大型車両用ツインクラッチ式変速機
【課題】本発明の目的は、大型車両の変速機であっても簡単な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができるツインクラッチ式変速機を提供することにある。
【解決手段】
同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有する奇数段変速ギア31,33,35,37と偶数段変速ギア32、34、36、38は同じ歯数にし、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分となるように奇数段入力ギア列と偶数段入力ギア列のギア比を設定し、隣接した変速出力ギア41〜44に噛み合う奇数段変速ギアと偶数段変速ギアのギア比の比が等比率の2乗になるように構成する。奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸5または6を摩擦クラッチを介して入力軸3に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸中間軸5または6の回転数を同期状態にする。変速段切り替えに先立ってシフト先の変速ギアに噛み合いクラッチ23〜26を予備締結する。
【解決手段】
同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有する奇数段変速ギア31,33,35,37と偶数段変速ギア32、34、36、38は同じ歯数にし、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分となるように奇数段入力ギア列と偶数段入力ギア列のギア比を設定し、隣接した変速出力ギア41〜44に噛み合う奇数段変速ギアと偶数段変速ギアのギア比の比が等比率の2乗になるように構成する。奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸5または6を摩擦クラッチを介して入力軸3に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸中間軸5または6の回転数を同期状態にする。変速段切り替えに先立ってシフト先の変速ギアに噛み合いクラッチ23〜26を予備締結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型トラック、大型特殊作業車両など高馬力のエンジンを搭載した大型車両に適したツインクラッチ式変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドグクラッチやスプラインクラッチなどに代表される噛み合いクラッチは、結合したら結合状態を維持するのに油圧のような動力を必要としないので、エンジンの動力を効率良く出力側に伝達することができることから乗用車用の変速機などに使用されている。
【0003】
これらの噛み合いクラッチは、クラッチ結合時に駆動側と被動側の回転数を同期させる必要があり、乗用車用の変速機では一般的に同期装置としてテーパコーンの摩擦力を利用したシンクロメッシュ機構が用いられている。加えて、エンジン回転数を制御し、結合するクラッチの駆動側と被動側の回転差を所定値内に抑えて切り替えショックの低減とクラッチの破損防止を図っており、このようなシンクロメッシュ機構を用いた自動車用のツインクラッチ式変速機は、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
また、ダンプトラック等の大型車両に好適な油圧作動式摩擦クラッチを用いた変速機としては、例えば特許文献2に記載されるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-240832号公報
【特許文献2】特開2007-303519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大きな伝達トルクを必要とするため高馬力のエンジンを搭載した大型車両の変速機においては、伝達トルクに見合った大きな同期容量を備えたシンクロメッシュ機構(同期装置)が必要とされ、乗用車用の変速機で使用されているような既存のシンクロメッシュ機構は構造、強度的に高馬力(大トルク)を伝達することが難しく、耐久性、信頼性の面から使用困難である。加えて、エンジンが大きくなると慣性も大きくなり、エンジン回転数を制御して同期を早めようとしても回転数を瞬時に変化させるのが困難で、指令信号に対する追従性と変速時における頻繁なエンジン回転吹き上げに伴う騒音増大の問題もあって、大型車両用の変速機においては一般的に油圧作動式摩擦クラッチが採用されており、速度段切り替え時に個々のクラッチを滑らかに結合して必要とする速度段を得ている。すなわち、前段変速ギアのクラッチを開放してからシフト先の次段変速ギアのクラッチを滑らせながら順次結合させてシフトアップ又はシフトダウンするので変速時間を短縮するために高精度なクラッチ制御システムと多くの油圧機器を必要とする難点がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる、コンパクトなツインクラッチ式変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンに接続される入力軸と、前記入力軸と並列に配置された奇数段中間軸及び偶数段中間軸と、前記中間軸間と並列に配置された出力軸と、前記入力軸に固着され入力軸の回転を中間軸に伝達する奇数段入力ギア及び偶数段入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された奇数段主伝達ギアと、前記奇数段主伝達ギアを前記奇数段中間軸に連結する奇数段主摩擦クラッチと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された偶数段主伝達ギアと、前記偶数段主伝達ギアを前記偶数段中間軸に連結する偶数段主摩擦クラッチと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された複数の奇数段変速ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された複数の偶数段変速ギアと、前記奇数段変速ギアの1つと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアが噛み合うように出力軸に固着配設された複数の出力ギアと、前記奇数段中間軸及び偶数段中間軸に設けられて中間軸と前記変速ギアを選択的に結合する噛み合いクラッチとを具備し、同一の前記出力ギアに噛み合う前記奇数段変速ギアと前記偶数段変速ギアを同じ歯数に設定し、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分になるように、前記奇数段入力ギア列と前記偶数段入力ギア列のギア比を設定し、シフト先の変速ギアが設置された中間軸を摩擦クラッチを介して前記入力軸に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期させる噛み合いクラッチ同期化機構を設け、変速段切り替えに先立って前記シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の変速機の噛み合いクラッチ同期化機構は、入力軸に固着された偶奇アップシフト用入力ギアおよび奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶奇アップシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置されて前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアとを具備するものである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の変速機の噛み合いクラッチ同期化機構は、入力軸に固着された奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置され、前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸及び前記偶数段中間軸に設けられた摩擦ブレーキとを具備するものである。
【0010】
ここで、本明細書においては、隣り合う変速段間の変速比の比を等比率配分にするとしているが、実際には変速ギアと変速出力ギアの歯数の関係で略等比率にして実用に供されている。以後、説明の便宜上、等比率として説明するが、略等比率も含むものである。
また、本明細書においては、奇数段の変速ギアから偶数段の変速ギアへのアップシフトを奇偶アップシフト、ダウンシフトを奇偶ダウンシフトと称し、偶数段の変速ギアから奇数段の変速ギアへのアップシフトを偶奇アップシフト、ダウンシフトを偶奇ダウンシフトと称する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時に、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチと歯車列を介して入力軸に連結し、走行中にシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にしてシフト先の噛み合いクラッチを予備締結し、エンジンのから動力を摩擦クラッチ介して噛み合いクラッチ部に伝達するので、高馬力のエンジンを搭載した大型車両用に適用できる、エンジンの回転数を制御して同期させることなく簡素な構成でショックなく素早い変速が可能なコンパクトな変速機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】第1の実施例の動作説明図である。
【図3】第1の実施例の動作説明図である。
【図4】第1の実施例の動作説明図である。
【図5】第1の実施例の動作説明図である。
【図6】第1の実施例の動作説明図である。
【図7】第1の実施例の動作説明図である。
【図8】第1の実施例の動作説明図である。
【図9】第1の実施例の動作説明図である。
【図10】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図11】第2の実施例の動作説明図である。
【図12】第2の実施例の動作説明図である。
【図13】第2の実施例の動作説明図である。
【図14】第2の実施例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に本発明の第1の実施例を示す。図1に示す変速機は噛み合いクラッチとしてスプラインクラッチを用いており、1速から8速まで変速する例を示している。なお、後退ギア本発明の要旨に直接関係ないので図示を省略している。
【0015】
図1において、エンジン1の出力は変速機2の入力軸3に入力される。入力軸3には奇数段入力ギア7、偶数段入力ギア8、偶奇アップシフト用入力ギア13及び奇偶ダウンシフト用入力ギア14が固着されている。入力軸3と並列に奇数段中間軸5と偶数段中間軸6が配置されていて、奇数段中間軸5には奇数段主伝達ギア9が回転自在に設置され奇数段入力ギア7と噛み合うように配設されている。奇数段主伝達ギア9には奇数段中間軸5に連結するための奇数段主摩擦クラッチ10が設けられている。なお、奇数段主摩擦クラッチ10の中間軸固着部材は図示しない後進被動ギアと一体に形成されている。
【0016】
偶数段中間軸6には、軸に回転自在に設置され偶数段入力ギア8に噛み合う偶数段主伝達ギア11が設けられていて、偶数段主伝達ギア11には偶数段中間軸6に連結するための偶数段主摩擦クラッチ12が設けられている。前記奇数段主摩擦クラッチ10と偶数段主摩擦クラッチ12は油圧作動式を用いており作動油の供給によって摩擦プレートが圧接され、油圧を上昇させると摩擦力が増加してクラッチの伝達トルクが増大する。
【0017】
偶奇アップシフト用同期ギア15は偶奇アップシフト用入力ギア13と噛み合い奇数段中間軸5に回転自在に設置されていて、付設された摩擦クラッチ16の結合により奇数段中間軸5に連結される。また、奇数段中間軸5には偶数段入力ギア8と噛み合う偶奇ダウンシフト用同期ギア17が回転自在に設置されていて、偶奇ダウンシフト用同期ギア17は付設された摩擦クラッチ18の結合により奇数段中間軸5に連結される。
【0018】
奇偶アップシフト用同期ギア19は奇数段入力ギア7と噛み合い偶数段中間軸6に回転自在に設置されていて、付設された摩擦クラッチ20の結合により偶数段中間軸6に連結される。また、偶数段中間軸6には奇偶ダウンシフト用入力ギア14と噛み合う奇偶ダウンシフト用同期ギア21が回転自在に設置されていて、奇偶ダウンシフト用同期ギア21は付設された摩擦クラッチ22の結合により偶数段中間軸6に連結される。これらの摩擦クラッチ16、18、20、22も前記摩擦クラッチ10、12と同様に油圧作動式が用いられている。
【0019】
奇偶アップシフト用同期ギア19と奇数段主伝達ギア9および偶奇ダウンシフト用同期ギア17と偶数段主伝達ギア11は同じ歯数に構成され、また、偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13ギア比は、隣接した変速段間の変速比の比である等比率の2乗に反比例した値となるような歯数に構成され、奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14のギア比は、隣接した変速段間の変速比の比である等比率の2乗に比例した値となるような歯数に構成されている。
【0020】
偶奇アップシフト用入力ギア13、奇偶ダウンシフト用入力ギア14、同期ギア15、17、19、21およびこれらの同期ギア15、17、19、21に付設された摩擦クラッチ16、18、20、22は、後述する噛み合いクラッチの回転数を同期状態にするために本発明によって設けた同期化機構を構成する。
【0021】
