説明

多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル、多重反射セル式ガス分析システム及びフローセルのミラー間距離の調整方法

【課題】ミラーの曲率半径のバラツキの影響を簡単且つ費用の増大を伴わずに補償可能な、多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル、多重反射セル式ガス分析システム及びフローセルのミラー間距離の調整方法を提供する。
【解決手段】 試料ガス入口部15及び試料ガス出口部16を備える筒状のセルボディ5、セルボディ5の第1終端部に設けられ、入射光及び出射光が通過するトンネル部4を有した第1ミラー2a、セルボディ5の第2終端部に設けられ、第1ミラー2aの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラー6とを備え、第2終端部と第2ミラー6との間にスペーサ13を挿入して、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離を調整するスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中の不純物ガスなどの微量成分濃度の測定に用いる多重反射セル式ガス分析システムに関し、特に工場での出荷前の多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析システムとして、多重反射セル式ガス分析システムの基本となる多重反射セルについては、エリオット(Herriott)式のものがよく知られている。(例えば、非特許文献1参照。)。エリオット式のガスセルは、2枚の球面鏡又は放物面鏡を、筒状のセルボディに対向させて配置し、一方のミラー周縁部に設けた小孔から光を入射し、2枚のミラーの間で多重反射させた後、再び、入射光から入射光とは異なる角度で光束を取り出すものである。なお、
光が多重反射の後に入射光と同じ孔から出てくるためには、装置内での反射回数、ミラー間の距離、及びミラーの曲率半径又は焦点距離(非球面鏡の場合)における関係が厳密に正確でなければならない。ミラー間の距離はセルボディの加工精度で決まるが、セルボディの単純な構造から一般に単純な機械加工で制作可能であり、公差±0.1mm程度の精度が容易に得られる。しかし、ミラーの曲率半径又は焦点距離については、曲面構造という特殊性や、金属の延性などの性質、及びミラーとしての性能(高反射率、低散乱光)を維持するための研磨加工の特性によって製品レベルでの加工誤差が避けられないため、その精度は非常に出しにくく、工業生産上、設計値通りにすることは実質的に不可能であるという問題がある。
【0003】
以下に表1を用いて、多重反射セル式ガス分析システムシステム用のフローセルのミラーの曲率半径の調整機構について説明する。表1では、用いた多重反射セル式ガス分析システムシステム用のフローセルにおいて、対向するミラーの曲率半径の製品レベルにおける精度誤差は等しい(対向する2つのミラーの曲率半径の誤差は等しい)として、ミラーの曲率半径の基準寸法に対する誤差に対し、入射孔(出射孔)における入射光と出射光の位置ずれを示す(ミラー間距離が260mm、ミラーの曲率半径が275mmとして設計したフローセルの場合である。)。出射光は、入射光として入射孔の中心から入射されたレーザ光束が、対向するミラー間で30回の多重反射を繰り返した後、出射孔から出射された際に得られるものとする。又、曲率半径の「誤差」とは、ミラーの加工において生じた加工精度の低下による、製品の実測値と設計基準値との差異である。
【表1】

【0004】
表1から明らかなように、ミラーの曲率半径の誤差−2.0mm、−1.0mm、0mm、+1.0mm及び+2.0mmに対し、入射孔(出射孔)における入射光と出射光との距離は、それぞれ+3.1mm、+1.6mm、0mm、−1.6及び−3.0mmである。これより曲率半径の誤差が大きくなるにつれて、入射孔(出射孔)における入射光と出射光との距離(位置ずれ)も大きくなることがわかる。ミラーの曲率が設計基準値から誤差を生じると、多重反射後の出射光は、光軸がずれるため、入射及び出射孔の壁で散乱し大きな迷光を生じたり、孔から出射しない現象を引き起こし、測光上において多重反射セル式ガス分析システムの性能を大きく劣化する結果を生じる。
【0005】
この問題に対しては、光線追跡の計算結果により、ミラーの曲率半径又は焦点距離の誤差をミラー間の距離を変えることで、誤差の影響の補正を行うことが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、真空シール用のガスケット及びミラー間距離の調整用ガスケットを1組としてミラー間の距離を変更する必要があるが、ミラー間距離の調整用ガスケットは一般に純銅の焼鈍し品が必要で制作に困難を要し、費用も増大するという問題がある。
【非特許文献1】D.R.エリオット(Herriott)、H.コゲルニック(Kogelnik)、R.コンファー(Kompfer)共著、「応用光学(Appl. Opt.)」、第3版、1964年、p.523
【特許文献1】特開2006−58009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明は、ミラー製造時のミラーの曲率半径のバラツキの影響を簡単且つ費用の増大を伴わずに補償可能な、多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル、このフローセルを用いた多重反射セル式ガス分析システム及びフローセルのミラー間距離の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の様態は、(イ)試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディと、(ロ)セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラーと、(ハ)第1終端部に対向するセルボディの第2終端部に設けられ、第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーと、(ニ)第2終端部と第2ミラーとの間に設けられ、第2終端部と第2ミラーとの間にスペーサを挿入することにより第1及び第2ミラー間の距離を調整するスペーサ挿入手段とを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の様態は、(イ)試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、第1終端部に対向するセルボディの第2終端部に設けられ、第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを有するフローセルと、(ロ)フローセルに連結され、フローセルからの光学的情報を電気信号に変換する分析計とを備える多重反射セル式ガス分析システム用に関する。