説明

多目的利用ICカードシステム

【課題】
多目的利用ICカードにおいて、盗難、紛失、覗き見による表示情報の流出リスクを低減させるICカードを提供すること。
【解決手段】
利用者の所持するICカードを用いてサービスエリアへの利用者の入退出を管理するエリア装置を備えた多目的利用ICカードシステムにおいて、ICカードは、エリア装置により提供されたサービス情報を表示する表示手段と、エリア装置により消去データを受信すると、表示手段に表示しているサービス情報を消去する消去手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的利用を目的としたICカードを所持する利用者のサービスエリアへの入退出に応じて、エリアに対応するサービス情報のICカードへの表示、非表示を制御する多目的利用ICカードシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
書換え可能な表示部を備えたICカードの技術では、ICカードの記憶内容を表示し目視できるようにした技術(特許文献1)、ICカードに表示されている属性情報を再発行することなく更新可能とした技術(特許文献2)、ICカードにインストールされているアプリケーションの識別に利用できる情報、または利用する場合に参考にできる情報を表示する技術(特許文献3)がある。
【特許文献1】特開平11−120312号公報
【特許文献2】特開2001−312710号公報
【特許文献3】特開2004−102384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いずれの先行技術においても、利用するエリア以外でも表示部を含めたカード表面には情報が表示されたままである。またICカードを多目的に利用するためには、利用目的にあわせた複数の情報や複数のアプリケーションをICカード内に登録する必要がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ICカードを利用するエリアにおいて利用するサービスに関する情報のみをICカードに表示することにより、盗難、紛失、覗き見による表示情報の流出リスクを低減させるICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、利用者の所持するICカードを用いてサービスエリアへの利用者の入退出を管理するエリア装置を備えた多目的利用ICカードシステムにおいて、前記エリア装置は、入場時にICカードから送信される識別情報に基づき、正当な利用者か否かを識別する認証手段と、前記認証手段により、正当な利用者であると認証された場合、サービスエリアで提供されるサービスに関する情報を前記ICカードに送信する利用情報提供手段と、退出時に、前記送信したサービスに関するサービス情報を消去するための消去データを送信する利用情報消去手段とを備え、前記ICカードは、前記エリア装置により提供されたサービス情報を表示する表示手段と、前記エリア装置により前記消去データを受信すると、前記表示手段に表示している前記サービス情報を消去する消去手段とを備えることを特徴とし、ICカードを所持する利用者が所定のサービスエリアに入ると、そのサービスエリアに対応するサービス情報がICカードに表示され、そのサービスエリアを出ると、ICカードに表示されているサービス情報が消去される。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、サービスへリアへの入場に応じて、エリア装置からそのサービスエリアに応じたサービス情報の提供を受けることが出来るので、ICカード自体にサービス情報を記憶しておく必要がない。また、サービスエリアの退場に応じて、ICカードに表示されていたサービス情報は消去されるので、ICカードの不正利用の防止、ICカードからの情報漏洩リスクの低減が実現できる。サービスエリア内では、表示されたサービス情報に基く目視による正当な利用者の判断をおこなうことが実現でき、高セキュリティなシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を用いて本発明の多目的利用ICカードシステムの一実施例を説明する。
【0008】
図1は本発明の多目的利用ICカードシステムにて用いられるICカードの一例を示す図である。接触型ICカード100は、エリア装置と接触して情報交換するカードであり、接続端子を備えた端子ICチップ部120とサービス情報を表示する表示部110とから構成される。また、エリア装置と非接触で情報交換する非接触型ICカード200は、ICチップ部220、表示部210、エリア装置との無線通信のためのアンテナ部230を備える。
【0009】