奇数段中間軸5には複数段(4段)の奇数段変速ギアが回転自在に設置されていて、奇数段変速ギアは1速ギア31、3速ギア33、5速ギア35、7速ギア37から成る。同様に、偶数段中間軸6には2速ギア32、4速ギア34、6速ギア36、8速ギア38から成る複数段の偶数段変速ギアが回転自在に設置されている。
【0022】
1速ギア31と2速ギア32は変速出力ギア41に噛み合い、3速ギア33と4速ギア34は変速出力ギア42に噛み合い、5速ギア35と6速ギア36は変速出力ギア43に噛み合い、7速ギア37と8速ギア38は変速出力ギア44に噛み合うように構成されていて、各変速出力ギア41〜44は出力軸4に固定されている。
【0023】
このように1つの奇数段変速ギアと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアは同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有しており、同一の変速出力ギア41〜44に噛み合う奇数段変速ギアと偶数段変速ギアは同じ歯数に設定されている。
【0024】
奇数段中間軸5には1速ギア31と3速ギア33あるいは5速ギア35と7速ギア37を切り替えるための噛み合い歯がスプラインから成るスプラインクラッチが設置されていて、1速ギア31と3速ギア33にはスプラインクラッチの一方の噛み合い歯である雌スプライン31a、33aが形成され、他方の噛み合い歯である雄スプラインは奇数段中間軸5に軸方向への移動自在に装着されたスリーブ23に形成されている。同様に、5速ギア35と7速ギア37にも雌スプライン35a、37aが形成され、5速ギア35と7速ギア37間の奇数段中間軸5にスリーブ24が軸方向への移動自在に設置されている。
【0025】
偶数段中間軸6には2速ギア32と4速ギア34あるいは6速ギア36と8速ギア38を切り替えるためのスプラインクラッチが奇数段中間軸5と同様に設置されている。すなわち、2速ギア32、4速ギア34、6速ギア36および8速ギア38にはそれぞれ雌スプライン31a、33a、36a、38aが形成され、2速ギア32と4速ギア34間および6速ギア36と8速ギア38間の偶数段中間軸6にスリーブ25、26が軸方向に移動自在に設置されている。
【0026】
スプラインクラッチは、1速ギア31と3速ギア33についてみると、中間軸(回転軸)5、雌スプライン31a、33a、スリーブ(雄スプライン)23で構成され、スリーブ23は図示しないシフトフォークにより回転軸5の左右軸方向に移動して、1速ギア31の雌スプライン31a又は3速ギア33の雌スプライン33aと噛み合うことで、変速ギア段を切り替えることができる。5速ギア35と7速ギア37、2速ギア32と4速ギア34、6速ギア36と8速ギア38についても同様である。
【0027】
なお、以後、スリーブ23〜26のことをクラッチスリーブ、スプラインクラッチと称することもある。
【0028】
また、スプラインクラッチとしては、本出願人が先に特願2007−278831号で提案しているように、雄雌の両スプラインが、所定個数毎のスプライン歯を嵌挿側面側へ軸方向に突出した嵌合案内歯(先導案内歯)を形成したものを用いるのが望ましい。
【0029】
本実施例の構成において、選択した速度段のスプラインクラッチと主摩擦クラッチ(10又は12)を結合した状態における変速機2の入力軸3の回転数Niと出力軸4の回転数Noの比(Ni/No)を変速比と称し、1速から8速までの隣り合う速度段間の変速比の比が等比となるように設定されている。
【0030】
ここで、各変速ギア部のギア比は、同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有しているので次のようになる
1速ギア比=(ギア41/ギア31)=2速ギア比=(ギア41/ギア32)
3速ギア比=(ギア42/ギア33)=4速ギア比=(ギア42/ギア34)
5速ギア比=(ギア43/ギア35)=6速ギア比=(ギア43/ギア36)
7速ギア比=(ギア44/ギア37)=8速ギア比=(ギア44/ギア38)
各速度段の変速比は、前記変速ギア比と奇数段中間軸5への入力ギア比1(ギア9/ギア7)、又は前記変速ギア比と偶数段中間軸6への入力ギア比2(ギア11/ギア8)によって構成されており、前記入力ギア比1と入力ギア比2の比は変速段1段分のギア比に設定され、それぞれの減速比はこの例では入力ギア比1>入力ギア比2に設定される。
【0031】
したがって、例えば、1速変速比と2速変速比は次のように表せる。
【0032】
1速変速比=(入力ギア比1×1速ギア比)
2速変速比=(入力ギア比2×2速ギア比)
このように1速ギア31と2速ギア32は、1速ギア比=2速ギア比であっても変速比が異なるようになる。
【0033】
同様に、3速変速比は下記のように表せる。
【0034】
3速変速比=(入力ギア比1×3速ギア比)
=(等比率×入力ギア比2×2速ギア比)
したがって、3速ギア比は下記のようになる。
【0035】
3速ギア比=(等比率×入力ギア比2×2速ギア比/入力ギア比1)
ここで等比率は、
等比率=(入力ギア比2/入力ギア比1)
であり、3速ギア比は下記のように表すことができる。
【0036】
3速ギア比=(等比率の2乗×2速ギア比)
等比率は、実用上は採り得る歯数が整数に限られることから略等比率になるが、例えば、入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定すると約0.78となり、2速ギア比を2.10に設定した場合、前記関係式より3速ギア比は約1.28近辺の歯数比になるよう設定される。
【0037】
次に、変速動作を説明するが、変速段切り替えに際してエンジンの回転数はいずれの変速段においても変速前の回転数のまま行う。図2、図3に基づいて1速走行から2速にアップシフトする場合について説明する。
【0038】
1速走行中は、図2に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ23の雄スプラインが1速ギア31の雌スプライン31aと噛み合った状態にあり、1速走行状態ではエンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中に偶数段中間軸6上のクラッチスリーブ25を2速ギア32に締結するが、締結するには2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数を許容回転差内に同期させる必要がある。2速ギア32は1速走行時に変速出力ギア41を介して1速ギア31、つまり奇数段中間軸5に連結されており、2速ギア32は1速走行時に奇数段中間軸5と等しい回転数で回転している。また、このとき偶数段中間軸6は偶数段主摩擦クラッチ12の引き摺り摩擦によって回転しているので、アップシフトの場合には、シフト先の変速ギアの回転数よりもシフト先の変速ギアが設置されている中間軸の方が回転数は高くなる。このことは入力ギア比1と入力ギア比2,1速ギア比〜8速ギア比などに基づきアップシフト先の変速ギアが設置されている中間軸(奇数段中間軸5または偶数段中間軸6)の回転数を求めることにより明らかなことである。
【0039】
逆に、ダウンシフトの場合には、シフト先の変速ギアの回転数の方がシフト先の変速ギアが設置されている中間軸の回転数よりも高くなる。
【0040】
摩擦クラッチ20を締結(半クラッチ状態を経て)すると奇偶アップシフト用同期ギア19が偶数段中間軸6に連結され、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達されて、奇偶アップシフト用同期ギア19は奇数段主入力ギア7を介して奇数段主伝達ギア9に連結されると共に、奇偶アップシフト用同期ギア19と奇数段主伝達ギア9とが同じ歯数に設定されているので、偶数段中間軸6の回転数は奇数段中間軸5の回転数に減速される。
【0041】
偶数段中間軸6の回転数が奇数段中間軸5と等しくなると、2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数は同期状態になり、この状態でスリーブ25を雌スプライン32aに噛み合わせ、2速ギア32にスプラインクラッチ25を締結する。これにより、2速ギア32は奇数段主摩擦クラッチ10と偶数段主摩擦クラッチ12の切り替えに先立ち、偶数段中間軸6に連結される。
なお、摩擦クラッチ20は2速ギア32にスプラインクラッチ25が締結されると開放される。
【0042】
このように1速走行中に奇偶アップシフト用同期ギア19の摩擦クラッチ20を締結してシフト先の2速ギア32と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結する。1速走行中に2速ギア32へクラッチ25を予備締結しても、偶数段主摩擦クラッチ12が開放されているので偶数段中間軸6へのトルク伝達はない。
【0043】
2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図3に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結しながら奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達されていたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように、2速ギア32を通り変速出力ギア41を介して出力軸4に伝達される。
【0044】
奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると1速ギア31に作用するトルクがなくなるので、スプラインクラッチ23は1速ギア31から抜き取られ締結を外される。このようにして1速走行から2速へのアップシフトが完了する。
【0045】
次に、図4、図5を参照して2速走行から3速にアップシフトする場合について説明する。つまり、変速出力ギア41と噛み合う2速ギア32から変速出力ギア42と噛み合う3速ギア33へのアップシフト変速動作である。
【0046】
2速走行中は、図4に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ25が2速ギア32の雌スプライン32aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。3速にアップシフトするには、変速準備として2速走行中にクラッチスリーブ23を3速ギア33に締結するが、締結するには3速ギア33とスリーブ23を同期状態にする必要がある。3速ギア33は2速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア41を介して2速ギア32、つまり偶数段中間軸6に連結されているので、3速ギア33の回転数は、偶数段中間軸6の回転数÷2速ギア比×3速ギア比となる。前述のように、3速ギア比=等比率の2乗×2速ギア比なので、結果として3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数×等比率の2乗となる。上述の例では等比率を約0.78に設定したので、3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数の約0.61倍となって偶数段中間軸6より小さい回転数で回転している。また、このとき奇数段中間軸5は上述したように奇数段主摩擦クラッチ11の引き摺り摩擦によって回転しており、上述の例では入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定したので、奇数段中間軸5の回転数は偶数段中間軸6の回転数の約0.78倍となり、3速ギア33の回転数より高くなっている。
【0047】
摩擦クラッチ16を締結すると偶奇アップシフト用同期ギア15が奇数段中間軸5に連結され、偶奇アップシフト用同期ギア15は偶奇アップシフト用入力ギア13を介して入力軸3に連結されているので、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。このとき、入力軸3は偶数段入力ギア8を介して偶数段主伝達ギア11に連結されている。
【0048】
偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13とのギア比(同期ギア15/アップシフト用入力ギア13)は、前記等比率に合わせて設定され、前述より3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数×等比率の2乗であり、入力軸3の回転数は偶数段中間軸6の回転数×入力ギア比2であることから、そのギア比は入力ギア比2÷等比率の2乗に設定されている。従って、摩擦クラッチ16を結合すると奇数段中間軸5の回転数は直ちに3速ギア33の回転数まで減速される。
【0049】
奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数まで減速されると、3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数は同期状態となり、この状態でスリーブ23を雌スプライン33aに噛み合わせ、3速ギア33にスプラインクラッチ23を締結する。摩擦クラッチ16は、3速ギア33にスプラインクラッチ23を締結後開放される。
【0050】
このように2速走行中に偶奇アップシフト用同期ギア15の摩擦クラッチ16を半クラッチにしてシフト先の3速ギア33と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結する。なお、2速走行中に3速ギア33へクラッチ23を予備締結しても、奇数段主摩擦クラッチ10が開放されているので奇数段中間軸5へのトルク伝達はない。
【0051】
