説明

大きな表面積のセラミック被覆繊維

液体形態におけるセラミック先駆体を含んだ活性炭被覆繊維を熱処理して、セラミック被覆繊維を形成する、セラミック被覆繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(背景)
700より多い有機化合物が、米国(Stachka and Pontius,1984)及び他の国における飲料水の水源において同定されてきた。多くの水道施設、企業及び政府機関は、これら地下水供給が飲料水として使用できる前に、汚染された地下水供給から有機化合物を除去又は破壊しなければならない。加えて、多くの飲料水施設は、処理済水における消毒副生成物の形成に直面する。消毒副生成物は、消毒処理の結果として、水の処理過程において形成された化合物である。本過程において、消毒薬、例えば塩素が源水に添加され、塩素は源水中に存在するバックグラウンド有機物(background organic matter)(BOM)の一部と反応し、消毒副生成物を生成する。BOMの反応性部分は、消毒副生成物先駆体として言及される。
【0002】
かなりの研究が、消毒副生成物の生成を最小化する、効果的かつ経済的な処理の戦略に向けられている。先進的な酸化法(AOP)は、有機化合物を破壊し、かつそれらを非毒性の形態、例えば二酸化炭素及び水に変化させる代替的な方法である。AOPは、高い反応性のラジカル、例えばヒドロキシルラジカル(OH・)の発生を含み、該ラジカルは有機化合物の破壊を生じる。AOPは二つの主要な群に分類できる:過酸化水素(H22)、オゾン(O3)、塩素及び紫外線(UV)光を、単独又は組み合わせて用いる均一反応を含むAOP;及び光活性触媒、例えば半導体、例えば二酸化チタン(TiO2)及び窒素をドープした二酸化チタン(TiO2-xx)を用いた不均一反応を利用するAOP。後者−−光触媒酸化法−−の場合は、光活性半導体触媒を酸素化した水性溶液中に浸漬し、かつUV又は可視光を照射し、それにより反応性酸素種が生成し、有機化合物の酸化が起こる。
【0003】
表面種、例えば正孔と吸収された有機化合物の直接の反応も報告されたが、水性溶液中の有機化合物の光触媒酸化を生じる第1の酸化剤は、高い反応性のヒドロキシルラジカル(OH・)であると考えられている(Voelz et al.,1981;Ceresa et al.,Matthews,1984;及びTurchi and Ollis,1990)。光活性半導体が、半導体のバンドギャップエネルギーの光子又はそれ以上の光子を照射された場合、光子は価電子帯からの電子をバンドギャップのエネルギーを越えて伝導帯へ励起し、価電子帯において電子欠損又は正孔を残す。例えば、アナターゼ型のTiO2は、約3.2eVのバンドギャップエネルギーを有しており、これは387nmの波長を有するUV光のエネルギーと等しい。この結果として、該アナターゼ型のTiO2は387nmより短い波長を有する光照射により活性化できる。励起された電子及び結果として生じた正孔は、水−固形物界面で、吸着種、例えばH2O、OH-、有機化合物及びO2とのレドックス過程に関与する。該正孔は吸収されたH2O又はOH-との一方の酸化反応に関与して、ヒドロキシルラジカルを形成し得る。該電子は、吸収されたO2との他方の還元反応に関与し、スーパーオキシドラジカルO2-を生成し、これは順にH22及びOH・も生成する(Okamoto et al.,1985)。
【0004】
高い光触媒の有効性のために、大きな表面積を有するメソ細孔性のTiO2が高く望まれ、かつそれは変形したゾル−ゲル法を通してホスフェート界面活性剤を用いて最初に調製された。該生成物は、純粋なTiO2ではなく、それは顕著な量の残存リン、及びそのメソ細孔性構造が、焼成によるテンプレートの除去の間に、部分的な崩壊を受けたためである。他のアプローチは、非水性溶液中で、構造指向剤としての両親媒性ポリ(アルキレン)ブロックコポリマー類と先駆体としての有機チタン塩からメソ細孔性のTiO2を生成した。しかしながら、反応条件におけるわずかな変化が、しばしば非常に異なる結果物を生成し、この方法を再現困難にしている。指向剤としてのドデシルアミン及び先駆体としてのチタンイソプロポキシドを使用し、かつ抽出により細孔を空にする第三の方法は、300℃の乾燥空気中における加熱処理後に維持されなかった細孔構造を与えた。従って、これまで光触媒反応に要求される高い結晶性のTiO2を製造することは困難であった。
【0005】