図2は多目的利用ICカードシステムの全体構成を示すブロック構成図である。ICカード300は、書換え可能な表示部として電源が切れても消えないメモリー性液晶デバイスからなる表示部310、利用に有効な識別情報を保存するICカード識別保存部320、エリア装置400との通信を行うICカード情報交換部320とから構成される。エリア装置400は、有効な識別情報を保存し、ICカード300を識別できるICカード識別部410、ICカード300の表示部310に表示する表示データの元となる表示情報を保存している情報保存部450、情報保存部450に保存されている表示情報に基づき、表示データを生成する生成部440、ICカード300との通信を行うエリア装置情報交換部420、ICカード識別部による識別結果を外部に提供する識別結果提供部460、外部との情報交換を司る外部情報交換部470、外部との情報交換の際に利用されるエリア装置の識別情報を保存するエリア装置識別保存部480から構成される。
【0010】
次に、図3と図4とを用いて本発明の動作を説明する。ICカード300を持った利用者が利用を受けるエリアに入ったときには、図3に示した動作、ICカードを持った利用者が利用を受けるエリアから出たときには、図4に示した動作が行われる。
【0011】
図3のフローチャートでは、ICカード300がエリアに入ると(ステップ500)、ICカード300の識別情報511がICカード識別保存部330から取り出され、ICカード情報交換部320によってエリア装置400に送信される(ステップ512)。エリア装置400は、エリア装置情報交換部420で受信した識別情報511をICカード識別部410で利用可能か判断し(ステップ522)、利用不可能な場合は、何もせず終了する(ステップ52F)。可能な場合、生成部440で情報保存部450に保存されている表示情報(属性)527を取出し(ステップ52A)、表示情報(規則)529に従って表示データ52Cを生成する(ステップ52B)。生成された表示データ52Cは、エリア装置情報交換部420によってICカード300に送信される(ステップ52D)。ICカード300は、エリア装置400から表示データ52Cを受信し(ステップ514)、そのまま表示部310に表示し(ステップ515)、終了する動作となる(ステップ516)。
【0012】
図4のフローチャートでは、エリア装置400がエリア外に出る専用動作を行う。ICカード300がエリアから出ると(ステップ600)、ICカード300の識別情報611がICカード識別保存部330から取り出され、ICカード情報交換部320によってエリア装置400に送信される(ステップ612)。エリア装置400は、エリア装置情報交換部420で受信(ステップ621)した識別情報611をICカード識別部410で利用可能か判断し(ステップ622)、利用不可能な場合は、何もせず終了する(ステップ628)。可能な場合、エリア装置情報交換部420は、情報保存部450に保存されている表示消去データ625を取出し、ICカード300に送信する(ステップ626)。ICカード300は、エリア装置400から表示消去データ625を受信し(ステップ614)、この表示消去データ625によって、表示部310は表示を消去(ステップ615)、終了する動作となる(ステップ616)。
【0013】
次に、図5を用いて、レジャー施設の年間会員利用の例を説明する。利用者は、会員カード700を持ちレジャー施設外70にいる。そのとき会員カード700は、非表示の状態701である。利用者が、レジャー施設71に入るために入口711を通る。入口711を通過する際に、設置されたエリア装置(入口用)721と会員カード700との間で通信がおこなわれ、エリア装置(入口用)721で会員カード700が利用可能と識別されると、年間会員証の表示データがエリア装置(入口用)721から会員カード700に送信され会員カード700で表示される(702)。表示データに、会員の顔写真、会員証の有効期限、入場日時などの情報が含まれることにより、会員カードの不正利用を防ぐことができる。レジャー施設71にいる間は、表示されたままとなる。利用者が利用を終えレジャー施設71を出るために出口712を通る。出口712を通過する際に、設置されたエリア装置(出口用)722と会員カード700との間で通信がおこなわれ、エリア装置(出口用)722で会員カード700が利用可能と識別されると、年間会員証の表示を消去するデータがエリア装置(出口用)722から会員カード700に送信され、会員カード700が非表示の状態に戻る。非表示の状態703になった会員カード700には、先ほどまで年間会員証として表示されていた情報は存在せず。非表示の状態701と同等なものとなる。
【0014】
次に、図6を用いて利用するエリアが階層構造を持つ例を説明する。同一のビル内にA社エリア8020、B社エリア8030、ビル共有エリア8010が存在する。ICカードを所持するA社の社員がビルに入館すると、ICカードには「ビル入館証」の表示がなされ、A社エリアに入ると「A社社員証」の表示に切り替わる。更に、A社セキュリティエリアの利用が可能な場合でA社セキュリティエリアに入った時には、「A社特別入出許可証」の表示がなされる。また、ICカードを所持するB社への来客者がビルに入館すると、ICカードには「ビル入館証」の表示がなされ、B社エリアに入ると「B社来客名札」の表示に切り替わる。前記のA社の社員がB社エリアに入っても「B社来客名札」の表示に切り換えることができる。