3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結したならば、図5に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結しながら偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達されていたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは3速ギア33を通り変速出力ギア42を介して全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達される。
【0052】
一方、偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると2速ギア32の伝達トルクがなくなり、スプラインクラッチ25は2速ギア32から抜き取られて締結を外され、2速走行から3速へのアップシフトが完了する。
【0053】
以上説明したように、同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフトと、隣接する変速出力ギア41と42に噛み合う2速ギア32から3速ギア33へのアップシフトはこのように行われるが、3速→4速、5速→6速、7速→8速へのアップシフトおよび2速→3速、4速→5速、6速→7速へのアップシフトも同様に行われる。
【0054】
次に、ダウンシフトの変速動作について図6、図7を参照して説明する。図6、図7は、変速出力ギア43に噛み合いを共有する6速ギア36から5速ギア35へのダウンシフト変速動作を示している。
【0055】
6速走行中は、図6に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ26が6速ギア36の雌スプライン36aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。5速にダウンシフトするには、変速準備として6速走行中にクラッチスリーブ24を5速ギア35に締結するが、締結するには5速ギア35とクラッチスリーブ24を同期状態にする必要がある。5速ギア35は6速走行時に変速出力ギア43を介して6速ギア36、つまり偶数段中間軸6に連結されており、5速ギア35は偶数段中間軸6と等しい回転数で回転している。
【0056】
一方、奇数段中間軸5は奇数段主摩擦クラッチ10の引き摺り摩擦によって回転しているが、その回転数は上述したようにギア比の関係で偶数段中間軸6の回転数より低くなっている。この状態で変速準備のために摩擦クラッチ18を締結すると偶奇ダウンシフト同期ギア17が奇数段中間軸5に連結され、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。
偶奇ダウンシフト用同期ギア17は偶数段主入力ギア8を介して偶数段主伝達ギア11に連結され、かつ、偶奇ダウンシフト用同期ギア17と奇数段主伝達ギア11とが同じ歯数に構成されているので、奇数段中間軸5は、偶数段中間軸6と同じ回転数に増速される。
【0057】
奇数段中間軸5の回転数が偶数段中間軸6と等しくなることによって、5速ギア35とクラッチスリーブ24は同期状態となり、この状態でクラッチスリーブ24を雌スプライン35aに噛み合わせて、5速ギア35にスプラインクラッチ24を締結する。なお、摩擦クラッチ18は、5速ギア35にスプラインクラッチ24が締結されると開放される。
【0058】
このように6速走行中に偶奇ダウンシフト用同期ギア17の摩擦クラッチ18を締結してシフト先の5速ギア35と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、5速ギア35にスプラインクラッチ24を予備締結する。6速走行中に5速ギア35へクラッチ24を予備締結しても、奇数段主摩擦クラッチ10が開放されているので奇数段中間軸5へのトルク伝達はない。
【0059】
5速ギア35にスプラインクラッチ24を予備締結したならば、図7に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結しながら偶数段主摩擦クラッチ12を開放する。これにより、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達していたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように5速ギア35を通り変速出力ギア43を介して出力軸4に伝達される。
【0060】
偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると6速ギア36に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ24は6速ギア36から引き抜かれ締結を外されて6速走行から5速へのダウンシフトが完了する。
【0061】
次に、図8、図9を参照して5速走行から4速にダウンシフトする場合について説明する。つまり、変速出力ギア43と噛み合う5速ギア35から変速出力ギア42と噛み合う4速ギア34へのダウンシフト変速動作である。
【0062】
5速走行中は、図8に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ24が5速ギア35の雌スプライン35aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。4速にダウンシフトするには、変速準備として5速走行中にクラッチスリーブ25を4速ギア34に締結するが、締結するには4速ギア34とスリーブ25を同期状態にする必要がある。4速ギア34は5速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア43を介して5速ギア35、つまり奇数段中間軸5に連結されているので、4速ギア34の回転数は、奇数段中間軸5の回転数÷5速ギア比×4速ギア比となり、5速ギア比=等比率の2乗×4速ギア比なので、結果として4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数÷等比率の2乗となる。この例では等比率を約0.78に設定したので、4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.63倍となって奇数段中間軸5より大きい回転数で回転している。
一方、このとき偶数段中間軸6は偶数段主摩擦クラッチ12の引き摺り摩擦によって回転しており、この例では入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定したので、偶数段中間軸6の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.28倍となり、4速ギア34の回転数より低くなっている。この状態で変速準備のために摩擦クラッチ22を締結すると奇偶ダウンシフト用同期ギア21が偶数段中間軸6に連結され、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。このとき、奇偶ダウンシフト用同期ギア21は奇偶ダウンシフト用入力ギア14を介して入力軸3に連結されており、入力軸3は奇数段入力ギア7を介して奇数段主伝達ギア9に連結されている。
【0063】
奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比は前記等比率に合わせて設定され、前記より4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.63倍となっているので、同期状態を得るには偶数段中間軸6の回転数がこれと等しくなるよう設定すればよく、奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比(同期ギア21/ダウンシフト用入力ギア14)は、等比率の2乗×入力ギア比1に設定されている。これにより、摩擦クラッチ22を結合すると4速ギア34とクラッチスリーブ25の回転数が同期状態になるので、4速ギア34にスプラインクラッチ25が締結される。摩擦クラッチ22は4速ギア34にスプラインクラッチ25が締結されると開放される。
【0064】
このように5速走行中に奇偶ダウンシフト用同期ギア21の摩擦クラッチ22を結合してシフト先の4速ギア34と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、4速ギア34にスプラインクラッチ25を予備締結する。5速走行中に4速ギア34へクラッチ25を予備締結しても、偶数段主摩擦クラッチ12が開放されているので偶数段中間軸6へのトルク伝達はない。
【0065】
4速ギア34にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図9に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結しながら奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達していたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように4速ギア34を通り変速出力ギア42を介して出力軸4に伝達される。奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると5速ギア35の伝達トルクがなくなり、スプラインクラッチ24は5速ギア35から抜き取られ締結を外されて4速へのダウンシフトが完了する。
【0066】
以上説明したように、同一の変速出力ギア43に噛み合いを共有する6速ギア36から5速ギア35へのダウンシフトと、隣接する変速出力ギア43と42に噛み合う5速ギア35から4速ギア34へのダウンシフトはこのように行われるが、8速→7速、4速→3速、2速→1速へのダウンシフトおよび7速→6速、3速→2速へのダウンシフトも同様に行われる。
【0067】
以上のようにしてアップシフトとダウンシフトの変速動作を行うのであるが、理解を容易にするためにその概要を纏めると次のようになる。
【0068】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有する変速段間のアップシフト(1速→2速、3速→4速、5速→6速、7速→8速)は、摩擦クラッチ20を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている偶数段中間軸6の回転数と偶数段変速ギア32、34,36,38の回転数が直ちに同期状態になる。これは奇数段主伝達ギア9と奇偶アップシフト用同期ギア19が同じ歯数に構成されているからであり、速やかに予備締結することができる。
【0069】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有しない隣接する変速段間のアップシフト(2速→3速、4速→5速、6速→7速)は、摩擦クラッチ16を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている奇数段中間軸5の回転数と奇数段変速ギア31、33、35、37の回転数が直ちに同期状態になる。これは偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13とのギア比が入力ギア比2÷等比率の2乗に構成されていることによる。
【0070】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有する変速段間のダウンシフト(8速→7速、6速→5速、4速→3速、2速→1速)は、摩擦クラッチ18を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている奇数段中間軸5の回転数と奇数段変速ギア31、33、35、37の回転数が直ちに同期状態になる。これは偶数段主伝達ギア11と偶奇ダウンシフト用同期ギア17が同じ歯数に構成されていることによる。
【0071】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有しない隣接する変速段間のダウンシフト(7速→6速、5速→4速、3速→2速)は、摩擦クラッチ22を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている偶数段中間軸6の回転数と偶数段変速ギア32、34、36の回転数が直ちに同期状態になる。これは奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比が等比率の2乗×入力ギア比1に構成されていることによる。
【0072】
以上説明したようにアップシフトとダウンシフトの変速動作を行うのであるが、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチを介して入力軸に連結し、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にして噛み合いクラッチを予備締結し、その後シフト先の主摩擦クラッチを完全に結合するので、大きな伝達トルクを必要とする大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる。
【0073】
また、実施例1は4個の同期ギアにそれぞれ付設した同期クラッチを締結するだけでアップシフトとダウンシフトを行え、予備締結のために奇数段と偶数段の両中間軸の回転数を制御する必要がないので、両中間軸の回転数センサを不要にできる実用上の効果を有する。
【0074】
なお、実施例1は雄スプラインを回転軸方向に移動させているが、この移動させるスプラインを雌スプラインに形成し、これと嵌合させる他方を雄スプラインに形成してもよいことは勿論のことである。
【実施例2】
【0075】
図10に本発明の第2の実施例を示す。実施例2は、アップシフトのときに予備締結する変速ギアが設置されている中間軸の回転数をブレーキ装置で減速するようにしたものである。
【0076】