ここで、第2の様態に係る多重反射セル式ガス分析システム用は、第2終端部と第2ミラーとの間に、スペーサの厚さの選択により第1及び第2ミラー間の距離を調整するスペーサ挿入手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の様態は、試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、第1終端部に対向するセルボディの第2終端部に設けられ、第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法に関する。ここで、第3の様態に係る多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法は、(イ)第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径が共に最小許容寸法となる場合に対してセルボディの長さを設計して、フローセルをスペーサなしで組み立てるステップと、(ロ)入射光をフローセルの内部に導入して、フローセルから出力される出射光の光強度を測定しながら、順次、第2終端部及び第2ミラーの間に複数の厚さの異なるスペーサを挿入し、最大光強度を与える厚さのスペーサを選択し、第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップとを含むことを特徴とする。ここで、「最小許容寸法」とは、第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径の寸法公差が負の最大値(マイナス公差の最大値)を有する場合である。
【0011】
本発明の第4の様態は、試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、第1終端部に対向するセルボディの第2終端部に設けられ、第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法に関する。ここで、第4の様態に係る多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法は、(イ)第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径が共に最小許容寸法となる場合に対してセルボディの長さを設計して、フローセルをスペーサなしで組み立てるステップと、(ロ)入射光をフローセルの内部に導入して、フローセルから出力される出射光の光強度を測定するステップと、(ハ)測定された光強度が規定値に達しているか確認するステップと、(ニ)規定値に達していない場合、セルボディの第2終端部及び第2ミラーの間に、第1のスペーサを挿入して、フローセルを組み立て直すステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の様態は、試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、第1終端部に対向するセルボディの第2終端部に設けられ、第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法に関する。ここで、第5の様態に係る多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法は、(イ)第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径をそれぞれ測定するステップと、(ロ)測定結果に基づき、最適の厚みを有するスペーサを決定するステップと、(ハ)第2終端部及び第2ミラーの間に、決定されたスペーサを挿入して、第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミラー製造時のミラーの曲率半径のバラツキの影響を簡単且つ費用の増大を伴わずに補償可能な、多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル、このフローセルを用いた多重反射セル式ガス分析システム及びフローセルのミラー間距離の調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(多重反射セル式ガス分析システム)
図1に示す本発明の実施の形態に係る多重反射セル式ガス分析システムは、フローセル9aと分析計10aとを備える。フローセル9aは、試料ガス入口部15及び試料ガス出口部16を備える筒状のセルボディ5と、セルボディ5の第1終端部に設けられ、入射光及び出射光が通過するトンネル部4を有した第1ミラー2aと、第1終端部に対向するセルボディ5の第2終端部に設けられ、第1ミラー2aの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラー6とを備える。そして、第2終端部と第2ミラー6との間には、スペーサ13の厚みの選択により、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離を調整するスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)を設けている。
【0016】
