説明

多結晶ダイヤモンド複合成形体

基材130と、該基材130に結合したPCD構造体120と、該PCD構造体120を該基材130に結合させる結合層140の形態の結合材料と、を含んでなる多結晶ダイヤモンド(PCD)複合成形体部材100であって、該PCD構造体120は熱的に安定であり、少なくとも約800GPaの平均ヤング率を有し、該PCD構造体120は、少なくとも約0.05ミクロンで多くとも約1.5ミクロンの隙間平均自由行程を有し、該平均自由行程の標準偏差は、少なくとも約0.05ミクロンで多くとも約1.5ミクロンである。該PCD複合成形体部材の実施形態は、切断、フライス削り、粉砕、掘削、地面穿孔、削岩、または金属の切断および機械加工のような他の研磨用途用の手段であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCD構造体を含んでなる多結晶ダイヤモンド(PCD)複合成形体部材に関し、限定されるわけではないが、特に削岩手段用の、該部材を含んでなる手段に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶ダイヤモンド(PCD)は超硬質体であり、相互成長したダイヤモンド砥粒の塊とダイヤモンド砥粒間の隙間を含んでなる超研磨材料としても知られている。PCDは、ダイヤモンド砥粒の凝集塊を超高の圧力と温度に供することにより製造してもよい。該隙間を全体的または部分的に充填する材料を充填材料と称してもよい。PCDはコバルト等の焼結助剤の存在下で形成させてもよく、これはダイヤモンド砥粒の相互成長を促進できる。該焼結助剤は、ダイヤモンドをある程度溶解し、その再沈殿を触媒する機能のために、ダイヤモンド用の溶媒/触媒材料と称してもよい。ダイヤモンド用の溶媒/触媒は、ダイヤモンドが熱力学的に安定な圧力および温度条件で、ダイヤモンドの成長、またはダイヤモンド砥粒間の直接的なダイヤモンド−ダイヤモンド相互成長を促進できる材料と理解される。結果として、焼結したPCD生成物中の隙間は、残留した溶媒/触媒材料で全体的または部分的に充填されてもよい。PCDはコバルト焼結炭化タングステン基材上に形成させてもよく、これはPCD用のコバルト溶媒/触媒の原料を提供し得る。
【0003】
PCDは、岩、金属、セラミックス、複合材、および木材含有材料等の硬質または研磨性の材料を切断し、機械加工し、掘削し、または分解するための種々様々な手段において使用してもよい。例えば、PCD部材は、石油およびガスの掘削産業において地面穿孔用に使用されるドリルビットの切断部材として使用してもよい。上記用途の多くでは、PCD材料を岩石層、岩製品、または岩体に高エネルギーで使用すると、PCD材料の温度が高くなる場合がある。残念ながら、残留溶媒/触媒材料がPCD中に分散した結果に大きく依存して、硬度および強度等のPCDの機械的特性は高温では低下する傾向がある。
【0004】
PCT特許公開公報第9929465号には、硬岩を掘削し、井戸掘削の高い温度勾配に対処することは、掘削産業の永続的な問題であったことが論じられている。次に、現在最先端のTSPダイヤモンド切断機取付操作は、熱的に安定な多結晶ダイヤモンド(TSPダイヤモンド)をカーバイド基材にろう付けすることである。しかし、TiCuSil合金を用いたTSPろう付け法は、TSPダイヤモンド表面に隣接するTiCの望ましくない不連続層をもたらす結果となる。反応生成物の薄い連続層がTSP表面上に形成されない限り(即ち湿潤が完了しない限り)、最大の強度特性は実現されない。
【0005】
米国特許第7,377,341号には、溶媒触媒材料が実質的に存在しないPCD本体は、ろう付けまたは他の類似する結合操作による金属性基材へのその後の取付けが妨げられることが論じられている。このような基材のPCD本体への取付けについては、多くの望ましい用途での使用に容易に適合できるPCD成形体部材を提供することが大変望ましい。しかし、熱的に安定なPCD本体を従来使用された基材に結合させることは非常に困難である。従来形成された熱的に安定なPCD本体には金属性基材がないため、従来のろう付けプロセスではドリルビットに取り付けることはできない。むしろ、掘削用途においてこのような熱的に安定なPCD本体を使用するには、ドリルビットの製造過程でPCD本体自体を機械的にまたは締りばめを用いてドリルビットに取り付ける必要があり、このことは大きな労働力を要し、時間の浪費であり、最も確実な取り付け方法を提供するものではない。
【0006】
米国特許第7,435,377号には、多結晶ダイヤモンド(PCD)および他の超硬材料をろう付けにより支持体に接合させてもよいことが論じられている。しかし、ろう付けの不利益はPCD生成物が熱損傷を受ける可能性についての懸念に関連し、このことは過去には制限要因であった。
【0007】
米国特許第7,487,849号には、TSP(熱的に安定な生成物)はダイヤモンド層からコバルトを除去して製造されるため、PCDの基材への取り付けに比べ、TSPの基材への取り付けは著しく複雑であることが論じられている。
【0008】
米国特許第7,533,740号には、ろう付けにより炭化タングステン基材に結合したTSP材料を含んでなる切断部材が開示されている(この特許では、部分的にも完全にも浸出した多結晶ダイヤモンド化合物を包含する「熱的に安定な生成物」の意味で「TSP」なる用語を使用している米国特許第7,234,550号および第7,426,696号に記載されるように、「TSP」なる用語が使用されている)。
【0009】
米国特許公開公報第2008/0085407号には超研磨成形体部材が開示されており、ここでは炭化タングステン層を包含する超研磨性部分がろう付けされ、はんだ付けされ、溶接され(摩擦溶接または慣性溶接を包含する)、または別の方法で基材に固定されている。
【0010】
優れた機械的特性を有するPCD複合成形体部材、特に熱的に安定なPCD部材に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明のある態様は、基材と、該基材に結合したPCD構造体と、該PCD構造体を該基材に結合させる結合材料と、を含んでなる多結晶ダイヤモンド(PCD)複合成形体部材であって、該PCD構造体は、熱的に安定であり、少なくとも約800GPa、少なくとも約850GPa、または少なくとも870GPaの平均ヤング率を有し、該PCD構造体は、少なくとも約0.05ミクロンで多くとも約1.5ミクロンの隙間平均自由行程を有し、該平均自由行程の標準偏差は少なくとも約0.05ミクロンで多くとも約1.5ミクロンであるPCD複合成形体部材、を提供する。
【0012】
本発明のある実施形態は、結合材料により基材に結合したPCD構造体を含んでなるPCD複合成形体部材であって、該PCD構造体は、熱的に安定であり、少なくとも約800GPa、少なくとも約850GPa、または少なくとも870GPaの平均ヤング率と、約60パーセントより高いか、または60.5パーセントより高い平均ダイヤモンド砥粒近接度(mean diamond grain contiguity)を有するPCD複合成形体部材、を提供する。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、該結合材料は、セラミック材料を接合するためのエポキシ材料を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体は、該基材にろう付けされていてもよく、該結合材料は、PCD構造体と基材との間のろう付け用層の形態のろう付け用合金である。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、該ろう付け用合金は、多くとも摂氏約1,050度、多くとも摂氏約950度、多くとも摂氏約900度、または多くとも摂氏約850度でさえある、合金が溶融を開始する溶融開始温度を有していてもよく、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびReからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、TiおよびAg、またはTiおよびCuを含有していてもよい。
【0016】
本発明のある態様は、ろう付け材料を含んでなるろう付け用層により基材に結合したPCD構造体を含んでなるPCD複合成形体部材であって、該PCD構造体は熱的に安定であり、ろう付け材料を含有してなるPCD複合成形体部材、を提供する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、該PCD構造体の境界で形成された細孔、割れ目もしくは不規則面の内部にろう付け用合金材料を含有していてもよい。1つの実施形態では、酸処理等によりダイヤモンド砥粒間から充填材料を除去することにより、PCD構造体の境界で細孔、割れ目または不規則面を形成してもよい。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも約800GPa、少なくとも約850GPa、または少なくとも870GPaの平均ヤング率を有していてもよい。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体は、該ろう付け用層または該基材との接合部分のような、接合部分または境界から少なくとも約2ミクロンの深さまでろう付け用合金材料を含有していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、該ろう付け用層との接合部分からの深さが、約2ミクロン〜約1,000ミクロンの範囲、約2ミクロン〜約25ミクロンの範囲、または約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の深さまでろう付け材料を含有していてもよい。1つの実施形態では、該PCD構造体は、実質的に該PCD構造体全体にわたりろう付け材料を含有していてもよい。