多糖−及びポリペプチド−ベースのブロック共重合体、これらの共重合体により構成されるベシクル、及びその使用
本発明は、生体吸収性又は生分解性で且つ生体適合性である、新規な多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体、その調製方法、当該共重合体により構成されるミセルベシクル、及び天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子の、封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のためのその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性又は生分解性で且つ生体適合性である、新規な多糖−連結基(block)−ポリペプチドであるジブロック共重合体、その調製方法、当該共重合体により構成されるミセルベシクル、及び天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子の、封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質、タンパク質及び炭水化物から形成される両親媒性生体分子の集合体から得られるベシクル構造は、生物中に天然に存在する。これらの天然ベシクルは、サイズが可変であり、最も大きいものは細胞外環境から細胞内成分を保護する膜の機能を有し、一方で、小ベシクルは細胞内における生体分子の輸送因子の機能を発揮する。
【0003】
安定なベシクル構造については、天然又は合成のリン脂質の集合体により得られる1960年代のリポソームに始まり、「ポリマーソーム(polymersomes)」と呼ばれる合成ブロック共重合体の集合体により形成されるポリマー由来の近年のベシクル(B.M.Discher et al., Science 1999, 284, 1143)まで、合成により調製されることが可能となっている。
【0004】
「ポリマーソーム」はバイオ医療応用の開発について、特に治療剤の輸送について、又は生細胞の挙動を模倣するマイクロリアクターとして非常に有望であるようだ。
【0005】
さらに、「ポリマーソーム」はリポソームを超える非常に多くの利点、具体的には、より低い臨界凝集濃度、小サイズ分布に関連する単層又は多層ベシクル構造、及び封入分子の受動放出を低減するより高い膜安定性を提供する。
【0006】
さらに、ブロック共重合体の化学的多様性は、ベシクルの特性を修正して所望の応用に適合させるために無限の可能性が予測できることを意味する。
【0007】
文献で報告された「ポリマーソーム」のほとんどは、両親媒性合成化合物の集合体、例えば、ポリラクチド−連結基−ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブタジエン)−連結基−ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン−連結基−ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(2−メチルオキサゾリン)−連結基−ポリ(ジメチルシロキサン)−連結基−ポリ(2−メチルオキサゾリン)により形成され、これらはそのそれぞれのブロックの生体適合性又は生体吸収性の観点から広く調べられている。
【0008】
その後、科学的関心は、ポリペプチド又は多糖等の天然ブロックを含んでなる集合体に向かった。具体的には、ポリペプチド集合体についての関心は、これらが特有の生理学的特性を示し、これらが、特定の場合には天然に光学活性、生体適合性及び生物分解性であり、これらが天然ポリペプチド配列を模倣するために使用でき、且つpH及び/又は温度に依存する可逆的なコンフォメーション転移が可能であるという事実に基づく。
【0009】
ブロックコポリペプチドは、自己集合及び高度に配列した3次元構造の能力を組み合わせる、2つの合成ポリペプチドブロックを組み合わせる特定のサブクラスを表す。これらは、バイオセンサー、再生医療、又は活性成分の選択的放出等の応用のための有望な物質として文献に記載されている。アミノ誘導体により開始され、対応するアミノ酸のN−カルボキシアンヒドリド(NCA)モノマーの開環重合を用いるポリペプチドベースのブロック共重合体の化学は、文献において広く調べられている。一般的に「クリックケミストリー」と呼ばれる、1,3−双極付加環化によるカップリングのヒュスゲン(Huisgen)法(その原理は、二置換1,2,3−トリアゾール−1,4結合の形成に基づき、この種類の共重合体と、穏和な操作条件、官能基の耐性、及び高収率を組み合わせるものである)を採用することにより、例えばポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)等のポリペプチドベースのブロック共重合体が調製された(D. Taton and S. Lecommandoux, Macromolecular Rapid Communications, 2008, 29, 1147)。
【0010】
より従来的な化学法を用いて、他のブロックコポリペプチドが合成されており、例えば、ポリ(L−グルタミン酸)−連結基−ポリ(L−リジン)(J. Rodriguez-Hernandez and S. Lecommandoux, J.A.C.S, 2005, 127, 2026)又はポリ(L−リジン)−連結基−ポリ(L−ロイシン)(E.G. Bellomo et al., Nat. Mater., 2004, 3, 244)又はポリ(L−リジン)−連結基−ポリ(L−グルタミン酸−γ−ベンジル)−連結基−ポリ(L−リジン)(H. Iatrou et al., Biomacromolecules, 2007, 8, 2173)等がある。
【0011】
この化学では、操作条件を変化させることにより100nm〜数μmの範囲で、生細胞の膜のモデルとして使用される最大50μmの巨大ベシクルまで、多様なサイズを得ることができる。
【0012】
多糖ベースのブロック共重合体の化学は、その複雑性が原因となってほとんど研究されていない。原子移動ラジカル重合(ATRP)によるデキストラン−連結基−ポリスチレンであるジブロック共重合体の合成方法は、近年報告された(C.Houga et al., Chem. Commun., 2007, 3063)。糖ベースのブロック共重合体系は、限られた数しか調べられておらず、溶液中でのそれらの挙動及びその特性について利用できる情報はほとんどない。
【0013】
例えば、デキストラン−連結基−ポリ(ε−カプロラクトン)は水中で、約100nmの平均直径を有する多分散ミセル構造に自己集合することが報告されている(J. Liu et al., Carbohydrate Polymers, 2007, 69, 196)。
【0014】
しかしながら、ポリペプチドセグメントと多糖ブロックを単一直鎖で組み合わせるブロック共重合体は文献に記載も示唆もされていなかった。
【発明の概要】
【0015】
今回、一つの共重合体において、単糖単位のブロックと、ペプチド単位のブロックを組み合わせる構造の合成により、多数の生物学的メカニズムに関与する天然の糖タンパク質構造を模倣するための化合物を調製することが可能であることを発見した。
【0016】
糖タンパク質は、少なくとも1つの多糖基及びポリペプチド鎖を有するタンパク質である。単細胞又は多細胞の生物には、細胞外媒体に向かうグリコシル化基を有する、原形質膜の外面上の多数の糖タンパク質がある。糖タンパク質は、具体的には、ウイルス及び細菌等の微生物に存在する。すなわち、多くの病原性微生物が進化し、細胞の表面に存在する糖を認識し、且つ固定のための点としてそれらを使用し、且つ感染する細胞に侵入している。例えば、HIVウイルスは、糖タンパク質であるCXCR4及びCXCR5等の膜受容体に結合することにより免疫系の細胞に入り込む。
【0017】
すなわち、糖タンパク質を模倣でき、且つベシクルの形態で自己集合できる我々のディスポーザル合成生体模倣構造体に取り組むことは特に有用である。これは例えば、ウイルスの構造及びその機能的役割を模倣し、且つ予測される対象となる分子の有効な細胞内送達をさせる「合成ウイルス」を形成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ポリペプチド鎖の、及び多糖鎖のカップリング、又はその逆順もまた同じあるが、その結果得られる直線構造を有するジブロック共重合体を図式的に示す。
【図2】図2は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。
【図3】図3は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【図4】図4は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。
【図5】図5は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【図6】図6は、ドキソルビシンについて、時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを示す。
【図7】図7は、ドセタキセルについて、時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを示す。
【図8】図8は、ドキソルビシン含有ベシクルの存在下、24時間インキュベーション後、C6細胞でのインビトロ蛍光顕微鏡による観察を示す。
【図9】図9は、遊離ヒアルロン酸の存在下又は不存在下で、封入ドキソルビシン(黒カラム)及び遊離ドキソルビシン(灰色カラム)の存在下、及びドキソルビシン無し(斜線カラム)でのインキュベーション後に測定されたMCF−7細胞中、任意単位(AU)で測定した相対蛍光強度を示す。
【図10】図10は、遊離ドキソルビシン(記号−▽−により表される曲線)、封入ドキソルビシン(記号−□−により表される曲線)又はPBS(記号−●−により表される曲線)での処置後、時間の関数による腫瘍容量の変化を示す。
【図11】図11に提示されるKaplan-Meier生存曲線は、各点が平均±平均(n=6)の標準誤差を示し、静脈投与により、封入ドキソルビシン(実直線)、遊離ドキソルビシン(破直線)及びコントロール群(点直線)を投与された動物について、処置開始後の動物の生存時間を示す。
【図12】図12は、遊離又は封入ドキソルビシンで処置された、DMBAにより誘導された腫瘍を有する健常な動物における、クレアチンキナーゼ(A)及び乳酸脱水素酵素(B)の血清レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
かかる複雑な構造の合成を達成するため、特に十分に制御されなければならない現代の化学反応、具体的には穏和な条件下で異なる化学物質の効率的且つ定量的なカップリングを可能とする「クリックケミストリー」の反応を使用する必要があった。
【0020】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する。
【0021】
「ジブロック共重合体」のような「ブロック共重合体」は、多糖ブロック及びポリペプチドブロックがそれらの末端で連結される直線構造を意味する。
【0022】
これらの直線構造は、本発明によるコポリマーの有利な特徴である。
【0023】
実際には、グラフト構造をもたらす側基上のポリマー鎖(ペプチド鎖を含む)の化学修飾は、単純な化学反応により行われることができる。しかしながら、かかる修飾は、明確な定義されない構造、多様な数のグラフト、当該鎖に沿った同質又は異質な分布、再現性の欠如等をもたらすことが多い。
【0024】
これらの主要な欠点は、工業的開発、特に製薬領域における開発に不適合である。本発明の共重合体の直線構造は、共重合構造の高度な制御及び再現性を提供し、特性の規則性を確保するものである。
【0025】
この分子制御は、界面特性の予測及び制御と一緒に、再現性よく且つ予測可能にベシクルを形成することを可能とする。
【0026】
有利なことには、本発明の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、生体吸収性又は生分解性であり、且つ生体適合性である。
【0027】
「単糖単位のブロック」、「多糖ブロック」又は「多糖」なる表現は、以降、多糖又は多糖誘導体を形成する単糖モノマー単位の鎖を述べるために区別なく使用することができる。同様に、「ペプチド単位のブロック」、「ポリペプチドブロック」又は「ポリペプチド」なる表現は、ポリペプチド又はポリペプチド誘導体を形成するペプチドモノマー単位の鎖を述べるために区別なく使用されることになる。
【0028】
本発明によるジブロック共重合体は、天然又は合成多糖の任意のタイプ、又はその誘導体、及び天然又は合成ポリペプチドの任意のタイプ、又はその誘導体を含むことができる。
【0029】
「多糖誘導体」は、多糖の化学修飾、例えば、天然には親水性である多糖に疎水性の性質を与えることができ、又は任意に分子に新規な官能基を付与できる化学修飾の結果得られる化合物を意味する。
【0030】
かかる誘導体、例えばエステル又はエーテル誘導体、具体的には有機エステル;リン酸エステル又は硫酸エステル等の無機エステル;例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシアルカリル誘導体等の非イオン性エーテル誘導体;例えば、スルホプロピル、カルボキシメチル又は(ジエチルアミノ)エチル誘導体等のイオン性エーテル誘導体;又は多糖、パラ−トルエンスルホン酸塩、チオール又はシリル化誘導体の複合体等のその他の誘導体があり得る。
【0031】
好ましい多糖は、例えば、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択してよい。
【0032】
多糖誘導体及び多糖修飾方法は、例えば、参照研究"Polysaccharides I", Adv. Polym. Sci. (2005), 186, and "Polysaccharides II", Adv. Polym. Sci. (2006), 205に記載がある。
【0033】
「ポリペプチド誘導体」は、ポリペプチドの化学修飾、例えば、天然には親水性であるポリペプチドに疎水性の性質を与えることができ、又は任意に分子に新規な官能基を付与できる化学修飾の結果得られる化合物を意味する。
【0034】
かかる誘導体は、例えば、エステル又はエーテル誘導体、具体的には、脂肪族又は芳香族の有機エステル;無機エステル;例えば、アルキル又はヒドロキシアルキル誘導体、アミド、又はイミド誘導体等のエーテル誘導体があり得る。
【0035】
好ましい態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、生理的条件下で、親水性の性質を有する多糖ブロック、及び天然に又はそれに疎水性を提供する化学修飾により、疎水性の性質を有するポリペプチドを含むことができる。
【0036】
別の好ましい態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、整理的条件下で、特に、天然に親水性である多糖に疎水性を提供することができる化学修飾によって、疎水性の性質を有する多糖ブロック、及び親水性の性質を有するポリペプチドブロックを含むことができる。
【0037】
このため、本発明による多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、自己集合して天然又は合成のポリマーに基づいて集合した新規なタイプのミセルベシクルを形成することができる両親媒性化合物である。従来のベシクル、特にリポソームと比較して、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に基づくこれらのベシクルの応用は、使用されるポリマーの固有の性質により、新規な可能性を提供する。
【0038】
実際、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に基づくベシクルは、特に以下の利点を有する。生体適合性及び生体吸収性又は生分解性の性質、水溶液中での安定性の向上、親水性及び疎水性の種を封入する能力、及び化学官能性を利用してベシクルの表面を修飾できる、つまり生体受容体に対する親和性等、特定の特性をベシクルに提供できる多様性である。
【0039】
細胞受容体のリガンドである特性を有する特定の多糖又はポリペプチドの使用により、対象となる分子の標的とする放出させるミセルベシクルを調製することが可能になり、ここで、当該多糖はその性質から、受容体媒介型エンドサイトーシス(RME)のメカニズムに関与することができる。
【0040】
本発明の共重合体は、具体的には5〜100単糖単位、及び5〜100ペプチド単位、特に、10〜100単糖単位、及び10〜100ペプチド単位、及び好ましくは約10〜約50単糖単位、及び約10〜約50ペプチド単位を含むことができる。疎水性ポリマーに対する親水性ポリマーの重量比は、例えば、約1/1であってよい。
【0041】
本発明の有利な共重合体は、1000〜50000g/molの分子量を有する。
【0042】
多糖は、例えば、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択することができる。
【0043】
ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドは、例えば、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択することができる。
【0044】
好ましい態様によれば、かかるポリペプチドは、生理的条件下で疎水性である。
【0045】
好ましい疎水性ポリペプチドは、例えば、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)である。
【0046】
別の有利な態様によれば、かかるポリペプチドは、生理的条件下で親水性である。
【0047】
好ましい親水性ポリペプチドは、例えば、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)である。
【0048】
本発明の目的に応じて、ポリペプチドは、上記の対応するアミノ酸のN−カルボキシアンヒドリド(NCA)モノマーの開環重合の方法により得ることができる。