セルボディ5は、第1ミラー2aに接合する第1フランジ19を第1終端部に、第2ミラー6に接合する第2フランジ20を第2終端部に備えている。第1ミラー2aに第1Oリング溝17aが設けられ、この第1Oリング溝17aには、第1Oリング11aが挿入され、第1Oリング11aを介して、第1ミラー2aと第1フランジ19とが真空機密を維持して接続される。そして、スペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)は、第2フランジ20に設けられたOリング溝(第3Oリング溝)18、第2ミラー6に設けられたOリング溝(第2Oリング溝)17b、第3Oリング溝18に挿入される第3Oリング12、第2Oリング溝17bに挿入される第2Oリング11bを有する。スペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)は、第2Oリング11bと第3Oリング12とでスペーサ13を挟むように構成し、第2Oリング11bと第3Oリング12とにより、第2ミラー6と第2フランジ20とが真空機密を維持して接続される。
【0017】
セルボディ5の第1終端部に固定された第1ミラー2aの内部には窓板3が取り付けられ、トンネル部4を分析計10a側とセルボディ5側とに分離している。第1Oリング11aは、第1ミラー2aにおいて、セルボディ5が第1終端部で備える第1フランジ19との接合面側で、固定ネジ14を挿入する複数の穴よりも第1ミラー2aの中心側に設けられた第1Oリング溝17aに装着される。
【0018】
スペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)の一部をなす第2Oリング11bは、第2ミラー6において、第2終端部との接合面側で、固定ネジ14を挿入する複数の穴よりも第2ミラー6の中心側に設けられた第2Oリング溝17bに装着される。第3Oリング12は、セルボディ5が第2終端部で備える第2フランジ20において、固定ネジ14を挿入する複数の穴よりも第2終端部の中心側且つ第2Oリング溝17bの外径よりも大きい内径を有する第3Oリング溝18に装着される。すなわち、図1に例示したように、第2フランジ20に設けられた第3Oリング溝18の位置と、第2ミラー6に設けられた第2Oリング溝17bの位置とが、第2フランジ20の半径方向において異なる。但し、図1は例示であり、逆に、第3Oリング12が、第2Oリング溝17bの内径よりも小さな外径を有する第3Oリング溝18に装着されるように構成しても良い。
【0019】
図1に示すように第1の実施の形態に係るフローセル9aは、第1Oリング11a、第2Oリング11b及び第3Oリング12により、第1ミラー2a、第2ミラー6、スペーサ13及びセルボディ5によって形成される空間は真空機密を維持して、密封され、セルボディ5の内外からの気体及び流体の導入出は、試料ガス入口部15及び試料ガス出口部16から出入りする試料ガスのみとなる。
【0020】
図1では、第1ミラー2a及び第2ミラー6は、それぞれフランジ部分及びミラー部分が一体化された場合を例示したが、第1ミラー2a及び第2ミラー6がそれぞれフランジ部分とミラー部分に分けられた構成でも構わない。さらに、第1ミラー2aは固定ネジ14により、セルボディ5の第1終端部において第1フランジ19に固定される。固定ネジ14は、4〜8箇所等の複数の箇所で、セルボディ5側から第1ミラー2a側にねじ込まれ、セルボディ5及び第1ミラー2aを固定する。第2ミラー6は、第1ミラー2aと対向した状態で、スペーサ13を介し、第2終端部で固定ネジ14により第2フランジ20に固定される。固定ネジ14は、複数箇所で、セルボディ5側から、スペーサ13及び第2ミラー6側にねじ込まれ、セルボディ5、スペーサ13及び第2ミラー6を固定する。図1では、第1ミラー2a及び第2ミラー6に雌ねじが切られた場合を例示しているが、第1ミラー2a及び第2ミラー6に貫通孔を開け、固定ネジ14をナットで固定する形式等、種々の変形が可能である。又、固定ネジ14を用いず、クイックカップリングの形式で、第1ミラー2aを第1フランジ19に真空機密を保って固定しても良い。この場合は、第1ミラー2aを第1フランジ19とも、フランジシール部は平面でその反対側はテーパにしておけば良い。そして、このテーパ部にクランプを嵌め込み、蝶ネジを締め付けると、フランジの中心に向かって力が生じ、Oリングを潰してシールする。この時、Oリングのガイドになるセンターリングを設けても良い。
【0021】
第1ミラー2a、第2ミラー6、セルボディ5、スペーサ13及び固定ネジ14の材料は、耐腐食性を考慮して、例えば、ステンレス(SUS)が使用可能である。第1Oリング11a、第2Oリング11b及び第3Oリング12には、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)及び天然ゴム等によって製造される合成ゴムが使用可能である。
【0022】
図1で示すように、分析計10aは、光源1と、光源1から出射した光束をフローセルに導入するよう反射する光源ミラー54と、フローセルから戻ってきた光束を反射する検出器ミラー55と、検出器ミラー55で反射された光束を検出し、光情報を電気情報に光電変換する検出器7と、これらを収納し、且つ、パージガスが供給されるパージガス導入口51及びガスパージされたパージガスを排出するパージガス排出口52とを設けた光源室50aとを備える。光源1から出射した光束は、窓板3を通過して、第1ミラー2aに設けられたトンネル部4からセルボディ5の内部に入射する。入射した光束は、第2ミラー6に達する。光束は、セルボディ5の反射面を構成する第1ミラー2a及び第2ミラー6との間で数回〜100回程度の反射、いわゆる多重反射を行う。続いて、多重反射後の光束は、入射光が入射した際と逆の順番で、トンネル部4及び窓板3を通過した後、セルボディ5から出射して、入射光とは若干異なる角度で検出器7に検知される。
【0023】
光源1には半導体レーザ等が使用可能である。半導体レーザを使用するのは、ハロゲンランプなどのランプ光源では、第1ミラー2a、第2ミラー6の間で多重反射する間に光束の発散が大きくなり、出射孔から充分な光量を取り出せないためである。光源ミラー54は、光源1から出射したレーザ光からなる光束をフローセルに導入する。検出器ミラー55は、フローセル9a内で多重反射した後、戻ってきた光束を検出器7に反射する。検出器7は、検出器ミラー55で反射したセルボディ5内における多重反射後の出射光を検出し、光信号から電気信号に光電変換する。検出器7には、例えば、シリコン(Si)ダイオード及びインジウムガリウムヒ化物(InGaAs)ダイオード等の光電変換素子を有する光電検出器が使用可能である。
【0024】