現在のTiO2光触媒技術の第2の問題点は、活性化のための紫外線光の要件である。TiO2のバンドギャップの大きなエネルギー(アナターゼにおいてEg=3.2eV)のために、その光触媒としての使用は、380nmより短い波長の照射に限られる。380nmより長い波長の可視光に対して曝露した場合に触媒的に活性な材料は、強度が低い光が利用できる環境、例えば室内又は媒体中において充分な光触媒作用を可能とするであろう。
現在の技術のさらなる主要な問題は、粉末形態の光触媒は、取り扱いが困難で、加えて光反応器からの回収が困難なことである。従って、種々の基体及び支持体上のTiO2のいくつかのフィルムが、光触媒用途で開発されてきた。しかしながら、粒子の焼結及び集塊が、光触媒の表面積を著しく減少させる。
基体に対するTiO2の結合が、問題の源でもある。TiO2のフィルムは、直接成長又は合成後の結晶付着により基体上で形成された。両方法は、化学的なバインダーに頼り、TiO2を基体表面に固定する。残念ながら、有機バインダーは、UV光の下における分解に影響を受けやすい。その結果として、TiO2フィルムは、基体から失われ、かつ容易に分離する。
【0006】
TiO2の粉末、繊維及びフィルムが報告されており、及び多くの光触媒TiO2粉末の調製品が商業上入手可能である。しかしながら、これら粉末は水の精製に対する適用が困難であり、かつ粉末の表面積は小さく、結果として低い触媒活性及び少ない触媒サイトのみに帰着する。
その一方、TiO2繊維は、非常に大きい表面積、高い摩耗及び機械的耐久性並びに高い熱安定性を有する。さらに、化学反応器中で使用した場合、TiO2繊維は、少ない圧力低下のみを生じ、かつ補強材料として、及び種々の形態及びサイズのマトリックスとして役立つことができる。
TiO2繊維は、種々の製作方法により調製され得る。例えば、TiO2繊維は、K2O・4TiO2繊維のイオン交換反応及びH2Ti49の熱分解による繊維状のK2Ti49先駆体の、ソルボサーマル反応により調製される。
【0007】
活性炭繊維(ACF)は、有機先駆体を炭化するまで加熱して、次いで炭化した材料を活性化することにより通常に製造される。活性化は、酸化環境下において炭化した材料を加熱することにより典型的に達成される。代替的には、該炭素を化学的に活性化しても良い。この方法は、炭素先駆体を、例えばリン酸、塩化亜鉛又は水酸化カリウムで含浸し、次いで炭化することを含む。
しかしながら、上記方法は、壊れやすくかつ折れやすいACFを与え、その使用はいくつかの機械的補助を含むシステムに対するものに限られる。この問題は、活性炭が、基体である繊維上のコーティングとして形成された繊維を調製することにより、緩和されてきた。
【0008】
例えば、米国特許第5,834,114号は、活性炭で被覆したガラス又は無機繊維を記載する。これらは、繊維基体を樹脂で被覆し、該樹脂を架橋し、被覆した繊維基体及び樹脂を加熱して樹脂を炭素化し、次いで該被覆した繊維基体を腐食液にさらして、被覆した繊維基体を活性化することにより調製される。
米国特許第6,517,906号は、重合可能な有機材料及び化学的な活性剤、例えばルイス酸又は塩基を含む混合物で、基体繊維をコーティングすることが記載される。この混合物は、初期の方法により要求された温度よりもより低い温度で炭化し、低融点の繊維、例えばHEPA繊維上に、活性炭のコーティングを形成することを許容した。
【0009】
(概要)
第一の側面において、本発明は、セラミック被覆繊維を形成するための、セラミック先駆体を含む活性炭被覆繊維の加熱処理を含む、セラミック被覆繊維の生産方法である。
第2の側面において、本発明は、(a)繊維及び(b)繊維上に被覆されたセラミックを含む、セラミック被覆繊維である。該セラミックは、少なくとも60m2/gのBET表面積を有し、かつ該セラミックは結晶質のセラミックを含む。
第三の側面において、本発明は、先駆体を硬化させるための、セラミック先駆体を含んだ活性炭被覆繊維の加熱を含む、セラミック被覆繊維の製作のための中間体の生産方法である。
第四の側面において、本発明は、(a)繊維、及び(b)繊維上に被覆されたセラミックを含む、セラミック被覆繊維である。該セラミックは、少なくとも50m2/gのBET表面積を有し、かつ該セラミックはAl23、ZrO2及びMgOから成る群より選択される少なくとも一つを含む。
【0010】
(詳細な説明)
活性炭は、酸化雰囲気下において、299.84℃(573K)より高い温度に耐えない。そのため、高い焼成温度を要求する製作方法、例えばセラミック被覆繊維の製造に対する基体繊維としての活性炭の使用は、適切ではないと考えられた。本発明は、この高温における不安定な性質にもかかわらず、活性炭が、セラミック被覆繊維の形成におけるテンプレートとして使用できるとの発見に基づいている。
