説明

天井走行車

【構成】 天井走行車2の落下防止カバー25に、障害物センサ30とその回動機構とをを設ける。障害物センサ30は物品の受け渡し時にはロードポート8を監視し、走行時には走行方向前方を監視する。
【効果】 1台の障害物センサで走行方向前方とロードポート付近とを監視できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車に関し、特に走行方向やロードポート付近の障害物の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
天井走行車はクリーンルーム等において天井空間に設けた走行レールに沿って走行し、地上部に設けたロードポートとの間で昇降台を昇降させて物品を受け渡しする。天井走行車の追突を防止し、またロードポートにアクセスしようとしている人などに接触するのを避けるため、天井走行車の前方向きと下方向きに2台の障害物センサを設けることが行われている。信頼性の高い障害物センサとして例えばレーザ距離計が用いられているが、このセンサは高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、1台の障害物センサで走行方向前方と下方への安全を確保することにある。
請求項2の発明での追加の課題は、障害物センサの向きの変更に伴って、天井走行車のサイクルタイムが延びないようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、障害物センサの向きを変えるための具体的な機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、走行レールに沿って走行する台車と、昇降台を昇降させかつ前記台車に支持された昇降駆動部とを備えた天井走行車において、障害物センサと、該障害物センサの向きを変えることにより、その監視エリアを台車の走行時には走行方向前方へ向け、昇降台の下降時には天井走行車の下方へ向けるための、エリア変更手段とを設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記台車の停止前に前記エリア変更手段を動作させて、監視エリアを走行方向前方から天井走行車の下方へ変更する。
【0006】
また好ましくは、前記エリア変更手段は、障害物センサを取り付けたギアと、該ギアを駆動するためのモータと、前記ギアの回動範囲を障害物センサの前方監視位置と下方監視位置との間に制限するためのストッパと、前記ギアと天井走行車に固定の支点との間を結ぶバネとを備え、バネから前記ギアに加わる回転力が前記前方監視位置と下方監視位置の間で死点を取り、バネによりギアを、前方監視時には前方監視位置へ向けて、下方監視時には下方監視位置へ向けて付勢するようにする。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、1つの障害物センサで走行方向前方と移載方向下方の2個所を監視できる。この結果、障害物センサの個数を減らすことができる。
【0008】
台車の停止前にエリア変更手段を動作させて、監視エリアの向きを走行方向前方から天井走行車の下方に変更すると、ロードポート付近の障害物を速やかに検出でき、例えば天井走行車の停止とほぼ同時に昇降台の下降を開始できる。このため障害物センサの向きを変えることに伴って、天井走行車のサイクルタイムが延びるのを防止できる。
【0009】
好ましくはエリア変更手段に、ギアと固定の支点との間を結ぶバネとを設けて、バネからギアに加わる回転力が前記前方監視位置と下方監視位置の間で死点を通り、バネによりギアを、前方監視時には前方監視位置へ向けて、下方監視時には下方監視位置へ向けて、付勢する。前方監視位置でも下方監視位置でも、ギアはバネで付勢されて適正な向きに保たれるので、適正な向きで障害物を監視できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図5に、実施例の天井走行車2とその動作を示す。図において4は走行レールで、クリーンルームなどの天井空間に設置され、6は半導体などの処理装置で、地上空間に設置されている。処理装置6にはロードポート8を設けて、天井走行車2との間で物品10を受け渡しする。物品10は例えば半導体カセットであるが、他の物品でも良い。また天井走行車2との間で物品を受け渡しする地上側の設備をロードポートと呼び、処理装置6に設けられているものには限らない。