光源室50aに設けられたパージガス導入口51には、窒素ガス(N2)が所定の圧力に減圧されて、供給される。さらに、パージガス排出口52は、パージされた窒素ガスを排出する。光源室50a内部の窒素ガスパージに関しては、単純な垂れ流し方式でも、パージガス排出口52側に圧力付与のバルブを設けてもよい。プリアンプ56は、検出器7に接続され、検出器7で光電変換された光束の電気信号を増幅する。ハーメチックシール形コネクタ53は、プリアンプ56で増幅された光束の電気信号を光源室50aの外部に取り出し、取り出された電気信号は信号ケーブルを介して、例えば、パソコンのような信号処理を行いガス濃度のスペクトルを表示するような情報処理装置に送られる。
【0025】
(スペーサ挿入手段の構造例)
図2(a)〜(c)は、第2終端部と第2ミラー6との間に設けられた、本発明の実施の形態に係るスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)の構造例を示す断面図である。図2(a)は、スペーサ13なしで組み立てたフローセル9aのスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)の断面図である。図2(a)に示したように、第2フランジ20に設けられた第3Oリング溝18の位置と、第2ミラー6に設けられた第2Oリング溝17bの位置とが、第2フランジ20の半径方向において異なるため、スペーサ13なしでフローセル9aを組み立てても、第2フランジ20と第2ミラー6との間の真空機密が達成可能となる。スペーサ13なしでフローセル9aを組み立てた場合に、第2フランジ20と第2ミラー6との間の真空機密を達成するためには、第2フランジ20の半径方向において、第3Oリング溝18の位置と第2Oリング溝17bの位置とが重なり合わないように設計するのが好ましい。なお、第2フランジ20の半径方向において、第3Oリング溝18の位置と第2Oリング溝17bの位置とが重なり合うように構成して、第3Oリング溝18と第2Oリング溝17bに共通の太いOリングを挿入、若しくは共通の太い角形パッキンを挿入するような変形例も可能である。第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法となる場合に対してセルボディ5の長さを設計しておけば、もし、実際に、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法であるならば、図2(a)のように、スペーサ13なしの場合が最適な第1ミラー2a及び第2ミラー6の距離となる。ここで、「最小許容寸法」とは、第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径の寸法公差が、負の最大値(マイナス公差の最大値)を有する場合である。もし、第1ミラー2a及び第2ミラー6のいずれかの曲率半径が最小許容寸法よりも大きな誤差の曲率半径を有するのであれば、第1ミラー2a及び第2ミラー6の距離の調整が必要となるので、図2(b)又は(c)に示すようなスペーサ13a,13bを用いた調整が必要となる。
【0026】
図2(b)は、図1に示すスペーサ13よりも薄いスペーサを第2終端部及び第2ミラー6の間に挿入したスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)の断面図である。図2(b)における第1ミラー2a及び第2ミラー6の距離は、図2(a)における距離よりも長く、図1における距離よりも短い。
【0027】
図2(c)は、図1に示すスペーサ13よりも厚いスペーサを第2終端部及び第2ミラー6の間に挿入したスペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)の断面図である。図2(c)における第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離は、図2(a)、図2(b)及び図1それぞれにおける距離よりも長い。
【0028】
表1に例示したミラー間距離が260mm、ミラーの曲率半径が275mm、多重反射30回のフローセルの場合、ミラーの曲率半径の誤差を、ミラー間の距離を変えることで、出射光の位置のズレをどれだけ補正できるかを表2に示す。なお、表1と同様、表2は、対向する第1ミラー及び第2ミラーの曲率半径の誤差は等しいとしている。
【表2】

【0029】
表2に示すように、曲率半径の誤差が−2.0mmのときにミラー間の距離を−2.0mm変化させた場合、出射光の位置ズレは−0.3mmまで小さくなる。したがって、第1ミラー2a及び第2ミラー6の寸法公差が±2.0mmであれば、±2.0mmの第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離の調整をすれば良く、寸法公差が±1.0mmであれば、±1.0mmの第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離の調整をすれば良い。但し、フローセル9aのセルボディ5の長さを短くすることはできないので、予め、セルボディ5の長さを、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法となる場合に対して設計しておき、セルボディ5の長さを長くすることにより、ミラー間の距離を最適化する。即ち、第1ミラー2a及び第2ミラー6の製造上の寸法公差を考えた場合、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法となる場合が、セルボディ5の長さが、最も短い場合になるので、スペーサ挿入手段(11b,12,17b,18)により、セルボディ5の第2終端部と第2ミラーの間へ、必要に応じてスペーサを挿入することによって、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離が調整可能となる。
【0030】
上述したように、表1、表2に記載した曲率半径は、第1ミラー2aと第2ミラー6がどちらも同じ曲率誤差を示した場合である。実際の生産では、ミラーの曲率のバラツキは、千差万別であり、第1ミラー2aがプラス誤差、第2ミラー6がマイナス誤差;第1ミラー2aがプラス誤差、第2ミラー6がプラス誤差;第1ミラー2aがマイナス誤差、第2ミラー6がマイナス誤差;第1ミラー2aがマイナス誤差、第2ミラー6がプラス誤差等いろいろのケースがランダムに起こる。又、平均曲率誤差=+1mmと仮定した場合でも:
(イ)第1ミラー2aと第2ミラー6が、ともに+1mm;
(ロ)第1ミラー2aが+0.5mmで、第2ミラー6が+1.5mm;
(ハ)第1ミラー2aが+2.0mmで、第2ミラー6が±0mm;
(ニ)第1ミラー2aが+3.0mmで、第2ミラー6が−1mm;
等があるので事情は複雑である。経験則によれば、(イ)の第1ミラー2aと第2ミラー6が、ともに+1mmの曲率誤差の場合と(ロ)の第1ミラー2aが+0.5mmで、第2ミラー6が+1.5mmの曲率誤差の場合の位置ずれには、ほとんど差はない。しかし、(ハ)の第1ミラー2aが+2.0mmで、第2ミラー6が±0mmの曲率誤差の場合の位置ずれは、(イ)及び(ロ)の場合よりは若干大きくなる(極端な差はない)。(ニ)の+3mmと−1mmの組み合わせの場合は、位置ずれは更に顕著となる。したがって、平均曲率誤差が等しい場合は、第1ミラー2aと第2ミラー6の絶対偏差が大きいほど位置ずれ誤差は大きくなる傾向にある。
【0031】
(第1のミラー間距離の調整方法)
次に、本発明の実施の形態に係る多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル9aのミラー間距離の調整方法を説明する。上述したように、本発明の実施の形態に係るミラー間距離の調整方法においては、予め、セルボディ5の長さを、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法となる場合(寸法公差が、マイナス公差の最大値となる場合)に対して設計しておけば、セルボディ5の長さを長くすることにより、セルボディ5の長さを最適化できる。このため、スペーサは、例えば、0.3mmステップ、0.4mmステップ、0.5mmステップ、……等で、順次、その厚さが増大する組み合わせで、複数枚のセットとして用意しておけば良い。このとき、表2に示すようなデータを予め取得しておけば、第1ミラー2a及び第2ミラー6の製造上の寸法公差に応じて、必要な調整厚さが分かるので、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最大許容寸法(寸法公差が、プラス公差の最大値となる場合)となる場合まで、スペーサを複数枚用意しておけば良い。
【0032】
(a)先ず、第2終端部及び第2ミラー6を接合し、図2(a)に示すように、フローセル9aをスペーサ13のない状態で組み立てる。そして、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、検出器7において測定された出射光の強度が規定値に達しているか確認する。
【0033】
(b)出射光の強度が規定値に達している場合、ミラー間距離の調整を終了する。規定値に達していない場合、第1ミラー2a及び第2ミラー6の少なくとも一方が、曲率半径が最小許容寸法より大きく製造されたということであるから、図2(b)に示すように、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、複数枚用意したスペーサのうち最も薄いスペーサとして、第1のスペーサ13aを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。これにより、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離は、図2(a)に示す第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離(初期値)よりも大きくなる。
【0034】
(c)第1のスペーサ13aを挿入後、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、測定された出射光の強度が規定値に達しているか確認する。規定値に達している場合、第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差は、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に第1のスペーサ13aを挿入することで補正(補償)されたと判断され、第1のスペーサ13aが第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の補正に最適なスペーサとして選択される。
【0035】
(d)検出器7において測定された出射光の強度が規定値に達していない場合は曲率半径の製造上の誤差が補償されていないので、図2(c)に示すように、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、第1のスペーサ13aより厚い、第2のスペーサ13bを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。第2のスペーサ13bを挿入後、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、測定された出射光の強度が規定値に達しているか確認する。
(e)規定値に達した場合、第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差は、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に第2のスペーサ13bを挿入することで補正(補償)されたと判断され、第2のスペーサ13bが第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の補正に最適なスペーサとして選択される。
【0036】
(f)検出器7において測定された出射光の強度が規定値に達していない場合は曲率半径の製造上の誤差が未だ補償されていないので、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、第2のスペーサ13bより更に厚い、第3のスペーサを挿入して、……という操作を出射光の強度が規定値に達するまで繰り返す。もし、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最大許容寸法(寸法公差が、プラス公差の最大値となる場合)となる場合までスペーサを挿入しても出射光の強度が規定値に達しなければ、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が寸法公差を逸脱していることになるので、第1ミラー2a及び第2ミラー6の少なくとも一方を交換して、上記のステップを繰り返す。