活性炭被覆繊維は、米国特許第6,517,906号に記載するように、第1に、活性炭、又は活性化有機コーティング剤を用いて、基体繊維をコーティングすることにより調製される。例示の基体繊維は、HEPAフィルター、衣類で使用される合成繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、KEVLAR(登録商標)、TEFLON(登録商標)、液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンを含む。ガラス繊維、例えばe−ガラス繊維;無機繊維、例えばアスベスト及び玄武岩;セラミック繊維、例えばTiO2、SiC及びBN;金属繊維(又はワイヤー)、例えば鉄、ニッケル、金、銀、アルミニウム及び白金;ポリマー繊維、例えばTYVEK(登録商標);及びこれらの組み合わせ。いくつかの好ましい基体繊維が、以下の表に列挙されている。
















【0011】
【表1】

【0012】
該基体繊維は、いかなる形態において存在しても良い。例は、ルーズファイバー、織物又は不織布、紙、フェルト及びマットを含む。該基体繊維は、特定の形態において既に存在する基体繊維から製造してもよく、又は該基体繊維が、最初に基体ルーズファイバーから調製され、次いで特定の形態に製造されても良い。該基体繊維の長さは制限されず、例えば、長さにおいて0.01mmから100mを超えるもの、好ましくは少なくとも3μmであっても良い。該基体繊維は、より長い基体繊維から調製され、次いで切断し又はチョップしても良い。さらに、該基体繊維の直径も制限されず、例えば直径において100Åから1mmであって良い。好ましくは、該繊維は、少なくとも10のアスペクト比を有する。
基体繊維が酸化に対する影響を受けやすい場合、繊維上に活性炭を形成する前に、基体繊維に対して抗酸化性のコーティング剤を用いて被覆することが有利であろう。抗酸化性のコーティング剤の例は、水ガラス及びリン酸塩ガラスが含まれる。
【0013】
該活性炭被覆繊維は、揮発性溶媒中の一以上のセラミック先駆体の溶液中に浸漬することにより、セラミック先駆体で湿潤させる。一般的には、セラミック先駆体は、セラミック及び揮発性成分物中に存在する一以上の構成成分の化合物、例えばハロゲン化物、ニトレート、ニトリド、ニトレート、水酸化物、有機酸塩及び有機金属複合体である。高熱処理された場合、該セラミック成分といくらかの酸素がセラミックの沈着物として残り、一方で先駆体の残りは蒸発する。
セラミック先駆体は、第1族、第2族、第3族、第4族、遷移金属、ランタニド及びアクチニド元素、N、O、Se、Te及びPoの可溶性化合物である。例示のセラミック先駆体は、Ti(t−BuO)4、Ti(i−Pro)4、Si(OEt)4、ZnCl2、ZrOCl2、ZrO(OH)Cl、Zr(COOCH34、MgCl2、Mg(COOCH32及びMgSO4を含む。例えば、二元の、三元の又は四元のセラミック化合物が望まれる場合、2以上の先駆体の混合物を使用してもよい。オキシニトリドセラミックコーティング剤は、窒素ドーパント、例えばテトラアルキルアンモニウム塩を添加することにより得ても良い。同様に、オキシスルフィドコーティング剤を、硫黄ドーパント、例えばチオウレアを添加することにより製造しても良い。
【0014】
過剰な先駆体は除去され、湿潤した先駆体は、大気中の水分にさらされることにより加水分解され、炭素及び先駆体又は加水分解された先駆体の複合物を得ても良い。
該セラミック先駆体は、好ましくは、テンプレートの細孔中に堆積し、相互に連結された固形物又はゲルを形成するであろう。次いで、該システムは加熱処理され、該処理は残存する溶媒を除去し、先駆体を硬化し、加えて活性炭を除去して、次いでセラミックを結晶化させることができる。例えば、該加熱処理は、任意で不活性雰囲気下における、250℃から600℃、又は250℃から400℃での第1の加熱を含み、残存する溶媒を除去し、及びセラミック先駆体を硬化させてもよい。第2の加熱が、酸化雰囲気下において、例えば400℃から1000℃で続き、炭素基体を除去し、及びセラミックを結晶化させ、及び必要な場合は硬化した先駆体を酸化しても良い。該炭素基体は、繊維の照射、又は化学酸化剤を用いた処理により酸化されても良い。
【0015】
