説明

多重ビーム測深機

本発明による測深機は、それらの個別の軸がプラットフォームの運動方向の前方に向かって照準位置がずれている2つの送信−受信アンテナ(1、10)を備え、これらの軸はそれらの交点を通る直線(3)に対して対称で、プラットフォームの進行方向の軸に平行であり、第2のアンテナの受信周波数に等しい第1のアンテナの送信周波数は、第2のアンテナの送信周波数と異なり、後者の周波数は第1のアンテナの受信周波数に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、船舶又は潜水艦のプラットフォームに設置される、潜水艦の予測的測深を行なうための多重ビーム測深機である。
【背景技術】
【0002】
現在の多重ビーム測深機(SMF)は通常、一般的にプラットフォームの進行方向軸に平行に配置された、アンテナの軸に直角な超音波送信を生じる線形アンテナ、又は送信用要素の2次元ネットワークを含む。この結果は、測深機が何ら予測的な能力を持たず、垂直又は横方向の測深の目的だけに使用され得るということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主題は、プラットフォームがその経路上で遭遇するであろう、(固定された障害物又は、漁船の場合には魚の大群のような)障害物及び興味の中心を予想することを可能にする多重ビーム測深機であり、予想距離は有利にもプラットフォームのレベルで水深に実質的に等しくなることができ、この測深機は優れた分解能の性能を有する一方で、可能な限り最も製作するのに経済的なものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による測深機は、それぞれの軸が、プラットフォームの運動方向の前方に向かって照準位置がずれている、少なくとも2つの送信−受信アンテナを備え、これらの軸は実質的にそれらの間で直角をなし、そしてプラットフォームの進行方向の軸に対して対称であり、第2のアンテナの受信周波数に等しい第1のアンテナの送信周波数は、第2のアンテナの送信周波数と異なり、後者の周波数は第1のアンテナの受信周波数に等しい。本発明の1つの特徴によれば、これらの送信及び受信周波数はフィルタリングにより互いに分離され得る一方で、互いに可能な限り近接している。
【0005】
本発明は制限されない例として採用され、添付の図面により例示されている実施形態の詳細記述を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は2つの線形形状の多重ビームアンテナを備える測深機に関して、以下に説明されるが、しかし本発明はこの例のみに限定されず、他のタイプのアンテナ、例えば2次元ネットワーク・アンテナに適用され得ることが良く理解される。
【0007】
図1及び2の線図は、人為的にその向きを、第1にプラットフォームの前方に向かって照準位置がずれている方向に分解しながら(図1)、次にその進行方向の軸に対して軸から外す(図2)ことにより、説明を単純化するために本発明の測深機装置、すなわち送信アンテナの単一のアンテナを示す。図3は本発明に従ってそれらが方向付けられねばならないような、測深機の2つのアンテナを表わす。これらの3つの図において、同じ要素は同一の参照番号を割り当てられている。
【0008】
図1の線図は水底の上方の高さHに置かれた、単一の沈んでいる送信アンテナ1を表わし、このアンテナの軸は水平と想定される。このアンテナを支持するプラットフォームは図示されていない。アンテナ1の送信円錐の母線2は、その支持プラットフォームの移動の軸3を含む垂直平面内に、その位置を示されており、それは又この場合アンテナ1の送信円錐の軸である。この送信円錐の開口角はΨと呼ばれる。この角度Ψは約30°〜60°の間にあることが望ましい。このアンテナ1の送信円錐は、一般に双曲線の形(それは角度Ψの値、すなわち例えばプラットフォームのピッチに応じて、放物線形状又は楕円形状を有し得る)の(「帯状の場所」と呼ばれる)幾何学図形4に従って水底と交差する。この円錐の母線2は、(この円錐の頂点でもある)アンテナ1の中心5から出発し、点6において水底と交差する。頂点5から下ろされた垂線7は点8において水底と交差する。点6と8の間の距離はxと記される。実際に、帯状の場所4は次の式に従って、送信アンテナの長さL、送信かすめ角Ψ、高さH、及び波長λに応じて、非ゼロの幅δxを有する:
【数1】

【0009】
帯状の場所の幅は、マッピングにおける欠落無しのサンプリングを確実にするために、プラットフォームの運動速度に対して限界を課すが、しかしこの制限は従来の多重ビーム測深機の場合よりも制約が少ない。例えば、Ψ=45°に対してそれは3倍近く制約が少ない。
【0010】
長手方向の分解能は次の式により定義される。
【数2】

【0011】
従来の多重ビーム測深機において、長手方向の分解能と帯状の場所の幅は区別できない。このとき分解能は、それが本質的に送信された信号の帯域Bに依存するため、一般的に帯状の場所の幅よりも遥かに良いであろう。
【0012】