【0049】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上記の生体吸収性又は生分解性及び生体適合性の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法に関する。
【0050】
上記の通り、本発明の共重合体の合成では、十分に制御された化学反応、特に、穏和な条件下で効率的且つ定量的なカップリングをさせる「クリックケミストリー」からの反応を使用する。
【0051】
「クリックケミストリー」からの反応の中には、例えば、不飽和種の付加環化(例えば、1,3−双極アジド−アルキン付加環化、ジエンとジエノフィルとの間のDiels−Alder反応)、非アルドール型の求電子的カルボニル基に関連する反応(例えば、オキシアミンからのオキシムエーテルの形成、ヒドラジンからのヒドラゾンの形成、又はチオセミカルバジンからのチオセミカルバゾンの形成)、チオール基に関連する反応(アルケン及び混合ジスルフィドからのチオエーテルの形成)、チオカルボン酸又はチオエーテル官能基に関連する反応(チオエステル及びアミド結合の形成)及びホスフィン及びアジド官能基が関連するStaudingerライゲーションが挙げられる。
【0052】
上記の官能基の各々は、カップリングのために、ポリペプチド基上又は多糖基上に別々に導入されてよい。
【0053】
好ましい代替法によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製のための本発明の方法は、
前記多糖鎖の一端にアルキン官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップ、
前記ポリペプチド鎖の一端にニトリド官能基を導入するステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる。
【0054】
本発明による方法の別の代替法によれば、かかる方法は、
前記ポリペプチド鎖の一端にアルキン官能基を導入するステップ、
前記多糖鎖の一端にニトリド官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる。
【0055】
ポリペプチド鎖の、及び多糖鎖のカップリング、又はその逆順もまた同じあるが、その結果得られる直線構造を有するジブロック共重合体は、図1に図式的に示される。
【0056】
多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する本発明の好ましい態様は、上記の通り、その調製方法にも応用される。
【0057】
還元的アミノ化は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の存在下、プロパルギルアミン等のアミンを使用して行うことができる。
【0058】
ニトリド官能基を、3−アジドアミノプロパン等の二官能性剤によりポリペプチド鎖の末端に導入することができ、このアミン官能基が対応するアミノ酸のNCAモノマーの開環重合を開始するために役立つ。すなわち、ポリペプチドブロックの長さを、二官能性剤に対するNCAモノマーのモル比により制御することができる。
【0059】
多糖鎖及びポリペプチド鎖のカップリングステップで使用される溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒があり得る。この反応は、リガンド、例えば、ペンタメチルジエチレントリアミンの存在下、好ましくは銅誘導体、例えば、CuBrにより触媒される。定量的なカップリング反応及び純粋なブロック共重合体の形成を確保するために、ポリペプチド又は多糖親水性鎖を、2モル濃度等量の程度でわずかに過剰に添加してよく、その後、透析により除去する。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上記の通り直鎖構造で末端と末端が連結された天然又は合成の単糖単位のブロック及び天然又は合成のペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される新規なミセルベシクルに関する。
【0061】
好ましくは、当該共重合体は、5〜100単糖単位、及び5〜100ペプチド単位、特に、10〜100単糖単位、及び10〜100ペプチド単位、及び好ましくは約10〜約50単糖単位、及び約10〜約50ペプチド単位を含んでなる。
【0062】
有利なことには、かかる共重合体は生体吸収性又は生分解性、及び生体適合性である。
【0063】
好ましい多糖及びポリペプチドとして、上記のような多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する発明の好ましい態様を参照すべきであり、これはまた前記ミセルベシクルに適用される。
【0064】
本発明のミセルベシクルは、様々な通常の方法、例えば、直接溶解、フィルム水和、乳化/拡散プロセス又はナノ沈殿(nanoprecipitation)により調製することができる。水混和性有機溶媒中のポリマー溶液を混合することからなるナノ沈殿を好ましく使用することになる。本発明のジブロック共重合体の有機溶液を、水に穏和に攪拌しながら導入することにより、層分離、及び有機溶媒が水相に拡散する時に進行する自己集合プロセス(水相が有機相に対して過剰である)が同時に起こる。好適な有機溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はホルムアミドである。エバポレーション及び/又は透析により有機溶媒を除去した後、ベシクルを水溶液に直接戻す。その後、ベシクルを凍結乾燥して、再分散性乾燥抽出物の形態で得る。そのサイズは、乳化/核酸又はナノ沈殿プロセスを調節することにより調整できる(添加の方向性、有機溶媒の性質、相の容量、共重合体の濃度等)。
【0065】
ベシクルのサイズは、所望の応用によって容易に制御及び調節することができる。特に生物医学の応用が想定される場合に、形成後に、超音波の作用、又は制御された多孔性の膜での押し出しにより約100nmに低減させることができる。他の応用において、例えば、化粧品、衛生、クリーニング又はその他の分野において、本発明のベシクルをμm程度又は数十μmのサイズにすることができる。
【0066】
本発明のミセルベシクルは、動的及び静的光散乱、小角中性子散乱及び透過型電子顕微鏡により特徴付けることができる。これらのミセル系特徴づけのための技術は、例えば、G.Riess, Progress in Polymer Science, 2003, 28, 1107に記載されている。
【0067】
有利な態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルは、天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子を含有する。この分子を、ナノ沈殿プロセスの前に、その極性によって水相又は有機相に導入することができる。すなわち、それはベシクルの製造フロセスの間に封入される。それを、ベシクル形成の後に、pH勾配又は乳化/拡散法によって導入することもできる。
【0068】
「治療活性を有する分子」は、例えば、病状の予防又は治療のため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物又は単離細胞で使用される、天然又は合成の分子を意味する。かかる分子は、例えば、医薬の活性成分、例えば、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤等、又はペプチド、タンパク質、ホルモン、酵素、核酸、オリゴヌクレオチド、抗原、抗体、インターフェロン、増殖因子、酵素活性調節因子、細胞受容体活性化因子又は阻害因子、及びビタミン等があり得る。
【0069】
治療活性を有する分子は、例えば、製薬又は医療分野で使用されてよい。
【0070】
適切な場合は、本発明のミセルベシクルに治療活性を有する分子を封入することにより、当該分子の毒性を顕著に減少させることができる。具体的には、抗腫瘍剤の十分に立証された毒性、例えばドキソルビシン又はミトキサトロンを用いた場合、具体的にはその心臓毒性等、又は例えばビンクリスチンを用いた場合、その神経毒性を顕著に低減することができる。
【0071】
「治療活性が無い対象とする分子」は、例えば、病状の予防又は治療のため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物又は単離細胞で使用されない、天然又は合成の分子を意味する。適切な場合は、それでもなおかかる分子は生物活性、具体的には植物又は微生物に関する生物活性を有してもよい。以下の分野の応用に、非限定的な例により言及される可能性がある。
−医療画像化:診断剤、例えば造影剤、同位元素、蛍光プローブ
−化粧品及び衛生:嗅覚分子、色素、着色料、抗酸化剤、抗細菌剤、防臭剤、皮膚軟化剤、角質除去剤、水和剤等;
−クリーニング及び洗浄:界面活性剤、着色料、抗酸化剤、抗細菌剤、防臭剤、漂白剤等;
−植物保護化学:殺有害生物剤、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、増殖促進剤等、
−食品工業:着色物質、香味促進剤等、
−有機化学:有機、金属又は無機触媒誘導体等、
又はミセルベシクルに分子を封入することが望まれる任意の他の活動分野、ここで任意の他の活動分野は、生体吸収性又は生分解性及び生体適合性の利点を提供する分野である。
【0072】
対象となる少なくとも1つの分子の封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のためのベシクルとして、上記の天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ポリペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルを使用することは、本発明の別の態様を表す。
【0073】
本発明はまた、天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ポリペプチド単位のブロックから構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルを含んでなり、且つ上記の天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子、及び医薬として許容される賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0074】
医薬として許容される賦形剤は、予想される投与の方法に応じて、製薬分野における通常の賦形剤から選択できる。
【0075】
例えば、錠剤の形態での経口投与については、賦形剤は、結合剤、充填剤、崩壊剤、アジュバント又は遅延剤から選択でき、水性又は油性懸濁物、溶液又はエマルションの形態での経口経路による投与については、組成物が懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル又は保存剤を含有してもよい。
【0076】
非経口投与については、医薬組成物は、抗酸化剤、バッファ、静菌剤、及び選択された受容者の血液と等張である調製物を作製する溶液を含有できる、滅菌水性及び非水性注射用溶液の形態であっても、又は懸濁剤及び増粘剤を含むことができる滅菌水性又は非水性懸濁物の形態であってもよい。
【0077】
本発明の医薬組成物は、好適な賦形剤を用いて頬又は舌下経路等のその他の経路により、クリーム、ゲル、軟膏、ローション又は経皮パッチの形態で表皮上の局所経路より、スプレー液体、粉末又はドロップの形態で鼻腔内経路により、又は好適な推進剤を用いて吸入により投与することもできる。
【0078】
有利なことには、本発明のミセルベシクルはまた、異なる極性の2つの区画、特に疎水性である膜、及び親水性である内部キャパシティを所有するために、疎水性分子及び親水性分子の両方の封入のために使用することができる。さらに、ベシクル中での共重合体の自己集合が弱い相互作用により行われる場合、ベシクルの解離及び対象となる封入分子の付随放出は、規定の条件下で得られる(塩分濃度、温度、pH、加水分解等)。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、ミセルベシクルは、多糖が少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、ミセルベシクルは、ポリペプチドが少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0081】
かかる場合において、ミセルベシクルを、対象となる分子を標的とするために有利に使用することができる。
【0082】
このタイプの多糖において、例えば、CD44受容体に親和性を示すヒアルロン酸に言及される可能性がある。CD44受容体は、様々な癌、黒色腫、リンパ腫等の腫瘍細胞において上昇したレベルで存在する("Chemistry and Biology of Hyaluronan", H.G. Garg and C.A. Hales Ed. (2004), Chapter 5, Elsevier Ltd.)。
【0083】
この点で対象となるポリペプチドは、例えばポリ(グルタミン酸)又はポリ(グルタミン酸塩)である。実際に、ポリ(グルタミン酸)又はポリ(グルタミン酸塩)は、例えばグルタミン酸受容体のリガンドであるか(Mornet C, Briley M, Trends Pharmacol Sci. 1988; 9:278-279)、又はTLR4受容体のリガンドである(Poo et al. 22 (2) 517 - The FASEB Journal)。
【0084】
別の好ましい態様によれば、ミセルベシクルは、多糖が受容体媒介型エンドサイトーシス(RME)のメカニズムに関与する可能性がある、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0085】
あるいは、ミセルベシクルは、ポリペプチドが受容体媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する可能性がある、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0086】
受容体媒介型エンドサイトーシスは、細胞外空間に存在する分子が細胞受容体に結合し、且つ内在化することによる生物メカニズムであり、また対象とする分子を標的化させる。
【0087】
本発明の目的に応じて、対象となる多糖は、媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する肝細胞受容体と相互作用するアラビノガラクタンである。
【0088】
受容体媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する可能性のある多糖は、例えば、US5,336,506及び5,554,396で言及されている。
【0089】
本発明を、限定するものではないが、以下の実施例により例示する。
【実施例1】
【0090】
ヒアルロン酸−連結基(block)−ポリ(L−グルタミンγベンジル)の調製
ニトリド官能基を有するポリ(L−グルタミンγベンジル)(PBLG−ニトリド)の調製
6 g (22.81 mmol)のL−グルタミンγベンジル N−カルボキシアンヒドリドを、真空下で事前に炎に当てたSchlenk型のフラスコに、アルゴン雰囲気下導入し、60 mlの無水DMF中に溶解させる。溶液を10分間攪拌し、57 μLの1−アジド−3−アミノプロパン(570 μmol)を窒素でパージしたシリンジを用いて添加する。溶液を、室温真空下で40時間攪拌する。ポリマーをジエチルエーテルから沈殿により回収し、その後真空下で乾燥させる。回収した生成物の質量は4.2 g(収率70%)である。プロトンNMR分光分析による解析から、数平均重合度23であることがわかる。1H NMR分析(CDCl3: 重水素化トリフルオロ酢酸, 85: 15): 1.8 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 1.9 及び 2.1 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.5 ppm (-CH2-CO, 2H); 2.6 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.4 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 4.6 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 5.1 ppm (-CH2-C6H5, 2H); 7.3 ppm (-C6H5, 5H); 7.9 ppm (NH, 1H)。
【0091】
アルキン官能基を有するヒアルロン酸(アルキン化ヒアルロン酸)の調製
数平均重合度が10であるヒアルロン酸(2.2 g; 6×10-4 mol)を、酢酸塩バッファ(pH=5.6)に溶解させ、2重量%の濃度とする。2.82 mL (4.4×10-2 mol)のプロパルギルアミン及び2.77 g (4.4×10-2 mol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを、混合物を攪拌させながら添加する。50℃で攪拌しながら5日間の反応後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、400 mLの冷メタノールから沈殿させる。固体を遠心分離により除去し、冷却メタノールで洗浄し、過剰なプロパルギルアミン及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムを除去する。その後、真空下で2日沈殿物を乾燥させる。回収した生成物の質量は、2.2 g(収率100%)である。1H NMR分析 (D2O): 3.35 ppm (C(2)H, GlcA); 3.59 ppm (C(3)H, GlcA); 3.72 ppm (C(5)H, GlcA); 3.73 ppm (C(4)H, GlcA); 4.48 ppm (C(1)H, GlcA); 2.03 ppm (CH3, 3H, GlcNAc); 3.50 ppm (C(5)H, GlcNAc); 3.55 ppm (C(4)H, GlcNAc); 3.72 ppm (C(3)H, GlcNAc); 3.86 ppm (C(2)H, GlcNAc); 3.90 ppm (C(6)H, GlcNAc); 4.54 ppm (C(1)H, GlcNAc); 8.22 (NH, GlcNAc); 3.72 ppm (C(3)H, β, GlcNAc); 3.83 ppm (C(2)H, β, GlcNAc); 3.91 ppm (C(3)H, α, GlcNAc); 4.05 ppm (C(2)H, α, GlcNAc); 4.73 ppm (C(1)H, β, GlcNAc); 5.16 ppm (C(1)H, α, GlcNAc); 8.41 ppm (NH, α, GlcNAc); 8.47 ppm (NH, β, GlcNAc)。