【0012】
天井走行車2の台車12は、走行レール4内を走行し、受電装置14は走行レール4に設けたリッツ線などから非接触給電などで受電し、かつリッツ線などを利用して通信を行う。天井走行車のフレーム16は、台車12から延びるシャフトで支持され、18は横送り部、20はθドライブ、22は昇降駆動部、24は昇降台である。横送り部18はθドライブ20〜昇降台24を走行レール4に対して横方向に移動させ、θドライブ20は昇降駆動部22を水平面内で回動させる。昇降駆動部22は昇降台をベルトやロープ、ワイヤなどの吊持材により昇降させ、ロードポート8との間で物品10を受け渡しする。
【0013】
天井走行車2の例えば前後双方に落下防止カバー25,26を設け、28は出没自在な落下防止部である。走行方向前方の落下防止カバー25の下部に障害物センサ30を設け、その向きを回動させて、昇降台24の昇降時には監視エリア32を監視し、台車12による走行時には走行方向前方の監視エリア34を監視する。監視エリア32の下端を33として示し、31は監視エリア34を監視する際の障害物センサ30の姿勢を示す。
【0014】
監視エリア32は、ロードポート8へ向けて昇降台24を下降させる際に、ロードポート8へアクセスしようとする人やロードポート8の付近に不用意に置かれた物品などと干渉するのを防止するためのものである。監視エリア32は、障害物センサ30から鉛直下方向きよりも、好ましくは通路35寄りにやや斜めに傾けて設け、昇降中の物品10を誤って検出することを防止すると共に、ロードポート8の手前にいる人なども検出できるようにする。監視エリア34は、天井走行車2から走行方向前方へ向けて、例えば水平〜やや上向きに配置する。障害物センサ30は例えばレーザ距離計からなり、所定の角度範囲内でかつ所定の距離内にある障害物を検出し、その監視エリア32,34は、図1,図2のようになる。監視エリアの形状は下方監視時と前方監視時とで変更でき、監視エリア32,34を異なる形状にすることもできる。
【0015】
図3に、障害物センサ30の回動機構を示す。36はステッピングモータなどのモータで、38,40はギアで、モータ36で回動し、障害物センサ30のブラケット42はギア40に取り付けてある。44は落下防止カバーに固定のバネ支点、45はギア40に取り付けたバネ支点で、この間にバネ47を設ける。50はギア40に設けた溝で、落下防止カバー側に設けた固定のストッパ52を溝50内に配置する。なお落下防止カバー側に固定の溝を設けて、ギア40側にストッパを設けてもよい。そして図3の場合、溝50の右端の位置が下方監視時のストッパ52の位置で、溝50の左端の位置が前方監視時のストッパ52の位置である。
【0016】
下方監視の場合、バネ47からのバネ力はギア40を図3の時計回りに付勢し、これによってストッパ52と溝50の右端とが確実に接触して、ブラケット42や障害物センサ30は、正確に下方監視時の位置に保たれる。前方監視時の場合の位置を図3に鎖線で示し、46はその際のバネ支点の位置で、48はその際のバネ形状であり、この場合ブラケットは43の位置をとる。支点45,46の間にバネ47の長さが最大になる位置があり、この位置でバネ47からギア40に加わる回転力は0で、回転力の死点となる。支点の位置が46でギア40は図3の反時計回りに回動しようとし、ストッパ52は溝50の左端に付勢される。この結果、ブラケットは図3の43の位置をとり、障害物センサ30は正確に前方監視時位置に保たれる。なおバネ47の種類は任意で、バネ長が最大となることにより死点を設けても、バネ長が最小になることにより死点を設けても良い。
【0017】
図4に障害物センサ30の制御系を示す。走行制御部60は走行モータ66を制御して台車を走行させ、昇降制御部62は昇降モータ68を制御して、昇降台を昇降させる。回動制御部64は走行制御部60や昇降制御部62からの信号によりモータ36を制御して、障害物センサの向きを変更する。また好ましくは下方監視時と前方監視時とで監視エリアのサイズや形状を変更する。
【0018】
