説明

多重放送受信機

【課題】多重化された複数の番組毎に受信品質に応じた出力制限を行うことができる多重放送受信機を提供すること。
【解決手段】多重放送受信機100は、ビタビ復号化処理を行うビタビデコーダ24と、受信データを格納する入力バッファ32と、入力バッファ32に格納された受信データを読み出してリードソロモン復号化処理を行って出力バッファ36に格納するとともに誤り訂正数をPID値に対応づけて出力するRSデコーダ34と、出力バッファ36に格納された受信データの中から受信対象のデータを分離するデマルチプレクサ38と、分離された後のデータに対してデコード処理を行うビデオデコーダ42、オーディオデコーダ46、データサービスデコーダ50と、PID値毎の誤り訂正数に基づいてビデオデコーダ42等の出力を制限する指示を行う主制御部60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の番組が多重化された放送データを受信して再生する多重放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MPEG2−TS(Transport Stream)規格に準拠した受信データを受信する多重放送受信機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような放送受信機では、受信データに対して2種類の誤り検出、訂正処理が行われることがある。一つは、畳み込み符号化に対して行われるビタビ復号化処理であり、他の一つは、リードソロモン符号化に対して行われるリードソロモン復号化処理である。特に、リードソロモン復号化処理における誤り訂正処理の能力は高いため、受信データに誤りが含まれている場合であってもかなりの範囲で誤り修正が可能であり、良好な音質の音声出力や良好な画質の映像出力が得られる。
【0003】
ところが、受信状態が悪化した場合などにはリードソロモン復号化処理による誤り訂正が十分でない場合があり、音質や画質が悪化し、視聴者に不快感を与えることになる。このような場合に、出力をミュートすることによって視聴者に与える不快感を軽減する各種の受信機が知られている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206156号公報(第5−13頁、図1−15)
【特許文献2】特開平10−28065号公報(第5−9頁、図1−14)
【特許文献3】特開2002−354359号公報(第2−4頁、図1)
【特許文献4】特開2000−221996号公報(第4−6頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1等に用いられるMPEG2−TS規格に準拠した受信データでは、多重化された受信データに含まれる複数の番組データが分離されて番組毎の音声データや映像データ等が得られるが、これらの音声データや映像データには誤り検出符号が付加されたものもあるが、付加されないものも有り、これらについて個別にデータ品質を知ることはできず、番組毎に受信品質に応じて出力を制限(例えば、音声の場合にはミュート処理)を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、多重化された複数の番組毎に受信品質に応じた出力制限を行うことができる多重放送受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の多重放送受信機は、MPEG2−TS規格に準拠した構造を有し、複数の番組データが多重化されたデータを受信する多重放送受信機であって、受信データに対してビタビ復号化処理を行うビタビ復号化処理手段と、ビタビ復号化処理手段から出力される受信データを格納する第1のデータ格納手段と、第1のデータ格納手段に格納された受信データを読み出してリードソロモン復号化処理を行って第2のデータ格納手段に格納するとともに、このリードソロモン復号化処理において誤り訂正を行う際の誤り情報を、MPEG2−TS規格に準拠したトランスポート・パケットのパケット識別情報に対応づけて出力するリードソロモン復号化処理手段と、第2のデータ格納手段に格納された受信データの中から、受信対象の番組データを分離するデータ分離手段と、データ分離手段によって分離された後の番組データに対してデコード処理を行ってデコード出力信号としてのビデオ信号、オーディオ信号、データサービス信号の一部あるいは全部を出力するデコード手段と、パケット識別情報に対応づけられた誤り情報に基づいて、デコード手段の出力を制限する指示を行う出力制御手段とを備えている。
【0008】