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、約0.05ミクロン〜約1.3ミクロンの範囲、約0.1ミクロン〜約1ミクロンの範囲、または約0.5ミクロン〜約1ミクロンの範囲の隙間平均自由行程を有し、該平均自由行程の標準偏差は、約0.05ミクロン〜約1.5ミクロンの範囲、または約0.2ミクロン〜約1ミクロンの範囲であってもよい。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも約60パーセント、60.5パーセント〜約80パーセントの範囲、60.5パーセント〜約77パーセントの範囲、または61.5パーセント〜約77パーセントの範囲の平均ダイヤモンド砥粒近接度を有していてもよい。本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体は、多くとも約80パーセントの平均ダイヤモンド砥粒近接度を有していてもよい。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも約900MPa、少なくとも約950MPa、少なくとも約1,000MPa、少なくとも約1,050MPa、または少なくとも約1,100MPaでさえある抗折力を有していてもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、該基材は、コバルト焼結炭化タングステン等の超硬合金で形成されていてもよく、または該基材はPCD材料を含んでいてもよく、または該基材は、超硬合金およびPCD材料を含んでなる複合成形体部材であってもよい。本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体は、更なるPCD構造体にろう付けされていてもよく、1つの実施形態では、該PCD構造体は、該更なるPCD構造体よりも熱的に安定であってもよい。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、該基材は、その中に分散したダイヤモンド粒子等の超硬粒子を包含していてもよい。1つの実施形態では、該基材はダイヤモンド粒子を包含していてもよく、その含有量は約20体積パーセント〜約60体積パーセントの範囲であってもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、摂氏約400度を超える温度、または摂氏約750度〜摂氏約800度の範囲の温度、または摂氏約760度〜摂氏約810度の範囲でさえある温度下に暴露した後でも、実質的に構造劣化または硬度もしくは耐摩耗性の低下を示さない場合がある。
【0026】
1つの実施形態では、該PCD構造体は、ダイヤモンド用の溶媒/触媒として機能し得る材料を実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、該PCD構造体中に、ダイヤモンド用の溶媒/触媒が約5体積パーセント未満、約2体積パーセント未満、約1体積パーセント未満、または約0.5体積パーセント未満存在していてもよい。いくつかの実施形態では、該PCD構造体は少なくとも部分的に多孔性であってもよく、または実質的にPCD構造体の全体が多孔性であってもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも摂氏約800度、少なくとも摂氏約900度、または少なくとも摂氏約950度でさえある酸化開始温度を有していてもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、実質的に全体が多孔性でなくてもよく、少なくとも約900GPa、少なくとも約950GPa、少なくとも約1,000GPaの平均ヤング率を有していてもよく、抗折力は、少なくとも約1,000MPa、少なくとも約1,100MPa、少なくとも約1,400MPa、少なくとも約1,500MPa、または少なくとも約1,600MPaでさえある。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、PCD構造体は、一般式:MxM’yCzの三元カーバイドを含んでなる充填材料を包含していてもよく、式中、Mは、遷移金属および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であり、M’は、典型金属または半金属元素および遷移金属ZnおよびCdからなる群から選択される金属であり、xは2.5〜5.0であり、yは0.5〜3.0であり、zは0.1〜1.2である。
【0030】
いくつかの実施形態では、該PCD構造体は、ダイヤモンド用の金属性溶媒/触媒を用いて形成されたスズ系の金属間または三元カーバイド化合物を含んでなる充填材料を包含していてもよい。1つの実施形態では、ダイヤモンド用の金属性溶媒/触媒材料はコバルトを含んでいてもよい。
【0031】
本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体と該基材との間の結合の剪断強度は、約100MPaを超えていてもよい。いくつかの実施形態では、該PCD構造体と該基材との間の結合の剪断強度は、約100MPa〜約500MPaの範囲、約100MPa〜約300MPaの範囲、または約200MPa〜約300MPaの範囲であってもよい。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、約0.1ミクロン〜25ミクロンの範囲、約0.1ミクロン〜20ミクロンの範囲、約0.1ミクロン〜約15ミクロンの範囲、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲、または約0.1ミクロン〜約7ミクロンの範囲の平均サイズを有する相互結合したダイヤモンド砥粒を少なくとも約90体積パーセント含んでいてもよい。1つの実施形態では、該PCD構造体は、該PCD構造体の約90〜約99体積パーセントの範囲の量のダイヤモンドを含んでいてもよく、1つの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも92体積パーセントのダイヤモンドを含んでいてもよい。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、該PCD構造体は、多様な粒度分布を有するダイヤモンド砥粒を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、該PCD構造体は、少なくとも約50パーセントの砥粒が約5ミクロンを超える平均サイズを有し、少なくとも約20パーセントの砥粒が約10〜約15ミクロンの範囲の平均サイズを有するという粒度分布特性を有する結合ダイヤモンド砥粒を含んでいてもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は、複数のダイヤモンド砥粒を凝集塊に形成し、ダイヤモンド用の溶媒/触媒材料の存在下でこれを焼結させることを包含する方法により製造してもよく、該焼結は、該凝集塊と該溶媒/触媒材料を溶媒/触媒が溶融するのに十分高い温度と、6.0GPaを超える圧力、少なくとも6.2GPa、少なくとも約6.5GPa、少なくとも約7GPaまたは少なくとも約8GPaに供することを包含する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、該PCD構造体は少なくとも2つの部分を含んでいてもよく、各部分は、様々な微細構造、組成もしくはダイヤモンド粒径分布、またはこれらの組み合わせ、および強度もしくはヤング率等の様々な特性を有するPCD材料から形成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの部分は、約5ミクロン〜約20ミクロンの範囲、または約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の平均粒径の多様な粒度分布を有するダイヤモンド粒子を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、該PCD複合成形体部材は、石油およびガス掘削産業で使用するための回転式剪断−切断ビット等の地面穿孔用のドリルビットに適していてもよい。1つの実施形態では、該PCD複合成形体部材は、ローリングコーン、拡掘手段、拡張手段、リーマーまたは他の地面穿孔用手段のための切断部材を含んでいてもよい。
【0037】
本発明のある態様は、基材に結合したPCD構造体を含んでなる多結晶ダイヤモンド(PCD)複合成形体部材を提供し、該PCD構造体は、ダイヤモンド用の溶媒/触媒として機能し得る材料を実質的に含まず、少なくとも約800GPa、少なくとも約850GPa、または少なくとも約870GPaの平均ヤング率を有する。
【0038】
本発明のある態様は、本発明によるPCD複合成形体部材のある実施形態を含んでなる手段を提供し、該手段は、切断、フライス削り、粉砕、掘削、地面穿孔、削岩のため、または金属の切断および機械加工のような他の研磨用途のためのものである。
【0039】
本発明によるPCD複合成形体部材のある実施形態の製造方法を提供するが、該方法は、PCD構造体を準備する工程と、該PCD構造体を処理してダイヤモンド砥粒間から充填材料を除去し、該PCD構造体の境界において細孔、割れ目、または不規則面を作成する工程と、該境界において該PCD構造体を基材にろう付けする工程と、を包含する。該方法は本発明のある態様である。
【0040】
該方法の1つの変法では、細孔、割れ目もしくは不規則面は、該PCD構造体を酸で処理する手段により該PCD構造体の表面上に形成してもよい。1つの実施形態では、該細孔、割れ目または不規則面は、ダイヤモンド砥粒間の隙間の平均サイズと実質的に同じ平均サイズを有していてもよく、いくつかの実施形態では、該平均サイズは、少なくとも約2ミクロンまたは少なくとも約5ミクロンであってよく、多くとも約10ミクロンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
