説明

大型ペリクル

【課題】 大型ペリクルを構成する大型ペリクル膜に耐光性に優れたふっ素系材料を用いた場合には、この大型ペリクルをマスクに取付けた後で、大型ペリクル膜に付着した異物を除去するためにエアブローをすると、前記マスクのパターン面に該大型ペリクル膜が付着してしまう問題があった。
【解決手段】 大型ペリクル枠体2の一方の縁面に接着剤3を介してふっ素系ポリマーからなる大型ペリクル膜4を貼着し、かつ該大型ペリクル枠体2の他方の縁面に粘着材5及び保護ライナー6を順に積層した大型ペリクル1に於て、大型ペリクル1の大きさに従って前記大型ペリクル膜4の膜厚を適宜選択することによって、エアブロー時に大型ペリクル膜4がマスク8のマスクパターン7に付着することがないように構成した大型ペリクルの構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型ペリクルに係り、詳しくは、液晶ディスプレイ(LCD)を構成する薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルター(CF)を製造する際に、リソグラフ工程で使用されるフォトマスクに異物が付着することを防止するためのペリクルに関するものである。特に大型のCFを製造する際に用いられる大型ペリクルである。
【背景技術】
【0002】
従来、LCDを構成するTFTを製造する際のリソグラフ工程において、フォトマスクにペリクルと称する防塵手段を載置して、該フォトマスクへの異物の付着を防止することが行われている。フォトマスクの表面に異物が付着した場合、その異物が液晶パネル上に形成されたフォトレジスト上に結像して回路パターン欠陥の原因となるが、フォトマスクにペリクルを載置した場合、ペリクルの表面に付着した異物はフォーカス位置のずれによって液晶パネル上に形成されたフォトレジスト上に結像することなく、回路パターンに欠陥を生じさせないものである。
【0003】
ペリクルは、フォトマスクの形状に合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の枠体の一方の縁面に高分子膜からなるペリクル膜を展張して接着し、且つ該枠体の他方の縁面にマスク粘着材を介してフォトマスクの表面に貼着される。TFTマスク用ペリクル膜を構成する高分子膜の材料としては、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体がコストと膜の張りの点から好ましく使用されている。
【0004】
本発明のような大型ペリクルに関しては、本件特許出願人も例えば、特開2001−109135号公報(特許文献1)、特開2001−201845号公報(特許文献2)、特開2002−296763号公報(特許文献3)等の発明を開発し、特許出願している。
【0005】
前述の特許文献1の発明は、大型ペリクル膜を展張して支持する大型ペリクル用枠体の長辺の巾を短辺の巾よりも大きくして長辺の強度を確保して、長辺の枠体の内側に向かう撓みを抑制するようにした発明である。
【0006】
また、特許文献2の発明は、大型ペリクル用枠体に大型ペリクル膜を展張した際に、大型ペリクル内外に気圧差が発生して大型ペリクル膜面の鉛直方向に膨らんだり凹んだりすることを防止するために、大型ペリクル用枠体に通気口を設けて、その枠体の内外を同一の気圧にするようにした発明である。
【0007】
また、特許文献3の発明は、大型ペリクル膜を展張する大型ペリクル用枠体の少なくとも一対の辺を枠体の外側に向って突出するように形成し、これによって長辺の枠体の内側に向かう撓みを抑制して、フォトマスクの有効露光領域を確保するようにした発明である。
【0008】
【特許文献1】特開2001−109135号公報
【特許文献2】特開2001−201845号公報
【特許文献3】特開2002−296763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年では、LCDを構成するTFT用マスクに加え、CF用マスクにおいても、マスク保護用としてペリクルが使用され始めた。CFを製造する際に用いられる感光性レジストの中にはTFTを製造する際に用いられる感光性レジストの分光感度[水銀ランプのi線(波長365nm)付近]よりも高エネルギー[水銀ランプのj線(波長313nm)付近]に分光感度を持つものがある。