【0092】
ヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミンγベンジル)共重合体の調製
2等量のアルキン化ヒアルロン酸(2.1 g; 4.2×10-4 mol)及び1等量のPBLGニトリド(1.05 g; 2.1×10-4 mol)を、70 mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、87.04 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(4.1×10-4 mol)を窒素雰囲気下で添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(60 mg; 4.18×10-4 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を60℃で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、pH 3.5 のmilliQ水に対して透析する。その後、共重合体を遠心分離により回収し、真空下で2日間乾燥させる。回収した生成物の質量は、1.5 g(収率70%)である。1H NMR分析 (DMSO d6 - 60°C): 1.8 ppm (CH3, GlcNAc); 1.9 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 2.05 及び 2.25 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.5 ppm (CH2-CO-, 2H); 2.65 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.1 ppm (C(2)H, GlcA); 3.2 ppm (C(3)H, GlcA); 3.1-3.7 ppm (C(3)H, C(4)H, C(5)H, 3H, GlcNAc); 3.5 及び 3.7 ppm (C(6)H, GlcNAc); 3.1-3.7 ppm (C(4)H, C(5)H, 2H, GlcA); 3.5 及び 3.7 ppm (C(2)H, α 及び β, GlcNAc); 4.2 及び 4.35 ppm (C(1)H, α 及び β, GlcA); 4.58 ppm (C(1)H, GlcNAc); 4.6 ppm (-NH-CH-CO, 1H); 5 ppm (-CH2-C6H5, 2H); 7.25 ppm (-C6H5, 5H); 7.6 ppm (-N3-C(CH2)=CH-, 1H); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H)。
【実施例2】
【0093】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)の調製
アルキン官能基を有するデキストラン(アルキン化デキストラン)の調製
数平均重合度が40である3 gのデキストラン(4.54×10-4 mol)を、コンデンサーを備えるフラスコに導入し、pH=5に調整した酢酸塩バッファ中でマグネチックスターラ攪拌により溶解させ、ポリマーの最終濃度を2重量%とする。プロパルギルアミンを大過剰に(2.5 g; 4.54×10-4 mol)攪拌しながら添加する。培地が均一になったら、還元剤(NaBH3CN)を大過剰(2.85 g; 4.54×10-4 mol)、反応混合物に添加する。溶液を、槽内で、還元剤の既定量(デキストランに対して25モル等量)を毎日添加しながら、50℃で5日間勢いよく攪拌する。その後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて水に対して透析する。最終的にポリマーを凍結乾燥により回収する。得られたポリマーの質量は2.24 gであり、収率は74重量%である。1H NMR分析(DMSO d6): 3.17 ppm (C(4)H); 3.2ppm(C(2)H); 3.42ppm (C(3)H); 3.5 and 3.75 ppm (C(6)H, 2H); 3.62ppm (C(5)H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.85 ppm (C(3)OH); 4.95 ppm (C(4)OH)。
【0094】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)共重合体の調製
2等量のアルキン化デキストラン(0.4 g; 6.06×10-5 mol)及び1等量のPBLGニトリド(0.147 g; 3.03×10-5 mol)を。25mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、12.6 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(6.06×10-5 mol)を窒素雰囲気下添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(9 mg; 6.06×10-5 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を室温で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析する。その後、共重合体を凍結乾燥により回収する。回収した生成物の質量は0.302 g(収率87%)である。1H NMR分析 (DMSO d6): 1.9 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 2 及び 2.15 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.45 ppm (CH2-CO-, 2H); 2.65 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.1 ppm (N3-CH2-CH2-CH2, 2H); 3.15 ppm (C(4)H); 3.17 ppm (C(2)H); 3.42 (C(3)H); 3.5 及び 3.75 ppm (C(6)H, 2H); 3.62 ppm (C(5)H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.88 ppm (C(3)OH)); 4.9-5 ppm (C(4)OH); 7.2 ppm (C6H5, 5H); 8.25 ppm (-NH-CH-CO-, 1H)。
【実施例3】
【0095】
デキストラン−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)ジブロック共重合体の調製
ニトリド官能基を有するポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)(ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)−ニトリド)の調製
2 g (7.46×10-3 molのε−トリフルオロアセチル−L−リジン N−カルボキシアンヒドリドを、真空下で事前に炎に当てたSchlenk型のフラスコに、アルゴン雰囲気下導入し、21 mlの無水DMF中に溶解させる。溶液を10分間攪拌し、9 μLの1−アジド−3−アミノプロパン(94 μmol)を窒素でパージしたシリンジを用いて添加する。溶液を、室温真空下で40時間攪拌する。ポリマーをジエチルエーテルから沈殿により回収し、その後真空下で乾燥させる。回収した生成物の質量は1.5 g(収率70%)である。プロトンNMR分光分析による解析から、数平均重合度64であることがわかる。1H NMR分析(DMSO d6): 1.1-2 ppm (-CH-CH2-CH2-CH2-CH2-NH-, 6H); 3.12 ppm (CO-NH-CH2-, 2H); 3.8ppm (CO-CH-NH, 1H); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 9.3 (CF3-CO-NH-, 1H)。
【0096】
デキストラン−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)共重合体の調製
2等量のアルキン化デキストラン(0.4 g; 6.06×10-5 mol)及び1等量のポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)ニトリド(0.271 g; 3.03 10-5 mol)を、30 mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、12.6 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(6.06×10-5 mol)を窒素雰囲気下で添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(9 mg; 6.06×10-5 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を室温で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析する。凍結乾燥後、回収した生成物の質量は、0.320 g(収率67%)である。1H NMR分析 (DMSO d6): 1.1-2 ppm (-CH-CH2-CH2-CH2-CH2-NH-, 6H); 3.12 ppm (CO-NH-CH2-, 2H); 3.15 ppm (C(4)H); 3.17 ppm (C(2)H); 3.42 (C(3)H); 3.5 及び 3.72 ppm (C(6)H, 2H); 3.62 ppm (C(5)H); 3.8ppm (CO-CH-NH, 1H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.88 ppm (C(3)OH)); 4.9-5ppm (C(4)OH); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 9.3 (CF3-CO-NH-, 1H)。
【実施例4】
【0097】
ヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)に基づくミセルベシクルの調製
実施例1から得たヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)を、5 mg/mの濃度で、55℃でDMSOに溶解させ、トリスバッファ(10 mM, pH=7.4; [NaCl] = 145 mM)の1容量中に、シリンジポンプ(18 mL/h)を用いて、共重合体の終濃度が1 mg/mLまで注入する。有機溶媒を、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする透析膜(6 Spectra/Pro(登録商標))を用いて、milliQ水に対して透析する。ベシクル溶液を得て、これを動的及び静的光散乱、小角中性子散乱、及び透過型電子顕微鏡で特徴付けする。
【0098】
半径200nmで、且つサイズ分布が狭く、約9nmの膜厚を有するポリマーベシクルを得る。
【0099】
図2は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。図3は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【実施例5】
【0100】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)ジブロック共重合体に基づくミセルベシクルの調製
実施例2から得られたデキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)共重合体を、0.5 mg/mLの濃度で1mLのDMSOに溶解させ、その後、9mLのmilliQ水を、攪拌しながらシリンジポンプ(18 mL/h)を用いて徐々に添加する。その後、DMSOを、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析することにより除去する。形成されたベシクルを、動的及び静的光散乱、及び透過型電子顕微鏡で分析する。
【0101】
半径40nmで、サイズ分布の狭いポリマーベシクルを得る。
【0102】
図4は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。図5は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【実施例6】
【0103】
活性成分のミセルベシクルへの封入
ドキソルビシン及びドセタキセルを、ナノ沈殿により、実施例1から得られたヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)に基づくミセルベシクルに封入した。
【0104】
活性成分をDMSO又はトリスバッファに、共重合体に対する活性成分の重量比が0.1:1, 0.2:1 及び 0.3:1で溶解させた。共重合体ブロックをDMSOの有機層に55℃で溶解させる。この溶液を水溶液(トリスバッファ、pH = 7.4)に添加し、55℃で連続的ん攪拌するか、又はその逆の順序で行う。遊離活性成分及びDMSOを、トリスバッファに対する透析により除去した(分子量カットオフ閾値が2kDa)。
【0105】
(ベシクルの疎水性又は親水性の部分に)封入されたドキソルビシンの量、及び封入の効率を、DMSO:トリス混合物(80:20)中で、充填されたベシクルを破壊することにより決定した。1時間の遠心分離の後、サンプルを濾過し、485nmddUV分光分析により測定した。DMSO:トリス混合物(80:20)中のドキソルビシンのキャリブレーション曲線から、定量を行った。封入されたドセタキセルの量及び封入効率は、エタノール中でのドセタキセル含有ベシクルの乾燥抽出物の再構築から決定した。次に、濾過したサンプルを、230nmでのUV分光分析により測定した。エタノールにおけるドキソルビシンのキャリブレーション曲線から定量を行った。
【0106】
封入された量=(充填されたベシクル中の活性成分の質量/ベシクル質量)×100
封入の効率=(充填されたベシクル中の活性成分の質量/活性成分の初期質量)×100
結果を以下の表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
結果は、10%程度の高い封入レベル、及びおよそ50%の封入効率を示す。
【実施例7】
【0109】
ミセルベシクルに封入された活性成分の放出
所望の量(例えば、1 mg/mLの濃度で4 mL量)の、ドキソルビシン及びドセキタキセルを封入したベシクルを、透析チューブ(Spectra/Por(登録商標)、Float−Lyzer(登録商標)、透析チューブ、25kDaの分子量カットオフ閾値、直径10mm、容量10mL)に注ぐ。透析チューブを50mL測定シリンダー中に垂直に置く。系を37℃±2に維持し、蒸発を防ぐためにパラフィンで覆う。所望の浸透圧条件を維持するために、各サンプル時間で、透析チューブの外部から2mLを取り、同じ容量のトリスバッファで置き換えた。
【0110】
ドキソルビシンの場合、サンプリングを透析チューブ内で行い、その後、それを分析後に再び挿入する。
【0111】
ドセキタキセルについては、サンプリングを透析チューブの外部から行う。透析媒体には、放出されたドセタキセルの溶解性を向上させ、且つ遊離ドセタキセルの凝集を回避するために、2%v/vのエタノールを添加した、50mLのトリスバッファ(pH7.4)を含有させた。
【0112】
それぞれの溶媒中の遊離活性成分のキャリブレーション曲線に基づき、定量化を行う。
【0113】
時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを、図6(ドキソルビシン)及び7(ドセタキセル)に示す。
【0114】
遊離活性成分を、記号−○−(白丸)により表し、封入された活性成分の放出を記号−●−(黒丸)で表す。
【0115】
結果は、これら2つの活性成分の放出が、遊離活性成分のものよりもより遅い動力学で、数日にわたり制御できることを明確に示す。放出は、均一な拡散モデルに従うようである。
【実施例8】
【0116】
ミセルベシクルに封入された活性成分のインビトロでの放出及び毒性
毒性及びインビトロでの放出の試験を、11%のドキソルビシンを含有する、実施例6で調製したヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体に基づくベシクルを用いて行った。
【0117】
インビトロ試験を、5%胎児ウシ血清を含有するダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)中で、ラット神経膠腫C6の細胞で行った。C6細胞(5×105細胞)を、10cm直径のボトルに入れ、5%CO2雰囲気に制御した37℃のインキュベータ中、ペニシリン(10000 μg/mL)、ストレプトマイシン(10000 μg/mL)及びアンピシリンB(25 μg/mL)[Invitrogen Corporation]を含有する培養培地10mL中で増殖させた。
【0118】