【0015】
図7は、利用するエリアが独立している例を示す。ICカードを持った利用者が、それぞれのエリアに入ることにより、それぞれ異なる複数の利用目的で同一のICカードを利用することできる。これらシステムに使用するICカードは、利用目的毎の情報やアプリケーションをICカードに保存していないため、利用目的の増減によるICカードの更新作業を必要としない。
【0016】
図8は、ICカードとエリア装置との間でやり取りされる情報の定義を示すエアポリシーの一例である。このエアポリシーの設定に基づき、多目的利用ICカードシステムが動作する。表示データの内容については、情報表示属性(変動)ありの設定とすることによって、背景色、マーク、文字、数字、記号、図形など表現を固定化させることなく変化させ、偽造を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るICカードの概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係るICカードおよびエリア装置のブロック構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態で新たなエリアに入ったときに、ICカードに表示が行われる動作を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の第1の実施形態でエリア外に出たときに、ICカードの表示が消去される動作を示すフローチャート図である。
【図5】レジャー施設の年間会員証としての遷移図である。
【図6】階層を持ったエリアを移動するときに、ICカードの表示が変化する状態を示す事例の概念図である。
【図7】独立したエリアを移動するときに、ICカードの表示が変化する状態を示す事例の概念図である。
【図8】エリアポリシーの例である。
【符号の説明】
【0018】
300 ICカード
310 表示部
320 ICカード情報交換部
330 ICカード識別保存部
400 エリア装置
410 ICカード識別部
420 エリア装置情報交換部
430 利用者確認部
450 情報保存部
470 外部情報交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の所持するICカードを用いてサービスエリアへの利用者の入退出を管理するエリア装置を備えた多目的利用ICカードシステムにおいて、前記エリア装置は、入場時にICカードから送信される識別情報に基づき、正当な利用者か否かを識別する認証手段と、前記認証手段により、正当な利用者であると認証された場合、サービスエリアで提供されるサービスに関する情報を前記ICカードに送信する利用情報提供手段と、退出時にICカードから送信される識別情報に基づき、正当な利用者か否かを識別する認証手段と、前記認証手段により、正当な利用者であると認証された場合、前記送信したサービスに関するサービス情報を消去するための消去データを送信する利用情報消去手段とを備え、前記ICカードは、前記エリア装置により提供されたサービス情報を表示する表示手段と、前記エリア装置により前記消去データを受信すると、前記表示手段に表示している前記サービス情報を消去する消去手段とを備えることを特徴とする多目的利用ICカードシステム。
【請求項2】
前記利用情報提供手段が送信するサービス情報は、前記エリア装置内の情報保存部に記憶されていることを特徴とする請求項1記載の多目的利用ICカードシステム。
【請求項3】
前記エリア装置は、前記エリア装置外の外部システムから通信によって前記サービス情報を取得し、前記利用情報提供手段により、取得したサービス情報を前記ICカードに送信することを特徴とする請求項1記載の多目的利用ICカードシステム。
【請求項4】
前記利用情報提供手段が送信するサービス情報は、前記エリア装置内の情報保存部に記憶されている情報と、前記エリア装置外の外部システムから通信によって取得した情報から構成されることを特徴とする請求項1記載の多目的利用ICカードシステム。
【請求項5】
前記ICカードと前記エリア装置との間の通信を秘匿化することを特徴とする請求項1記載の多目的利用ICカードシステム。
【請求項6】
前記エリア装置をトンネリングすることにより、前記ICカードと前記外部システムとの間の通信を直接秘匿化する請求項3記載の多目的利用ICカードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−234408(P2008−234408A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74344(P2007−74344)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】