【0010】
TFTマスク用ペリクル膜を構成する高分子膜の材料として好ましく使用されていたニトロセルロースなどのセルロース誘導体は、水銀ランプのi線に比べj線に対する耐光性が劣り、使用中に徐々に膜強度が低下することが懸念されている。
【0011】
これらのセルロース誘導体よりも耐光性に優れたペリクル膜用材料として、ふっ素系ポリマーが知られている。ふっ素系ポリマーは耐光性に優れるものの、使用中にペリクル膜に付着した異物をエアブローで除去しようとすると、膜がフォトマスク上に形成されているマスクパターンに付着してしまう問題が明らかになった。
【0012】
石英などのガラス基板上にクロムや酸化クロムで形成された数μmのマスクパターンは静電気で破壊することがあり、樹脂製の膜が付着することは好ましくない。ふっ素系樹脂とガラスとは、セルロース誘導体とガラスよりも帯電列上で離れており、接触、剥離したときの静電気発生量が多く問題である。
【0013】
また、マスクパターンに付着したペリクル膜にはきずが付き、使用できなくなる。このようなことは、LSI用ペリクルのような高々対角寸法が20cm程度のふっ素系ポリマーからなるペリクルや、セルロース誘導体からなる大型ペリクルでは問題となっていなかった。本発明は、これ等の従来の問題点に鑑み開発された全く新規な発明であって、特にCF用マスクペリクルに実用的な大型ペリクルを提供せんとするものである。
【0014】
特に、本発明に於ては、大型ペリクルの大型ペリクル膜をふっ素系ポリマーを用いて形成し、かつこの大型ペリクル膜の膜厚を一定以上の膜厚に形成し、これによって付着した異物を除去するために大型ペリクル膜にエアーブローしても、大型ペリクル膜がマスクのパターンに付着することを防止するようにした全く新規な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の従来の多くの問題点を根本的に改善した発明であって、その大型ペリクルの第1発明の要旨は、内径の対角寸法l[cm]が100cm以上を有する大型ペリクル枠体と、該大型ペリクル枠体の一方の縁面に接着剤を介して張設された大型ペリクル膜と、前記大型ペリクル枠体の対向する縁面に粘着材と保護ライナーが順に積層された大型ペリクルに於て、前記大型ペリクル膜をふっ素系ポリマーからなり、該マスクのパターン面から大型ペリクル膜が張設された大型ペリクル枠の縁面までの距離をh[mm]としたとき、該大型ペリクル膜の膜厚d[μm]をd[μm]=0.14×l/h以上に構成したことを特徴とした大型ペリクルである。
【0016】
また、本発明に係る大型ペリクルの第2発明の要旨は、ふっ素系ポリマーが主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマーであることを特徴とする第1発明の大型ペリクルである。
【0017】
また、本発明に係る大型ペリクルの第3発明の要旨は、ペリクル膜の膜厚d[μm]がd[μm]=0.14×l/h以上であり、かつ、2.43〜2.44μm、3.12〜3.13μm、3.24〜3.26μm、3.93〜3.95μm及び4.74〜4.76μmの群から選択されたことを特徴とする第1発明または第2発明の大型ペリクルである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る大型ペリクルの第1発明に於ては、大型ペリクル膜をふっ素系ポリマーで形成し、かつその大型ペリクル膜の膜厚を前述のような条件に適合する一定以上の膜厚に構成したので、大型ペリクルをマスクに貼着した後、前記大型ペリクル膜に付着した異物を除去するためにエアブローをしても、該大型ペリクル膜がマスクのパターン面に付着する恐れがない。
【0019】