細胞生存能力(又は毒性)の検査については、C6細胞を、24ウェルプレート中で(1ウェル当たり15×104細胞)、24時間インキュベートした。生存能力を、テトラゾリウム塩MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を用いる従来検査により決定した。それを含有するテトラゾリウムを、活性生細胞のミトコンドリアコハク酸デヒドロゲナーゼによりホルマザン(formazan)に還元する。その後、培地の色が、黄色から青紫に変化する。この着色の強度は検査の間存在する生細胞の数に比例する。分析を、570nmでの吸収を測定する分光光度法(U-2800A, HITACHI)により行った。測定を、コントロール実験により標準化し、そのためにMTT検査を細胞不存在下で行う。このようにして、生存したままである細胞の半数に対応する濃度であるIC50値を48時間で決定する。
【0119】
遊離ドキソルビシンについては、0.84 μMの値が得られる。
【0120】
ベシクル封入されるドキソルビシンについては、10倍大きい値(IC50=8.4 μM)が得られる。ベシクル単独(ドキソルビシン不存在)は、当該実験条件下(濃度200 μMまで、時間72時間まで)何の毒性も示さなかった。
【実施例9】
【0121】
活性成分を含有するミセルベシクルの細胞内在化の研究
細胞相互作用を、蛍光顕微鏡によりインビトロで観察した。このため、C6細胞を16mmの4ウェルを有するプレート中でインキュベートした(15×104細胞)。4.54 μMの濃度でドキソルビシンを含有するベシクルを、5%CO2の制御雰囲気中、37℃で、4時間、6時間及び24時間インキュベートした。各々の観察時間について、細胞をPBSバッファで2回洗浄し、PBSバッファ中の4%のパラホルムアルデヒド(PF4)で顕微鏡カバースリップに固定し、30分間暗所で室温中に置き、その後、PBSバッファで1回、純水で1回洗浄する。顕微鏡観察を、Zeiss蛍光顕微鏡(倍率×63;λ励起 = 546nm and λ発光 = 590nm)を用いて行う。
【0122】
ドキソルビシン含有ベシクルの存在下、24時間インキュベーション後、C6細胞でのインビトロ蛍光顕微鏡による観察を図8に示す。ドキソルビシン含有ベシクルを、エンドサイトーシスにより内在化させる、24時間インキュベーション後、ドキソルビシン含有ベシクルの内在化の結果、エンドソーム中への強度の集積が観察される。細胞は、この内在化の特徴である巨大な突出物を示す。
【実施例10】
【0123】
ウサギでの皮膚過敏の検査
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
この分散体を、3匹のウサギの健常な皮膚の領域に4時間、半密封包帯下0.5mLの用量で塗布した。
実験プロトコルは、2002年4月24日付けのOECD指令番号404、及び指令EC440/2008の検査方法B.4である。
【0124】
検査された時間(包帯除去後、24時間、48時間及び72時間)に関係なく、治療領域上で皮膚反応(紅斑又は浮腫)は観察されなかった。
【実施例11】
【0125】
マウスでの皮膚過敏の可能性の研究
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
共重合体の分散体を、メスマウス系列の耳背部表面に塗布した。
各々4匹の動物からなる3群を、3連続日(D1、D2、D3)、未希釈検査分散体(100%)の50μl(1耳当たり25μl)で処置し、一方で、ジメチルホルムアミド(DMF)で希釈した検査分散体を25%及び50%の濃度で処置した。4匹の動物からなる補助的群を、DMFで処置した。
6日目に、耳に流れるリンパ節のリンパ球の増殖が、細胞計数により決定付けられた。
実験プロトコルは、2002年4月24日付けのOECD指令番号429、及び指令EC440/2008の検査方法B.42に従って確立された。
【0126】
結果は、
a)検査動物及びコントロール動物のいずれにも、致死又は全身毒性の兆候は観察されなく、
b)25%、50%及び100%の濃度で皮膚反応は観察されなかった。
結果は、本発明による共重合体の分散体は、3つの検査濃度で非刺激性であることを示す。
【実施例12】
【0127】
マウスでの静脈経路により寛容された最大容量の評価
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
共重合体の分散体を、10mL/kgの投与量で、オス及びメスのスイスマウスに静脈から投与した。調製物の密度を考慮すると、この投与は、10g/kgの容量に相当する。
【0128】
研究の14日間で致死は観察されなかった。処置の終点での動物の顕微鏡観察では、処置に関連する変化は何も観察されなかった。
結果は、本発明による共重合体の分散体の静脈経路による最大耐性容量(MTD)は、マウスにおいて10g/kg超であることを示す。
【実施例13】
【0129】
遊離ヒアルロン酸の存在下、競合的阻害による、ヒアルロン酸に結合したCD44受容体の標的化の研究
CD44受容体を大量に発現するMCF−7ヒト細胞系列を使用した。
ヒアルロン酸の特定受容体を介するエンドサイトーシスによる、封入されたドキソルビシンの細胞内在化を確認するために、細胞の表面上のヒアルロン酸受容体の一定限度ブロックするように、インキュベーション培地に遊離ヒアルロン酸を最初に添加することにより競合的阻害検査を行った。血清無し培地中の40mm直径のディッシュに、濃度2mg/mLで遊離ヒアルロン酸(MW=5000 g/mol)の存在下又は不存在下、純ドキソルビシン又は実施例6から得られるミセルベシクル中に封入されたドキソルビシン(ドキソルビシン濃度=10 μM)と共に、37℃で1時間インキュベートした。
その後、細胞をPBSバッファで2回洗浄し、遠心分離より(1000rpmで10分)回収した。その後、細胞を測定前に300μLのPBSバッファ中に再懸濁した。
サンプルを、FACS Caliburフローサイトメーター(Beckton Dickinson)で回収し、製造業者により供給されるCell Questソフトウェアを用いて分析した。各分析について、少なくとも10000細胞を計数した。
【0130】
遊離ヒアルロン酸の存在は、遊離ドキソルビシンの平均蛍光強度(MFI)を顕著に低減させることがわかる。
図9は、遊離ヒアルロン酸の存在下又は不存在下で、封入ドキソルビシン(黒カラム)及び遊離ドキソルビシン(灰色カラム)の存在下、及びドキソルビシン無し(斜線カラム)でのインキュベーション後に測定されたMCF−7細胞中、任意単位(AU)で測定した相対蛍光強度を示す。
結果は、遊離ドキソルビシンについては、遊離ヒアルロン酸の存在下でのインキュベーションは、内在化に対して効果がほとんど無いか、全く無いことを示す(平均蛍光強度の顕著な減少はない)。
【0131】
これは、CD44受容体の媒介に結びつかない内在化として、遊離ドキソルビシンが細胞内に自由に拡散するという事実により説明することができる。
反対に、封入ドキソルビシンについて、遊離ヒアルロン酸の存在下で、蛍光強度が顕著に減少する。
これらの結果は、ドキソルビシンの細胞内送達をさせる、本発明のヒアルロン酸に基づくミセルベシクルのエンドサイトーシスにおける、ヒアルロン酸受容体の役割を示す。
【実施例14】
【0132】
封入化ドキソルビシンの抗腫瘍効果のインビボでの評価
1/実験プロトコル
8週齢のメスSprague-Dawleyラット(120-140 g)を腫瘍退縮の研究に使用した。
【0133】
動物に対して、7,12−ジメチルベンズ[α]アントラセン(DMBA)(大豆油中)を、1週間の間隔で、45 mg/kgを3用量経口投与し、腫瘍を形成させた。
【0134】
DMBAの最終投与後、10週間ドキソルビシン治療を施した。腫瘍の幅(w)及びその長さ(l)を、キャリパーを用いて記録し、腫瘍のサイズを式(w×l2/2)から計算した。
【0135】
腫瘍誘導から10週後、腫瘍を有する動物を分離し、異なる治療群に無作為に分け、遊離ドキソルビシンの形態か、又は実施例6のミセルベシクルに封入されたドキソルビシンの形態のいずれかで5 mg/kgで静脈経路によりドキソルビシン250 μlの単一用量で治療した。
【0136】
コントロール群には、静脈経路で、250 μlのPBSバッファ(pH 7.4)を単一用量投与した。
治療後30日で研究を終了した。
治療された腫瘍を有する動物の生存率の観察を、治療後60日まで継続した。
【0137】
2/封入されたドキソルビシンの抗腫瘍活性
図10は、遊離ドキソルビシン(記号−▽−により表される曲線)、封入ドキソルビシン(記号−□−により表される曲線)又はPBS(記号−●−により表される曲線)での処置後、時間の関数による腫瘍容量の変化を示す。
【0138】
結果は、遊離ドキソルビシン及び封入ドキソルビシンがPBSで処置したコントロール群と比較して腫瘍増殖を顕著に阻害することを示す。しかしながら、封入ドキソルビシンは、遊離ドキソルビシンよりもかなり大きな腫瘍抑制を引き起こす。
【0139】
実際、処置の15日後、封入ドキソルビシンでは腫瘍が退行し続けるが、遊離ドキソルビシンではプラトーに達することが観察される。
図11に提示されるKaplan-Meier生存曲線は、各点が平均±平均(n=6)の標準誤差を示し、静脈投与により、封入ドキソルビシン(実直線)、遊離ドキソルビシン(破直線)及びコントロール群(点直線)を投与された動物について、処置開始後の動物の生存時間を示す。
結果は、封入ドキソルビシンで処置した動物については、60日で致死が無いことを示す。
【0140】
3/心臓毒性
ドキソルビシンの主要で周知な副作用の一つは、その心臓毒性である。これは、特定の酵素の産生、主に乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼを測定することにより評価することができる。
【0141】
上記の実験における動物の様々な群における、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼの血清レベルの測定は、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼの誘導が、図12A(クレアチンキナーゼ)及び12B(乳酸脱水素酵素)に示すように、遊離ドキソルビシンで治療した動物と比較して、封入ドキソルビシンで処置した動物においては、より少ないことを示す。
【0142】
結果は、封入ドキソルビシンは、本発明のミセルベシクルに封入されたドキソルビシンの心臓毒性の減少を意味する、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼを低レベルに誘導することを示す。
この心臓毒性の減少は、封入ドキソルビシンを用いた場合に観察された副作用及び致死の顕著な低減と一致する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性又は生分解性で且つ生体適合性である、新規な多糖−連結基(block)−ポリペプチドであるジブロック共重合体、その調製方法、当該共重合体により構成されるミセルベシクル、及び天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子の、封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質、タンパク質及び炭水化物から形成される両親媒性生体分子の集合体から得られるベシクル構造は、生物中に天然に存在する。これらの天然ベシクルは、サイズが可変であり、最も大きいものは細胞外環境から細胞内成分を保護する膜の機能を有し、一方で、小ベシクルは細胞内における生体分子の輸送因子の機能を発揮する。
【0003】
安定なベシクル構造については、天然又は合成のリン脂質の集合体により得られる1960年代のリポソームに始まり、「ポリマーソーム(polymersomes)」と呼ばれる合成ブロック共重合体の集合体により形成されるポリマー由来の近年のベシクル(B.M.Discher et al., Science 1999, 284, 1143)まで、合成により調製されることが可能となっている。
【0004】
「ポリマーソーム」はバイオ医療応用の開発について、特に治療剤の輸送について、又は生細胞の挙動を模倣するマイクロリアクターとして非常に有望であるようだ。
【0005】
さらに、「ポリマーソーム」はリポソームを超える非常に多くの利点、具体的には、より低い臨界凝集濃度、小サイズ分布に関連する単層又は多層ベシクル構造、及び封入分子の受動放出を低減するより高い膜安定性を提供する。
【0006】
さらに、ブロック共重合体の化学的多様性は、ベシクルの特性を修正して所望の応用に適合させるために無限の可能性が予測できることを意味する。
【0007】
文献で報告された「ポリマーソーム」のほとんどは、両親媒性合成化合物の集合体、例えば、ポリラクチド−連結基−ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ブタジエン)−連結基−ポリ(エチレンオキシド)、ポリカプロラクトン−連結基−ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(2−メチルオキサゾリン)−連結基−ポリ(ジメチルシロキサン)−連結基−ポリ(2−メチルオキサゾリン)により形成され、これらはそのそれぞれのブロックの生体適合性又は生体吸収性の観点から広く調べられている。
【0008】
その後、科学的関心は、ポリペプチド又は多糖等の天然ブロックを含んでなる集合体に向かった。具体的には、ポリペプチド集合体についての関心は、これらが特有の生理学的特性を示し、これらが、特定の場合には天然に光学活性、生体適合性及び生物分解性であり、これらが天然ポリペプチド配列を模倣するために使用でき、且つpH及び/又は温度に依存する可逆的なコンフォメーション転移が可能であるという事実に基づく。
【0009】
ブロックコポリペプチドは、自己集合及び高度に配列した3次元構造の能力を組み合わせる、2つの合成ポリペプチドブロックを組み合わせる特定のサブクラスを表す。これらは、バイオセンサー、再生医療、又は活性成分の選択的放出等の応用のための有望な物質として文献に記載されている。アミノ誘導体により開始され、対応するアミノ酸のN−カルボキシアンヒドリド(NCA)モノマーの開環重合を用いるポリペプチドベースのブロック共重合体の化学は、文献において広く調べられている。一般的に「クリックケミストリー」と呼ばれる、1,3−双極付加環化によるカップリングのヒュスゲン(Huisgen)法(その原理は、二置換1,2,3−トリアゾール−1,4結合の形成に基づき、この種類の共重合体と、穏和な操作条件、官能基の耐性、及び高収率を組み合わせるものである)を採用することにより、例えばポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)等のポリペプチドベースのブロック共重合体が調製された(D. Taton and S. Lecommandoux, Macromolecular Rapid Communications, 2008, 29, 1147)。
【0010】
より従来的な化学法を用いて、他のブロックコポリペプチドが合成されており、例えば、ポリ(L−グルタミン酸)−連結基−ポリ(L−リジン)(J. Rodriguez-Hernandez and S. Lecommandoux, J.A.C.S, 2005, 127, 2026)又はポリ(L−リジン)−連結基−ポリ(L−ロイシン)(E.G. Bellomo et al., Nat. Mater., 2004, 3, 244)又はポリ(L−リジン)−連結基−ポリ(L−グルタミン酸−γ−ベンジル)−連結基−ポリ(L−リジン)(H. Iatrou et al., Biomacromolecules, 2007, 8, 2173)等がある。
【0011】
この化学では、操作条件を変化させることにより100nm〜数μmの範囲で、生細胞の膜のモデルとして使用される最大50μmの巨大ベシクルまで、多様なサイズを得ることができる。
【0012】
多糖ベースのブロック共重合体の化学は、その複雑性が原因となってほとんど研究されていない。原子移動ラジカル重合(ATRP)によるデキストラン−連結基−ポリスチレンであるジブロック共重合体の合成方法は、近年報告された(C.Houga et al., Chem. Commun., 2007, 3063)。糖ベースのブロック共重合体系は、限られた数しか調べられておらず、溶液中でのそれらの挙動及びその特性について利用できる情報はほとんどない。
【0013】
例えば、デキストラン−連結基−ポリ(ε−カプロラクトン)は水中で、約100nmの平均直径を有する多分散ミセル構造に自己集合することが報告されている(J. Liu et al., Carbohydrate Polymers, 2007, 69, 196)。
【0014】
しかしながら、ポリペプチドセグメントと多糖ブロックを単一直鎖で組み合わせるブロック共重合体は文献に記載も示唆もされていなかった。
【発明の概要】
【0015】
今回、一つの共重合体において、単糖単位のブロックと、ペプチド単位のブロックを組み合わせる構造の合成により、多数の生物学的メカニズムに関与する天然の糖タンパク質構造を模倣するための化合物を調製することが可能であることを発見した。
【0016】
糖タンパク質は、少なくとも1つの多糖基及びポリペプチド鎖を有するタンパク質である。単細胞又は多細胞の生物には、細胞外媒体に向かうグリコシル化基を有する、原形質膜の外面上の多数の糖タンパク質がある。糖タンパク質は、具体的には、ウイルス及び細菌等の微生物に存在する。すなわち、多くの病原性微生物が進化し、細胞の表面に存在する糖を認識し、且つ固定のための点としてそれらを使用し、且つ感染する細胞に侵入している。例えば、HIVウイルスは、糖タンパク質であるCXCR4及びCXCR5等の膜受容体に結合することにより免疫系の細胞に入り込む。
【0017】
すなわち、糖タンパク質を模倣でき、且つベシクルの形態で自己集合できる我々のディスポーザル合成生体模倣構造体に取り組むことは特に有用である。これは例えば、ウイルスの構造及びその機能的役割を模倣し、且つ予測される対象となる分子の有効な細胞内送達をさせる「合成ウイルス」を形成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ポリペプチド鎖の、及び多糖鎖のカップリング、又はその逆順もまた同じあるが、その結果得られる直線構造を有するジブロック共重合体を図式的に示す。
【図2】図2は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。
【図3】図3は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【図4】図4は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。
