説明

多結晶型太陽電池パネルおよびその製造方法

【課題】ドーパント含有シリコンインゴットを材料効率よく提供することで、より低コストな多結晶型シリコン太陽電池を提供する。
【解決手段】P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを用意する工程Aと、P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを利用して、基板表面にP型またはN型アモルファスシリコン膜をスパッタ成膜する工程Bと、P型またはN型アモルファスシリコン膜にプラズマを走査させて溶融後、再結晶化させてP型またはN型多結晶シリコン膜を形成する工程Cと、工程Cで形成されたP型多結晶シリコン膜に、N型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する、または工程Cで形成されたN型多結晶シリコン膜に、P型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する工程Dとを含む多結晶型太陽電池パネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶型太陽電池パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン結晶型太陽電池は、主に単結晶型太陽電池と多結晶型太陽電池とに大別され得る。一般的に結晶型太陽電池は、図8に示されるように、n型またはp型にドーピングされたシリコンインゴット30を、ワイヤ31で切断したり、ダイシング技術を利用したりして、厚さ200μm程度にスライスし;スライスしたインゴットを、太陽電池の本体となるシリコンウェハとして用いている(特許文献1などを参照)。シリコンインゴット30は、チョクラルスキー法などで作製した単結晶シリコンインゴットであっても、キャスト法と称される融解したシリコン鋳型を使って凝固させる、多結晶シリコンインゴットであってもよい。
【0003】
また、多結晶型太陽電池の多結晶シリコン膜の製造方法として、支持基板に堆積したシリコン粒子を溶融して多結晶化する方法も知られている(特許文献2を参照)。図9には、多結晶シリコン膜の成膜装置が示される。シリコン陽極40にアーク放電41をあてて生成したシリコン粒子42(20nm以下)を、アルゴンガス43にのせて、輸送管44を通して支持基板45に堆積させ;支持基板45に堆積したシリコン粒子42に、高温プラズマ46を照射して溶融し;ハロゲンランプ47でアニールを行い多結晶シリコン板として;分離室48で、支持基板45と多結晶シリコン膜49とを分離する。
【0004】
更に、触媒化学気相堆積(Cat−CVD)法でガラス基板上に堆積させたアモルファスシリコンを、高エネルギービーム(フラッシュランプ)で結晶化する方法も検討されている(特許文献3および非特許文献1を参照)。当該文献によれば、20mm角の石英基板上に電極となるCrを成膜した後、Cat−CVD法でアモルファスシリコンを3μm堆積させ、フラッシュランプにて5msの処理を行い結晶化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−263545号公報
【特許文献2】特開平6−268242号公報
【特許文献3】特開2008−53407号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大平圭介ら「フラッシュランプアニールによるアモルファスシリコン薄膜の面内均一結晶化」第54回応用物理学会学術講演会(2007春季)〔光技術情報誌「ライトエッジ」No.29(2007年8月発行)〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多結晶型シリコン太陽電池は、PN接合を有する多結晶シリコン膜を含む。多結晶シリコン膜にPN接合を形成するには、1)多結晶シリコン膜にドーパント含有物質(一般的にはガラス)を堆積させて、ドーパントを熱拡散させたり(ドーパント含有物質はウェット処理により除去する)、2)ドーパント含有ガス雰囲気下に多結晶シリコン膜をおいてドーパントを注入したりする。
【0008】
これらのPN接合形成手法では、工程数が増えて処理時間が増大したり、危険性の高いガスの使用が必要であったり、ドーピング量の制御やドーパントの注入深さの制御が困難であったりする。そこで、本発明の第一は、PN接合を有する多結晶シリコン膜を簡便に形成することで、低コストな多結晶型シリコン太陽電池を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、ドーパント含有シリコンインゴットを用いてスパッタ成膜したアモルファスシリコン膜をプラズマで多結晶化し、それにPN接合を形成することでPN接合を有する多結晶シリコン膜を形成する。それにより、低コストな多結晶型シリコン太陽電池を提供する。好ましくは、ドーパント含有シリコンインゴットを材料効率よく提供することで、より低コストな多結晶型シリコン太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す多結晶型太陽電池パネルの製造方法に関する。
[1]P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを用意する工程Aと、
前記P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを利用して、基板表面にP型またはN型アモルファスシリコン膜をスパッタ成膜する工程Bと、
