説明

多組成構成部品の製造方法

【課題】多組成の構成部品の異なる組成物間の接合界面に残留応力や新たな相が形成されず、不純物に少ない接合面を形成する部品の製造方法を提供する。
【解決手段】第1組成物Aの第1構成部分40、第2組成物Bの第2構成部分30、及び第3組成物Cの第3構成部分42を、第1構成部分40が第2構成部分30と第1境界を共有し、第2構成部分30が第3構成部分42と第2境界を共有するように配置する工程を含む。第1構成部分40、第2構成部分30、及び第3構成部分42は、各々、粉体であるか或いは固体であり、そのため、第1境界及び第2境界は、各々、粉体と隣接した固体である。次いで、第1組成物Aの第1領域16、第2組成物Bの第2領域18、及び第3組成物Cの第3領域20を持つ単一の固体の構成部品を形成するように熱間等方圧加圧および/または拡散結合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多組成構成部品(多くの組成物からなる構成部品)の製造方法に関し、詳細には、第1、第2、及び第3の構成部分を含む多組成構成部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のエンジニアリングの用途では、多くの異なる構成材料(即ち構成部分)を含む一体の構成部品を製造するのが望ましい。下文において、このような構成部品を多組成構成部品と呼ぶ。
【0003】
ガスタービンエンジンでは、例えば、回転自在のシャフトに取り付けられたタービンディスクにタービンブレードが取り付けられる。エンジンが作動し、シャフトが回転するとき、タービンディスクに不均等条件が加わる。例えば、ディスクの半径方向内部分が露呈される温度は、ディスクの半径方向外部分が露呈される温度よりも低い。
【0004】
タービンディスクは、ニッケル基超合金で形成されるようになってきている。しかしながら、不均等条件で最適の性能を提供する単一の合金は知られていない。
【0005】
US2006/026231 A1には、組成物が半径方向で徐々に変化するタービンディスクを製造するための方法が開示されている。様々な組成物の第1及び第2のニッケル基超合金粉体を容器内で組み合わせ、これらの粉体を、円筒形中空外容器と同心であるが小径の円筒形中空スリップケースによって分離する。スリップケースによって形成された内部分に第1粉体を入れ、スリップケースと外容器との間に形成された外部分に第2粉体を入れる。次いでスリップケースを取り外し、第1及び第2の粉体にプロセスを加え、単一の構成部品を形成する。
【0006】
この方法は、幾つかの用途では満足のいくものであったが、多くの欠点があった。スリップケースを取り外したとき、第1及び第2の粉体が、小さな移行領域に亘って互いに混合する。第1及び第2の組成物が大幅に異なる場合には、二つの粉体間の界面が最終的なディスクの構造的な弱点となる。更に、不純物が第1及び第2の粉体間に入り込まないようにするため、スリップケースを清浄な環境で取り外すのが重要である。これは実行が困難である。
【0007】
別の問題点は、多組成構成部品の製造プロセス中、又は多組成構成部品の熱処理中、異なる組成物間の界面に、一つ又はそれ以上の新たな相及び/又は炭化物及び/又は酸化物が形成される場合があるということである。更に別の問題点は、多組成構成部品の異なる組成物間の界面に残留応力が形成される場合があるということである。異なる組成物間の界面の新たな相、炭化物、及び酸化物、及び残留応力は、多組成構成部品の組成物差により生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US2006/026231 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、上述の問題点のうちの少なくとも幾つかを少なくとも或る程度解決する多組成構成部品の製造方法を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、多組成構成部品の製造方法において、第1組成物の第1構成部分、第2組成物の第2構成部分、及び第3組成物の第3構成部分を、第1構成部分が第2構成部分と第1境界を共有し、第2構成部分が第3構成部分と第2境界を共有するように配置する工程であって、第1構成部分、第2構成部分、及び第3構成部分は、各々、粉体又は固体である工程と、第1組成物の第1領域、第2組成物の第2領域、及び第3組成物の第3領域を持つ単一の固体の構成部品を形成するようにプロセスを行う工程とを含み、このプロセスは、熱間等方圧加圧工程及び/又は拡散結合工程を含み、熱間等方圧加圧工程及び/又は拡散結合工程は、第1の所定時間に亘って第1温度で熱間等方圧加圧を行う工程と、第2の所定時間に亘って第2温度で熱間等方圧加圧を行う工程とを含み、第1温度は第2温度よりも低い、方法が提供される。