【図5】図5は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【図6】図6は、ドキソルビシンについて、時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを示す。
【図7】図7は、ドセタキセルについて、時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを示す。
【図8】図8は、ドキソルビシン含有ベシクルの存在下、24時間インキュベーション後、C6細胞でのインビトロ蛍光顕微鏡による観察を示す。
【図9】図9は、遊離ヒアルロン酸の存在下又は不存在下で、封入ドキソルビシン(黒カラム)及び遊離ドキソルビシン(灰色カラム)の存在下、及びドキソルビシン無し(斜線カラム)でのインキュベーション後に測定されたMCF−7細胞中、任意単位(AU)で測定した相対蛍光強度を示す。
【図10】図10は、遊離ドキソルビシン(記号−▽−により表される曲線)、封入ドキソルビシン(記号−□−により表される曲線)又はPBS(記号−●−により表される曲線)での処置後、時間の関数による腫瘍容量の変化を示す。
【図11】図11に提示されるKaplan-Meier生存曲線は、各点が平均±平均(n=6)の標準誤差を示し、静脈投与により、封入ドキソルビシン(実直線)、遊離ドキソルビシン(破直線)及びコントロール群(点直線)を投与された動物について、処置開始後の動物の生存時間を示す。
【図12】図12は、遊離又は封入ドキソルビシンで処置された、DMBAにより誘導された腫瘍を有する健常な動物における、クレアチンキナーゼ(A)及び乳酸脱水素酵素(B)の血清レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
かかる複雑な構造の合成を達成するため、特に十分に制御されなければならない現代の化学反応、具体的には穏和な条件下で異なる化学物質の効率的且つ定量的なカップリングを可能とする「クリックケミストリー」の反応を使用する必要があった。
【0020】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する。
【0021】
「ジブロック共重合体」のような「ブロック共重合体」は、多糖ブロック及びポリペプチドブロックがそれらの末端で連結される直線構造を意味する。
【0022】
これらの直線構造は、本発明によるコポリマーの有利な特徴である。
【0023】
実際には、グラフト構造をもたらす側基上のポリマー鎖(ペプチド鎖を含む)の化学修飾は、単純な化学反応により行われることができる。しかしながら、かかる修飾は、明確な定義されない構造、多様な数のグラフト、当該鎖に沿った同質又は異質な分布、再現性の欠如等をもたらすことが多い。
【0024】
これらの主要な欠点は、工業的開発、特に製薬領域における開発に不適合である。本発明の共重合体の直線構造は、共重合構造の高度な制御及び再現性を提供し、特性の規則性を確保するものである。
【0025】
この分子制御は、界面特性の予測及び制御と一緒に、再現性よく且つ予測可能にベシクルを形成することを可能とする。
【0026】
有利なことには、本発明の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、生体吸収性又は生分解性であり、且つ生体適合性である。
【0027】
「単糖単位のブロック」、「多糖ブロック」又は「多糖」なる表現は、以降、多糖又は多糖誘導体を形成する単糖モノマー単位の鎖を述べるために区別なく使用することができる。同様に、「ペプチド単位のブロック」、「ポリペプチドブロック」又は「ポリペプチド」なる表現は、ポリペプチド又はポリペプチド誘導体を形成するペプチドモノマー単位の鎖を述べるために区別なく使用されることになる。
【0028】
本発明によるジブロック共重合体は、天然又は合成多糖の任意のタイプ、又はその誘導体、及び天然又は合成ポリペプチドの任意のタイプ、又はその誘導体を含むことができる。
【0029】
「多糖誘導体」は、多糖の化学修飾、例えば、天然には親水性である多糖に疎水性の性質を与えることができ、又は任意に分子に新規な官能基を付与できる化学修飾の結果得られる化合物を意味する。
【0030】
かかる誘導体、例えばエステル又はエーテル誘導体、具体的には有機エステル;リン酸エステル又は硫酸エステル等の無機エステル;例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシアルカリル誘導体等の非イオン性エーテル誘導体;例えば、スルホプロピル、カルボキシメチル又は(ジエチルアミノ)エチル誘導体等のイオン性エーテル誘導体;又は多糖、パラ−トルエンスルホン酸塩、チオール又はシリル化誘導体の複合体等のその他の誘導体があり得る。
【0031】
好ましい多糖は、例えば、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択してよい。
【0032】
多糖誘導体及び多糖修飾方法は、例えば、参照研究"Polysaccharides I", Adv. Polym. Sci. (2005), 186, and "Polysaccharides II", Adv. Polym. Sci. (2006), 205に記載がある。
【0033】
「ポリペプチド誘導体」は、ポリペプチドの化学修飾、例えば、天然には親水性であるポリペプチドに疎水性の性質を与えることができ、又は任意に分子に新規な官能基を付与できる化学修飾の結果得られる化合物を意味する。
【0034】
かかる誘導体は、例えば、エステル又はエーテル誘導体、具体的には、脂肪族又は芳香族の有機エステル;無機エステル;例えば、アルキル又はヒドロキシアルキル誘導体、アミド、又はイミド誘導体等のエーテル誘導体があり得る。
【0035】
好ましい態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、生理的条件下で、親水性の性質を有する多糖ブロック、及び天然に又はそれに疎水性を提供する化学修飾により、疎水性の性質を有するポリペプチドを含むことができる。
【0036】
別の好ましい態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、整理的条件下で、特に、天然に親水性である多糖に疎水性を提供することができる化学修飾によって、疎水性の性質を有する多糖ブロック、及び親水性の性質を有するポリペプチドブロックを含むことができる。
【0037】
このため、本発明による多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体は、自己集合して天然又は合成のポリマーに基づいて集合した新規なタイプのミセルベシクルを形成することができる両親媒性化合物である。従来のベシクル、特にリポソームと比較して、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に基づくこれらのベシクルの応用は、使用されるポリマーの固有の性質により、新規な可能性を提供する。
【0038】
実際、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に基づくベシクルは、特に以下の利点を有する。生体適合性及び生体吸収性又は生分解性の性質、水溶液中での安定性の向上、親水性及び疎水性の種を封入する能力、及び化学官能性を利用してベシクルの表面を修飾できる、つまり生体受容体に対する親和性等、特定の特性をベシクルに提供できる多様性である。
【0039】
細胞受容体のリガンドである特性を有する特定の多糖又はポリペプチドの使用により、対象となる分子の標的とする放出させるミセルベシクルを調製することが可能になり、ここで、当該多糖はその性質から、受容体媒介型エンドサイトーシス(RME)のメカニズムに関与することができる。
【0040】
本発明の共重合体は、具体的には5〜100単糖単位、及び5〜100ペプチド単位、特に、10〜100単糖単位、及び10〜100ペプチド単位、及び好ましくは約10〜約50単糖単位、及び約10〜約50ペプチド単位を含むことができる。疎水性ポリマーに対する親水性ポリマーの重量比は、例えば、約1/1であってよい。
【0041】
本発明の有利な共重合体は、1000〜50000g/molの分子量を有する。
【0042】
多糖は、例えば、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択することができる。
【0043】
ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドは、例えば、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択することができる。
【0044】
好ましい態様によれば、かかるポリペプチドは、生理的条件下で疎水性である。
【0045】
好ましい疎水性ポリペプチドは、例えば、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)である。
【0046】
別の有利な態様によれば、かかるポリペプチドは、生理的条件下で親水性である。
【0047】
好ましい親水性ポリペプチドは、例えば、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)である。
【0048】
本発明の目的に応じて、ポリペプチドは、上記の対応するアミノ酸のN−カルボキシアンヒドリド(NCA)モノマーの開環重合の方法により得ることができる。
【0049】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上記の生体吸収性又は生分解性及び生体適合性の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法に関する。
【0050】
上記の通り、本発明の共重合体の合成では、十分に制御された化学反応、特に、穏和な条件下で効率的且つ定量的なカップリングをさせる「クリックケミストリー」からの反応を使用する。
【0051】
「クリックケミストリー」からの反応の中には、例えば、不飽和種の付加環化(例えば、1,3−双極アジド−アルキン付加環化、ジエンとジエノフィルとの間のDiels−Alder反応)、非アルドール型の求電子的カルボニル基に関連する反応(例えば、オキシアミンからのオキシムエーテルの形成、ヒドラジンからのヒドラゾンの形成、又はチオセミカルバジンからのチオセミカルバゾンの形成)、チオール基に関連する反応(アルケン及び混合ジスルフィドからのチオエーテルの形成)、チオカルボン酸又はチオエーテル官能基に関連する反応(チオエステル及びアミド結合の形成)及びホスフィン及びアジド官能基が関連するStaudingerライゲーションが挙げられる。
【0052】
上記の官能基の各々は、カップリングのために、ポリペプチド基上又は多糖基上に別々に導入されてよい。
【0053】
好ましい代替法によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製のための本発明の方法は、
前記多糖鎖の一端にアルキン官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップ、
前記ポリペプチド鎖の一端にニトリド官能基を導入するステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる。
【0054】
本発明による方法の別の代替法によれば、かかる方法は、
前記ポリペプチド鎖の一端にアルキン官能基を導入するステップ、
前記多糖鎖の一端にニトリド官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる。
【0055】
ポリペプチド鎖の、及び多糖鎖のカップリング、又はその逆順もまた同じあるが、その結果得られる直線構造を有するジブロック共重合体は、図1に図式的に示される。
【0056】
多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する本発明の好ましい態様は、上記の通り、その調製方法にも応用される。
【0057】
還元的アミノ化は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の存在下、プロパルギルアミン等のアミンを使用して行うことができる。
【0058】
ニトリド官能基を、3−アジドアミノプロパン等の二官能性剤によりポリペプチド鎖の末端に導入することができ、このアミン官能基が対応するアミノ酸のNCAモノマーの開環重合を開始するために役立つ。すなわち、ポリペプチドブロックの長さを、二官能性剤に対するNCAモノマーのモル比により制御することができる。
【0059】
多糖鎖及びポリペプチド鎖のカップリングステップで使用される溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒があり得る。この反応は、リガンド、例えば、ペンタメチルジエチレントリアミンの存在下、好ましくは銅誘導体、例えば、CuBrにより触媒される。定量的なカップリング反応及び純粋なブロック共重合体の形成を確保するために、ポリペプチド又は多糖親水性鎖を、2モル濃度等量の程度でわずかに過剰に添加してよく、その後、透析により除去する。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上記の通り直鎖構造で末端と末端が連結された天然又は合成の単糖単位のブロック及び天然又は合成のペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される新規なミセルベシクルに関する。
【0061】
好ましくは、当該共重合体は、5〜100単糖単位、及び5〜100ペプチド単位、特に、10〜100単糖単位、及び10〜100ペプチド単位、及び好ましくは約10〜約50単糖単位、及び約10〜約50ペプチド単位を含んでなる。
【0062】
有利なことには、かかる共重合体は生体吸収性又は生分解性、及び生体適合性である。
【0063】
好ましい多糖及びポリペプチドとして、上記のような多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体に関する発明の好ましい態様を参照すべきであり、これはまた前記ミセルベシクルに適用される。
【0064】
本発明のミセルベシクルは、様々な通常の方法、例えば、直接溶解、フィルム水和、乳化/拡散プロセス又はナノ沈殿(nanoprecipitation)により調製することができる。水混和性有機溶媒中のポリマー溶液を混合することからなるナノ沈殿を好ましく使用することになる。本発明のジブロック共重合体の有機溶液を、水に穏和に攪拌しながら導入することにより、層分離、及び有機溶媒が水相に拡散する時に進行する自己集合プロセス(水相が有機相に対して過剰である)が同時に起こる。好適な有機溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はホルムアミドである。エバポレーション及び/又は透析により有機溶媒を除去した後、ベシクルを水溶液に直接戻す。その後、ベシクルを凍結乾燥して、再分散性乾燥抽出物の形態で得る。そのサイズは、乳化/核酸又はナノ沈殿プロセスを調節することにより調整できる(添加の方向性、有機溶媒の性質、相の容量、共重合体の濃度等)。
【0065】
ベシクルのサイズは、所望の応用によって容易に制御及び調節することができる。特に生物医学の応用が想定される場合に、形成後に、超音波の作用、又は制御された多孔性の膜での押し出しにより約100nmに低減させることができる。他の応用において、例えば、化粧品、衛生、クリーニング又はその他の分野において、本発明のベシクルをμm程度又は数十μmのサイズにすることができる。
【0066】
本発明のミセルベシクルは、動的及び静的光散乱、小角中性子散乱及び透過型電子顕微鏡により特徴付けることができる。これらのミセル系特徴づけのための技術は、例えば、G.Riess, Progress in Polymer Science, 2003, 28, 1107に記載されている。
【0067】
有利な態様によれば、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルは、天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子を含有する。この分子を、ナノ沈殿プロセスの前に、その極性によって水相又は有機相に導入することができる。すなわち、それはベシクルの製造フロセスの間に封入される。それを、ベシクル形成の後に、pH勾配又は乳化/拡散法によって導入することもできる。
【0068】
「治療活性を有する分子」は、例えば、病状の予防又は治療のため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物又は単離細胞で使用される、天然又は合成の分子を意味する。かかる分子は、例えば、医薬の活性成分、例えば、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤等、又はペプチド、タンパク質、ホルモン、酵素、核酸、オリゴヌクレオチド、抗原、抗体、インターフェロン、増殖因子、酵素活性調節因子、細胞受容体活性化因子又は阻害因子、及びビタミン等があり得る。
【0069】
治療活性を有する分子は、例えば、製薬又は医療分野で使用されてよい。
【0070】
適切な場合は、本発明のミセルベシクルに治療活性を有する分子を封入することにより、当該分子の毒性を顕著に減少させることができる。具体的には、抗腫瘍剤の十分に立証された毒性、例えばドキソルビシン又はミトキサトロンを用いた場合、具体的にはその心臓毒性等、又は例えばビンクリスチンを用いた場合、その神経毒性を顕著に低減することができる。
【0071】
「治療活性が無い対象とする分子」は、例えば、病状の予防又は治療のため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物又は単離細胞で使用されない、天然又は合成の分子を意味する。適切な場合は、それでもなおかかる分子は生物活性、具体的には植物又は微生物に関する生物活性を有してもよい。以下の分野の応用に、非限定的な例により言及される可能性がある。
−医療画像化:診断剤、例えば造影剤、同位元素、蛍光プローブ
−化粧品及び衛生:嗅覚分子、色素、着色料、抗酸化剤、抗細菌剤、防臭剤、皮膚軟化剤、角質除去剤、水和剤等;