【0037】
このようにして、本発明の実施の形態に係る第1のミラー間距離の調整方法によれば、第2終端部及び第2ミラー6間に、順次、厚いスペーサを挿入することで、フローセル9aの長さを、そのフローセル9aに用いられた第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差に適合した最適な長さに調整することが可能になる。
【0038】
(第2のミラー間距離の調整方法)
上述した第1のミラー間距離の調整方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々のミラー間距離の調整方法により、本発明の実施の形態に係るミラー間距離の調整方法は実現可能であることは勿論である。即ち、第1のミラー間距離の調整方法では、フローセルから出力される出射光の光強度を測定し、測定された光強度が規定値に達しているかを確認したが、光強度の規定値を用いず、フローセルから出力される出射光の光強度を測定しながら、順次、第2終端部及び第2ミラーの間に複数の厚さの異なるスペーサを挿入し、最大光強度を与える厚さのスペーサを選択し、第1及び第2ミラー間の距離を調整しても良い。
【0039】
本発明の実施の形態に係る第2のミラー間距離の調整方法においても、予め、セルボディ5の長さを、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最小許容寸法となる場合(寸法公差が、マイナス公差の最大値となる場合)に対して設計しておくことは勿論である。そして、第1のミラー間距離の調整方法と同様に、表2に示すようなデータを予め取得しておき、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最大許容寸法となる場合まで、必要な厚さのスペーサを複数枚用意しておく。
【0040】
(a)先ず、第2終端部及び第2ミラー6を接合し、図2(a)に示すように、フローセル9aをスペーサ13のない状態で組み立てる。そして、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、検出器7において測定された出射光の強度を記録する(「記録」は、必ずしも紙等の媒体に記録する必要はなく、人間の脳に記憶しても良い。)。
【0041】
(b)次に、図2(b)に示すように、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、複数枚用意したスペーサのうち最も薄いスペーサとして、第1のスペーサ13aを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。これにより、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離は、図2(a)に示す第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離(初期値)よりも大きくなる。そして、第1のスペーサ13aを挿入後、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、測定された出射光の強度を記録し、スペーサ13のない状態で組み立てたときの出射光の強度と比較する。出射光の強度がスペーサ13のない状態で組み立てたときの出射光の強度より低ければ、スペーサ13のない状態で組み立てたときが出射光強度が最大となる場合であるので、スペーサ13のない状態(最適状態)に戻して、ミラー間距離の調整を終了する。
【0042】
(c)出射光の強度がスペーサ13のない状態で組み立てたときの出射光の強度より高ければ、第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差が補償されていない可能性があるので、図2(c)に示すように、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、第1のスペーサ13aより厚い、第2のスペーサ13bを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。第2のスペーサ13bを挿入後、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、測定された出射光の強度を記録し、第1のスペーサ13aを挿入して組み立てたときの出射光の強度と比較する。出射光の強度が第1のスペーサ13aを挿入して組み立てたときの出射光の強度より低ければ、第1のスペーサ13aを挿入して組み立てたときが出射光強度が最大となる場合であるので、第1のスペーサ13aを挿入し直し(最適状態に戻して)、ミラー間距離の調整を終了する。
(d)出射光の強度が第1のスペーサ13aを挿入して組み立てたときの出射光の強度より低ければ、曲率半径の製造上の誤差が未だ補償されていない可能性があるので、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、第2のスペーサ13bより更に厚い、第3のスペーサを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。第3のスペーサを挿入後、トンネル部4を介して、光源1から出た入射光をフローセル9aの内部に導入し、光束がフローセル9aの内部で多重反射した後に、トンネル部4から出射される出射光の強度を検出器7で測定し、測定された出射光の強度を記録し、第2のスペーサ13bを挿入して組み立てたときの出射光の強度と比較する。出射光の強度が第2のスペーサ13bを挿入して組み立てたときの出射光の強度より低ければ、第2のスペーサ13bを挿入して組み立てたときが出射光強度が最大となる場合であるので、第2のスペーサ13bを挿入し直し(最適状態に戻して)、ミラー間距離の調整を終了する。