【0011】
熱間等方圧加圧工程は、850℃乃至1000℃の第1温度で100MPaの圧力を加えながら4時間に亘って熱間等方圧加圧を行う工程と、γ’(ガンマプライム)相の体積分率が最も低い組成物のγ’ソルバス温度よりも50℃低い第2温度で100MPaの圧力を加えながら2時間に亘って熱間等方圧加圧を行う工程を含んでいてもよい。
【0012】
第1境界及び第2境界のうちの少なくとも一方が、粉体と隣接した固体である。第1境界及び第2境界は、各々、粉体と隣接した固体であってもよい。
【0013】
第1及び/又は第2の境界は環状である。
【0014】
一実施例では、第1構成部分及び第3構成部分は粉体であり、第2構成部分は固体である。別の実施例では、第1構成部分及び第3構成部分は固体であり、第2構成部分は粉体である。更に別の実施例では、第1構成部分及び第2構成部分が固体であり且つ第3構成部分が粉体である。他の実施例では、第1構成部分及び第2構成部分が粉体であり且つ第3構成部分が固体である。
【0015】
好ましくは、第2組成物は、第1組成物及び第3組成物と適合性がある。第2組成物のγ相組成物は、第1組成物のγ相組成物及び第3組成物のγ相組成物と同様であり、第2組成物の析出強化γ’相の体積分率は、第1組成物のγ’相の体積分率と第3組成物のγ’相の体積分率との間である。第2組成物は、第1組成物及び第3組成物の混合物であってもよい。第2組成物は、第1組成物又は第3組成物と同じであってもよい。第2組成物は、第1組成物又は第3組成物中に存在する元素と同じ単体(pure element)であってもよい。
【0016】
好ましくは、第1構成部分、第2構成部分、及び第3構成部分は金属合金である。
【0017】
第1構成部分、第2構成部分、及び第3構成部分は、製造中、容器内に配置されてもよい。第1及び/又は第2の境界は、固体と粉体との間の機械的固着を含んでもよい。
【0018】
構成部品は、タービンディスク、コンプレッサディスク又はファンディスク、ブレード付きディスク、ブレード付きリング、ブレード付きドラム、又はケーシングであってもよい。
【0019】
本発明は、更に、上文中に説明した方法のうちの任意の方法によって形成された、タービン、コンプレッサ、又はファンディスク等の多組成構成部品に関する。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、多組成構成部品の製造方法において、分割部材即ちディバイダを使用して容器を第1及び第2の区画室に分割する工程と、第1組成物の第1粉体を第1区画室に入れる工程及び第3組成物の第2粉体を第2区画室に入れる工程と、単一の固体構成部品を形成するようにプロセスを加える工程とを含み、ディバイダは、第1組成物及び第3組成物と適合性の第2組成物を持つ、方法が提供される。
【0021】
本発明の更に別の特徴によれば、多組成構成部品の製造方法において、第1組成物の第1固体と第3組成物の第2固体との間に区画室を形成する工程と、粉体を区画室に入れる工程と、単一の固体構成部品を形成するようにプロセスを加える工程とを含み、粉体は、第1組成物及び第3組成物と適合性の第2組成物を持つ、方法が提供される。
【0022】
本発明は、本明細書中に言及した特徴及び/又は限定の任意の組み合わせを含んでいてもよい(両立しない特徴の組み合わせを除く)。
【0023】
次に、本発明の実施例を添付図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、タービンディスクの概略図である。
【図2】図2は、多組成物タービンディスクを製造するための構成の概略断面図である。
【図3】図3は、図2のA−Aの方向から見た概略図である。
【図4】図4は、第1及び第2の粉体を区画室内に配置した、図2の構成の概略図である。
【図5】図5は、本発明に従って製造したブリスク(blisk)の一部の概略図である。
【図6】図6A及び図6Bは、タービンディスクの組成物の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、図2の構成で使用するための変形例のディバイダの概略図である。