−クリーニング及び洗浄:界面活性剤、着色料、抗酸化剤、抗細菌剤、防臭剤、漂白剤等;
−植物保護化学:殺有害生物剤、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、増殖促進剤等、
−食品工業:着色物質、香味促進剤等、
−有機化学:有機、金属又は無機触媒誘導体等、
又はミセルベシクルに分子を封入することが望まれる任意の他の活動分野、ここで任意の他の活動分野は、生体吸収性又は生分解性及び生体適合性の利点を提供する分野である。
【0072】
対象となる少なくとも1つの分子の封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のためのベシクルとして、上記の天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ポリペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルを使用することは、本発明の別の態様を表す。
【0073】
本発明はまた、天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ポリペプチド単位のブロックから構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルを含んでなり、且つ上記の天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子、及び医薬として許容される賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0074】
医薬として許容される賦形剤は、予想される投与の方法に応じて、製薬分野における通常の賦形剤から選択できる。
【0075】
例えば、錠剤の形態での経口投与については、賦形剤は、結合剤、充填剤、崩壊剤、アジュバント又は遅延剤から選択でき、水性又は油性懸濁物、溶液又はエマルションの形態での経口経路による投与については、組成物が懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル又は保存剤を含有してもよい。
【0076】
非経口投与については、医薬組成物は、抗酸化剤、バッファ、静菌剤、及び選択された受容者の血液と等張である調製物を作製する溶液を含有できる、滅菌水性及び非水性注射用溶液の形態であっても、又は懸濁剤及び増粘剤を含むことができる滅菌水性又は非水性懸濁物の形態であってもよい。
【0077】
本発明の医薬組成物は、好適な賦形剤を用いて頬又は舌下経路等のその他の経路により、クリーム、ゲル、軟膏、ローション又は経皮パッチの形態で表皮上の局所経路より、スプレー液体、粉末又はドロップの形態で鼻腔内経路により、又は好適な推進剤を用いて吸入により投与することもできる。
【0078】
有利なことには、本発明のミセルベシクルはまた、異なる極性の2つの区画、特に疎水性である膜、及び親水性である内部キャパシティを所有するために、疎水性分子及び親水性分子の両方の封入のために使用することができる。さらに、ベシクル中での共重合体の自己集合が弱い相互作用により行われる場合、ベシクルの解離及び対象となる封入分子の付随放出は、規定の条件下で得られる(塩分濃度、温度、pH、加水分解等)。
【0079】
本発明の好ましい態様によれば、ミセルベシクルは、多糖が少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、ミセルベシクルは、ポリペプチドが少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0081】
かかる場合において、ミセルベシクルを、対象となる分子を標的とするために有利に使用することができる。
【0082】
このタイプの多糖において、例えば、CD44受容体に親和性を示すヒアルロン酸に言及される可能性がある。CD44受容体は、様々な癌、黒色腫、リンパ腫等の腫瘍細胞において上昇したレベルで存在する("Chemistry and Biology of Hyaluronan", H.G. Garg and C.A. Hales Ed. (2004), Chapter 5, Elsevier Ltd.)。
【0083】
この点で対象となるポリペプチドは、例えばポリ(グルタミン酸)又はポリ(グルタミン酸塩)である。実際に、ポリ(グルタミン酸)又はポリ(グルタミン酸塩)は、例えばグルタミン酸受容体のリガンドであるか(Mornet C, Briley M, Trends Pharmacol Sci. 1988; 9:278-279)、又はTLR4受容体のリガンドである(Poo et al. 22 (2) 517 - The FASEB Journal)。
【0084】
別の好ましい態様によれば、ミセルベシクルは、多糖が受容体媒介型エンドサイトーシス(RME)のメカニズムに関与する可能性がある、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0085】
あるいは、ミセルベシクルは、ポリペプチドが受容体媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する可能性がある、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される。
【0086】
受容体媒介型エンドサイトーシスは、細胞外空間に存在する分子が細胞受容体に結合し、且つ内在化することによる生物メカニズムであり、また対象とする分子を標的化させる。
【0087】
本発明の目的に応じて、対象となる多糖は、媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する肝細胞受容体と相互作用するアラビノガラクタンである。
【0088】
受容体媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与する可能性のある多糖は、例えば、US5,336,506及び5,554,396で言及されている。
【0089】
本発明を、限定するものではないが、以下の実施例により例示する。
【実施例1】
【0090】
ヒアルロン酸−連結基(block)−ポリ(L−グルタミンγベンジル)の調製
ニトリド官能基を有するポリ(L−グルタミンγベンジル)(PBLG−ニトリド)の調製
6 g (22.81 mmol)のL−グルタミンγベンジル N−カルボキシアンヒドリドを、真空下で事前に炎に当てたSchlenk型のフラスコに、アルゴン雰囲気下導入し、60 mlの無水DMF中に溶解させる。溶液を10分間攪拌し、57 μLの1−アジド−3−アミノプロパン(570 μmol)を窒素でパージしたシリンジを用いて添加する。溶液を、室温真空下で40時間攪拌する。ポリマーをジエチルエーテルから沈殿により回収し、その後真空下で乾燥させる。回収した生成物の質量は4.2 g(収率70%)である。プロトンNMR分光分析による解析から、数平均重合度23であることがわかる。1H NMR分析(CDCl3: 重水素化トリフルオロ酢酸, 85: 15): 1.8 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 1.9 及び 2.1 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.5 ppm (-CH2-CO, 2H); 2.6 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.4 ppm (N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 4.6 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 5.1 ppm (-CH2-C6H5, 2H); 7.3 ppm (-C6H5, 5H); 7.9 ppm (NH, 1H)。
【0091】
アルキン官能基を有するヒアルロン酸(アルキン化ヒアルロン酸)の調製
数平均重合度が10であるヒアルロン酸(2.2 g; 6×10-4 mol)を、酢酸塩バッファ(pH=5.6)に溶解させ、2重量%の濃度とする。2.82 mL (4.4×10-2 mol)のプロパルギルアミン及び2.77 g (4.4×10-2 mol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを、混合物を攪拌させながら添加する。50℃で攪拌しながら5日間の反応後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、400 mLの冷メタノールから沈殿させる。固体を遠心分離により除去し、冷却メタノールで洗浄し、過剰なプロパルギルアミン及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムを除去する。その後、真空下で2日沈殿物を乾燥させる。回収した生成物の質量は、2.2 g(収率100%)である。1H NMR分析 (D2O): 3.35 ppm (C(2)H, GlcA); 3.59 ppm (C(3)H, GlcA); 3.72 ppm (C(5)H, GlcA); 3.73 ppm (C(4)H, GlcA); 4.48 ppm (C(1)H, GlcA); 2.03 ppm (CH3, 3H, GlcNAc); 3.50 ppm (C(5)H, GlcNAc); 3.55 ppm (C(4)H, GlcNAc); 3.72 ppm (C(3)H, GlcNAc); 3.86 ppm (C(2)H, GlcNAc); 3.90 ppm (C(6)H, GlcNAc); 4.54 ppm (C(1)H, GlcNAc); 8.22 (NH, GlcNAc); 3.72 ppm (C(3)H, β, GlcNAc); 3.83 ppm (C(2)H, β, GlcNAc); 3.91 ppm (C(3)H, α, GlcNAc); 4.05 ppm (C(2)H, α, GlcNAc); 4.73 ppm (C(1)H, β, GlcNAc); 5.16 ppm (C(1)H, α, GlcNAc); 8.41 ppm (NH, α, GlcNAc); 8.47 ppm (NH, β, GlcNAc)。
【0092】
ヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミンγベンジル)共重合体の調製
2等量のアルキン化ヒアルロン酸(2.1 g; 4.2×10-4 mol)及び1等量のPBLGニトリド(1.05 g; 2.1×10-4 mol)を、70 mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、87.04 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(4.1×10-4 mol)を窒素雰囲気下で添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(60 mg; 4.18×10-4 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を60℃で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、pH 3.5 のmilliQ水に対して透析する。その後、共重合体を遠心分離により回収し、真空下で2日間乾燥させる。回収した生成物の質量は、1.5 g(収率70%)である。1H NMR分析 (DMSO d6 - 60°C): 1.8 ppm (CH3, GlcNAc); 1.9 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 2.05 及び 2.25 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.5 ppm (CH2-CO-, 2H); 2.65 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.1 ppm (C(2)H, GlcA); 3.2 ppm (C(3)H, GlcA); 3.1-3.7 ppm (C(3)H, C(4)H, C(5)H, 3H, GlcNAc); 3.5 及び 3.7 ppm (C(6)H, GlcNAc); 3.1-3.7 ppm (C(4)H, C(5)H, 2H, GlcA); 3.5 及び 3.7 ppm (C(2)H, α 及び β, GlcNAc); 4.2 及び 4.35 ppm (C(1)H, α 及び β, GlcA); 4.58 ppm (C(1)H, GlcNAc); 4.6 ppm (-NH-CH-CO, 1H); 5 ppm (-CH2-C6H5, 2H); 7.25 ppm (-C6H5, 5H); 7.6 ppm (-N3-C(CH2)=CH-, 1H); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H)。
【実施例2】
【0093】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)の調製
アルキン官能基を有するデキストラン(アルキン化デキストラン)の調製
数平均重合度が40である3 gのデキストラン(4.54×10-4 mol)を、コンデンサーを備えるフラスコに導入し、pH=5に調整した酢酸塩バッファ中でマグネチックスターラ攪拌により溶解させ、ポリマーの最終濃度を2重量%とする。プロパルギルアミンを大過剰に(2.5 g; 4.54×10-4 mol)攪拌しながら添加する。培地が均一になったら、還元剤(NaBH3CN)を大過剰(2.85 g; 4.54×10-4 mol)、反応混合物に添加する。溶液を、槽内で、還元剤の既定量(デキストランに対して25モル等量)を毎日添加しながら、50℃で5日間勢いよく攪拌する。その後、反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、その後、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて水に対して透析する。最終的にポリマーを凍結乾燥により回収する。得られたポリマーの質量は2.24 gであり、収率は74重量%である。1H NMR分析(DMSO d6): 3.17 ppm (C(4)H); 3.2ppm(C(2)H); 3.42ppm (C(3)H); 3.5 and 3.75 ppm (C(6)H, 2H); 3.62ppm (C(5)H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.85 ppm (C(3)OH); 4.95 ppm (C(4)OH)。
【0094】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)共重合体の調製
2等量のアルキン化デキストラン(0.4 g; 6.06×10-5 mol)及び1等量のPBLGニトリド(0.147 g; 3.03×10-5 mol)を。25mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、12.6 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(6.06×10-5 mol)を窒素雰囲気下添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(9 mg; 6.06×10-5 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を室温で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析する。その後、共重合体を凍結乾燥により回収する。回収した生成物の質量は0.302 g(収率87%)である。1H NMR分析 (DMSO d6): 1.9 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 2 及び 2.15 ppm (-CH2-CH2-CH-, 2H); 2.45 ppm (CH2-CO-, 2H); 2.65 ppm (-N3-CH2-CH2-CH2-, 2H); 3.1 ppm (N3-CH2-CH2-CH2, 2H); 3.15 ppm (C(4)H); 3.17 ppm (C(2)H); 3.42 (C(3)H); 3.5 及び 3.75 ppm (C(6)H, 2H); 3.62 ppm (C(5)H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.88 ppm (C(3)OH)); 4.9-5 ppm (C(4)OH); 7.2 ppm (C6H5, 5H); 8.25 ppm (-NH-CH-CO-, 1H)。
【実施例3】
【0095】
デキストラン−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)ジブロック共重合体の調製
ニトリド官能基を有するポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)(ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)−ニトリド)の調製
2 g (7.46×10-3 molのε−トリフルオロアセチル−L−リジン N−カルボキシアンヒドリドを、真空下で事前に炎に当てたSchlenk型のフラスコに、アルゴン雰囲気下導入し、21 mlの無水DMF中に溶解させる。溶液を10分間攪拌し、9 μLの1−アジド−3−アミノプロパン(94 μmol)を窒素でパージしたシリンジを用いて添加する。溶液を、室温真空下で40時間攪拌する。ポリマーをジエチルエーテルから沈殿により回収し、その後真空下で乾燥させる。回収した生成物の質量は1.5 g(収率70%)である。プロトンNMR分光分析による解析から、数平均重合度64であることがわかる。1H NMR分析(DMSO d6): 1.1-2 ppm (-CH-CH2-CH2-CH2-CH2-NH-, 6H); 3.12 ppm (CO-NH-CH2-, 2H); 3.8ppm (CO-CH-NH, 1H); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 9.3 (CF3-CO-NH-, 1H)。
