多針ミシン
【課題】 受動部材を軽量化することにより、針棒のより一層の高速上下動化を可能にする多針ミシンを提供する。また、受動部材を軽量化する為に合成樹脂を用いることにより受動部材の成形を容易にし、コストの低減を図ることができる多針ミシンを提供する。
【解決手段】 針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の上面に位置する係合上面または上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にした。
【解決手段】 針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の上面に位置する係合上面または上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多針ミシンに関し、詳しくは横動自在の枠に複数の針棒が上下動自在に支持されていて、その内の1本の針棒を選択的に針落孔位置に移動させて上下動させる事により縫製に用いることができるようにした多針ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
図面は本発明の実施例を示すものであるが、これらの図において符号1〜10、18〜40、41と51との組み合わせ、70〜77等を付した構造・部材に関わる構成は、従来から、例えば特許文献1、特許文献2等で知られた構成である。よって図面を用いて従来例を説明する。
フレーム2(固定ブロック)には、複数の針棒機構18(各針棒機構18は夫々針棒19、布押さえ23等を備える)を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横方向に向けて横動させるようにした横動枠5(可動ブロック)を備える。一般に横動枠5としては、回動状に横動する横動枠5(例えば特許文献1)と、直線状に横動する横動枠5(例えば特許文献2)とが用いられる。
一方、上記フレーム2には、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に当接して針棒19を上下駆動させるための針棒駆動機構30を備える。この針棒駆動機構30は、主軸4の回動に伴い、上下動する昇降体46、昇降体46に連動して上下動し、対応する針棒19の頂部を構成する受動部材51における掛り合下部材54に当接してそれの押下げ面57を反復下方に押圧駆動できるようにしてある針棒駆動部材41(叩き部材とも称される)等を備えている。
なお、図示の構成にあっては、上記の針棒駆動部材41は、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置である作動位置と、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置との間を、図5に表れているように往復動作可能に構成してある。いわゆるジャンプ動作可能な構成(例えば特許文献2、特許文献3参照)にしてある。
さらに、上記各針棒機構18は、上記横動枠5の下部枠5c(可動ブロックの下部)に対して上下動自在に装着してある針棒19と、その針棒19に並行する状態で上下動自在にしてある布押え23とを備え、上記針棒19は、特許文献1等で広く知られているように、針棒19の上部に備えさせるばね受け部29aと、針棒19の下部を支持する上記横動枠5の下部枠5cとの間に介在させた巻きばね27、28によって常時上方への復帰を可能に付勢してある。
なお上記において、部材の名称の後に括弧で囲って記載した部材の名称は上記特許文献2等で用いられている周知の名称(同義語)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3608084号公報
【特許文献2】特開2002−18172号公報
【特許文献3】特許第3107860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の多針ミシンでは、針棒駆動部材41(叩き部材とも称されている)は合成樹脂で成形されている。合成樹脂材としては、従来より、強靭で、衝撃に強く、耐摩耗性に優れた材料が選定されている。例えば、ジュラコン(ポリプラスチックス(株)の登録商標)のCH−20(比重:1.47)や、NW−02(比重:1.36)、KT−20(比重:1.59)が用いられている。
一方、針棒19の頂部に備えさせる受動部材51は、金属製の針棒19の頂部に備えさせる関係から、多くの場合、金属材(例えば、アルミ合金A7075 比重:2.8)で構成されている。
しかしながら、受動部材51が金属材で構成されていると、夫々の針棒19に対する荷重負担が大きく、針棒19を、より一層速く、高速上下動化するにあたって困難を伴い、支障となる問題点がある。
そこで出願人会社においては、上記受動部材51を、上記針棒駆動部材41と同様に、合成樹脂で成形し、受動部材51の軽量化を試みた。
このように針棒駆動部材41と共に受動部材51をも合成樹脂で成型すると、製作に当たっての成形工程はきわめて容易になり、コストの削減が可能になるると共に、針棒19を、より一層速く、高速上下動化することができた。
しかしながら、針棒駆動部材41と、受動部材51との当接部分においては、摩擦係数、摩耗特性は極端に低下する。樹脂同士の強い凝着力に起因して摩耗が激しく、寿命が短くなって、需用者から苦情が頻発し、商品化できない問題点があった。
【0005】
本件出願の目的は、 受動部材を軽量化することにより、針棒のより一層の高速上下動化を可能にする多針ミシンを提供しようとするものである。
他の目的は、受動部材を軽量化する為に合成樹脂を用いることにより受動部材の成形を容易にし、コストの低減を図ることができる多針ミシンを提供しようとするものである
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における多針ミシンは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、 上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aまたは上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60または83)をその表面(60aまたは83a)が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたものである。
【0007】
また好ましくは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、 上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bまたは上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60bまたは78)をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたものであればよい。
【0008】
また好ましくは、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに、金属片60をその表面60aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0009】
また好ましくは、上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に、金属片83をその表面83aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合上部材53の下面に位置させる衝突面56に向けて、受動部材51の内部を経由して金属材の保持部材79aを延出させて上記金属片83の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0010】
また好ましくは、上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、予め連結杆61の両側に夫々金属片60、60bを備え、それらの金属片60、60bの位置関係は、上記係合突片43内に埋め込んだ状態では、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60aが上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材59を形成しておき、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材59を、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する状態に配置して、上記合成樹脂材を用いて上記針棒駆動部材41を成形するものであればよい。
【0011】
また好ましくは、 上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0012】
また好ましくは、上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における圧接触する部分に、金属片78を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合下部材54の上面に位置させる押下げ面57に向けて、金属材の支承杆79を延出させて上記支承杆79の上部にて金属片78の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片78を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0013】
また好ましくは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、上記針棒19は中空パイプ材で形成されており、一方、上記受動部材51は合成樹脂で成型すると共に受動部材51における掛り合下部材54の内部には、下方に向けて伸びている嵌合ピン81に連なる支承杆79が埋め込まれており、上記受動部材51と、上記中空パイプ状の針棒19の上部との連結は、針棒19の上端における中空パイプ部分に上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して嵌合させて連結してあるものであればよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明は、針棒駆動部材41と共に、受動部材51も夫々合成樹脂材を用いて成形できるものであるから、その製作工程は、金属加工によって成形する場合に比較して容易であり、コストの低減が図れる利点がある。
【0015】
その上、針棒駆動部材41も受動部材51も夫々合成樹脂材であるから、軽量であり、針棒19を高速でもって上下動させる場合の荷重負担は比較的少なくなり、針棒19の上下動作を高速化して、縫製作業の効率を高める得る効果がある。
【0016】
その上、針棒駆動部材41も、受動部材51も、ともに夫々合成樹脂材で成形したものであっても、両者間の圧接触する部分においては、そのいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は、合成樹脂材を露出させる状態にしてあるから、即ち、圧接触する部分においては、従来のように、金属面と合成樹脂面が接触するように構成してあるので、従来と同様に摩耗は少なく、長寿命の構成として用いることのできる効果がある
【0017】