結果得られた繊維は、さらに、一以上の付加的な先駆体、例えばAgNO3又はPd(acac)2を添加し、続く付加的な加熱処理により修飾しても良い。該加熱は、還元雰囲気下、例えばH2を含む雰囲気下で行われても良い。
例えば、活性炭被覆繊維は、Al23被覆繊維を調製するために使用して良い。このためには、ACFをAlCl3の水性溶液中に浸漬し、乾燥させ、次いで通常500℃から700℃の温度のN2下で加熱処理しても良い。酸化雰囲気下における第2の加熱処理は、炭素を除去する。次いで、該材料は焼成され、熱的に安定なAl23被覆繊維を与える。
第2の加熱処理の温度が約500℃以上である場合、純粋なO2と異なるものとして、大気が酸化雰囲気として好ましい。より低い温度、例えば450℃に関しては、純粋なO2が好ましい。一般的には、より低い温度は、炭素テンプレートの完全な除去のために、より長い加熱時間を必要とする。例えば、500℃でテンプレートを焼失させるためには、24時間より長い時間が通常必要とされ、一方900℃ではわずか数分の加熱が必要とされる。より低い温度は、大きいブルナウアー−エメット−テラー(BET)表面積及び乏しい結晶構造を有するAl23被覆繊維も与える。これに対し、より高い温度は、より小さいBET表面積及びより結晶化したセラミックを有する繊維を与える。
【0016】
該セラミックコーティングは、基体繊維の表面上の分離した領域に存在してもよく、基体繊維を完全に取り囲んでもよく、又は基体繊維の末端を除く基体繊維の全てを取り囲んでも良い。例えば、該基体繊維がセラミックコーティングにより完全に取り囲まれた場合、チョッピングは、結果として露出した繊維の末端に帰着するであろう。
セラミック被覆生成物繊維における、セラミックコーティングと基体繊維の間の質量比率は制限されないが、最終的な性質には影響する。例えば、セラミックコーティングの量が基体繊維の量と比較して非常に多い場合、セラミックコーティングのもろさは、製造されたセラミック被覆繊維の柔軟性を減少させるであろう。好ましくは、該製造されたセラミック被覆繊維は、ナノ細孔のオルガノシリカセラミックコーティングの質量により、10から90%、より好ましくはセラミックコーティングの質量による30%、40%、50%、60%及び70%を含んだ、セラミックコーティングの質量による20から80%を含む。
【0017】
セラミック被覆繊維は、少なくとも50m2/g、好ましくは50m2/gより大きい、より好ましくは60−2000m2/g及び100−500m2/gを含む少なくとも60m2/gのBET表面積を有する。好ましくは、該セラミック被覆繊維のセラミックは、結晶質のセラミックを含み、及びアモルファス相を含んでも良い。該セラミックの晶子(又は粒子)は、2nmから50nmの平均粒子径を好ましく有する。セラミック被覆繊維の形成に使用される温度が、バルクセラミックの結晶化のためには不十分と思われるとしても、結晶化材料が存在する。一つの可能な説明は、該活性炭がセラミックの結晶化を触媒すると言うことである。さらには、該コーティングが、いかなるバインダーを必要とすることなく、該繊維を保持する。
【0018】
本発明のセラミック被覆繊維は、光化学反応、例えば望ましくない有機物及び生物学的な化合物の光分解又は細菌の消毒のための、光化学反応を触媒するために使用されてもよい。従って、該繊維は、水及び大気の浄化及び殺菌のため、又は道具、例えば医用室道具の殺菌のために使用されても良い。他の使用は、触媒材料(例えば白金)、及び研磨材料のための基材を含む。本発明の繊維は、導電性の繊維、例えば金属繊維を用いて製造しても良い。従って、金属核及び触媒酸化物表面を有する製品繊維が形成され、センサー、例えば燃焼を監視するための酸素センサーとして使用しても良い。
【0019】
(例)
(1)TiO2繊維
炭素テンプレートを、活性化する前に、PAN樹脂でガラス繊維をコーティングすることにより調製した。H2Oを用いた活性化の後、炭素の表面積は1800m2/gであり、かつ細孔径は1nmから10nmであった。次いで、室温(20−22℃)で24時間含浸して湿らせることにより、該炭素テンプレートの細孔領域をチタンテトライソプロポキシド(TTIP)で湿潤した。エタノールを用いた洗浄によるTTIPの除去の後、先駆体の加水分解を、大気の水分に曝露することにより開始した。次いで、メソ細孔性の無機粒子が、250−400℃の窒素雰囲気下における4時間のTiO2の結晶化又は重合、続く1C/分の加熱速度での大気中における炭素の除去により得られた。最終的に製造された繊維の表面積は、TiO2の質量に基づいて、500m2/gであった。