【図8】図8は、多組成構成部品を製造するための別の構成の概略断面図である。
【図9】図9は、図8のB−Bの方向から見た概略図である。
【図10】図10は、多組成構成部品を製造するための更に別の構成の概略断面図である。
【図11】図11は、図10のC−Cの方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ガスタービンエンジン用多合金タービンディスク10を示す。ディスク10は中央穴12を有し、この穴により回転シャフト(図示せず)に取り付けることができる。ディスク10は、更に、外リムに亘って周方向に配置された複数のスロット14を有する。これらのスロット14は、タービンブレード(図示せず)の対応する形状の根部を受け入れることができるように、樅の木形状即ちファーツリー形状又はあり溝形状であってもよい。
【0026】
ディスク10は、様々な組成物の多くの合金で作られており、第1環状外セグメント16、第2環状移行セグメント18、及び第3環状内セグメント20を含む。環状外セグメント16は第1組成物Aの合金であり、環状移行セグメント18は第2組成物Bの合金であり、環状内セグメント20は第3組成物Cの合金である。
【0027】
図2及び図3を参照すると、多合金タービンディスク10は、第1実施例に従って以下のように製造できる。中空の円筒体形態のディバイダ30を、ソリッドの、すなわち、中実(固体)のベース34を持つ円筒形容器32内に同心に配置する。これにより、容器32とディバイダ30との間に第1区画室36が形成され、円筒形ディバイダ30内に第2区画室38が形成される。
【0028】
次に図4を参照すると、第1組成物Aの第1合金粉体(第1合金粉末)40が第1区画室36内に配置され、第3組成物Cの第2合金粉体(第2合金粉末)42が第2区画室38内に配置される。ディバイダ30は、第1組成物A及び第3組成物Cと適合性がある(融和性がある)第2組成物Bの合金から形成されている。この実施例では、第2組成物Bは、第1組成物A及び第3組成物Cの混合物である。従って、第2組成物Bは、第1組成物A及び第3組成物Cと冶金学的に適合性がある。他の実施例では、第2組成物は、第1組成物A又は第3組成物Cと同じである。
【0029】
円筒形容器32の上に蓋を置く。円筒形容器32をガス抜きし、シールする。ディバイダ30をその場に置いた状態で(換言するとディバイダ30を取り外さずに)、非圧縮状態の第1合金粉体40及び第2合金粉体42を処理する。このプロセスにより、第1領域16、第2領域18、及び第3領域20を持つ中実(固体)の円柱状の構成部品を形成する。第1領域16、第2領域18、及び第3領域20は、夫々、第1組成物A、第2組成物B、及び第3組成物Cを有する。この実施例では、プロセスは、熱間等方圧加圧法(熱間静水圧圧縮成形(hot isostatic pressing))である。しかしながら、当業者には容易に理解されるように、缶封押出成形法(canned extrusion)又はこれらの技術の組み合わせ等のこの他の適当な加工技術を使用してもよい。次いで、前記ソリッドの、すなわち固体(中実)の構成部品を据込鍛造することにより、円柱状の構成部品の直径を増大すると同時にその長さを減少する。次いで、その構成部品に熱処理を加える。この熱処理工程は、例えば二微細構造(dual-microstructure)熱処理等の空間的に不定の熱処理であってもよい。第1環状外セグメント16、第2環状移行セグメント18、及び第3環状内セグメント20に様々な方法で熱処理を加えてもよい。
【0030】
最後に、所望のタービンディスク10を製造するため、前記固体(中実)の構成部品を機械加工し、中央穴12及びスロット14を形成する。
【0031】
図5を参照すると、この方法は、ブレード付きディスク(ブリスクとして既知である)の形成に使用できる。環状外領域16の第1組成物Aは、この外領域を機械加工することによりエーロホイル15を形成できるように選択される。エーロホイルの機械加工は、第1、第2、及び第3の組成物を処理した後に行われる。他の実施例では、ブレード付きリング(ブリング(bling))又はブレード付きドラム(ブラム(blum))を製造してもよい。
【0032】
図6A及び図6Bは、様々な組成物のディバイダ30を使用して製造したタービンディスク10の組成物をグラフで示す。図6Aでは、ディバイダ30の組成物Bは、第1粉体Aと同じである(換言すると、第1組成物A及び第2組成物Bは同じである)。図6Bでは、ディバイダ30の組成物Bは、第1組成物A及び第3組成物Cの混合物である。