前記P型またはN型アモルファスシリコン膜にプラズマを走査させて溶融後、再結晶化させてP型またはN型多結晶シリコン膜を形成する工程Cと、
前記工程Cで形成された前記P型多結晶シリコン膜に、N型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する、または前記工程Cで形成された前記N型多結晶シリコン膜に、P型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する工程Dと、を含む、多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【0011】
[2]基板は、Al、Ag、Cu、Sn、Zn、In、Feのいずれかを含む、[1]に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
[3]プラズマは、大気圧プラズマである、[1]または[2]に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
[4]走査速度は、100mm/秒以上2000mm/秒以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【0012】
[5]前記C工程において、プラズマ照射によって前記P型またはN型アモルファスシリコン膜を溶融した後、不活性ガスを供給して溶融した前記P型またはN型アモルファスシリコン膜を急冷して多結晶化させる、[1]〜[4]のいずれかに記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
[6]前記C工程において、不活性ガスに水素ガスを混合させた混合ガスにより、発生したプラズマを押出しながらプラズマ照射を行う、[1]〜[4]のいずれかに記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、多結晶型シリコン膜を含む太陽電池パネルを提供する。本発明の太陽電池パネルにおける多結晶型シリコン膜は、不純物含有シリコンターゲットを用いてスパッタ成膜したアモルファスシリコン膜を、プラズマを利用して多結晶化させて形成されている。この手法により、簡便にPN接合を有する多結晶化シリコン膜が形成できる。よって本発明は、多結晶型太陽電池パネルの低コスト化に寄与する。
【0014】
しかも本発明の好ましい態様によれば、不純物含有シリコンターゲットを、材料効率よく製造することができる。よって本発明の好ましい態様によれば、多結晶型太陽電池パネルの低コスト化にさらに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シリコンインゴットから、シリコン粉末を得て、シリコンターゲットを得るフローを示す図である。
【図2】シリコン粉末にプラズマを照射する様子を示す図である。
【図3】基板にアモルファスシリコン膜をスパッタ成膜するフローを示す。
【図4】マグネトロンスパッタリング装置の概要を示す。
【図5】太陽電池パネルを製造するフローを示す。
【図6】太陽電池パネルを製造するフローを示す。
【図7】太陽電池パネルを製造するフローを示す。
【図8】シリコンインゴットをスライスする様子を示す図である。
【図9】従来の多結晶シリコン膜の製造装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の多結晶型太陽電池パネルの製造方法は、ドーパントを含有するシリコンターゲットを用意するステップと、シリコンターゲットを用いて基板表面にドーパント含有アモルファスシリコン膜をスパッタ成膜する工程と、アモルファスシリコン膜にプラズマを照射してドーパント含有多結晶シリコン膜とする工程と、を含む。
【0017】
また、本発明の多結晶型太陽電池パネルの製造方法は、1)アモルファスシリコン膜2dを多結晶化してから、ドーパントをドーピングしてPN接合を有する多結晶シリコン膜とする第1の態様(図5参照)と、2)アモルファスシリコン膜2dに、さらにアモルファスシリコン膜2eを成膜してアモルファス積層膜として、アモルファス積層膜を多結晶化して、PN接合を有する多結晶シリコン膜とする態様(図6参照)とに大別されうる。
【0018】
ドーパント含有シリコンターゲットは、ドーパント含有シリコンインゴットから得られる。ドーパント含有シリコンターゲットは、ドーパント含有シリコンインゴットをスライスして得ることもできるが;シリコンインゴットをスライスすると、大量の切削くずが発生するため、材料効率がよくない。よって、ドーパント含有シリコンターゲットは、ドーパント含有シリコンインゴットの粉砕物を溶融および再結晶化させて得ることが好ましい。
【0019】
ドーパント含有シリコンインゴットの粉砕物からシリコンターゲットを製造する概要が、図1に示される。
【0020】
まず、ドーパント含有シリコンインゴット1を用意する(図1A)。ドーパント含有シリコンインゴットは、P型ドーパントを含有していてもよいし、N型ドーパントを含有していてもよい。P型ドーパントの例にはホウ素が含まれ、N型ドーパントの例にはリンや砒素が含まれる。シリコンインゴットにおけるドーパント濃度は、その用途に応じて適宜設定される。
【0021】
ドーパント含有シリコンインゴットは、ソーラーグレートシリコンの基準を満たしていればよい。ソーラーグレートシリコンの基準を満たすシリコンインゴットにおけるシリコン純度は、99.99wt%であり、好ましくは99.999wt%であり、より好ましくは99.9999wt%である。