受信アンテナ(図示せず)は、その仰角における照準合わせが帯状の場所の形状に適合している線形アンテナ、又は基本アンテナの2次元ネットワークであり得る。具体的に、受信アンテナにおける最下部によって反射された波は、帯状の場所における反射器の位置に応じて、(水平面に対し)θ1〜θ2に変化し得る仰角を有する。従って受信アンテナの仰角における開口部が、音波を当てられた帯状の場所の物体により反射された音波の減衰を防ぐために十分なことが必要であり、あるいは、2次元ネットワークに対して、アンテナをθ1〜θ2のこの同じ範囲の値の中で、仰角において照準合わせする備えがなされなければならない。角度θ1はこの範囲により決定され、典型的には約20°であり、そして角度θ2は角度Ψの余角、すなわちθ2=90°−Ψである。
【0013】
図2の線図は、図1と同じではあるが、しかしプラットフォームの進行方向軸3に対して角度φ/2だけ、アンテナの中心5を通過する水平面内で軸から外れている送信アンテナ1を表わす。それが生み出す帯状の場所9は、当然帯状の場所4と異なるが、しかしこの場合実質的に双曲線の形状を有する。アンテナ1と同じ水平面内に設置されている受信アンテナ(図示せず)は、それゆえアンテナ1とは有利にも約90°に等しい角度をなす。それらの前方に向かう照準位置のずれと組み合わされた、この2つのアンテナの軸からの外れは、受信アンテナにより受信される情報の、特にプラットフォームのヨーイング運動に起因する混乱を修正することを容易にする。プラットフォームのローリング、ピッチング、及びヨーイング運動は、従来の多重ビーム測深機の送信アンテナの音波発信特性に影響することが知られている。ピッチングはビームに前方及び後方に向かって照準位置のずれを生じさせ、それは電子的照準合わせにより修正することが可能である。ローリングは音波の発信に対して殆ど影響を持たず、従って受信方向を除いては修正の必要がない。ヨーイングは非常に大きな影響を持ち、単純なやり方では修正され得ない。これらのコメントは図1の構成による照準位置がずれたアンテナに対して有効なままである。しかしプラットフォームの経路に対する送信アンテナの芯ずれは、測深機のヨーイングに対する感度を低下させ、ローリングに対する感度を増し、すなわちそれは2つのタイプのエラーを相殺させる。反対に、プラットフォームの経路に相当する領域において、前方に向かうサンプリングの連続性の確保を可能にする、電子的照準合わせを行なうことが常に可能である。この送信アンテナの構成は又、横方向の分解能を改善するため、両面性を持つ(ambiguous)受信アンテナの使用を可能にする。この受信アンテナの向きは、そのとき好ましくはプラットフォームの経路に対して直角に配置されるであろう。具体的には、それはセンサの数を増加させないように、空間的に開口部をアンダーサンプリングする間に、受信アンテナの開口部を増すことができる。受信アンテナのネットワークのローブは、所定の瞬間における送信アンテナの芯ずれが、受信アンテナの両面性を持つ方向の1つだけの方向に音波を発信するため、それほど妨害的ではなく、従って同一番号の受信チャンネルに対して、より大きな寸法のアンテナを管理することができ、それゆえ従来方式で構成されたアンテナでは達成出来ない、より優れた分解能を持つことが可能である。そこでは受信アンテナが送信アンテナに対して直角であり、従ってそれに対して常にエコーが2つの両面性を持つ方向に存在する受信の時期がある。
【0014】
図3は(図2のように向けられた)第1のアンテナ1に加えて、軸3に対してアンテナ1に対称な第2のアンテナ10を表わす。上述のように、これら2つのアンテナは、それらの間に望ましくは90°に等しい角度φをなす。測深機が3つ以上のアンテナを備える場合、その角度φは90°とは異なる可能性があり、追加のアンテナは、望ましくはプラットフォームの経路に直角か、あるいは2つの送信アンテナに直角の受信アンテナであることが有利である。第1の場合、該システムは上記に説明したように、2つの送信アンテナに加えて、場合によりアンダーサンプリングされる単一の受信アンテナを備える。第2の場合、2つの送信アンテナに関連する2つの受信アンテナが存在する。アンテナ10により生み出される帯状の場所は参照番号11とされる。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、アンテナ10が周波数f2において送信し、周波数f1において受信する一方で、アンテナ1は周波数f1において送信し、周波数f2において受信する。これら2つの周波数に対して尊重すべき条件は、それらが2つのアンテナの帯域幅内にあることが出来るように相互に十分近く、そしてこれらのアンテナに接続された受信装置によってスペクトル的に分離され得ることである。
【0016】
このアンテナ構成の価値は、それが照準位置のずれ及び軸からの外れの利点を組み合わせ、そして2つのアンテナを異なる送信周波数において動作させることである。これらの利点はとりわけ:
長手方向の分解能が単純なSMFよりも大幅に優れており、
前方に向けて照準位置をずらすのは、事実、支持プラットフォームを構成する船舶の安全性を備えるために適するナビゲーション機器であり、
僅かなかすめ角が横方向の音波探知器のものに類似した、そして地形上の読み取りに良く適している音波の発信を生み出し、