【0033】
上述の実施例では、第1粉体40及び第2粉体42と、固体(中実)のディバイダ30とを使用すると説明したが、当業者には容易にわかるように、二つ又はそれ以上のディバイダを、三つ又はそれ以上の粉体(粉末)とともに使用してもよい。これにより、組成物の変化が漸進的な又は穏やかな構成部品が得られる。
【0034】
ディバイダ30の清浄性を確保することが重要である。これは、ディバイダを電解研磨することによって、又は他の適当な方法を使用することによって行うことができる。
【0035】
図7を参照すると、変形例の構成において、ディバイダ30は、使用時に第1粉体40及び第2粉体42内に突出して、ディバイダ30と粉体40、42との間に機械的固着を形成する突出部31を備えていてもよい。
【0036】
この方法により、ソルバス温度が異なる二つ又はそれ以上の合金粉体を組み合わせることができ、又は公称ソルバス温度が同じである異なる合金を組み合わせることができる。これらの粉体のうちの一つの粉体は、公称ソルバス温度が他の粉体と同じであるが、一つ又はそれ以上の特性を高めることができるように組成物が異なるように選択されてもよい。例えば、タービンディスク10のリム領域のクリープ特性を改善するため、第1環状外セグメント16に使用される第1合金粉体にレニウム(Re)が含有されていてもよい。この他の添加物には、ディスク10の選択された領域の特性を向上するため、金属元素/合金又は非金属混入物のいずれかが含まれていてもよい。
【0037】
使用された合金粉体は、従来と同じように処理されたニッケル基の粉体合金であってもよく、又は特定の特性を高めるように予備処理した改質粉体であってもよい。これには、従来の粉末冶金合金を、体積分率が比較的小さい(0.5%乃至25%)の別の合金と合金化した後、上述の技術を使用して、粉末冶金合金、ニッケル基合金、又はマイクロアロイ粉体と組み合わせるマイクロアロイ法が含まれる。
【0038】
ディバイダ30の材料は、熱処理時にミディ(midi)結晶粒度を発生する組成物を持つように選択されてもよい。例えば、従来の超ソルバス熱処理中に結晶粒成長を制限する追加の粒界ピン止めエレメントを含んでいてもよい。
【0039】
更に、この方法により、同じ合金組成物の様々な粉末の大きさ(粒度)の粉体を組み合わせることができる。例えば、非金属混入物の粒度を減少するため、内セグメント20で比較的微細な粉体を使用していてもよく、混入物の存在の重要度が低い外セグメント16で比較的粗い粉体(これは比較的安価である)を使用してもよい。
【0040】
更に、この方法は、比較的高強度で低温の粉体合金/マイクロアロイ粉体を、比較的高い温度に耐えることができる合金粉体と組み合わせることができる。
【0041】
上述の方法により、最終的な構成部品で粉体を選択的に位置決めできる。これにより、比較的高価な材料を、性能の向上が費用の増大を正当化できる選択された領域で使用できる。このような高価な材料を構成部品全体に亘って使用するのは不経済である。
【0042】
上述の方法は、スリップケース(即ちディバイダ)を取り外す必要がないため、従来周知の方法よりも簡単である。
【0043】
以上の実施例は、組成物が半径方向で変化するタービンディスクの製造を説明したが、この方法は、例えば、組成物が軸線方向で変化する円形以外の形状の構成部品の製造に使用してもよい。
【0044】
図8及び図9は、多組成構成部品を製造するための第2の変形例の製造方法を概略に示す。第1合金組成物Aの第1固体(中実)ブロック140を矩形容器132の第1端に配置し、第3合金組成物Cの第2固体(中実)ブロック142を矩形容器132の反対側の端部即ち第2端に配置する。第1ブロック140及び第2のブロック142は、区画室を形成するように互いから離間されている。第2組成物Bの合金粉体130が、区画室内に配置される。第1実施例と同様に、第2組成物Bは、第1組成物A及び第3組成物Cと適合性がある。この実施例では、第2組成物は、第1組成物A及び第3組成物Cの混合物である。従って、第2組成物は、第1組成物A及び第3組成物Cと冶金学的に適合性がある。
【0045】
第1実施例と同様に、次いで、第1ブロック140及び第2のブロック142が所定の場所に置かれた状態で、非圧縮状態の合金粉体130が処理される。このプロセスにより、第1組成物Aの領域、第2組成物Bの領域、及び第3組成物Cの領域の三つの領域を持つ、単一で中実(固体)の構成部品が形成される。この実施例では、プロセスは、熱間等方圧加圧法(熱間静水圧圧縮成形(hot isostatic pressing))である。