【0096】
デキストラン−連結基−ポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)共重合体の調製
2等量のアルキン化デキストラン(0.4 g; 6.06×10-5 mol)及び1等量のポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)ニトリド(0.271 g; 3.03 10-5 mol)を、30 mLの無水DMSOに溶解させる。混合物を20分間攪拌し、その後、12.6 μLのペンタメチルジエチレントリアミン(6.06×10-5 mol)を窒素雰囲気下で添加する。その後、混合物を凍結/融解のサイクルにより3回脱気し、窒素下でCuBr(9 mg; 6.06×10-5 mol)を含有するSchlenk型フラスコに移す。反応混合物を室温で3日間攪拌し、その後、50kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析する。凍結乾燥後、回収した生成物の質量は、0.320 g(収率67%)である。1H NMR分析 (DMSO d6): 1.1-2 ppm (-CH-CH2-CH2-CH2-CH2-NH-, 6H); 3.12 ppm (CO-NH-CH2-, 2H); 3.15 ppm (C(4)H); 3.17 ppm (C(2)H); 3.42 (C(3)H); 3.5 及び 3.72 ppm (C(6)H, 2H); 3.62 ppm (C(5)H); 3.8ppm (CO-CH-NH, 1H); 4.5 ppm (C(2)OH); 4.65 ppm (C(1)H); 4.88 ppm (C(3)OH)); 4.9-5ppm (C(4)OH); 8.2 ppm (-NH-CH-CO-, 1H); 9.3 (CF3-CO-NH-, 1H)。
【実施例4】
【0097】
ヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)に基づくミセルベシクルの調製
実施例1から得たヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)を、5 mg/mの濃度で、55℃でDMSOに溶解させ、トリスバッファ(10 mM, pH=7.4; [NaCl] = 145 mM)の1容量中に、シリンジポンプ(18 mL/h)を用いて、共重合体の終濃度が1 mg/mLまで注入する。有機溶媒を、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする透析膜(6 Spectra/Pro(登録商標))を用いて、milliQ水に対して透析する。ベシクル溶液を得て、これを動的及び静的光散乱、小角中性子散乱、及び透過型電子顕微鏡で特徴付けする。
【0098】
半径200nmで、且つサイズ分布が狭く、約9nmの膜厚を有するポリマーベシクルを得る。
【0099】
図2は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。図3は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【実施例5】
【0100】
デキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)ジブロック共重合体に基づくミセルベシクルの調製
実施例2から得られたデキストラン−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)共重合体を、0.5 mg/mLの濃度で1mLのDMSOに溶解させ、その後、9mLのmilliQ水を、攪拌しながらシリンジポンプ(18 mL/h)を用いて徐々に添加する。その後、DMSOを、2kDaのカットオフ閾値を特徴とする6 Spectra/Pro(登録商標)透析膜を用いて、milliQ水に対して透析することにより除去する。形成されたベシクルを、動的及び静的光散乱、及び透過型電子顕微鏡で分析する。
【0101】
半径40nmで、サイズ分布の狭いポリマーベシクルを得る。
【0102】
図4は、光散乱により得られたベシクルのサイズ分布(流体力学半径)を示す。図5は、同じベシクルについて得られた透過型電子顕微鏡の画像を示す。
【実施例6】
【0103】
活性成分のミセルベシクルへの封入
ドキソルビシン及びドセタキセルを、ナノ沈殿により、実施例1から得られたヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γベンジル)に基づくミセルベシクルに封入した。
【0104】
活性成分をDMSO又はトリスバッファに、共重合体に対する活性成分の重量比が0.1:1, 0.2:1 及び 0.3:1で溶解させた。共重合体ブロックをDMSOの有機層に55℃で溶解させる。この溶液を水溶液(トリスバッファ、pH = 7.4)に添加し、55℃で連続的ん攪拌するか、又はその逆の順序で行う。遊離活性成分及びDMSOを、トリスバッファに対する透析により除去した(分子量カットオフ閾値が2kDa)。
【0105】
(ベシクルの疎水性又は親水性の部分に)封入されたドキソルビシンの量、及び封入の効率を、DMSO:トリス混合物(80:20)中で、充填されたベシクルを破壊することにより決定した。1時間の遠心分離の後、サンプルを濾過し、485nmddUV分光分析により測定した。DMSO:トリス混合物(80:20)中のドキソルビシンのキャリブレーション曲線から、定量を行った。封入されたドセタキセルの量及び封入効率は、エタノール中でのドセタキセル含有ベシクルの乾燥抽出物の再構築から決定した。次に、濾過したサンプルを、230nmでのUV分光分析により測定した。エタノールにおけるドキソルビシンのキャリブレーション曲線から定量を行った。
【0106】
封入された量=(充填されたベシクル中の活性成分の質量/ベシクル質量)×100
封入の効率=(充填されたベシクル中の活性成分の質量/活性成分の初期質量)×100
結果を以下の表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
結果は、10%程度の高い封入レベル、及びおよそ50%の封入効率を示す。
【実施例7】
【0109】
ミセルベシクルに封入された活性成分の放出
所望の量(例えば、1 mg/mLの濃度で4 mL量)の、ドキソルビシン及びドセキタキセルを封入したベシクルを、透析チューブ(Spectra/Por(登録商標)、Float−Lyzer(登録商標)、透析チューブ、25kDaの分子量カットオフ閾値、直径10mm、容量10mL)に注ぐ。透析チューブを50mL測定シリンダー中に垂直に置く。系を37℃±2に維持し、蒸発を防ぐためにパラフィンで覆う。所望の浸透圧条件を維持するために、各サンプル時間で、透析チューブの外部から2mLを取り、同じ容量のトリスバッファで置き換えた。
【0110】
ドキソルビシンの場合、サンプリングを透析チューブ内で行い、その後、それを分析後に再び挿入する。
【0111】
ドセキタキセルについては、サンプリングを透析チューブの外部から行う。透析媒体には、放出されたドセタキセルの溶解性を向上させ、且つ遊離ドセタキセルの凝集を回避するために、2%v/vのエタノールを添加した、50mLのトリスバッファ(pH7.4)を含有させた。
【0112】
それぞれの溶媒中の遊離活性成分のキャリブレーション曲線に基づき、定量化を行う。
【0113】
時間の関数として(秒1/2)累積塩析割合を表現した放出プロファイルを、図6(ドキソルビシン)及び7(ドセタキセル)に示す。
【0114】
遊離活性成分を、記号−○−(白丸)により表し、封入された活性成分の放出を記号−●−(黒丸)で表す。
【0115】
結果は、これら2つの活性成分の放出が、遊離活性成分のものよりもより遅い動力学で、数日にわたり制御できることを明確に示す。放出は、均一な拡散モデルに従うようである。
【実施例8】
【0116】
ミセルベシクルに封入された活性成分のインビトロでの放出及び毒性
毒性及びインビトロでの放出の試験を、11%のドキソルビシンを含有する、実施例6で調製したヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体に基づくベシクルを用いて行った。
【0117】
インビトロ試験を、5%胎児ウシ血清を含有するダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)中で、ラット神経膠腫C6の細胞で行った。C6細胞(5×105細胞)を、10cm直径のボトルに入れ、5%CO2雰囲気に制御した37℃のインキュベータ中、ペニシリン(10000 μg/mL)、ストレプトマイシン(10000 μg/mL)及びアンピシリンB(25 μg/mL)[Invitrogen Corporation]を含有する培養培地10mL中で増殖させた。
【0118】
細胞生存能力(又は毒性)の検査については、C6細胞を、24ウェルプレート中で(1ウェル当たり15×104細胞)、24時間インキュベートした。生存能力を、テトラゾリウム塩MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を用いる従来検査により決定した。それを含有するテトラゾリウムを、活性生細胞のミトコンドリアコハク酸デヒドロゲナーゼによりホルマザン(formazan)に還元する。その後、培地の色が、黄色から青紫に変化する。この着色の強度は検査の間存在する生細胞の数に比例する。分析を、570nmでの吸収を測定する分光光度法(U-2800A, HITACHI)により行った。測定を、コントロール実験により標準化し、そのためにMTT検査を細胞不存在下で行う。このようにして、生存したままである細胞の半数に対応する濃度であるIC50値を48時間で決定する。
【0119】
遊離ドキソルビシンについては、0.84 μMの値が得られる。
【0120】
ベシクル封入されるドキソルビシンについては、10倍大きい値(IC50=8.4 μM)が得られる。ベシクル単独(ドキソルビシン不存在)は、当該実験条件下(濃度200 μMまで、時間72時間まで)何の毒性も示さなかった。
【実施例9】
【0121】
活性成分を含有するミセルベシクルの細胞内在化の研究
細胞相互作用を、蛍光顕微鏡によりインビトロで観察した。このため、C6細胞を16mmの4ウェルを有するプレート中でインキュベートした(15×104細胞)。4.54 μMの濃度でドキソルビシンを含有するベシクルを、5%CO2の制御雰囲気中、37℃で、4時間、6時間及び24時間インキュベートした。各々の観察時間について、細胞をPBSバッファで2回洗浄し、PBSバッファ中の4%のパラホルムアルデヒド(PF4)で顕微鏡カバースリップに固定し、30分間暗所で室温中に置き、その後、PBSバッファで1回、純水で1回洗浄する。顕微鏡観察を、Zeiss蛍光顕微鏡(倍率×63;λ励起 = 546nm and λ発光 = 590nm)を用いて行う。
【0122】
ドキソルビシン含有ベシクルの存在下、24時間インキュベーション後、C6細胞でのインビトロ蛍光顕微鏡による観察を図8に示す。ドキソルビシン含有ベシクルを、エンドサイトーシスにより内在化させる、24時間インキュベーション後、ドキソルビシン含有ベシクルの内在化の結果、エンドソーム中への強度の集積が観察される。細胞は、この内在化の特徴である巨大な突出物を示す。
【実施例10】
【0123】
ウサギでの皮膚過敏の検査
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
この分散体を、3匹のウサギの健常な皮膚の領域に4時間、半密封包帯下0.5mLの用量で塗布した。
実験プロトコルは、2002年4月24日付けのOECD指令番号404、及び指令EC440/2008の検査方法B.4である。
【0124】
検査された時間(包帯除去後、24時間、48時間及び72時間)に関係なく、治療領域上で皮膚反応(紅斑又は浮腫)は観察されなかった。
【実施例11】
【0125】
マウスでの皮膚過敏の可能性の研究
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
共重合体の分散体を、メスマウス系列の耳背部表面に塗布した。
各々4匹の動物からなる3群を、3連続日(D1、D2、D3)、未希釈検査分散体(100%)の50μl(1耳当たり25μl)で処置し、一方で、ジメチルホルムアミド(DMF)で希釈した検査分散体を25%及び50%の濃度で処置した。4匹の動物からなる補助的群を、DMFで処置した。
6日目に、耳に流れるリンパ節のリンパ球の増殖が、細胞計数により決定付けられた。
実験プロトコルは、2002年4月24日付けのOECD指令番号429、及び指令EC440/2008の検査方法B.42に従って確立された。
【0126】
結果は、
a)検査動物及びコントロール動物のいずれにも、致死又は全身毒性の兆候は観察されなく、
b)25%、50%及び100%の濃度で皮膚反応は観察されなかった。
結果は、本発明による共重合体の分散体は、3つの検査濃度で非刺激性であることを示す。
【実施例12】
【0127】
マウスでの静脈経路により寛容された最大容量の評価
実施例1から得られるヒアルロン酸−連結基−ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)ジブロック共重合体の1%(w/v)分散体を使用した。
共重合体の分散体を、10mL/kgの投与量で、オス及びメスのスイスマウスに静脈から投与した。調製物の密度を考慮すると、この投与は、10g/kgの容量に相当する。
【0128】
研究の14日間で致死は観察されなかった。処置の終点での動物の顕微鏡観察では、処置に関連する変化は何も観察されなかった。
結果は、本発明による共重合体の分散体の静脈経路による最大耐性容量(MTD)は、マウスにおいて10g/kg超であることを示す。
【実施例13】
【0129】
遊離ヒアルロン酸の存在下、競合的阻害による、ヒアルロン酸に結合したCD44受容体の標的化の研究
CD44受容体を大量に発現するMCF−7ヒト細胞系列を使用した。
ヒアルロン酸の特定受容体を介するエンドサイトーシスによる、封入されたドキソルビシンの細胞内在化を確認するために、細胞の表面上のヒアルロン酸受容体の一定限度ブロックするように、インキュベーション培地に遊離ヒアルロン酸を最初に添加することにより競合的阻害検査を行った。血清無し培地中の40mm直径のディッシュに、濃度2mg/mLで遊離ヒアルロン酸(MW=5000 g/mol)の存在下又は不存在下、純ドキソルビシン又は実施例6から得られるミセルベシクル中に封入されたドキソルビシン(ドキソルビシン濃度=10 μM)と共に、37℃で1時間インキュベートした。
その後、細胞をPBSバッファで2回洗浄し、遠心分離より(1000rpmで10分)回収した。その後、細胞を測定前に300μLのPBSバッファ中に再懸濁した。
サンプルを、FACS Caliburフローサイトメーター(Beckton Dickinson)で回収し、製造業者により供給されるCell Questソフトウェアを用いて分析した。各分析について、少なくとも10000細胞を計数した。
【0130】
遊離ヒアルロン酸の存在は、遊離ドキソルビシンの平均蛍光強度(MFI)を顕著に低減させることがわかる。
図9は、遊離ヒアルロン酸の存在下又は不存在下で、封入ドキソルビシン(黒カラム)及び遊離ドキソルビシン(灰色カラム)の存在下、及びドキソルビシン無し(斜線カラム)でのインキュベーション後に測定されたMCF−7細胞中、任意単位(AU)で測定した相対蛍光強度を示す。
結果は、遊離ドキソルビシンについては、遊離ヒアルロン酸の存在下でのインキュベーションは、内在化に対して効果がほとんど無いか、全く無いことを示す(平均蛍光強度の顕著な減少はない)。
【0131】
これは、CD44受容体の媒介に結びつかない内在化として、遊離ドキソルビシンが細胞内に自由に拡散するという事実により説明することができる。
反対に、封入ドキソルビシンについて、遊離ヒアルロン酸の存在下で、蛍光強度が顕著に減少する。
これらの結果は、ドキソルビシンの細胞内送達をさせる、本発明のヒアルロン酸に基づくミセルベシクルのエンドサイトーシスにおける、ヒアルロン酸受容体の役割を示す。
【実施例14】
【0132】
封入化ドキソルビシンの抗腫瘍効果のインビボでの評価
1/実験プロトコル
8週齢のメスSprague-Dawleyラット(120-140 g)を腫瘍退縮の研究に使用した。
【0133】
動物に対して、7,12−ジメチルベンズ[α]アントラセン(DMBA)(大豆油中)を、1週間の間隔で、45 mg/kgを3用量経口投与し、腫瘍を形成させた。
【0134】
DMBAの最終投与後、10週間ドキソルビシン治療を施した。腫瘍の幅(w)及びその長さ(l)を、キャリパーを用いて記録し、腫瘍のサイズを式(w×l2/2)から計算した。
【0135】
腫瘍誘導から10週後、腫瘍を有する動物を分離し、異なる治療群に無作為に分け、遊離ドキソルビシンの形態か、又は実施例6のミセルベシクルに封入されたドキソルビシンの形態のいずれかで5 mg/kgで静脈経路によりドキソルビシン250 μlの単一用量で治療した。
【0136】
コントロール群には、静脈経路で、250 μlのPBSバッファ(pH 7.4)を単一用量投与した。
治療後30日で研究を終了した。
治療された腫瘍を有する動物の生存率の観察を、治療後60日まで継続した。
【0137】
2/封入されたドキソルビシンの抗腫瘍活性
図10は、遊離ドキソルビシン(記号−▽−により表される曲線)、封入ドキソルビシン(記号−□−により表される曲線)又はPBS(記号−●−により表される曲線)での処置後、時間の関数による腫瘍容量の変化を示す。
【0138】
結果は、遊離ドキソルビシン及び封入ドキソルビシンがPBSで処置したコントロール群と比較して腫瘍増殖を顕著に阻害することを示す。しかしながら、封入ドキソルビシンは、遊離ドキソルビシンよりもかなり大きな腫瘍抑制を引き起こす。
【0139】
実際、処置の15日後、封入ドキソルビシンでは腫瘍が退行し続けるが、遊離ドキソルビシンではプラトーに達することが観察される。
図11に提示されるKaplan-Meier生存曲線は、各点が平均±平均(n=6)の標準誤差を示し、静脈投与により、封入ドキソルビシン(実直線)、遊離ドキソルビシン(破直線)及びコントロール群(点直線)を投与された動物について、処置開始後の動物の生存時間を示す。
結果は、封入ドキソルビシンで処置した動物については、60日で致死が無いことを示す。
【0140】
3/心臓毒性
