説明

多関節ロボットを備えたロボットシステム

【課題】ロボットの姿勢自由度を増しつつ、安価なロボットシステムを提供する。
【解決手段】ロボットシステム(1)は、ロボット基部(11)およびロボット基部に旋回可能に取付けられたアーム部分(12)を含む多関節ロボット(10)と、設置面に設置される設置部(21)および設置部に回転可能に取付けられた回転テーブル(22)を含む回転ユニット(20)と、アーム部分が旋回する旋回軸線と回転テーブルが回転する回転軸線とが非平行になるように、多関節ロボットのロボット基部と回転ユニットの回転テーブルとを連結する連結ユニット(30)と、多関節ロボットおよび回転ユニットを制御する制御ユニット(40)と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボット、特に六軸多関節ロボットを備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
動作プログラムに基づいてアーム先端に備えられた作業ツールを三次元空間内にて動作させ、それにより、加工、組立などの作業を行う産業用ロボットとして、六軸多関節ロボットが広範に使用されている。
【0003】
ところが、六軸多関節ロボットの作業ツールを三次元空間内にて特定の位置および姿勢で設定した場合には、ロボットのアームの姿勢も或る特定の姿勢に限定される。このため、近年では、特許文献1から特許文献3に開示されるように、人間の腕のような複雑な動きを再現することのできる七軸多関節ロボットが提案されている。その理由は、アームが周辺機器に干渉するのを避けるためである。七軸多関節ロボットを使用する場合には、作業ツールが特定の位置および姿勢で設定された場合であってもアームの姿勢を変更でき、それにより、アームが周辺機器に干渉するのを容易に回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−315589号公報
【特許文献2】特許3402378号明細書
【特許文献3】特許2749724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既に広範に利用されている六軸多関節ロボットについては、可搬質量が例えば3kg以下である小型モデルから可搬質量が1000kg以上である大型モデルまで複数タイプの六軸多関節ロボットが市場で利用可能である。このため、ロボットの使用者は、自動化ロボットシステムに要求される可搬質量に応じたモデルの六軸多関節ロボットを選択することができる。
【0006】
しかしながら、七軸多関節ロボットについてはモデルの数がそれほど多くない。このため、六軸多関節ロボットと同程度の数のモデルを作成することは、ロボットの製造業者に大きな負担を強いることになる。また、七軸多関節ロボットの数が増えると、ロボットシステムの使用者は、ロボットを選択するのが複雑になり、またロボットの保守費用も増大することになる。
【0007】
さらに、七軸多関節ロボットはロボット自体の姿勢自由度が増すものの、一般的な作業を行うにはコスト高であり、また剛性が低下するという問題も含んでいる。さらに、姿勢自由度が増すことはロボットの操作性が複雑になることにもつながり、ロボットシステムの使用者に却って負担を強いることにもなりかねない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ロボットの姿勢自由度を増しつつ、安価なロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、ロボット基部および該ロボット基部に旋回可能に取付けられたアーム部分を含む多関節ロボットと、設置面に設置される設置部および該設置部に回転可能に取付けられた回転テーブルを含む回転ユニットと、前記アーム部分が旋回する旋回軸線と前記回転テーブルが回転する回転軸線とが非平行になるように、前記多関節ロボットの前記ロボット基部と前記回転ユニットの前記回転テーブルとを連結する連結ユニットと、前記多関節ロボットおよび前記回転ユニットを制御する制御ユニットと、を具備するロボットシステムが提供される。
【0010】