MPEG2−TS規格に準拠した構造では、番組を構成するトランスポート・パケット毎に異なるパケット識別情報が対応づけられているため、このパケット識別情報毎のリードソロモン復号化処理における誤り情報を用いることにより、多重化された複数の番組毎に受信品質に応じた出力制限を行うことができる。
【0009】
また、上述した第2のデータ格納手段は、2つの領域を有しており、一方の領域にリードソロモン復号化処理手段による書き込みが行われているときに、他方の領域から受信データが読み出されてデコード手段に入力され、出力制御手段は、他方の領域から読み出される受信データに対応する誤り情報に基づいてデコード手段の出力を制限することが望ましい。第2のデータ格納手段を2面構成とすることにより、各面の領域毎に誤り情報を得ることができるため、出力制限の制御が容易となる。
【0010】
また、上述した出力制御手段は、パケット識別情報毎に集計された誤り情報に基づいてデコード手段の出力を制限することが望ましい。これにより、受信品質をある期間にわたって判定して出力制限を行うことができ、出力制限の内容が頻繁に変化して利用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0011】
また、上述した誤り情報は、誤り訂正数であり、出力制限手段は、誤り訂正数が所定の基準を超えるときに、この誤り訂正数に対応するパケット識別情報で特定されるPESに対応する信号の出力を制限することが望ましい。誤り訂正数が所定の基準を超える場合とは、その時点では誤り訂正が良好に行われているが、今後誤り訂正ができないほど受信品質が低下するおそれがあると考えることができる場合である(反対に、このような事態を想定して基準が設定される)。このような場合にデコード手段の出力を制限することにより、オーディオ出力の音飛びやビデオ出力の極端な画質低下の発生を未然に防止することができる。
【0012】
また、上述した誤り情報は、誤り訂正数と誤り訂正前の誤り数であり、出力制限手段は、誤り訂正によって訂正できなかった誤りが残っているときに、誤り情報に対応するパケット識別情報で特定されるPESに対応する信号の出力を制限することが望ましい。これにより、誤り訂正が十分でなく、訂正できなかった誤り数が残った場合についてデコード手段の出力を制限することにより、オーディオ出力の音飛びやビデオ出力の極端な画質低下の発生を確実に防止することができる。
【0013】
また、上述した出力制限手段は、デコード手段の出力信号がオーディオ信号であるときに、オーディオ信号の出力を停止するミュート指示をデコード手段に対して行うことが望ましい。これにより、オーディオの出力品質が極端に悪化して利用者に不快感を与えることを未然に防止することができる。
【0014】
また、上述した出力制限手段は、デコード手段の出力信号がビデオ信号であるときに、ビデオ信号に対応する画面を徐々に暗くする指示をフェードアウト処理をデコード手段に対して行うことが望ましい。これにより、ビデオの表示品質が極端に悪化して利用者に不快感を与えることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】MPEG2−TSの基本的なデータ構造を示す図である。
【図2】PATのデータ構造を示す図である。
【図3】PMTのデータ構造を示す図である。
【図4】PAT、PMT、各PESの概略的な関係を具体例で示す図である。
【図5】一実施形態の多重放送受信機の構成を示す図である。
【図6】RSデコーダから出力されて主制御部によって集計されるRSエラー訂正数の説明図である。
【図7】RSエラー訂正数の出力からビデオデコーダやオーディオデコーダの出力制限指示までの動作手順を示す説明図である。
【図8】RSエラー訂正数の出力からビデオデコーダやオーディオデコーダの出力制限指示までの動作手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態の多重放送受信機について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(MPEG2−TSのデータ構造)
最初に、MPEG2−TSのデータ構造について説明する。図1は、MPEG2−TSの基本的なデータ構造を示す図である。図1に示すように、MPEG2−TSは、TSヘッダ部と、ペイロード部(データ本体)と、RS部とで構成されている。TSヘッダ部とペイロード部とで188バイトのトランスポート・パケットが構成されている。また、RS部は、リードソロモン・パリティワードであり、トランスポート・パケットの誤り訂正に用いられる。トランスポート・ストリーム(TS)は、この188バイトの固定長トランスポート・パケットによって多重・分離される。
【0018】