【0046】
図10及び図11は、多組成構成部品を製造するための第3の変形例の製造方法を概略に示す。第1合金組成物Aの環状固体(中実)ブロック240を提供し、第3合金組成物Cの円柱状固体(中実)ブロック242を、環状ブロック240の開口部内に環状ブロック240と同軸となるように配置する。環状ブロック240の開口部の直径は、円柱状ブロック242の外径よりも大きい。従って、環状ブロック240と円柱状ブロック242との間に環状粉体区画室があり、ここを第2組成物Bの粉体230で充填する。第1及び第2の実施例と同様に、第2組成物Bは、第1組成物A及び第3組成物Cと適合性がある。この実施例では、第2組成物Bは高温合金である。
【0047】
次いで、環状ブロック240及び円柱状ブロック242に拡散結合する処理を非圧縮状態の合金粉体230に加えた後、鍛造及び熱処理を加える。
【0048】
上述の方法を使用し、ビレット状構成部品又は近網状(near net-shape)構成部品を製造してもよい。
【0049】
第1組成物Aの合金と第3組成物Cの合金との間に第2組成物Bの合金を設けることによって、第1組成物Aの合金と第3組成物Cの合金との間の組成物差を小さくする。第2組成物Bは、この第2組成物Bのγ相組成物が、第1組成物Aのγ相組成物及び第3組成物Cのγ相組成物と同様であり、第2組成物Bの析出強化γ’相の体積分率が、第1組成物Aのγ’相の体積分率と第3組成物Cのγ’相の体積分率との間にあり、好ましくは中間にあるように構成されている。第1組成物Aと第2組成物Bとの間の界面の前後の組成物差と、第2組成物Bと第3組成物Cとの間の界面の前後の組成物差とを小さくするため、第1組成物A及び第3組成物Cのγ相の組成物は同様である。第1組成物Aと第2組成物Bとの間の界面の前後の残留応力及び第2組成物Bと第3組成物Cとの間の界面の前後の残留応力を小さくするため、第1組成物A、第2組成物B、及び第3組成物Cの熱膨張率と弾性率との間の差を小さくする。
【0050】
ハフニウムやジルコミウム等の炭素形成体及び酸素形成体のレベルを最小にすることによって、粉体界面と隣接した固体の又は固体界面と隣接した固体の強度及び歪許容度を最適化し、熱間等方圧加圧(HIP)中に、界面のところに前粒子境界(prior particle boundary)が形成する傾向を小さくする。前粒子境界は、熱間等方圧加圧(HIP)中に合金粉体粒子の酸素リッチ表面上に形成するMC炭化物のネットワークである。前粒子境界は、熱間等方圧加圧(HIP)プロセスを最適化することによって、チタニウム含有合金で最小にされる。本発明は、前粒子境界の形成を最小にするため、2段階熱間等方圧加圧(HIP)プロセスを使用する。熱間等方圧加圧(HIP)の第1段階は、850℃乃至1000℃の温度まで加熱し、この温度を維持し、4時間に亘って100MPaの圧力を加えることによって行われ、第1組成物Aの合金、第2組成物Bの合金、及び第3組成物Cの合金中でM23C6炭化物を析出する。第1組成物A、第2組成物B、及び第3組成物C中の炭素は、熱間等方圧加圧(HIP)の第1段階中に消費され、従って、第1組成物A及び第3組成物C中の粉体粒子の酸素リッチ表面上にMC炭化物を形成する上で利用可能な炭素は、第1組成物A、第2組成物B、及び第3組成物C中にほとんどない。次いで、組成物A、B、Cのうち、γ’相の体積分率が最も低い組成物のγ’ソルバス温度よりも50°C低い高温度まで加熱し、この温度に維持し、2時間に亘って100MPaの圧力を加えることによって、熱間等方圧加圧(HIP)の第2段階を行う。熱間等方圧加圧(HIP)の第2段階で使用される比較的高い温度により、M23C6炭化物は、第1組成物A、第2組成物B、及び第3組成物Cの溶体に取り込まれるが、粉体粒子境界のところに析出するMC炭化物が減少する。
【0051】
熱間等方圧加圧(HIP)後、組成物A、B、Cのうち、γ’相の体積分率が最も低い組成物のγ’ソルバス温度よりも50°C乃至100°C低い温度で、多組成構成部品の押出しを行ってもよい。押出し中の断面縮小率は、粒径が5μmよりも小さくなるように成分の再結晶が適切に行われるように定められる。押出プロセス中に押出成形した構成部品をビレットと呼んでもよい。ビレットを切断して幾つかのセグメントにし、各セグメントに等温鍛造を加えてもよい。組成物A、B、Cのうち、γ’相の体積分率が最も低い組成物のγ’ソルバス温度よりも50°C乃至100°C低い温度で、ビレットのセグメントに等温鍛造を加える。これは、超塑性加工を行うため、低い歪速度で、代表的には1×10−2/sよりも低い歪速度で行われる。