さらに本発明にあっては、上記受動部材51を軽量化するために合成樹脂で成型するものであっても、針棒19との連結構造は、受動部材51における掛り合下部材54の内部に、下方に向けて伸びている嵌合ピン81に連なる支承杆79を埋め込んで成型するものであるから、針棒19を、軽量化するために中空パイプで形成したものであっても、針棒19の上端における中空パイプ部分に上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して、嵌合させると、容易に一体化させることができるので、上記受動部材51を合成樹脂にして軽量化すると共に、針棒19をも、結合部分がシンプル化により、薄肉の中空パイプを用いて軽量化し、その上下動の高速化を可能にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】多針ミシンを説明する為の部分断面図。
【図2】多針ミシンを説明する為の一部破断正面図。
【図3】横動枠と針棒機構との関係を説明するための概略分解斜視図。
【図4】針棒機構と針棒駆動機構との関係を説明する為の部分断面図で、(A)は針棒が上死点位置にある状態、(B)は針棒が下死点位置にある状態を示す。
【図5】(A)(B)は昇降体に連なる針棒駆動部材と、針棒機構と、ジャンプ手段との関係を説明する為の一部を破断して示す部分断面図。(C)はジャンプ手段を説明する為の概略模式図。
【図6】駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明する為の部分断面図。
【図7】昇降体と、駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための概略(分解)模式図。
【図8】駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための部分分解断面図。
【図9】(A)(B)(C)(D)は、順次、駆動部材の平面図、図8におけるA−A線断面図、図8におけるB−B線断面図、図4(A)におけるIX−IX線断面図。
【図10】図6〜9の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様が異なる例を示す部分断面図。
【図11】前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
【図12】前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、多針ミシン1を説明する為の部分断面図。
図2は多針ミシン1を説明する為の正面図で、横動枠5と針棒機構18との関係を説明する為に針棒カバー8を一部破断し、横動枠5の一部分と針棒機構18のみを示す。破断位置は図1のII−II線位置。なお、図2において天秤機構10の存在位置を一点鎖線で示す。
図3は、横動枠5と針棒機構18との関係及び、針棒19と、その横ぶれを防止する為の補助機構18aの関係を説明する為の概略分解斜視図。
図4は、針棒機構18と針棒駆動機構30との位置関係を説明する為の部分断面図で、(A)は針棒19が上死点位置にある状態を示し、(B)は針棒19が下死点位置にある状態を示す。
図5(A)(B)は、昇降体46と一体的に上下動する駆動部材41と、針棒機構18と、ジャンプ手段70との位置関係を説明する為の一部破断して示す部分断面図。破断位置は図4のV−V線位置。なお、図5(A)は駆動部材41が作動位置にある状態を示す(一点鎖線の駆動部材41は退避位置にある状態を示す)。駆動部材41と係合している針棒の受動部材51にあっては、係合部分43dと針棒の頂部57との関係を示す為に上部の掛り合上部材53を破断して示す。図5(B)は駆動部材41が退避位置にある状態を示す。一点鎖線で示す駆動部材41は、ジャンプ動作を終了して通常の動作に戻る場合に、駆動部材41が上昇過程で、付勢状態で針棒19の側面に沿っている状態を示す。
図5(C)はジャンプ手段70を説明する為の概略模式図。
図6は、駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材51との関係を説明するための部分断面図で、駆動部材41の上面43aと、受動部材51の押下げ面57に対して夫々当金部材60と、受金部材78を配した構成態様を示す。
図7は、昇降体46と、駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための概略(分解)模式図。受動部材51は存在位置を2点鎖線で示す。
図8は、 駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材51との関係を説明するための部分分解断面図。
図9(A)(B)(C)(D)は、順次、駆動部材41の平面図、図8におけるA−A線断面図、図8におけるB−B線断面図、図4におけるIX−IX線断面図。
図10は、前出の例とは駆動部材41と、受動部材51に対する金属片の構成態様が異なる例を示す部分断面図。(B)は(A)のX−X線断面図。
図11は、前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
図12は、前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
なお、図面の説明に当り、前出の図に対する後出の図面の説明において、前出の図と同符号を用いた構成、部材等の機能、性質、手段又は特徴等は、以下の説明に於て加える新規な部材の構成、組合せ等の説明に係わる事項を除き、前出の図の同符号の説明と同旨である。よって、前出の図に対する後出の図面の説明においては重複する説明は一部省略する。
【0020】
次に、図において、符号1〜10、18〜40、41と51との組み合わせ、70〜77等を付した構造・部材に関わる構成は、本件において新しく加えた部分を除き多くの構成が前述したように従来から、例えば特許文献1、特許文献2等で知られた構成と同旨の構成であるから、この点を念頭に置いて以下簡単に構成を説明する。
1は刺繍縫いに用いられる周知の多針ミシンを示し、この多針ミシン1において2はフレーム(固定ブロックとも称されている)、9は図1、3に表れているように、フレーム2の上部に対して一体的に備えさせたガイドブロックで、断面をコの字状にして、横動枠5の背面側に装着してあるガイドレール6を横動自在に支持している。2aはフレーム2の下部に備えさせた係合爪で、横動枠5の下部枠5cの引っ掛け爪5aに係合して図1において右方向(前面側)へ振れるのを止める働きをしている。3はベッド、3aは針落孔、4は周知のように複数並設の多針ミシンを同時に駆動する為の主軸を示す。7は複数並設の多針ミシンにおける各横動枠5を同時に横動する為の横動駆動軸で、各横動枠5に固着してある。8は針棒カバーを示し、10は周知の天秤機構の存在を示す。
【0021】
上記フレーム2には、図1〜4に表れているように、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの周知の針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5が備えさせてある。
さらに、上記複数の各針棒機構18は、上記横動枠5の下部枠5cに対して上下動自在に装着してある針棒19と、その針棒19に対して図1に表れているように並行する状態で上下動自在にしてある周知の布押え23とを備える。
【0022】
この点の構成の説明をさらに補足すると、
図1〜4に示されるように上記周知の針棒19は、横動枠5(例えば特許文献1又は特許文献2で知られている回動枠又は直線移動枠)の下部枠5cに設けてある透孔に対して上下動自在に装着してあり、下端には針20が備えられ、上方の自由端には駆動部材41を側方から出入りさせる為の空間55を備える受動部材51が装着してある。
上記針棒19は、針棒19の上部に備えさせる受動部材51の下面を活用してのばね受け部29aと、針棒19の下部を支持する上記横動枠5の下部枠5cの上面との間に介在させた巻きばね27、28によって常時上方への復帰を可能に付勢してある。上記針棒19の上昇位置は、図1に表れているように上部枠5dの下面に当たるまで上昇する。しかし多くの場合、上部枠5dの下面近くには特許文献2においても知られているように、複数並設させた針棒19の上昇位置を揃えるためのストッパーとしての緩衝部材5eがフレーム2に対して上下方向位置を調節自在に配置されたり、特開2002−66183号公報等によっても広く知られているように針棒ストッパーが緩衝部材として配置されるので、巻きばね27、28の付勢力によって勢いよく上昇する各針棒19の上部に形成される係合部51aは緩衝部材5e等に衝突して、一定位置に止まる。
【0023】
上記受動部材51は、駆動部材41の上面43aに係合させる為の掛り合上部材53と、駆動部材41の下面43bに係合させる為の掛り合下部材54とを備えている。上記掛り合上部材53と掛り合下部材54とは、図4〜6に示されるように、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態で備えられている。56は針棒19の頂部に備えさせた駆動部材41の係合上面43a当接用の衝突面、57は針棒19の頂部に備えさせた駆動部材41の係合下面43b押し当て用の受圧部である押下げ面を示す。
【0024】
次に、上記針棒19と受動部材51の連結に関連する構成について説明する。
上記針棒19は図6〜8に表れるように、軽量となるように薄い肉厚の金属製中空パイプ材で形成されている。一方、上記受動部材51は合成樹脂で成型すると共に受動部材51における掛り合下部材54の内部には、図6〜8に表れるように、金属製の支承杆79が掛り合下部材54との一体性を高める状態で埋め込まれている。そしてそのアンカー用としての支承杆79には図示のように下方に向けて伸びている結合用の金属材で形成されている嵌合ピン81が一体的(溶接手段によって連結してあってもよい)に連ねてある。嵌合ピン81の上部には図示のように針棒19の上端19aに当て付けて、位置規制をする為の受け座80が周設してある。なお、支承杆79と受動部材51との連結の度合いを高めるためには図11のように、支承杆79に対して、断面を受動部材51の形状に対応させ、内蔵の状態にしてあるコの字型形成の引き止金具79bを一体的に連結しておいても良い。19bは中空パイプ状の針棒19の中空部を示す。上記受動部材51と、上記中空パイプ状の針棒19の上部との連結は、図6〜8に表れるように、針棒19の上端19aにおける中空パイプ部分の内側に対し、上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を同軸的に挿入して、嵌合させて連結して一体化させてある。
その連結一体化させる手段としては、周知の連結手段を用いるとよい。例えば、図6〜8に表れるように、針棒上端19aの中空パイプ部分と、嵌合ピン81とを夫々の孔19c、81aを対応させて装入した状態でかしめピン19dを用いて一体的に連結してもよい。
このように構成すると、針棒19の中空パイプ部分19bに上記受動部材51の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して嵌合させて、容易に一体化させることができるので、結合部分がシンプル化により、針棒19を薄肉の中空パイプを用いて軽量化し、その上下動の高速化を可能にすることができる。なお、この中空パイプ状の針棒19の寸法としては、例えば、中空パイプの外径D1:6.35mm、中空パイプの内径D2:3.8mm、中空パイプの肉厚:1.275mm、嵌合ピン81の外径D3:4.5mm に形成してもよい。
【0025】
なお、上記針棒機構18における布押え部材の主体部23の上部は、針棒19が上下動自在に挿通してある受動部25に止着手段26を用いて連結してある。この布押え部材23の上方への復帰を可能に付勢する構成は周知であるが、上記巻きばね27、28を利用する為に、図示のように巻きばね27と28との間に上記受動部25を介在させ、周知のように巻きばね27のばね力を大きく、巻きばね28のばね力を小さくしてある。