MPEG2−TSで伝送されるデータには、PAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、CAT(Conditional Access Table)、NIT(Network Information Table)、各種PES(Packetized Elementary Stream)がある。
【0019】
PAT:番組(プログラム)番号ごとにその番組構成を記述しているテーブル(PMT)を伝送しているトランスポート・パケットのPID(Packet Identification、パケット識別情報)が記述されている。PAT自身のPIDは、固定値(0x0000)を有する。このPATは、所定時間以内に1回受信される。
【0020】
図2は、PATのデータ構造を示す図である。図2に示すように、PATには、各PMTのネットワークID(PID)が含まれており、各PMTのPIDがわかるようになっている。また、PATの最後には、誤り検出符号であるCRC(Cyclic Redundancy Check、巡回冗長検査)32が含まれている。
【0021】
PMT:このトランスポート・パケットのペイロード部に、1つの番組を構成するビデオ、オーディオなどの個別ストリームが伝送されているトランスポート・パケットのPIDのリストや付属情報が記述されている。
【0022】
図3は、PMTのデータ構造を示す図である。この中で、ストリームタイプはそのPESのタイプ(オーディオ、ビデオ等)を、エレメンタリPIDはそのPESのPIDを、ES情報長はその後に続く記述子のバイト長を示す。PMTの最後には、CRC32が含まれている。
【0023】
CAT:このトランスポート・パケットのペイロード部に、番組のCA(限定受信/スクランブルに関する情報)が記述されている。このCATから、さらに実際の解読・復号許可情報が含まれるPIDを知り、スクランブル解読情報を得ることができる。
【0024】
NIT:このトランスポート・パケットのペイロード部に、番組の放送局ネットワーク情報が記述されている。
【0025】
各種PES:各種のオーディオやビデオ、サービスデータがパケット化されて格納されている。このPESは、パケット化されたエレメンタリストリームの頭文字をとった略語であり、エレメンタリストリームとは、符号化されたビデオ、オーディオ、データサービスのそれぞれを意味する。
【0026】
図4は、PAT、PMT、各PESの概略的な関係を具体例で示す図である。図4に示す例では、PATによって2つの番組のPMT−1、PMT−2が特定される。一方のPMT−1によって1つのビデオ用PESと1つのオーディオ用PESと1つのデータ用PESが特定される。他方のPMT−2によって1つのビデオ用PESと2つのオーディオ用PESが特定される。
【0027】
このような2つの番組が含まれる番組データを受信すると、ビタビ復号化処理とリードソロモン復号化処理により誤り訂正を行って正しい受信データを得た後に、この受信データに含まれるいずれかの番組を分離して各種PESを復号化してビデオ信号やオーディオ信号が得られる。
【0028】
(多重放送受信機の構成)
次に、一実施形態の多重放送受信機の構成について説明する。図5は、一実施形態の多重放送受信機100の構成を示す図である。図5に示すように、本実施形態の多重放送受信機100は、RFチューナ部10、チャネルデコーダ部20、ソースデコーダ部30、主制御部60を備えている。例えば、この多重放送受信機100は、DMB(Digital Multimedia Broadcast)方式で多重化された放送データを受信する。
【0029】
RFチューナ部10は、アンテナを介して受信した信号の中から所望の受信周波数(同調周波数)成分を抽出するとともに、この抽出した信号に対して周波数変換を行った中間周波数信号を出力する。
【0030】
チャネルデコーダ部20は、フロントエンド部を構成するものであり、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)受信部22、ビタビデコーダ24を備えている。OFDM受信部22は、受信したOFDMシンボルから保護期間を除去した後、高速フーリエ変換を行って所定の復調動作を行う。ビタビデコーダ24は、OFDM受信部22によって復調された信号に対してビタビ復号化処理を行うことにより誤り訂正を行い、誤り訂正後の受信データを出力する。
【0031】
ソースデコーダ部30は、バックエンド部を構成するものであり、入力バッファ32、RS(リードソロモン)デコーダ34、出力バッファ36、デマルチプレクサ38、ビデオバッファ40、ビデオデコーダ42、オーディオバッファ44、オーディオデコーダ46、データバッファ48、データサービスデコーダ50、STC(System Time Clock)生成部52、制御部54を備えている。