ドキソルビシンの主要で周知な副作用の一つは、その心臓毒性である。これは、特定の酵素の産生、主に乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼを測定することにより評価することができる。
【0141】
上記の実験における動物の様々な群における、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼの血清レベルの測定は、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼの誘導が、図12A(クレアチンキナーゼ)及び12B(乳酸脱水素酵素)に示すように、遊離ドキソルビシンで治療した動物と比較して、封入ドキソルビシンで処置した動物においては、より少ないことを示す。
【0142】
結果は、封入ドキソルビシンは、本発明のミセルベシクルに封入されたドキソルビシンの心臓毒性の減少を意味する、乳酸脱水素酵素及びクレアチンキナーゼを低レベルに誘導することを示す。
この心臓毒性の減少は、封入ドキソルビシンを用いた場合に観察された副作用及び致死の顕著な低減と一致する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜100単位を含んでなる天然又は合成単糖単位のブロック、及び5〜100単位を含んでなる天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される、多糖−連結基(block)−ポリペプチドであるジブロック共重合体。
【請求項2】
10〜100、好ましくは10〜50単糖単位、及び10〜100、好ましくは10〜50ペプチド単位を含んでなる、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記多糖が、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択される請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドが、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項6】
生理的条件下で、前記多糖が親水性であり、且つ前記ポリペプチドが疎水性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項7】
生理的条件下で、前記多糖が疎水性であり、且つ前記ポリペプチドが親水性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)から選択される、請求項6に記載の共重合体。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)から選択される、請求項7に記載の共重合体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法であって、
前記多糖鎖の一端にアルキン官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップ、
前記ポリペプチド鎖の一端にニトリド官能基を導入するステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法であって、
前記ポリペプチド鎖の一端にアルキン官能基を導入するステップ、
前記多糖鎖の一端にニトリド官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる方法。
【請求項12】
前記ニトリド又はアルキン官能基の導入を、二官能性剤により行う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクル。
【請求項14】
前記共重合体が、5〜100、好ましくは10〜50単糖単位、及び5〜100、好ましくは10〜50ペプチド単位を含んでなる、請求項13に記載のミセルベシクル。
【請求項15】
前記多糖が、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択される請求項13又は14に記載のミセルベシクル。
【請求項16】
前記ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドが、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択される、請求項13〜15のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項17】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択される、請求項13〜16のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項18】
生理的条件下で、前記多糖が親水性であり、且つ前記ポリペプチドが疎水性である、請求項13〜17のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項19】
生理的条件下で、前記多糖が疎水性であり、且つ前記ポリペプチドが親水性である、請求項13〜17のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)から選択される、請求項18に記載の共重合体。
【請求項21】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)から選択される、請求項19に記載の共重合体。
【請求項22】
天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子を含有する、請求項13〜21のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項23】
前記多糖又はポリペプチドが少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される、請求項22に記載のミセルベシクル。
【請求項24】
前記多糖又はポリペプチドが、媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与してよい、請求項22に記載のミセルベシクル。
【請求項25】
前記対象となる分子が、病状を予防又は治療するため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物において、又は単離細胞で使用される、請求項22〜24のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項26】
前記対象となる分子が、医薬の活性成分、ペプチド、タンパク質、ホルモン、酵素、核酸、オリゴヌクレオチド、抗原、抗体、インターフェロン、増殖因子、酵素活性調節因子、細胞受容体活性化因子又は阻害因子、及びビタミンから選択される、請求項25に記載のミセルベシクル。
【請求項27】
天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子の、封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のための、請求項13〜26のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルの使用。
【請求項28】
前記対象となる分子が、製薬又は医療分野で使用される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
対象となる分子が、医療画像化、化粧品、衛生、クリーニング及び洗浄、植物保護化学、食品工業及び有機化学から選択される少なくとも1つの分野、又はミセルベシクルに分子を封入することが望まれる任意の活動分野において使用される、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
請求項22に記載のミセルベシクル及び医薬として許容される賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項1】
5〜100単位を含んでなる天然又は合成単糖単位のブロック、及び5〜100単位を含んでなる天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される、多糖−連結基(block)−ポリペプチドであるジブロック共重合体。
【請求項2】
10〜100、好ましくは10〜50単糖単位、及び10〜100、好ましくは10〜50ペプチド単位を含んでなる、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記多糖が、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択される請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドが、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項6】
生理的条件下で、前記多糖が親水性であり、且つ前記ポリペプチドが疎水性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項7】
生理的条件下で、前記多糖が疎水性であり、且つ前記ポリペプチドが親水性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)から選択される、請求項6に記載の共重合体。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)から選択される、請求項7に記載の共重合体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法であって、
前記多糖鎖の一端にアルキン官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップ、
前記ポリペプチド鎖の一端にニトリド官能基を導入するステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体の調製方法であって、
前記ポリペプチド鎖の一端にアルキン官能基を導入するステップ、
前記多糖鎖の一端にニトリド官能基を導入するよう、多糖を還元的アミノ化するステップステップ、及び
共通の溶媒中で、前記多糖鎖及び前記ポリペプチドをカップリングするステップ、
からなるステップを含んでなる方法。
【請求項12】
前記ニトリド又はアルキン官能基の導入を、二官能性剤により行う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
天然又は合成単糖単位のブロック、及び天然又は合成ペプチド単位のブロックにより構成される多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクル。
【請求項14】
前記共重合体が、5〜100、好ましくは10〜50単糖単位、及び5〜100、好ましくは10〜50ペプチド単位を含んでなる、請求項13に記載のミセルベシクル。
【請求項15】
前記多糖が、デキストラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、プルラン、フカン、硫酸化フカン、サクシノグリカン、ガラクタン、アラビノガラクタン、硫酸化ガラクタン、アルギン酸塩類、グルカン、ポリシアル酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アカラン(acharan)硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、キサンタン、ペクチン、キシラン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、アガロース、マンナン、ガラクトマンナン類、カードラン、アラビナン、カラギーナン類、シゾフィラン、及びその誘導体から選択される請求項13又は14に記載のミセルベシクル。
【請求項16】
前記ポリペプチドを構成するアミノ酸が光学活性体L又はD、又はラセミ体DLであり得るポリペプチドが、ポリ(アラニン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アスパラギン酸塩)、ポリ(システイン)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(グルタミン酸塩)、ポリ(グルタミン)、ポリ(グリシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ(イソロイシン)、ポリ(ロイシン)、ポリ(リジン)、ポリ(メチオニン)、ポリ(フェニルアラニン)、ポリ(プロリン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(セレノシステイン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(トリプトファン)、ポリ(チロシン)、ポリ(バリン)、ポリ(グルタミン酸ベンジル)、ポリ(グルタミン酸アルキル)、ポリ(トリフルオロアセチル−リジン)、ポリ(サルコシン)、ポリ(ヒドロキシエチル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパラギン)、ポリ(ヒドロキシアルキル−アスパルトアミド(aspartamide))、ポリ(アスパラギン酸ベンジル)、及びその誘導体から選択される、請求項13〜15のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項17】
前記多糖が、デキストラン、ヒアルロン酸、及びその誘導体から選択される、請求項13〜16のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項18】
生理的条件下で、前記多糖が親水性であり、且つ前記ポリペプチドが疎水性である、請求項13〜17のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項19】
生理的条件下で、前記多糖が疎水性であり、且つ前記ポリペプチドが親水性である、請求項13〜17のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項20】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸γ−ベンジル)及びポリ(ε−トリフルオロアセチル−L−リジン)から選択される、請求項18に記載の共重合体。
【請求項21】
前記ポリペプチドが、ポリ(L−グルタミン酸)及びポリ(L−リジン)から選択される、請求項19に記載の共重合体。
【請求項22】
天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子を含有する、請求項13〜21のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項23】
前記多糖又はポリペプチドが少なくとも1つの細胞受容体に親和性を示す、多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成される、請求項22に記載のミセルベシクル。
【請求項24】
前記多糖又はポリペプチドが、媒介型エンドサイトーシスのメカニズムに関与してよい、請求項22に記載のミセルベシクル。
【請求項25】
前記対象となる分子が、病状を予防又は治療するため、又は生物機能を回復するために、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)で、特にヒトを含む動物において、又は単離細胞で使用される、請求項22〜24のいずれか1項に記載のミセルベシクル。
【請求項26】
前記対象となる分子が、医薬の活性成分、ペプチド、タンパク質、ホルモン、酵素、核酸、オリゴヌクレオチド、抗原、抗体、インターフェロン、増殖因子、酵素活性調節因子、細胞受容体活性化因子又は阻害因子、及びビタミンから選択される、請求項25に記載のミセルベシクル。
【請求項27】
天然又は合成の、治療活性を有するか又は治療活性の無い、少なくとも1つの対象となる分子の、封入、輸送、ベクター化(vectorization)及び/又は標的化のための、請求項13〜26のいずれか1項に記載の多糖−連結基−ポリペプチドであるジブロック共重合体から形成されるミセルベシクルの使用。
【請求項28】
前記対象となる分子が、製薬又は医療分野で使用される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
対象となる分子が、医療画像化、化粧品、衛生、クリーニング及び洗浄、植物保護化学、食品工業及び有機化学から選択される少なくとも1つの分野、又はミセルベシクルに分子を封入することが望まれる任意の活動分野において使用される、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
請求項22に記載のミセルベシクル及び医薬として許容される賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−506940(P2012−506940A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533785(P2011−533785)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001263
【国際公開番号】WO2010/049611
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511106248)ユニベルシテ ボルドー アン (1)
【出願人】(511106259)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001263
【国際公開番号】WO2010/049611
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511106248)ユニベルシテ ボルドー アン (1)
【出願人】(511106259)
【Fターム(参考)】
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