また、第1発明に於ては、前述のように、大型ペリクル膜をふっ素系ポリマーで構成したので、特にCFマスク用のペリクルとして、耐光性に優れているので、耐久性良く使用することが出来る。
【0020】
本発明に係る大型ペリクルの第2発明に於ては、ふっ素系ポリマーの内でも、特に主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマーを用いたので、溶媒への溶解性が良く、異物除去のための溶液ろ過フィルターの目詰まりが少ないので、成膜基板へのポリマー溶液吐出量を多く要する大型ペリクル膜を製造するに当っては、極めて有効である。
【0021】
本発明に係る大型ペリクルの第3発明に於ては、前述の第1発明の如く、一定以上の膜厚を有するふっ素系ポリマーで形成された大型ペリクル膜を使用する外に、2.43〜2.44μm、3.12〜3.13μm、3.24〜3.26μm、3.93〜3.95μm及び4.74〜4.76μmの群から選択したペリクル膜を用いたので、365nmを有する水銀ランプのi線および313nmを有する水銀ランプのj線を効率良く透過することが出来る。従って、TFT用のペリクルとして、或はCF用のペリクルとして極めて有効に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図により、本発明に係る大型ペリクルの一実施例を具体的に説明する。図1は本発明に係る大型ペリクルの縦断面簡略説明図、図2は実施例1で製造した大型ペリクルをマスクに貼着してエアブローをしている状態の縦断面簡略説明図、図3は比較例1で製造した大型ペリクルをマスクに貼着してエアブローをしている状態の縦断面簡略説明図である。
【0023】
図1に於て、本発明に係る大型ペリクル1について説明する。この大型ペリクル1は大型ペリクル枠体2と、この大型ペリクル枠体2の一方(上面)の縁面に接着剤3を介して貼着された大型ペリクル膜4と、大型ペリクル枠体2の他方(下面)の縁面に塗着された粘着材5と、この粘着材5上に積層された保護ライナー(離形紙)6とによって構成されている。
【0024】
前記大型ペリクル1の大型ペリクル枠体2は、その内径の対角寸法l[cm]が100cm以上を有している。また、大型ペリクル膜4は、ふっ素系ポリマーによって形成されている。前記大型ペリクル枠体2の下面に塗着される粘着材5は、大型ペリクル1を後述のマスクのパターン面に貼着させるための粘着剤であり、保護ライナー6は該粘着材5を一時的に保護するための剥離紙である。
【0025】
前述の大型ペリクル膜4に使用されるふっ素系ポリマーとしては、主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマー、ポリフツ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−フツ化ビニリデン共重合体又はポリフツ化ビニル、などが使用できる。
【0026】
前述のふっ素系ポリマーの内で、特に主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマーは、溶媒への溶解性が良く、異物除去のための溶液ろ過フィルターの目詰まりが少なく、小型ペリクル膜を成膜する際に比べ成膜基板へのポリマー溶液吐出量を多く要する大型ペリクル膜用として好ましく用いられる。主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマーとして、CYTOP(旭硝子(株)製、商品名)、TEFLON AF(DuPont社製、商品名)が挙げられる。
【0027】
ふっ素系ポリマーは、ふっ素系の溶媒にて溶解し、ふっ素系ポリマー溶液とする。ふっ素系の溶媒としては、FLUORINERTシリーズ(3M社製、商品名)、CT−Solvシリーズ(旭硝子(株)製、商品名)、GALDEN、H−GALDEN(いずれもSOLVAY SOLEXIS社製、商品名)などが挙げられる。
【0028】
ふっ素系ポリマー溶液は、乾燥空気、窒素などの不活性ガス、あるいはポンプなどで加圧ろ過し、溶液中の異物やゲルを取り除く。ろ過に使用するフィルターは、四フッ化エチレン、超高分子量ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン製のメンブレンフィルターやデプスフィルターが挙げられる。