図10において図1と同一符号のものは相当物を示し、奇数段中間軸5の一端には変速機ケーシング29に一方を固定された摩擦ブレーキ装置27が設置され、偶数段中間軸6の一端は変速機ケーシング29に固定された摩擦ブレーキ装置28が設置されている。摩擦ブレーキ装置27、28としては油圧作動の湿式多板ブレーキが用いられる。なお、両中間軸5、6の他端は変速機ケーシング29に回転自在に支持される。
【0077】
次に、図11、図12を参照して1速走行から2速にアップシフトする場合、すなわち同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフト変速動作について説明する。
【0078】
1速走行中は、図11に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ23の雄スプラインが1速ギア31の雌スプライン31aと噛み合った状態にあり、1速走行状態では、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中にクラッチスリーブ25を2速ギア32に締結させるが、 締結するには2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数を許容回転差内に同期させる必要がある。2速ギア32は1速走行時に変速出力ギア41を介して1速ギア31、つまり奇数段中間軸5に連結されており、2速ギア32は1速走行時に奇数段中間軸5と等しい回転数(所定回転数)で回転している。このとき、偶数段中間軸6の回転数は実施例1の説明で記載したように偶数段主摩擦クラッチ11の引き摺り摩擦によって奇数段中間軸5の回転数より高くなっている。
【0079】
一方、クラッチスリーブ25は偶数段中間軸6と一体に回転するが、この回転数は偶数段主摩擦クラッチ12と摩擦ブレーキ装置28の摩擦伝達トルクのバランスによって決まり、油の粘性等によっても変化する。
【0080】
この状態にあるときに偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合すると共に摩擦ブレーキ装置28を作動させ、偶数段中間軸6の回転数が奇数段中間軸5の所定回転数と略等しくなるように該ブレーキ装置の作動油圧を制御する。偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合すると、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達され、偶数段中間軸6と奇数段中間軸5の回転数が略等しくなると2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数は同期状態になり、2速ギア32にスプラインクラッチ25が締結される。
【0081】
このように1速走行中に偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合し、摩擦ブレーキ装置28の作動油圧を調整してシフト先の2速ギア32と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結する。
【0082】
2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図12に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結すると共に奇数段主摩擦クラッチ10を開放する。これにより、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達されていたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように2速ギア32を通り変速出力ギア41を介して出力軸4に伝達される。
【0083】
奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると1速ギア31に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ23は1速ギア31から抜き取られて締結を外され、1速走行から2速へのアップシフトが完了する。
【0084】
次に、図13、図14を参照して2速走行から3速にアップシフトする場合について説明する。つまり、隣接する変速出力ギアに噛み合うアップシフトで、変速出力ギア41と噛み合う2速ギア32から変速出力ギア42と噛み合う3速ギア33へのアップシフト変速動作である。
【0085】
2速走行中は、図13に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ25が2速ギア32の雌スプラインと噛み合った状態にあり、2速走行状態では、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。3速にアップシフトするには、変速準備として2速走行中にクラッチスリーブ23を3速ギア33に締結する。
【0086】
クラッチスリーブ23を3速ギア33に締結するには3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数を同期状態にする必要があるが、3速ギア33は2速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア41を介して2速ギア32、つまり偶数段中間軸6に連結されているので、実施例1の説明で記載したように、3速ギア33の回転数は奇数段中間軸5の回転数より小さくなっている。
【0087】
一方、クラッチスリーブ23は奇数段中間軸5と一体になって回転するが、この回転数は、奇数段主摩擦クラッチ10と摩擦ブレーキ装置27の摩擦伝達トルクのバランスによって決まり、油の粘性等によっても変化する。
【0088】
この状態にあるときに奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合すると共に摩擦ブレーキ装置27を作動させ、奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数と略等しくなるように摩擦ブレーキ装置27の作動油圧を制御する。奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合にすると、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達され、奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数と略等しくなると3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数は同期状態になり、3速ギア33にスプラインクラッチ23が締結される。
【0089】
このように2速走行中に奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合し、摩擦ブレーキ装置27の作動油圧を調整してシフト先の3速ギア33と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結する。
【0090】
3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結したならば、図14に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結すると共に偶数段主摩擦クラッチ12を開放する。これにより、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達されていたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように3速ギア33を通り変速出力ギア42を介して出力軸4に伝達される。
【0091】
偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると2速ギア32に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ25は2速ギア32から抜き取られて締結を外され、3速へのアップシフトが完了する。
【0092】
以上説明したように、同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフトと、隣接する変速出力ギア41と42に噛み合う2速ギア32から3速ギア33へのアップシフトはこのように行われるが、3速→4速、4速→5速、5速→6速、6速→7速、7速→8速へのアップシフトも同様に行われる。
【0093】
なお、実施例2のダウンシフトは、摩擦クラッチ18あるいは摩擦クラッチ22を締結して実施例1と同様に行われるので説明を省略する。
【0094】
実施例2は、実施例1と同様に、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチを介して入力軸に連結し、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にして噛み合いクラッチを予備締結している。したがって、大きな伝達トルクを必要とする大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる。また、アップシフトについては2個の摩擦ブレーキ装置を軸端部に付加するだけで達成できるので、変速機の全長を更に短縮することが可能となり、小型で安価にできるという効果を奏しえる。
【0095】
ここで、上述の実施例1、実施例2は噛み合いクラッチとしてスプラインクラッチを用いた例を挙げているが、これに代えて爪クラッチを用いても同様な効果を奏しえることは勿論のことである。
【0096】
また、上述の実施例は、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にするとしているが、噛み合いクラッチは回転数、位相が若干異なっていても締結できるものであり、同期状態に近い略同期状態で締結するようにしても本発明に含まれることは明らかなことである。
なお、本実施例においては、出力軸の回転方向を反転させる逆転機構の図示を省略したが、入力軸上に設置された奇数段入力ギアと偶数段入力ギアとの間に、後進駆動ギアとこの後進駆動ギアを入力軸に一体に連結する後進用摩擦クラッチとを設け、後進駆動ギアを中間ギアを介して奇数段中間軸と一体回転する後進被動ギアへ噛み合わせるよう構成することによって、入力軸の軸方向空きスペースを有効に活用して逆転機構を設置でき、全長や全幅を伸ばすことなく構成できる利点がある。
【符号の説明】
【0097】
1…エンジン、2…変速機、3…入力軸、4…出力軸、5…奇数段中間軸、6…偶数段中間軸、7…奇数段入力ギア、8…偶数段入力ギア、9…奇数段主伝達ギア、10…奇数段主摩擦クラッチ、11…偶数段主伝達ギア、12…偶数段主摩擦クラッチ、13…偶奇アップシフト用入力ギア、14…奇偶ダウンシフト用入力ギア、15…偶奇アップシフト用同期ギア16、18、20、22…摩擦クラッチ、17…偶奇アップシフト用同期ギア、19…奇偶アップシフト用同期ギア、21…奇偶ダウンシフト用同期ギア、23〜26…クラッチスリーブ、27、28…摩擦ブレーキ装置、31…1速ギア、33…3速ギア、35…5速ギア、37…7速ギア、32…2速ギア、34…4速ギア、36…6速ギア、38…8速ギア、41〜44…変速出力ギア。
【技術分野】
【0001】
本発明は大型トラック、大型特殊作業車両など高馬力のエンジンを搭載した大型車両に適したツインクラッチ式変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドグクラッチやスプラインクラッチなどに代表される噛み合いクラッチは、結合したら結合状態を維持するのに油圧のような動力を必要としないので、エンジンの動力を効率良く出力側に伝達することができることから乗用車用の変速機などに使用されている。
【0003】
これらの噛み合いクラッチは、クラッチ結合時に駆動側と被動側の回転数を同期させる必要があり、乗用車用の変速機では一般的に同期装置としてテーパコーンの摩擦力を利用したシンクロメッシュ機構が用いられている。加えて、エンジン回転数を制御し、結合するクラッチの駆動側と被動側の回転差を所定値内に抑えて切り替えショックの低減とクラッチの破損防止を図っており、このようなシンクロメッシュ機構を用いた自動車用のツインクラッチ式変速機は、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
また、ダンプトラック等の大型車両に好適な油圧作動式摩擦クラッチを用いた変速機としては、例えば特許文献2に記載されるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-240832号公報