(e)出射光の強度が第2のスペーサ13bを挿入して組み立てたときの出射光の強度より低ければ、曲率半径の製造上の誤差が未だ補償されていない可能性があるので、セルボディ5の第2終端部及び第2ミラー6の間に、第3のスペーサより更に厚い、第4のスペーサを挿入して、フローセル9aを組み立て直す。第4のスペーサを挿入後、第3のスペーサを挿入して組み立てたときが出射光強度が最大であったのか否かを確認する……という操作を、出射光強度を最大にするスペーサの厚みが発見されるまで繰り返す。もし、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が最大許容寸法(寸法公差が、プラス公差の最大値となる場合)となる場合までスペーサを挿入しても、出射光強度を最大にするスペーサの厚みが発見されなければ、第1ミラー2a及び第2ミラー6がともに曲率半径が寸法公差を逸脱していることになるので、第1ミラー2a及び第2ミラー6の少なくとも一方を交換して、上記のステップを繰り返す。
【0043】
このようにして、本発明の実施の形態に係る第2のミラー間距離の調整方法によっても、第2終端部及び第2ミラー6間に、順次、厚いスペーサを挿入しながら、出射光強度を最大にするスペーサの厚みを決定し、フローセル9aの長さを、そのフローセル9aに用いられた第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差に適合した最適な長さに簡単且つ単純操作で調整することが可能になる。
【0044】
以上、第1及び第2のミラー間距離の調整方法で説明したように、本発明の実施の形態に係るフローセル9aのミラー間距離の調整方法によれば、第2終端部及び第2ミラー6間にスペーサを挿入することで、フローセル9aの長さ、すなわち、第1ミラー2a及び第2ミラー6間の距離を調整し、第1ミラー2a及び第2ミラー6の曲率半径の製造上の誤差を簡単かつ、特別な費用の増大を伴うことなく、補正可能である。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0046】
例えば、上記の第1のミラー間距離の調整方法では、フローセルから出力される出射光の光強度を測定し、測定された光強度が規定値に達しているかを確認し、第2のミラー間距離の調整方法では、フローセルから出力される出射光の光強度を測定して、最大光強度を与える厚さのスペーサを選択したが、第1のミラー間距離の調整方法と第2のミラー間距離の調整方法とを組み合わせて用いても良い。即ち、フローセルから出力される出射光の光強度を測定し、測定された光強度が規定値に達しているかを確認し、規定値に達した場合であっても、それで直ちに最適ミラー間距離と断定し、ミラー間距離の調整を終了するのではなく、その後、第2のミラー間距離の調整方法と同様、更に厚いスペーサを挿入して、フローセルから出力される出射光の光強度を測定して、最大光強度を与える厚さであったのかを確認した後、ミラー間距離の調整を終了するようにしても良い。
【0047】
又、他の3次元表面形状解析装置で第1ミラー2b及び第2ミラー6の曲率を、予め求めておき、その値を元に、経験則で定められる最適の厚みのスペーサを決めれば、より迅速に、ミラー間距離の調整が可能となる。
【0048】
又、図3に示すように、フローセル9bが、入射光側トンネル部4a及び出射光側トンネル部4bを有する第1ミラー2bを備えるようにすれば、機械設計上での自由度が向上する。入射光側トンネル部4aは、光源1側とセルボディ5側とで分離する入射光側窓板3aを、出射光側トンネル部4bは、出射光側トンネル部4bを、検出器7側とセルボディ5側とで分離する出射光側窓板3bをそれぞれ配置する。分析計10bを構成する光源室50bには、図1が示す第1の実施の形態における多重反射セル式ガス分析システムの光源室50aとは異なり、光源1から入射光を入射する孔と、検出器7が検知する出射光が出射する孔を異なる位置に設ける。
【0049】
又、一定温度に加熱することで、第1ミラー2b及び第2ミラー6の表面への水分子の付着を防ぎ、付着水蒸気の影響による応答時間の長期化や、水分子と測定対象ガスとの反応で生じる水酸化物等の堆積の問題を解決するために、カートリッジヒータ等を内部に埋め込んだ第1ミラー2a、第1ミラー2b及び第2ミラー6を用いてもよい。
【0050】
更に、第2ミラー6とセルボディ5の間に配置したスペーサ13は、第1ミラー2aとセルボディ5との間及び第1ミラー2bとセルボディ5との間に配置してもよいし、両方に配置してもよい。
【0051】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る多重反射セル式ガス分析システムの概観図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフローセルのスペーサを挿入によるミラー間距離の調整を説明するための模式的な断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る多重反射セル式ガス分析システムの模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…光源
2a、2b…第1ミラー
3…窓板
3a…入射光側窓板
3b…出射光側窓板
4…トンネル部
4a…入射光側トンネル部
4b…出射光側トンネル部
5…セルボディ
6…第2ミラー
7…検出器
9a、9b…フローセル
10a、10b…分析計
11a…第1Oリング
11b…第2Oリング
12…第3Oリング
13…スペーサ
13a…第1のスペーサ
13b…第2のスペーサ
14…固定ネジ
15…試料ガス入口部
16…試料ガス出口部
17a…第1Oリング溝
17b…第2Oリング溝
18…第3Oリング溝
19…第1フランジ
20…第2フランジ
50a、50b…光源室
51…パージガス導入口
52…パージガス排出口
53…ハーメチックシール形コネクタ
54…光源ミラー
55…検出器ミラー
56…プリアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディと、
該セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラーと、
前記第1終端部に対向する前記セルボディの第2終端部に設けられ、前記第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーと、