【0029】
成膜用基板としては、石英ガラス、低膨張ガラス、ソーダガラス、セラミックスなどの表面を研磨、洗浄したものを用いることができる。研磨方法としては、物理研磨、化学研磨等の方法がある。ガラスの表面は、ふっ素系ポリマー溶液の濡れ性や乾燥後の膜の剥離性を制御するために、表面処理を施しても良い。表面処理剤としては、パーフルオロアルキル基を有するシリコン化合物やシラザンなどが挙げられる。
【0030】
ふっ素系ポリマー溶液を成膜用基板に滴下し、ペリクル膜の膜厚が所望の膜厚になるように成膜する。成膜方法としては、回転成膜法(スピンコート法)、スリットコート法、スリットアンドスピン法などがある。ペリクル枠体の内径対角寸法をl[cm]としたとき、溶媒乾燥等を考慮し、枠体に張設されたペリクル膜厚d[μm]が、ペリクルをマスクに貼り付けたときのマスクパターン面からペリクル膜が張設された枠体縁面までの距離をh[mm]としたとき、d[μm]=0.14×l/h以上の膜厚になるよう、ふっ素系ポリマー溶液の濃度、粘度、溶媒の沸点を適宜選択する。
【0031】
さらに、回転成膜法、スリットアンドスピン法では、回転数、回転時間、スリットコート法では、溶液吐出量を調節する。ペリクル膜厚d[μm]は、好ましくは、d[μm]=0.14×l/h以上であり、かつ、2.43〜2.44μm、3.12〜3.13μm、3.24〜3.26μm、3.93〜3.95μm及び4.74〜4.76μmの群から選択する。このように膜厚を選択することにより、水銀ランプのi線(365nm)およびj線(313nm)を効率良く透過することができ、TFT用およびCF用の兼用ペリクルとして好ましく使用できる。
【0032】
ペリクル膜の厚さは、膜の乾燥(残存溶媒)や膜厚の均一性(むら)を考慮すると10μm以下が好ましい。また、i線およびj線における光線透過率がともに高いペリクル膜を得るためには、ペリクル膜の厚さを狭い範囲で制御する必要があるが、膜厚が厚いほど相対的に膜厚制御が難しくなるので、この点を考慮するとペリクル膜の厚さは5μm以下が好ましい。
【0033】
成膜を終了した基板は、乾燥により溶媒を蒸発させる。乾燥方法としては、ホットプレート、赤外線ランプ、クリーンオーヴンなどが挙げられる。乾燥を終了した基板から、膜を剥離する。外形が基板とほぼ同形状で幅が10〜50mm程度、厚さが3〜20mm程度の金属製仮枠、あるいは樹脂製仮枠に、両面テープ、エポキシ等の接着剤を貼付または塗布し、基板上の膜に押圧・固定する。この枠を静かに起こし、基板から膜を仮枠に剥がし取る。
【0034】
大型ペリクル枠体2の材質は、アルミニウム合金、工具鋼、ステンレススチール、セラミックス、ガラス等が使用できる。ペリクル枠体表面でのマスク上異物検査光が反射しないよう、大型ペリクル枠体2の表面は、ステンレススチールビーズやガラスビーズなどでショットブラスト処理してもよい。また、大型ペリクル枠体2の表面の異物検査がしやすいよう、それぞれの材質に適切な方法で黒色化処理(たとえば、染料や2次電解着色による黒色アルマイト処理、黒クロム処理など)を行っても良い。
【0035】
大型ペリクル1をマスクに貼付け後の膜の膨らみや凹みを防ぐため、前述の特許文献2のように大型ペリクル枠体2には1つあるいは複数の通気口を設けても良い。通気口には異物の混入を防ぐため、四フッ化エチレン製などのフィルターを取り付ける。大型ペリクル枠体2の表面には、アクリル系やシリコン系の粘着材を塗布しても良い。
【0036】
大型ペリクル枠体2の一方の縁面には、マスクに貼着するための粘着材5を塗着する。粘着材5は、基材の両側に粘着材を有する両面テープを大型ペリクル枠体2とほぼ同形状に打ち抜いたものを貼り付けたり、ホットメルト系の粘着材を大型ペリクル枠体2上に塗布する。粘着材5には、マスクに貼り付けるまで粘着面を保護するために、粘着材5から離型しやすいよう表面処理を施したポリエステルフィルムよりなる保護ライナー6を貼り付けておく。