次のような添付図面を参照して、限定されない実施形態を以下に説明する:
【0042】
【図1A】図1Aは、PCD複合成形体部材のある実施形態の模式的な斜視図を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aに示したPCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図を示す。
【図2】図2は、PCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図の図面を示す。
【図3】図3は、PCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図の図面を示す。
【図4】図4は、PCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図の図面を示す。
【図5】図5は、PCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図の図面を示す。
【図6】図6は、PCD複合成形体部材の実施形態の模式的な縦方向断面図の図面を示す。
【図7】図7は、地面穿孔用の回転式ドリルビットの斜視図を示す。
【図8】図8は、PCDの研磨切断面(polished section)の画像を示し、ダイヤモンド−ダイヤモンド接触を示す計算線を示す。
【図9】図9は、例えば、多結晶ダイヤモンド構造体の実施形態におけるダイヤモンド砥粒の多様な粒度分布についての粒子数対粒径のグラフを示す。
【図10】図10は、例えば、多結晶ダイヤモンド構造体の実施形態におけるダイヤモンド砥粒の多様な粒度分布についての粒子数対粒径のグラフを示す。
【図11】図11は、例えば、多結晶ダイヤモンド構造体の実施形態におけるダイヤモンド砥粒の多様な粒度分布についての粒子数対粒径のグラフを示す。
【図12】図12は、検体の抗折力を測定する装置の模式的な側面図を示す。 同じ参照番号は、全ての図面中で同じ特徴を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書中で使用する、「ダイヤモンド用の溶媒/触媒」とも称される「ダイヤモンド用の触媒材料」とは、ダイヤモンドが熱力学的に安定な圧力と温度において、ダイヤモンド砥粒の核形成、成長または相互結合を促進し得る材料である。ダイヤモンド用の触媒材料は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガンおよびこれらの合金等の金属性または非金属性であってもよい。
【0044】
本明細書中で使用する、「多結晶ダイヤモンド」(PCD)材料は、ダイヤモンド砥粒の塊(mass)を含んでなり、その実質的な部分は直接互いに相互結合しており、その中のダイヤモンド含有量は、材料の少なくとも約80体積パーセントである。PCD材料の1つの実施形態では、ダイヤモンド砥粒間の隙間は、ダイヤモンド用の触媒を含んでなるバインダー材料で少なくとも部分的に充填されていてもよい。本明細書中で使用する、「隙間」または「隙間領域」は、PCD材料のダイヤモンド砥粒間の領域である。PCD材料の実施形態では、隙間または隙間領域は、ダイヤモンド以外の材料で実質的にもしくは部分的に充填されていてもよく、または実質的に空であってもよい。本明細書中で使用する、「充填」材料は、多結晶構造体のような構造体内の細孔、隙間または隙間領域を全体的もしくは部分的に充たす材料である。PCD材料の熱的に安定な実施形態は、隙間から触媒材料が除去された領域を少なくとも含んでなり、ダイヤモンド砥粒間に隙間空洞を残してもよい。本明細書中で使用する、「熱的に安定なPCD」構造体は、その少なくとも一部は、摂氏約400度を超える温度に暴露した後も、構造劣化または硬度もしくは耐摩耗性の低下を実質的に示さないPCD構造体である。
【0045】
図1Aおよび図1Bを参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、PCD構造体120と基材130との間の結合層140の形態の結合材料により、基材130に結合した熱的に安定なPCD構造体120を含んでいてもよい。該実施形態の1つの変法では、PCD構造体120は、ダイヤモンド用の溶媒/触媒として機能し得る材料を実質的に含まなくてもよい。該実施形態の別の変法では、該PCD構造体120は、ダイヤモンド用の非金属性溶媒/触媒を包含していてもよい。
【0046】
図2を参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、第一のPCD構造体122と第二のPCD構造体124との間の結合層140の形態の結合材料により、第二のPCD構造体124に結合した第一のPCD構造体122を含んでいてもよい。該第一のPCD構造体122は、第二のPCD構造体124よりも熱的に安定であってもよい。該第二のPCD構造体124は、超硬合金基材130に完全に結合していてもよい。
【0047】
図3を参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、第一のPCD構造体122と第二のPCD構造体124との間の結合層140の形態の結合材料により、第二のPCD構造体124に結合した第一のPCD構造体122を含んでいてもよい。第二のPCD構造体124は、第二のPCD構造体124と基材140との間の結合層142の形態の結合材料により結合していてもよい。
【0048】
図4を参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、第一のPCD構造体122と第二のPCD構造体124との間の結合層140の形態の結合材料により、第二のPCD構造体124に結合した第一のPCD構造体122を含んでいてもよい。第二のPCD構造体124は、超硬合金基材に結合していなくてもよく、または別法により超硬合金基材に接合していてもよい。
【0049】
図5を参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、結合層140の形態の結合材料により基材130に結合したPCD構造体120を含んでいてもよく、基材130は、その中に分散したダイヤモンド粒子132を包含していてもよい。
【0050】
「ヤング率」は弾性率の一種であり、材料が弾力的に挙動する応力の範囲内における、一軸応力に応答する一軸性歪みの尺度である。ヤング率Eを測定する好ましい方法は、式E=2ρ.C(1+υ)に従い、材料を通過する音速の横方向と縦方向の分力を測定することによるものであり、式中υ=(1−2(C/C)/(2−2(C/C)であり、CとCは、それぞれ材料を通過する測定された縦方向と横方向の音速であり、ρは材料の密度である。縦方向と横方向の音速は、当該技術分野で周知であるように超音波を用いて測定してもよい。材料が異なる材料の複合物である場合には、平均ヤング率は、3つの式、即ち、以下のような調和的(harmonic)、幾何学的(geometric)および複合則の式:E=1/(f/E+f/E));E=Ef1+Ef2;およびE=f+fのうちの1つにより評価してもよく、ここで該異なる材料は、fとfというそれぞれの体積分率を有する2つの部分に分割され、合計で1となる。
【0051】
図6を参照すると、PCD複合成形体部材100のある実施形態は、結合層140の形態の結合材料により超硬合金基材130に結合したPCD構造体120を含んでいてもよく、ここでPCD構造体120は第二の部分124と一体的に形成された第一の部分122を含んでいてもよく、第一の部分と第二の部分は、異なる微細構造、組成もしくはダイヤモンド粒径分布、またはこれらの組合せ、および強度もしくはヤング率等の異なる特性を有していてもよい。
【0052】
図1A、図1B、図2、図3、図4、図5および図6を参照して説明される実施形態では、該結合材料は、ろう付け用合金材料を含むかまたはろう付け用合金材料からなっていてもよく、該結合層140はろう付け用層であってもよい。1つの実施形態では、該結合材料はセラミック材料を結合または接合するためのエポキシ材料を含むかまたはこのエポキシ材料からなっていてもよい。
【0053】
図7を参照すると、本発明の地面穿孔用回転式ドリルビット200のある実施形態は、例えば、図1を参照して本明細書中で既に説明した複数の切断部材100を包含する。この地面穿孔用回転式ドリルビット200は、ドリルビット200をドリルストリング(示されていない)に取り付けるために、ネジ接続部分206(例えば、米国石油協会(API)が公表したもの等の工業規格に従うネジ接続部分206)を備えた軸部(shank)204に固定されたビット本体202を包含する。ビット本体202は、粒子−マトリックス複合材料または鋼等の金属合金を含んでいてもよい。ビット本体202は、それらの間の接合部分で1以上のネジ接続部、溶接部およびろう付け用合金により軸部204に固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、ビット本体202は、当該技術分野で公知であるように、それらの間の地金板(metal blank)または拡張部分により軸部204に間接的に固定されていてもよい。
【0054】