すなわち1番目の発明においては、多関節ロボットのアーム部分の旋回軸線と回転ユニットの回転テーブルの回転軸線とが非平行になるように、多関節ロボットが回転ユニットに連結されるので、多関節ロボットの自由度が一つ増すことになる。従って、多関節ロボットの自由度を増しつつ、安価なロボットシステムを提供することができる。言い換えれば、多関節ロボットが六軸多関節ロボットである場合には、七軸多関節ロボットと同等な複雑な動作が可能となる。このため、ロボットに備えられた作業ツールが特定の位置および姿勢にある場合であっても、ロボットのアームの姿勢のみを変更して、ロボットが周辺機器に干渉するのを回避することができる。さらに、汎用型の多関節ロボットを回転ユニットに組付けているので、ロボットの製造業者およびロボットの使用者の負担を抑えることも可能である。
【0011】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、前記ロボット基部が前記連結ユニットに取付けられる取付位置および前記ロボット基部が前記連結ユニットに取付けられる取付角度のうちの少なくとも一方を調節する調節手段を具備する。
すなわち2番目の発明においては、多関節ロボットのロボット基部の取付位置および/または取付角度を最適化することができる。例えば、連結ユニットに順次形成された複数の凹部のいずれを使用するかに応じて、ロボット基部の取付位置が調節される。また、所望の先端角度を有する楔型のスペーサをロボット基部と連結ユニットとの間に配置し、それにより、ロボット基部の取付角度を調節する。
【0012】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記多関節ロボットと前記制御ユニットとを電気的に接続する接続ケーブルは、前記設置部および前記回転テーブルの両方に形成された貫通孔を通って延びている。
すなわち3番目の発明においては、接続ケーブルは設置部および回転テーブルの外側に位置しないようになる。このため、回転テーブルが設置部に対して回転した場合であっても、接続ケーブルは貫通孔の領域でのみ移動し、従って、接続ケーブルが周辺機器に干渉するのを避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づくロボットシステムを示す図である。
【図2】図1に示される多関節ロボットの斜視図である。
【図3】(a)連結ユニットの頂面図である。(b)連結ユニットの側面図である。(c)連結ユニットの端面図である。(d)図3(a)の線C−Cに沿ってみた断面図である。
【図4】(a)多関節ロボットの他の斜視図である。(b)多関節ロボットのさらに他の斜視図である。
【図5】(a)〜(c)多関節ロボット10の動作を示す第一から第三の頂面図である。
【図6】多関節ロボット10の動作を説明するための斜視図である。
【図7】(a)回転ユニットおよび連結ユニットの頂面図である。(b)回転ユニットおよび連結ユニットの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づくロボットシステムを示す図である。図1においては、ロボットシステム1は、多関節ロボット10と、多関節ロボット10が取付けられる回転ユニット20と、多関節ロボット10および回転ユニット20の両方の動作を制御する制御ユニット40とを主に含んでいる。
【0015】
図2は図1に示される多関節ロボットの斜視図である。図1および図2に示されるように、多関節ロボット10は、例えば六軸多関節ロボットであり、ロボット基部11と、旋回軸線A回りに旋回可能にロボット基部11に対して取付けられたアーム部分12とを主に含んでいる。
【0016】
ロボット基部11には、制御ユニット40から延びる第一接続ケーブル41がコネクタ14を介して電気的に接続されている。また、アーム部分12は、互いに回動可能に連結された複数のアームから構成されている。公知であるように、これら複数のアームは複数のサーボモータによって回動される。また、アーム部分12の先端には作業ツール13が取付けられている。
【0017】
図示される実施形態においては、作業ツール13は、例えばワークWをハンドリングするロボットハンドである。あるいは、アーク溶接、スポット溶接、組立、検査、シーリング、レーザ加工またはウォータジェットなど、加工の種類に応じて定まる他の作業ツール13をアーム部分12の先端に取付けるようにしてもよい。
【0018】
図1から分かるように、回転ユニット20は、床などの設置面Lに設置される設置部21と、設置部21に回転可能に取付けられた回転テーブル22とから主に構成されている。図示されるように、回転テーブル22と反対側においては、サーボモータ23が設置部21に設けられている。従って、サーボモータ23が駆動すると、回転テーブル22はサーボモータ23の回転軸線B回りに回転する。また、サーボモータ23には、制御ユニット40から延びる第二接続ケーブル42が電気的に接続されている。