【0022】
ドーパント含有シリコンインゴット1は、粉砕されてシリコン粉末2bとされる(図1B)。シリコン粉末への粉砕は、ドーパント含有シリコンインゴットのシリコン純度を低下させることなく行われることが好ましい。そのため、ドーパント含有シリコンインゴット1の粉砕は、以下の2つの工程を含む多数の工程に分けて行われることが好ましい。粉砕を多数の工程を組み合わせて行うことで、インゴット1を1つの工程で所望の粒径に粉末化するよりも、短時間で粉末化することができる。
【0023】
粉砕の第1工程では、ドーパント含有シリコンインゴット1を、超高圧水切断でシリコン粗粉末2aとする。シリコン粗粉末2aの粒径は、約3mm以下、好ましくは1mm以下である。超高圧水切断とは、超高圧水の衝突エネルギーを利用して物質を切断する手法である。超高圧水とは、約300MPaの水圧を有する水であり得る。超高圧水切断は、例えば、スギノマシン製の超高圧水切断装置を用いて行うことができる。また、このとき使用される水は、半導体プロセスで使用されるレベルの比抵抗18MΩ・cmの超純水であることが好ましい。
【0024】
粉砕の第2工程では、得られたシリコン粗粉末2aを、湿式微粒化方法、例えばスギノマシン製スターバースト装置、または、ジェットミル、超音波破壊または衝撃波破壊で、シリコン粉末2bとする。シリコン粉末2bの粒径は、0.1μm以上100μm以下、好ましくは粒径0.3μm以上70μm以下である。湿式微粒化とは、流路中の被粉砕物が分散した液体に、245MPaという超高圧の圧力エネルギーを与えて、一旦、2つの流路に分岐させ、再度合流する部分で被粉砕物同士を衝突させて、粉砕を行う湿式微粒化システムである。湿式微粒化は、ジェットミル、超音波破壊、衝撃波破壊と同様に、粉砕媒体を使用しない粉砕手段であるため、不純物の混入を抑制することができる。
【0025】
シリコン粉末2bの粒子径は、粉砕設備の能力、量産における生産時間とともに、シリコン粉末2bを溶融するための時間などを考慮して設定される。シリコン粉末2bの粒径が100μm以下であると、比較的低温でシリコン粉末2bを溶融させることができる。一般的なシリコンの溶融温度は1410℃であるので、シリコンを溶融させるには大規模な炉が必要である。ところが、シリコン粉末の粒径が100μm以下となると、その溶融温度が低下する。
【0026】
シリコン粉末2bには、粉砕工程(図1B)において太陽電池の特性を劣化させる不純物、例えばAl,Fe,Cr,Ca,Kなどが混入しない。つまり、シリコンインゴット1の純度を維持したまま、粉末化することができる。よって、シリコンインゴット1の純度が99.99%以上(好ましくは99.9999%以上)であれば、得られるシリコン粉末の純度も99.99%以上(好ましくは99.9999%以上)とすることができる。
【0027】
一方、シリコンインゴット1を、粉砕機やローラーなどを使用して粉砕しようとすると、粉砕物に不純物が混入するため、シリコンインゴット1の純度を維持したまま、粉末化することはできない。
【0028】
次に、得られたシリコン粉末2bを基体10に載置する(図1C)。シリコン粉末2bを、基体10に載置する代わりに、容器に収容してもよい。基体10の材質は特に制限されないが、銅(Cu),モリブデン(Mo),チタン(Ti),ステンレス(SUS)などであればよい。
【0029】
シリコン粉末2bを基体10に載置するには、乾燥したシリコン粉末をスキージにて塗布することが好ましい。基体10に載置されるシリコン粉末の量は、約1.5g/cmであることが好ましい。また、基体10に載置されるシリコン粉末の量は、得られるシリコンターゲット2cの厚みが5〜15mmとなるような量とすることが好ましい。
【0030】
次に、基体10に載置したシリコン粉末2bにプラズマを照射して、シリコン粉末2bを溶融させ、さらに冷却して多結晶化させて、シリコンターゲット2cとする(図1C)。プラズマは、真空プラズマであってもよいが、処理の簡便さ、装置構成の便利さから、大気圧プラズマであることが好ましい。
【0031】
ここで用いることができる大気圧プラズマ装置の概略が、図2に示される。図2に示されるように、大気圧プラズマ装置50は、陰極20と陽極21を有する。陽極21には、プラズマ噴射口22が設けられている。陰極20と陽極21との間にDC電圧を印加するとアーク放電が発生するので、不活性ガス(窒素ガスなど)を流すことによって、プラズマ噴射口22からプラズマ23が噴出する。このような大気圧プラズマ装置は、例えば特開2008−53632号公報などに記載されている。
【0032】
大気圧プラズマ装置50のXYZ軸に移動可能なステージ(不図示)に、シリコン粉末2bを載置した基体10を搭載して、大気圧プラズマで基体10の表面を一端から他端まで走査して熱処理を行う。大気圧プラズマの温度は10000℃以上であるが、プラズマ噴射口22の先端の温度は約2000℃となるように調整することが好ましい。プラズマ噴射口22は、基体10のシリコン粉末2bから約5mm離間して配置される。投入パワーは20kwとして、プラズマ23を不活性ガスで押出して基体10に噴射する。噴射口22からのプラズマ23は、基体10の表面の40mm径の領域に照射される。プラズマ23が照射された領域のシリコン粉末2bは溶融する。
【0033】
大気圧プラズマ23の基体10の表面での温度は、大気圧電源のパワーや、噴射口22と基体10との間隔などによって、任意に制御することができる。大気圧プラズマ23の基体10の表面での温度を適切に制御して、シリコン粉末2bの溶融条件を調整する。