【0037】
次に、大型ペリクル枠体2のもう一方の縁面に接着剤3を塗布し、仮枠に張設した大型ペリクル膜4を貼り合わせる。接着剤3としては、ウレタンアクリレート系などのUV(紫外線)硬化型樹脂、エポキシ樹脂、ふっ素系ポリマーを溶媒に溶解したものなどが挙げられる。このように接着剤3を用いて貼り合わせたのち、UV照射、赤外線やレーザー照射による加熱など、それぞれの接着剤に適した方法で接着する。
【0038】
前述のように、大型ペリクル膜4を大型ペリクル枠体2に接着剤3を介して完全に接着させた後では、大型ペリクル枠体2の外周に沿って、刃物で切断するか或は大型ペリクル膜4を溶解することが出来る溶剤を滴下することによって、大型ペリクル枠体2より外方にはみ出した大型ペリクル膜4を除去して、本発明に係る大型ペリクル1を完成することが出来る。
【実施例1】
【0039】
大型ペリクル枠体2として、アルミニウム合金(5052)を、内径77cm×112cm、外径79cm×114cm、高さ0.54cmで、各長辺中央部に口径1.5mmの貫通穴(図示せず)を1つずつ計2個開け、各長辺端部にアルマイト処理時の把持および電極用として口径2mm、深さ2mmの穴を2箇所ずつ計4箇所開け(図示せず)、さらに、両短辺の高さ方向の中央部に幅1.5mm、深さ2.3mmのハンドリング用溝(図示せず)を短辺の長さ方向に渡り切削加工(図示せず)を施した。この大型ペリクル枠体2表面をステンレススチールビーズでショットブラスト処理したのち、黒色アルマイトおよび封孔処理したものを用意した。大型ペリクル枠体2の内壁面に、アクリル製の粘着剤を、厚さ約10[μm]に塗布した。通気口部外側には四フッ化エチレン製のメンブレンフィルターをアクリル系粘着剤で取り付けた。
【0040】
大型ペリクル枠体2の下方の縁面には、SEBS製のホットメルト樹脂を、幅8mm、高さ1.6mmになるよう、塗布して粘着材5を形成し、かつこの粘着材5の表面を保護するため、シリコーン離型処理を施した、厚さ0.1mmのポリエステル製フィルムよりなる保護ライナー6を貼り付けた。
【0041】
この大型ペリクル枠体2の対角線長さlは約136[cm]である。また、本ペリクルをマスクに貼り付けたときのマスクパターン面から大型ペリクル膜4が張設された大型ペリクル枠体2の縁面までの距離はh[mm]=7[mm]である。h=7[mm]、l=136[cm]よりd[μm]=0.14×l/h=0.14×136/7=2.72[μm]となる。従って、大型ペリクル膜4の膜厚dは、d以上であることと、水銀ランプのi線およびj線におけるペリクル膜の透過率が高くなることから、3.13[μm]を目標とした。
【0042】
大型ペリクル膜4に使用されるふっ素系ポリマーとして、CYTOP(旭硝子(株)製、商品名)、CTX−809AP2(ふっ素系ポリマー溶液、9質量%、旭硝子(株)製、商品名)をCT−Solv.180(ふっ素系溶媒、旭硝子(株)製、商品名)で7重量%に希釈してふっ素系ポリマー溶液を構成した。そしてこのふっ素系ポリマー溶液を窒素で0.01MPaに加圧し、口径0.1μmのナイロン製メンブレンフィルターを通してろ過を行った。
【0043】
成膜用基板として、一辺が1,400mmのソーダガラス表面を物理研磨後さらに化学研磨し、純水で洗浄したものを用意した。この基板をクリーンオーヴンで100℃、2時間加熱乾燥後、室温まで冷却した。次に、この基板と10、10、10、9、9、8、8、7、7、6、6、5、5、4、4、3、3−ヘプタデカフロロデシルトリメトキシシランを20cc導入した直径5cmの上部が開放されたポリエチレンの容器を、清浄な金属製の箱に室温で30分間封入した。ガラス基板を取り出した後、クリーンオーヴンで100℃、2時間加熱した。
【0044】
このようにして準備したガラス基板をクローズドカップ式のスピンコーターにセットし、先に準備したふっ素系ポリマー溶液をガラス基板上に約300g供給し、ガラス基板を350rpmで60sec間回転せしめる。このガラス基板を60℃のホットプレート上に30分間、150℃のホットプレート上に30分間載せて、溶媒を蒸発せしめてペリクル膜を製造した。