なお、65は特許文献1で知られているように、案内棒45に上下動自在に装着してある布当片用昇降体である。
【0026】
さらに上記フレーム2には、図1、4に表れているように、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部にあたる押下げ面57に当接してその押下げ面57を反復下方に押圧駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある駆動部材41を備える針棒駆動機構30を備える。
針棒駆動機構30は周知であり、図1、4に表れているように、主軸4の回転により偏心カム31を回転させ、クランクロッド32を進退させ、レバー33の一端33aを支点に他端33bを上下動させ、リンク部材40を介して、フレーム2に上下が装着されている案内棒45によって支えられている昇降体46を直線的に上下往復動させ得るように構成されている。
上記針棒駆動機構30の昇降体46において、図4、7、図9(D)等に表れている46a、46bは、針棒駆動部材41を枢軸49によって往復回動自在に支持する為の支持腕を示し、46cはリンク部材40の連繋片を示す。
そして、この針棒駆動機構30における昇降体46には、上記針棒19の頂部の押下げ面57に当接してその押下げ面57を、周知のように上記巻きばね27、28の付勢力に抗して反復下方に(図4(B)の下死点位置にまで)押圧駆動できるようにしてある上下動自在の駆動部材41を備える。
【0027】
次に、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてある。図5(A)に表れる43dは、駆動部材41の先に位置して、受動部材51の押下げ面57に重合させる係合部分である。
上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある。
【0028】
次に上記の駆動部材41は、周知のように、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置(図5(A)参照)と、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置(図5(B)参照)との間を往復動作可能に構成してある。
このような構成の例としては、特許文献2,3を含めて周知の多種のジャンプ手段を備える構成があるが、図4、5のような構成も考えられる。
図におけるジャンプ手段70において、71はフレーム2に連ねた部材に固着したソレノイドで、進退自在のピン72を備える。73は連繋手段で、フレーム2に連ねた部材2に支えられた枢軸74によって揺動自在に枢支され、かつ、ばね77によって後退方向(図5(A)(C)の反矢印67b方向)に付勢されている連繋部材73aを備える。75はピン72との掛合部、76は駆動部材41の操作片50を押し動かす為の押圧部を示す。
前述したように駆動部材41は、昇降体46から上方に向けて樹立させた枢軸49によって図5(A)(B)の位置に往復回動自在となるように支持されている。この駆動部材41は、ばね49aによって作動方向(図5(A)の状態になるように、反矢印67d方向)に付勢されている。駆動部材41の当止片44が昇降体46のストッパー46eに当接して、駆動部材41の係合部分43dを作動位置に維持されるようにしてある。
【0029】
上記構成にあっては、図示外の周知のプログラムからのジャンプ指令により、ソレノイド71のピン72が矢印67a方向に、またこれにより、連繋手段73の掛合部75、押圧部76が夫々矢印67b、67c方向に作動し、操作片50を矢印67c方向に押し動かすことにより、駆動部材41の係合部分43dを針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置である作動位置(図5(A)の位置)から針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置(図5(B)の位置)に移動させ、駆動部材41は、針棒19を伴うことなく周知のように下降する。
【0030】
次に駆動部材41が上昇する過程においてジャンプ動作を終了して通常の動作に入る場合は、前述したジャンプ指令に基づき、駆動部材41の上昇過程で、前述した符号72、73、75、76、50、41の部材について、それらの上記動作とは反対の動作により、駆動部材41を針棒19の側面を利用した滑動面19eに対して付勢状態で沿わせながら、滑動状態で上昇させる。駆動部材41が針棒上部の空間55に対応した段階では、駆動部材41の自由端43dは、針棒19の頂部の押下げ面57の直上に入り込む。その後は、駆動部材41の下降動作に伴って針棒19を下降させることができる。
なお、ジャンプ動作を必要としない場合には、上記駆動部材41を非回動の構成にすると良い。
【0031】
次に、針棒19の横ぶれを防止する為の補助機構18aを説明する。
図1〜5に示されるように上記複数の針棒機構18における各針棒19の側方には、支持杆24を夫々並設状態で配設する。支持杆24の夫々の下部は上記針棒19の下部を支持している上記横動枠5の下部枠5cに止め穴を設けてそこに挿入する状態で装着する。上部は上記横動枠5と一体動可能に一体化した状態で構成してある上部枠5dに止め穴を設けてそこに挿入する状態で装着してある。
それらの各支持杆24には、夫々上下摺動自在に摺動部材29を備えさせる。摺動の手段としては、図4〜6に表れているように摺動部材29に貫通孔29bを設け、支持杆24を摺動自在に通せばよい。摺動部材29は、受動部材51とは別体で、単独に形成し、受動部材51と任意の手段で一体的に連結しても良いが、図示の如く針棒19の上方に一体的に備えさせる受動部材51の全てと一体的に、合成樹脂で形成しても良い。
【0032】
このように一体的に形成すると、各摺動部材29は夫々対応する針棒19の上部と一体的な上下動を可能に連結することになる。上記の巻きばね27と、巻きばね28は、図示のように上記支持杆24の周囲を取り囲む状態で、受動部25の上側と、下側において夫々周設する。しかも上部のばね受け部29aは、針棒19の上部に連結してある受動部材51から側方に向けてばね受け部を突出状に形成しても良いが、上記摺動部材29の下側の面を利用してそこに定めてもよい。
【0033】
このように構成すると、各針棒19の上方自由端となっている頂部57は、摺動部材29に連結されていて連動状態で上下動し、駆動部材41で受動部材51の押下げ面57が衝撃的に叩かれても、また、各針棒19を高速上下動化しても各針棒19の上方自由端となる頂部57(受動部材51)の「横ぶれ」を極力防止できる。
【0034】
次に、本願にあっては、駆動部材41が上昇する過程においては、駆動部材41の退避位置に近い側の一側面に対して滑動面19eを備えさせることができる。そして駆動部材41が「針棒押下げ面57に至る直前から針棒押下げ面57に至るまでの時間」を、より短くして、ジャンプ動作全体の動作時間を高速化できる。その構成としては 次のようにすると良い。
本願にあっては、各針棒19の上方自由端に備える受動部材51の下側には巻きばね27、28を備えさせない構成であるから、上記針棒19の上部にあっては、駆動部材41の退避位置に近い側の一側面に対して、針棒19の休止状態において駆動部材41が、従来よりも早いタイミングで針棒19の側面に沿わせて側面を滑りながら相対的に上昇して、針棒19の押下げ面57の上部位置に早く達することを可能にする滑動面19eを受動部25の上方位置に備えさせることができる。
【0035】
なお本件においては、昇降体46側に突出ピン形状の駆動部材41を連結し、針棒19の上部に断面コの字状の受動部材51を備えさせ、針棒19を上下動させる駆動機構(選択伝達機構12)を構成した例を説明したが、特許文献2と特許文献3との比較から明らかなように、特許文献3に開示されている符号42が付されている針棒駆動部材(昇降部材)の側に符号43、44が付されている係合突片を備えさせ、針棒の側に符号22が付されている突出ピンを備えさせても、これらは相対的な関係にあるので、針棒を上下動させる本件の駆動機構は同様に実施することができる。
【0036】
次に、多針ミシン1において、昇降体46と共に上下動する針棒駆動部材41と、針棒駆動部材41の係合突片43に掛り合して上下方向に連動的に駆動される受動部材51とを備えて構成される選択伝達機構12における細部の構成を次に説明する。
【0037】
上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形される。しかも図6〜12に示されるように、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aまたは上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60または83:材質としては、例えば耐摩耗性のある快削鋼又は炭素鋼を用いる。)をその表面(60aまたは83a)が図示のように露出する状態で、合成樹脂材の中に埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材の面が露出する状態にしてある。そして合成樹脂材の面と、金属片の表面が相互に圧接触するように構成してある。上記針棒駆動部材41と、受動部材51を 形成する合成樹脂としては、従来より用いられている高強度、高剛性、対摩擦摩耗特性に優れた周知の合成樹脂を用いるとよい。例えばジュラコン(ポリプラスチックス(株)の登録商標)CH−20を用いてもよい。
【0038】
また、上記選択伝達機構12においては、図6〜12に示されるように、
上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bまたは上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60bまたは78)をその表面(60cまたは78a)が図示のように露出する状態で、合成樹脂材の中に埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材の面が露出する状態にしてある。そして合成樹脂材の面と、金属片の表面が相互に圧接触するように構成してある。
【0039】
上記の場合において、例えば、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに、金属片60をその表面60aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、図6〜9に示されるように、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるようにするとよい。
この点の構成の説明をさらに補足すると、図6〜9に表れている60は金属片としての当金部材を示し、61は当金部材60を係合突片43の上面43aに対して埋め込む為の棒状のアンカーを示す。当金部材60とアンカー61とは、周知の固着手段(例えば、接着剤による固着手段、溶接手段)によって固着部61aで一体的に形成されている。上記当金部材60表面の形状は、上記針棒駆動部材41と受動部材51の対向する面が係合した状態(図6、図9(D)参照)において、露出する当金部材の当面60aと、上記掛り合上部材53における合成樹脂材の衝突面56とが圧接触するような形状に形成すればよい。62aは上記アンカー61を固定的に位置させる為の引止穴を示す。
上記当金部材60としては、小片の為、比重の小さい金属を用いたり、摩耗度は小さいので軽量化する為に厚みの薄いものを用い、上記アンカー61は細く形成しておくと良い。実施においては合成樹脂全体の重量に対して僅かに10%以下に止めることができる。