【特許文献2】特開2007-303519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大きな伝達トルクを必要とするため高馬力のエンジンを搭載した大型車両の変速機においては、伝達トルクに見合った大きな同期容量を備えたシンクロメッシュ機構(同期装置)が必要とされ、乗用車用の変速機で使用されているような既存のシンクロメッシュ機構は構造、強度的に高馬力(大トルク)を伝達することが難しく、耐久性、信頼性の面から使用困難である。加えて、エンジンが大きくなると慣性も大きくなり、エンジン回転数を制御して同期を早めようとしても回転数を瞬時に変化させるのが困難で、指令信号に対する追従性と変速時における頻繁なエンジン回転吹き上げに伴う騒音増大の問題もあって、大型車両用の変速機においては一般的に油圧作動式摩擦クラッチが採用されており、速度段切り替え時に個々のクラッチを滑らかに結合して必要とする速度段を得ている。すなわち、前段変速ギアのクラッチを開放してからシフト先の次段変速ギアのクラッチを滑らせながら順次結合させてシフトアップ又はシフトダウンするので変速時間を短縮するために高精度なクラッチ制御システムと多くの油圧機器を必要とする難点がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる、コンパクトなツインクラッチ式変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンに接続される入力軸と、前記入力軸と並列に配置された奇数段中間軸及び偶数段中間軸と、前記中間軸間と並列に配置された出力軸と、前記入力軸に固着され入力軸の回転を中間軸に伝達する奇数段入力ギア及び偶数段入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された奇数段主伝達ギアと、前記奇数段主伝達ギアを前記奇数段中間軸に連結する奇数段主摩擦クラッチと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された偶数段主伝達ギアと、前記偶数段主伝達ギアを前記偶数段中間軸に連結する偶数段主摩擦クラッチと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された複数の奇数段変速ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された複数の偶数段変速ギアと、前記奇数段変速ギアの1つと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアが噛み合うように出力軸に固着配設された複数の出力ギアと、前記奇数段中間軸及び偶数段中間軸に設けられて中間軸と前記変速ギアを選択的に結合する噛み合いクラッチとを具備し、同一の前記出力ギアに噛み合う前記奇数段変速ギアと前記偶数段変速ギアを同じ歯数に設定し、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分になるように、前記奇数段入力ギア列と前記偶数段入力ギア列のギア比を設定し、シフト先の変速ギアが設置された中間軸を摩擦クラッチを介して前記入力軸に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期させる噛み合いクラッチ同期化機構を設け、変速段切り替えに先立って前記シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するものである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の変速機の噛み合いクラッチ同期化機構は、入力軸に固着された偶奇アップシフト用入力ギアおよび奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶奇アップシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置されて前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアとを具備するものである。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の変速機の噛み合いクラッチ同期化機構は、入力軸に固着された奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置され、前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸及び前記偶数段中間軸に設けられた摩擦ブレーキとを具備するものである。
【0010】
ここで、本明細書においては、隣り合う変速段間の変速比の比を等比率配分にするとしているが、実際には変速ギアと変速出力ギアの歯数の関係で略等比率にして実用に供されている。以後、説明の便宜上、等比率として説明するが、略等比率も含むものである。
また、本明細書においては、奇数段の変速ギアから偶数段の変速ギアへのアップシフトを奇偶アップシフト、ダウンシフトを奇偶ダウンシフトと称し、偶数段の変速ギアから奇数段の変速ギアへのアップシフトを偶奇アップシフト、ダウンシフトを偶奇ダウンシフトと称する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時に、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチと歯車列を介して入力軸に連結し、走行中にシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にしてシフト先の噛み合いクラッチを予備締結し、エンジンのから動力を摩擦クラッチ介して噛み合いクラッチ部に伝達するので、高馬力のエンジンを搭載した大型車両用に適用できる、エンジンの回転数を制御して同期させることなく簡素な構成でショックなく素早い変速が可能なコンパクトな変速機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】第1の実施例の動作説明図である。
【図3】第1の実施例の動作説明図である。
【図4】第1の実施例の動作説明図である。
【図5】第1の実施例の動作説明図である。
【図6】第1の実施例の動作説明図である。
【図7】第1の実施例の動作説明図である。
【図8】第1の実施例の動作説明図である。
【図9】第1の実施例の動作説明図である。
【図10】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図11】第2の実施例の動作説明図である。
【図12】第2の実施例の動作説明図である。
【図13】第2の実施例の動作説明図である。
【図14】第2の実施例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に本発明の第1の実施例を示す。図1に示す変速機は噛み合いクラッチとしてスプラインクラッチを用いており、1速から8速まで変速する例を示している。なお、後退ギア本発明の要旨に直接関係ないので図示を省略している。
【0015】
図1において、エンジン1の出力は変速機2の入力軸3に入力される。入力軸3には奇数段入力ギア7、偶数段入力ギア8、偶奇アップシフト用入力ギア13及び奇偶ダウンシフト用入力ギア14が固着されている。入力軸3と並列に奇数段中間軸5と偶数段中間軸6が配置されていて、奇数段中間軸5には奇数段主伝達ギア9が回転自在に設置され奇数段入力ギア7と噛み合うように配設されている。奇数段主伝達ギア9には奇数段中間軸5に連結するための奇数段主摩擦クラッチ10が設けられている。なお、奇数段主摩擦クラッチ10の中間軸固着部材は図示しない後進被動ギアと一体に形成されている。
【0016】
偶数段中間軸6には、軸に回転自在に設置され偶数段入力ギア8に噛み合う偶数段主伝達ギア11が設けられていて、偶数段主伝達ギア11には偶数段中間軸6に連結するための偶数段主摩擦クラッチ12が設けられている。前記奇数段主摩擦クラッチ10と偶数段主摩擦クラッチ12は油圧作動式を用いており作動油の供給によって摩擦プレートが圧接され、油圧を上昇させると摩擦力が増加してクラッチの伝達トルクが増大する。
【0017】
偶奇アップシフト用同期ギア15は偶奇アップシフト用入力ギア13と噛み合い奇数段中間軸5に回転自在に設置されていて、付設された摩擦クラッチ16の結合により奇数段中間軸5に連結される。また、奇数段中間軸5には偶数段入力ギア8と噛み合う偶奇ダウンシフト用同期ギア17が回転自在に設置されていて、偶奇ダウンシフト用同期ギア17は付設された摩擦クラッチ18の結合により奇数段中間軸5に連結される。
【0018】
奇偶アップシフト用同期ギア19は奇数段入力ギア7と噛み合い偶数段中間軸6に回転自在に設置されていて、付設された摩擦クラッチ20の結合により偶数段中間軸6に連結される。また、偶数段中間軸6には奇偶ダウンシフト用入力ギア14と噛み合う奇偶ダウンシフト用同期ギア21が回転自在に設置されていて、奇偶ダウンシフト用同期ギア21は付設された摩擦クラッチ22の結合により偶数段中間軸6に連結される。これらの摩擦クラッチ16、18、20、22も前記摩擦クラッチ10、12と同様に油圧作動式が用いられている。
【0019】
奇偶アップシフト用同期ギア19と奇数段主伝達ギア9および偶奇ダウンシフト用同期ギア17と偶数段主伝達ギア11は同じ歯数に構成され、また、偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13ギア比は、隣接した変速段間の変速比の比である等比率の2乗に反比例した値となるような歯数に構成され、奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14のギア比は、隣接した変速段間の変速比の比である等比率の2乗に比例した値となるような歯数に構成されている。
【0020】
偶奇アップシフト用入力ギア13、奇偶ダウンシフト用入力ギア14、同期ギア15、17、19、21およびこれらの同期ギア15、17、19、21に付設された摩擦クラッチ16、18、20、22は、後述する噛み合いクラッチの回転数を同期状態にするために本発明によって設けた同期化機構を構成する。
【0021】
奇数段中間軸5には複数段(4段)の奇数段変速ギアが回転自在に設置されていて、奇数段変速ギアは1速ギア31、3速ギア33、5速ギア35、7速ギア37から成る。同様に、偶数段中間軸6には2速ギア32、4速ギア34、6速ギア36、8速ギア38から成る複数段の偶数段変速ギアが回転自在に設置されている。
【0022】
1速ギア31と2速ギア32は変速出力ギア41に噛み合い、3速ギア33と4速ギア34は変速出力ギア42に噛み合い、5速ギア35と6速ギア36は変速出力ギア43に噛み合い、7速ギア37と8速ギア38は変速出力ギア44に噛み合うように構成されていて、各変速出力ギア41〜44は出力軸4に固定されている。
【0023】
このように1つの奇数段変速ギアと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアは同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有しており、同一の変速出力ギア41〜44に噛み合う奇数段変速ギアと偶数段変速ギアは同じ歯数に設定されている。
【0024】
奇数段中間軸5には1速ギア31と3速ギア33あるいは5速ギア35と7速ギア37を切り替えるための噛み合い歯がスプラインから成るスプラインクラッチが設置されていて、1速ギア31と3速ギア33にはスプラインクラッチの一方の噛み合い歯である雌スプライン31a、33aが形成され、他方の噛み合い歯である雄スプラインは奇数段中間軸5に軸方向への移動自在に装着されたスリーブ23に形成されている。同様に、5速ギア35と7速ギア37にも雌スプライン35a、37aが形成され、5速ギア35と7速ギア37間の奇数段中間軸5にスリーブ24が軸方向への移動自在に設置されている。
【0025】
偶数段中間軸6には2速ギア32と4速ギア34あるいは6速ギア36と8速ギア38を切り替えるためのスプラインクラッチが奇数段中間軸5と同様に設置されている。すなわち、2速ギア32、4速ギア34、6速ギア36および8速ギア38にはそれぞれ雌スプライン31a、33a、36a、38aが形成され、2速ギア32と4速ギア34間および6速ギア36と8速ギア38間の偶数段中間軸6にスリーブ25、26が軸方向に移動自在に設置されている。
【0026】
スプラインクラッチは、1速ギア31と3速ギア33についてみると、中間軸(回転軸)5、雌スプライン31a、33a、スリーブ(雄スプライン)23で構成され、スリーブ23は図示しないシフトフォークにより回転軸5の左右軸方向に移動して、1速ギア31の雌スプライン31a又は3速ギア33の雌スプライン33aと噛み合うことで、変速ギア段を切り替えることができる。5速ギア35と7速ギア37、2速ギア32と4速ギア34、6速ギア36と8速ギア38についても同様である。
【0027】
なお、以後、スリーブ23〜26のことをクラッチスリーブ、スプラインクラッチと称することもある。
【0028】
また、スプラインクラッチとしては、本出願人が先に特願2007−278831号で提案しているように、雄雌の両スプラインが、所定個数毎のスプライン歯を嵌挿側面側へ軸方向に突出した嵌合案内歯(先導案内歯)を形成したものを用いるのが望ましい。
【0029】
本実施例の構成において、選択した速度段のスプラインクラッチと主摩擦クラッチ(10又は12)を結合した状態における変速機2の入力軸3の回転数Niと出力軸4の回転数Noの比(Ni/No)を変速比と称し、1速から8速までの隣り合う速度段間の変速比の比が等比となるように設定されている。
【0030】
ここで、各変速ギア部のギア比は、同一の変速出力ギア41〜44に噛み合いを共有しているので次のようになる
1速ギア比=(ギア41/ギア31)=2速ギア比=(ギア41/ギア32)
3速ギア比=(ギア42/ギア33)=4速ギア比=(ギア42/ギア34)
5速ギア比=(ギア43/ギア35)=6速ギア比=(ギア43/ギア36)
7速ギア比=(ギア44/ギア37)=8速ギア比=(ギア44/ギア38)
各速度段の変速比は、前記変速ギア比と奇数段中間軸5への入力ギア比1(ギア9/ギア7)、又は前記変速ギア比と偶数段中間軸6への入力ギア比2(ギア11/ギア8)によって構成されており、前記入力ギア比1と入力ギア比2の比は変速段1段分のギア比に設定され、それぞれの減速比はこの例では入力ギア比1>入力ギア比2に設定される。
【0031】
したがって、例えば、1速変速比と2速変速比は次のように表せる。
【0032】
1速変速比=(入力ギア比1×1速ギア比)
2速変速比=(入力ギア比2×2速ギア比)
このように1速ギア31と2速ギア32は、1速ギア比=2速ギア比であっても変速比が異なるようになる。
【0033】
同様に、3速変速比は下記のように表せる。
【0034】
3速変速比=(入力ギア比1×3速ギア比)
=(等比率×入力ギア比2×2速ギア比)
したがって、3速ギア比は下記のようになる。
【0035】
3速ギア比=(等比率×入力ギア比2×2速ギア比/入力ギア比1)
ここで等比率は、
等比率=(入力ギア比2/入力ギア比1)