【0045】
外形の辺が1,396mm、幅が20mm、厚さが6mmのアルミニウム合金(6061)を黒色アルマイトおよび封孔処理した仮枠を用意し、エポキシ接着剤を塗布し、基板上の膜に押圧・固定する。エポキシ接着剤が硬化したのち、この枠を静かに起こし、基板から膜を仮枠に剥がし取る。
【0046】
一方で、大型ペリクル枠体2の先に粘着材5を塗布した反対の縁面に、ふっ素系ポリマーCTX−109A(ふっ素系ポリマー溶液、9質量%、旭硝子(株)製、商品名)をCT−Solv.100(ふっ素系溶媒、旭硝子(株)製、商品名)で3質量%に希釈した溶液を接着剤3として塗布し、赤外線で乾燥する。その後、先の仮枠に張設した大型ペリクル膜4を接着剤3の上に載置し、接着面に炭酸ガスレーザーを照射し、該大型ペリクル膜4を大型ペリクル枠体2に接着する。
【0047】
その後で、大型ペリクル枠体2のエッジ部に、ふっ素系ポリマーCTX−109AをCT−Solv.100で3質量%に希釈した溶液を滴下し、大型ペリクル枠体2の外側にはみ出した余分な膜を切断、除去して本発明の大型ペリクル1を製造した。このようにして製造した大型ペリクル膜4の光線透過率スペクトルを、紫外・可視分光光度計で測定し、膜厚を算出すると、3.13[μm]であり、i線における光線透過率は99%、j線における光線透過率は98%であった。
【0048】
次に、図2に示す如く、この大型ペリクル1を、大きさ850mm×1,200mm、厚さ10mmの研磨、洗浄したパターン7が付いたマスク8に、約140kgの荷重を10分間かけて貼り付けた。その後で、大型ペリクル膜4の中央付近を上方から、口径1mmのエアガンノズル9を介して、圧力0.15MPa、距離5cm、時間10secの条件でエアブロー気流10を噴出し、暗室内で大型ペリクル膜4の表面を高輝度ハロゲンランプで照らし、目視確認を行った。その結果、大型ペリクル膜4の表面には、マスク8のマスクパターン7に付着した痕跡は全く見られなかった。
【0049】
前述の実施例1で製造した大型ペリクル1は、分光感度が水銀ランプのj線付近にあるCFレジストを用いるフォトリソグラフプロセスにおいても、耐光性に優れ、かつ、大型ペリクル膜4の異物除去のためのエアブローを行っても大型ペリクル膜4がマスク8のマスクパターン7に接触することが無く、極めて実用性に優れた製品であることが判明した。
【実施例2】
【0050】
大型ペリクル枠体2として、内径113cm×128cm、外径116cm×131cm、高さ0.54cmのものを使用した。ふっ素系ポリマー溶液として、TEFLON AF1600(DuPont社製、商品名)にγ線を100kGy照射したものをCT−Solv.180(ふっ素系溶媒、旭硝子(株)製、商品名)で7質量%に溶解したものを使用した。この大型ペリクル枠体2の対角線長さlは約171[cm]である。
【0051】
また、本ペリクルをマスクに貼り付けたときのマスクパターン面から大型ペリクル膜4が張設された大型ペリクル枠体2の縁面までの距離h[mm]=7[mm]とした。h=7[mm]、l=171[cm]よりd[μm]=0.14×l/h=0.14×171/7=3.42[μm]となる。大型ペリクル膜4の膜厚dは、d以上であることと、水銀ランプのi線およびj線におけるペリクル膜の透過率が高くなることから、3.94[μm]を目標とした。その他は実施例1と同様にして本発明の大型ペリクル1を製造した。
【0052】
このようにして製造したペリクル膜の光線透過率スペクトルを紫外・可視分光光度計で測定し、膜厚を算出すると、3.94[μm]であり、i線における光線透過率は100%、j線における光線透過率は99%であった。
【0053】
次に、図2に示す如く、この大型ペリクル1を、大きさ1,250mm×1,400mm、厚さ10mmの研磨、洗浄したマスクパターン7が付いたマスク8に、約140kgの荷重を15分間かけて貼り付けた。その後で、大型ペリクル膜4の中央付近を上方から、口径1mmのエアガンで、圧力0.15MPa、距離5cm、時間10secの条件でエアブロー気流10を噴出し、暗室内で大型ペリクル膜4の表面を高輝度ハロゲンランプで照らし、目視確認を行った。その結果、大型ペリクル膜4の表面にはガラス表面のマスク8のマスクパターン7に付着した痕跡は全く見られなかった。