【0034】
シリコン粉末2bが溶融した後、さらに不活性ガス(窒素ガスなど)をあてて冷却して多結晶化する。それにより、基体10にシリコンターゲット2cが形成される。このとき、溶融したシリコン粉末2bを急冷すると、結晶粒径の小さい多結晶シリコンとなる。
【0035】
プラズマを押出す不活性ガスに、微量の水素ガスを混合してもよい。微量の水素を混合することで、シリコン粒子2bの表面に形成された酸化膜を除去することが可能となり、かつ結晶欠陥の少ないシリコンターゲット2cを得ることができる。
【0036】
走査スピードは、100mm/秒〜2000mm秒とすることが好ましく、例えば約1000mm/秒とする。走査スピードが100mm以下であると、下地となる基体10が溶融して、得られるシリコンターゲット2cへ悪影響を及ぼすことがある。また、走査スピードが2000mm以上であると、シリコン粒子2bの上部しか溶融されない。また、2000mm/秒以上の速度で走査するには、装置システムが複雑になる。
【0037】
基体10に形成されたシリコンターゲット2cは、基体10から剥離されて、スパッタ成膜用のシリコンターゲットとして用いられる。シリコンターゲット2cは、原料としたシリコンインゴット1と同様に、ドーパントを含有している。つまり、シリコンターゲット2cは、P型またはN型にドープされている。シリコンターゲット2cにおけるドーパント濃度は、用途に応じて適宜設定される。
【0038】
また、得られるシリコンターゲットの厚みは、5〜15mmであることが好ましい。スパッタ成膜用のターゲットとして用いるためである。
【0039】
2.多結晶型太陽電池パネルについて
本発明の多結晶型太陽電池パネルは、ドーパント含有シリコンターゲットを用いて、基板上にアモルファスシリコン膜をスパッタ成膜し、成膜されたアモルファスシリコン膜にプラズマを照射して加熱溶融させて、さらに冷却して再結晶化させて多結晶シリコン膜とすることを特徴とする。そのフローが図3、ならびに図5〜図7に示される。
【0040】
まず、基板3を用意する(図3A)。基板3は、太陽電池の電極となる。具体的に、基板3は、Al,Ag,Cu,Feなどの太陽電池の裏面電極として用いられる金属基板またはロールであればよく、特に限定されるものではない。また、基板3は、高導電性透明基板であってもよく、例えば、Sn,Zn,Inを含む無機基板である。高導電性透明基板を用いれば、複数の太陽電池セルを積層することができる。
【0041】
次に、基板3の表面に、ドーパント含有シリコンターゲットを用いてアモルファスシリコン膜2dを成膜する(図3B)。ドーパント含有シリコンターゲットを用いて形成されるスパッタ膜は、ターゲットと同様にドーパントを含有するアモルファスシリコン膜2dとなる。つまり、P型シリコンターゲットを用いてスパッタ成膜したアモルファスシリコン膜2dは、P型ドーパントを含有し;N型シリコンターゲットを用いてスパッタ成膜したアモルファスシリコン膜2dは、N型ドーパントを含有する。
【0042】
ここで用いるドーパント含有シリコンターゲットは、前述のシリコンインゴットの粉砕物から得たシリコンターゲットとすることができる。
【0043】
スパッタ成膜は、通常のスパッタリング装置、例えばマグネトロンスパッタリング装置を用いて行えばよい。図4には、マグネトロンスパッタリング装置100の概要が示される。マグネトロンスパッタリング装置100は、真空チャンバ51;シリコンターゲット2cと水冷ジャケット61と磁気回路60とを含むマグネトロン電極;基板3を有する。
【0044】
真空チャンバ51には、ガス導入装置55、排気装置56、排気口57、バルブ58が設けられる。排気装置56は、真空チャンバ51の内部を負圧することができる。ガス導入装置55は、真空チャンバ51の内部にスパッタリングガスを導入することができる。スパッタリングガスは、一般的にArガスなどの不活性ガスである。
【0045】
マグネトロン電極は、シリコンターゲット2c、シリコンターゲット2cに接続された高電圧印加電源62、シリコンターゲット2cの裏面(基板3が配置された面とは反対側の面)側に配置された磁気回路60を有する。磁気回路60とシリコンターゲット2cとの間には、水冷ジャケット61が配置されている。また、シリコンターゲット2cは、パッキングプレート63に貼り付けられている。そして、マグネトロン電極の周囲には、アースシールド59が配置されている。
【0046】
また、スパッタ膜が形成される基板3は基板保持具54に保持されており、シリコンターゲット2cに対向して設置されている。
【0047】
マグネトロンスパッタリング装置100にドーパント含有シリコンターゲット2cを配置し、基板保持具54に基板3を保持させる。具体的なスパッタ成膜条件は、特に限定されないが、真空チャンバ51の内部圧力を0.5Paとし、DC電源のパワーを1kWとし、電極間隔(シリコンターゲット2cと基板3との間隔)を約100mmとすることができる。
【0048】
基板3に成膜するアモルファスシリコン膜2dの厚みt(図3B参照)は、テクスチャの構造などを鑑みて目的に応じて変化させればよい。通常のアモルファスシリコン膜2dの厚みtは0.1〜0.5μmである。基板3の表面には、均等にアモルファスシリコン膜をスパッタ成膜するべきである。
【0049】
アモルファスシリコン膜2dを、PN接合を有する多結晶シリコン膜に変換して、太陽電池パネルのシリコン基板とする。そのためのフローは、以下の2つの態様に大別されうる。
第1の態様)アモルファスシリコン膜2dを多結晶化してから、その表層にドーパントをドーピングしてPN接合を有する多結晶シリコン膜とする(図5)。