であり、3速ギア比は下記のように表すことができる。
【0036】
3速ギア比=(等比率の2乗×2速ギア比)
等比率は、実用上は採り得る歯数が整数に限られることから略等比率になるが、例えば、入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定すると約0.78となり、2速ギア比を2.10に設定した場合、前記関係式より3速ギア比は約1.28近辺の歯数比になるよう設定される。
【0037】
次に、変速動作を説明するが、変速段切り替えに際してエンジンの回転数はいずれの変速段においても変速前の回転数のまま行う。図2、図3に基づいて1速走行から2速にアップシフトする場合について説明する。
【0038】
1速走行中は、図2に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ23の雄スプラインが1速ギア31の雌スプライン31aと噛み合った状態にあり、1速走行状態ではエンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中に偶数段中間軸6上のクラッチスリーブ25を2速ギア32に締結するが、締結するには2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数を許容回転差内に同期させる必要がある。2速ギア32は1速走行時に変速出力ギア41を介して1速ギア31、つまり奇数段中間軸5に連結されており、2速ギア32は1速走行時に奇数段中間軸5と等しい回転数で回転している。また、このとき偶数段中間軸6は偶数段主摩擦クラッチ12の引き摺り摩擦によって回転しているので、アップシフトの場合には、シフト先の変速ギアの回転数よりもシフト先の変速ギアが設置されている中間軸の方が回転数は高くなる。このことは入力ギア比1と入力ギア比2,1速ギア比〜8速ギア比などに基づきアップシフト先の変速ギアが設置されている中間軸(奇数段中間軸5または偶数段中間軸6)の回転数を求めることにより明らかなことである。
【0039】
逆に、ダウンシフトの場合には、シフト先の変速ギアの回転数の方がシフト先の変速ギアが設置されている中間軸の回転数よりも高くなる。
【0040】
摩擦クラッチ20を締結(半クラッチ状態を経て)すると奇偶アップシフト用同期ギア19が偶数段中間軸6に連結され、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達されて、奇偶アップシフト用同期ギア19は奇数段主入力ギア7を介して奇数段主伝達ギア9に連結されると共に、奇偶アップシフト用同期ギア19と奇数段主伝達ギア9とが同じ歯数に設定されているので、偶数段中間軸6の回転数は奇数段中間軸5の回転数に減速される。
【0041】
偶数段中間軸6の回転数が奇数段中間軸5と等しくなると、2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数は同期状態になり、この状態でスリーブ25を雌スプライン32aに噛み合わせ、2速ギア32にスプラインクラッチ25を締結する。これにより、2速ギア32は奇数段主摩擦クラッチ10と偶数段主摩擦クラッチ12の切り替えに先立ち、偶数段中間軸6に連結される。
なお、摩擦クラッチ20は2速ギア32にスプラインクラッチ25が締結されると開放される。
【0042】
このように1速走行中に奇偶アップシフト用同期ギア19の摩擦クラッチ20を締結してシフト先の2速ギア32と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結する。1速走行中に2速ギア32へクラッチ25を予備締結しても、偶数段主摩擦クラッチ12が開放されているので偶数段中間軸6へのトルク伝達はない。
【0043】
2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図3に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結しながら奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達されていたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように、2速ギア32を通り変速出力ギア41を介して出力軸4に伝達される。
【0044】
奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると1速ギア31に作用するトルクがなくなるので、スプラインクラッチ23は1速ギア31から抜き取られ締結を外される。このようにして1速走行から2速へのアップシフトが完了する。
【0045】
次に、図4、図5を参照して2速走行から3速にアップシフトする場合について説明する。つまり、変速出力ギア41と噛み合う2速ギア32から変速出力ギア42と噛み合う3速ギア33へのアップシフト変速動作である。
【0046】
2速走行中は、図4に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ25が2速ギア32の雌スプライン32aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。3速にアップシフトするには、変速準備として2速走行中にクラッチスリーブ23を3速ギア33に締結するが、締結するには3速ギア33とスリーブ23を同期状態にする必要がある。3速ギア33は2速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア41を介して2速ギア32、つまり偶数段中間軸6に連結されているので、3速ギア33の回転数は、偶数段中間軸6の回転数÷2速ギア比×3速ギア比となる。前述のように、3速ギア比=等比率の2乗×2速ギア比なので、結果として3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数×等比率の2乗となる。上述の例では等比率を約0.78に設定したので、3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数の約0.61倍となって偶数段中間軸6より小さい回転数で回転している。また、このとき奇数段中間軸5は上述したように奇数段主摩擦クラッチ11の引き摺り摩擦によって回転しており、上述の例では入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定したので、奇数段中間軸5の回転数は偶数段中間軸6の回転数の約0.78倍となり、3速ギア33の回転数より高くなっている。
【0047】
摩擦クラッチ16を締結すると偶奇アップシフト用同期ギア15が奇数段中間軸5に連結され、偶奇アップシフト用同期ギア15は偶奇アップシフト用入力ギア13を介して入力軸3に連結されているので、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。このとき、入力軸3は偶数段入力ギア8を介して偶数段主伝達ギア11に連結されている。
【0048】
偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13とのギア比(同期ギア15/アップシフト用入力ギア13)は、前記等比率に合わせて設定され、前述より3速ギア33の回転数は偶数段中間軸6の回転数×等比率の2乗であり、入力軸3の回転数は偶数段中間軸6の回転数×入力ギア比2であることから、そのギア比は入力ギア比2÷等比率の2乗に設定されている。従って、摩擦クラッチ16を結合すると奇数段中間軸5の回転数は直ちに3速ギア33の回転数まで減速される。
【0049】
奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数まで減速されると、3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数は同期状態となり、この状態でスリーブ23を雌スプライン33aに噛み合わせ、3速ギア33にスプラインクラッチ23を締結する。摩擦クラッチ16は、3速ギア33にスプラインクラッチ23を締結後開放される。
【0050】
このように2速走行中に偶奇アップシフト用同期ギア15の摩擦クラッチ16を半クラッチにしてシフト先の3速ギア33と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結する。なお、2速走行中に3速ギア33へクラッチ23を予備締結しても、奇数段主摩擦クラッチ10が開放されているので奇数段中間軸5へのトルク伝達はない。
【0051】
3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結したならば、図5に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結しながら偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達されていたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは3速ギア33を通り変速出力ギア42を介して全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達される。
【0052】
一方、偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると2速ギア32の伝達トルクがなくなり、スプラインクラッチ25は2速ギア32から抜き取られて締結を外され、2速走行から3速へのアップシフトが完了する。
【0053】
以上説明したように、同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフトと、隣接する変速出力ギア41と42に噛み合う2速ギア32から3速ギア33へのアップシフトはこのように行われるが、3速→4速、5速→6速、7速→8速へのアップシフトおよび2速→3速、4速→5速、6速→7速へのアップシフトも同様に行われる。
【0054】
次に、ダウンシフトの変速動作について図6、図7を参照して説明する。図6、図7は、変速出力ギア43に噛み合いを共有する6速ギア36から5速ギア35へのダウンシフト変速動作を示している。
【0055】
6速走行中は、図6に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ26が6速ギア36の雌スプライン36aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。5速にダウンシフトするには、変速準備として6速走行中にクラッチスリーブ24を5速ギア35に締結するが、締結するには5速ギア35とクラッチスリーブ24を同期状態にする必要がある。5速ギア35は6速走行時に変速出力ギア43を介して6速ギア36、つまり偶数段中間軸6に連結されており、5速ギア35は偶数段中間軸6と等しい回転数で回転している。
【0056】
一方、奇数段中間軸5は奇数段主摩擦クラッチ10の引き摺り摩擦によって回転しているが、その回転数は上述したようにギア比の関係で偶数段中間軸6の回転数より低くなっている。この状態で変速準備のために摩擦クラッチ18を締結すると偶奇ダウンシフト同期ギア17が奇数段中間軸5に連結され、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。
偶奇ダウンシフト用同期ギア17は偶数段主入力ギア8を介して偶数段主伝達ギア11に連結され、かつ、偶奇ダウンシフト用同期ギア17と奇数段主伝達ギア11とが同じ歯数に構成されているので、奇数段中間軸5は、偶数段中間軸6と同じ回転数に増速される。
【0057】
奇数段中間軸5の回転数が偶数段中間軸6と等しくなることによって、5速ギア35とクラッチスリーブ24は同期状態となり、この状態でクラッチスリーブ24を雌スプライン35aに噛み合わせて、5速ギア35にスプラインクラッチ24を締結する。なお、摩擦クラッチ18は、5速ギア35にスプラインクラッチ24が締結されると開放される。
【0058】
このように6速走行中に偶奇ダウンシフト用同期ギア17の摩擦クラッチ18を締結してシフト先の5速ギア35と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、5速ギア35にスプラインクラッチ24を予備締結する。6速走行中に5速ギア35へクラッチ24を予備締結しても、奇数段主摩擦クラッチ10が開放されているので奇数段中間軸5へのトルク伝達はない。
【0059】
5速ギア35にスプラインクラッチ24を予備締結したならば、図7に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結しながら偶数段主摩擦クラッチ12を開放する。これにより、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達していたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように5速ギア35を通り変速出力ギア43を介して出力軸4に伝達される。
【0060】
偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると6速ギア36に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ24は6速ギア36から引き抜かれ締結を外されて6速走行から5速へのダウンシフトが完了する。
【0061】
次に、図8、図9を参照して5速走行から4速にダウンシフトする場合について説明する。つまり、変速出力ギア43と噛み合う5速ギア35から変速出力ギア42と噛み合う4速ギア34へのダウンシフト変速動作である。
【0062】