【0019】
図1および図2に示されるように、多関節ロボット10および回転ユニット20は連結ユニット30によって互いに連結されている。図3(a)から図3(c)は、連結ユニット30のそれぞれ頂面図、側面図および端面図である。これら図面から分かるように、連結ユニット30は、多関節ロボット10のロボット基部11が取付けられるロボット取付プレート31と、回転テーブル22の端面に取付けられる回転テーブル取付プレート32とから主に構成される。
【0020】
これらロボット取付プレート31および回転テーブル取付プレート32は互いに或る角度をなして配置されている。図示される実施形態においては、これらプレート31、32のなす角度は90度であり、連結ユニット30は断面L字形状の部材である。ただし、これらプレート31、32が90度以外の他の角度をなしてもよい。また、図3(b)等に示される腕木33は、連結ユニット30を補強すると共に、プレート31、32のなす角度を維持する役目を果たす。
【0021】
図3(a)から図3(c)より分かるように、ロボット取付プレート31の内面には、角度調節部材50がボルト35によって固定されている。従って、厳密に言えば、ロボット基部11は角度調節部材50を介してロボット取付プレート31に取付られることになる。図3(a)の線C−Cに沿ってみた断面図である図3(d)から分かるように、角度調節部材50はその断面が楔型のスペーサである。また、角度調節部材50の上方傾斜面はロボット基部11の底面よりも大きい。
【0022】
角度調節部材50はその先端が回転テーブル取付プレート32を向くようにロボット取付プレート31に固定されている。所望の先端角度を有する角度調節部材50をロボット取付プレート31に固定することによって、ロボット基部11のロボット取付プレート31に対する取付角度を調節することができる。なお、先端角度の異なる複数の角度調節部材50が予め準備されているものとする。これにより、ロボット基部11の取付角度を最適化できることが分かるであろう。なお、複数の角度調節部材50を積重ねてロボット基部11の取付角度を調節するようにしてもよい。
【0023】
図3(a)および図3(d)より分かるように、角度調節部材50の上方傾斜面には、複数の凹部からなる凹部群51が角度調節部材50の角隅部のそれぞれに形成されている。図示される実施形態においては、一つの凹部群51は三行三列に配置された九つの凹部を含んでおり、そのような凹部群51が角度調節部材50の四隅に形成されている。
【0024】
そして、ロボット基部11を角度調節部材50上に配置するときには、はじめに位置決めピン55を少なくとも一つの凹部群51の一つの凹部に挿入する。図3(a)においては、合計四つの位置決めピン55が三つの凹部群51に挿入されている。次いで、ロボット基部11に設けられた位置確定用突当て面56に位置決めピン55を突き当てるように、ロボット基部11を位置決めピン55により形成される領域(図3(a)の破線に相当する)内に配置する。さらに、図示しないボルトを前記領域内の凹部またはこの領域近傍の凹部に螺合して、ロボット基部11を角度調節部材50に固定する。図3(a)においては、そのようなボルト(図示しない)が螺合されている凹部を黒丸で示す。
【0025】
角度調節部材50が存在するためにロボット基部11は傾斜して配置されるものの、ロボット基部11は図示しないボルトにより固定されるので、ロボット基部11が角度調節部材50上で位置ズレすることはない。そして、位置決めピン55の場所を凹部群51内の他の凹部に変更することにより、連結ユニット30上におけるロボット基部11の取付位置を変更することも可能である。これにより、ロボット基部11の取付位置を最適化することができる。なお、図3(a)には円形の凹部が形成されているが、これらの代わりに長円形の凹部を採用してもよい。そのような場合には、長円形の凹部に沿ってボルトの位置を変更し、それにより、ロボット基部11の取付位置を同様に調節できるのが分かるであろう。また、ロボット基部11の取付インタフェースが前後左右に対称である場合には、ロボット10を連結ユニット30に対して90度毎に回転させて取付けることも可能である。
【0026】