第2の態様)アモルファスシリコン膜2dに、さらにアモルファスシリコン膜2eを成膜してアモルファス積層膜として、さらにアモルファス積層膜を多結晶化して、PN接合を有する多結晶シリコン膜とする(図6)。
【0050】
第1の態様について
第1の態様を、図5を参照して説明する。基板3に成膜したアモルファスシリコン膜2d(図5A)にプラズマを照射して、アモルファスシリコン膜2dを溶融し、さらに冷却して多結晶化させて多結晶シリコン膜4とする(図5B)。照射するプラズマは、大気圧プラズマであることが好ましい。大気圧プラズマの照射は、図2と同様の大気圧プラズマ装置50を用いて行うことができる。
【0051】
大気圧プラズマ装置50のXYZ軸に移動可能なステージに、アモルファスシリコン膜2dを成膜した基板3を搭載して、大気圧プラズマ源で基板3の表面を一端から他端まで走査して熱処理を行う。大気圧プラズマの温度は、一般的には10000℃以上であるが、プラズマ噴射口22の先端の温度は約2000℃となるように調整する。プラズマ噴射口22は、基板3のシリコン粉末2から約5mm離間して配置される。投入パワーは20kwとして、プラズマ23を窒素ガスで押出して基板表面に噴射する。噴射口22からのプラズマ23は、基板3の表面の40mm径の領域に照射される。プラズマ23が照射された領域のアモルファスシリコン2dは溶融する。
【0052】
大気圧プラズマ23の基板表面での温度は、大気圧電源のパワーや、噴射口22と基板との間隔などによって、任意に制御することができる。大気圧プラズマ23の基板表面での温度を適切に制御して、アモルファスシリコン2dの溶融条件を調整する。
【0053】
プラズマ照射によってアモルファスシリコン2dが溶融した後、更に不活性ガス(窒素ガスなど)をあてて冷却して、溶融シリコンを多結晶化する。それにより、基板3の表面に多結晶シリコン膜4が形成される。このとき、溶融したアモルファスシリコン2dを急冷すると、結晶粒径の小さい多結晶シリコンとなる。そこで、結晶粒径が0.05μm以下となるように、できるだけ急速に冷却することが好ましい。
【0054】
プラズマを押出す不活性ガスに、微量の水素ガスを混合してもよい。微量の水素を混合することで、アモルファスシリコン2d表面の酸化膜を除去することが可能であり、かつ結晶欠陥の少ない多結晶シリコン膜4を得ることができる。
【0055】
プラズマ照射の走査スピードは、100mm/秒〜2000mm/秒とすることが好ましく、例えば約1000mm/秒とする。走査スピードが100mm/秒以下であると、下地となる基板3が溶融して、得られる多結晶シリコン膜4へ悪影響を及ぼすことがある。また、走査スピードが2000mm/秒以上であると、アモルファスシリコン2dの上部しか溶融されない。また、2000mm/秒以上の速度で走査するには、装置システムが複雑になる。
【0056】
このように、基板3に成膜したシリコン膜をアモルファスシリコン膜2dとしたことで、大気圧プラズマでシリコン膜を溶融させることができる。大気圧プラズマを用いることで、効率よく大面積の基板3に配置されたアモルファスシリコン2dを、溶融・再結晶化させることができる。一方、バルクシリコンを、大気圧プラズマで溶融させることは、通常困難である。
【0057】
次に、多結晶シリコン膜4の表面を凹凸状に加工してテクスチャ構造5を形成する(図5C)。一般的に、太陽電池のシリコン膜の入射面をテクスチャ構造5として、入射面での反射を抑制する。多結晶シリコン膜4の表面の加工手段は特に限定されず、酸またはアルカリ(KOHなど)で処理したり、三フッ化塩素ガス(ClF)または六フッ化硫黄(SF)などによるガスプラズマで加工したりしてもよい。なお、具体的なテクスチャ構造5は、特に限定されず、公知の構造とすればよい。
【0058】
テクスチャ構造5を有する多結晶シリコン膜4の表層6に、ドーパントを注入する(図5D)。具体的には、多結晶シリコン膜4がP型ドーパントを含有している場合には、多結晶シリコン膜4の表層6にN型ドーパントを注入し;多結晶シリコン膜4がN型ドーパントを含有している場合には、多結晶シリコン膜4の表層6にP型ドーパントを注入する。
【0059】
ドーパントの注入は、プラズマを用いて行うことが好ましい。N型ドーパントであるリンや砒素をプラズマ注入するには、リン元素含有ガス(PH-など)または砒素元素含有ガス(AsH)の存在下で、多結晶シリコン膜4にプラズマを照射すればよい。P型ドーパントであるホウ素をプラズマ注入するには、ホウ素元素含有ガス(BH)のガス存在下で、多結晶シリコン膜4にプラズマを照射すればよい。
【0060】
ドーパントの注入後、多結晶シリコン膜4の表層6にランプを照射するなどして、ドーパントを活性化させる。それにより、PN接合を有する多結晶シリコン膜4が形成される。
【0061】
さらに、多結晶シリコン膜4に絶縁膜7を積層する(図5E)。絶縁膜7は、窒化ケイ素膜などであればよい。絶縁膜7を積層することで、入射光の反射を抑制し、電気特性の劣化を防ぐ。また、絶縁膜7の一部をエッチングして、ライン状のエッチング部に電極8を形成する(図5E)。電極8の材質は、例えば銀である。
【0062】
第2の態様について
第2の態様を、図6を参照して説明する。基板3に成膜したアモルファスシリコン膜2d(図6A)に、他のアモルファスシリコン膜2eを積層する。アモルファスシリコン膜2eはドーパントを含有している。具体的には、アモルファスシリコン膜2dがP型ドーパントを含有している場合には、アモルファスシリコン膜2eはN型ドーパントを含有し;アモルファスシリコン膜2dがN型ドーパントを含有している場合には、アモルファスシリコン膜2eはP型ドーパントを含有する。