【0052】
第1組成物A及び第3組成物Cは、析出強化γ’相の体積分率が異なっていてもよい。機械的特性を最適化するため、様々な温度で溶体化処理を行う。ディスク10の場合には、環状内セグメント20の組成物Cのγ’相の体積分率は、環状外セグメント16の第1組成物Aのγ’相の体積分率よりも低く、第3組成物Cには、第1組成物Aよりも低い温度で熱処理が加えられる。かくして、溶体化処理中、多組成構成部品ディスク10に亘って半径方向に所定の熱勾配が加えられる。
【0053】
ディスク10の例として、第3組成物Cは、Cr(クロム)を15重量%、Co(コバルト)を18.5重量%、Mo(モリブデン)を5重量%、Al(アルミニウム)を3重量%、Ti(チタニウム)を3.6重量%、Ta(タンタル)を2重量%、Hf(ハフニウム)を0.5重量%、C(炭素)を0.027重量%、B(ホウ素)を0.02重量%、Zr(ジルコニウム)を0.06重量%、及び残りがNi(ニッケル)及び不定の不純物を含有するニッケル合金粉体である。第3組成物Cは、20℃で48容量%のγ’相を含む。γ相は、主として、Ni、Cr、Co、及びMoを含有する。γ’相は、主として、Ni、Al、Ti、及びTaを含有する。第1組成物A及び/又は第2組成物Bは、Crを12.3重量%、Coを16.5重量%、Moを4.1重量%、Alを3.6重量%、Tiを4.5重量%、Taを2.5重量%、Hfを0.2重量%、Cを0.15重量%、Bを0.02重量%、Zrを0.06重量%、及び残りがNi及び不定の不純物を含有するニッケル合金粉体又はニッケル合金固体である。第1及び/又は第2の組成物A及びBは、20°Cで48容量%のγ’相を含む。γ相は、主として、Ni、Cr、Co、及びMoを含有する。γ’相は、主として、Ni、Al、Ti、及びTaを含有する。第1組成物A及び/又は第2組成物B中のγ’相の容量%が高いと、高温強度及びクリープ歪の蓄積に対する抵抗が第3組成物Cと比較して高くなる。
【0054】
ディバイダ30は第2組成物Bを有し、ディバイダ30はシート状の金属や合金から形成されていてもよい。シート状の金属を丸めて円筒体を形成し、これらの円筒体の端部を互いに溶接する。別の態様では、ディバイダ30は、金属、合金、又は粉体を熱間で圧縮することによって、又は金属や合金に熱間等方圧加圧を加えることによってリングとして形成されていてもよく、又は金属、合金、又は粉体を熱間で圧縮することによって、又は金属や合金に熱間等方圧加圧を加えることによって、及び圧縮した金属粉体に機械加工を加えることによってリングに形成されていてもよい。別の態様は、固体の金属や合金からリングを機械加工によって形成する。第1組成物Aと第3組成物Cとの間に第2組成物Bのディバイダ30を一つしか示してないが、第1組成物Aと第3組成物Cとの間に多数の同心のディバイダを設けることができる。これは、第1組成物Aと第3組成物Cとの間での組成物の変化勾配が更に細かな変化になるように、これらの複数のディバイダの各々の組成物が異なるように行われる。
【0055】
図10及び図11では、第1合金組成物Aの環状固体ブロック240は、金属、合金、粉体(粉末)の熱間圧縮によって、又は、金属、合金の熱間等方圧加圧によってリングとして形成されてもよく、又は、金属、合金、粉体の熱間圧縮によって、又は金属、合金の熱間等方圧加圧によって、及び圧縮した金属粉体に機械加工を加えることによってリングに形成されてもよい。同様に第3合金組成物Cの円柱状形固体ブロック242は、金属、合金、粉体の熱間圧縮によって、又は、金属、合金の熱間等方圧加圧によって円柱状体として形成されてもよく、又は、金属、合金、粉体の熱間圧縮によって、又は金属、合金の熱間等方圧加圧によって、及び圧縮した金属粉体に機械加工により円柱状体にすることによって形成されてもよい。
【0056】
別の実施例では、ここでも図10及び図11を参照するが、第3合金組成物Cの円柱状形固体ブロック242を提供する。第2合金組成物Bの層230を、円柱状形固体ブロック242の外環状面に、任意の適当なコーティング技術によって、例えば溶射によって、適当な厚さまで、例えば1mm乃至2mmの厚さまで適用する。層230が設けられた円柱状形固体ブロック242を、固体ベースを持つ円筒形容器内に置く。これは、層230と円筒形容器との間に環状区画室が形成されるように行われる。第1組成物Aの合金粉体を環状区画室に入れ、蓋を円筒形容器の上に置く。円筒形容器をガス抜きし、シールし、熱間等方圧加圧(HIP)を行う。円筒形容器を、多組成構成部品から、機械加工によって及び/又は酸を使用して取り外し、次いで、上文中に説明したように、多組成構成部品の押出成形、等温鍛造、及び熱処理を行う。