また、図3(a)に示されるように、角度調節部材50の上方傾斜面はロボット基部11の底面よりも十分に大きいのが好ましい。これにより、ロボット基部11の取付位置をより広範な範囲から選択することができる。さらに、そのような場合には、寸法の異なるロボット基部11(および関連する多関節ロボット10)を連結ユニット30に取付けられることが分かるであろう。
【0027】
なお、連結ユニット30のプレート31、32が既に所望の角度をなしている場合には、角度調節部材50を省略することも可能である。そのような場合には、複数の凹部群51はロボット取付プレート31の内面に同様に形成されるものとする。
【0028】
ところで、図3(c)から分かるように、回転テーブル取付プレート32には、複数の穴39が形成されている。これら穴39は、ロボット取付プレート31に向かって延びる長円形である。ボルト38をこれら穴39および回転テーブル22に形成された穴(図示しない)に通して、連結ユニット30を回転テーブル22に固定する。回転テーブル取付プレート32の穴39が長円形であるので、連結ユニット30の取付位置を穴39の範囲内で調節することが可能である。また、前述したように、位置決めピンを用いて回転テーブル22と連結ユニット30との間の位置決めを行ってもよい。
【0029】
このように回転テーブル22に連結ユニット30を取付け、次いで多関節ロボット10をロボット取付プレート31に前述したように取付ける。これにより、旋回軸線Aと回転軸線Bとは互いに非平行、例えば90度の角度をなすようになる。以下、図1を参照しつつ、ロボットシステム1の制御について簡単に説明する。
【0030】
はじめに、多関節ロボット10を制御するプログラムおよび回転ユニット20を制御するプログラムの両方を制御ユニット40に登録する。これらプログラムにおいては、角度調節部材50上における多関節ロボット10の取付位置およびロボット取付プレート31に対する多関節ロボット10の取付角度が入力される。
【0031】
多関節ロボット10の取付位置および取付角度は、操作者が目視で確認した後でキーボードなどの入力手段を用いて手動で入力することができる。あるいは多関節ロボット10の取付位置および取付角度の設定を以下のように自動的に行うようにしてもよい。
【0032】
多関節ロボット10の斜視図である図4(a)においては、多関節ロボット10の作業ツール13に視覚センサ62が備えられている。さらに、他の斜視図である図4(b)に示されるように、基準位置確認用ターゲット61が回転テーブル22の周面近傍に位置するように設置部21に固定されている。図4(b)においては、基準位置確認用ターゲット61は金属製のプレートである。同様な基準位置確認用ターゲット61をロボットシステムの周辺の外部に設定してもよい。多関節ロボット10と回転ユニット20との間の相対位置関係の寸法が、視覚センサ62により測定できれば、基準位置確認用ターゲット61の設置場所は任意の場所にできる。あるいは、回転ユニット20の設置部21の予め設定された面または穴などを基準位置確認用ターゲット61として使用してもよい。
【0033】
次いで、制御ユニット40に予め登録された教示プログラムに基づいて、多関節ロボット10および回転ユニット20を動作させ、複数の位置姿勢において視覚センサ62によって基準位置確認用ターゲット61のそれぞれを撮像する。そして、得られた画像データに基づいて、多関節ロボット10の取付位置および取付角度を検出し、制御プログラムに自動的に設定する。例えば、特開2008−012604号公報に記載される手法を採用し、視覚センサ62が多関節ロボット10の複数の位置姿勢において回転ユニット20の基準位置を検出して、多関節ロボット10の取付位置および取付角度を設定できる。
【0034】
なお、作業ツール13が任意の直交座標系に沿うように多関節ロボット10を動作させてもよく、多関節ロボット10の取付位置および取付角度に応じて多関節ロボット10が動作するようにしてもよい。
【0035】
また、制御ユニット40は、アーム部分12のそれぞれのアームのためのサーボモータのそれぞれを制御する複数のサーボ回路(図示しない)を含んでいる。これらサーボ回路は、多関節ロボット10が障害物、例えば周辺機器と衝突したのを推定外乱を用いて検出する衝突検出手段を含んでいてもよい。
【0036】