【0032】
入力バッファ32は、チャネルデコーダ部20内のビタビデコーダ24から出力された受信データを保持する。RSデコーダ34は、入力バッファ32に保持された受信データをトランスポート・パケット毎に読み出してリードソロモン復号化処理による誤り訂正を行う。誤り訂正後のトランスポート・パケットは、出力バッファ36に所定の順番(例えば、PID値毎)に格納される。また、RSデコーダ34は、各トランスポート・パケットに対してリードソロモン符号化処理を行う際に、誤り情報としてのRSエラー訂正数(誤り訂正数)をPID値とともに主制御部60に向けて出力する。デマルチプレクサ38は、出力バッファ36から読み出されるストリームの中から、受信対象となる番組に対応するPID値を有するトランスポート・パケットを分離して出力する。
【0033】
ビデオバッファ40は、PESのパケット化されたビデオデータを一時的に保持する。ビデオデコーダ42は、ビデオバッファ40に保持されたビデオデータを読み出して、所定の復調処理(例えば、勧告H.246等の処理)を行ってビデオ信号を出力する。オーディオバッファ44は、PESのパケット化されたオーディオデータを一時的に保持する。オーディオデコーダ46は、オーディオバッファ44に保持されたオーディオデータを読み出して、所定の復調処理(例えば、AAC(Advanced Audio Coding)等の復調処理)を行ってオーディオ信号を出力する。データバッファ48は、PESのパケット化されたデータサービス用のデータを一時的に保持する。データサービスデコーダ50は、データバッファ50に保持されたデータを読み出して、所定の復調処理を行う。
【0034】
STC生成部52は、トランスポート・ストリームに含まれるSCR(System Clock Reference)に基づいて時間基準であるSTCを出力する。制御部54は、トランスポート・パケットに含まれるPTS(Presentation Time Stamp)やDTS(Decoding Time Stamp)とSTC生成部52から出力されるSTCに基づいて、ビデオデコーダ42、オーディオデコーダ46、データサービスデコーダ50を制御する。主制御部60は、多重放送受信機100の全体を制御するとともに、RSデコーダ34から出力されるPID値毎のRSエラー訂正数を集計し、その集計結果に基づいて必要に応じてビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46の出力を制限する指示をこれらに対して行う。
【0035】
上述したビタビデコーダ24がビタビ復号化処理手段に、入力バッファ32が第1のデータ格納手段に、出力バッファ36が第2のデータ格納手段に、RSデコーダ34がリードソロモン復号化処理手段に、デマルチプレクサ38がデータ分離手段に、ビデオデコーダ42、オーディオデコーダ46、データサービスデコーダ50がデコード手段に、主制御部60が出力制御手段にそれぞれ対応する。
【0036】
本実施形態の多重放送受信機100はこのような構成を有しており、次に、RSデコーダ34から出力されるRSエラー訂正数に基づいてオーディオやビデオの出力を制限する動作について説明する。
【0037】
図6は、RSデコーダ34から出力されて主制御部60によって集計されるRSエラー訂正数の説明図であり、図4に示した番組構成に対応するRSエラー訂正数の例が示されている。各PESに対応するRSエラー訂正数がわかれば、PESのタイプ毎に(オーディオ用かビデオ用かによって)それぞれの信号に対して出力制限を行うことができる。主制御部60は、RSデコーダ34から出力されるRSエラー訂正数をPID値毎に集計し、図6に示すような集計テーブル(RSエラー訂正数テーブル)を作成する。集計方法としては、PID値毎のRSエラー訂正数を累積する場合や、平均値を算出する場合、最大値を抽出する場合などが考えられる。
【0038】
なお、図6に示したRSエラー訂正数テーブルには、図4に示した全てのトランスポート・パケットのRSエラー訂正数が含まれるが、PATやPMTのRSエラー訂正数は出力制限の制御に使わないため、これらのRSエラー訂正数についてはテーブルから削除するようにしてもよい。
【0039】
図7および図8は、RSエラー訂正数の出力からビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46の出力制限指示までの動作手順を示す説明図である。本実施形態では、入力バッファ32および出力バッファ36のそれぞれは2面構成(A領域とB領域)を有しており、一方の面(領域)に対して受信データの書き込みを行っているときに、他方の面(領域)から受信データの読み出しを行うことができるようになっている。