【0040】
次に、上記の受動部材51を合成樹脂材で成型するにあたり、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に、金属片(83)をその表面83aが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合上部材53の下面に位置させる衝突面56の存在予定位置に向けて、図10、図12に表れているように、受動部材51の内部を経由して(合成樹脂の成形面に露出しないように)金属材の細い保持部材79aを延出させて上記受止金としての金属片83の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形するとよい。このようにすると、受動部材51に対して予定した正確な位置に金属片83を埋め込み状態で具備させることができる。なお、図10、図12に表れているように、合成樹脂材製の受動部材51の内部に金属材の細い保持部材79aを延出させておくことにより保持部材79aが補強材となり、合成樹脂材製受動部材51が衝撃により疲労破損することを防止する上に役立つ。
【0041】
次に、上記選択伝達機構12における係合突片43を合成樹脂材で成形するにあたり、その下面に位置する係合下面43bに、金属片60bの表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、予め連結杆としてのアンカー61の両側に夫々同じ金属片60、60bを備えさせて図11に表れているように鼓形状にし、それらの金属片60、60bの位置関係は、上記係合突片43内に埋め込んだ状態では、図11に表れているように、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材59を形成しておき、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材59を、一方の金属片60bの下面が当付金として上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60の上面が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する状態に配置して、上記合成樹脂材でもって上記針棒駆動部材41の全体を成形すればよい。
【0042】
次に、上記選択伝達機構12における係合突片43を合成樹脂材で成形するにあたり、上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが当付金として下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材で成形するときに、図12に表れているような構成(図7の金属片60参照)の金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60bを埋め込み状態で具備させればよい。
【0043】
次に、上記選択伝達機構12における受動部材51の全体を合成樹脂材で成形するにあたり、上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における圧接触する部分に、受金部材としての金属片78を、図8、図10に表れているように、その表面が露出して当付金の役割を果たす状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合下部材54の上面に位置させる押下げ面57に向けて、金属材の保持部材79を延出させて上記保持部材79の上部にて当付金としての金属片78の位置を定めておき、その状態で、受動部材51の全体を、インサート成型法などの周知の手段により合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片78を適正な位置に埋め込み状態で具備させればよい。
特に、受動部材51における上記掛り合下部材54の上面に位置する係合突片43の係合下面43bは、周知のように(また図5(A)、図6等からも明らかなように)係合突片43の側の極めて狭い範囲に偏在させなければならないので、要求される製作精度は極めてシビアであるが、上記の構成はその精度に対応する上に極めて有益である。
さらに上記金属片78は、上記当金部材60の場合と同様の事情により、合成樹脂全体の重量に対して極めて軽量の比率にしておくことができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・多針ミシン、2・・・フレーム、3・・・ベッド、3a・・・針落孔、4・・・主軸、5・・・横動枠、5e・・・緩衝部材、6・・・ガイドレール、7・・・横動駆動軸、10・・・天秤機構、18・・・針棒機構、19・・・針棒、19a・・・上端、19b・・・中空部 、19c・・・孔、19d・・・かしめピン、20・・・針、23・・・布押え部材、24・・・支持杆、25・・・受動部、26・・・止着手段、27・・・ばね、28・・・ばね、29・・・摺動部材、30・・・針棒駆動機構、31・・・偏心カム、32・・・クランクロッド、33・・・レバー、40・・・リンク部材、41・・・針棒駆動部材、42・・・本体部、43・・・係合突片、43a・・・係合上面、43b・・・係合下面、43d・・・係合部分、44・・・当止片、45・・・案内棒、46・・・昇降体、46a・・・支持腕、46b・・・支持腕、46c・・・連繋片、49・・・枢軸、49a・・・ばね、50・・・操作片、51・・・受動部材、51a・・・係合部、52・・・本体部、53・・・掛り合上部材、54・・・掛り合下部材、55・・・空間(係合突片挿入用空間)、56・・・衝突面、57・・・押下げ面(針棒の受圧用頂部)、60・・・当金部材60a・・・当面、60b・・・当付金、60c・・・表面、61・・・アンカー(連結管)、61a・・・固着部、62・・・埋込穴、62a・・・引止穴、65・・・布当片用昇降体、70・・・ジャンプ手段、78・・・受金部材、78a・・・表面、79・・・支承杆、79a・・・保持部材79b・・・引止金具、80・・・受け座、81・・・嵌合ピン、81a・・・孔、83・・・受止金、83a・・・表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、多針ミシンに関し、詳しくは横動自在の枠に複数の針棒が上下動自在に支持されていて、その内の1本の針棒を選択的に針落孔位置に移動させて上下動させる事により縫製に用いることができるようにした多針ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
図面は本発明の実施例を示すものであるが、これらの図において符号1〜10、18〜40、41と51との組み合わせ、70〜77等を付した構造・部材に関わる構成は、従来から、例えば特許文献1、特許文献2等で知られた構成である。よって図面を用いて従来例を説明する。
フレーム2(固定ブロック)には、複数の針棒機構18(各針棒機構18は夫々針棒19、布押さえ23等を備える)を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横方向に向けて横動させるようにした横動枠5(可動ブロック)を備える。一般に横動枠5としては、回動状に横動する横動枠5(例えば特許文献1)と、直線状に横動する横動枠5(例えば特許文献2)とが用いられる。
一方、上記フレーム2には、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に当接して針棒19を上下駆動させるための針棒駆動機構30を備える。この針棒駆動機構30は、主軸4の回動に伴い、上下動する昇降体46、昇降体46に連動して上下動し、対応する針棒19の頂部を構成する受動部材51における掛り合下部材54に当接してそれの押下げ面57を反復下方に押圧駆動できるようにしてある針棒駆動部材41(叩き部材とも称される)等を備えている。
なお、図示の構成にあっては、上記の針棒駆動部材41は、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置である作動位置と、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置との間を、図5に表れているように往復動作可能に構成してある。いわゆるジャンプ動作可能な構成(例えば特許文献2、特許文献3参照)にしてある。
さらに、上記各針棒機構18は、上記横動枠5の下部枠5c(可動ブロックの下部)に対して上下動自在に装着してある針棒19と、その針棒19に並行する状態で上下動自在にしてある布押え23とを備え、上記針棒19は、特許文献1等で広く知られているように、針棒19の上部に備えさせるばね受け部29aと、針棒19の下部を支持する上記横動枠5の下部枠5cとの間に介在させた巻きばね27、28によって常時上方への復帰を可能に付勢してある。
なお上記において、部材の名称の後に括弧で囲って記載した部材の名称は上記特許文献2等で用いられている周知の名称(同義語)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3608084号公報
【特許文献2】特開2002−18172号公報
【特許文献3】特許第3107860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の多針ミシンでは、針棒駆動部材41(叩き部材とも称されている)は合成樹脂で成形されている。合成樹脂材としては、従来より、強靭で、衝撃に強く、耐摩耗性に優れた材料が選定されている。例えば、ジュラコン(ポリプラスチックス(株)の登録商標)のCH−20(比重:1.47)や、NW−02(比重:1.36)、KT−20(比重:1.59)が用いられている。
一方、針棒19の頂部に備えさせる受動部材51は、金属製の針棒19の頂部に備えさせる関係から、多くの場合、金属材(例えば、アルミ合金A7075 比重:2.8)で構成されている。
しかしながら、受動部材51が金属材で構成されていると、夫々の針棒19に対する荷重負担が大きく、針棒19を、より一層速く、高速上下動化するにあたって困難を伴い、支障となる問題点がある。
そこで出願人会社においては、上記受動部材51を、上記針棒駆動部材41と同様に、合成樹脂で成形し、受動部材51の軽量化を試みた。
このように針棒駆動部材41と共に受動部材51をも合成樹脂で成型すると、製作に当たっての成形工程はきわめて容易になり、コストの削減が可能になるると共に、針棒19を、より一層速く、高速上下動化することができた。
しかしながら、針棒駆動部材41と、受動部材51との当接部分においては、摩擦係数、摩耗特性は極端に低下する。樹脂同士の強い凝着力に起因して摩耗が激しく、寿命が短くなって、需用者から苦情が頻発し、商品化できない問題点があった。
【0005】
本件出願の目的は、 受動部材を軽量化することにより、針棒のより一層の高速上下動化を可能にする多針ミシンを提供しようとするものである。
他の目的は、受動部材を軽量化する為に合成樹脂を用いることにより受動部材の成形を容易にし、コストの低減を図ることができる多針ミシンを提供しようとするものである
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における多針ミシンは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、 上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aまたは上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60または83)をその表面(60aまたは83a)が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたものである。