そのような衝突検出手段は、各軸のサーボモータのトルク指令及び速度からアームにかかる推定外乱トルクを推定する。そして、少なくとも摩擦トルク、重力トルク、他軸の干渉トルクのうちの一つを含む既知外乱トルクを、推定外乱トルクから減算して差分外乱トルクを算出する。差分外乱トルクに基づいて、多関節ロボット10の可動部、例えばアームの衝突を検出できる。ここで、推定外乱トルクは、回転ユニット20の回転によるロボットの設置角度の変化を考慮して推定できる。従って、図2に示されるような構成であっても、高精度で衝突を検出することが可能である。
【0037】
図5(a)から図5(c)は多関節ロボット10の動作を示す頂面図であり、図6は多関節ロボット10の動作を説明するための斜視図である。これら図面においては、大型の工作機械Mが示されている。そして、連結ユニット30によって回転ユニット20に連結された多関節ロボット10が工作機械Mの前面に沿って配置されている。
【0038】
図示されるように、工作機械Mの前面の下方部分に入口Eが形成されており、内部通路Pが入口Eから工作機械Mの背面に向かって延びている。図示されるように、入口Eは工作機械Mの前面に比べてかなり小さい。また、内部通路Pの最奥部には作業テーブルTが配置されている。
【0039】
これら図面においては、回転ユニット20の設置部21は入口Eからいくぶん離間して配置されている。また、図から分かるように、回転ユニット20は、回転軸線Bが工作機械Mの長手方向に対して平行になるように配置されている。また、連結ユニット30のロボット取付プレート31は入口Eから離間する方向に延びている。従って、多関節ロボット10の作業ツール13が入口Eにアクセスするためには、アーム部分12の少なくとも一部分が回転ユニット20に隣接することになる。
【0040】
以下、これら図面を参照しつつ、本発明に基づくロボットシステム1の多関節ロボット10の動作を簡単に説明する。はじめに、図5(a)に示されるように、多関節ロボット10の作業ツール13がワークWを把持する。そして、多関節ロボット10のアーム部分12が回転テーブル22を越えて延び、作業ツール13が入口Eの前方に位置決めされる。図5(a)から分かるように、このような待機状態においては、ロボット基部11が取付けられるロボット取付プレート31の取付面は概ね水平である。
【0041】
次いで、サーボモータ23を駆動して回転テーブル22を回転軸線B回りに回転させる。これにより、図5(b)に示されるように、回転テーブル22に取付けられた連結ユニット30のロボット取付プレート31が回転軸線B回りに回動するようになる。このロボット取付プレート31の回動動作に連動して、多関節ロボット10のアーム部分12を適宜延伸させ、それにより、ワークWを入口Eから内部通路P内に進入させる。
【0042】
ロボット取付プレート31が所定の角度、例えば90度だけ回動しつつアーム部分12を適切に延ばすと、図5(c)および図6に示されるようにワークWは内部通路P内の作業テーブルTに到達する。次いで、多関節ロボット10の作業ツール13がワークWを解放して作業テーブルT上に載置し、その後、多関節ロボット10は前述したのと逆の手順で待機位置まで戻る。ワークWが工作機械M内で加工された後で、ワークWは前述したのと同様な手順で工作機械Mから取出される。
【0043】
このように、本発明においては、連結ユニット30を用いて多関節ロボット10を回転ユニット20に組合わせることにより、多関節ロボット10の自由度を一つ増すようにしている。つまり、回転ユニット20は多関節ロボット10の動作を補助する役目を果たしている。このため、例えば多関節ロボット10が六軸多関節ロボット10である場合には、多関節ロボット10は七軸多関節ロボットと同等な動作を行うことが可能となり、図5(a)から図6で説明したような複雑な動作を行うことが可能となる。
【0044】
従って、作業ツール13が特定の位置および姿勢にある場合であっても、多関節ロボット10のアームの姿勢のみを変更して、多関節ロボット10が周辺機器に干渉するのを回避できる。このことを利用すれば、前述したようにアーム部分12および作業ツール13等は工作機械Mの内部通路Pに干渉することなしに、ワークWを適切に搬送することができる。
【0045】
また、様々なモデルの多関節ロボット10、例えば六軸多関節ロボットが既に市場で利用可能であるので、そのような多関節ロボット10を採用することにより、多関節ロボットの自由度を増したロボットシステム1を安価に提供することも可能である。
【0046】