ビット本体202は、ビット本体202の表面203と縦方向ボア(示されていない)との間に伸びる内部流体通路(示されていない)を包含していてもよく、これは軸部204と拡張部208に伸びており、部分的にビット本体202に伸びている。ノズル挿入部224は、該内部流体通路内においてビット本体202の表面203に設けられていてもよい。ビット本体202は、ジャンクスロット(junk slot)218で隔てられた複数の刃216を更に包含していてもよい。いくつかの実施形態では、ビット本体202はゲージ摩耗プラグ222と摩耗ノット228を包含していてもよい。本明細書中で既に説明した1以上の実施形態の複数のPDC切断部材100は、刃216の各々に沿って位置する切断部材ポケット212内の、ビット本体202の表面203上に取り付けてもよい。別の実施形態では、図1、図2、図3、図4、図5、図6を参照して既に説明したPDC切断部材100、または本発明のPDC切断部材の任意の他の実施形態は、切断部材ポケット212内に設置してもよい。
【0055】
切断部材100は、ドリルビット200が掘削孔内でビット荷重(WOB)下で中心線L200の周りを回転する間に掘削される地下層を切断するよう設置される。
【0056】
特に超硬合金材料に適用されるような定量的立体画法の分野では、「近接度(contiguity)」は、相間接触の定量的尺度であると理解されている。これは、実質的に二相の微細構造内において同じ相の砥粒が共有する相の内部表面積として定義される(Underwood, E. E, "Quantitative Stereography", Addison-Wesley, Reading MA 1970; German, R. M. "The Contiguity of Liquid Phase Sintered Microstructures", Metallurgical Transactions A, Vol. 16A, July 1985, pp. 1247-1252)。本明細書中で使用する「ダイヤモンド砥粒近接度」κは、PCD材料内のダイヤモンド−ダイヤモンド接触もしくは結合、または接触と結合の組み合わせの尺度であり、PCD材料の研磨切断面の画像分析から得られたデータを用いて、次式に従い計算される:
【0057】
κ=100[2(δ−β)]/[(2(δ−β))+δ]、式中、δはダイヤモンド周囲長であり、βはバインダー周囲長である。
【0058】
本明細書中で使用する、「ダイヤモンド周囲長」とは、他のダイヤモンド砥粒と接触しているダイヤモンド砥粒表面の割合である。これは、所定の体積に対し、ダイヤモンド砥粒の全表面積で除したダイヤモンド−ダイヤモンドの全接触面積として測定される。該バインダー周囲長とは、他のダイヤモンド砥粒と接触していないダイヤモンド砥粒表面の割合である。実際には、近接度の測定は、研磨切断面の表面の画像分析により実施される。分析した切断面内のダイヤモンドとダイヤモンドの全界面に位置する全てのポイントを通過するラインの連結長を合計してダイヤモンド周囲長を決定し、バインダー周囲長についても同様にする。
【0059】
図8は、PCD構造体の研磨切断面のSEM処理画像の例を示し、ダイヤモンド砥粒320間の境界360が示されている。これらの境界線360は画像分析ソフトウェアにより計算され、ダイヤモンド周囲長を測定し、その後ダイヤモンド砥粒近接度を計算するために使用された。非ダイヤモンド領域340は、充填された隙間または空洞であってもよく、例えば濃い範囲として示される。バインダー周囲長は、ダイヤモンド320と非ダイヤモンドまたは隙間領域340との間の境界360の累積長から得られた。
【0060】
図9、図10および図11は、例証を目的とした、PCD構造体の実施形態におけるダイヤモンド砥粒の多様な粒度分布の非限定的な例を示す。本明細書中で使用する、砥粒塊の「多様な」粒度分布とは、砥粒が1以上のピーク400をもつ粒度分布を有することを意味すると理解され、各ピーク400は、それぞれの「モード」に対応する。多様な多結晶体は、実質的に異なる平均サイズを有する砥粒を含む、複数砥粒の1種以上の原料を準備し、該砥粒または該原料由来の砥粒を一緒に配合することにより製造してもよい。配合砥粒の粒度分布の測定により、別々のモードに対応する別々のピークが明らかとなり得る。砥粒が共に焼結して多結晶体を形成する場合には、砥粒が互いに圧縮され粉砕されるとその粒度分布は更に変化して、砥粒のサイズが総合的に小さくなる結果となる。言うまでもなく、砥粒の多様性は焼結品の画像分析から依然として完全に明らかとなるであろう。
【0061】
砥粒の大きさは円相当径(ECD)により表わされる。本明細書中で使用する、粒子の「円相当径」(ECD)は、粒子の断面積と同じ面積を有する円の直径である。複数粒子のECD粒度分布と平均サイズは、本体の断面積または本体表面の画像分析により、個々の未結合粒子について、または本体内で一緒に結合した粒子ついて測定してもよい。本明細書中で別途記述しない限り、PCD材料内の砥粒と隙間に関連するサイズ、距離、周囲長、ECD、平均自由行程等の大きさ、ならびに砥粒近接度は、PCD材料を含む本体表面上または本体切断面上で測定される大きさを指し、立体画法的補正は適用されなかった。例えば、図9、図10および図11に示すダイヤモンド砥粒の粒度分布は、研磨面上で実施した画像分析により測定し、サルトィコフ補正(Saltykov correction)は適用しなかった。
【0062】
本発明の1つの実施形態では、PCD構造体は、図9に示すような多様な粒度分布において、少なくとも3つのモードを有するダイヤモンド砥粒を含むPCD材料から形成される第一の部分と、図10に示すような少なくとも4つのモードの多様な粒度分布を有するダイヤモンド砥粒を含むPCD材料から形成される第二の部分を含んでいてもよく、該第一の部分の砥粒の平均サイズは、該第二の部分の砥粒の平均サイズよりも実質的に小さく、PCD構造体の第一の部分と第二の部分は、互いに一体的に形成されている。PCD構造体は、基材に近接するPCD構造体の第二の部分と、基材から離れたPCD構造体の第一の部分とで基材にろう付けされていてもよい。
【0063】
本発明の1つの実施形態では、図11に示すような多様な粒度分布において、少なくとも2つのモードを有するダイヤモンド砥粒を含むPCD材料から形成される第一の部分と、図9に示すような多様な粒度分布において、少なくとも3つのモードを有するダイヤモンド砥粒を含むPCD材料から形成される第二の部分を含んでいてもよく、PCD構造体の該第一の部分と該第二の部分は、互いに一体的に形成されている。PCD構造体は、基材に近接するPCD構造体の第二の部分と、基材から離れたPCD構造体の第一の部分とで基材にろう付けされていてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、PCD構造体はPCT公開公報第2009/027948号に教示される通りであってよく、ここではダイヤモンド相と充填材料を含むPCD構造体が開示され、該充填材料は一般式:MxM’yCzの三元カーバイドを含み、式中、Mは遷移金属と希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属であり、M’は典型金属または半金属元素および遷移金属ZnおよびCdからなる群から選択される金属であり、xは2.5〜5.0、yは0.5〜3.0、zは0.1ミクロン〜1.2ミクロンである。
【0065】
いくつかの実施形態では、PCD構造体は、PCT公開公報第2009/027949号に教示される通りであってよく、ここでは相互成長したダイヤモンド砥粒と充填材料含むPCD複合材料が開示され、該充填材料は、金属性の溶媒/触媒を用いて形成されたスズ系の金属間または三元カーバイド化合物を含む。CoSnの使用は、温度が摂氏約1,300〜約1,450度、圧力が約5.0〜約5.8GPaという高圧高温条件下でのPCD焼結を促進し得る。いくつかの実施形態では、PCD構造体を基材にろう付けする前に、実質的に全てのコバルトをPCD構造体から除去してもよい。
【0066】
微細構造の均質性は、ダイヤモンド間の隙間の平均厚さと、この厚さの標準偏差との組合せにより特徴付けることができる。PCD構造体の均質性または均一性は、研磨切断面の多数の顕微鏡写真を用いた統計的評価を実施することにより定量化してもよい。PCD構造体内の充填材相または細孔の分布は、電子顕微鏡を用いてダイヤモンド相の分布と容易に識別可能となり得、また欧州特許公報第0974566号(国際公開公報第2007/110770号も参照)に開示された方法に類似する方法で測定できる。この方法は、微細構造に任意に引かれたいくつかの線に沿った、平均の厚さまたは隙間の統計的評価を可能とする。バインダーまたは隙間の平均厚さは「平均自由行程」とも称される。組成物またはバインダーの全含有量と平均ダイヤモンド砥粒サイズが類似する2つの材料では、より薄い平均厚さを有する材料は、ダイヤモンド相中のバインダーのスケール分布がより細密であることが示されるため、より均質となる傾向があろう。更に、この測定の標準偏差が小さいほど、その構造はより均質となる。標準偏差が大きいことは、バインダーの厚さが微細構造について大幅に変化し、その構造が均一ではないことを示す。
【0067】
本明細書中で使用する、隙間または隙間領域を包含する内部構造を含む、PCDのような多結晶材料内の「隙間平均自由行程」とは、隙間周辺の様々なポイント間の各隙間の平均距離を意味すると理解される。この平均自由行程は、研磨サンプルの断面の顕微鏡写真上に引かれた多くの線の長さの平均をとることにより決定される。平均自由行程の標準偏差は、これらの値の標準偏差である。ダイヤモンド平均自由行程は、同じようにして定義され、測定される。
【0068】
砥粒近接度のような量の平均値と偏差、または画像分析により測定された他の統計的パラメータを測定する際には、その統計の信頼性と正確性を高めるために、ある表面または切断面の異なる部分のいくつかの画像を使用する。所定の量またはパラメータを測定するために使用する画像の数は、少なくとも約9であるか、または約36以下であってもよい。使用する画像の数は約16であってもよい。画像の解像度は、砥粒間および相間の境界を明確に作成するのに充分高い必要がある。統計分析では、典型的にはPCD材料を含む本体の表面上の異なる範囲から16の画像をとり、画像全体の他、各画像についても統計分析を実施する。砥粒が多い方が信頼性と正確性の高い統計画像分析が可能であろうが、各画像は少なくとも約30のダイヤモンド砥粒を含有すべきである。