【0007】
また好ましくは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、 上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bまたは上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60bまたは78)をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたものであればよい。
【0008】
また好ましくは、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに、金属片60をその表面60aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0009】
また好ましくは、上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に、金属片83をその表面83aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合上部材53の下面に位置させる衝突面56に向けて、受動部材51の内部を経由して金属材の保持部材79aを延出させて上記金属片83の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0010】
また好ましくは、上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、予め連結杆61の両側に夫々金属片60、60bを備え、それらの金属片60、60bの位置関係は、上記係合突片43内に埋め込んだ状態では、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60aが上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材59を形成しておき、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材59を、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する状態に配置して、上記合成樹脂材を用いて上記針棒駆動部材41を成形するものであればよい。
【0011】
また好ましくは、 上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0012】
また好ましくは、上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における圧接触する部分に、金属片78を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合下部材54の上面に位置させる押下げ面57に向けて、金属材の支承杆79を延出させて上記支承杆79の上部にて金属片78の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片78を埋め込み状態で具備させるものであればよい。
【0013】
また好ましくは、フレーム2には、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5と、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部に備える受動部材51に係合させて該針棒19を下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある針棒駆動部材41を備える針棒駆動機構30とを備えさせ、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてあり、上記受動部材51は、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態の掛り合上部材53と、掛り合下部材54とを備えており、上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、 係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、上記針棒19は中空パイプ材で形成されており、一方、上記受動部材51は合成樹脂で成型すると共に受動部材51における掛り合下部材54の内部には、下方に向けて伸びている嵌合ピン81に連なる支承杆79が埋め込まれており、上記受動部材51と、上記中空パイプ状の針棒19の上部との連結は、針棒19の上端における中空パイプ部分に上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して嵌合させて連結してあるものであればよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明は、針棒駆動部材41と共に、受動部材51も夫々合成樹脂材を用いて成形できるものであるから、その製作工程は、金属加工によって成形する場合に比較して容易であり、コストの低減が図れる利点がある。
【0015】
その上、針棒駆動部材41も受動部材51も夫々合成樹脂材であるから、軽量であり、針棒19を高速でもって上下動させる場合の荷重負担は比較的少なくなり、針棒19の上下動作を高速化して、縫製作業の効率を高める得る効果がある。
【0016】
その上、針棒駆動部材41も、受動部材51も、ともに夫々合成樹脂材で成形したものであっても、両者間の圧接触する部分においては、そのいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は、合成樹脂材を露出させる状態にしてあるから、即ち、圧接触する部分においては、従来のように、金属面と合成樹脂面が接触するように構成してあるので、従来と同様に摩耗は少なく、長寿命の構成として用いることのできる効果がある
【0017】
さらに本発明にあっては、上記受動部材51を軽量化するために合成樹脂で成型するものであっても、針棒19との連結構造は、受動部材51における掛り合下部材54の内部に、下方に向けて伸びている嵌合ピン81に連なる支承杆79を埋め込んで成型するものであるから、針棒19を、軽量化するために中空パイプで形成したものであっても、針棒19の上端における中空パイプ部分に上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して、嵌合させると、容易に一体化させることができるので、上記受動部材51を合成樹脂にして軽量化すると共に、針棒19をも、結合部分がシンプル化により、薄肉の中空パイプを用いて軽量化し、その上下動の高速化を可能にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】多針ミシンを説明する為の部分断面図。
【図2】多針ミシンを説明する為の一部破断正面図。
【図3】横動枠と針棒機構との関係を説明するための概略分解斜視図。
【図4】針棒機構と針棒駆動機構との関係を説明する為の部分断面図で、(A)は針棒が上死点位置にある状態、(B)は針棒が下死点位置にある状態を示す。
【図5】(A)(B)は昇降体に連なる針棒駆動部材と、針棒機構と、ジャンプ手段との関係を説明する為の一部を破断して示す部分断面図。(C)はジャンプ手段を説明する為の概略模式図。
【図6】駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明する為の部分断面図。
【図7】昇降体と、駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための概略(分解)模式図。
【図8】駆動部材と、針棒の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための部分分解断面図。
【図9】(A)(B)(C)(D)は、順次、駆動部材の平面図、図8におけるA−A線断面図、図8におけるB−B線断面図、図4(A)におけるIX−IX線断面図。
【図10】図6〜9の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様が異なる例を示す部分断面図。
【図11】前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
【図12】前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、多針ミシン1を説明する為の部分断面図。
図2は多針ミシン1を説明する為の正面図で、横動枠5と針棒機構18との関係を説明する為に針棒カバー8を一部破断し、横動枠5の一部分と針棒機構18のみを示す。破断位置は図1のII−II線位置。なお、図2において天秤機構10の存在位置を一点鎖線で示す。
図3は、横動枠5と針棒機構18との関係及び、針棒19と、その横ぶれを防止する為の補助機構18aの関係を説明する為の概略分解斜視図。
図4は、針棒機構18と針棒駆動機構30との位置関係を説明する為の部分断面図で、(A)は針棒19が上死点位置にある状態を示し、(B)は針棒19が下死点位置にある状態を示す。
図5(A)(B)は、昇降体46と一体的に上下動する駆動部材41と、針棒機構18と、ジャンプ手段70との位置関係を説明する為の一部破断して示す部分断面図。破断位置は図4のV−V線位置。なお、図5(A)は駆動部材41が作動位置にある状態を示す(一点鎖線の駆動部材41は退避位置にある状態を示す)。駆動部材41と係合している針棒の受動部材51にあっては、係合部分43dと針棒の頂部57との関係を示す為に上部の掛り合上部材53を破断して示す。図5(B)は駆動部材41が退避位置にある状態を示す。一点鎖線で示す駆動部材41は、ジャンプ動作を終了して通常の動作に戻る場合に、駆動部材41が上昇過程で、付勢状態で針棒19の側面に沿っている状態を示す。
図5(C)はジャンプ手段70を説明する為の概略模式図。
図6は、駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材51との関係を説明するための部分断面図で、駆動部材41の上面43aと、受動部材51の押下げ面57に対して夫々当金部材60と、受金部材78を配した構成態様を示す。
図7は、昇降体46と、駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材との関係を説明するための概略(分解)模式図。受動部材51は存在位置を2点鎖線で示す。
図8は、 駆動部材41と、針棒19の頭部を構成する受動部材51との関係を説明するための部分分解断面図。
図9(A)(B)(C)(D)は、順次、駆動部材41の平面図、図8におけるA−A線断面図、図8におけるB−B線断面図、図4におけるIX−IX線断面図。
図10は、前出の例とは駆動部材41と、受動部材51に対する金属片の構成態様が異なる例を示す部分断面図。(B)は(A)のX−X線断面図。
図11は、前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
図12は、前出の例とは駆動部材と、受動部材に対する金属片の構成態様がさらに異なる例を示す部分断面図。
なお、図面の説明に当り、前出の図に対する後出の図面の説明において、前出の図と同符号を用いた構成、部材等の機能、性質、手段又は特徴等は、以下の説明に於て加える新規な部材の構成、組合せ等の説明に係わる事項を除き、前出の図の同符号の説明と同旨である。よって、前出の図に対する後出の図面の説明においては重複する説明は一部省略する。
【0020】