【0063】
アモルファスシリコン膜2eは、アモルファスシリコン膜2dと同様に、ドーパント含有シリコンターゲットを用いて、スパッタ成膜により形成されることが好ましい。P型シリコンターゲットを用いれば、P型ドーパント含有アモルファスシリコン膜2eが形成され;N型シリコンターゲットを用いれば、N型ドーパント含有アモルファスシリコン膜2eが形成される。アモルファスシリコン膜2eをスパッタ成膜するための、ドーパント含有シリコンターゲットも、前述の通りシリコンインゴットの粉砕物から得ることが好ましい。
【0064】
アモルファスシリコン膜2eの厚みは、0.5〜50μmであることが好ましい。また、アモルファスシリコン膜2eの厚みの目安は、アモルファスシリコン膜2dの厚みに対して、2〜10%であることが好ましい。両者の厚みを最適化することで、発電効率を高めることができる。
【0065】
アモルファスシリコン膜2dとアモルファスシリコン膜2eとの積層膜に、プラズマを照射して溶融し、さらに冷却して多結晶化させて多結晶シリコン膜4とする(図6C)。照射するプラズマは、大気圧プラズマであることが好ましい。
【0066】
大気圧プラズマを照射するための装置や手法は、図5Bにおいて多結晶シリコン膜4を得る場合と同様にすればよい。
【0067】
次に、多結晶シリコン膜4の表面を凹凸状に加工してテクスチャ構造5を形成する(図6D)。テクスチャ構造5の形成は、図5Cにおいてテクスチャ構造5を形成する場合と同様にすればよい。
【0068】
さらに、多結晶シリコン膜4に絶縁膜7を形成し、電極8を形成する(図6E)。絶縁膜7や電極8は、図5Eのそれらと同様である。
【0069】
他の形態について
第1の態様および第2の態様では、基板3にアモルファスシリコン膜2dを形成した。本形態(他の形態)においては、基板3にドーパントを含有するシリコン粉末2bを配置し;シリコン粉末2bの上に、ドーパント含有アモルファスシリコン膜2dを成膜し;その後、プラズマを照射してシリコン粉末2bとアモルファスシリコン膜2dを多結晶化することで、PN接合を有する多結晶シリコン膜4を得る(図7参照)。
【0070】
本形態(他の形態)を、図7を参照して説明する。まず、基板3にシリコン粉末2bを塗布する(図7A)。基板3は、図3Aにおける基板3と同様である。シリコン粉末2bは、ドーパント含有シリコンインゴットを粉砕して得られるシリコン粉末2bであり(図1B参照)、P型ドーパントまたはN型ドーパントを含有している。
【0071】
シリコン粉末2bの塗布は、a)乾燥したシリコン粉末をスキージにて塗布するか、b)シリコン粉末2bを溶媒に分散させて得たインクを、スピンコート、ダイコート、インクジェットまたはディスペンサなどにより塗布してもよい。インクは、シリコン粉末をアルコールなどに分散させて得ることができる。シリコン粉末を含むインクは、例えば特開2004−318165号を参照して得ることができる。
【0072】
シリコン粉末2bの基板3への塗布量は、正確に調整される必要があり、具体的には約2〜112g/cmに設定することが好ましい。ただし、基板3に塗布されたシリコン粉末2bの塗布膜表面は、多少の凹凸を有していても構わない。後述のように、塗布されたシリコン粉末2bはプラズマで溶融されるので、塗布膜は平滑化されるためである。
【0073】
次に、塗布したシリコン粉末2b上にアモルファスシリコン膜2dを成膜して積層する(図7B)。アモルファスシリコン膜2dはドーパントを含有する。シリコン粉末2bがP型ドーパントを含有している場合には、アモルファスシリコン膜2dはN型ドーパントを含有し;シリコン粉末2bがN型ドーパントを含有している場合には、アモルファスシリコン膜2dはP型ドーパントを含有する。
【0074】
シリコンアモルファス膜2dは、スパッタ装置またはCVD装置を利用して成膜されるが;好ましくは、前述のドーパント含有シリコンターゲット2cを用いて、スパッタ成膜されることが好ましい。シリコンアモルファス膜2dを成膜することで、シリコン粉末2bの一部(アモルファスシリコン膜2d側)は、アモルファスとなってもよい。
【0075】
シリコン粉末2bに積層されるアモルファスシリコン膜2dの厚みは、特に限定されないが、0.1〜0.5μmとするとすればよい。
【0076】
次に、基板3上のシリコン粉末2bおよびシリコンアモルファス膜2dを、大気圧プラズマで溶融させ、さらに冷却することで多結晶シリコン膜4とする(図7C参照)。大気圧プラズマの照射は、図2に示される装置で行えばよい。その手法も、実施の形態2において、アモルファスシリコン膜2dとアモルファスシリコン膜2eとの積層膜を、多結晶シリコン膜とする場合(図6C参照)と同様である。
【0077】
多結晶シリコン膜4にはPN接合が形成されており、多結晶シリコン膜4の厚みは0.5〜50μmとすることが好ましい。
【0078】
次に、多結晶シリコン膜4の表面を凹凸状に加工してテクスチャ構造5を形成する(図7D)。テクスチャ構造5の形成は、図5Cにおいてテクスチャ構造5を形成する場合と同様にすればよい。多結晶シリコン膜4の表層6は、活性化されている。
【0079】
さらに、多結晶シリコン膜4に絶縁膜7を形成し、電極8を形成する(図7E)。絶縁膜7や電極8は、図5Eのそれらと同様である(図7E)。
【0080】
[実験例1]