5速走行中は、図8に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ24が5速ギア35の雌スプライン35aと噛み合った状態にあり、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。4速にダウンシフトするには、変速準備として5速走行中にクラッチスリーブ25を4速ギア34に締結するが、締結するには4速ギア34とスリーブ25を同期状態にする必要がある。4速ギア34は5速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア43を介して5速ギア35、つまり奇数段中間軸5に連結されているので、4速ギア34の回転数は、奇数段中間軸5の回転数÷5速ギア比×4速ギア比となり、5速ギア比=等比率の2乗×4速ギア比なので、結果として4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数÷等比率の2乗となる。この例では等比率を約0.78に設定したので、4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.63倍となって奇数段中間軸5より大きい回転数で回転している。
一方、このとき偶数段中間軸6は偶数段主摩擦クラッチ12の引き摺り摩擦によって回転しており、この例では入力ギア比1=2.00、入力ギア比2=1.567に設定したので、偶数段中間軸6の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.28倍となり、4速ギア34の回転数より低くなっている。この状態で変速準備のために摩擦クラッチ22を締結すると奇偶ダウンシフト用同期ギア21が偶数段中間軸6に連結され、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達される。このとき、奇偶ダウンシフト用同期ギア21は奇偶ダウンシフト用入力ギア14を介して入力軸3に連結されており、入力軸3は奇数段入力ギア7を介して奇数段主伝達ギア9に連結されている。
【0063】
奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比は前記等比率に合わせて設定され、前記より4速ギア34の回転数は奇数段中間軸5の回転数の約1.63倍となっているので、同期状態を得るには偶数段中間軸6の回転数がこれと等しくなるよう設定すればよく、奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比(同期ギア21/ダウンシフト用入力ギア14)は、等比率の2乗×入力ギア比1に設定されている。これにより、摩擦クラッチ22を結合すると4速ギア34とクラッチスリーブ25の回転数が同期状態になるので、4速ギア34にスプラインクラッチ25が締結される。摩擦クラッチ22は4速ギア34にスプラインクラッチ25が締結されると開放される。
【0064】
このように5速走行中に奇偶ダウンシフト用同期ギア21の摩擦クラッチ22を結合してシフト先の4速ギア34と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、4速ギア34にスプラインクラッチ25を予備締結する。5速走行中に4速ギア34へクラッチ25を予備締結しても、偶数段主摩擦クラッチ12が開放されているので偶数段中間軸6へのトルク伝達はない。
【0065】
4速ギア34にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図9に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結しながら奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達していたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように4速ギア34を通り変速出力ギア42を介して出力軸4に伝達される。奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると5速ギア35の伝達トルクがなくなり、スプラインクラッチ24は5速ギア35から抜き取られ締結を外されて4速へのダウンシフトが完了する。
【0066】
以上説明したように、同一の変速出力ギア43に噛み合いを共有する6速ギア36から5速ギア35へのダウンシフトと、隣接する変速出力ギア43と42に噛み合う5速ギア35から4速ギア34へのダウンシフトはこのように行われるが、8速→7速、4速→3速、2速→1速へのダウンシフトおよび7速→6速、3速→2速へのダウンシフトも同様に行われる。
【0067】
以上のようにしてアップシフトとダウンシフトの変速動作を行うのであるが、理解を容易にするためにその概要を纏めると次のようになる。
【0068】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有する変速段間のアップシフト(1速→2速、3速→4速、5速→6速、7速→8速)は、摩擦クラッチ20を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている偶数段中間軸6の回転数と偶数段変速ギア32、34,36,38の回転数が直ちに同期状態になる。これは奇数段主伝達ギア9と奇偶アップシフト用同期ギア19が同じ歯数に構成されているからであり、速やかに予備締結することができる。
【0069】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有しない隣接する変速段間のアップシフト(2速→3速、4速→5速、6速→7速)は、摩擦クラッチ16を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている奇数段中間軸5の回転数と奇数段変速ギア31、33、35、37の回転数が直ちに同期状態になる。これは偶奇アップシフト用同期ギア15と偶奇アップシフト用入力ギア13とのギア比が入力ギア比2÷等比率の2乗に構成されていることによる。
【0070】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有する変速段間のダウンシフト(8速→7速、6速→5速、4速→3速、2速→1速)は、摩擦クラッチ18を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている奇数段中間軸5の回転数と奇数段変速ギア31、33、35、37の回転数が直ちに同期状態になる。これは偶数段主伝達ギア11と偶奇ダウンシフト用同期ギア17が同じ歯数に構成されていることによる。
【0071】
同一の変速出力ギアに噛み合いを共有しない隣接する変速段間のダウンシフト(7速→6速、5速→4速、3速→2速)は、摩擦クラッチ22を締結するとシフト先の変速ギアが設置されている偶数段中間軸6の回転数と偶数段変速ギア32、34、36の回転数が直ちに同期状態になる。これは奇偶ダウンシフト用同期ギア21と奇偶ダウンシフト用入力ギア14とのギア比が等比率の2乗×入力ギア比1に構成されていることによる。
【0072】
以上説明したようにアップシフトとダウンシフトの変速動作を行うのであるが、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチを介して入力軸に連結し、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にして噛み合いクラッチを予備締結し、その後シフト先の主摩擦クラッチを完全に結合するので、大きな伝達トルクを必要とする大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる。
【0073】
また、実施例1は4個の同期ギアにそれぞれ付設した同期クラッチを締結するだけでアップシフトとダウンシフトを行え、予備締結のために奇数段と偶数段の両中間軸の回転数を制御する必要がないので、両中間軸の回転数センサを不要にできる実用上の効果を有する。
【0074】
なお、実施例1は雄スプラインを回転軸方向に移動させているが、この移動させるスプラインを雌スプラインに形成し、これと嵌合させる他方を雄スプラインに形成してもよいことは勿論のことである。
【実施例2】
【0075】
図10に本発明の第2の実施例を示す。実施例2は、アップシフトのときに予備締結する変速ギアが設置されている中間軸の回転数をブレーキ装置で減速するようにしたものである。
【0076】
図10において図1と同一符号のものは相当物を示し、奇数段中間軸5の一端には変速機ケーシング29に一方を固定された摩擦ブレーキ装置27が設置され、偶数段中間軸6の一端は変速機ケーシング29に固定された摩擦ブレーキ装置28が設置されている。摩擦ブレーキ装置27、28としては油圧作動の湿式多板ブレーキが用いられる。なお、両中間軸5、6の他端は変速機ケーシング29に回転自在に支持される。
【0077】
次に、図11、図12を参照して1速走行から2速にアップシフトする場合、すなわち同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフト変速動作について説明する。
【0078】
1速走行中は、図11に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結して奇数段主伝達ギア9を奇数段中間軸5に連結し、クラッチスリーブ23の雄スプラインが1速ギア31の雌スプライン31aと噛み合った状態にあり、1速走行状態では、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。2速にアップシフトするには、変速準備として1速走行中にクラッチスリーブ25を2速ギア32に締結させるが、 締結するには2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数を許容回転差内に同期させる必要がある。2速ギア32は1速走行時に変速出力ギア41を介して1速ギア31、つまり奇数段中間軸5に連結されており、2速ギア32は1速走行時に奇数段中間軸5と等しい回転数(所定回転数)で回転している。このとき、偶数段中間軸6の回転数は実施例1の説明で記載したように偶数段主摩擦クラッチ11の引き摺り摩擦によって奇数段中間軸5の回転数より高くなっている。
【0079】
一方、クラッチスリーブ25は偶数段中間軸6と一体に回転するが、この回転数は偶数段主摩擦クラッチ12と摩擦ブレーキ装置28の摩擦伝達トルクのバランスによって決まり、油の粘性等によっても変化する。
【0080】
この状態にあるときに偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合すると共に摩擦ブレーキ装置28を作動させ、偶数段中間軸6の回転数が奇数段中間軸5の所定回転数と略等しくなるように該ブレーキ装置の作動油圧を制御する。偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合すると、偶数段中間軸6には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達され、偶数段中間軸6と奇数段中間軸5の回転数が略等しくなると2速ギア32とクラッチスリーブ25の回転数は同期状態になり、2速ギア32にスプラインクラッチ25が締結される。
【0081】
このように1速走行中に偶数段主摩擦クラッチ12を半クラッチ状態に結合し、摩擦ブレーキ装置28の作動油圧を調整してシフト先の2速ギア32と偶数段中間軸6の回転数を同期状態にし、2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結する。
【0082】
2速ギア32にスプラインクラッチ25を予備締結したならば、図12に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結すると共に奇数段主摩擦クラッチ10を開放する。これにより、エンジン1から奇数段中間軸5に伝達されていたトルクは偶数段中間軸6に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように2速ギア32を通り変速出力ギア41を介して出力軸4に伝達される。
【0083】
奇数段主摩擦クラッチ10を開放すると1速ギア31に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ23は1速ギア31から抜き取られて締結を外され、1速走行から2速へのアップシフトが完了する。
【0084】
次に、図13、図14を参照して2速走行から3速にアップシフトする場合について説明する。つまり、隣接する変速出力ギアに噛み合うアップシフトで、変速出力ギア41と噛み合う2速ギア32から変速出力ギア42と噛み合う3速ギア33へのアップシフト変速動作である。
【0085】
2速走行中は、図13に示すように、偶数段主摩擦クラッチ12を締結して偶数段主伝達ギア11を偶数段中間軸6に連結し、クラッチスリーブ25が2速ギア32の雌スプラインと噛み合った状態にあり、2速走行状態では、エンジン1の全トルクが太線点線矢印で示す経路で出力軸4に伝達されている。3速にアップシフトするには、変速準備として2速走行中にクラッチスリーブ23を3速ギア33に締結する。
【0086】
クラッチスリーブ23を3速ギア33に締結するには3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数を同期状態にする必要があるが、3速ギア33は2速走行時に変速出力ギア42、出力軸4、変速出力ギア41を介して2速ギア32、つまり偶数段中間軸6に連結されているので、実施例1の説明で記載したように、3速ギア33の回転数は奇数段中間軸5の回転数より小さくなっている。
【0087】
一方、クラッチスリーブ23は奇数段中間軸5と一体になって回転するが、この回転数は、奇数段主摩擦クラッチ10と摩擦ブレーキ装置27の摩擦伝達トルクのバランスによって決まり、油の粘性等によっても変化する。
【0088】