【0040】
また、図7および図8において、入力バッファ32や出力バッファ36に入出力される所定容量分の複数のトランスポート・パケットを、入力順に受信データA1、B2、A3、B4、・・・とする。これらの中で受信データA1、A3等が領域Aを用いて入出力され、受信データB2、B4等が領域Bを用いて入出力される。また、AあるいはBに付された数字は、トランスポート・パケットの入力順番を示している。また、E(A1)は、入力バッファ32のA領域からA1で示される受信データを読み出してRSデコーダ34でリードソロモン復号化処理を行う際に出力されるRSエラー訂正数を示している。さらに、S(A1)は、出力バッファ36のA領域からA1で示される受信データ(PES)を読み出してビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46によるビデオやオーディオの復調処理を行う際に主制御部60からビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に向けて出力される出力制限の制御信号を示している。
【0041】
まず、入力バッファ32のA領域に受信データA1が書き込まれる(図7(a))。この書き込み動作は、A領域がいっぱいになるまで、あるいは、書き込む容量が予め決まっている場合にはこの容量に達するまで行われる。
【0042】
次に、入力バッファ32の受信データを書き込む領域がAからBに切り替えられる(図7(b))。そして、入力バッファ32のB領域に受信データB2が書き込まれる。また、この書き込み動作と並行して、RSデコーダ34は、入力バッファ32のA領域に書き込まれた受信データA1を、図1に示したトランスポート・パケット毎に読み出してリードソロモン復号化処理を行い、誤り訂正後の受信データA1を出力バッファ36のA領域に書き込む。また、RSデコーダ34からは、受信データA1の各トランスポート・パケット毎のRSエラー訂正数E(A1)がPID値とともに出力され、主制御部60に取り込まれて集計される。
【0043】
次に、入力バッファ32の受信データを書き込む領域がBからAに切り替えられる(図8(c))。そして、入力バッファ32のA領域に受信データA3が書き込まれる。また、この書き込み動作と並行して、RSデコーダ34は、入力バッファ32のB領域に書き込まれた受信データB2を、図1に示したトランスポート・パケット毎に読み出してリードソロモン復号化処理を行い、誤り訂正後の受信データB2を出力バッファ36のB領域に書き込む。また、RSデコーダ34からは、受信データB2の各トランスポート・パケット毎のRSエラー訂正数E(B2)がPID値とともに出力され、主制御部60に取り込まれて集計される。さらに、これらの動作と並行して、出力バッファ36のA領域に書き込まれた誤り訂正後の受信データA1の中から、利用者が受信を希望する番組に対応するPESがデマルチプレクサ38によって分離され、ビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に入力される(なお、これらの各デコーダの出力を制限する場合に着目しているため、データサービスについては説明を省略するものとする)。主制御部60は、ビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に入力される各PESのPID値に対応するRSエラー訂正数の集計値をRSエラー訂正数テーブルから読み出し、この集計値が所定の基準値を超えるとき、このPID値を有するPESが入力されたビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に出力制限を指示する制御信号S(A1)を入力する。
【0044】
RSエラー訂正数が多いほど放送波の電波状態が悪いことになるため、RSエラー訂正数が所定の基準値を超えている場合にはオーディオの場合には音飛びが発生する可能性が高くなり、ビデオの場合には映像が乱れる可能性が高くなる。したがって、各PID値毎に集計されたRSエラー訂正数が各PID値毎に設定された所定の基準値を超えた場合には、主制御部60から出力される制御信号S(A1)に基づいて、ビデオデコーダ42についてはフェードアウト処理(画面を徐々に暗くする処理)が行われ、オーディオデコーダ46についてはミュート処理(無音処理)が行われる。なお、ビデオデコーダ42によるフェードアウト処理とオーディオデコーダ46によるミュート処理の実施の有無は、それぞれに対応するPESのPID値毎に決定されるため、いずれか一方のみが実施される場合もあるが、一方のみが実施されるときに他方も合わせて実施するようにしてもよい。
【0045】