【0069】
いくつかの実施形態では、PCD構造体はPCT公開公報第2007/020518号に教示された通りであってもよく、ここでは、隙間平均自由行程が0.60ミクロン未満の値であり、隙間平均自由行程の標準偏差が0.90ミクロン未満であるという点で特徴付けられる細粒化多結晶ダイヤモンド材料を含む多結晶ダイヤモンド研磨部材が開示されている。1つの実施形態では、該多結晶ダイヤモンド材料は、約0.1〜約10.5の平均ダイヤモンド砥粒サイズを有していてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、PCD構造体は、ダイヤモンド用の溶媒/触媒材料の存在下、超高圧および超高温(HPHT)プロセスにおいてダイヤモンド砥粒を焼結し、次いでPCD構造体内の隙間から溶媒/触媒材料を除去することを包含する方法を使用して製造してもよい。触媒材料は、電界エッチング、酸浸出および蒸発技術等の当該技術分野で公知の方法を用いてPCDテーブルから除去してもよい。いくつかの実施形態では、遮蔽用(masking)または保護用(passivating)の媒体をPCD構造体内の細孔に導入してもよい。
【0071】
当該技術分野で公知の様々な方法で焼結を行うために、溶媒/触媒材料をダイヤモンド砥粒の凝集塊に導入してもよい。1つの方法は、凝集塊への圧密化(consolidation)を実施する前に、水溶液からの沈殿により複数のダイヤモンド砥粒の表面上に金属酸化物を沈着させることを包含する。このような方法は、PCT公開公報第2006/032984号、また第2007/110770号に開示されている。別の方法は、コバルト−スズ合金のような、ダイヤモンド用の触媒材料を包含する金属合金を粉末形状で準備または提供し、ダイヤモンド砥粒が凝集塊に圧密化する前に、この粉末を複数のダイヤモンド砥粒と配合することを包含する。この配合はボールミルにより実施してもよい。その他の添加剤を凝集塊に配合してもよい。
【0072】
1つの実施形態では、導入されたであろう任意の溶媒/触媒材料粒子または添加材粒子を包含するダイヤモンド砥粒の凝集塊を、非結合構造または緩く結合した構造に形成してもよく、これを超硬合金基材上に設置してもよい。超硬合金基材は、コバルト等の、ダイヤモンド用の触媒材料の原料を含有していてもよい。凝集塊と基材のアセンブリは、超高圧炉装置に適したカプセル剤に入れてもよく、このカプセル剤は6GPaを超える圧力下に供される。ベルト状、ドーナツ状(torroidal)、立法体および正方形のマルチアンビルシステムを包含する様々な種類の超高圧装置が公知であり、使用することができる。カプセル剤の温度は、触媒材料の原料が溶融するのに充分高く、またダイヤモンドがグラファイトに実質的に転化するのを防ぐのに充分低くすべきである。時間は、焼結を完了させるのに充分長くすべきだが、生産性を最大化しコストを低減するために出来る限り低くすべきである。
【0073】
既に記述したように、PCD構造体は少なくとも摂氏約800度の酸化開始温度を有していてもよい。このようなPCDの実施形態は、石油およびガスの掘削のような用途において優れた性能を示すことができ、ここでPCD切断機部材の温度は摂氏数百度に達し得る。当該技術分野で公知であるように、酸化開始温度は、酸素の存在下で熱重量分析(TGA)により測定される。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、結合材料は、セラミック材料を接合するための、高剪断強度のエポキシ樹脂もしくはエポキシペースト材料、例えば、PermabondTM社による商標名ES550TMのエポキシペースト、またははんだ材料を含んでいてもよい。1つの実施形態では、結合材料は有機接着剤を含んでいるか、または有機接着剤からなっていてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、PCD構造体は、マイクロ波ろう付けにより基材にろう付けしてもよく、ここでろう付け材料はマイクロ波エネルギーにより加熱される。活性ろう付け材料を非常に高い真空下で使用してPCDろう付けすると、PCD成形体部材が技術的および経済的に実現可能となるのに充分高いろう付け強度をもたらし得る。活性ろう付けは、H. R. Prabhakara (“Vacuum brazing of ceramics and graphite to metals”, Bangalore Plasmatek Pvt.Ltd, 129, Block -14, Jeevanmitra Colony I-Phase, Bangalore 560 078の中で)により論じられている。
【0076】
いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、多くとも摂氏約1,050度、多くとも摂氏約1,000度、または多くとも摂氏約950度以下、または多くとも摂氏約900度でさえある、合金が溶融を開始する溶融開始温度を有していてもよい。このような実施形態は、熱的に誘導されるPCDの分解を低減または回避し得る充分低い温度で、PCD構造体を基材にろう付けできるという利点を有し得る。PCDを基材にろう付けするプロセスは、酸化を阻害する実質的に不活性な雰囲気で実施してもよく、これにより更に強固なろう付け結合をもたらすという利点を有し得る。
【0077】
1つの実施形態では、該ろう付け用合金は、容易に炭素と反応してカーバイドを形成する部材を含んでいてもよく、また1つの実施形態では、該ろう付け用合金は反応性ろう付け用合金であってもよく、これによりダイヤモンドの表面を効率的に湿潤させてもよい。
【0078】
1つの実施形態では、該ろう付け用合金はTiを含有していてもよく、これによりダイヤモンドの表面を効率的に湿潤させてもよい。いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金はCu、Ni、AgまたはAuを含有していてもよく、これにより超硬合金基材を効率的に湿潤させてもよい。反応性ろう付け用合金の1種は、ダイヤモンドの表面を改変して、より容易に湿潤可能となるよう作用させることができる。この種の反応性ろう付け用合金の例には、Mo、W、Ti、Ta、VおよびZrが含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、Ti、CuおよびAgを含んでいるか、またはこれらから本質的になっていてもよく、「TiCuSil」ろう付け用合金とも称され、これはTi量のみならず、AgとCuの共晶組成を含んでいてもよい。例えばTiとCuとAgの重量比は4.5:26.7:68.8であってもよく、またはTiとCuとAgの比率は10.0:25.4:64.6であってもよく、またはTiとCuとAgの比率は15.0:24.0:61.0であってもよい。1つの実施形態では、該ろう付け用合金は、約63.00%のAg、約32.25%のCuおよび約1.75%のTiを含んでいてもよく、商標名CusilTMABAで入手可能となり得る。1つの実施形態では、該ろう付け用合金は約70.5%のAg、約26.5%のCuおよび約3.0%のTiを含んでいてもよく、商標名CB4として入手可能である。
【0079】
高強度のろう付け用合金は、Cu、NiとCrの合金を含む合金、Pd等の元素を高い割合で含有するろう付け部分および類似する高強度材料、ならびにCr系の活性ろう付け部分を含有していてもよい。1つの実施形態では、ろう付け用合金は、Ni、PdおよびCrを含んでいるか、またはこれらから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態では、Niに対するPdの重量比の比率は、約0.4〜約0.8の範囲であってもよい。1つの実施形態では、ろう付け用合金は、Ni、Pd、Cr、BおよびSiを含んでいてもよく、また1つの実施形態では、NiとPdとCrとBとSiの重量比は約50:36:10.5:3:0.5であってもよく、またはNiとPdとCrとBとSiの重量比は約57:30:10.5:2.4であってもよい。Ni、Pd、Cr、Bを含むろう付け用合金材料は、WESGO MetalsTM社により商標名PalnicroTM 36Mとして得ることができる。1つの実施形態では、ろう付け用合金はAg、Cu、Ni、PdおよびMnを含んでいてもよく、また1つの実施形態では、AgとCuとNiとPaとMnの重量比は約25:37:10:15:13であってもよい。このようなろう付け用合金は、商標名PALNICUROMTM 10として入手可能となり得る。1つの実施形態では、該ろう付け用合金は、約64%の鉄と約36%のニッケルを含んでいてもよく、これはInvarとも称される。1つの実施形態では、該ろう付け材料は、Coのような実質的に合金でない金属を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、Cr、Fe、Si、C、B、P、Mo、Ni、Co、WおよびPdからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでいてもよい。適切なろう付け用合金の一例は、MetglasTM社からの商標名MBF15として入手可能となり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、Cu、AgまたはAuの内の少なくとも1つを含んでいてもよく、またいくつかの実施形態では、該ろう付け用合金は、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WまたはReの内の少なくとも1つを更に含んでいてもよい。例えば、該ろう付け用合金はAuおよびTaを含有していてもよく、または該ろう付け用合金はAg、CuおよびTiを含有していてもよい。いくつかの実施形態では、該ろう付け材料は、Fe、Co、NiまたはMnの内の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0081】