図1は、該製造された繊維の表面の電子顕微鏡写真(SEM)を図示する。
【0020】
(2)TiO2繊維
活性炭被覆繊維を、活性化する前に、フェノール樹脂でガラス繊維をコーティングすることにより製造した。N2を用いた活性化に従って、該炭素の表面積は約1200m2/g、及び細孔径は1から3nmであった。室温で24時間含浸して湿らせることにより、活性炭被覆繊維の細孔領域をチタンn−ブトキシドで湿潤した。過剰なn−ブトキシドをエタノール洗浄により除去した後、先駆体の加水分解を、大気の水分に曝露することにより開始した。次いで、約2nmから約50nmの平均粒子径を有するメソ細孔性の無機粒子を、300℃の大気中における4時間のTiO2の結晶化又は重合、続く500℃の大気中における2時間の炭素の除去により得た。表面積は、TiO2の質量に基づいて230m2/gであった。
【0021】
(3)TiON繊維
活性炭被覆繊維を、活性化する前に、PAN樹脂を用いてガラス繊維をコーティングすることにより製造した。H2Oを用いた活性化の後、炭素の表面積は約1800cm2/gであり、及び細孔径は約1nmであった。室温で24時間含浸して湿らせることにより、活性炭被覆繊維の細孔領域を、チタンテトロイソプロポキシドと窒素ドーパントであるテトラメチルアンモニウム塩の100:2混合物で湿潤した。該表面をエタノールで洗浄し、先駆体の加水分解を、大気中の水分に曝露することにより開始した。300℃の大気中における1時間のTiONの結晶化又は重合、続く500℃の大気中における3時間の炭素及び窒素ドーパントの除去により、メソ細孔性の無機球体を得た。
【0022】
(4)TiOS繊維
2gのチオウレアを、20gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、次いで10gのTTIPを添加し、次いで2gのエタノールを該混合物に添加して、透明な溶液を得た。該活性炭被覆繊維を、活性化する前に、PAN又はフェノール樹脂でガラス繊維をコーティングすることにより製造した。H2Oを用いた活性化の後、炭素の表面積は約1800m2/g、かつ細孔径は約1nmであった。室温で24時間含浸して湿らせることにより、活性炭被覆繊維の細孔領域を、上記の溶液で湿潤した。該炭素の表面をアセトンで洗浄し、次いで該先駆体の加水分解を、大気中の水分に曝露することにより開始した。次いで、500℃の大気中における3時間のTiOSの結晶化又は重合、続く500℃の大気中における1時間の炭素及び硫黄ドーパントの除去により、メソ細孔性の無機球体を得た。
【0023】
(5)Ag−TiON繊維
例(3)の方法に従って調製したTiON繊維を、室温で12時間10%(wt)硝酸銀溶液に浸漬した。次いで、該繊維を脱イオン(DI)水で洗浄し、300℃で2時間加熱した。
【0024】
(6)Pd−TiON繊維
例(3)の方法に従って調製したTiON繊維を、室温で12時間1%(wt)Pd(acac)2トルエン溶液に浸漬した。次いで、該繊維を400℃で1時間加熱し、200℃のH2中で3時間還元した。
【0025】
(7)TiO2繊維及び254nmの光を用いた光分解
ステアリン酸の光分解速度が、半導体フィルムの光触媒活性を検定するために普通に使用される。従って、該繊維をステアリン酸0.02Mのメタノール性溶液中にディップコーティングすることにより、ステアリン酸を10mm×10mm繊維試料上に堆積させた。光触媒活性を、市販のTiO2(Hombikat UV100)スラリーをディップコーティングにより堆積し、次いで蒸留水で洗浄し、次いで80℃の大気中で1時間乾燥することにより得た、参照の光触媒フィルムの光触媒活性と比較した。ステアリン酸の分解速度は、赤外スペクトルにおける2700と3000cm-1の間のステアリン酸の積算された吸光度を測定することにより計算した。254nmの波長及び2.8mW/cm2の強度の光源に対する2時間の曝露の後、分解されたステアリン酸のパーセンテージは、図2Aに図示するように、本発明のメソ細孔性TiO2繊維に関しては39%、図2Bに図示するように、参照の光触媒に関しては27%であった。
【0026】
(8)TiO2繊維及び365nm光を用いた光分解
365nmの波長及び2.4mW/cm2の強度の光源に対する12時間の曝露を用いて、例(7)の方法に従った。分解されたステアリン酸のパーセンテージは、図3Aに図示するように、本発明のメソ細孔性TiO2繊維に関しては73%、図3Bに図示するように、参照の光触媒に関しては42%であった。
【0027】
(9)TiON繊維を用いたフミン酸の光分解