次に、図において、符号1〜10、18〜40、41と51との組み合わせ、70〜77等を付した構造・部材に関わる構成は、本件において新しく加えた部分を除き多くの構成が前述したように従来から、例えば特許文献1、特許文献2等で知られた構成と同旨の構成であるから、この点を念頭に置いて以下簡単に構成を説明する。
1は刺繍縫いに用いられる周知の多針ミシンを示し、この多針ミシン1において2はフレーム(固定ブロックとも称されている)、9は図1、3に表れているように、フレーム2の上部に対して一体的に備えさせたガイドブロックで、断面をコの字状にして、横動枠5の背面側に装着してあるガイドレール6を横動自在に支持している。2aはフレーム2の下部に備えさせた係合爪で、横動枠5の下部枠5cの引っ掛け爪5aに係合して図1において右方向(前面側)へ振れるのを止める働きをしている。3はベッド、3aは針落孔、4は周知のように複数並設の多針ミシンを同時に駆動する為の主軸を示す。7は複数並設の多針ミシンにおける各横動枠5を同時に横動する為の横動駆動軸で、各横動枠5に固着してある。8は針棒カバーを示し、10は周知の天秤機構の存在を示す。
【0021】
上記フレーム2には、図1〜4に表れているように、複数の針棒機構18を並設状態で支持すると共にそれらの周知の針棒機構の内、1つの針棒機構18を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠5が備えさせてある。
さらに、上記複数の各針棒機構18は、上記横動枠5の下部枠5cに対して上下動自在に装着してある針棒19と、その針棒19に対して図1に表れているように並行する状態で上下動自在にしてある周知の布押え23とを備える。
【0022】
この点の構成の説明をさらに補足すると、
図1〜4に示されるように上記周知の針棒19は、横動枠5(例えば特許文献1又は特許文献2で知られている回動枠又は直線移動枠)の下部枠5cに設けてある透孔に対して上下動自在に装着してあり、下端には針20が備えられ、上方の自由端には駆動部材41を側方から出入りさせる為の空間55を備える受動部材51が装着してある。
上記針棒19は、針棒19の上部に備えさせる受動部材51の下面を活用してのばね受け部29aと、針棒19の下部を支持する上記横動枠5の下部枠5cの上面との間に介在させた巻きばね27、28によって常時上方への復帰を可能に付勢してある。上記針棒19の上昇位置は、図1に表れているように上部枠5dの下面に当たるまで上昇する。しかし多くの場合、上部枠5dの下面近くには特許文献2においても知られているように、複数並設させた針棒19の上昇位置を揃えるためのストッパーとしての緩衝部材5eがフレーム2に対して上下方向位置を調節自在に配置されたり、特開2002−66183号公報等によっても広く知られているように針棒ストッパーが緩衝部材として配置されるので、巻きばね27、28の付勢力によって勢いよく上昇する各針棒19の上部に形成される係合部51aは緩衝部材5e等に衝突して、一定位置に止まる。
【0023】
上記受動部材51は、駆動部材41の上面43aに係合させる為の掛り合上部材53と、駆動部材41の下面43bに係合させる為の掛り合下部材54とを備えている。上記掛り合上部材53と掛り合下部材54とは、図4〜6に示されるように、針棒19の上部に連なる本体部52の上下の位置から夫々上記係合突片43の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間55が存在する状態で備えられている。56は針棒19の頂部に備えさせた駆動部材41の係合上面43a当接用の衝突面、57は針棒19の頂部に備えさせた駆動部材41の係合下面43b押し当て用の受圧部である押下げ面を示す。
【0024】
次に、上記針棒19と受動部材51の連結に関連する構成について説明する。
上記針棒19は図6〜8に表れるように、軽量となるように薄い肉厚の金属製中空パイプ材で形成されている。一方、上記受動部材51は合成樹脂で成型すると共に受動部材51における掛り合下部材54の内部には、図6〜8に表れるように、金属製の支承杆79が掛り合下部材54との一体性を高める状態で埋め込まれている。そしてそのアンカー用としての支承杆79には図示のように下方に向けて伸びている結合用の金属材で形成されている嵌合ピン81が一体的(溶接手段によって連結してあってもよい)に連ねてある。嵌合ピン81の上部には図示のように針棒19の上端19aに当て付けて、位置規制をする為の受け座80が周設してある。なお、支承杆79と受動部材51との連結の度合いを高めるためには図11のように、支承杆79に対して、断面を受動部材51の形状に対応させ、内蔵の状態にしてあるコの字型形成の引き止金具79bを一体的に連結しておいても良い。19bは中空パイプ状の針棒19の中空部を示す。上記受動部材51と、上記中空パイプ状の針棒19の上部との連結は、図6〜8に表れるように、針棒19の上端19aにおける中空パイプ部分の内側に対し、上記受動部材51における掛り合下部材54の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を同軸的に挿入して、嵌合させて連結して一体化させてある。
その連結一体化させる手段としては、周知の連結手段を用いるとよい。例えば、図6〜8に表れるように、針棒上端19aの中空パイプ部分と、嵌合ピン81とを夫々の孔19c、81aを対応させて装入した状態でかしめピン19dを用いて一体的に連結してもよい。
このように構成すると、針棒19の中空パイプ部分19bに上記受動部材51の下部から下方に向けて突出する嵌合ピン81を挿入して嵌合させて、容易に一体化させることができるので、結合部分がシンプル化により、針棒19を薄肉の中空パイプを用いて軽量化し、その上下動の高速化を可能にすることができる。なお、この中空パイプ状の針棒19の寸法としては、例えば、中空パイプの外径D1:6.35mm、中空パイプの内径D2:3.8mm、中空パイプの肉厚:1.275mm、嵌合ピン81の外径D3:4.5mm に形成してもよい。
【0025】
なお、上記針棒機構18における布押え部材の主体部23の上部は、針棒19が上下動自在に挿通してある受動部25に止着手段26を用いて連結してある。この布押え部材23の上方への復帰を可能に付勢する構成は周知であるが、上記巻きばね27、28を利用する為に、図示のように巻きばね27と28との間に上記受動部25を介在させ、周知のように巻きばね27のばね力を大きく、巻きばね28のばね力を小さくしてある。
なお、65は特許文献1で知られているように、案内棒45に上下動自在に装着してある布当片用昇降体である。
【0026】
さらに上記フレーム2には、図1、4に表れているように、上記横動枠5の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構18における針棒19の頂部にあたる押下げ面57に当接してその押下げ面57を反復下方に押圧駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体46に対して装着してある駆動部材41を備える針棒駆動機構30を備える。
針棒駆動機構30は周知であり、図1、4に表れているように、主軸4の回転により偏心カム31を回転させ、クランクロッド32を進退させ、レバー33の一端33aを支点に他端33bを上下動させ、リンク部材40を介して、フレーム2に上下が装着されている案内棒45によって支えられている昇降体46を直線的に上下往復動させ得るように構成されている。
上記針棒駆動機構30の昇降体46において、図4、7、図9(D)等に表れている46a、46bは、針棒駆動部材41を枢軸49によって往復回動自在に支持する為の支持腕を示し、46cはリンク部材40の連繋片を示す。
そして、この針棒駆動機構30における昇降体46には、上記針棒19の頂部の押下げ面57に当接してその押下げ面57を、周知のように上記巻きばね27、28の付勢力に抗して反復下方に(図4(B)の下死点位置にまで)押圧駆動できるようにしてある上下動自在の駆動部材41を備える。
【0027】
次に、上記針棒駆動部材41における係合突片43は、針棒駆動部材41の本体部42から上記受動部材51の係合突片挿入用空間55の内に挿入する状態で備えさせてある。図5(A)に表れる43dは、駆動部材41の先に位置して、受動部材51の押下げ面57に重合させる係合部分である。
上記針棒駆動機構30を作動させて昇降体46を上下動させることにより、係合突片43が下降する場合は、係合突片43の係合下面43bが、掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57に当接して針棒19を下動させ、係合突片43が上昇する場合は、係合突片43の係合上面43aが、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に当接するようにしてある。
【0028】
次に上記の駆動部材41は、周知のように、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置(図5(A)参照)と、針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置(図5(B)参照)との間を往復動作可能に構成してある。
このような構成の例としては、特許文献2,3を含めて周知の多種のジャンプ手段を備える構成があるが、図4、5のような構成も考えられる。
図におけるジャンプ手段70において、71はフレーム2に連ねた部材に固着したソレノイドで、進退自在のピン72を備える。73は連繋手段で、フレーム2に連ねた部材2に支えられた枢軸74によって揺動自在に枢支され、かつ、ばね77によって後退方向(図5(A)(C)の反矢印67b方向)に付勢されている連繋部材73aを備える。75はピン72との掛合部、76は駆動部材41の操作片50を押し動かす為の押圧部を示す。
前述したように駆動部材41は、昇降体46から上方に向けて樹立させた枢軸49によって図5(A)(B)の位置に往復回動自在となるように支持されている。この駆動部材41は、ばね49aによって作動方向(図5(A)の状態になるように、反矢印67d方向)に付勢されている。駆動部材41の当止片44が昇降体46のストッパー46eに当接して、駆動部材41の係合部分43dを作動位置に維持されるようにしてある。
【0029】
上記構成にあっては、図示外の周知のプログラムからのジャンプ指令により、ソレノイド71のピン72が矢印67a方向に、またこれにより、連繋手段73の掛合部75、押圧部76が夫々矢印67b、67c方向に作動し、操作片50を矢印67c方向に押し動かすことにより、駆動部材41の係合部分43dを針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置である作動位置(図5(A)の位置)から針棒19の頂部の押下げ面57の上部位置を避けた一側方の退避位置(図5(B)の位置)に移動させ、駆動部材41は、針棒19を伴うことなく周知のように下降する。
【0030】
次に駆動部材41が上昇する過程においてジャンプ動作を終了して通常の動作に入る場合は、前述したジャンプ指令に基づき、駆動部材41の上昇過程で、前述した符号72、73、75、76、50、41の部材について、それらの上記動作とは反対の動作により、駆動部材41を針棒19の側面を利用した滑動面19eに対して付勢状態で沿わせながら、滑動状態で上昇させる。駆動部材41が針棒上部の空間55に対応した段階では、駆動部材41の自由端43dは、針棒19の頂部の押下げ面57の直上に入り込む。その後は、駆動部材41の下降動作に伴って針棒19を下降させることができる。
なお、ジャンプ動作を必要としない場合には、上記駆動部材41を非回動の構成にすると良い。
【0031】
次に、針棒19の横ぶれを防止する為の補助機構18aを説明する。