【0054】
〔比較例〕
図3に示す如く、大型ペリクル膜4の膜厚を、大型ペリクル1aをマスク8に貼り付けたときのマスクパターン7の面から大型ペリクル膜4が張設された大型ペリクル枠体2の縁面までの距離をh=7[mm]、大型ペリクル枠体2の内径対角寸法l=136[cm]よりd[μm]=0.14×l/hで算出されるd=2.72[μm]より小さな2μmとする以外は、実施例1と同様にして大型ペリクル1aを作成した。この大型ペリクル膜4のi線における光線透過率は93%、j線における光線透過率は97%であった。
【0055】
次に、この大型ペリクル1aを、図3に示すように、大きさ850mm×1,200mm、厚さ10mmの研磨、洗浄したマスクパターン7が付いたマスク8に、実施例1と同様、約140kgの荷重を10分間かけて貼り付けた。その後で、大型ペリクル膜4の中央付近を上方から、口径1mmのエアガンノズル9で、圧力0.15MPa、距離5cm、時間10secの条件でエアブロー気流10を噴出し、暗室内で大型ペリクル膜4の表面を高輝度ハロゲンランプで照らし、目視確認を行った。その結果、大型ペリクル膜4の表面にはマスク8の表面のマスクパターン7に付着した痕跡が見られ、実用に耐えないものであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の大型ペリクルは、LCD用のTFT及びLCD用のCFを製造するための大型マスクに使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る大型ペリクルの縦断面簡略説明図である。
【図2】実施例1で製造した大型ペリクルをマスクに貼着してエアブローをしている状態の縦断面簡略説明図である。
【図3】比較例で製造した大型ペリクルをマスクに貼着してエアブローをしている状態の縦断面簡略説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ・・・大型ペリクル
1a ・・・大型ペリクル
2 ・・・大型ペリクル枠体
3 ・・・接着剤
4 ・・・大型ペリクル膜
5 ・・・粘着材
6 ・・・保護ライナー
7 ・・・マスクパターン
8 ・・・マスク
9 ・・・エアガンノズル
10 ・・・エアブロー気流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径の対角寸法l[cm]が100cm以上を有する大型ペリクル枠体と、該大型ペリクル枠体の一方の縁面に接着剤を介して張設された大型ペリクル膜と、前記大型ペリクル枠体の対向する縁面に粘着材と保護ライナーが順に積層された大型ペリクルに於て、前記大型ペリクル膜をふっ素系ポリマーからなり、該マスクのパターン面から大型ペリクル膜が張設された大型ペリクル枠の縁面までの距離をh[mm]としたとき、該大型ペリクル膜の膜厚d[μm]をd[μm]=0.14×l/h以上に構成したことを特徴とした大型ペリクル。
【請求項2】
ふっ素系ポリマーが主鎖に環構造を有する含ふっ素ポリマーであることを特徴とする請求項1の大型ペリクル。
【請求項3】
ペリクル膜の膜厚d[μm]がd[μm]=0.14×l/h以上であり、かつ、2.43〜2.44μm、3.12〜3.13μm、3.24〜3.26μm、3.93〜3.95μm及び4.74〜4.76μmの群から選択されたことを特徴とする請求項1または請求項2の大型ペリクル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−39257(P2006−39257A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219887(P2004−219887)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】