本発明の1つの実施形態では、該方法は、PCD構造体の表面をコーティングしてこれをろう付け用に準備し、次いでPCD構造体を基材にろう付けすることを包含し得る。この目的のためのコーティングの例と、これらを適用する方法は、米国特許公報第5,500,248号、第5,647,878号、第5,529,805号およびPCT特許出願公開公報第2008/142657号に記載されている。
【0082】
1つの実施形態では、該ろう付け用層は分散したセラミック粒子を含有していてもよく、また1つの実施形態では、該セラミック粒子はケイ素カーバイド等のカーバイド材料、またはダイヤモンド等の超硬材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、該セラミック粒子は、約20ミクロン未満または約10ミクロン未満の平均サイズを有していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ろう付け用層中のセラミック粒子の存在は層を強化することができ、ろう付けの結果として複合成形体部材が劣化する可能性を低減し得る。
【0083】
本発明の実施形態は、ローラーコーンドリルビットのコーン、リーマー、ミル、双方向センタービット(bi-centre bit)、偏心ビット、コアリングビット、および固定(fixed)切断機と回転(rolling)切断機の両方を包含するいわゆるハイブリッドビットのようなその他の種類の地面穿孔用手段に対するゲージトリマー(gauge trimmer)として使用してもよい。
【0084】
砥粒近接度は、画像分析ソフトウェアによるSEM画像から決定することができる。特に、Soft Imaging System GmbH社(Olympus Soft Imaging Solutions GmbHの商標)による商標名analySIS Proを有するソフトウェアを使用してもよい。このソフトウェアは「Separate Grains」フィルターを有しており、操作マニュアルによれば、分離すべき構造が閉鎖構造である場合に、満足のいく結果を提供するだけである。従って、このフィルターを適用する前に孔を充填することが重要である。例えば、「Morph. Close」コマンドを使用してもよく、または「Fillhole」モジュールから援助を得ることができる。このフィルターに加え、「Separator」は砥粒分離に使用可能な別の有力なフィルターである。この分離器は、操作マニュアルに従いカラー値とグレイ値の画像にも適用できる。
【0085】
本明細書中で使用する、「抗折力」(TRS)は、ディスク形状の検体の3つのポイントに荷重をかけ、2つは検体の片側にかけ、1つは反対側にかけ、検体が粉砕するまでその荷重を荷重速度で増加させることにより測定する。このような測定法は三点曲げ試験とも称され、Borger et al.(Borger, A., P, Supansic and R. Danzer, "The ball on three balls test for strength testing of brittle discs: stress distribution in the disc", Journal of the European Ceramic Society, 2002, volume 22, pp. 1425-1436)に記載されている。図12を参照すると、試験される材料の検体510は、1つの荷重ボール(load ball)520と2つの支持ボール(support ball)530の間に設置され、ガイド本体570により支持される。荷重ボール520はスタンプ(stamp)560により支持され、これは横方向に支持され、ガイド本体570により導かれ、チョック580がガイド本体570とスタンプ560のそれぞれの部分の間に配置され、ガイド本体570に対するスタンプ560の動きの近接限界(proximity limit)を確立する。パンチ(punch)550は支持ボール530に接しており、これはパンチ550と検体510との間に配置される。軸方向荷重540はパンチ550にかかり、荷重ボール520と支持ボール530が反対側から検体510を圧迫するようにしている。検体510において粉砕の証拠が観察されるまで、荷重は一定の荷重速度で下限値から増加する。非限定的な例として、10KNのロードセルを有するInstronTM 5500R万能試験機を前述した抗折力を測定するために使用してもよい。荷重速度は約0.9mm/minであってもよい。MPaを単位とする抗折力σはf(F).F/tとして計算され、式中Fは、ニュートンを単位とし、検体が粉砕を開始する測定負荷であり、tは検体の厚さであり、f(F)は負荷と試験する材料に依存する無次元の定数である。PCDの場合には、f(F)=1.620211−0.0082X(F−3000)/1000である。
【0086】
前述したTRS測定で使用するための円形ディスク形状の検体は、以下のように用意する。基材に接合したPCD構造体を含むPCD構造物を準備し、その外径は16mmまたは19mmに研削される。基材を除去してPCDディスクを独立状態にし、次いでこれを約1.30mm〜約2.00mmの範囲の厚さにラップ仕上げする。PCDディスクは酸中で処理して、ダイヤモンド砥粒間の隙間中のある程度または実質的に全ての材料を除去してもよい。
【0087】
PCDディスクのK1C靭性値は直径圧縮試験により測定され、この試験はLammer("mechanical properties of polycrystalline diamonds", Materials Science and Technology, volume 4, 1988, p. 23.)とMiess (Miess, D. and Rai, G., "Fracture toughness and thermal resistances of polycrystalline diamond compacts", Materials Science and Engineering, 1996, volume A209, number 1 to 2, pp. 270-276)に記載されている。
【0088】
基材にろう付けされたPCD構造体を含む公知のPCD複合成形体部材は、特に削岩のような過酷な用途において、とりわけ石油およびガス掘削産業において、商業的に成功してはいない。このような用途では、使用の際に経験する高温、典型的には摂氏600度を超える温度で、最高の耐摩耗性と高い強度を維持できる切断機成形体部材が必要とされる。理論に拘束されることを望まないが、PCDをカーバイドにろう付けすると、ろう付け接合部分に隣接する成形体部材内に高い内部応力を生じさせる場合があり、成形体部材を削岩に使用する前であっても、PCDおよび/もしくは基材のクラッキングまたはPCDの剥離をもたらす。本発明によるPCD複合成形体部材の実施形態、特にPCD構造体が熱的に安定な実施形態は、経済的に存立可能であり、商業的に成功し得るものである。
【0089】
PCD構造体が少なくとも約800GPaの平均ヤング率を有する本発明の実施形態は、基材に結合した後もその機械的完全性とロバストネスを良好に維持し得る。ヤング率が実質的に約800GPa未満の場合、または抗折力が実質的に約900MPa未満の場合には、PCD構造体は岩を効率的に切断することができず、あまりに急速に消耗する場合がある。均質な微細構造を有するPCDの実施形態は、隙間平均自由行程と隙間平均自由行程の標準偏差との組合せにより特徴付けられるが、PCDを基材にろう付けし、該複合成形体を使用して岩を崩壊させ掘削する場合の経験に応じ、機械的且つ熱的な応力と衝撃に対する耐性を増強したであろう。
【0090】
高い近接度および/または高い均質性および/またはPCD構造体中の金属性溶媒/触媒の含量低下、ならびに少なくとも2つもしくは3つのピークまたはモードを含む粒度分布の組合せを有する実施形態は、従来のろう付け法を用いる場合の結合の利点を特に有している。実施形態は、基材にろう付けされたPCDを含む先行技術の切断機部材に対し、優れた耐久性を示し得る。
【0091】
本発明の実施形態は、PCD構造体が基材に結合する強度が実質的に増強し得るという利点を有する。特に、PCD構造体が基材にろう付けされ、PCD構造体がろう付け層との接合部分から少なくとも約2ミクロンの深さまでろう付け用材料を含有する実施形態は、結合強度が特に増強した可能性がある。結果として、特に削岩のために使用する場合には、このような実施形態の機械的特性と可使時間は増強される場合がある。
【0092】
PCD構造体と基材の間の結合の剪断強度が少なくとも約100MPa、および多くとも約500MPaである本発明の実施形態は、従来のろう付け法が適し得るという利点を有し得る。
【0093】
PCD構造体が熱的に安定である本発明の実施形態は、PCD構造体の加熱を伴うろう付け等の方法により基材に結合した後でも、PCD構造体がその構造的完全性と主要な機械的特性を良好に維持するという利点を有する。PCD構造体がカーバイドまたは金属間化合物を含む充填剤を有する本発明の実施形態は、熱安定性を増強し、基材に結合した後でもろう付け等により主要な機械的特性を良好に維持したであろう。
【0094】
超硬合金を含み、その中に分散したダイヤモンド砥粒を含有する本発明の実施形態は、機械的ロバストネス、特に破壊抵抗を強化したであろう。
【0095】
多くとも約10ミクロンの平均サイズを有する少なくとも90体積パーセントのダイヤモンド砥粒をPCD構造体が含む本発明の実施形態は、特に有利となり得る。ダイヤモンド砥粒の多様な粒度分布を有するPCD構造体の実施形態は、ろう付け等により基材に結合した後でも、それらの機械的完全性と主要特性をより良好に維持するために充分な強度を有する。
【0096】