軸からの外れが、横方向の分解能を改善する、両面性を持った受信アンテナの構想を可能にし、
2つの帯状の場所が姿勢の乱れ(ローリング、ピッチング、及びヨーイング)の影響を非常に単純に修正することを可能にする。
具体的には、プラットフォームの運動の修正は、「欠落のない」読み取りのカバーを提供することが必要である。通常の構成は全くローリングには鈍感である。ピッチングの影響は、ほぼ完全に修正することが可能である。他方で、それはヨーイング運動に対して非常に敏感である。本発明の構成はプラットフォームの3つの回転(ローリング、ピッチング、ヨーイング)に対して敏感であるが、修正後の残留エラーは、従来の構造の最悪の場合よりも少ない。送信は両面性を持つため、その照準合わせを至る所で修正することは不可能であり(電子的照準合わせと回転との間には等価性がない)、従って修正される位置を選択することが必要であり、カバーすることの連続性を確保するために、幾つかの送信及び幾つかの照準合わせを非常に頻繁に準備する必要がある。この場合、2つのアンテナを持つことは状況を改善する。修正の原理は、アンテナシステムにより支えられる回転を定義し、各アンテナの照準合わせの方向として、回転のない場合のアンテナの公称方向を強いるために、(角度中心の助けにより行なわれる)従来の姿勢測定を用いることにある。これは前方領域において、音波の発信が妨害的な回転(勿論これらの影響は、それら自体が前方領域外だと感じさせるであろうが、管理することがより容易であるという結果を伴う)によって、余り大きく妨害されないことを確実にする。一部のメーカーは修正を改善するため、しかし互いに平行で独立した2つの送信アンテナを有する構成で、(各々の側に1つずつ)2つのアンテナを使用することもまた指摘すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の適用特性の一部分による、そのプラットフォームの前方に向かって照準位置がずれている、単一の超音波送信アンテナに関する様々なパラメータを説明している単純化された線図である。
【図2】本発明の適用特性の一部分による、そのプラットフォームの進行方向の軸に対して軸から外れている、単一の超音波送信アンテナに関する様々なパラメータを説明している単純化された線図である。
【図3】本発明による、それらのプラットフォームの前方に向かって照準位置がずれており、それらの進行方向の軸に対して軸から外れている、1組の2つの超音波送信アンテナに関する様々なパラメータを説明している単純化された線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶又は潜水艦のプラットフォームに設置される、潜水艦の予測的測深を行なうための多重ビーム測深機であって、
その個別の軸が前記プラットフォームの運動方向の前方に向かって照準位置がずれている、少なくとも2つの送信−受信アンテナ(1、10)を備え、これらの軸がそれらの交点を通る直線(3)に対して対称で、前記プラットフォームの進行方向の軸に平行であり、第2のアンテナの受信周波数に等しい第1のアンテナの送信周波数が、第2のアンテナの送信周波数と異なり、後者の周波数が前記第1のアンテナの受信周波数に等しいことを特徴とする測深機。
【請求項2】
前記2つのアンテナの軸が、それらの間に約90°の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の測深機。
【請求項3】
前記送信及び受信周波数がフィルタリングにより互いに分離され得る一方で、互いに可能な限り近接していることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の測深機。
【請求項4】
各送信アンテナの送信円錐の開口角(Ψ)が約30〜60°の間にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の測深機。
【請求項5】
2つの送信アンテナと、前記プラットフォームの経路に直角に向いた1つの追加的な両面性を持つ受信アンテナとを備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測深機。
【請求項6】
2つの送信アンテナと、該送信アンテナに直角な2つの追加の受信アンテナとを備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測深機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−534679(P2009−534679A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507078(P2009−507078)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054097
【国際公開番号】WO2007/122262
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508317790)
【Fターム(参考)】