図1〜5に示されるように上記複数の針棒機構18における各針棒19の側方には、支持杆24を夫々並設状態で配設する。支持杆24の夫々の下部は上記針棒19の下部を支持している上記横動枠5の下部枠5cに止め穴を設けてそこに挿入する状態で装着する。上部は上記横動枠5と一体動可能に一体化した状態で構成してある上部枠5dに止め穴を設けてそこに挿入する状態で装着してある。
それらの各支持杆24には、夫々上下摺動自在に摺動部材29を備えさせる。摺動の手段としては、図4〜6に表れているように摺動部材29に貫通孔29bを設け、支持杆24を摺動自在に通せばよい。摺動部材29は、受動部材51とは別体で、単独に形成し、受動部材51と任意の手段で一体的に連結しても良いが、図示の如く針棒19の上方に一体的に備えさせる受動部材51の全てと一体的に、合成樹脂で形成しても良い。
【0032】
このように一体的に形成すると、各摺動部材29は夫々対応する針棒19の上部と一体的な上下動を可能に連結することになる。上記の巻きばね27と、巻きばね28は、図示のように上記支持杆24の周囲を取り囲む状態で、受動部25の上側と、下側において夫々周設する。しかも上部のばね受け部29aは、針棒19の上部に連結してある受動部材51から側方に向けてばね受け部を突出状に形成しても良いが、上記摺動部材29の下側の面を利用してそこに定めてもよい。
【0033】
このように構成すると、各針棒19の上方自由端となっている頂部57は、摺動部材29に連結されていて連動状態で上下動し、駆動部材41で受動部材51の押下げ面57が衝撃的に叩かれても、また、各針棒19を高速上下動化しても各針棒19の上方自由端となる頂部57(受動部材51)の「横ぶれ」を極力防止できる。
【0034】
次に、本願にあっては、駆動部材41が上昇する過程においては、駆動部材41の退避位置に近い側の一側面に対して滑動面19eを備えさせることができる。そして駆動部材41が「針棒押下げ面57に至る直前から針棒押下げ面57に至るまでの時間」を、より短くして、ジャンプ動作全体の動作時間を高速化できる。その構成としては 次のようにすると良い。
本願にあっては、各針棒19の上方自由端に備える受動部材51の下側には巻きばね27、28を備えさせない構成であるから、上記針棒19の上部にあっては、駆動部材41の退避位置に近い側の一側面に対して、針棒19の休止状態において駆動部材41が、従来よりも早いタイミングで針棒19の側面に沿わせて側面を滑りながら相対的に上昇して、針棒19の押下げ面57の上部位置に早く達することを可能にする滑動面19eを受動部25の上方位置に備えさせることができる。
【0035】
なお本件においては、昇降体46側に突出ピン形状の駆動部材41を連結し、針棒19の上部に断面コの字状の受動部材51を備えさせ、針棒19を上下動させる駆動機構(選択伝達機構12)を構成した例を説明したが、特許文献2と特許文献3との比較から明らかなように、特許文献3に開示されている符号42が付されている針棒駆動部材(昇降部材)の側に符号43、44が付されている係合突片を備えさせ、針棒の側に符号22が付されている突出ピンを備えさせても、これらは相対的な関係にあるので、針棒を上下動させる本件の駆動機構は同様に実施することができる。
【0036】
次に、多針ミシン1において、昇降体46と共に上下動する針棒駆動部材41と、針棒駆動部材41の係合突片43に掛り合して上下方向に連動的に駆動される受動部材51とを備えて構成される選択伝達機構12における細部の構成を次に説明する。
【0037】
上記針棒駆動部材41と、受動部材51とは夫々合成樹脂材を用いて成形される。しかも図6〜12に示されるように、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aまたは上記掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60または83:材質としては、例えば耐摩耗性のある快削鋼又は炭素鋼を用いる。)をその表面(60aまたは83a)が図示のように露出する状態で、合成樹脂材の中に埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材の面が露出する状態にしてある。そして合成樹脂材の面と、金属片の表面が相互に圧接触するように構成してある。上記針棒駆動部材41と、受動部材51を 形成する合成樹脂としては、従来より用いられている高強度、高剛性、対摩擦摩耗特性に優れた周知の合成樹脂を用いるとよい。例えばジュラコン(ポリプラスチックス(株)の登録商標)CH−20を用いてもよい。
【0038】
また、上記選択伝達機構12においては、図6〜12に示されるように、
上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bまたは上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片(60bまたは78)をその表面(60cまたは78a)が図示のように露出する状態で、合成樹脂材の中に埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材の面が露出する状態にしてある。そして合成樹脂材の面と、金属片の表面が相互に圧接触するように構成してある。
【0039】
上記の場合において、例えば、上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに、金属片60をその表面60aが露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、図6〜9に示されるように、上記針棒駆動部材41の成形のときに、金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60を埋め込み状態で具備させるようにするとよい。
この点の構成の説明をさらに補足すると、図6〜9に表れている60は金属片としての当金部材を示し、61は当金部材60を係合突片43の上面43aに対して埋め込む為の棒状のアンカーを示す。当金部材60とアンカー61とは、周知の固着手段(例えば、接着剤による固着手段、溶接手段)によって固着部61aで一体的に形成されている。上記当金部材60表面の形状は、上記針棒駆動部材41と受動部材51の対向する面が係合した状態(図6、図9(D)参照)において、露出する当金部材の当面60aと、上記掛り合上部材53における合成樹脂材の衝突面56とが圧接触するような形状に形成すればよい。62aは上記アンカー61を固定的に位置させる為の引止穴を示す。
上記当金部材60としては、小片の為、比重の小さい金属を用いたり、摩耗度は小さいので軽量化する為に厚みの薄いものを用い、上記アンカー61は細く形成しておくと良い。実施においては合成樹脂全体の重量に対して僅かに10%以下に止めることができる。
【0040】
次に、上記の受動部材51を合成樹脂材で成型するにあたり、掛り合上部材53の下面に位置する衝突面56に、金属片(83)をその表面83aが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合上部材53の下面に位置させる衝突面56の存在予定位置に向けて、図10、図12に表れているように、受動部材51の内部を経由して(合成樹脂の成形面に露出しないように)金属材の細い保持部材79aを延出させて上記受止金としての金属片83の位置を定めておき、その状態で、受動部材51を合成樹脂材で成形するとよい。このようにすると、受動部材51に対して予定した正確な位置に金属片83を埋め込み状態で具備させることができる。なお、図10、図12に表れているように、合成樹脂材製の受動部材51の内部に金属材の細い保持部材79aを延出させておくことにより保持部材79aが補強材となり、合成樹脂材製受動部材51が衝撃により疲労破損することを防止する上に役立つ。
【0041】
次に、上記選択伝達機構12における係合突片43を合成樹脂材で成形するにあたり、その下面に位置する係合下面43bに、金属片60bの表面60cが下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、予め連結杆としてのアンカー61の両側に夫々同じ金属片60、60bを備えさせて図11に表れているように鼓形状にし、それらの金属片60、60bの位置関係は、上記係合突片43内に埋め込んだ状態では、図11に表れているように、一方の金属片60bが上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材59を形成しておき、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材59を、一方の金属片60bの下面が当付金として上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに露出し、他方の金属片60の上面が上記係合突片43の上面に位置する係合上面43aに露出する状態に配置して、上記合成樹脂材でもって上記針棒駆動部材41の全体を成形すればよい。
【0042】
次に、上記選択伝達機構12における係合突片43を合成樹脂材で成形するにあたり、上記係合突片43の下面に位置する係合下面43bに、金属片60bをその表面60cが当付金として下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材41を合成樹脂材で成形するときに、図12に表れているような構成(図7の金属片60参照)の金属片60の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴62を形成しておき、そこに金属片60bを埋め込み状態で具備させればよい。
【0043】
次に、上記選択伝達機構12における受動部材51の全体を合成樹脂材で成形するにあたり、上記掛り合下部材54の上面に位置する押下げ面57における圧接触する部分に、受金部材としての金属片78を、図8、図10に表れているように、その表面が露出して当付金の役割を果たす状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材51を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒19の上部から掛り合下部材54の上面に位置させる押下げ面57に向けて、金属材の保持部材79を延出させて上記保持部材79の上部にて当付金としての金属片78の位置を定めておき、その状態で、受動部材51の全体を、インサート成型法などの周知の手段により合成樹脂材で成形することにより、受動部材51に対して金属片78を適正な位置に埋め込み状態で具備させればよい。
特に、受動部材51における上記掛り合下部材54の上面に位置する係合突片43の係合下面43bは、周知のように(また図5(A)、図6等からも明らかなように)係合突片43の側の極めて狭い範囲に偏在させなければならないので、要求される製作精度は極めてシビアであるが、上記の構成はその精度に対応する上に極めて有益である。