前記第2終端部と前記第2ミラーとの間に設けられ、前記第2終端部と前記第2ミラーとの間にスペーサを挿入することにより前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するスペーサ挿入手段
とを備えることを特徴とする多重反射セル式ガス分析システム用のフローセル。
【請求項2】
前記セルボディが、前記第1ミラーに接合する第1フランジを前記第1終端部に、前記第2ミラーに接合する前記第2フランジを前記第2終端部に備え、
前記第2フランジに設けられ、前記スペーサ挿入手段の一部をなすOリング溝の位置と、前記第2ミラーに設け、前記スペーサ挿入手段の他の一部をなすOリング溝の位置とが、前記第2フランジの半径方向において異なることを特徴とする請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、該セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、前記第1終端部に対向する前記セルボディの第2終端部に設けられ、前記第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを有するフローセルと、
前記フローセルに連結され、前記フローセルからの光学的情報を電気信号に変換する分析計
とを備え、前記第2終端部と前記第2ミラーとの間に、スペーサの厚さの選択により前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するスペーサ挿入手段を設けたことを特徴とする多重反射セル式ガス分析システム。
【請求項4】
前記セルボディが、前記第1ミラーに接合する第1フランジを前記第1終端部に、前記第2ミラーに接合する前記第2フランジを前記第2終端部に備え、
前記第2フランジに設けられ、前記スペーサ挿入手段の一部をなすOリング溝の位置と、前記第2ミラーに設け、前記スペーサ挿入手段の他の一部をなすOリング溝の位置とが、前記第2フランジの半径方向において異なることを特徴とする請求項3に記載の多重反射セル式ガス分析システム。
【請求項5】
試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、該セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、前記第1終端部に対向する前記セルボディの第2終端部に設けられ、前記第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法であって、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーの曲率半径が共に最小許容寸法となる場合に対して前記セルボディの長さを設計して、前記フローセルをスペーサなしで組み立てるステップと、
入射光を前記フローセルの内部に導入して、前記フローセルから出力される出射光の光強度を測定しながら、順次、前記第2終端部及び第2ミラーの間に複数の厚さの異なるスペーサを挿入し、最大光強度を与える厚さのスペーサを選択し、前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップ
とを含むことを特徴とするフローセルのミラー間距離の調整方法。
【請求項6】
試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、該セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、前記第1終端部に対向する前記セルボディの第2終端部に設けられ、前記第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法であって、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーの曲率半径が共に最小許容寸法となる場合に対して前記セルボディの長さを設計して、前記フローセルをスペーサなしで組み立てるステップと、
入射光を前記フローセルの内部に導入して、前記フローセルから出力される出射光の光強度を測定するステップと、
スペーサなしで測定された光強度が規定値に達しているか確認するステップと、
前記規定値に達していない場合、前記第2終端部及び第2ミラーの間に、第1のスペーサを挿入して、前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップ
とを含むことを特徴とするフローセルのミラー間距離の調整方法。
【請求項7】
前記第1スペーサを挿入後、入射光を前記フローセルの内部に導入して、前記フローセルから出力される出射光の光強度を測定するステップと、
前記第1スペーサを挿入して測定された光強度が前記規定値に達しているか確認するステップと、
前記規定値に達していない場合、前記第2終端部及び第2ミラーの間に、前記第1のスペーサより厚い第2のスペーサを挿入して、前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップ
とを更に含むことを特徴とする請求項6に記載のミラー間距離の調整方法。
【請求項8】
試料ガス入口部及び試料ガス出口部を備える筒状のセルボディ、該セルボディの第1終端部に設けられた第1ミラー、前記第1終端部に対向する前記セルボディの第2終端部に設けられ、前記第1ミラーの第1の鏡面と対向する第2の鏡面を有する第2ミラーを備える多重反射セル式ガス分析システム用のフローセルのミラー間距離の調整方法であって、
前記第1ミラー及び前記第2ミラーの曲率半径をそれぞれ測定するステップと、
前記測定結果に基づき、最適の厚みを有するスペーサを決定するステップと、
前記第2終端部及び第2ミラーの間に、前記決定されたスペーサを挿入して、前記第1及び第2ミラー間の距離を調整するステップ
とを含むことを特徴とするフローセルのミラー間距離の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−80017(P2009−80017A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249703(P2007−249703)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】