本発明の実施形態は、PCD構造体の組成、特に充填材料の組成を、基材の組成に付随する制約をそれ程受けずに選択できるという利点を有し得る。望ましい特性、特に高い熱的安定性を有するPCD構造体は、基材とは別に作成し、次いで公知のろう付け材料と方法を用いて基材に結合させ、これにより実質的に追加費用を負担することなくPCD手段の性能を改善することができる。
【0097】
本発明の実施形態を、以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0098】
実施例1
公知の高温高圧法を用いて、約2.2ミリメートルの厚さと約16mmの直径を有するPCDディスクを準備した。焼結工程の過程でPCDが結合した基材を粉砕により除去し、支持のない、独立したPCDディスクとした。PCDは、平均円相当径約9ミクロンの多様な粒度分布を有するコヒーレントに結合したダイヤモンド砥粒を含んでいた。
【0099】
PCDの微細構造に関するデータを表1に示すが、ここでは平均粒径を円相当径で表し、括弧内に示した値はそれぞれの標準偏差である。
【0100】
【表1】

【0101】
次いで、PCDディスクを酸で処理し(浸出し)、PCD構造体全体中の実質的に全てのコバルト溶媒/触媒材料を除去した。
【0102】
各々の直径が約19mmであるいくつかの更なるディスクを前述のように作成し、一連の試験に供して機械的特性を測定した。酸処理後のPCDディスクの機械的特性を表2に示すが、ここでは括弧内に示した値はそれぞれの標準偏差である。PCDディスクのTRSが、浸出前の約1,493MPaから浸出後の約1,070MPaに(即ち、約28%差)減少し、ヤング率は約1,025GPaから約864GPaに(即ち、約15%〜16%差)減少した。
【0103】
【表2】

【0104】
16mmのPCDディスクと実質的に同じ直径を有するコバルト焼結炭化タングステン基材を準備した。約100ミクロンの厚さを有する活性ろう付け材料の箔を、PCDディスクと基材の間に挟んで成形体部材事前アセンブリ(pre-compact element assembly)を形成した。ろう付け材料は63.00%のAg、32.25%のCuおよび1.75%のTiを含み、商標名CusilTM ABAとして入手可能である。ろう付けに先立ち、PCDディスクは超音波で洗浄し、炭化タングステン基材とろう付け箔の両方を僅かに研磨し、その後超音波で洗浄した。
【0105】
成形体部材事前アセンブリを真空中での熱処理に供した。温度を15分かけて摂氏920度まで上げ、5分間このレベルに維持し、次いで約8〜9時間かけて周囲温度まで下げた。熱処理の間は、少なくとも10−5ミリバールの真空を維持した。炉環境中における酸素と他の不純物の量を回避しまたは最低限とするよう注意を払った。更に、ろう付けする成分とろう付け材料は、全てが比較的短時間に所望の温度に達する必要があることから、対流加熱と低い温度勾配を伴う炉を使用した。
【0106】
溶融したろう付け材料は、PCDディスクに10〜20ミクロンの範囲の深さまで浸透したことが分かり、約50ミクロン〜約80ミクロンのろう付け用層をPCDとWC基材の間に入れた。ろう付け結合の剪断強度は、110MPa〜150MPaの範囲であると測定された。
【0107】
その元の基材から分離させなかった対照用PCD複合成形体部材と、酸中で処理しなかった対照用PCD複合成形体部材を、比較のために準備した。ろう付けされた対照用複合成形体を処理してそれぞれの切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さにより示す。
【0108】
摩耗跡の深さが小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、成形体部材の摩耗跡の深さは、対照用部材の約4mmに比べ約3.5mmであった。
【0109】
実施例2
異なるろう付け材料を使用したこと以外は、実施例1に記載された通りにして、直径16mmを有するPCD成形体部材を用意した。このろう付け材料は、70.5%のAg、26.5%のCuおよび3.0%のTiを含み、商標名CB4として入手可能であり、ろう付け工程は摂氏950度の温度で実施した。溶融したろう付け材料は、PCDディスクに5〜10ミクロンの範囲の深さまで浸透したことが分かった。ろう付け結合の剪断強度は、110MPa〜150MPaの範囲であることが分かった。
【0110】
ろう付けされた成形体部材を、実施例1に記載した通りの摩耗試験に供した。55回合格した後には、成形体部材の摩耗跡の深さは約2mmであった。
【0111】
実施例3
平均円相当径約4.6マイクロメートルの多様な粒度分布を有するコヒーレントに結合したダイヤモンド砥粒をPCDディスクが含んでいたこと以外は、実施例1を繰り返した。PCDの微細構造に関するデータを表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
次いで、当該技術分野で周知であるように、PCDディスクを酸中で処理し、ダイヤモンド砥粒間の隙間内の実質的に全てのコバルト溶媒/触媒材料を除去した。
【0114】
各々の直径が約19mmであるいくつかの更なるディスクを前述のように作成し、一連の試験に供して機械的特性を測定した。酸処理後のPCDの主要な機械的特性を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
溶融したろう付け材料は、PCDディスクに約10ミクロン〜約20ミクロンの範囲の深さまで浸透したことが分かった。ろう付け結合の剪断強度は、110MPa〜150MPaの範囲であると測定された。
【0117】
ろう付けされたPCD成形体部材を更なる摩耗試験に供し、ここでは成形体部材を使用して花崗岩のブロックをフライス盤にかけた。切断長が少なくとも6,000ミリメートルとなった後には、ろう付け接合部に起因する不具合は観察されなかった。
【0118】
実施例4
平均ダイヤモンド砥粒サイズが約9ミクロンであり、コバルト含有量が約9.0体積%である、直径16mmを有するPCD材料層を各々が含むPCD複合成形体部材を、約5.5GPaの圧力と摂氏約1400度の温度で、ダイヤモンド砥粒をそれぞれの超硬合金基材上に焼結することにより準備した。PCDの微細構造に関するデータを表5に示すが、ここでは平均粒径を円相当径で表わす。
【0119】
【表5】

【0120】
基材をPCD層から除去し、次いでこれを酸中で処理して実質的に全てのコバルト充填材料を除去した。誘導結合高周波プラズマ(ICP)分析により残留物が約2重量%存在することを確認したが、これはPCD構造体中の約1.1体積%のCoである。残留コバルトは、PCD構造体の実質的に閉鎖した細孔内に補足された可能性がある。酸処理後のPCDディスクの主要な機械的特性を表6に示すが、ここで括弧内に示した値はそれぞれの標準偏差である。この切断機のPCDの酸化開始温度は、摂氏870度であると測定された。
【0121】
【表6】

【0122】
処理したPCD構造体を、Braze TecTM社による商標名CB4として入手可能な配合である、70.5重量%のAg、26.5重量%のCuおよび3.0重量%のTiを含んでなる合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。ろう付けは、10−6mbarの真空下、摂氏950度で約5分間、真空炉内で実施した。PCD構造体と基材の間のろう付け結合の剪断強度は、室温では約287MPaであり、摂氏300度では約224MPaであった。
【0123】
その元の基材から分離していない対照用PCD複合成形体部材と、酸で処理していない対照用PCD複合成形体部材を、比較のために準備した。ろう付けされた成形体と対照用複合成形体を処理してそれぞれの切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により示すことができる。摩耗跡の深さが小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、対照用部材の約18.9mmに比べ、約約5.2mmであった。
【0124】
実施例5
直径16mmを有するディスク形状であって、その中のダイヤモンド砥粒の平均サイズが約9ミクロンであるPCD構造体を、約6.8GPaの圧力と摂氏約1,400度の温度でそれぞれの基材上に砥粒を焼結させることにより製造した。PCDの微細構造に関するデータを表7に示すが、ここでは平均粒径を円相当径で表わす。
【0125】
【表7】

【0126】
基材を除去し、PCD構造体を酸中で処理して実質的に全てのコバルト充填材料を除去した。酸処理後のPCDディスクの主要な機械的特性を表8に示すが、ここで括弧内に示した値はそれぞれの標準偏差である。
【0127】
【表8】

【0128】
実施例4に記載したように、処理したPCDディスクを、Braze TecTM社による商標名CB4として入手可能な配合である、70.5重量%のAg、26.5重量%のCuおよび3.0重量%のTiを含んでなる合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。
【0129】
ろう付けした成形体を処理して切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により表わすことができる。摩耗跡の深さまたは面積が小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、実施例4に記載した対照用部材の約18.9mmに比べ、約3.26mmであった。
【0130】
実施例6
直径16mmを有するディスク形状であって、その中のダイヤモンド砥粒の平均寸法が約4ミクロンであり、約10体積%のコバルトを含有してなるPCD構造体を、約5.5GPaの圧力と摂氏約1,400度の温度でそれぞれの基材上に砥粒を焼結させることにより製造した。PCDの微細構造に関するデータを表9に示すが、ここでは平均粒径を円相当径で表わす。