0.25%(wt)水性フミン酸溶液中でディップコーティングすることにより、フミン酸を例(3)のTiON繊維の10mm×10mm試料上に堆積させた。次いで、例(7)の方法に従った分解試験を、1.9mW/cm2の強度を有する可視光源下で行った。フミン酸の分解は、UV−Vis分光計において400nmでフミン酸溶液の吸収強度を監視することにより計算した。図4において図示するように、光源に対する曝露の8時間後、本発明のTiON繊維が43%のフミン酸を分解したのに対し、例(7)の参照光触媒は、光触媒活性を全く示さなかった。
【0028】
(10)細菌培養物の消毒
大腸菌の培養物を、試験管中で18時間37℃で好気的に培養した。次いで、例(3)のTiON繊維及び例(5)のAg−TiON繊維を、室温の可視光下で5時間インキュベートすることにより、この培養物の消毒剤として試験した。インキュベーションに続いて、連続希釈法、次いで37℃で24時間インキュベートすることにより、消毒された試料及びコントロール試料中の生存細胞の数を決定した。図5に図示するように、TiON繊維が80%より多い細菌を破壊したのに対して、Ag−TiONは全ての細菌を破壊した。
【0029】
(11)Al23繊維
種々の表面積を有する、Nippon Kynol(Kansai、Japan)により製造された商業上入手可能な活性炭被覆繊維を、テンプレートとして使用した。この例で使用された活性炭被覆繊維を、ACF7、ACF10、ACF15、ACF20及びACF25とし、これらはそれぞれ690、738、1390、1590及び1960m2/gのBET表面積を有していた。
活性炭被覆繊維を、AlCl3の水性溶液で浸漬し、約150℃で加熱乾燥し、次いでN2下における約600℃の温度での加熱処理を行った。次いで、600℃の大気中における第2の加熱処理を行い、炭素テンプレートを除去し、該生成物の焼成が、熱耐性のある白色のAl23繊維を与えた。炭素テンプレートの除去は、熱質量分析(TGA)により確認した。
製造したAl23繊維のN2吸着等温線、BET表面積及び細孔径分布は、Autosor−1(Quantachrome Corp.,Boynton Beach,FL)容積吸収分析器を用いて測定した。図6に図示するように、BET表面積及びAl23繊維の収率は、ACFテンプレートの空隙率に対して直接的に比例するように見える。−196.16℃(77K)でのN2吸着等温線は、Al23繊維がメソ細孔性材料であることを示し、細孔分布分析は、3.5nmと3.8nmの間の範囲において、メソ細孔のピーク値を示した。
【0030】
(12)製造したAl23繊維へのテンプレート除去温度の作用
ACF23(表面積=1730m2/g)を、AlCl3の水性溶液に浸漬し、約150℃で加熱乾燥し、次いでN2下における約600℃の温度での加熱処理を行った。450℃と900℃の間の範囲から選択される温度での、大気中における第2の加熱処理を、炭素テンプレートを除去するために適用した。次いで熱的に安定な白色Al23繊維が焼成により得られた。炭素テンプレートの除去を、熱質量分析(TGA)により確認し、及び該繊維中に存在する結晶相を、Rigaku D/max−VA(Rigaku/MSC,The Woodlands,TX)の粉末X線回折法により同定した。
図2(7)の図解は、製造した繊維の表面積に対する炭素酸化温度の作用である。より低い温度、例えば500℃においては、テンプレートの完全な除去は、通常24時間より長い時間を必要とした。より高い温度、例えば900℃においては、テンプレートは数秒中に完全に除去される。Al23繊維のBET表面積は、より低いテンプレート除去温度に関してより大きく、かつ該温度が500℃以上の場合、大気中における加熱はO2中におけるものよりもよりよい結果を与えた。しかしながら、該温度が450℃と同じ程度に低い場合、O2のみを使用して全ての炭素テンプレートを除去することができ、500m2/gを超える非常に大きなBET表面積を有する生成物を与えた。
2吸着等温線は、異なるテンプレート除去温度で得たAl23繊維が、全てメソ細孔性材料であったことを示した。X線回折法は、450℃のテンプレート除去温度で得られた繊維についてのアモルファス構造、及びより高いテンプレート除去温度についてのより結晶性な構造を明らかにした。
【0031】
(13)MgO繊維