さらに、従来型の多関節ロボットを採用できることは、例えば七軸多関節ロボットの種々のモデルを開発する必要がなくなるので、ロボットの製造業者の負担を抑えることにもなる。また、本発明の構成によってロボットの自由度が増すものの、多関節ロボット10の操作性自体は従来と変わらないので、使用者の負担を増加させることもない。さらに、従来型の多関節ロボットを採用できるので、使用者はロボットの選択が容易になり、また選択したロボットの保守費用を抑えることも可能である。
【0047】
ところで、図7(a)および図7(b)は回転ユニットおよび連結ユニットのそれぞれ頂面図および部分断面図である。これら図面に示されるように、回転ユニット20の回転テーブル22、関連する回転駆動部および設置部21には一体的な貫通孔25が回転軸線Bと同軸に形成されている。貫通孔25の内径は第一接続ケーブル41の内径よりも十分に大きい。そして、制御ユニット40から延びる第一接続ケーブル41は貫通孔25を通ってコネクタ14に接続されている。
【0048】
さらに、図7(a)および図7(b)から分かるように、回転ユニット20の制御ユニット40側の端部にはケーブルクランプ27が設けられており、連結ユニット30には他のケーブルクランプ37が回転テーブル取付プレート32に対面して設けられている。これらケーブルクランプ27、37により、第一接続ケーブル41は貫通孔25の両側において把持されている。
【0049】
このように、第一接続ケーブル41が貫通孔25を通過するので、第一接続ケーブル41は設置部21および回転テーブル22の外側に存在しないようになる。従って、回転テーブル22が設置部21に対して回転した場合には、第一接続ケーブル41は捻れや曲げを受けるものの、貫通孔25内で移動するのみで足りる。それゆえ、第一接続ケーブル41が周辺機器、例えば内部通路Pに干渉するのを避けることが可能である。なお、寸法の異なるロボット基部11(および関連する多関節ロボット10)を使用した場合でも、第一接続ケーブル41の寸法は同一であるので同一のケーブルクランプ27、37をそのまま使用することができる。このような場合でも本発明の範囲に含まれるのは明らかであろう。
【符号の説明】
【0050】
1 ロボットシステム
10 多関節ロボット
11 ロボット基部
12 アーム部分
13 作業ツール
14 コネクタ
20 回転ユニット
21 設置部
22 回転テーブル
23 サーボモータ
25 貫通孔
27、37 ケーブルクランプ
30 連結ユニット
31 ロボット取付プレート
32 回転テーブル取付プレート
33 腕木
35 ボルト
38 ボルト
39 穴
40 制御ユニット
41 第一接続ケーブル(接続ケーブル)
42 第二接続ケーブル
50 角度調節部材
51 凹部群
55 位置決めピン
61 基準位置確認用ターゲット
62 視覚センサ
A 旋回軸線
B 回転軸線
E 入口
L 設置面
M 工作機械
P 内部通路
T 作業テーブル
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット基部および該ロボット基部に旋回可能に取付けられたアーム部分を含む多関節ロボットと、
設置面に設置される設置部および該設置部に回転可能に取付けられた回転テーブルを含む回転ユニットと、
前記アーム部分が旋回する旋回軸線と前記回転テーブルが回転する回転軸線とが非平行になるように、前記多関節ロボットの前記ロボット基部と前記回転ユニットの前記回転テーブルとを連結する連結ユニットと、
前記多関節ロボットおよび前記回転ユニットを制御する制御ユニットと、を具備するロボットシステム。
【請求項2】
さらに、前記ロボット基部が前記連結ユニットに取付けられる取付位置および前記ロボット基部が前記連結ユニットに取付けられる取付角度のうちの少なくとも一方を調節する調節手段を具備する請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記多関節ロボットと前記制御ユニットとを電気的に接続する接続ケーブルは、前記設置部および前記回転テーブルの両方に形成された貫通孔を通って延びている請求項1または2に記載のロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221355(P2010−221355A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72231(P2009−72231)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】