【0057】
別の実施例では、ここでも図10及び図11を参照するが、第1合金組成物Aで形成された環状固体ブロック(環状でソリッドなブロック)240を提供する。第2合金組成物Bの層230を環状固体ブロック240の内環状面に、任意の適当なコーティング技術によって、例えば溶射によって、適当な厚さまで、例えば1mm乃至2mmの厚さまで適用する。層230が設けられた環状固体ブロック240を、固体ベースを持つ円筒形容器内に置く。これは、層230内に円筒形区画室が半径方向に形成されるように行われる。第3組成物Cの合金粉体242を円筒形区画室内に入れ、蓋を円筒形容器の上に置く。円筒形容器をガス抜きし、シールし、熱間等方圧加圧(HIP)を行う。円筒形容器を、多組成構成部品から、機械加工によって及び/又は酸を使用して取り外し、次いで、上文中に説明したように、多組成構成部品の押出成形、等温鍛造、及び熱処理を行う。
【0058】
上述の実施例のうちの任意の実施例の容器は、ステンレス鋼製であってもよい。
【0059】
本発明を多組成ディスクの製造を参照して説明したが、他の多組成構成部品の製造にも適している。本発明は、例えばガスタービンエンジンや蒸気タービン等のターボ機械用のケーシングの製造に適している。こうしたケーシングでは、ケーシングの組成物がケーシングに沿った軸線方向位置で異なり、合金が耐熱性(temperature capability)の順でガスタービンエンジンの温度が高くなる部分と次々に軸線方向で整合するように配置されている。例えば、ガスタービンエンジンケーシングは、軸線方向に直列に配置された、ワスパロイ(Waspaloy)(RTM)、IN718(RTM)、ウディメット(Udimet)720Li(RTM)、及びPE16(RTM)製の構成部分を含んでいてもよい。ワスパロイ及びIN718は、ガスタービンエンジンの燃焼器と軸線方向で整合し、ウディメット720Li及びPE16は、ガスタービンエンジンのタービンと軸線方向で整合する。ワスパロイは、Crを19重量%、Coを13重量%、Moを4重量%、Tiを3重量%、Alを1.4重量%、及び残りがNi及び微量の添加物及び不定の不純物を含有する。IN718は、Niを52.5重量%、Crを19重量%、Coを1重量%、Moを3重量%、Nb(ニオブ)を5.1重量%、Alを0.9重量%、及び残りがFe及び微量の添加物及び不定の不純物を含有する。ウディメット720Liは、Crを16重量%、Coを15重量%、Moを3重量%、W(タングステン)を1.25重量%、Alを2.5重量%、Tiを5重量%、及び残りがNi及び微量の添加物及び不定の不純物を含有する。PE16は、Ni及びCoを43重量%、Crを16.5重量%、Moを3.3、Alを1.2重量%、Tiを1.2重量%、及び残りがNi及び微量の添加物及び不定の不純物を含有する。
【0060】
本発明は、更に、第1、第2、及び第3の構成部分が粉体を含む多組成構成部品の製造にも適用できる。
【0061】
第1、第2、及び第3の構成部分の金属、合金は、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金、又はチタニウム合金を含んでいてもよい。
【0062】
最後に、金属製の構成部品を製造するための方法を上文中に説明したが、非金属構成部品を製造するため、セラミック等の任意の他の種類の粉体を使用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 ガスタービンエンジン用多合金タービンディスク
12 中央穴
14 スロット
15 エーロホイル
16 第1環状外セグメント
18 第2環状移行セグメント
20 第3環状内セグメント
30 ディバイダ
32 円筒形容器
34 ベース
36 第1区画室
38 第2区画室
40 第1合金粉体
42 第2合金粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多組成構成部品の製造方法において、