基板(材質:アルミニウム,サイズ:370mm(X軸)×470mm(Y軸))に、ホウ素含有シリコンターゲットを用いて、ホウ素含有アモルファスシリコン膜2dをスパッタ成膜した(図5A)。アモルファスシリコン膜2dの厚みは50μmであった。
【0081】
次に、図2に示されるような大気圧プラズマ装置で、X軸方向に走査しながら、基板の一端から他端までプラズマを照射し、アモルファスシリコン2dを溶融・再結晶化して、多結晶シリコン膜4とした(図5B)。プラズマ照射領域は、40mm径であった。プラズマを押し出す不活性ガスは、微量の水素ガスを含む窒素ガスとした。一端から他端までの走査が完了したら、Y軸方向に40mmずらし、再度、X軸方向に走査しながらプラズマを照射した。これを繰り返して、基板上に配置されたアモルファスシリコン2dの全てを、帯状に再結晶化させ、ほぼ均質な多結晶シリコン膜とした。多結晶シリコン膜4の厚みは、約50μmであった。
【0082】
次に、多結晶シリコン膜4の表面を凹凸状に加工(テクスチャー化)した(図5C)。多結晶シリコン膜4の表面の加工は、酸またはアルカリ(KOHなど)溶液でウェットエッチングして行ってもよく、三フッ化塩素ガス(ClF3)または六フッ化硫黄(SF6)などによるガスプラズマでエッチングして行ってもよい。
【0083】
次に、多結晶シリコン膜4の表面に、プラズマを利用してリンをドーピングした(図5D)。ドーピングは、10Paの圧力環境下の20SCCMチャンバに、PHガス(0.5%He希釈)を導入し;13.56MHzの高周波放電を利用して、200Wの電力で30秒間ドーピング処理することで行った。ドーピング処理された多結晶シリコン膜4にランプを照射し、不純物を活性化させた。
【0084】
さらに、反射防止および結晶端の電気特性劣化防止を目的とした絶縁膜7(窒化ケイ素膜)をスパッタ成膜した(図5E)。さらに、絶縁膜7の一部をエッチングして、エッチング部にライン状の銀電極8を形成した。
【0085】
このようにして、開放電圧0.6V(10cm換算)の太陽電池を得た。これは、現状市販されている結晶型太陽電池と比べて遜色ないデータである。
【0086】
実験例1では、ホウ素含有アモルファスシリコン膜2dを成膜して、それを多結晶化して、リンをドーピングしてPN接合を形成した。他方、砒素または燐含有アモルファスシリコン膜を成膜して、それを多結晶化し、ホウ素などのP型ドーパントをドーピングしてPN接合を形成しても、同様の成果が得られる。
【0087】
[参考例1]
基板(材質:アルミニウム,サイズ:370mm(X軸)×470mm(Y軸))に、ホウ素含有シリコンターゲットを用いて、ホウ素含有アモルファスシリコン2dをスパッタ成膜した(図6A)。アモルファスシリコン2dの厚みは50μmであった。
【0088】
ホウ素含有アモルファスシリコン2dに、砒素含有アモルファスシリコン膜2eをスパッタ成膜して、積層膜とした(図6B)。砒素含有アモルファスシリコン膜2eの厚みは2μmであった。
【0089】
次に、図2に示されるような大気圧プラズマ装置で、X軸方向に走査しながら、基板の一端から他端までプラズマを照射し、アモルファスシリコン2dおよび2eを溶融・再結晶化して、多結晶シリコン膜4とした(図6C)。プラズマ照射領域は、40mm径であった。プラズマを押し出す不活性ガスは、微量の水素ガスを含む窒素ガスとした。一端から他端までの走査が完了したら、Y軸方向に40mmずらし、再度、X軸方向に走査しながらプラズマを照射した。これを繰り返して、基板上に配置されたアモルファスシリコン2dおよび2eの全てを、帯状に再結晶化させ、ほぼ均質な多結晶シリコン膜とした。
【0090】
次に、多結晶シリコン膜4の表面を凹凸状に加工(テクスチャー化)した(図6D)。
【0091】
さらに、反射防止および結晶端の電気特性劣化防止を目的とした絶縁膜7(窒化ケイ素膜)をスパッタ成膜した(図6E)。さらに、絶縁膜7の一部をエッチングして、エッチング部にライン状の銀電極8を形成した(図6E)。
【0092】
このようにして,開放電圧0.6V(10cm換算)の太陽電池を得た。これは、現状市販されている結晶型太陽電池と比べて遜色の無いデータである。
【0093】
参考例1では、ホウ素含有アモルファスシリコン膜2dを形成したのち、砒素含有アモルファスシリコン膜2eを積層して、ガスプラズマでPN接合を形成した。他方、砒素含有アモルファスシリコン膜2dを形成したのち、ホウ素含有アモルファスシリコン膜2eを積層して、ガスプラズマでPN接合を形成しても同様の成果が得られる。
【0094】
[参考例2]
基板(材質:アルミニウム,サイズ:370mm(X軸)×470mm(Y軸))に、約1μmの粒径のシリコン粉末2bを塗布した(図7A)。シリコン粉末2bは、ホウ素含有シリコンインゴットを粉砕して得たため、P型ドープされている。シリコン粉末2bの塗布はスキージで行い、約30μmの厚みの塗布膜とした。
【0095】
その後、リン含有シリコンターゲットを用いて、シリコン粉末2bにシリコンアモスファス膜2dを成膜した(図7B)。シリコンアモスファス膜2dの厚みは2μmであった。
【0096】
図2に示されるような大気圧プラズマ装置で、X軸方向に走査しながら、基板の一端から他端までプラズマを照射し、シリコン粉末およびシリコンアモルファス膜を溶融・再結晶化して、多結晶シリコン膜4とした(図7C)。プラズマ照射領域は、40mm径であった。プラズマを押し出す不活性ガスは、微量の水素ガスを含む窒素ガスとした。一端から他端までの走査が完了したら、Y軸方向に40mmずらし、再度、X軸方向に走査しながらプラズマを照射した。これを繰り返して、基板上に配置されたシリコン粉末およびシリコンアモルファス膜の全てを、帯状に再結晶化させ、ほぼ均質な多結晶シリコン膜とした。多結晶シリコン膜の厚みは15μmであった。