【0131】
【表9】

【0132】
基材を除去し、PCD構造体を酸中で処理して実質的に全てのコバルト充填材料を除去した。酸処理後のPCDディスクの主要な機械的特性を表8に示すが、ここで括弧内に示した値はそれぞれの標準偏差である。
【0133】
【表10】

【0134】
実施例4に記載したように、処理したPCDディスクを、Braze TecTM社による商標名CB4として入手可能な配合である、70.5重量%のAg、26.5重量%のCuおよび3.0重量%のTiを含んでなる合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。
【0135】
その元の基材から分離しなかった対照用PCD複合成形体部材と、酸中で処理しなかった対照用PCD複合成形体部材を、比較のために準備した。ろう付けした対照用の複合成形体を処理してそれぞれの切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により表わすことができる。摩耗跡の深さまたは面積が小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、対照用部材の約4.09mmに比べ、約3.33mmであった。
【0136】
実施例7
ディスク形状であって、その中のダイヤモンド砥粒の平均サイズが約4ミクロンであり、約10体積%のコバルトを含有してなるPCD構造体を、約6.8GPaの圧力と摂氏約1,400度の温度でそれぞれの基材上に砥粒を焼結させることにより製造した。PCDの微細構造に関するデータを表11に示すが、ここでは平均粒径を円相当径で表わす。
【0137】
【表11】

【0138】
基材を除去し、PCD構造体を酸中で処理して実質的に全てのコバルト充填材料を除去した。
【0139】
実施例4に記載したように、処理したPCDディスクを、Braze TecTM社による商標名CB4として入手可能な配合である、70.5重量%のAg、26.5重量%のCuおよび3.0重量%のTiを含んでなる合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。
【0140】
ろう付けした複合成形体を処理して切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により表わすことができる。摩耗跡の深さまたは面積が小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、実施例6に記載した対照用部材の約4.09mmに比べ、約3.28mmであった。
【0141】
実施例8
PCDディスクを準備し、実施例4に記載した通りに処理し、処理したPCDディスクを、摂氏1050度で約5分間、真空中にて、86.0重量%のCu、12.0重量%のMnおよび2.0重量%のNiを含んでなるろう付け用合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。ろう付け材料は、Braze TecTM社により21/80として入手可能であった。
【0142】
ろう付けした複合成形体を処理して切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により表わすことができる。摩耗跡の深さが小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、実施例4に記載した対照用部材の約18.9mmに比べ、約3.65mmであった。
【0143】
実施例9
PCDディスクを準備し、実施例4に記載した通りに処理し、処理したディスクを、摂氏約100度で約2時間、Permabond ES550TMエポキシ樹脂を用いて超硬炭化タングステン基材上に接着させた。
【0144】
ろう付けした対照用複合成形体を処理して切断機部材を形成し、それらの使用を伴う摩耗試験に供して、立てタレットミリング装置に取り付けた花崗岩ブロックの機械加工を行った。試験結果は、一定数合格した後の、成形体部材の切断ヘリでの摩耗跡の深さまたは摩耗跡の面積により表わすことができる。摩耗跡の深さが小さくなるほど、良好である。55回合格した後には、実施例である成形体部材の摩耗跡の面積は、実施例4に記載した対照用部材の約18.9mmに比べ、約4.44mmであった。
【0145】
実施例10
PCDディスクを準備し、実施例4に記載した通りに処理し、摂氏約950度で約5分間真空中にて、68.8重量%のAg、26.7重量%のCuおよび4.5重量%のTi合金を含んでなるろう付け用合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。ろう付け材料は、WesgoTM社により商品名TicusilTMとして入手可能であった。
【0146】
実施例11
PCDディスクを準備し、実施例4に記載した通りに処理し、摂氏約950度で約5分間、アルゴン雰囲気中にて、68.8重量%のAg、26.7重量%のCuおよび4.5重量%のTiを含んでなるろう付け用合金を使用する超硬炭化タングステン基材上にろう付けした。ろう付け材料は、WesgoTM社により商品名TicusilTMとして入手可能であった。ろう付け結合の剪断強度に関しては、得られた切断部材は室温で215MPaの結合剪断強度を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に結合したPCD構造体と、前記PCD構造体を前記基材に結合させる結合材料と、を含んでなるPCD複合成形体部材であって、
前記PCD構造体が熱的に
安定であり、少なくとも800GPaの平均ヤング率を有し、前記PCD構造体が、少なくとも0.05ミクロンで多くとも1.5ミクロンの隙間平均自由行程を有し、前記平均自由行程の標準偏差が、少なくとも0.05ミクロンで多くとも1.5ミクロンである、PCD複合成形体部材。
【請求項2】
前記結合材料が、前記PCD構造体と前記基材との間のろう付け用層の形態のろう付け用合金である、請求項1に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項3】
前記ろう付け用合金が、多くとも摂氏1,050度の溶融開始温度を有し、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、およびReからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含有してなる、請求項2に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項4】
前記結合材料が、セラミック材料を接合するためのエポキシ材料を含んでなる、請求項1に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項5】
前記基材が、PCD材料を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項6】
前記PCD構造体が、少なくとも60パーセントの平均ダイヤモンド砥粒近接度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項7】
前記PCD構造体が、少なくとも900MPaの抗折力を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項8】
前記PCD構造体が、完全に多孔性ではなく、少なくとも約900GPaの平均ヤング率と少なくとも1,000MPaの抗折力を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項9】
前記PCD構造体が、熱的に安定であり、ろう付け材料を含有してなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項10】
前記PCD構造体中に、ダイヤモンド用の溶媒/触媒が約5体積パーセント未満存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項11】
前記PCD構造体が、少なくとも部分的に多孔性である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項12】
前記基材が、前記基材中に分散したダイヤモンド粒子を包含してなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項13】
ドリルビット又は他の地面穿孔用手段に固定された、請求項1〜12のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のPCD複合成形体部材の製造方法であって、
PCD構造体を準備する工程と、
前記PCD構造体を処理してダイヤモンド砥粒間から充填材料を除去し、前記PCD構造体の境界において細孔、割れ目、または不規則面を作成する工程と、
結合材料を用いて前記境界において前記PCD構造体を基材に結合させる工程と、
を包含してなる、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−500920(P2013−500920A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522182(P2012−522182)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061144
【国際公開番号】WO2011/012708
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506231892)エレメント シックス リミテッド (15)
【出願人】(301008534)ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】