ACF23(表面積=1730m2/g)を、2mLのH2O中に1gのMg(Ac)2を溶解することにより得られたMg(Ac)2の水性溶液中に浸漬し、約150℃で加熱乾燥し、次いで約600℃のN2中で加熱処理した。大気中における第2の加熱処理を、450℃から900℃の間の範囲から選択された温度で適用し、炭素を除去した。生成物の焼成は、熱的に安定な、白色MgO繊維を与えた。製造したAl23繊維のN2吸着等温線、BET表面積及び細孔径分布を、Autosor−1(Quantachrome Corp.,Boynton Beach,FL)容積吸収分析器を用いて測定した。炭素の除去を、熱質量分析(TGA)により確認し,及び該繊維中に存在する結晶相をRigaku D/max−VA(Rigaku/MSC,The Woodlands,TX)の粉末X線回折法により同定した。
図3(8)中の図解は、表面積における炭素除去温度、及びMgO繊維生成物の収率の作用である。より低い炭素除去温度、例えば400℃において、より長い時間が炭素を除去するために必要とされ、及び最大で250m2/gの表面積が得られた。より高い炭素除去温度は、より小さい表面積を有する繊維を与えた。N2吸着等温線は、製造した全てのMgO繊維がメソ細孔性材料であることを示した。該繊維のX線回折法は、MgOの立方晶系結晶構造を明らかにした。
【0032】
(14)ZrO2繊維
ACF23(表面積=1730m2/g)の二つの試料を、5mLの水中に1gのZr(NO34を溶解させることにより得られたZr(NO34水性溶液に浸漬し、約150℃で加熱乾燥し、次いで約600℃のN2下で加熱処理した。次いで、第1の試料を450℃の大気中で加熱処理し、及び第2の試料を600℃の大気中で加熱処理した。次いで、該繊維を焼成し、熱的に安定な白色ZrO2繊維を得た。
製造したZrO2繊維の、N2吸着等温線、BET表面積及び細孔径分布を、Autosor−1(Quantachrome Corp.,Boynton Beach,FL)容積吸収分析器を用いて測定した。第1の試料から得られた繊維は、50m2/gのBET表面積を有し、及び第2の試料から得られた繊維は60m2/gのBET表面積を有した。該繊維のX線回折法は、ZrO2の正方晶系構造を明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、例1の方法に従って製造したセラミック繊維の、表面の電子顕微鏡(SEM)写真を図示する。
【図2】図2は、例1の繊維により(図2A)、及び参照である市販のTiO2光触媒により(図2B)触媒されたステアリン酸の光分解を図示する。
【図3】図3は、例1の繊維により(図3A)、及び参照である市販のTiO2光触媒により(図3B)触媒されたステアリン酸の光分解を図示する。
【図4】図4は、例(3)のTiON繊維により触媒された、フミン酸の光分解を図示する。
【図5】図5は例(3)のTiON繊維、及び例(5)のAg−TiON繊維を用いた、大腸菌細菌培養物のインキュベーションを図示する。
【図6】図6は、表面積におけるACFの作用、及びAl23繊維の収率を図示する。
【図7】図7は、表面積における第2の加熱の温度の作用、及びAl23繊維の収率を図示する。
【図8】図8は、表面積における第2の加熱の温度の作用、及びMgO繊維の収率を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック先駆体を含む活性炭被覆繊維を加熱処理してセラミック被覆繊維を形成することを含む、セラミック被覆繊維の製造方法。
【請求項2】
該加熱処理が以下を含む、請求項1に記載の方法:
先駆体を硬化させるための、少なくとも250℃の温度における第1の加熱、及び
炭素を除去するための、酸化雰囲気下における少なくとも400℃の温度での第2の加熱。
【請求項3】
該第1の加熱が不活性雰囲気下である、請求項1又は2のいずれかに記載する方法。
【請求項4】
該セラミックが、アナターゼ構造を有するTiO2及び/又はTiONを含む、請求項1から3のいずれかに記載する方法。
【請求項5】
該セラミック先駆体が、さらに窒素又は硫黄ドーパントを含む、請求項1から4のいずれかに記載する方法。
【請求項6】
該窒素源が水酸化テトラメチルアンモニウムである、請求項1から5のいずれかに記載する方法。
【請求項7】
以下をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載する方法:
該セラミック被覆繊維と、銀を含む化合物との接触;及び
セラミック被覆繊維の第3の加熱。
【請求項8】
さらに以下を含む、請求項1から7のいずれかに記載する方法:
該セラミック被覆繊維と、パラジウムを含む化合物との接触;