【0097】
次に、形成した多結晶シリコン膜4の表層6を凹凸状に加工(テクスチャー化)した。(図7D)。多結晶シリコン膜4の表面の加工は、酸またはアルカリ(KOHなど)溶液でウェットエッチングして行ってもよく、三フッ化塩素ガス(ClF3)または六フッ化硫黄(SF6)などによるガスプラズマでエッチングして行ってもよい。
【0098】
さらに、反射防止および結晶端の電気特性劣化防止を目的とした絶縁膜7(窒化ケイ素膜)をスパッタ成膜した(図7E)。さらに、絶縁膜7の一部をエッチングして、エッチング部にライン状の銀電極8を形成した(図7E)。
【0099】
このようにして,開放電圧0.6V(10cm換算)の太陽電池を得た。これは、現状市販されている結晶型太陽電池と比べて遜色ないデータである。
【0100】
参考例2では、基板3にホウ素含有シリコン粉末2bを塗布し、さらにリン含有シリコンアモルファス膜2dを成膜し、それらを多結晶シリコン膜4とした。他方、基板3に、リン(P)または砒素(As)含有シリコン粉末を塗布し、ホウ素含有シリコンアモルファス膜2dを成膜して、それらを多結晶シリコン膜4としても、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、安価で効率よく、大面積の太陽電池パネルを提供することができる。本発明により提供されるシリコンスパッタターゲットは、結晶型太陽電池のシリコン原料として用いることができる。また、本発明によれば、安価で効率よく、大面積の太陽電池パネルを提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 シリコンインゴット
2a シリコン粗粉末
2b シリコン粉末
2c シリコンターゲット
2d アモルファスシリコン膜
2e アモルファスシリコン膜
3 基板
4 多結晶シリコン膜
5 テクスチャ構造
6 多結晶シリコン膜の表層
7 絶縁膜
8 電極
10 基体
20 陰極
21 陽極
22 プラズマ噴射口
23 プラズマ
30 シリコンインゴット
31 ワイヤ
40 シリコン陽極
41 アーク放電
42 シリコン粒子
43 アルゴンガス
44 輸送管
45 支持基板
46 高温プラズマ
47 ハロゲンランプ
48 分離室
49 多結晶シリコン膜
50 大気圧プラズマ装置
51 真空チャンバ
54 基板保持具
55 ガス導入装置
56 排気装置
57 排気口
58 バルブ
59 アースシールド
60 磁気回路
61 水冷ジャケット
62 高電圧印加電源
63 パッキングプレート
100 マグネトロンスパッタリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを用意する工程Aと、
前記P型またはN型のドーパントを含有したシリコンターゲットを利用して、基板表面にP型またはN型アモルファスシリコン膜をスパッタ成膜する工程Bと、
前記P型またはN型アモルファスシリコン膜にプラズマを走査させて溶融後、再結晶化させてP型またはN型多結晶シリコン膜を形成する工程Cと、
前記工程Cで形成された前記P型多結晶シリコン膜に、N型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する、または前記工程Cで形成された前記N型多結晶シリコン膜に、P型のドーパントを含むガスによるプラズマに曝してPN接合を形成する工程Dと、
を含む、多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【請求項2】
前記基板は、Al、Ag、Cu、Sn、Zn、In、Feのいずれかを含む、請求項1に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【請求項3】
前記プラズマは、大気圧プラズマである、請求項1または2に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【請求項4】
前記走査速度は、100mm/秒以上2000mm/秒以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【請求項5】
前記C工程において、プラズマ照射によって前記P型またはN型アモルファスシリコン膜を溶融した後、不活性ガスを供給して溶融した前記P型またはN型アモルファスシリコン膜を急冷して多結晶化させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。
【請求項6】
前記C工程において、不活性ガスに水素ガスを混合させた混合ガスにより、発生したプラズマを押出しながらプラズマ照射を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多結晶型太陽電池パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199571(P2012−199571A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120994(P2012−120994)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2011−546453(P2011−546453)の分割
【原出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】