第1組成物の第1構成部分、第2組成物の第2構成部分、及び第3組成物の第3構成部分を、前記第1構成部分が前記第2構成部分と第1境界を共有し、前記第2構成部分が前記第3構成部分と第2境界を共有するように配置する、前記第1構成部分、第2構成部分、及び第3構成部分が、各々、粉体又は固体である工程と、
第1組成物の第1領域、第2組成物の第2領域、及び第3組成物の第3領域を持つ単一の固体構成部品を形成するように処理を行う工程とを含み、
前記処理は、熱間等方圧加圧工程及び/又は拡散結合工程を含み、
前記熱間等方圧加圧工程及び/又は拡散結合工程は、
第1の所定時間に亘って第1温度で熱間等方圧加圧を行う工程と、
第2の所定時間に亘って第2温度で熱間等方圧加圧を行う工程とを含み、前記第1温度は前記第2温度よりも低い、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記熱間等方圧加圧工程は、
850℃乃至1000℃の第1温度で100MPaの圧力を加えながら4時間に亘って熱間等方圧加圧を行う工程と、
γ’相の体積分率が最も低い組成物のγ’ソルバス温度よりも50°C低い第2温度で100MPaの圧力を加えながら2時間に亘って熱間等方圧加圧を行う工程を含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記第1境界及び第2境界のうちの少なくとも一方が、粉体と隣接した固体である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記第1境界及び第2境界は、各々、粉体と隣接した固体である、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1及び/又は第2の境界は環状である、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1構成部分及び第3構成部分は粉体であり、前記第2構成部分は固体である、方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1構成部分及び第3構成部分は固体であり、前記第2構成部分は粉体である、方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1構成部分及び第2構成部分が粉体であり、前記第3構成部分が固体であり、又は、前記第1構成部分及び第2構成部分が固体であり、前記第3構成部分が粉体である、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第2組成物のγ相組成物は、前記第1組成物のγ相組成物及び前記第3組成物のγ相組成物と同様であり、
前記第2組成物の析出強化γ’相の体積分率は、前記第1組成物のγ’相の体積分率と前記第3組成物のγ’相の体積分率との間である、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第2組成物は、前記第1組成物及び前記第3組成物の混合物である、方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第2組成物は、前記第1組成物又は前記第3組成物と同じである、方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第2組成物は、前記第1組成物又は前記第3組成物中に存在する元素と同じ純元素である、方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1、第2、及び第3の構成部分は金属合金である、方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記第1及び/又は第2の境界は、固体と粉体との間の機械的固着を含む、方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記構成部品(10)は、タービンディスク、コンプレッサディスク又はファンディスク、ブレード付きディスク、ブレード付きリング、ブレード付きドラム、又はケーシングである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−137220(P2011−137220A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−259971(P2010−259971)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】