さらに上記金属片78は、上記当金部材60の場合と同様の事情により、合成樹脂全体の重量に対して極めて軽量の比率にしておくことができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・多針ミシン、2・・・フレーム、3・・・ベッド、3a・・・針落孔、4・・・主軸、5・・・横動枠、5e・・・緩衝部材、6・・・ガイドレール、7・・・横動駆動軸、10・・・天秤機構、18・・・針棒機構、19・・・針棒、19a・・・上端、19b・・・中空部 、19c・・・孔、19d・・・かしめピン、20・・・針、23・・・布押え部材、24・・・支持杆、25・・・受動部、26・・・止着手段、27・・・ばね、28・・・ばね、29・・・摺動部材、30・・・針棒駆動機構、31・・・偏心カム、32・・・クランクロッド、33・・・レバー、40・・・リンク部材、41・・・針棒駆動部材、42・・・本体部、43・・・係合突片、43a・・・係合上面、43b・・・係合下面、43d・・・係合部分、44・・・当止片、45・・・案内棒、46・・・昇降体、46a・・・支持腕、46b・・・支持腕、46c・・・連繋片、49・・・枢軸、49a・・・ばね、50・・・操作片、51・・・受動部材、51a・・・係合部、52・・・本体部、53・・・掛り合上部材、54・・・掛り合下部材、55・・・空間(係合突片挿入用空間)、56・・・衝突面、57・・・押下げ面(針棒の受圧用頂部)、60・・・当金部材60a・・・当面、60b・・・当付金、60c・・・表面、61・・・アンカー(連結管)、61a・・・固着部、62・・・埋込穴、62a・・・引止穴、65・・・布当片用昇降体、70・・・ジャンプ手段、78・・・受金部材、78a・・・表面、79・・・支承杆、79a・・・保持部材79b・・・引止金具、80・・・受け座、81・・・嵌合ピン、81a・・・孔、83・・・受止金、83a・・・表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の上面に位置する係合上面または上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたことを特徴とする多針ミシン。
【請求項2】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の下面に位置する係合下面または上記掛り合下部材の上面に位置する押下げ面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしてあることを特徴とする多針ミシン。
【請求項3】
請求項1において、上記係合突片の上面に位置する係合上面に、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材の成形のときに、金属片の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴を形成しておき、そこに金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項4】
請求項1において、上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面に、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材を合成樹脂材で成形する前に、
予め、針棒の上部から掛り合上部材の下面に位置させる衝突面に向けて、受動部材の内部を経由して金属材の保持部材を延出させて上記金属片の位置を定めておき、その状態で、受動部材を合成樹脂材で成形することにより、受動部材に対して金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項5】
請求項2において、上記係合突片の下面に位置する係合下面に、金属片をその表面が下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、
予め連結杆の両側に夫々金属片を備え、それらの金属片の位置関係は、上記係合突片内に埋め込んだ状態では、一方の金属片が上記係合突片の下面に位置する係合下面に露出し、他方の金属片が上記係合突片の上面に位置する係合上面に露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材を形成しておき、
上記針棒駆動部材を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材を、一方の金属片が上記係合突片の下面に位置する係合下面に露出し、他方の金属片が上記係合突片の上面に位置する係合上面に露出する状態に配置して、上記合成樹脂材を用いて上記針棒駆動部材を成形することを特徴とする多針ミシン。
【請求項6】
請求項2において、上記係合突片の下面に位置する係合下面に、金属片をその表面が下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材の成形のときに、金属片の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴を形成しておき、そこに金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項7】
請求項2において、上記掛り合下部材の上面に位置する押下げ面における圧接触する部分に、金属片を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒の上部から掛り合下部材の上面に位置させる押下げ面に向けて、金属材の支承杆を延出させて上記支承杆の上部にて金属片の位置を定めておき、その状態で、受動部材を合成樹脂材で成形することにより、受動部材に対して金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項8】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を、
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒は中空パイプ材で形成されており、一方、上記受動部材は合成樹脂で成型すると共に受動部材における掛り合下部材の内部には、下方に向けて伸びている嵌合ピンに連なる支承杆が埋め込まれており、上記受動部材と、上記中空パイプ状の針棒の上部との連結は、針棒の上端における中空パイプ部分に上記受動部材における掛り合下部材の下部から下方に向けて突出する嵌合ピンを挿入して嵌合させて連結してあることを特徴とする多針ミシン。
【請求項1】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の上面に位置する係合上面または上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしたことを特徴とする多針ミシン。
【請求項2】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒駆動部材と、受動部材とは夫々合成樹脂材を用いて成形し、しかも上記係合突片の下面に位置する係合下面または上記掛り合下部材の上面に位置する押下げ面における相互に圧接触する部分のいずれかの一方の面には、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせ、他方の面は合成樹脂材が露出する状態にしてあることを特徴とする多針ミシン。
【請求項3】
請求項1において、上記係合突片の上面に位置する係合上面に、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材の成形のときに、金属片の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴を形成しておき、そこに金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項4】
請求項1において、上記掛り合上部材の下面に位置する衝突面に、金属片をその表面が露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、受動部材を合成樹脂材で成形する前に、
予め、針棒の上部から掛り合上部材の下面に位置させる衝突面に向けて、受動部材の内部を経由して金属材の保持部材を延出させて上記金属片の位置を定めておき、その状態で、受動部材を合成樹脂材で成形することにより、受動部材に対して金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項5】
請求項2において、上記係合突片の下面に位置する係合下面に、金属片をその表面が下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、
予め連結杆の両側に夫々金属片を備え、それらの金属片の位置関係は、上記係合突片内に埋め込んだ状態では、一方の金属片が上記係合突片の下面に位置する係合下面に露出し、他方の金属片が上記係合突片の上面に位置する係合上面に露出する位置関係にしてある鼓形状の金属部材を形成しておき、
上記針棒駆動部材を合成樹脂材を用いて成形するときには、上記鼓形状の金属部材を、一方の金属片が上記係合突片の下面に位置する係合下面に露出し、他方の金属片が上記係合突片の上面に位置する係合上面に露出する状態に配置して、上記合成樹脂材を用いて上記針棒駆動部材を成形することを特徴とする多針ミシン。
【請求項6】
請求項2において、上記係合突片の下面に位置する係合下面に、金属片をその表面が下面に露出する状態で埋め込み状態に備えさせる場合には、上記針棒駆動部材の成形のときに、金属片の埋め込み予定位置に対して予め上下方向に深さを有する埋込穴を形成しておき、そこに金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項7】
請求項2において、上記掛り合下部材の上面に位置する押下げ面における圧接触する部分に、金属片を合成樹脂材で成形する前に、予め、針棒の上部から掛り合下部材の上面に位置させる押下げ面に向けて、金属材の支承杆を延出させて上記支承杆の上部にて金属片の位置を定めておき、その状態で、受動部材を合成樹脂材で成形することにより、受動部材に対して金属片を埋め込み状態で具備させることを特徴とする多針ミシン。
【請求項8】
フレームには、複数の針棒機構を並設状態で支持すると共にそれらの針棒機構の内、1つの針棒機構を針落ち位置に選択移動できるように横動自在してある横動枠と、
上記横動枠の横動によって上記針落ち位置に選択移動された針棒機構における針棒の頂部に備える受動部材に係合させて該針棒を、
下方に駆動できるように、上下動を自在にしてある昇降体に対して装着してある針棒駆動部材を備える針棒駆動機構とを備えさせ、
上記針棒駆動部材における係合突片は、針棒駆動部材の本体部から上記受動部材の係合突片挿入用空間の内に挿入する状態で備えさせてあり、
上記受動部材は、針棒の上部に連なる本体部の上下の位置から夫々上記係合突片の上部位置と下部位置に向けて夫々突出し、かつ、相互間には係合突片挿入用空間が存在する状態の掛り合上部材と、掛り合下部材とを備えており、
上記針棒駆動機構を作動させて昇降体を上下動させることにより、係合突片が下降する場合は、係合突片の係合下面が、掛り合下部材の上面に位置する押下げ面に当接して針棒を下動させ、
係合突片が上昇する場合は、係合突片の係合上面が、掛り合上部材の下面に位置する衝突面に当接するようにしてある多針ミシンにおいて、
上記針棒は中空パイプ材で形成されており、一方、上記受動部材は合成樹脂で成型すると共に受動部材における掛り合下部材の内部には、下方に向けて伸びている嵌合ピンに連なる支承杆が埋め込まれており、上記受動部材と、上記中空パイプ状の針棒の上部との連結は、針棒の上端における中空パイプ部分に上記受動部材における掛り合下部材の下部から下方に向けて突出する嵌合ピンを挿入して嵌合させて連結してあることを特徴とする多針ミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−70910(P2012−70910A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217609(P2010−217609)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】
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