次に、入力バッファ32の受信データを書き込む領域がAからBに切り替えられる(図8(d))。そして、入力バッファ32のB領域に受信データB4が書き込まれる。また、この書き込み動作と並行して、RSデコーダ34は、入力バッファ32のA領域に書き込まれた受信データA3を、図1に示したトランスポート・パケット毎に読み出してリードソロモン復号化処理を行い、誤り訂正後の受信データA3を出力バッファ36のA領域に書き込む。また、RSデコーダ34からは、受信データA3の各トランスポート・パケット毎のRSエラー訂正数E(A3)がPID値とともに出力され、主制御部60に取り込まれて集計される。さらに、これらの動作と並行して、出力バッファ36のB領域に書き込まれた誤り訂正後の受信データB2の中から、利用者が受信を希望する番組に対応するPESがデマルチプレクサ38によって分離され、ビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に入力される。主制御部60は、ビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に入力される各PESのPID値に対応するRSエラー訂正数の集計値をRSエラー訂正数テーブルから読み出し、この集計値が所定の基準値を超えるとき、このPID値を有するPESが入力されたビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46に出力制限を指示する制御信号S(B2)を入力する。このようにして主制御部60から出力される制御信号S(B2)に基づいて、ビデオデコーダ42についてはフェードアウト処理が行われ、オーディオデコーダ46についてはミュート処理が行われる。
【0046】
このように、本実施形態の多重放送受信機100では、リードソロモン復号化処理における誤り訂正数(RSエラー訂正数)をPID値に対応させてRSデコーダ34から出力し、主制御部60で集計しており、多重化された複数の番組毎に受信品質に応じた出力制限を行うことができる。また、入力バッファ32や出力バッファ36を2面構成とすることにより、各面の領域毎にRSエラー訂正数を取得して集計することが容易となるため、出力制限の制御が容易となる。
【0047】
また、PID値毎に得られたRSエラー訂正数を集計した結果を用いることにより、受信品質をある期間(集計期間)にわたって判定して出力制限を行うことができ、出力制限の内容が頻繁に変化して利用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0048】
また、RSエラー訂正数が所定の基準を超える場合にビデオデコーダ42の出力を制限することによりビデオの表示(映像)品質が極端に悪化して利用者に不快感を与えることを未然に防止したり、オーディオデコーダ46の出力を制限することによりオーディオの出力品質が極端に悪化して利用者に不快感を与えることを未然に防止することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、RSデコーダ34から出力されるエラー情報としてのRSエラー訂正数をPID値毎に集計する場合について説明したが、その他のエラー情報を用いるようにしてもよい。例えば、RSデコーダ34から出力されるエラー情報に、上述したRSエラー訂正数とともに、誤り訂正前の誤り数であるRSエラー数が含まれているものとする。主制御部60は、RSデコーダ34から出力されるPID値毎のRSエラー訂正数とRSエラー数とに基づいてPID値毎の誤り訂正できなかった残りのRSエラー数を算出、集計し、その集計結果に基づいて必要に応じてビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46の出力を制限する指示をこれらに対して行う。例えば、誤り訂正ができなかった残りのRSエラー訂正数が1つでも残っている場合(RSエラー数>RSエラー訂正数の場合)には、ビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46の出力制限が行われる。主制御部60による具体的な出力制限の制御は、図7および図8に示した動作手順で行われる。この場合に、RSデコーダ34からは、各トランスポート・パケット毎のRSエラー訂正数EだけでなくRSエラー数E’がPID値とともに出力され、主制御部60に取り込まれて、誤り訂正できなかったRSエラー数がPID値毎に集計される。
【0050】