該セラミック被覆繊維の第3の加熱;及び
2を含む雰囲気下での該セラミック被覆繊維の第4の加熱。
【請求項9】
該セラミックが結晶質のセラミックを含み、かつ少なくとも50m2/gのBET表面積を有する、請求項1から8のいずれかに記載する方法。
【請求項10】
該セラミックが、TiO2、TiON、TiOS、Al23、ZrO2及びMgOから成る群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1から9のいずれかに記載する方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載する方法に従って製造された、セラミック被覆繊維。
【請求項12】
該セラミックがアナターゼ構造を有するTiO2及び/又はTiONを含んだ、請求項11の繊維を照射することを含む、ラジカル種の生成方法。
【請求項13】
大気又は水を請求項11の繊維に接触させ、かつ該繊維に照射することを含む、大気又は水の浄化及び殺菌方法であって、該セラミックがアナターゼ構造を有するTiO2及び/又はTiONを含む方法。
【請求項14】
該セラミックがアナターゼ構造を有するTiO2及び/又はTiONを含んだ、請求項11の繊維を含む、光化学反応器。
【請求項15】
以下を含むセラミック被覆繊維:
(a)繊維、及び
(b)繊維上に被覆されたセラミック、
ここで、該セラミックは少なくとも60m2/gのBET表面積を有し、かつ該セラミックは結晶質のセラミックを含む。
【請求項16】
該セラミックがアナターゼ構造を有するTiO2及び/又はTiONを含む、請求項15に記載するセラミック被覆繊維。
【請求項17】
該セラミックが、TiO2、TiON、TiOS、Al23、ZrO2及びMgOから成る群より選択される少なくとも一つを含む、請求項15又は16に記載するセラミック被覆繊維。
【請求項18】
該セラミックが、60m2/gから300m2/gのB.E.T.表面積を有する、請求項15から17のいずれかに記載するセラミック被覆繊維。
【請求項19】
該セラミックがセラミック被覆繊維の質量により10から90%を構成する、請求項15から18のいずれかに記載するセラミック被覆繊維。
【請求項20】
さらに銀及び/又はパラジウムを含む、請求項15から19のいずれかに記載するセラミック被覆繊維。
【請求項21】
請求項15から20のいずれかに記載する繊維を照射することを含む、ラジカル種の生成方法。
【請求項22】
大気又は水を請求項15から20のいずれかに記載する繊維と接触させ、及び該繊維を照射することを含む、大気又は水の浄化及び殺菌方法。
【請求項23】
請求項15から20のいずれかに記載する繊維を含む光化学反応器。
【請求項24】
セラミック先駆体を含む活性炭被覆繊維を加熱し、先駆体を硬化させることを含む、セラミック被覆繊維の製作のための中間体の製造方法。
【請求項25】
該加熱が不活性雰囲気下である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24又は25の方法に従って製造された、セラミック被覆繊維を製造するための中間体。
【請求項27】
以下を含むセラミック被覆繊維:
(a)繊維、及び
(b)該繊維上に被覆されたセラミック、
ここで、該セラミックは、少なくとも50m2/gのBET表面積を有し、かつ該セラミックは、Al23、ZrO2及びMgOから成る群より選択される少なくとも一つを含む。
【請求項28】
該セラミックが、60m2/gから300m2/gのB.E.T.表面積を有する、請求項27に記載するセラミック被覆繊維。
【請求項29】
該セラミックが、セラミック被覆繊維の質量により10から90%を構成する、請求項27又は28に記載するセラミック被覆繊維。
【請求項30】
さらに銀及び/又はパラジウムを含む、請求項27から29のいずれかに記載するセラミック被覆繊維。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−528454(P2007−528454A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503020(P2007−503020)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008008
【国際公開番号】WO2005/087679
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】