この状態にあるときに奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合すると共に摩擦ブレーキ装置27を作動させ、奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数と略等しくなるように摩擦ブレーキ装置27の作動油圧を制御する。奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合にすると、奇数段中間軸5には入力軸3から細線点線矢印で示すようにトルクが伝達され、奇数段中間軸5の回転数が3速ギア33の回転数と略等しくなると3速ギア33とクラッチスリーブ23の回転数は同期状態になり、3速ギア33にスプラインクラッチ23が締結される。
【0089】
このように2速走行中に奇数段主摩擦クラッチ10を半クラッチ状態に結合し、摩擦ブレーキ装置27の作動油圧を調整してシフト先の3速ギア33と奇数段中間軸5の回転数を同期状態にし、3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結する。
【0090】
3速ギア33にスプラインクラッチ23を予備締結したならば、図14に示すように、奇数段主摩擦クラッチ10を締結すると共に偶数段主摩擦クラッチ12を開放する。これにより、エンジン1から偶数段中間軸6に伝達されていたトルクは奇数段中間軸5に移行し、エンジン1の全トルクは太線点線矢印で示すように3速ギア33を通り変速出力ギア42を介して出力軸4に伝達される。
【0091】
偶数段主摩擦クラッチ12を開放すると2速ギア32に作用するトルクがなくなり、スプラインクラッチ25は2速ギア32から抜き取られて締結を外され、3速へのアップシフトが完了する。
【0092】
以上説明したように、同一の変速出力ギア41に噛み合いを共有する1速ギア31から2速ギア32へのアップシフトと、隣接する変速出力ギア41と42に噛み合う2速ギア32から3速ギア33へのアップシフトはこのように行われるが、3速→4速、4速→5速、5速→6速、6速→7速、7速→8速へのアップシフトも同様に行われる。
【0093】
なお、実施例2のダウンシフトは、摩擦クラッチ18あるいは摩擦クラッチ22を締結して実施例1と同様に行われるので説明を省略する。
【0094】
実施例2は、実施例1と同様に、奇数段変速ギアと偶数段変速ギアの間の変速時、シフト先の変速ギアが設置されている中間軸を摩擦クラッチを介して入力軸に連結し、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にして噛み合いクラッチを予備締結している。したがって、大きな伝達トルクを必要とする大型車両の変速機であってもエンジンの回転数を制御して同期させることなく、簡素な構成でショックなく噛み合いクラッチの素早い変速を可能にすることができる。また、アップシフトについては2個の摩擦ブレーキ装置を軸端部に付加するだけで達成できるので、変速機の全長を更に短縮することが可能となり、小型で安価にできるという効果を奏しえる。
【0095】
ここで、上述の実施例1、実施例2は噛み合いクラッチとしてスプラインクラッチを用いた例を挙げているが、これに代えて爪クラッチを用いても同様な効果を奏しえることは勿論のことである。
【0096】
また、上述の実施例は、シフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期状態にするとしているが、噛み合いクラッチは回転数、位相が若干異なっていても締結できるものであり、同期状態に近い略同期状態で締結するようにしても本発明に含まれることは明らかなことである。
なお、本実施例においては、出力軸の回転方向を反転させる逆転機構の図示を省略したが、入力軸上に設置された奇数段入力ギアと偶数段入力ギアとの間に、後進駆動ギアとこの後進駆動ギアを入力軸に一体に連結する後進用摩擦クラッチとを設け、後進駆動ギアを中間ギアを介して奇数段中間軸と一体回転する後進被動ギアへ噛み合わせるよう構成することによって、入力軸の軸方向空きスペースを有効に活用して逆転機構を設置でき、全長や全幅を伸ばすことなく構成できる利点がある。
【符号の説明】
【0097】
1…エンジン、2…変速機、3…入力軸、4…出力軸、5…奇数段中間軸、6…偶数段中間軸、7…奇数段入力ギア、8…偶数段入力ギア、9…奇数段主伝達ギア、10…奇数段主摩擦クラッチ、11…偶数段主伝達ギア、12…偶数段主摩擦クラッチ、13…偶奇アップシフト用入力ギア、14…奇偶ダウンシフト用入力ギア、15…偶奇アップシフト用同期ギア16、18、20、22…摩擦クラッチ、17…偶奇アップシフト用同期ギア、19…奇偶アップシフト用同期ギア、21…奇偶ダウンシフト用同期ギア、23〜26…クラッチスリーブ、27、28…摩擦ブレーキ装置、31…1速ギア、33…3速ギア、35…5速ギア、37…7速ギア、32…2速ギア、34…4速ギア、36…6速ギア、38…8速ギア、41〜44…変速出力ギア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続される入力軸と、前記入力軸と並列に配置された奇数段中間軸及び偶数段中間軸と、前記中間軸間と並列に配置された出力軸と、前記入力軸に固着され入力軸の回転を中間軸に伝達する奇数段入力ギア及び偶数段入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された奇数段主伝達ギアと、前記奇数段主伝達ギアを前記奇数段中間軸に連結する奇数段主摩擦クラッチと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された偶数段主伝達ギアと、前記偶数段主伝達ギアを前記偶数段中間軸に連結する偶数段主摩擦クラッチと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された複数の奇数段変速ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された複数の偶数段変速ギアと、前記奇数段変速ギアの1つと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアが噛み合うように出力軸に固着配設された複数の出力ギアと、前記奇数段中間軸及び偶数段中間軸に設けられて中間軸と前記変速ギアを選択的に結合する噛み合いクラッチとを具備し、同一の前記出力ギアに噛み合う前記奇数段変速ギアと前記偶数段変速ギアを同じ歯数に設定し、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分になるように、前記奇数段入力ギア列と前記偶数段入力ギア列のギア比を設定し、シフト先の変速ギアが設置された中間軸を摩擦クラッチを介して前記入力軸に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期させる噛み合いクラッチ同期化機構を設け、変速段切り替えに先立って前記シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の大型車両用ツインクラッチ式変速機において、前記噛み合いクラッチ同期化機構は前記入力軸に固着された偶奇アップシフト用入力ギアおよび奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶奇アップシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇アップシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置されて前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアとを具備し、前記奇偶アップシフト用同期ギアと奇数段主伝達ギアおよび偶奇ダウンシフト用同期ギアと偶数段主伝達ギアを同じ歯数に設定し、変速段切り替えに先立って前記4つの同期ギアに付設されたいずれかの摩擦クラッチを結合してシフト先の噛み合いクラッチを同期状態にし、シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の大型車両用ツインクラッチ式変速機において、前記噛み合いクラッチ同期化機構は前記入力軸に固着された奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置され、前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸及び前記偶数段中間軸に設けられた摩擦ブレーキとを具備し、前記偶奇ダウンシフト用同期ギアと偶数段主伝達ギアを同じ歯数に設定し、ダウンシフト変速時には前記2つの同期ギアのいずれか一方の摩擦クラッチを結合し、アップシフト変速時には前記中間軸に連結されていない前記主伝達ギアの主摩擦クラッチを介して中間軸を回転させると共に該中間軸の摩擦ブレーキを作動させて噛み合いクラッチを同期状態にし、シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【請求項1】
エンジンに接続される入力軸と、前記入力軸と並列に配置された奇数段中間軸及び偶数段中間軸と、前記中間軸間と並列に配置された出力軸と、前記入力軸に固着され入力軸の回転を中間軸に伝達する奇数段入力ギア及び偶数段入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された奇数段主伝達ギアと、前記奇数段主伝達ギアを前記奇数段中間軸に連結する奇数段主摩擦クラッチと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された偶数段主伝達ギアと、前記偶数段主伝達ギアを前記偶数段中間軸に連結する偶数段主摩擦クラッチと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置された複数の奇数段変速ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置された複数の偶数段変速ギアと、前記奇数段変速ギアの1つと当該奇数段変速ギアより1変速段上の偶数段変速ギアが噛み合うように出力軸に固着配設された複数の出力ギアと、前記奇数段中間軸及び偶数段中間軸に設けられて中間軸と前記変速ギアを選択的に結合する噛み合いクラッチとを具備し、同一の前記出力ギアに噛み合う前記奇数段変速ギアと前記偶数段変速ギアを同じ歯数に設定し、隣り合う変速段間の変速比の比が等比率配分になるように、前記奇数段入力ギア列と前記偶数段入力ギア列のギア比を設定し、シフト先の変速ギアが設置された中間軸を摩擦クラッチを介して前記入力軸に連結してシフト先の変速ギアと当該変速ギアが設置されている中間軸の回転数を同期させる噛み合いクラッチ同期化機構を設け、変速段切り替えに先立って前記シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の大型車両用ツインクラッチ式変速機において、前記噛み合いクラッチ同期化機構は前記入力軸に固着された偶奇アップシフト用入力ギアおよび奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶奇アップシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇アップシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置されて前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶アップシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置されて前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアとを具備し、前記奇偶アップシフト用同期ギアと奇数段主伝達ギアおよび偶奇ダウンシフト用同期ギアと偶数段主伝達ギアを同じ歯数に設定し、変速段切り替えに先立って前記4つの同期ギアに付設されたいずれかの摩擦クラッチを結合してシフト先の噛み合いクラッチを同期状態にし、シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の大型車両用ツインクラッチ式変速機において、前記噛み合いクラッチ同期化機構は前記入力軸に固着された奇偶ダウンシフト用入力ギアと、前記奇数段中間軸に回転自在に設置され、前記偶数段入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記奇数段中間軸に連結される偶奇ダウンシフト用同期ギアと、前記偶数段中間軸に回転自在に設置され、前記奇偶ダウンシフト用入力ギアと噛み合い、付設された摩擦クラッチにより前記偶数段中間軸に連結される奇偶ダウンシフト用同期ギアと、前記奇数段中間軸及び前記偶数段中間軸に設けられた摩擦ブレーキとを具備し、前記偶奇ダウンシフト用同期ギアと偶数段主伝達ギアを同じ歯数に設定し、ダウンシフト変速時には前記2つの同期ギアのいずれか一方の摩擦クラッチを結合し、アップシフト変速時には前記中間軸に連結されていない前記主伝達ギアの主摩擦クラッチを介して中間軸を回転させると共に該中間軸の摩擦ブレーキを作動させて噛み合いクラッチを同期状態にし、シフト先の変速ギアに前記噛み合いクラッチを予備締結するように構成したことを特徴とする大型車両用ツインクラッチ式変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−210027(P2010−210027A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57636(P2009−57636)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【Fターム(参考)】
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