このように、誤り訂正が十分でなく、訂正できなかったRSエラー数が残った場合についてビデオデコーダ42やオーディオデコーダ46の出力を制限することにより、オーディオ出力の音飛びやビデオ出力の極端な画質低下の発生を確実に防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述したように、本発明によれば、リードソロモン復号化処理における誤り訂正数(RSエラー訂正数)をPID値に対応させてRSデコーダ34から出力して集計することにより、多重化された複数の番組毎に受信品質に応じた出力制限を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
10 RFチューナ部
20 チャネルデコーダ部
22 OFDM受信部
24 ビタビデコーダ
30 ソースデコーダ部
32 入力バッファ
34 RSデコーダ
36 出力バッファ
38 デマルチプレクサ
40 ビデオバッファ
42 ビデオデコーダ
44 オーディオバッファ
46 オーディオデコーダ
48 データバッファ
50 データサービスデコーダ
52 STC生成部
54 制御部
60 主制御部
100 多重放送受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPEG2−TS規格に準拠した構造を有し、複数の番組データが多重化されたデータを受信する多重放送受信機であって、
受信データに対してビタビ復号化処理を行うビタビ復号化処理手段と、
前記ビタビ復号化処理手段から出力される受信データを格納する第1のデータ格納手段と、
前記第1のデータ格納手段に格納された受信データを読み出してリードソロモン復号化処理を行って第2のデータ格納手段に格納するとともに、このリードソロモン復号化処理において誤り訂正を行う際の誤り情報を、MPEG2−TS規格に準拠したトランスポート・パケットのパケット識別情報に対応づけて出力するリードソロモン復号化処理手段と、
前記第2のデータ格納手段に格納された受信データの中から、受信対象の番組データを分離するデータ分離手段と、
前記データ分離手段によって分離された後の番組データに対してデコード処理を行ってデコード出力信号としてのビデオ信号、オーディオ信号、データサービス信号の一部あるいは全部を出力するデコード手段と、
前記パケット識別情報に対応づけられた前記誤り情報に基づいて、前記デコード手段の出力を制限する指示を行う出力制御手段と、
を備えることを特徴とする多重放送受信機。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のデータ格納手段は、2つの領域を有しており、一方の領域に前記リードソロモン復号化処理手段による書き込みが行われているときに、他方の領域から受信データが読み出されて前記デコード手段に入力され、
前記出力制御手段は、前記他方の領域から読み出される受信データに対応する前記誤り情報に基づいて前記デコード手段の出力を制限することを特徴とする多重放送受信機。
【請求項3】
請求項2において、
前記出力制御手段は、前記パケット識別情報毎に集計された前記誤り情報に基づいて前記デコード手段の出力を制限することを特徴とする多重放送受信機。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記誤り情報は、誤り訂正数であり、
前記出力制限手段は、前記誤り訂正数が所定の基準を超えるときに、この誤り訂正数に対応する前記パケット識別情報で特定されるPESに対応する信号の出力を制限することを特徴とする多重放送受信機。
【請求項5】
請求項2または3において、
前記誤り情報は、誤り訂正数と誤り訂正前の誤り数であり、
前記出力制限手段は、誤り訂正によって訂正できなかった誤りが残っているときに、前記誤り情報に対応する前記パケット識別情報で特定されるPESに対応する信号の出力を制限することを特徴とする多重放送受信機。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記出力制限手段は、前記デコード手段の出力信号がオーディオ信号であるときに、オーディオ信号の出力を停止するミュート指示を前記デコード手段に対して行うことを特徴とする多重放送受信機。
【請求項7】
請求項4または5において、
前記出力制限手段は、前記デコード手段の出力信号がビデオ信号であるときに、ビデオ信号に対応する画面を徐々に暗くする指示をフェードアウト処理を前記デコード手段に対して行うことを特徴とする多重放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175260(P2012−175260A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33418(P2011−33418)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】