導期を、最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(ii)を、最長約10カ月、最長約9カ月、又は最長約8カ月続け;上記維持期(iii)を最長約2カ月続け;上記無クラドリビン期(iv)を最長約10カ月続け;上記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が、約1.7mg/kgであり、そして、ステップ(iii)〜(iv)を、1回、2回、又は3回繰り返して実施する、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用医薬品として使用するためのクラドリビンを供給する。
【0057】
他の態様において、本発明は、前記製剤が、約3〜30mgのクラドリビン、好ましくは、5〜20mgのクラドリビン、最も好ましくは、10mgのクラドリビンのクラドリビン日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約3.5mg/kgであり、且つ、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである、本発明による使用を提供する。
【0058】
他の更なる態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約1.4mg/kgであり、且つ、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kgである、本発明による使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中に1日に1回、経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
【0059】
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中に1日に何回か、1日あたり1回、好ましくは、1日あたり2回又は3回、より好ましくは、1日あたり2回、経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中に1カ月あたり約1〜約7日、好ましくは1カ月あたり約5〜約7日、経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
【0060】
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中に1カ月あたり約0.02日/kg〜約0.08日/kg経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が維持期中に1カ月あたり約0.02日/kg〜約0.08日/kg経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約2日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
【0061】
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約3日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約4日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
【0062】
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約5日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約6日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与される、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
【0063】
他の態様において、本発明は、前記製剤が誘導期中、毎月1日目〜約4日目まで約10mgのクラドリビンの日用量にて経口投与され、且つ、前記製剤がWO 2004/087101又はWO 2004/087100に記載されている製剤である、本発明によるクラドリビンの使用を提供する。
他の態様において、本発明は、前記製剤がインターフェロン-βと組み合わせて投与される、先の請求項のいずれか1項に記載のクラドリビンの使用を提供する。
【0064】
好ましい態様において、本発明は、以下のステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン又はその製剤がされ、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.5mg/kg〜約3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン又はその製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
を含む、クラドリビン又はその製剤を必要としている患者におけるクラドリビン又はその製剤の経口投与を含む多発性硬化症の治療方法を提供する。
【0065】
好ましい態様において、本発明は、以下のステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン又はその製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kg〜約1.4mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
を含む、クラドリビン又はその製剤を必要としている患者におけるクラドリビン又はその製剤の経口投与を含む多発性硬化症の治療方法を提供する。
【0066】
他の更なる態様において、本発明は、ステップ(iii)〜(iv)が少なくとも1回又は2回繰り返される、本発明による方法を提供する。
好ましい態様において、本発明は、クラドリビンが以下の逐次ステップ:
(i)誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kg〜約3.5mg/kgであるようにクラドリビンを投与し;
(ii)無クラドリビン期中にはクラドリビンを全く投与せず;
(iii)維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少ないようにクラドリビンを投与し;そして
(iv)場合により、無クラドリビン期にはクラドリビンを全く投与しない、
に従って経口投与されるクラドリビンを用いた多発性硬化症の治療方法を提供する。
【0067】
更に好ましい態様において、本発明は、前記誘導期が、最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続く方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約3.5mg/kgである方法を提供する。
【0068】
更に好ましい態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約1.4mg/kgである方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、前記無クラドリビン期が、最長約10カ月、最長約9カ月、又は最長約8カ月続く方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、前記維持期が、最長約4カ月、最長約3カ月、又は最長約2カ月続く方法を提供する。
【0069】
更に好ましい態様において、本発明は、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kgである方法を提供する。
更に好ましい態様において、本発明は、維持期の後に無クラドリビン期が続く方法を提供する。
【0070】
他の更なる態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約3.5mg/kgであり、且つ、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が約1.7mg/kgである、本発明による方法を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約1.4mg/kgであり、且つ、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総有効量が約0.7mg/kgである、本発明による方法を提供する。
【0071】
他の更なる態様において、本発明は、クラドリビンが約3〜約30mgの日用量で経口投与される、本発明による方法を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、クラドリビンが約10mgの日用量で経口投与される、本発明による方法を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、前記誘導期中にクラドリビンが1カ月あたり約1〜約7日、経口投与される、本発明による方法を提供する。
【0072】
他の更なる態様において、本発明は、前記ステップ(iii)が少なくとも1回又は2回繰り返される、本発明による方法を提供する。
他の更なる態様において、本発明は、クラドリビンがインターフェロン-βと組み合わせて投与される、本発明による方法を提供する。
【実施例】
【0073】
以下の略語は、それぞれ、以下の定義を表す:
kg(キログラム)、μg(マイクログラム)、mg(ミリグラム)、AEs(副作用)、CNS(中枢神経系)、CSF(脳脊髄液)、EDSS(総合障害状態尺度)、SNRS(スクリップスの神経症状評価尺度)、IFN(インターフェロン)、i.v.(静脈内)、MIU(100万国際単位)、MS(多発性硬化症)、MRI(磁気共鳴画像法)、p.o.(経口)、PPMS(一次進行型多発性硬化症)、PRMS(進行再発型多発性硬化症)、RRMS(再発寛解型多発性硬化症)、SPMS(二次進行型多発性硬化症)、s.c.(皮下)、TIW(1週間あたり3回)、2-CdA(2-クロロ-2’-デオキシアデノシン又はクラドリビン)、UI(国際単位)。
本発明による経口クラドリビン投与、ひいては、反復投与(multi-dose administration)の効果と安全を、例えば、以下のプロトコールに従って評価することができる:
【0074】
実施例1:再発型MSの治療における経口クラドリビン
再発型の、臨床的に明確な多発性硬化症の患者60人の研究をおこなった。各患者は、最初に、通常の肝、腎、及び骨髄の機能について検査を受けて、基礎値をはっきりさせる。患者は12カ月前までに1回以上の再発があった、18〜55歳の、男性又は女性から選択される。女性患者は非妊娠女性である。患者を、以下の表1:
【0075】
【表1】

【0076】
に列挙した投与群の1つに無作為に割り当てた。それぞれ群2及び3の患者に、WO 2004/087101の実施例3に記載のシクロデキストリン製剤中に混ぜ合わせた3mg又は10mgの2-CdA(患者の体重に依存して1日あたり1、2、又は3回投与)を与えた。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む3mg又は10mgの2-CdA錠剤によるクラドリビン製剤の組成物を、以下の表2に挙げる:
【0077】
【表2】

【0078】
患者の体重に依存する誘導期の投与スキームに関する実施例を、それぞれ、1.75mg/kgと3.5mg/kgの目標用量について表3と4として以下に示す。維持期については、表3の投与スキームに関する実施例が適用できる。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
第1群において、患者に、4カ月間のプラシーボ(生理的食塩水)を与え、それに続いて、8カ月間の無治療を与える。
第2群において、患者に、例えば、最初の2カ月の終了時点で投与された総有効量が約0.7mg/kg(約40%の生物学的利用能のため約1.75mg/kgの総用量)と概算される、2-CdAシクロデキストリン製剤で、2カ月の間(誘導期)、1カ月あたり約5日間のクラドリビン連日経口投与を与え;それに続いて、2カ月間のプラシーボ投与を与え;それに続いて、8カ月の無治療を与える。
【0082】
第3群において、患者に、例えば、最初の4カ月の終了時点で投与された総有効量が約1.4mg/kg(約40%の生物学的利用能のため約3.5mg/kgの総用量)と概算される、2-CdAシクロデキストリン製剤で、4カ月の間(誘導期)、1カ月あたり約5日間のクラドリビン連日経口投与を与え;それに続いて、8カ月間の無治療を与える。
【0083】
13カ月目に始まる、3患者群の全てに、(例えば、最初の2カ月の終了時点で投与された総有効量が約0.7mg/kgと概算される)低用量で、2カ月間(維持期)、1カ月あたり約5日間のクラドリビン・シクロデキストリン製剤での再治療を与え、それに続いて、10カ月の無治療を与える。
【0084】
最後に、25カ月目から始まる、患者群の全てに、(例えば、最初の2カ月の終了時点で投与された総有効量が約0.7mg/kgと概算される)低用量で、2カ月間(維持期)、1カ月あたり約5日間のクラドリビン・シクロデキストリン製剤での再治療を与え、それに続いて、更に10カ月の無治療を与える。
【0085】
患者は、Millerら、1996年、前記;Evansら、1997年、前記;Sipeら、1984年、前記;及びMattson、2002年、前記の中に記載のとおり、MRIスキャンと神経学的検査を通じたMSの進行に関連する脳障害のいずれかの進行又は改善があったかどうかを判断するために測定される。全ての患者が、12カ月目の時点で基礎調査、及び(病巣の局在による、脳又は脊髄の)MRI調査を受ける。患者の障害進行と初回再発する時間、並びに24カ月の時点で再発のない患者の割合を測定する。
【0086】
リンパ球マーカーと単球数を患者で測定する。
第2群及び第3群の患者には、脳障害の減少がある。
データは、一連の誘導治療と維持治療で成る2-CdA投薬計画が脳障害を減少させるのに効果的であり、且つ、重度の副作用が全く観察されないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kg〜3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない、
に従って経口投与される、多発性硬化症の治療用医薬製剤の製造のためのクラドリビンの使用。
【請求項2】
前記誘導期を、最長4カ月、最長3カ月、又は最長2カ月続ける、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記誘導期を最長2カ月続ける、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記誘導期を最長4カ月続ける、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kgである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が3.5mg/kgである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記無クラドリビン期を、最長10カ月、最長9カ月、又は最長8カ月続ける、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記無クラドリビン期(iv)を最長10カ月続ける、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記維持期を、最長4カ月、最長3カ月、又は最長2カ月続ける、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kgである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記製剤が、以下の逐次ステップ:
(i)誘導期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kg〜3.5mg/kgであり;
(ii)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されず;
(iii)維持期、ここでは、クラドリビン医薬製剤が投与され、且つ、当該維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が上記誘導期(i)の終了時点で到達するクラドリビンの総用量より少なく;
(iv)無クラドリビン期、ここでは、クラドリビンが全く投与されない;
ここで、上記誘導期を、最長4カ月、最長3カ月、又は最長2カ月続け;上記無クラドリビン期(ii)を、最長10カ月、又は最長8カ月若しくは最長10カ月続け;上記維持期(iii)を最長2カ月続け;上記無クラドリビン期(iv)を最長10カ月続け;上記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kgになり、そして、ステップ(iii)〜(iv)を、1回、2回、又は3回繰り返して実施する、
に従って経口投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記誘導期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が3.5mg/kgであり、且つ、前記維持期の終了時点で到達するクラドリビンの総用量が1.7mg/kgである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬製剤が、3〜30mgクラドリビンのクラドリビン日用量にて経口投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬製剤が、10mgクラドリビンのクラドリビン日用量にて経口投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬製剤が、誘導期中に1カ月あたり1〜7日経口投与される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記ステップ(iii)〜(iv)を少なくとも1回又は2回繰り返す、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記医薬製剤をインターフェロン-βと組み合わせて投与する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−524313(P2008−524313A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547486(P2007−547486)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056954
【国際公開番号】WO2006/067141
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】