図5に示すように、台車が低速で走行した後、ロードポートへ向けて減速する。例えば減速の間に、目的のロードポートの上方に他の天井走行車が存在しないことを障害物センサで検出すると、障害物センサを下方の監視位置へ向けて回動させることができる。具体的には台車の減速の後半部に回動を開始し、例えば台車の停止前に障害物センサの回動を完了する。台車の停止前にロードポート付近の障害物の有無を検出済なので、台車が停止して、例えば台車停止時の衝撃で物品に加わった振動が収まるのと同時に、昇降台の下降を開始する。ロードポートで物品を受け渡しすると、昇降台の上昇が完了する前に、障害物センサの向きをロードポートから走行方向前方に変更する。例えば昇降台の上昇完了までに障害物センサの向きを前方監視に変更し、昇降台の上昇が完了した後、天井走行車内に引き込んだ物品の振動が終了するのと同時に、台車の走行を再開する。
【0019】
障害物センサの回動は、台車の減速の後半の適宜のタイミングで開始し、台車の停止後物品の振動が収まるまでの間に、ロードポート側の監視を開始できれば良く、好ましくは台車が停止する前にロードポート側の監視を開始する。昇降台を上昇させる際には、ロードポート側の障害物を監視する必要がないので、昇降台の下降を完了した後の適宜のタイミングで障害物センサの向きを前方監視に変更すると良い。例えばロードポートからロードポートへの、天井走行車の平均のサイクルタイムを20秒とする。障害物センサ30の向きを前方監視と下方監視との間で正確に変更するのに、例えば1秒必要であるとする。この1秒がデッドタイムとして加わると、サイクルタイムは5%増加する。これに対して実施例では、障害物センサの回動に伴うサイクルタイムの増加が無く、また図3の機構により障害物センサを正しい向きに向けることができる。なお障害物センサ30の種類自体は任意である。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の天井走行車の部分切欠部付き側面図
【図2】実施例の天井走行車の部分切欠部付き正面図
【図3】実施例での障害物センサの回動機構を示す図
【図4】実施例での障害物センサの制御系のブロック図
【図5】実施例の天井走行車での、1)走行速度、2)昇降台の高さ位置、3)障害物センサの監視対象を示す図
【符号の説明】
【0021】
2 天井走行車
4 走行レール
6 処理装置
8 ロードポート
10 物品
12 台車
14 受電装置
16 フレーム
18 横送り部
20 θドライブ
22 昇降駆動部
24 昇降台
25,26 落下防止カバー
28 落下防止部
30 障害物センサ
32,34 監視エリア
33 監視エリアの下端
35 通路
36 モータ
38,40 ギア
42 ブラケット
44,45 バネ支点
47 バネ
50 溝
52 ストッパ
60 走行制御部
62 昇降制御部
64 回動制御部
66 走行モータ
68 昇降モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って走行する台車と、昇降台を昇降させかつ前記台車に支持された昇降駆動部とを備えた天井走行車において、
障害物センサと、該障害物センサの向きを変えることにより、その監視エリアを台車の走行時には走行方向前方へ向け、昇降台の下降時には天井走行車の下方へ向けるための、エリア変更手段とを設けたことを特徴とする、天井走行車。
【請求項2】
前記台車の停止前に前記エリア変更手段を動作させて、監視エリアを走行方向前方から天井走行車の下方へ変更することを特徴とする、請求項1の天井走行車。
【請求項3】
前記エリア変更手段は、障害物センサを取り付けたギアと、該ギアを駆動するためのモータと、前記ギアの回動範囲を障害物センサの前方監視位置と下方監視位置との間に制限するためのストッパと、前記ギアと天井走行車に固定の支点との間を結ぶバネとを備え、バネから前記ギアに加わる回転力が前記前方監視位置と下方監視位置の間で死点を取り、バネによりギアを、前方監視時には前方監視位置へ向けて、下方監視時には下方監視位置へ向けて付勢するようにしたことを特徴とする、請求項1の天井走行車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−298536(P2006−298536A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120888(P2005−120888)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】